(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】再生高吸水性ポリマーを製造する方法、再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造する方法、及び、再生高吸水性ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08J 11/06 20060101AFI20230221BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20230221BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20230221BHJP
A61F 13/53 20060101ALN20230221BHJP
【FI】
C08J11/06
B01J20/34 G ZAB
B01J20/26 D
A61F13/53 300
(21)【出願番号】P 2019163086
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
(72)【発明者】
【氏名】八巻 孝一
(72)【発明者】
【氏名】栗田 範朋
(72)【発明者】
【氏名】高原 豪久
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6771633(JP,B1)
【文献】国際公開第2018/119970(WO,A1)
【文献】特開2017-209675(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203922(WO,A1)
【文献】特表平06-502454(JP,A)
【文献】特表平06-510551(JP,A)
【文献】特開2018-089579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00
B01J 20/00
A61F 13/00
B09B 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み衛生用品より取り出された使用済み高吸水性ポリマーから高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーを製造する方法であって、
前記使用済み衛生用品から取り出された前記使用済み高吸水性ポリマーを酸性溶液で不活化する不活化工程と、
前記酸性溶液で不活化された前記使用済み高吸水性ポリマーを、酸性条件下、酸化剤で処理する酸化剤処理工程と、
前記酸化剤で処理された前記使用済み高吸水性ポリマーを乾燥して、前記再生高吸水性ポリマーを生成する乾燥工程と、
を備え、
前記使用済み衛生用品から取り出された前記使用済み高吸水性ポリマーは、前記使用済み衛生用品から取り出されるときに、不活化されている
、
方法。
【請求項2】
使用済み衛生用品より取り出された使用済み高吸水性ポリマーから高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーを製造する方法であって、
前記使用済み衛生用品から取り出された前記使用済み高吸水性ポリマーを酸性溶液で不活化する不活化工程と、
前記酸性溶液で不活化された前記使用済み高吸水性ポリマーを、酸性条件下、酸化剤で処理する酸化剤処理工程と、
前記酸化剤で処理された前記使用済み高吸水性ポリマーを乾燥して、前記再生高吸水性ポリマーを生成する乾燥工程と、
を備え、
前記乾燥工程後に、前記再生高吸水性ポリマーから、異物を分離する異物分離工程を更に備える
、
方法。
【請求項3】
使用済み衛生用品より取り出された使用済み高吸水性ポリマーから高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーを製造する方法であって、
前記使用済み衛生用品から取り出された前記使用済み高吸水性ポリマーを酸性溶液で不活化する不活化工程と、
前記酸性溶液で不活化された前記使用済み高吸水性ポリマーを、酸性条件下、酸化剤で処理する酸化剤処理工程と、
前記酸化剤で処理された前記使用済み高吸水性ポリマーを乾燥して、前記再生高吸水性ポリマーを生成する乾燥工程と、
を備え、
前記酸性溶液は、クエン酸を含む溶液であり、
前記不活化工程の後、前記乾燥工程の前に、前記使用済み高吸水性ポリマーの前記クエン酸を除去するクエン酸除去工程を更に備える
、
方法。
【請求項4】
前記クエン酸除去工程は、前記使用済み高吸水性ポリマーを、金属イオンとキレート構造を作らない酸である除去用の酸、水と混和性を有する有機溶剤、又はそれらの水溶液で処理する除去処理工程を含む、
請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記除去処理工程は、前記酸化剤処理工程中又は後に、前記使用済み高吸水性ポリマーを、前記除去用の酸又はその水溶液で処理する酸工程を含む、
請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記除去用の酸は、カルボキシル基を有さない酸又はカルボキシル基を1分子中に1個有する酸である、
請求項
4又は
5に記載の方法。
【請求項7】
前記除去処理工程は、前記酸化剤処理工程の後、前記乾燥工程の前に、前記使用済み高吸水性ポリマーを、前記有機溶剤の水溶液で処理する有機溶剤工程を含む、
請求項
4乃至
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機溶剤工程は、前記使用済み高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源を含む前記有機溶媒の水溶液で処理する工程を含む、
請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ金属イオン供給源は、アルカリ金属の水酸化物、又はアルカリ金属の水酸化物と、前記高吸水性ポリマーの酸基よりも酸解離定数の大きな酸との塩である、
請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化剤処理工程において、前記酸化剤は、オゾンを含む水又は過酸化水素水を有する、
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから再生された、高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーを用いて、高吸水性ポリマーを製造する方法であって、
請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の方法で、前記再生高吸水性ポリマーを製造する工程と、
前記高吸水性ポリマーの製造のための水溶液重合又は架橋において、前記製造用の原料及び半製品の少なくとも一方に前記再生高吸水性ポリマーを混入させて、前記水溶液重合又は前記架橋を実行する工程と、
を備える、方法。
【請求項12】
使用済み衛生用品より取り出された使用済み高吸水性ポリマーから再生された、高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーであって、
灰分の含有量が35質量%以下、混釈培養法により検出される一般生菌数が検出限界以下である、
再生高吸水性ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから再生高吸水性ポリマーを製造する方法、再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造する方法、及び、再生高吸水性ポリマー、に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み衛生用品(例示:吸収性物品)由来の使用済み高吸水性ポリマーを再生する技術が知られている。例えば、特許文献1に、使用済み高吸水性ポリマーの再生方法が開示されている。その再生方法は、使用済みの高吸水性ポリマーを多価金属塩水溶液で処理する工程および多価金属塩水溶液で処理した高吸水性ポリマーをアルカリ金属塩水溶液で処理する工程を含んでいる。
【0003】
一方、未使用の高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマーの原料の一部として再利用する技術が知られている。例えば、特許文献2には、樹脂粒子の製造方法が開示されている。その製造方法では、懸濁重合において、樹脂aからなる樹脂粒子Aの水性分散液中に、樹脂bを含む油性液を分散させ、水性分散液中に樹脂bからなる樹脂粒子Bを形成させて、樹脂粒子Bの表面に樹脂粒子Aが付着した樹脂粒子Cの水性分散体X1を得る。このとき、別ロットの樹脂粒子Cを製造した際に分級工程で取り除かれた微粉を水性分散液中に分散させる。特許文献3には、吸水剤の製造方法が開示されている。その製造方法では、吸水性樹脂の微粒子を含む粉体を、水の存在下で加圧成形し、乾燥、粉砕して平均粒径200~1000μmの吸水剤を製造する。特許文献4には、耐塩性吸水性樹脂の製造方法が開示されている。その製造方法では、不飽和カルボン酸およびその塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分の水溶液を、該単量体成分100重量部当たり吸水性樹脂1~30重量部の割合で吸水性樹脂を存在させた状態で、水溶液重合することにより耐塩性吸水性樹脂を形成する。また、非特許文献1には、ポリアクリル酸塩系の高吸水性ポリマーの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-198862号公報
【文献】特開2007-246676号公報
【文献】特開平10-204184号公報
【文献】特開平4-227705号公報
【文献】特許第5996226号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】下村忠生、“高吸水性ポリマー”、表面(1991)495-506
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
使用済み衛生用品(例示:吸収性物品)のリサイクルでは多数の使用済み衛生用品が回収されるが、回収された多数の使用済み衛生用品の種類や製造会社は多種多様である。そのため、特許文献1の方法で多数の使用済み衛生用品由来の高吸水性ポリマーをまとめて再生すると、再生された高吸水性ポリマーは多種多様な高吸水性ポリマーの混合物になる。すなわち、再生された高吸水性ポリマーの性能は均質になり難い。それゆえ、吸収性の材料として高吸水性ポリマーを用いる衛生用品に、再生された高吸水性ポリマーをそのまま利用すると、衛生用品の吸収性能を均質にすることが難くなるおそれがある。
【0007】
そこで、発明者は、今回初めて、例えば、特許文献2~4や非特許文献1における高吸水性ポリマーの製造方法において、特許文献2~4の原料(微粉、微粒子又は吸水性樹脂)や非特許文献1の原料又は半製品として、再生された高吸水性ポリマーを用いることを検討した。特許文献2~4や非特許文献1の製造方法では、不純物の非常に少ない未使用の原料等(例示:高吸水性ポリマー)を用いていると考えられる。一方、使用済み衛生用品由来の再生された高吸水性ポリマーには特有の不純物(例示:臭気物質、有色物質、雑菌)が存在する場合がある。そのため、不純物の非常に少ない未使用の高吸水性ポリマーを用いる特許文献2~4や非特許文献1の製造方法に、再生された高吸水性ポリマーを用いると、純度の高い良質な高吸水性ポリマーを形成できないおそれがある。そうなると、高吸水性ポリマーを用いる衛生用品に、再生された高吸水性ポリマーを用いて特許文献2~4や非特許文献1の製造方法で製造された高吸水性ポリマーを利用できないおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマーを原料として用いる製品に、有効に利用することを可能とする、再生高吸水性ポリマーを製造する方法、再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造する方法、及び、再生高吸水性ポリマー、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーを製造する方法であって、前記使用済み高吸水性ポリマーを酸性溶液で不活化する不活化工程と、前記酸性溶液で不活化された前記使用済み高吸水性ポリマーを、酸性条件下、酸化剤で処理する酸化剤処理工程と、前記酸化剤で処理された前記使用済み高吸水性ポリマーを乾燥して、前記再生高吸水性ポリマーを生成する乾燥工程と、を備える、方法、である。
【0010】
本発明は、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから再生された、高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーを用いて、高吸水性ポリマーを製造する方法であって、上記の記載の方法で、前記再生高吸水性ポリマーを製造する工程と、前記高吸水性ポリマーの製造のための水溶液重合又は架橋において、前記製造用の原料及び半製品の少なくとも一方に前記再生高吸水性ポリマーを混入させて、前記水溶液重合又は前記架橋を実行する工程と、を備える、方法、である。
【0011】
本発明に使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから再生された、高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーであって、灰分の含有量が35質量%以下、混釈培養法により検出される一般生菌数が検出限界以下である、再生高吸水性ポリマー、である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマーを原料として用いる製品に、有効に利用することを可能とする、再生高吸水性ポリマーを製造する方法、再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造する方法、及び、再生高吸水性ポリマー、を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る再生高吸水性ポリマーを製造する方法に用いられるシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る再生高吸水性ポリマーを製造する方法の一例を示すフロー図である。
【
図3】実施形態に係る使用済み高吸水性ポリマーを取り出すための装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る使用済み高吸水性ポリマーを取り出す方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーを製造する方法であって、前記使用済み高吸水性ポリマーを酸性溶液で不活化する不活化工程と、前記酸性溶液で不活化された前記使用済み高吸水性ポリマーを、酸性条件下、酸化剤で処理する酸化剤処理工程と、前記酸化剤で処理された前記使用済み高吸水性ポリマーを乾燥して、前記再生高吸水性ポリマーを生成する乾燥工程と、を備える、方法。
本方法は、使用済み衛生用品(例示:吸収性物品)由来の使用済み高吸水性ポリマーを、酸性溶液で不活化し(不活化工程)、その後、酸性条件下で、酸化剤で処理している(酸化剤処理工程)。すなわち、本方法は、酸性溶液で、使用済み高吸水性ポリマーを脱水させ、その体積を大幅に減少させて、その後、酸性条件下で、その脱水状態、すなわち体積を減少させた状態を維持させつつ、酸化剤で、使用済み高吸水性ポリマーを脱臭、脱色、除菌している。このように、使用済み高吸水性ポリマーの体積を小さくすることで、使用済み衛生用品由来の再生高吸水性ポリマーが有する不純物(例示:臭気物質、有色物質、雑菌)を酸化剤で容易に除去することができ、純度の高い再生高吸水性ポリマーを得ることができる。このような純度の高い再生高吸水性ポリマーを、所定の高吸水性ポリマーを形成する方法における原料の一部として用いて、純度の高い良質な高吸水性ポリマーを形成できる。所定の高吸水性ポリマーを形成する方法としては、例えば特許文献2~4のような方法や、後述の再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造する方法、すなわち、未使用の高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマーの原料又は半製品の一部として再利用する方法が挙げられる。よって、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマーを用いる製品に有効に利用することが可能となる。
【0015】
[態様2]
前記乾燥工程後に、前記再生高吸水性ポリマーから、異物を分離する異物分離工程を更に備える、態様1に記載の方法。
本方法では、乾燥された再生高吸水性ポリマーから異物(例示:パルプ繊維)を分離している。そのため、溶液中での分離のような非乾燥状態での分離と比較して、比較的容易に再生高吸水性ポリマーから異物を分離でき、それゆえ、より純度の高い再生高吸水性ポリマーを得ることができる。
【0016】
[態様3]
前記酸性溶液は、クエン酸を含む溶液であり、前記不活化工程の後、前記乾燥工程の前に、前記使用済み高吸水性ポリマーの前記クエン酸を除去するクエン酸除去工程を更に備える、態様1又は2に記載の方法。
本方法では、クエン酸を含む溶液で、使用済み高吸水性ポリマーの不活化を行っている(不活化工程)。そのため、単に、使用済み高吸水性ポリマーを脱水させ、その体積を大幅に減少させるだけでなく、クエン酸のキレート効果により金属(例示:排泄物に含まれている人体由来のもの)をも容易に除去できる。更に、本方法では、不活化工程の後に使用済み高吸水性ポリマーのクエン酸を除去している(クエン酸除去工程)。そのため、再生高吸水性ポリマー中にクエン酸のようなキレート剤が残存することを大幅に抑制できる。それらにより、より純度の高い再生高吸水性ポリマーを得ることができる。特に、再生高吸水性ポリマー中にキレート剤がほとんど残存しないため、未使用の高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマーの原料の一部として再利用する方法において、水溶液重合や架橋などを行う場合(例示:特許文献2、4)には、キレート剤が架橋反応を阻害することを大幅に抑制できる。
【0017】
[態様4]
前記クエン酸除去工程は、前記使用済み高吸水性ポリマーを、金属イオンとキレート構造を作らない酸である除去用の酸、水と混和性を有する有機溶剤、又はそれらの水溶液で処理する除去処理工程を含む、態様3に記載の方法。
本方法では、クエン酸の除去として、使用済み高吸水性ポリマーを、金属イオンとキレート構造を作らない除去用の酸、水と混和性を有する有機溶剤、又はそれらの水溶液で処理している。それにより、使用済み高吸水性ポリマーを酸又は有機溶剤により脱水しつつ、使用済み高吸水性ポリマーの表面のクエン酸を洗い流すことができる。したがって、再生高吸水性ポリマー中にクエン酸のようなキレート剤が残存することをより大幅に抑制できる。
【0018】
[態様5]
前記除去処理工程は、前記酸化剤処理工程中又は後に、前記使用済み高吸水性ポリマーを、前記除去用の酸又はその水溶液で処理する酸工程を含む、態様4に記載の方法。
本方法では、酸化剤処理工程中又は後において、使用済み高吸水性ポリマーを除去用の酸又はその水溶液で処理している。それにより、使用済み高吸水性ポリマーからクエン酸を除去しつつ、使用済み高吸水性ポリマーをより脱水させることができる。したがって、その後の乾燥工程をより容易に実行することができ、よって純度の高い再生高吸水性ポリマーを効率的に得ることができる。
【0019】
[態様6]
前記除去用の酸は、カルボキシル基を有さない酸又はカルボキシル基を1分子中に1個有する酸である、態様4又は5に記載の方法。
本方法では、除去用の酸は、カルボキシル基を有さない酸又はカルボキシル基を1分子中に1個有する酸である。そのため、除去処理工程において、より確実に、使用済み高吸水性ポリマーからクエン酸を除去しつつ、使用済み高吸水性ポリマーをより脱水させることができる。
【0020】
[態様7]
前記除去処理工程は、前記酸化剤処理工程の後、前記乾燥工程の前に、前記使用済み高吸水性ポリマーを、前記有機溶剤の水溶液で処理する有機溶剤工程を含む、態様4乃至6のいずれか一項に記載の方法。
本方法では、酸化剤処理工程の後、乾燥工程の前に、使用済み高吸水性ポリマーを有機溶剤の水溶液で処理している。それにより、使用済み高吸水性ポリマーからクエン酸を除去しつつ、使用済み高吸水性ポリマーをより脱水させることができる。したがって、その後の乾燥工程をより容易に実行することができ、よって、純度の高い再生高吸水性ポリマーを効率的に得ることができる。
【0021】
[態様8]
前記有機溶剤工程は、前記使用済み高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源を含む前記有機溶媒の水溶液で処理する工程を含む、態様7に記載の方法。
本方法では、使用済み高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオン供給源を含む有機溶剤の水溶液で処理している。それにより、使用済み高吸水性ポリマーからクエン酸を除去し、脱水しつつ、使用済み高吸水性ポリマーをアルカリ金属イオンにより中和することができる。したがって、例えば、高吸水性ポリマーを製造するとき、中和済みの純度の高い原料として再生高吸水性ポリマーを用いることができる。
【0022】
[態様9]
前記アルカリ金属イオン供給源は、アルカリ金属の水酸化物、又はアルカリ金属の水酸化物と、前記高吸水性ポリマーの酸基よりも酸解離定数の大きな酸との塩である、態様8に記載の方法。
本方法では、アルカリ金属イオン供給源は、アルカリ金属の水酸化物、又はアルカリ金属の水酸化物と高吸水性ポリマーの酸基よりも酸解離定数の大きな酸との塩である。そのため、より確実に、使用済み高吸水性ポリマーをアルカリ金属イオンにより中和することができる。
【0023】
[態様10]
前記酸化剤処理工程において、前記酸化剤は、オゾンを含む水又は過酸化水素水を有する、態様1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
本方法では、オゾンを含む水又は過酸化水素水により使用済み高吸水性ポリマーを処理している。それにより、使用済み衛生用品由来の再生高吸水性ポリマーが有する不純物(例示:臭気物質、有色物質、雑菌)をより容易に除去することができ、すなわち、脱臭、脱色、除菌をより容易に行うことができる。それにより、より純度の高い再生高吸水性ポリマーを得ることができる。
【0024】
[態様11]
使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから再生された、高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーを用いて、高吸水性ポリマーを製造する方法であって、態様1乃至10のいずれか一項に記載の方法で、前記再生高吸水性ポリマーを製造する工程と、前記高吸水性ポリマーの製造のための水溶液重合又は架橋において、前記製造用の原料及び半製品の少なくとも一方に前記再生高吸水性ポリマーを混入させて、前記水溶液重合又は前記架橋を実行する工程と、を備える、方法。
本方法では、使用済み衛生用品(例示:吸収性物品)由来の再生高吸水性ポリマーを、原料及び半製品の少なくとも一方に混入させて、水溶液重合又は架橋により、高吸水性ポリマーを製造している。このとき、再生高吸水性ポリマーは、上記態様1~10の方法で製造されているので、その純度は高くなっている。それゆえ、本方法では、再生高吸水性ポリマーを用いても、純度の高い良質な高吸水性ポリマーを形成できる。
【0025】
[態様12]
使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから再生された、高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーであって、灰分の含有量が35質量%以下、混釈培養法により検出される一般生菌数が検出限界以下である、再生高吸水性ポリマー。
本使用済み衛生用品(例示:吸収性物品)由来の再生高吸水性ポリマーでは、灰分の含有量が35質量%以下、混釈培養法により検出される一般生菌数が検出限界以下である。ここで、製造後未使用の一般的な高吸水性ポリマーにおける内部に含まれる灰分の量は約30質量%であり、再生高吸水性ポリマーにおける内部に含まれる灰分の量も約30質量%であると考えられる。したがって、再生高吸水性ポリマーの表面には不必要な灰分が少なく(5質量%以下)であり、かつ、再生高吸水性ポリマーには一般生菌数が極めて少ない(検出限界以下)。よって、再生高吸水性ポリマーの純度は非常に高くなっている。そのため、そのような再生高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマー製造のための懸濁重合、水溶液重合又は架橋において、原料及び半製品の少なくとも一方に混入させることで、純度の高い良質な高吸水性ポリマーを形成できる。
【0026】
以下、実施形態に係る、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーを製造する方法、再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造する方法、及び再生高吸水性ポリマーについて説明する。ただし、本明細書では、衛生用品とは、衛生に資する物品であって、高吸水性ポリマーを含む物品をいう。使用済み衛生用品(例示:吸収性物品)とは、使用者により使用された衛生用品であって、主に使用者から放出された液状物(例示:排泄物)を吸収・保持した衛生用品をいい、使用されたが液状物を吸収・保持しないものや未使用だが廃棄されたものを含む。使用済み高吸水性ポリマーとは、使用済み衛生用品に含まれていた高吸水性ポリマーをいう。再生高吸水性ポリマーとは、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから再生された高吸水性ポリマーをいう。本実施形態では、衛生用品の例として吸収性物品について説明する。吸収性物品としては、例えば、紙おむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ベッドシート、ペットシートが挙げられ、高吸水性ポリマーを含んでおり、パルプ繊維を更に含んでもよい。
【0027】
まず、吸収性物品の構成例について説明する。吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備える。吸収性物品の大きさの一例としては長さ約15~100cm、幅5~100cmが挙げられる。なお、吸収性物品は、一般的な吸収性物品が備える他の部材、例えば拡散シートや防漏壁やサイドシートなどを更に含んでもよい。
【0028】
表面シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等が挙げられる。裏面シートの構成部材としては、例えば液不透過性の不織布、液不透過性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。拡散シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布が挙げられる。防漏壁やサイドシートの構成部材としては、例えば液不透過性の不織布が挙げられ、防漏壁はゴムのような弾性部材を含んでもよい。不織布や合成樹脂フィルムの材料としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。不織布の材料として、コットンやレーヨンなどの天然繊維を用いてもよい。本実施形態では、裏面シートの構成部材をフィルムとし、表面シートの構成部材を不織布とする吸収性物品を例にして説明する。
【0029】
吸収体の構成部材としては吸収体材料、すなわちパルプ繊維及び高吸水性ポリマーが挙げられる。パルプ繊維としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、セルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば木材パルプ、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース等が挙げられる。パルプ繊維の大きさとしては、繊維の長径の平均値が例えば数十μmが挙げられ、20~40μmが好ましく、繊維長の平均値が例えば数mmが挙げられ、2~5mmが好ましい。高吸水性ポリマー(SuperAbsorbent Polymer:SAP)としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えばポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系の吸水性ポリマーが挙げられる。高吸水性ポリマーの大きさ(乾燥時)としては、粒径の平均値が例えば数百μmが挙げられ、200~500μmが好ましい。吸収体は液透過性シートで形成されたコアラップを含んでもよい。
【0030】
吸収体の一方の面及び他方の面は、それぞれ表面シート及び裏面シートに接着剤を介して接合されている。平面視で、表面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)は、裏面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)と接着剤を介して接合されている。したがって、吸収体は表面シートと裏面シートとの接合体の内部に包み込まれている。接着剤としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えばホットメルト型接着剤が挙げられる。ホットメルト型接着剤としては、例えばスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン等のゴム系主体、又はポリエチレン等のオレフィン系主体の感圧型接着剤又は感熱型接着剤が挙げられる。
【0031】
次に、実施形態に係る、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーを製造する方法について説明する。
【0032】
図1は、実施形態に係る再生高吸水性ポリマーを製造する方法に使用されるシステム1の構成例を示すブロック図である。
図2は、実施形態に係る再生高吸水性ポリマーを製造する方法の一例を示すフロー図である。
【0033】
再生高吸水性ポリマーを製造する方法は、不活化工程S30と酸化剤処理工程S31と乾燥工程S33とを備えているが、異物分離工程S34を更に備えてもよい。不活化工程S30等でクエン酸を用いる場合には、クエン酸除去工程S32を更に備えてもよい。その製造する方法では、クエン酸除去工程S32が除去処理工程S40を含んでもよい。一方、再生高吸水性ポリマーを製造する方法に使用されるシステム1は、不活化装置30と酸化剤処理装置31と乾燥装置33とを備えているが、異物分離装置34を更に備えてもよい。不活化装置30等でクエン酸を用いる場合には、クエン酸除去装置32を更に備えてもよい。そのシステム1では、好ましくは、クエン酸除去装置32が除去処理装置40を含んでもよい。以下、各工程について具体的に説明する。
【0034】
不活化工程S30は、不活化装置30により実行される。不活化工程S30は、使用済み高吸水性ポリマーを酸性溶液で不活化する。本実施形態では、使用済みの吸収性物品から取り出された使用済みの高吸水性ポリマーを、不活化剤である酸性水溶液に浸漬し、不活化された高吸水性ポリマー300を形成する。
【0035】
酸性水溶液における酸としては、特に限定されず、例えば、無機酸及び有機酸が挙げられる。酸を用いて高吸水性ポリマーを不活化すると、石灰、塩化カルシウム等を用いて高吸水性ポリマーを不活化する場合と比較して、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維に灰分を残留させ難い。無機酸としては、例えば硫酸、塩酸及び硝酸が挙げられるが、塩素を含まない観点や、コスト等の観点から硫酸が好ましい。有機酸としては、例えば、1分子中に複数個のカルボキシル基を有するカルボン酸(例示:クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸)、1分子中に1個のカルボキシル基を有するカルボン酸(例示:グルコン酸、ペンタン酸、ブタン酸、プロピオン酸、グリコール酸、酢酸、蟻酸)、スルホン酸(例示:メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸)等が挙げられる。有機酸としては、排泄物等に含まれる2価以上の金属(例示:カルシウム)とキレート錯体を形成し易く、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維に灰分を残留させ難い観点から、複数個のカルボキシル基を有することが好ましく、クエン酸がより好ましい。酸性水溶液のクエン酸濃度は、特に限定されず、例えば0.5~4質量%が挙げられる。本実施形態では酸性水溶液における酸としてクエン酸を用いる。
【0036】
酸性水溶液は、酸性であればよいが、所定のpHを有することが好ましい。所定のpHの上限としては、好ましくは4.0、より好ましくは3.5、さらに好ましくは3.0である。所定のpHが高過ぎると、高吸水性ポリマーの不活化が十分に行われず、高吸水性ポリマーが保持する排泄物の排出が不十分になる傾向があり、そしてパルプ繊維等との分離がし難くなる傾向がある。一方、所定のpHの下限としては、好ましくは0.5、より好ましくは1.0である。所定のpHが低過ぎると、高吸水性ポリマーがより不活化され、除去処理工程S40(後述)において、不活化された高吸水性ポリマーと、アルカリ金属イオン供給源を含む水溶液との反応に時間がかかる傾向がある。また、所定のpHが低過ぎると、使用済の吸収性物品由来の高吸水性ポリマーの再生の他にリサイクルパルプ繊維を再生する場合には、リサイクルパルプ繊維が損傷するおそれがある。なお、本明細書において、pHは、25℃における値を意味する。また、pHは、例えば、株式会社堀場製作所製のtwin pHメーター AS-711を用いて測定することができる。再生高吸水性ポリマーを製造する方法では、上記の所定のpHを、不活化工程S30の終了時点で満たすことが好ましい。高吸水性ポリマーを不活化させ続ける観点からである。
【0037】
不活化工程S30を実行する不活化装置30としては、高吸水性ポリマーを、酸性水溶液に浸漬させることができれば、具体的な構成は特に限定されない。不活化装置30は、例えば、高吸水性ポリマーを含む資材を配置可能、かつ、酸性水溶液を貯留可能な槽を有する。不活化工程S30では、その槽に酸性水溶液が貯留された後に、高吸水性ポリマーを含む資材が投入されてもよいし、その槽に高吸水性ポリマーを含む資材が配置された後に、酸性水溶液が投入されてもよい。高吸水性ポリマーを含む資材が酸性水溶液に浸漬されて不活化反応が生じる。
【0038】
不活化工程S30では、温度にもよるが、ムラなく反応を進行させるために、酸性水溶液を含む槽中で、高吸水性ポリマーを含む資材(例示:使用済み吸収性物品)を、例えば、約5~60分攪拌することにより、高吸水性ポリマーを不活化できる。不活化工程S30では、酸性水溶液の温度は、特に制限がなく、例えば、室温(25℃)が挙げられ、好ましくは室温よりも高温、より好ましくは60~95℃、さらに好ましくは70~90℃である。それにより、酸性水溶液中の酸により、酸性水溶液に含まれる、排泄物等に由来する菌を除菌し易くなる。
【0039】
不活化工程S30の処理の終了段階で、高吸水性ポリマー300は、完全に脱水されておらず、多くはないが水分を吸収した状態(例示:吸水前の高吸水性ポリマーの体積の約10倍程度の水を吸収した状態)であり、ゲルの状態である。
【0040】
なお、酸性水溶液に浸漬すべき資材が、高吸水性ポリマーに加え、他の部材、例えば、パルプ繊維、液透過性シート、液不透過性シート等を含む場合、不活化工程S30の前又は後に、高吸水性ポリマー以外の部材を分離して除去する分離工程が実行され得る。分離工程は、不活化工程S30と同時並行に実行されてもよい。酸性水溶液に浸漬すべき資材が、高吸水性ポリマーに加え、他の部材を含む場合としては、例えば、その資材が高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品である場合が挙げられる。分離工程は後述される。
【0041】
その後、不活化された高吸水性ポリマーは、不活化装置30に設けられたふるい(又はメッシュ)により酸性水溶液から分離され(固液分離)、その後に高吸水性ポリマー300として、酸化剤処理工程S31(酸化剤処理装置31)へ供給される。
【0042】
酸化剤処理工程S31は、酸化剤処理装置31により実行される。酸化剤処理工程S31は、酸性溶液で不活化された高吸水性ポリマー300を、酸性条件下、酸化剤で処理する。酸化剤としては、高吸水性ポリマー300の表面に付着している不純物(例示:臭気物質、有色物質、雑菌)を除去可能であれば特に制限はないが、例えばオゾンや過酸化水素が挙げられる。酸化剤を水に混入して水溶液として使用する場合、水溶液中の酸化剤の濃度は、例えば0.5~20質量%が挙げられる。本実施形態では、不活化された高吸水性ポリマー300を、酸化剤の水溶液、すなわちオゾンを所定濃度だけ含むオゾン水に、所定の時間だけ接触(浸漬)させることで、高吸水性ポリマー300の表面の不純物が除去された高吸水性ポリマー301を形成する。また、酸性条件は、酸性であればよく、例えば酸性を示す水溶液が挙げられる。酸性を示す水溶液としては、高吸水性ポリマー300の不活化状態を維持する観点や、オゾン使用する場合にはオゾンを失活させ難くする観点などから、上記の酸性水溶液の説明で挙げられた無機酸及び有機酸を含む水溶液が好ましい。そして、その酸性を示す水溶液のpHは、所定の範囲、すなわち少なくとも上記の酸性水溶液と同様の0.5~4.0が好ましく、1.0~3.5がより好ましい。本実施形態では、酸性条件としてクエン酸の水溶液を用いている。水溶液のクエン酸濃度は、特に限定されず、例えば、0.1~5質量%が挙げられる。
【0043】
高吸水性ポリマー300の表面には、使用済み吸収性物品の排泄物由来の菌や他の有機物などが異物や汚れとして付着している。それらが表面に残存すると、再生高吸水性ポリマーの純度が低下するおそれがある。そこで、酸化剤処理工程S31では、高吸水性ポリマー300を酸化剤の水溶液、本実施形態ではオゾン水の中に所定の濃度(例示:1~10質量%)で略均一に分散させて、高吸水性ポリマー300の表面に付着している菌や他の有機物などを酸化分解して除去する。すなわち、酸化剤処理工程S31は、高吸水性ポリマー300の表面に付着している不純物を除去する。特に、オゾン水による除菌は、溶菌と呼ばれ、タンパク質とオゾンが化学反応することで、菌の細胞壁(膜)が破壊され、細胞内の成分が漏れることで菌が死滅する。そのため、除菌の効果が著しく高く、耐性菌が生じ難く、除菌後に菌が再び繁殖して表面を覆う可能性が極めて低い。
【0044】
このとき、高吸水性ポリマーの不活化を酸性水溶液で行うと(不活化工程S30)、不活化された高吸水性ポリマーは吸水しない。そのため、不活化した状態で、オゾン濃度が低いオゾン水で洗浄可能なため、洗浄による菌等の除去がし易く、菌等の除去を短時間で行うことができる。更に、臭い成分、色素成分もオゾンにより分解されるため、脱臭・脱色効果も有している。なお、高吸水性ポリマー300をガス状の物質、例えばオゾンガスで処理しようとすると、高吸水性ポリマー300は塊状(ゲル状)であるため、塊の内部にまで処理が行き渡らず、全体に均一に処理することが困難である。紫外線や放射線で処理しようとすると、それらが塊の内部まで透過できるほど強い線量では、高吸水性ポリマーが分解してしまう。加熱又は高圧蒸気で処理しようとすると、高吸水性ポリマーに排泄物の汚れが残存してしまう。次亜塩素酸ナトリウム水溶液で処理しようとすると、高吸水性ポリマーに塩素が残存してしまい衛生材料としては使用できなくなる。
【0045】
オゾン水中のオゾン濃度は、高吸水性ポリマーの表面に付着している菌や他の有機物などを除去することができる濃度であれば、特に限定されないが、好ましくは0.3~2質量ppm、より好ましくは0.5~1.5質量ppmである。濃度が低過ぎると、菌等の除去が難しくなり、濃度が高過ぎると、高吸水性ポリマーが分解し始めるおそれがある。オゾン水と高吸水性ポリマーとの接触時間は、高吸水性ポリマーの表面に付着している菌や他の有機物などを除去することができる時間であれば、特に限定されないが、オゾン水中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くする。その接触時間は、好ましくは0.3秒~15分、より好ましくは5秒~10分である。オゾン水中のオゾン濃度(ppm)と接触時間(分)の積(以下「CT値」ともいう。)は、好ましくは0.05~20ppm・分、より好ましくは0.08~10ppm・分である。CT値が小さ過ぎると、除菌が難しくなり、CT値が大き過ぎると、高吸水性ポリマーが分解するおそれがある。ただし、オゾン水による処理では、高吸水性ポリマー300の表面に付着している不純物を除去することにより、菌などの除去と共に漂白も行うことができる。オゾンを水中に供給するオゾン発生装置としては、例えばエコデザイン株式会社製オゾン水曝露試験機ED-OWX-2、三菱電機株式会社製オゾン発生装置OS-25V等が挙げられる。
【0046】
酸化剤処理工程S31では、ムラなく反応を進行させるため、高吸水性ポリマー300を含むオゾン水を槽中で攪拌してもよい。酸化剤処理工程S31ではオゾン水の温度は、特に制限がなく、例えば、室温(25℃)が挙げられ、好ましくは10~40℃である。オゾン水は高温にし過ぎるとオゾンがガスとして抜け易くなり失活し易くなり、低温にし過ぎるとオゾン処理の時間が長くなり易くなる。それにより、オゾン水のオゾンにより、高吸水性ポリマー300表面に付着した菌や有機物を除去し易くなる。
【0047】
酸化剤処理工程S31を実行する酸化剤処理装置31としては、不活化された高吸水性ポリマー300を、形状を壊さずにオゾン水に接触(又は浸漬)させることができれば、具体的な構成は特に限定されない。酸化剤処理装置31としては、例えば、二軸スクリューポンプ(BQ型:伏虎金属工業株式会社製)が挙げられる。二軸スクリューポンプは容積式自吸ポンプである。二軸スクリューポンプは、ケーシングと、ケーシング内の部屋に配置され、互いに平行に延びる二軸のスクリューと、を備える。高吸水性ポリマー300を含むオゾン水は、部屋内に供給され、径方向から、二軸のスクリューに到達した後、二軸のスクリューの回転によって軸方向に押し出され、吐出される。酸化剤処理工程S31の処理の段階では、高吸水性ポリマー300は、既述のように多くはないが水分を吸収したゲルの状態であるため、撹拌羽根ではゲルを壊さないように撹拌し難しく、ムラなく反応を進行させ難い。二軸スクリューポンプは、撹拌羽根なしで、不活化された高吸水性ポリマー300をほとんどせん断することなしに、よってゲルを壊さずにオゾン水とムラなく混合させることができて好ましい。酸化剤処理工程S31は、二軸スクリューポンプで、不活化された高吸水性ポリマー300とオゾン水とを混合し反応させる。
【0048】
その後、オゾン処理された高吸水性ポリマー300は、酸化剤処理装置31に設けられたふるい(又はメッシュ)によりオゾン水から分離され(固液分離)、その後、高吸水性ポリマー301としてクエン酸除去工程S32(クエン酸除去装置32)へ供給される。
【0049】
クエン酸除去工程S32は、クエン酸除去装置32により実行される。不活化工程S30において使用される酸性溶液がクエン酸を含む溶液の場合、クエン酸除去工程S32は、不活化工程S30の後、乾燥工程S33の前に、使用済み高吸水性ポリマー301のクエン酸を除去する。本実施形態では、不活化工程S30で、酸性溶液としてクエン酸を含む溶液を用いているので、使用済み高吸水性ポリマーを不活化させるだけでなく、クエン酸のキレート効果により使用済み高吸水性ポリマー表面に付着した金属をも容易に除去できる。そして、クエン酸除去工程S32で、最終的に得られる再生高吸水性ポリマー中にクエン酸のようなキレート剤が残存することを大幅に抑制できる。
【0050】
ここで、クエン酸除去工程S32は、使用済み高吸水性ポリマー301を、金属イオンとキレート構造を作らない酸である除去用の酸、水と混和性を有する有機溶剤、又はそれらの水溶液で処理する除去処理工程S40(除去処理装置40)を含んでいる。それにより、使用済み高吸水性ポリマーからクエン酸を所定の酸又は有機溶剤に溶け出させて除去しつつ、使用済み高吸水性ポリマーをより脱水させることができる。
【0051】
金属イオンとキレート構造を作らない酸である除去用の酸としては、例えば、前述の酸性水溶液の説明で挙げられた無機酸及び有機酸のうち、カルボキシル基を有さない酸又はカルボキシル基を1分子中に(複数個ではなく)1個有する酸が挙げられる。言い換えると、除去用の酸としては、無機酸及び有機酸のうち、1分子中に複数個のカルボキシル基を有さない酸、ということができる。それにより、仮に除去用の酸が使用済み高吸水性ポリマーの表面に残留していたとても、キレート剤として機能することはない。
【0052】
この場合、除去処理工程S40は、酸化剤処理工程S31の後かつ乾燥工程S33の前に、使用済み高吸水性ポリマーを、除去用の酸又はその水溶液で処理する酸工程を含む、ということができる。
【0053】
一方、水と混和性を有する有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、アルコール系溶媒(例示:メタノール、エタノール、プロピルアルコール及びその異性体、ブチルアルコール及びその異性体)、ケトン系溶媒(例示:アセトン、メチルエチルケトン)、ニトリル系溶媒(例示:アセトニトリル)等が挙げられる。それにより、使用済み高吸水性ポリマーをより脱水・洗浄することができる。本実施形態では、クエン酸除去工程S32の除去処理工程S40において、水と混和性を有する有機溶剤であるメタノールを用いている。
【0054】
有機溶媒は、例えば、クエン酸除去に影響しない限り他の溶媒、例えば水を含んでもよい。その他の溶媒の割合は、有機溶媒に対して50質量%未満であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。
【0055】
この場合、除去処理工程S40は、酸化剤処理工程S31の後かつ乾燥工程S33の前に、使用済み高吸水性ポリマーを、有機溶剤又はその水溶液で処理する有機溶剤工程を含む、ということができる。
【0056】
なお、別の実施形態として、クエン酸除去工程S32は、除去処理工程S40として、使用済み高吸水性ポリマーを、上記所定の除去用の酸、上記所定の有機溶剤、又はそれらの水溶液で処理した後に、処理された使用済み高吸水性ポリマーを、更に、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源を含む水溶液で処理する、すなわち再活性化(中和)する再活性化工程を含んでもよい。言い換えると、除去処理工程S40は、酸工程又は有機溶剤工程の後に、再活性化工程を含んでもよい。
【0057】
この場合、酸性水溶液によって、高吸水性ポリマーを不活性化させ(不活化工程S30)、不活性化された高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオン供給源を含む水溶液で中和することにより(除去処理工程S40)、再活性化(中和)された高吸水性ポリマーを得ることが可能である。したがって、不活化に多価金属イオンを使用する必要がないため、灰分が残留して吸収阻害が発生する事態を抑制できる。
【0058】
ただし、アルカリ金属イオン供給源におけるアルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン(Liイオン)、ナトリウムイオン(Naイオン)、及びカリウムイオン(Kイオン)、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。アルカリ金属イオン供給源としては、前述のアルカリ金属イオンを供給することができるものであれば特に制限されず、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の水酸化物と高吸水性ポリマーの酸基よりも酸解離定数の大きな酸との塩(以下、単に「塩」ともいう)等が挙げられる。酸解離定数は、電気化学会編集の電気化学便覧に記載の値を採用することができる。
【0059】
アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。一方、塩としては、例えば、酸性塩、塩基性塩が挙げられる。塩におけるアルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。塩における酸としては、例えば、不活化工程S30において挙げられた酸(例示:塩酸、硫酸)、炭酸等が挙げられる。塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。
【0060】
アルカリ金属イオン供給源としてアルカリ金属の水酸化物を用いる場合、アルカリ水溶液の水酸化物イオンの濃度は、例えば0.1~5.0mol/Lが挙げられ、好ましくは0.3~3.0mol/Lであり、より好ましくは0.4~1.0mol/Lである。
【0061】
更に、別の実施形態として、クエン酸除去工程S32は、除去処理工程S40が有機溶剤工程の場合、使用済み高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオンを供給可能なアルカリ金属イオン供給源を含む有機溶媒の水溶液で処理する工程を含んでもよい。言い換えると、除去処理工程S40の有機溶剤工程が、使用済み高吸水性ポリマーを有機溶媒又はその水溶液で脱水・洗浄する脱水洗浄工程に加えて、使用済み高吸水性ポリマーをアルカリ金属イオン供給源により再活性化する再活性化工程を含んでもよい。このように、脱水洗浄工程と再活性化工程とを同時に行うことにより、使用済み高吸水性ポリマーからクエン酸を除去し、脱水しつつ、使用済み高吸水性ポリマーをアルカリ金属イオンにより中和(再活性化)することができる。
【0062】
したがって、再生高吸水性ポリマーとして再活性化(中和)された高吸水性ポリマーが必要な場合には、脱水洗浄工程と再活性化工程とを同時に行うことで、高吸水性ポリマーを吸水膨潤させず、脱水させることができる。それにより、再活性化すべき高吸水性ポリマーの体積を小さくできるので、再活性化を効率的に行うことができる。また、高吸水性ポリマーを、ゲル強度が強いまま、再活性化処理することができ、再活性化処理中の撹拌等によりゲルが破壊することを抑制できる。また、再活性化や脱水洗浄の設備を大型化する必要が無く、有機溶媒の使用量を低減できる。更に、その脱水により、高吸水性ポリマーの表面付近の水分量を概ね一定にできるので、高吸水性ポリマーの表面において、乾燥を比較的均一行うことができる。それにより、再生高吸水性ポリマーの吸収性能を比較的均一にでき、結果として吸収性能の相対的な低下を抑制できる。
【0063】
更に、別の実施形態として、クエン酸除去工程S32は、除去処理工程S40が酸工程の場合、その後に、使用済み高吸水性ポリマーを有機溶媒又はその水溶液で脱水・洗浄する脱水洗浄工程を含んでもよい。更に、別の実施形態として、除去処理工程S40としての酸工程を実施し、更に、使用済み高吸水性ポリマーを再活性化(中和)する再活性化工程を実施した後に、使用済み高吸水性ポリマーを有機溶媒又はその水溶液で脱水・洗浄する脱水洗浄工程を含んでもよい。脱水洗浄工程を含むことで、後段の乾燥工程S33をより容易に行うことができる。
【0064】
クエン酸除去工程S32(除去処理工程S40)の温度は、所定の温度、例えば、室温(例示:20℃)~60℃が挙げられ、好ましくは30~50℃である。温度が低くなると、除去に時間が長くなる傾向があり、温度が高くなると、高吸水性ポリマーの酸基が脱水縮合を生じる等により、高吸水性ポリマーの吸水性が低下する場合がある。クエン酸除去工程S32(除去処理工程S40)の時間は、所定の時間、例えば、5~300分が挙げられる。
【0065】
クエン酸除去工程S32(除去処理工程S40)を実行するクエン酸除去装置32(除去処理装置40)としては、具体的な構成は特に限定されない。クエン酸除去装置32(除去処理工程S40)としては、例えば、ミキサー(スタンダードミキサーNS-P-S:株式会社タテックス製)が挙げられる。このミキサーは自転可能な混合槽を備える。高吸水性ポリマー301と所定の除去用の酸、有機溶剤、又はそれらの水溶液とは、混合槽に供給され、混合槽が自転することで混合される。クエン酸除去工程S32(除去処理工程S40)の処理の段階では、高吸水性ポリマー301は、多くはないが水分を吸収したゲルの状態であるため、撹拌羽根ではゲルを壊さないように撹拌し難しく、ムラなく反応を進行させ難い。このミキサーは、混合槽が自転することで、撹拌羽根なしで、高吸水性ポリマー301をほとんどせん断することなしに所定の水溶液とムラなく混合させることができて好ましい。クエン酸除去工程S32(除去処理工程S40)は、このミキサーで、高吸水性ポリマー301と所定の水溶液とを混合させる。
【0066】
その後、少なくともクエン酸を除去された高吸水性ポリマー301は、クエン酸除去工程S32(除去処理工程S40)に設けられたふるい(又はメッシュ)により所定の水溶液から分離され(固液分離)、その後、高吸水性ポリマー302として、乾燥工程S33(乾燥装置33)へ供給される。
【0067】
クエン酸除去工程S32(除去処理工程S40)の処理の終了段階で、高吸水性ポリマー302はかなり脱水され、例えば、吸水倍率が約2倍程度の状態であり、砂のようなサラサラな状態に近くなる。
【0068】
乾燥工程S33は、乾燥装置33により実行される。乾燥工程S33は、酸化剤で処理された使用済み高吸水性ポリマーを乾燥して、再生高吸水性ポリマーを生成する。本実施形態では高吸水性ポリマー302を撹拌しつつ加温雰囲気で乾燥する。
【0069】
乾燥工程S33では、乾燥温度は、例えば、室温(例示:25℃)~150℃が挙げられ、好ましくは70~120℃である。乾燥温度が低くなると、乾燥時間が長くなる傾向があり、乾燥温度が高くなると、高吸水性ポリマーの酸基が脱水縮合を生じる等により、高吸水性ポリマーの吸水性が低下する場合がある。乾燥工程S33では、乾燥時間は、例えば、30~300分間が挙げられる。乾燥工程S33は、乾燥の促進の観点から減圧下、例えば、0.1~100kPaで実施してもよい。
【0070】
乾燥工程S33を実行する乾燥装置33としては、高吸水性ポリマー302を乾燥させることができれば、具体的な構成は特に限定されない。乾燥装置33としては、例えばパドル付き乾燥機(パドルドライヤーNPD-1.6W-G:株式会社奈良機械製作所製)が挙げられる。パドル付き乾燥機は、ケーシングと、ケーシング内の部屋に配置され、互いに平行に軸方向に延びる、回転可能な二軸のシャフトと、を備える。各シャフトは径方向に拡がる楔形状の伝熱翼(パドル羽根)を含み、両シャフトのパドル羽根同士は軸方向から見て互いにオーバーラップしている。高吸水性ポリマー302は、部屋内に供給され、熱風を受け、高温雰囲気でパドル羽根により撹拌されつつ乾燥される。乾燥工程S33はパドル付き乾燥機で、高吸水性ポリマー302を互いに付着しないように撹拌しつつ加温雰囲気で乾燥する。
【0071】
乾燥工程S33は、高吸水性ポリマーの乾燥減量が、好ましくは15%以下(2.0g,105℃,3時間)となるように実施することが好ましい。高吸水性ポリマーの利用の観点からである。上記乾燥減量は、厚生労働省が2015年3月25日付で、薬食審査発0325第24号として通知された「生理処理用品材料規格について」に別紙として添付される「生理処理用品材料規格」の<2.一般試験法>の「7.乾燥減量試験法」に従って測定される。
【0072】
その後、乾燥された高吸水性ポリマー302は、高吸水性ポリマー303として、異物分離工程S34(異物分離装置34)へ供給される。
【0073】
異物分離工程S34は異物分離装置34による実行される。異物分離工程S34は、乾燥した高吸水性ポリマー303から異物を分離する。異物を分離する方法としては、例えば、気体中での比重差または、篩分けによる大きさ選別により、異物を分離する方法が挙げられる。異物としては、例えばパルプ繊維が挙げられる。
【0074】
異物分離工程S34を実行する異物分離装置34としては、高吸水性ポリマー303から異物を分離できれば、具体的な構成は特に限定されない。異物分離装置34は、例えばサイクロン分離機であり、気体中での遠心分離で、高吸水性ポリマー303と異物とを分離する。それにより、異物の量がより低減された、再生高吸水性ポリマーが生成される。
【0075】
以上のようにして、使用済み吸収性物品由来の高吸水性ポリマーが再生されて、再生高吸水性ポリマーが生成される。
【0076】
生成された再生高吸水性ポリマー(ただし、再活性化(中和)されたもの)では、後述の実施例で示されるように、灰分の含有量が35質量%以下、好ましくは32質量%以下、より好ましくは31質量%以下である。また、生成された再生高吸水性ポリマーでは、混釈培養法により検出される一般生菌数が検出限界以下である。ここで、製造後未使用の一般的な高吸水性ポリマー(例示:ポリアクリル酸ナトリウム架橋体)における内部に含まれる灰分の量は約30質量%であるから、再生高吸水性ポリマーにおける内部に含まれる灰分の量も約30質量%であると考えられる。この場合、30質量%分の灰分、すなわち再生高吸水性ポリマーの内部の灰分は、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体のNa(ナトリウム)由来のものと考えられる(なお、高吸水性ポリマーの表面における灰分は、排泄物由来の無機物や元々表面に付着していたシリカなどであると考えられる)。したがって、再生高吸水性ポリマーでは、その内部を除いた表面には不必要な灰分が少なく、5質量%(35質量%-30質量%)程度以下しかない。好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更にことましくは0.5質量%以下である。更に、再生高吸水性ポリマーには一般生菌数が極めて少ない(検出限界以下)。よって、再生高吸水性ポリマーの純度は非常に高い。そのため、この再生高吸水性ポリマーは、高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーとして用いることができる。言い換えると、この再生高吸水性ポリマーは、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから再生された、高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーである。
【0077】
本実施形態に係る再生高吸水性ポリマーを製造する方法は、使用済み衛生用品(例示:吸収性物品)由来の使用済み高吸水性ポリマーを、酸性溶液で不活化し(不活化工程S30)、酸性条件下で、酸化剤で処理し(酸化剤処理工程S31)、乾燥して(乾燥工程S33)、再生高吸水性ポリマーを生成している。すなわち、本方法は、酸性溶液で、使用済み高吸水性ポリマーを脱水させ、その体積を大幅に減少させて、その後、酸性条件下で、その脱水状態、すなわち体積を減少させた状態を維持させつつ、酸化剤で、使用済み高吸水性ポリマーを脱臭、脱色、除菌している。このように、使用済み高吸水性ポリマーの体積を小さくすることで、使用済み衛生用品由来の再生高吸水性ポリマーが有する不純物(例示:臭気物質、有色物質、雑菌)を酸化剤で容易に除去することができ、純度の高い再生高吸水性ポリマーを得ることができる。このような純度の高い再生高吸水性ポリマーを、所定の高吸水性ポリマーを形成する方法における原料の一部として用いて、純度の高い良質な高吸水性ポリマーを形成できる。所定の高吸水性ポリマーを形成する方法としては、例えば特許文献2~4のような方法や、後述の再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造する方法、すなわち、未使用の高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマーの原料の一部として再利用する方法が挙げられる。よって、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマーを用いる製品に有効に利用することが可能となる。
【0078】
本実施形態では好ましい態様として、乾燥工程S33後に、乾燥された再生高吸水性ポリマーから異物(例示:パルプ繊維)を分離している(異物分離工程S34)。そのため、溶液中での分離のような非乾燥状態での分離と比較して、比較的容易に再生高吸水性ポリマーから異物を分離でき、それゆえ、より純度の高い再生高吸水性ポリマーを得ることができる。
【0079】
本実施形態では好ましい態様として、クエン酸を含む溶液で、使用済み高吸水性ポリマーの不活化を行っている(不活化工程S30)。そのため、単に、使用済み高吸水性ポリマーを脱水させ、その体積を大幅に減少させるだけでなく、クエン酸のキレート効果により金属(例示:排泄物に含まれている人体由来のもの)をも容易に除去できる。更に、本方法では、不活化工程S30の後に使用済み高吸水性ポリマーのクエン酸を除去している(クエン酸除去工程S32)。そのため、再生高吸水性ポリマー中にクエン酸のようなキレート剤が残存することを大幅に抑制できる。それらにより、より純度の高い再生高吸水性ポリマーを得ることができる。特に、再生高吸水性ポリマー中にキレート剤がほとんど残存しないため、未使用の高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマーの原料の一部として再利用する方法において、水溶液重合や架橋などを行う場合には、キレート剤が架橋反応を阻害することを大幅に抑制できる。
【0080】
本実施形態では好ましい態様として、クエン酸の除去(クエン酸除去工程S32)として、使用済み高吸水性ポリマーを、金属イオンとキレート構造を作らない除去用の酸、水と混和性を有する有機溶剤、又はそれらの水溶液で処理している(除去処理工程S40)。それにより、使用済み高吸水性ポリマーを酸又は有機溶剤により脱水しつつ、使用済み高吸水性ポリマーの表面のクエン酸を洗い流すことができる。したがって、再生高吸水性ポリマー中にクエン酸のようなキレート剤が残存することをより大幅に抑制できる。
【0081】
別の実施形態では、除去処理工程S40として、酸化剤処理工程S31中又は後において、使用済み高吸水性ポリマーを除去用の酸又はその水溶液で処理する(酸工程)。それにより、使用済み高吸水性ポリマーからクエン酸を除去しつつ、使用済み高吸水性ポリマーをより脱水させることができる。したがって、その後の乾燥工程S33をより容易に実行でき、よって純度の高い再生高吸水性ポリマーを効率的に得ることができる。
【0082】
別の実施形態では、除去処理工程S40(酸工程)で使用される除去用の酸は、カルボキシル基を有さない酸又はカルボキシル基を1分子中に1個有する酸である。そのため、除去処理工程において、より確実に、使用済み高吸水性ポリマーからクエン酸を除去しつつ、使用済み高吸水性ポリマーをより脱水させることができる。
【0083】
本実施形態では好ましい態様として、除去処理工程S40として、酸化剤処理工程S31の後、乾燥工程S33の前に、使用済み高吸水性ポリマーを有機溶剤の水溶液で処理している(有機溶剤工程)。それにより、使用済み高吸水性ポリマーからクエン酸を除去しつつ、使用済み高吸水性ポリマーをより脱水させることができる。したがって、その後の乾燥工程S33をより容易に実行することができ、よって、純度の高い再生高吸水性ポリマーを効率的に得ることができる。
【0084】
別の実施形態では、除去処理工程S40(有機溶剤工程)において、使用済み高吸水性ポリマーを、アルカリ金属イオン供給源を含む有機溶剤の水溶液で処理する。それにより、使用済み高吸水性ポリマーからクエン酸を除去し、脱水しつつ、使用済み高吸水性ポリマーをアルカリ金属イオンにより中和することができる。したがって、例えば、高吸水性ポリマーを製造するとき、中和の済みの純度の高い原料として再生高吸水性ポリマーを用いることができる。
【0085】
別の実施形態では、アルカリ金属イオン供給源は、アルカリ金属の水酸化物、又はアルカリ金属の水酸化物と高吸水性ポリマーの酸基よりも酸解離定数の大きな酸との塩である。そのため、より確実に、使用済み高吸水性ポリマーをアルカリ金属イオンにより中和することができる。
【0086】
本実施形態では好ましい態様として、酸化剤処理工程S31において、酸化剤としてのオゾンを含む水又は過酸化水素水により使用済み高吸水性ポリマーを処理している。それにより、使用済み衛生用品由来の再生高吸水性ポリマーが有する不純物(例示:臭気物質、有色物質、雑菌)をより容易に除去することができ、すなわち、脱臭、脱色、除菌をより容易に行うことができる。それにより、より純度の高い再生高吸水性ポリマーを得ることができる。
【0087】
また、本実施形態に係る使用済み衛生用品(例示:吸収性物品)由来の再生高吸水性ポリマーでは、灰分の含有量が35質量%以下、混釈培養法により検出される一般生菌数が検出限界以下である。すなわち、再生高吸水性ポリマーの純度は高くなっている。そのため、そのような再生高吸水性ポリマーを、高吸水性ポリマー製造のための水溶液重合又は架橋において、原料及び半製品の少なくとも一方に混入させることで、純度の高い良質な高吸水性ポリマーを形成できる。
【0088】
次に、使用済み衛生用品由来の使用済み高吸水性ポリマーから再生された、高吸水性ポリマー製造用の原料である再生高吸水性ポリマーを用いて、高吸水性ポリマーを製造する方法について説明する。
【0089】
高吸水性ポリマーのうち、ポリアクリル酸塩系の高吸水性ポリマーは、例えば、水溶液重合法で形成される。水溶液重合法は、例えば、次の(1)及び(2)の方法が挙げられる(非特許文献1)。
【0090】
(1)アクリル酸(原料)を水溶液中で重合及び架橋して(重合開始剤及び架橋剤)、ポリアクリル酸架橋体(半製品)を形成し、その後にポリアクリル酸架橋体を中和することにより、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、すなわち高吸水性ポリマーを形成する。好ましくは、その後に、形成された高吸水性ポリマーを表面架橋剤で表面架橋する。この場合、表面架橋の前の高吸水性ポリマーは半製品ということができる。
【0091】
(2)アクリル酸(原料)を中和してアクリル酸ナトリウム(半製品)を形成し、その後、アクリル酸ナトリウムを水溶液中で重合及び架橋する(重合開始剤及び架橋剤)ことにより、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、すなわち高吸水性ポリマーを形成する。好ましくは、その後に、形成された高吸水性ポリマーを表面架橋剤で表面架橋する。この場合にも、表面架橋の前の高吸水性ポリマーは半製品ということができる。
【0092】
ここで、(1)の方法では、アクリル酸(原料)及びポリアクリル酸架橋体(半製品)の少なくとも一方に、上述された再活性化(中和)していない再生高吸水性ポリマーを混入することで、再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造することができる。また、表面架橋する前の高吸水性ポリマー(半製品)に、上述された再活性化(中和)した再生高吸水性ポリマーを混入することで、再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造することができる。
【0093】
また、(2)の方法では、アクリル酸(原料)に、上述された再活性化(中和)していない再生高吸水性ポリマーを混入することで、再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造することができる。また、アクリル酸ナトリウム(半製品)や表面架橋する前の高吸水性ポリマー(半製品)に、上述された再活性化(中和)した再生高吸水性ポリマーを混入することで、再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造することができる。
【0094】
あるいは、上述された再活性化(中和)していない再生高吸水性ポリマー及び/又は再活性化(中和)した再生高吸水性ポリマーを、特許文献2~4の微粉、微粒子又は吸水性樹脂(原料)として混入することで、再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造することができる。
【0095】
これらの再生高吸水性ポリマーを用いて高吸水性ポリマーを製造する方法では、使用済み衛生用品(例示:吸収性物品)由来の再生高吸水性ポリマーを、原料及び半製品の少なくとも一方に混入させて、水溶液重合又は架橋により、高吸水性ポリマーを製造している。このとき、再生高吸水性ポリマーは、上記の再生高吸水性ポリマーの製造の方法で製造されているので、その純度は高くなっている。それゆえ、本方法では、上記の再生高吸水性ポリマーを用いても、純度の高い良質な高吸水性ポリマーを形成できる。
【0096】
なお、本実施形態に係る使用済み衛生用品(例示:吸収性物品)由来の再生高吸水性ポリマーを製造する方法において、使用済み衛生用品から高吸水性ポリマーを取り出す方法については、特に制限はなく、任意の方法を採用できる。そのような方法として、例えば以下に示す方法を
図3及び
図4を参照して説明する。
【0097】
図3は、本実施形態に係る使用済み吸収性物品から資材を分離するシステム100の一例を示すブロック図である。システム100は、使用済み吸収性物品からフィルム・不織布など、高吸水性ポリマー(SAP)、及び、パルプ繊維を分離する分離装置10を備えている。一方、
図4は、本実施形態に係る使用済み吸収性物品から資材を分離する方法の一例を示すフロー図である。この方法は、使用済み吸収性物品からフィルム・不織布など、高吸水性ポリマー(SAP)、及び、パルプ繊維を分離する分離工程S10を備えている。そして、
図3に示すように、分離装置10は破袋装置11~第4分離装置20を備え、それらに対応して、
図4に示すように、分離工程S10は穴開け工程S11~第4分離工程S20を備える。以下、各工程について具体的に説明する。
【0098】
なお、本実施形態では、使用済みの吸収性物品を、再利用(リサイクル)のために外部から回収・取得して用いる。その際、使用済みの吸収性物品は、複数個、収集袋に、排泄物や菌類や臭気が外部に漏れないように封入される。収集袋内の個々の使用済みの吸収性物品は、例えば排泄物や菌類が表側に露出せず、臭気が周囲に拡散しないよう排泄物が排泄される表面シートを内側に、主に丸められた状態や折り畳まれた状態で回収等される。
【0099】
穴開け工程S11は破袋装置11により実行される。破袋装置11は、不活化剤を含む不活化水溶液を貯留する溶液槽と、溶液槽内で回転する破袋刃と、を備える。破袋装置11は、溶液槽内に投入された収集袋に、不活化水溶液中で破袋刃により穴を開ける。それにより、不活化水溶液が穴から浸入した収集袋と不活化水溶液との混合液91が生成される。不活化水溶液は、収集袋内の使用済み吸収性物品の高吸水性ポリマーを不活化する。以下、不活化水溶液として酸性水溶液を用いる場合を例に説明する。
破砕工程S12は破砕装置12により実行される。破砕装置12は、二軸破砕機(例示:二軸回転式破砕機など)を備える。破砕装置12は、混合液91の使用済み吸収性物品を含む収集袋を、収集袋ごと破砕する。それにより、使用済み吸収性物品を含む収集袋の破砕物と酸性水溶液とを有する混合液92が生成されると共に、使用済み吸収性物品の概ねすべての高吸水性ポリマーが不活化される。ただし、破砕物は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーと、他の資材(フィルム、不織布、収集袋など)と、を含む。
【0100】
第1分離工程S13は第1分離装置13により実行される。第1分離装置13は、洗浄槽兼ふるい槽として機能する撹拌分離槽を有するパルパー分離機を備える。第1分離装置13は、混合液92を撹拌し、破砕物から排泄物などを除去しつつ、混合液92からパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を分離する。それにより、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液93が生成されると共に、使用済み吸収性物品のフィルム、不織布や、収集袋の素材などが回収される。
【0101】
なお、穴開け工程S11及び破砕工程S12(破袋装置11及び破砕装置12)は、不活化水溶液)中で使用済み吸収性物品を処理し、その高吸水性ポリマーを不活化するので、不活化工程S30(不活化装置30)といえる。また、破砕装置12は、不活化水溶液中で使用済み吸収性物品を破砕せず、気体中(例示:空気中)で収集袋ごと使用済み吸収性物品を破砕してもよい。その場合、破袋装置11は不要である。破砕の後、破砕装置12の破砕物と不活化水溶液とが第1分離装置13(第1分離工程S13)に供給され、高吸水性ポリマーが不活化される。その場合には、第1分離装置13(第1分離工程S13)が不活化工程S30(不活化装置30)といえる。
【0102】
第1除塵工程S14は第1除塵装置14により実行される。第1除塵装置14は、スクリーン分離機を備え、混合液93を、スクリーンにより、酸性水溶液中のパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び排泄物と他の資材(異物)とに分離する。それにより、異物の量が低減された、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液94が生成されると共に、他の資材が除去される。
第2除塵工程S15は第2除塵装置15により実行される。第2除塵装置15は、スクリーン分離機を備え、混合液94を、第1除塵装置14より細かいスクリーンで、酸性水溶液中のパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び排泄物と他の資材(小異物)とに分離する。それにより、異物の量が更に低減された、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液95が生成されると共に、他の資材が更に除去される。
第3除塵工程S16は第3除塵装置16により実行される。第3除塵装置16は、サイクロン分離機を備え、混合液95を、遠心分離により、酸性水溶液中のパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び排泄物と他の資材(比重の重い異物)とに分離する。それにより、異物の量がより低減された、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液96が生成されると共に、比重の大きい他の資材が除去される。
なお、混合液92などの状態(例示:異物の量や大きさ)により、第1除塵装置14~第3除塵装置16のうちの少なくとも一つを省略してもよい。
【0103】
第2分離工程S17は第2分離装置17により実行される。第2分離装置17は、ドラムスクリーン分離機を備え、混合液96を、ドラムスクリーンにより、酸性水溶液中の高吸水性ポリマーと、パルプ繊維とに分離する。それにより、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液97が生成され、パルプ繊維が混合物98として除去される。
第3分離工程S18は、第3分離装置18により実行される。第3分離装置18は、傾斜スクリーンを備えており、混合液97を、スクリーンにより、高吸水性ポリマーを含む固体と、排泄物及び酸性水溶液を含む液体とに分離する。それにより、高吸水性ポリマー(SAP)が生成されると共に、排泄物を含む酸性水溶液などが除去される。
【0104】
酸化剤処理工程S19は酸化剤処理装置19により実行される。酸化剤処理装置19は、酸化剤水溶液を貯留する処理槽と、処理槽内に酸化剤を供給する酸化剤供給装置と、を備える。酸化剤処理装置19は、混合物98を、処理槽の上部又は下部から処理槽内に投入し、処理槽内の酸化剤水溶液と混合する。そして、酸化剤供給装置により処理槽の下部から供給される酸化剤により、酸化剤水溶液中でパルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーを分解して、酸化剤水溶液に可溶化する。それにより、高吸水性ポリマーが除去されたパルプ繊維と高吸水性ポリマーの分解物を含む酸化剤水溶液とを有する混合液99が生成される。酸化剤は、高吸水性ポリマーを分解可能な酸化剤であり、例えばオゾンが挙げられ、オゾンは殺菌力や漂白力も高く好ましい。
【0105】
酸化剤水溶液中のオゾン濃度は、好ましくは1~50質量ppmである。濃度が低すぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できず、パルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがあり、濃度が高すぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある。第オゾンでの処理時間は、酸化剤水溶液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くし、典型的には5~120分である。酸化剤水溶液中のオゾン濃度(ppm)と処理時間(分)の積(以下、「CT値」ともいう。)は、好ましくは100~6000ppm・分である。CT値が小さすぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できず、CT値が大きすぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある。
【0106】
第4分離工程S20は、第4分離装置20により実行される。第4分離装置20は、スクリーン分離機を備え、混合液99を、スクリーンにより、パルプ繊維と酸化剤水溶液とに分離する。それにより、パルプ繊維が生成されると共に、高吸水性ポリマーの分解物を含む酸化剤水溶液が除去される。
【0107】
<灰分>
なお、灰分の測定方法は、次に示すとおりである。灰分とは、有機質が灰化されてあとに残った無機質または不燃性残留物の量をいう。灰分は、生理処理用品材料規格の「2.一般試験法」の「5.灰分試験法」に従って測定する。すなわち、灰分は、次のようにして測定する。あらかじめ白金製、石英製または磁製のるつぼを500~550℃で1時間強熱し、放冷後、その質量を精密に量る。試料2~4gを採取し、るつぼに入れ、その質量を精密に量り、必要ならばるつぼのふたをとるか、またはずらし、初めは弱く加熱し、徐々に温度を上げて500~550℃で4時間以上強熱して、炭化物が残らなくなるまで灰化する。放冷後、その質量を精密に量る。再び残留物を恒量になるまで灰化し、放冷後、その質量を精密に量り、灰分の量(質量%)とする。
【0108】
<一般細菌の検出>
一般生菌は混釈培養法により検出され得る。一般生菌としては、例えば、Bacillus cereus、枯草菌、黄色ブドウ球菌、緑濃菌、ぶどう糖非発酵桿菌、アエロモナス菌等が挙げられる。混釈培養法により上記細菌が検出されないことにより、上記再生高吸水性ポリマーが、菌血症、心内膜炎、呼吸器感染症、食中毒、眼感染症等を引き起こしにくく、使用者が、上記再生高吸水性ポリマーを安心して使用することができる。
【0109】
混釈培養法は、以下の通り実施される。
(1)1リットルのビーカーに、再生高吸水性ポリマーの固形分濃度が5.0質量%の水分散液500gを準備する。
上記再生高吸水性ポリマーが乾燥状態で存在する場合には、上記水分散液は、再生高吸水性ポリマー(固形分として25.0g)と、脱イオン水(総量が500.0gとなる量)とを混合することにより形成することができる。そして、上記再生高吸水性ポリマーが水溶液で存在する場合(例えば、再生高吸水性ポリマーの製造方法において、再生高吸水性ポリマーを水溶液として回収した場合)であって、再生高吸水性ポリマーの固形分濃度が5.0質量%以上であるときには、当該水溶液に、脱イオン水を添加すること等により、再生高吸水性ポリマーの固形分濃度が5.0質量%の水分散液を準備できる。
さらに、上記再生高吸水性ポリマーが水溶液で存在する場合であって、再生高吸水性ポリマーの固形分濃度が5.0質量%未満であるときには、濾過により、再生高吸水性ポリマーの固形分濃度を5.0質量%に調整するか、又は上記水溶液そのものを、水分散液として用い、後述する段階希釈サンプルの接種量を増やす(例えば、再生高吸水性ポリマーの固形分濃度が2.5質量%である場合には、接種量を2倍にする)ことができる。
(2)上記水分散液を、オーバーヘッドスターラーを用いて300rpmの回転速度で、15分間撹拌する。
(3)オーバーヘッドスターラーを用いて撹拌した水分散液50mLをフィルタ付き滅菌袋(LMS社製、ホモジナイザー用フィルタ付き滅菌袋)に入れ、5分間攪拌する。
(4)フィルタ付き滅菌袋で濾過した濾過後の水分散液を、滅菌した試験管に分注し、10-9まで10倍段階希釈し、滅菌した試験管に分注し、段階希釈サンプルを準備する。
(5)一般生菌数は、混釈培養法により測定する。
具体的には、シャーレに、段階希釈サンプル1mLと、標準寒天培地(日本製薬製,一般生菌検査用396-00175SCD寒天培地「ダイゴ」,15~20g)と入れて、35℃で48時間混釈培養する。
【0110】
(6)一般生菌数としては、培養後、発育したコロニー数をカウントする。
なお、10-9まで10倍段階希釈した全ての段階希釈サンプルにおいて、コロニー数がゼロである場合に、対象となる細菌が「検出されない」、すなわち混釈培養法により検出される一般生菌数が検出限界以下であると判定する。言い換えると、一般生菌数が0cfu/gである。
(7)培養後、腸内細菌又は一般生菌のコロニーが形成された場合には、細菌の種類を同定することができる。同定は、生化学的性状検査法により行うことができる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例に基づき、本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0112】
(1)酸化剤処理について
酸化剤処理の効果について評価した。
(a)試料
実際に使用された使用済みおむつから分離された高吸水性ポリマー(分離工程S10に対応)を用いた。その高吸水性ポリマーは、ほぼポリアクリル酸ナトリウム架橋体であった。その分離された高吸水性ポリマーは、酸性水溶液(クエン酸濃度1%)で不活化されている(不活化工程S30に対応=穴開け工程S11+破砕工程S12に対応)。
【0113】
(b)評価方法
(i)実施例の試料では、使用済みおむつから分離された高吸水性ポリマー(不活化済)1gを、酸性条件下(クエン酸濃度:質量1%)、その高吸水性ポリマーの質量の10倍の質量を有するオゾン水(オゾン濃度1ppm)に2分間浸漬した(酸化剤処理工程S31に対応)。一方、比較例の試料では、使用済みおむつから分離された高吸水性ポリマー(不活化済)1gを、オゾン水に浸漬しなかった。
(ii)その後、実施例の試料の高吸水性ポリマー及び比較例の試料の高吸水性ポリマーを、いずれもメタノール及び水酸化ナトリウムを含む水溶液中で処理した(クエン酸除去工程S32に対応)。それにより、各高吸水性ポリマーからクエン酸を除去しつつ、各高吸水性ポリマーを脱水し、再活性化(中和)した。
(iii)その後、実施例の試料の高吸水性ポリマー及び比較例の試料の高吸水性ポリマーを、いずれも105℃、60分乾燥した(乾燥工程S33に対応)。
(iv)得られた実施例の試料の高吸水性ポリマー及び比較例の試料の高吸水性ポリマーについて、それぞれ灰分及び一般細菌の数を測定した。評価結果を、表1に示す。
【0114】
(c)評価結果
実施例の試料の高吸水性ポリマーの灰分は30.3質量%であり、比較例の試料の高吸水性ポリマーの灰分の40.9質量%と比較して、約10質量%も低減され、製造後未使用の一般的な高吸水性ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム架橋体)の内部に含まれる灰分の量(約30質量%)と概ね同じになった。したがって、実施例の試料の高吸水性ポリマーの表面には灰分となるような物質がほとんど存在しない(1質量%以下)ことが分かった。すなわち、高吸水性ポリマーの表面における灰分となるような物質としては、排泄物由来の無機物や元々表面に付着していたシリカなどが考えられるから、実施例の試料の高吸水性ポリマーの表面には排泄物由来の無機物やシリカがほとんど存在しないことが分かった。言い換えると、実施例の試料では、高吸水性ポリマーの表面での灰分は1質量%以下ある、ということができる。更に、実施例の試料の高吸水性ポリマーの一般細菌の数は検出限界以下(0(ゼロ)cfu/g)であり、比較例の試料の高吸水性ポリマーの一般細菌の数である3400cfu/gと比較して極めて低い値を示した。よって、実施例の試料の高吸水性ポリマー、すなわち再生高吸水性ポリマーの純度は非常に高いことが分かった。
【0115】
【0116】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0117】
S30 不活化工程
S31 酸化剤処理工程
S33 乾燥工程