(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】生理用ショーツ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/72 20060101AFI20230221BHJP
A41B 9/04 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61F13/72 100
A41B9/04 D
A41B9/04 E
(21)【出願番号】P 2019096125
(22)【出願日】2019-05-22
(62)【分割の表示】P 2018203021の分割
【原出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】野口 順一
(72)【発明者】
【氏名】田村 竜也
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-000658(JP,A)
【文献】特開2012-172270(JP,A)
【文献】特開2018-075313(JP,A)
【文献】特開2018-080439(JP,A)
【文献】実開平06-051210(JP,U)
【文献】特開2001-073201(JP,A)
【文献】特開2002-180301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/72
A41B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向と横方向とを有し、前身頃と、後身頃と、前記前後身頃間に位置する股下域とを備えるショーツ本体と、前記前身頃の上端縁と前記後身頃の上端縁とによって画成されたウエスト開口と、前記前身頃の両側縁部と前記後身頃の両側縁部との接合部の下に形成される一対のレッグ開口とを含む生理用ショーツにおいて、
前記ショーツ本体は、伸縮性を有する身生地から形成されており、
前記前後身頃は、前記上端縁側に位置する上端域と、下端縁側に位置する下端域と、前記上下端域間に位置する中間域と
を有し、
前記ショーツ本体の肌対向面側には、前記股下域から前記後身頃の前記上端域まで延びる縦断弾性体と、前記前後身頃のうちの少なくとも後身頃の両側縁間において前記横方向へ延びる、温感素材を用いた温感シートとが配置されており、
前記温感シートは、上下端縁部と、前記両側縁部とからなる外周縁部を有し、前記外周縁部において前記ショーツ本体に固定されていて、前記外周縁部に囲まれた前記ショーツ本体に固定されていない領域には、内部空間が画成されていて、
前記温感シートは、後身頃のうちの前記中間域に配置されていて、前記縦断弾性体の肌対向面側に位置することを特徴とする前記ショーツ。
【請求項2】
前記身生地は、前記前身頃側に位置する第1部分と、前記後身頃側に位置する第2部分とを有し、前記第1部分と前記第2部分とは横断縫着ラインを介して互いに接合されていて、
前記縦断弾性体は、前記横断縫着ラインまで延びている請求項
1に記載のショーツ。
【請求項3】
前記股下域の肌対向面側には当て布が配置されていて、前記当て布の前後端部は前記身生地に固定されており、前記縦断弾性体は、前記当て布の非肌対向面側に位置し、前記股下域を縦断している請求項
1又は
2に記載のショーツ。
【請求項4】
前記ウエスト弾性域は、2つに折り曲げた状態で、前記身生地の上端縁部にウエスト周り方向へ延びる環状縫合ラインと介して取り付けられたカバーシートと、折り曲げられた前記カバーシート間に伸長状態で収縮可能に配置されたテープ状のウエスト弾性体とを有する請求項1に記載のショーツ。
【請求項5】
前記レッグ弾性域は、前記レッグ開口に沿って環状に延び、かつ、前記身生地の内面に伸長状態で収縮可能に取り付けられたテープ状のレッグ弾性体を有する請求項1又は
4に記載のショーツ。
【請求項6】
前記温感シートは、前記前身頃の前記両側縁間において前記横方向へ延びる第1温感シートと、前記後身頃の両側縁部間において前記横方向へ延びる第2温感シートとをさらに有し、
前記第1温感シートと前記第2温感シートとによって、胴回り方向へ延びる環状の温感帯域が形成される請求項1~
5のいずれかに記載のショーツ。
【請求項7】
前記第1温感シートは、前記前身頃の前記両側縁部から前記横方向の中央部分に向かって次第に幅広となる請求項
6に記載のショーツ。
【請求項8】
前記第2温感シートは、前記後身頃の前記両側縁部から前記横方向の中央部分に向かって次第に幅広となっていて、最も幅広の部分は、前記第1温感シートの最も幅広の部分よりも幅広である請求項
6に記載のショーツ。
【請求項9】
前記温感シートの前記外周縁部に配置された接合部は、前記横方向へ連続的に延びる起伏形状を有する請求項
1~8のいずれかに記載のショーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ショーツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ショーツは、公知である。例えば、特許文献1と特許文献2とには、それぞれ、前身頃と、後身頃と、着用者の股間に対向する股部とを有し、伸縮性を有する身生地を備えた生理用ショーツが開示されている。特許文献1の生理用ショーツは、前身頃の横方向の中央部分の内面側に遠赤外線放射効果を有する温感シートが配置されている。一方、特許文献2の生理用ショーツは、身生地の構成繊維に遠赤外線放射効果を生じるセラミックが含有されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-305084号(P2003-305084A)
【文献】特開2000-325396号(P2000-325396A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された生理用ショーツでは、前身頃の横方向の中央部の内面側に遠赤外線放射効果を有する温感シートが配置されていることによって、着用したときに、女性の着用者の臍部近傍のみを温めることができる。一方、特許文献2に開示された生理用ショーツでは、身生地の構成繊維がセラミックを含有することによって、ショーツ全体がセラミックによる遠赤外線放射効果を有し、着用したときに着用者の腹部及び臀部を広い範囲で温めることができる。通常、着用者の子宮や仙骨近傍が温められることによって、血行が良くなり、生理痛を緩和することにつながるので、これらの生理用ショーツを着用することによって、身体が温められて血行を良くし、生理痛を緩和させることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の生理用ショーツでは、着用者の臍部近傍のみが温められて、着用者の腹部や背部を横方向へ広く温めるものではない。したがって、着用者の子宮や仙骨近傍を全体的に暖めることができず、温感シートが配置されていない部分が冷えて生理痛を十分に緩和することができない。また、特許文献2の生理用ショーツでは、身生地全体が遠赤外線効果を有することによって着用者の腹部及び背部が全体的に温められるが、前後身頃のみならず股部においても温感作用が生じるので、ショーツ内部が蒸れて、痒みや汗疹等の肌トラブルを招くおそれがある。
【0006】
本発明は、従来の生理用ショーツの改良であって、内部の蒸れを生じさせることなく、身体を部分的に温めることによって生理痛を緩和することができる生理用ショーツの提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、縦方向と横方向とを有し、前身頃と、後身頃と、前記前後身頃間に位置する股下域とを備えるショーツ本体と、前記前身頃の上端縁と前記後身頃の上端縁とによって画成されたウエスト開口と、前記前身頃の両側縁部と前記後身頃の両側縁部との接合部の下に形成される一対のレッグ開口とを含む生理用ショーツに関する。
【0008】
本発明の第1発明に係る生理用ショーツは、前記ショーツ本体は、伸縮性を有する身生地から形成されており、前記前後身頃は、前記上端縁側に位置する上端域と、下端縁側に位置する下端域と、前記上下端域間に位置する中間域とを有し、前記ショーツ本体の肌対向面側には、前記股下域から前記後身頃の前記上端域まで延びる縦断弾性体と、前記前後身頃のうちの少なくとも後身頃の両側縁間において前記横方向へ延びる、温感素材を用いた温感シートとが配置されており、前記温感シートは、上下端縁部と、前記両側縁部とからなる外周縁部を有し、前記外周縁部において前記ショーツ本体に固定されていて、前記外周縁部に囲まれた前記ショーツ本体に固定されていない領域には、内部空間が画成されていて、前記温感シートは、後身頃のうちの前記中間域に配置されていて、前記縦断弾性体の肌対向面側に位置することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る生理用ショーツの実施態様の一つにおいて、前記身生地は、前記前身頃側に位置する第1部分と、前記後身頃側に位置する第2部分とを有し、前記第1部分と前記第2部分とは横断縫着ラインを介して互いに接合されていて、前記縦断弾性体は、前記横断縫着ラインまで延びている。
【0011】
本発明に係る生理用ショーツの実施態様の一つにおいて、前記股下域の肌対向面側には当て布が配置されていて、前記当て布の前後端部は前記身生地に固定されており、前記縦断弾性体は、前記当て布の非肌対向面側に位置し、前記股下域を縦断している。
【0012】
本発明に係る生理用ショーツの実施態様の一つにおいて、前記ウエスト弾性域は、2つに折り曲げた状態で、前記身生地の上端縁部にウエスト周り方向へ延びる環状縫合ラインと介して取り付けられたカバーシートと、折り曲げられた前記カバーシート間に伸長状態で収縮可能に配置されたテープ状のウエスト弾性体とを有する。
【0013】
本発明に係る生理用ショーツの実施態様の一つにおいて、前記レッグ弾性域は、前記レッグ開口に沿って環状に延び、かつ、前記身生地の内面に伸長状態で収縮可能に取り付けられたテープ状のレッグ弾性体を有する。
【0014】
本発明に係る生理用ショーツの実施態様の一つにおいて、前記温感シートは、前記前身頃の前記両側縁間において前記横方向へ延びる第1温感シートと、前記後身頃の両側縁部間において前記横方向へ延びる第2温感シートとをさらに有し、前記第1温感シートと前記第2温感シートとによって、胴回り方向へ延びる環状の温感帯域が形成される。
本発明に係る生理用ショーツの実施態様の一つにおいて、前記第1温感シートは、前記前身頃の前記両側縁部から前記横方向の中央部分に向かって次第に幅広となる。
本発明に係る生理用ショーツの実施態様の一つにおいて、前記第2温感シートは、前記後身頃の前記両側縁部から前記横方向の中央部分に向かって次第に幅広となっていて、最も幅広の部分は、前記第1温感シートの最も幅広の部分よりも幅広である。
本発明に係る生理用ショーツの実施態様の一つにおいて、前記温感シートの前記外周縁部に配置された接合部は、前記横方向へ連続的に延びる起伏形状を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る生理用ショーツにおいては、温感シートが前後身頃のうちの少なくとも一方の身頃の中間部に配置されていることから、子宮又は仙骨近傍を部分的に温めて生理痛を緩和できるとともに、ショーツ内部が蒸れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る、着用状態における生理用ショーツを正面から視た斜視図。
【
図5】
図3の一点鎖線Vで囲んだ領域の一部拡大図。
【
図6】着用状態における生理用ショーツを側面から視た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
下記の実施の形態は、
図1~
図7に示す生理用ショーツ10に関し、発明の不可欠な構成ばかりではなく、選択的及び好ましい構成を含む。説明の便宜上、各図において、温感シートには薄黒色を付している。
【0018】
図1~
図6を参照すると、本発明の生理用ショーツの一例として示す、生理用ショーツ10は、縦方向Y及び横方向Xと、着用状態における前後方向Zとを有し、ウエスト開口8及び一対のレッグ開口9と、前身頃11と、後身頃12と、前後身頃11,12間に位置する股下域13とを備えたショーツ本体5とを有する。股下域13は、説明の便宜上、一対の横断縫合ライン51,52間に位置している。
【0019】
生理用ショーツ10は、ショーツ本体5の外形を形成する身生地30を有する。身生地30は、前身頃11の外面を形成する前ウエスト生地32と、後身頃12の外面を形成する後ウエスト生地33と、股下域13の外面を形成する股下生地34とを有する。股下生地34は、前身頃11側に位置する第1部分と後身頃側に位置する第2部分とを有し、第1及び第2部分は横断縫着ライン53を介して互いに接合される。
【0020】
前身頃11(前ウエスト生地32)の両側縁部14a,14bと後身頃12(後ウエスト生地33)の両側縁部15a,15bとが、縦方向Yへ延びる縦断縫着ライン(縫着ライン)35によって互いに接合されることによって、ウエスト開口8と一対のレッグ開口9とが画成される。前身頃11の両側縁部14a,14bと後身頃12の両側縁部15a,15bとは、それらの外面どうしが互いに接した状態で縦断縫着ライン35を介して接合されることによって、縦断縫着ライン35は、ショーツ本体5の内面側に位置している。
【0021】
身生地30は、編み組織によって縦方向Yと横方向Xとに伸縮可能な伸縮性生地(ツーウエイストレッチ生地)から形成されており、その材料としては、主として綿糸が用いられ、綿糸とポリウレタン弾性糸等の弾性糸とを混紡したものが好適に使用される。本実施形態においては、綿糸として、無農薬有機栽培(オーガニック)されたコットン繊維を好適に用いることができる。身生地30にオーガニックのコットン繊維が含まれていることによって、肌触りが良好になるとともに、着用者に対して天然由来の材料を使用することによる安心感を与えることができる。
【0022】
前後身頃11,12は、説明の便宜上、それぞれ、縦方向Yにおいて、ウエスト開口8側に位置する上端域11A,12Aと、股下域13側に位置する下端域11B,12Bと、上下端域11A,12A間に位置する中間域11C,12Cとに区分される。具体的には、前後身頃11,12の上端域11A、12Aは少なくともウエスト弾性域61を含んでウエスト開口縁から縦方向Yの内側へ延びる領域、下端域11B,12Bは前後身頃11,12の両側縁部14a,14b,15a,15bの下端から股下域13まで延びる領域、中間域11C,12Cは、上端域11A,12Aと下端域11B、12Bとの間において縦方向Yへ延びる領域を意味する。
【0023】
前後身頃11,12における各域11A,11B,11C,12A,12B,12Cの縦方向Yの寸法は、生理用ショーツ10のサイズ等によって適宜設定、変更することができるが、下端域11B,12B≧中間域11C,12C>上端域11A,12Aとなっている。また、具体的には、例えば、前後身頃11,12の縦方向Yの寸法(両側縁部14a,14b,15a,15bの縦方向Yの寸法)に対して、上端域11A,12Aは10~30%、中間域11C,12Cは20~40%、下端域11B,12Bは40~60%の大きさを有することが好ましく、さらに、前後身頃11、12の縦方向Yの寸法を3等分して区分けしていてもよい。
【0024】
ショーツ本体5は、ウエスト開口8を画成する環状のウエスト弾性域61と、レッグ開口9を画成するレッグ弾性域62とをさらに有する。ウエスト開口8の開口縁部とレッグ開口9の開口縁部とがそれぞれウエスト弾性域61とレッグ弾性域62とによって形成されていることによって、各開口縁部は着用者の身体にフィットされる。
【0025】
ウエスト弾性域61は、2つに折り曲げた状態で、身生地30の上端縁部にウエスト回り方向へ延びる環状縫合ライン54を介して取り付けられたカバーシート64と、折り曲げられたカバーシート64間に伸長状態で収縮可能に配置されたウエスト弾性体66とを有する。レッグ弾性域62は、レッグ開口9に沿って環状に延びるレッグ弾性体68から形成されている。レッグ弾性体68は、身生地30の内面に伸長状態で収縮可能に取り付けられている。ウエスト弾性体66とレッグ弾性体68とは、糸状、テープ状またはリボン状のゴムやウレタン、伸縮性繊維不織布等の弾性材料から形成される。
【0026】
レッグ弾性域62の外側縁部は、身生地30の外面に取り付けられた幾何学模様等の装飾要素(図示せず)を有するレース生地69によって縁取りされている。レース生地69は、オプションであって、レース生地69によってレッグ開口9を形成することによって、ヒラヒラとした柔らかな印象を与え、意匠性に優れる。また、寝臥状態における着用者の大腿部をレースがカバーして、寝返り等による大腿部の捲れ上がりを抑制しうる。
【0027】
図2を参照すると、股下域13には、股下生地34の内面に固定された当て布58を有する。当て布58は、横方向Xへ延びる前後端部と、前後端部間において縦方向Yへ延びる両側縁部とを有する。当て布58の前後端部は、一対の横断縫合ライン51,52を介して股下生地34に固定されている。また、当て布58の両側縁部は、股下生地34に固定されておらず、前後端部を除く部分は股下生地34に固定されていない、フリー(非固定)の状態にある。当て布58は、内外面側に位置する2枚のシートから構成されていて、外面側(非肌対向面側)には、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維及びアクリル繊維等の合成繊維からなる防水加工された編地を用いることが好ましい。
【0028】
図示していないが、生理用ショーツ10の着用時において、当て布58には、生理用ナプキンを取り付けることができる。具体的には、生理用ナプキンの非肌対向面を当て布58に宛がった状態で翼部を折り曲げて股下生地34と当て布58との間に挿し入れて、翼部の肌対向面側に位置する粘着部分を介して当て布58の非肌対向面に取り付けることによって、生理用ショーツ10に生理用ナプキンを安定的に固定することができる。当て布58は、その前後端部を除いてフリーであるので、股下域13において吊持された状態となり、生理用ナプキンを着用者の身体の動きに追従させるように移動させることができ、経血の漏れを効果的に防止することができる。
【0029】
また、身生地30には、股下域13から後身頃12まで延びる縦断弾性体59が配置されている。縦断弾性体59は、ウエスト弾性体66等と同様の弾性材料から形成されており、一方端部が環状縫着ライン54を介して前ウエスト生地32に固定され、他方端部が横断縫着ライン53を介して股下生地34に固定されることによって、縦方向Yへ伸長状態で収縮可能に取り付けられる。縦断弾性体59は、縦方向Yへ帯状に連続的に延びているが、断続的に延びていてもよい。また、縦断弾性体59は、股下域13を縦断するように横断縫合ライン52からさらに横断縫合ライン51まで連続的に延在していてもよい。また、本実施形態においては、縦断弾性体59の肌対向面側に後記の第2温感シート70が配置されているので、着用時に縦断弾性体59が収縮することで第2温感シート70が着用者の身体に確実に押し当てられ、より高い温感効果を得ることができる。
【0030】
図2及び3を参照すると、前身頃11の中間域11Cの内面には、前後身頃11,12の両側縁部が互いに接合される縦断縫着ライン35間(前身頃11の両側縁間)において横方向Xへ延びる第1温感シート(温感シート)40が配置されている。第1温感シート40は、横方向Xへ延びる上下端縁部41,42と、上下端縁部41,42間において縦方向Yへ延びる両側縁部43,44とからなる外周縁部を有する。第1温感シート40は、外周縁部においてのみ前ウエスト生地32に固定されている。具体的には、第1温感シート40は、両側縁部43,44が縦断縫着ライン35を介して前ウエスト生地32に接合されるとともに、上下端縁部41,42が横方向Xへ起伏しながら連続的に延びる接合(縫合)部45を介して前ウエスト生地32に接合されている。
【0031】
図2及び
図4を参照すると、後身頃12の中間域12Cの内面には、前後身頃11,12の両側縁部が互いに接合される縦断縫着ライン35間(前身頃12の両側縁間)において横方向Xへ延びる第2温感シート(温感シート)70が配置されている。第2温感シート70は、横方向Xへ延びる上下端縁部71,72と、上下端縁部71,72間において縦方向Yへ延びる両側縁部73,74とからなる外周縁部を有する。第2温感シート70は、外周縁部においてのみ後ウエスト生地33に固定されている。具体的には、第2温感シート70は、両側縁部73,74が縦断縫着ライン35を介して後ウエスト生地33に接合されるとともに、上下端縁部71,72が横方向Xへ起伏しながら連続的に延びる接合部75を介して後ウエスト生地33に接合されている。
【0032】
第1及び第2温感シート40,70は、編み組織によって縦方向Yと横方向Xとに伸縮可能な伸縮性生地(ツーウエイストレッチ生地)から形成されており、着用したときに着用者の身体を温めることのできる温感素材が使用される。繊維材料として使用される温感素材としては、例えば、粉末状のセラミックを練り込んだ遠赤外線放射効果を有する繊維、発熱紛体、例えば、熱、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等の被酸化性金属を練り込んだ発熱効果を有する繊維、ウール、ガラス繊維や木材パルプ繊維等の断熱効果や吸湿発熱効果を有する繊維のいずれかの繊維を用いることができる。発熱効果を生じる被酸性金属を錬り込んだ繊維を使用する場合には、発熱反応を促進するための酸素保持/供給剤として、活性炭、カーボンブラック、黒鉛、ゼオライト等をともに繊維に練り込むことが好ましい。
【0033】
本実施形態においては、第1及び第2温感シート40,70の温感素材として、20~40℃の低温でも遠赤外線を効率良く放射することのできるアルミナ系セラミックやジルコニウム系セラミック等からなる高純度の超微粒子セラミックを繊維1本ごとの内部に練り込んだ遠赤外線繊維を用いている。また、遠赤外線繊維とともに、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム等の複数の微量金属元素と活性炭等の有機植物炭化材とを組み合わせた複合構造材ともいえる蓄熱性繊維を併せて使用することが好ましい。
【0034】
第1及び第2温感シート40,70は、遠赤外線繊維が着用者の身体から放出された遠赤外線を吸収して身体へ輻射することで身体をより温めることができる遠赤外線保温機能を有することに加えて、蓄熱性繊維が身体から放出された遠赤外線を効率的に吸収して遠赤外線繊維に到達させることによって、より多くの遠赤外線が輻射することのできる蓄熱保温機能を備える。したがって、遠赤外線繊維のみを用いた従来の温感シートや断熱効果や吸湿発熱効果を生じる繊維のみを用いた従来の温感シートに比べて保温性に優れ、身体をより内部まで温めることができるといえる。また、多孔質の蓄熱性繊維を有することによって、消臭効果や除湿効果等の副次的効果も発生しうる。
【0035】
かかる保温作用を有する温感シートが生理用ショーツの内面全体に配置されていた場合や身生地自体に遠赤外線繊維が使用されていた場合には、温感シートの通気性が低く、かつ、広い範囲で身体が温められることで発汗作用が促されて、生理用ショーツの内部が蒸れてしまうおそれがある。また、特に、本実施形態に係る生理用ショーツ10において、ウエスト弾性域61の位置する上端域11A,12Aやレッグ弾性域62の位置する股下域13に温感シートを配置する場合には、内部の蒸れとともに弾性域61,62の伸縮作用によって肌にゴム痕が付き易くなって、肌がカブレたりして肌トラブルを生じるおそれがある。
【0036】
本実施形態においては、第1及び第2温感シート40,70は、それぞれ、前後身頃11,12において中間域11C,12Cに配置されている。第1及び第2温感シート40,70は、前後身頃11、12において中間域11C,12Cに配置されていればよく、例えば、ウエスト開口8側にも広く温感を付与するために、中間域11C,12Cに加えて上端域11A,12Aにも配置されていてもよい。本実施形態においては、第1及び第2温感シート40,70は、中間域11C,12Cにのみ配置されている。このように、第1及び第2温感シート40,70が中間域11C,12Cにのみ配置されていて上端域11A,12Aと下端域11B,12Bとに配置されていない場合には、生理用ショーツ10の内面全体が温められて内部の蒸れを生じたり、ウエスト弾性域61及びレッグ弾性域62においてゴム痕が付いたり、肌がかぶれるのを抑制することができる。
【0037】
図6を参照すると、生理用ショーツ10の着用状態において、第1温感シート40は、前身頃11において局所的に着用者の腹部の子宮と対向する位置に配置されており、着用者の子宮を遠赤外線効果によって温めて生理痛を緩和することができる。また、第2温感シート70は、後身頃12において局所的に着用者に背部の仙骨近傍と対向する位置に配置されており、着用者の仙骨近傍を遠赤外線効果によって温めて生理に伴う腰痛を緩和することができる。
【0038】
第1温感シート40が前身頃11の中間域11Cにのみ配置され、かつ、第2温感シート70が後身頃12の中間域12Cにのみ配置されていることによって、縦断縫着ライン35を介して身生地30とともに、第1温感シート40の両側縁部43,44と第2温感シート70の両側縁部73,74とが、少なくとも部分的に互いに重なるように接合されている。このように、第1温感シート40の両側縁部43,44と第2温感シート70の両側縁部73,74とが互いに連結されることによって、ウエスト周り方向へ延びる環状の温帯域が形成されるので、腹部又は背部のみを温める場合に比べて、着用者の子宮と仙骨近傍とを含めた腹部及び背部の一部を環状に温めて生理痛をより効果的に緩和することができる。
【0039】
ただし、第1及び第2温感シート40,70は、所要の生理痛緩和の効果を生じる限りにおいて、両方又は少なくとも一方が生理用ショーツ10の内面に配置されていればよく、例えば、第2温感シート70のみが後身頃12の内面に配置され、第1温感シート40が前身頃11の内面に配置されていなくてもよい。特に、女性は生理時に腹痛よりも腰痛に悩まされることが多いことから、前後身頃11,12の一方にのみ温感シート40,70を配置する場合には、後身頃12にのみ配置することが好ましい。
【0040】
既述のとおり、第1及び第2温感シート40,70は、外周縁部においてのみ身生地30に固定されており、外周縁部に囲まれた領域には、身生地30から離間してなる内部空間S1,S2が画成される。第1及び第2温感シート40,70と身生地30との間に内部空間S1,S2が形成される形成されることによって、遠赤外線効果によって温められた空気が内部空間S1,S2に滞留する。温度の高い空気が内部空間S1,S2に滞留して横方向Xに拡がることから、第1及び第2温感シート40,70の遠赤外線の輻射効果と相俟って、着用者の子宮及び仙骨近傍を広い範囲でかつより長時間、高い温度で温めてより効果的に生理痛を緩和することができる。
【0041】
図3を参照すると、第1温感シート40の上端縁40aは横方向Xへほぼ直線状へ延びているのに対し、下端縁40bは両側縁部43,44から横方向Xの中央部分48に向かって緩やかに股下域13側へ凸曲した形状を有している。それによって、第1温感シート40は、両側縁部43,44から中央部分48へ向かって次第に幅広となる形状を有する。したがって、第1温感シート40の中央部分48は、他の部分に比べて最も幅広の部分であって、中央部分48によって着用者の子宮の中心近傍を広い範囲で温めることができる。
【0042】
図4を参照すると、第2温感シート70の上端縁70aは、両側縁部73,74から横方向の中央部分78へ向かって緩やかにウエスト開口8側へ凸曲した形状を有していて、下端縁70bは、中央部分78へ向かって緩やかに股下域13側へ凸曲した形状を有している。第2温感シート70は、両側縁部73,74から中央部分78へ向かって次第に幅広となる形状を有する。したがって、第2温感シート70の中央部分78は、他の部分に比べて最も幅広の部分であって、中央部分78によって着用者の仙骨近傍を広い範囲で温めることができる。
【0043】
また、第2温感シート70の中央部分78の縦方向Yの寸法(縦断中心線Pに沿う寸法)L2は、第1温感シート40の中央部分48の縦方向Yの寸法(縦断中心線に沿う寸法)L1よりも大きくなっている。したがって、第2温感シート70の中央部分78は比較的に幅広であって、着用者の仙骨近傍を広い範囲で温めて生理時の腰痛を効果的に緩和することができる。
【0044】
図5を参照すると、第1温感シート40の上下端縁部41,42を身生地30に固定するための接合部45は、横方向Xへ連続的に延びる起伏形状を有する。接合部45が、かかる起伏形状を有することによって、接合部45の縫い目45aの間には非接合部分45bが位置する。縫い目45aと非接合部分45bとが横方向Xへ交互に位置することによって、隙間なく縫い目45aが配置される場合に比べて、接合部45近傍の領域の横方向Xへの伸縮性が完全に抑制されることはなく、また、上端縁部41の剛性が高くなって着用者に違和感を与えるおそれはない。なお、図示していないが、第1温感シート40の下端縁部42を固定するための接合部45及び第2温感シート70の上下端縁部71,72を固定するための接合部75も
図5に示した接合部45と同様の態様を有する。
【0045】
また、第1及び第2温感シート40,70の接合部45,75がかかる形状を有し、かつ、身生地30と第1及び第2温感シート40,70の伸縮度合いの相違とによって、非接合部分45bが弛緩した状態となり、上下端縁40a,40b,70a,70bには、非接合部分45bからなる横方向Xへ連続して配置された複数の凸曲部分を有する。このように、上下端縁40a,40b,70a,70bが複数の凸曲部分を有することによって、着用者の身体が触れたときでも肌に刺激を与えることがなく、また、伸長したときに肌に食い込むことがない。
【0046】
生理用ショーツを構成する部材には、特に明記されていない限りにおいて、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている公知の材料を制限なく用いることができる。また、本明細書において使用されている「第1」及び「第2」等の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いてある。
【符号の説明】
【0047】
5 ショーツ本体
8 ウエスト開口
9 レッグ開口
10 生理用ショーツ
11 前身頃
11A 上端域
11B 下端域
11C 中間域
12 後身頃
12A 上端域
12B 下端域
12C 中間域
13 股下域
30 身生地
40 第1温感シート(温感シート)
41 上端縁部
42 下端縁部
43 側縁部
44 側縁部
45 接合部
48 中央部分
70 第2温感シート(温感シート)
71 上端縁部
72 下端縁部
73 側縁部
74 側縁部
75 接合部
78 中央部分
S1 内部空間
S2 内部空間
X 横方向
Y 縦方向