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特許7231614レーザガス管理システム、電子デバイスの製造方法及びエキシマレーザシステムの制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】レーザガス管理システム、電子デバイスの製造方法及びエキシマレーザシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/036 20060101AFI20230221BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230221BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20230221BHJP
   H01S 3/225 20060101ALI20230221BHJP
   H01S 3/23 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H01S3/036
G03F7/20 502
H01S3/00 G
H01S3/225
H01S3/23
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020510199
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2018012162
(87)【国際公開番号】W WO2019186651
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】對馬 弘朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 夏志
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/081819(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/072863(WO,A1)
【文献】特開2016-076544(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076415(WO,A1)
【文献】特開2001-239275(JP,A)
【文献】特開2001-044534(JP,A)
【文献】特開平05-347443(JP,A)
【文献】特開平03-265180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0063016(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0193997(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/30
G03F 7/20 - 7/24
H01L 21/027- 21/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有ガス及びバッファガスを含むレーザガスと一対の放電電極とを収容するチャンバと、前記放電電極に供給する電気エネルギーを保持する充電器と、を備えて各々パルスレーザ光を出力する複数のエキシマレーザ装置と接続され、前記複数のエキシマレーザ装置から排出されたレーザガスを再生して再生ガスとし、前記再生ガスを前記複数のエキシマレーザ装置に供給するガス再生装置と、
制御部であって、前記複数のエキシマレーザ装置の各々におけるパラメータである充電電圧変化量、チャンバガス圧変化量、ガス消費量、パルスエネルギー安定性、及びバースト特性値のうちの少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたか否かを判定し、前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたエキシマレーザ装置の台数が2以上である場合に、前記ガス再生装置が異常であると判定し、前記ガス再生装置から前記複数のエキシマレーザ装置への前記再生ガスの供給を停止させ、前記複数のエキシマレーザ装置に、前記ガス再生装置と前記複数のエキシマレーザ装置との外部からレーザガスを供給させる前記制御部と、
を含み、
前記充電電圧変化量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点における前記充電器の充電電圧を第1の充電電圧とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点における前記充電器の充電電圧を第2の充電電圧とした場合の、前記第2の充電電圧から前記第1の充電電圧を減じた値であり、
前記チャンバガス圧変化量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点における前記チャンバに収容されたレーザガスの圧力を第1の圧力とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点における前記チャンバに収容されたレーザガスの圧力を第2の圧力とした場合の、前記第2の圧力から前記第1の圧力を減じた値であり、
前記ガス消費量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点までに前記チャンバに供給されたレーザガスの積算量を第1の積算量とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点までに前記チャンバに供給されたレーザガスの積算量を第2の積算量とした場合の、前記第2の積算量から前記第1の積算量を減じた値であり、
前記パルスエネルギー安定性は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々において第1の時点からその後の第2の時点までに出力されたパルスレーザ光の複数のパルスのパルスエネルギーの標準偏差を前記パルスエネルギーの平均値または目標パルスエネルギーで除した値であり、
前記バースト特性値は、バースト運転される前記複数のエキシマレーザ装置の各々におけるバースト期間の終了時の前記充電器の充電電圧から前記バースト期間の開始時の前記充電器の充電電圧を減じた値である
レーザガス管理システム。
【請求項2】
請求項1記載のレーザガス管理システムであって、
前記予め決められた閾値は、前記チャンバを用いて生成されたパルスレーザ光のパルス数に応じて決められている、
レーザガス管理システム。
【請求項3】
請求項1記載のレーザガス管理システムであって、
前記制御部による判定の結果に基づいて前記ガス再生装置が異常であることを表示する表示装置をさらに備える、
レーザガス管理システム。
【請求項4】
請求項1記載のレーザガス管理システムであって、
前記制御部は、前記ガス再生装置が異常であると判定した場合に、前記複数のエキシマレーザ装置から排出された前記レーザガスの前記ガス再生装置への供給を停止させる、
レーザガス管理システム。
【請求項5】
請求項4記載のレーザガス管理システムであって、
前記複数のエキシマレーザ装置の各々は、当該エキシマレーザ装置から排出されたレーザガスを前記ガス再生装置に供給する第5のバルブと、当該エキシマレーザ装置から排出されたレーザガスを装置外部に排気する第6のバルブを含み、
前記制御部は、前記ガス再生装置が異常であると判定した場合に、前記複数のエキシマレーザ装置の各々に含まれる前記第5のバルブを閉じ、前記複数のエキシマレーザ装置の各々に含まれる前記第6のバルブを開ける
レーザガス管理システム。
【請求項6】
請求項1記載のレーザガス管理システムであって、
前記ガス再生装置は、前記複数のエキシマレーザ装置に前記再生ガスを供給する第2のバルブと、前記複数のエキシマレーザ装置に装置外部からのレーザガスを供給する第4のバルブとを含み、
前記制御部は、前記ガス再生装置が異常であると判定した場合に、前記第2のバルブを閉じ、前記第4のバルブを開ける
レーザガス管理システム。
【請求項7】
請求項1記載のレーザガス管理システムであって、
前記制御部は、前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたエキシマレーザ装置の台数が1である場合に、前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えた1つのエキシマレーザ装置が異常であると判定し、そのエキシマレーザ装置への前記再生ガスの供給と、そのエキシマレーザ装置から排出された前記レーザガスの前記ガス再生装置への供給と、を停止し、そのエキシマレーザ装置のレーザ発振を停止させる、
レーザガス管理システム。
【請求項8】
請求項7記載のレーザガス管理システムであって、
前記制御部による判定の結果に基づいて前記1つのエキシマレーザ装置が異常であることを表示する表示装置をさらに備える、
レーザガス管理システム。
【請求項9】
請求項7記載のレーザガス管理システムであって、
前記複数のエキシマレーザ装置の各々は、当該エキシマレーザ装置に前記再生ガスを供給する第1のバルブを含み、
前記ガス再生装置は、前記複数のエキシマレーザ装置に前記再生ガスを供給する第2のバルブを含み、
前記制御部は、前記1つのエキシマレーザ装置が異常であると判定した場合に、前記1つのエキシマレーザ装置に含まれる前記第1のバルブを閉じ、前記ガス再生装置が異常であると判定した場合に、前記第2のバルブを閉じる、
レーザガス管理システム。
【請求項10】
請求項7記載のレーザガス管理システムであって、
前記複数のエキシマレーザ装置の各々は、当該エキシマレーザ装置に装置外部からのレーザガスを供給する第3のバルブを含み、
前記ガス再生装置は、前記複数のエキシマレーザ装置に装置外部からのレーザガスを供給する第4のバルブを含み、
前記制御部は、前記1つのエキシマレーザ装置が異常であると判定した場合に、前記1つのエキシマレーザ装置に含まれる前記第3のバルブを開き、前記ガス再生装置が異常であると判定した場合に、前記第4のバルブを開く、
レーザガス管理システム。
【請求項11】
フッ素含有ガス及びバッファガスを含むレーザガスと一対の放電電極とを収容するチャンバと、前記放電電極に供給する電気エネルギーを保持する充電器と、を備えて各々パルスレーザ光を出力する複数のエキシマレーザ装置と接続され、前記複数のエキシマレーザ装置から排出されたレーザガスを再生して再生ガスとし、前記再生ガスを前記複数のエキシマレーザ装置に供給するガス再生装置と、
制御部であって、前記複数のエキシマレーザ装置の各々におけるパラメータである充電電圧変化量、チャンバガス圧変化量、ガス消費量、パルスエネルギー安定性、及びバースト特性値のうちの少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたか否かを判定し、前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたエキシマレーザ装置の台数が2以上の所定の値以上である場合に、前記ガス再生装置が異常であると判定し、前記ガス再生装置から前記複数のエキシマレーザ装置への前記再生ガスの供給を停止させ、前記複数のエキシマレーザ装置に、前記ガス再生装置と前記複数のエキシマレーザ装置との外部からレーザガスを供給させる前記制御部と、
を含み、
前記充電電圧変化量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点における前記充電器の充電電圧を第1の充電電圧とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点における前記充電器の充電電圧を第2の充電電圧とした場合の、前記第2の充電電圧から前記第1の充電電圧を減じた値であり、
前記チャンバガス圧変化量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点における前記チャンバに収容されたレーザガスの圧力を第1の圧力とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点における前記チャンバに収容されたレーザガスの圧力を第2の圧力とした場合の、前記第2の圧力から前記第1の圧力を減じた値であり、
前記ガス消費量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点までに前記チャンバに供給されたレーザガスの積算量を第1の積算量とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点までに前記チャンバに供給されたレーザガスの積算量を第2の積算量とした場合の、前記第2の積算量から前記第1の積算量を減じた値であり、
前記パルスエネルギー安定性は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々において第1の時点からその後の第2の時点までに出力されたパルスレーザ光の複数のパルスのパルスエネルギーの標準偏差を前記パルスエネルギーの平均値または目標パルスエネルギーで除した値であり、
前記バースト特性値は、バースト運転される前記複数のエキシマレーザ装置の各々におけるバースト期間の終了時の前記充電器の充電電圧から前記バースト期間の開始時の前記充電器の充電電圧を減じた値である
レーザガス管理システム。
【請求項12】
請求項11記載のレーザガス管理システムであって、
前記制御部は、前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたエキシマレーザ装置の台数が前記所定の値未満である場合に、前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたエキシマレーザ装置が異常であると判定し、そのエキシマレーザ装置への前記再生ガスの供給と、そのエキシマレーザ装置から排出された前記レーザガスの前記ガス再生装置への供給と、を停止し、そのエキシマレーザ装置のレーザ発振を停止させる、
レーザガス管理システム。
【請求項13】
電子デバイスの製造方法であって、
フッ素含有ガス及びバッファガスを含むレーザガスと一対の放電電極とを収容するチャンバと、前記放電電極に供給する電気エネルギーを保持する充電器と、を備えて各々パルスレーザ光を出力する複数のエキシマレーザ装置と、
前記複数のエキシマレーザ装置と接続され、前記複数のエキシマレーザ装置から排出されたレーザガスを再生して再生ガスとし、前記再生ガスを前記複数のエキシマレーザ装置に供給するガス再生装置と、
制御部であって、前記複数のエキシマレーザ装置の各々におけるパラメータである充電電圧変化量、チャンバガス圧変化量、ガス消費量、パルスエネルギー安定性、及びバースト特性値のうちの少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたか否かを判定し、前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたエキシマレーザ装置の台数が2以上の所定の値以上である場合に、前記ガス再生装置が異常であると判定し、前記ガス再生装置から前記複数のエキシマレーザ装置への前記再生ガスの供給を停止させ、前記複数のエキシマレーザ装置に、前記ガス再生装置と前記複数のエキシマレーザ装置との外部からレーザガスを供給させる前記制御部と、
を備え、
前記充電電圧変化量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点における前記充電器の充電電圧を第1の充電電圧とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点における前記充電器の充電電圧を第2の充電電圧とした場合の、前記第2の充電電圧から前記第1の充電電圧を減じた値であり、
前記チャンバガス圧変化量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点における前記チャンバに収容されたレーザガスの圧力を第1の圧力とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点における前記チャンバに収容されたレーザガスの圧力を第2の圧力とした場合の、前記第2の圧力から前記第1の圧力を減じた値であり、
前記ガス消費量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点までに前記チャンバに供給されたレーザガスの積算量を第1の積算量とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点までに前記チャンバに供給されたレーザガスの積算量を第2の積算量とした場合の、前記第2の積算量から前記第1の積算量を減じた値であり、
前記パルスエネルギー安定性は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々において第1の時点からその後の第2の時点までに出力されたパルスレーザ光の複数のパルスのパルスエネルギーの標準偏差を前記パルスエネルギーの平均値または目標パルスエネルギーで除した値であり、
前記バースト特性値は、バースト運転される前記複数のエキシマレーザ装置の各々におけるバースト期間の終了時の前記充電器の充電電圧から前記バースト期間の開始時の前記充電器の充電電圧を減じた値であるエキシマレーザシステムのうちの1つのエキシマレーザ装置によって、レーザ光を生成し、
前記レーザ光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記レーザ光を露光すること
を含む電子デバイスの製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の電子デバイスの製造方法であって、
前記制御部は、前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたエキシマレーザ装置の台数が前記所定の値未満である場合に、前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたエキシマレーザ装置が異常であると判定し、そのエキシマレーザ装置への前記再生ガスの供給と、そのエキシマレーザ装置から排出された前記レーザガスの前記ガス再生装置への供給と、を停止し、そのエキシマレーザ装置のレーザ発振を停止させる、
電子デバイスの製造方法。
【請求項15】
フッ素含有ガス及びバッファガスを含むレーザガスと一対の放電電極とを収容するチャンバと、前記放電電極に供給する電気エネルギーを保持する充電器と、を備えて各々パルスレーザ光を出力する複数のエキシマレーザ装置と、前記複数のエキシマレーザ装置から排出されたレーザガスを再生して再生ガスとし、前記再生ガスを前記複数のエキシマレーザ装置に供給するガス再生装置と、を含むエキシマレーザシステムの制御方法であって、
前記複数のエキシマレーザ装置の各々におけるパラメータである充電電圧変化量、チャンバガス圧変化量、ガス消費量、パルスエネルギー安定性、及びバースト特性値のうちの少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたか否かを判定することと、
前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたエキシマレーザ装置の台数が2以上の所定の値以上である場合に、前記ガス再生装置が異常であると判定し、前記ガス再生装置から前記複数のエキシマレーザ装置への前記再生ガスの供給を停止させ、前記複数のエキシマレーザ装置に、前記ガス再生装置と前記複数のエキシマレーザ装置との外部からレーザガスを供給させることと、
を含み、
前記充電電圧変化量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点における前記充電器の充電電圧を第1の充電電圧とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点における前記充電器の充電電圧を第2の充電電圧とした場合の、前記第2の充電電圧から前記第1の充電電圧を減じた値であり、
前記チャンバガス圧変化量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点における前記チャンバに収容されたレーザガスの圧力を第1の圧力とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点における前記チャンバに収容されたレーザガスの圧力を第2の圧力とした場合の、前記第2の圧力から前記第1の圧力を減じた値であり、
前記ガス消費量は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々においてパルスレーザ光を出力させた第1の時点までに前記チャンバに供給されたレーザガスの積算量を第1の積算量とし、その後さらにパルスレーザ光を出力させた第2の時点までに前記チャンバに供給されたレーザガスの積算量を第2の積算量とした場合の、前記第2の積算量から前記第1の積算量を減じた値であり、
前記パルスエネルギー安定性は、前記複数のエキシマレーザ装置の各々において第1の時点からその後の第2の時点までに出力されたパルスレーザ光の複数のパルスのパルスエネルギーの標準偏差を前記パルスエネルギーの平均値または目標パルスエネルギーで除した値であり、
前記バースト特性値は、バースト運転される前記複数のエキシマレーザ装置の各々におけるバースト期間の終了時の前記充電器の充電電圧から前記バースト期間の開始時の前記充電器の充電電圧を減じた値である
エキシマレーザシステムの制御方法。
【請求項16】
請求項15記載のエキシマレーザシステムの制御方法であって、
前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたエキシマレーザ装置の台数が前記所定の値未満である場合に、前記少なくとも1つのパラメータが予め決められた閾値を超えたエキシマレーザ装置が異常であると判定し、そのエキシマレーザ装置への前記再生ガスの供給と、そのエキシマレーザ装置から排出された前記レーザガスの前記ガス再生装置への供給と、を停止し、そのエキシマレーザ装置のレーザ発振を停止させること
をさらに含むエキシマレーザシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザガス管理システム、電子デバイスの製造方法及びエキシマレーザシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置(以下、「露光装置」という)においては、半導体集積回路の微細化および高集積化につれて、解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。一般的に、露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられる。たとえば、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線のレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置、ならびに波長193nmの紫外線のレーザ光を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられる。
【0003】
次世代の露光技術としては、露光装置側の露光用レンズとウエハとの間が液体で満たされる液浸露光が実用化されている。この液浸露光では、露光用レンズとウエハとの間の屈折率が変化するため、露光用光源の見かけの波長が短波長化する。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として液侵露光が行われた場合、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光(又はArF液浸リソグラフィー)という。
【0004】
KrFエキシマレーザ装置およびArFエキシマレーザ装置の自然発振幅は、約350~400pmと広い。そのため、KrF及びArFレーザ光のような紫外線を透過する材料で投影レンズを構成すると、色収差が発生してしまう場合がある。その結果、解像力が低下し得る。そこで、ガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を、色収差が無視できる程度となるまで狭帯域化する必要がある。そのため、ガスレーザ装置のレーザ共振器内には、スペクトル線幅を狭帯域化するために、狭帯域化素子(エタロン、グレーティング等)を有する狭帯域化モジュール(Line Narrow Module:LNM)が設けられる場合がある。以下では、スペクトル線幅が狭帯域化されるレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平03-265180号公報
【文献】特開2001-044534号公報
【文献】国際公開第2017/081819号
【文献】国際公開第2017/072863号
【文献】国際公開第2015/076415号
【概要】
【0006】
本開示の1つの観点に係るレーザガス管理システムは、複数のエキシマレーザ装置と接続され、複数のエキシマレーザ装置から排出されたレーザガスを再生して再生ガスとし、再生ガスを複数のエキシマレーザ装置に供給するガス再生装置と、制御部であって、複数のエキシマレーザ装置の各々の少なくとも1つのパラメータが予め決められた範囲を超えたか否かを判定し、少なくとも1つのパラメータが予め決められた範囲を超えたエキシマレーザ装置の台数が2以上である場合に、ガス再生装置が異常であると判定する制御部と、を含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係るレーザガス管理システムは、複数のエキシマレーザ装置と接続され、複数のエキシマレーザ装置から排出されたレーザガスを再生して再生ガスとし、再生ガスを複数のエキシマレーザ装置に供給するガス再生装置と、制御部であって、複数のエキシマレーザ装置の各々の少なくとも1つのパラメータが予め決められた範囲を超えたか否かを判定し、少なくとも1つのパラメータが予め決められた範囲を超えたエキシマレーザ装置の台数が2以上の所定の値以上である場合に、ガス再生装置が異常であると判定する制御部と、を含む。
【0008】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、複数のエキシマレーザ装置と、複数のエキシマレーザ装置と接続され、複数のエキシマレーザ装置から排出されたレーザガスを再生して再生ガスとし、再生ガスを複数のエキシマレーザ装置に供給するガス再生装置と、制御部であって、複数のエキシマレーザ装置の各々の少なくとも1つのパラメータが予め決められた範囲を超えたか否かを判定し、少なくとも1つのパラメータが予め決められた範囲を超えたエキシマレーザ装置の台数が2以上の所定の値以上である場合に、ガス再生装置が異常であると判定する制御部と、を備えるエキシマレーザシステムのうちの1つのエキシマレーザ装置によって、レーザ光を生成し、レーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にレーザ光を露光することを含む。
本開示の1つの観点に係るエキシマレーザシステムの制御方法は、複数のエキシマレーザ装置と、複数のエキシマレーザ装置から排出されたレーザガスを再生して再生ガスとし、再生ガスを複数のエキシマレーザ装置に供給するガス再生装置と、を含むエキシマレーザシステムの制御方法であって、複数のエキシマレーザ装置の各々の少なくとも1つのパラメータが予め決められた範囲を超えたか否かを判定することと、少なくとも1つのパラメータが予め決められた範囲を超えたエキシマレーザ装置の台数が2以上の所定の値以上である場合に、ガス再生装置が異常であると判定することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、比較例に係るガス再生装置50及びこれに接続された複数のレーザ装置301~30nの構成を概略的に示す。
図2図2は、図1に示されるレーザ装置30kの構成を概略的に示す。
図3図3は、図1に示されるガス再生装置50の構成を概略的に示す。
図4図4は、図1に示されるガス再生装置50におけるガス昇圧制御部541の処理を示すフローチャートである。
図5図5は、図1に示されるガス再生装置50におけるガス再生制御部542の処理を示すフローチャートである。
図6図6は、図1に示されるガス再生装置50におけるガス供給制御部543の処理を示すフローチャートである。
図7図7は、本開示の第1の実施形態に係るレーザガス管理システム及びこれに接続されたレーザ装置301~30nの構成を概略的に示す。
図8図8は、第1の実施形態においてレーザ管理制御部55が行うガス再生装置50の異常判定のフローチャートである。
図9図9は、図8に示されるレーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントする処理の詳細を示すフローチャートである。
図10図10は、第1の実施形態において各レーザ装置のレーザ制御部31が行うエネルギー制御のフローチャートである。
図11図11は、第1の実施形態において各レーザ装置のレーザ制御部31が行うガス制御のフローチャートである。
図12図12は、図11に示されるガス圧制御の詳細を示すフローチャートである。
図13図13は、図11に示される部分ガス交換の詳細を示すフローチャートである。
図14図14は、第1の実施形態において各レーザ装置のレーザ制御部31が行う異常フラグFkの設定のフローチャートである。
図15図15は、図14に示されるレーザ性能パラメータの計測と計算の詳細を示すフローチャートである。
図16図16は、本開示の第2の実施形態に係るレーザガス管理システム及びこれに接続されたレーザ装置301~30nの構成を概略的に示す。
図17図17は、第2の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントする処理の詳細を示すフローチャートである。
図18図18は、第2の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う異常フラグFkの設定のフローチャートである。
図19図19は、第2の実施形態において各レーザ装置のレーザ制御部31が行うエネルギー制御のフローチャートである。
図20A図20Aは、第2の実施形態においてレーザ管理制御部55の記憶部57に記憶されるガス制御関連データの例を示す。
図20B図20Bは、第2の実施形態においてレーザ管理制御部55の記憶部57に記憶されるガス制御関連データの例を示す。
図21図21は、第2の実施形態においてレーザ管理制御部55が行うレーザ性能パラメータの計算のフローチャートである。
図22図22は、図21に示される時刻Time(a)におけるガス制御関連データを読み込む処理の詳細を示すフローチャートである。
図23図23は、図21に示される時刻Time(b)におけるガス制御関連データを読み込む処理の詳細を示すフローチャートである。
図24図24は、図21に示される所定パルス数ΔNあたりのレーザ性能パラメータを計算する処理の詳細を示すフローチャートである。
図25図25は、図21に示されるパルスエネルギー安定性を計算する処理の詳細を示すフローチャートである。
図26図26は、第2の実施形態においてレーザ性能パラメータに基づいてガス再生装置50の異常を判定する例を示す表である。
図27図27は、本開示の第3の実施形態においてレーザ性能パラメータの異常判定の閾値を計算するために考慮されるレーザ性能パラメータの変化を示すグラフである。
図28図28は、第3の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う異常フラグFkの設定のフローチャートである。
図29図29は、第3の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う異常判定の閾値の計算のフローチャートである。
図30図30は、本開示の第4の実施形態において各レーザ装置が行うバースト運転の概念を説明する図である。
図31図31は、本開示の第4の実施形態において解析されるバースト特性値を説明する図である。
図32図32は、第4の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う異常フラグFkの設定のフローチャートである。
図33図33は、第4の実施形態において各レーザ装置のレーザ制御部31が行うエネルギー制御のフローチャートである。
図34図34は、第4の実施形態においてレーザ管理制御部55が行うレーザ性能パラメータの計算のフローチャートである。
図35図35は、図34に示されるバースト特性値を計算する処理の詳細を示すフローチャートである。
図36図36は、第4の実施形態においてレーザ性能パラメータに基づいてガス再生装置50の異常を判定する例を示す表である。
図37図37は、本開示の第5の実施形態に係るレーザガス管理システム及びこれに接続されたレーザ装置301~30nの構成を概略的に示す。
図38図38は、第5の実施形態においてレーザ管理制御部55が行うガス再生装置50の異常判定のフローチャートである。
図39図39は、図38に示されるレーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の停止処理の詳細を示すフローチャートである。
図40図40は、レーザ装置30kに接続された露光装置100の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0010】
内容
1.比較例に係るエキシマレーザ装置及びガス再生装置
1.1 構成
1.1.1 レーザ装置
1.1.1.1 レーザ発振システム
1.1.1.2 レーザガス制御システム
1.1.2 ガス再生装置
1.1.2.1 ガス昇圧部
1.1.2.2 ガス再生部
1.1.2.3 ガス供給部
1.1.2.4 ガス再生制御部
1.2 動作
1.2.1 レーザ装置の動作
1.2.1.1 レーザ発振システムの動作
1.2.1.2 レーザガス制御システムの動作
1.2.2 ガス再生装置の動作
1.2.2.1 ガス昇圧制御部の動作
1.2.2.2 ガス再生制御部の動作
1.2.2.3 ガス供給制御部の動作
1.3 課題
2.ガス再生装置の異常を判定するレーザガス管理システム
2.1 構成
2.2 動作
2.2.1 ガス再生装置の異常判定の処理
2.2.1.1 異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントする処理
2.2.2 レーザ制御部の処理
2.2.2.1 エネルギー制御
2.2.2.2 ガス制御
2.2.3 異常フラグFkの設定処理
2.2.3.1 レーザ性能パラメータの計測と計算
2.3 作用
3.レーザ管理制御部が異常フラグを設定する例
3.1 構成
3.2 動作
3.2.1 異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントする処理
3.2.2 異常フラグFkの設定処理
3.2.3 レーザ制御部の処理
3.2.4 レーザ性能パラメータの計算
3.2.5 レーザ性能パラメータに基づくガス再生装置の異常判定
4.チャンバのパルス数に応じて異常判定の閾値を計算する例
4.1 概要
4.2 動作
4.2.1 異常フラグFkの設定処理
4.2.1.1 レーザ性能パラメータの異常判定の閾値の計算
5.バースト特性値に基づいてキセノン濃度異常を判定する例
5.1 概要
5.2 動作
5.2.1 異常フラグFkの設定処理
5.2.2 レーザ制御部の処理
5.2.3 レーザ性能パラメータの計算
5.2.4 レーザ性能パラメータに基づくガス再生装置の異常判定
6.再生ガスと新ガスをレーザ毎に切り替え可能にした例
6.1 構成
6.2 動作
6.2.1 ガス再生装置の異常判定の処理
6.2.1.1 異常が検出されたレーザ装置の停止処理
7.その他
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
1.比較例に係るエキシマレーザ装置及びガス再生装置
1.1 構成
図1は、比較例に係るガス再生装置50及びこれに接続された複数のレーザ装置301~30nの構成を概略的に示す。
複数のレーザ装置301~30nは、n台のレーザ装置を含んでいる。但し、図1には、番号1のレーザ装置301と番号nのレーザ装置30nだけが示されている。レーザ装置301~30nは、互いに実質的に同一の構成を有している。本開示においては、1以上n以下の任意の整数をkとして、番号kのレーザ装置を、レーザ装置30kと称することがある。番号kのレーザ装置30kに含まれる構成要素についても、末尾にkを含む符号で示すことがある。
【0013】
レーザ装置301~30nは、それぞれ配管241~24nを介して、配管24に接続されている。配管24は、ガス再生装置50に接続されている。配管24は、レーザ装置301~30nから排出された排出ガスをガス再生装置50に供給するように構成されている。
【0014】
レーザ装置301~30nは、それぞれ配管271~27nを介して、配管27に接続されている。配管27は、ガス再生装置50に接続されている。配管27及び配管271~27nは、ガス再生装置50から供給されるバッファガスをレーザ装置301~30nに供給するように構成されている。レーザ装置301~30nがArFエキシマレーザ装置である場合、バッファガスは、例えば、アルゴンガス、ネオンガス、及び、少量のキセノンガスを含むレーザガスである。バッファガスは、後述のバッファガス供給源Bから供給される新ガスであってもよいし、ガス再生装置50において不純物を低減された再生ガスであってもよい。
また、レーザ装置301~30nがKrFエキシマレーザ装置である場合は、バッファガスは、たとえば、クリプトンガス、及び、ネオンガス、を含むレーザガスである。
さらに、レーザ装置301~30nがXeFエキシマレーザ装置である場合は、バッファガスは、たとえば、キセノンガス、及び、ネオンガス、を含むレーザガスである。
【0015】
レーザ装置301~30nは、それぞれ配管281~28nを介して、配管28に接続されている。配管28は、フッ素含有ガス供給源F2に接続されている。フッ素含有ガス供給源F2は、フッ素含有ガスを収容したガスボンベである。レーザ装置301~30nがArFエキシマレーザ装置である場合、フッ素含有ガスは、例えば、フッ素ガス、アルゴンガス及びネオンガスを混合したレーザガスである。フッ素含有ガス供給源F2から配管28へのフッ素含有ガスの供給圧力は、レギュレータ44によって設定される。レギュレータ44は、例えば、5000hPa以上、6000hPa以下にフッ素含有ガスの供給圧力を設定する。配管28及び配管281~28nは、フッ素含有ガス供給源F2から供給されるフッ素含有ガスをレーザ装置301~30nに供給するように構成されている。
また、レーザ装置301~30nがKrFエキシマレーザ装置である場合は、フッ素含有ガスは、たとえば、フッ素ガス、クリプトンガス、及び、ネオンガス、を含むレーザガスである。
さらに、レーザ装置301~30nがXeFエキシマレーザ装置である場合は、フッ素含有ガスは、たとえば、フッ素ガス、キセノンガス、及び、ネオンガス、を含むレーザガスである。
【0016】
1.1.1 レーザ装置
図2は、図1に示されるレーザ装置30kの構成を概略的に示す。レーザ装置30kは、レーザ制御部31と、レーザ発振システム32と、レーザガス制御システム40と、を含む。レーザ装置30kは、レーザ発振システム32から出力されたレーザ光を増幅するために、少なくとも1つのチャンバを含む図示しない増幅器をさらに含んでいてもよい。
【0017】
レーザ装置30kは、露光装置100と共に使用される。レーザ装置30kから出力されたレーザ光は、露光装置100へ入射する。露光装置100は、露光装置制御部110を含んでいる。露光装置制御部110は、露光装置100を制御するように構成されている。露光装置制御部110は、レーザ装置30kに含まれるレーザ制御部31に対して、目標パルスエネルギーの設定信号を送信したり、発光トリガ信号を送信したりするように構成されている。
【0018】
レーザ制御部31は、レーザ発振システム32及びレーザガス制御システム40を制御するように構成されたコンピュータシステムである。レーザ制御部31は、レーザ発振システム32に含まれるパワーモニタ17及びチャンバ圧力センサP1から測定データを受信する。
【0019】
1.1.1.1 レーザ発振システム
レーザ発振システム32は、チャンバ10と、充電器12と、パルスパワーモジュール13と、狭帯域化モジュール14と、出力結合ミラー15と、チャンバ圧力センサP1と、パワーモニタ17と、を含む。
【0020】
チャンバ10は、狭帯域化モジュール14と出力結合ミラー15とで構成されたレーザ共振器の光路に配置されている。チャンバ10には、二つのウィンドウ10a及び10bが設けられている。チャンバ10は、一対の放電電極11a及び11bを収容している。チャンバ10は、レーザガスを収容する。
【0021】
充電器12は、パルスパワーモジュール13に供給するための電気エネルギーを保持する。パルスパワーモジュール13は、スイッチ13aを含んでいる。パルスパワーモジュール13は、一対の放電電極11a及び11bの間にパルス電圧を印加するように構成されている。
狭帯域化モジュール14は、プリズム14a及びグレーティング14bを含む。出力結合ミラー15は、部分反射ミラーで構成されている。なお、狭帯域化モジュール14の代わりに、図示しない高反射ミラーが用いられてもよい。
【0022】
チャンバ圧力センサP1は、チャンバ10内のレーザガスの全圧を測定するように構成されている。以下の説明において、チャンバ10内のレーザガスの全圧を、チャンバガス圧ということがある。チャンバ圧力センサP1は、チャンバガス圧の測定データを、レーザ制御部31と、レーザガス制御システム40に含まれるガス制御部47と、に送信するように構成されている。
【0023】
パワーモニタ17は、ビームスプリッタ17aと、集光レンズ17bと、光センサ17cと、を含む。ビームスプリッタ17aは、出力結合ミラー15から出力されたレーザ光の光路に配置されている。ビームスプリッタ17aは、出力結合ミラー15から出力されたレーザ光の一部を露光装置100に向けて高い透過率で透過させると共に、他の一部を反射させるように構成されている。集光レンズ17b及び光センサ17cは、ビームスプリッタ17aによって反射されたレーザ光の光路に配置されている。集光レンズ17bは、ビームスプリッタ17aによって反射されたレーザ光を光センサ17cに集束させるように構成されている。光センサ17cは、集光レンズ17bによって集束させられたレーザ光のパルスエネルギーに応じた電気信号を、測定データとしてレーザ制御部31に送信するように構成されている。
【0024】
1.1.1.2 レーザガス制御システム
レーザガス制御システム40は、ガス制御部47と、ガス供給部42と、ガス排気部43と、を含む。ガス制御部47は、ガス供給部42及びガス排気部43を制御するように構成されたコンピュータシステムである。ガス制御部47は、レーザ制御部31との間で信号を送受信するように構成されている。ガス制御部47は、レーザ発振システム32に含まれるチャンバ圧力センサP1から出力された測定データを受信するように構成されている。
【0025】
ガス供給部42は、フッ素含有ガス供給源F2に接続された配管28kの一部と、レーザ発振システム32に含まれるチャンバ10に接続された配管29kの一部と、を含む。ガス供給部42において配管28kが配管29kに接続されることにより、フッ素含有ガス供給源F2がフッ素含有ガスをチャンバ10に供給可能となっている。
図1に示されるように、ガス供給部42は、配管28kに設けられたバルブF2-V1を含む。フッ素含有ガス供給源F2から配管29kを介したチャンバ10へのフッ素含有ガスの供給は、バルブF2-V1の開閉によって制御される。バルブF2-V1の開閉は、ガス制御部47によって制御される。
【0026】
図2に示されるように、ガス供給部42は、ガス再生装置50と配管29kとの間に接続された配管27kの一部をさらに含む。ガス供給部42において配管27kが配管29kに接続されることにより、ガス再生装置50がバッファガスをチャンバ10に供給可能となっている。
図1に示されるように、ガス供給部42は、配管27kに設けられたバルブB-V1を含む。ガス再生装置50から配管29kを介したチャンバ10へのバッファガスの供給は、バルブB-V1の開閉によって制御される。バルブB-V1の開閉は、ガス制御部47によって制御される。
【0027】
図2に示されるように、ガス排気部43は、レーザ発振システム32に含まれるチャンバ10に接続された配管21kの一部と、装置外部の図示しない排気処理装置等に接続された配管22kの一部と、を含む。ガス排気部43において配管21kが配管22kに接続されることにより、チャンバ10から排出された排出ガスが装置外部に排気可能となっている。
図1に示されるように、ガス排気部43は、配管21kに設けられたバルブEX-V1と、配管21kに設けられたフッ素トラップ45と、を含む。バルブEX-V1及びフッ素トラップ45は、この順でチャンバ10側から配置されている。チャンバ10からフッ素トラップ45への排出ガスの供給は、バルブEX-V1の開閉によって制御される。バルブEX-V1の開閉は、ガス制御部47によって制御される。
【0028】
フッ素トラップ45は、チャンバ10から排出された排出ガスに含まれるフッ素ガス及びフッ素の化合物を捕捉するように構成されている。フッ素ガス及びフッ素の化合物を捕捉する処理剤は、例えば、ゼオライトと酸化カルシウムとの組合せを含む。これにより、フッ素ガスと酸化カルシウムとが反応して、フッ化カルシウムと酸素ガスとが生成される。フッ化カルシウムはフッ素トラップ45に残り、酸素ガスは後述の酸素トラップ72で捕捉される。酸化カルシウムで除去しきれなかったフッ素化合物などの不純物ガスの一部はゼオライトに吸着される。
【0029】
ガス排気部43は、配管22kに設けられたバルブEX-V2と、配管22kに設けられた排気ポンプ46と、を含む。バルブEX-V2及び排気ポンプ46は、この順でチャンバ10側から配置されている。フッ素トラップ45の出口から装置外部への排出ガスの排気は、バルブEX-V2の開閉によって制御される。バルブEX-V2の開閉は、ガス制御部47によって制御される。排気ポンプ46は、バルブEX-V1及びEX-V2が開いた状態で、チャンバ10内のレーザガスを、大気圧以下の圧力まで強制的に排気するように構成されている。排気ポンプ46の動作は、ガス制御部47によって制御される。
【0030】
ガス排気部43は、バイパス配管23kを含む。バイパス配管23kは、排気ポンプ46の入口側の配管22kと、排気ポンプ46の出口側の配管22kとの間に接続されている。ガス排気部43は、バイパス配管23kに設けられた逆止弁48を含む。逆止弁48は、大気圧以上に充填されたチャンバ10内のレーザガスの一部を、バルブEX-V1及びEX-V2が開いたときに排気するように構成されている。
【0031】
ガス排気部43は、配管24kの一部をさらに含む。配管24kは、ガス再生装置50と、配管21k及び配管22kの接続部分と、の間に接続されている。配管24kが配管21k及び配管22kの接続部分に接続されることにより、チャンバ10から排出された排出ガスをガス再生装置50に供給可能となっている。ガス排気部43は、配管24kに設けられたバルブC-V1を含む。フッ素トラップ45の出口からガス再生装置50への排出ガスの供給は、バルブC-V1の開閉によって制御される。バルブC-V1の開閉は、ガス制御部47によって制御される。
【0032】
1.1.2 ガス再生装置
図3は、図1に示されるガス再生装置50の構成を概略的に示す。ガス再生装置50は、ガス昇圧部51と、ガス再生部52と、ガス供給部53と、再生制御部54と、を含む。
【0033】
ガス再生装置50は、配管24の一部と、配管27の一部と、配管25と、を含む。配管24は、配管24kを介してレーザガス制御システム40のガス排気部43に接続されている。配管27は、配管27kを介してレーザガス制御システム40のガス供給部42に接続されている。配管25は、配管24と配管27との間に接続されている。
【0034】
ガス再生装置50は、バッファガス供給源Bに接続された配管26の一部をさらに含む。配管26は、配管25と配管27との接続部分に接続されている。バッファガス供給源Bは、例えば、バッファガスを収容したガスボンベである。本開示においては、バッファガス供給源Bから供給され、まだチャンバ10に達していないバッファガスを、配管25から供給される再生ガスと区別して新ガスと称することがある。
【0035】
1.1.2.1 ガス昇圧部
ガス昇圧部51は、フィルタ61と、回収タンク63と、昇圧ポンプ64と、昇圧タンク65と、レギュレータ66と、を含む。配管24に、フィルタ61と、回収タンク63と、昇圧ポンプ64と、昇圧タンク65と、レギュレータ66とが、この順でガス排気部43側から配置されている。
【0036】
フィルタ61は、ガス排気部43から供給される排出ガスに含まれる粒子を捕捉するように構成されている。
回収タンク63は、排出ガスを収容する容器である。回収タンク63には、回収圧力センサP2が取り付けられている。
昇圧ポンプ64は、排出ガスを昇圧して昇圧ガスを出力するように構成されている。昇圧ポンプ64は、例えば、オイルの混入が少ないダイヤフラム型またはベーローズ型のポンプで構成される。
昇圧タンク65は、昇圧ポンプ64を通過した昇圧ガスを収容する容器である。昇圧タンク65には、昇圧圧力センサP3が取り付けられている。
レギュレータ66は、昇圧タンク65から供給された昇圧ガスの圧力を所定値にしてガス再生部52に供給するように構成されている。
【0037】
1.1.2.2 ガス再生部
ガス再生部52は、マスフローコントローラ71と、酸素トラップ72と、キセノントラップ73と、ピュリファイヤ74と、を含む。配管24に、マスフローコントローラ71と、酸素トラップ72と、キセノントラップ73と、ピュリファイヤ74とが、この順でガス昇圧部51側から配置されている。
ガス再生部52は、キセノン添加装置75をさらに含む。キセノン添加装置75は、配管24と配管25との間に配置されている。
【0038】
マスフローコントローラ71は、ガス昇圧部51から供給された昇圧ガスの流量を制御するように構成されている。
酸素トラップ72は、昇圧ガスから酸素ガスを捕捉するように構成される。酸素ガスを捕捉する処理剤は、ニッケル(Ni)系触媒、銅(Cu)系触媒、及びそれらの複合物の少なくとも一つを含む。酸素トラップ72は、図示しない加熱装置及び温度調節装置を含む。
【0039】
キセノントラップ73は、例えば、キセノンを選択的に吸着し得るCa-X型ゼオライト、Na-Y型ゼオライト、又は活性炭を用いた装置である。キセノントラップ73は、図示しない加熱装置及び温度調節装置を含む。
【0040】
ピュリファイヤ74は、例えば、メタルゲッターを含むメタルフィルタである。メタルゲッターは、例えば、ジルコニウム(Zr)系合金である。ピュリファイヤ74は、レーザガスから不純物ガスをトラップするように構成されている。
【0041】
キセノン添加装置75は、キセノン含有ガスボンベ76と、配管20と、レギュレータ77と、マスフローコントローラ78と、混合器79と、を含む。
キセノン含有ガスボンベ76に、配管20の一端が接続されている。レギュレータ77及びマスフローコントローラ78は、配管20に配置されている。レギュレータ77及びマスフローコントローラ78は、この順でキセノン含有ガスボンベ76側から配置されている。混合器79は、配管24と配管20との合流位置に配置されている。混合器79の出力は配管25に接続されている。
【0042】
キセノン含有ガスボンベ76は、キセノン含有ガスを収容したガスボンベである。キセノン含有ガスは、アルゴンガスとネオンガスの他に、キセノンガスを混合したレーザガスである。キセノン含有ガスに含まれるキセノンガスの濃度は、ArFエキシマレーザ装置における最適なキセノンガス濃度より高い値に調節されている。
【0043】
レギュレータ77は、キセノン含有ガスボンベ76から供給されたキセノン含有ガスの圧力を所定値にしてマスフローコントローラ78に供給するように構成されている。マスフローコントローラ78は、レギュレータ77から供給されたキセノン含有ガスの流量を制御するように構成されている。
【0044】
混合器79は、配管24から供給された再生ガスに、配管20から供給されたキセノン含有ガスを均一に混合するように構成されている。
なお、レーザ装置301~30nがKrFエキシマレーザ装置、あるいはXeFエキシマレーザ装置である場合は、キセノントラップ73及びキセノン添加装置75は設けられなくてもよい。
【0045】
1.1.2.3 ガス供給部
ガス供給部53は、供給タンク81と、フィルタ83と、バルブC-V2と、レギュレータ86と、バルブB-V2と、を含む。配管25に、供給タンク81と、フィルタ83と、バルブC-V2とが、この順でガス再生部52側から配置されている。配管26に、レギュレータ86と、バルブB-V2とが、この順でバッファガス供給源B側から配置されている。
【0046】
供給タンク81は、ガス再生部52から供給される再生ガスを収容する容器である。供給タンク81には、供給圧力センサP4が取り付けられている。
フィルタ83は、ガス再生装置50において生成された粒子を再生ガスから捕捉するように構成されている。
バルブC-V2は、ガス再生部52から供給された再生ガスを配管27に供給するか否かを切り替えるように構成されている。
レギュレータ86は、バッファガス供給源Bから配管27への新ガスの供給圧力を設定するように構成されている。レギュレータ86は、例えば、5000hPa以上、6000hPa以下に新ガスの供給圧力を設定する。
バルブB-V2は、バッファガス供給源Bからから供給された新ガスを配管27に供給するか否かを切り替えるように構成されている。
【0047】
1.1.2.4 ガス再生制御部
再生制御部54は、ガス再生装置50を制御するためのコンピュータシステムである。再生制御部54は、ガス昇圧制御部541と、ガス再生制御部542と、ガス供給制御部543と、を含む。ガス昇圧制御部541は、ガス昇圧部51との間で信号を送受信するように構成されている。ガス再生制御部542は、ガス再生部52との間で信号を送受信するように構成されている。ガス供給制御部543は、ガス供給部53との間で信号を送受信するように構成されている。再生制御部54は、レーザ装置301~30nの各々に含まれるレーザ制御部31との間で信号を送受信するように構成されている。
【0048】
1.2 動作
1.2.1 レーザ装置の動作
1.2.1.1 レーザ発振システムの動作
レーザ装置30kにおいて、レーザ制御部31は、露光装置制御部110から受信した目標パルスエネルギーの設定信号に基づいて、充電器12に充電電圧の設定信号を送信する。また、レーザ制御部31は、露光装置制御部110から受信した発光トリガ信号に基づいて、パルスパワーモジュール(PPM)13に含まれるスイッチ13aに発光トリガを送信する。
【0049】
パルスパワーモジュール13のスイッチ13aは、レーザ制御部31から発光トリガを受信するとオン状態となる。パルスパワーモジュール13は、スイッチ13aがオン状態となると、充電器12に充電された電気エネルギーからパルス状の高電圧を生成する。パルスパワーモジュール13は、この高電圧を一対の放電電極11a及び11bの間に印加する。
【0050】
一対の放電電極11a及び11bの間に高電圧が印加されると、一対の放電電極11a及び11bの間に放電が起こる。この放電のエネルギーにより、チャンバ10内のレーザガスが励起されて高エネルギー準位に移行する。励起されたレーザガスが、その後、低エネルギー準位に移行するとき、そのエネルギー準位差に応じた波長の光を放出する。
【0051】
チャンバ10内で発生した光は、ウィンドウ10a及び10bを介してチャンバ10の外部に出射する。チャンバ10のウィンドウ10aから出射した光は、プリズム14aによってビーム幅を拡大させられて、グレーティング14bに入射する。プリズム14aからグレーティング14bに入射した光は、グレーティング14bの複数の溝によって反射されるとともに、光の波長に応じた方向に回折させられる。グレーティング14bは、プリズム14aからグレーティング14bに入射する光の入射角と、所望波長の回折光の回折角とが一致するようにリトロー配置されている。これにより、所望波長付近の光がプリズム14aを介してチャンバ10に戻される。
【0052】
出力結合ミラー15は、チャンバ10のウィンドウ10bから出射した光のうちの一部を透過させて出力し、他の一部を反射させてチャンバ10に戻す。
【0053】
このようにして、チャンバ10から出射した光は、狭帯域化モジュール14と出力結合ミラー15との間で往復し、一対の放電電極11a及び11bの間の放電空間を通過する度に増幅され、レーザ発振する。この光は、狭帯域化モジュール14で折り返される度に狭帯域化される。こうして増幅され、狭帯域化された光が、出力結合ミラー15からレーザ光として出力される。
【0054】
パワーモニタ17は、出力結合ミラー15から出力されたレーザ光のパルスエネルギーを検出する。パワーモニタ17は、検出したパルスエネルギーのデータをレーザ制御部31に送信する。
【0055】
レーザ制御部31は、パワーモニタ17から受信したパルスエネルギーの測定データと、露光装置制御部110から受信した目標パルスエネルギーの設定信号とに基づいて、充電器12に設定する充電電圧をフィードバック制御する。
【0056】
1.2.1.2 レーザガス制御システムの動作
レーザ装置30kにおいて、レーザガス制御システム40は、ガス制御部47による以下の制御により、部分ガス交換を行う。
【0057】
ガス制御部47は、ガス供給部42を制御して、第1の所定量のバッファガスをチャンバ10内に注入し、第2の所定量のフッ素含有ガスをチャンバ10内に注入する。その後、ガス制御部47は、ガス排気部43を制御して、第1の所定量と第2の所定量の合計に相当する量のガスをチャンバ10から排出する。
部分ガス交換は、例えば、チャンバの出力パルス数が一定値に達するごとに行われる。あるいは、部分ガス交換は、チャンバの運転時間が一定値に達するごとに行われる。
【0058】
第1の所定量のバッファガスをチャンバ10内に注入するために、ガス供給部42は、バルブB-V1を開き、その後閉じる。バッファガスは、バッファガス供給源BからバルブB-V2を介して供給される新ガス、又は、ガス再生装置50において不純物を低減されバルブC-V2を介して供給される再生ガスのいずれかである。
第2の所定量のフッ素含有ガスをチャンバ10内に注入するために、ガス供給部42は、バルブF2-V1を開き、その後閉じる。
【0059】
ガス排気部43は、チャンバ10から排出される排出ガスを装置外部に排気させる場合、バルブEX-V1及びバルブEX-V2を開く。あるいは、ガス排気部43は、チャンバ10から排出される排出ガスをガス再生装置50に供給する場合、バルブEX-V1及びバルブC-V1を開く。
【0060】
以上の部分ガス交換により、不純物の少ない所定量のガスをチャンバ10に供給し、この供給したガスの量と同等の量だけチャンバ10内のガスを排出する。これにより、チャンバ10内におけるフッ化水素(HF)、四フッ化炭素(CF)、四フッ化ケイ素(SiF)、三フッ化窒素(NF)、ヘキサフルオロエタン(C)などの不純物を低減することができる。
【0061】
1.2.2 ガス再生装置の動作
ガス再生装置50は、以下のようにして、レーザ装置301~30nの各々から排出された排出ガスから不純物を低減する。ガス再生装置50は、不純物を低減された再生ガスをレーザ装置301~30nの各々に供給する。
【0062】
ガス昇圧部51において、フィルタ61は、フッ素トラップ45を通過した排出ガスから、チャンバ10において放電によって生成された粒子を捕捉する。
回収タンク63は、フィルタ61を通過した排出ガスを収容する。回収圧力センサP2は、回収タンク63の内部のガス圧を測定する。回収圧力センサP2は、測定されたガス圧のデータをガス昇圧制御部541に出力する。
【0063】
昇圧ポンプ64は、回収タンク63に収容された排出ガスを昇圧して、昇圧ガスを昇圧タンク65に出力する。ガス昇圧制御部541は、回収圧力センサP2から受信した回収タンク63のガス圧が例えば大気圧以上である場合に昇圧ポンプ64が動作するように、昇圧ポンプ64を制御する。
【0064】
昇圧タンク65は、昇圧ポンプ64を通過した昇圧ガスを収容する。昇圧圧力センサP3は、昇圧タンク65の内部のガス圧を測定する。昇圧圧力センサP3は、測定されたガス圧のデータをガス昇圧制御部541に出力する。
【0065】
ガス再生部52において、酸素トラップ72は、フッ素トラップ45においてフッ素ガスと酸化カルシウムとの反応によって生成された酸素ガスを捕捉する。ガス再生制御部542は、酸素トラップ72が酸素ガスを捕捉する最適温度となるように、酸素トラップ72の図示しない加熱装置及び温度調節装置を制御する。
キセノントラップ73は、酸素トラップ72を通過した昇圧ガスからキセノンガスを除去する。これにより、昇圧ガスのキセノンガス濃度を低下させ、キセノンガスの濃度のばらつきを低減する。ガス再生制御部542は、キセノントラップ73がキセノンガスを吸着する最適温度となるように、キセノントラップ73の図示しない加熱装置及び温度調節装置を制御する。
ピュリファイヤ74は、酸素トラップ72を通過した排出ガスから、微量の水蒸気、酸素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス等の不純物ガスをトラップする。
【0066】
マスフローコントローラ71の流量と、マスフローコントローラ78の流量とは、ガス再生制御部542によって設定される。これらの流量は、混合器79で混合されて出力される再生ガスのキセノンガス濃度が所望の値となるように制御される。混合器79によって混合された再生ガスは、配管25を介して供給タンク81に供給される。
【0067】
ガス供給部53において、供給タンク81は、キセノン添加装置75から供給される再生ガスを収容する。供給圧力センサP4は、供給タンク81の内部のガス圧を測定する。供給圧力センサP4は、測定されたガス圧のデータをガス供給制御部543に出力する。
フィルタ83は、供給タンク81から供給される再生ガスから、ガス再生装置50において生成された粒子を捕捉する。
【0068】
ガス再生装置50から配管27を介したガス供給部42への再生ガスの供給は、バルブC-V2の開閉によって制御される。バルブC-V2の開閉は、ガス供給制御部543によって制御される。
【0069】
バッファガス供給源Bから配管27を介したガス供給部42への新ガスの供給は、バルブB-V2の開閉によって制御される。バルブB-V2の開閉は、ガス供給制御部543によって制御される。
【0070】
ガス供給制御部543は、バルブC-V2を閉じてバルブB-V2を開くか、バルブB-V2を閉じてバルブC-V2を開くか、を選択してこれらのバルブを制御する。
【0071】
1.2.2.1 ガス昇圧制御部の動作
図4は、図1に示されるガス再生装置50におけるガス昇圧制御部541の処理を示すフローチャートである。ガス昇圧制御部541は、以下の処理により、チャンバ10から排出されたガスの昇圧及び貯蔵を行う。なお、本開示において、ガス昇圧制御部541、ガス再生制御部542、及びガス供給制御部543のフローチャートについては、「S3」で始まる符号によりステップを特定する。以下に示される処理の前提として、ガス再生装置50の配管が、大気圧以上のレーザガスで満たされていると仮定する。
【0072】
まず、S300において、ガス昇圧制御部541は、各レーザ装置のレーザ制御部31に、排出ガスの受入れ開始を通知する信号を出力する。レーザ制御部31は、ガス昇圧制御部541からの信号に基づき、ガス制御部47を制御する。ガス制御部47は、ガス排気部43のバルブEX-V2を閉じ、ガス排気部43のバルブC-V1を開く。これにより、チャンバ10からの排出ガスがガス再生装置50に供給される。
【0073】
あるいは、レーザ制御部31は、ガス昇圧制御部541からの信号がなくても、チャンバ10からの排出ガスがガス再生装置50に供給されるようにガス制御部47を制御してもよい。この場合、ガス昇圧制御部541はS300の処理を行わなくてもよい。
【0074】
次に、S301において、ガス昇圧制御部541は、ガス再生制御部542に、昇圧ガスをガス再生部52に供給できないことを通知する信号を出力する。その後、ガス昇圧制御部541は、以下の処理により、昇圧ガスをガス再生部52に供給できるように準備を行う。なお、昇圧ガスをガス再生部52に供給できないことを通知する信号は、図5を参照しながら後述するS322において使用される。
【0075】
次に、S302において、ガス昇圧制御部541は、回収タンク63のガス圧P2と昇圧タンク65のガス圧P3とを計測する。回収タンク63のガス圧P2は、回収圧力センサP2から出力される。昇圧タンク65のガス圧P3は、昇圧圧力センサP3から出力される。本明細書において、圧力センサと、当該圧力センサで計測されたガス圧と、を同じ符号で示すことがある。
【0076】
次に、S303において、ガス昇圧制御部541は、回収タンク63のガス圧P2が閾値P2minより大きく、且つ、昇圧タンク65のガス圧P3が閾値P3max2より小さいか否かを判定する。閾値P2minは、例えば、大気圧よりも若干低めの値に設定される。閾値P2minは、例えば、900hPa以上、1000hPa以下の値に設定される。閾値P3max2は、例えば、昇圧ポンプ64又は昇圧タンク65の設計上の上限圧力に設定される。
【0077】
回収タンク63のガス圧P2が閾値P2minより大きく、且つ、昇圧タンク65のガス圧P3が閾値P3max2より小さい場合(S303:YES)、ガス昇圧制御部541は、処理をS304に進める。
回収タンク63のガス圧P2が閾値P2min以下である場合、又は、昇圧タンク65のガス圧P3が閾値P3max2以上である場合には(S303:NO)、ガス昇圧制御部541は、処理をS305に進める。
なお、本開示に含まれるフローチャートにおいて、「Y」はYESの判定を示し、「N」はNOの判定を示す。
【0078】
S304において、ガス昇圧制御部541は、昇圧ポンプ64をONにする。これにより、昇圧ガスが昇圧タンク65に充填される。その後、ガス昇圧制御部541は、処理をS306に進める。
S305において、ガス昇圧制御部541は、昇圧ポンプ64をOFFにする。回収タンク63のガス圧P2が閾値P2min以下である場合には、レーザ装置301~30nからレーザガスの排出が行われていない可能性が高い。そこで、昇圧ポンプ64を駆動しても効率的な昇圧ができないので、ガス昇圧制御部541は、昇圧ポンプ64をOFFにする。昇圧タンク65のガス圧P3が閾値P3max2以上である場合には、さらに昇圧ポンプ64を駆動すると昇圧ポンプ64又は昇圧タンク65の設計上の使用範囲を超えてしまうので、ガス昇圧制御部541は、昇圧ポンプ64をOFFにする。その後、ガス昇圧制御部541は、処理をS306に進める。
【0079】
S306において、ガス昇圧制御部541は、昇圧タンク65のガス圧P3が閾値P3maxより大きいか否かを判定する。閾値P3maxは、ガス再生部52に昇圧ガスを供給可能となるように、チャンバ10内のガス圧より高い値に設定される。閾値P3maxは、バッファガス供給源Bのレギュレータ86の圧力と同等以上であってもよい。閾値P3maxは、例えば、7000hPa以上、8000hPa以下の値に設定される。
【0080】
昇圧タンク65のガス圧P3が閾値P3maxより大きい場合(S306:YES)、ガス昇圧制御部541は、処理をS307に進める。
昇圧タンク65のガス圧P3が閾値P3max以下である場合には(S306:NO)、ガス昇圧制御部541は、処理を上述のS301に戻す。ガス昇圧制御部541は、昇圧ガスをガス再生部52に供給する準備ができるまで、S301からS306までの処理を繰り返す。
【0081】
S307において、ガス昇圧制御部541は、ガス再生制御部542に、昇圧ガスをガス再生部52に供給できることを通知する信号を出力する。昇圧ガスをガス再生部52に供給できることを通知する信号は、図5を参照しながら後述するS322において使用される。
次に、S308において、ガス昇圧制御部541は、ガスの昇圧を停止するか否かを判定する。例えば、昇圧ポンプ64に異常が発生した場合に、ガス昇圧制御部541は、ガスの昇圧を停止すると判定する。あるいは、ガス再生制御部542からガス再生を停止することを示す信号を受信した場合や、ガス供給制御部543から再生ガスの貯蔵を停止することを示す信号を受信した場合に、ガス昇圧制御部541は、ガスの昇圧を停止すると判定する。
【0082】
ガスの昇圧を停止する場合(S308:YES)、ガス昇圧制御部541は、処理をS309に進める。
ガスの昇圧を停止しない場合(S308:NO)、ガス昇圧制御部541は、処理を上述のS302に戻す。ガス昇圧制御部541は、S306において昇圧タンク65のガス圧P3が閾値P3max以下になるまで、あるいは、S308においてガスの昇圧を停止すると判断するまで、S302からS308までの処理を繰り返す。
【0083】
S309において、ガス昇圧制御部541は、ガス再生制御部542及びガス供給制御部543に、ガスの昇圧を停止することを通知する信号を出力する。
次に、S310において、ガス昇圧制御部541は、各レーザ装置のレーザ制御部31に、排出ガスの受入れ停止を通知する信号を出力する。
その後、ガス再生制御部542は、本フローチャートの処理を終了する。
【0084】
レーザ制御部31は、ガス昇圧制御部541からの排出ガスの受入れ停止を通知する信号に基づき、ガス制御部47を制御する。ガス制御部47は、ガス排気部43のバルブC-V1を閉じ、ガス排気部43のバルブEX-V2を開く。これにより、チャンバ10からの排出ガスが外部に排気される。
【0085】
あるいは、レーザ制御部31は、ガス昇圧制御部541からの信号がなくても、チャンバ10からの排出ガスが外部に排気されるようにガス制御部47を制御してもよい。この場合、ガス昇圧制御部541はS310の処理を行わなくてもよい。
【0086】
1.2.2.2 ガス再生制御部の動作
図5は、図1に示されるガス再生装置50におけるガス再生制御部542の処理を示すフローチャートである。ガス再生制御部542は、以下の処理により、ガス昇圧部51から供給されるガスの再生を行う。
【0087】
まず、S320において、ガス再生制御部542は、酸素トラップ72及びキセノントラップ73の運転を開始する。例えば、酸素トラップ72及びキセノントラップ73における酸素及びキセノンの吸着を促進するために温度を上げる必要がある場合には、ガス再生制御部542は、酸素トラップ72の図示しない加熱装置及び温度調節装置や、キセノントラップ73の図示しない加熱装置及び温度調節装置に制御信号を送信する。その後、ガス再生制御部542は、酸素トラップ72の温度及びキセノントラップ73の温度がそれぞれ最適温度範囲になるまで待機する。なお、酸素トラップ72及びキセノントラップ73が加熱を必要としないものである場合には、S320の処理は行われなくてもよい。
【0088】
次に、S321において、ガス再生制御部542は、マスフローコントローラ71の流量MFC3、及びマスフローコントローラ78の流量MFC2を、それぞれ0に設定する。あるいは、ガス再生制御部542は、マスフローコントローラ71及びマスフローコントローラ78の下流にそれぞれ配置された図示しないバルブを閉めてもよい。
【0089】
次に、S322において、ガス再生制御部542は、昇圧ガス供給可能であり、且つ、再生ガス貯蔵可能であるか否かを判定する。
図4を参照しながら上述したS307においてガス昇圧制御部541から昇圧ガスをガス再生部52に供給できることを通知する信号を受信した場合には、ガス再生制御部542は、昇圧ガス供給可能であると判定する。図4を参照しながら上述したS301においてガス昇圧制御部541から昇圧ガスをガス再生部52に供給できないことを通知する信号を受信した場合には、ガス再生制御部542は、昇圧ガス供給可能ではないと判定する。
図6を参照しながら後述するS333においてガス供給制御部543から再生ガスを貯蔵できることを通知する信号を受信した場合には、ガス再生制御部542は、再生ガス貯蔵可能であると判定する。S333においてガス供給制御部543から再生ガスを貯蔵できないことを通知する信号を受信した場合には、ガス再生制御部542は、再生ガス貯蔵可能ではないと判定する。
【0090】
昇圧ガス供給可能であり、且つ、再生ガス貯蔵可能である場合(S322:YES)、ガス再生制御部542は、処理をS323に進める。
昇圧ガス供給可能ではない場合、又は、再生ガス貯蔵可能ではない場合(S322:NO)、ガス再生制御部542は、処理を上述のS321に戻す。ガス再生制御部542は、昇圧ガス供給可能となり、且つ、再生ガス貯蔵可能となるまで、S321及びS322の処理を繰り返す。
【0091】
S323において、ガス再生制御部542は、マスフローコントローラ71の流量MFC3を所定値SCCM3に設定し、マスフローコントローラ78の流量MFC2を所定値SCCM2に設定して、それぞれガスを流す。所定値SCCM3及び所定値SCCM2は、それぞれ、混合器79で混合された再生ガスのキセノンガス濃度が所望の値となるように設定される。
【0092】
次に、S324において、ガス再生制御部542は、ガスの再生を停止するか否かを判定する。例えば、酸素トラップ72、キセノントラップ73、及びピュリファイヤ74のいずれかが寿命に達した場合に、ガス再生制御部542は、ガスの再生を停止すると判定する。あるいは、ガス昇圧制御部541からガスの昇圧を停止することを示す信号を受信した場合や、ガス供給制御部543から再生ガスの貯蔵を停止することを示す信号を受信した場合に、ガス再生制御部542は、ガスの再生を停止すると判定する。
【0093】
ガスの再生を停止する場合(S324:YES)、ガス再生制御部542は、処理をS325に進める。
ガスの再生を停止しない場合(S324:NO)、ガス再生制御部542は、処理を上述のS322に戻す。ガス再生制御部542は、S322において昇圧ガス供給不可、又は再生ガス貯蔵不可になるまで、あるいは、S324においてガスの再生を停止すると判定するまで、S322からS324までの処理を繰り返す。
【0094】
S325において、ガス再生制御部542は、ガス昇圧制御部541及びガス供給制御部543に、ガスの再生を停止することを通知する信号を出力する。
その後、ガス再生制御部542は、本フローチャートの処理を終了する。
【0095】
1.2.2.3 ガス供給制御部の動作
図6は、図1に示されるガス再生装置50におけるガス供給制御部543の処理を示すフローチャートである。ガス供給制御部543は、以下の処理により、ガス再生部52で再生された再生ガスの貯蔵及びチャンバ10への供給を行う。
【0096】
まず、S330において、ガス供給制御部543は、各レーザ装置のレーザ制御部31に、チャンバ10への再生ガスの供給ができないことを通知する信号を出力する。
【0097】
次に、S331において、ガス供給制御部543は、バルブC-V2を閉じ、バルブB-V2を開く。これにより、ガス供給部53がチャンバ10に再生ガスを供給できるようになるまで、ガス供給部53はチャンバ10に新ガスを供給する。
【0098】
次に、S332おいて、ガス供給制御部543は、供給タンク81のガス圧P4を計測する。供給タンク81のガス圧P4は、供給圧力センサP4から出力される。
次に、S333おいて、ガス供給制御部543は、ガス昇圧制御部541及びガス再生制御部542に、再生ガスの貯蔵ができること、又は再生ガスの貯蔵ができないことを通知する。例えば、ガス供給制御部543は、供給タンク81のガス圧P4が供給タンク81の設計上の上限圧力未満である場合に、再生ガスの貯蔵ができることを各制御部に通知する。また、ガス供給制御部543は、供給タンク81のガス圧P4が供給タンク81の設計上の上限圧力以上である場合に、再生ガスの貯蔵ができないことを各制御部に通知する。なお、再生ガスの貯蔵ができること、又は再生ガスの貯蔵ができないことを通知する信号は、図5のS322において使用される。
【0099】
次に、S334において、ガス供給制御部543は、供給タンク81のガス圧P4が閾値P4minより大きいか否かを判定する。閾値P4minは、チャンバ10に再生ガスを供給可能となるように、チャンバ10内のガス圧より高い値に設定される。閾値P4minは、バッファガス供給源Bのレギュレータ86の圧力と同等であってもよい。閾値P4minは、図5を参照しながら上述した昇圧タンク65のガス圧P3の閾値P3maxより低い値であってもよい。閾値P4minは、例えば、7000hPa以上、8000hPa以下の値に設定される。
【0100】
供給タンク81のガス圧P4が閾値P4minより大きい場合(S334:YES)、ガス供給制御部543は、処理をS335に進める。
供給タンク81のガス圧P4が閾値P4min以下である場合には(S334:NO)、ガス供給制御部543は、処理を上述のS330に戻す。ガス供給制御部543は、再生ガスをチャンバ10に供給する準備ができるまで、S330からS334までの処理を繰り返す。
【0101】
S335において、ガス供給制御部543は、バルブB-V2を閉じ、バルブC-V2を開く。これにより、チャンバ10への新ガスの供給が止められて、再生ガスの供給が可能となる。
次に、S336において、ガス供給制御部543は、各レーザ装置のレーザ制御部31に、チャンバ10への再生ガスの供給ができることを通知する信号を出力する。
【0102】
次に、S337において、ガス供給制御部543は、ガスの貯蔵を停止するか否かを判定する。例えば、ガス昇圧制御部541から排出ガスの昇圧を停止することを示す信号を受信した場合や、ガス再生制御部542からガス再生を停止することを示す信号を受信した場合に、ガス供給制御部543は、ガスの貯蔵を停止すると判定する。
【0103】
ガスの貯蔵を停止する場合(S337:YES)、ガス供給制御部543は、処理をS338に進める。
ガスの貯蔵を停止しない場合(S337:NO)、ガス供給制御部543は、処理を上述のS332に戻す。ガス供給制御部543は、S334において供給タンク81のガス圧P4が閾値P4min以下になるまで、あるいは、S337においてガスの貯蔵を停止すると判断するまで、S332からS337までの処理を繰り返す。
【0104】
S338において、ガス供給制御部543は、ガス昇圧制御部541及びガス再生制御部542に、再生ガスの貯蔵を停止することを通知する信号を出力する。
その後、ガス供給制御部543は、本フローチャートの処理を終了する。
なお、この実施形態では、ArFエキシマレーザ装置、KrFエキシマレーザ装置あるいはXeFエキシマレーザ装置に適用されたレーザガス管理システムの場合の例を示したが、この例に限定されることなくたとえば、XeClエキシマレーザ装置に適用してもよい。
XeClエキシマレーザ装置に適用した場合は、バッファガスは、たとえば、キセノンガスとネオンガスを含むレーザガスであり、フッ素含有ガスは、塩素を含むレーザガスに変更して、塩化水素ガスとキセノンガスとネオンガスを含むレーザガスである。フッ素含有ガス供給源F2の代わりに、塩化水素を含むガス供給源を接続してもよい。
XeClエキシマレーザ装置の場合は、キセノントラップ73及びキセノン添加装置75は設けられなくてもよい。
フッ素トラップ45は、図示しない塩化水素トラップに変更してもよい。たとえば、塩化水素トラップはゼオライトと水酸化カルシウムの組合せを含む。水酸化カルシウムと塩化水素を反応させて、塩化カルシウムと水を生成させて、塩化水素をトラップしてもよい。塩化水素トラップで生成した水は、酸素トラップ72の代わりに配置された図示しない水トラップでトラップしてもよい。水トラップの材料の例としてはゼオライト等を含んでもよい。
【0105】
1.3 課題
ガス再生装置50は、例えば、上述の各種トラップの寿命到来により、不純物を低減する能力が低下することがある。そのような異常がガス再生装置50に発生した状態でガス再生装置50の運転を続けると、ガス再生装置50に接続されている複数のレーザ装置301~30nの性能が悪化する可能性がある。その結果、ガス再生装置50に接続されている複数のレーザ装置301~30nが一度に停止してしまうことがあり得る。
【0106】
ガス再生装置50に異常が発生したか否かを監視する方法として、ガス再生装置50に成分分析装置を取り付けて、再生ガスの不純物濃度を検出することが考えられる。しかし、成分分析装置は高価であり、しかも大きな設置スペースが必要となる。
【0107】
本開示の実施形態に係るレーザガス管理システムは、レーザ装置301~30nの各々の少なくとも1つのパラメータが予め決められた範囲を超えたか否かを判定する。そして、少なくとも1つのパラメータが予め決められた範囲を超えたエキシマレーザ装置の台数が2以上である場合に、ガス再生装置50が異常であると判定する。
【0108】
2.ガス再生装置の異常を判定するレーザガス管理システム
2.1 構成
図7は、本開示の第1の実施形態に係るレーザガス管理システム及びこれに接続されたレーザ装置301~30nの構成を概略的に示す。第1の実施形態において、レーザガス管理システムは、上述のガス再生装置50の他に、レーザ管理制御部55を含む。レーザガス管理システムは、さらに、レーザ装置301~30nの各々に含まれるレーザ制御部31及びガス制御部47を含む。
【0109】
レーザ管理制御部55は、ガス再生装置50に含まれる再生制御部54と、レーザ装置301~30nの各々に含まれるレーザ制御部31と、にそれぞれ信号線で接続されている。レーザ管理制御部55は、さらに、表示装置58や工場管理システム59などの外部装置に信号線で接続されている。なお、ここではレーザ管理制御部55がガス再生装置50とは別に設けられる場合について説明するが、本開示はこれに限定されない。レーザ管理制御部55がガス再生装置50に設けられてもよい。レーザ管理制御部55が再生制御部54に含まれてもよい。
【0110】
表示装置58は、例えば、画像を表示する装置でもよいし、警報ランプであってもよい。工場管理システム59は、例えば、レーザ装置301~30n及び露光装置100を含む半導体工場の全体を管理するコンピュータシステムである。
【0111】
2.2 動作
レーザ管理制御部55は、レーザ装置301~30nの各々に含まれるレーザ制御部31から、レーザ性能パラメータの異常判定結果を受信する。レーザ管理制御部55は、レーザ装置301~30nから受信したレーザ性能パラメータの異常判定結果に基づいて、ガス再生装置50の異常を判定する。
【0112】
レーザ管理制御部55は、ガス再生装置50が異常であると判定した場合に、ガス再生装置50の異常を、再生制御部54と、レーザ装置301~30nの各々に含まれるレーザ制御部31と、に通知する。レーザ管理制御部55は、ガス再生装置50が異常であると判定した場合に、ガス再生装置50の異常を、表示装置58や工場管理システム59などの外部装置にも通知する。
【0113】
2.2.1 ガス再生装置の異常判定の処理
図8は、第1の実施形態においてレーザ管理制御部55が行うガス再生装置50の異常判定のフローチャートである。レーザ管理制御部55は、以下の処理により、ガス再生装置50の異常を判定する。なお、本開示において、主にレーザ管理制御部55が行う処理のフローチャートについては、「S1」で始まる符号によりステップを特定する。
【0114】
まず、S10において、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントする。S10の処理の詳細は、図9を参照しながら後述する。レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数は、各レーザ装置のレーザ制御部31から受信する異常フラグに基づいてカウントされる。レーザ制御部31が行う異常フラグの設定については、図14及び図15を参照しながら後述する。
【0115】
次に、S13において、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数が2台以上であるか否かを判定する。レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数が2台以上である場合(S13:YES)、レーザ管理制御部55は、ガス再生装置50が異常であると判定し、処理をS14に進める。レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数が2台以上ではない場合(S13:NO)、レーザ管理制御部55は、処理を上述のS10に戻す。レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数が2台以上であると判定するまで、S10及びS13の処理を繰り返す。
【0116】
S14において、レーザ管理制御部55は、再生制御部54に、ガス再生装置50の異常を通知する。再生制御部54は、レーザ管理制御部55からガス再生装置50の異常を通知する信号を受信すると、S15の処理を行う。S15において、再生制御部54は、ガス昇圧部51及びガス再生部52の動作を停止させることにより、ガスの再生を停止する。再生制御部54は、さらに、バルブC-V2を閉じ、バルブB-V2を開くことにより、各レーザ装置への再生ガスの供給を停止する。各レーザ装置にはバッファガス供給源Bの新ガスが供給可能となる。なお、バルブC-V2は本開示における第2のバルブに相当し、バルブB-V2は本開示における第4のバルブに相当する。
【0117】
次に、S16において、レーザ管理制御部55は、各レーザ装置のレーザ制御部31に、ガス再生装置50の異常を通知する。各レーザ装置のレーザ制御部31は、レーザ管理制御部55からガス再生装置50の異常を通知する信号を受信すると、S17の処理を行う。S17において、レーザ制御部31は、バルブC-V1を閉じ、バルブEX-V2を開くことにより、ガス再生装置50への排出ガスの供給を停止する。バルブC-V1は本開示における第5のバルブに相当し、バルブEX-V2は本開示における第6のバルブに相当する。
【0118】
次に、S18において、レーザ管理制御部55は、外部装置に、ガス再生装置50の異常を通知する。外部装置が表示装置58である場合に、表示装置58は、ガス再生装置50の異常を示す表示を行う。外部装置が工場管理システム59である場合に、工場管理システム59は、ガス再生装置50の異常履歴を記録したり、オペレータへの通知を行ったりする。
その後、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了する。
【0119】
2.2.1.1 異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントする処理
図9は、図8に示されるレーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントする処理の詳細を示すフローチャートである。図9に示される処理は、図8に示されるS10のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55によって行われる。
【0120】
まず、S100において、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数Fを初期値0に設定する。
次に、S101において、レーザ管理制御部55は、レーザ装置の番号kを初期値0に設定する。
次に、S102において、レーザ管理制御部55は、レーザ装置の番号kの値に1を加算して、kの値を更新する。
【0121】
次に、S103において、レーザ管理制御部55は、番号kのレーザ装置30kのレーザ制御部31から、レーザ性能パラメータの異常が検出されたか否かを示す異常フラグFkを受信する。異常フラグFkは、例えば、0又は1の値を取り得る。レーザ性能パラメータの異常が検出されなかった場合には、異常フラグFkの値は0となる。レーザ性能パラメータの異常が検出された場合には、異常フラグFkの値は1となる。レーザ制御部31が異常フラグを生成する処理については、図14及び図15を参照しながら後述する。
【0122】
次に、S105において、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数Fの値に、異常フラグFkの値を加算して、台数Fの値を更新する。異常フラグFkの値が0であった場合は台数Fの値は変更されず、異常フラグFkの値が1であった場合は現在の台数Fの値に1が加算される。
【0123】
次に、S106において、レーザ管理制御部55は、レーザ装置の番号kの値が、ガス再生装置50に接続されたレーザ装置の台数nの値以上であるか否かを判定する。番号kの値が台数nの値以上である場合(S106:YES)、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了し、図8に示される処理に戻る。
【0124】
番号kの値が台数nの値以上ではない場合(S106:NO)、レーザ管理制御部55は、処理を上述のS102に戻す。レーザ管理制御部55は、番号kの値が台数nの値以上となるまで、S102~S106の処理を繰り返す。S102~S106の処理を繰り返すことにより、番号1のレーザ装置から番号nのレーザ装置までの各々から、異常フラグFkを受信して、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントすることができる。
【0125】
2.2.2 レーザ制御部の処理
次に、上述の異常判定のために使用される異常フラグFkについて説明する。この異常フラグFkは、図14及び図15を参照しながら後述する処理によって、各レーザ装置のレーザ制御部31が設定する。異常フラグFkの設定処理は、各レーザ装置の制御に伴って刻々と変化するガス制御関連データに基づいて行われる。そこで、異常フラグFkの設定処理を説明する前に、図10図13を参照し、ガス制御関連データが生成されるレーザ制御部31の処理について説明する。
【0126】
2.2.2.1 エネルギー制御
図10は、第1の実施形態において各レーザ装置のレーザ制御部31が行うエネルギー制御のフローチャートである。レーザ制御部31は、以下の処理により、レーザ装置30kが生成するパルスレーザ光のパルスエネルギーを制御する。なお、本開示において、レーザ制御部31のフローチャートについては、「S2」で始まる符号によりステップを特定する。
【0127】
まず、S210において、レーザ制御部31は、充電器12の充電電圧Vkを初期値V0に設定する。また、レーザ制御部31は、パルスエネルギー係数Vαを、図示しない記憶装置から読み込む。パルスエネルギー係数Vαは、パルスエネルギーを所定量増減するのに必要な充電電圧Vkの増減量を計算するための係数である。パルスエネルギー係数Vαの値は、正の値である。パルスエネルギー係数Vαは、後述のS221において使用される。
【0128】
次に、S211において、レーザ制御部31は、目標パルスエネルギーEtkを図示しない記憶装置から読み込む。目標パルスエネルギーEtkは、露光装置制御部110から受信したものでもよい。
次に、S212において、レーザ制御部31は、レーザ装置30kがレーザ発振したか否かを判定する。レーザ装置30kがレーザ発振したか否かは、例えば、パワーモニタ17から測定データを受信したか否かによって判定される。
レーザ装置30kがレーザ発振した場合(S212:YES)、レーザ制御部31は、S214に処理を進める。レーザ装置30kがレーザ発振していない場合(S212:NO)、レーザ制御部31は、レーザ装置30kがレーザ発振するまで待機する。
【0129】
S214において、レーザ制御部31は、少なくとも1つのパルスカウンタをカウントアップする。少なくとも1つのパルスカウンタは、どの時点を起点としてカウントされたパルスレーザ光の出力パルス数を示すかによって、複数種類のパルスカウンタを含むことができる。少なくとも1つのパルスカウンタは、部分ガス交換後のパルス数Npgkを含む。レーザ制御部31は、部分ガス交換後のパルス数Npgkに1を加算することにより、部分ガス交換後のパルス数Npgkをカウントアップする。
【0130】
次に、S216において、レーザ制御部31は、パルスエネルギーEkを計測する。パルスエネルギーEkは、パワーモニタ17から受信した測定データに基づいて計算される。
次に、S220において、レーザ制御部31は、パルスエネルギーEkと目標パルスエネルギーEtkとの差ΔEを、以下の式によって計算する。
ΔE=Ek-Etk
【0131】
次に、S221において、レーザ制御部31は、パルスエネルギーEkと目標パルスエネルギーEtkとの差ΔEに基づいて、充電電圧Vkの値を以下の式によって更新する。
Vk=Vk-Vα・ΔE
例えば、パルスエネルギーEkが目標パルスエネルギーEtkより高い場合には、差ΔEの値が正の値になる。そこで、充電電圧Vkの現在の値から、Vα・ΔEで示される正の値を減算することにより、充電電圧Vkを低下させる。これにより、パルスエネルギーEkが目標パルスエネルギーEtkに近づくようにパルスエネルギーEkを制御することができる。
【0132】
次に、S222において、レーザ制御部31は、目標パルスエネルギーEtkが変更されたか否かを判定する。目標パルスエネルギーEtkが変更されたか否かは、露光装置制御部110から新たな目標パルスエネルギーEtkを受信したか否かによって判定される。
目標パルスエネルギーEtkが変更されていない場合(S222:NO)、レーザ制御部31は、処理を上述のS212に戻す。S212~S222の処理を繰り返すことにより、レーザ制御部31は、パルスエネルギーEkが目標パルスエネルギーEtkに近づくように充電電圧Vkを変化させる。
目標パルスエネルギーEtkが変更された場合(S222:YES)、レーザ制御部31は、処理を上述のS211に戻す。S211において新たな目標パルスエネルギーEtkを読み込むことにより、レーザ制御部31は、新たな目標パルスエネルギーEtkに基づいてパルスエネルギーEkを制御する。
【0133】
2.2.2.2 ガス制御
図11は、第1の実施形態において各レーザ装置のレーザ制御部31が行うガス制御のフローチャートである。レーザ制御部31は、全ガス交換や部分ガス交換を行うことにより、チャンバ10内で不純物が蓄積されたレーザガスを、不純物の少ないレーザガスに交換する。あるいは、レーザ制御部31は、ガス圧制御を行うことにより、パルスエネルギーEkを目標パルスエネルギーEtkに近づけるために必要な充電電圧Vkが所定の範囲に収まるようにする。
【0134】
まず、S230において、レーザ制御部31は、注入ガス積算量Qkを初期値0に設定する。
次に、S231において、レーザ制御部31は、チャンバ10の全ガス交換を行う。全ガス交換は、レーザ装置30kによるパルスレーザ光の出力を停止させた状態で、チャンバ10の内部のレーザガスのほとんどを排出し、不純物の少ないレーザガスを再充填する処理である。
【0135】
次に、S232において、レーザ制御部31は、注入ガス積算量Qkを以下の式によって更新する。
Qk=Qk+ΔPtg
ここで、ΔPtgは、1回の全ガス交換によるレーザガスの注入量である。
【0136】
次に、S233において、レーザ制御部31は、部分ガス交換間隔を計測するタイマーT1をリセット及びスタートする。
次に、S234において、レーザ制御部31は、チャンバ10のガス圧制御を行う。例えば、チャンバ10にレーザガスを注入してチャンバガス圧を高くすることにより、パルスエネルギーEkを目標パルスエネルギーEtkに近い値とするために必要な充電電圧Vkを下げることができる。ガス圧制御の詳細については図12を参照しながら後述する。ガス圧制御においてチャンバ10にレーザガスを注入した場合には、後述するように注入ガス積算量Qkを更新する。
【0137】
次に、S235において、レーザ制御部31は、充電電圧Vkが最大電圧Vmax2未満であるか否かを判定する。チャンバ10内に不純物が蓄積すると、レーザ装置30kの性能が低下し、パルスエネルギーEkを目標パルスエネルギーEtkに近い値とするために必要な充電電圧Vkが上昇する。充電電圧Vkが、S234のガス圧制御によって調節可能な範囲を超えて、最大電圧Vmax2以上となった場合には(S235:NO)、レーザ制御部31は、処理を上述のS231に戻して全ガス交換を行う。充電電圧Vkが最大電圧Vmax2未満である場合には、レーザ制御部31は、処理をS236に進める。
【0138】
S236において、レーザ制御部31は、タイマーT1の値と、部分ガス交換周期Tpgとを比較する。タイマーT1の値が、部分ガス交換周期Tpg以上である場合には(S236:YES)、レーザ制御部31は、処理をS237に進める。タイマーT1の値が、部分ガス交換周期Tpg未満である場合には(S236:NO)、レーザ制御部31は、処理を上述のS234に戻す。レーザ制御部31は、充電電圧Vkが最大電圧Vmax2以上となるか、タイマーT1の値が部分ガス交換周期Tpg以上となるまで、S234~S236の処理を繰り返す。
【0139】
S237において、レーザ制御部31は、チャンバ10の部分ガス交換を行う。部分ガス交換は、レーザ装置30kによるパルスレーザ光の出力が可能な状態で、チャンバ10の内部のレーザガスの一部のみを排出し、不純物の少ないレーザガスを、排出したレーザガスと同量だけ補充する処理である。部分ガス交換の詳細については図13を参照しながら後述する。
【0140】
次に、S238において、レーザ制御部31は、注入ガス積算量Qkを以下の式によって更新する。
Qk=Qk+ΔPpg
ここで、ΔPpgは、後述する部分ガス交換量である。部分ガス交換量ΔPpgは、1回の部分ガス交換によるガスの注入量に相当する。
【0141】
S238の後、レーザ制御部31は、処理を上述のS233に戻して、部分ガス交換間隔を計測するタイマーT1をリセット及びスタートする。レーザ制御部31は、充電電圧Vkが最大電圧Vmax2以上となるまで、S233~S238の処理を繰り返す。
【0142】
図12は、図11に示されるガス圧制御の詳細を示すフローチャートである。図12に示される処理は、図11に示されるS234のサブルーチンとして、レーザ制御部31によって行われる。
【0143】
まず、S2340において、レーザ制御部31は、充電電圧の第1の閾値Vmin及び第2の閾値Vmaxと、チャンバガス圧の増減幅ΔPと、を図示しない記憶装置から読み込む。第1の閾値Vminは、第2の閾値Vmaxよりも小さい値である。第2の閾値Vmaxは、図11を参照しながら説明した最大電圧Vmax2よりも小さい値である。
【0144】
次に、S2341において、レーザ制御部31は、チャンバガス圧PLkを計測する。チャンバガス圧PLkは、チャンバ圧力センサP1から受信した測定データに基づいて計算される。
【0145】
次に、S2342において、レーザ制御部31は、充電電圧Vkを読み込む。充電電圧Vkは、レーザ制御部31から充電器12に対して送信された設定信号に含まれる充電電圧である。
【0146】
次に、S2343において、レーザ制御部31は、充電電圧Vkを2つの閾値Vmin及びVmaxと比較する。比較結果として、以下の3通りがあり得る。
(1)充電電圧Vkが第2の閾値Vmaxより大きい(Vk>Vmax)。
(2)充電電圧Vkが第1の閾値Vmin以上、第2の閾値Vmax以下(Vmax≧Vk≧Vmin)。
(3)充電電圧Vkが第1の閾値Vminより小さい(Vmin>Vk)。
【0147】
(1)充電電圧Vkが第2の閾値Vmaxより大きい場合(Vk>Vmax)、レーザ制御部31は、処理をS2344に進める。
S2344において、レーザ制御部31は、チャンバガス圧PLkがΔP増加するように、チャンバ10内にバッファガスを注入する。バッファガスの注入は、バルブB-V1を開閉することを要求する信号をガス制御部47に送信することによって行われる。チャンバ10内にバッファガスを注入してチャンバガス圧PLkを高くすることにより、パルスエネルギーEkを目標パルスエネルギーEtkに近い値とするために必要な充電電圧Vkを下げることができる。
次に、S2345において、レーザ制御部31は、注入ガス積算量Qkを以下の式によって更新する。
Qk=Qk+ΔP
S2345の後、レーザ制御部31は、本フローチャートの処理を終了し、図11の処理に戻る。
【0148】
(2)充電電圧Vkが第1の閾値Vmin以上、第2の閾値Vmax以下である場合(Vmax≧Vk≧Vmin)、レーザ制御部31は、本フローチャートの処理を終了し、図11の処理に戻る。
【0149】
(3)充電電圧Vkが第1の閾値Vminより小さい場合(Vmin>Vk)、レーザ制御部31は、処理をS2346に進める。
S2346において、レーザ制御部31は、チャンバガス圧PLkがΔP減少するように、チャンバ10内のレーザガスを排出する。レーザガスの排出は、バルブEX-V1を開閉することを要求する信号をガス制御部47に送信することによって行われる。チャンバ10内のレーザガスを排出してチャンバガス圧PLkを低くすることにより、パルスエネルギーEkを目標パルスエネルギーEtkに近い値とするために必要な充電電圧Vkを上げることができる。
S2346の後、レーザ制御部31は、本フローチャートの処理を終了し、図11の処理に戻る。
【0150】
図13は、図11に示される部分ガス交換の詳細を示すフローチャートである。図13に示される処理は、図11に示されるS237のサブルーチンとして、レーザ制御部31によって行われる。
【0151】
まず、S2370において、レーザ制御部31は、部分ガス交換後のパルス数Npgkを読み込む。部分ガス交換後のパルス数Npgkは、図10のS214においてカウントされているものでもよい。
【0152】
次に、S2371において、レーザ制御部31は、バッファガス注入量ΔPbgを以下の式により計算する。
ΔPbg=Kbg・Npgk
ここで、Kbgは、部分ガス交換後のパルス数Npgkに応じてバッファガス注入量ΔPbgを計算するための係数である。
【0153】
次に、S2372において、レーザ制御部31は、チャンバガス圧PLkがΔPbg増加するように、バッファガスをチャンバ10内に注入する。
【0154】
次に、S2373において、レーザ制御部31は、フッ素含有ガス注入量ΔPhgを以下の式により計算する。
ΔPhg=Khg・Npgk
ここで、Khgは、部分ガス交換後のパルス数Npgkに応じてフッ素含有ガス注入量ΔPhgを計算するための係数である。
【0155】
次に、S2374において、レーザ制御部31は、チャンバガス圧PLkがΔPhg増加するように、フッ素含有ガスをチャンバ10内に注入する。
【0156】
次に、S2375において、レーザ制御部31は、部分ガス交換量ΔPpgを以下の式により計算する。
ΔPpg=ΔPbg+ΔPhg
部分ガス交換量ΔPpgは、バッファガス注入量ΔPbgとフッ素含有ガス注入量ΔPhgとの合計となる。この部分ガス交換量ΔPpgのデータは、図11のS238において注入ガス積算量Qkを更新するために使用される。
【0157】
次に、S2376において、レーザ制御部31は、チャンバガス圧PLkがΔPpg減少するように、チャンバ10内のレーザガスを排出する。
S2376の後、レーザ制御部31は、本フローチャートの処理を終了し、図11の処理に戻る。
【0158】
以上説明した図10図13の処理により、異常フラグFkを設定するための以下のガス制御関連データが生成される。
(1)図10のS221で設定される充電電圧Vk
(2)図12のS2341で計測されるチャンバガス圧PLk
(3)図11のS232、S238、及び図12のS2345で計算される注入ガス積算量Qk
(4)図10のS216で計測されるパルスエネルギーEk
【0159】
2.2.3 異常フラグFkの設定処理
図14は、第1の実施形態において各レーザ装置のレーザ制御部31が行う異常フラグFkの設定のフローチャートである。レーザ制御部31は、以下の処理により、異常フラグFkを設定する。
【0160】
まず、S2040において、レーザ制御部31は、ガス制御関連データに基づいて、各種レーザ性能パラメータの計測及び計算を行う。S2040の詳細については図15を参照しながら後述する。S2040において計算されるレーザ性能パラメータは、以下を含む。
(1)充電電圧変化量ΔVk
(2)チャンバガス圧変化量ΔPLk
(3)ガス消費量ΔQk
(4)パルスエネルギー安定性Eσk
レーザガスに含まれる不純物の量が増加した場合、これらのレーザ性能パラメータの値が上昇する可能性がある。これらのレーザ性能パラメータの値が複数のレーザ装置において上昇した場合、再生ガスを供給するガス再生装置50に異常がある可能性がある。
【0161】
次に、S2042において、レーザ制御部31は、レーザ性能パラメータのいずれかが予め決められた範囲を超えたか否かを判定する。例えば、レーザ制御部31は、レーザ性能パラメータのいずれかが異常判定の閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、以下のいずれかの条件が成立するか否かを判定する。
(1)ΔVk≧ΔVmax
(2)ΔPLk≧ΔPLmax
(3)ΔQk≧ΔQmax
(4)Eσk≧Eσmax
ここで、ΔVmax、ΔPLmax、ΔQmax、Eσmaxは、それぞれレーザ性能パラメータの異常判定の閾値である。
【0162】
レーザ性能パラメータがいずれも異常判定の閾値以上ではない場合(S2042:NO)、レーザ制御部31は、S2046に処理を進める。
S2046において、レーザ制御部31は、異常フラグFkを、異常なしを示す値に設定する。異常なしを示す値は、例えば0である。
S2046の後、レーザ制御部31は、S2049に処理を進める。
【0163】
レーザ性能パラメータのいずれかが異常判定の閾値以上である場合(S2042:YES)、レーザ制御部31は、S2047に処理を進める。
S2047において、レーザ制御部31は、異常フラグFkを、異常ありを示す値に設定する。異常ありを示す値は、例えば1である。
S2047の後、レーザ制御部31は、S2049に処理を進める。
【0164】
S2049において、レーザ制御部31は、レーザ管理制御部55に、異常フラグFkの値を送信する。この異常フラグFkは、図8及び図9を参照しながら説明したガス再生装置50の異常判定のために使用される。
【0165】
2.2.3.1 レーザ性能パラメータの計測と計算
図15は、図14に示されるレーザ性能パラメータの計測と計算の詳細を示すフローチャートである。図15に示される処理は、図14に示されるS2040のサブルーチンとして、レーザ制御部31によって行われる。
【0166】
まず、S2040aにおいて、レーザ制御部31は、パルスカウンタNesを初期値0に設定する。このパルスカウンタNesは、レーザ性能パラメータの計算間隔を計測するカウンタである。以下の処理により、パルスカウンタNesの値がNesmaxに達するごとに、レーザ性能パラメータが計算される。
【0167】
次に、S2040bにおいて、レーザ制御部31は、レーザ装置30kがレーザ発振したか否かを判定する。レーザ装置30kがレーザ発振したか否かは、例えば、パワーモニタ17から測定データを受信したか否かによって判定される。
レーザ装置30kがレーザ発振した場合(S2040b:YES)、レーザ制御部31は、S2040cに処理を進める。レーザ装置30kがレーザ発振していない場合(S2040b:NO)、レーザ制御部31は、レーザ装置30kがレーザ発振するまで待機する。
【0168】
S2040cにおいて、レーザ制御部31は、現在のパルスカウンタNesの値に1を加算することにより、パルスカウンタNesをカウントアップする。
【0169】
次に、S2040dにおいて、レーザ制御部31は、図10のS216で計測されたパルスエネルギーEkを読み込む。レーザ制御部31は、読み込んだパルスエネルギーEkの値を、現在のパルスカウンタNesの値と対応付けて、パルスエネルギーEnesとして図示しない記憶装置に記憶させる。
【0170】
次に、S2040eにおいて、レーザ制御部31は、パルスカウンタNesの値を判定する。パルスカウンタNesの値の判定結果は、次の3通りである。
(1)Nes=1
(2)1<Nes<Nesmax
(3)Nes≧Nesmax
【0171】
(1)Nes=1
パルスカウンタNesの値が1である場合、レーザ制御部31は、処理をS2040fに進める。S2040fにおいて、レーザ制御部31は、現在の充電電圧Vk、チャンバガス圧PLk、注入ガス積算量Qkを読み込んで、それぞれ以下のように初期値V0、PL0、Q0として図示しない記憶装置に記憶させる。
V0=Vk
PL0=PLk
Q0=Qk
【0172】
(2)1<Nes<Nesmax
パルスカウンタNesの値が1より大きく、Nesmaxより小さい場合、レーザ制御部31は、上述のS2040bに処理を戻す。パルスカウンタNesの値がNesmax以上となるまでS2040b~S2040eの処理を繰り返すことにより、パルスエネルギーEnesの時系列データが蓄積される。
【0173】
(3)Nes≧Nesmax
パルスカウンタNesの値がNesmax以上となった場合、レーザ制御部31は、S2040gに処理を進める。S2040gにおいて、レーザ制御部31は、現在の充電電圧Vk、チャンバガス圧PLk、注入ガス積算量Qkを読み込んで、それぞれ以下のように最終値Vesmax、PLesmax、Qesmaxとして図示しない記憶装置に記憶させる。
Vesmax=Vk
PLesmax=PLk
Qesmax=Qk
【0174】
次に、S2040hにおいて、レーザ制御部31は、パルスカウンタNesが1からNesmaxとなるまでのパルスエネルギーEnesの時系列データに基づいて、パルスエネルギーEnesの標準偏差σと平均値Eavを計算する。レーザ制御部31は、パルスエネルギーEnesの標準偏差σと平均値Eavに基づいて、以下の式により、パルスエネルギー安定性Eσkを計算する。
Eσk=σ/Eav
ここで、上記式の分母は平均値Eavとしたが、Eavの代わりに、目標パルスエネルギーEtkとして計算してもよい。
【0175】
次に、S2040iにおいて、レーザ制御部31は、以下の式により、充電電圧変化量ΔVk、チャンバガス圧変化量ΔPLk、及びガス消費量ΔQkを計算する。
ΔVk=Vesmax-V0
ΔPLk=PLesmax-PL0
ΔQk=Qesmax-Q0
【0176】
S2040iの後、レーザ制御部は、本フローチャートの処理を終了し、図14の処理に戻る。
このようにして計算されたレーザ性能パラメータに基づいて、ガス再生装置50の異常が判定される。
【0177】
2.3 作用
第1の実施形態においては、レーザ装置301~30nの各々について、少なくとも1つのレーザ性能パラメータが予め決められた範囲を超えたか否かが判定される。そして、少なくとも1つのレーザ性能パラメータが予め決められた範囲を超えたエキシマレーザ装置の台数が2以上である場合に、ガス再生装置50が異常であると判定される。これにより、ガス再生装置50の異常を判定することができる。
【0178】
ガス再生装置50が異常であると判定された場合には、再生ガスを各レーザ装置に供給する処理を中止し、新ガスを各レーザ装置に供給可能とする。これにより、ガス再生装置50に不具合が発生したとしても、複数のレーザ装置が一度に停止してしまうことを抑制し得る。
【0179】
また、第1の実施形態によれば、再生ガスの不純物濃度を検出する成分分析装置を用いなくても、ガス再生装置50の異常を検出することができる。従って、成分分析装置を用いた場合に比べて、ガス再生装置50のコストが低く、設置スペースが低減される。
【0180】
3.レーザ管理制御部が異常フラグを設定する例
3.1 構成
図16は、本開示の第2の実施形態に係るレーザガス管理システム及びこれに接続されたレーザ装置301~30nの構成を概略的に示す。第2の実施形態において、レーザ管理制御部55は、解析部56と記憶部57とを含む。記憶部57は、複数のレーザ装置301~30nから受信したガス制御関連データを記憶する。解析部56は、ガス制御関連データに基づいて、各レーザ装置のレーザ性能パラメータを計算し、各レーザ装置の異常フラグを設定する。
他の点については、第1の実施形態と同様である。
【0181】
3.2 動作
第2の実施形態においてレーザ管理制御部55が行うガス再生装置50の異常判定の処理は、図8を参照しながら説明した第1の実施形態と同様である。
3.2.1 異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントする処理
図17は、第2の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントする処理の詳細を示すフローチャートである。図17に示される処理は、図8に示されるS10のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55の解析部56によって行われる。本開示においては、説明を簡略化するため、レーザ管理制御部55の解析部56が行う処理については、レーザ管理制御部55が行うものとして説明する。
【0182】
図17に示される処理において、S100、S101、S102、S105、及びS106の処理は、図9を参照しながら説明した第1の実施形態と同様である。図9のS103の処理の代わりに、図17においてはS104の処理が行われる点で、第1の実施形態と第2の実施形態とは異なっている。図9のS103においては、レーザ管理制御部55が、番号kのレーザ装置30kから異常フラグFkを受信するのに対し、図17のS104においては、レーザ管理制御部55が、番号kのレーザ装置30kの異常フラグFkを設定する。S104の処理の詳細については、図18を参照しながら後述する。
【0183】
3.2.2 異常フラグFkの設定処理
図18は、第2の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う異常フラグFkの設定のフローチャートである。図18に示される処理は、図17に示されるS104のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55によって行われる。
【0184】
図18に示される処理の前提として、レーザ管理制御部55は、各種レーザ性能パラメータの計算を行う。レーザ性能パラメータの計算については図21図25を参照しながら後述する。レーザ管理制御部55が計算するレーザ性能パラメータは、以下を含む。
(1)所定パルス数ΔNあたりの充電電圧変化量ΔVsk
(2)所定パルス数ΔNあたりのチャンバガス圧変化量ΔPLsk
(3)所定パルス数ΔNあたりのガス消費量ΔQsk
(4)パルスエネルギー安定性Eσk
【0185】
図18のS1043において、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータのいずれかが予め決められた範囲を超えたか否かを判定する。例えば、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータのいずれかが異常判定の閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、以下のいずれかの条件が成立するか否かを判定する。
(1)ΔVsk≧ΔVsmax
(2)ΔPLsk≧ΔPLsmax
(3)ΔQsk≧ΔQsmax
(4)Eσk≧Eσmax
ここで、ΔVsmax、ΔPLsmax、ΔQsmax、Eσmaxは、それぞれレーザ性能パラメータの異常判定の閾値である。
【0186】
レーザ性能パラメータがいずれも異常判定の閾値以上ではない場合(S1043:NO)、レーザ管理制御部55は、S1046に処理を進める。
S1046において、レーザ管理制御部55は、番号kのレーザ装置30kの異常フラグFkを、異常なしを示す値に設定する。異常なしを示す値は、例えば0である。
S1046の後、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了し、図17に示される処理に戻る。
【0187】
レーザ性能パラメータのいずれかが異常判定の閾値以上である場合(S1043:YES)、レーザ管理制御部55は、S1047に処理を進める。
S1047において、レーザ管理制御部55は、番号kのレーザ装置30kの異常フラグFkを、異常ありを示す値に設定する。異常ありを示す値は、例えば1である。
次に、S1048において、レーザ管理制御部55は、異常判定の閾値以上となったレーザ性能パラメータを、記憶部57に記憶させる。
S1048の後、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了し、図17に示される処理に戻る。
【0188】
3.2.3 レーザ制御部の処理
次に、上述の異常フラグを設定するために使用されるレーザ性能パラメータについて説明する。このレーザ性能パラメータは、図21図25を参照しながら後述する処理によって、レーザ管理制御部55が計算する。レーザ性能パラメータの計算は、各レーザ装置の制御に伴って刻々と変化するガス制御関連データに基づいて行われる。そこで、レーザ性能パラメータの計算を説明する前に、図19図20A及び図20Bを参照し、ガス制御関連データが生成されるレーザ制御部31の処理について説明する。
【0189】
図19は、第2の実施形態において各レーザ装置のレーザ制御部31が行うエネルギー制御のフローチャートである。図19に示される処理において、S210、S211、S212、S216、S220、S221、及びS222の処理は、図10を参照しながら説明した第1の実施形態と同様である。図10のS214の処理の代わりに図19においてはS215の処理が行われる点と、S216とS220との間にS217及びS218の処理が行われる点で、第1の実施形態と第2の実施形態とは異なっている。
【0190】
S215において、レーザ制御部31は、少なくとも1つのパルスカウンタをカウントアップする。少なくとも1つのパルスカウンタは、どの時点を起点としてカウントされたパルスレーザ光の出力パルス数を示すかによって、複数種類のパルスカウンタを含むことができる。少なくとも1つのパルスカウンタは、以下のパルスカウンタを含むことができる。
レーザ装置の全パルス数Nlak
チャンバのパルス数Nchk
全ガス交換後のパルス数Ntgk
部分ガス交換後のパルス数Npgk
【0191】
S217において、レーザ制御部31は、チャンバガス圧PLkを計測する。チャンバガス圧PLkは、チャンバ圧力センサP1から受信した測定データに基づいて計算される。あるいは、レーザ制御部31は、図12を参照しながら説明したガス圧制御においてチャンバガス圧PLkを計測してもよい。
【0192】
S218において、レーザ制御部31は、以下のガス制御関連データを、レーザ管理制御部55に送信する。
レーザ装置の全パルス数Nlak
チャンバのパルス数Nchk
全ガス交換後のパルス数Ntgk
部分ガス交換後のパルス数Npgk
目標パルスエネルギーEtk
パルスエネルギーEk
充電電圧Vk
チャンバガス圧PLk
時刻Time
注入ガス積算量Qk
【0193】
上記のガス制御関連データのうち、時刻Timeは、レーザ制御部31が計測した現在の時刻である。注入ガス積算量Qkは、図11及び図12を参照しながら説明したガス圧制御において計算される。
レーザ管理制御部55に送信されたガス制御関連データは、レーザ管理制御部55の記憶部57に記憶される。
【0194】
図20A及び図20Bは、第2の実施形態においてレーザ管理制御部55の記憶部57に記憶されるガス制御関連データの例を示す。ガス制御関連データは、例えば、図20A及び図20Bに示されるようなテーブル形式で記憶される。図20A及び図20Bは、紙面の都合で2枚の図に別れているが、1つのデータテーブルを示している。ガス制御関連データは、複数のレコードを含む。複数のレコードは、番号1~番号N+1のレコードを含む。
【0195】
複数のレコードの各々は、以下のガス制御関連データを含む。
レーザ装置の全パルス数Nlak
チャンバのパルス数Nchk
全ガス交換後のパルス数Ntgk
部分ガス交換後のパルス数Npgk
目標パルスエネルギーEtk
パルスエネルギーEk
充電電圧Vk
チャンバガス圧PLk
時刻Time
注入ガス積算量Qk
【0196】
ガス制御関連データは、所定パルス数ΔNごとに測定される。所定パルス数ΔNごとに、1つの新しいレコードがガス制御関連データに追加される。図19の処理に従う場合、所定パルス数ΔNは、1である。
【0197】
図20A及び図20Bは、番号kのレーザ装置のガス制御関連データを示している。記憶部57は、複数のレーザ装置301~30nのガス制御関連データとして、nセットのガス制御関連データを記憶する。
【0198】
3.2.4 レーザ性能パラメータの計算
図21は、第2の実施形態においてレーザ管理制御部55が行うレーザ性能パラメータの計算のフローチャートである。レーザ管理制御部55は、図20A及び図20Bに示されるガス制御関連データに基づいて、以下の処理により、レーザ性能パラメータを計算する。
【0199】
まず、S1900において、レーザ管理制御部55は、レーザ装置の番号kを初期値0に設定する。
次に、S1901において、レーザ管理制御部55は、レーザ装置の番号kの値に1を加算して、kの値を更新する。
【0200】
次に、S1902において、レーザ管理制御部55は、時刻Time(a)における番号kのレーザ装置30kのガス制御関連データを、記憶部57から読み込む。具体的には、図20A及び図20Bに示されるテーブルから、時刻Time(a)に対応するレコードを特定し、特定されたレコードからガス制御関連データを読み込む。
S1902の処理の詳細については、図22を参照しながら後述する。
【0201】
次に、S1903において、レーザ管理制御部55は、時刻Time(a)から所定時間Δtが経過した時刻Time(b)を、以下の式によって計算する。
Time(b)=Time(a)+Δt
【0202】
次に、S1904において、レーザ管理制御部55は、時刻Time(b)における番号kのレーザ装置30kのガス制御関連データを、記憶部57から読み込む。具体的には、図20A及び図20Bに示されるテーブルから、時刻Time(b)に対応するレコードを特定し、特定されたレコードからガス制御関連データを読み込む。
S1904の処理の詳細については、図23を参照しながら後述する。
【0203】
次に、S1905において、レーザ管理制御部55は、時刻Time(a)におけるガス制御関連データ、及び時刻Time(b)におけるガス制御関連データに基づいて、番号kのレーザ装置30kの所定パルス数ΔNあたりのレーザ性能パラメータを計算する。所定パルス数ΔNあたりのレーザ性能パラメータは、以下のレーザ性能パラメータを含む。
(1)所定パルス数ΔNあたりの充電電圧変化量ΔVsk
(2)所定パルス数ΔNあたりのチャンバガス圧変化量ΔPLsk
(3)所定パルス数ΔNあたりのガス消費量ΔQsk
S1905の処理の詳細については、図24を参照しながら後述する。
【0204】
次に、S1906において、レーザ管理制御部55は、時刻Time(a)と時刻Time(b)の間のガス制御関連データに基づいて、番号kのレーザ装置30kの以下のレーザ性能パラメータを計算する。
(4)パルスエネルギー安定性Eσk
S1906の処理の詳細については、図25を参照しながら後述する。
【0205】
次に、S1908において、レーザ管理制御部55は、レーザ装置の番号kの値が、ガス再生装置50に接続されたレーザ装置の台数nの値以上であるか否かを判定する。番号kの値が台数nの値以上である場合(S1908:YES)、レーザ管理制御部55は、S1909に処理を進める。
【0206】
番号kの値が台数nの値以上ではない場合(S1908:NO)、レーザ管理制御部55は、処理を上述のS1901に戻す。レーザ管理制御部55は、番号kの値が台数nの値以上となるまで、S1901~S1908の処理を繰り返す。S1901~S1908の処理を繰り返すことにより、番号1のレーザ装置から番号nのレーザ装置までの各々について、レーザ性能パラメータを計算することができる。
【0207】
S1909において、レーザ管理制御部55は、時刻Time(a)の値を以下の式により更新する。
Time(a)=Time(b)
これにより、もとの時刻Time(a)の値に所定時間Δtを加算した時刻Time(b)の値が、新たな時刻Time(a)となる。
【0208】
次に、S1910において、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータの計算を中止するか否かを判定する。レーザ性能パラメータの計算を中止する場合(S1910:YES)、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了する。レーザ性能パラメータの計算を中止しない場合(S1910:NO)、レーザ管理制御部55は、処理を上述のS1900に戻し、S1909で新たに設定された時刻Time(a)を用いて、レーザ性能パラメータを計算する。
【0209】
図22は、図21に示される時刻Time(a)におけるガス制御関連データを読み込む処理の詳細を示すフローチャートである。図22に示される処理は、図21に示されるS1902のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55によって行われる。
【0210】
S1902aにおいて、レーザ管理制御部55は、以下のガス制御関連データを記憶部57から読み込む。
時刻Time(a)における番号kのレーザ装置30kの全パルス数Nlak(a)
時刻Time(a)における番号kのレーザ装置30kの充電電圧Vk(a)
時刻Time(a)における番号kのレーザ装置30kのチャンバガス圧PLk(a)
時刻Time(a)における番号kのレーザ装置30kの注入ガス積算量Qk(a)
【0211】
S1902aの後、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了し、図21に示される処理に戻る。
【0212】
図23は、図21に示される時刻Time(b)におけるガス制御関連データを読み込む処理の詳細を示すフローチャートである。図23に示される処理は、図21に示されるS1904のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55によって行われる。
【0213】
S1904aにおいて、レーザ管理制御部55は、以下のガス制御関連データを記憶部57から読み込む。
時刻Time(b)における番号kのレーザ装置30kの全パルス数Nlak(b)
時刻Time(b)における番号kのレーザ装置30kの充電電圧Vk(b)
時刻Time(b)における番号kのレーザ装置30kのチャンバガス圧PLk(b)
時刻Time(b)における番号kのレーザ装置30kの注入ガス積算量Qk(b)
【0214】
S1904aの後、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了し、図21に示される処理に戻る。
【0215】
図24は、図21に示される所定パルス数ΔNあたりのレーザ性能パラメータを計算する処理の詳細を示すフローチャートである。図24に示される処理は、図21に示されるS1905のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55によって行われる。
【0216】
まず、S1905aにおいて、レーザ管理制御部55は、時刻Time(a)と時刻Time(b)の間のパルス数Sを、以下の式により計算する。
S=Nlak(b)-Nlak(a)
【0217】
次に、S1905bにおいて、レーザ管理制御部55は、所定パルス数ΔNあたりの充電電圧変化量ΔVsk、所定パルス数ΔNあたりのチャンバガス圧変化量ΔPLsk、及び所定パルス数ΔNあたりのガス消費量ΔQskを、それぞれ以下の式により計算する。
ΔVsk=(Vk(b)-Vk(a))/S
ΔPLsk=(PLk(b)-PLk(a))/S
ΔQsk=(Qk(b)-Qk(a))/S
【0218】
S1905bの後、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了し、図21に示される処理に戻る。
【0219】
図25は、図21に示されるパルスエネルギー安定性を計算する処理の詳細を示すフローチャートである。図25に示される処理は、図21に示されるS1906のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55によって行われる。
【0220】
まず、S1906aにおいて、レーザ管理制御部55は、時刻Time(a)と時刻Time(b)との間のパルスエネルギーEkの時系列データを読み込む。例えば、時刻Time(a)をTime(1)とし、時刻Time(b)をTime(4)とした場合に、パルスエネルギーEkの時系列データは、Ek(1)、Ek(2)、及びEk(3)を含む。
【0221】
次に、S1906bにおいて、レーザ管理制御部55は、時刻Time(a)と時刻Time(b)の間のパルスエネルギーEkの時系列データに基づいて、パルスエネルギーEkの標準偏差σと平均値Eavを計算する。レーザ制御部31は、パルスエネルギーEkの標準偏差σと平均値Eavに基づいて、以下の式により、パルスエネルギー安定性Eσkを計算する。
Eσk=σ/Eav
ここで、上記式の分母は平均値Eavとしたが、Eavの代わりに、目標パルスエネルギーEtkとして計算してもよい。
【0222】
S1906bの後、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了し、図21に示される処理に戻る。
【0223】
図21図25の処理によって計算されたレーザ性能パラメータが、図17及び図18における異常フラグFkの設定のために使用される。
【0224】
3.2.5 レーザ性能パラメータに基づくガス再生装置の異常判定
図26は、第2の実施形態においてレーザ性能パラメータに基づいてガス再生装置50の異常を判定する例を示す表である。レーザ性能パラメータは、番号1のレーザ装置301から番号nのレーザ装置30nまでの各々について計算される。また、図21を参照しながら説明した所定時間Δtごとに、1セットのレーザ性能パラメータが計算される。
図18のS1043において、各レーザ性能パラメータが異常判定の閾値以上であるか否かが判定される。異常判定の閾値以上であると判定されたレーザ性能パラメータを、図26において網掛けで示す。
【0225】
例えば、時刻Time(a)+Δtにおいて、番号1のレーザ装置301の所定パルス数ΔNあたりの充電電圧変化量ΔVs1[1]が、異常判定の閾値以上であると判定されている。この時刻Time(a)+Δtにおける番号1のレーザ装置301の異常フラグFkは、図18に示される処理により、1となる。異常フラグFkが1となったレーザ装置の台数が1台である場合、図17に示される処理により、F=1となる。すなわち、図8に示される処理により、ガス再生装置50に異常はないと判定される。この判定は、図26に示されるように、所定時間Δtごとに行われる。図26の判定欄に示される「OK」は、ガス再生装置50に異常はないと判定されたことを示す。
【0226】
また、例えば、時刻Time(a)+4Δtにおいて、番号1のレーザ装置301の所定パルス数ΔNあたりの充電電圧変化量ΔVs1[4]と、番号2のレーザ装置302の所定パルス数ΔNあたりのチャンバガス圧変化量ΔPLs2[4]が、異常判定の閾値以上であると判定されている。この時刻Time(a)+4Δtにおける番号1のレーザ装置301及び番号2のレーザ装置302の異常フラグFkは、図18に示される処理により、それぞれ1となる。異常フラグFkが1となったレーザ装置の台数が2台である場合、図17に示される処理により、F=2となる。すなわち、図8に示される処理により、ガス再生装置50に異常があると判定される。図26の判定欄に示される「NG」は、ガス再生装置50に異常があると判定されたことを示す。
【0227】
レーザ管理制御部55は、図26に示されるようなレーザ性能パラメータの推移を、記憶部57に記憶させてもよい。レーザ管理制御部55は、図26に示されるようなレーザ性能パラメータの推移を、工場管理システム59に送信してもよい。レーザ管理制御部55は、図26に示されるようなレーザ性能パラメータの推移を、表示装置58に表示させてもよい。あるいは、図18を参照しながら説明したように、異常判定の閾値以上となったレーザ性能パラメータだけを、記憶部57に記憶させてもよい。
【0228】
4.チャンバのパルス数に応じて異常判定の閾値を計算する例
4.1 概要
図27は、本開示の第3の実施形態においてレーザ性能パラメータの異常判定の閾値を計算するために考慮されるレーザ性能パラメータの変化を示すグラフである。図27の横軸はチャンバのパルス数Nchkを示し、縦軸は任意のレーザ性能パラメータを示す。レーザ性能パラメータは、ガス再生装置50の異常によって変化するだけでなく、チャンバ10の状態によっても変化する。
【0229】
図27に示されるように、チャンバのパルス数Nchkが小さい場合に、レーザ性能パラメータは高い数値から始まり、次第に低い数値に落ち着く場合がある。これは、チャンバ10が新品である場合に、「パシベーション」と呼ばれる工程が行われるためである。チャンバ10が新品である場合には、チャンバ10の内部の部品の表面部分と、レーザガスに含まれるハロゲンガスとが反応して、通常より多く不純物が発生する。チャンバ10の内部の部品の表面部分がハロゲンガスと反応し、皮膜が形成されれば、化学的に平衡な状態となり、不動態化する。これにより、不純物の発生が抑制され、レーザ性能パラメータは低い数値に落ち着く。この工程を「パシベーション」という。
【0230】
チャンバのパルス数Nchkが大きくなるにしたがって、チャンバ10の内部の部品は劣化する。従って、パシベーションが完了した後、チャンバのパルス数Nchkが大きくなるにしたがって、レーザ性能パラメータが高くなっていく。具体的には、レーザチャンバ内の不純物に関係なく、放電電極11aと11bが放電によって消耗することによって、同じ投入エネルギーを入力しても、出力されるパルスレーザ光のパルスエネルギーがチャンバのパルス数によって低下する。その結果、レーザ性能パラメータが高くなっていく。最後にはチャンバ10の寿命が到来する。
【0231】
このように、レーザ性能パラメータは、チャンバ10の状態によって変化する。従って、レーザ性能パラメータが変化したとしても、ガス再生装置50の異常に起因しているとは限らず、チャンバ10の状態の変化に起因している可能性もある。図27に示されるように、チャンバ10の状態は、チャンバのパルス数Nchkとともに変化する傾向がある。そこで、第3の実施形態においては、チャンバのパルス数Nchkに応じて、レーザ性能パラメータの異常判定の閾値を計算する。これにより、チャンバ10の状態の変化がガス再生装置50の異常判定に与える影響を軽減する。
レーザ性能パラメータの異常判定の閾値は、例えば、以下のようにして計算される。多数のレーザ装置に関して、チャンバのパルス数Nchkごとにレーザ性能パラメータを測定する。チャンバのパルス数Nchkごとに、レーザ性能パラメータの測定値の平均値に標準偏差を加算することにより、レーザ性能パラメータの異常判定の閾値が計算される。
【0232】
第3の実施形態におけるレーザガス管理システム及びレーザ装置の構成は、図16を参照しながら説明した第2の実施形態における構成と同様である。
【0233】
4.2 動作
第3の実施形態においてレーザ管理制御部55が行うガス再生装置50の異常判定の処理は、図8を参照しながら説明した第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントする処理は、図17を参照しながら説明した第2の実施形態と同様である。
【0234】
4.2.1 異常フラグFkの設定処理
図28は、第3の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う異常フラグFkの設定のフローチャートである。図28に示される処理は、図17に示されるS104のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55によって行われる。
【0235】
図28に示される処理において、S1046、S1047、及びS1048の処理は、図18を参照しながら説明した第2の実施形態と同様である。図18のS1043の処理の代わりに、図28においてはS1041及びS1044の処理が行われる点で、第2の実施形態と第3の実施形態とは異なっている。
【0236】
S1041において、レーザ管理制御部55は、番号kのレーザ装置30kのチャンバのパルス数Nchkに基づいて、レーザ性能パラメータの異常判定の閾値を計算する。レーザ性能パラメータの異常判定の閾値として、以下の値が計算される。
(1)ΔVsmax(Nchk)
(2)ΔPLsmax(Nchk)
(3)ΔQsmax(Nchk)
(4)Eσmax(Nchk)
S1041の処理の詳細については、図29を参照しながら後述する。
【0237】
次に、S1044において、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータのいずれかが予め決められた範囲を超えたか否かを判定する。例えば、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータのいずれかが異常判定の閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、以下のいずれかの条件が成立するか否かを判定する。
(1)ΔVsk≧ΔVsmax(Nchk)
(2)ΔPLsk≧ΔPLsmax(Nchk)
(3)ΔQsk≧ΔQsmax(Nchk)
(4)Eσk≧Eσmax(Nchk)
図18を参照しながら説明したS1043においては、チャンバのパルス数Nchkに依存せず一定の閾値が用いられていたのに対し、S1044の処理においては、チャンバのパルス数Nchkに応じた閾値が用いられる。異常判定の閾値以外の点については、S1044の処理は、S1043の処理と同様である。
【0238】
4.2.1.1 レーザ性能パラメータの異常判定の閾値の計算
図29は、第3の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う異常判定の閾値の計算のフローチャートである。図29に示される処理は、図28に示されるS1041のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55によって行われる。
【0239】
まず、S1041aにおいて、レーザ管理制御部55は、番号kのレーザ装置30kのチャンバのパルス数Nchkを記憶部57から読み込む。チャンバのパルス数Nchkは、図19のS215によってカウントされたチャンバのパルス数Nchk、あるいは、図20Aに示されるテーブルデータとして記憶されたチャンバのパルス数Nchkである。
【0240】
次に、S1041bにおいて、レーザ管理制御部55は、チャンバのパルス数と、レーザ性能パラメータの異常判定の閾値との関数を、記憶部57から読み込む。この関数は、レーザ性能パラメータごとに、予め記憶部57に記憶したものである。
【0241】
次に、S1041cにおいて、レーザ管理制御部55は、S1041aで読み込まれたチャンバのパルス数Nchkと、S1041bで読み込まれた関数とを用いて、レーザ性能パラメータの異常判定の閾値を計算する。
S1041cの後、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了し、図28に示される処理に戻る。S1041cで計算された異常判定の閾値が、図28のS1044において使用される。
他の点については、第2の実施形態と同様である。
【0242】
5.バースト特性値に基づいてキセノン濃度異常を判定する例
5.1 概要
図30は、本開示の第4の実施形態において各レーザ装置が行うバースト運転の概念を説明する図である。図30の横軸は時間を示し、縦軸はパルスレーザ光のパルスエネルギーEkを示す。レーザ装置は、所定の繰返し周波数でパルスレーザ光を出力する「バースト期間」と、所定の繰返し周波数でのパルスレーザ光の出力を休止する「休止期間」と、を繰り返しながら運転する。このような運転をバースト運転という。バースト期間は、半導体ウエハの露光を行うための期間に相当する。休止期間は、露光装置100において半導体ウエハを交換するための期間や、1つの半導体ウエハの中で、1つのチップ領域から他のチップ領域にパルスレーザ光の照射位置を移動するための期間に相当する。1つのバースト期間においてパルスエネルギーEkがほぼ一定に保たれるように、図19に示される処理によって充電電圧Vkが制御される。
【0243】
図31は、本開示の第4の実施形態において解析されるバースト特性値を説明する図である。図31の横軸は時間を示し、縦軸は充電電圧Vkを示す。図31の横軸は、図30の横軸よりも引き伸ばして示されているので、図31においては1つのバースト期間が大きく図示されている。パルスエネルギーEkがほぼ一定に保たれるように、充電電圧Vkは、1つのバースト期間内で変動することがある。ArFエキシマレーザ装置においては、1つのバースト期間内での充電電圧Vkの変動を抑制するために、少量のキセノンガスを含むレーザガスが使用される。例えば、レーザガスに含まれるキセノンガスの濃度を10ppmとすることにより、1つのバースト期間内でパルスエネルギーEkをほぼ一定に保つための充電電圧Vkを安定化させることができる。
【0244】
しかしながら、例えば、ガス再生装置50の異常によって、キセノンガスの濃度が低下すると、1つのバースト期間内でパルスエネルギーEkをほぼ一定に保つための充電電圧Vkの変動が大きくなることがある。キセノンガスの濃度を10ppmとした場合よりも、キセノンガスの濃度を5ppmとした場合の方が充電電圧Vkの変動が大きくなる。キセノンガスの濃度を5ppmとした場合よりも、キセノンガスの濃度を0ppmとした場合の方が充電電圧Vkの変動がさらに大きくなる。そこで、以下の式で計算されるバースト特性値ΔVBkを用いて、キセノンガスの濃度の異常を検出することができる。
ΔVBk=VBen-VBst
ここで、VBstはバースト期間の開始時の充電電圧であり、VBenはバースト期間の終了時の充電電圧である。
【0245】
第4の実施形態におけるレーザガス管理システム及びレーザ装置の構成は、図16を参照しながら説明した第2の実施形態における構成と同様である。
【0246】
5.2 動作
第4の実施形態においてレーザ管理制御部55が行うガス再生装置50の異常判定の処理は、図8を参照しながら説明した第1の実施形態と同様である。
第4の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数をカウントする処理は、図17を参照しながら説明した第2の実施形態と同様である。
【0247】
5.2.1 異常フラグFkの設定処理
図32は、第4の実施形態においてレーザ管理制御部55が行う異常フラグFkの設定のフローチャートである。図32に示される処理は、図17に示されるS104のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55によって行われる。
【0248】
図32に示される処理において、S1046、S1047、及びS1048の処理は、図28を参照しながら説明した第3の実施形態と同様である。図28のS1041及びS1044の処理の代わりに、図32においてはそれぞれS1042及びS1045の処理が行われる点で、第3の実施形態と第4の実施形態とは異なっている。
【0249】
S1042において、レーザ管理制御部55は、番号kのレーザ装置30kのチャンバのパルス数Nchkに基づいて、レーザ性能パラメータの異常判定の閾値を計算する。S1042の処理は、算出されるレーザ性能パラメータの異常判定の閾値として、バースト特性値ΔVBkの閾値ΔVBmax(Nchk)が追加される点のほかは、図28及び図29のS1041の処理と同様である。
【0250】
次に、S1045において、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータのいずれかが予め決められた範囲を超えたか否かを判定する。例えば、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータのいずれかが異常判定の閾値以上であるか否かを判定する。S1045の処理は、以下の条件が追加される点のほかは、図28のS1044の処理と同様である。
(5)ΔVBk≧ΔVBmax(Nchk)
【0251】
5.2.2 レーザ制御部の処理
次に、上述の異常フラグを設定するために使用されるバースト特性値ΔVBkについて説明する。バースト特性値ΔVBkは、図34及び図35を参照しながら後述する処理によって、レーザ管理制御部55が計算する。バースト特性値ΔVBkの計算は、各レーザ装置の制御に伴って刻々と変化するガス制御関連データに基づいて行われる。そこで、バースト特性値ΔVBkの計算を説明する前に、図33を参照し、ガス制御関連データが生成されるレーザ制御部31の処理について説明する。
【0252】
図33は、第4の実施形態において各レーザ装置のレーザ制御部31が行うエネルギー制御のフローチャートである。図33に示される処理において、S210~S212、S215~S217、S220~S222の処理は、図19を参照しながら説明した第2の実施形態と同様である。図33においてはS212とS215との間にS213の処理が行われる点と、図19のS218の処理の代わりに図33においてはS219の処理が行われる点で、第2の実施形態と第4の実施形態とは異なっている。
【0253】
S213において、レーザ制御部31は、トリガ間隔Tsを計測する。トリガ間隔Tsは、露光装置制御部110からレーザ制御部31が受信した発光トリガ信号の間隔、又はレーザ制御部31がスイッチ13aに送信した発光トリガの間隔でもよい。あるいは、トリガ間隔Tsの代わりに、パワーモニタ17からレーザ制御部31が受信した測定データに基づいてパルス間隔が計測されてもよい。トリガ間隔Ts又はパルス間隔は、レーザ制御部31に含まれる図示しない計時装置によって計測される。
【0254】
S219において、レーザ制御部31は、ガス制御関連データを、レーザ管理制御部55に送信する。S219の処理は、レーザ管理制御部55に送信されるガス制御関連データとして、トリガ間隔Tsが追加される点のほかは、図19のS218の処理と同様である。
【0255】
5.2.3 レーザ性能パラメータの計算
図34は、第4の実施形態においてレーザ管理制御部55が行うレーザ性能パラメータの計算のフローチャートである。図34に示される処理において、S1900~S1906、S1908~S1910の処理は、図21を参照しながら説明した第2の実施形態と同様である。図34においてはS1906とS1908との間にS1907の処理が行われる点で、第2の実施形態と第4の実施形態とは異なっている。
【0256】
S1907において、レーザ管理制御部55は、時刻Time(a)と時刻Time(b)との間のガス制御関連データに基づいて、番号kのレーザ装置30kの以下のレーザ性能パラメータを計算する。
(5)バースト特性値ΔVBk
S1907の処理の詳細については、図35を参照しながら後述する。
【0257】
図35は、図34に示されるバースト特性値を計算する処理の詳細を示すフローチャートである。図35に示される処理は、図34に示されるS1907のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55によって行われる。
【0258】
まず、S1907aにおいて、レーザ管理制御部55は、時刻Time(a)と時刻Time(b)との間の、充電電圧Vk及びトリガ間隔Tsの時系列データを読み込む。
【0259】
次に、S1907bにおいて、レーザ管理制御部55は、トリガ間隔Tsの時系列データに基づいて、バースト期間の開始時のパルスと終了時のパルスとを特定する。例えば、所定値より長いトリガ間隔Tsが休止期間に相当するものとすれば、第1の休止期間の直後のパルスがバースト期間の開始時のパルスであり、第1の休止期間の後に最初に現れる第2の休止期間の直前のパルスがバースト期間の終了時のパルスである。所定値は、例えば0.2秒とする。
バースト期間の開始時のパルスと終了時のパルスを特定した後、レーザ管理制御部55は、充電電圧Vkの時系列データに基づいて、バースト期間の開始時の充電電圧VBstと終了時の充電電圧VBenを特定する。バースト期間の開始時の1パルスの充電電圧Vkを充電電圧VBstとし、バースト期間の終了時の1パルスの充電電圧Vkを充電電圧VBenとしてもよい。あるいは、バースト期間の開始時の複数のパルスの充電電圧Vkの平均値を充電電圧VBstとし、バースト期間の終了時の複数のパルスの充電電圧Vkの平均値を充電電圧VBenとしてもよい。
【0260】
次に、S1907cにおいて、レーザ管理制御部55は、以下の式により、番号kのレーザ装置30kのバースト特性値ΔVBkを計算する。
ΔVBk=VBen-VBst
あるいは、時刻Time(a)と時刻Time(b)との間に複数のバースト期間が含まれる場合に、複数のバースト期間のそれぞれについて計算されるバースト特性値を平均してもよい。
【0261】
S1907cの後、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了し、図34に示される処理に戻る。
図34及び図35の処理によって計算されたバースト特性値ΔVBkが、図32における異常フラグFkの設定のために使用される。
【0262】
5.2.4 レーザ性能パラメータに基づくガス再生装置の異常判定
図36は、第4の実施形態においてレーザ性能パラメータに基づいてガス再生装置50の異常を判定する例を示す表である。図36は、レーザ性能パラメータとしてバースト特性値ΔVBkが追加されている点で、図26に示される例と異なる。
図32のS1045において、各レーザ性能パラメータが異常判定の閾値以上であるか否かが判定される。異常判定の閾値以上であると判定されたレーザ性能パラメータを、図36において網掛けで示す。
【0263】
例えば、時刻Time(a)+2Δtにおいて、番号2のレーザ装置302のバースト特性値ΔVB2[2]と、番号nのレーザ装置30nのバースト特性値ΔVBn[2]が、異常判定の閾値以上であると判定されている。この時刻Time(a)+2Δtにおける番号2のレーザ装置302及び番号nのレーザ装置30nの異常フラグFkは、図32に示される処理により、それぞれ1となる。異常フラグFkが1となったレーザ装置の台数が2台である場合、図17に示される処理により、F=2となる。すなわち、図8に示される処理により、ガス再生装置50に異常があると判定される。図36の判定欄に示される「OK」は、ガス再生装置50に異常はないと判定されたことを示す。図36の判定欄に示される「NG」は、ガス再生装置50に異常があると判定されたことを示す。
【0264】
さらに、第4の実施形態において、2台以上のレーザ装置でバースト特性値ΔVBkが異常判定の閾値以上であると判定された場合には、レーザ管理制御部55は、ガス再生装置50におけるキセノンガスの処理に異常があることを判定する。レーザ管理制御部55は、ガス再生装置50におけるキセノンガスの処理に異常があることを外部装置に出力する。
【0265】
一方、時刻Time(a)+5Δtにおいては、番号2のレーザ装置302の所定パルス数ΔNあたりの充電電圧変化量ΔVs2[5]と、番号nのレーザ装置30nのバースト特性値ΔVBn[5]が、異常判定の閾値以上であると判定されている。この時刻Time(a)+5Δtにおける番号2のレーザ装置302及び番号nのレーザ装置30nの異常フラグFkは、図32に示される処理により、それぞれ1となる。異常フラグFkが1となったレーザ装置の台数が2台である場合、図17に示される処理により、F=2となる。すなわち、図8に示される処理により、ガス再生装置50に異常があると判定される。
【0266】
但し、F=2であっても、バースト特性値ΔVBkが異常判定の閾値以上であると判定されたレーザ装置が1台だけである場合には、レーザ管理制御部55は、ガス再生装置50におけるキセノンガスの処理に異常があるとは判定しなくてもよい。
他の点については、第2の実施形態又は第3の実施形態と同様でよい。
【0267】
6.再生ガスと新ガスをレーザ毎に切り替え可能にした例
6.1 構成
図37は、本開示の第5の実施形態に係るレーザガス管理システム及びこれに接続されたレーザ装置301~30nの構成を概略的に示す。第5の実施形態においては、配管25と配管26との両方に接続された配管27の他に、配管26に接続された新ガス専用配管38が設けられている。新ガス専用配管38は、レギュレータ86と、バルブB-V2との間の配管26に接続されている。
【0268】
新ガス専用配管38は、複数のレーザ装置301~30nに対応する複数の配管381~38nに分岐している。配管381~38nの各々には、バルブB-V3が配置されている。配管381~38nは、それぞれ、配管271~27nに接続されている。配管271~27nに対する配管381~38nの接続位置よりも上流側の配管271~27nに、バルブC-V5が配置されている。配管271~27nに対する配管381~38nの接続位置よりも下流側の配管271~27nに、バルブB-V1が配置されている。
他の点については、図16を参照しながら説明した第2の実施形態における構成と同様である。
【0269】
6.2 動作
配管27は、ガス再生装置50によるバルブB-V2及びバルブC-V2の制御に従い、レーザ装置301~30nに、新ガス又は再生ガスを選択的に供給する。これに対し、新ガス専用配管38は、ガス再生装置50による制御に関わらず、レーザ装置301~30nに新ガスを供給できるようになっている。
【0270】
各レーザ装置のバルブB-V3及びバルブC-V5は、レーザ管理制御部55によって制御される。あるいは、バルブB-V3及びバルブC-V5は、各レーザ装置のガス制御部47によって制御されてもよい。1つのレーザ装置において、バルブB-V3が閉じられ、バルブC-V5が開かれているときは、当該レーザ装置には、ガス再生装置50によって選択された再生ガス又は新ガスが、配管27から供給される。別の1つのレーザ装置において、バルブB-V3が開かれ、バルブC-V5が閉じられているときは、当該レーザ装置には、ガス再生装置50による制御に関わらず、新ガス専用配管38から新ガスが供給可能となる。
【0271】
例えば、複数のレーザ装置301~30nのレーザ性能パラメータを判定した結果、異常が検出されたレーザ装置が1台だけであった場合、ガス再生装置50に問題があるのではなく、異常が検出された当該レーザ装置に問題があると考えられる。しかし、異常が検出された当該レーザ装置に問題があるとしても、定期メンテナンス日までは使用を続けたい場合があり得る。そのような場合、異常が検出された当該レーザ装置についてバルブB-V3を開き、バルブC-V5を閉じてもよい。これにより、異常が検出された当該レーザ装置には、ガス再生装置50による制御に関わらず新ガスを供給可能とし、レーザ性能の低下を抑制し得る。
【0272】
6.2.1 ガス再生装置の異常判定の処理
図38は、第5の実施形態においてレーザ管理制御部55が行うガス再生装置50の異常判定のフローチャートである。レーザ管理制御部55は、以下の処理により、ガス再生装置50の異常を判定する。
図38に示される処理において、S10及びS13~S18の処理は、図8を参照しながら説明した第1の実施形態の処理と同様である。S10とS13との間に、図38においてはS11及びS12の処理が行われる点で、第1の実施形態と第5の実施形態とは異なっている。
【0273】
S11において、レーザ管理制御部55は、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数が1台であるか否かを判定する。レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数が1台である場合(S11:YES)、レーザ管理制御部55は、当該1台のレーザ装置が異常であると判定し、処理をS12に進める。レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数が1台ではない場合(S11:NO)、レーザ管理制御部55は、処理をS13に進める。
S12において、レーザ管理制御部55は、異常が検出されたレーザ装置の停止処理を行う。S12の処理の詳細については、図39を参照しながら後述する。
S12の後、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了する。
【0274】
6.2.1.1 異常が検出されたレーザ装置の停止処理
図39は、図38に示されるレーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の停止処理の詳細を示すフローチャートである。図39に示される処理は、図38に示されるS12のサブルーチンとして、レーザ管理制御部55によって行われる。以下の説明において、異常が検出された1台のレーザ装置の番号をmとする。
【0275】
まず、S120において、レーザ管理制御部55は、異常が検出された番号mのレーザ装置30mのレーザ制御部31に、レーザ性能の異常を通知する。
次に、S121において、レーザ管理制御部55は、番号mのレーザ装置30mについて、バルブC-V5を閉じ、バルブB-V3を開く。これにより、番号mのレーザ装置30mにガス再生装置50からバッファガスが供給されるときは、再生ガスではなく新ガスが供給されるようになる。なお、バルブC-V5は本開示における第1のバルブに相当し、バルブB-V3は本開示における第3のバルブに相当する。
【0276】
S120においてレーザ性能の異常を通知された番号mのレーザ装置30mのレーザ制御部31は、S122において、バルブC-V1を閉じ、バルブEX-V2を開く。これにより、番号mのレーザ装置30mから排出される排出ガスは、ガス再生装置50には供給されず、装置外部に排気される。なお、異常が検出されたレーザ装置30mから排出される排出ガスの再生を許容する場合には、S122の処理は行わなくてもよい。
【0277】
次に、S123において、レーザ管理制御部55は、番号mのレーザ装置30mのレーザ性能の異常を外部装置に通知する。外部装置は、例えば、表示装置58を含む。表示装置58は、番号mのレーザ装置30mの異常を示す表示を行う。また、外部装置は、例えば、工場管理システム59を含む。
【0278】
次に、S124において、レーザ管理制御部55は、外部装置から番号mのレーザ装置30mの停止OKを示す信号を受信したか否かを判定する。番号mのレーザ装置30mの停止OKを示す信号を受信していない場合(S124:NO)、レーザ管理制御部55は、番号mのレーザ装置30mの停止OKを示す信号を受信するまで待機する。この場合、番号mのレーザ装置30mは、ガス再生装置50から再生ガスを受入れることなく、またガス再生装置50に排出ガスを供給することなく、レーザ発振を行う。番号mのレーザ装置30mの停止OKを示す信号を受信した場合(S124:YES)、レーザ管理制御部55は、処理をS125に進める。
【0279】
次に、S125において、レーザ管理制御部55は、番号mのレーザ装置30mについて、レーザ発振を停止させる。
S125の後、レーザ管理制御部55は、本フローチャートの処理を終了し、図38に示される処理に戻る。
【0280】
7.その他
図40は、レーザ装置30kに接続された露光装置100の構成を概略的に示す。上述のように、レーザ装置30kはレーザ光を生成して露光装置100に出力する。
図40において、露光装置100は、照明光学系141と投影光学系142とを含む。照明光学系141は、レーザ装置30kから入射したレーザ光によって、レチクルステージRTのレチクルパターンを照明する。投影光学系142は、レチクルを透過したレーザ光を、縮小投影してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピースに結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置100は、レチクルステージRTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、レチクルパターンを反映したレーザ光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造することができる。
【0281】
上述の実施形態において、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数が2台以上である場合にガス再生装置50に異常があると判定しているが、本開示はこれに限定されない。Xを2以上の整数とし、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数がX台以上である場合にガス再生装置50に異常があると判定してもよい。レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数がX台未満である場合にはガス再生装置50に異常がないと判定してもよい。
【0282】
第5の実施形態において、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数が1台である場合に当該レーザ装置に異常があると判定しているが、本開示はこれに限定されない。Xを2以上の整数とし、レーザ性能パラメータの異常が検出されたレーザ装置の台数がX台未満である場合に、それらのレーザ装置に異常があると判定してもよい。
【0283】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0284】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24
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図26
図27
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図29
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図31
図32
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図34
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図37
図38
図39
図40