(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】免疫グロブリン及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230221BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230221BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230221BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230221BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230221BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230221BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230221BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230221BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230221BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20230221BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20230221BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230221BHJP
A61K 38/34 20060101ALI20230221BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230221BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20230221BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/68
A61K38/26
A61K38/22
A61K38/17
A61K38/34
A61K39/395 M
A61P43/00 111
A61K38/00
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2019522246
(86)(22)【出願日】2017-10-26
(86)【国際出願番号】 US2017058462
(87)【国際公開番号】W WO2018081375
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-19
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】マシーラグ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】パッチ,レイモンド,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ケース,マーティン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォール,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ユエ-メイ
(72)【発明者】
【氏名】ランワラ,シャミナ
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド,ジェームズ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】カマチョ,ラウル シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハンター,マイケル,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ダクイノ,キャサリン,イー.
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン,ロナルド ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,ウェニング
(72)【発明者】
【氏名】チ,エレン
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/157595(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0220634(US,A1)
【文献】BioDrugs,2015年,29,p. 215-239
【文献】MABS,2016年06月,VOL. 8, NO. 6,p. 1045-1063
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
C12P
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号13のポリペプチド配列を有する重鎖(HC)と、配列番号15のポリペプチド配列を有する軽鎖(LC)とを含む、単離されたモノクローナル抗
体。
【請求項2】
請求項
1に記載
のモノクローナル抗
体をコードする、単離された核酸。
【請求項3】
請求項
2に記載の前記単離された核酸を含む、ベクター。
【請求項4】
請求項
3に記載の前記ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項5】
単離されたモノクローナル抗
体を産生する方法であって、該方法は、請求項
4に記載の前記宿主細胞を、該モノクローナル抗
体を産生する条件下で培養することと、該モノクローナル抗
体を該細胞又は培養物から回収することとを含む、前記方法。
【請求項6】
請求項
1に記載のモノクローナル抗
体と、それにコンジュゲートされた少なくとも1つの薬理学的活性部分とを含む、コンジュゲート。
【請求項7】
前記薬理学的活性部分が治療用ペプチドである、請求項
6に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記治療用ペプチドが、配列番号18のシステイン残基において、前記モノクローナル抗
体にコンジュゲートされる、請求項
7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記治療用ペプチドが、リンカーを介して前記モノクローナル抗
体にコンジュゲートされる、請求項
7又は
8に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記リンカーが、ペプチドリンカー、炭化水素リンカー、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、ポリプロピレングリコール(PPG)リンカー、多糖類リンカー、ポリエステルリンカー、又はPEGと該PEGに組み込まれている複素環とからなるハイブリッドリンカーを含む、請求項
9に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
前記治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、エキセンジン、アミリン、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群から選択される、請求項
7~
10のいずれか一つに記載のコンジュゲート。
【請求項12】
前記治療用ペプチドが、配列番号24のポリペプチド配列を含むオキシントモジュリンである、請求項
11に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記治療用ペプチドの側鎖上に導入された求電子物質を、該モノクローナル抗
体の配列番号18のシステイン残基のスルフヒドリル基と反応させ、これにより、該治療用ペプチドと、該モノクローナル抗
体との間に共有結合を形成することを含む、請求項
7~
12のいずれか一つに記載の前記コンジュゲートを製造する方法。
【請求項14】
請求項
6~
12のいずれか一つに記載の前記コンジュゲートと、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項15】
請求項
6~
12のいずれか一つに記載の前記コンジュゲートを含む医薬組成物の製造方法であって、前記モノクローナル抗
体を、薬学的に許容可能な担体と組み合わせることで、前記医薬組成物を得ることを含む、前記方法。
【請求項16】
対象における治療用ペプチドの半減期を延長するための薬剤の製造における請求項
7に記載のコンジュゲートの使用であって、該コンジュゲートは、該治療用ペプチドと、それぞれ配列番号16、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配列を有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離モノクローナル抗
体とを含み、該治療用ペプチドは、配列番号18のCys残基で、該モノクローナル抗
体にコンジュゲートされている、前記使用。
【請求項17】
前記治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、エキセンジン、アミリン、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群から選択される、請求項
16に記載の使用。
【請求項18】
前記求電子物質がブロモアセトアミド又はマレイミドである、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年10月27日出願の米国仮特許出願第62/413,613号、及び2016年10月27日出願の米国仮特許出願第62/413,586号に基づく優先権を主張するものである。これらの開示はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、新規抗体又はそのフラグメント、及び、インビボでの治療用ペプチドの半減期を増加させるために治療用ペプチドに結合される担体としてのその使用を目的とする。本発明は更に、医薬組成物及びその使用方法に関する。
【0003】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、ファイル名「PRD3459 Sequence Listing」及び作成日2017年10月23日、ファイルサイズ20kbのASCIIフォーマット配列表として、EFS-Webを介して電子的に提出された配列表を含む。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される情報と、ファイル名「PRD3459 Sequence Listing」でEFS-Webを介して電子的に提出された配列表との間で、配列番号1~27の構造に関して不一致がある場合は、本明細書の情報が優先される。
【背景技術】
【0004】
ペプチド系治療薬はしばしば、多くの承認されたペプチド系治療によって証明されているように、特異性及び選択性を提供することができるよう研究開発されているが、それらを使用することができる方法は、それらの比較的短いインビボ半減期によって制限され得る。ペプチド系治療薬で評価及び利用されてきた数多くの半減期延長戦略が存在している。薬理学的活性部分の半減期延長部分として抗体又は抗体フラグメントを使用することによって、薬理学的活性部分の急速なインビボ排出を防止又は軽減することが行われている。
【0005】
薬理学的活性部分、好ましくはペプチド系治療薬のために、薬理学的に不活性な半減期延長部分として使用することができる改善された免疫グロブリンの必要が存在する。
【0006】
前述の議論は、単に、当該技術分野が直面する問題の性質のより良い理解を提供するために提示されているものであり、いかなる意味でも先行技術の容認として解釈されるべきではなく、本明細書における任意の参考文献の引用は、そのような参照が本出願の「先行技術」を構成することを容認するものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的な一態様では、本発明は、それぞれ配列番号16、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配列を有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0008】
好ましい実施形態では、本発明の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号12のポリペプチド配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号14のポリペプチド配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。より好ましくは、本発明の単離されたモノクローナル抗体は、配列番号13のポリペプチド配列を有する重鎖(HC)と、配列番号15のポリペプチド配列を有する軽鎖(LC)とを含む。
【0009】
本発明は更に、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント、ベクター(好ましくは核酸を含む発現ベクター)、及びそのベクターを含む宿主細胞をコードする、単離された核酸に関する。更に、本発明の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する方法も提供され、この方法は、本発明の宿主細胞を、そのモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する条件下で培養する工程と、その抗体又はその抗原結合フラグメントを細胞又は培養物から回収する工程と、を含む。
【0010】
本発明の実施形態は、少なくとも1つの薬理学的活性部分、好ましくは治療用ペプチドに直接又はリンカーを介してコンジュゲートされた、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、任意の治療用ペプチドにコンジュゲートされ得る。治療用ペプチドの例としては、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、ペプチドチロシンチロシン(PYY)、エキセンジン(エキセナチド)、アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬(antagnoists)、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0011】
更に、治療用ペプチドにコンジュゲートされた本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを生成する方法が提供され、この方法は、治療用ペプチドの側鎖上に導入された求電子物質(好ましくはブロモアセトアミド又はマレイミド)を、スルフヒドリル基(好ましくは、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの配列番号18のシステイン残基のスルフヒドリル基)と反応させ、これにより、治療用ペプチドと、そのモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとの間に共有結合を形成することを含む。
【0012】
本発明は更に、少なくとも1つの薬理学的活性部分、好ましくは治療用ペプチドに、直接又はリンカーを介してコンジュゲートされた、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物に関する。
【0013】
本発明の別の一般的態様は、対象における治療用ペプチドの半減期を延長する方法に関し、この方法は、治療用ペプチドを、それぞれ配列番号16、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配列を有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとコンジュゲートさせることを含み、この治療用ペプチドは、スルフヒドリル基、好ましくは配列番号18のCys残基のスルフヒドリル基で、そのモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる。
【0014】
本発明の更なる態様、特徴、及び利点は、以下の「発明の詳細な説明」及び「特許請求の範囲」を読むことにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
上記の概要、及び本出願の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより理解が深まるであろう。ただし、本出願は、図面に示される実施形態そのものに限定されないことを理解されたい。
【
図1】本発明の一実施形態による一般的なペプチド-mAbコンジュゲート戦略を示す。Xは、治療用ペプチド(例えばブロモアセトアミド又はマレイミドなど)の側鎖上に導入された求電子物質を表し、これは、半減期延長mAbのCDRに組み込まれたCys残基のスルフヒドリル基と特異的に反応し、治療用ペプチドとmAbとの間に共有結合を生成する。
【
図2】PH9H5_VH(配列番号4)及びPH9L3_VL(配列番号3)における置換のために選択されるCDR残基の概要。Cysで置換された残基は、太字で下線が引かれている。
【
図6】化合物1:急性投与で処置したDIOマウスにおける食物摂取。
【
図7】化合物1:急性投与で処理したDIOマウスにおける体重減少。
【
図8】化合物1:慢性投与で処置したDIOマウスにおける食物摂取。
【
図9】化合物1:慢性投与で処置したDIOマウスにおける体重減少。
【
図10】本発明の一実施形態によるモノクローナル抗体オキシントモジュリン(mAb-OXM)化合物を生成するための反応スキームを示す。上の反応は、mAb(例えば、MSCB97)のCys102におけるジスルフィドの還元である。下の反応は、還元mAbとOXMペプチド変異体とのコンジュゲートである。Rは、システイン又はグルタチオンである。MSCB97の重鎖上のCys102は、それらの単一の文字コードとして、フランキングアミノ酸と共に示されている。OXMは、ペプチド変異体のアミノ酸部分を指す。Aib2、Lys30、及びブロモアセチル化分散ポリエチレングリコール(dPEG)12スペーサーが示されている。mAbのHis1は、単一の文字コードとして示されている。
【
図12】168時間にわたるヒト血漿中の化合物2の機能的安定性を示すグラフを示す。OXMペプチドアナログmAbコンジュゲート化合物2▲、対照1(ヒト血漿エクスビボにおいて安定であることが予め実証されたもの)◆、対照2(ヒト血漿エクスビボにおいて不安定であることが予め実証されたもの)●及び〇、並びに、追加のOXMペプチドアナログmAbコンジュゲート化合物3(mAbと、H-Aib-QGTFTSDYSKYLDERRARDFVEWLLNK-(COCH
22(OCH
2CH
2)
12NHCOCH
2Br)-NH
2とのコンジュゲート(配列番号25))
【0016】
及び化合物4(mAbと、H-Aib-QGTFTSDYSKYLDERRARDFVEWLLNTK-(COCH
2CH
2(OCH
2CH
2)
12NHCOCH
2Br)-NH
2(配列番号26))とのコンジュゲート)▼を、X軸上の時間(hr)にわたって、時間ゼロ(t=0)に対して正規化された残りパーセント。
【
図13】168時間にわたるサル血漿中の化合物2の機能的安定性を示すグラフを示す。化合物2▲、対照1(ヒト血漿エクスビボにおいて安定であることが予め実証されたもの)◆、対照2(ヒト血漿エクスビボにおいて不安定であることが予め実証されたもの)●及び〇、並びに、追加のOXMペプチドアナログmAbコンジュゲート化合物3
【0017】
及び化合物4▼を、X軸上の時間(hr)にわたって、時間ゼロ(t=0)に対して正規化された残りパーセント。
【
図14】化合物2で処理したカニクイザルにおける食物摂取の%変化を示すグラフを示す。
【
図15】化合物2で処理したカニクイザルにおける体重の%変化を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の背景において、また、明細書全体を通じて各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載する。これら参照文献のそれぞれをその全容において参照により本明細書に援用するものである。本明細書に含まれる文書、操作、材料、装置、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0019】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に示される意味を有するものである。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意しなければならない。
【0021】
特に断らない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、「約」なる語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は一般的に、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用する場合、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0022】
特に指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した本発明の特定の手順に対して多くの同等物を認識するか、又は確認することができよう。このような同等物は、本発明に包含されることが意図される。
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「備える(comprises)、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having}」、「含有する(contains)」、又は「含有する(containing)」あるいはこれらの任意の他の変形形態は、述べられている整数又は整数群を含むことが意図されるが、これら以外の他の整数又は整数群を除外するものではなく、非排他的又は非制限的であることが意図されることが理解されよう。例えば、要素のリストを備える組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない他の要素、あるいは、そのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置に本来存在しない他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在し)及びBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在せず)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか一つによって充足される。
【0024】
好ましい発明の構成要素の寸法又は特性に言及するときに本明細書で使用される「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、記載された寸法/特性が厳密な境界又はパラメータではなく、当業者には理解されるように、機能的に同じ又は類似の、それらからのわずかな変化を除外しないことを示すことが理解されよう。最低限、数値パラメータを含むそのような参照は、当該技術分野で認められた数学的原理及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定誤差又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用して、最小有効桁を変化させない変形形態を含む。
【0025】
「同一の」又は「同一性」という用語は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列(例えば、環状PYY3~36ポリペプチド配列、オキシントモジュリンポリペプチド配列、抗体軽鎖又は重鎖配列)の文脈において、本開示の見地から当該技術分野において既知の方法を使用して、配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して測定したとき、又は、目視検査によって、最大限対応するよう比較及び整列させたときに、同一であるか、又は同一であるアミノ酸残基又はヌクレオチドの指定された割合を有する、2つ以上の配列又は部分配列を指す。
【0026】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は、試験配列を比較する参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験及び参照配列がコンピュータに入力されると、必要に応じて、部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0027】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)中のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、視覚的検査(一般に、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols(Greene Publishing Associates,Inc.とJohn Wiley & Sons,Inc.のジョイントベンチャー(1995 Supplement)(Ausubel)を参照)によって、実施することができる。
【0028】
配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれ、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403~410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389~3402に記載されている。BLAST分析を行うソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターを介して公的に入手可能である。
【0029】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの更なる指標は、以下に記載されるように、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応することである。したがって、ポリペプチドは典型的には、例えば、第2のポリペプチドと実質的に同一であり、このとき、2つのペプチドが保存的置換のみで異なっている。2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標は、以下に記載されるように、厳密な条件下で2つの分子が互いにハイブリダイズすることである。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「対象」は、任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。本明細書で使用するところの「哺乳動物」なる用語は、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、これらに限定されるものではないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒトが挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0031】
本発明の方法に関する用語「投与」は、本発明のコンジュゲート、又はその形成物、組成物若しくは薬剤を使用することにより、本明細書に記載しているような症候群、障害又は疾患を、治療学的又は予防学的に予防、処置又は軽減するための方法を意味する。このような方法は、有効量の当該コンジュゲート、コンジュゲートの形成物、組成物若しくは薬剤を、治療過程中の異なる時点で、又は併用形式で同時に、投与することを含む。本発明の方法は、既知の治療的処置レジメンを全て包含するものとして理解されるものである。
【0032】
用語「有効量」は、研究者、獣医、医師、又はその他の臨床医が探求している、組織系、動物又はヒトにおいて生物学的又は医学的反応(治療される症候群、障害又は疾患、あるいは、治療される症候群、障害又は疾患の症状を、予防する、治療する又は寛解させることを含む)を引き出す活性コンジュゲート又は薬剤の量を意味する。
【0033】
本明細書で使用されるとき、用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む生成物、並びに、直接的又は間接的に特定の成分の特定の量の組み合わせから生じる任意の生成物を包含するものとする。
【0034】
本明細書で使用されるとき、用語「結合された」は、2つ以上の物体を合わせて接合又は接続することを指す。化学化合物又は生物学的化合物を指す場合、結合とは、2つ以上の化学化合物又は生物学的化合物間の共有結合を指すことができる。非限定的な例として、本発明の抗体は、所望のペプチドと結合して、抗体結合ペプチドを形成することができる。抗体結合ペプチドは、抗体をペプチドにコンジュゲートするように設計された特定の化学反応によって形成することができる。特定の実施形態では、本発明の抗体は、リンカーを介して本発明のペプチドと共有結合することができる。リンカーは、例えば、最初に抗体又はペプチドに共有結合され、次いでペプチド又は抗体に共有結合され得る。
【0035】
本明細書で使用されるとき、用語「リンカー」は、ペプチドを抗体に共有結合させる共有結合鎖又は原子鎖を含む化学モジュールを指す。リンカーとしては、例えば、ペプチドリンカー、炭化水素リンカー、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、ポリプロピレングリコール(PPG)リンカー、多糖類リンカー、ポリエステルリンカー、PEG及び組み込み複素環からなるハイブリッドリンカー、及び炭化水素鎖を挙げることができるが、これらに限定されない。PEGリンカーは、例えば、2~24個のPEG単位を含むことができる。
【0036】
本明細書で使用されるとき、用語「コンジュゲート」は、薬学的活性部分に共有結合した抗体又はそのフラグメントを指す。「コンジュゲートされた」という用語は、本発明の抗体又はそのフラグメントが、直接的に又はリンカーを介して間接的に、薬学的活性部分(好ましくは治療用ペプチド)に共有結合で連結されている又は共有結合で接続されていることを指す。非限定的な例として、この抗体は、本発明のモノクローナル抗体であってもよく、この薬学的活性部分は、環状PYY、オキシントモジュリンペプチド、又は目的の任意の他の治療用ペプチドなどの、治療用ペプチドであり得る。また、この薬学的活性部分は、非ペプチド有機部分(すなわち、「小分子」)であってもよい。本開示では、本発明の一実施形態による抗体又はその抗原結合フラグメントに関して、語句「抗体又はその抗原結合フラグメントと、それにコンジュゲートされた薬学的活性部分(又は治療用ペプチド)とを含むコンジュゲート」は、薬学的活性部分(又は治療用ペプチド)にコンジュゲートされた「抗体又はその抗原結合フラグメント」と互換的に使用される。
【0037】
本明細書に記載されるペプチド配列は、通常の慣習に従って記載され、ペプチドのN末端領域は左にあり、C末端領域は右にある。アミノ酸の異性体形態は既知であるが、別途明示的に示されていない限り、L型アミノ酸である。
【0038】
抗体
一般的な一態様において、本発明は、非標的化されるように操作されており、かつ薬学的活性部分(例えば治療用ペプチド(例えば、環状PYYペプチド、オキシントモジュリン又は変異体ペプチドなど))を、部位特異的な方法で、化学的にコンジュゲート(すなわち結合)するために使用することができるシステイン残基を含有する新規抗体に関し、これによりこの抗体結合ペプチドは、ペプチド単独と比較して延長/増加した半減期を有する。本明細書で使用されるとき、抗体の文脈における「非標的化」という用語は、インビボで何らかの標的に特異的に結合しない抗体を指す。本明細書で使用されるとき、「標的に特異的に結合する」抗体とは、標的抗原に対し、KDが1×10-7M以下、好ましくは1×10-8M以下、より好ましくは5×10-9M以下、1×10-9M以下、5×10-10M以下、又は1×10-10M以下で結合する抗体を指す。用語「KD」は、解離定数を指し、これはKd対Kaの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。抗体のKD値は、本開示を考慮して当該技術分野における方法を用いて測定することができる。例えば、抗体のKDは、例えばBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによって、又はOctet RED96システムなどのバイオレイヤー干渉法を使用することなどによって、表面プラズモン共鳴を使用することによって測定することができる。抗体のKDの値が小さいほど、抗体が標的抗原に結合する親和性が高い。
【0039】
モノクローナル抗体(完全又はそのフラグメント)は、半減期延長部分として使用することができる。モノクローナル抗体は、インビボでの使用に利用され、特徴付けが行われている、十分に研究されているタンパク質であり、したがって、インビボでの長期化した半減期を実現するメカニズムと、インビボでの除去のためのメカニズムは、よく理解されている。更に、モノクローナル抗体の2つの「アーム」の空間的分離及び提示は、治療部分(すなわち、治療用ペプチド)の有効な二価性提供に有利であり得る。毒素又は他の小分子薬物がモノクローナル抗体に化学的に連結されている治療薬が開発されているが、典型的には、特定の抗原に結合し、抗体-薬物コンジュゲートを対象の組織/細胞(これは抗原を優先的に発現している)に標的化するモノクローナル抗体を利用し、典型的には、この薬物/小分子は、抗体の抗原結合に影響を及ぼさない様式で抗体に結合される。
【0040】
治療用ペプチド-mAbコンジュゲートについては、半減期延長モノクローナル抗体による抗原特異的結合は望ましくない。このため、何らかの標的に特異的に結合することが期待されない重鎖(HC)及び軽鎖(LC)可変(V)ドメイン対が、本発明の結合可能な非標的化モノクローナル抗体を調製するために使用される。結合可能な非標的化モノクローナル抗体を得るためには、選択された非標的化抗体の相補性決定領域(CDR)のうちの1つに、システイン残基を操作して組み入れる。薬学的活性部分(例えば、治療用ペプチド/化合物)は、適切な化学的部分を含有し、これにより、薬学的活性部分と、非標的化モノクローナル抗体の操作されたシステイン残基とのコンジュゲートを可能にすることができる。本発明の一実施形態によるペプチド-モノクローナル抗体の一般的なコンジュゲート戦略を
図1に示す。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、広義の意味を有し、非ヒト(例えばマウス、ラット)モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、ヒト適合化されたモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、及びキメラモノクローナル抗体、抗体フラグメント、二重特異性又は多重特異性抗体、二量体抗体、四量体抗体、又は多量体抗体、並びに一本鎖抗体を包含する。
【0042】
いずれの脊椎動物種の抗体軽鎖も、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2つの明確に異なるタイプ、すなわちカッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てることができる。したがって、本発明の抗体は、κ又はλ軽鎖定常ドメインを含有することができる。特定の実施形態によれば、本発明の抗体は、例えば、マウス又はヒト抗体由来の重鎖及び/又は軽鎖定常領域を含む。重鎖及び軽鎖定常ドメインに加えて、抗体は、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域からなる抗原結合領域を含み、これらの領域のそれぞれは3つのドメイン(すなわち、相補性決定領域1~3(CDR1、CDR2、及びCDR3))を含む。軽鎖可変領域ドメインは、代替的にLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と称され、重鎖可変領域ドメインは、代替的にHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と称される。
【0043】
免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて5つの主なクラス、即ち、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに分類することができる。IgGは、5種類の免疫グロブリンの中で最も安定であり、ヒトにおいて約23日間の血清半減期を有する。IgA及びIgGは、アイソタイプIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4に更に下位分類される。4つのIgG下位分類のそれぞれは、エフェクター機能として知られる異なる生物学的機能を有する。これらのエフェクター機能は、一般に、Fc受容体(FcγR)との相互作用によって、又はC1qの結合及び補体の固定によって、媒介される。FcγRへの結合は、抗体依存性細胞媒介性細胞溶解をもたらし得る一方、補体因子への結合は、補体媒介性細胞溶解をもたらし得る。治療用ペプチドの半減期を延長する能力に利用される本発明の抗体は、エフェクター機能を有さないか又は最小限のエフェクター機能を有するが、FcRnに結合する能力を保持し、この結合は、抗体がインビボ半減期の延長を有する主要な手段であり得る。
【0044】
一実施形態では、本発明は、完全ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を有する軽鎖可変領域と、配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR3を除く完全ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を有する重鎖可変領域とを含む、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、インビボで任意のヒト抗原に特異的に結合しない。特定の実施形態では、本発明は、完全ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を有する軽鎖可変領域と、配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR3を除く完全ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を有する重鎖可変領域とを含む、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントに関し、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、インビボで任意のヒト抗原に特異的に結合せず、この単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、薬学的活性部分(例えば、環状PYYペプチド、オキシントモジュリンペプチド、及び/又は本発明の治療用ペプチド)に結合される。
【0045】
本明細書で使用されるとき、用語「抗原結合フラグメント」は、例えば、二重特異性抗体、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化二重特異性抗体(ds二重特異性抗体)、単鎖抗体分子(scFv)、単一ドメイン抗体(sdab)、scFv二量体(二価二重特異性抗体)、1つ又は2つ以上のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗体、ラクダ化(camelized)単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、あるいは、抗原に結合するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体フラグメントなどの、抗体フラグメントを指す。抗原結合フラグメントは、親抗体又は親抗体フラグメントが結合する同じ抗原に結合することができる。特定の実施形態によれば、抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域、及びFdセグメント(すなわち、Fabフラグメントに含まれる重鎖の部分)を含む。他の特定の実施形態によれば、抗原結合フラグメントは、Fab及びF(ab’)を含む。
【0046】
本明細書で使用されるとき、用語「単鎖抗体」は、約15~約20個のアミノ酸の短いペプチドで結合された重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、この分野における従来の単鎖抗体を指す。本明細書で使用されるとき、用語「単一ドメイン抗体」は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含む、又は重鎖可変領域のみを含む、この分野における従来の単一ドメイン抗体を指す。
【0047】
「単離された抗体又は抗体フラグメント」というフレーズは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体又は抗体フラグメントを指す(例えば、ある標的抗原に特異的に結合する単離された抗体は、その標的抗原に特異的に結合しない抗体を実質的に含まない)。更に、単離された抗体又は抗体フラグメントは、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0048】
抗体可変領域は、3つの「抗原結合部位」で隔てられた「フレームワーク」領域からなる。抗原結合部位は、様々な用語を用いて定義されている。(i)相補性決定領域(CDR)、これは、配列特異性に基づいてVH内に3個(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及びVL内に3個(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する(Wu and Kabat,J Exp Med 132:211~50,1970、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)。(ii)「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」、VH内の3つ(H1、H2、H3)及びVL内の3つ(L1、L2、L3)は、Chothia and Lesk(Chothia and Lesk,Mol Biol 196:901~17,1987)により定義される構造において超可変性である、抗体可変ドメインの領域を指す。他の用語には、「IMGT-CDR」(Lefranc et al.,Dev Comparat Immunol 27:55~77,2003)及び「特異性決定残基使用」(SDRU)(Almagro Mol Recognit 17:132~43,2004)が含まれる。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース(http://www_mgt_org)は、抗原結合部位についての標準的番号及び定義を提供する。CDR、HV及びIMGTの記述間の対応については、Lefranc et al.,Dev.Comparat.Immunol.27:55~77,2003に記述されている。
【0049】
「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」は、抗原結合部位として定義されたものを除く、可変領域の残りの配列である。抗原結合部位は上記のような様々な用語によって定義され得るため、フレームワークの正確なアミノ酸配列は抗原結合部位がどのように定義されたかによって決まる。
【0050】
本発明の一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号19、配列番号20及び配列番号21のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域と、それぞれ配列番号16、配列番号17及び配列番号18のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変領域とを含む。
【0051】
別の実施形態では、単離された抗体は、ヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域を更に含む。ヒトIgG4 Fc領域は、他のIgGサブタイプと比較して、FcγR及び補体因子に結合する能力が低下している。好ましくは、Fc領域は、エフェクター機能を排除する置換を有するヒトIgG4 Fc領域を含む。したがって、単離された抗体は、残基233におけるグルタミン酸のプロリンでの置換、残基234におけるフェニルアラニンのアラニン又はバリンでの置換、並びに残基235におけるロイシンのアラニン又はグルタミン酸での置換のうち、1つ又は2つ以上を含む改変ヒトIgG4 Fc領域を有するFc領域を更に含む(EU numbering、Kabat、E.A.et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.U.S.Dept.of Health and Human Services、Bethesda、Md.、NIH Publication no.91-3242)。残基297におけるAsnをAlaで置換することによって、IgG4 Fc領域内のN結合型グリコシル化部位を除去することは、残留エフェクター活性が排除されることを確実にするもう一つの方法である。
【0052】
好ましくは、本発明の抗体は、ジスルフィド結合及び様々な非共有相互作用によって一緒に結合された二量体として存在する。したがって、本発明の抗体に有用なFc部分は、位置228(EU番号)におけるセリンからプロリンへなどの置換を含有するヒトIgG4 Fc領域であり得、これは重鎖二量体形成を安定させ、半IgG4 Fc鎖の形成を防止する。
【0053】
別の一実施形態では、重鎖のC末端Lys残基は、組み換えにより産生されたモノクローナル抗体に一般的に見られるように、除去される。
【0054】
「ヒト抗体」とは、フレームワーク及び抗原結合部位の両方がヒト起源の配列に由来する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト起源の配列に由来する。
【0055】
ヒト抗体は、抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合のヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域又は軽鎖可変領域を含む。そのような系は、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及び本明細書に記載されるヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するマウスなど、トランスジェニックの非ヒト動物を含む。「ヒト抗体」は、例えば天然に存在する体細胞突然変異、又はフレームワーク若しくは抗原結合部位への意図的な置換の導入により、ヒト生殖系列又は再編成された免疫グロブリン配列と比較した場合に、アミノ酸の相違を含み得る。典型的には、ヒト抗体は、アミノ酸配列において、ヒト生殖系列又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である。一部の場合では、「ヒト抗体」は、例えばKnappikら(J Mol Biol 296:57~86、2000年)に記載されるヒトフレームワーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワーク配列、又は例えばShiら(J Mol Biol 397:385~96、2010年及び国際公開第2009/085462号)に記載される、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含有し得る。抗原結合部位が非ヒト種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0056】
本発明の実施形態による単離された抗体は、合成であり得る。この抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来するが、ファージ提示組み込み合成CDR及び/若しくは合成フレームワークなどの系を用いて生成されることができ、又は抗体特性を改善するためにインビトロ突然変異誘発を受けることができ、インビボのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しない抗体をもたらす。
【0057】
本明細書で使用されるとき、用語「組換え抗体」は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニック若しくは染色体導入動物(例えばマウス)又はそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体、並びにヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライスすることを伴う任意の他の手段により調製、発現、作製、又は単離された抗体、あるいはFabアーム交換を用いてインビトロで生成される抗体など、組換え手段により調製、発現、作製、又は単離される全ての抗体を含む。
【0058】
本明細書で使用されるとき、用語「モノクローナル抗体」は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示し、又は二重特異性モノクローナル抗体の場合には、2つの別個のエピトープに対する二重結合特異性を示す。本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ技術、単一リンパ球遺伝子クローニング技術、又は組換えDNA法によって作製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニック非ヒト動物(例えば、トランスジェニックマウス又はラット)から得られたB細胞を含む、ハイブリドーマによって産生することができる。
【0059】
特定の実施形態では、用語「mAb」は、モノクローナル抗体を指す。一実施形態では、mAbは、配列番号12を含む重鎖可変領域(VH)配列と、配列番号14を含む軽鎖可変領域(VL)配列とを有する。特定の実施形態では、mAbは、配列番号13を含む重鎖(HC)配列と、配列番号15を含む軽鎖(LC)配列とを有する完全ヒトモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、配列番号13の位置446におけるリジン残基は、任意選択的に欠落している。
【0060】
本明細書で使用されるとき、用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つ以上の種に由来する抗体を指す。軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、多くの場合、所望の特異性、親和性、及び能力を有する哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)の1種に由来する抗体の可変領域に相当し、その種における免疫反応の誘発を避けるために、その定常領域は、別の種の哺乳動物(例えば、ヒト)に由来する抗体の配列に対応している。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「多重特異性抗体」は、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む抗体を指し、この複数のうち第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第1のエピトープに対する結合特異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を欠く生殖細胞系列配列を含み、この複数のうち第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第2のエピトープに対する結合特異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を欠く生殖系列配列を含み、この第1及び/又は第2の免疫グロブリン可変ドメインは、任意選択的に、コンジュゲートされた薬学的活性部分(例えば、治療用ペプチド)を含む。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは、同じ抗原上、例えば、同じタンパク質(又は多量体タンパク質のサブユニット)上にある。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは、重複しているか、又は実質的に重複している。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは、重複していないか、又は実質的に重複していない。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは、異なる抗原上、例えば、異なるタンパク質(又は多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。一実施形態では、第1及び第2の免疫グロブリン可変ドメインは、同一のコンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第1及び第2の免疫グロブリン可変ドメインは、異なる薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第1の免疫グロブリン可変ドメインのみが、コンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第2の免疫グロブリン可変ドメインのみが、コンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、第3、第4、又は第5の免疫グロブリン可変ドメインを含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体分子、三重特異性抗体、又は四重特異性抗体分子である。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「二重特異性抗体」は、2つ以下のエピトープ若しくは2つ以下の抗原に結合する、及び/又は2つのコンジュゲートされた薬学的活性部分(例えば、同じ又は異なる薬学的活性部分)を含む、多重特異性抗体を指す。二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を欠く生殖細胞系列配列を含む、第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列と、第2のエピトープに対する結合特異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を欠く生殖系列配列を含む、第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列とによって特徴付けられ、この第1及び/又は第2の免疫グロブリン可変ドメインは、任意選択的に、コンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは、同じ抗原上、例えば、同じタンパク質(又は多量体タンパク質のサブユニット)上にある。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは、重複しているか、又は実質的に重複している。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは、異なる抗原上、例えば、異なるタンパク質(又は多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。一実施形態では、第1及び第2の免疫グロブリン可変ドメインは、同一のコンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第1及び第2の免疫グロブリン可変ドメインは、異なる薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第1の免疫グロブリン可変ドメインのみが、コンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第2の免疫グロブリン可変ドメインのみが、コンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、二重特異性抗体は、第1の重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列(これらは第1のエピトープに対する結合特異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を欠く生殖細胞系列配列を含む)と、第2の重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列(これらは第2のエピトープに対する結合特異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を欠く生殖細胞系列配列を含む)とを含み、この第1及び/又は第2の重鎖可変ドメインは、任意選択的に、コンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第1及び第2の重鎖可変ドメインは、同一のコンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第1及び第2の重鎖可変ドメインは、異なるコンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第1の重鎖可変ドメインのみが、コンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第2の重鎖可変ドメインのみが、コンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。
【0063】
本明細書で使用されるとき、「完全長の抗体」は、2本の完全長の抗体重鎖と2本の完全長の抗体軽鎖とを有する抗体を指す。完全長の抗体重鎖(HC)は、重鎖可変領域(VH)及び定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)からなる。完全長の抗体軽鎖(LC)は、軽鎖可変領域(VL)及び定常ドメイン(CL)からなる。完全長の抗体は、一方又は両方の重鎖のいずれかにおいて、C末端リジン(K)を欠いていてもよい。
【0064】
「Fabアーム」又は「半分子」という用語は、一対の重鎖-軽鎖を意味する。
【0065】
完全長二重特異性抗体は、例えば、インビトロでの無細胞環境において又は共発現を使用して、異なる特異性を有する2つの抗体半分子のヘテロ二量体形成に好都合になるように各半分子における重鎖CH3界面に置換を導入することによって、2つの一特異性二価抗体間でのFabアーム交換(又は半分子交換)を使用して生成され得る。Fabアーム交換反応は、ジスルフィド結合異性化反応及びCH3ドメインの解離-会合の結果である。親単一特異性抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は減少する。親単一特異性抗体のうち1つについて生じる遊離システインは、第2の親単一特異性抗体分子のシステイン残基と重鎖内ジスルフィド結合を形成し、同時に、親抗体のCH3ドメインは、解離-会合により開放及び再形成する。FabアームのCH3ドメインは、ホモ二量体形成より好ましいヘテロ二量体形成をするよう操作されてもよい。得られた生成物は、それぞれ異なるエピトープに結合し得る、2つのFabアーム又は半分子を有する二重特異性抗体である。
【0066】
本明細書で抗体に関して使用されるとき、「ホモ二量体形成」は、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を指す。本明細書で抗体に関して使用されるとき、「ホモ二量体」は、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を指す。
【0067】
本明細書で抗体に関して使用されるとき、「ヘテロ二量体形成」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を指す。本明細書で抗体に関して使用されるとき、「ヘテロ二量体」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を指す。
【0068】
「ノブインホール(knob-in-hole)」戦略(例えば、国際公開第2006/028936号を参照のこと)を使用して、完全長の二重特異性抗体を生成することができる。簡潔に、ヒトIgGにおけるCH3ドメインの界面を形成する選択されたアミノ酸は、ヘテロ二量体形成を促進するために、CH3ドメイン相互作用に影響を及ぼす位置において変異され得る。小さな側鎖を有するアミノ酸(ホール)が、第1の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入され、大きな側鎖を有するアミノ酸(ノブ)が、第2の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入される。2つの抗体の共発現後に、ヘテロ二量体が、「ホール」を有する重鎖と「ノブ」を有する重鎖との優先的な相互作用の結果として形成される。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3置換の対は、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける改変位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける改変位置として表現)。
【0069】
他の戦略、例えば、あるCH3表面における正に荷電した残基及び第2のCH3表面における負に荷電した残基を置換することによる静電的相互作用を使用する重鎖ヘテロ二量体化の促進が、米国特許出願公開第2010/0015133号、同第2009/0182127号、同第2010/028637号、又は同第2011/0123532号に記載されたように使用されてもよい。他の戦略では、ヘテロ二量体化は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は同第2013/0195849号に記載されているように、以下の置換:L351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394W(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける改変位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける改変位置として表す)により促進することができる。
【0070】
上記された方法に加えて、二重特異性抗体は、国際公開第2011/131746号に記載された方法に従って、インビトロにおいて、無細胞環境下で、2つの単一特異性ホモ二量体抗体のCH3領域中に非対称な変異を導入し、ジスルフィド結合を異性化させる還元条件下において、2つの親単一特異性ホモ二量体抗体から二重特異性ヘテロ二量体抗体を形成することにより生成されてもよい。この方法においては、第1の単一特異性二価抗体及び第2の単一特異性二価抗体は、ヘテロ二量体の安定性を促進する特定の置換をCH3ドメインに有するように遺伝子操作され、これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合を異性化させるのに十分な還元条件下において共にインキュベートされ、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、最適には、非還元条件に戻され得る。使用され得る例示的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L-システイン、及びβ-メルカプトエタノールであり、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度において、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えば、pH7.0又はpH7.4において、少なくとも90分のインキュベートが使用されてもよい。
【0071】
本明細書全体を通して、抗体の定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、特に明示的に指定しない限り、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)に記載されるEUインデックスに従って実施される。
【0072】
コンジュゲート
別の一般的な一態様において、本発明は、薬学的活性部分(例えば合成治療用ペプチド(例えば、環状PYYペプチド、又はオキシントモジュリン変異体ペプチド))に、部位特異的な方法で、共有結合でコンジュゲートした本発明の抗体を含むコンジュゲートに関し、これによりこの抗体結合ペプチドは、ペプチド単独と比較して延長/増加した半減期を有する。このコンジュゲートは、本明細書に開示される疾患又は障害を予防、治療、又は寛解させるために有用である。本発明は更に、医薬組成物、その調製方法、及びその使用方法に関する。
【0073】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、薬学的活性部分にコンジュゲートされることができる少なくとも1つのシステイン残基置換を含むように修飾され、これにより、薬学的活性部分の半減期を延長/増加させることができる。特定の実施形態では、この少なくとも1つのシステイン残基置換は、抗体の相補性決定領域に含まれる。特定の実施形態では、この少なくとも1つのシステイン残基置換は、重鎖相補性決定領域(HCDR)にある。特定の実施形態では、この少なくとも1つのシステイン残基置換は、HCDR3にあり、このHCDR3は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、配列番号18のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む抗体は、薬学的活性部分にコンジュゲートされることができる少なくとも1つの追加のシステイン置換を有する。
【0074】
特定の実施形態では、この薬学的活性部分は、リンカーを含み得る。リンカーは、薬学的活性部分への抗体のコンジュゲートを可能にするように化学的に修飾され得る。リンカーとしては、例えば、ペプチドリンカー、炭化水素リンカー、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、ポリプロピレングリコール(PPG)リンカー、多糖類リンカー、ポリエステルリンカー、PEG及び組み込み複素環からなるハイブリッドリンカー、及び炭化水素鎖を挙げることができるが、これらに限定されない。PEGリンカーは、例えば、2~24個のPEG単位を含むことができる。
【0075】
特定の実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、対象とする1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの薬学的活性部分(例えば、治療用ペプチド)にコンジュゲートされる。好ましい実施形態では、非標的化モノクローナル抗体は、対象とする2つの薬学的活性部分にコンジュゲートされる。対象とする少なくとも2つの薬学的活性部分にモノクローナル抗体がコンジュゲートされる特定の実施形態では、この対象とする薬学的活性部分は、同じ薬学的活性部分であってもよく、又は異なる薬学的活性部分であってもよい。
【0076】
本発明の抗体を本発明の薬学的活性部分とコンジュゲートさせる方法は、当該技術分野において既知である。簡潔に述べると、本発明の抗体を、還元剤(例えば、TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)を用いて還元し、精製し(例えば、タンパク質A吸着又はゲル濾過によって)、薬学的活性部分とコンジュゲートさせることができる(例えば、コンジュゲートを可能にする条件下で凍結乾燥ペプチドを還元抗体に提供することによって)。コンジュゲート反応後、このコンジュゲートは、イオン交換クロマトグラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって、タンパク質A吸着の最終精製工程により精製することができる。特定の実施形態では、本発明の抗体は、精製してから、HIC法を利用して還元することができる。コンジュゲート方法のより詳細な説明については、例えば、実施例3及び7、並びにDennler et al.,Antibodies 4:197~224(2015)を参照されたい。
【0077】
本明細書でコンジュゲートに関して使用されるとき、「ホモ二量体形成」は、2つの同一の薬学的活性部分と抗体との相互作用を指す。本明細書でコンジュゲートに関して使用されるとき、「ホモ二量体」は、2つの同一の薬学的活性部分に結合された抗体を指す。
【0078】
本明細書でコンジュゲートに関して使用されるとき、「ヘテロ二量体形成」は、2つの異なる薬学的活性部分と抗体との相互作用を指す。本明細書でコンジュゲートに関して使用されるとき、「ヘテロ二量体」は、2つの異なる薬学的活性部分に結合された抗体を指す。
【0079】
環状PYYペプチド
PYY3~36は、Y2受容体のアゴニストとして作用し食物摂取を阻害する、遠位腸内のL細胞によって分泌される内因性ホルモンである。食欲及び食物摂取の制御における役割、並びに哺乳動物の胃腸管におけるその抗分泌性及び吸収促進効果の役割を考慮すると、PYY3~36は、肥満及び関連する病態、並びに数多くの胃腸障害において有効であり得る。しかしながら、治療剤としてのPYY3~36自体の治療的有用性は、その迅速な代謝及び短い循環半減期によって制限される。したがって、本発明の抗体は、PYY3~36、好ましくは修飾PYY3~36の担体として使用することができ、PYY3~36ペプチドの半減期を延長し、インビボでのペプチドの代謝を低減する。
【0080】
本発明の特定の実施形態では、修飾されたPYY3~36ペプチドは、環状PYYペプチドである。用語「環状PYYペプチド」、「環状PYY3~36類似体」、及び「環状PYY3~36ペプチド類似体」は、互換的に使用することができる。コンジュゲートに使用することができる環状PYYペプチドの例は、米国特許仮出願第62/413,613号(2016年10月27日出願)、及び米国特許出願第______号「Cyclic peptide tyrosine tyrosine compounds as modulators of neuropeptide receptors」(本出願と同日に出願、代理人整理番号PRD3411)に記載されており、これら両方の出願の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
本発明の抗体と環状PYYペプチドとを含むコンジュゲートの例は、米国特許仮出願第62/413,586号(2016年10月27日出願)、及び米国特許出願第______号「Antibody coupled cyclic peptide tyrosine tyrosine compounds as modulators of neuropeptide Y receptors」(本出願と同日に出願、代理人整理番号PRD3436)に記載されており、これら両方の出願の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、環状PYYペプチドでは、環のN末端アミノ酸残基が、そのα-アミノ官能基を介して連結基に結合し、これが更に、NTSC-PYYペプチドの位置31におけるアミノ酸の側鎖残基に結合する。リジン残基は、更なる誘導体化のための従来の官能基ハンドルを提供するために、hPYY3~36配列の様々な位置に組み込むことができる。リジン残基は、直接的又は間接的に、モノクローナル抗体に結合されるように修飾され得る。モノクローナル抗体への間接的結合において、リジン残基は、環状PYYペプチドがモノクローナル抗体に結合することを可能にするリンカーを含むように修飾され得る。当業者には、関連するオルソロガスもそのように効果的に使用することができ、これが本明細書において想到されることが理解されよう。
【0082】
オキシントモジュリンペプチド
オキシントモジュリン(OXM)は、腸内の腸内分泌L細胞から分泌される37アミノ酸長ペプチドである。GLP-1受容体(GLP1R)及びグルカゴン受容体(GCGR)におけるアゴニスト活性を介して、OXMは、β-細胞機能を強化し、食物摂取を低減し、エネルギー消費を強化する。これらの相補的機構を介して、OXM媒介型の体重減量は、現在市販されているGLP1Rアゴニストと比較して優れている可能性がある。OXMは、血漿中のコレステロール及びトリグリセリドも低減することができる。ヒトにおけるOXMの半減期は、非常に短く、数分の単位である(Schjoldager et al.,Eur.J.Clin.Invest.18(5):499~503(1988))。したがって、本発明の一実施形態は、オキシントモジュリンに共有結合した本発明の抗体を含むコンジュゲートに関し、これによって、オキシントモジュリンの二重アゴニスト特性と、1週間に1回の投与を達成するのに十分な延長された半減期とを提供する。
【0083】
ペプチド半減期を延長することは、タンパク質分解に対する感受性に対するOXMペプチドの安定化、及び、血漿クリアランスの低減によって達成される。例えば、DPP4によるタンパク質分解は、位置2のセリンをアミノイソ酪酸(Aib)に置き換えることによって軽減された。ペプチドの螺旋状トポロジーは、Q20R~S16E及びQ24Eの分岐塩架橋を導入することによって安定化され、メチオニン27をロイシンに置換することにより、潜在的な酸化性が軽減された。ペプチドの循環寿命は、モノクローナル抗体(mAb)の共有結合によって増加した。このような抗体-薬物コンジュゲートは、それらの大きさのおかげで(糸球体濾過を低減し得る)、及び、胎児性Fc受容体を介した再利用によって、延長された血漿半減期を呈することができる。短いオリゴエチレングリコールスペーサーをmAbとペプチドとの間に介在させて、ペプチドがGCGR及びGLP1Rへと、妨げられずにアクセスできるよう確保した。
【0084】
本発明の実施形態によると、本発明のオキシントモジュリンコンジュゲートは、4つの特性を備える。(A)二重アゴニスト作用:このオキシントモジュリンコンジュゲートは、GLP-1及びグルカゴン受容体において二重アゴニスト作用を有する。(B)受容体バランス:GLP1Rへの過剰なバイアスは、GCGR標的係合前に、曝露増大時にGLP-1媒介胃腸有害事象が発生するコンジュゲート体をもたらす可能性があり、GCGRへの過剰なバイアスは、血糖効果を軽減する可能性があるが、このオキシントモジュリンコンジュゲートは、GLP1R又はGCGRのいずれにも過剰な効力バイアスを有さない。(C)生体分布:このオキシントモジュリンコンジュゲートは、同様の曝露での、末梢GCGRと、中心のエネルギー摂取調節GLP1Rの、標的係合を達成する目的で、GLP-1受容体効力(オキシントモジュリン単独と比較して)に対する適度なバイアスを有する。(D)週1回の投与:このオキシントモジュリンコンジュゲートは、毎週1回、それを必要とする対象に投与可能であることによって、競争力を有する。
【0085】
他の治療用ペプチド
本明細書では、本明細書に記載されるモノクローナル抗体プラットフォームにコンジュゲートすることができる他のペプチドを含むコンジュゲートも提供される。このペプチドは、例えば、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、エキセンジン(エキセナチド)、アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群から選択することができる。
【0086】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、プログルカゴン遺伝子の組織特異的翻訳後プロセシングに由来する30アミノ酸長ペプチドホルモンである。GLP-1は、食物摂取時に腸内分泌L細胞及び特定のニューロンによって産生及び分泌される。初期生成物GLP-1(1~37)は、アミド化及びタンパク質分解開裂を受けやすく、これにより、2つの切頭された等効力の生物学的活性形態GLP-1(7~36)アミド及びGLP-1(7~37)を生じる。内因性GLP-1は、主にジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4又はDPP-IV)によって、また中性エンドペプチダーゼ24.11(NEP 24.11)及び腎クリアランスを介して、複数の経路で急速に分解され、その結果、半減期は約2分間である。GLP-1ベースの治療は、体重減少及び低血糖リスク低下に関連しており、これらは2型糖尿病の治療において重要である。
【0087】
エキセンジン(エキセナチド)は、2型真性糖尿病(T2DM)の治療のために承認されている、インクレチン模倣薬群に属するGLP-1アゴニストである。エキセナチドは、エキセンジン-4の合成バージョンである39アミノ酸長ペプチドホルモンであり、グルコース調節効果を有するインスリン分泌促進物質である。エキセンジン-4は、広範囲の相同性と機能を哺乳類GLP-1と共有するが、DPP-4(DPP-IV)による分解に抵抗することにより、より長い薬理学的半減期を可能にするため、治療的利点を有している。エキセンジン-4のこの生物学的特性が、T2DMの治療に使用するための検討につながった。
【0088】
アミリン(膵島アミロイドポリペプチド(IAPP))は、膵臓β細胞からインスリンと共分泌される37アミノ酸長ペプチドホルモンである。アミリンは、胃内容物排出を緩徐化し、満腹感を促進することによって、血糖調節の役割を果たす。アミリン(IAPP)は、89アミノ酸長ペプチドからプロセシングされる。膵島アミロイドポリペプチド前駆体(proIAPP)は、膵臓β細胞中で、89アミノ酸長ペプチドから、22アミノ酸長シグナルペプチドが切断された後、67アミノ酸長ペプチドとして産生される。proIAPPのプロセシングに障害があると、アミリン(IAPP)の産生の欠如が血糖制御の欠如をもたらし得るため、2型糖尿病をもたらす条件につながり得ると考えられる。プラムリンタイドは、アミリン模倣薬であり、少なくともヒトアミリンと同程度の効力を有する。これは、37アミノ酸長ポリペプチドであり、位置25(アラニン)、位置28(セリン)、及び位置29(セリン)でアミノ酸をプロリンに置換することによって、ヒトアミリンとはアミノ酸配列が異なっている。このプロリンは、ラットのアミリンに見られる自然発生的な変動である。これらの置換の結果として、プラムリンタイドは、可溶性、非接着性、及び非凝集性となり、これによって、天然のヒトアミリンの数多くの物理化学的な欠点を克服する(Janes et al.,Diabetes 45(Suppl 2):235A (1996);Young et al.,Drug Dev.Res.37:231~48(1996b))。
【0089】
α-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)は、メラノコルチン類の内因性ペプチドホルモン及び神経ペプチドである。α-MSHは、哺乳動物において毛髪及び皮膚の色素沈着に関与するプロセスであるメラニン形成刺激において最も重要なメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)である。α-MSHはまた、摂食行動、エネルギーホメオスタシス、性的活動、並びに虚血及び再灌流障害からの保護においても役割を果たす。
【0090】
コカイン及びアンフェタミン調節転写産物(CART)は、ヒトにおけるCARTPT遺伝子によりコードされる神経ペプチドタンパク質である。CARTペプチド、特にCART(55~102)は、CARTペプチドがいくつかの視床下部食欲回路と相互作用するため、エネルギーホメオスタシスの調節において重要な機能を有すると思われる。CART発現は、レプチン、コレシストキニン、及びグレリンを含む、食欲調節に関与する末梢ペプチドホルモンによって調節される。CART及びコレシストキニンは、食欲調節に対する相乗効果を有する。CARTペプチドは、エタノール離脱によって誘発される不安様挙動の一因となり;自発運動、条件付け場所嗜好性、及び精神刺激薬のコカイン自己投与効果を調節し;食物摂取を抑制し;恐怖及び刺激行動に関与すると考えられている。視床下部におけるCART低活性は、過食症及び体重増加に関連し、CARTは、自然な報酬プロセスを調節するオピオイドの中脳辺縁系ドーパミン回路において役割を果たすと考えられる。
【0091】
神経ペプチドY(NPY)は、例えば、摂食行動、大脳皮質神経活動、心臓活動、及び情動調節の制御を含む、身体における多数の役割を有する。NPYはまた、肥満、アルコール依存症、及びうつ病を含むいくつかのヒト疾患にも関与している。更に、抗NPY抗体(NPY及びNPY受容体拮抗薬に対するアンチセンス・オリゴデオキシリヌクレオチド)を用いたNPYの中枢作用の遮断は、エネルギー欠乏動物において、食物摂取の減少をもたらす。具体的には、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)及び神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)は、異なる摂食相を刺激することが示されている(Br J Pharmacol.2003 Aug;139(8):1433~40)。したがって、NPY5及びNPY1拮抗薬は、肥満及び他の関連する代謝疾患の治療において有効であり得る。
【0092】
ニューロテンシンは、黄体形成ホルモン及びプロラクチン放出の調節に関与し、ドーパミン作動系との顕著な相互作用を有する、13アミノ酸長神経ペプチドである。ニューロテンシンは、中枢神経系全体に分布し、最も高いレベルは視床下部、扁桃体、及び側坐核にある。ニューロテンシンは、鎮痛、低体温、増加した運動活動を含む様々な効果を誘発することができ、ドーパミン経路の調節に関与する。
【0093】
神経ペプチドB(NPB)は、短い生物学的活性ペプチドであり、その前駆体はNBP遺伝子によりコードされる。NPBは、神経ペプチドB/W受容体1及び2(NPBWR1及びNPBWR2)と呼ばれる2つのGタンパク質結合受容体を介して作用することができる。神経ペプチドBは、摂食、神経内分泌系、記憶、学習、及び求心性疼痛経路の調節に関連すると考えられている。
【0094】
神経ペプチドW(NPW)は、23個(NPW23)又は30個(NPW30)のアミノ酸からなる2つの形態で存在する。これらの神経ペプチドは、2つのGタンパク質結合受容体であるNPBWR1(別名GPR7)及びNPBWR2(別名GPR8)に結合し、これらを介して作用し得る。NPWは、食物摂取及び体重を抑制し、熱産生及び体温の両方を増加させることが示されており、このことは、NPWが内因性異化作用信号伝達分子として機能することを示唆している。
【0095】
グレリン(別名イエノモレリン(INN))は、胃腸管内のグレリン作動性細胞によって産生されるペプチドホルモンであり、中枢神経系における神経ペプチドとして機能する。グレリンは、食欲の調節、エネルギーの分配及び使用速度の調節、ドーパミンニューロンにおける報酬知覚の調節において役割を果たす。グレリンは、GHRL遺伝子によりコードされ、プログレリン前駆体の開裂により産生されると考えられ、このプログレリン前駆体が開裂してプログレリンを生成し、これが更に開裂して28アミノ酸長のグレリンが産生される。他の内因性ペプチドとは異なり、グレリンは、血液脳関門を横断することができ、このことは、グレリンを外因的に投与する、臨床面でのユニークな可能性をもたらす。
【0096】
ボンベシン様受容体3(BRS3)は、既知の天然起源のボンベシン関連ペプチドとのみ低い親和性で相互作用するGタンパク質結合受容体であり、高親和性リガンドを有さないため、BRS3はオーファン受容体として分類される。
【0097】
ガラニンは、GAL遺伝子によりコードされる神経ペプチドである。ガラニンは、ヒト並びに他の動物の脳、脊髄、及び腸において広く発現されている。ガラニンの機能は、まだ完全に分類されていない。しかしながら、ガラニンは、ニューロンにおける作用電位の調節及び阻害に主に関与している。ガラニンは、侵害受容、覚醒及び睡眠調節、認知、摂食、気分調節、及び血圧の調節が挙げられるがこれらに限定されない、数多くの生物学的に多様な機能に関与している。ガラニンは、多くの場合、アセチルコリン、セロトニン、及びノルエピネフリンなどの古典的な神経伝達物質と共局在し、また神経ペプチドY、物質P、及び血管活性腸ペプチドなどの神経調節物質と共局在する。
【0098】
コレシストキニン(CCK)は、脂肪及びタンパク質の消化を刺激する役目をする胃腸系のペプチドホルモンである。CCKは、小腸内の腸内分泌細胞によって合成及び分泌され、その存在により、消化酵素及び胆汁を膵臓及び胆嚢から放出させる。CCKは、消化、満腹感、及び不安において役割を果たす。
【0099】
オレキシン(別名ヒポクレチン)は、覚醒、目覚め、及び食欲を調節する神経ペプチドである。オレキシンA及びB(ヒポクレチン-1及び-2)の2種類が存在し、それぞれ長さが33アミノ酸長及び28アミノ酸長である。オレキシン系は、主に食物摂取の刺激に関与すると考えられ、上記の役割に加えて、オレキシンは、エネルギー消費の調節と内臓機能の調節を行う。
【0100】
メラニン濃縮ホルモン(MCH)は、環状19アミノ酸長の食欲促進視床下部ペプチドであり、これは、摂食行動、気分、睡眠覚醒サイクル、及びエネルギーバランスの調節に関与すると考えられている。MCH発現ニューロンは、視床下部外側野及び不確帯内に位置し、このような制限された分布にもかかわらず、MCHニューロンは脳全体に広く広がっている。
【0101】
オキシトシンは、通常は視床下部の室傍核によって産生され、下垂体後葉によって放出されるペプチドホルモン及び神経ペプチドである。オキシトシンは、社会的結合、性的生殖、並びに出産時及び出産後に役割を果たすと考えられている。オキシトシン受容体は、マグネシウム及びコレステロールを必要とするGタンパク質結合受容体であり、Gタンパク質結合受容体のロドプシン型(クラスI)群に属する。
【0102】
40アミノ酸長ペプチドであるヒトストレスコピン(h-SCP)は、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)ペプチド群に属する。CRHペプチド群の生物学的作用は、2つの7回膜貫通型Gタンパク質結合受容体、CRH受容体1型(CRHR1)及びCRH受容体2型(CRHR2)によって顕現される。これらの受容体は高い配列相同性を有するが、CRHペプチド群の中の異なる要素は、相対的な結合親和力、受容体活性化の度合、及びこれら2つの受容体の選択性において顕著な違いを示す。CRH群の多くのものとは異なり、h-SCPはCRHR2に対してより高い選択性を発現し、生理学的ストレスの開始及び維持を減弱させるプロセスを補助するメディエーターとして機能する。生理学的ストレスにおける明らかな役割に加え、h-SCPは他の数多くの生理学的作用を顕現させることが報告されている。これは、内分泌系、中枢神経系、心臓血管系、肺系、胃腸系、腎臓系、骨格筋系、及び炎症系に影響を及ぼす。CRHR2活性は更に、サルコペニアなどの骨格筋消耗疾患、運動活動、及び食物摂取に関与しており、心臓保護的役割に関与し、気管支弛緩及び抗炎症活性を発現する。更に、ストレスコピン模倣薬は、コルチコトロピン放出ホルモン受容体2活性によって媒介される医学的適応症の治療に有用であることが特定されている(例えば、米国特許出願第20100130424号を参照されたい)。
【0103】
半減期延長部分
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントに加えて、本発明のコンジュゲートは、例えば共有結合相互作用を介して、薬学的活性部分の半減期を延長するための1つ又は2つ以上の他の部分を組み込むことができる。代表的な他の半減期延長部分としては、アルブミン、アルブミン変異体、アルブミン結合タンパク質及び/又はドメイン、トランスフェリン、並びにそのフラグメント及び類似体が挙げられるがこれらに限定されない。本発明のコンジュゲートに組み込むことができる追加の半減期延長部分には、例えば、所望の特性を得るための、PEG5000又はPEG20,000などのポリエチレングリコール(PEG)分子、例えばラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ステアリン酸エステル、アラキジン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレイン酸エステル、アラキドン酸エステル、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸などの異なる鎖長の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ポリリジン、オクタン、炭水化物(デキストラン、セルロース、オリゴ糖又は多糖)が挙げられる。これらの部分は、タンパク質足場コード配列との直接融合体であってもよく、標準的なクローニング及び発現技術によって作製してもよい。あるいは、周知の化学カップリング方法を用いて、組換え技術により及び化学的に産生された本発明のコンジュゲートにその部分を結合させることができる。
【0104】
周知の方法を用いて、システイン残基を分子のC末端に組み入れて、PEG化した基をシステインに結合させることによって、PEG化部分を、例えば、本発明のペプチド分子に付加することができる。
【0105】
更なる部分を組み込んだ本発明のペプチド分子を、いくつかの公知のアッセイによって、官能性について比較することができる。例えば、単独での又は本発明によるコンジュゲート中の、対象とする治療用ペプチドの生物学的又は薬物動態活性を、既知のインビトロ又はインビボアッセイを用いてアッセイし、比較することができる。
【0106】
医薬組成物
別の一般的な態様において、本発明は、本発明のコンジュゲートと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物に関する。本明細書で使用されるとき、用語「医薬組成物」は、薬学的に許容可能な担体と共に本発明のコンジュゲートを含む生成物を意味する。本発明のコンジュゲート及びそれらを含む組成物は、本明細書で言及される治療用途のための薬剤の製造にも有用である。
【0107】
本明細書で使用されるとき、用語「担体」は、あらゆる賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、バッファー、安定剤、可溶化剤、油、脂質、脂質含有小胞、ミクロスフェア、リポソーム封入体、又は医薬製剤で使用するための当該技術分野では周知の他の材料を指す。担体、賦形剤又は希釈剤の特性は、特定の用途の投与経路によって決まる点は理解されよう。本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能な担体」は、本発明に基づく組成物の効果又は本発明に基づく組成物の生物活性を妨げない無毒性材料を指す。特定の実施形態によると、本開示を考慮すると、抗体医薬組成物での使用に適した任意の薬学的に許容可能な担体を、本発明で使用することができる。
【0108】
本発明に使用するための薬学的に許容可能な酸性/アニオン性の塩としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩及びトリエチオジドが挙げられるが、これらに限定されない。また、有機酸又は無機酸としては、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、リン酸、プロピオン酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、シュウ酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サッカリン酸又はトリフルオロ酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
薬学的に許容可能な塩基性/カチオン性の塩としては、アルミニウム、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-プロパン-1,3-ジオール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トロメタン又は「TRIS」としても知られる)、アンモニア、ベンザチン、t-ブチルアミン、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、シクロへキシルアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、リチウム、L-リジン、マグネシウム、メグルミン、N-メチル-D-グルカミン、ピペリジン、カリウム、プロカイン、キニーネ、ナトリウム、トリエタノールアミン、又は亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態では、約0.001mg/mL~約100mg/mL、約0.01mg/mL~約50mg/mL、又は約0.1mg/mL~約25mg/mLの量で本発明のコンジュゲートを含む医薬製剤が提供される。この医薬製剤は、約3.0~約10、例えば約3~約7、又は約5~約9のpHを有し得る。この製剤は更に、緩衝系、防腐剤(複数可)、等張剤(複数可)、キレート剤(複数可)、安定剤(複数可)及び/又は界面活性剤(複数可)からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含み得る。
【0111】
薬学的に許容可能な担体を有する薬学的活性成分の製剤は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(例えば21st edition(2005)及びそれ以降の任意の改訂版)にあるように、当該技術分野において既知である。追加成分の非限定的な例としては、緩衝剤、希釈剤、溶媒、張度調節剤、防腐剤、安定剤、及びキレート剤が挙げられる。1つ又は2つ以上の薬学的に許容可能な担体は、本発明の医薬組成物を配合する際に使用され得る。
【0112】
本発明の一実施形態では、医薬組成物は液体製剤である。液体製剤の好ましい例は、水性製剤、すなわち、水を含む製剤である。液体製剤は、溶液、懸濁液、エマルション、マイクロエマルション、ゲルなどを含み得る。水性製剤は、典型的には、少なくとも50%w/wの水、又は少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は少なくとも95% w/wの水を含む。
【0113】
一実施形態では、医薬組成物は、注射器又は輸液ポンプを介して注入することができる注射用製剤として製剤化され得る。注入は、例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、又は静脈内に送達され得る。
【0114】
別の一実施形態では、医薬組成物は、固体製剤、例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥組成物であり、これはそのまま使用してもよく、又は、医師若しくは患者が使用前に溶媒及び/若しくは希釈剤を添加する。固体剤形としては、圧縮錠剤などの錠剤、及び/又はコーティングされた錠剤、並びにカプセル(例えば、ハード又はソフトゼラチンカプセル)を挙げることができる。薬学的組成物はまた、例えば、サッシェ、糖衣錠、粉末、顆粒、トローチ剤、又は再構成用の粉末の形態であってもよい。
【0115】
剤形は、即時放出(この場合、水溶性若しくは分散性担体を含み得る)であってよく、又は、遅延放出、持続放出、又は変性放出(これらの場合は、胃腸管における剤形の溶解速度を調節する非水溶性ポリマーを含み得る)であってもよい。
【0116】
他の実施形態では、医薬組成物は、経鼻投与、頬内、又は舌下送達され得る。
【0117】
水性製剤のpHは、pH3~pH10の間であり得る。本発明の一実施形態では、製剤のpHは約7.0~約9.5である。本発明の別の一実施形態では、製剤のpHは約3.0~約7.0である。
【0118】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物は緩衝剤を含む。緩衝剤の非限定的な例としては、アルギニン、アスパラギン酸、ビシン、クエン酸塩、リン酸水素二ナトリウム、フマル酸、グリシン、グリシルグリシン、ヒスチジン、リジン、マレイン酸、リンゴ酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、コハク酸塩、酒石酸、トリシン、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、並びにこれらの混合物が挙げられる。緩衝剤は、個々に又は合計で、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的な緩衝剤の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0119】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物は防腐剤を含む。緩衝剤の非限定的な例としては、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブロノポール、ブチル4-ヒドロキシベンゾエート、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロヘキシジン、クロルフェネシン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、エチル4-ヒドロキシベンゾエート、イミド尿素、メチル4-ヒドロキシベンゾエート、フェノール、2-フェノキシエタノール、2-フェニルエタノール、プロピル4-ヒドロキシベンゾエート、デヒドロ酢酸ナトリウム、チメロサール、及びこれらの混合物が挙げられる。防腐剤は、個々に又は合計で、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的な防腐剤の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0120】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物は等張剤を含む。本実施形態の非限定的な例としては、塩(塩化ナトリウムなど)、アミノ酸(グリシン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、及びスレオニンなど)、アルジトール(グリセロール、1,2-プロパンジオールプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,3-ブタンジオールなど)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、並びにこれらの混合物が挙げられる。等張剤の別の例としては、糖が挙げられる。糖の非限定的な例は、単糖類、二糖類、若しくは多糖類、又は水溶性グルカンであり得、例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、ショ糖、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、α-及びβ-HPCD、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。等張剤の別の例は糖アルコールであり、用語「糖アルコール」は、少なくとも1つの-OH基を有するC(4~8)炭化水素として定義される。糖アルコールの非限定的な例としては、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールが挙げられる。本段落に列挙される各等張剤を含む医薬組成物は、本発明の代替実施形態を構成する。等張剤は、個々に又は合計で、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的な等張剤の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0121】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物はキレート剤を含む。キレート剤の非限定的な例としては、クエン酸、アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩、及びこれらの混合物が挙げられる。キレート剤は、個々に又は合計で、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的なキレート剤の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0122】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物は安定剤を含む。安定剤の非限定的な例としては、1つ又は2つ以上の凝集阻害剤、1つ又は2つ以上の酸化阻害剤、1つ又は2つ以上の界面活性剤、及び/又は1つ又は2つ以上のプロテアーゼ阻害剤が挙げられる。
【0123】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物は安定剤を含み、当該安定剤は、カルボキシ/ヒドロキシセルロース及びその誘導体(HPC、HPC-SL、HPC-L及びHPMC)、シクロデキストリン、2-メチルチオエタノール、ポリエチレングリコール(PEG 3350など)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、塩(塩化ナトリウムなど)、硫黄含有物質(モノチオグリセロールなど)、又はチオグリコール酸である。安定剤は、個々に又は合計で、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的な安定剤の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0124】
本発明の更なる実施形態では、医薬組成物は、1つ又は2つ以上の界面活性剤、好ましくは1つの界面活性剤、少なくとも1つの界面活性剤、又は2つの異なる界面活性剤を含む。用語「界面活性剤」は、水溶性(親水性)部分と脂溶性(親油性)部分とからなる任意の分子又はイオンを指す。界面活性剤は、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び/又は双極性イオン界面活性剤からなる群から選択することができる。界面活性剤は、個々に又は合計で、約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的な界面活性剤の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0125】
本発明の更なる実施形態では、医薬組成物は、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、及び/又はベンズアミジン塩酸(HCl)などの1つ又は2つ以上のプロテアーゼ阻害剤を含む。プロテアーゼ阻害剤は、個々に又は合計で、約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的なプロテアーゼ阻害剤の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0126】
本発明の医薬組成物は、組成物の保管中にポリペプチドの凝集体形成を減少させるのに十分な量のアミノ酸塩基を含み得る。用語「アミノ酸塩基」は、1つ又は2つ以上のアミノ酸(メチオニン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニンなど)、又はこれらの類似体を指す。任意のアミノ酸は、その遊離塩基形態又はその塩形態のいずれで存在してもよい。アミノ酸塩基の任意の立体異性体(すなわち、L、D、又はこれらの混合物)が存在してもよい。アミノ酸塩基は、個々に又は他のアミノ酸塩基と組み合わせて、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的なアミノ酸塩基の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0127】
また、本発明のコンジュゲート又はその医薬組成物の治療的有効量が、所望の効果に応じて変動することも当業者に自明である。したがって、最適投与量は、当業者が容易に決定することができ、使用される具体的なコンジュゲート、投与方法、調製物の力価、及び病状の進行度に応じて変動する。加えて、対象の年齢、体重、食事、及び投与時間を含む、治療される具体的な対象に関連する要因は、投与量を適切な治療的濃度に調節する必要性を生じさせるものである。
【0128】
全ての適応に関して、本発明のコンジュゲートは、好ましくは、1日当たり単回又は分割用量で、約1μg~約5mgの用量で、末梢投与される(例えば、単回用量を2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回の小用量に分割することができる)、あるいは投与当たり約0.01μg/kg~約500μg/kg、より好ましくは約0.05μg/kg~約250μg/kg、最も好ましくは約50μg/kg未満の用量で末梢投与される。これらの範囲内の用量は、当然ながら各アゴニストの効力によって変化し、当業者によって容易に決定される。したがって、上記の投与量は平均的な場合の例である。当然ながら、これよりも多いか又は少ない投与量範囲が有効である個々の例もあり得、かかる例も本発明の範囲内である。
【0129】
特定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、約1μg~約5mgの用量、又は約0.01μg/kg~約500μg/kgの用量、より好ましくは約0.05μg/kg~約250μg/kgの用量、最も好ましくは約50μg/kg未満の用量で投与され、これに伴う第2の治療薬(例えばリラグルチド)の用量は、約1μg~約5mgの用量、又は約0.01μg/kg~約500μg/kgの用量、より好ましくは約0.05μg/kg~約250μg/kgの用量、最も好ましくは約50μg/kg未満の用量である。
【0130】
本発明のコンジュゲートの薬学的に許容可能な塩としては、無機又は有機の酸類又は塩基類から形成される、従来の非毒性塩類又は四級アンモニウム塩類が挙げられる。かかる酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、ドデシル硫酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩及び酒石酸塩が挙げられる。塩基性塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミノ塩などの有機塩基との塩、並びにアルギニンなどのアミノ酸との塩が挙げられる。更に、塩基性の窒素含有基は、例えばハロゲン化アルキルによって四級化してもよい。
【0131】
本発明の医薬組成物は、それらの使用目的を実現する任意の手段によって投与することができる。例としては、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、口内又は眼内投与が挙げられる。経口経路により投与してもよい。非経口投与に適する製剤としては、例えば、水溶性の塩、酸性溶液、アルカリ性溶液、デキストロース水溶液、等張炭水化物溶液、及びシクロデキストリン包接錯体などの水溶性形態の活性コンジュゲートの水溶液が挙げられる。
【0132】
本発明はまた、薬学的に許容可能な担体を本発明のコンジュゲートのいずれかと混合することを含む、医薬組成物の製造方法も包含する。加えて、本発明は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容可能な担体を本発明のコンジュゲートのいずれかと混合することによって製造される医薬組成物を包含する。
【0133】
更に、本発明のコンジュゲートは、1つ又は2つ以上の結晶多形又は非晶質結晶形を有してよく、したがって、これらの形態も本発明の範囲に包含されるものとする。加えて、このコンジュゲートは、例えば水(すなわち、水和物等)又は一般的な有機溶媒と溶媒和物を形成してよい。本明細書で使用されるとき、用語「溶媒和物」は、本発明のコンジュゲートと1つ又は2つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、水素結合など、イオン結合及び共有結合の度合いの変化を伴う。特定の場合において、例えば1つ又は2つ以上の溶媒分子が結晶質固体の結晶格子に組み込まれているとき、この溶媒和物は分離することができるようになる。用語「溶媒和物」は、溶液相溶媒和物と、分離可能な溶媒和物の両方を包含するものとする。適切な溶媒和物の非限定的な例としては、エタノラート、メタノラートなどが挙げられる。
【0134】
本発明の範囲には、本発明のコンジュゲートの結晶多形及び溶媒和物が含まれるものとする。ゆえに、本発明の治療方法における用語「投与」には、本発明のコンジュゲート、あるいは具体的に開示されていなくとも、明らかに本発明の範囲内に含まれるであろう多形体又はその溶媒和物を用いて、本明細書に記載の症候群、障害又は疾患を治療、寛解又は予防する手段が含まれる。
【0135】
別の一実施形態では、本発明は、医薬品として使用するための本発明のコンジュゲートに関する。
【0136】
本発明の範囲内には、本発明のコンジュゲートのプロドラッグが含まれる。一般に、かかるプロドラッグは、インビボで目的のコンジュゲートに容易に変換可能な、当該コンジュゲートの機能的誘導体である。したがって、本発明の治療方法における用語「投与」には、本明細書に記載される様々な障害の、具体的に開示されたコンジュゲートによる治療か、又は具体的に開示されていなくとも、患者への投与後にインビボで特定のコンジュゲートに変換される、コンジュゲートによる治療が含まれるものとする。好適なプロドラッグ誘導体の選択及び調製に関する従来の手順は、例えば、「Design of Prodrugs」(Ed.H.Bundgaard、Elsevier,1985)に記載されている。
【0137】
更に、本発明の範囲内で、いずれかの元素、特に、本発明のコンジュゲートに関して述べるときのいずれかの元素は、天然に存在する、又は合成生産された、天然の存在度を有する、又は同位体濃縮形態での、当該元素の全ての同位体及び同位体混合物を含むことになることを意図している。例えば、水素に関しては、その範囲内に1H、2H(D)、及び3H(T)が含まれる。同様に、炭素及び酸素に関しては、それらの範囲内に12C、13C及び14C、並びに16O及び18Oがそれぞれ含まれる。かかる同位体は、放射性同位体であってもよく、又は非放射性同位体であってもよい。本発明の放射性標識コンジュゲートは、3H、11C、18F、122I、123I、125I、131I、75Br、76Br、77Br、及び82Brからなる群から選択される放射性同位体を含んでよい。好ましくは、放射性同位元素は、3H、11C、及び18Fからなる群から選択される。
【0138】
本発明のいくつかのコンジュゲートは、アトロプ異性体として存在してもよい。アトロプ異性体は、一重結合周りの回転が障害されることにより生じる立体異性体であり、回転に対する立体歪みによる干渉が、配座異性体の単離を可能にする程度に十分高いものである。かかる配座異性体及びその混合物は全て、本発明の範囲内に包含されると理解される。
【0139】
本発明によるコンジュゲートが少なくとも1つの立体中心を有する場合、結果としてそれらはエナンチオマー又はジアステレオマーとして存在し得る。かかる異性体及びその混合物は全て、本発明の範囲内に包含されると理解される。
【0140】
本発明によるコンジュゲートの調製プロセスにより立体異性体混合物が生じる場合、これらの異性体は、分取クロマトグラフィーなどの従来法により分離することができる。コンジュゲートはラセミ体として調製されてもよく、又は個々のエナンチオマーをエナンチオ選択的な合成、又は分割のいずれかにより調製することもできる。コンジュゲートは、例えば(-)-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸及び/又は(+)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸のような光学的に活性な酸と共に塩を形成させることでジアステレオマー対を形成した後、分別結晶化させる及び遊離塩基を再生せるなどの標準的方法により、その成分であるエナンチオマーに分割することができる。コンジュゲートはまた、ジアステレオマーのエステル又はアミドを形成した後、クロマトグラフィー分離を行い、キラル補助基を除去することにより、分割することもできる。あるいは、コンジュゲートは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又はSFCを介してキラルカラムを使用して分割されてもよい。場合によっては、1H NMRスペクトルにおいて、複雑なマルチプレット及びピークの一体化をもたらす、1H NMRにより観察可能な、コンジュゲートの回転異性体が存在し得る。
【0141】
本発明のコンジュゲートを調製するための任意のプロセスにおいて、関連する分子のいずれかにおける感受性基又は反応性基を保護することが必要及び/又は望ましい場合がある。これは、Protective Groups in Organic Chemistry,ed.J.F.W.McOmie,Plenum Press,1973及びT.W.Greene & P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,1991(これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記述されているような、従来型の保護基によって達成することができる。保護基は、その後の便利な段階において、当該技術分野で周知の方法を用いて除去することができる。
【0142】
使用方法
本発明はまた、障害、疾患、若しくは病態を、あるいは当該障害、疾患、若しくは病態の1つ若しくは2つ以上の症状を、必要とする対象において、予防、治療、発症遅延、又は寛解させるための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0143】
特定の実施形態では、この障害、疾患、又は病態は、本発明のモノクローナル抗体プラットフォームに結合することができるペプチド又は化合物で治療され得る任意の障害、疾患、又は病態であり得る。特定の実施形態では、この障害、疾患、又は病態は、肥満、1型又は2型糖尿病、メタボリックシンドローム(すなわち、シンドロームX)、インスリン抵抗性、耐糖能異常(例えば、グルコース不耐性)、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、先天性高インスリン症(CHI)による低血糖、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性ネフロパシー、及びその他の心臓血管危険因子(高血圧など)、及び管理されていないコレステロール及び/又は脂質レベルに関連する心臓血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎疾患、及び/又は湿疹からなる群から選択される。
【0144】
特定の実施形態によれば、治療有効量は、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上を達成するのに十分な治療の量を指す:(i)治療される疾患、障害若しくは病態又はそれに関連する症状の重症度を低減又は改善すること、(ii)治療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状の期間を短縮すること、(iii)治療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状の進行を防止すること、(iv)治療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状の退縮を生じること、(v)治療される疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状の進展又は発症を予防すること、(vi)治療される疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状の再発を防止すること、(vii)治療される疾患、障害、若しくは病態、又はそれに関連する症状を有する対象の入院を減少させること、(viii)治療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状を有する対象の入院期間を短縮させること、(ix)治療される疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状を有する対象の生存率を高めること、(xi)治療される対象の疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状を阻害又は軽減すること、及び/又は(xii)別の治療の予防又は治療効果を強化又は改善すること。
【0145】
治療有効量又は用量は、治療される疾患、障害又は病態、投与手段、標的部位、対象の生理学的状態(例えば、年齢、体重、健康状態を含む)、対象がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬剤、及び、治療が予防的なものであるか治療的なものであるか、などの様々な因子によって異なり得る。治療用量は、安全性及び有効性を最適化するために最適に滴定される。
【0146】
本明細書で使用されるとき、用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」はいずれも、疾患、障害又は病態に関連した少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善又は逆転を指すものであり、これは対象において必ずしも認識されるとは限らないが、対象において認識可能な場合もある。用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」はまた、疾患、障害、又は病態の退縮を生じる、その進行を防止する、又は少なくともその進行を遅らせることを指す場合もある。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、疾患、障害、若しくは病態に関連する1つ又は2つ以上の症状の緩和、進展若しくは発症の予防、又はその期間の短縮を指す。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、疾患、障害、又は病態の再発の防止を指す。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、疾患、障害、又は病態を有する対象の生存率の向上を指す。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、対象における疾患、障害、又は病態の消失を指す。
【0147】
一実施形態では、本発明は、必要とする対象において、肥満、又は肥満の任意の1つ若しくは2つ以上の症状を、予防、治療、発症遅延、若しくは寛解させるための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象の体重は、本明細書に記載される本発明のコンジュゲート、医薬組成物、剤形、又は薬剤のうち任意のものを投与する前の対象の体重に比べて、あるいは、本明細書に記載される本発明のコンジュゲート、医薬組成物、剤形、又は薬剤のうち任意のものの投与を受けていない対照対象と比べて、例えば、約0.01%~約0.1%、約0.1%~約0.5%、約0.5%~約1%、約1%~約5%、約2%~約3%、約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約40%、約40%~約45%、又は約45%~約50%、減少する。
【0148】
いくつかの実施形態では、この体重の減少は、例えば、約1週間、約2週間、約3週間、約1か月間、約2か月間、約3か月間、約4か月間、約5か月間、約6か月間、約7か月間、約8か月間、約9か月間、約10か月間、約11か月間、約1年間、約1.5年間、約2年間、約2.5年間、約3年間、約3.5年間、約4年間、約4.5年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、又は約20年間、維持される。
【0149】
本発明は、必要とする対象において、症候群、障害若しくは疾患、あるいは当該症候群、障害若しくは疾患の1つ若しくは2つ以上の症状を、予防、治療、発症遅延、若しくは寛解させるための方法を提供し、当該症候群、障害若しくは疾患は、肥満、1型又は2型糖尿病、メタボリックシンドローム(すなわち、シンドロームX)、インスリン抵抗性、耐糖能異常(例えば、グルコース不耐性)、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性ネフロパシー、及びその他の心臓血管危険因子(高血圧など)、及び管理されていないコレステロール及び/又は脂質レベルに関連する心臓血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎疾患、並びに湿疹からなる群から選択され、この方法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0150】
本明細書で使用されるとき、メタボリックシンドロームは、高血糖(例えば、空腹時高血糖)、高血圧、コレステロール値異常(例えば、HDL濃度が低い)、トリグリセリド値異常(例えば、トリグリセリドが高い)、胴囲が大きい(すなわち、胴回りが大きい)、腹部領域の脂肪増加、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、C反応性タンパク質値が高い(すなわち、炎症誘発状態)、及び血漿プラスミノーゲン活性化抑制因子-1及びフィブリノーゲン濃度が高い(すなわち、血栓促進状態)のうち1つ又は2つ以上を有する対象を指す。
【0151】
本発明は、必要とする対象において、食物摂取を低減する方法を提供し、この方法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象の食物摂取は、本明細書に記載される本発明のコンジュゲート、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのうち任意のものを投与する前の対象の食物摂取に比べて、あるいは、本明細書に記載される本発明のコンジュゲート、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのうち任意のものの投与を受けていない対照対象と比べて、例えば、約0.01%~約0.1%、約0.1%~約0.5%、約0.5%~約1%、約1%~約5%、約2%~約3%、約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約40%、約40%~約45%、又は約45%~約50%、減少する。
【0152】
いくつかの実施形態では、この食物摂取の減少は、例えば、約1週間、約2週間、約3週間、約1か月間、約2か月間、約3か月間、約4か月間、約5か月間、約6か月間、約7か月間、約8か月間、約9か月間、約10か月間、約11か月間、約1年間、約1.5年間、約2年間、約2.5年間、約3年間、約3.5年間、約4年間、約4.5年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、又は約20年間、維持される。
【0153】
本発明は、必要とする対象において、グリコヘモグロビン(A1C)を低減する方法を提供し、この方法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象のA1Cは、本明細書に記載される本発明のコンジュゲート、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのうち任意のものを投与する前の対象のA1Cに比べて、あるいは、本明細書に記載される本発明のコンジュゲート、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのうち任意のものの投与を受けていない対照対象と比べて、例えば、約0.001%~約0.01%、約0.01%~約0.1%、約0.1%~約0.2%、約0.2%~約0.3%、約0.3%~約0.4%、約0.4%~約0.5%、約0.5%~約1%、約1%~約1.5%、約1.5%~約2%、約2%~約2.5%、約2.5%~約3%、約3%~約4%、約4%~約5%、約5%~約6%、約6%~約7%、約7%~約8%、約8%~約9%、又は約9%~約10%、減少する。
【0154】
他の実施形態では、必要とする対象において、空腹時血糖値を低減するための方法が提供され、この方法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。空腹時血糖値は、本明細書に記載される本発明のコンジュゲート、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのうち任意のものを投与する前の対象の空腹時血糖値に比べて、あるいは、本明細書に記載される本発明のコンジュゲート、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのうち任意のものの投与を受けていない対照対象と比べて、例えば、約140~約150mg/dL未満、約140~約130mg/dL未満、約130~約120mg/dL未満、約120~約110mg/dL未満、約110~約100mg/dL未満、約100~約90mg/dL未満、又は約90~約80mg/dL未満、低減され得る。
【0155】
本発明は、必要とする対象において、Y2受容体活性を調節する方法を提供し、この方法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本明細書で使用されるとき、「調節する」とは、受容体活性を増加又は減少させることを指す。
【0156】
いくつかの実施形態では、有効量の本発明のコンジュゲート又はその剤形、組成物若しくは薬剤は、それを必要とする対象に、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回、又は1日8回投与される。他の実施形態では、有効量の本発明のコンジュゲート又はその剤形、組成物若しくは薬剤は、それを必要とする対象に、1日おきに1回、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、月に2回、月に3回、又は月に4回投与される。
【0157】
本発明の別の実施形態は、必要とする対象において、疾患、障害若しくは症候群、あるいは当該疾患、障害若しくは症候群の1つ若しくは2つ以上の症状を、予防、治療、発症遅延、若しくは寛解させるための方法を含み、この方法は、必要とする対象に、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、併用療法で投与することを含む。特定の実施形態では、この併用療法は、第2の治療薬である。特定の実施形態では、この併用療法は、外科的療法である。
【0158】
本明細書で使用されるとき、用語「併用される」は、対象への2種以上の治療薬の投与との関連において、複数の治療の使用を指す。
【0159】
本明細書で使用されるとき、併用療法は、必要とする対象に、有効量の本発明のコンジュゲート又はその剤形、組成物若しくは薬剤と同時に、1つ若しくは2つ以上の追加の治療薬を投与、又は1つ若しくは2つ以上の外科療法を適用することを指す。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の追加の治療薬又は外科療法は、有効量の本発明のコンジュゲートと同じ日に投与することができ、他の実施形態では、1つ又は2つ以上の追加の治療薬又は外科療法は、有効量の本発明のコンジュゲートと同じ週又は同じ月に投与することができる。
【0160】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、及び脂質異常症からなる群から選択され、第2の治療薬は抗糖尿病薬であり得る。特定の実施形態では、この抗糖尿病薬は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体調節因子であり得る。
【0161】
本発明は更に、必要とする対象における、本明細書に記述される疾患、障害、症候群、又は症状のうちいずれかを、併用治療で予防、治療、発症遅延、若しくは寛解させることを想到し、この併用治療は、必要とする対象に対し、本発明のコンジュゲート又は医薬組成物の有効量を、以下の治療薬のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて投与することを含む:ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤(例えば、シタグリプチン、サクサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチンなど);GLP-1受容体アゴニスト(例えば、エキセナチド及びリキシセナチドなどの短時間作用型GLP-1受容体アゴニスト;リラグルチドなどの中間作用型GLP-1受容体アゴニスト;エキセナチド延長放出、アルビグルチド、デュラグルチドなどの長時間作用型GLP-1受容体アゴニスト);ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT-2)阻害剤(例えば、カナグリフロジン(canaglifozin)、ダパグリフロジン(dapaglifozin)、エンパグリフロジン(empaglifozin)など);胆汁酸隔離剤(例えば、コレセベラムなど);ドーパミン受容体アゴニスト(例えば、ブロモクリプチン急速放出);ビグアニド(例えば、メトホルミンなど);インスリン;オキシントモジュリン;スルホニル尿素(例えば、クロルプロパミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、グリベンクラミド、グリボルヌリド、グリソキセピド、グリクロピラミド、トラザミド、トルブタミド、アセトヘキサミド、カルブタミドなど);及びチアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、ロベグリタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、ネトグリタゾン、リボグリタゾン、トログリタゾンなど)。いくつかの実施形態では、追加の治療薬(複数可)の用量は、本発明のコンジュゲートと組み合わせて与えられる場合に低減される。いくつかの実施形態では、本発明のコンジュゲートと組み合わせて使用される場合、追加の治療薬は、それぞれが単独で使用される場合よりも低用量で使用されてもよい。
【0162】
特定の実施形態では、この疾患又は障害は、肥満、1型又は2型糖尿病、メタボリックシンドローム(すなわち、シンドロームX)、インスリン抵抗性、耐糖能異常(例えば、グルコース不耐性)、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、先天性高インスリン症(CHI)による低血糖、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性ネフロパシー、及びその他の心臓血管危険因子(高血圧など)、及び管理されていないコレステロール及び/又は脂質レベルに関連する心臓血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎疾患、及び湿疹からなる群から選択され、第2の治療薬はリラグルチドであり得る。
【0163】
本発明は、それを必要とする対象における、本明細書に記述される疾患、障害、症候群、又は症状のうちいずれかを、併用治療で予防、治療、発症遅延、若しくは寛解させることを想到し、この併用治療は、それを必要とする対象に対し、本発明のコンジュゲート又は医薬組成物の有効量を、外科治療と組み合わせて投与することを含む。特定の実施形態では、この外科治療は、肥満手術(例えば、Roux-en-Y胃バイパス手術などの胃バイパス手術;スリーブ胃切除術;調節可能胃バンド手術;十二指腸スイッチによる胆膵路変更術;胃内バルーン;胃縫縮術、及びこれらの組み合わせ)であり得る。
【0164】
1つ又は2つ以上の追加の治療薬が、有効量の本発明のコンジュゲートと同じ日に投与される実施形態では、本発明のコンジュゲートは、追加の治療薬の前、後、又は同時に投与され得る。「併用される」という用語の使用は、治療が対象に投与される順序を限定しない。例えば、第1の治療(例えば、本明細書に記載される組成物)を、対象への第2の治療の投与前に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)、投与と同時に、又は投与後に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)投与することができる。
【0165】
実施形態
本発明は以下の非限定的な実施形態を更に提供する。
【0166】
実施形態1は、完全ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を有する軽鎖可変領域と、配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR3を除く完全ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を有する重鎖可変領域とを含む、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントであり、抗体又はその抗原結合フラグメントは、インビボで任意のヒト抗原に特異的に結合しない。
【0167】
実施形態2は、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントが、それぞれ配列番号16、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配列を有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、実施形態1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0168】
実施形態3は、単離されたモノクローナル抗体が、配列番号12のポリペプチド配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号14のポリペプチド配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、実施形態3は、実施形態2に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0169】
実施形態4は、Fc部分を更に含む、実施形態1~3のいずれか一つに記載の単離されたモノクローナル抗体である。
【0170】
実施形態5は、Fc部分が、ヒトIgG4 Fc領域に由来するFc領域を更に含む、実施形態4に記載の単離されたモノクローナル抗体である。
【0171】
実施形態6は、ヒトIgG4 Fc領域が、エフェクター機能を排除する置換を有する、実施形態5に記載の単離されたモノクローナル抗体である。
【0172】
実施形態7は、モノクローナル抗体が、残基233におけるグルタミン酸のプロリンでの置換、残基234におけるフェニルアラニンのアラニン又はバリンでの置換、残基235におけるロイシンのアラニン又はグルタミン酸での置換、並びに残基297におけるアスパラギンのアラニンでの置換からなる群から選択される少なくとも1つの置換を含む、修飾ヒトIgG4 Fc領域を更に含む、実施形態6に記載の単離されたモノクローナル抗体である。
【0173】
実施形態8は、ヒトIgG4 Fc領域が、位置228におけるセリンのプロリンへの置換を含む、実施形態6又は7に記載の単離されたモノクローナル抗体である。
【0174】
実施形態9は、配列番号13のポリペプチド配列を有する重鎖(HC)と、配列番号15のポリペプチド配列を有する軽鎖(LC)とを含む、実施形態4~8のいずれか一つに記載の単離されたモノクローナル抗体である。
【0175】
実施形態10は、実施形態1~9のいずれか一つに記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸である。
【0176】
実施形態11は、実施形態10に記載の単離された核酸を含むベクターである。
【0177】
実施形態12は、実施形態11に記載のベクターを含む宿主細胞である。
【0178】
実施形態13は、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、方法は、実施形態12に記載の宿主細胞を、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する条件下で培養することと、抗体又はその抗原結合フラグメントを細胞又は培養物から回収することと、を含む。
【0179】
実施形態14は、それにコンジュゲートされた少なくとも1つの薬理学的活性部分を更に含む、実施形態1~9のいずれか一つに記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0180】
実施形態15は、薬理学的活性部分が治療用ペプチドである、実施形態14に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0181】
実施形態16は、治療用ペプチドが配列番号18のシステイン残基にコンジュゲートしている、実施形態15に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0182】
実施形態17は、治療用ペプチドが、リンカーを介して抗体又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートしている、実施形態15又は16に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0183】
実施形態18は、リンカーが、ペプチドリンカー、炭化水素リンカー、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、ポリプロピレングリコール(PPG)リンカー、多糖類リンカー、ポリエステルリンカー、又はPEG及び組み込み複素環からなるハイブリッドリンカーを含む、実施形態17に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0184】
実施形態19は、治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、ペプチドチロシンチロシン(PYY)、エキセンジン(エキセナチド)、アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群から選択される、実施形態15~18のいずれか一つに記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0185】
実施形態20は、治療用ペプチドが、配列番号24のポリペプチド配列を含むオキシントモジュリンである、実施形態19に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0186】
実施形態21は、オキシントモジュリン治療用ペプチドに結合されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを含むコンジュゲートであり、コンジュゲートは、
図11に示される配列番号27の構造を有し、図中、mAbは、実施形態1~9のいずれか一つに記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを表し、]
2は、オキシントモジュリン治療用ペプチドがmAbに共有結合でコンジュゲートしていることを表す。
【0187】
実施形態22は、実施形態15~21のいずれか一つに記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを生成する方法であり、方法は、治療用ペプチドの側鎖上に導入された求電子物質(好ましくはブロモアセトアミド又はマレイミド)を、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの配列番号18のシステイン残基のスルフヒドリル基と反応させ、これにより、治療用ペプチドと、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとの間に共有結合を形成することを含む。
【0188】
実施形態23は、実施形態14~21のいずれか一つに記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物である。
【0189】
実施形態24は、実施形態14~21のいずれか一つに記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を製造する方法であって、方法は、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを、薬学的に許容可能な担体と組み合わせて、医薬組成物を得ることを含む。
【0190】
実施形態25は、実施形態1~9及び14~21のいずれか一つに記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを含むキットである。
【0191】
実施形態26は、対象における治療用ペプチドの半減期を延長する方法であって、方法は、治療用ペプチドを、それぞれ配列番号16、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配列を有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとコンジュゲートさせることを含み、治療用ペプチドは、配列番号18のCys残基で、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる。
【0192】
実施形態27は、治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、ペプチドチロシンチロシン(PYY)、エキセンジン(エキセナチド)、アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬(antagnoists)、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群から選択される、実施形態26に記載の方法である。
【0193】
実施形態28は、治療用ペプチドがオキシントモジュリンである、実施形態27に記載の方法である。
【0194】
実施形態29は、オキシントモジュリンが、配列番号24のポリペプチド配列を有する、実施形態28に記載の方法である。
【0195】
実施形態30は、モノクローナル抗体が、配列番号12のポリペプチド配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含む、実施形態25~29のいずれか一つに記載の方法である。
【0196】
実施形態31は、モノクローナル抗体が、配列番号13のポリペプチド配列を有する重鎖(HC)を含む、実施形態25~30のいずれか一つに記載の方法である。
【0197】
実施形態32は、モノクローナル抗体が、配列番号14のポリペプチド配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、実施形態25~31のいずれか一つに記載の方法である。
【0198】
実施形態33は、モノクローナル抗体が、配列番号15のポリペプチド配列を有する軽鎖(LC)を含む、実施形態25~32のいずれか一つに記載の方法である。
【0199】
実施形態34は、配列番号18を含む重鎖相補性決定領域3を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであり、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、治療用ペプチドに結合することができる。
【実施例】
【0200】
実施例1:mAb MSCB97の同定及び産生
操作のための出発V領域としてPH9L3 VL及びPH9H5 VHを選択
PH9L3と命名された抗体軽鎖可変領域(VL)(配列番号3)(Teplyakov et al.,「Structural diversity in a human antibody germline library,」mAbs Aug-Sep 8(6):1045~63(2016))、及びPH9H5と命名された抗体重鎖可変領域(VH)(配列番号4)(Teplyakov et al.,「Structural diversity in a human antibody germline library,」mAbs Aug-Sep 8(6):1045~63(2016))が、ペプチドコンジュゲートを可能にするmAbを操作する出発可変領域として選択された。PH9L3は、ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を完全に含み、これにより、高い親和性の抗原特異的結合をもたらし得るインビボ親和性成熟プロセスによる配列突然変異は含有しない。PH9H5のCDR3は、そのVHにヒト生殖系列V遺伝子配列を含まない唯一のセグメントである。PH9H5のCDR3(配列番号5)は、抗ヒトCCL2抗体、CNTO 888、中和CCL2抗体のCDR3と同一であり、例えば、米国特許出願公開第20100074886(A1)号を参照されたい(CNTO 888についての関連開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。PH9H5/PH9L3 VH/VL対を含むFabが生成された。
【0201】
PH9L3、PH9H5と、これらが最も類似するヒトIg生殖系列V領域及びJ領域配列を整列させて、生殖系列配列に対する配列同一性又は類似性を決定した。PH9H5は、ヒトIg生殖系列遺伝子IGHV3-23*01(PubMed ID:M99660)(配列番号7)及びヒトIGHJ1*01(PubMed ID:J00256)(配列番号8)の連結(配列番号6)に整列させ、PH9H5アミノ酸配列と、連結されたヒトIGHV3-23*01-IGHJ1*01配列との間の差異のみがVH CDR3であり、これがPH9H5の配列番号5となった。
【0202】
PH9L3は、ヒトIg生殖系列遺伝子IGKV3-11*01(PubMed ID:X01668)(配列番号10)及びIGKJ1*01(PubMed ID:J00242)(配列番号11)の連結(配列番号9)に整列させ、その差異のみが、V遺伝子/J遺伝子結合における唯一の偏差となった。
【0203】
PH9H5及びPH9L3のCys置換変異体の設計及び生成
V領域の3つ全てのCDRにわたって選択されたCDR残基に単一のCys置換を含有するPH9H5 VHの変異体を設計し、生成し、ヒトIgG1定常領域を有する完全な重鎖として哺乳類宿主発現ベクターにクローニングした。PH9H5/PH9L3 Fab構造を利用して、コンジュゲートのためによりアクセスしやすくなるよう、置換のためのCDR残基の選択を補助した。またいくつかの変異体において、追加のグリシン(Gly)残基を、導入されたCys残基のいずれかの側に挿入して、コンジュゲートのためのCysのアクセスしやすさを潜在的に高めた。PH9L3 VLの同様の変異体を設計し、生成した。ただしこれらは、ヒトκ定常領域を有する完全軽鎖として発現ベクターにクローニングされた。PH9H5の単一Cys変異体の24の発現構築物及びPH9L3の単一Cys変異体の22の発現構築物が生成された。PH9H5_VH(配列番号4)内及びPH9L3_VL(配列番号3)内の置換のために選択された残基を
図2にまとめる。
【0204】
生成された発現構築物を使用して、野生型PH9L3 LC構築物を有する各PH9H5ベースのHC Cys変異体構築物を一過性共トランスフェクションすることにより、又は、野生型PH9H5 HC構築物を有する各PH9L3ベースのLC Cys変異体構築物を共トランスフェクションすることによって、Cys変異体を発現させた。初期試験トランスフェクションは、HEK由来のExpi293を発現宿主として使用し、20mLのスケールで行った。HC及びLC Cysの両方の変異体の大部分は、培養上清からの変異タンパク質定量に基づき、良好に発現した。
【0205】
5つの初期HC Cys変異体、MSCB33-MSCB37を、750mLのスケールでExpi293で発現させ、変異体タンパク質を精製した。精製された変異体の精製収率及び品質特性は非常に類似しており、初期ペプチドコンジュゲート反応において精製タンパク質を使用するのに十分であった。
【0206】
PH9H5ベースのHC Cys変異体に対するペプチドコンジュゲートの評価
MSCB33タンパク質及び他の変異体タンパク質の分析質量決定は、mAb当たり2つの、コンジュゲートのために操作されたCysにおけるシステイン付加物の存在を示し、並びに、組み換えにより産生されたmAbに一般的に見られるHC C末端Lys残基の除去を示した。コンジュゲートのための変異体mAbを調製するために、mAb内の天然ジスルフィド結合を維持するために開発された還元プロセスによって付加物を除去した(実施例3を参照)。ヒトオキシントモジュリン(OXM)ペプチド類似体(GCG Aib2、Gly16,24、Arg20、Leu27、Lys30(PEG12)-NH2)との初期試験コンジュゲートは、5つ全てのHC Cys変異体mAb上でマレイミド化学を利用して行った。コンジュゲート効率はmAb変異体の間で異なっており、これは、コンジュゲート反応生成物及びそれぞれの相対的パーセンテージによって定性的に推定された。最も高い効率は(ホモ二量体生成物の最大割合によって測定)、フランキングGly残基を含有する他のI102C変異体に比べ、MSCB33で観察された。Y103C変異体MSCB35又はMSCB37では、コンジュゲートはほとんど又は全く観察されなかった。
【0207】
様々なCDR(PH9H5_VH(配列番号129)におけるT28C、S30C,及びS54C置換、並びにPHpL3_VL(配列番号128)におけるS30C及びS92C置換)における改変システイン置換を有する、他のいくつかのHC及びLC Cys変異体を、Expi293において大きなスケールで発現させた。還元によるこれらの精製タンパク質からのCys付加物の除去は困難であり、これらの変異体はこれ以上追求されなかった。最も多くのCys変異体で観察された課題と、I102C PH9H5変異体mAb、MSCB33で観察された良好なコンジュゲート初期効率により、この特定の変異体に焦点を合わせたプロセス開発、及び更なる操作努力が行われた。
【0208】
MSCB33のFc操作
MSCB33は、インビボでのFc機能を低減するために、サイレントのヒトIgG4_PAA Fcを含有するように再操作した。ヒトIgG4_PAAは、ヒトIgG4アロタイプnG4m(a)上に突然変異S228P/F234A/L235Aを有する(IMGTに定義されるIGHG4*01対立遺伝子に基づく)。IgG4_PAA Fcに融合したMSCB33のVHを有する発現構築物を生成し、MSCB33発現に使用した同じLC発現構築物と共に使用して、MSCB33のIgG4_PAA変異体を産生した。これをMSCB97と命名する。MSCB97 VH、HC、VL、及びLCのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号12、13、14、及び15により提供される。
【0209】
MSCB97の試験発現は、Expi293細胞において20mLのスケールで一過性に行われ、このmAb変異体は良好に発現した。MSCB97を大きなスケールのExpi293発現実験から精製した。MSCB97の精製収率は264.53mg/Lであり、品質はモノマー種85%と測定された。その後のより大きなスケールの発現実験及び精製は、収率及び品質が同様又はより良好であり、このmAbが産生され得る一貫性を示した。
【0210】
MSCB97に対するペプチドコンジュゲートの評価とコンジュゲート反応のスケーラビリティ
LC-HCジスルフィド結合は、IgG1とIgG4のアイソタイプとの間で異なるため、還元及びマレイミドコンジュゲートを試験し、上記のOXM-マレイミド試験ペプチドのTCEP還元及びコンジュゲートを使用して、IgG1 mAb MSCB33からIgG4_PAA mAb MSCB97へ移動可能であることが確認された。マレイミドコンジュゲートから生じる結合は、潜在的に可逆性であることが知られており、したがって、より安定した結合をもたらすブロモアセトアミドコンジュゲート化学を採用し、出発MSCB97に基づいて10mgスケールで成功裏に実施された。
【0211】
ブロモアセトアミド化学により生成されたOXM類似体GCG Aib2、Glu16、24、Arg20、Leu27、Lys30-ε-(PEG
12)-NH
2のMSCB97コンジュゲート(化合物2-「化合物2」及び「コンジュゲート2」は、本明細書では互換的に使用することができる)(MSCB97は、H-Aib-QGTFTSDYSKYLDERRARDFVEWLLNTK-(COCH
2CH
2(OCH
2CH
2)
12NHCOCH
2Br)-NH
2(配列番号24)とコンジュゲートして化合物2(
図11、配列番号27)を形成する)をアッセイして、インビトロのGLP-1R及びGCGRの効力を決定した。参照ペプチド及び参照非構造化ペプチドコンジュゲートと比較した効力は妥当であり、MSCB33(IgG1)と同じペプチドで生成されたコンジュゲートのものと同様であった。このことによって、アイソタイプであるMSCB97(IgG4_PAA)とMSCB33(IgG1)との間の単一の差は、同じペプチドを含有するコンジュゲートの効力に影響を与えないことが実証された。加えて、これらのデータは、望ましいインビトロ効力が、インビボで安定である結合を生成するブロモアセトアミド化学により生成されたペプチド-mAbコンジュゲートに保持され得ることを示した。他のOXM類似体もMSCB97にコンジュゲートし、これらのコンジュゲートのインビトロ効力のアッセイを行った。これらのコンジュゲートは、ペプチド効力を保持しながら、様々なペプチドをMSCB97にコンジュゲートさせる能力を備え、化合物2と同様のGLP-1R及びGCGRの効力を有した。
【0212】
ヒトCCL2に結合するペプチド-MSCB97コンジュゲートの評価
MSCB97は、特定の抗原結合の欠如のために選択及び操作されたが、このmAbが結合する可能性が最も高い抗原は、もしあれば、VH CDR3の起源に基づきヒトCCL2である。2つのペプチド-MSCB97コンジュゲート体を、OXMペプチド類似体(化合物2)、又はPYYペプチド類似体(化合物1-「化合物1」及び「コンジュゲート体1」は、本明細書では互換的に使用することができる)と共に用いて、MSCB97が任意の特定のCCL2結合を示すかどうかを評価した。
【0213】
潜在的なCCL2結合は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって直接測定され、この表面プラズモン共鳴(SPR)では、抗Fc捕捉法を用いてコンジュゲートが表面固定化された。市販の抗CCL2マウスmAbを陽性対照とし、2つの非特異的ヒト抗体CNTO 9412及びHH3B33を陰性対照とした。全ての対照は同様に表面固定化され、組換えヒトCCL2を固定化コンジュゲート上に流し、最大400nMの濃度で制御した。事前確立されたアッセイ基準に基づいて、特定の抗原結合を示すCCL2蓄積は、陽性対照では観察されたが陰性対照では観察されず、いずれのペプチド-MSCB97コンジュゲート(化合物1又は2)にも観察されなかった。これにより、ペプチド-mAbコンジュゲートの関連する治療形態において、MSCB97がヒトCCL2結合を欠くことが確認された。
【0214】
SPR結合法:ProteOn XPR36システム(BioRad)を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた結合測定を実施した。アミンカップリング化学反応についての製造元の使用説明書を使用し、抗ヒトIgG Fc(Jacksonカタログ番号109-005-098)と抗マウスIgG Fc(Jacksonカタログ番号315-005-046)との混合物を、GLCチップ(BioRad,カタログ番号176-5011)の加工アルギン酸ポリマー層にカップリングさせて、バイオセンサ表面を調製した。約5700RU(応答単位)のmAbを固定化した。結合実験を、ランニング緩衝液中、25℃で実施した(DPBS;0.01%P20;100μg/mL BSA)。結合動態実験を実施するために、サンプル(化合物2、化合物1、及び対照mAb陽性及び陰性)を捕捉し、続いて、5つの濃度(4倍連続希釈)で、組換えヒトCCL2(Thermo、カタログ番号RMCP120)を注入した。50μL/分で3分間会合段階をモニターした後、5分間緩衝液を流した(解離段階)。100μL/分で100mM H3PO4(Sigma、カタログ番号7961)を18秒間ずつ2回流してチップ表面を再生した。
【0215】
回収したデータをProteOn Managerソフトウェアを用いて処理した。まず、インタースポットを用いてバックグラウンドについてデータを補正した。次いで、分析物注入用の緩衝液注入を使用して、データのダブルリファレンスサブトラクション(double reference subtraction)を行った。化合物2、化合物1、及び陽性対照の、CCL2に対する特定の検出可能結合を決定するための事前確立されたアッセイ基準には、最高濃度での>10 RU信号での用量比例応答、及び陰性対照応答信号<10 RUを必要とした。アッセイ基準に基づいて、各サンプルについての結果を、ヒトCCL2への用量応答結合について「あり」又は「なし」として報告した。
【0216】
実施例2:mAbの発現及び精製
完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)は、哺乳類発現宿主において組換え的に発現され、当該技術分野において既知の標準的な方法を用いて細胞培養上清から精製することができる。例えば、mAbの軽鎖(LC)及び重鎖(HC)(分泌を可能にする適切なシグナルペプチドをそれぞれ含む)をコードするcDNA配列を、標準的な分子生物学的方法を使用して、別個の哺乳類発現ベクター又は単一の発現ベクターにクローニングすることができる。使用される発現ベクターは、pEE12.4、pcDNA(商標)3.1(+)、又はpIRESpuro3などの市販のもの、又は類似の機能を有する任意のカスタム発現ベクターであり得る。かかるベクターでは、mAbの重鎖及び軽鎖の転写はそれぞれ、hCMV-MIEプロモーターなどの既知の有効プロモーターのいずれかによって駆動される。トランスフェクション等級のプラスミドDNAは、QiagenプラスミドMidi Kitなどの標準的な方法を用いて、別個のLC及びHC発現構築物、又はLC及びHCの両方を発現する単一の構築物のために調製される。
【0217】
精製プラスミドDNAは、Freestyle(商標)Maxトランスフェクション試薬などの脂質ベースのトランスフェクション試薬でのトランスフェクションのために調製され(製造業者の指示に従う)、次いで、CHO-S又はHEK 293-Fなどの標準的な哺乳類発現宿主細胞株にトランスフェクトする。mAb LC及びHCが別個の発現構築物によってコードされる場合、2つの構築物は同時にトランスフェクトされる。トランスフェクションの前及び後に、哺乳類細胞を、維持のために、又はmAb発現のために、標準的な細胞培養法に従って培養し、それにより、細胞密度は維持のための範囲であり、使用する培養培地、及びその後の他の細胞培養条件は、利用される具体的な哺乳類宿主細胞株によって決定される。これらのパラメータは、典型的には、細胞株を入手した業者により文書化され、又は科学文献に記載されている。例えば、CHO-S細胞は、懸濁液中CHO Freestyle(商標)培地に維持し、37℃及び8%CO2に設定された加湿インキュベータ内で125RPMで振盪し、細胞濃度が1.5~2.0×106個/mLであるときに分割する。
【0218】
mAbを発現する一過性トランスフェクションされた哺乳類細胞からの細胞培養上清を、トランスフェクションの数日後に採取し、遠心分離により清澄化し、濾過する。CHO-S細胞の発現持続時間は、典型的には4日間であるが、調節することができ、異なる哺乳類宿主細胞株に関して異なり得る。大きなスケールのトランスフェクション(>10リットル)は、Centramateなどの濃縮装置を使用して10倍濃縮される。mAbは、タンパク質A親和性カラム(HiTrap MabSelect Sureなど)を用い、mAbをタンパク質A樹脂に結合させ、樹脂を洗浄し、低pH緩衝液を使用してタンパク質を溶出させる標準的な方法を利用して、清澄化された上清から精製される。タンパク質画分は、pH7緩衝液を含有する試験管に溶出させることによって直ちに中和され、ピーク画分をプールし、濾過し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.2で一晩、4℃で透析する。透析後、mAbを再度濾過し(0.2μmフィルター)、タンパク質濃度を280nmでの吸光度によって測定する。精製されたmAbタンパク質の品質は、SDS-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)及び分析用サイズ排除HPLCによって評価され、エンドトキシン濃度は、リムルスアメーバサイトライセート(LAL)アッセイを使用して測定される。精製したmAbを4℃で保存する。
【0219】
一過性トランスフェクションされたCHO細胞からのMSCB97の発現及び精製
MSCB97は、ExpiCHO-S(商標)細胞(ThermoFisher Scientific(Waltham,MA)、カタログ番号A29127)中で、MSCB97発現構築物の精製プラスミドDNAを用い、製造者の推奨に従って、一過性トランスフェクションにより、発現させた。簡潔に述べると、ExpiCHO-S(商標)細胞を、37℃、8%CO2及び125RPMに設定した振盪インキュベータ内で、ExpiCHO(商標)発現培地(ThermoFisher Scientific、カタログ番号A29100)中の懸濁液中に維持した。細胞を継代し、これによりトランスフェクションの日に、1mL当たり6.0×106個に希釈することができ、細胞生存率を98%以上に維持することができた。一過性トランスフェクションは、ExpiFectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(ThermoFisher Scientificカタログ番号A29131)を使用して行った。トランスフェクトされる希釈細胞の1mLごとに、1マイクログラムのプラスミドDNAを使用し、OptiPRO(商標)SFM錯体化培地に希釈する。ExpiFectamine(商標)CHO試薬は、1:3の比(v/v、DNA:試薬)で使用され、これもOptiPRO(商標)に希釈される。希釈したDNA及びトランスフェクション試薬を合わせて1分間おき、DNA/脂質錯体形成を行わせ、次いで細胞に添加した。一晩インキュベートした後、ExpiCHO(商標)フィード及びExpiFectamine(商標)CHOエンハンサを細胞に添加した。細胞を32℃で5日間振盪しながら培養し、培養上清を回収した。
【0220】
一過性トランスフェクションされたExpiCHO-S(商標)細胞からの培養上清を、遠心分離(30分間、6000rpm)によって清澄化した後、濾過(0.2μm PES膜、Corning)を行って採取した。最初に、Pall Centramate Tangential Flow Filtrationシステムを使用して、大きなスケールのトランスフェクション(5~20リットル)を10倍濃縮した。10xダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、pH7.2)をこの上清に加えて1x最終濃度にしてから、AKTA FPLCクロマトグラフィーシステムを使用して、樹脂1mL当たり約20mgのタンパク質の相対濃度で、平衡化した(DPBS、pH7.2)HiTrap MabSelect Sureタンパク質Aカラム(GE Healthcare;Little Chalfont,United Kingdom)に通した。カラムに通した後、カラムをカラム体積の10倍のDPBS(pH7.2)で洗浄した。タンパク質を、カラム体積の10倍の0.1M酢酸ナトリウム(pH3.5)で溶出させた。タンパク質画分は、画分体積の20%で、2.0Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)(pH7)を入れた試験管に溶出させることにより、直ちに中和した。ピーク画分をプールし、必要に応じて、追加のTRISを用いてpHを約5.5に調整した。精製したタンパク質を濾過し(0.2μm)、その濃度を、BioTek SynergyHT(商標)分光光度計で、280nmでの吸光度によって測定した。精製したタンパク質の量を、SDS-PAGE、及び分析用サイズ排除HPLC(Dionex HPLCシステム)によって評価した。エンドトキシンレベルは、LALアッセイ(Pyrotell(登録商標)-T、Associates of Cape Cod)を用いて測定した。
【0221】
実施例3:mAb及び環状PYYペプチドのコンジュゲート
方法A:TCEPによるmAbの部分的還元
TRIS酢酸塩緩衝液(20mL、EDTA中1mM)中の10mg/mLのmAb溶液を、3当量のTCEPで処理した。溶液をpH6に調整し、室温(室温)で1時間置いた後、質量分析計付き高圧液体クロマトグラフィー(LCMS)により、位置C102のジスルフィド付加物が完全に還元されていることが示された。還元されたmAbを、タンパク質A吸着及び溶出(4 CV 100mM酢酸)により精製し、180mgの還元mAbを得た。
【0222】
還元mAbと環状PYYペプチドのコンジュゲート
凍結乾燥したペプチド(mAbに対して5当量)を上記の還元mAbに添加した。EDTAを加えて最終濃度1mMとし、pHを7に調整した。濃度を8mg/mLに調整し、穏やかに振盪しながら室温で16時間反応を進行させた。TCEP(mAbに対して0.5当量)を加え、穏やかに振盪しながら室温で4時間反応を更に進行させ、この時間の経過後、高分子量(MW)種が3%未満に低下した。
【0223】
反応混合物をpH5.5に調整し、CaptoSP樹脂のイオン交換クロマトグラフィーにより精製した(勾配:100% A(100mM TRIS酢酸塩、pH5.5)~100% B(100mM TRIS酢酸塩、pH5.5、0.5M NaCl)、20CV)。所望のコンジュゲートを含有する画分をプールし、少量の未反応ペプチドと共に溶出された140mgのコンジュゲートを回収した。最終精製は、タンパク質A吸着及び溶出(4CV 100mM酢酸)によって行った。生成物のpHを6に調整して、120mgのコンジュゲート(収率60%)を、純度>90%、高MW種<3%で得た。
【0224】
方法B:
mAbの疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)精製
TRIS酢酸塩緩衝液中の20mg/mLのmAb溶液を、疎水性相互作用カラム(TOSOH TSKgelフェニル7.5×21cm)に充填し、線形勾配で溶出させた(0~70%B/A、溶媒A:5% iPrOH、1M(NH4)2SO4、100mMリン酸緩衝液、pH6.0;溶媒B:20% iPrOH、100mMリン酸緩衝液)。mAbモノマーピークをプールし、濃縮し(5~10mg/mL)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液(100mM、pH5.5)に対して透析した。
【0225】
TCEPによる部分的還元と、還元mAbとペプチド類似体とのコンジュゲート
精製したmAb(27mL、9.28mg/mL)に4当量のTCEP、続いてEDTA(1mM)を添加した。室温で2時間後、LCMSは、位置C102のジスルフィド付加物が完全に還元されたことを示した。還元されたmAbを、Zebra脱塩スピンカラム(7×10mL、7K MWCO、MOPS 100mM pH5.5で予備平衡)で処理し、遊離システイン/GSHを除去した。還元したmAbの合わせた画分(28mL)に、Milli Qグレードの水中の環状PYYペプチド溶液(mAbに対して6.5当量、15~20mg/mL)、続いてEDTA(1mM)を添加した。1N NaOHを滴下で添加して、反応物のpHを7.2~7.4に調整した。反応物を、穏やかに振盪しながら室温で18時間反応を進行させた。更に0.5当量のTCEPを添加した後、更に12時間反応を継続させて、反応の過程中に形成されたmAb-mAb二量体を減少させ、所望のmAbホモ二量体へ変換させた。2M酢酸を添加することにより、反応物のpHをpH5.5に下げ、コンジュゲート粗生成物を、疎水性相互作用クロマトグラフィーにより精製し、線形勾配で溶出させた(0~100% B/A、溶媒A:5% iPrOH、1M(NH4)2SO4、100mMリン酸緩衝液、pH6.0;溶媒B:20% iPrOH、100mMリン酸緩衝液)。最終精製は、タンパク質A吸着(PBS)及び溶出(NaOAc、pH3.5)によって行った。生成物のpHを6に調整し、PBSに対して透析して最終サンプルを得た(56%)。
【0226】
あるいは、mAbをGSH及び/又はCysで還元した。タンジェンシャルフロー濾過(TFF)による還元剤の除去後、任意選択的に0.2~0.5当量のTCEPの存在下で、過剰量のペプチドを、還元されたmAbに添加した。
【0227】
実施例4:インビトロ試験
化合物1(配列番号2)の、環状PYYペプチドに結合するモノクローナル抗体(
図3)を、ヒト、ラット、マウス、及びアカゲザルのY2受容体、並びにヒトY1、Y4及びY5受容体を発現するクローン細胞(HEK又はCHO)において、インビトロで、NPY受容体を活性化する能力について評価した。PYY3~36、NPY、及びPPが、試験対照としてこれらのアッセイに含まれた。
【0228】
細胞株
cAMPアッセイで使用するために、NPY受容体を発現している安定なトランスフェクトされたクローン細胞株を開発した。簡潔に言えば、HEK293細胞株を、Lipofectamine 2000キット(Invitrogen)を用いて、そのプロトコルに従って、ヒトY2受容体(アクセッション番号:NM_000910.2)、ヒトY5受容体(アクセッション番号:NM_006174.2)、マウスY2受容体(アクセッション番号:NM_008731)、及びアカゲザルY2受容体(アクセッション番号:NM_001032832)のコーディング配列を有する発現プラスミドを用いて、トランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、細胞を選択培地(DMEM高グルコースに、10%ウシ胎児血清(FBS)、50I.U.ペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、及び600μg/mL G418を添加)で再播種した。細胞を選択培地に2週間保持した後、限定希釈法を用いて単一のクローンを採取した。続いて、トランスフェクトした細胞を、10%ウシ胎児血清、1%L-グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウム、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び600μg/mL G418を添加したDMEM高グルコース培地(Cellgro)で培養することによって維持した。
【0229】
加えて、ヒトY1受容体(カタログ番号93-0397C2)及びヒトY4受容体(カタログ番号95-0087C2)を発現しているCHO-K1細胞株が、DiscoverX Corporationから得られた。DiscoverX細胞は、10% FBSを添加したF12培地(Gibco)中で、G418選択下(800μg/mL)で培養した。ラットY2受容体は、Promega Corporationから入手したGlo-Sensor CHO-K1細胞株で発現させた。これらの細胞を、発光系cAMPアッセイのためにpGloSensor(商標)-23F cAMPプラスミドでトランスフェクトしたが、Perkin-Elmer LANCE cAMPアッセイでの使用について試験及び検証した。ラットY2細胞を、10% FBS及び800μg/mL G418を添加したF12培地(Gibco)中で培養した。
【0230】
全ての細胞株をバイアル(細胞4×106個/バイアル)に保管し、使用するまで液体窒素中に保存した。アッセイの前の日に、バイアルを解凍し、15mLの適切な培地に添加した。細胞を450×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、細胞を、0.2×106個/mLの密度で、G418なしの培地に再懸濁させた。細胞を、Biocoatコラーゲンコーティングされた白色384ウェルプレートに分配し(25μL/ウェル)、最終密度は細胞5000個/ウェルとした。細胞プレートを、5%CO2/90%O2雰囲気下で37℃加湿組織培養インキュベータ内で一晩インキュベートした。
【0231】
実験プロトコル
cAMPアッセイは、様々な受容体アッセイと同じであった。LANCE cAMPキット(Perkin Elmer Corporation;Waltham,MA)を全ての実験で使用して、細胞内cAMPレベルを定量した。アッセイの日に、細胞培地を細胞からデカントし、6μLのペプチド(2倍濃度)をウェルに添加した。ペプチドは、刺激緩衝液中の11ポイント用量反応(1:3連続希釈を用いて100nM又は10μMから開始)として作製した。刺激緩衝液は、HBSS(ハンクス平衡塩溶液)中に、5mM HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、500μM IBMX、及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)からなる。次に、フォルスコリン(2倍、5μM最終濃度)及びLANCE cAMP抗体(1:100)を含有する刺激緩衝液6μLを細胞に添加した。室温で25分間インキュベートした後、12μLのアッセイ検出混合物を各ウェルに添加した。検出混合物は、LANCE cAMPキットで提供されるように、ビオチン-cAMP(1:750)及びユーロピウム-W8044(1:2250)を検出緩衝液で希釈することによって調製した。プレートを室温で2時間インキュベートした後、Envisionプレートリーダー(励起320nm、発光615nm及び665nm)でTR-FRETアッセイとして読み取った。チャネル1蛍光(615nmでの相対蛍光単位)及びチャネル2蛍光(665nmでの相対蛍光単位)を、それらの比と共に、Excelファイルにエクスポートした。
【0232】
データ解析
Envisionプレートリーダーからのデータは、(615nm/665nm)×10,000として計算された相対蛍光単位(RFU)として表した。全てのサンプルに対して3回測定した。Eudean Shawによって設計された、内製のCrucableデータ分析ソフトウェアを使用してデータを分析した。各ウェル内の未知のcAMP濃度は、各プレート内に含まれる既知のcAMP濃度の参照標準から内挿された。EC50、Log(EC50)、HillSlope(nH)、最大値、最小値などのパラメータは、Janssen R&DのNon-Clinical Statistics & Computing部門によって実施された、R環境内の非線形加重最小二乗法適用を使用して、4-Pモデルでフィットさせたlog化合物濃度に対するcAMP濃度値をプロットすることによって得られた(オープンソースhttp://cran.us.r-project.org/)。
【0233】
【0234】
実施例5:薬物動態(PK)
DIOマウスPK
オスDIO C57BL/6Nマウス(20週齢、高脂肪食で14週)をTaconic Laboratoryから得た。マウスは、AlphaDriベッディングを備えたケージ当たり1匹を収容し、12時間の明暗サイクルを有する温度制御された部屋に入れた。マウスは、水への自由なアクセスを可能にし、高脂肪食(D12492、Research Diet)で維持した。
【0235】
マウスに、1mg/kgの化合物1を皮下(s.c.)投与し、3匹を各時点で屠殺し、t=4、8、24、48、72、120、及び168時間で血液を採取した。無投与の動物3匹の血液も採取した。70% CO
2及び30% O
2の混合物により誘導されたガス麻酔下で断頭した後、それぞれの動物から約300μLの血液を頸静脈から採取した。血液サンプル(約300μL)は、12μL(比率4%)の全プロテアーゼ阻害剤溶液と3μL(比率1%)のDPP-IV阻害剤を含有する、K3E(EDTA)コーティングされたSarstedt Microvette(登録商標)試験管に採取した。血液サンプルは氷水上に置き、各時点で採取してから30分以内に細胞を除去するために、冷蔵条件下(約5℃)で約4分間、10,000rpmで遠心分離し、利用可能な全ての血漿を96ウェルプレートに移した。このウェルプレートを-80℃の冷凍庫に入れるまでの間、ドライアイス上に保管した。データを表2及び
図4に示す。
【0236】
ラットPK
化合物1を、オスのSprague-Dawleyラット(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)に、PBS中1.0mg/kg(pH7.0~7.6)の用量レベルで、皮下及び静脈内投与した。約500μLの血液を、1回の時点当たり3匹の動物から、伏在静脈から採取した(投与後t=1、4、24、48、72、96、168、及び240時間)。投与から336時間後の血液サンプルは、70% CO2及び30% O2の混合物により誘導されたガス麻酔下で断頭した後、頸静脈から採取した。血液サンプルは、20μL(比率4%)の全プロテアーゼ阻害剤溶液と5μL(比率1%)のDPPIV阻害剤を含有する、K3E(EDTA)コーティングされたSarstedt Microvette(登録商標)試験管に採取した。血液サンプルは氷水上に置き、各時点で採取してから60分以内に細胞を除去するために、冷蔵条件下(約5℃)で約4分間、10,000rpmで遠心分離し、利用可能な全ての血漿を96ウェルプレートに移した。化合物1の濃度は、以下に記載のLCMS法を用いて測定した。データを表3に示す。
【0237】
カニクイザル(Cyno)PK
全ての動物を、投与前に少なくとも8時間絶食させ、最初の4時間の血液サンプル採取を行った。3匹の動物が1mg/kgの化合物1の単回IV投与を受け、3匹の動物が1mg/kgの化合物1の単回SC用量を受けた。投与前及び投与後1、6、10、24、36、48、72、120、168、240、336、432、及び504時間後に血液を採取した。追加のサンプルを、IV群の投与後0.5時間で採取した。各動物から約1mLの血液を、比率4%の全プロテアーゼ阻害剤溶液と比率1%のDPPIV阻害剤を含有する、K3E(EDTA)コーティングされたSarstedt Microvette(登録商標)試験管に採取した。血液サンプルは氷水上に置き、各時点で採取してから30分以内に遠心分離し、得られた血漿を3分割し、96ウェルプレートに3つ組複製で移した。このウェルプレートを-80℃の冷凍庫に入れるまでの間、ドライアイス上に保管した。データを表4及び
図5に示す。
【0238】
血漿レベルの測定のための完全物質量分析アッセイ
血漿サンプルは、抗ヒトFc抗体を使用した免疫親和性捕捉によって処理した後、三重TOF(飛行時間)質量分析計で逆相LC高分解能フルスキャンMS分析を行った。生のMSスペクトルをデコンボリューションして、注入サンプル中の成分の分子量を解明した。完全物コンジュゲートの分子イオンのピークを定量に使用した。標準曲線及び品質管理サンプルは、血漿中の参照標準のスパイクにより調製され、適用したサンプルと同時に同じ手順を使用して処理した。DIOマウス、ラット、及びカニクイザルのPKデータをそれぞれ表2~4に示す。DIOマウス及びカニクイザルのPKデータは、それぞれ
図4及び5にも示されている。
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
実施例6:インビボでの効能試験
食事性肥満(DIO)マウスにおける体重減少:急性投与
化合物1を、単回投与後にオスDIO C57B1/6マウスの食物摂取量と体重を低下させる能力について評価した。オスDIO C57BL/6Nマウス(20週齢、高脂肪食で14週)をTaconic Laboratoryから得た。マウスは、AlphaDriベッディングを備えたケージ当たり1匹を収容し、12時間の明暗サイクルを有する温度制御された部屋に入れた。マウスは、水への自由なアクセスを可能にし、高脂肪食(D12492、Research Diet)で維持した。実験開始前に、動物を施設に少なくとも1週間順応させた。
【0243】
投与の前日、マウスを、個々の体重に基づいて8匹の動物のコホートにグループ化した。翌日3:00~4:00pmに、動物を秤量し、皮下(s.c.)投与を介して、溶媒(dPBS、pH7.2)で処理し、0.1、0.3、1.0、3.0、又は7.5nmol/kgの用量の化合物1、又は0.3nmol/kgの用量のデュラグルチドで処理した。体重及び食物摂取量を、投与から24時間後、48時間後及び72時間後に測定し、体重減少率及び食物摂取量の減少を計算した。統計分析は、Prismにおけるテューキーの事後検定を用いて、二元配置反復測定分散分析を使用して実施した。全てのデータを平均±SEMとして示す(
図6及び
図7)。
【0244】
食事性肥満マウスにおける体重減少:慢性投与
化合物1を、8日間にわたってオスDIO C57B1/6マウスに反復投与し、食物摂取量及び体重を低下させ、グルコースホメオスタシスを改善する能力について評価した。オスDIO C57BL/6Nマウス(20週齢、高脂肪食で14週)をTaconic Laboratoryから得た。マウスは、AlphaDriベッディングを備えたケージ当たり1匹を収容し、12時間の明暗サイクルを有する温度制御された部屋に入れた。マウスは、水への自由なアクセスを可能にし、高脂肪食(D12492、Research Diet)で維持した。実験開始前に、動物を施設に少なくとも1週間順応させた。
【0245】
投与の前日、マウスを、個々の体重に基づいてグループ化した。次の8日間、それぞれについて3:00-4:00pmに、動物及び食物摂取量を計量した。動物は、毎日皮下投与により0.3nmol/kgで溶媒(dPBS、pH7.2)又はデュラグルチドで、又は3日ごとに皮下投与により0.1、0.3、1.0、3.0nmol/kgの用量の化合物1で処理した。8日後、マウスを5時間絶食させ、次いで、t=0に2g/kgのグルコースボーラスを経口投与する。グルコース負荷後、t=0、30、60、90、及び120分後に血糖を測定し、t=0、30、及び90分後の血液では血漿インスリンを測定するために採血される。統計分析は、Prismにおけるテューキーの事後検定を用いて、一元配置分散分析又は二元配置反復測定分散分析を使用して実施した。全てのデータを平均±SEMとして示す(
図8及び9、並びに表5~8)。
【0246】
【表5】
各値は、8匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
*溶媒に対してp<0.05;二元配置分散分析反復測定、テューキーの多重比較検定
【0247】
【表6】
各値は、8匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
*溶媒に対してp<0.05;血糖値については、二元配置分散分析反復測定、テューキーの多重比較検定;AUCについては、一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
【0248】
【表7】
各値は、8匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
*溶媒に対してp<0.05;血糖値については、二元配置分散分析反復測定、テューキーの多重比較検定;AUCについては、一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
【0249】
【表8】
各値は、8匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
*溶媒に対してp<0.05;一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
【0250】
実施例7:mAb-オキシントモジュリン(mAb-OXM)化合物の調製の合成戦略
ヒトオキシントモジュリン(OXM)は、2型真性糖尿病患者において有益な薬理学を有することが示されている37アミノ酸長の内因性ペプチド(配列番号23)である。薬理作用は、GLP1R及びGCGRの両方におけるアゴニスト作用の結果である。OXM類似体の研究により、げっ歯類モデルにおいて良好な血糖制御及び体重減少を実証したペプチド変異体が明らかになった。インビボでのOXMの半減期は、ヒトにおいて数分の単位である。したがって、OXMの更なる設計は、週1回の投与に相応した半減期を付与するために行われた。半減期の増加は、タンパク質分解に対するOXMペプチドの安定性を増加させることによって、及びモノクローナル抗体(mAb)の共有結合によるペプチドの循環半減期を増加させることによって、達成された。DPP4によるペプチド搭載のタンパク質分解は、位置2のセリンをアミノイソ酪酸(Aib)で置換することによって軽減された。ペプチドの螺旋状トポロジーは、Q20R~S16E及びQ24Eの分岐塩架橋を導入することによって安定化され、M27L変異により、潜在的な酸化性が軽減された。親mAbのMSCB97(上記)は、低い内因性抗原結合性を有するよう、及び、重鎖(I102C)のHCDR3(配列番号18)領域におけるイソロイシンからシステインへの点変異(合成ペプチド搭載のための結合点として作用する)を有するように、選択された。エフェクター機能は、IgG4 PAAアイソタイプを使用することによってサイレンシングされた。短いオリゴエチレングリコールスペーサーをmAbとペプチドとの間に組み込んで、ペプチドがGLP1R及びGCGRへと、妨げられずにアクセスできるよう確保した。このスペーサーは更に、コンジュゲート化学を促進する良好な水溶性を付与する。ペプチドスペーサーのmAbへの結合は、グリコールスペーサーの遠位端に反応性ブロモアセトアミド基を導入することによって達成された。スペーサーの近位端は、K30の側鎖を介してOXM変異体に取り付けられた。グルカゴン及びOXMペプチド変異体のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号22及び24により提供される。コンジュゲートは、mAb重鎖におけるシステイン点変異のチオール官能基との反応によって達成された。mAb重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号13及び15により提供される。
【0251】
mAb-OXM化合物の化学合成
mAb-OXM化合物の産生のための全体的な合成スキーム全体を
図10に示す。
【0252】
オキシントモジュリン(OXM)ペプチド変異体の調製:樹脂結合保護ペプチドを、標準的な9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸(N末端His、Nα-Boc-His(Boc)-OH及びLys30、Nα-Fmoc Lys(ivDDE)-OHを除く)を用いて、PAL-PEG-ポリスチレン樹脂上で、合成した。標準的なアミノ酸活性化及びFmoc脱保護戦略を全体にわたって使用した。配列が完了した後、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中の希無水ヒドラジンで処理することにより、C末端リジンの側鎖を選択的に脱保護した。Fmoc-dPEG12-CO2Hは、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)/エチル(ヒドロキシイミノ)-シアノアセテート活性化を使用して、遊離アミンに結合させた。Fmoc基を除去し、得られたアミンをブロモ酢酸無水物のDMF溶液を用いてブロモアセチル化した。
【0253】
フェノール、水、及びトリイソプロピルシランをスカベンジャーとして含有するトリフルオロ酢酸(TFA)による処理によって、全ての保護基を同時に脱保護することで、ペプチドを樹脂から除去した。粗ペプチドを、エーテルでの冷却沈殿によって単離し、溶離液としてアセトニトリル/水を0.1% v/v TFAで使用して、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により精製した。凍結乾燥後に、純粋なペプチドが、毛羽立った白色固体として回収された。これを-80℃で保存した。
【0254】
モノクローナル抗体MSCB97の還元:モノクローナル抗体は、細胞質基質又は増殖培地のいずれかから回収された偶発的なシステイン又はグルタチオン残基にジスルフィド結合した、操作されたCys102残基で単離される。したがって、これらのジスルフィドの予備的還元と、それに続く望ましくないシステインの除去が、OXMペプチド変異体のコンジュゲートの前に必要とされる。還元は、タンパク質A樹脂ビーズ上に固定化されたmAbにより達成された。還元剤(トリカルボキシエチルホスフィン、TCEP)を、還元が完了するまでpH5でカラムを通して循環させた(1時間)。これらの条件下での還元剤としてのTCEPの利点は、還元が有効である一方で、低pHでのジスルフィド結合の再形成は無視できることである。副生成物を洗い流した後、酸性緩衝液(pH3.5の酢酸ナトリウム)を用いて吸着タンパク質をカラムから溶出させた。還元されたmAbを、pH5.5で50mM 3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)に対して2回透析した。
【0255】
mAbに対して2.5当量のTCEPを用いて、pH5の溶液中で還元することによって、より小さな探索試験バッチを調製した。室温で2時間、還元反応を行わせた。ゲル濾過(PD10カラム)によって小分子副生成物を除去し、還元されたMSCB97を10mM MOPS、pH5.5で溶出させた。
【0256】
mAb-OXM化合物の調製:還元MSCB97の溶液を、凍結乾燥OXMペプチド変異体の7.6倍過剰量に添加した。1mMのEDTA溶液を添加して反応性チオールを金属触媒酸化から保護し、MOPS緩衝液(1M、pH8.1)を添加することにより、反応溶液のpHを7.3に上昇させた。反応物を、穏やかに振盪しながら室温で18時間反応を進行させた。2M酢酸の添加でpH5.5に調節することにより、反応をクエンチし、粗コンジュゲートを、タンパク質A上に吸着させ、過剰なペプチド、折り畳まれていない生成物及び副生成物を洗浄により除去して、精製した。生成物を溶出させ(酢酸ナトリウム、pH3.6)、続いて酢酸緩衝液pH5で透析した。
【0257】
250mg、500mg及び500mgのMSCB97から出発して3つの独立した合成を行い、生成物を単一バッチに合わせた。
【0258】
mAb-OXM化合物の分析
調製したmAb-OXM化合物の特性を、(i)分析用疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、(ii)液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析法(LC-ESIMS)によるインタクト質量測定、(iii)分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、及び(iv)SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、を用いて分析した。
【0259】
ヒト及びサル血漿における安定性
OXMは、血漿ペプチダーゼにより急速に代謝される。ヒト及びサル血漿中の酵素分解に対するmAb-OXM化合物(「化合物2」)(
図11)の抵抗性を決定するために、化合物2のエクスビボ安定性を評価した。化合物2を、20mMで、新鮮な(凍結していない)ヘパリン化血漿と共に、37℃で最長168時間インキュベートした。生物学的分析は、ヒトGLP-1受容体トランスフェクトされたHEK細胞におけるcAMP産生を測定する機能性細胞系バイオアッセイを用いて行った。生成されたcAMPの量は、活性OXM類似体の濃度に正比例し、安定性サンプル中の活性OXM類似体の濃度を、既知の濃度の参照標準から内挿することによって決定した。このアッセイを、以前に決定したより安定した対照(対照1)、及び以前に決定したより安定していない対照(対照2)のランク付けに使用した。データを使用して相対的安定性をランク付けし、これを
図12及び13に示す。
【0260】
実施例8:インビトロ試験:ヒト、マウス、ラット、及びカニクイザルのGLP1及びグルカゴン受容体における化合物2のインビトロ効力。
化合物2を含む対象化合物の効力及び種特異性は、ヒト、カニクイザル、ラット又はマウスのGLP1又はGCG受容体のいずれかを安定的に発現するようにトランスフェクトされたHEK293細胞を用いたアッセイにおいて特徴付けられた。各受容体アッセイでは、クローン細胞を、細胞2000~5000個/ウェルの適切な密度で、384ウェルプレートに播種した。5mM HEPES、0.1% BSA及び0.5mM IBMXを添加したHBSSで化合物を希釈し、細胞に添加した。細胞プレートを、細胞クローンに応じて5分又は10分間室温でインキュベートし、次いでcAMP測定のために溶解させた。cAMP濃度は、EnVisionプレートリーダーを備えたLANCE cAMPキットを使用して定量した。標準曲線は、cAMP濃度の逆算のために各アッセイプレートに含まれた。用量反応曲線を分析し、化合物EC50値をGraphpad Prism又はCrucibleで計算した。EC50データを表9~10にまとめる。
【0261】
【表9】
値は、3~7回の実験の平均±SEMを表す。
【0262】
【表10】
値は、3~8回の実験の平均±SEMを表す。
【0263】
実施例9:他の関連GPCRの効力
いくつかのクラスB GPCRを発現する細胞を使用したアッセイで、化合物2の効力を評価した。化合物2を、CALCR、PTHR1、PTHR2、CRHR1、CRHR2、及びVIPR1を発現する細胞を使用して、6つのインビトロcAMPアッセイのパネルで試験した。このアッセイは、試験した各受容体に含まれる陽性対照と共に、業者の標準操作手順に従って実施した。
【0264】
加えて、ヒトGIP受容体を発現する安定した細胞株で化合物2を試験した。細胞を384ウェルプレートに播種し、24時間処理した後、室温で5分間化合物で処理した。cAMP濃度をCisBio HTRF cAMPキットを使用して測定し、結果をGraphPad Prismを用いて分析した。結果を表11~12に示す。
【0265】
【0266】
【0267】
実施例10:インビボ試験:DIOマウスにおける単回用量有効性
食物摂取、体重、耐糖能、及び血漿FGF21レベルを、DIOマウスにおいて、単一用量の化合物2、又はGLP1Rアゴニストであるデュラグルチドの投与の後、評価した。投与の1日前に動物の体重を測定し、BW別にグループ分けした。指示に従い、皮下注射によりマウスに投与した。翌朝、食物を除去し、6時間の絶食を開始した。BW及び食物重量(FW)を記録した。空腹時血糖を測定し、12:00pmにインスリン測定のために血液を採取した。1時間後、マウスにグルコース(1g/kg、20%グルコース、5mL/kg)を腹腔内投与した。血漿インスリンについて、10分後時点の尾部採血により、追加の20μLの血液を採取した。グルコース負荷の10、30、60及び90分後に、血糖計により用い血糖値を測定した。次にマウスをCO2で安楽死させ、最終血液試料を心臓穿刺により採取した。データを表13~19に示す。
【0268】
【表13】
*溶媒に対してp<0.01(投与の18時間後);^それぞれの投与の24時間前に対してp<0.001;#投与の18時間後のデュラグルチド(0.3nmol/kg)に対してp<0.0001
二元配置分散分析、シダックの多重比較検定
値は、溶媒の投与24時間前(n=7)を除き、各時点で1群あたり8匹の動物からのデータの平均±SEMを表す
【0269】
【表14】
*溶媒に対してp<0.01;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)に対してp<0.05
二元配置分散分析反復測定、テューキーの多重比較検定。18時間後の時点のデータのみを示す
体重変化率は、0日目(投与前)の体重に対して計算される。
各値は、8匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0270】
【表15】
各値は、8匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
【0271】
【表16】
*溶媒に対してp<0.05;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)及びJNJ-64151789(4.0及び8.0nmol/kg)に対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、8匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0272】
【表17】
*溶媒に対してp<0.05;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)に対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、8匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0273】
【表18】
各値は、8匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0274】
【表19】
*全ての群に対してp<0.0001;^化合物2(2.0nmol/kg)を除く全ての群に対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、8匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0275】
実施例11:インビボ試験:DIOマウスにおける繰り返し投与
GLP1R/GCGR二重アゴニスト(化合物2)、及びGLP1Rアゴニスト(デュラグルチド)の、DIOマウスにおける効果を、9日間にわたる繰り返し投与中にモニターした。投与頻度を制御するために、全ての動物に毎日投与した。投与頻度は、化合物2及びデュラグルチドのDIOマウスPKデータに基づいて決定した。デュラグルチド群の動物には、この薬物を毎日投与した。溶媒処理動物には、溶媒を毎日投与した。化合物2を1.0、2.0又は4.0nmol/kgで与える動物には、この化合物を3日ごとに投与し、化合物を注射しなかった日には溶媒を投与した。投与開始の1日前に動物の体重を測定し、体重別にグループ分けした。1~3pmの間に、指示に従い、皮下注射によって全てのマウスに投与した。これらの処理群において、1~3pmの間に、食物摂取及び体重を毎日モニターした。
【0276】
最初の投与から24時間後を初回として、3群のマウスを、1.0、2.0,又は4.0nmol/kgの化合物2処理動物とペアフィード(PF)した。ペアフィードマウスのホッパー中の食物の量は、マッチされている化合物処理群のマウスによってそれまでの24時間で消費された平均食物と一致するように調整した。全てのPF群は、溶媒と共に毎日投与された。9日目(又は、ペアフィード群については10日目)に、動物を6時間絶食させ、体重及び空腹時血糖を測定した。インスリン、FGF21、及び血漿脂質の測定のために血液を採取した。食物摂取、体重、身体組成、空腹時血糖、空腹時インスリン、空腹時FGF21、及び空腹時血漿脂質データを表20~26に示す。
【0277】
【表20】
*溶媒に対してp<0.05;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)に対してp<0.05;#化合物2(4.0nmol/kg)に対してp<0.05
二元配置分散分析反復測定、テューキーの多重比較検定
全てのPF群は、それぞれの処理群からの平均食物摂取量(データは図示せず)を与えられた。
各値は、6~10匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
【0278】
【表21】
T:処理;V:溶媒;1:デュラグルチド(0.3nmol/kg);2~3:化合物2(1.0nmol/kg);4~5:化合物2(2.0nmol/kg);6~7:化合物2(4.0nmol/kg)
*全ての他の処理に対してp<0.01;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)に対してp<0.05;#それぞれのPF群に対してp<0.05;$JNJ-64151789(1.0及び2.0nmol/kg)に対してp<0.05;&JNJ-64151789(2.0nmol/kg)に対してp<0.05
二元配置分散分析反復測定、テューキーの多重比較検定。
体重変化%は、0日目(投与前)の体重に対して計算される。
各値は、10匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
【0279】
【表22】
*溶媒に対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、5匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0280】
【表23】
*溶媒に対してp<0.05;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)に対してp<0.05;#JNJ-64151789(4.0nmol/kg)PFに対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、10匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0281】
【表24】
*溶媒に対してp<0.05;^化合物2(2.0nmol/kg)PFに対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、10匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0282】
【表25】
*全ての群に対してp<0.05;^化合物2(4.0nmol/kg)PFに対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
値は、群当たり10匹の動物からのデータの平均±SEMを表す。ただし化合物2(1.0nmol/kg)及び化合物2(4.0nmol/kg)PFは、N=9である
【0283】
【表26】
*化合物2(4.0nmol/kg)PFに対してp<0.05;^全ての群に対してp<0.05;#化合物2(1.0nmol/kg)及び化合物2(2.0nmol/kg)PFに対してp<0.05;$ジュラグルチド(0.3nmol/kg)を除く全ての群に対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
値は、遊離脂肪酸については群当たり10匹の動物からのデータ、遊離グリセロールについては群当たり8~10匹の動物からのデータ、トリグリセリド及び総コレステロールについては群当たり9~10匹の動物からのデータの平均±SEMを表す
【0284】
実施例12:インビトロ試験:カニクイザルにおける単回用量の有効性
生物学的に無処置のカニクイザルを、処理前3週間の間に食物摂取に関して毎日モニターした。処理の開始時に、動物を4つの群に分け、同様の平均体重(n=8~9、各群平均体重7.4~7.9kg)を得た。各群の動物は、1、3、5,又は7.5nmol/kgの化合物2に対応する単回皮下投与を受けた。食物消費量を、更に14日間毎日モニターした。体重を投与日に測定し、投与後4、7、10、14日及び21日後に測定した。食物摂取の割合変化は、その日の食物摂取量を、投与前の7日間の平均の1日食物摂取量と比較することによって、毎日決定した。結果を
図14及び
図15に示す。
【0285】
実施例13:薬物動態(PK)、薬物動態(PK)/薬力学(PD)分析
DIOマウスPK
化合物2の時間経過をDIOマウスで評価した(表27)。動物(各時点でn=3)に10nmol/kgを皮下投与した。
【0286】
【表27】
各値は、3匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
【0287】
ラットPK
化合物2の薬物動態パラメータを、Sprague-Dawleyラットで評価した。薬物動態パラメータ(表28)の決定のために、投与から0、24、48、72、144、216、312、408、及び504時間後に採取したサンプルから、バイオアッセイ測定曝露を使用した。
【0288】
【表28】
データは平均+/-標準偏差、曝露バイオアッセイ
【0289】
カニクイザルPK
化合物2の薬物動態パラメータを、カニクイザルで評価した。動物に6.45nmol/kgで静脈内投与又は皮下投与した。薬物動態パラメータ(表29)の決定のために、投与から0、1、6、24、48、72、120、240、336、432、及び528時間後に採取したサンプルから、バイオアッセイ測定曝露を使用した。
【0290】
【0291】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく前述の実施形態に変更を行うことができることを理解されたい。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本明細書によって定義されるような本発明の趣旨及び範囲内の修正をも包含することを意図するものと理解される。
【0292】
引用した全ての文献は、参照により本明細書に援用される。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
配列番号16、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配列をそれぞれ有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント。
[発明2]
前記単離されたモノクローナル抗体が、配列番号12のポリペプチド配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号14のポリペプチド配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、発明1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント。
[発明3]
Fc部分を更に含む、発明1又は2に記載の単離されたモノクローナル抗体。
[発明4]
配列番号13のポリペプチド配列を有する重鎖(HC)と、配列番号15のポリペプチド配列を有する軽鎖(LC)とを含む、発明3に記載の単離されたモノクローナル抗体。
[発明5]
発明1~4のいずれか一つに記載の前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸。
[発明6]
発明5に記載の前記単離された核酸を含む、ベクター。
[発明7]
発明6に記載の前記ベクターを含む、宿主細胞。
[発明8]
単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、該方法は、発明7に記載の前記宿主細胞を、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する条件下で培養することと、該抗体又はその抗原結合フラグメントを該細胞又は培養物から回収することとを含む、前記方法。
[発明9]
発明1~4のいずれか一つに記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと、それにコンジュゲートされた少なくとも1つの薬理学的活性部分とを含む、コンジュゲート。
[発明10]
前記薬理学的活性部分が治療用ペプチドである、発明9に記載のコンジュゲート。
[発明11]
前記治療用ペプチドが、配列番号18のシステイン残基において、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる、発明10に記載のコンジュゲート。
[発明12]
前記治療用ペプチドが、リンカーを介して前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる、発明10又は11に記載のコンジュゲート。
[発明13]
前記リンカーが、ペプチドリンカー、炭化水素リンカー、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、ポリプロピレングリコール(PPG)リンカー、多糖類リンカー、ポリエステルリンカー、又はPEG及び組み込み複素環からなるハイブリッドリンカーを含む、発明12に記載のコンジュゲート。
[発明14]
前記治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、エキセンジン(エキセナチド)、アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬(antagonists)、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群から選択される、発明10~13のいずれか一つに記載のコンジュゲート。
[発明15]
前記治療用ペプチドが、配列番号24のポリペプチド配列を含むオキシントモジュリンである、発明14に記載のコンジュゲート。
[発明16]
前記治療用ペプチドの側鎖上に導入された求電子物質(好ましくはブロモアセトアミド又はマレイミド)を、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの配列番号18のシステイン残基のスルフヒドリル基と反応させ、これにより、該治療用ペプチドと、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとの間に共有結合を形成することを含む、発明10~15のいずれか一つに記載の前記コンジュゲートを製造する方法。
[発明17]
発明9~15のいずれか一つに記載の前記コンジュゲートと、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
[発明18]
発明9~15のいずれか一つに記載の前記コンジュゲートを含む医薬組成物の製造方法であって、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを、薬学的に許容可能な担体と組み合わせることで、前記医薬組成物を得ることを含む、前記方法。
[発明19]
対象における治療用ペプチドの半減期を延長する方法であって、該方法は、該治療用ペプチドを、それぞれ配列番号16、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配列を有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとコンジュゲートさせることを含み、該治療用ペプチドは、配列番号18のCys残基で、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる、前記方法。
[発明20]
前記治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、エキセンジン(エキセナチド)、アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬(antagonists)、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群から選択される、発明19に記載の方法。
【配列表】