(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】接着剤、積層体、包装材
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20230221BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20230221BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230221BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230221BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230221BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20230221BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20230221BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J175/08
B32B27/00 D
B65D65/40 D
C08G18/10
C08G18/40 018
C08G18/42
C08G18/42 044
C08G18/48
(21)【出願番号】P 2022567799
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2022028293
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2021128883
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】細野 月子
(72)【発明者】
【氏名】廣田 安信
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-59362(JP,A)
【文献】特表2019-513854(JP,A)
【文献】特開平10-53753(JP,A)
【文献】特開2016-89035(JP,A)
【文献】特開平4-81414(JP,A)
【文献】特開2000-290631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-5/10
C09J9/00-201/10
C08G18/00-18/87
B65D65/00-65/46
B32B27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール組成物(X)とポリイソシアネート組成物(Y)とを含み、
前記ポリオール組成物(X)は、多価アルコール(a)と多価カルボン酸(b)とを含む組成物の反応生成物であるポリエステルポリオール(A)を含み、
前記ポリイソシアネート組成物(Y)は、多価アルコール(c)と多価カルボン酸(d)との反応生成物であるポリエステルポリオール(C'1)を含むポリオール組成物(y)とイソシアネート化合物(C'2)との反応生成物であるウレタンプレポリマー(C)を含み、
前記多価アルコール(a)はアルキル側鎖を1つのみ有するグリコール(a1)
及びジエチレングリコールを含み、
前記多価アルコール(c)はアルキル側鎖を1つのみ有するグリコール(c1)を含み、
前記ポリオール組成物(X)と前記ポリイソシアネート組成物(Y)の総量に占める前記グリコール(a1)および前記グリコール(c1)の総量が5質量%以上20質量%以下である2液硬化型接着剤。
【請求項2】
前記多価カルボン酸(b)がアジピン酸を含む請求項
1に記載の2液硬化型接着剤。
【請求項3】
前記ポリオール組成物(y)がポリエーテルポリオール(C'3)を含む請求項
1に記載の2液硬化型接着剤。
【請求項4】
前記多価カルボン酸(d)がアジピン酸を含む請求項
1に記載の2液硬化型接着剤。
【請求項5】
無溶剤型である請求項
1に記載の2液硬化型接着剤。
【請求項6】
第一の基材と、第二の基材と、前記第一の基材と前記第二の基材とを貼り合わせる接着層とを含み、前記接着層が、請求項1~
5のいずれか一項に記載の2液硬化型接着剤の硬化塗膜である積層体。
【請求項7】
請求項
6に記載の積層体からなる包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤、当該接着剤を用いて得られる積層体、包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
各種包装材、ラベル等に用いられる積層体は、各種多種多様なプラスチックフィルム、金属箔、紙等の基材のラミネートにより、意匠性、機能性、保存性、利便性、耐輸送性等が付与される。該積層体を袋状に成形してなる包装材は、食品、医薬品、洗剤等の包装材として使用されている。
【0003】
従来、包装材に用いられる積層体は、揮発性の有機溶剤に溶解した接着剤(溶剤型ラミネート接着剤と称される場合がある)を基材に塗工し、オーブンを通過する過程で有機溶剤を揮発させ、別の基材を貼り合わせるドライラミネーション方式により得るものが主流であったが、近年、環境負荷の低減および作業環境の改善の観点から、揮発性の有機溶剤を含有しない、反応型2液タイプのラミネート接着剤(以下無溶剤型接着剤と称する)の需要が高まりつつある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無溶剤型接着剤は乾燥工程がなく溶剤の排出がないこと、省エネルギーでランニングコストが低いこと、プラスチックフィルム同士を貼り合せた後の積層体や、プラスチックフィルムと金属箔や金属蒸着層とを貼り合せた後の積層体に溶剤が残留する懸念がないこと等の多くのメリットを持つ。一方で、無溶剤型接着剤に用いられる成分は、40℃~100℃程度に加温した際に塗工可能な粘度になるよう分子量を低く設計する必要があり、積層体のボイル耐性が満足いく水準にないという課題があった。
【0006】
また包装材用の積層体では一般的に、(内容物から見て)最外層となる基材の裏側に印刷インキにより印刷層が設けられ、印刷層と他の基材とが接着剤を介して貼り合わせられることになる。無溶剤型接着剤に用いられるような低分子量のポリオールは印刷層を再溶解させやすいという課題もあった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、分子量が低い場合であってもボイル耐性、印刷層の耐再溶解性に優れた2液硬化型接着剤、当該接着剤を用いて得られる積層体、包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリオール組成物(X)とポリイソシアネート組成物(Y)とを含み、ポリオール組成物(X)は、多価アルコール(a)と多価カルボン酸(b)とを含む組成物の反応生成物であるポリエステルポリオール(A)を含み、ポリイソシアネート組成物(Y)は、多価アルコール(c)と多価カルボン酸(d)との反応生成物であるポリエステルポリオール(C'1)を含むポリオール組成物(y)とイソシアネート化合物(C'2)との反応生成物であるウレタンプレポリマー(C)を含み、多価アルコール(a)はアルキル側鎖を1つのみ有するグリコール(a1)を含み、多価アルコール(c)はアルキル側鎖を1つのみ有するグリコール(c1)を含み、ポリオール組成物(X)とポリイソシアネート組成物(Y)の総量に占めるグリコール(a1)およびグリコール(c1)の総量が5質量%以上20質量%以下である2液硬化型接着剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接着剤によれば、ボイル耐性に優れ、外観が良好な積層体、包装材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<接着剤>
本発明の接着剤は、ポリオール組成物(X)と、ポリイソシアネート組成物(Y)からなる2液硬化型の接着剤である。以下、本発明の接着剤について詳細に説明する。
【0011】
(ポリオール組成物(X))
(ポリエステルポリオール(A))
本発明の接着剤に用いられるポリオール組成物(X)は、多価アルコール(a)と多価カルボン酸(b)とを含む組成物の反応生成物であるポリエステルポリオール(A)を含む。また、多価アルコール(a)はアルキル側鎖を1つのみ有するグリコール(a1)を含む。これにより、ボイル耐性に優れた接着剤とすることができる。
【0012】
グリコール(a1)としては、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。
【0013】
グリコール(a1)と併用可能な多価アルコール(a)としては従来公知のものが使用でき特に限定されない。2官能のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオール;
【0014】
ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のエーテルグリコール;
脂肪族ジオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルジオール;
【0015】
脂肪族ジオールと、ラクタノイド、ε-カプロラクトン等の種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;
ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール;
ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加して得られるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0016】
3官能以上のポリオールは、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール;
脂肪族ポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール;
脂肪族ポリオールと、ε-カプロラクトン等の種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0017】
接着剤を印刷層上に塗布した際に印刷用の再溶解を抑制する効果に優れることから、多価アルコール(a)がジエチレングリコールを含むことが好ましい。グリコール(a1)を除いた多価アルコール(a)に占めるジエチレングリコールの割合が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
【0018】
多価カルボン酸(b)としては、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、ナフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の芳香族多塩基酸;
ジメチルテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の芳香族多塩基酸のメチルエステル化物;
【0019】
マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族多塩基酸;
マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、ピメリン酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の脂肪族多塩基酸のアルキルエステル化物;
【0020】
1,1-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物、無水ハイミック酸、無水ヘット酸等の脂環族多塩基酸;等が挙げられ、1種または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0021】
多価カルボン酸(b)がアジピン酸を含むことが好ましい。これにより、ポリエステルポリオール(A)の粘度を低下させ、ポットライフや低温での塗工適性を向上させる効果が期待できる。また、接着剤の基材への濡れ性が向上し、積層体の外観がより良好なものとなることが期待できる。アジピン酸の配合量は、塗工条件などにより適宜調整され得るが、一例として多価カルボン酸(b)の40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。多価カルボン酸(b)の全量がアジピン酸であってもよい。
【0022】
多価カルボン酸(b)として芳香族多価カルボン酸を用いるとボイル耐性が向上する一方、基材への濡れ性が低下し、ポットライフが短くなる傾向にある。本発明の接着剤は、芳香族多価カルボン酸の使用量が少ないか、全く用いない場合であっても十分なボイル耐性を備えるため、多価カルボン酸(b)に占める芳香族多価カルボン酸の配合量を15質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。
【0023】
ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量は特に制限されないが、一例として350以上5,000以下であることが好ましい。なお本明細書における数平均分子量は、設計官能基数と、水酸基価(mgKOH/g)の実測値から以下の式に従って算出した値である。水酸基価はJIS-K0070に記載の水酸基価測定方法にて測定することができる。
【0024】
【0025】
設計官能基数は、ポリエステルポリオール(A)の原料となる組成物に含まれる、カルボキシル基のモル数(O)、多価カルボン酸のモル数(P)、ヒドロキシル基のモル数(Q)、多価アルコールのモル数(R)から、(Q+O)/(R+P)にて算出する。
【0026】
ポリエステルポリオール(A)の配合量は、ポリオール組成物(X)の固形分の60質量%以上であることが好ましい。これにより、ボイル耐性、印刷層の耐再溶解性に優れたに優れた接着剤することができる。
【0027】
(ポリオール(B))
ポリオール組成物(X)は、ポリエステルポリオール(A)以外のポリオール(B)を含んでいてもよい。このようなポリオール(B)としては、多価アルコール(a)として例示したのと同様の2官能、3官能以上のアルコールや、ポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ひまし油、脱水ひまし油、ひまし油の水素添加物であるヒマシ硬化油、ひまし油のアルキレンオキサイド5~50モル付加体等のひまし油系ポリオール等、及びこれらの混合物等が挙げられるがこれに限定されない。
【0028】
ポリオール(B)の配合量は特に限定されないが、ポリエステルポリオール(A)との総量の40質量%以下に留めることが好ましい。
【0029】
本発明の接着剤が無溶剤型として用いられる場合は、ポリオール組成物(X)の粘度はノンソルベントラミネート法に適した範囲に調整される。一例として、40℃における粘度が100~5000mPas、より好ましくは100~3000mPasの範囲になるよう調整される。ポリオール組成物(X)の粘度は、一例としてポリエステルポリオール(A)の骨格や、後述する可塑剤により調整することができる。
【0030】
(ポリイソシアネート組成物(Y))
イソシアネート組成物(Y)は、ポリエステルポリオール(C'1)を含むポリオール組成物(y)と複数のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(C'2)とを、イソシアネート基が過剰となる条件下で反応させて得られるウレタンプレポリマー(C)を含む。また、ポリエステルポリオール(C'1)は多価アルコール(c)と多価カルボン酸(d)とを含む組成物の反応生成物であり、多価アルコール(c)はアルキル側鎖を1つのみ有するグリコール(c1)を含む。これにより、ボイル耐性に優れた接着剤とすることができる。グリコール(c1)としては、グリコール(a1)と同様のものを用いることができる。
【0031】
多価アルコール(c)は、グリコール(c1)以外の多価アルコールを含んでいてもよい。グリコール(c1)と併用可能な多価アルコールとしては、多価アルコール(a)で例示したのと同様のものを用いることができる。
【0032】
また、多価カルボン酸(d)としては多価カルボン酸(b)で例示したのと同様のものを用いることができる。多価カルボン酸(d)はアジピン酸を含むことが好ましい。これにより、ポリエステルポリオール(C'1)、ひいてはウレタンプレポリマー(C)の粘度を低下させ、ポットライフや低温での塗工適性を向上させる効果が期待できる。また、接着剤の基材への濡れ性が向上し、積層体の外観がより良好なものとなることが期待できる。アジピン酸の配合量は、塗工条件などにより適宜調整され得るが、一例として多価カルボン酸(d)の40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。多価カルボン酸(d)の全量がアジピン酸であってもよい。
【0033】
多価カルボン酸(d)として芳香族多価カルボン酸を用いるとボイル耐性が向上する一方、基材への濡れ性が低下し、ポットライフが短くなる傾向にある。本発明の接着剤は、芳香族多価カルボン酸の使用量が少ないか、全く用いない場合であっても十分なボイル耐性を備えるため、多価カルボン酸(d)に占める芳香族多価カルボン酸の配合量を15質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。
【0034】
ポリエステルポリオール(C'1)の数平均分子量は特に限定されないが、一例として400以上10,000以下、より好ましくは500以上2,000以下である。
【0035】
イソシアネート化合物(C'2)としては特に限定されず、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートのビュレット体、ヌレート体、アダクト体、アロファネート体、カルボジイミド変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられ、これらを単独でまたは複数組み合わせて使用することができる。
【0036】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI、あるいはクルードMDIとも称される)、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0037】
芳香脂肪族ジイソシアネートとは、分子中に1つ以上の芳香環を有する脂肪族イソシアネートを意味し、m-又はp-キシリレンジイソシアネート(別名:XDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(別名:TMXDI)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0038】
脂肪族ジイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0039】
脂環族ジイソシアネートとしては、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(別名:IPDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0040】
初期凝集力、エージング時間短縮の観点から芳香族ジイソシアネートおよび/またはその誘導体を用いることが好ましい。
【0041】
また、ポリオール組成物(y)はポリエーテルポリオール(C'3)を含んでいてもよい。これにより、基材に対する接着剤の濡れ性が向上し、より外観が良好な積層体を提供することができる。また、ポリイソシアネート組成物(Y)は長期にわたって保管するうちに濁りが生じることがあるが、これを抑制することができる。
【0042】
ポリエーテルポリオール(C'3)としては特に限定されず、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるものが挙げられ、1種または2種以上を組合わせて用いることができる。ポリエーテルポリオール(b2)の官能基数は特に限定されず、2官能の他、3官能以上のものを用いることもできる。2官能または3官能のポリプロピレングリコールを用いることが好ましい。
【0043】
ポリエーテルポリオール(C'3)の数平均分子量は特に制限されないが、一例として200以上10,000以下、より好ましくは400以上2,000以下である。
【0044】
ポリエーテルポリオール(C'3)を併用する場合、その配合量はポリエステルポリオール(C'1)とポリエーテルポリオール(C'3)の総量の5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。ボイル耐性とのバランスの観点から5質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
ウレタンプレポリマー(C)は、上述したポリオール組成物(y)、イソシアネート化合物(C'2)を、イソシアネート基過剰の条件下で反応させて得られる。反応に供されるイソシアネート基のモル数[NCO]と水酸基のモル数[OH]との比[NCO]/[OH]は1.0以上3.0以下であることが好ましい。より好ましくは1.5~2.0である。
【0046】
ポリイソシアネート組成物(Y)は、ウレタンプレポリマー(C)以外のポリイソシアネート化合物(D)を含んでいてもよい。ポリイソシアネート化合物(D)としては、イソシアネート化合物(C'2)として例示した化合物や、これらのイソシアネート化合物とポリオールとの反応生成物であるウレタンプレポリマー等が挙げられ、1種または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0047】
本発明の接着剤が無溶剤型として用いられる場合は、ポリイソシアネート組成物(Y)の粘度はノンソルベントラミネート法に適した範囲に調整される。一例として、40℃における粘度が500~5000mPas、より好ましくは500~3000mPasの範囲になるよう調整される。ポリイソシアネート組成物(Y)の粘度は、一例としてポリイソシアネート組成物(Y)に含まれる低分子量のイソシアネート化合物の配合量により調整することができる。
【0048】
さらに本発明の接着剤は、接着剤の固形分に対する、接着剤を調製する際に用いたグリコール(a1)及び(c1)の総量の比率が、5質量%以上20質量%以下である。これにより、ボイル耐性に優れ、また印刷層を再溶解させ難い接着剤とすることができる。
【0049】
(接着剤のその他の成分)
本発明の接着剤は、上述の成分以外の成分を含んでいてもよい。その他の成分は、ポリオール組成物(X)、ポリイソシアネート組成物(Y)のいずれかまたは両方に含まれていてもよいし、これらとは別に調整しておき、接着剤の塗工直前にポリオール組成物(X)、ポリイソシアネート組成物(Y)とともに混合して用いてもよい。以下、各成分について説明する。
【0050】
(触媒)
触媒としては、金属系触媒、アミン系触媒、脂肪族環状アミド化合物等が例示される。
【0051】
金属系触媒としては、金属錯体系、無機金属系、有機金属系の触媒が挙げられる。金属錯体系の触媒としては、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Zr(ジルコニウム)、Th(トリウム)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Co(コバルト)からなる群より選ばれる金属のアセチルアセトナート塩、例えば鉄アセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネート、銅アセチルアセトネート、ジルコニアアセチルアセトネート等が例示される。
【0052】
無機金属系の触媒としては、Sn、Fe、Mn、Cu、Zr、Th、Ti、Al、Co等から選ばれるものが挙げられる。
【0053】
有機金属系触媒としては、オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジクロライド等の有機錫化合物、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等の有機コバルト化合物、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物、テトライソプロピルオキシチタネート、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド、脂肪族ジケトン、芳香族ジケトン、炭素原子数2~10のアルコールの少なくとも1種をリガンドとするチタンキレート錯体等のチタン系化合物等が挙げられる。
【0054】
アミン系触媒としては、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、キヌクリジン、2-メチルキヌクリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、3-キヌクリジノール、N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N,N-ジメチルヘキサノールアミン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0055】
脂肪族環状アミド化合物としては、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、ω-エナントールラクタム、η-カプリルラクタム、β-プロピオラクタム等が挙げられる。これらの中でもε-カプロラクタムが硬化促進により効果的である。
【0056】
(酸無水物)
酸無水物としては、環状脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、不飽和カルボン酸無水物等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。より具体的には、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、ヘット酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、1-メチル-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物等が挙げられる。
【0057】
また、酸無水物として上述した化合物をグリコールで変性したものを用いてもよい。変性に用いることができるグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポチテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルグリコール類等が挙げられる。更には、これらのうちの2種類以上のグリコール及び/又はポリエーテルグリコールの共重合ポリエーテルグリコールを用いることもできる。
【0058】
(カップリング剤)
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
【0059】
シランカップリング剤としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0060】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、テトラオクチレングリコールチタネート、チタンラクテート、テトラステアロキシチタン等が挙げられる。
【0061】
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0062】
(顔料)
顔料としては特に制限はなく、塗料原料便覧1970年度版(日本塗料工業会編)に記載されている体質顔料、白顔料、黒顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、緑色顔料、青顔料、金属粉顔料、発光顔料、真珠色顔料等の有機顔料や無機顔料、さらにはプラスチック顔料などが挙げられる。
【0063】
体質顔料としては、例えば、沈降性硫酸バリウム、ご粉、沈降炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、寒水石、アルミナ白、シリカ、含水微粉シリカ(ホワイトカーボン)、超微粉無水シリカ(アエロジル)、珪砂(シリカサンド)、タルク、沈降性炭酸マグネシウム、ベントナイト、クレー、カオリン、黄土などが挙げられる。
【0064】
有機顔料の具体例としては、ベンチジンエロー、ハンザエロー、レーキッド4R等の、各種の不溶性アゾ顔料;レーキッドC、カーミン6B、ボルドー10等の溶性アゾ顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の各種(銅)フタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の各種の塩素性染め付けレーキ;キノリンレーキ、ファストスカイブルー等の各種の媒染染料系顔料;アンスラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料等の各種の建染染料系顔料;シンカシアレッドB等の各種のキナクリドン系顔料;ヂオキサジンバイオレット等の各種のヂオキサジン系顔料;クロモフタール等の各種の縮合アゾ顔料;アニリンブラックなどが挙げられる。
【0065】
無機顔料としては、黄鉛、ジンククロメート、モリブデートオレンジ等の如き、各種のクロム酸塩;紺青等の各種のフェロシアン化合物;酸化チタン、亜鉛華、マピコエロー、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロームグリーン、酸化ジルコニウム等の各種の金属酸化物;カドミウムエロー、カドミウムレッド、硫化水銀等の各種の硫化物ないしはセレン化物;硫酸バリウム、硫酸鉛等の各種の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、群青等の各種のケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の各種の炭酸塩;コバルトバイオレット、マンガン紫等の各種の燐酸塩;アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、ブロンズ粉、真鍮粉等の各種の金属粉末顔料;これら金属のフレーク顔料、マイカ・フレーク顔料;金属酸化物を被覆した形のマイカ・フレーク顔料、雲母状酸化鉄顔料等のメタリック顔料やパール顔料;黒鉛、カーボンブラック等が挙げられる。
【0066】
プラスチック顔料としては、例えば、DIC(株)製「グランドールPP-1000」、「PP-2000S」等が挙げられる。
【0067】
用いる顔料については目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば耐久性、対候性、意匠性に優れることから白色顔料としては酸化チタン、亜鉛華等の無機酸化物を用いることが好ましく、黒色顔料としてはカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0068】
顔料の配合量は、一例としてポリオール組成物(X)とポリイソシアネート組成物(Y)との固形分総量100質量部に対して1~400質量部であり、接着性、耐ブロッキング性をより良好なものとするため10~300質量部とすることがより好ましい。
【0069】
(可塑剤)
可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、芳香族ポリカルボン酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、ポリオール系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、カーボネート系可塑剤などが挙げられる。
【0070】
フタル酸系可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジへキシルフタレート、ジへプチルフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)フタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジ-(2-エチルヘキシル)イソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのフタル酸エステル系可塑剤、例えば、ジ-(2-エチルヘキシル)テトラヒドロフタレート、ジ-n-オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸エステル系可塑剤が挙げられる。
【0071】
脂肪酸系可塑剤としては、例えば、ジ-n-ブチルアジペート、ジ-(2-エチルへキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジ(C6-C10アルキル)アジペート、ジブチルジグリコールアジペートなどのアジピン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-へキシルアゼレート、ジ-(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレートなどのアゼライン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-ブチルセバケート、ジ-(2-エチルへキシル)セバケート、ジイソノニルセバケートなどのセバシン酸系可塑剤、例えば、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジ-n-ブチルマレート、ジ-(2-エチルヘキシル)マレートなどのマレイン酸系可塑剤、例えば、ジ-n-ブチルフマレート、ジ-(2-エチルへキシル)フマレートなどのフマル酸系可塑剤、例えば、モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ-(2-エチルヘキシル)イタコネートなどのイタコン酸系可塑剤、例えば、n-ブチルステアレート、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸系可塑剤、例えば、ブチルオレート、グリセリルモノオレート、ジエチレングリコールモノオレートなどのオレイン酸系可塑剤、例えば、トリエチルシトレート、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリ-(2-エチルへキシル)シトレートなどのクエン酸系可塑剤、例えば、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸系可塑剤、および、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸系可塑剤などが挙げられる。
【0072】
芳香族ポリカルボン酸系可塑剤としては、例えば、トリ-n-ヘキシルトリメリテート、トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-n-オクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸系可塑剤、例えば、テトラ-(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ-n-オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸系可塑剤などが挙げられる。
【0073】
リン酸系可塑剤としては、例えば、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェートなどが挙げられる。
【0074】
ポリオール系可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ-(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキソエート)、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール系可塑剤、例えば、グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン系可塑剤などが挙げられる。
【0075】
エポキシ系可塑剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどが挙げられる。
【0076】
ポリエステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどが挙げられる。
【0077】
カーボネート系可塑剤としては、プロピレンカーボネートやエチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0078】
また、可塑剤としては、その他に、部分水添ターフェニル、接着性可塑剤、さらには、ジアリルフタレート、アクリル系モノマーやオリゴマーなどの重合性可塑剤などが挙げられる。これら可塑剤は、単独または2種以上併用することができる。
【0079】
(リン酸化合物)
リン酸化合物としては、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、イソドデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等が挙げられる。
【0080】
(接着剤の形態)
本発明の接着剤は、溶剤型または無溶剤型のいずれの形態であってもよいが、特にボイル耐性が不十分となりやすく、印刷層の再溶解が問題となりやすい無溶剤型の場合に好適である。なお本明細書において「溶剤型」の接着剤とは、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して塗膜中の有機溶剤を揮発させた後に他の基材と貼り合せる方法、いわゆるドライラミネート法に用いられる形態をいう。ポリオール組成物(X)、ポリイソシアネート組成物(Y)のいずれか一方、もしくは両方が本発明で使用するポリオール組成物(X)、ポリイソシアネート組成物(Y)の構成成分を溶解(希釈)することが可能な有機溶剤を含む。
【0081】
有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。ポリオール組成物(X)またはポリイソシアネート組成物(Y)の構成成分の製造時に反応媒体として使用された有機溶剤が、更に塗装時に希釈剤として使用される場合もある。
【0082】
本明細書において「無溶剤型」の接着剤とは、ポリオール組成物(X)及びポリイソシアネート組成物(Y)が酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等の溶解性の高い有機溶剤、特に酢酸エチル又はメチルエチルケトンを実質的に含まず、接着剤を基材に塗工した後に、オーブン等で加熱して溶剤を揮発させる工程を経ずに他の基材と貼り合せる方法、いわゆるノンソルベントラミネート法に用いられる接着剤の形態を指す。ポリオール組成物(X)またはポリイソシアネート組成物(Y)の構成成分や、その原料の製造時に反応媒体として使用された有機溶剤が除去しきれずに、ポリオール組成物(X)やポリイソシアネート組成物(Y)中に微量の有機溶剤が残留してしまっている場合は、有機溶剤を実質的に含まないと解される。また、ポリオール組成物(X)が低分子量アルコールを含む場合、低分子量アルコールはポリイソシアネート組成物(Y)と反応して塗膜の一部となるため、塗工後に揮発させる必要はない。従ってこのような形態も無溶剤型接着剤として扱い、低分子量アルコールは有機溶剤とはみなされない。
【0083】
本発明の接着剤は、ポリイソシアネート組成物(Y)に含まれるイソシアネート基のモル数[NCO]とポリオール組成物(X)に含まれる水酸基のモル数[OH]との比[NCO]/[OH]が1.0~3.0となるよう配合して用いることが好ましい。これにより、塗工時の環境湿度に依存することなく適切な硬化性を得ることができる。
【0084】
<積層体>
本発明の積層体は、複数の基材(フィルムあるいは紙)を、本発明の接着剤を用い、ドライラミネート法またはノンソルベントラミネート法にて貼り合わせて得られる。用いるフィルムに特に制限はなく、用途に応じたフィルムを適宜選択することができる。例えば、食品包装用としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。
【0085】
フィルムは延伸処理を施されたものであってもよい。延伸処理方法としては、押出製膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸を行うことが一版的である。また逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的には、ロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。
【0086】
フィルム表面には、膜切れやはじき等の欠陥のない接着層が形成されるように、必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理等の各種表面処理を施してもよい。
【0087】
あるいは、アルミニウム等の金属、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルム、ポリビニルアルコールやエチレン・ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを用いてもよい。このようなフィルムを用いることで、水蒸気、酸素、アルコール、不活性ガス、揮発性有機物(香り)等に対するバリア性を備えた積層体とすることができる。
【0088】
紙としては、特に限定なく公知の紙基材を使用することができる。具体的には、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
【0089】
本発明の接着剤の特性が発揮される、積層体のより具体的な、好ましい構成としては、OPPフィルム/接着層/CPPフィルム、OPPフィルム/接着層/LLDPEフィルム、OPP/接着層/アルミ蒸着CPPフィルム、PETフィルム/接着層/LLDPEフィルム、PETフィルム/接着層/アルミ蒸着CPPフィルム、Nyフィルム/接着層/LLDPEフィルム、OPPフィルム/接着層/アルミ蒸着PETフィルム/接着層’/LLDPEフィルム、PETフィルム/接着層/アルミ蒸着PETフィルム/接着層’/LLDPEフィルム、Nyフィルム/接着層/アルミ蒸着PETフィルム/接着層’/LLDPEフィルム等が挙げられるがこれに限定されない。なお上記の構成において接着層とは本発明の接着剤の硬化塗膜である。接着層’は、本発明の接着剤の硬化塗膜であってもよいし、他の接着剤の硬化塗膜であってもよい。
【0090】
本発明の積層体は、接着層と基材(通常は内容物に対して最外層となる基材)との間に印刷層が設けられていてもよい。印刷層は、グラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、孔版インキ、インクジェットインク等各種印刷インキにより、従来フィルムへの印刷に用いられてきた一般的な印刷方法で形成される。
【0091】
本発明の接着剤が溶剤型である場合、一方の基材に本発明の接着剤をグラビアロール等のロールを用いて塗布し、オーブン等での加熱により有機溶剤を揮発させた後、他方の基材を貼り合せて本発明の積層体を得る。ラミネート後に、エージング処理を行うことが好ましい。エージング温度は室温~80℃、エージング時間は12~240時間が好ましい。
【0092】
本発明の接着剤が無溶剤型である場合、一方の基材に予め40℃~100℃程度に加熱しておいた本発明の接着剤をコートロール等のロールを用いて塗布した後、直ちに他方の基材を貼り合せて本発明の積層体を得る。ラミネート後に、エージング処理を行うことが好ましい。エージング温度は室温~70℃、エージング時間は6~240時間が好ましい。
【0093】
接着剤の塗布量は、適宜調整される。溶剤型接着剤の場合、一例として固形分量が1g/m2以上10g/m2以下、好ましくは2g/m2以上5g/m2以下となるよう調整する。無溶剤型接着剤の場合、接着剤の塗布量が一例として1g/m2以上5g/m2以下、好ましくは1g/m2以上3g/m2以下である。
【0094】
本発明の積層体は、2つの基材を本発明の接着剤で貼り合わせたものであるが、必要に応じて他の基材を含んでいてもよい。他の基材を積層する方法としては公知の方法、例えばドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、熱ラミネート法、ヒートシール法、押出しラミネート法などにより積層すればよい。この際用いられる接着剤は、本発明のものであってもよいし、そうでなくてもよい。他の基材としては、上述した基材と同様のものを用いることができる。
【0095】
<包装材>
本発明の包装材は、上述の積層体を袋状に成形し、ヒートシールすることにより包装材の形態としたものである。包装材の態様としては、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラシック、ブリュックタイプ、チューブ容器、紙カップ、蓋材、など種々ある。また、本発明の包装材に易開封処理や再封性手段を適宜設けてあってもよい。
【0096】
本発明の包装材は、主に食品、洗剤、薬剤を充填する包装材として工業的に使用することができる。具体的な用途としては、洗剤、薬剤として、洗濯用液体洗剤、台所用液体洗剤、浴用液体洗剤、浴用液体石鹸、液体シャンプー、液体コンディショナー、医薬用タブレット等が挙げられる。また、上記の容器を包装する2次包装材にも使用できる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を具体的な合成例、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
【0098】
<ポリオール組成物(X)>
(合成例1)ポリエステルポリオール(A-1)の合成
撹拌翼、温度センサー、窒素ガス導入管および精留塔を備えたガラス製2リットルの四つ口フラスコに、ジエチレングリコール47.8部、2-メチル-1,3-プロパンジオール3.3部、アジピン酸48.9部を仕込んだ。常圧窒素気流下にて徐々に昇温し脱水反応を行いながら220℃まで昇温し、220℃で反応を継続した。精留塔の塔頂温度が80℃以下になったのを確認した後、精留塔を取り外してガラス製コンデンサーに切替え、窒素ガス導入管から真空ポンプにラインをつなぎ50Torrの減圧下で所定の酸価に到達するまで縮合反応を行うことで、ポリエステルポリオール(A-1)を得た。ポリエステルポリオール(A-1)の酸価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、設計官能基数、設計官能基数から算出した数平均分子量を表1に示す。ポリエステルポリオール(A-1)をポリオール組成物(X-1)として用いた。
【0099】
(合成例2)~(合成例7)
表1に示した原料に変更した以外は、(合成例1)と同様にしてポリエステルポリオール(A-2)~(A-7)を得た。それぞれポリオール組成物(X-2)~(X-7)として用いた。なお表中においてDEGはジエチレングリコールであり、2MPDは2-メチル-1,3-プロパンジオールであり、AAはアジピン酸である。
【0100】
【0101】
<ポリイソシアネート組成物(Y)>
(合成例8)ポリエステルポリオール(C'1-1)の合成
撹拌翼、温度センサー、窒素ガス導入管および精留塔を備えたガラス製2リットルの四つ口フラスコに、エチレングリコール13.3部、2-メチル-1,3-プロパンジオール28.3部、アジピン酸58.4部を仕込んだ。常圧窒素気流下にて徐々に昇温し脱水反応を行いながら220℃まで昇温し、220℃で反応を継続した。 精留塔の塔頂温度が80℃以下になったのを確認した後、精留塔を取り外してガラス製コンデンサーに切替え、窒素ガス導入管から真空ポンプにラインをつなぎ50Torrの減圧下で所定の酸価に到達するまで縮合反応を行うことで、ポリエステルポリオール(C'1-1)を得た。ポリエステルポリオール(C'1-1)の酸価(mgKOH/g)、水酸基価(mgKOH/g)、設計官能基数、設計官能基数から算出した数平均分子量を表2に示す。
【0102】
(合成例9)~(合成例12)
表2に示した原料に変更した以外は、(合成例8)と同様にしてポリエステルポリオール(C'1-2)~(C'1-5)を得た。なお表中においてEGはエチレングリコールであり、2MPDは2-メチル-1,3-プロパンジオールであり、3MPDは3-メチル-1,5-ペンタンジオールであり、AAはアジピン酸である。
【0103】
【0104】
(合成例13)ウレタンプレポリマー(C-1)の合成
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管を備えたガラス製2リットルの四つ口フラスコに、2,2-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが54:45:1(質量比)である混合物58.3部を仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら60℃まで加熱した。合成例8で得られたポリエステルポリオール(C'1-1)を37.5部、数平均分子量1000のポリプロピレングリコール4.2部を数回に分けて滴下し、更に加熱して内温70℃で4時間保持してウレタン化反応を行い、NCO基含有率14.5%の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(C-1)を得た。これをイソシアネート組成物(Y-1)として用いた。
【0105】
(合成例14)~(合成例20)
合成に用いる化合物およびその配合量を表3に示すものに変更した以外は合成例13と同様にして、ウレタンプレポリマー(C-2)~(C-8)を得た。それぞれイソシアネート組成物(Y-2)~(Y-8)として用いた。
【0106】
【0107】
【0108】
<接着剤の調製>
40℃に加温したポリオール組成物(X-1)~(X-7)、ポリイソシアネート組成物(Y-1)~(Y-8)を表5~7に従い配合し、実施例1~9、比較例1~3の無溶剤型の接着剤を調製した。なお表中におけるグリコール(a1)及び(c1)の比率とは、接着剤の固形分総量に対する、接着剤を調製する際に用いたグリコール(a1)及び(c1)の総量の比率(質量%)である。
【0109】
<評価用サンプルの製造>
(評価用サンプル1の製造)
印刷インキ(DIC(株)製フィナート)で図柄をグラビア印刷したNyフィルム(膜厚15μm、幅600mm)に接着剤を塗布量が1.5g/m2となるよう塗布し、接着剤の塗布面とLLDPEフィルム(膜厚60μm、幅600mm)のコロナ処理面とを貼り合わせ、40℃で3日間のエージングを行いNy/接着層/LLDPEの積層体を得た。これを評価用サンプル1とした。
【0110】
(評価用サンプル2の製造)
印刷インキ(DIC(株)製フィナート)で図柄をグラビア印刷したOPPフィルム(膜厚20μm、幅600mm)の印刷面に、調整した接着剤を塗工速度200m/分、塗布量1.8g/m2で塗布し、次いでこの塗布面とVMCPPフィルム(膜厚25μm、幅600mm)のアルミ蒸着面とを貼り合わせ、OPP/接着層/VMCPPの積層体を得た。これを評価用サンプル2とした。
【0111】
<評価>
(ボイル耐性)
評価用サンプル1を150mm×300mmで切り取り、LLDPEフィルムが内側になるように折り曲げ、1atm、180℃、1秒間で2辺をヒートシールしてパウチを作製した。パウチに1/1/1ソース(ミートソース:植物油:食酢=1:1:1)を充填した後、残る1辺も同様の条件でヒートシールし、パウチに封をした。内容物を充填したパウチを98℃の熱湯に浸漬させ、1時間のボイル殺菌処理を行った。内容物を除去した後のパウチの外観を観察し、デラミネーションの有無により3段階で評価した。
評価○:デラミネーションなし
評価△:デラミ箇所が1~5点以下
評価×:デラミ箇所が6点以上
【0112】
(印刷層耐再溶解性)
ウレタン系ラミネートインキ(Finart R794白 G3;DIC(株)製)を離合社製ザーンカップ#3で15秒(25℃)に調整し、版深43μmグラビア版を備えたグラビア印刷機によって、コロナ処理PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋紡エステルフィルムE5102#12)に印刷し、70℃のオーブンを通過させることで乾燥ないし硬化させ、PETフィルム上に印刷層を形成した。
【0113】
印刷物上に、ポリオール組成物(X)とポリイソシアネート組成物(Y)を配合した接着剤を1g滴下し、50℃のオーブンに3分間置いた後、滴下した接着剤部分を黒い綿棒でラビングテストした。印刷物から黒い綿棒への白インキの転写率を評価し結果を表5~7にまとめた。
〇:0~50%未満
×:50%~100%
【0114】
(ラミネート外観)
評価用サンプル2のOPPフィルム側から印刷層及び接着層を透して蒸着面を目視観察し、以下の基準にて評価した。
◎:気泡及びムラ、ゆず肌状の模様が無い
〇:気泡又はムラ、ゆず肌状の模様が極僅かに確認できる
×:気泡又はムラ、ゆず肌状の模様が明らかに確認できる
【0115】
(ポリイソシアネート組成物(Y)の経時安定性)
ポリイソシアネート組成物(Y)を気泡が入らないように透明なガラス瓶に採取し、密閉した後、デシケーター中に3か月静置した。保管後の外観を観察し、保管前の外観と比較した際の濁りの変化の程度により以下の評価を行い結果を表8にまとめた。
評価○:保管前後で全く濁りがない。
評価△:保管後に僅かに濁りが発生した。
評価×:保管前から濁りが発生した。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【要約】
ボイル耐性、印刷層の耐再溶解性に優れた2液硬化型接着剤、当該接着剤を用いて得られる積層体、包装材を提供する。
多価アルコール(a)と多価カルボン酸(b)との反応生成物であるポリエステルポリオール(A)を含むポリオール組成物(X)と、多価アルコール(c)と多価カルボン酸(d)との反応生成物であるポリエステルポリオール(C'1)を含むポリオール組成物(y)とイソシアネート化合物(C'2)との反応生成物であるウレタンプレポリマー(C)を含むポリイソシアネート組成物(Y)とを含み、多価アルコール(a)、(c)はそれぞれアルキル側鎖を1つのみ有するグリコール(a1)、(c1)を含み、ポリオール組成物(X)とポリイソシアネート組成物(Y)の総量に占めるグリコール(a1)および(c1)の総量が5質量%以上20質量%以下である2液硬化型接着剤、当該接着剤を用いて得られる積層体、包装材。