(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】接着シート、並びに物品及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20230221BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230221BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20230221BHJP
C09J 5/08 20060101ALI20230221BHJP
C09J 5/06 20060101ALI20230221BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J201/00
C09J11/00
C09J5/08
C09J5/06
B32B27/00 Z
(21)【出願番号】P 2022566677
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2021045257
(87)【国際公開番号】W WO2022131111
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2020207418
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】谷井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】森野 彰規
(72)【発明者】
【氏名】下岡 澄生
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203117(JP,A)
【文献】特開2013-104044(JP,A)
【文献】特開2020-125410(JP,A)
【文献】特開2018-203863(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123615(WO,A1)
【文献】特開平7-238276(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0228033(US,A1)
【文献】特開2017-78814(JP,A)
【文献】特開平5-279640(JP,A)
【文献】特開2017-52950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C08J 9/00- 9/42
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1面及び第2面を有する接着シートであって、
前記第1面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含む熱膨張性熱硬化型接着層Aにより構成され、
前記第2面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含み前記熱膨張性熱硬化型接着層Aとは異なる組成の熱膨張性熱硬化型接着層Bにより構成され、
前記熱膨張性熱硬化型接着層Bは、前記熱膨張性熱硬化型接着層Aの一方の面に直接または他の層を介して積層されており、
前記第1面のせん断接着強度が前記第2面のせん断接着強度よりも高く、
前記第2面のせん断接着強度は、0.5MPa未満であり、
150℃で60分加熱後の前記熱膨張性熱硬化型接着層A及び前記熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率が、それぞれ130%以上である、接着シート。
【請求項2】
前記接着シートの前記第1面のせん断接着強度が0.2MPa以上である、請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
前記熱膨張性熱硬化型接着層Aは、25℃の粘度が300万mPa・sec以下の熱硬化性樹脂を前記熱膨張性熱硬化型接着層Aの全樹脂成分中10質量%以上含む、請求項1
又は2のいずれか1項に記載の接着シート。
【請求項4】
前記熱膨張性熱硬化型接着層Bは、25℃の粘度が300万mPa・sec以下の熱硬化性樹脂を前記硬化型接着層Bの全樹脂成分中40質量%以下含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の接着シート。
【請求項5】
150℃で60分加熱後の前記熱膨張性熱硬化型接着層A及び前記熱膨張性熱硬化型接着層Bのガラス転移温度が、それぞれ80℃以上である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の接着シート。
【請求項6】
対向する第1面及び第2面を有し、
前記第1面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含む熱膨張性熱硬化型接着層Aにより構成され、
前記第2面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含み前記熱膨張性熱硬化型接着層Aとは異なる組成の熱膨張性熱硬化型接着層Bにより構成され、
前記熱膨張性熱硬化型接着層Bは、前記熱膨張性熱硬化型接着層Aの一方の面に直接または他の層を介して積層されており、
前記第1面のせん断接着強度が前記第2面のせん断接着強度よりも高く、
150℃で60分加熱後の前記熱膨張性熱硬化型接着層A及び前記熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率が、それぞれ130%以上である、接着シートを用い、
第1の被着体と第2の被着体とを有し、前記第2の被着体は空隙が形成されており、
前記第1の被着体が前記第2の被着体の前記空隙内に配置されており、
前記空隙内において、前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に、前記接着シートの膨張物が配置されており、
前記第1の被着体及び前記第2の被着体のうち一方が、膨張後の前記熱膨張性熱硬化型接着層Aと接着し、他方が膨張後の前記熱膨張性熱硬化型接着層Bと接着している物品。
【請求項7】
第1の被着体と第2の被着体とを有し、前記第2の被着体は空隙が形成されており、
前記第1の被着体が前記第2の被着体の前記空隙内に配置されており、
前記空隙内において、前記第1の被着体と前記第2の被着体との間に、請求項1~
5のいずれか1項に記載の接着シートの膨張物が配置されており、
前記第1の被着体及び前記第2の被着体のうち一方が、膨張後の前記熱膨張性熱硬化型接着層Aと接着し、他方が膨張後の前記熱膨張性熱硬化型接着層Bと接着している物品。
【請求項8】
対向する第1面及び第2面を有し、
前記第1面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含む熱膨張性熱硬化型接着層Aにより構成され、
前記第2面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含み前記熱膨張性熱硬化型接着層Aとは異なる組成の熱膨張性熱硬化型接着層Bにより構成され、
前記熱膨張性熱硬化型接着層Bは、前記熱膨張性熱硬化型接着層Aの一方の面に直接または他の層を介して積層されており、
前記第1面のせん断接着強度が前記第2面のせん断接着強度よりも高く、
150℃で60分加熱後の前記熱膨張性熱硬化型接着層A及び前記熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率が、それぞれ130%以上である、接着シートを用い、
第1の被着体と第3被着体と第4被着体とを有し、前記第3の被着体及び第4の被着体の間に空隙を有し、
前記第1の被着体が前記空隙内に配置されており、
前記空隙内において、前記第1の被着体と前記第3の被着体との間及び前記第1の被着体と前記第4の被着体との間にそれぞれ前記接着シートの膨張物が配置されており、前記第1の被着体、並び前記第3の被着体及び第4の被着体の少なくとも一方が、膨張後の前記熱膨張性熱硬化型接着層Aと接着し、他方が膨張後の前記熱膨張性熱硬化型接着層Bと接着している物品。
【請求項9】
第1の被着体と第3被着体と第4被着体とを有し、前記第3の被着体及び第4の被着体の間に空隙を有し、
前記第1の被着体が前記空隙内に配置されており、
前記空隙内において、前記第1の被着体と前記第3の被着体との間及び前記第1の被着体と前記第4の被着体との間にそれぞれ請求項1~
5のいずれか1項に記載の接着シートの膨張物が配置されており、前記第1の被着体、並び前記第3の被着体及び第4の被着体の少なくとも一方が、膨張後の前記熱膨張性熱硬化型接着層Aと接着し、他方が膨張後の前記熱膨張性熱硬化型接着層Bと接着している物品。
【請求項10】
対向する第1面及び第2面を有し、
前記第1面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含む熱膨張性熱硬化型接着層Aにより構成され、
前記第2面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含み前記熱膨張性熱硬化型接着層Aとは異なる組成の熱膨張性熱硬化型接着層Bにより構成され、
前記熱膨張性熱硬化型接着層Bは、前記熱膨張性熱硬化型接着層Aの一方の面に直接または他の層を介して積層されており、
前記第1面のせん断接着強度が前記第2面のせん断接着強度よりも高く、
150℃で60分加熱後の前記熱膨張性熱硬化型接着層A及び前記熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率が、それぞれ130%以上である、接着シートを用い、
第1の被着体の表面又は第2の被着体に形成された空隙の表面に前記接着シートの熱膨張性熱硬化型接着層A側の面を貼合する工程[1A]と、
前記空隙内に前記第1の被着体を挿入する工程[2A]と、
前記接着シートを加熱して前記熱膨張性熱硬化型接着層A及び前記熱膨張性熱硬化型接着層Bを膨張及び硬化させて、前記接着シートの膨張物を介して前記第1の被着体と前記第2の被着体とを接着する工程[3A]と、を有する物品の製造方法。
【請求項11】
第1の被着体の表面又は第2の被着体に形成された空隙の表面に請求項1~
5のいずれか1項に記載の接着シートの熱膨張性熱硬化型接着層A側の面を貼合する工程[1A]と、
前記空隙内に前記第1の被着体を挿入する工程[2A]と、
前記接着シートを加熱して前記熱膨張性熱硬化型接着層A及び前記熱膨張性熱硬化型接着層Bを膨張及び硬化させて、前記接着シートの膨張物を介して前記第1の被着体と前記第2の被着体とを接着する工程[3A]と、を有する物品の製造方法。
【請求項12】
対向する第1面及び第2面を有し、
前記第1面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含む熱膨張性熱硬化型接着層Aにより構成され、
前記第2面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含み前記熱膨張性熱硬化型接着層Aとは異なる組成の熱膨張性熱硬化型接着層Bにより構成され、
前記熱膨張性熱硬化型接着層Bは、前記熱膨張性熱硬化型接着層Aの一方の面に直接または他の層を介して積層されており、
前記第1面のせん断接着強度が前記第2面のせん断接着強度よりも高く、
150℃で60分加熱後の前記熱膨張性熱硬化型接着層A及び前記熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率が、それぞれ130%以上である、接着シートを用い、
第1の被着体の表面又は第3の被着体及び第4の被着体により構成される空隙の表面に前記接着シートの熱膨張性熱硬化型接着層A側の面を貼合する工程[1B]と、
前記空隙に、前記第1の被着体を挿入する工程[2B]と、
前記接着シートを加熱して前記熱膨張性熱硬化型接着層A及び前記熱膨張性熱硬化型接着層Bを膨張及び硬化させて、前記接着シートの膨張物を介して前記第1の被着体と前記第3の被着体及び前記第4の被着体とを接着する工程[3B]と、を有する物品の製造方法。
【請求項13】
第1の被着体の表面又は第3の被着体及び第4の被着体により構成される空隙の表面に請求項1~
5のいずれか1項に記載の接着シートの熱膨張性熱硬化型接着層A側の面を貼合する工程[1B]と、
前記空隙に、前記第1の被着体を挿入する工程[2B]と、
前記接着シートを加熱して前記熱膨張性熱硬化型接着層A及び前記熱膨張性熱硬化型接着層Bを膨張及び硬化させて、前記接着シートの膨張物を介して前記第1の被着体と前記第3の被着体及び前記第4の被着体とを接着する工程[3B]と、を有する物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱により膨張可能な接着層を有する接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一方の部材を他方の部材に形成された空隙や2以上の他方の部材の間に形成される空隙に挿入して固定する固定方法は、自動車や電気機器等の様々な製品の製造場面において用いられている。例えばハイブリッド自動車等に搭載されるモーターでは、コア部(ローターコア)の所定の位置に設けられた空隙に磁石が挿入固定される。なお、空隙に挿入する部材を挿入部材、空隙が形成された部材や、空隙を構成する2以上の部材のセットを被挿入部材と称する。
【0003】
上記固定方法では、空隙に挿入した部材の落下を防ぐために、通常、挿入部材を被挿入部材の空隙に挿入後、液状接着剤で上記空隙を充填して挿入部材と被挿入部材とを接合している。しかし、この方法では、接着剤が硬化するまでの間に空隙内での挿入部材の位置ズレや空隙からの落下が生じる場合あった。また、液状接着剤の粘度や充填量の調整等を行う必要があるため工程が煩雑であり、工程時間が長くなる場合があった。さらに、上記の方法では、接着剤が部材の空隙外に付着して汚染の原因となっていた。
【0004】
そこで、近年では液状接着剤に代えて、接着シートを用いて挿入部材と被挿入部材とを接合する方法が検討されており、中でも、膨張性を有する接着シートを挿入部材と共に被挿入部材の空隙に配置し、接着シートを膨張させて空隙を充填して挿入部材と被挿入部材とを接合する方法が検討されている。
【0005】
例えば特許文献1には、接着剤層(A)の片面に、直接または他の層を介して、接着剤層(B)を有し、130℃の環境下に1時間放置した後の、上記接着剤層(A)の厚さ方向の膨張率が所定値以上且つ上記接着剤層(B)の厚さ方向の膨張率が所定値以下にある接着シートが開示されている。
【0006】
特許文献2には、膨張性接着剤層(A)の片面に、直接または他の層を介して、感圧接着剤層(B)を有し、上記感圧接着剤層(B)の厚みが所定の範囲内であり、常温(23℃)における180度引き剥がし接着力が所定値以上である接着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-052950号公報
【文献】特開2019-182977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
挿入部材と被挿入部材との接合に用いられる接着シートは、加熱膨張により部材同士を接合させる前は、挿入部材となる部材を被挿入部材となる部材の空隙に挿入させる必要がある。そのため、部材の挿入性を阻害しないように、挿入前の常温における接着シートには、初期接着性が低い、若しくは無いものが求められる。一方で、挿入後は、挿入部材と被挿入部材を直ちに接合させることが出来ないため、上記接着シートを膨張させて部材同士を接着及び固定させる前に上記接着シートが所定の位置からズレないよう、常温における接着シートは、仮固定が可能となるための高い初期接着性が求められる。さらに、自動車用モーター等の高温になる部材の接合においては、高い耐熱性が要求されるため、上記接着シートは、常温に加えて高温環境下でも優れた接着強度を発現して挿入部材と被挿入部材とを強固に接合でき、耐熱性を有することが要求される。
【0009】
しかし、特許文献1に開示される接着シートのように、単層の熱膨張性接着剤層を加熱膨張させて空隙を充填しようとする場合、膨張率を大きくするほど接着剤層の接着力が低下してしまい、常温及び高温環境下で十分な接着強度を発現できないという課題がある。
また、特許文献2に開示される接着シートのように、仮固定性付与のために一方の面に熱可塑性の感圧接着剤層(B)が設けられている場合、耐熱性に劣り、高温環境下で十分な接着強度を発現できないため、高温になる部材の接合には適さないという課題がある。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、加熱により膨張可能な接着シートにおいて、膨張前は常温での仮固定性と一方の部材を他方の部材が有する空隙へ挿入する際の挿入容易性とを両立し、膨張後は空隙を十分に充填でき且つ高温環境下でも優れた接着強度を保持して部材同士を強固に接合可能な接着シート、並びに該接着シートを用いた物品及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1に、本発明は、対向する第1面及び第2面を有する接着シートであって、上記第1面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含む熱膨張性熱硬化型接着層Aにより構成され、上記第2面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含み上記熱膨張性熱硬化型接着層Aとは異なる組成の熱膨張性熱硬化型接着層Bにより構成され、上記熱膨張性熱硬化型接着層Bは、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの一方の面に直接または他の層を介して積層されており、上記第1面のせん断接着強度が上記第2面のせん断接着強度よりも高く、150℃で60分加熱後の上記熱膨張性熱硬化型接着層A及び上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率が、それぞれ130%以上である、接着シートを提供する。
【0012】
第2に、本発明は、第1の被着体と第2の被着体とを有し、上記第2の被着体は空隙が形成されており、上記第1の被着体が上記第2の被着体の上記空隙内に配置されており、上記空隙内において、上記第1の被着体と上記第2の被着体との間に、上述の接着シートの膨張物が配置されており、上記第1の被着体及び上記第2の被着体のうち一方が、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張物と接着し、他方が上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張物と接着している物品を提供する。
【0013】
また、本発明は、第1の被着体と第3被着体と第4被着体とを有し、上記第3の被着体及び第4の被着体の間に空隙を有し、上記第1の被着体が上記空隙内に配置されており、 上記空隙内において、上記第1の被着体と上記第3の被着体との間及び上記第1の被着体と上記第4の被着体との間にそれぞれ上述の接着シートの膨張物が配置されており、上記第1の被着体、並び上記第3の被着体及び第4の被着体の少なくとも一方が、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張物と接着し、他方が上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張物と接着している物品を提供する。
【0014】
第3に、本発明は、第1の被着体の表面又は第2の被着体に形成された空隙の表面に上述の接着シートの熱膨張性熱硬化型接着層A側の面を貼合する工程[1A]と、上記空隙内に上記第1の被着体を挿入する工程[2A]と、上記接着シートを加熱して上記熱膨張性熱硬化型接着層A及び上記熱膨張性熱硬化型接着層Bを膨張及び硬化させて、上記接着シートの膨張物を介して上記第1の被着体と上記第2の被着体とを接着する工程[3A]と、を有する物品の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、第1の被着体の表面又は第3の被着体及び第4の被着体により構成される空隙の表面に上述の接着シートの熱膨張性熱硬化型接着層A側の面を貼合する工程[1B]と、上記空隙に、上記第1の被着体を挿入する工程[2B]と、上記接着シートを加熱して上記熱膨張性熱硬化型接着層A及び上記熱膨張性熱硬化型接着層Bを膨張及び硬化させて、上記接着シートの膨張物を介して上記第1の被着体と上記第3の被着体及び上記第4の被着体とを接着する工程[3B]と、を有する物品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の接着シートによれば、加熱により所定の膨張率を示す熱膨張性熱硬化型接着層Aにより構成された第1面と、加熱により所定の膨張率を示す熱膨張性熱硬化型接着層Bにより構成された第2面とを有し、上記第1面及び第2面が異なるせん断接着強度を有することで、膨張前は常温下で部材に固定可能な仮固定性と、一方の部材を他方の部材が有する空隙へ挿入する際の挿入容易性とを両立することができ、膨張後は空隙を十分に充填して高温環境下でも優れた接着強度を保持して部材同士を強固に接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の接着シートの一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の接着シートの一例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の物品の製造方法の一例を示す工程図である。
【
図4】本発明の物品の製造方法の一例を示す工程図である。
【
図5】加熱後(膨張後)の接着シートのせん断接着力の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.接着シート
本発明の接着シートは、対向する第1面及び第2面を有し、上記第1面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含む熱膨張性熱硬化型接着層Aにより構成され、上記第2面が、熱硬化性樹脂及び膨張剤を含み上記熱膨張性熱硬化型接着層Aとは異なる組成の熱膨張性熱硬化型接着層Bにより構成され、上記熱膨張性熱硬化型接着層Bは、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの一方の面に直接または他の層を介して積層されており、上記第1面のせん断接着強度が上記第2面のせん断接着強度よりも高く、150℃で60分加熱後の上記熱膨張性熱硬化型接着層A及び上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率が、それぞれ130%以上である。
【0019】
図1~2は本発明の接着シートの一例を示す概略断面図であり、
図1(a)及び
図2(a)は、加熱前を例示したものであり、
図1(b)及び
図2(b)は加熱後を例示したものである。
図1~2で示すように、本発明の接着シート10は、第1面を構成する熱膨張性熱硬化型接着層A(
図1(1)及び
図2(1)中の符号1)と、上記第1面と対向する第2面を構成する熱膨張性熱硬化型接着層B(
図1(1)及び
図2(1)中の符号2)とを有する。熱膨張性熱硬化型接着層A及びBは、それぞれ熱硬化性樹脂および膨張剤を少なくとも含有するが、熱膨張性熱硬化型接着層Bは、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aとは異なる組成である。
また、熱膨張性熱硬化型接着層Bは、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの一方の面に直接または他の層を介して積層されている。
図1に例示する接着シート10は、熱膨張性熱硬化型接着層Aと熱膨張性熱硬化型接着層Bとが直接積層された態様を示しており、
図2に例示する接着シート10は熱膨張性熱硬化型接着層Aと熱膨張性熱硬化型接着層Bとの間に他の層として中間層(
図2中の符号3)を介して積層された態様を示している。
ここで、本発明の接着シート10は、上記第1面のせん断接着強度が上記第2面のせん断接着強度よりも高いことを特徴とする。また、熱膨張性熱硬化型接着層A及びBは、それぞれ加熱により膨張し硬化する層であり、膨張後の接着シート10’において、上記熱膨張性熱硬化型接着層A(
図1(2)及び
図2(2)中の符号1’)及び上記熱膨張性熱硬化型接着層B(
図1(2)及び
図2(2)中の符号2’)は、150℃で60分加熱後の上記熱膨張性熱硬化型接着層A及び上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率がそれぞれ所定値以上であり、熱膨張により空間を充填することができる。また、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層A及び膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bは、高温環境下でも高い接着強度を発現する。
【0020】
本発明の接着シートによれば、被挿入部材の空隙内に挿入部材が固定されてなる物品の製造において、熱膨張性熱硬化型接着層Aにより構成される第1面において、一方の部材に常温で仮固定させることができ、熱膨張性熱硬化型接着層Bにより構成される第2面において、空隙に挿入部材を挿入する際に接着シート表面の接着性により挿入が阻害されるのを防ぐことができる。また、上記熱膨張性熱硬化型接着層A及びBが特定の加熱条件において所定値以上の膨張率を示すことで、挿入部材を挿入後の空隙内に生じた隙間を埋めると共に、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層A及び膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bが硬化による接着力を発現するため、膨張後の接着シートを介して挿入部材と被挿入部材とを強固に接着することができ、加熱硬化により高温環境下でも高い接着力を発揮することができる。
【0021】
本発明の接着シートは、空隙の大きさによらず、上述の機能を奏することが可能となる。例えば狭幅の空隙内を接着シートの膨張物で充填し接着する場合、接着シートの第1面が被着体に仮固定した状態において、接着シートの第2面が他の部材と接触しやすくなるため、挿入の阻害や接着シートの位置ずれが生じやすくなる。これに対し、本発明においては、接着シートの対向関係にある第1面及び第2面の2つの主面がそれぞれ異なる接着性を有するため、狭幅の空隙であっても接着シートの第2面において部材の挿入が阻害されず、良好な挿入性を発現することができ、また、接着シート貼合位置のズレが生じにくくなる。また、広幅の空隙内を接着シートの膨張物で充填し接着する場合、熱膨張性熱硬化型接着層の膨張率を大きくする必要があるところ、単層の熱膨張性熱硬化型接着層の膨張率が大きくなりすぎると、特に高温環境下での接着力が低下しやすくなる。これは膨張により熱膨張性熱硬化型接着層内の密度が低下して、高温劣化が生じやすくなり耐熱性が低下しやすくなることによるものと推量される。これに対し、本発明においては、特定の加熱条件において所定値以上の膨張率を示す2つの熱膨張性熱硬化型接着層A及びBを有し、それぞれの接着層A、Bを加熱により膨張及び硬化させることで、広幅の空隙であっても十分充填することができ、且つ、高温環境下において高い接着強度で部材同士を接合でき、接合状態を保持することが可能となる。
【0022】
本発明の接着シートは、第1面において仮固定性を発揮し、第2面において挿入性を発揮可能となるように、第1面のせん断接着強度が第2面のせん断接着強度よりも大きい。具体的には接着シートの第1面のせん断接着強度と第2面のせん断接着強度との差が、0.01MPa以上であることが好ましく、0.1MPa以上であることが更に好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましい。接着シートの第1面と第2面とのせん断接着強度の差が上記の範囲にあることで、第1面及び第2面が、それぞれ上述した機能を十分に発揮することが可能となり、一方の面において発揮される機能により他方の面において発揮される機能が損なわれるのを抑制できるからである。接着シートの第1面のせん断接着強度と第2面のせん断接着強度との差は大きいほど好ましく、特に限定されないが、例えば2MPa以下とすることができ、1MPa以下であってもよい。
【0023】
本発明の接着シートの第1面は、仮固定性を発揮することが可能なせん断接着強度を有すればよく、第2面よりもせん断接着強度より高く設定される。接着シートの第1面のせん断接着強度は、0.2MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることが更に好ましく、1.0MPa以上であることが、接着シートの第1面においてより高い仮固定性を発揮可能となる点からより好ましい。また、接着シートの第1面のせん断接着強度は高いほど好ましく、せん断接着強度の上限は特に限定されないが、上限は例えば2MPaとすることができ、1MPaであってもよい。接着シートの第1面のせん断接着強度は、第1面を構成する熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度に主に起因するが、接着シートの層構成等に応じて適宜調整が可能である。
【0024】
一方、接着シートの第2面は、挿入性を発揮することが可能なせん断接着強度を有すればよく、第1面よりもせん断接着強度より低く設定される。接着シートの第2面のせん断接着強度は、0.5MPa未満であることが好ましく、中でも0.3MPa以下であることが好ましく、0.2MPa以下であることが更に好ましく、0.1MPa以下であることが、本発明の接着シートの第2面が所定の位置とは異なる位置に貼りつく等の不具合の発生を防ぎ、挿入部材を空隙に挿入する際の挿入性を高めることができる点からより好ましい。また、熱膨張性熱硬化型接着層Bのせん断接着強度が小さいほど、初期接着性が消失し、挿入部材を空隙へ挿入する際の挿入性が向上するため好ましく、下限値は0MPaであることが好ましく、0.01MPa以上であってもよい。接着シートの第2面のせん断接着強度は、第2面を構成する熱膨張性熱硬化型接着層Bのせん断接着強度に主に起因するが、接着シートの層構成等に応じて調整が可能である。
【0025】
接着シートの各面のせん断接着強度は、JIS Z 1541に記載の引張せん断試験に準じて以下の方法により測定することができる。まず、接着シートを10mm×10mmの大きさに裁断し、脱脂処理した2枚の表面平滑なアルミニウム板(幅15mm×長さ70mm×厚さ0.5mm)の一方のアルミニウム板Aの表面に、裁断した接着シートの第1面および第2面のうち、一方の面(非測定対象面)を強接着剤で固定し、接着シートの他方の面(測定対象面)を他方のアルミニウム板Bの表面と合わせることで、2枚のアルミニウム板A,Bで接着シートを挟みこみ、23℃、0.5MPaの荷重で10秒間圧着したものを試験片とする。次に、該試験片を23℃環境下に5分間放置した後、2枚のアルミニウム板A,Bの端部をそれぞれチャッキングし、テンシロン引張試験機を用いて、180度方向に10mm/分で引張試験をする。このときに得られる値を、アルミニウムB側の接着シートの面(測定対象面)のせん断接着強度とすることができる。
なお、接着シートの非測定対象面は強接着剤を用いてアルミニウム板Aに強固定されるため、引張試験において接着シートの非測定対象面側で剥離を生じさせず、測定対象面のせん断接着強度として測定が可能となる。
【0026】
接着シートの第1面及び第2面とは、離型ライナーを除く接着シートの一方の最外面および他方の最外面をいう。また、特段の規定が無い場合、「接着シート」、「熱膨張性熱硬化型接着層A」、「熱膨張性熱硬化型接着層B」として説明するときは、膨張前の「接着シート」、「熱膨張性熱硬化型接着層A」、「熱膨張性熱硬化型接着層B」を意味する。更に「接着シートの膨張物」、「熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張物」、「熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張物」とは、それぞれ「膨張後の接着シート」、「膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層A」、「膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層B」のことを意味しする。「膨張後」とは、熱膨張性熱硬化型接着層の膨張且つ硬化後をいい、特段の規定がなければ「150℃で60分加熱後」をいう。
【0027】
(1)熱膨張性熱硬化型接着層A
本発明における熱膨張性熱硬化型接着層Aは、熱硬化性樹脂および膨張剤を少なくとも含有する層である。熱膨張性熱硬化型接着層Aは、離型ライナーを除く本発明の接着シートの第1面を構成する。
【0028】
熱膨張性熱硬化型接着層Aは、せん断接着強度が、後述する熱膨張性熱硬化型接着層Bのせん断接着強度よりも高く、熱膨張性熱硬化型接着層Aが有する初期接着性により、上記接着シートを加熱して膨張させて挿入部材と被挿入部材とを接着固定させるまでの間、接着シートの第1面において部材の所定の位置からズレないように仮固定させることができる。具体的には熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度が0.2MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることが更に好ましく、1.0MPa以上であることが、より高い仮固定性を有する接着シートを得ることが出来る点からより好ましい。また、熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度は高いほど好ましく、せん断接着強度の上限としては、例えば2MPaとすることができ、1MPaであってもよい。熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度は、例えば後述する熱膨張性熱硬化型接着層Aに含まれる樹脂成分、無機充填剤や粘着付与剤などの添加剤の配合により調整が可能である。
【0029】
熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度は、JIS Z 1541に記載の引張せん断試験に準じて以下の方法により測定することができる。まず、接着シートにおける熱膨張性熱硬化型接着層Aと同様の熱膨張性熱硬化型接着層をシート状に成型し、成形物を10mm×10mmの大きさに裁断したものを、脱脂処理した2枚の表面平滑なアルミニウム板(幅15mm×長さ70mm×厚さ0.5mm)で挟みこみ、23℃、0.5MPaの荷重で10秒間圧着したものを試験片とする。該試験片を23℃環境下に5分間放置した後、2枚のアルミニウム板の端部をそれぞれチャッキングし、テンシロン引張試験機を用いて、180度方向に10mm/分で引張試験をし、このときに得られる値をせん断接着強度として用いることができる。
【0030】
また、熱膨張性熱硬化型接着層Aは、加熱により膨張するとともに、熱硬化反応が生じて高温環境にも耐え得る接着力を発現することができる。上記熱膨張性熱硬化型接着層Aは、150℃で60分加熱後の上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚さ方向の膨張率が130%以上であることで、後述する熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張と併せて、被挿入部材の空隙を十分に充填することができる。中でも上記膨張率が150%以上であることが好ましく、175%以上であることがより好ましく、200%以上であることが特に好ましい。また、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aは、膨張率が大きすぎると層密度が疎になり、高温環境において熱劣化が生じやすくなり、十分な接着強度を発現及び保持できなくなる場合がある。したがって、150℃で60分加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚さ方向の膨張率は、1000%以下であることが好ましく、500%以下が中でも好ましく、450%以下がさらに好ましく、400%以下がより好ましく、300%以下であることが特に好ましい。150℃で60分加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張率が上記の範囲内にあることで、熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張により、被挿入部材の空隙を十分に充填することができ、且つ、被着体である挿入部材又は被挿入部材に対して高い接着力を保持して挿入部材と被挿入部材とを強固に接合することが可能となる。
【0031】
150℃で60分加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層A(熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張物)の厚さ方向の膨張率(%)は、以下の方法及び式に基づき算出した値とする。まず、加熱前の接着シートにおける熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚さを23℃環境下で測定する。次に、接着シートを150℃の環境下で60分加熱した後、接着シートを23℃環境下に取り出して直ちに加熱後の接着シートにおける熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚さを測定する。上記測定結果と下記式に基づいて、上記膨張率を算出する。
加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚さ方向の膨張率(%)=[加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚さ/加熱前の熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚さ〕×100(%)
【0032】
なお、接着シートに代えて、接着シートにおける熱膨張性熱硬化型接着層Aと同じ熱膨張性熱硬化型接着層Aを離型ライナー上に形成したものを試験サンプルとして、該試験サンプルを150℃で60分間加熱する前後の熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚みから、上記式に基づいて膨張率を算出してもよい。
【0033】
膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aは、せん断接着強度が常温(23℃)環境下で3MPa以上であることが好ましく、6MPa以上であることが更に好ましく、9MPa以上であることがより好ましい。膨張硬化後の熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度が上記範囲内にあることで、挿入部材及び被挿入部材に対する接着保持性能が向上する。また、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度は高いほど好ましく、膨張後のせん断接着強度の上限は特に限定されないが、例えば30MPaとすることができ、15MPaであってもよい。
【0034】
膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度は、JIS Z 1541に記載の引張せん断試験に準じて測定することができ、試験片を150℃で60分加熱した後で引張試験を行ったこと以外は、上述した膨張前の熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度の測定方法と同様である。
【0035】
熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚さは、より一層優れた接着強度を得るうえで、1μm以上であることが好ましく、10μm~250μmの範囲であることがより好ましく、15μm~150μmの範囲であることがさらに好ましく、20μm~100μmの範囲であることが特に好ましい。また、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚さは、より一層優れた接着強度を得るうえで、20μm~2500μmの範囲であることが好ましく、30μm~1500μmの範囲であることがより好ましい。膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aは、多孔構造を有するものであることが好ましい。
【0036】
接着シートの総厚さに占める熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚さは、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。上記範囲とすることで、被挿入部材の空隙内に挿入した挿入部材を固定しながら上記空隙内を充填しやすくなるからである。なお、接着シートが離型ライナーを有する場合、接着シートの総厚さには、離型ライナーの厚さは含まれないものとする。
【0037】
膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aのガラス転移温度は、80℃以上であることが、高温環境に晒されても優れた接着力を発揮することができ、特に高温に達しやすい用途に用いられる挿入部材及び被挿入部材の接合を強固に保持することができるため好ましい。より具体的には、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aのガラス転移温度は、100℃以上300℃以下であることが好ましく、120℃以上280℃以下であることがさらに好ましく、150℃以上250℃以下であることがより好ましい。
【0038】
膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aのガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製、商品名:RSA-II)を用い、同試験機の測定部である掴み具で試験片をチャッキングし、周波数1Hzでの貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)を測定し、上記損失弾性率(E”)を上記貯蔵弾性率(E’)により除した値(E”/E’)から計算される損失正接(tanδ)のスペクトルで確認されたピーク温度を指す。なお、上記測定に用いた試験片は、150℃で60分加熱後の、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aを、ダンベルカッターを用いてJIS K 7127の試験片タイプ5の形状に打ち抜いたものを使用して測定することができる。
【0039】
上記熱膨張性熱硬化型接着層Aは、膨張後の硬化率を80%以上にさせることが好ましい。上記硬化率とすることで、高温環境に晒されても優れた接着力を発揮することができ、特に高温に達しやすい用途に用いられる挿入部材及び被挿入部材の接合を強固に保持すること可能となる。また、上記膨張後の硬化率は、90%以上にさせることがより好ましく、硬化率を99%以上にさせることがさらに好ましい。
【0040】
なお、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aの硬化率は、ゲル分率で表され、熱膨張性熱硬化型接着層Aを150℃で60分加熱してなる膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aを、23℃に調整されたトルエン溶液へ24時間浸漬し、上記溶媒中に残存した熱膨張性熱硬化型接着層の乾燥後の質量と、以下の式に基づいて算出した値をさす。
【0041】
ゲル分率(質量%)={(トルエンに溶解せずに残存した膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層の質量)/(トルエン浸漬前の膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層の質量)}×100
【0042】
熱膨張性熱硬化型接着層Aは、熱硬化性樹脂および膨張剤を少なくとも含有する層である。換言すれば、熱膨張性熱硬化型接着層Aは、熱硬化性樹脂および膨張剤を少なくとも含有する熱膨張性熱硬化型接着剤組成物aにより形成される層である。熱膨張性熱硬化型接着層Aは、例えば上記熱膨張性熱硬化型接着剤組成物aを離型ライナー等に塗布し乾燥させることによって形成することができる。
【0043】
なお、「熱膨張性熱硬化型接着層A(の全樹脂成分)中」とは、すなわち熱膨張性熱硬化型接着層Aを形成する熱膨張性熱硬化型接着剤組成物a(の全樹脂成分)中」とすることができる。樹脂成分とは、膨張剤を除いた接着剤組成物を構成する樹脂成分とする。
【0044】
(熱硬化性樹脂)
熱膨張性熱硬化型接着層Aは、樹脂成分として少なくとも熱硬化性樹脂を含む。熱膨張性熱硬化型接着層Aに含まれる熱硬化性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂等から選ばれる1種又は2種以上の熱硬化性樹脂を使用することができる。なかでも、上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂及び/またはアクリル樹脂を使用することが、加熱による膨張時の被着体への良好な密着性を付与するうえで好ましく、さらにエポキシ樹脂を使用することが、良好な加熱硬化性を確保でき、高耐熱性を有するうえでより好ましい。
【0045】
上記エポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ 9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド変性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等を使用することができる。エポキシ樹脂は1種単独で用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。
【0046】
熱膨張性熱硬化型接着層Aに含まれる熱硬化性樹脂は、その総エポキシ当量が2,000g/eq.以下であることが好ましい。膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aのガラス転移温度を高くすることができ、高温下での接着力の低下を抑制することができるため好ましい。上記総エポキシ当量は好ましくは、50g/eq.以上1500g/eq.以下であり、100g/eq.以上1000g/eq.以下であり、150g/eq.以上500g/eq.以下である。
【0047】
熱膨張性熱硬化型接着層Aは、上記熱硬化性樹脂として、エポキシ当量が500g/eq.以下のエポキシ樹脂を、熱膨張性熱硬化型接着層Aの全樹脂成分中、30質量%~90質量%の範囲内で含むことが、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aのガラス転移温度を高くすることができ、高温下での接着力の低下を抑制することができるため好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層Aに含まれるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは10g/eq.以上450g/eq.以下であり、20g/eq.以上400g/eq.以下であり、50g/eq.以上300g/eq.以下である。また、上記の範囲にエポキシ当量を有するエポキシ樹脂の含有量は、熱膨張性熱硬化型接着層Aの全樹脂成分中、好ましくは35質量%~85質量%の範囲内であり、40質量%~80質量%の範囲内であり、50質量%~70質量%の範囲内である。上記の範囲にエポキシ当量を有するエポキシ樹脂の含有量とは、上記の範囲にエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を2種類以上含む場合はその総量とする。
【0048】
なお、本願における「エポキシ当量」とは、エポキシ基1個あたりのエポキシ樹脂の分子量で定義され、JIS K7236、エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方(2001)に記載されている方法(過塩素酸-臭化テトラエチルアンモニウム法)等により決定することができる。
【0049】
熱膨張性熱硬化型接着層Aは、上記熱硬化性樹脂として固形の熱硬化性樹脂(以下、固形樹脂と称する。熱膨張性熱硬化型接着層Bにおいても同様とする。)を1種又は2種以上含むことが好ましい。本明細書において「固形樹脂」とは、軟化点が高い樹脂若しくは25℃で半固体または固体の樹脂をいう。固形樹脂の軟化点は5℃以上であることが好ましい。熱硬化性樹脂として、中でも軟化点が30℃以上150℃以下の固形樹脂を含むことが好ましく、50℃以上100℃以下の固形樹脂を含むことがさらに好ましい。また、固形樹脂の含有量は、熱膨張性熱硬化型接着層Aの全樹脂成分中10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上であり、30質量%以上であり、40質量%以上であり、50質量%以上である。また、固形樹脂の含有量は、熱膨張性熱硬化型接着層Aの全樹脂成分中、95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは90質量%以下であり、85質量%以下であり、80質量%以下であり、70質量%以下である。上記含有量として、より具体的には、固形樹脂の含有量は10質量%以上が好ましく、中でも20質量%以上95質量%以下であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下であることが好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層Aの初期接着性(粘着性)を付与することができ、かつ常温でのシート形状を保ちやすく、取扱い性が向上するからである。固形樹脂を2種類以上含む場合は、固形樹脂の含有量とは2種類以上の固形樹脂の総量とする。
【0050】
上記固形樹脂として具体的には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。固形樹脂は、1種単独で用いても良く2種以上用いてもよい。
【0051】
また、熱膨張性熱硬化型接着層Aは、25℃で液状の熱硬化性樹脂(以下、液状樹脂と称する。熱膨張性熱硬化型接着層Bにおいても同様とする。)を含有することが好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度を高めることができ、良好な仮固定性を発現可能となるからである。熱膨張性熱硬化型接着層Aに含有される液状樹脂は、25℃の粘度が300万mPa・sec以下であることが好ましく、中でも10mPa・sec以上200万mPa・sec以下であることがさらに好ましく、1000mPa・sec以上100万mPa・sec以下であることがより好ましい。また熱膨張性熱硬化型接着層A中の液状樹脂の含有量は、熱膨張性熱硬化型接着層Aの全樹脂成分中10質量%以上が好ましく、中でも15質量%以上が好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、上記液状樹脂の含有量は、熱膨張性熱硬化型接着層Aの全樹脂成分中70質量%以下が好ましく、60質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下がより好ましい。より具体的には、熱膨張性熱硬化型接着層A中の液状樹脂の含有量は、熱膨張性熱硬化型接着層Aの全樹脂成分中10質量%以上、15質量%以上70質量%以下、20質量%以上60質量%以下、30質量%以上50質量%以下とすることができる。上述した所望の粘度を有する液状樹脂を、熱膨張性熱硬化型接着層A中に所望の含有量で含むことで、熱膨張性熱硬化型接着層熱膨張性熱硬化型接着層の初期接着性(粘着性)を好適に付与することができ、より高い仮固定性を有する接着シートを得ることが出来る。液状樹脂を2種類以上含む場合は、液状樹脂の含有量とは2種類以上の液状樹脂の総量とする。
【0052】
熱膨張性熱硬化型接着層Aに含有される液状樹脂は、上述の粘度の範囲及び含有量の範囲を適宜組合せて用いることができる。好ましい態様の1つの例としては、熱膨張性熱硬化型接着層Aは、例えば25℃の粘度が300万mPa・sec.以下の液状樹脂を20質量%以上含むことが好ましい。好ましい態様の別の例としては、熱膨張性熱硬化型接着層Aは、例えば上記粘度が10mPa・sec.以上200万mPa・sec.以下の液状樹脂を12質量%以上70質量%以下で含むことが好ましい。また、好ましい態様の別の例としては、熱膨張性熱硬化型接着層Aは、例えば上記粘度が1000mPa・sec以上100万mPa・sec以下の液状樹脂を15質量%以上50質量%以下で含むことが好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層A中の液状樹脂が所望の粘度及び含有量で含まれることで、所望のせん断接着強度に調節可能となり、良好な初期接着性を有することができる。
【0053】
上記液状樹脂として具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂やその変性樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、1,6-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、t-ブチルカテコール型エポキシ樹脂、4,4‘-ジフェニルジアミノメタン型エポキシ樹脂、p-又はm-アミノフェノール型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、1,6-ヘキサンジオール型エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオール型エポキシ樹脂、脂肪鎖変性エポキシ樹脂等が挙げられる。液状樹脂は、1種単独で用いても良く2種以上用いてもよい。
【0054】
熱膨張性熱硬化型接着層Aにおいて、上述した固形樹脂と液状樹脂との配合割合(固形:液状)は、熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度を所望の範囲にすることが可能となる割合であればよく、例えば質量比で95:5~40:60の範囲が好ましく、90:10~50:50の範囲が好ましく、80:20~60:40の範囲が好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層Aに含まれる固形樹脂と液状樹脂との配合比率を上記の範囲とすることで、所望のせん断接着強度に調節可能となり、良好な初期接着性を有することができる。
【0055】
熱膨張性熱硬化型接着層Aは、熱硬化型樹脂として重量平均分子量が100以上20000以下の熱硬化性樹脂を用いることが、熱膨張性熱硬化型接着層の初期接着性(粘着性)を好適に付与することができ、より高い仮固定性を有する接着シートを得ることが出来る点から望ましい。熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、中でも150以上10000以下が好ましく、200以上4000以下がより好ましい。熱硬化性樹脂の重量平均分子量は標準ポリスチレン換算値である。
【0056】
上記熱硬化性樹脂の総含有量は、熱膨張性熱硬化型接着層Aの全樹脂成分100質量%中に、10質量%~99質量%の範囲内で含まれることが好ましく、40質量%~80質量%の範囲内で含まれることが更に好ましく、50質量%~70質量%の範囲内で含まれることがより好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層A中の熱硬化性樹脂の含有量を上記の範囲内とすることで、熱膨張性熱硬化型接着層の初期接着性(粘着性)を好適に付与することができ、より高い仮固定性を有する接着シートを得ることが出来、かつ常温でのシート形状を保ちやすく、取扱い性を向上させることが出来る。熱膨張性熱硬化型接着層Aは、熱硬化性樹脂を主成分に含む層であることが好ましく、エポキシ樹脂を主成分に含む層であることがより好ましい。
【0057】
(膨張剤)
熱膨張性熱硬化型接着層Aに含まれる膨張剤としては、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aが層内に多孔構造を形成できるものを使用することが好ましい。このような膨張剤としては、例えば炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素アンモニウム、アジド等の無機化合物、トリクロロモノフルオロメタン等のフッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン化合物、p-トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール化合物、N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ化合物を使用することができる。
【0058】
また、上記膨張剤としては、例えば炭化水素系溶剤をマイクロカプセル化した膨張性カプセル等を使用することができる。膨張剤は単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0059】
上記膨張剤としては、上述した中でも炭化水素系溶剤をマイクロカプセル化した膨張性カプセルを使用することが、例えば熱等の影響による熱膨張性熱硬化型接着層Aの劣化等を防止するうえでより好ましい。
【0060】
また、上記膨張剤としては、熱膨張性熱硬化型接着層Aの軟化点前後の温度で膨張し得るものを使用することが、本発明の接着シートを十分に膨張させることができため好ましい。
【0061】
上記膨張性カプセルの市販品としては、例えばエクスパンセル(日本フィライト株式会社製)、マツモトマイクロスフェアー(松本油脂製薬株式会社製)、マイクロスフェアー(株式会社クレハ製)等が挙げられる。上記膨張性カプセルは、膨張前の上記カプセルの体積に対する膨張後の体積(体積膨張率)が8倍~60倍であるものを使用することが好ましい。
【0062】
上記膨張剤の含有量、好ましくは上記熱膨張性カプセルの含有量は、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの全樹脂成分100質量部に対して、0.3質量部~30質量部の範囲であることが好ましく、0.5質量部~25質量部の範囲であることがより好ましく、1質量部~20質量部の範囲であることがさらに好ましい。膨張剤の含有量を上記の範囲内とすることで、被挿入部材の空隙を十分に充填することができ、且つ、被着体である挿入部材又は被挿入部材に対して高い接着力を保持して挿入部材と被挿入部材とを強固に接合することが可能となる。
【0063】
(硬化剤)
熱膨張性熱硬化型接着層Aは、熱硬化性樹脂と反応しうる硬化剤を含有することが好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層Aを加熱したときに、熱硬化性樹脂が十分に硬化して高い接着強度を発現可能となるからである。硬化剤は、熱膨張性熱硬化型接着層Aを熱硬化させる前、または、シート状の熱硬化型接着層Aに成形する前に含有されることが好ましい。
【0064】
上記硬化剤は、熱硬化性樹脂の種類、特に熱硬化性樹脂が有する官能基の種類に応じた化合物を適宜選択して用いることができる。例えば上記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合であれば、上記硬化剤としては、そのエポキシ基と反応しうる官能基を有するものを使用することが好ましい。上記硬化剤として具体的には、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノール系化合物などが挙げられる。
【0065】
アミン系化合物としては、例えばジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾール誘導体、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等を使用することができる。
【0066】
上記アミド系化合物としては、例えばジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0067】
上記酸無水物系化合物としては、例えば無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0068】
上記フェノール系化合物としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(フェノール骨格、トリアジン環及び1級アミノ基を分子構造中に有する化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0069】
上記硬化剤は、例えば上記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合であれば、熱硬化性樹脂の総エポキシ当量に対する硬化剤中に含まれるエポキシ基と反応しうる官能基当量の比率が0.3以上2.0以下の範囲であることが好ましく、0.5以上1.5以下の範囲であることがより好ましく、0.7以上1.0以下の範囲であることがさらに好ましい。上記範囲で使用することで、上記熱硬化性樹脂を十分に硬化させ、上記接着シートの耐熱性を向上させることができる。
【0070】
上記硬化剤としては、粉体状のものを用いることが好ましい。上記粉体状の硬化剤は、液状の硬化剤と比較して低温下での熱硬化反応が抑制されるため、熱膨張性熱硬化型接着層Aの常温下における保存安定性をより一層向上させることができる。
【0071】
上記硬化剤の含有量は、上述した熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張後の硬化率の範囲内になるように、適宜設定することができる。
【0072】
(硬化促進剤)
熱膨張性熱硬化型接着層A及びそれを構成する熱膨張性熱硬化型接着剤組成物aは、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤は、熱膨張性熱硬化型接着層Aを熱硬化させる前、または、シート状の熱硬化型接着層Aに成形する前に含有されることが好ましい。上記硬化促進剤としては、リン系化合物、アミン化合物、イミダゾール誘導体等を使用することができる。硬化促進剤を使用する場合の使用量は、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aに含まれる全樹脂成分100質量部に対し、0.1質量部~10質量部であることが好ましく、0.5質量部~5質量部の範囲であることがより好ましい。
【0073】
硬化促進剤としては、粉体状のものを用いることが好ましい。上記粉体状の硬化促進剤は、液状の硬化促進剤と比較して低温下での熱硬化反応が抑制されるため、熱膨張性熱硬化型接着層Aの常温下における保存安定性をより一層向上させることができる。
【0074】
(熱可塑性樹脂)
熱膨張性熱硬化型接着層A及びそれを構成する熱膨張性熱硬化型接着剤組成物aは、膨張後において温度変化の大きい環境下で使用された場合であっても接合部の固定性を損なわない範囲において、熱可塑性樹脂を含有してもよい。
【0075】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等のウレタン系樹脂;ビスフェノール類とエピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテル等のフェノキシ樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレ-ト(PET)、ポリブチレンテレフタレ-ト、ポリトリメチレンテレフタレ-ト、ポリエチレンナフタレ-ト、ポリブチレンナフタレ-ト等のポリエステル系樹脂;ナイロン(登録商標)等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン(PS)、イミド変性ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合(SAN)樹脂、アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン(AES)樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、シクロオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂;ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂;シリコーン系樹脂;フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーを使用する事ができる。
【0076】
中でも熱膨張性熱硬化型接着層Aは、熱硬化性樹脂と反応する反応性基を有する熱可塑性樹脂(以下、反応性熱可塑性樹脂とする場合がある。)を1種又は2種以上含むことが好ましい。反応性熱可塑性樹脂が有する反応性基が熱硬化性樹脂と反応することで、熱膨張性熱硬化型接着層Aが、より強固な接着力を発現することが可能となるからである。熱硬化性樹脂と反応する反応性基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基等が挙げられる。また、このような反応性基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリヒドロキシポリエーテル(フェノキシ樹脂)、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0077】
上記熱可塑性樹脂は、上記理由から、熱膨張性熱硬化型接着層A中の上記熱硬化性樹脂100質量部に対して1質量部~100質量部の範囲で使用することができる。中でも、上記熱硬化性樹脂100質量部に対して10質量部~150質量部の範囲で使用することが好ましく、30質量部~100質量部の範囲で使用することが、強固な接着力を発現することが可能となる点からより好ましい。
【0078】
(任意の成分)
熱膨張性熱硬化型接着層Aは、上述した成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば充填剤、軟化剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、粘着付与樹脂、繊維類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、増粘剤、顔料等の着色剤、充填剤などの添加剤を含有するものを使用することができる。
【0079】
(2)熱膨張性熱硬化型接着層B
本発明における熱膨張性熱硬化型接着層Bは、熱硬化性樹脂および膨張剤を少なくとも含有するが、熱膨張性熱硬化型接着層Aとは異なる組成である。熱膨張性熱硬化型接着層Bは、離型ライナーを除く本発明の接着シートの第2面を構成する層である。
【0080】
熱膨張性熱硬化型接着層Bは、熱膨張性熱硬化型接着層Aよりもせん断接着力が低く、、中でも初期接着性(粘着性)が低い、若しくは初期接着性が無い層であることが好ましい。挿入部材を被挿入部材の空隙に挿入する際に、接着シートの第2面が被着体に付着して接着シートの貼合位置がずれたり、所定の位置とは異なる位置に貼りつく等の不具合の発生を防ぎ、挿入性を高めることが可能となる。
【0081】
熱膨張性熱硬化型接着層Bは、常温でのせん断接着強度が熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度よりも低ければよく、具体的には、熱膨張性熱硬化型接着層Bのせん断接着強度が0.5MPa未満であることが好ましく、中でも0.3MPa以下であることが好ましく、0.2MPa以下であることが更に好ましく、0.1MPa以下であることが、本発明の接着シートの第2面が所定の位置とは異なる位置に貼りつく等の不具合の発生を防ぎ、挿入部材を空隙に挿入する際の挿入性を高めることができる点からより好ましい。また、熱膨張性熱硬化型接着層Bのせん断接着強度が小さいほど、初期接着性が消失し、挿入部材を空隙へ挿入する際の挿入性が向上するため好ましく、下限値は0MPaであることが好ましく、0.01MPa以上であってもよい。熱膨張性熱硬化型接着層Bのせん断接着強度は、例えば後述する熱膨張性熱硬化型接着層Bに含まれる樹脂成分、無機充填剤やスリップ剤などの添加剤の配合により調整が可能である。
【0082】
熱膨張性熱硬化型接着層Bのせん断接着強度は、上述した熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度の測定方法と同じ方法により測定することができる。
【0083】
また、熱膨張性熱硬化型接着層Bは、加熱により膨張するとともに、熱硬化反応が生じて高温環境下でも高い接着力を発現することが可能となる。上記熱膨張性熱硬化型接着層Bは、150℃で60分加熱後の上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率が130%以上であることで、先述した熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張と併せて、被挿入部材の空隙を十分に充填することができる。中でも熱膨張性熱硬化型接着層Bの上記膨張率が150%以上であることが好ましく、175%以上であることがより好ましく、200%以上であることが特に好ましい。また、熱膨張性熱硬化型接着層Bは、膨張率が大きすぎると層密度が疎になるため、特に高温環境において劣化により十分な接着強度を発現できなくなる場合がある。したがって、150℃で60分加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率は、1000%以下であることが好ましく、500%以下が中でも好ましく、450%以下がより好ましく、400%以下が更に好ましく、300%以下が特に好ましい。150℃で60分加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張率が上記の範囲内にあることで、熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張により、被挿入部材の空隙を十分に充填することができ、且つ、高温環境においても被着体である挿入部材又は被挿入部材に対して高い接着力を保持して、挿入部材と被挿入部材とを強固に接合することが可能となる。
【0084】
150℃で60分加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率(%)は、上述した熱膨張性熱硬化型接着層Aの厚さ方向の膨張率(%)と同様の方法で加熱前後での熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さを測定し、以下の式に基づき算出することができる。
加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ方向の膨張率(%)=[加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さ/加熱前の膨張性接着層Bの厚さ〕×100(%)
【0085】
また、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bは、せん断接着力が、常温(23℃)環境下で3MPa以上であることが好ましく、6MPa以上であることが更に好ましく、9MPa以上であることがより好ましい。膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bのせん断接着強度が上記範囲内にあることで、挿入部材および被挿入部材に対する接着保持機能が向上する。なお、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bのせん断接着強度は高いほど好ましく、例えば30MPa以下とすることができ、15MPaであってもよい。
【0086】
膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bのせん断接着強度は、上述した膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aのせん断接着強度の測定方法と同じ方法により測定することができる。
【0087】
熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さは、より一層優れた接着強度を得るうえで、1μm以上であることが好ましく、10μm~250μmの範囲であることがより好ましく、20μm~200μmの範囲であることがさらに好ましく、40μm~150μmの範囲であることが特に好ましい。
【0088】
膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さは、より一層優れた接着強度を得るうえで、50μm~2500μmの範囲であることが好ましく、60μm~1500μmの範囲であることがより好ましい。また、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bは、多孔構造を有するものであることが好ましい。
【0089】
接着シートの総厚さに占める熱膨張性熱硬化型接着層Bの厚さは、15%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。上記範囲とすることで、被挿入部材の空隙内に挿入した挿入部材を固定しながら上記空隙内を充填しやすくなるからである。なお、接着シートが離型ライナーを有する場合、接着シートの総厚さには、離型ライナーの厚さは含まれないものとする。
【0090】
膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bのガラス転移温度は、80℃以上であることが好ましい。膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bが、高温環境に晒されても優れた接着力を発揮することができ、特に高温に達しやすい用途に用いられる挿入部材及び被挿入部材の接合を強固に保持することができるからである。より具体的には、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bのガラス転移温度は、100℃以上300℃以下であることが好ましく、120℃以上280℃以下であることがさらに好ましく、150℃以上250℃以下であることがより好ましい。
【0091】
膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bのガラス転移温度は、上述した膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aのガラス転移温度の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0092】
上記熱膨張性熱硬化型接着層Bは、膨張後の硬化率を80%以上にさせることが好ましい。上記硬化率とすることで、高温環境に晒されても優れた接着力を発揮することができ、特に高温に達しやすい用途に用いられる挿入部材及び被挿入部材の接合を強固に保持すること可能となる。また、上記膨張後の硬化率は、90%以上にさせることがより好ましく、硬化率を99%以上にさせることがさらに好ましい。
【0093】
なお、膨張後の上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの硬化率はゲル分率で表され、上述した膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Aと同じ方法により測定し、算出した値をさす。
【0094】
熱膨張性熱硬化型接着層Bは、熱硬化性樹脂および膨張剤を少なくとも含有する層である。換言すれば、熱膨張性熱硬化型接着層Bは、熱硬化性樹脂および膨張剤を少なくとも含有する熱膨張性熱硬化型接着剤組成物bにより形成される層である。熱膨張性熱硬化型接着層Bは、上記熱膨張性熱硬化型接着剤組成物bを離型ライナー等に塗布し乾燥させることによって形成することができる。
【0095】
なお、「熱膨張性熱硬化型接着層B(の全樹脂成分)中」とは、すなわち熱膨張性熱硬化型接着層Bを形成する熱膨張性熱硬化型接着剤組成物b(の全樹脂成分)中」とすることができる。
【0096】
(熱硬化性樹脂)
熱膨張性熱硬化型接着層Bは、樹脂成分として少なくとも熱硬化性樹脂を含む。熱膨張性熱硬化型接着層Bに含まれる熱硬化性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂等から選ばれる1種又は2種以上の熱硬化性樹脂を使用することができる。なかでも、上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂及び/またはアクリル樹脂を使用することが加熱硬化時の被着体への良好な密着性を付与するうえで好ましく、さらにエポキシ樹脂を使用することが良好な加熱硬化性及び高耐熱性を確保するうえでより好ましい。
【0097】
上記エポキシ樹脂としては、具体的には、上記「熱膨張性熱硬化型接着層A」の項目で例示したエポキシ樹脂を用いることができる。
【0098】
熱膨張性熱硬化型接着層Bに含まれる熱硬化性樹脂は、その総エポキシ当量が2,000g/eq.以下であることが好ましい。膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層のガラス転移温度を高くすることができ、高温下での接着力の低下を抑制することができるため好ましい。上記総エポキシ当量は好ましくは、50g/eq.以上1500g/eq.以下であり、100g/eq.以上1000g/eq.以下であり、150g/eq.以上500g/eq.以下である。
【0099】
熱膨張性熱硬化型接着層Bに含まれる熱硬化性樹脂としては、エポキシ当量500g/eq.以下のエポキシ樹脂を、熱膨張性熱硬化型接着層Bの全樹脂成分中30質量%~90質量%の範囲内で含むことが好ましい。上記範囲にエポキシ当量を有する高エポキシ当量のエポキシ樹脂を所望の量で含有することで上記範囲にエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を所望の量で含有することで、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層のガラス転移温度を高くすることができ、高温下での接着力の低下を抑制することができるため好ましい。上記エポキシ当量は、好ましくは20g/eq.以上450g/eq.以下であり、50g/eq.以上400g/eq.以下であり、100g/eq.以上300g/eq.以下である。また、上記の範囲にエポキシ当量を有するエポキシ樹脂の含有量は、好ましくは35質量%以上85質量%以下の範囲内であり、40質量%以上80質量%以下の範囲内であり、50質量%以上70質量%以下の範囲内である。上記の範囲にエポキシ当量を有するエポキシ樹脂の含有量とは、上記の範囲にエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を2種類以上含む場合はその総量とする。
【0100】
熱膨張性熱硬化型接着層Bは、熱硬化性樹脂として固形樹脂を含有することが好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層Bに含有される固形樹脂は、軟化点が5℃以上150℃以下であることが好ましく、50℃以上100℃以下がさらに好ましい。また、熱膨張性熱硬化型接着層B中の固形樹脂の含有量は、熱膨張性熱硬化型接着層Bの全樹脂成分中30質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上である。また上記含有量は、熱膨張性熱硬化型接着層Bの全樹脂成分中99質量%以下が好ましく、より好ましくは97質量%、95質量%である。より具体的には、固形樹脂の含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上99質量%以下であることが好ましく、70質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層Bの初期接着性(粘着性)を低減することができ、挿入部材を被挿入部材の空隙に挿入する際に、接着シートの貼合位置がずれたり所定の位置とは異なる位置に貼りつく等の不具合の発生を防ぎ、挿入性を高めることができるからである。
【0101】
固形樹脂として具体的には、上述した「(1)熱膨張性熱硬化型接着層A」の項目で例示した固形樹脂が挙げられる。固形樹脂は、1種単独で用いても良く2種以上用いてもよい。固形樹脂を2種類以上含む場合は、固形樹脂の含有量とは2種類以上の固形樹脂の総量とする。
【0102】
また、熱膨張性熱硬化型接着層Bは、必要に応じて25℃で液状の熱硬化性樹脂(以下、液状樹脂とする。)を併用してもよく、併用しなくてもよい。上記液状の熱硬化性樹脂の25℃の粘度は、300万mPa・sec以下が好ましく、中でも1000mPa・sec以上200万mPa・sec以下がさらに好ましく、1万mPa・sec以上150万mPa・sec以下がより好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層Bが液状樹脂を含有する場合の、上記液状樹脂の含有量は、熱膨張性熱硬化型接着層Bの全樹脂成分中40質量%以下が好ましく、中でも30質量%以下が好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下がより好ましい。また、上記液状樹脂の含有量は、0質量%でもよく、0質量%超であってもよく、1質量%以上含んでいてもよく、3質量%以上含んでいてもよく、5質量%以上含んでいてもよい。より具体的には、上記含有量は40質量%以下、1質量%以上30質量%以下、3質量%以上20質量%以下、5質量%以上10質量%以下とすることができる。上述した所望の粘度を有する液状樹脂を、熱膨張性熱硬化型接着層B中に所望の含有量で含むことで、熱膨張性熱硬化型接着層Bの初期接着力を低減することができ、挿入部材を被挿入部材の空隙に挿入する際に、接着シートの貼合位置がずれたり所定の位置とは異なる位置に貼りつく等の不具合の発生を防ぎ、挿入性を高めることができる。また、熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張前の可撓性と加熱時の流動性とを好適にし、本発明の接着シートの取り扱い性と、加熱によるの接着シートの膨張率を好適にすることができる。
【0103】
熱膨張性熱硬化型接着層Bが液状樹脂を含有する場合、液状樹脂は、上述の粘度の範囲及び含有量の範囲を適宜組合せて用いることができる。好ましい態様の1つの例としては、熱膨張性熱硬化型接着層Bは、25℃の粘度が300万mPa・sec以下の液状樹脂を20質量%以下で含むことが好ましい。好ましい態様の別の例としては、熱膨張性熱硬化型接着層Bは、上記粘度が1000mPa・sec~200万mPa・secの範囲内の液状樹脂を1質量%~15質量%の範囲内で含むことが好ましい。また好ましい態様の別の例としては、熱膨張性熱硬化型接着層Bは、例えば上記粘度が1万mPa・sec~150万mPa・secの範囲内の液状樹脂を3質量%~10質量%の範囲内で含むことが好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層B及び熱膨張性熱硬化型接着層Bにより形成される接着シートの第2面のせん断接着強度を十分小さくすることができ、挿入性が向上するからである。
【0104】
このような液状樹脂として具体的には、上述した「(1)熱膨張性熱硬化型接着層A」の項目で例示した液状樹脂が挙げられる。液状樹脂は1種単独または2種以上用いられていても良い。液状樹脂を2種類以上含む場合は、液状樹脂の含有量とは2種類以上の液状樹脂の総量とする。
【0105】
熱膨張性熱硬化型接着層Bにおいて、固形樹脂と液状樹脂との配合割合(固形樹脂:液状樹脂)は、熱膨張性熱硬化型接着層Bのせん断接着強度を所望の範囲にすることが可能となる割合であればよく、例えば質量比で99.9:0.1~60:40の範囲が好ましく、99:1~70:30の範囲が好ましく、95:5~80:20の範囲が好ましい。固形樹脂と液状樹脂との配合比率を上記の範囲とすることで、熱膨張性熱硬化型接着層B及び熱膨張性熱硬化型接着層Bにより構成される接着シートの第2面のせん断接着強度を第1面のせん断接着強度よりも十分に低くすることができるからである。
【0106】
熱膨張性熱硬化型接着層Bは、重量平均分子量が100以上20000以下の熱硬化性樹脂を用いることが、熱膨張性熱硬化型接着層の初期接着性(粘着性)を低減することができ、挿入部材を被挿入部材の空隙に挿入する際に、接着シートの貼合位置がずれたり所定の位置とは異なる位置に貼りつく等の不具合の発生を防ぎ、挿入性の高い接着シートを得ることが出来る点から望ましい。熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、中でも250以上10000以下が好ましく、500以上5000以下がより好ましい。
【0107】
上記熱硬化性樹脂の総量は、熱膨張性熱硬化型接着層Bの全樹脂成分100質量%中に30質量%~99質量%の範囲内で含まれることが好ましく、35質量%~70質量%の範囲内で含まれることが更に好ましく、40質量%~60質量%の質量%の範囲内で含まれることがより好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層B中の熱硬化性樹脂の含有量を上記の範囲内とすることで、熱膨張性熱硬化型接着層の初期接着性(粘着性)をより好適に低減させることができ、より高い挿入性を有する接着シートを得ることが出来、かつ常温でのシート形状を保ちやすく、取扱い性を向上させることが出来る。
【0108】
(膨張剤)
熱膨張性熱硬化型接着層Bは、1種又は2種以上の膨張剤を含む。上記膨張剤としては、膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層Bが層内に多孔構造を形成できるものを使用することが好ましい。膨張剤の詳細については、上述した「(1)熱膨張性熱硬化型接着層A」の項目で説明した膨張剤の詳細と同様とすることができる。なお熱膨張性熱硬化型接着層Bに含まれる膨張剤及びその含有量は、熱膨張性熱硬化型接着層Aに含まれる膨張剤及びその含有量と同一であっても良く異なっても良い。
【0109】
上記膨張剤の含有量、好ましくは上記熱膨張性カプセルの含有量は、上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの全樹脂成分100質量部に対して、0.3質量部~30質量部の範囲であることが好ましく、0.5質量部~25質量部の範囲であることがより好ましく、1質量部~20質量部の範囲であることがさらに好ましい。膨張剤の含有量を上記の範囲内とすることで、被挿入部材の空隙を十分に充填することができ、且つ、被着体である挿入部材又は被挿入部材に対して高い接着力を保持して挿入部材と被挿入部材とを強固に接合することが可能となる。
【0110】
(硬化剤)
熱膨張性熱硬化型接着層Bは、熱硬化性樹脂と反応しうる硬化剤を1種又は2種以上含有することが好ましい。熱膨張性熱硬化型接着層Bを加熱したときに、熱硬化性樹脂が十分に硬化して高い接着強度を発現可能となるからである。硬化剤は、熱膨張性熱硬化型接着層Bを熱硬化させる前、または、シート状の熱硬化型接着層Aに成形する前に含有されることが好ましい。硬化剤の詳細については、上述した「(1)熱膨張性熱硬化型接着層A」の項目で説明した硬化剤の詳細と同様とすることができる。なお、熱膨張性熱硬化型接着層Bに含まれる硬化剤は、熱膨張性熱硬化型接着層Aに含まれる硬化剤と同一であっても良く異なっても良い。
【0111】
上記硬化剤は、熱膨張性熱硬化型接着層Bに含まれる熱硬化性樹脂の合計100質量部に対し、0.1質量部~60質量部の範囲で使用することが好ましく、0.5質量部~45質量部の範囲で使用することが好ましく、1質量部~30質量部の範囲で使用することが、上記熱硬化性樹脂を十分に硬化させることができるためより好ましい。
【0112】
(硬化促進剤)
熱膨張性熱硬化型接着層Bは、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤の詳細については、上述した「(1)熱膨張性熱硬化型接着層A」の項目で説明した硬化促進剤の詳細と同様とすることができる。なお熱膨張性熱硬化型接着層Bに含まれる硬化促進剤は、熱膨張性熱硬化型接着層Aに含まれる硬化促進剤と同一であっても良く異なっても良い。
【0113】
(熱可塑性樹脂)
熱膨張性熱硬化型接着層Bは、膨張後において温度変化の大きい環境下で使用された場合であっても接合部の固定性を損なわない範囲において、熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂の詳細及び含有量については、上述した「(1)熱膨張性熱硬化型接着層A」の項目で説明した熱可塑性樹脂の詳細及び含有量と同様とすることができる。なお熱膨張性熱硬化型接着層Bに含まれる熱可塑性樹脂は、熱膨張性熱硬化型接着層Aに含まれる熱可塑性樹脂と同一であっても良く異なっても良い。
【0114】
(その他の任意の成分)
熱膨張性熱硬化型接着層Bは、上述した成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば充填剤、軟化剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、粘着付与樹脂、繊維類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、増粘剤、顔料等の着色剤、充填剤などの添加剤を含有するものを使用することができる。
【0115】
(3)任意の構成
本発明の接着シートは、熱膨張性熱硬化型接着層A及びBを少なくとも有するが、必要に応じて任意の構成を有していても良い。本発明の接着シートは、上述した
図1で例示したように熱膨張性熱硬化型接着層Aの一方の面上に直接、熱膨張性熱硬化型接着層Bが積層された態様であってもよく、
図2で例示したように、熱膨張性熱硬化型接着層Aと熱膨張性熱硬化型接着層Bとの間に中間層が介在し、中間層の第1面と熱膨張性熱硬化型接着層Aとが接触し、中間層の第2面と熱膨張性熱硬化型接着層Bとが接触していてもよい。
【0116】
中間層としては、耐熱性を有する基材であることが好ましい。耐熱性のレベルは用途によって異なるが、融点としては150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上がさらに好ましい。
【0117】
なお、上記融点とは、示差走査熱量測定機(DSC)を用いて、上記基材を30℃から昇温速度10℃/分の昇温条件で昇温した際に確認される、最大吸熱ピークを示す温度を指す。
【0118】
上記耐熱性を有する基材としては、具体的にはポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、変性ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。
【0119】
中間層は、1μm以上200μm以下の厚さを有することが好ましく、2μm以上150μm以下の厚さを有することがより好ましく、3μm以上100μm以下の厚さを有することが更に好ましい。中間層の厚さを上記範囲とすることで、本発明の接着シートの熱膨張性熱硬化型接着層A側の面を挿入部材や被挿入部材等の被着体に貼付する際に、上記被着体表面が粗面である場合や凹凸がある場合でも被着体表面形状に十分に追従し、優れた接着性が得られるからである。中間層は、上記耐熱性を有する基材単層から構成されるものであってもよく、同一又は異なる上記耐熱性を有する基材を2層以上積層したものであってもよい。
【0120】
本発明の接着シートは、熱膨張性熱硬化型接着層Aの、熱膨張性熱硬化型接着層B側とは反対側の面に離型ライナーを有していても良い。同様に、本発明の接着シートは、熱膨張性熱硬化型接着層Bの、熱膨張性熱硬化型接着層A側とは反対側の面に離型ライナーを有していても良い。離型ライナーは、樹脂フィルム等の公知のものを用いることができる。
【0121】
(4)その他
本発明の接着シートは、加熱前(膨張前)の総厚が10μm以上600μm以下であることが好ましく、中でも50μm以上500μm以下であることが好ましく、100μm以上400μm以下であることがさらに好ましい。また、加熱後(膨張後)の総厚が20μm以上2500μm以下であることが好ましく、中でも40μm以上2000μm以下であることが好ましく、さらに100μm以上1000μm以下であることが好ましい。なお、接着シートの総厚には、離型ライナーの厚さは含まないものとする。
【0122】
本発明の接着シートは、膨張後(加熱後)のせん断接着強度が、常温(23℃)環境下で3MPa以上であることが好ましく、6MPa以上であることが更に好ましく、9MPa以上であることがより好ましい。挿入部材及び被挿入部材に対する接着保持性能に優れるからである。また、膨張後(加熱後)のせん断接着強度が、150℃環境下で1MPa以上であることが好ましく、4MPa以上であることが更に好ましく、7MPa以上であることがより好ましい。高温環境においても、挿入部材及び被挿入部材に対する接着保持性能に優れ、より高い保持性能を発揮することができるからである。なお、膨張後(加熱後)の常温及び150℃環境下でのせん断接着強度はそれぞれ大きいほど好ましく、特に限定されないが、例えば15MPa以下とすることができる。本発明の接着シートの膨張後(加熱後)のせん断接着強度は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0123】
本発明の接着シートは、例えば熱膨張性熱硬化型接着剤組成物aを離型ライナーに塗布し乾燥することによって熱膨張性熱硬化型接着層Aを形成する工程、熱膨張性熱硬化型接着剤組成物bを別の離型ライナーに塗布し乾燥等することによって熱膨張性熱硬化型接着層Bを形成する工程、熱膨張性熱硬化型接着層Bの一方の面に熱膨張性熱硬化型接着層Aを転写して、それらを圧着する工程を経ることによって製造することができる。
【0124】
また、中間層を有する本発明の接着シートであれば、例えば熱膨張性熱硬化型接着剤組成物aを離型ライナーに塗布し乾燥することによって熱膨張性熱硬化型接着層Aを形成する工程、熱膨張性熱硬化型接着剤組成物bを別の離型ライナーに塗布し乾燥等することによって熱膨張性熱硬化型接着層Bを形成する工程、熱膨張性熱硬化型接着層Aに中間層を貼合する工程、及び、中間層の熱膨張性熱硬化型接着層A側とは反対側の面に熱膨張性熱硬化型接着層Bを貼合する工程を経ることによって製造することができる。
【0125】
本発明の接着シートは、2つ部材の間に使用し、2つ部材間の空隙を充填して部材同士を接着する用途に有用である。中でも、本発明の接着シートは、加熱により熱膨張性熱硬化型接着層A及びBが膨張及び硬化するため、空隙を十分に充填可能となることに加え、高温環境下においても膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層A及びBがそれぞれ高い接着力を保持できることから、例えばハイブリッド自動車等に搭載されるモーターにおける磁石及びモーターのコア部材の様な、高温になる部材や高温環境に晒される部材間の充填および接着に特に有用である。
【0126】
また、本発明の接着シートは、挿入部材と被挿入部材との接着の用途に限定されず、単に2つの部材を接合する用途や、被着体が有する空隙内を充填する用途で用いることができる。例えば、被着体が有する空隙に、本発明の接着シートを載置した後膨張させることによって、上記空隙内の2以上の箇所が上記接着シートによって接着された構成を形成する際にも使用することができる。
【0127】
II.物品
本発明の物品の1つの態様は、第1の被着体と第2の被着体とを有し、上記第2の被着体は空隙が形成されており、上記第1の被着体が上記第2の被着体の上記空隙内に配置されており、上記空隙内において、上記第1の被着体と上記第2の被着体との間に、上記「I.接着シート」の項で説明した接着シートの膨張物が配置されており、上記第1の被着体及び上記第2の被着体のうち一方が、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張物と接着し、他方が上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張物と接着している。
【0128】
本態様の物品によれば、第2の被着体の空隙内において、第1の被着体と第2の被着体との間に上述した「I.接着シート」の項で説明した接着シートにおける熱膨張性熱硬化型接着層AおよびBの膨張物(硬化物)が充填されており、第1の被着体と第2の被着体とが上記熱膨張性熱硬化型接着層AおよびBの膨張物(硬化物)を介して接合されていることから、高温環境下においても高い接着強度を保持することができ、高い耐熱性を有することができる。
【0129】
本態様の物品においては、第1の被着体に接着シートを貼合した状態で第2の被着体が有する空隙に挿入することで、空隙の幅や大きさによらず容易に物品を製造できる観点から、上記第1の被着体が上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張物と接着し、上記第2の被着体が上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張物と接着していることが好ましい。
【0130】
また、本発明の物品の別の態様は、第1の被着体と第3被着体と第4被着体とを有し、上記第3の被着体及び第4の被着体の間に空隙を有し、上記第1の被着体が上記空隙内に配置されており、上記空隙内において、上記第1の被着体と上記第3の被着体との間及び上記第1の被着体と上記第4の被着体との間にそれぞれ上記「I.接着シート」の項で説明した接着シートの膨張物が配置されており、上記第1の被着体、並び上記第3の被着体及び第4の被着体の少なくとも一方が、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張物と接着し、他方が上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張物と接着している。
【0131】
本態様の物品によれば、第3の被着体及び第4の被着体の間に設けられた空隙内において、第1の被着体と第3の被着体との間、及び第1の被着体と第4の被着体との間に、それぞれ上述した「I.接着シート」の項で説明した接着シートにおける熱膨張性熱硬化型接着層AおよびBの膨張物が充填されており、第1の被着体と第3の被着体、及び第1の被着体と第4の被着体とが、それぞれ上記熱膨張性熱硬化型接着層AおよびBの膨張物を介して接合されていることから、高温環境下においても高い接着強度を保持することができる。
【0132】
本態様の物品においては、第1の被着体に接着シートを貼合した状態で空隙に挿入することで、空隙の幅や大きさによらず容易に物品を製造できる物品の製造容易性の観点から、上記第1の被着体が上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張物と接着し、第3の被着体及び第4の被着体が上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張物と接着していることが好ましい。
【0133】
本発明の物品としては、各被着体の種類を適宜選択することができるため、特に限定されないが、例えば自動車や民生機器、ロボット等に使用されるモーターが挙げられる。
とすることができる。
【0134】
本発明の物品は、例えば後述する物品の製造方法により製造することができる。
【0135】
III.物品の製造方法
本発明の物品の製造方法は、2つの部材を上述した「I.接着シート」の項で説明した接着シートの膨張物を介して接着する製造方法であり、特に、空隙を有する被挿入部材と、上記空隙内に配置された挿入部材とを、上述した「I.接着シート」の項で説明した接着シートの膨張物を介して接着する製造方法である。
【0136】
本発明の物品の製造方法の1つの態様としては、第1の被着体の表面又は第2の被着体に形成された空隙の表面に上記「I.接着シート」の項で説明した接着シートの第1面を貼合する工程[1A]と、上記空隙内に上記第1の被着体を挿入する工程[2A]と、上記接着シートを加熱して上記熱膨張性熱硬化型接着層A及び上記熱膨張性熱硬化型接着層Bを膨張及び硬化させて、上記接着シートの膨張物を介して上記第1の被着体と上記第2の被着体とを接着する工程[3A]と、を有する。
【0137】
図3に例示するように、まず、第1の被着体11の両面に上記「I.接着シート」の項で説明した接着シート10の第1面、すなわち接着シート10の熱膨張性熱硬化型接着層A(
図3(a)中の符号1)をそれぞれ貼合する(
図3(a)、工程[1A])。次に、第2の被着体12に形成された空隙Sに、接着シート10が貼合された第1の被着体11を挿入する(
図3(b)、工程[2A])。続いて、接着シート10を加熱して熱膨張性熱硬化型接着層A及び熱膨張性熱硬化型接着層B(
図3(c)中の符号1及び2)を膨張及び硬化させる。このとき、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張物1’及び上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張物2’により上記空隙Sが充填され、膨張後の接着シート10’の第2面、すなわち上記熱膨張性接着層Bの膨張物2’の表面と上記第2の被着体12の空隙表面とが接触して貼合される。これにより、接着シートの膨張物10’を介して第1の被着体11と第2の被着体12とが接着されてなる物品20が得られる(
図3(c)、工程[3A])。
【0138】
本発明の物品の製造方法の別の態様としては、第1の被着体の表面又は第3の被着体及び第4の被着体により構成される空隙の表面に上記「I.接着シート」の項で説明した接着シートの第1面を貼合する工程[1B]と、上記空隙に、上記第1の被着体を挿入する工程[2B]と、上記接着シートを加熱して上記熱膨張性熱硬化型接着層A及び上記熱膨張性熱硬化型接着層Bを膨張及び硬化させて、上記接着シートの膨張物を介して上記第1の被着体と上記第3の被着体及び上記第4の被着体とを接着する工程[3B]と、を有する。
【0139】
図4に例示するように、まず第1の被着体11の両面に上記「I.接着シート」の項で説明した接着シート10の第1面、すなわち熱膨張性熱硬化型接着層A(
図4(a)中の符号1)の面をそれぞれ貼合する(
図4(a)、工程[1B])。次に、第3の被着体13と第4の被着体114とにより構成される空隙Sに、接着シート10が貼合された第1の被着体11を挿入する(
図4(b)、工程[2B])。続いて、接着シート10を加熱して熱膨張性熱硬化型接着層A及び熱膨張性熱硬化型接着層B(
図4(c)中の符号1及び2)を膨張及び硬化させる。このとき、上記熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張物(
図4(c)中の符号1’)と上記熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張物(
図4(c)中の符号2’)により上記空隙Sが充填され、膨張後の接着シート10’の第2面、すなわち上記熱膨張性接着層Bの膨張物2’の表面と上記第3の被着体13の空隙を構成する面及び上記第4の被着体14の空隙を構成する表面とが接触して貼合される。これにより、第1の被着体11の一方の面と第3の被着体13、第1の被着体11の他方の面と及び第4の被着体14とが、それぞれ接着されてなる物品20が得られる(
図3(c)、工程[3B])。
【0140】
本発明の物品の製造方法によれば、挿入部材である第1の被着体を被挿入部材である第2の被着体の空隙、又は第3の被着体と第4の被着体とで構成される空隙に挿入する際に、接着シートの第1面を所望の被着体に貼合することで、挿入時の接着シートの貼付位置ずれの発生を防ぐことができ、接着シートの第2面が露出しているため、接着シート表面の粘着性による挿入阻害や他の被着体に付着することによる接着シートの位置ずれを防ぐことができる。さらに、加熱後の接着シートが高温でも高い接着力を保持できるため、耐熱性の高い部品を製造することができる。
【0141】
第1の被着体は、挿入部材に相当する。また、空隙が形成された第2の被着体、並びに空隙を構成する第3の被着体及び第4の被着体は、被挿入部材に相当する。第2の被着体における空隙とは、例えば被着体に形成された穴、溝、開口等が挙げられる。また、第3の被着体及び第4の被着体との間の空隙とは、例えば、第3の被着体と第4の被着体とが離間して配置された状態における離間空間や、第3の被着体と第4の被着体とで形成された穴、溝、開口等が挙げられる。
【0142】
工程[1A]、[1B]においては、挿入部材又は被挿入部材となる被着体の一方の被着体の表面に、接着シートの第1面(熱膨張性熱硬化型接着層A側の面)を貼合する。なお、
図3及び
図4では、工程[1A]、[1B]において接着シートの第1面を第1の被着体の両面(対向する2面)にそれぞれ貼合したが、第1の被着体の少なくとも1面に接着シートの第1面を貼合してもよく、3面以上に接着シートの第1面を貼合してもよい。
【0143】
また、工程[1A]、[1B]においては、接着シートの第1面を第1の被着体に貼合してもよく、工程[1A]の場合であれば接着シートの第1面を第2の被着体に形成された空隙の表面に貼合してもよく、一方、工程[1B]の場合であれば第3の被着体及び第4の被着体により構成された空隙の表面に貼合しても良い。このとき、空隙の表面のうち1面に接着シートの第1面を貼合しても良く、2面以上に接着シートの第1面を貼合してもよい。
【0144】
被着体の表面の2面以上に接着シートの第1面を貼合する場合、被着体の複数の面に対して単一の接着シートが連続して貼合されていてもよく、被着体の面ごとに個々に粘着シートが貼合されていても良い。例えば、接着シートを第1の被着体に貼合する場合は、第1の被着体の対向する2面にそれぞれに別々の接着シートの第1面を貼合して、第1の被着体を2つの接着シートで挟持してもよく、1つの接着シートで第1の被着体の複数の表面を覆うように貼合してもよい。同様に、接着シートを第2の被着体に形成された空隙や第3の被着体及び第4の被着体により構成される空隙の表面(被着体の表面)に貼合する場合は、空隙の表面のうち対向する2面にそれぞれ別々の接着シートの第1面を貼合してもよく、1つの接着シートで空隙の複数の表面を覆うように貼合してもよい。
【0145】
被着体の表面に接着シートの第1面(熱膨張性熱硬化型接着層A側の面)を貼合する際の条件は特に限定されないが、例えば常温(23℃)~40℃の範囲で貼合することが好ましく、常温(23℃)で貼ることがより好ましい。常温(23℃)で貼合することが、熱膨張性熱硬化型接着層Aの初期接着性を用いて容易に貼合可能となり、また、熱膨張性熱硬化型接着層Bの初期接着性を保持できる点で好ましい。
【0146】
工程[2A]においては、第2の被着体に形成された空隙に第1の被着体を挿入する。また、工程[2B]においては、第3の被着体と第4の被着体との間の空隙に第1の被着体を挿入する。工程[2A]、[2B]においては、被着体に貼合された接着シートは、第2面(熱膨張性熱硬化型接着層B側の面)が最表面に位置するため、接着シートが第1の被着体に貼合されている場合は空隙表面に接着シートが付着せず挿入可能となり、付着しても挿入時に受ける力により接着シートが剥がれにくいため仮固定性を維持できるため、挿入性が向上する。同様に、接着シートが空隙表面に貼合されている場合は第1の被着体に接着シートが付着せず挿入可能となり、付着しても挿入時に受ける力により接着シートが剥がれにくいため仮固定性を維持できるため、挿入性が向上する。
【0147】
工程[3A]、[3B]においては、空隙に第1の被着体を挿入した状態で、接着シートを加熱して熱膨張性熱硬化型接着層A及び熱膨張性熱硬化型接着層Bを膨張及び硬化させる。加熱は、接着シートの熱膨張性熱硬化型接着層A及び熱膨張性熱硬化型接着層Bに直接行っても良く、被着体を含む全体に対して行ってもよい。加熱方法としては、非接触型でもよく接触型でもよく、熱風加熱、電熱器との接触による加熱、赤外線ヒーターやハロゲンヒーター等の光照射による加熱、誘電加熱、誘導加熱等の加熱方法を用いることができる。
【0148】
工程[3A]、[3B]における加熱温度は、熱膨張性熱硬化型接着層A及び熱膨張性熱硬化型接着層Bが膨張し硬化することが可能な温度で設定することができる。中でも、熱膨張性熱硬化型接着層A及びBの硬化並びに膨張剤の膨張温度(膨張開始温度)に対応した温度であることが好ましく、膨張剤の膨張温度以上であることが好ましい。具体的には、80℃~350℃であることが好ましく、100℃~250℃であることが更に好ましく、150℃~200℃であることがより好ましい。
【0149】
また、工程[3A]、[3B]における加熱時間は、熱膨張性熱硬化型接着層A及び熱膨張性熱硬化型接着層Bが膨張し硬化することが可能な時間で設定することができ、膨張時間以上であることが好ましい。具体的には、5分~300分であることが好ましく、10℃~200分であることがより好ましく、20分~100分であることがさらに好ましい。上記加熱時間とすることで、被着体の熱損傷の抑制と、部材の強固な接合を好適に行うことが出来る。
【0150】
工程[3A]、[3B]では、空隙内において接着シートが加熱により膨張することで空隙が充填されるとともに、工程[3A]の場合であれば接着シートの膨張物を介して第1の被着体と第2の被着体とが接着され、一方、工程[3B]の場合であれば第1の被着体と上記第3の被着体及び上記第4の被着体とが接着される。
空隙内において、接着シートが加熱により膨張することで、接着シートが設けられていない被着体に熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張物が接触可能となる。このとき、熱膨張性熱硬化型接着層A及びBの膨張物は、いずれも加熱硬化により接着力が発現されるため、挿入部材である第1の被着体と、被挿入部材である第2の被着体又は上記第3の被着体及び上記第4の被着体とを、強固に接着させることができる。また、熱膨張性熱硬化型接着層A及びBの膨張物は、硬化物であり耐熱性が高いため、高温環境において高い接着力を維持することが可能となる。
【0151】
本発明の物品の製造方法により得られる物品としては、特に限定されないが、例えばハイブリッド自動車等に搭載されるモーターが挙げられる。上記モーターは、具体的には、接着シートの熱膨張性熱硬化型接着層Aと磁石等の部品の一部とを予め接着し、上記モーターを構成するコア部材が有する空隙に接着シートが貼合した上記部品を挿入し載置した後、熱膨張性熱硬化型接着層A及びBを加熱し膨張させることによって製造することができる。したがって、本発明の物品の製造方法は、モーターの製造方法として有用である。
【0152】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0153】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。
【0154】
(調製例1)
<熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)の調製>
エポキシ樹脂1(BPA型、エポキシ当量8,000g/eq.、固形(25℃)、軟化点200℃以上)を40質量部と、エポキシ樹脂2(BPA型、エポキシ当量188g/eq.、1.1万mPa・s(25℃))を35質量部と、エポキシ樹脂3(ジシクロペンタジエン型、エポキシ当量280g/eq.、固形(25℃)、軟化点100℃)を25質量部とを配合し、熱硬化性樹脂組成物(a-1)を調整した。この時、上記熱硬化性樹脂組成物(a-1)の総エポキシ当量は357g/eq.であった。次に、硬化剤1(ジシアンジアミド、固形)を4.7質量部と、硬化剤2(2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、固形)を3質量部と、膨張剤1(熱膨張カプセル、膨張開始温度125℃、平均粒子径13μm)を1質量部とを、メチルエチルケトン60質量部に溶解することによって、溶液状の熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)を調整した。
【0155】
(調製例2)
<熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-2)の調製>
エポキシ樹脂1の使用量を40質量部から30質量部に変更し、エポキシ樹脂2の代わりにエポキシ樹脂4(変性BPA型、エポキシ当量400g/eq.、140万mPa・s(25℃))を30質量部使用し、エポキシ樹脂3の代わりにエポキシ樹脂5(変性ノボラック型、エポキシ当量160g/eq.、半固形(25℃))を40質量部使用し、硬化剤1の使用量を4.7質量部から5.7質量部に変更すること以外は、調製例1と同様の方法で熱硬化性樹脂組成物(a-2)及び溶液状の熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-2)を調製した。この時、上記熱硬化性樹脂組成物(a-2)の総エポキシ当量は304g/eq.であった。
【0156】
(調製例3)
<熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-1)の調製>
エポキシ樹脂1の使用量を40質量部から35質量部に変更し、エポキシ樹脂2の使用量を35質量部から7質量部に変更し、エポキシ樹脂3の使用量を25質量部から58質量部変更し、硬化剤1の使用量を4.7質量部から4.1質量部にすること以外は、調製例1と同様の方法で熱硬化性樹脂組成物(b-1)及び溶液状の熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-1)を調製した。この時、上記熱硬化性樹脂組成物(b-1)の総エポキシ当量は402g/eq.であった。
【0157】
(調製例4)
<熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-2)の調製>
エポキシ樹脂1の使用量を40質量部から35質量部に変更し、エポキシ樹脂2の使用量を35質量部から15質量部に変更し、エポキシ樹脂3の使用量を25質量部から50質量部変更し、硬化剤1の使用量を4.7質量部から4.6質量部にすること以外は、調製例1と同様の方法で熱硬化性樹脂組成物(b-2)及び溶液状の熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-2)を調製した。この時、上記熱硬化性樹脂組成物(b-2)の総エポキシ当量は381g/eq.であった。
【0158】
(調製例5)
<熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-3)の調製>
エポキシ樹脂1の使用量を40質量部から35質量部に変更し、エポキシ樹脂2の代わりにエポキシ樹脂4を7質量部使用し、エポキシ樹脂3の代わりにエポキシ樹脂5を58質量部使用し、硬化剤1の使用量を4.7質量部から4.4質量部に変更すること以外は、調製例1と同様の方法で熱硬化性樹脂組成物(b-3)及び溶液状の熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-3)を調製した。この時、上記熱硬化性樹脂組成物(b-3)の総エポキシ当量は260g/eq.であった。
【0159】
(調製例6)
<熱硬化型接着剤組成物(b’-1)の調製>
膨張剤1の使用量を1質量部から0質量部に変更すること以外は、調製例3と同様の方法で熱硬化性樹脂組成物(b’-1)及び溶液状の熱硬化型接着剤組成物(b’-1)を調製した。この時、上記熱硬化性樹脂組成物(b’-1)の総エポキシ当量は402g/eq.であった。
【0160】
(実施例1)
上記調整例1で得た熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)を、離型ライナー(厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面がシリコーン化合物によって剥離処理されたもの)の表面に、棒状の金属アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが62μmになるように塗工した。得られた塗工物を85℃の乾燥機に5分間投入し乾燥することによって、厚さ62μmのシート状の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)を得た。
【0161】
上記で得た熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の表面に、厚さ25μmのポリイミドフィルムを重ね、23℃下にてラミネーターで線圧3N/mmで貼付し、上記熱硬化性膨張性接着層(A-1)の片面にポリイミドフィルムを積層した積層体を得た。
【0162】
次に、上記調整例3で得た熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-1)を、離型ライナーの表面に、棒状の金属アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが62μmになるように塗工した。得られた塗工物を85℃の乾燥機に5分間投入し乾燥することによって、厚さ62μmのシート状の熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)を得た。
【0163】
上記熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)を、上記熱硬化性膨張性接着層(A-1)の片面にポリイミドフィルムを積層した積層体の、ポリイミドフィルム面側に重ね、予め50℃に加熱したラミネーターで線圧3N/mmで貼付することで、厚さ149μm(離型ライナーの厚さ除く。以下同様。)の接着シート(X-1)を得た。接着シート(X-1)は、熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の面側を接着シートの第1面側とし、熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)の面側を接着シートの第2面側とした。接着シート(X-1)の第1面及び第2面のせん断接着強度、並びに熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)及び熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)のせん断接着強度は後述する表1に示す値であった。また、150℃60分加熱後の接着シート(X-1)における硬化後(膨張後)の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)のガラス転移温度は132℃であり、熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)のガラス転移温度は165℃であった。なお、ガラス転移温度は、先述の「I.接着シート」の項で説明した方法により測定した。以下の実施例及び比較例においても同様とする。
【0164】
なお、接着シートの第1面及び第2面のせん断接着強度、並びに各熱膨張性熱硬化型接着層のせん断接着強度は、後で説明する方法で測定した。他の実施例及び比較例についても同様である。
【0165】
(実施例2)
熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-1)の代わりに熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-2)を使用して熱膨張性熱硬化型接着層(B-2)を作製し、熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)の代わりに熱膨張性熱硬化型接着層(B-2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、接着シート(X-2)を得た。接着シート(X-2)は、熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の面側を接着シートの第1面側とし、熱膨張性熱硬化型接着層(B-2)の面側を接着シートの第2面側とした。接着シート(X-2)の第1面及び第2面のせん断接着強度、並びに熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)及び熱膨張性熱硬化型接着層(B-2)のせん断接着強度は後述する表1に示す値であった。また、150℃60分加熱後の接着シート(X-2)における硬化後(膨張後)の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)のガラス転移温度は132℃であり、熱膨張性熱硬化型接着層(B-2)のガラス転移温度は153℃であった。
【0166】
(実施例3)
熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)の代わりに熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-2)を使用して熱膨張性熱硬化型接着層(A-2)を作製し、熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-1)の代わりに熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-3)を使用して熱膨張性熱硬化型接着層(B-3)を作製し、熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の代わりに熱膨張性熱硬化型接着層(A-2)を使用し、熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)の代わりに熱膨張性熱硬化型接着層(B-3)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、接着シート(X-3)を得た。接着シート(X-3)は、熱膨張性熱硬化型接着層(A-2)の面側を接着シートの第1面側とし、熱膨張性熱硬化型接着層(B-3)の面側を接着シートの第2面側とした。接着シート(X-3)の第1面及び第2面のせん断接着強度、並びに熱膨張性熱硬化型接着層(A-2)及び熱膨張性熱硬化型接着層(B-3)のせん断接着強度は後述する表1に示す値であった。また、150℃60分加熱後の接着シート(X-3)における硬化後(膨張後)の熱膨張性熱硬化型接着層(A-2)のガラス転移温度は125℃であり、熱膨張性熱硬化型接着層(B-3)のガラス転移温度は159℃であった。
【0167】
(実施例4)
上記調整例1で得た熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(a-1)を、離型ライナー(厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面がシリコーン化合物によって剥離処理されたもの)の表面に、棒状の金属アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが75μmになるように塗工した。得られた塗工物を85℃の乾燥機に5分間投入し乾燥することによって、厚さ75μmのシート状の熱膨張性熱硬化型接着層(A-4)を得た。
【0168】
次に、上記調整例3で得た熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-1)を、離型ライナーの表面に、棒状の金属アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが75μmになるように塗工した。得られた塗工物を85℃の乾燥機に5分間投入し乾燥することによって、厚さ75μmのシート状の熱膨張性熱硬化型接着層(B-4)を得た。
【0169】
上記熱膨張性熱硬化型接着層(B-4)を、上記熱硬化性膨張性接着層(A-4)の接着層側に重ね、予め50℃に加熱したラミネーターで線圧3N/mmで貼付することで、厚さ150μmの接着シート(X-4)を得た。接着シート(X-4)は、熱膨張性熱硬化型接着層(A-4)の面側を接着シートの第1面側とし、熱膨張性熱硬化型接着層(B-4)の面側を接着シートの第2面側とした。接着シート(X-4)の第1面及び第2面のせん断接着強度、並びに熱膨張性熱硬化型接着層(A-4)及び熱膨張性熱硬化型接着層(B-4)のせん断接着強度は後述する表1に示す値であった。また、150℃60分加熱後の接着シート(X-4)における硬化後(膨張後)の熱膨張性熱硬化型接着層(A-4)のガラス転移温度は132℃であり、熱膨張性熱硬化型接着層(B-4)のガラス転移温度は165℃であった。
【0170】
(比較例1)
熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)の代わりに熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、接着シート(X’-1)を得た。接着シート(X’-1)は、任意で選択される一方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の面側を接着シートの第1面側とし、他方の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の面側を接着シートの第2面側とした。接着シート(X’-1)の第1面及び第2面のせん断接着強度、並びに熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)のせん断接着強度は後述する表1に示す値であった。また、150℃60分加熱後の接着シート(X’-1)における硬化後(膨張後)の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)のガラス転移温度は、いずれも実施例1の接着シート(X-1)における硬化後(膨張後)の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)のガラス転移温度と同じであった。
【0171】
(比較例2)
熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の代わりに熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、接着シート(X’-2)を得た。接着シート(X’-2)は、任意で選択される一方の熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)の面側を接着シートの第1面側とし、他方の熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)の面側を接着シートの第2面側とした。接着シート(X’-2)の第1面及び第2面のせん断接着強度、並びに熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)のせん断接着強度は後述する表1に示す値であった。また、150℃60分加熱後の接着シート(X’-2)における硬化後(膨張後)の熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)のガラス転移温度は、いずれも実施例1の接着シート(X-1)における硬化後(膨張後)の熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)のガラス転移温度と同じであった。
【0172】
(比較例3)
熱膨張性熱硬化型接着剤組成物(b-1)の代わりに熱硬化型接着剤組成物(b’-1)を使用して熱硬化型接着層(B’-1)を作製し、熱膨張性熱硬化型接着層(B-1)の代わりに熱硬化型接着層(B’-1)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、接着シート(X’-3)を得た。接着シート(X’-3)は、熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の面側を接着シートの第1面側とし、熱硬化型接着層(B’-1)の面側を接着シートの第2面側とした。接着シート(X’-3)の第1面及び第2面のせん断接着強度、並びに熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)及び(B’-1)のせん断接着強度は後述する表1に示す値であった。また、150℃60分加熱後の接着シート(X’-2)における硬化後(膨張後)の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)のガラス転移温度は、実施例1の接着シート(X-1)における硬化後(膨張後)の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)のガラス転移温度と同じであり、硬化後(膨張後)の熱膨張性熱硬化型接着層(B’-1)のガラス転移温度は165℃℃であった。
【0173】
[評価1:膨張率の測定]
上記実施例および比較例の接着シートを作製する際に用いた、離型ライナー上の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)~(A-2)及び(B-1)~(B-3)、並びに熱硬化型接着層(B’-1)を試験サンプルとした。上記試験サンプルの加熱前の熱膨張性熱硬化型接着層又は熱硬化型接着層の厚さを、厚み計を用いて測定した。次に、上記試験サンプルを150℃で60分間加熱し、上記加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層又は熱硬化型接着層の厚さを、厚み計を用いて測定した。上記膨張率は、以下の式にしたがって算出した。
膨張率[%]=加熱後の熱膨張性熱硬化型接着層の厚さ[μm]/加熱前の熱膨張性熱硬化型接着層の厚さ[μm]×100[%]
【0174】
[評価2:加熱前のせん断接着強度の測定]
(評価2-1:加熱前の熱膨張性熱硬化型接着層のせん断接着強度の測定)
上記実施例および比較例の接着シートを作製する際に用いた、離型ライナー上の熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)~(A-2)及び(B-1)~(B-3)、並びに熱硬化型接着層(B’-1)を、10mm×10mmの大きさに裁断したものを試験サンプルとした。幅15mm×長さ70mm×厚さ0.5mmの2枚の表面平滑なアルミニウム板を脱脂処理し、一方のアルミニウム板の上面に上記試験サンプルを2kgのハンドローラーを用いて23℃で圧着した。
【0175】
次に、上記アルミニウム板に圧着した試験サンプルの離型ライナーを剥がし、試験サンプルの上面に、脱脂処理した平滑な表面を有する他のアルミニウム板を重ね、0.5MPaの荷重で10秒間23℃で圧着した。23℃環境下に5分間放置し上記2枚のアルミニウム板の端部をそれぞれチャッキングし、テンシロン引張試験機[株式会社エーアンドデイ製、型式:RTM-100]を用い、180度方向に10mm/分で引張試験した際の熱膨張性熱硬化型接着層のせん断方向の接着力を測定した。
【0176】
(評価2-2:加熱前の接着シートの第1面及び第2面におけるせん断接着強度の測定)
上記実施例および比較例の接着シートを、10mm×10mmの大きさに裁断したものを試験サンプルとした。幅15mm×長さ70mm×厚さ0.5mmの2枚の表面平滑なアルミニウム板を脱脂処理し、一方のアルミニウム板の上面に、試験サンプル固定用の強接着剤(2液混合系の常温硬化型アクリル接着剤、セメダイン社製 メタルロック)を塗布し、試験サンプルの第2面(接着シートの第2面)側の離型ライナーを剥がして、試験サンプルの第2面を上記強接着剤を介して上記一方のアルミニウム板に重ね、サンプルを2kgのハンドローラーを用いて23℃で圧着した。次に、上記アルミニウム板に圧着した試験サンプルの第1面側の離型ライナーを剥がし、試験サンプルの上面(接着シートの第2面)に、脱脂処理した平滑な表面を有する他方のアルミニウム板を重ね、0.5MPaの荷重で10秒間23℃で圧着した。23℃環境下に5分間放置し上記2枚のアルミニウム板の端部をそれぞれチャッキングし、テンシロン引張試験機[株式会社エーアンドデイ製、型式:RTM-100]を用い、180度方向に10mm/分で引張試験した際のせん断方向の接着力を測定した。このときの接着力を、接着シートの第1面のせん断接着強度とした。
【0177】
また、離型ライナーを剥がした試験サンプルの第1面(接着シートの第1面)と一方のアルミニウム板とを上記強接着剤を介して圧着し、他方のアルミニウム板と試験サンプルの第2面(接着シートの第2面)を圧着したこと以外は、上述の測定方法と同様にしてせん断方向の接着力を測定した。このとき接着力を、接着シートの第2面のせん断接着強度とした。
【0178】
[評価3:部材への仮固定性の評価]
上記実施例及び比較例で得た接着シートを15mm×15mmの大きさに裁断したものを試験サンプルとした。次に、上記試験サンプルに対し、接着シートの1面側の離型ライナーを剥がし、幅40mm×長さ50mm×厚さ3mmの脱脂処理した平滑なSUS板の中央に重ね、0.5MPaの荷重で10秒間23℃で圧着し、試験サンプルを固定した。
【0179】
その後、23℃下でSUS板を床に対して90°になるように立たせ、SUS板に貼付した試験サンプルが床から高さ15cmとなるようにSUS板を持ち上げ、垂直に落下させた。これを10回繰り返した。その後、上記固定した試験サンプルの落下によるズレ量を測量し、以下の判断基準に従って、部材への仮固定性を評価した。
(判断基準)
◎:試験サンプルのズレ量が0mmであった。
〇:試験サンプルのズレ量が1mm未満であった。
△:試験サンプルのズレ量が1mm以上であった。
×:試験サンプルがSUS板から剥がれた。
【0180】
[評価4:部材への挿入性の評価方法]
上記実施例及び比較例で得た接着シートを15mm×15mmの大きさに裁断した。次に、上記接着シートの1面側の面の離型ライナーを剥がし、幅30mm×長さ30mm×厚さ1mmの脱脂処理した平滑なSUS板の一方の面の中央に重ね、0.5MPaの荷重で10秒間23℃で圧着し、接着シートを固定した。その後、上記SUS板に固定した接着シートの2面側の離型ライナーを除去したものを試験サンプルとした。
【0181】
次に、幅70mm×長さ50mm×厚さ1.5mmの2枚の平滑なガラス板を用意し、一方のガラス板(C1)に、幅5mm×長さ50mmの2本のスペーサーを60mmの間隔をあけて並行に並べ、接着した。その後、上記スペーサーの上にもう一方のガラス板(C2)を重ね、スペーサーと接着させることで、2枚のガラスと2本のスペーサーからなる空隙を作製した。
【0182】
その後、上記試験サンプルを、床に対して90°になるように立たせ、2枚のガラスと2本のスペーサーからなる空隙に垂直に挿入し通過させ、上記試験サンプルがガラスと接着することなく通過できるスペーサーの厚みを測定し、以下の判断に従って、試験サンプルの部材への挿入性を評価した。
(判断基準)
◎:試験サンプルは、スペーサーの厚みを、接着シートとSUS板の総厚に対して50μm厚くした際も通過できた。
〇:試験サンプルは、スペーサーの厚みを、接着シートとSUS板の総厚に対して50μm厚くした際に通過できず、75μm厚くした際に通過できた。
△:試験サンプルは、スペーサーの厚みを、接着シートとSUS板の総厚に対して75μm厚くした際に通過できず、100μm厚くした際に通過できた。
×:試験サンプルは、スペーサーの厚みを、接着シートとSUS板の総厚に対して100μm厚くした際も通過できなかった。
【0183】
[評価5:加熱後(膨張後)の接着シートのせん断接着強度の測定方法]
幅15mm×長さ70mm×厚さ0.5mmの2枚の表面平滑なアルミニウム板51、52を脱脂処理し、
図5のように、一方のアルミニウム板51の上面の端部に、幅5mmの2本のスペーサー53を、12mmの間をあけて平行に並べ、接着した。上記スペーサー53は、スペーサー53と接着に用いた接着テープの総厚が、接着シートの総厚に対して150μm厚くなるように調製したものを使用した。次に、上記アルミニウム板51の上面側で、かつ、上記2本のスペーサー53の間の空隙Sに、予め10mm×10mmの大きさに裁断した上記実施例及び比較例で得た接着シート10を、上記接着シート10の第1面側の面の離型ライナーを剥がして貼付し、2kgのハンドローラーを用いて圧着した。
【0184】
次に、上記接着シート10の2面側の離型ライナーを剥がし、上記接着シートの上面(第2面)に、脱脂処理した平滑な表面を有する他のアルミニウム板52(幅15mm×長さ70mm×厚み0.5mm)を載置し、これらをクリップで固定した。上記固定したものを、150℃で60分間加熱した後、23℃環境下に30分間放置し冷却した。次に、上記クリップを外したものを試験サンプルとし、上記2枚のアルミニウム板51,52の端部をそれぞれチャッキングし、テンシロン引張試験機[株式会社エーアンドデイ製、型式:RTM-100]を用い、23℃、及び150℃で180度方向に10mm/分で引張試験した際のせん断方向の接着力をそれぞれ測定した。
【0185】
各評価結果をそれぞれ下記表に示す。
【0186】
【0187】
【0188】
実施例1~4の接着シートは、部材への仮固定性及び挿入性が良好であり、且つ加熱膨張後において、常温及び高温環境下で高いせん断接着力を示した。一方、比較例1の接着シートは、加熱前において接着シートの第1面のせん断接着力が第2面のせん断接着力よりも小さく挿入性が得られなかった。また、比較例2の接着シートは、加熱前において接着シートの第1面及び第2面が共に同じせん断接着力であり仮固定性が得られなかった。比較例3の接着シートは、加熱膨張後において常温及び高温環境下でのせん断接着力が、実施例の接着シートよりも劣っており、特に高温環境でのせん断接着力が得られなかった。これは、比較例3の接着シートが有する熱硬化型接着層(B’-1)が加熱により膨張しないため、2つの被着体間の空隙を十分に充填できず、他方の被着体に十分密着できなかったためと推量される。また、比較例3の接着シートは、熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)のみを膨張させて密着させており、
図9に示すような限られた空間内においては、比較例3における熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の膨張率が、他より大きくなると推量される。このため、比較例3の接着シートの加熱後(膨張後)は、熱膨張性熱硬化型接着層(A-1)の密度が疎になり、その結果、加熱後に十分な接着強度を発現及び保持できなくなったと推量される。
【符号の説明】
【0189】
1 … 熱膨張性熱硬化型接着層A
1’ … 膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層A(熱膨張性熱硬化型接着層Aの膨張物)
2 … 熱膨張性熱硬化型接着層B
2’ … 膨張後の熱膨張性熱硬化型接着層B(熱膨張性熱硬化型接着層Bの膨張物)
3 … 中間層
10 … 接着シート
10’ … 膨張後の接着シート(接着シートの膨張物)
20 … 物品