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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】細胞外電位測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20230221BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
C12M1/34 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021555941
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2020037452
(87)【国際公開番号】W WO2021095393
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2019205942
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019205943
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100125335
【弁理士】
【氏名又は名称】矢代 仁
(72)【発明者】
【氏名】小森 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 慶一
(72)【発明者】
【氏名】金 秀▲弦▼
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】大川 慎治
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-523726(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043820(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/013876(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/045618(WO,A1)
【文献】特表2001-520377(JP,A)
【文献】国際公開第2017/157874(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 - C12M 3/10
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/404
G01N 27/414 - G01N 27/416
G01N 27/42 - G01N 27/49
G01N 33/48 - G01N 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料から形成され、互いに積層されて接合された複数の絶縁フィルムと、
導電材料から形成され、複数の高さに配置された複数の電極線を備え、
各電極線が上方の絶縁フィルムと下方の絶縁フィルムの間に配置されており、
最下層の絶縁フィルムを除き、各絶縁フィルムは貫通する開口部を有し、
下方の絶縁フィルムの前記開口部は、上方の絶縁フィルムの前記開口部のサイズより小さいサイズを有し、複数の絶縁フィルムの前記開口部は重ねられて、細胞の集合が内部に配置される下方ほどサイズが小さい凹部を形成し、
複数の電極線の各々は、当該電極線の直下の絶縁フィルムの前記開口部の周囲に配置されて前記凹部内で露出する端部を有する
ことを特徴とする細胞外電位測定装置。
【請求項2】
導電材料から形成され、最下層の絶縁フィルムと2番目に下層の絶縁フィルムの間に配置された電極線をさらに備え、前記最下層の絶縁フィルムと前記2番目に下層の絶縁フィルムの間に配置された前記電極線の端部は、前記2番目に下層の絶縁フィルムの開口部全体を一方向に横断する
ことを特徴とする請求項1に記載の細胞外電位測定装置。
【請求項3】
最上層の絶縁フィルムには、前記細胞の集合から延びる線状の軸索が内部に配置される、貫通する溝が形成されており、前記溝は前記凹部につながっており、
少なくとも1つの軸索電極線をさらに備え、前記軸索電極線の端部が前記軸索と接触させられるように前記溝内で露出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の細胞外電位測定装置。
【請求項4】
導電材料から形成され、複数の高さに配置された複数の第2の電極線をさらに備え、
各第2の電極線が上方の絶縁フィルムと下方の絶縁フィルムの間に配置されており、
最下層の絶縁フィルムを除き、各絶縁フィルムは貫通する第2の開口部を有し、
下方の絶縁フィルムの前記第2の開口部は、上方の絶縁フィルムの前記第2の開口部のサイズより小さいサイズを有し、複数の絶縁フィルムの前記第2の開口部は重ねられて、前記軸索が結合した第2の細胞の集合が内部に配置される下方ほどサイズが小さい第2の凹部を形成し、前記第2の凹部は前記溝につながっており、
複数の第2の電極線の各々は、当該第2の電極線の直下の絶縁フィルムの前記第2の開口部の周囲に配置されて前記第2の凹部内で露出する端部を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の細胞外電位測定装置。
【請求項5】
上方の絶縁フィルムと下方の絶縁フィルムは接着剤で接合されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の細胞外電位測定装置。
【請求項6】
絶縁材料から形成された、互いに積層されて接合された複数の絶縁フィルムを有しており、細胞の集合が内部に配置される凹部と、凹部につながっており前記細胞の集合から延びる線状の軸索が内部に配置される溝を有するシートと、
前記シートの前記絶縁フィルムの間に配置された複数の電極線を備え、
複数の電極線は、前記細胞の集合と接触させられるように前記凹部内で露出する端部を有し、
少なくとも1つの電極線は、前記軸索と接触させられるように前記溝内で露出する端部を有する
ことを特徴とする細胞外電位測定装置。
【請求項7】
前記凹部の内部に端部が露出する複数の電極線は、複数の高さに配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の細胞外電位測定装置。
【請求項8】
最下層の絶縁フィルムを除き、各絶縁フィルムは貫通する開口部を有し、
下方の絶縁フィルムの前記開口部は、上方の絶縁フィルムの前記開口部のサイズより小さいサイズを有し、複数の絶縁フィルムの前記開口部は重ねられて、下方ほどサイズが小さい前記凹部を形成し、
前記凹部の内部に露出する複数の電極線の各々の端部は、当該電極線の直下の絶縁フィルムの前記開口部の周囲に配置されている
ことを特徴とする請求項7に記載の細胞外電位測定装置。
【請求項9】
前記シートの前記絶縁フィルムの間に配置された複数の第2の電極線を備え、
前記シートは、前記軸索が結合した第2の細胞の集合が内部に配置される第2の凹部を有し、前記第2の凹部は前記溝につながっており、
前記複数の第2の電極線は、前記第2の細胞の集合と接触させられるように前記第2の凹部内で露出する端部を有する
ことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の細胞外電位測定装置。
【請求項10】
前記複数の第2の電極線は、複数の高さに配置されている
ことを特徴とする請求項9に記載の細胞外電位測定装置。
【請求項11】
最下層の絶縁フィルムを除き、各絶縁フィルムは貫通する第2の開口部を有し、
下方の絶縁フィルムの前記第2の開口部は、上方の絶縁フィルムの前記第2の開口部のサイズより小さいサイズを有し、複数の絶縁フィルムの前記第2の開口部は重ねられて、下方ほどサイズが小さい前記第2の凹部を形成し、
前記複数の第2の電極線の各々の端部は、当該第2の電極線の直下の絶縁フィルムの前記第2の開口部の周囲に配置され、前記第2の凹部内で露出する
ことを特徴とする請求項10に記載の細胞外電位測定装置。
【請求項12】
導電材料から形成され、最下層の絶縁フィルムと2番目に下層の絶縁フィルムの間に配置された電極線をさらに備え、前記最下層の絶縁フィルムと前記2番目に下層の絶縁フィルムの間に配置された前記電極線の端部は、前記2番目に下層の絶縁フィルムの開口部全体を一方向に横断する
ことを特徴とする請求項6から11のいずれか1項に記載の細胞外電位測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外電位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞の集合である細胞塊またはスフェロイドの細胞外電位を生体外で(in vitro)測定するための装置が開発されてきている(特許文献1,2)。細胞外電位を解析することは、細胞に対する薬効および/または副作用を評価する上で有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/038079号
【文献】国際公開第2011/010721号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞の集合である細胞塊、オルガノイドまたはスフェロイドは、立体構造を有するため、異なる高さの多点での電位を測定することができると好ましい。さらに、電位を測定する装置を容易に製造することができると好ましい。したがって、細胞の集合の異なる高さの多点での電位を測定することができ、容易に製造することができる細胞外電位測定装置の需要がある。
【0005】
他方、神経細胞に関する細胞の集合である細胞塊、オルガノイドまたはスフェロイドからは線状の軸索が延びる。細胞の集合だけでなく軸索の電位を測定することによって、生体内での(in vivo)神経系の挙動の解析に貢献すると考えられる。したがって、細胞の集合だけでなく軸索の電位を測定することができる細胞外電位測定装置の需要がある。
【0006】
そこで、本開示は、上記の課題のいずれかを解決する
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様に係る細胞外電位測定装置は、絶縁材料から形成され、互いに積層されて接合された複数の絶縁フィルムと、導電材料から形成され、複数の高さに配置された複数の電極線を備える。各電極線が上方の絶縁フィルムと下方の絶縁フィルムの間に配置されている。最下層の絶縁フィルムを除き、各絶縁フィルムは貫通する開口部を有する。下方の絶縁フィルムの前記開口部は、上方の絶縁フィルムの前記開口部のサイズより小さいサイズを有し、複数の絶縁フィルムの前記開口部は重ねられて、細胞の集合が内部に配置される下方ほどサイズが小さい凹部を形成する。複数の電極線の各々は、当該電極線の直下の絶縁フィルムの前記開口部の周囲に配置されて前記凹部内で露出する端部を有する。
【0008】
この態様においては、複数の絶縁フィルムの開口部が重ねられて設けられた下方ほどサイズが小さい凹部に立体的な細胞の集合が収容される。上下の絶縁フィルムの間に配置された電極線の各々の端部は、直下の絶縁フィルムの開口部の周囲に配置され、凹部内で露出するので、複数の電極線の端部は立体的な細胞の集合に接触可能である。複数の電極線は、複数の高さ、すなわち複数の層に配置されているので、細胞の集合の異なる高さの多点での電位を測定することができる。
【0009】
また、この態様に係る細胞外電位測定装置は、開口部を有する複数の絶縁フィルムを接合することにより、立体的な細胞の集合の収容に適した、下方ほどサイズが小さい凹部が設けられ、複数の絶縁フィルムの間に電極線を配置することによって、複数の高さに電極線を配置することができる。したがって、立体的な細胞の集合の異なる高さの多点での電位を測定することができる細胞外電位測定装置を容易に製造することができる。多数の絶縁フィルムを積層することにより、電極線が設けられる高さの数および電極線の数を増加させることが可能であり、細胞の集合に関する詳細な解析が可能となりうる。
【0010】
本開示の他の態様に係る細胞外電位測定装置は、絶縁材料から形成された、互いに積層されて接合された複数の絶縁フィルムを有しており、細胞の集合が内部に配置される凹部と、凹部につながっており前記細胞の集合から延びる線状の軸索が内部に配置される溝を有するシートと、前記シートの前記絶縁フィルムの間に配置された複数の電極線を備える。複数の電極線は、前記細胞の集合と接触させられるように前記凹部内で露出する端部を有する。少なくとも1つの電極線は、前記軸索と接触させられるように前記溝内で露出する端部を有する。
【0011】
この態様においては、細胞の集合の電位に加え、細胞の集合から延びる軸索の電位を測定することができる。これらの電位を解析することにより、生体内での神経細胞の信号伝達の推定に役立つ生体外でのモデルを考察することができ、例えば、神経細胞への薬効および/または副作用を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る細胞外電位測定装置の断面図である。
図2】実施形態に係る細胞外電位測定装置の平面図である。
図3】実施形態に係る細胞外電位測定装置のカバーフィルムの平面図である。
図4】実施形態に係る細胞外電位測定装置の第2層フィルムとその上の電極線の平面図である。
図5】実施形態に係る細胞外電位測定装置の第3層フィルムとその上の電極線の平面図である。
図6】実施形態に係る細胞外電位測定装置の最下層フィルムとその上の電極線の平面図である。
図7】実施形態に係る細胞外電位測定装置の一部の拡大斜視図である。
図8】実施形態に係る細胞外電位測定装置の一部の拡大平面図である。
図9】実施形態に係る細胞外電位測定装置に配置される細胞の集合のサンプルの複数の例を示す斜視図である。
図10】サンプルの一例が配置された細胞外電位測定装置の一部の図8と同様の拡大平面図である。
図11】本発明の実施形態の変形例に係る細胞外電位測定装置の一部の図8と同様の拡大平面図である。
図12】本発明の実施形態の他の変形例に係る細胞外電位測定装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0014】
図1に示すように、細胞外電位測定装置1は、互いに積層された複数の絶縁フィルム11,12,13,14と、絶縁フィルム11,12,13,14を接合する接着剤11A,12A,13Aを持つ積層構造を有する。絶縁フィルム11,12は接着剤11Aで接合され、絶縁フィルム12,13は接着剤12Aで接合され、絶縁フィルム13,14は接着剤13Aで接合されている。
【0015】
絶縁フィルム11,12,13,14と、接着剤11A,12A,13Aは1つのシート10を形成する。シート10には、後述する凹部2と、凹部2につながる溝3が形成されている。
【0016】
細胞外電位測定装置1は、さらに複数の高さ、すなわちシート10の複数の層に配置された複数の電極線12B,12C,13B,14Bを有する。各電極線は上方の絶縁フィルムと下方の絶縁フィルムの間に配置されている。
【0017】
図1および図2に示すように、最下層の絶縁フィルム14を除き、絶縁フィルム11,12,13の各々は、貫通する開口部11H,12H,13Hを有する。開口部11H,12H,13Hは円形状を有する。開口部11H,12H,13Hは、互いにほぼ同心に配置されている。
【0018】
絶縁フィルム13の開口部13Hは、直上の絶縁フィルム12の開口部12Hの直径すなわちサイズより小さい直径すなわちサイズを有し、絶縁フィルム12の開口部12Hは、直上の絶縁フィルム11の開口部11Hの直径すなわちサイズより小さい直径すなわちサイズを有する。複数の絶縁フィルム11,12,13の開口部11H,12H,13Hは重ねられて、下方ほどサイズが小さいほぼ円錐台形またはボウル形の凹部2を形成する。ただし、開口部11H,12H,13Hの形状は円形に限定されず、他の形状であってもよい。
【0019】
接着剤11A,12A,13Aの各々は、直上の絶縁フィルムの開口部と同形同大の開口部を有する。接着剤11A,12A,13Aの各開口部の端縁つまり内周面は、直上の絶縁フィルムの開口部の端縁つまり内周面になるべく揃えられている。但し、接着剤の開口部の内周面と絶縁フィルムの開口部の内周面の幾分かのずれは許容されている。
【0020】
絶縁フィルム11,12,13,14は、細胞になるべく影響を及ぼさない絶縁材料、例えばポリイミドから形成されている。接着剤11A,12A,13Aも細胞になるべく影響を及ぼさない絶縁材料から形成されている。不可欠ではないが、好ましくは、絶縁フィルム11,12,13,14と接着剤11A,12A,13Aは、電極線を視認することが可能なように、透明または半透明な材料から形成されている。
【0021】
電極線12B,12C,13B,14Bは、細胞になるべく影響を及ぼさない、高い導電率の導電材料から形成されている。例えば、電極線12B,12C,13B,14Bは、金メッキされた銅線から形成されている。
【0022】
複数の電極線の端部は、電極線の直下の絶縁フィルムの開口部の周囲に配置され、凹部2内で露出する。具体的には、電極線12B,12Cの端部は、電極線12B,12Cの直下の絶縁フィルム12の開口部12Hの周囲に配置されて、上方の開口部11Hを通じて露出し、電極線13Bの端部は、電極線13Bの直下の絶縁フィルム13の開口部13Hの周囲に配置されて、上方の開口部11H,12Hを通じて露出する。
【0023】
最下層の絶縁フィルム14と2番目に下層の絶縁フィルム13の間に配置された電極線14Bの端部は、2番目に下層の絶縁フィルム13の開口部13Hの全体を一方向に横断する。具体的には、電極線14Bの端部は、円形の開口部13Hの直径に沿って延びて、開口部13Hを横断する。電極線14Bの端部は、上方の開口部11H,12H,13Hを通じて露出する。
【0024】
図3図6は、それぞれ絶縁フィルム11,12,13,14の平面図である。図1は、図3図6のI-I線断面に対応する。
【0025】
図3に示すように、最上層の絶縁フィルム(カバーフィルム)11には、上記の開口部11Hと、開口部11Hと同形同大の開口部21Hと、開口部11H,21Hをつなぐ直線状のスリットまたは溝3が形成されている。開口部11H,21Hおよび溝3は、絶縁フィルム11を貫通する。
【0026】
また、絶縁フィルム11には、積層される絶縁フィルム11,12,13,14の位置決めのための複数の貫通孔11Pが形成されている。
【0027】
図4に示すように、絶縁フィルム12には、上記の開口部12Hと、開口部12Hと同形同大の開口部22Hが形成されている。開口部12H,22Hは、絶縁フィルム12を貫通する。開口部22Hは絶縁フィルム11の開口部21Hにほぼ同心に配置される。絶縁フィルム12の開口部22Hは、直上の絶縁フィルム11の開口部21Hの直径すなわちサイズより小さい直径すなわちサイズを有する。絶縁フィルム11,12の開口部21H,22Hは重ねられて、下方ほどサイズが小さい凹部を形成する。
【0028】
また、絶縁フィルム12には、積層される絶縁フィルム11,12,13,14の位置決めのための複数の貫通孔12Pが形成されている。
【0029】
絶縁フィルム12の上面には、上記の電極線12B,12Cが形成されている。これらの電極線12B,12Cの開口部12Hの付近の端部と反対の端部は、幅が広い接続端子12T,12CTとして形成されている。
【0030】
さらに絶縁フィルム12の上面には、後述する複数の軸索電極線30が形成されている。複数の軸索電極線30の端部は、開口部12H,22Hを結ぶ直線の付近に配置されており、直上の絶縁フィルム11の溝3内で露出する。これらの軸索電極線30の反対の端部は、幅が広い接続端子30Tとして形成されている。
【0031】
軸索電極線30は、細胞になるべく影響を及ぼさない、高い導電率の導電材料から形成されている。例えば、軸索電極線30は、金メッキされた銅線から形成されている。
【0032】
図5に示すように、絶縁フィルム13には、上記の開口部13Hが形成されている。開口部13Hは、絶縁フィルム13を貫通する。
【0033】
また、絶縁フィルム13には、積層される絶縁フィルム11,12,13,14の位置決めのための複数の貫通孔13Pが形成されている。
【0034】
絶縁フィルム13の上面には、上記の電極線13Bが形成されている。これらの電極線13Bの開口部13Hの付近の端部と反対の端部は、幅が広い接続端子13Tとして形成されている。
【0035】
図6に示すように、絶縁フィルム14には、積層される絶縁フィルム11,12,13,14の位置決めのための複数の貫通孔14Pが形成されている。
【0036】
絶縁フィルム14の上面には、上記の電極線14Bが形成されている。電極線14Bの開口部13Hに重なる端部と反対の端部は、幅が広い接続端子14Tとして形成されている。
【0037】
絶縁フィルムの孔および溝は、例えばエッチングによって形成することができる。電極線は、絶縁フィルム上に例えばフォトリソグラフィによって形成することができる。
【0038】
絶縁フィルム11,12,13,14を接着剤11A,12A,13Aで接合する際に、貫通孔11P,12P,13P,14Pにピン(図示せず)を挿入することによって、絶縁フィルム11,12,13,14は位置決めされている。
【0039】
絶縁フィルム11と、電極線が形成された絶縁フィルム12,13,14を接着剤11A,12A,13Aで接合することにより、細胞外電位測定装置1を容易に製造することができる。
【0040】
図2に示すように、絶縁フィルム11の幅は直下の絶縁フィルム12の幅より小さく、絶縁フィルム12に形成された電極線12B,12C,30の大部分は絶縁フィルム11に覆われて保護されるが、電極線12B,12C,30の接続端子12T,12CT,30Tは、少なくとも部分的に露出する。絶縁フィルム12の幅は直下の絶縁フィルム13の幅より小さく、絶縁フィルム13に形成された電極線13Bの大部分は絶縁フィルム12に覆われて保護されるが、電極線13Bの接続端子13Tは、少なくとも部分的に露出する。絶縁フィルム13の長さは直下の絶縁フィルム14の長さより小さく、絶縁フィルム14に形成された電極線14Bの大部分は絶縁フィルム13に覆われて保護されるが、電極線14Bの接続端子14Tは、少なくとも部分的に露出する。
【0041】
したがって、接続端子12T,12CT,30T,13T,14Tは、図示しない電位計測装置に容易に接続することが可能である。
【0042】
図7および図8に示すように、電極線12B,12C,13Bの端部は、凹部2に対して放射状に延びる。絶縁フィルム14に形成された電極線14Bの端部は、絶縁フィルム12に形成された溝3内を延びる。電極線14Bは屈曲しており、端部以外の部分は絶縁フィルム14に覆われている。
【0043】
図8は、絶縁フィルム11に形成された上記の開口部21Hと絶縁フィルム12に形成された上記の開口部22Hを示す。開口部21H,22Hは重ねられて、下方ほどサイズが小さいほぼ円錐台形またはボウル形の凹部4を形成する。ただし、開口部21H,22Hの形状は円形に限定されず、他の形状であってもよい。
【0044】
開口部11H,21Hは、絶縁フィルム11に形成された直線状のスリットまたは溝3でつながれている。溝3の直下の絶縁フィルム12に形成された複数の軸索電極線30の端部は、絶縁フィルム11の溝3内で露出する。
【0045】
溝3が接着剤11Aで埋まることを防止するため、および開口部11H,21Hの寸法精度を向上させるため、好ましくは、絶縁フィルム11において溝3と開口部11H,21Hの周囲の部分11Xは、フォトリソグラフィによって形成されている。
【0046】
具体的には、まず部分11Xが存在しない(部分11Xに相当する貫通する凹部を有する)絶縁フィルム11を形成する。例えば、絶縁フィルム11にそのような凹部をエッチングによって形成することができる。
【0047】
次に、貫通孔11P,12P,13P,14Pにピン(図示せず)を挿入することによって、絶縁フィルム11,12,13,14を位置決めしながら、絶縁フィルム11,12,13,14を接着剤11A,12A,13Aで接合する。
【0048】
この後、部分11Xに相当する凹部に紫外線硬化型樹脂を充填し、紫外線硬化型樹脂の溝3と凹部2,4以外の部分を紫外線で露光して硬化させる。さらに、溝3と凹部2,4をエッチングによって形成する。このようにして、溝3と開口部11H,21Hが形成されると同時に、電極線の端部が露出する。
【0049】
このように形成された部分11Xは、図1に示すように、絶縁フィルム11の層だけでなく、接着剤11Aの層まで達する。図8に示すように、軸索電極線30の端部は、部分11Xを貫通する。
【0050】
この実施形態においては、複数の絶縁フィルム11,12,13の開口部11H,12H,13Hが重ねられて設けられた下方ほどサイズが小さい凹部2に立体的な細胞の集合が収容される。上下の絶縁フィルムの間に配置された電極線12B,12C,13Bの各々の端部は、直下の絶縁フィルムの開口部の周囲に配置され、凹部2内で露出するので、複数の電極線12B,12C,13Bの端部は立体的な細胞の集合に接触可能である。複数の電極線12B,12C,13Bは、複数の高さ、すなわち複数の層に配置されているので、細胞の集合の異なる高さの多点での電位を測定することができる。
【0051】
最も下の電極線14Bの端部は、2番目に下層の絶縁フィルム13の開口部全体、すなわち凹部2の底部全体を一方向に横断する。したがって、電極線14Bの端部の広い面積が凹部2で露出し、凹部2内に配置された細胞の集合が電極線14Bの端部に接触しやすい。細胞の集合への接触の蓋然性が高いこの電極線14Bは、例えば基準電極として好ましく使用することができる。但し、基準電極は、他の電極線のいずれか1つであってもよい。
【0052】
この実施形態に係る細胞外電位測定装置1は、口部11H,12H,13Hを有する複数の縁フィルム11,12,13を接合することにより、立体的な細胞の集合の収容に適した、下方ほどサイズが小さい凹部2が設けられ、複数の縁フィルム11,12,13,14の間に電極線12B,12C,13B,14Bを配置することによって、複数の高さに電極線12B,12C,13B,14Bを配置することができる。したがって、立体的な細胞の集合の異なる高さの多点での電位を測定することができる細胞外電位測定装置1を容易に製造することができる。多数の絶縁フィルムを積層することにより、電極線が設けられる高さの数および電極線の数を増加させることが可能であり、細胞の集合に関する詳細な解析が可能となりうる。
【0053】
凹部2内に配置される細胞の集合は、生体内の細胞塊であってもよいし、生体外で培養された細胞塊、オルガノイドまたはスフェロイドのいずれであってもよい。
【0054】
図9は、細胞外電位測定装置1を用いた細胞外電位測定に使用されうるサンプルの複数の例を示す。サンプル40は、軸索を有しない細胞の集合である。サンプル41は、神経細胞に関する細胞の集合42と、細胞の集合42から延びた軸索43を有する。サンプル44は、神経細胞に関する2つの細胞の集合45,46と、細胞の集合45,46に結合した軸索47を有する。細胞外電位測定装置1の凹部2の内部には、サンプル40、細胞の集合42、細胞の集合45,46のいずれも配置することができる。
【0055】
図10は、サンプルの電位の測定の一例としてサンプル44の電位の測定を示す。細胞の集合45,46は、それぞれ凹部2,4内に配置され、軸索47は溝3内に配置される。
【0056】
細胞の集合45の底部は、凹部2の底部にある電極線14Bの端部に接触させられる。凹部2内で露出する電極線12B,12C,13Bの端部は、細胞の集合45に接触可能であり、細胞の集合45に接触する限り、電極線12B,12C,13Bを通じて、細胞の集合45の各点の電位を測定することができる。
【0057】
また、溝3内で露出する軸索電極線30の端部は、溝3内に配置された軸索47に接触可能であり、軸索47に接触する限り、軸索電極線30を通じて、軸索47の各点の電位を測定することができる。軸索の電位の測定においても、例えば電極線14Bを基準電極として使用することができるが、他の電極線のいずれか1つを基準電極として使用してもよい。
【0058】
細胞外電位測定装置1によれば、細胞の集合の電位に加え、細胞の集合から延びる軸索の電位を測定することができる。これらの電位を解析することにより、生体内での(in vivo)神経細胞の信号伝達の推定に役立つ生体外での(in vitro)モデルを考察することができ、例えば、神経細胞への薬効および/または副作用を評価することができる。
【0059】
軸索電極線30の数は1つでもよい。但し、この実施形態では複数の軸索電極線30が設けられ、軸索の長さ方向における多点での電位を測定することができ、より詳細な解析を可能としている。
【0060】
図11は、実施形態の変形例に係る細胞外電位測定装置の一部の図8と同様の拡大平面図である。この変形例では、サンプル44の細胞の集合45,46の両方の電位を測定することができる。
【0061】
図11に示すように、この変形例では、電極が設けられていない凹部4の代わりに、電極が設けられた第2の凹部4Aを有する。第2の凹部4Aは、絶縁フィルム11を貫通する開口部21H、絶縁フィルム12を貫通する開口部22H、および絶縁フィルム13を貫通する開口部23Hから形成されている。第2の凹部4Aには、細胞の集合46の電位を測定するために、細胞の集合46が配置される。第2の凹部4Aを形成する開口部21H,22H,23Hを以下、第2の開口部と呼ぶ。
【0062】
複数の絶縁フィルム11,12,13の第2の開口部21H,22H,23Hは重ねられて、下方ほどサイズが小さいほぼ円錐台形またはボウル形の第2の凹部4Aを形成する。ただし、第2の開口部21H,22H,23Hの形状は円形に限定されず、他の形状であってもよい。第2の凹部4Aの第2の開口部21Hは溝3につながっている。
【0063】
したがって、この変形例では、絶縁フィルム11,12,13,14と接着剤11A,12A,13Aで形成されたシート10には、凹部2と、凹部2につながる溝3と、溝3につながる第2の凹部4Aが形成されている。
【0064】
この変形例は、さらに複数の高さ、すなわちシート10の複数の層に配置された複数の第2の電極線22B,22C,23Bを有する。各電極線は上方の絶縁フィルムと下方の絶縁フィルムの間に配置されている。第2の電極線22B,22C,23Bは、細胞の集合46の異なる高さの多点での電位を測定するために使用される。第2の電極線は、細胞になるべく影響を及ぼさない、高い導電率の導電材料から形成されている。例えば、第2の電極線は、金メッキされた銅線から形成されている。
【0065】
複数の第2の電極線の端部は、第2の電極線の直下の絶縁フィルムの第2の開口部の周囲に配置され、第2の凹部4A内で露出する。具体的には、第2の電極線22B,22Cは、絶縁フィルム12に形成され、第2の電極線22B,22Cの端部は、第2の電極線22B,22Cの直下の絶縁フィルム12の開口部22Hの周囲に配置されて、上方の開口部21Hを通じて露出する。第2の電極線23Bは、絶縁フィルム13に形成され、第2の電極線23Bの端部は、第2の電極線23Bの直下の絶縁フィルム13の開口部23Hの周囲に配置されて、上方の開口部21H,22Hを通じて露出する。
【0066】
第2の電極線22Bは凹部2に関連する電極線12Bに対応し、第2の電極線22Cは凹部2に関連する電極線12Cに対応する。第2の電極線23Bは凹部2に関連する電極線13Bに対応する。第2の電極線22B,22C,23Bの詳細については、電極線12B,12C,13Bの説明を参照することにより理解できる。
【0067】
電極線14Bは、2番目に下層の絶縁フィルム13の第2の開口部23Hの全体を一方向に横断する。具体的には、電極線14Bは、円形の第2の開口部23Hの直径に沿って延びて、第2の開口部23Hを横断する。電極線14Bは、上方の第2の開口部21H,22H,23Hを通じて露出する。 細胞の集合46の電位の測定においても、例えば電極線14Bを基準電極として使用することができるが、他の電極線のいずれか1つを基準電極として使用してもよい。
【0068】
細胞の集合46の底部は、第2の凹部4Aの底部にある電極線14Bの端部に接触させられる。第2の凹部4Aで露出する第2の電極線22B,22C,23Bの端部は、細胞の集合46に接触可能であり、細胞の集合46に接触する限り、第2の電極線22B,22C,23Bを通じて、細胞の集合46の各点の電位を測定することができる。
【0069】
この変形例においては、複数の絶縁フィルム11,12,13の第2の開口部21H,22H,23Hが重ねられて設けられた下方ほどサイズが小さい第2の凹部4Aに立体的な第2の細胞の集合46が収容される。上下の絶縁フィルムの間に配置された第2の電極線22B,22C,23Bの各々の端部は、直下の絶縁フィルムの第2の開口部の周囲に配置され、第2の凹部4A内で露出するので、複数の第2の電極線22B,22C,23Bの端部は立体的な第2の細胞の集合に接触可能である。複数の第2の電極線22B,22C,23Bは、複数の高さ、すなわち複数の層に配置されているので、第2の細胞の集合の異なる高さの多点での電位を測定することができる。
【0070】
したがって、2つの細胞の集合45,46の多点の電位とそれらの間の軸索47の電位を測定することができる。これらの電位を解析することにより、生体内での神経細胞の信号伝達モデルを考察することができ、特に2つの細胞の集合の間の相互作用を考察することができる。
【0071】
この変形例は、複数の第2の電極線22B,22C,23Bを有するので、細胞外電位測定装置の全体の平面図、特に軸索電極線30の配置は、図2と異なる(図2の凹部4の位置に第2の凹部4Aが配置される)。但し、軸索電極線および第2の電極線を含む電極線のパターンを工夫することにより、変形例のように第2の電極線を設けることが可能である。
【0072】
図12は、本発明の実施形態の他の変形例に係る細胞外電位測定装置の断面図である。この変形例では、電極線12B,12C,13Bの各々、電極線の直下の絶縁フィルム12,13の開口部12H,13Hの端縁つまり内周面で終端する。図1と比較すると明らかなように、凹部2内での電極線12B,12C,13Bの露出部分が増えて、細胞の集合と接触する蓋然性が向上する。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【0074】
例えば、絶縁フィルムの数、複数の絶縁フィルムの厚さの比率、複数の開口部のサイズの比率、軸索電極線および第2の電極線を含む電極線の数と太さと配置、その他の詳細は、上記の実施形態および変形例に限定されない。
【0075】
図11に示す凹部2および第2の凹部4Aに加えて、さらに多くの凹部と凹部をつなぐ溝を細胞外電位測定装置に設けて、これらの凹部と溝に細胞の集合と軸索をそれぞれ配置し、これらの細胞の集合と軸索の電位を測定してもよい。
【0076】
本発明の態様は、下記の番号付けされた条項にも記載される。
【0077】
条項1. 絶縁材料から形成され、互いに積層されて接合された複数の絶縁フィルムと、
導電材料から形成され、複数の高さに配置された複数の電極線を備え、
各電極線が上方の絶縁フィルムと下方の絶縁フィルムの間に配置されており、
最下層の絶縁フィルムを除き、各絶縁フィルムは貫通する開口部を有し、
下方の絶縁フィルムの前記開口部は、上方の絶縁フィルムの前記開口部のサイズより小さいサイズを有し、複数の絶縁フィルムの前記開口部は重ねられて、細胞の集合が内部に配置される下方ほどサイズが小さい凹部を形成し、
複数の電極線の各々は、当該電極線の直下の絶縁フィルムの前記開口部の周囲に配置されて前記凹部内で露出する端部を有する
ことを特徴とする細胞外電位測定装置。
【0078】
条項2. 導電材料から形成され、最下層の絶縁フィルムと2番目に下層の絶縁フィルムの間に配置された電極線をさらに備え、前記最下層の絶縁フィルムと前記2番目に下層の絶縁フィルムの間に配置された前記電極線の端部は、前記2番目に下層の絶縁フィルムの開口部全体を一方向に横断する
ことを特徴とする条項1に記載の細胞外電位測定装置。
【0079】
この条項によれば、この電極線の端部は、2番目に下層の絶縁フィルムの開口部全体、すなわち凹部の底部全体を一方向に横断する。したがって、電極線の端部の広い面積が凹部で露出し、凹部内に配置された細胞の集合が電極線の端部に接触しやすい。細胞の集合への接触の蓋然性が高いこの電極線は、例えば基準電極として好ましく使用することができる。
【0080】
条項3. 最上層の絶縁フィルムには、前記細胞の集合から延びる線状の軸索が内部に配置される、貫通する溝が形成されており、前記溝は前記凹部につながっており、
少なくとも1つの軸索電極線をさらに備え、前記軸索電極線の端部が前記軸索と接触させられるように前記溝内で露出する
ことを特徴とする条項1または2に記載の細胞外電位測定装置。
【0081】
この条項によれば、細胞の集合の電位に加え、細胞の集合から延びる軸索の電位を測定することができる。これらの電位を解析することにより、生体内での神経細胞の信号伝達の推定に役立つ生体外でのモデルを考察することができ、例えば、神経細胞への薬効および/または副作用を評価することができる。
【0082】
条項4. 導電材料から形成され、複数の高さに配置された複数の第2の電極線をさらに備え、
各第2の電極線が上方の絶縁フィルムと下方の絶縁フィルムの間に配置されており、
最下層の絶縁フィルムを除き、各絶縁フィルムは貫通する第2の開口部を有し、
下方の絶縁フィルムの前記第2の開口部は、上方の絶縁フィルムの前記第2の開口部のサイズより小さいサイズを有し、複数の絶縁フィルムの前記第2の開口部は重ねられて、前記軸索が結合した第2の細胞の集合が内部に配置される下方ほどサイズが小さい第2の凹部を形成し、前記第2の凹部は前記溝につながっており、
複数の第2の電極線の各々は、当該第2の電極線の直下の絶縁フィルムの前記第2の開口部の周囲に配置されて前記第2の凹部内で露出する端部を有する
ことを特徴とする条項3に記載の細胞外電位測定装置。
【0083】
この条項によれば、複数の絶縁フィルムの第2の開口部が重ねられて設けられた下方ほどサイズが小さい第2の凹部に立体的な第2の細胞の集合が収容される。上下の絶縁フィルムの間に配置された第2の電極線の各々の端部は、直下の絶縁フィルムの第2の開口部の周囲に配置され、第2の凹部内で露出するので、複数の第2の電極線の端部は立体的な第2の細胞の集合に接触可能である。複数の第2の電極線は、複数の高さ、すなわち複数の層に配置されているので、第2の細胞の集合の異なる高さの多点での電位を測定することができる。したがって、2つの細胞の集合の多点の電位とそれらの間の軸索の電位を測定することができる。これらの電位を解析することにより、生体内での神経細胞の信号伝達モデルを考察することができ、特に2つの細胞の集合の間の相互作用を考察することができる。
【0084】
条項5. 上方の絶縁フィルムと下方の絶縁フィルムは接着剤で接合されている
ことを特徴とする条項1から4のいずれか1項に記載の細胞外電位測定装置。
【0085】
この条項によれば、細胞外電位測定装置を容易に製造することができる。
【0086】
条項6. 絶縁材料から形成された、互いに積層されて接合された複数の絶縁フィルムを有しており、細胞の集合が内部に配置される凹部と、凹部につながっており前記細胞の集合から延びる線状の軸索が内部に配置される溝を有するシートと、
前記シートの前記絶縁フィルムの間に配置された複数の電極線を備え、
複数の電極線は、前記細胞の集合と接触させられるように前記凹部内で露出する端部を有し、
少なくとも1つの電極線は、前記軸索と接触させられるように前記溝内で露出する端部を有する
ことを特徴とする細胞外電位測定装置。
【0087】
条項7. 前記凹部の内部に端部が露出する複数の電極線は、複数の高さに配置されている
ことを特徴とする条項6に記載の細胞外電位測定装置。
【0088】
この条項によれば、立体的な細胞の集合の異なる高さの多点での電位を測定することができる。
【0089】
条項8. 最下層の絶縁フィルムを除き、各絶縁フィルムは貫通する開口部を有し、
下方の絶縁フィルムの前記開口部は、上方の絶縁フィルムの前記開口部のサイズより小さいサイズを有し、複数の絶縁フィルムの前記開口部は重ねられて、下方ほどサイズが小さい前記凹部を形成し、
前記凹部の内部に露出する複数の電極線の各々の端部は、当該電極線の直下の絶縁フィルムの前記開口部の周囲に配置されている
ことを特徴とする条項7に記載の細胞外電位測定装置。
【0090】
この条項によれば、複数の絶縁フィルムの開口部が重ねられて設けられた下方ほどサイズが小さい凹部に立体的な細胞の集合が収容される。上下の絶縁フィルムの間に配置された電極線の各々の端部は、直下の絶縁フィルムの開口部の周囲に配置され、凹部内で露出する。したがって、立体的な細胞の集合の異なる高さの多点に複数の電極線の端部が容易に接触可能である。
【0091】
条項9. 前記シートの前記絶縁フィルムの間に配置された複数の第2の電極線を備え、
前記シートは、前記軸索が結合した第2の細胞の集合が内部に配置される第2の凹部を有し、前記第2の凹部は前記溝につながっており、
前記複数の第2の電極線は、前記第2の細胞の集合と接触させられるように前記第2の凹部内で露出する端部を有する
ことを特徴とする条項6から8のいずれか1項に記載の細胞外電位測定装置。
【0092】
この条項によれば、2つの細胞の集合の多点の電位とそれらの間の軸索の電位を測定することができる。これらの電位を解析することにより、生体内での神経細胞の信号伝達の推定に役立つ生体外でのモデルを考察することができ、特に2つの細胞の集合の間の相互作用を考察することができる。
【0093】
条項10. 前記複数の第2の電極線は、複数の高さに配置されている
ことを特徴とする条項9に記載の細胞外電位測定装置。
【0094】
この条項によれば、立体的な第2の細胞の集合の異なる高さの多点での電位を測定することができる。
【0095】
条項11. 最下層の絶縁フィルムを除き、各絶縁フィルムは貫通する第2の開口部を有し、
下方の絶縁フィルムの前記第2の開口部は、上方の絶縁フィルムの前記第2の開口部のサイズより小さいサイズを有し、複数の絶縁フィルムの前記第2の開口部は重ねられて、下方ほどサイズが小さい前記第2の凹部を形成し、
前記複数の第2の電極線の各々の端部は、当該第2の電極線の直下の絶縁フィルムの前記第2の開口部の周囲に配置され、前記第2の凹部内で露出する
ことを特徴とする条項10に記載の細胞外電位測定装置。
【0096】
この条項によれば、複数の絶縁フィルムの第2の開口部が重ねられて設けられた下方ほどサイズが小さい第2の凹部に立体的な第2の細胞の集合が収容される。上下の絶縁フィルムの間に配置された第2の電極線の各々の端部は、直下の絶縁フィルムの第2の開口部の周囲に配置され、第2の凹部内で露出する。したがって、立体的な第2の細胞の集合の異なる高さの多点に複数の第2の電極線の端部が容易に接触可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 細胞外電位測定装置
2 凹部
3 溝
4A 第2の凹部
10 シート
11,12,13,14 絶縁フィルム
11A,12A,13A 接着剤
12B,12C,13B,14B 電極線
11H,12H,13H 開口部
21H,22H,23H 第2の開口部
30 軸索電極線
40 サンプル
41 サンプル
42 細胞の集合
43 軸索
44 サンプル
45,46 細胞の集合
47 軸索
22B,22C,23B 第2の電極線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12