(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】液状組成物、積層体、熱交換器及び耐食性被覆膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/18 20060101AFI20230221BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230221BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20230221BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20230221BHJP
B32B 15/082 20060101ALI20230221BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230221BHJP
C09D 127/18 20060101ALI20230221BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20230221BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230221BHJP
F28F 19/04 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C08L27/18
C08K3/04
C08K7/06
B32B1/08 Z
B32B15/082 B
B32B27/18 J
C09D127/18
C09D7/40
C09D7/61
F28F19/04 A
(21)【出願番号】P 2020525725
(86)(22)【出願日】2019-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2019023942
(87)【国際公開番号】W WO2019244847
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018117987
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018235717
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 達也
(72)【発明者】
【氏名】尾澤 紀生
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-164247(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070437(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/137286(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/18
C08K 3/04
C08K 7/06
B32B 1/08
B32B 15/082
B32B 27/18
C09D 127/18
C09D 7/40
C09D 7/61
F28F 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
380℃における溶融粘度が1×10
2~1×10
6Pa・sであり
溶融温度が240℃以上330℃未満であるテトラフルオロエチレン系ポリマーの
、体積基準累積50%径が0.01~5.0μmであるパウダー及び導電性フィラーを含む層形成成分と、液状媒体とを含み、前記層形成成分に占める前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの割合と前記導電性フィラーの割合との和が75質量%超であり、前記層形成成分の少なくとも一部が分散した、液状組成物。
【請求項2】
前記層形成成分に占める前記導電性フィラーの割合が、10質量%以上である、請求項1に記載の液状組成物。
【請求項3】
25℃における粘度が、50~10000mPa・sである、請求項1又は2に記載の液状組成物。
【請求項4】
前記導電性フィラーが、導電性の非金属フィラーである、請求項1~3のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項5】
前記導電性フィラーが、炭素短繊維、カーボンブラック、グラフェン、グラフェンオキシド、フラーレン、グラファイト又はグラファイトオキシドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項6】
前記導電性フィラーが、平均繊維長が0.01~500μmの繊維状の導電性フィラーであるか、又は、平均粒子径が0.01~300μmの粒子状の導電性フィラーである、請求項1~5のいずれか1項に記載の液状組成物。
【請求項7】
基材と、前記基材上に耐食性被覆層を有する積層体であって、前記耐食性被覆層が請求項1~
6のいずれか1項に記載の液状組成物中の層形成成分の焼成物を含む、積層体。
【請求項8】
前記耐食性被覆層の体積抵抗率が、1×10
10Ωcm以下である、請求項
7に記載の積層体。
【請求項9】
前記耐食性被覆層の熱膨張係数が、150ppm/℃以下である、請求項
7又は
8に記載の積層体。
【請求項10】
前記耐食性被覆層の厚さが、20~1000μm以上である、請求項
7~
9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
前記基材の材質が、金属、ガラス又はセラミックスである、請求項
7~
10のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項12】
請求項
7~
11のいずれか1項に記載の積層体である伝熱管を備える、熱交換器。
【請求項13】
請求項
7~
11のいずれか1項に記載の積層体の前記基材を除去して、前記焼成物を含む耐食性被覆膜を得る、耐食性被覆膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状組成物、積層体、熱交換器及び耐食性被覆膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼ガスを利用してボイラ水から蒸気を発生させるボイラには、伝熱管を備えた熱交換器が用いられる。
燃焼ガスには、水蒸気、硫黄酸化物等が含まれている。そのため、熱交換器における熱交換によって、燃焼ガスが、硫酸が生成される温度(硫酸露点温度)以下になった場合には、熱交換器において硫酸が生成し、伝熱管等が腐食しやすい。
硫酸による腐食が抑えられた熱交換器の伝熱管としては、フッ素樹脂、炭素繊維、鉛フリーはんだ合金、黒鉛及び炭化ケイ素のそれぞれのドライパウダーの混合物を、管本体の外表面に静電塗装にて付着させ、焼成処理して形成された耐食性被覆層を有する伝熱管が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、それぞれの成分のドライパウダーの混合物を静電塗装する場合、それぞれのパウダーの平均粒子径(特に、フッ素樹脂のドライパウダーの平均粒子径)は、数十μmにする必要がある。そのため、形成される耐食性被覆層においてそれぞれの成分がまだらに存在して不均一になりやすく、耐食性にむらが生じやすい。また、耐食性被覆層の表面が荒れやすく、外観がよくない。
本発明は、伝熱性及び耐食性を有し、耐食性のむらが少なく、外観がよい耐食性被覆層を形成できる液状組成物、伝熱性及び耐食性を有し、耐食性のむらが少なく、外観がよい積層体、熱交換器並びに耐食性被覆膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]380℃における溶融粘度が1×102~1×106Pa・sであるテトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダー及び導電性フィラーを含む層形成成分と、液状媒体とを含み、前記層形成成分に占める前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの割合と前記導電性フィラーの割合との和が75質量%超であり、前記層形成成分の少なくとも一部が分散した、液状組成物。
[2]前記層形成成分に占める前記導電性フィラーの割合が、10質量%以上である、[1]に記載の液状組成物。
[3]25℃における粘度が、50~10000mPa・sである、[1]又は[2]に記載の液状組成物。
【0006】
[4]前記導電性フィラーが、導電性の非金属フィラーである、[1]~[3]のいずれかに記載の液状組成物。
[5]前記導電性フィラーが、炭素短繊維、カーボンブラック、グラフェン、グラフェンオキシド、フラーレン、グラファイト又はグラファイトオキシドである、[1]~[4]のいずれかに記載の液状組成物。
[6]前記導電性フィラーが、平均繊維長が0.01~500μmの繊維状の導電性フィラーであるか、又は、平均粒子径が0.01~300μmの粒子状の導電性フィラーである、[1]~[5]のいずれかに記載の液状組成物。
[7]前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、溶融温度が240℃以上330℃未満のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]~[6]のいずれかに記載の液状組成物。
[8]前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの平均粒子径が、0.01~5.0μmである、[1]~[7]のいずれかに記載の液状組成物。
【0007】
[9]基材と、前記基材上に耐食性被覆層を有する積層体であって、前記耐食性被覆層が[1]~[8]のいずれかに記載の液状組成物中の層形成成分の焼成物を含む、積層体。
[10]前記耐食性被覆層の体積抵抗率が、1×1010Ωcm以下である、[9]に記載の積層体。
[11]前記耐食性被覆層の熱膨張係数が、150ppm/℃以下である、[9]又は[10]に記載の積層体。
[12]前記耐食性被覆層の厚さが、20~1000μm以上である、[9]~[11]のいずれかに記載の積層体。
[13]前記基材の材質が、金属、ガラス又はセラミックスである、[9]~[12]のいずれかに記載の積層体。
[14]前記[9]~[13]のいずれかに記載の積層体である伝熱管を備える、熱交換器。
[15]前記[9]~[13]のいずれかに記載の積層体の前記基材を除去して、前記焼成物を含む耐食性被覆膜を得る、耐食性被覆膜の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液状組成物によれば、伝熱性及び耐食性を有し、耐食性のむらが少なく、外観がよい耐食性被覆層を形成できる。
本発明の積層体は、伝熱性及び耐食性を有し、耐食性のむらが少なく、外観がよい耐食性被覆層を有する。
本発明の熱交換器は、伝熱性及び耐食性を有し、耐食性のむらが少なく、外観がよい耐食性被覆層を有する、本発明の積層体である伝熱管を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の積層体である伝熱管の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「パウダーの平均粒子径」は、レーザー回折・散乱法によって求められるパウダーの体積基準累積50%径(D50)である。すなわち、レーザー回折・散乱法によってパウダーの粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。なお、パウダーの体積基準累積90%径は、パウダーのD90と記す。
【0011】
「導電性フィラーの平均粒子径」は、顕微鏡を用いた導電性フィラーの画像解析によって求められる値である。
具体的には、30mLの三角フラスコにスポイトで1級試薬の流動パラフィンの5mLをはかり取る。ミクロスパチュラで導電性フィラーの試料を採取し、流動パラフィンに分散させる。フラスコからマイクロピペットで300μLの分散液をはかり取り、1枚目のスライドグラス上に落とし、2枚目のスライドグラスを重ねて圧着させる。スライドグラスに挟まれた試料について、CCDマイクロスコープ(例えば、MORITEX CORPORATION社製、SCOPEMAN DIGITAL CCD MICROSCOPE MS-804)を用いて画像を撮影し、画像解析ソフト(例えば、三谷商事社製、WinROOF2015)を用いて、1000~1300個の導電性フィラーの粒子について粒子径を求め、その平均値を導電性フィラーの平均粒子径とする。導電性フィラーが繊維状であれば、導電性フィラーの平均繊維長となる。
なお、導電性フィラーが、カーボンナノチューブのように繊維長がナノメートルサイズであったり、カーボンブラックのように粒子径がナノメートルサイズであったりして、CCDマイクロスコープで粒子径を求めることができない場合は、導電性フィラーの電子顕微鏡写真から無作為に300個の導電性フィラーの粒子について粒子径を求め、その平均値を導電性フィラーの平均粒子径又は平均繊維長とする。
【0012】
「ポリマーの溶融粘度」は、ASTM D1238に準拠し、フローテスター及び2Φ-8Lのダイを用い、あらかじめ測定温度にて5分間加熱しておいたポリマーの試料(2g)を0.7MPaの荷重にて測定温度に保持して測定した値である。
「ポリマーの溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度である。
「液状組成物の粘度」は、B型粘度計を用い、温度25℃、回転数6rpmの条件下で測定した値である。
「耐熱性樹脂」は、溶融温度が280℃以上の高分子化合物、又はJIS C 4003:2010(IEC 60085:2007)で規定される最高連続使用温度が121℃以上の高分子化合物である。
【0013】
図1における寸法比は、説明の便宜上、実際の寸法比とは異なる。
ポリマーにおける「単位」は、重合反応によってモノマー1分子から直接形成された原子団であってもよく、重合反応によって得られたポリマーを所定の方法で処理して、構造の一部が変換された上記原子団であってもよい。ポリマーに含まれる、モノマーAに基づく単位を、単に「単位A」とも記す。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称である。
【0014】
本発明の液状組成物は、380℃における溶融粘度が1×102~1×106Pa・sであるテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「TFE系ポリマー」とも記す。)のパウダー(以下、「Fパウダー」とも記す。)及び導電性フィラーを含む層形成成分と、液状媒体とを含む。層形成成分に占めるTFE系ポリマーの割合と前記導電性フィラーの割合との和は75質量%超であり、層形成成分の少なくとも一部(Fパウダー等。)は粒子状に分散している。
本発明の液状組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、液状媒体、パウダー、導電性フィラー以外の材料(以下、「他の材料」と記す。)をさらに含んでいてもよい。他の材料の具体例は、後述する。なお、他の材料が層成形成分である場合、かかる他の材料の層形成成分に占める割合は、25質量%未満であり、10質量%以下であることが好ましい。
本発明における液状組成物の粘度としては、50~10000mPa・sが好ましく、70~5000mPa・sがより好ましく、100~5000mPa・sがさらに好ましい。この範囲において、液状組成物の分散性と塗工性とがより優れ、それから形成される層の物性が一層優れやすい。
【0015】
本発明における液状媒体は、液状組成物における分散媒であり、25℃で液状の不活性な成分である。
液状媒体としては、液状組成物に含まれる液状媒体の以外の成分よりも低沸点であり、加熱等によって揮発し除去できる化合物が好ましい。
液状媒体としては、例えば、水、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等)、含窒素化合物(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等)、含硫黄化合物(ジメチルスルホキシド等)、アルカン(シクロヘキサン等。)、エーテル(ジエチルエーテル、ジオキサン等)、エステル(乳酸エチル、酢酸エチル等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等)、グリコールエーテル(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等)、セロソルブ(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、芳香族炭化水素が挙げられる。液状媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
液状媒体の沸点としては、80~275℃が好ましく、125~250℃が特に好ましい。この範囲において、液状組成物から液状媒体を加熱除去する際、液状媒体が瞬間的に揮発せずに、液状媒体の揮発と層形成成分の流動による均一な層形成が相乗的に進行しやすい。
液状媒体としては、アルコール、エステル、ケトン及びアミドが好ましく、2-プロパノール(沸点:82℃)、1-プロパノール(沸点:97℃)、1-ブタノール(沸点:117℃)、1-メトキシ-2-プロパノール(沸点:119℃)、N-メチル-2-ピロリドン(沸点:202℃)、γ-ブチロラクトン(沸点:204℃)、シクロヘキサノン(沸点:156℃)及びシクロペンタノン(沸点:131℃)がより好ましく、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンが特に好ましい。
【0016】
本発明におけるFパウダーは、TFE系ポリマーのパウダーである。
Fパウダーは、本発明の効果を損なわない範囲で、TFE系ポリマー以外の成分を含んでいてもよいが、TFE系ポリマーのみからなるのが好ましい。Fパウダーは2種以上のTFE系ポリマーを含んでいてもよい。TFE系ポリマーの割合は、Fパウダーのうち、80質量%以上であることが好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0017】
FパウダーのD50としては、0.01~5.0μmが好ましく、0.1~4.0μmがより好ましく、0.5~3.0μmが特に好ましい。この範囲において、Fパウダーの流動性と分散性が良好となる。その結果、耐食性被覆層において耐食性のむらが少なくなり、また、耐食性被覆層の外観がよくなる。
FパウダーのD90としては、0.05~10μmが好ましく、0.5~8μmがより好ましく、1~6μmが特に好ましい。この範囲において、Fパウダーの流動性と分散性が良好となり、耐食性被覆層において耐食性のむらがさらに少なくなり、また、耐食性被覆層の外観がさらによくなる。
Fパウダーの疎充填嵩密度としては0.08~0.5g/mLが好ましく、Fパウダーの密充填嵩密度は0.1~0.8g/mLが好ましい。
Fパウダーとしては、例えば、国際公開第2016/017801号の[0065]~[0069]に記載のパウダーが挙げられる。所望のパウダーが市販されていれば、それをFパウダーとして用いてもよい。
【0018】
本発明におけるTFE系ポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)に基づく単位(TFE単位)を有するポリマーである。TFE系ポリマーは、TFEのホモポリマーであってもよく、TFEと、TFEと共重合可能な他のモノマー(以下、コモノマーとも記す。)とのコポリマーであってもよい。TFE系ポリマーとしては、ポリマーを構成する全単位に対するTFE単位の割合が90~100モル%であるTFE系ポリマーが好ましい。
TFE系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFEとエチレンのコポリマー(ETFE)、TFEとプロピレンのコポリマー、TFEとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)のコポリマー(PFA)、TFEとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(FEP)、TFEとクロロトリフルオロエチレンのコポリマーが挙げられる。
【0019】
本発明におけるTFE系ポリマーの380℃における溶融粘度は1×102~1×106Pa・sである。TFE系ポリマーの340℃における溶融粘度は1×102~1×106Pa・sであることが好ましく、300℃における溶融粘度は1×102~1×106Pa・sであることが特に好ましい。この範囲において、Fパウダーが密にパッキングした均質性及び平滑性の高い耐食性被覆層を形成しやすい。その結果、耐食性のむらが少なく、外観がよい耐食性被覆層を形成できる。
【0020】
TFE系ポリマーの好適な態様としては、低分子量のPTFEが挙げられる。低分子量のPTFEは、ポリマー全体として380℃における溶融粘度が1×102~1×106Pa・sであるPTFEだけでなく、コア部分とシェル部分からなるコア-シェル構造においてシェル部分のみが前記溶融粘度を満たすPTFEであってもよい。
低分子量のPTFEとしては、高分子量のPTFE(溶融粘度が1×109~1×1010Pa・s程度。)に放射線を照射して得られるPTFE(国際公開第2018/026012号、国際公開第2018/026017号等を参照。)であってもよく、TFEを重合してPTFEを製造する際に連鎖移動剤を用い分子量を低減して得られるPTFE(特開2009-1745号公報、国際公開第2010/114033号等を参照。)であってよい。
【0021】
低分子量のPTFEは、TFEを単独で重合して得られたポリマーであってもよく、TFEとコモノマーとを共重合して得られたコポリマーであってもよい(国際公開第2009/20187号等を参照。)。ポリマーを構成する全単位に対するTFE単位の割合は、99.5モル%以上が好ましく、99.8モル%以上がより好ましく、99.9モル%以上が特に好ましい。コモノマーとしては、後述するフルオロモノマーが挙げられ、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)及びフルオロアルキルエチレン(FAE)が好ましい。
コア-シェル構造を有するPTFEとしては、特表2005-527652号公報、国際公開第2016/170918号等に記載のPTFEが挙げられる。シェル部分の溶融粘度を前記範囲とするためには、連鎖移動剤を用いてシェル部分を低分子量化する方法(特開2015-232082号公報等を参照。)、シェル部分の製造の際にTFEと前記コモノマーとを共重合する方法(特開平09-087334号公報を参照。)等が挙げられる。
低分子量のPTFEの標準比重(SSG)は、2.14~2.22であることが好ましく、2.16~2.20であることがより好ましい。SSGは、ASTM D4895-04に準拠して測定できる。
【0022】
TFE系ポリマーの他の好適な態様としては、TFEとコモノマーとのコポリマーであり、コポリマーを構成する全単位に対するコモノマーに基づく単位の割合が0.5モル%超である熱溶融性フルオロポリマー(以下、「ポリマーF」とも記す。)も挙げられる。ポリマーFの溶融温度としては、240℃以上330℃未満が好ましく、260~320℃がより好ましく、295~310℃が特に好ましい。この範囲において、ポリマーFの耐熱性と溶融成形性がバランスする。
【0023】
TFE系ポリマーとしては、接着性が優れる点から、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「官能基」とも記す。)を有するものが好ましい。官能基はプラズマ処理等により付与してもよい。
官能基は、TFE系ポリマーを構成する単位に含まれていてもよく、ポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者のポリマーとしては、官能基を、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として有するポリマーが挙げられる。
【0024】
ポリマーFとしては、官能基を有する単位とTFE単位とを有するポリマーが好ましい。また、この場合のポリマーFは、さらに他の単位を有することが好ましい。
官能基は、接着性の点から、カルボニル基含有基が好ましい。カルボニル基含有基としては、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物残基、脂肪酸残基等が挙げられ、カルボキシ基及び酸無水物残基が好ましい。
官能基を有する単位としては、官能基を有するモノマーに基づく単位が好ましく、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位、ヒドロキシ基を有するモノマーに基づく単位、エポキシ基を有するモノマーに基づく単位及びイソシアネート基を有するモノマーに基づく単位がより好ましく、カルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位が特に好ましい。
【0025】
カルボニル基含有基を有するモノマーとしては、酸無水物残基を有する環状モノマー、カルボキシ基を有するモノマー、ビニルエステル及び(メタ)アクリレートが好ましく、酸無水物残基を有する環状モノマーが特に好ましい。
酸無水物残基を有する環状モノマーとしては、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸。以下、「NAH」とも記す。)及び無水マレイン酸が好ましい。
【0026】
官能基を有する単位及びTFE単位以外の他の単位としては、HFP単位、PAVE単位及びFAE単位が好ましい。
PAVEとしては、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3(PPVE)、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8F等が挙げられ、PPVEが好ましい。
FAEとしては、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H等が挙げられ、CH2=CH(CF2)4F及びCH2=CH(CF2)2Fが好ましい。
【0027】
ポリマーFとしては、官能基を有する単位と、TFE単位と、PAVE単位又はHFP単位とを有するポリマーが好ましい。かかるポリマーFの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されたポリマー(X)が挙げられる。
ポリマーFにおけるTFE単位の割合は、ポリマーFを構成する全単位のうち、90~99モル%であることが好ましい。
ポリマーFにおけるPAVE単位又はHFP単位の割合は、ポリマーFを構成する全単位のうち、0.5~9.97モル%であることが好ましい。
ポリマーFにおける官能基を有する単位の割合は、ポリマーFを構成する全単位のうち、0.01~3モル%であることが好ましい。
【0028】
本発明における導電性フィラーは、導電性を有する樹脂用の充填材から選択するのが好ましい。
導電性フィラーとしては、例えば、炭素含有充填材、金属粉末、導電性金属酸化物(導電性酸化チタン、導電性酸化スズ、導電性マイカ等)、イオン性導電剤が挙げられる。導電性フィラーとしては、耐食性に優れる点から、導電性の非金属フィラーが好ましく、炭素含有充填材が特に好ましい。
炭素含有充填材としては、伝熱性に優れる点から、炭素短繊維、カーボンブラック、グラフェン、グラフェンオキシド、フラーレン、グラファイト及びグラファイトオキシドが好ましく、炭素短繊維、カーボンブラック及びグラファイトが特に好ましい。
炭素含有充填材は、酸化剤の不存在下にて、圧力50~400atm及び温度100~600℃の亜臨界水又は超臨界水で表面処理されていてもよい。
【0029】
炭素短繊維としては、例えば、炭素繊維(PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等)を短くカット又は粉砕した炭素短繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ(シングルウォール、ダブルウォール、マルチウォール、カップ積層型等)が挙げられる。
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
導電性フィラーが繊維状である場合、導電性フィラーの平均繊維長としては、0.01~500μmが好ましく、1~300μmがより好ましく、3~200μmがさらに好ましく、5~100μmが特に好ましい。この範囲において、導電性フィラーの分散性に優れる。その結果、伝熱性のむらが少ない耐食性被覆層を形成しやすい。
導電性フィラーが粒子状である場合、導電性フィラーの平均粒子径としては、0.01~30μmが好ましく、0.03~10μmがより好ましく、0.05~1μmが特に好ましい。この範囲において、導電性フィラーの分散性に優れる。その結果、伝熱性のむらが少ない耐食性被覆層を形成しやすい。
導電性フィラーが炭素短繊維の場合はその平均繊維長は0.01~500μmであることが好ましく、カーボンブラックの場合はその平均粒子径は0.01~0.5μmであることが好ましく、グラファイトの場合はその平均粒子径は1~300μmであることが好ましい。
【0030】
本発明の液状組成物は、層形成成分の分散を促し、それから形成される層物性を一層向させる観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
液状組成物が分散剤を含む場合、その割合は、1~20質量%が好ましく、3~10質量%が特に好ましい。この範囲において、均質性及び平滑性の高い耐食性被覆層を形成しやすい。
【0031】
界面活性剤としては、含フッ素基及び親水性基を有するフッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤を用いれば、液状媒体の表面張力を低下させ、Fパウダーの表面に対する濡れ性を向上させてFパウダーの分散性を向上させるとともに、含フッ素基がTFE系ポリマーのパウダー(Fパウダー)の表面に吸着し、親水性基が液状媒体中に伸長し、親水性基の立体障害によってFパウダーの凝集を防止して分散安定性をさらに向上させる。
含フッ素基は、ペルフルオロアルキル基又はペルフルオロアルケニル基であることが好ましい。これらの含フッ素基の炭素数は、4~12が好ましい。
親水性基は、アルコール性水酸基又はポリオキシアルキレン基であることが好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、ネオス社製のフタージェントシリーズ(Mシリーズ、Fシリーズ、Gシリーズ、P・Dシリーズ、710FL、710FM、710FS、730FL、730LM、610FM、601AD、601ADH2、602A、65 0AC、681)、AGCセイミケミカル社製のサーフロンシリーズ(S-386等)、DIC社製のメガファックシリーズ(F-553、F-555、F-556、F-557、F-559、F-562、F-565等)、ダイキン工業社製のユニダインシリーズ(DS-403N等)が挙げられる。
【0032】
他の材料としては、TFE系ポリマー以外の樹脂材料が挙げられる。前記樹脂材料は、液状組成物に溶解してもよく、溶解しなくてもよい。
前記樹脂材料は、非硬化性樹脂であってもよく、硬化性樹脂であってもよい。
非硬化性樹脂としては、熱溶融性樹脂、非溶融性樹脂が挙げられる。熱溶融性樹脂としては、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。非溶融性樹脂としては、硬化性樹脂の硬化物等が挙げられる。
【0033】
硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸、熱硬化性アクリル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリオレフィン樹脂、熱硬化性変性ポリフェニレンエーテル樹脂、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂が挙げられる。なかでも、プリント基板用途に有用な点から、熱硬化性樹脂としては、熱硬化性ポリイミド、ポリイミド前駆体、エポキシ樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、ビスマレイミド樹脂及び熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましく、エポキシ樹脂及び熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂が特に好ましい。
【0034】
エポキシ樹脂の具体例としては、ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物、フェノールとフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノールのグリシジルエーテル化物、アルコールのジグリシジルエーテル化物、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0035】
ビスマレイミド樹脂としては、特開平7-70315号公報に記載される、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂とビスマレイミド化合物とを併用した樹脂組成物(BTレジン)、国際公開第2013/008667号に記載の発明、その背景技術に記載のものが挙げられる。
ポリアミック酸は、通常、TFE系ポリマーの官能基と反応しうる反応性基を有している。
ポリアミック酸を形成するジアミン、多価カルボン酸二無水物としては、例えば、特許第5766125号公報の[0020]、特許第5766125号公報の[0019]、特開2012-145676号公報の[0055]、[0057]等に記載のものが挙げられる。なかでも、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジアミンと、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸二無水物との組合せからなるポリアミック酸が好ましい。
【0036】
熱溶融性樹脂としては、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂、硬化性の樹脂の熱溶融性の硬化物が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、ポリフェニレンエーテル等が挙げられ、熱可塑性ポリイミド、液晶性ポリエステル及びポリフェニレンエーテルが好ましい。
【0037】
また、他の材料としては、チキソ性付与剤、消泡剤、無機フィラー(導電性フィラーを除く。)、反応性アルコキシシラン、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、難燃剤も挙げられる。
【0038】
本発明における層形成成分は、TFE系ポリマー及び導電性フィラーを含み、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層形成成分(上述した材料の内、層を形成する材料等。)を含んでいてもよい。層形成成分に占めるTFE系ポリマーの割合と導電性フィラーの割合の和は、75質量%超であり、90質量%以上が好ましい。前記和の上限は、100質量%である。
また、層形成成分に占める導電性フィラーの割合としては、10質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、45質量%以上が特に好ましい。前記割合の上限は、通常、80質量%である。
前記和と前記導電性フィラーの割合が、それぞれ上記範囲にある場合、伝熱性と耐食性がバランスした耐食性被覆層をより形成しやすい。
【0039】
本発明の液状組成物中のTFE系ポリマー及び導電性フィラーの合計の割合は、10~80質量%が好ましく、30~70質量%が特に好ましい。この範囲において、液状組成物の塗工性に優れ、かつ耐食性被覆層の外観不良が起こりにくい。
液状組成物中のTFE系ポリマーと導電性フィラーとの質量比(Fパウダー/導電性フィラー)としては、90/10~5/85が好ましく、80/20~20/80がより好ましい。この範囲において、伝熱性と耐食性のバランスに優れた耐食性被覆層を形成しやすい。
導電性フィラーが炭素短繊維の場合、液状組成物中のFパウダーと炭素短繊維との質量比(Fパウダー/炭素短繊維)は、90/10~10/90が好ましく、80/20~20/80がより好ましい。この範囲において、塗膜として炭素繊維由来の特長を発現しつつ塗工が平滑にできるため塗工性に優れ、TFE系ポリマーの特長と炭素繊維由来の特長を両立でき、さらには塗膜の基材に対する密着強度が優れる。
【0040】
以上説明した本発明の液状組成物にあっては、導電性フィラーを含むため、伝熱性を有する耐食性被覆層を形成できる。
本発明の液状組成物を用いれば、耐食性を有する耐食性被覆層を形成できる。
つまり、本発明の液状組成物にあっては、380℃における溶融粘度が1×102~1×106Pa・sであるTFE系ポリマーと導電性フィラーとが主たる層形成成分であり、前者の成分がFパウダーとして高度に分散している。かかる液状組成物から層を形成すると、Fパウダーが密にパッキングし、導電性フィラーが高度に分散した、均質性及び平滑性の高い被覆層が形成されやすい。結果、これらの相乗効果によって、耐食性のむらが少なく、外観がよい耐食性被覆層を形成できたと考えられる。
【0041】
本発明の液状組成物を基材に塗布し、液状媒体を除去した後焼成すれば、基材と、基材上に層形成成分の焼成物からなる耐食性被覆層を有する積層体が得られる。塗布、液状媒体の除去、焼成は後述する伝熱管と同様の態様が挙げられる。
【0042】
基材の材質としては、金属、ガラス及びセラミックスが好ましく、金属が特に好ましい。
金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、真鍮が挙げられる。
ガラスとしては、ソーダライムガラス、ソーダカリガラス、ソーダアルミケイ酸塩ガラス、アルミノボレートガラス、アルミノボロシリケートガラス、低膨張ガラス、石英ガラス、ポーラスガラス等が挙げられる。
セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、ムライト、コディライト、ステアタイト、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられる。
基材の形状は、特に限定されず、平板状、管状、球状、曲面状、楔状、波状が挙げられる。
基材の好例としては、後述する伝熱管の本体が挙げられる。管やフィン付管等からなる管状基材の外表面に耐食性被覆層を形成することにより、熱交換器等に用いられる伝熱管とすることができる。
【0043】
なお、伝熱性は電気伝導性と相関することから、耐食被覆層の伝熱性は体積抵抗率で評価できる。体積抵抗率が高ければ伝熱性が低く、体積抵抗率が低ければ伝熱性が高いと言える。TFE系ポリマーの体積抵抗率は、通常、1×1017Ωcm以上であり、その伝熱性も非常に低い。
本発明の液状組成物は、TFE系ポリマーと導電性フィラーを含むため、それから形成される層(耐食性被覆層)の電気電導性が向上し、その体積抵抗率を1×1010Ωcm以下に容易に調整でき、耐食被覆層に良好な伝熱性を持たせられる。耐食被覆層の体積抵抗率としては、1×109Ωcm以下が好ましく、1×108Ωcm以下がより好ましく、1×106Ωcm以下が特に好ましい。この上限を超えると、熱及び電気の伝導性が悪くなり、熱交換器での伝熱効率が悪くなる等の問題を招じる。
【0044】
耐食被覆層の熱膨張係数としては、150ppm/℃以下が好ましく、130ppm/℃以下がより好ましく、100ppm/℃以下が好ましい。上限以下であれば、高温環境下でも基材と耐食性被覆層の接着強度が高く維持できる。また、耐食性被覆層の熱膨張係数は、基材と同じ程度であることが最も好ましい。
耐食性被覆層の厚さとしては、2μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、20μm以上が特に好ましい。耐食性被覆層の厚さとしては、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、200μm以下が特に好ましい。この範囲において、耐食性被覆層の伝熱性と耐食性とがよりバランスしやすい。
また、本発明の積層体から基材を除去すれば耐食性被覆膜を得ることもできる。基材を除去する方法としては、積層体から基材を剥離させる方法、積層体から基材を溶解させる方法が挙げられる。例えば、積層体の基材が銅箔である場合には、積層体の基材面を塩酸等のエッチング液に接触させれば、基材が溶解して除去される。
【0045】
本発明の積層体の好ましい例は、伝熱管である。
本発明の積層体である伝熱管は、本発明の液状組成物を管状基材の外表面に塗布し、液状媒体を除去した後焼成してなる耐食性被覆層を、管状基材の外表面に有する。
図1は、伝熱管の一例を示す断面図である。
伝熱管10は、管12と管12の外周に設けられたフィン14とからなる管状基材、及び、管12の外表面及びフィン14の表面を覆う耐食性被覆層16とを有する。
管12の材質としては、例えば、上述した金属が挙げられ、熱伝導性の点から、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
管12の外径及び内径は、管の材質、伝熱管の用途等から適宜設定すればよい。
フィン14の材質としては、例えば、上述した金属が挙げられ、熱伝導性の点から、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。フィンの材質は、通常、管の材質と同じとされる。
フィンの数、形状、厚さ、面積及び配置ピッチは、フィンの材質、伝熱管の用途等から適宜設定すればよい。フィンの形状としては、プレートフィン、ブレージングプレートフィン、コルゲートフィン、スリットフィン、スパイラルフィン、メッシュフィン、チューブフィン、エロフィン等の形状が挙げられる。
【0046】
耐食性被覆層の厚さとしては、2~500μmが好ましく、10~200μmが特に好ましい。この範囲において、耐食性被覆層の伝熱性と耐食性のバランスに優れる。
伝熱管は、例えば、管状基材の外表面に本発明の液状組成物を塗布し、液状媒体を除去した後焼成して耐食性被覆層を形成することによって製造される。伝熱管の形状としては、プレートフィン型伝熱管、ブレージングプレート型伝熱管、プレートフィン型伝熱管、スパイラルフィン型伝熱管、二重管式伝熱管、クロスフィン型伝熱管、コルゲートフィン型伝熱管、スリットフィン型伝熱管、メッシュフィン型伝熱管、チューブフィン型伝熱管、エロフィン型伝熱管、等の形状が挙げられ、具体例としては、特公昭59-38517号公報、特開昭60-141437号公報、実開昭63-54984等の図面に記載された形状が挙げられる。
【0047】
塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法が挙げられる。
液状組成物の塗布後、低温領域に保持して、液状媒体を除去することが好ましい。低温領域の温度としては、80℃以上180℃未満が好ましく、100~175℃がより好ましく、120℃~170℃が特に好ましい。低温領域に保持する際の温度は、雰囲気の温度を示す。低温領域の保持は、1段階で実施してもよく、異なる温度にて2段階以上で実施してもよい。低温領域における加熱方法としては、例えば、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法が挙げられる。
低温領域の保持における雰囲気は、常圧下、減圧下のいずれの状態であってよい。また、低温領域の保持における雰囲気は、酸化性ガス(酸素ガス等。)雰囲気、還元性ガス(水素ガス等。)雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等。)雰囲気のいずれであってもよい。
低温領域に保持する時間としては、0.1~10分間が好ましく、0.5~5分間が特に好ましい。
【0048】
液状媒体を除去した後、TFE系ポリマーが焼成される温度領域(以下、「焼成領域」とも記す。)に保持することが好ましい。焼成領域の温度は、雰囲気の温度を示す。焼成領域は、低温領域の保持温度超の温度領域である。
焼成方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法等が挙げられる。耐食性被覆層の表面の平滑性を高めるために、加熱板、加熱ロール等で加圧してもよい。焼成方法としては、短時間で焼成でき、遠赤外線炉が比較的コンパクトである点から、遠赤外線を照射する方法が好ましい。赤外線加熱と熱風加熱とを組み合わせてもよい。遠赤外線の有効波長帯としては、TFE系ポリマーの均質な融着を促す点から、2~20μmが好ましく、3~7μmが特に好ましい。
焼成領域の温度としては、250℃~400℃以下が好ましく、300~380℃が特に好ましい。
焼成領域に保持する時間としては、30秒~10分間が好ましく、1~5分間が特に好ましい。
焼成における雰囲気は、常圧下、減圧下のいずれの状態であってよい。また、焼成における雰囲気は、酸化性ガス(酸素ガス等。)雰囲気、還元性ガス(水素ガス等。)雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等。)雰囲気のいずれであってもよく、管状基材及び耐食性被覆層の酸化劣化を抑制する点から、還元性ガス雰囲気又は不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
焼成における雰囲気としては、不活性ガスから構成され酸素ガス濃度が低いガス雰囲気が好ましく、窒素ガスから構成され酸素ガス濃度(体積基準)が500ppm未満のガス雰囲気が好ましい。酸素ガス濃度(体積基準)としては、300ppm以下が特に好ましい。また、酸素ガス濃度(体積基準)は、通常、1ppm以上である。
【0049】
本発明の熱交換器は、本発明の積層体である伝熱管を備える。
本発明の熱交換器において、伝熱管は、水分及び硫黄化合物を含む燃焼ガスが冷却されて硫酸露点温度以下となり硫酸が発生する部位に設けられることが好ましい。
本発明の熱交換器は、例えば、ボイラにおける節炭器として用いられる。
【0050】
本発明の液状組成物は、電気・電子工業分野、自動車分野等の種々の分野で、放熱・伝熱用樹脂材料および熱伝導膜形成材料として、特に後者の材料として有用である。
本発明の積層体である伝熱管は、前記熱交換器又はそれを構成するフィン又は管が耐腐蝕性を必要とする用途に使用できる。例えば、硫酸に暴露する可能性のある硫黄分含有燃料を燃焼させ排気ガスが発生する設備(例:石炭や重油等の硫黄分含有燃料の燃焼設備として、火力発電設備)や、燃焼時に発生する排気ガスを放出する為の煙突、排出管等である。
【0051】
本発明の液状組成物は、各種発熱部品からの熱を放熱する際の放熱部品等に熱伝導膜を形成するための材料としても使用できる。
発熱部品としては、パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、整流器、トランス、パワーMOS FET、CPU等が挙げられ、放熱部品としては放熱フィンや金属放熱板が挙げられ、より具体的には、パソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装等、低酸素化で加熱処理する加工機や真空オーブン、プラズマ処理装置などのシール材や、スパッタや各種ドライエッチング装置などの処理ユニット内の放熱部品が挙げられる。
また、プリント配線板の絶縁層、熱インターフェース材、パワーモジュール用基板、モータなどの動力装置で使用されるコイルに含浸し、乾燥して、熱伝導性耐熱被覆層を形成する材料としても使用できる。
【0052】
さらに、本発明の液状組成物は、軸受、ピストン、ベアリング、スライドスイッチ及び歯車等の摺動部品や、燃料電池のセパレータに塗布して樹脂層を形成する用途にも使用できる。
また、本発明の液状組成物は接着剤としても使用できる。接着剤は、半導体素子、高密度基板やモジュール部品等において、基板上に実装されるICチップや抵抗、コンデンサ等の電子部品の接着や、回路基板と放熱板の接着、LEDチップの基板への接着等に用いることができる。電子部品の実装工程における回路配線と電子部品との間における導電性接合材用途(ハンダ接合の代替としての用途)としても使用できるため好ましい。また、車載エンジンにおける、セラミックス部品や金属部品同士の接着にも使用できる。また、プリント基板においては、電子部品が高密度に実装されたプリント基板の温度上昇を防ぐため、従来のガラスエポキシ板に替わる新たなプリント基板材料としても使用できる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各種測定方法を以下に示す。
・ポリマーの溶融粘度
ASTM D1238に準拠し、フローテスター及び2Φ-8Lのダイを用い、あらかじめ測定温度にて5分間加熱しておいたポリマーの試料(2g)を0.7MPaの荷重にて測定温度に保持して測定した。
・ポリマーの溶融温度
示差走査熱量計(セイコーインスツル社製、DSC-7020)を用い、ポリマーを10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、最大値に対応する温度を溶融温度とした。
・パウダーの粒子径
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用い、パウダーを水中に分散させて測定した。
(疎充填嵩密度及び密充填嵩密度)
パウダーの疎充填嵩密度、密充填嵩密度は、国際公開第2016/017801号の段落[0117]、[0118]に記載の方法によって測定した。
・液状組成物の粘度
B型粘度計(ブルックフィールド社製、LVDV2Tモデル)にて、温度25℃、回転数6rpmの条件下で測定した。
【0054】
使用した原材料を以下に示す。
<TFE系ポリマーのパウダー>
パウダー1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%で有する、酸無水物基を有するポリマー1(溶融温度:300℃、300℃における溶融粘度が103Pa・s)からなるパウダー(平均粒子径(D50):1.7μm、D90:3.8μm。)。
パウダー2:TFE単位を99.5モル%以上有する実質的にTFEのホモポリマーであるポリマー2(溶融温度:330℃、380℃における溶融粘度が1×106Pa・s超)からなるパウダー(平均粒子径:7μm、AGC製「L173J」。)。
<液状媒体>
NMP:N-メチルピロリドン。
<分散剤>
分散剤1:ペルフルオロアルケニル基と水酸基及びポリオキシエチレン基とをそれぞれ側鎖に有する(メタ)アクリレート系ポリマー(ネオス社製「フタージェント710FL」)。
<導電性フィラー>
フィラー1:平均繊維長が90μmの炭素短繊維(クレハ社製、クレカチョップ、M-2007S。)。
【0055】
[例1]液状組成物の製造例
[例1-1]液状組成物11の製造例
パウダー1の102g、分散剤1の10.2g及びNMPの91.8gを、横型のボールミル容器に充填し、15mm径のジルコニアボールを用いて分散させた。さらに、フィラー1の26gを加え、ホモディスパーを用いて、500rpmで5分間撹拌し、液状組成物11を得た。
【0056】
[例1-2~例1-7]液状組成物12~17の製造例
各成分の種類及び割合を変更した以外は、例1-1と同様にして液状組成物12~17を得た。それぞれの結果を、その評価結果と共に下表1にまとめて示す。
【表1】
【0057】
液状組成物の分散性及び塗工性の評価は、以下の方法に従って評価した。
<分散性>
調製直後の液状組成物における、パウダー及び導電性フィラーの分散状態を目視にて確認し、下記基準にて評価した。
不良:パウダー又は導電性フィラーの凝集物が目視で確認される。
良好:パウダー及び導電性フィラーの凝集物が確認されない。
<塗工性>
ワイヤーバー(テスター産業社製、No14)を用いて液状組成物をステンレス鋼製の基材の表面に塗布し、100℃にて10分間、加熱し、液状組成物中の液状媒体を除去して形成される塗膜(厚さ200μm程度)の外観を目視にて確認し、下記基準にて評価した。
不良:塗膜が不均一である、又は塗膜にスジ様の濃淡がある。
良好:塗膜が均一であり、塗膜に濃淡がほとんどない。
なお、表中、「フィラー+Fポリマー割合」は液状組成物の層形成成分に占めるフィラーの割合(質量%)とTFE系ポリマーの割合(質量%)の和であり、「フィラー割合」は液状組成物の層形成成分に占めるフィラーの割合(質量%)である。
【0058】
[例2]積層体の製造例
[例2-1]積層体11の製造例
ワイヤーバー(テスター産業社製、No14)を用いて液状組成物11をステンレス鋼製の基材の表面に塗布した。100℃で10分間加熱し、液状組成物中の液状媒体を除去し、基材の表面に厚さ200μm程度の塗膜が形成された積層体を得た。前記積層体を、窒素雰囲気下、340℃で15分間加熱し、パウダーを溶融して耐食性被覆層を基材の表面に形成して積層体11を得た。
【0059】
[例2-2~例2-7]積層体12~17の製造例
液状組成物を変更した以外は、例2-1と同様にして積層体12~17を得た。それぞれの結果を、その評価結果と共に下表2にまとめて示す。
【表2】
【0060】
積層体の外観及び接着性は、以下の方法に従って評価した。
<外観>
不良:耐食性被覆層において各成分がまだらに存在している、又は表面が荒れている。
良好:耐食性被覆層において各成分が均一に存在し、表面が荒れていない。
<接着性>
不良:基材から耐食性被覆層が剥がれる。
良好:基材に耐食性被覆層が密着して剥がれない。
【0061】
[例3]液状組成物の製造例
各成分の種類及び割合を変更した以外は、例1と同様にして液状組成物20~29を得た。結果を下表3にまとめて示す。なお、表中のエポキシ樹脂とは芳香族系エポキシ樹脂と硬化剤とを含む、市販のプライマー形成用の硬化性組成物であり、その成分量は層形成成分としての量である。
【表3】
【0062】
[例4]積層体の製造例
[例4-1]積層体20の製造評価例
アルミ基材(厚さ2mm、縦40mm、横150mm)に、液状組成物21をディップコートした。次に、空気雰囲気下、120℃で10分間加熱し、液状媒体を除去した。次に、340℃で15分間加熱し、パウダーを溶融させて耐食性被覆層21をアルミ基材の表面に形成して積層体20を得た。なお、この時の耐食性被覆層21の厚さが80~120μmになるようにディップコートを調整した。
【0063】
[例4-2~例4-10]積層体21~29の製造評価例
液状組成物の種類を変更した以外は、例4-1と同様にして積層体22~30を得た。それぞれの結果を、その評価結果と共に下表4にまとめて示す。
【表4】
【0064】
積層体の信頼性試験、熱膨張係数及び体積抵抗率は、以下の基準に従って評価した。
<信頼性試験>
積層体の耐食性被覆層上にポリマー1のパウダーを静電塗装し、340℃で10分間加熱し、パウダーを溶融させて、ポリマー1の層(厚さ100μm)を耐食性被覆層の表面に形成した。この積層体を、PCT試験機(HIRAYAMA社製、HASTEST MODELPC-III)で、130℃、100%RHの状態、120時間暴露した。前記積層体の掴みしろ(層が積層されてない部分)を引張試験機のチャックに固定し、引張速度50mm/分で90度剥離強度を測定し、PCT後の耐食性被覆層の接着性とした。
Aランク…15N/cm以上
Bランク…5N/cm以上15N/cm未満
Cランク…5N/cm未満
<熱膨張係数(CTE)>
積層体から短冊状(横4mm、縦55mm)に裁断したサンプルをオーブンにて250℃で1時間乾燥させてから、SII社製熱機械分析装置(TMA/SS6100)を用いて測定した。具体的には、空気雰囲気下、チャック間距離20mm、20mNの負荷荷重をかけながら、25℃から260℃まで2℃/分の速度でサンプルを昇温し、サンプルの熱膨張に伴う変位量を測定した。測定終了後、この際の変位量を、25~260℃での熱膨張係数(ppm/℃)とした。
<体積抵抗率>
積層体の製造に使用した液状組成物をフィルム(厚さ50μm、宇部興産社製、商品名「ユーピレックスS」)の上にバーコーターを用いて塗工し、100℃にて10分間、加熱した後、340℃にて10分間、加熱し、ポリマーを溶融させて耐食性被覆層(厚さ30μm)を形成した処理フィルムを別途調製した。この処理フィルムから、試験片(縦70mm、横10mm)を切り出し、処理フィルムの体積抵抗率(Ωcm)を、抵抗率計(ロレスタ―GP、三菱化学社製)を用いた4探針法(JIS-7194)によって求め、その積層体の体積抵抗率とした。
<耐薬品性>
積層体を、25%硫酸水溶液中に80℃で24時間浸漬させた後に、上記信頼性試験に供し、PCT後の耐食性被覆層の接着性として評価した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の液状組成物は、熱交換器の伝熱管における耐食性被覆層等を形成するための塗料として有用である。
なお、2018年06月21日に出願された日本特許出願2018-117987号及び2018年12月17日に出願された日本特許出願2018-235717号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0066】
10 伝熱管、
12 管、
14 フィン、
16 耐食性被覆層。