(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】フォトマスクブランク、及びフォトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/54 20120101AFI20230221BHJP
G03F 1/80 20120101ALI20230221BHJP
【FI】
G03F1/54
G03F1/80
(21)【出願番号】P 2022074539
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2018232298の分割
【原出願日】2018-12-12
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲月 判臣
(72)【発明者】
【氏名】笹本 紘平
(72)【発明者】
【氏名】松橋 直樹
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/037383(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141605(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/029826(WO,A1)
【文献】特開2007-094250(JP,A)
【文献】特開2018-180170(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168464(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が250nm以下の露光光でパターン転写が行われるフォトマスクの素材となるフォトマスクブランクであって、
該フォトマスクブランクが、透明基板と、透明基板上に直接又は光学膜を介して形成された、酸素を含む塩素系ドライエッチングでエッチングされるクロム含有膜とを含み、
該クロム含有膜が、
(3)クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、窒素含有率が10at%以下であり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ上記透明基板に向かって、クロム含有率が増加し、炭素含有率が減少している領域(A)又は上記領域(A)及び上記領域(A)の上記透明基板側又は上記透明基板から離間する側に接して形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に一定である領域(B)と、クロム含有膜の上記透明基板から最も離間する側に形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ上記透明基板に向かって、酸素含有率が減少している領域(C)とから
なることを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項2】
波長が250nm以下の露光光でパターン転写が行われるフォトマスクの素材となるフォトマスクブランクであって、
該フォトマスクブランクが、透明基板と、透明基板上に直接又は光学膜を介して形成された、酸素を含む塩素系ドライエッチングでエッチングされるクロム含有膜とを含み、
該クロム含有膜が、
(3)クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ上記透明基板に向かって、クロム含有率が増加し、炭素含有率が減少している領域(A)及び上記領域(A)の上記透明基板側又は上記透明基板から離間する側に接して形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、窒素含有率が10at%以下であり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に一定である領域(B)と、クロム含有膜の上記透明基板から最も離間する側に形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ上記透明基板に向かって、酸素含有率が減少している領域(C)とから
なることを特徴とするフォトマスクブランク。
【請求項3】
上記領域(A)におけるクロム含有率(at%)の最大値と最小値の差が3以上であり、上記領域(A)又は上記領域(A)及び(B)のクロム含有率が45at%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスクブランク。
【請求項4】
上記領域(A)における炭素含有率(at%)の最大値と最小値の差が5以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
【請求項5】
上記領域(A)を構成するクロム化合物が、更に窒素を含有し、上記領域(A)が、上記透明基板に向かって、窒素含有率が増加していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
【請求項6】
上記クロム含有膜の膜厚が50nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
【請求項7】
上記クロム含有膜の露光光に対する光学濃度が1.5以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
【請求項8】
上記クロム含有膜が、上記光学膜を介して形成されており、上記光学膜が、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料又は遷移金属及びケイ素を含有する材料からなる位相シフト膜を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
【請求項9】
上記クロム含有膜及び位相シフト膜の露光光に対する光学濃度の合計が2.5以上であることを特徴とする請求項8記載のフォトマスクブランク。
【請求項10】
上記クロム含有膜上に、ケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
【請求項11】
上記領域(C)の厚さが、クロム含有膜全体の10%以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
【請求項12】
上記領域(C)の厚さが5nm未満であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項記載のフォトマスクブランクの上記クロム含有膜を、酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターンニングする工程を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光光でのパターン転写に用いられるフォトマスクの製造における素材であるフォトマスクブランク、及びそれを用いたフォトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体電子素子の高速動作と低消費電力化などのために、大規模集積回路の高集積化が進んでいるが、それに伴う回路パターンの微細化において、高度の半導体微細加工技術が極めて重要な要素技術となっている。例えば、回路を構成する配線パターンの細線化技術や、セルを構成する層間の配線のためのコンタクトホールパターンの微細化技術が必須となっている。
【0003】
このような高度微細加工は、フォトマスクを用いるフォトリソグラフィ技術によりなされ、フォトマスクは、露光装置やレジスト材料と共に、微細化のために重要な技術となっている。このため、細線化された配線パターンや微細化されたコンタクトホールパターンを有するフォトマスクなどを実現する目的で、より微細、かつより正確なパターンをフォトマスクブランク上に形成するための技術開発が進められてきた。
【0004】
高精度のフォトマスクパターンをフォトマスク基板上に形成するためには、フォトマスクブランク上に形成するレジスト膜のパターンを、高精度でパターンニングすることが必要となる。半導体基板を微細加工する際のフォトリソグラフィは、縮小投影法が用いられるため、フォトマスクに形成されるパターンのサイズは、半導体基板上に形成するパターンサイズの4倍程度の大きさとされるが、このことは、フォトマスクに形成されるパターンの精度が緩和されることを意味するものではなく、同様に高い精度でフォトマスクパターンを形成することが求められる。
【0005】
また、現在では、フォトリソグラフィで半導体基板上に描画される回路パターンのサイズは、露光光の波長よりも、かなり小さなものとなってきているため、回路パターンをそのまま4倍に拡大したフォトマスクパターンが形成されたフォトマスクを使用して縮小露光を行っても、露光光の干渉などの影響により、フォトマスクパターンどおりの形状にはならない。
【0006】
そこで、超解像マスクとして、いわゆる光近接効果補正(Optical Proximity effect Correction:OPC)を行うことで、転写特性を劣化させる光近接効果の補正をしたOPCマスクや、パターンを透過する露光光の位相を180°変化させて入射光の強度分布を急峻にする位相シフトマスクが用いられている。例えば、OPCマスクには、回路パターンの1/2以下のサイズのOPCパターン(ハンマヘッドやアシストバーなど)を形成したものがある。また、位相シフトマスクには、ハーフトーン位相シフトマスク、レベンソン型位相シフトマスク、クロムレス型位相シフトマスクなどがある。
【0007】
マスクパターンを形成するためには、一般に、透明基板上に遮光性膜を有するフォトマスクブランク上にフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜に電子線や光を照射してパターン描画を行い、フォトレジスト膜を現像してフォトレジスト膜のパターンを得る。そして、このフォトレジスト膜のパターンをエッチングマスクとして遮光性膜をパターンニングすることで、フォトマスクパターンを得る。微細なフォトマスクパターンを得るためには、以下のような理由により、フォトレジスト膜を薄膜化することが有効である。
【0008】
レジスト膜を薄くすることなくレジスト膜のパターンのみを微細化すると、遮光性膜のエッチングマスクとして機能するレジスト部のアスペクト比(レジスト膜厚とパターン幅との比)が高くなってしまう。一般に、レジスト膜のパターンのアスペクト比が高くなると、そのパターン形状が劣化しやすく、遮光性膜へのパターン転写精度が低下してしまう。また、極端な場合には、レジスト膜のパターンの一部が倒れたり、剥離を起こしてパターン抜けが生じたりする。そのため、フォトマスクパターンの微細化に伴って、遮光性膜のパターンニング用のエッチングマスクとして用いるレジスト膜の膜厚を薄くして、アスペクト比が高くなりすぎないようにする必要がある。このアスペクト比は3以下であることが望ましいとされており、例えば、幅70nmのレジスト膜のパターンを形成するためには、レジスト膜の膜厚を210nm以下とすることが望ましいことになる。
【0009】
一方、フォトマスクを用い、ArFエキシマレーザを露光光としてフォトマスクパターンを半導体ウェハ上のフォトレジスト膜などの被転写物に転写する場合のパターン幅は、細線化が進んでいる現状では、被転写物上で、通常品で100nm未満、先端品では20nm未満となっている、これに対応するためのフォトマスク上のメインパターンの最小幅は、100nm程度であり、また、OPCが複雑化しているため、補助パターンにあっては、100nm未満(例えば、70nm程度)にも及んでいる。
【0010】
ところで、フォトレジスト膜のパターンをエッチングマスクとしてパターンニングを行う場合の遮光性膜の材料については、多くの材料が提案されてきた。特に、クロム単体膜、又はクロムを含有し、かつ窒素、酸素及び炭素の少なくとも1つを含有するクロム化合物膜は、一般的な遮光性膜の材料として用いられている。例えば、特開2003-195479号公報(特許文献1)、特開2003-195483号公報(特許文献2)及び登録実用新案第3093632号公報(特許文献3)には、ArFエキシマレーザ露光用のフォトマスクブランクに求められる遮光特性を有する遮光性膜を、クロム化合物膜で形成したフォトマスクブランクの構成例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2003-195479号公報
【文献】特開2003-195483号公報
【文献】登録実用新案第3093632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
クロム含有膜のマスクパターンを有するフォトマスクを用い、フォトリソグラフィにより、微細なパターンを高い寸法精度で正確に転写するためには、クロム含有膜のパターンが良好な断面形状を有することが重要である。特に、クロム含有膜が遮光膜である場合は、露光光に対して、遮光膜として必要な光学濃度を確保する必要があるため、一定以上の膜厚が必要であり、断面形状の垂直性がより重要となる。
【0013】
遮光膜などに用いられるクロム化合物膜などのクロム含有膜は、一般的には、酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターンニングされるが、酸素を含む塩素系ドライエッチングは、等方性が強いドライエッチングである。また、クロム化合物膜の組成によりエッチングレートが異なるため、サイドエッチング量は、クロム化合物膜の組成に依存するが、特に、クロム化合物膜は、基板の膜厚方向にエッチングと共に、基板面と平行なクロム含有膜の膜面方向にもエッチングが進行するため、サイドエッチングされやすい。例えば、組成が膜厚方向に均一なクロム化合物膜では、クロム化合物膜の表面から、膜厚方向にエッチングが進むにつれて、膜面方向にもエッチングが進むため、エッチング終了後に得られたクロム化合物膜のパターンの断面形状が、膜厚方向の中央部付近で括れた形状や、テーパー形状になりやすい。
【0014】
遮光膜に用いられるクロム含有膜では、反射防止層と遮光層とを含む多層となっていることも一般的だが、多層構成のクロム含有膜の場合、各々の層が、クロム層及びクロム化合物層から選ばれる組成の異なる層で構成されており、組成の違いにより、エッチングレートが異なる。そのため、クロム含有膜の膜面方向に進行するエッチングの程度が各々の層で異なるため、サイドエッチング量に差が生じやすく、各々の層でのサイドエッチング量が異なると、エッチング終了後に得られたクロム化合物の膜のパターンの断面形状が不連続となる。このような場合、パターン幅がパターンの厚さ方向に沿って異なる形状、例えば、パターン幅がパターンの厚さ方向中央部で狭い又は広い形状や、パターン幅がパターンの厚さ方向上部又は下部で広いT字型又は逆T字型形状の縦断面形状となり、形状不良を引き起こしやすい。
【0015】
クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、下層の膜、例えば、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料又は遷移金属及びケイ素を含有する材料からなる膜や、透明基板などをパターンニングすると、設計寸法と、エッチングされる膜や透明基板のパターンとの寸法乖離が大きくなるなど、パターン転写性能の悪化につながるという問題もある。
【0016】
更に、近年、ハーフピッチが20nm以下、更には10nm以下のパターンを形成する、微細化が更に進んだ新しい世代の技術が求められているが、このようなハーフピッチサイズでは、寸法精度に対する許容量が数nm程度以下となっており、上述したような、サイドエッチングにより断面形状の垂直性が得られない従来のクロム化合物膜では、微細化が更に進んだクロム化合物膜のパターンに要求される寸法精度、例えば、クロム化合物膜のパターンの面内の寸法均一性に対応できないことが問題となっている。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、新しい世代のフォトリソグラフィ技術に対応する、微細で、かつ断面形状が良好なフォトマスクパターンを高精度で形成できるクロム含有膜を備えるフォトマスクブランク、及びこのようなフォトマスクブランクを用いたフォトマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、クロム含有膜を、
(1)クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ上記透明基板に向かって、クロム含有率が増加し、炭素含有率が減少している領域(A)のみから、
(2)上記領域(A)と、上記領域(A)の上記透明基板側又は上記透明基板から離間する側に接して形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に一定である領域(B)とから、又は
(3)上記領域(A)又は上記領域(A)及び(B)と、クロム含有膜の上記透明基板から最も離間する側に形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ上記透明基板に向かって、酸素含有率が減少している領域(C)とから
なるように構成することにより、クロム含有膜のエッチング後のマスクパターンの断面形状の垂直性が高くなり、より微細なフォトマスクパターンを形成する場合にあっても、クロム含有膜のフォトマスクパターンを高精度で形成できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0019】
従って、本発明は、以下のフォトマスクブランク、及びフォトマスクの製造方法を提供する。
請求項1:
波長が250nm以下の露光光でパターン転写が行われるフォトマスクの素材となるフォトマスクブランクであって、
該フォトマスクブランクが、透明基板と、透明基板上に直接又は光学膜を介して形成された、酸素を含む塩素系ドライエッチングでエッチングされるクロム含有膜とを含み、
該クロム含有膜が、
(3)クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、窒素含有率が10at%以下であり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ上記透明基板に向かって、クロム含有率が増加し、炭素含有率が減少している領域(A)又は上記領域(A)及び上記領域(A)の上記透明基板側又は上記透明基板から離間する側に接して形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に一定である領域(B)と、クロム含有膜の上記透明基板から最も離間する側に形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ上記透明基板に向かって、酸素含有率が減少している領域(C)とから
なることを特徴とするフォトマスクブランク。
請求項2:
波長が250nm以下の露光光でパターン転写が行われるフォトマスクの素材となるフォトマスクブランクであって、
該フォトマスクブランクが、透明基板と、透明基板上に直接又は光学膜を介して形成された、酸素を含む塩素系ドライエッチングでエッチングされるクロム含有膜とを含み、
該クロム含有膜が、
(3)クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ上記透明基板に向かって、クロム含有率が増加し、炭素含有率が減少している領域(A)及び上記領域(A)の上記透明基板側又は上記透明基板から離間する側に接して形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、窒素含有率が10at%以下であり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に一定である領域(B)と、クロム含有膜の上記透明基板から最も離間する側に形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ上記透明基板に向かって、酸素含有率が減少している領域(C)とから
なることを特徴とするフォトマスクブランク。
請求項3:
上記領域(A)におけるクロム含有率(at%)の最大値と最小値の差が3以上であり、上記領域(A)又は上記領域(A)及び(B)のクロム含有率が45at%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスクブランク。
請求項4:
上記領域(A)における炭素含有率(at%)の最大値と最小値の差が5以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項5:
上記領域(A)を構成するクロム化合物が、更に窒素を含有し、上記領域(A)が、上記透明基板に向かって、窒素含有率が増加していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項6:
上記クロム含有膜の膜厚が50nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項7:
上記クロム含有膜の露光光に対する光学濃度が1.5以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項8:
上記クロム含有膜が、上記光学膜を介して形成されており、上記光学膜が、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料又は遷移金属及びケイ素を含有する材料からなる位相シフト膜を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項9:
上記クロム含有膜及び位相シフト膜の露光光に対する光学濃度の合計が2.5以上であることを特徴とする請求項8記載のフォトマスクブランク。
請求項10:
上記クロム含有膜上に、ケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項11:
上記領域(C)の厚さが、クロム含有膜全体の10%以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項12:
上記領域(C)の厚さが5nm未満であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項13:
請求項1乃至12のいずれか1項記載のフォトマスクブランクの上記クロム含有膜を、酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターンニングする工程を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のフォトマスクブランクのクロム含有膜は、酸素を含む塩素系ドライエッチングにより良好な断面形状が得られることから、本発明のフォトマスクブランクを用いれば、微細なフォトマスクパターンを高精度に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のフォトマスクブランクの第1の態様の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明のフォトマスクブランクの第2の態様の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明のフォトマスクブランクの第3の態様の一例を示す断面図である。
【
図4】(A)は、実施例1におけるクロム含有膜の膜厚方向に沿った組成分布を示すグラフであり、(B)実施例1におけるクロム含有膜のパターンの断面のSEM像である。
【
図5】(A)は、実施例2におけるクロム含有膜の膜厚方向に沿った組成分布を示すグラフであり、(B)実施例2におけるクロム含有膜のパターンの断面のSEM像である。
【
図6】(A)は、実施例3におけるクロム含有膜の膜厚方向に沿った組成分布を示すグラフであり、(B)実施例3におけるクロム含有膜のパターンの断面のSEM像である。
【
図7】(A)は、実施例4におけるクロム含有膜の膜厚方向に沿った組成分布を示すグラフであり、(B)実施例4におけるクロム含有膜のパターンの断面のSEM像である。
【
図8】(A)は、比較例1におけるクロム含有膜の膜厚方向に沿った組成分布を示すグラフであり、(B)比較例1におけるクロム含有膜のパターンの断面のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のフォトマスクブランクは、波長が250nm以下、特に200nm以下の露光光、例えば、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)などでパターン転写が行われるフォトマスクを製造するための素材として好適に用いられ、露光光でパターン転写が行われるフォトマスクの素材となるフォトマスクブランクである。
【0023】
本発明のフォトマスクブランクは、透明基板と、クロム含有膜とを含む。クロム含有膜は、透明基板上に、直接形成されていても、1又は2以上の光学膜を介して形成されていてもよい。透明基板としては、基板の種類や基板サイズに特に制限はないが、露光波長として用いる波長で透明である石英基板などが適用され、例えば、SEMI規格において規定されている、6インチ角、厚さ0.25インチの6025基板と呼ばれる透明基板が好適である。6025基板は、SI単位系を用いた場合、通常、152mm角、厚さ6.35mmの透明基板と表記される。
【0024】
本発明のクロム含有膜は、酸素を含む塩素系ドライエッチング(酸素ガスと塩素ガスとを含むエッチングガスを用いたドライエッチング)でエッチングされる材料であり、クロムと酸素と炭素を含有するクロム化合物で構成される。クロム含有膜を構成するクロム化合物は、クロム含有膜全体として、クロムと酸素と炭素との他に窒素を含んでいてもよく、更に水素、ハロゲン等の他の軽元素、アルゴンなどを含んでいてもよい。クロム化合物として具体的には、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム酸化炭化窒化物(CrOCN)などが挙げられる。
【0025】
このクロム含有膜には、以下の(1)~(3)の3種の態様が含まれる。
(1)クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ透明基板に向かって、クロム含有率が増加し、炭素含有率が減少している領域(A)のみからなるもの。
(2)領域(A)と、領域(A)の透明基板側又は透明基板から離間する側に接して形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に一定である領域(B)とからなるもの。
(3)領域(A)又は領域(A)及び(B)と、クロム含有膜の透明基板から最も離間する側に形成され、クロムと酸素と炭素とを含有するクロム化合物からなり、含有元素の各々の含有率が厚さ方向に連続的に変化し、かつ透明基板に向かって、酸素含有率が減少している領域(C)とからなるもの。
【0026】
ドライエッチングにおけるパターンとスペースの形状は、以下のように考えることができる。ドライエッチングを実施すると、原理的に考えれば、膜質が均一でも透明基板側においてスペース幅が狭くなる台形となる。この理由は、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとしてエッチングした場合、レジスト膜のパターンもゆっくりとエッチングされてしまい、スペースとなる幅が徐々に拡がっていくためである。また、ハードマスク膜のような、レジスト膜と比べてエッチングされにくい膜をエッチングマスクとしてエッチングした場合であっても、エッチング時間に応じてサイドエッチングが進むため、透明基板側ほどスペース幅が狭くなる。
【0027】
ところが、実際のエッチングにおいては、透明基板の基板面(膜が形成される面)に垂直な方向(被エッチング膜の膜厚方向)のエッチング速度と、透明基板の基板面に水平な方向(被エッチング膜の膜面方向)のエッチング速度は、必ずしも一致しない。特に、レジスト膜や、ハードマスク膜などに接する部分、特にハードマスク膜に接する部分においては、水平方向へのエッチングに寄与するエッチャントに比べて、垂直方向へのエッチングに寄与するエッチャントの方が多くなってしまうため、サイドエッチング量が少なくなる。この傾向は、レジスト膜や、ハードマスク膜により近いほど顕著である。そのため、このような場合、エッチング終了後に得られた膜のパターンの断面形状は、単純な台形ではなく、膜厚方向の中央部付近で括れた形状となる。
【0028】
従って、レジスト膜や、ハードマスク膜などに接する部分においては、レジスト膜や、ハードマスク膜により近いほど、透明基板の基板面に垂直な方向のエッチング速度に対して、透明基板の基板面に水平な方向のエッチング速度の比率が高くなるように、被エッチング膜を構成することが有効である。
【0029】
本発明においては、クロム含有膜を、上述した態様(1)、(2)又は(3)のように構成することで、ドライエッチング、特に、ドライエッチングを行う対象基板(フォトマスクブランク)にバイアス電圧を印加するドライエッチングを用いてクロム含有膜のパターンを形成する場合に、クロム含有膜のパターンの断面形状をより垂直に形成することができる。
【0030】
領域(A)~(C)を構成するクロム化合物は、個々に、クロムと酸素と炭素との他に窒素を含んでいてもよく、更に水素、ハロゲン等の他の軽元素、アルゴンなどを含んでいてもよい。クロム化合物として具体的には、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム酸化炭化窒化物(CrOCN)などが挙げられる。
【0031】
領域(A)において、クロム含有率(at%)の最大値と最小値の差は3以上であることが好ましい。この差の上限は、通常25以下であり、好ましくは20以下である。また、領域(A)において、炭素含有率(at%)の最大値と最小値の差は5以上、特に7以上であることが好ましい。この差の上限は、通常25以下であり、好ましくは20以下である。
【0032】
領域(A)のクロム含有率は、最も低い部分で45at%以上、特に55at%以上であることが好ましく、最も高い部分で80at%以下、特に75at%以下であることが好ましい。領域(A)の酸素含有率は、最も低い部分で7at%以上、特に10at%以上であることが好ましく、最も高い部分で40at%以下、特に35at%以下であることが好ましい。領域(A)の炭素含有率は、最も低い部分で1at%以上、特に3at%以上であることが好ましく、最も高い部分で25at%以下、特に22at%以下であることが好ましい。領域(A)を構成するクロム化合物は、更に窒素を含有していてもよい。窒素を含有している場合、窒素含有率が厚さ方向に連続的に変化し、透明基板に向かって、窒素含有率が増加していることが好ましい。この場合、窒素含有率(at%)の最大値と最小値の差は1以上、特に2以上であることが好ましい。この差の上限は、通常20以下であり、好ましくは15以下である。また、領域(A)の窒素含有率は、最も低い部分で1at%以上であることが好ましく、最も高い部分で25at%以下、特にサイドエッチング量を低減したいときには、10at%以下、更には5at%以下であることが好ましい。
【0033】
領域(A)の厚さは、クロム含有膜全体の30%以上、特に50%以上、とりわけ70%以上であることが好ましい。
【0034】
領域(B)は、透明基板側のみに形成されていても、透明基板から離間する側に形成されていても、双方の側に形成されていてもよいが、透明基板から離間する側のみに形成されていることがより好ましい。
【0035】
領域(B)のクロム含有率は、45at%以上、特に50at%以上であることが好ましく、70at%以下、特に65at%以下であることが好ましい。領域(B)の酸素含有率は、10at%以上、特に15at%以上であることが好ましく、30at%以下、特に25at%以下であることが好ましい。領域(B)の炭素含有率は、10at%以上、特に15at%以上であることが好ましく、30at%以下、特に25at%以下であることが好ましい。領域(B)を構成するクロム化合物は、更に窒素を含有していてもよい。窒素を含有している場合、領域(B)の窒素含有率は、1at%以上、特に2at%以上であることが好ましく、25at%以下、特にサイドエッチング量を低減したいときには、10at%以下、更には5at%以下であることが好ましい。
【0036】
領域(B)の厚さ(透明基板側及び透明基板から離間する側の双方に形成されている場合は合計の厚さ)は、(C)領域を含まない場合は、クロム含有膜の領域(A)以外の残部であり、(C)領域を含む場合は、クロム含有膜の領域(A)及び(C)以外の残部である。
【0037】
領域(C)は、クロム含有膜の透明基板から離間する側の表面部が自然酸化、熱処理、洗浄などによって酸化されることにより形成された領域とすることができる。領域(C)において、酸素含有率(at%)の最大値と最小値の差は10以上、特に15以上であることが好ましい。この差の上限は、通常50以下であり、好ましくは45以下である。
【0038】
領域(C)のクロム含有率は、最も低い部分で25at%以上、特に30at%以上であることが好ましく、最も高い部分で80at%以下、特に75at%以下であることが好ましい。領域(C)の酸素含有率は、最も低い部分で5at%以上、特に10at%以上であることが好ましく、最も高い部分で40at%以下、特に35at%以下であることが好ましい。領域(C)の炭素含有率は、最も低い部分で1at%以上、特に2at%以上であることが好ましく、最も高い部分で30at%以下、特に25at%以下であることが好ましい。領域(C)を構成するクロム化合物は、更に窒素を含有していてもよい。この場合、領域(C)の窒素含有率は、最も低い部分で1at%以上、特に2at%以上であることが好ましく、最も高い部分で20at%以下、特にサイドエッチング量を低減したいときには、10at%以下、更には5at%以下であることが好ましい。
【0039】
領域(C)の厚さは、クロム含有膜全体の30%以下、特に10%以下、とりわけ8%以下であることが好ましい。具体的には、5nm未満であることが好ましく、より好ましくは4nm以下、さらに好ましくは3nm以下である。
【0040】
クロム含有膜の膜厚(全体の厚さ)は50nm以下、特に48nm以下であることが好ましく、35nm以上、特に40nm以上であることが好ましい。また、クロム含有膜の露光光に対する光学濃度は1.5以上、特に1.8以上であることが好ましい。更に、クロム含有膜のシート抵抗は、10,000Ω/□以下、特に8,000Ω/□以下であることが好ましい。このようにすることで、レジスト膜のパターンを電子線描画により形成する際のチャージアップを防止することができる。
【0041】
本発明のクロム含有膜は、いずれの機能を有する膜でもよく、例えば、遮光膜、反射防止膜、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜などの光学膜でも、ハードマスク膜(エッチングマスク膜)、エッチングストッパ膜などの加工補助膜でもよい。また、光学膜には、フォトマスクとした後に、フォトマスク上に残して光学膜として機能させる膜であれば、ハードマスク膜やエッチングストッパ膜などとして機能する加工補助膜も含まれる。なお、本発明において、エッチングストッパ膜は、通常、フォトマスクとしたときに、フォトマスクに残存する膜であるが、ハードマスク膜は、フォトマスクとしたときに、フォトマスクに残存させる膜であっても、フォトマスクから完全に除去される膜、いわゆる犠牲膜であってもよい。
【0042】
クロム含有膜が、遮光膜などの光学機能を有する膜である場合や、ハードマスク膜である場合、その光学機能と共に、高解像性と高パターン転写精度とが求められるが、本発明のクロム含有膜からは、光学濃度などの光学機能を満たし、酸素を含む塩素系ドライエッチングにおいて高いエッチング速度を有し、かつ厚さ方向に線幅変動の少ない優れた断面形状を有するマスクパターンを得ることができる。
【0043】
本発明のフォトマスクブランクは、クロム含有膜が、フォトマスクに加工する過程において、化学増幅型レジスト等のフォトレジスト膜のマスクパターンをエッチングマスクとして、酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターン形成されるフォトマスクブランクとして好適である。
【0044】
このようなフォトマスクブランクとしては、例えば、透明基板上に直接クロム含有膜が形成されているもの(第1の態様)を挙げることができる。
図1は、本発明のフォトマスクブランクの第1の態様の一例を示す断面図である。このフォトマスクブランク101は、透明基板1上にクロム含有膜2が形成されている。このフォトマスクブランク101をフォトマスクに加工する際には、通常、クロム含有膜2の上に電子線レジスト膜を形成して、電子線描画が施される。第1の態様のフォトマスクブランクは、バイナリマスクブランクとすることができ、その場合、クロム含有膜を、遮光膜とすることが好適である。
【0045】
第1の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜の場合、露光光に対するクロム含有膜の光学濃度は2.5以上、特に2.8以上で、3.5以下、特に3.2以下であることが好ましい。また、第1の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜の場合、クロム含有膜の膜厚は、露光光がArFエキシマレーザの場合は75nm以下、特に70nm以下、とりわけ65nm以下であることが好ましく、50nm以上であることが好ましい。また、露光光がKrFエキシマレーザの場合は、90nm以下、特に80nm以下、とりわけ75nm以下であることが好ましく、55nm以上であることが好ましい。
【0046】
クロム含有膜が、フォトマスクに加工する過程において、化学増幅型レジスト等のフォトレジスト膜のマスクパターンをエッチングマスクとして、酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターン形成されるフォトマスクブランクとしては、透明基板上に、1又は2以上の光学膜を介してクロム含有膜が形成されているもの(第2の態様)も好適である。このようなフォトマスクブランクは、例えば、クロム含有膜のパターンが、光学膜のエッチングにおいてハードマスクとして機能する場合、本発明のクロム含有膜から高精度のパターンが形成でき、クロム含有膜のパターンを用いた光学膜のパターンニングにおいても、高精度なパターン形成が可能となることから、特に有利である。この場合のクロム含有膜と光学膜との組み合わせには、遮光膜と、ハーフトーン位相シフト膜などの位相シフト膜との組み合わせや、ハードマスク膜と遮光膜との組み合わせなどが挙げられる。
【0047】
図2は、本発明のフォトマスクブランクの第2の態様の一例を示す断面図である。このフォトマスクブランク102は、透明基板1上に、透明基板1側から、光学膜3及びクロム含有膜2が順に積層されている。このフォトマスクブランク102をフォトマスクに加工する際には、通常、クロム含有膜2の上に電子線レジスト膜を形成して、電子線描画が施される。第2の態様のフォトマスクブランクは、位相シフトマスクブランクとすることができ、その場合、光学膜を位相シフト膜、クロム含有膜を、遮光膜とすることが好適である。
【0048】
本発明のフォトマスクブランクは、クロム含有膜が、フォトマスクに加工する過程において、ハードマスク膜のマスクパターンをエッチングマスクとして、酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターン形成されるフォトマスクブランクとしても好適である。このようなフォトマスクブランクとしては、クロム含有膜上、具体的には、クロム含有膜の透明基板から離間する側に、好ましくはクロム含有膜と接して形成されたハードマスク膜を含むもの(第3の態様)を挙げることができる。
【0049】
図3は、本発明のフォトマスクブランクの第3の態様の一例を示す断面図である。このフォトマスクブランク103は、透明基板1上に、透明基板1側から、光学膜3、クロム含有膜2及びハードマスク膜4が順に積層されている。このフォトマスクブランク103をフォトマスクに加工する際には、通常、ハードマスク膜4の上に電子線レジスト膜を形成して、電子線描画が施される。第3の態様のフォトマスクブランクは、位相シフトマスクブランクとすることができ、その場合、光学膜を位相シフト膜、クロム含有膜を遮光膜とすることが好適である。
【0050】
第3の態様のフォトマスクブランクのように、クロム含有膜のエッチングにおけるエッチングマスクとなるハードマスク膜を設けることで、フォトレジスト膜を薄くすることができ、パターンの更なる微細化に対応することが可能となる。このハードマスク膜は、通常、クロム含有膜の犠牲膜として用いられ、その場合、フォトマスクを作製するプロセスの中で完全に除去されるが、ハードマスク膜は、フォトマスクを作製するプロセスの中で完全に除去せずに、その一部を残すこともできる。
【0051】
クロム含有膜が、透明基板上に光学膜(クロム含有膜とは、同種の光学膜であっても異種の光学膜であってもよい。)を介して形成されている場合、この光学膜は、いずれの機能を有する膜でもよく、例えば、遮光膜、反射防止膜、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜などが挙げられる。また、光学膜には、フォトマスクとした後に、フォトマスク上に残して光学膜として機能させる膜であれば、エッチングストッパ膜やハードマスク膜などとして機能する加工補助膜も含まれる。
【0052】
透明基板とクロム含有膜との間に形成される光学膜を構成する材料は、必要とする光学特性やエッチング特性、更には、導電性等の電気特性に応じて、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などの遷移金属、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)などの金属、それらの合金、それら金属又は合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物等の化合物などの材料が用いられる。これらの金属のなかでは、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ケイ素(Si)が、特に好適に用いられる。
【0053】
第2の態様のフォトマスクブランクにおいて、光学膜がハーフトーン位相シフト膜などの位相シフト膜である場合、位相シフト膜は、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料、又はケイ素と、遷移金属、好ましくはクロム以外の遷移金属、特にモリブデンとを含有する材料で形成された位相シフト膜が好適である。このような材料としては、ケイ素単体、ケイ素と、酸素、窒素、炭素などの軽元素、特に、酸素及び窒素の一方又は双方とを含む化合物、更に、これらに遷移金属、好ましくはクロム以外の遷移金属、例えば、モリブデン、タンタル、タングステン、ジルコニウム、チタンなど、特にモリブデンを添加した化合物が好適である。特に、位相シフト膜がハーフトーン位相シフト膜である場合、ハーフトーン位相シフト膜も光学濃度を有するため、ハーフトーン位相シフト膜を用いないフォトマスクブランクと比べて、クロム含有膜の膜厚を薄くすることができる。
【0054】
また、第2の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜、光学膜がハーフトーン位相シフト膜の場合、露光光に対するクロム含有膜の光学濃度は1.5以上、特に1.8以上で、2.6以下、特に2.5以下、とりわけ2.4以下であることが好ましく、クロム含有膜及び位相シフト膜の露光光に対する光学濃度の合計は2.5以上、特に2.8以上で、3.5以下、特に3.2以下であることが好ましい。クロム含有膜及びハーフトーン位相シフト膜の光学濃度をこのようにすることにより、必要な遮光性が得られる。
【0055】
更に、第2の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜、光学膜がハーフトーン位相シフト膜の場合、クロム含有膜の膜厚は、露光光がArFエキシマレーザの場合は60nm以下、特に50nm以下、更に47nm以下、とりわけ44nm以下であることが好ましく、35nm以上であることが好ましい。また、露光光がKrFエキシマレーザの場合は、80nm以下、特に70nm以下、とりわけ65nm以下であることが好ましく、50nm以上であることが好ましい。
【0056】
一方、ハーフトーン位相シフト膜は、露光光に対する透過率が、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上、特に好ましくは11%以上で、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下に設定される。ハーフトーン位相シフト膜の膜厚は、露光光がArFエキシマレーザの場合は80nm以下、特に70nm以下であることが好ましく、50nm以上、特に60nm以上であることが好ましい。また、露光光がKrFエキシマレーザの場合は、110nm以下、特に100nm以下であることが好ましく、70nm以上、特に80nm以上であることが好ましい。
【0057】
第2の態様のフォトマスクブランクの場合、他の例として、フォトマスクブランクをバイナリマスクブランクとすることもでき、その場合、光学膜を遮光膜、クロム含有膜を、ハードマスク膜とすることが好適である。
【0058】
波長が250nm以下の露光光でパターン転写が行われるフォトマスクを製造するためのフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が用いられるが、クロム含有膜を、抵抗率が低く、導電性が高いものとする場合は、金属性が高いクロム含有膜が好適である。一方、金属性が低いクロム含有膜は、クロム含有膜の光学特性やエッチング特性の調整における効果が高い。また、金属性が低いクロム含有膜は、透過率の向上に効果的である。金属性が高いクロム含有膜では、反射率が高い膜となり、フォトマスクブランクやフォトマスクの欠陥検査などにおいて不利となる場合があるが、金属性が低いクロム含有膜は、このような場合に適用される反射防止膜としても好適である。
【0059】
第2の態様のフォトマスクブランクにおいて、光学膜が遮光膜である場合、遮光膜は、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料、又はケイ素と、遷移金属、好ましくはクロム以外の遷移金属、特にモリブデンとを含有する材料で形成された遮光膜が好適である。このような材料としては、上述した位相シフト膜の材料として例示したものと同様の材料が挙げられる。
【0060】
また、第2の態様のフォトマスクブランクにおいて、光学膜が遮光膜である場合、遮光膜は露光光に対する光学濃度が、通常2.5以上、特に2.8以上で、3.5以下、特に3.2以下に設定されるが、遮光膜の膜厚は、露光光がArFエキシマレーザの場合は80nm以下、特に70nm以下、とりわけ65nm以下であることが好ましく、50nm以上、特に55nm以上であることが好ましい。また、露光光がKrFエキシマレーザの場合は、100nm以下、特に90nm以下、とりわけ80nm以下であることが好ましく、55nm以上、特に60nm以上であることが好ましい。一方、クロム含有膜がハードマスク膜の場合、クロム含有膜の膜厚は3nm以上、特に5nm以上であればよく、20nm以下、特に10nm以下であることが好ましい。
【0061】
一方、第3の態様のフォトマスクブランクにおいて、ハードマスク膜の材料としては、例えば、フッ素系ドライエッチングで速やかにエッチングされ、酸素を含む塩素系ドライエッチングではエッチング速度が極端に遅い材料、即ち、実質的にエッチングされない材料が用いられる。このような材料としては、ケイ素を含有する材料が好適であり、例えば、ケイ素単体、ケイ素と、酸素、窒素、炭素などの軽元素を含む化合物、更に、これらに、遷移金属、好ましくはクロム以外の遷移金属、例えば、モリブデン、タンタル、タングステン、ジルコニウム、チタンなどを添加した化合物が好適である。
【0062】
第3の態様のフォトマスクブランクにおいて、光学膜がハーフトーン位相シフト膜などの位相シフト膜である場合、位相シフト膜は、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料、又はケイ素と、遷移金属、好ましくはクロム以外の遷移金属、特にモリブデンとを含有する材料で形成された位相シフト膜が好適である。このような材料としては、第2の態様のフォトマスクブランクにおいて例示したものと同様の材料が挙げられる。特に、位相シフト膜がハーフトーン位相シフト膜である場合、ハーフトーン位相シフト膜も光学濃度を有するため、ハーフトーン位相シフト膜を用いないフォトマスクブランクと比べて、クロム含有膜の膜厚を薄くすることができる。
【0063】
また、第3の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜、光学膜がハーフトーン位相シフト膜の場合、露光光に対するクロム含有膜の光学濃度、クロム含有膜及び位相シフト膜の露光光に対する光学濃度の合計、クロム含有膜の膜厚、ハーフトーン位相シフト膜の透過率、及びハーフトーン位相シフト膜の膜厚は、上述した第2の態様と同様の範囲が好適である。
【0064】
更に、第3の態様のフォトマスクブランクにおいて、クロム含有膜が遮光膜、光学膜がハーフトーン位相シフト膜であり、ハードマスク膜が、フォトマスクを作製するプロセスの中で、完全に除去せずに、その一部を残す膜、即ち、フォトマスク上に残して光学膜として機能させる膜である場合は、露光光に対するクロム含有膜、位相シフト膜及びハードマスク膜の露光光に対する光学濃度の合計は2.5以上、特に2.8以上で、3.5以下、特に3.2以下であることが特に好ましい。一方、ハードマスク膜の膜厚は3nm以上、特に5nm以上であればよく、15nm以下、特に10nm以下であることが好ましい。
【0065】
なお、本発明のフォトマスクブランクは、クロム含有膜の透明基板から離間する側に、好ましくはクロム含有膜に接して、他の光学膜を設けたものであってもよい。この他の光学膜としては、例えば、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料又は遷移金属及びケイ素を含有する材料からなる遮光膜が好適である。このような遮光膜を設けた場合、クロム含有膜を、エッチングストッパ膜や、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜とすることができる。
【0066】
本発明のフォトマスクブランクのクロム含有膜、光学膜、加工補助膜は、光学特性の面内の均一性が高く、かつ欠陥が少ない膜を得ることができるスパッタリングにより成膜することが好ましい。
【0067】
クロム含有膜を成膜する場合は、例えば、ターゲットとして、クロムターゲットを用い、スパッタリングガスとして、酸素ガス(O2)、酸化炭素ガス(CO、CO2)、炭化水素ガス(例えばCH4など)、窒素ガス(N2)、酸化窒素ガス(N2O,NO2)などの反応性ガスから所望の構成元素に応じて選択して用い、反応性ガスと共に、必要に応じて、アルゴンガス(Ar)などの希ガスを併用して、スパッタリングガスをスパッタリング真空槽(スパッタリングチャンバ)に供給し、クロム含有膜を所定の傾斜組成又は均一組成となるように、ターゲットに印加する電力、及びスパッタリングガスの導入量を調整し、必要に応じて変更しながら成膜すればよい。
【0068】
一方、ケイ素を含有し遷移金属を含有しない材料又は遷移金属及びケイ素を含有する材料からなる位相シフト膜や遮光膜を成膜する場合や、ケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜を成膜する場合は、例えば、ターゲットとして、ケイ素ターゲット、遷移金属ターゲット、遷移金属ケイ素ターゲットなどから所望の構成元素に応じて選択して用い、スパッタリングガスとして、酸素ガス(O2)、窒素ガス(N2)、酸化窒素ガス(N2O,NO2)、酸化炭素ガス(CO、CO2)、炭化水素ガス(例えばCH4など)などの反応性ガスから所望の構成元素に応じて選択して用い、反応性ガスと共に、必要に応じて、アルゴンガス(Ar)などの希ガスを併用し、スパッタリングガスをスパッタリング真空槽に供給し、所望の組成となるように、ターゲットに印加する電力、及びスパッタリングガスの導入量を調整し、必要に応じて変更しながら成膜すればよい。
【0069】
本発明のフォトマスクブランクからは、常法に従ってフォトマスクを製造することができる。例えば、フォトマスクブランク上に、化学増幅型などのレジスト膜を形成し、これに電子線によりパターンを描画して、得られたレジスト膜のパターンを、最初のエッチングマスクとして、その下方のクロム含有膜、位相シフト膜、遮光膜などの光学膜、ハードマスク膜、エッチングストッパ膜などの加工補助膜や透明基板を、それらの材質に応じて、酸素を含む塩素系ドライエッチングやフッ素系ドライエッチングから選択して順次エッチングして、フォトマスクパターンを形成することにより、フォトマスクを得ることができる。従って、本発明のフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する際には、クロム含有膜を、酸素を含む塩素系ドライエッチングによりパターンニングする工程が含まれる。なお、レジスト膜上には、有機導電性膜を設けてもよく、これにより電子線描画の際のチャージアップを更に抑制することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0071】
[実施例1]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を2,000W、アルゴンガス流量を15sccm、窒素ガス流量を50sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
【0072】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び二酸化炭素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccmで一定とし、二酸化炭素ガス流量を、放電開始時は5sccmとし、320秒後に15sccmとなるように、増加率を一定として流量を増加させて放電を終了して、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
【0073】
クロム含有膜の膜厚は44nmであり、膜厚方向の組成をXPSで表面側から分析した結果、基板から離間している側の表面部は自然酸化されており、クロム含有膜全体の1/10程度の膜厚の範囲で、透明基板と離間する表面から透明基板側に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=40:50:10(原子比)からCr:O:C=60:20:20(原子比)に連続的に変化する領域(C)が形成されていた。また、クロム含有膜の領域(C)より透明基板側の残りの範囲で、透明基板と離間する側から透明基板と接する界面に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=60:20:20(原子比)からCr:O:C=80:10:10(原子比)に連続的に変化する領域(A)が形成されていた。組成分析の結果を
図4(A)に示す。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.43%(光学濃度ODは2.37)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.09である。
【0074】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を50sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO2膜をスパッタリングにより成膜して、フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
【0075】
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
【0076】
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。パターンのSEMによる断面観察から、得られたクロム含有膜のハーフトーン位相シフト膜と接する面(水平面)に対する角度は約80°であることが確認された。クロム含有膜のパターンの断面観察像を
図4(B)に示す。
【0077】
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
【0078】
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの予定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
【0079】
得られたハーフトーン位相シフトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜のパターン寸法は、ハードマスクとしたクロム含有膜のパターンの側壁が垂直に近く、レジスト膜のパターン寸法からのエッチングバイアスを考慮することで、設計寸法からのずれが少なく、面内均一性の高いハーフトーン位相シフトマスクが得られることがわかった。
【0080】
[実施例2]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を2,000W、アルゴンガス流量を15sccm、窒素ガス流量を50sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
【0081】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び二酸化炭素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccmで一定とし、二酸化炭素ガス流量を、放電開始時は5sccmとし、174秒後に15sccmとなるように、増加率を一定として流量を増加させ、その後、二酸化炭素ガス流量を15sccmで一定として174秒後に放電を終了して、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
【0082】
クロム含有膜の膜厚は45nmであり、膜厚方向の組成をXPSで表面側から分析した結果、基板から離間している側の表面部は自然酸化されており、クロム含有膜全体の1/10程度の膜厚の範囲で、透明基板と離間する表面から透明基板側に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=40:50:10(原子比)からCr:O:C=60:20:20(原子比)に連続的に変化する領域(C)が形成されていた。また、クロム含有膜の領域(C)より透明基板側の範囲は、クロム含有膜の膜厚の透明基板から離間する側の約5/10までの範囲で、膜厚方向に、組成がCr:O:C=60:20:20(原子比)で一定の領域(B)が形成され、領域(B)より透明基板側の残りの範囲で、透明基板と離間する側から透明基板と接する界面に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=60:20:20(原子比)からCr:O:C=80:10:10(原子比)に連続的に変化する領域(A)が形成されていた。組成分析の結果を
図5(A)に示す。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.42%(光学濃度ODは2.38)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.10である。
【0083】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を50sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO2膜をスパッタリングにより成膜して、フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
【0084】
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
【0085】
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。パターンのSEMによる断面観察から、得られたクロム含有膜のハーフトーン位相シフト膜と接する面(水平面)に対する角度は約82°であることが確認された。クロム含有膜のパターンの断面観察像を
図5(B)に示す。
【0086】
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
【0087】
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの予定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
【0088】
得られたハーフトーン位相シフトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜のパターン寸法は、ハードマスクとしたクロム含有膜のパターンの側壁が垂直に近く、レジスト膜のパターン寸法からのエッチングバイアスを考慮することで、設計寸法からのずれが少なく、面内均一性の高いハーフトーン位相シフトマスクが得られることがわかった。
【0089】
[実施例3]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を2,000W、アルゴンガス流量を15sccm、窒素ガス流量を50sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
【0090】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス、窒素ガス及び二酸化炭素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccmで一定とし、窒素ガス及び二酸化炭素ガス流量を、放電開始時は、各々、2sccm及び5sccmとし、174秒後に、各々、0sccm及び15sccmとなるように、窒素ガスは減少率を一定として流量を減少させると同時に、二酸化炭素ガスは増加率を一定として流量を増加させ、その後、窒素ガス流量を0sccm、二酸化炭素ガス流量を15sccmで一定として174秒後に放電を終了して、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
【0091】
クロム含有膜の膜厚は46nmであり、膜厚方向の組成をXPSで表面側から分析した結果、基板から離間している側の表面部は自然酸化されており、クロム含有膜全体の1/10程度の膜厚の範囲で、透明基板と離間する表面から透明基板側に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C:N=40:50:10:0(原子比)からCr:O:C:N=60:20:20:0(原子比)に連続的に変化する領域(C)が形成されていた。また、クロム含有膜の領域(C)より透明基板側の範囲は、クロム含有膜の膜厚の透明基板から離間する側の約5/10までの範囲で、膜厚方向に、組成がCr:O:C:N=60:20:20:0(原子比)で一定の領域(B)が形成され、領域(B)より透明基板側の残りの範囲で、透明基板と離間する側から透明基板と接する界面に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C:N=60:20:20:0(原子比)からCr:O:C:N=75:11:11:3(原子比)に連続的に変化する領域(A)が形成されていた。組成分析の結果を
図6(A)に示す。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.42%(光学濃度ODは2.38)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.10である。
【0092】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を50sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO2膜をスパッタリングにより成膜して、フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
【0093】
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
【0094】
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。パターンのSEMによる断面観察から、得られたクロム含有膜のハーフトーン位相シフト膜と接する面(水平面)に対する角度は約86°であることが確認された。クロム含有膜のパターンの断面観察像を
図6(B)に示す。
【0095】
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
【0096】
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの予定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
【0097】
得られたハーフトーン位相シフトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜のパターン寸法は、ハードマスクとしたクロム含有膜のパターンの側壁が垂直に近く、レジスト膜のパターン寸法からのエッチングバイアスを考慮することで、設計寸法からのずれが少なく、面内均一性の高いハーフトーン位相シフトマスクが得られることがわかった。
【0098】
[実施例4]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を2,000W、アルゴンガス流量を15sccm、窒素ガス流量を50sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
【0099】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス、酸素ガス及び二酸化炭素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccmで一定とし、酸素ガス及び二酸化炭素ガス流量を、放電開始時は、各々、20sccm及び0sccmとし、142秒後に、各々、0sccm及び15sccmとなるように、酸素ガスは減少率を一定として流量を減少させると同時に、二酸化炭素ガスは増加率を一定として流量を増加させ、その後、酸素ガス流量を0sccm、二酸化炭素ガス流量を15sccmで一定として184秒後に放電を終了して、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
【0100】
クロム含有膜の膜厚は48nmであり、膜厚方向の組成をXPSで表面側から分析した結果、基板から離間している側の表面部は自然酸化されており、クロム含有膜全体の1/10程度の膜厚の範囲で、透明基板と離間する表面から透明基板側に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=40:50:10(原子比)からCr:O:C=60:20:20(原子比)に連続的に変化する領域(C)が形成されていた。また、クロム含有膜の領域(C)より透明基板側の範囲は、クロム含有膜の膜厚の透明基板から離間する側の約6/10までの範囲で、膜厚方向に組成がCr:O:C=60:20:20(原子比)で一定の領域(B)が形成され、領域(B)より透明基板側の残りの範囲で、透明基板と離間する側から透明基板と接する界面に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C=60:20:20(原子比)からCr:O:C=65:30:5(原子比)に連続的に変化する領域(A)が形成されていた。組成分析の結果を
図7(A)に示す。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.49%(光学濃度ODは2.31)であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.03である。
【0101】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を50sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO2膜をスパッタリングにより成膜して、フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
【0102】
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
【0103】
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。パターンのSEMによる断面観察から、得られたクロム含有膜のハーフトーン位相シフト膜と接する面(水平面)に対する角度は約90°であることが確認された。クロム含有膜のパターンの断面観察像を
図7(B)に示す。
【0104】
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
【0105】
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの予定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
【0106】
得られたハーフトーン位相シフトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜のパターン寸法は、ハードマスクとしたクロム含有膜のパターンの側壁が垂直に近く、レジスト膜のパターン寸法からのエッチングバイアスを考慮することで、設計寸法からのずれが少なく、面内均一性の高いハーフトーン位相シフトマスクが得られることがわかった。
【0107】
[比較例1]
まず、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び窒素ガスを用い、ターゲットの放電電力を2,000W、アルゴンガス流量を15sccm、窒素ガス流量を50sccmとして、6025石英基板上に、ハーフトーン位相シフト膜として、ArFエキシマレーザ光の波長である193nmでの位相差が177°、透過率が19%(光学濃度ODは0.72)である膜厚60nmのSiN膜(Si:N=47:53(原子比))をスパッタリングにより成膜した。
【0108】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてクロム金属ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス、窒素ガス及び二酸化炭素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を10sccmで一定とし、窒素ガス及び二酸化炭素ガス流量を、放電開始時は、各々、8sccm及び17sccmで一定とし、290秒後に、窒素ガス流量を0sccm、二酸化炭素ガス流量を15sccmで一定として184秒後に放電を終了して、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム含有膜をスパッタリングにより成膜した。
【0109】
クロム含有膜の膜厚は51nmであり、膜厚方向の組成をXPSで表面側から分析した結果、基板から離間している側の表面部は自然酸化されており、クロム含有膜全体の1/10程度の膜厚の範囲で、透明基板と離間する表面から透明基板側に向かって膜厚方向に、組成がCr:O:C:N=40:50:10:0(原子比)からCr:O:C:N=60:20:20:0(原子比)に連続的に変化する領域が形成されていた。また、クロム含有膜の領域より透明基板側の範囲は、クロム含有膜の膜厚の透明基板から離間する側の約4/10までの範囲で、膜厚方向に組成がCr:O:C:N=60:20:20:0(原子比)で一定の領域が形成され、この領域より透明基板側の残りの範囲は、膜厚方向に組成がCr:O:C:N=42:29:15:14(原子比)で一定の領域が形成されており、領域間の組成変化は不連続となっていた。組成分析の結果を
図8(A)に示す。このクロム含有膜の193nmの波長での透過率は0.45%(光学濃度ODは2.35であり、ハーフトーン位相シフト膜とクロム含有膜との合計の光学濃度ODは3.07である。
【0110】
次に、DCスパッタリング装置にて、ターゲットとしてケイ素ターゲット、スパッタリングガスとして、アルゴンガス及び酸素ガスを用い、ターゲットの放電電力を1,000W、アルゴンガス流量を15sccm、酸素ガス流量を50sccmとして、クロム含有膜上に、ハードマスク膜として、膜厚10nmのSiO2膜をスパッタリングにより成膜して、フォトマスクブランク(ハーフトーン位相シフトマスクブランク)を得た。
【0111】
得られたフォトマスクブランクに対して、以下のようにパターンニングを行い、フォトマスクを作製した。まず、ハードマスク膜上に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、線幅200nmのレジスト膜のパターンを形成し、レジスト膜のパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜をエッチングして、ハードマスク膜のパターンを形成した。
【0112】
次に、ハードマスク膜のパターン上に残ったレジスト膜のパターンを、硫酸過水洗浄で除去した後、ハードマスク膜のパターンをエッチングマスクとして、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜をエッチングして、クロム含有膜のパターンを形成した。パターンのSEMによる断面観察から、得られたクロム含有膜のハーフトーン位相シフト膜と接する面(水平面)に対する角度は90°を超えており、クロム含有膜のパターンの断面形状が、膜厚方向の中央部付近で括れており、サイドエッチングが大きいアンダーカット形状であることが確認された。クロム含有膜のパターンの断面観察像を
図8(B)に示す。
【0113】
次に、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターン上のハードマスク膜のパターンを除去すると同時に、クロム含有膜のパターンをエッチングマスクとして、ハーフトーン位相シフト膜をエッチングして、ハーフトーン位相シフト膜のパターンを形成した。
【0114】
次に、電子線用化学増幅型ネガ型フォトレジストを塗布し、電子線描画、現像を行って、クロム含有膜のパターンを除去する部分が露出するようにレジスト膜のパターンを形成し、塩素ガスと酸素ガスを用いたドライエッチングにより、クロム含有膜のパターンの予定の部分を除去して、フォトマスク(ハーフトーン位相シフトマスク)を得た。
【0115】
得られたハーフトーン位相シフトマスクブランクのハーフトーン位相シフト膜のパターン寸法は、ハードマスクとしたクロム含有膜のパターンの側壁に括れが発生しており、レジスト膜のパターン寸法からのエッチングバイアスを考慮しても、設計寸法からずれ易く、面内均一性の高いハーフトーン位相シフトマスクを得ることができないことがわかった。
【0116】
以上、実施例により本発明について説明したが、上記実施例は、本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。この実施例を種々変形することは、本発明の範囲内にあり、更に、本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは、上記記載から自明である。
【符号の説明】
【0117】
1 透明基板
2 クロム含有膜
3 光学膜
4 ハードマスク膜
101、102、103 フォトマスクブランク