(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】データ伝送方法及びデータ転送装置
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20230221BHJP
G06F 13/37 20060101ALI20230221BHJP
G06F 13/38 20060101ALI20230221BHJP
G06F 13/362 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H04L12/28 400
G06F13/37 Z
G06F13/38 350
G06F13/362 520Z
(21)【出願番号】P 2019106972
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-201096(JP,A)
【文献】特開2005-117134(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169756(WO,A1)
【文献】特開2017-108280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
G06F 13/37
G06F 13/38
G06F 13/362
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方がスタート信号出力用となり他方がデータ信号入力用となる第1ポート及び第2ポートを備えるマスターデバイスの前記第1ポートと前記第2ポートの間に、データ信号入出力用の第3ポート及び第4ポートを有するスレーブデバイスの前記第3ポートと前記第4ポートをN段(Nは2以上の正の整数)にわたってディジーチェーン接続し、1段目のスレーブデバイスの前記第3ポートを前記マスターデバイスの前記第1ポートに接続し、N段目のスレーブデバイスの前記第4ポートを前記マスターデバイスの前記第2ポートに接続し、
前記スレーブデバイスは、前記第3ポートが低インピーダンスで前記第4ポートが高インピーダンスのとき、前記第3ポートに入力するスタート信号が検出されるまでは前記第3ポートに入力するデータ信号を前記第4ポートにそのまま通過させ、前記第3ポートに入力するスタート信号が検出されると前記第3ポートと前記第4ポートの間を遮断し、且つ所望のデータ信号を生成して前記第4ポートから出力すると共に続けて新たなスタート信号を生成して前記第4ポートから出力し、
前記スレーブデバイスは、前記第3ポートが高インピーダンスで前記第4ポートが低インピーダンスのとき、前記第4ポートに入力するスタート信号が検出されるまでは前記第4ポートに入力するデータ信号を前記第3ポートにそのまま通過させ、前記第4ポートに入力するスタート信号が検出されると前記第3ポートと前記第4ポートの間を遮断し、且つ所望のデータ信号を生成して前記第3ポートから出力すると共に続けて新たなスタート信号を生成して前記第3ポートから出力する、
ことを特徴とするデータ転送方法。
【請求項2】
一方がスタート信号出力用となり他方がデータ信号入力用となる第1ポート及び第2ポートを備えるマスターデバイスと、データ信号入出力用の第3ポート及び第4ポートを有し、且つ前記マスターデバイスの前記第1ポートと前記第2ポートの間に前記第3ポートと前記第4ポートを介してディジーチェーン接続されたN個(Nは2以上の正の整数)のスレーブデバイスと、を備えたデータ転送装置であって、
前記スレーブデバイスは、
前記第3ポートが低インピーダンスで前記第4ポートが高インピーダンスのとき、前記第3ポートに入力するスタート信号が検出されるまでは前記第3ポートに入力するデータ信号を前記第4ポートにそのまま通過させ、前記第3ポートに入力するスタート信号が検出されると前記第3ポートと前記第4ポートの間を遮断し、且つ所望のデータ信号を生成して前記第4ポートから出力すると共に続けて新たなスタート信号を生成して前記第4ポートから出力し、
前記第3ポートが高インピーダンスで前記第4ポートが低インピーダンスのとき、前記第4ポートに入力するスタート信号が検出されるまでは前記第4ポートに入力するデータ信号を前記第3ポートにそのまま通過させ、前記第4ポートに入力するスタート信号が検出されると前記第3ポートと前記第4ポートの間を遮断し、且つ所望のデータ信号を生成して前記第3ポートから出力すると共に続けて新たなスタート信号を生成して前記第3ポートから出力する、
ことを特徴とするデータ転送装置。
【請求項3】
請求項2に記載のデータ転送装置において、前記スレーブデバイスは、
前記第3ポートのインピーダンスの高低を判定する第1インピーダンス判定回路と、
前記第4ポートのインピーダンスの高低を判定する第2インピーダンス判定回路と、
入力ポートと出力ポートを有し、前記入力ポートに前記スタート信号が入力するとそれを検出した後にデータ信号を生成して前記出力ポートから出力しその後に新たなスタート信号を生成して前記出力ポートから出力するデータ信号生成回路と、
前記第3ポートが低インピーダンスで前記第4ポートが高インピーダンスのとき、前記第3ポートを前記入力ポートに接続するとともに前記第4ポートを出力ポートに接続し、前記第3ポートが高インピーダンスで前記第4ポートが低インピーダンスのとき、前記第4ポートを前記入力ポートに接続するとともに前記第3ポートを出力ポートに接続し、前記第3ポートと前記第4ポートと共に高インピーダンスのとき前記第3ポート及び前記第4ポートの前記入力ポートと前記出力ポートへの接続を遮断する入出力替回路と、
前記第3ポートに接続され前記スタート信号のパルス幅より長い遅延時間が設定された第1遅延回路と、
前記第4ポートに接続され前記スタート信号のパルス幅より長い遅延時間が設定された第2遅延回路と、
前記第1遅延回路と前記第2遅延回路の間に接続され、電源投入後に前記第1及び第2インピーダンス判定回路がインピーダンスの判定動作をするときはOFFし、前記第1及び第2インピーダンス判定回路がインピーダンスの判定動作を完了するとONし、前記スタート信号を検出するとOFFする第7スイッチと、
を備えることを特徴とするデータ転送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジーチェーン接続されたN段(Nは2以上の正の整数)のスレーブデバイスで生成されたそれぞれのデータ信号を時系列的に順次マスターデバイスに取り込むデータ伝送方法及びデータ伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、マスターデバイスとスレーブデバイスは、SPI(Serial Peripheral Interface)やI2C等のインターフェースによって接続される。スレーブデバイスはマスターデバイスからのコマンドを受け取るためにチップセレクトポートやデバイスアドレスを有しており、マスターデバイスに対して複数個のスレーブデバイスを並列に接続することが可能になっている。これらのマスターデバイスと複数個のスレーブデバイスからなるデータ転送装置は特定のスレーブバイスを選択して直接制御することができるが、配線数が多くなる。
【0003】
一方、ディジーチェーンを利用したデータ伝送装置は、N個のスレーブデバイスをデイジーチェーン接続してマスターデバイスの入力側と出力側の間に接続することにより、配線数の削減と構成の簡素化が可能となっている。マスターデバイスからスタート信号が出力されると、1段目のスレーブデバイスが当該のスレーブデバイスに割り当てられた対象の温度等の物理量を計測したデータ信号を生成する。2段目のスレーブデバイスは、1段目のスレーブデバイスで生成されたデータ信号を入力してそのまま3段目のスレーブデバイスに送る。3段目のスレーブデバイスは2段目のスレーブデバイスから入力したデータ信号をそのまま4段目のスレーブデバイスに送る。それ以降のスレーブデバイスも同様に動作することで、1段目のスレーブデバイスで生成されたデータ信号が最終のN段目のスレーブデバイスからマスターデバイスへ出力される。
【0004】
1段目のスレーブデバイスがデータ信号の出力を完了すると、1段目のスレーブデバイスは2段目のスレーブデバイスを動作させるためのスタート信号を出力する。これにより、2段目のスレーブデバイスが温度等の物理量を計測したデータ信号を生成する。3段目のスレーブデバイスは、2段目のスレーブデバイスで生成されたデータ信号を入力してそのまま4段目のスレーブデバイスに通過させる。更に後段のスレーブデバイスも同様に動作することで、2段目のスレーブデバイスの出力信号が最終のN段目のスレーブデバイスからマスターデバイスへ出力される。
【0005】
以上のデータ信号の生成とスタート信号の生成の動作が各段のスレーブデバイスにおいて繰り返されることで、N個のスレーブデバイスで生成されたN個のデータ信号が時系列的に順次マスターデバイスへ出力される。ディジーチェーン装置については、例えば特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、ディジーチェーンを利用したデータ伝送装置では、1段目のスレーブデバイスから最終のN段目のスレーブデバイスにかけて順次データ信号を生成するため、スレーブデバイスが数百乃至数千段にも接続された場合には、マスターデバイスからスタート信号が出力してからスレーブデバイスがデータ信号を出力するまでの待ち時間が、後段のスレーブデバイスほど長くなってしまうという課題がある。
【0008】
本発明の目的は、スレーブデバイスが数百乃至数千段接続された場合でも、所望の段のスレーブデバイスで生成されたデータ信号の取り込みの待ち時間を少なくできるようにしたデータ伝送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、一方がスタート信号出力用となり他方がデータ信号入力用となる第1ポート及び第2ポートを備えるマスターデバイスの前記第1ポートと前記第2ポートの間に、データ信号入出力用の第3ポート及び第4ポートを有するスレーブデバイスの前記第3ポートと前記第4ポートをN段(Nは2以上の正の整数)にわたってディジーチェーン接続し、1段目のスレーブデバイスの前記第3ポートを前記マスターデバイスの前記第1ポートに接続し、N段目のスレーブデバイスの前記第4ポートを前記マスターデバイスの前記第2ポートに接続し、前記スレーブデバイスは、前記第3ポートが低インピーダンスで前記第4ポートが高インピーダンスのとき、前記第3ポートに入力するスタート信号が検出されるまでは前記第3ポートに入力するデータ信号を前記第4ポートにそのまま通過させ、前記第3ポートに入力するスタート信号が検出されると前記第3ポートと前記第4ポートの間を遮断し、且つ所望のデータ信号を生成して前記第4ポートから出力すると共に続けて新たなスタート信号を生成して前記第4ポートから出力し、前記スレーブデバイスは、前記第3ポートが高インピーダンスで前記第4ポートが低インピーダンスのとき、前記第4ポートに入力するスタート信号が検出されるまでは前記第4ポートに入力するデータ信号を前記第3ポートにそのまま通過させ、前記第4ポートに入力するスタート信号が検出されると前記第3ポートと前記第4ポートの間を遮断し、且つ所望のデータ信号を生成して前記第3ポートから出力すると共に続けて新たなスタート信号を生成して前記第3ポートから出力する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2にかかる発明は、一方がスタート信号出力用となり他方がデータ信号入力用となる第1ポート及び第2ポートを備えるマスターデバイスと、データ信号入出力用の第3ポート及び第4ポートを有し、且つ前記マスターデバイスの前記第1ポートと前記第2ポートの間に前記第3ポートと前記第4ポートを介してディジーチェーン接続されたN個(Nは2以上の正の整数)のスレーブデバイスと、を備えたデータ転送装置であって、前記スレーブデバイスは、前記第3ポートが低インピーダンスで前記第4ポートが高インピーダンスのとき、前記第3ポートに入力するスタート信号が検出されるまでは前記第3ポートに入力するデータ信号を前記第4ポートにそのまま通過させ、前記第3ポートに入力するスタート信号が検出されると前記第3ポートと前記第4ポートの間を遮断し、且つ所望のデータ信号を生成して前記第4ポートから出力すると共に続けて新たなスタート信号を生成して前記第4ポートから出力し、前記第3ポートが高インピーダンスで前記第4ポートが低インピーダンスのとき、前記第4ポートに入力するスタート信号が検出されるまでは前記第4ポートに入力するデータ信号を前記第3ポートにそのまま通過させ、前記第4ポートに入力するスタート信号が検出されると前記第3ポートと前記第4ポートの間を遮断し、且つ所望のデータ信号を生成して前記第3ポートから出力すると共に続けて新たなスタート信号を生成して前記第3ポートから出力する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載のデータ転送装置において、前記スレーブデバイスは、前記第3ポートのインピーダンスの高低を判定する第1インピーダンス判定回路と、前記第4ポートのインピーダンスの高低を判定する第2インピーダンス判定回路と、入力ポートと出力ポートを有し、前記入力ポートに前記スタート信号が入力するとそれを検出した後にデータ信号を生成して前記出力ポートから出力しその後に新たなスタート信号を生成して前記出力ポートから出力するデータ信号生成回路と、前記第3ポートが低インピーダンスで前記第4ポートが高インピーダンスのとき、前記第3ポートを前記入力ポートに接続するとともに前記第4ポートを出力ポートに接続し、前記第3ポートが高インピーダンスで前記第4ポートが低インピーダンスのとき、前記第4ポートを前記入力ポートに接続するとともに前記第3ポートを出力ポートに接続し、前記第3ポートと前記第4ポートと共に高インピーダンスのとき前記第3ポート及び前記第4ポートの前記入力ポートと前記出力ポートへの接続を遮断する入出力替回路と、前記第3ポートに接続され前記スタート信号のパルス幅より長い遅延時間が設定された第1遅延回路と、前記第4ポートに接続され前記スタート信号のパルス幅より長い遅延時間が設定された第2遅延回路と、前記第1遅延回路と前記第2遅延回路の間に接続され、電源投入後に前記第1及び第2インピーダンス判定回路がインピーダンスの判定動作をするときはOFFし、前記第1及び第2インピーダンス判定回路がインピーダンスの判定動作を完了するとONし、前記スタート信号を検出するとOFFする第7スイッチと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1段目のスレーブデバイスからN段目のスレーブデバイスにかけて順次データ信号を生成する正順モードと、N段目のスレーブデバイスから1段目のスレーブデバイスにかけて順次データ信号を生成する逆順モードの一方を、選択することができるので、スレーブデバイスが数百乃至数千段にわたって接続された場合でも、所望の段のスレーブデバイスで生成されたデータ信号の取り込みの待ち時間を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施例のデータ伝送装置の正順モードの信号の流れを示すブロック図である。
【
図2】
図1のデータ伝送装置の正順モードの動作波形図である。
【
図3】
図1のデータ伝送装置のスレーブデバイスの回路図である。
【
図4】
図1のデータ伝送装置のスレーブデバイスの動作のフローチャートである。
【
図5】
図3のスレーブデバイスの温度センサの温度計測回路の回路図である。
【
図7】
図3のスレーブデバイスの温度センサのスタート信号検出回路の回路図である。
【
図8】
図7のスタート信号検出回路の動作波形図である。
【
図9】本実施例のデータ伝送装置の逆順モードの信号の流れを示すブロック図である。
【
図10】
図9のデータ伝送装置の逆順モードの動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施例>
図1にディジーチェーンを利用したデータ伝送装置の接続構成を示す。10はマスターデバイスであり、一方がスタート信号STARTを出力し他方がデータ信号DATAの入力を行うポートP1,P2を備える。20-1、20-2、・・・、20-NはN段(Nは2以上の正の整数)に縦続接続されたスレーブデバイスであり、スタート信号STARTやデータ信号DATAの入出力を行う入出力ポートP3,P4を介して縦続接続されている。
【0015】
1段目のスレーブデバイス20-1は、ポートP3がマスターデバイス10のポートP1に接続され、ポートP4が2段目のスレーブデバイス20-2のポートP3に接続されている。スレーブデバイス20-2、20-3、・・・、20-N-1は、ポートP3が前段のスレーブデバイスのポートP4に接続され、ポートP4が後段のスレーブデバイスのポートP3に接続されている。N段目のスレーブデバイス20-Nは、ポートP4がマスターデバイス10のポートP2に接続されている。
【0016】
図3に、上記したスレーブデバイス20-1、20-2、・・・、20-Nとして共通使用されるスレーブデバイス20の内部構成を示す。21はデータ信号生成回路としての温度センサであり、入力ポートINにスタート信号STARTが入力したことを検出すると対象物の温度計測を開始し、その計測が完了すると生成したデータ信号DATAを出力ポートOUTから出力し、続けて次段のスレーブデバイスのためのスタート信号STARTを生成して出力ポートOUTから出力する。
【0017】
22は入出力切替回路であり、ポートP5が“H”になり、ポートP6が“L”になると、スイッチSW1,SW2の接点をa側に切り替えて、ポートP3から入力する信号を温度センサ21の入力ポートINに入力させ、温度センサ21の出力ポートOUTから出力する信号をポートP4に出力する。また、ポートP5が“L”になり、ポートP6が“H”になると、スイッチSW1,SW2の接点をb側に切り替えて、ポートP4から入力する信号を温度センサ21の入力ポートINに入力させ、温度センサ21の出力ポートOUTから出力する信号をポートP3に出力する。ポートP5,P6が共に“L”のときは、スイッチSW1,SW2の接点をcに接続して、ポートP3,P4と温度センサ21の入力ポートIN、出力ポートOUTの間を遮断する。23はポートP3のインピーダンスの高低を判定する第1インピーダンス判定回路、24はポートP4のインピーダンスの高低を判定する第2インピーダンス判定回路である。
【0018】
第1インピーダンス判定回路23は、電流源I1、スイッチSW3,SW4、閾値電圧Vth1が設定されたコンパレータCP1、反転バッファ回路B1、制御回路231を備える。そして、電源が投入されたとき、スイッチSW3をOFFし、スイッチSW4をONして、電流源I1の電流I1をスイッチSW4を経由してポートP3に流す。ポートP3のインピーダンスが低いときは、コンパレータCP1の電圧が閾値電圧Vth1よりも低くなり、その出力が“L”となり、反転バッファ回路B1で“H”となって、制御回路231からポートP5に“H”の信号が出力して、入出力切替回路22のスイッチSW1,SW2を接点aに切り替える。ポートP3のインピーダンスが高いときは、コンパレータCP1の電圧が閾値電圧Vth1よりも高くなり、その出力が“H”となり、反転バッファ回路B1で“L”となって、制御回路231からポートP5に“L”の信号が出力する。インピーダンス判定が完了すると、スイッチSW3はONし、スイッチSW4はOFFする。
【0019】
第2インピーダンス判定回路24は、電流源I2、スイッチSW5,SW6、閾値電圧Vth2が設定されたコンパレータCP2、反転バッファ回路B2、制御回路241を備える。そして、電源が投入されたとき、スイッチSW5をOFFし、スイッチSW6をONして、電流源I2の電流I2をスイッチSW6を経由してポートP4に流す。ポートP4のインピーダンスが低いときは、コンパレータCP2の電圧が閾値電圧Vth2よりも低くなり、その出力が“L”となり、反転バッファ回路B2で“H”となって、制御回路241からポートP6に“H”の信号が出力して、入出力切替回路22のスイッチSW1,SW2を接点bに切り替える。ポートP4のインピーダンスが高いときは、コンパレータCP2の電圧が閾値電圧Vth2よりも高くなり、その出力が“H”となり、反転バッファ回路B2で“L”となって、制御回路241からポートP6に“L”の信号が出力する。インピーダンス判定が完了すると、スイッチSW5はONし、スイッチSW6はOFFする。
【0020】
25はポートP3に接続された遅延回路、26はポートP4に接続された遅延回路であり、それら遅延回路25,26は双方向に同じ遅延時間が設定されている。そしてそれら遅延回路25,26の間にはスイッチSW7が接続されている。このスイッチSW7は電源投入時にはOFFに設定され、ポートP3,P4のインピーダンスの高低の判定が確定されるとONし、スタート信号STARTが検出されるとOFFする。
【0021】
図4に温度センサ21の動作のフローチャートを示す。温度センサ21は、入力ポートINに入力したスタート信号STARTが検出される(S1-Y)と温度計測を開始し(S2)、その温度計測が完了する(S3-Y)と出力ポートOUTから計測した値を示すデータ信号DATAを出力し(S4)、続けて次段のスレーブデバイスのためのスタート信号STARTをワンショットマルチ等により生成して、同じ出力ポートOUTから出力する(S5)。
【0022】
図5に温度センサ21の温度計測部211の構成を示す。2111は基準値生成回路であり、固定抵抗R1、キャパシタC1、リセットスイッチSW8、電流がI3の電流源I3、閾値電圧Vth3が設定されたコンパレータCP3、及び反転バッファ回路B3を備える。
【0023】
この基準値生成回路2111では、スタート信号STARTが検出されるとスイッチSW8がON→OFFに切り替わり、電流源I3の電流I3によってキャパシタC1の充電が開始し、その充電電圧Vrが時間経過とともに上昇する。そして、その充電電圧Vrが閾値電圧Vth3を超えると、コンパレータCP1の出力電圧が“H”→“L”に変化し、反転バッファ回路B3の出力電圧Vrrが“L”→“H”に変化する。スイッチSW8は出力電圧Vrrが“H”になった後にONしてキャパシタC1の電荷を放電する。
【0024】
2112は計測信号生成回路であり、温度が高くなるほど抵抗値が小さくなる温度抵抗R2、キャパシタC2(=C1)、リセットスイッチSW9、電流I4の電流源I4(=I3)、閾値電圧Vth4(=Vth3)が設定されたコンパレータCP4、反転バッファ回路B4を備える。
【0025】
この計測値生成回路2112では、スタート信号STARTが検出されるとスイッチSW9がON→OFFに切り替わり、電流源I4の電流I4によってキャパシタC2の充電が開始し、その充電電圧Vsが時間経過とともに上昇する。そして、その充電電圧Vsが閾値電圧Vth4を超えると、コンパレータCP2の出力電圧が“H”→“L”に変化し、反転バッファ回路B4の出力電圧Vssが“L”→“H”に変化する。スイッチSW9は出力電圧Vssが“H”になった後にONしてキャパシタC2の電荷を放電する。
【0026】
2113はTDC(Time to Digital Converter)回路であり、反転バッファ回路B3の出力電圧Vrrの立上りタイミングから反転バッファ回路B4の出力電圧Vssの立上りタイミングまでの時間を高分解能のデジタルシリアル信号に変換した温度計測結果のデータ信号DATAを作成する。
【0027】
図6に
図5で説明した温度センサ21の温度計測回路211の動作波形を示す。スタート信号STARTが時刻taにおいて検出されると、スイッチSW8,SW9は同時にON→OFFに切り替わり、同時に電流I3,I4によるキャパシタC1,C2への充電が開始される。
【0028】
固定抵抗R1の抵抗値は温度抵抗R2の抵抗値に比べて高い値に設定されている。このため、キャパシタC1への充電電流がキャパシタC2への充電電流よりも多くなって、電圧Vrは電圧Vsよりも立上り傾斜が大きくなり、時刻tbで電圧Vrが閾値電圧Vth3を超える。このため、電圧Vrrはその時刻tbで“L”→“H”に変化する。
【0029】
一方、電圧Vsは、温度が低いときは温度抵抗R2の抵抗値が大きくなるので、キャパシタC2への充電電流が多くなり、例えば時刻tcで閾値電圧Vth42を超えて電圧Vssが“L”→“H”に変化する。温度が高いときは温度抵抗R2の抵抗値が小さくなるので、キャパシタC2への充電電流が少なくなり、例えば時刻tdで閾値電圧Vth4を超えて電圧Vssが“L”→“H”に変化する。
【0030】
したがって、温度が低いときは時刻tb~tcまでの時間T1がTDC回路2113によってデータ信号DATAに変換され、温度が高いときは時刻tb~tdまでの時間T2がデータ信号DATAに変換されることになる。このようにして温度センサ21は計測したシリアルのデータ信号DATAを出力ポートOUTから出力する。
【0031】
図7にスタート信号検出回路212を示す。入力ポートINAは温度センサ21の入力ポートINに接続され、出力ポートTRGの信号は
図5で説明した温度計測回路211のスイッチSW8,SW9の制御用となる。B5~B12は反転バッファ回路、2121は抵抗R3とキャパシタC3で構成される積分回路、2122はDFF回路、2123はORゲートである。
【0032】
このスタート信号検出回路212は、入力ポートINAにスタート信号STARTが入力すると、積分回路2121で積分されたノードN1の電圧を反転した電圧が、反転インバータB12から出力する。
【0033】
このとき、スタート信号STARTが
図8(a)に示すように規定のパルス幅の場合は、ノードN1の電圧が反転バッファ回路B12の閾値VTh12に到達しないので、反転バッファ回路B12の出力電圧は“L”のままであり、スタート信号STARTが立ち下がるとき、反転バッファ回路B11の出力電圧でCK端子が“H”になっても、DFF回路2122のQ端子の電圧STOPは“L”のままとなる。ORゲート2123には、スタート信号STARTを反転バッファ回路B5~B10によりΔtだけ遅延した信号INBが“L”として入力するので、ORゲート2123の出力ポートTRGの信号が“L”になる。TRG=“L”は、スタート信号STARTを検出した信号であり、温度計測回路211のスイッチSW8,SW9をOFFさせる。
【0034】
一方、スタート信号STARTが
図8(b)に示すように規定のパルス幅よりも長い場合は、ノードN1の電圧が反転バッファ回路B12の閾値電圧Vth12よりも低下するので、反転バッファ回路B12の出力電圧は“H”になり、反転バッファ回路B11の出力電圧でCK端子が“H”になったとき、DFF回路2122のQ端子の電圧STOPは“H”になる。ORゲート2123には、スタート信号STARTを反転バッファ回路B5~B10によりΔtだけ遅延した信号INBが“L”として入力するが、ORゲート2123の出力ポートTRGの信号は“H”から変化しない。つまり、正規のスタート信号STARTは検出されない。
【0035】
以上説明したスレーブデバイス20-1、20-2、・・・、20-Nは、電源投入時にスイッチSW3,SW5,SW7がOFFとなり、スイッチSW4,SW6がONとなる。インピーダンス判定回路23がノードP3が低ンピーダンスであると判定し且つインピーダンス判定回路24がノードP4が高インピーダンスであると判定したときは、入出力切替回路22のスイッチSW1,SW2が接点aに切り替わるとともにスイッチSW7がONとなる。また、インピーダンス判定回路23がポートP3が高インピーダンスであると判定し且つインピーダンス判定回路24がポートP4が低インピーダンスであると判定したときは、入出力切替回路22のスイッチSW1,SW2が接点bに切り替わるとともにスイッチSW7がONとなる。さらに、インピーダンス判定回路23がポートP3、P4が共に高インピーダンスであるとして判定したときは、入出力切替回路22のスイッチSW1,SW2が接点cに切り替わるとともにスイッチSW7がONとなる。さらに、スイッチSW7は、温度センサ21内のスタート信号検出回路212によってスタート信号STARTが検出されたときはOFFになる。
【0036】
マスターデバイス10は、ポートP1を低インピーダンスに設定しポートP2を高インピーダンスに設定する正順モードと、ポートP1を高インピーダンスに設定しポートP2を低インピーダンスに設定する逆順モードの一方に設定される。正順モードのときは、ポートP1からスタート信号STARTを出力するとともにデータ信号DATAをポートP2から取り込む。また、逆順モードのときは、ポートP2からスタート信号STARTを出力するとともにデータ信号DATAをポートP1から取り込む。
【0037】
さて、本実施例のデータ転送装置に電源が投入された直後は、マスタ装置10のポートP1,P2が共に高インピーダンスである。また、各スレーブデバイス10-1、10-2、・・・、20-NのスイッチSW7がOFFである。よって、各スレーブデバイス10-1、10-2、・・・、20-NのポートP3,P4は共に高インピーダンスと判定される。この判定によってSW7がONとなる。
【0038】
次に、マスターデバイス10が正順モードに設定されたときは、ポートP1が低インピーダンスに設定されるので、1段目のスレーブデバイス20-1のポートP3は低インピーダンスの判定に変更される。ポートP4は高インピーダンスであるとの判定のままである。よって、入出力切替回路SW1,SW2は接点aに切り替わり、温度センサ21の入力ポートINがポートP3に、出力ポートOUTがポートP4に接続される。このときは、
図1のような信号の流れとなり、その動作波形は
図2に示すようになる。
【0039】
次に、マスターデバイス10のポートP1からスタート信号STARTが出力すると、1段目のスレーブデバイス20-1の温度センサ21内のスタート信号検出回路212によってそのスタート信号STARTが検出される。これにより、スイッチSW7がOFFするとともに、時刻t2(=ta)で温度計測が開始する。そして、時刻t3で温度計測が終了すると、測定したデータ信号DATA1が出力ポートOUTから入出力切替回路22のスイッチSW2の接点aを介してポートP4に出力する。このデータ信号DATA1は、スレーブデバイス20-2、・・・、20-NのONしているスイッチSW7を経由して、そのままマスターデバイス10のポートP2に取り込まれる。
【0040】
ポートP3に入力していたスタート信号STARTは遅延回路25にも入力するが、その遅延回路25の遅延時間を正規のスタート信号STARTのパルス幅の時間(t1~t2)よりも長く設定しておけば、スタート信号検出回路212でスタート信号STARTの検出が完了したタイミングではスイッチSW7がOFFしているので、ポートP3に入力したスタート信号STARTがポートP4にスルーすることはない。
【0041】
このとき、2段目のスレーブデバイス20-1では、1段目のスレーブデバイス20-1のポートP4がスイッチSW2が接点aに接続されていることによって低インピーダンスとなるので、その2段目のスレーブデバイス20-2のポートP3は低インピーダンスの判定に変更される。また、2段目のスレーブデバイス20-2のポートP4は高インピーダンスの判定のままとなっている。
【0042】
1段目のスレーブデバイス20-1において、温度センサ21からデータ信号DATA1の出力が完了すると、続けて新たなスタート信号STARTがその温度センサ21で生成されて出力して、スイッチSW2を経由してポートP4から、2段目のスレーブデバイス20-2のポートP3に入力する。この2段目のスレーブデバイス20-2も1段目のスレーブデバイス20-1と同様に動作して、温度センサ21で計測されたデータ信号DATA2がポートP4から出力し、スレーブデバイス20-3、・・・、20-NのONしているスイッチSW7を経由して、そのままマスターデバイス10のポートP2に取り込まれる。また、データ信号DATA2に続いて、新たなスタート信号START信号が生成されて、ポートP4から3段目のスレーブデバイス20-3に出力する。
【0043】
以下、3段目~N段目のスレーブデバイス20-3、・・・、20-Nにかけて同じ動作が繰り返されて、順次温度の計測結果を示すデータ信号DATA3、・・・、DATANが生成されて、マスターデバイス10のポートP2に入力することで、N段のスレーブデバイス20-1、20-2、・・・、20-Nで計測されたN個の温度計測データ信号DATA1、・・・、DATANが順次マスターデバイス10に取り込まれる。最終段のスレーブデバイス20-Nから出力してマスターデバイス10のポートP2に入力するスタート信号STARTは、マスターデバイス10で無視される。
【0044】
以上から、スレーブデバイス20-1、20-2、・・・、20-Nを伸ばして、例えば人体の所要の体内に挿入しておけば、当該所要の体内の温度分布を得ることができる。
【0045】
一方、電源投入の後にマスターデバイス10が逆順モードに設定されたときは、ポートP1が高インピーダンスに設定され、ポートP2が低インピーダンスに設定される。このときは、
図9のような信号の流れとなり、その動作波形図は
図10に示すようになる。このときは、N段目のスレーブデバイス20-Nは、そのポートP4が低インピーダンスの判定に変更される。ポートP3は高インピーダンスであるとの判定のままである。よって、入出力切替回路SW1,SW2は接点bに切り替わり、温度センサ21の入力ポートINがポートP4に、出力ポートOUTがポートP3に接続される。
【0046】
次に、時刻t21でマスターデバイス10のポートP2からスタート信号STARTが出力すると、N段目のスレーブデバイス20-Nの温度センサ21内のスタート信号検出回路212によってそのスタート信号STARTが検出される。これにより、スイッチSW7がOFFするとともに、時刻t22(=ta)で温度計測が開始する。そして、時刻t23で温度計測が終了すると、測定したデータ信号DATANが出力ポートOUTから入出力切替回路22のスイッチSW1の接点bを介してポートP3に出力する。このデータ信号DATANは、スレーブデバイス20-N-1、・・・、20-1のONしているスイッチSW7を経由して、そのままマスターデバイス10のポートP1に取り込まれる。
【0047】
ポートP4に入力していたスタート信号STARTは遅延回路26にも入力するが、その遅延回路26の遅延時間を正規のスタート信号STARTのパルス幅の時間(t21~t22)よりも長く設定しておけば、スタート信号検出回路212でスタート信号STARTの検出が完了したタイミングではスイッチSW7がOFFしているので、ポートP4に入力したスタート信号STARTがポートP3にスルーすることはない。
【0048】
このとき、N-1段目のスレーブデバイス20-N-1では、N段目のスレーブデバイス20-NのポートP3がスイッチSW1の接点bに接続されていることによって、そのN-1段目のスレーブデバイス20-N-1のポートP4は低インピーダンスの判定に変更される。また、N-1段目のスレーブデバイス20-N-1のポートP3は高インピーダンスの判定のままとなっている。
【0049】
N段目のスレーブデバイス20-Nにおいて、温度センサ21からデータ信号DATA1の出力が完了すると、続けて新たなスタート信号STARTがその温度センサ21から出力して、スイッチSW1を経由してポートP3から、N-1段目のスレーブデバイス20-N-1のポートP4に入力する。このN-1段目のスレーブデバイス20-N-1もN段目のスレーブデバイス20-Nと同様に動作して、温度センサ21で計測されたデータ信号DATAN-1がポートP3から出力し、スレーブデバイス20-N-2、・・・、20-1のONしているスイッチSW7を経由して、そのままマスターデバイス10のポートP1に取り込まれる。また、データ信号DATAN-1に続いて、新たなスタート信号STARTが生成されて、ポートP3からN-2段目のスレーブデバイス20-N-2に出力する。
【0050】
同様の動作が、N-2段目から1段目のスレーブデバイス20-N-2、・・・、20-1にかけて繰り返されて、順次温度の計測結果を示すデータ信号DATAN-2、・・・、DATA1が生成されて、マスターデバイス10のポートP1に入力することで、N段のスレーブデバイス20-N、20-N-1、・・・、20-1で計測されたN個の温度計測データ信号DATAN、・・・、DATA1が順次マスターデバイス10に取り込まれる。1段目のスレーブデバイス20-1から出力してマスターデバイス10のポートP1に入力するスタート信号STARTは、マスターデバイス10で無視される。
【0051】
以上から、スレーブデバイス20-1、20-2、・・・、20-Nを伸ばして、例えば人体の所要の体内に挿入しておけば、当該所要の体内の温度分布を得ることができる。
【0052】
以上のように、マスターデバイス10を正順モードに設定したときは、スレーブデバイス20-1、20-2、・・・、20-Nの正順で計測した温度のデータ信号DATA1、DATA2、・・・、DATANがマスターデバイス10のポートP2に順次取り込まれる。また、マスターデバイス10を逆順モードに設定すれば、スレーブデバイス20-N、20-N-1、・・・、20-1の逆順で計測した温度のデータ信号DATAN、DATAN-1、・・・、DATA1がマスターデバイス10のポートP1に順次取り込まれる。
【0053】
したがって、初段から中段にかけてのスレーブデバイスで計測したデータ信号を早期に取り込む必要があるときは、マスターデバイス10を正順モードに設定すればよく、終段から中段にかけてのスレーブデバイスで計測したデータ信号を早期に取り込む必要があるときは、マスターデバイス10を逆順モードに設定すればよい。以上から、スレーブデバイスが数百乃至数千段接続された場合でも、所望の段で計測されたデータ信号を取得するまでの待ち時間を少なくできる利点がある。
【符号の説明】
【0054】
10:マスターデバイス
20,20-1,・・・,20-N:スレーブデバイス
21:温度センサ、211:温度計測回路、2111:基準値生成回路、2112:計測値生成回路、2113:TDC回路、212:スタート信号検出回路
22:入出力切替回路、23,24:インピーダンス判定回路、25,26:遅延回路