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特許7231683半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021140210
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0193473(US,A1)
【文献】特表2020-502811(JP,A)
【文献】特開2013-069848(JP,A)
【文献】特開平11-111677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する改質工程と、
プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで前記改質膜を除去させる改質膜除去工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記改質工程と前記改質膜除去工程とを1つのサイクルとし、
前記1つのサイクルを所定の回数繰り返して行う繰り返し工程を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記改質膜除去工程の後に、後処理ガスを供給して前記改質膜の表面の保護膜を除去する保護膜除去工程を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記改質工程と前記改質膜除去工程とを所定の回数繰り返す工程を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記改質膜除去工程を所定の回数繰り返す工程を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記除去ガス供給の間に、前記保護膜形成ガス供給を所定の回数実行する工程を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記改質工程と前記改質膜除去工程とを1つのサイクルとして、前記1つのサイクルを複数回繰り返し、前記堆積膜の所望膜厚の除去する繰り返し工程を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記保護膜形成ガスは、前記除去ガスの供給後に供給を開始する工程を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する改質工程と、
プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで前記改質膜を除去させる改質膜除去工程と、
を有し、
前記保護膜形成ガスは、前記除去ガスの供給開始と同時に供給を開始する半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記保護膜形成ガスは、前記除去ガスの供給の停止前に供給を停止する、請求項8または請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記保護膜形成ガスは、前記除去ガスの供給停止と同時に供給を停止する、請求項8または請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
基板を処理する処理室と、
改質ガスを前記処理室に供給する改質ガス供給部と、
プラズマによって活性化した除去ガスを前記処理室に供給する除去ガス供給部と、
保護膜形成ガスを前記処理室に供給する保護膜形成ガス供給部と、
前記改質ガス供給部から前記改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する処理と、前記除去ガス供給部から前記除去ガスと、前記保護膜形成ガス供給部から前記保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで前記改質膜を除去させる処理が可能な制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項13】
改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成するステップと、
プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで前記改質膜を除去させるステップと、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、対象膜を所定のパターンでマスクして対象膜をエッチングする技術が存在する。(例えば特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-157660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エッチング技術の一つとして、対象膜の最表面の原子層単位でエッチングを行う原子層エッチング(ALE:Atomic Layer Etching)の技術が提案されている。
【0005】
このような技術では、基板上の層(例えば、Siを含有する層)に、ハロゲンを含有する第1ガス(例えば、Clなど)などを吸着させた後、中性準安定ガス(例えば、Arなどのプラズマ)を用いて基板上の層をエッチングする。
【0006】
ここでは、基板上の層を除去する際に、中性準安定ガスによるプラズマ指向性が影響して、垂直方向にエッチングが進行しやすく、マスクの下方の側壁面の層の除去が少なくなる場合がある。このようなエッチング状態を異方性エッチングと呼ぶ。
【0007】
このように、垂直方向と水平方向のエッチング速度に差があると、適用する半導体の製造工程が制限される可能性があり、垂直方向と水平方向のエッチング速度の差を少なくしたいという要望がある。なお、このように垂直方向と水平方向とのエッチング速度の差が少ない状態を等方性エッチングと呼ぶ。
【0008】
本開示は、プラズマ指向性の影響を少なくし、等方性エッチングを実現可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様によれば、改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する改質工程と、プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで前記改質膜を除去させる改質膜除去工程と、を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、プラズマ指向性の影響を少なくし、等方性エッチングを実現可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成例を示す説明図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る基板処理装置のコントローラを説明する説明図である。
図3】(A)は、本開示の第1実施形態に係る基板処理工程における基板の初期状態を示す説明図であり、(B)は、基板の表面改質工程を示す説明図であり、(C)は、基板の改質膜除去工程を示す説明図であり、(C)は、基板の処理の繰り返し工程を示す説明図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る基板処理工程を説明するフロー図である。
図5】基板処理工程における処理時間とエッチング量との関係を示すグラフである。
図6】本開示の第1実施形態に係る基板処理工程におけるエッチング処理を説明する説明図である。
図7】本開示の第1実施形態に係る基板処理工程におけるエッチング処理による改質膜の状態を説明する説明図である。
図8】本開示の第2実施形態に係る基板処理工程を説明するフロー図である。
図9】本開示の第3実施形態に係る基板処理装置の概略構成例を示す説明図である。
図10】本開示の第3実施形態に係る基板処理工程を説明するフロー図である。
図11】本開示の第4実施形態に係る基板処理工程を説明するフロー図である。
図12】比較例の基板処理工程におけるエッチング処理を説明する説明図である。
図13】比較例の基板処理工程におけるエッチング処理による改質膜の状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0013】
[本開示の第1実施形態]
図1図7を用いて、本開示の第1実施形態に係る基板処理装置、及び半導体装置の製造方法について説明する。
【0014】
(1)基板処理装置の構成
図1は、第1実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。以下に、各構成を具体的に説明する。
【0015】
(チャンバ)
図1に示すように、基板処理装置200は、処理容器としてのチャンバ202を備えている。チャンバ202は、処理容器の一例である。チャンバ202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、チャンバ202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。チャンバ202内には、基板としてのシリコン基板等の基板100を処理する処理空間205と、基板100を処理空間205に搬送する際に基板100が通過する搬送空間206とが形成されている。チャンバ202は、上部容器202aと下部容器202bで構成される。上部容器202aと下部容器202bの間には仕切り板208が設けられる。
【0016】
下部容器202bの側面には、ゲートバルブ149に隣接した基板搬入出口148が設けられており、基板100は基板搬入出口148を介して図示しない真空搬送室との間を移動する。下部容器202bの底部には、リフトピン207が複数設けられている。更に、下部容器202bは接地されている。
【0017】
処理空間205を構成する処理室は、例えば後述する基板載置台212とシャワーヘッド230で構成される。すなわち、上部容器202aに支持された基板載置台212とシャワーヘッド230との間には、処理空間205が設けられている。ここで、チャンバ202内の処理空間205は、処理室の一例である。処理空間205内には、基板100が載置される基板載置部210が設けられている。基板載置部210は、基板100を載置する基板載置面211と、基板載置面211を表面に持つ基板載置台212、基板載置台212に内包された加熱源としてのヒータ213を主に有する。基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。ヒータ213には、ヒータ213の温度を制御する温度制御部220が接続される。
【0018】
基板載置台212はシャフト217によって支持される。シャフト217の支持部はチャンバ202の底壁に設けられた穴215を貫通しており、更には支持板216を介してチャンバ202の外部で昇降機構218に接続されている。昇降機構218を作動させてシャフト217及び基板載置台212を昇降させることにより、基板載置面211上に載置される基板100を昇降させることが可能となっている。尚、シャフト217の下端部の周囲はベローズ219により覆われている。チャンバ202内は気密に保持されている。
【0019】
基板載置台212は、基板100の搬送時には、基板載置面211が基板搬入出口148に対向する位置まで下降し、基板100の処理時には、図1で示されるように、基板100が処理空間205内の処理位置となるまで上昇する。
【0020】
具体的には、基板載置台212を基板搬送位置まで下降させた時には、リフトピン207の上端部が基板載置面211の上面から突出して、リフトピン207が基板100を下方から支持するようになっている。また、基板載置台212を基板処理位置まで上昇させたときには、リフトピン207は基板載置面211の上面から埋没して、基板載置面211が基板100を下方から支持するようになっている。
【0021】
シャワーヘッド230は、処理空間205の上部(上流側)に設けられている。シャワーヘッド230は、蓋231を有する。蓋231はフランジ232を有し、フランジ232は上部容器202a上に支持される。更に、蓋231は位置決め部233を有する。位置決め部233が上部容器202aに勘合されることで、蓋231が固定される。
【0022】
シャワーヘッド230は、バッファ空間234を有する。バッファ空間234は、蓋231と位置決め部233で構成される空間をいう。バッファ空間234と処理空間205は連通している。バッファ空間234に供給されたガスは、バッファ空間234内で拡散し、処理空間205に均一に供給される。ここではバッファ空間234と処理空間205を別の構成として説明したが、それに限るものではなく、バッファ空間234を処理空間205に含めてもよい。
【0023】
処理空間205は、主に上部容器202a、基板処理ポジションにおける基板載置台212の上部構造で構成される。処理空間205を構成する構造を処理室と呼ぶ。尚、処理室は処理空間205を構成する構造であればよく、上記構造にとらわれないことは言うまでもない。
【0024】
搬送空間206は、主に下部容器202b、基板処理ポジションにおける基板載置台212の下部構造で構成される。搬送空間206を構成する構造を搬送室と呼ぶ。搬送室は処理室の下方に配される。尚、搬送室は搬送空間206を構成する構造であればよく、上記構造にとらわれないことは言うまでもない。
【0025】
(ガス供給部)
続いてガス供給部を説明する。共通ガス供給管242には、第一ガス供給管243a、第二ガス供給管247a、第三ガス供給管249aが接続されている。
【0026】
第一ガス供給管243aを含む第一ガス供給系243からは第一処理ガスが主に供給され、第二ガス供給管247aを含む第二ガス供給系247からは主に第二処理ガスが供給され、第三ガス供給管249aを含む第三ガス供給系249からは主に第三ガスが供給される。
【0027】
(第一ガス供給系)
第一ガス供給管243aの上流には、上流方向から順に、第一ガス供給源243b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243c、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。第1実施形態では、第一処理ガスは、改質ガスである。改質ガスをプラズマ状態とするために、第一ガス供給管243aにおけるバルブ243dの下流に、プラズマ生成部としてのリモートプラズマユニット(RPU)243eを設ける。
【0028】
そして、第一ガス供給管243aからは、改質ガスが、MFC243c、バルブ243d、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。改質ガスはRPU243eによりプラズマ状態とされる。
【0029】
改質ガスとしては、例えば、塩素(Cl)などのハロゲンを含有するガスが用いられる。第一ガス供給系243からは、改質ガスとして、例えば、プラズマ状態されたClガスが供給される。なお、上記のClガスに代えて、例えば、プラズマ状態されたHFガスを供給してもよい。
【0030】
主に、第一ガス供給管243a、第一ガス供給源243b、MFC243c、バルブ243d、RPU243eにより、第一ガス供給系243が構成される。第一ガス供給系243は、改質ガス供給部の一例である。
【0031】
後述するように、改質ガスを供給することで、パターン104によりマスクされていない基板100上の堆積膜102を改質させて改質膜106を形成する(図3参照)。例えば、改質膜106は、堆積膜102の表面に層状に形成された改質層である。
【0032】
(第二ガス供給系)
第二ガス供給管247aには、上流方向から順に、第二ガス供給源247b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)247c、及び開閉弁であるバルブ247d、プラズマ生成部としてのリモートプラズマユニット(RPU)247eが設けられている。
【0033】
第二ガス供給管247aから、第二処理ガスが、マスフローコントローラ247c、バルブ247d、共通ガス供給管242を介してシャワーヘッド230に供給される。第二処理ガスは、RPU247eによりプラズマ状態とされる。
【0034】
第1実施形態では、第二処理ガスは、除去ガスである。除去ガスは、プラズマによって活性化されるガスであり、基板100上の改質膜106をエッチング(除去)するガスである。例えば、基板100上の堆積膜102を改質させて改質膜106とすることで、改質膜106がエッチングされやすくなる。第二ガス供給系247からは、除去ガスとして、例えば、プラズマ状態とされたアルゴン(Ar)ガスが供給される。なお、上記のArガスに代えて、例えば、プラズマ状態とされたDMAC(AlCl(CH)を供給してもよい。
【0035】
主に、第二ガス供給管247a、第二ガス供給源247b、マスフローコントローラ247c、バルブ247dにより、第二ガス供給系247が構成される。第二ガス供給系247は、除去ガス供給部の一例である。
【0036】
第1実施形態の基板処理装置200では、第一ガス供給系243から改質ガスが供給される工程が終了した後(すなわち、改質ガスの供給が停止された後)、第二ガス供給系247からプラズマによって活性化した除去ガスが供給される構成とされている。
【0037】
(第三ガス供給系)
第三ガス供給管249aには、上流方向から順に、第三ガス供給源249b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)249c、及び開閉弁であるバルブ249dが設けられている。
【0038】
第三ガス供給管249aから、第三ガスが、マスフローコントローラ249c、バルブ249d、共通ガス供給管242を介してシャワーヘッド230に供給される。第1実施形態では、第三ガスは、保護膜形成ガスである。保護膜形成ガスは、改質膜の表面に付着可能な性質を有する。保護膜形成ガスは、基板100上の改質膜106の表面に吸着することで、改質膜106の表面に保護膜を形成する。改質膜106の表面に保護膜が形成されることで、基板100上の改質膜106が除去ガスによりエッチングされにくくなる。第三ガス供給系249からは、保護膜形成ガスとして、例えば、CH系(例えば、Cなど)のガスが供給される。
【0039】
主に、第三ガス供給管249a、第三ガス供給源249b、マスフローコントローラ249c、バルブ249dにより、第三ガス供給系249が構成される。第三ガス供給系249は、保護膜形成ガス供給部の一例である。
【0040】
基板処理装置200は、第二ガス供給系247からのプラズマによって活性化した除去ガスと、第三ガス供給系249からの保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含むよう供給する構成とされている。プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスとを供給するタイミングについては、後に説明する。
【0041】
(排気部)
チャンバ202の雰囲気を排気する排気部は、処理空間205の雰囲気を排気する排気部261で主に構成される。
【0042】
排気部261は、処理空間205に接続される排気管261aを有する。排気管261aは、処理空間205に連通するよう設けられる。排気管261aには、処理空間205内を所定の圧力に制御又は調整する圧力調整器であるAPC(AutoPressure Controller)261c、処理空間205の圧力を計測する第一の圧力検出部261dが設けられる。APC261cは開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、後述するコントローラ280からの指示に応じて排気管261aのコンダクタンスを調整する。また、排気管261aにおいてAPC261cの上流側にはバルブ261bが設けられる。排気管261a、バルブ261b、APC261c、及び圧力検出部261dをまとめて排気部261と呼ぶ。
【0043】
排気管261aの下流側には、ポンプ278が設けられる。ポンプ278として、例えば、真空ポンプ、DP(Dry Pump。ドライポンプ)などが用いられる。ポンプ278は、排気管261aを介して、処理空間205の雰囲気を排気する。
【0044】
(コントローラ)
基板処理装置200は、基板処理装置200の各部の動作を制御するコントローラ280を有している。コントローラ280は、図2に示すように、演算部(CPU)280a、一時記憶部(RAM)280b、記憶部280c、送受信部280dを少なくとも有する。コントローラ280は、送受信部280dを介して基板処理装置200の各構成に接続され、上位コントローラや使用者の指示に応じて記憶部280cからプログラムやレシピを呼び出し、その内容に応じて各構成の動作を制御する。
【0045】
より具体的には、コントローラ280は、送受信部280dを介して基板処理装置200のゲートバルブ149、昇降機構218、圧力調整器261c、ポンプ278にそれぞれ接続されている。また、コントローラ280は、送受信部280dを介して基板処理装置200のMFC243c、MFC247c、MFC249c、バルブ243d、バルブ247d、バルブ249d、圧力検出部261dなどにそれぞれ接続されている。さらに、コントローラ280は、送受信部280dを介して、ヒータ213の温度を制御する温度制御部220、ヒータ213付近の温度を測定する温度測定部290などにそれぞれ接続されている。
【0046】
尚、コントローラ280は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置282を用意し、外部記憶装置282を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本実施形態に係るコントローラ280を構成することができる。外部記憶装置282としては、例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ(USB Flash Drive)やメモリカード等の半導体メモリなどがある。また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置282を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用いても良いし、上位装置270から送受信部283を介して情報を受信し、外部記憶装置282を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。また、キーボードやタッチパネル等の入出力装置281を用いて、コントローラ280に指示をしても良い。
【0047】
尚、記憶部280cや外部記憶装置282は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。尚、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部280c単体のみを含む場合、外部記憶装置282単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0048】
(2)半導体装置の製造方法
次に、半導体装置の製造方法について説明する。半導体装置の製造方法では、後述する基板処理工程の各工程が実施される。基板処理工程では、図1に示す基板処理装置200を用いる。以下に具体例を説明する。以下の説明において、基板処理装置200を構成する各部の動作は、コントローラ280により制御される。
【0049】
(基板搬入載置工程)
基板載置台212を基板100の搬送位置(搬送ポジション)まで下降させ、基板載置台212の貫通孔214にリフトピン207を貫通させる。その結果、リフトピン207が、基板載置台212表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。これらの動作と並行して、搬送空間206の雰囲気を排気し、隣接する真空搬送室(図示せず)と同圧、あるいは隣接する真空搬送室の圧力よりも低い圧力とする。尚、ここでは、上部側に堆積膜102及び堆積膜102の表面の一部をマスクするパターン104が形成された基板100(図3(A)参照)が搬入される。基板100上に形成された堆積膜102などの層については、後に説明する。
【0050】
続いて、ゲートバルブ149を開いて、搬送空間206を隣接する真空搬送室と連通させる。そして、この真空搬送室から図示しない真空搬送ロボット用いて基板100を搬送空間206に搬入する。
【0051】
(基板処理ポジション移動工程)
所定の時間経過後、基板載置台212を上昇させ、基板載置面211上に基板100を載置し、さらに図1に示すように、基板処理ポジションまで上昇させる。基板処理ポジションでは、基板載置面211上に載置された基板100に対して、基板処理工程の各工程が実施される。
【0052】
(基板処理工程の概要)
図3には、基板処理工程を示す説明図が示されている。また、図4には、基板処理工程において改質ガス、除去ガス、及び保護膜形成ガスを供給するタイミングを説明するフロー図が示されている。図3に示すように、基板処理工程は、改質工程、改質膜除去工程、及び改質工程と改質膜除去工程とを繰り返して行う繰り返し工程を備えている。
【0053】
図3(A)には、処理される基板100の初期状態が示されている。図3(A)に示すように、基板100上には、処理の対象となる対象膜としての堆積膜102が形成されている。堆積膜102の表面には、堆積膜102の一部をマスクするパターン104が形成されている。パターン104は、処理の対象とならない。堆積膜102としては、例えば、Si膜が用いられている。なお、堆積膜102として、Si膜に代えて、例えば、Alからなる膜を用いてもよい。なお、図3(A)では、基板100の構成を分かりやすくするため、基板100の上部側に形成された堆積膜102及びパターン104を示しており、基板100上の他の層については、図示を省略している。なお、図3(B)~(D)、図6等においても、基板100の上部側に形成された堆積膜102付近の処理状態が示されており、基板100上の他の層については、図示を省略している。
【0054】
(改質工程)
図3(B)には、改質工程が示されている。図3(B)に示すように、改質工程では、基板100が配置された処理空間205(図1参照)に、改質ガスを供給する(図4参照)。これにより、パターン104によりマスクされていない基板100上の堆積膜102が改質ガスによって改質され、改質膜106が形成される。例えば、堆積膜102として、Si膜を用いる場合、改質ガスとしては、プラズマ状態とされたClなどが用いられる。これにより、例えば、基板100上の堆積膜102の表面に、SiClなどを含む改質膜106が形成される。また、上記材料に代えて、例えば、堆積膜102として、Alからなる膜を用いる場合、改質ガスとして、プラズマ状態とされたHFガスを用いてもよい。
【0055】
第1実施形態の基板処理装置200では、第一ガス供給系243からプラズマ状態の改質ガスが供給される(図1参照)。改質ガスは、RPU243eによってプラズマ状態に変質される。
【0056】
(改質膜除去工程)
図3(C)には、改質膜除去工程が示されている。図3(C)に示すように、改質膜除去工程では、基板100が配置された処理空間205(図1参照)に、プラズマにより活性化された除去ガスを供給する。また、改質膜除去工程では、プラズマにより活性化された除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んでいる。図4に示すように、第1実施形態では、プラズマにより活性化された除去ガスと保護膜形成ガスとの供給を同時に開始し、プラズマにより活性化された除去ガスと保護膜形成ガスとの供給を同時に停止する。これにより、基板100上の改質膜106が除去される。改質膜除去工程では、保護膜形成ガスの供給により、疑似的にエッチングの飽和状態が生成され、基板100上の改質膜106のサイドエッチングが進む。基板100上の改質膜106が除去される改質膜除去工程の詳細については、後に説明する。
【0057】
例えば、堆積膜102として、Si膜を用い、改質ガスとして、プラズマ状態とされたClを用いる場合、除去ガスとしては、プラズマ状態とされたアルゴン(Ar)などが用いられる。また、保護膜形成ガスとしては、Cなどが用いられる。また、上記材料に代えて、堆積膜102として、Alからなる膜を用い、改質ガスとして、プラズマ状態とされたHFガスを用いる場合、除去ガスとして、プラズマ状態とされたDMAC(AlCl(CH)などを用い、保護膜形成ガスとして、Cなどを用いてもよい。
【0058】
第1実施形態の基板処理装置200では、図4に示すタイミングで、第二ガス供給系247からプラズマ状態の除去ガスが供給される(図1参照)。除去ガスは、RPU247eによってプラズマ状態に変質される。また、基板処理装置200では、図4に示すタイミングで、第三ガス供給系249から保護膜形成ガスが供給される(図1参照)。
【0059】
(繰り返し工程)
図3(D)には、改質工程と改質膜除去工程とを所定の回数繰り返して行う繰り返し工程が示されている。図3(D)に示すように、繰り返し工程では、改質工程と改質膜除去工程とを1つのサイクルとし、1つのサイクルを繰り返して行う。第1実施形態の繰り返し工程では、1つのサイクルを少なくとも1回以上繰り返している(図4参照)。これにより、第1実施形態では、1つのサイクルが2回以上実施される。第1実施形態では、2回の改質膜除去工程で基板100上の改質膜106が除去されることで、基板100上の堆積膜102の所望の膜厚が除去される。すなわち、1つのサイクルを繰り返して行う繰り返し工程により、1回の改質膜除去工程でエッチング時間を長くする場合と比較して、基板100上の改質膜106の所望のエッチング量が確保される。なお、サイクルの回数は、要求されるエッチング量に応じて設定される。
【0060】
第1実施形態の基板処理装置200では、繰り返し工程における改質工程で、第一ガス供給系243からプラズマ状態の改質ガスが供給される(図1参照)。また、基板処理装置200では、繰り返し工程における改質膜除去工程で、第二ガス供給系247からプラズマ状態の除去ガスが供給され、第三ガス供給系249から保護膜形成ガスが供給される。
【0061】
(除去ガスと保護膜形成ガスの供給による影響)
ここで、改質膜除去工程において、プラズマにより活性化された除去ガスと保護膜形成ガスの供給による影響について説明する。
【0062】
図5には、処理時間とエッチング量との関係が示されている。図5に示す実線のグラフ130は、プラズマにより活性化された除去ガスと保護膜形成ガスとを供給するプロセスを備えた本技術の例である。また、図5に示す二点鎖線のグラフ132は、プラズマにより活性化された除去ガスのみを供給するプロセスを備えた比較例である。図5に示すように、比較例のグラフ132では、プラズマにより活性化された除去ガスのみを供給することで、処理時間に応じてエッチング量が増加している。
【0063】
図12には、比較例における基板500上の堆積膜502の改質膜のエッチング部分508が示されている。図12に示すように、基板500上の改質膜のエッチング部分508は、エッチングが垂直方向に進行する途中であるので、エッチングが水平方向にはほとんど広がらない。
【0064】
このため、図13に示すように、比較例では、除去ガス(例えば、Arプラズマ)のプラズマ指向性に起因した異方性エッチングが発生する。すなわち、改質膜504を除去する際に、除去ガスのプラズマ指向性が影響して、パターン104の下側の側壁面の改質膜504の除去が少なくなる(異方性エッチング)。
【0065】
これに対し、図5に示すように、本技術例のグラフ130では、プラズマにより活性化された除去ガスのみを供給しているときは、処理時間に応じてエッチング量が増加するが、保護膜形成ガスを添加することで、処理時間が長くなっても、エッチング量がほとんど増加しなくなる。
【0066】
図6には、本技術の例における基板100上の堆積膜102の改質膜のエッチング部分112が示されている。図6に示すように、本技術の例では、保護膜形成ガスを添加することで、基板100上の改質膜のエッチング部分112は、エッチングが垂直方向に飽和するため、オーバーエッチングで水平方向に進行する。この現象は、以下のような理由によると考えられる。除去ガスと共に供給された保護膜形成ガスは、分解されて基板100上の堆積膜102の改質膜に吸着され、改質膜上に保護膜が形成される。保護膜は水平方向よりも垂直方向に厚く形成される。形成された保護膜は、除去ガスによる垂直方向のエッチング速度を低減させる。そのため、疑似的にエッチングの飽和状態が生成される。これによって、垂直方向に対して飽和状態となったエッチングは、未飽和な状態である水平方向に進むと考えられる。このように、垂直方向においてエッチング速度を低減させると共に、水平方向におけるエッチングを促進させるので、等方性エッチングを実現することができる。
【0067】
このため、図7に示すように、本技術の例では、基板100上の堆積膜102の改質膜106のサイドエッチングが進むため、等方性エッチングを実現できる。
【0068】
(基板搬出工程)
基板処理工程により基板100上の改質膜106が除去されたら、図1に示す基板載置台212を下降させ、基板100を搬送ポジションに移動する。搬送ポジションに移動後、搬送空間206から基板100を搬出する。
【0069】
(作用及び効果)
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0070】
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、改質ガスを供給して、パターン104でマスクされていない基板100上の堆積膜102を改質させて改質膜106を形成する改質工程を備えている。さらに、第1実施形態の半導体装置の製造方法は、プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで基板100上の改質膜106を除去させる改質膜除去工程を備えている。
【0071】
改質工程では、例えば、プラズマ状態の改質ガスを供給することで、パターン104でマスクされていない基板100上の堆積膜102を改質させ、改質膜106を形成する。これにより、堆積膜102の表面側に改質膜106が形成される。
【0072】
改質膜除去工程では、プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んでいる。第1実施形態の半導体装置の製造方法では、プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスとを同時に供給しており、これにより、基板100上の改質膜106を除去させる。
【0073】
例えば、図12に示すように、プラズマによって活性化した除去ガスのみを供給する比較例では、基板500上の改質膜のエッチング部分508は、エッチングが垂直方向に進行する途中であるので、エッチングが水平方向にはほとんど広がらない。このため、図13に示すように、改質膜504を除去する際に、除去ガスによるプラズマ指向性が影響してパターン104の下方の側壁面の改質膜504の除去が少なくなる(異方性エッチング)。
【0074】
これに対し、第1実施形態の半導体装置の製造方法では、改質膜除去工程において、プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を同時に供給している。これにより、図6に示すように、保護膜形成ガスを添加することで、保護膜形成ガスが基板100上の堆積膜102の改質膜に吸着されて保護膜が形成され、疑似的にエッチングの飽和状態が生成される。これによって、図7に示すように、基板100上の堆積膜102の改質膜106のサイドエッチングが進む。
【0075】
このため、第1実施形態の半導体装置の製造方法では、プラズマ指向性の影響を少なくし、等方性エッチングを実現することができる。
【0076】
また、第1実施形態の半導体装置の製造方法では、保護膜形成ガスは、除去ガスの供給開始と同時に供給を開始する(図4参照)。これにより、保護膜形成ガスを供給するタイミングの制御が容易となり、プロセスの制御性が向上する。
【0077】
また、第1実施形態の半導体装置の製造方法では、保護膜形成ガスは、除去ガスの供給停止と同時に供給を停止する(図4参照)。これにより、保護膜形成ガスの供給を停止するタイミングの制御が容易となり、プロセスの制御性が向上する。
【0078】
また、第1実施形態の半導体装置の製造方法では、改質工程と改質膜除去工程とを1つのサイクルとし、1つのサイクルを所定の回数繰り返して行う繰り返し工程を有している。第1実施形態では、繰り返し工程で1つのサイクルを1回繰り返している。例えば、1回の改質膜除去工程で、除去ガスの供給量を多くしたり、処理時間を長くしても、エッチング量を増やすことは難しい。これは改質工程が飽和的な反応であるためである。これに対して、1つのサイクルを所定の回数繰り返して行う繰り返し工程を有することで、所望のエッチング量を確保することができる。
【0079】
また、基板処理装置200は、基板100を処理する処理室を構成する処理空間205と、改質ガスを処理空間205に供給する第一ガス供給系243と、プラズマによって活性化した除去ガスを処理空間205に供給する第二ガス供給系247と、保護膜形成ガスを処理空間205に供給する第三ガス供給系249と、を備えている。さらに、基板処理装置200は、第一ガス供給系243から改質ガスを供給して、パターン104でマスクされていない基板100上の堆積膜102を改質させて改質膜106を形成する処理と、第二ガス供給系247から除去ガスと第三ガス供給系249から保護膜形成ガスとを少なくとも同時に供給するタイミングを含んで基板100上の改質膜106を除去させる処理と、を行うコントローラ280を備えている。
【0080】
このため、基板処理装置200では、プラズマ指向性の影響を少なくし、等方性エッチングを実現することができる。
【0081】
また、基板処理装置200のプログラムは、改質ガスを供給して、パターン104でマスクされていない基板100上の堆積膜102を改質させて改質膜106を形成するステップと、プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで基板100上の改質膜106を除去させるステップと、をコンピュータによって基板処理装置200に実行させる。
【0082】
このため、第1実施形態のプログラムでは、プラズマ指向性の影響を少なくし、等方性エッチングを実現することができる。
【0083】
[本開示の第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態に係る基板処理装置、及び半導体装置の製造方法について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0084】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に基板処理装置200を使用している。第2実施形態では、第1実施形態の半導体装置の製造方法に対して、基板処理工程の一部を変更している。図8には、第2実施形態の半導体装置の製造方法における基板処理工程を説明するフロー図が示されている。
【0085】
図8に示すように、改質工程では、基板100が配置された処理空間205(図1参照)に、改質ガスを供給する。これにより、基板100上の堆積膜102の一部が改質ガスによって改質され、堆積膜102の表面側に改質膜106が形成される(図3(B)参照)。改質工程は、第1実施形態の改質工程と同様である。
【0086】
図8に示すように、改質膜除去工程では、基板100が配置された処理空間205(図1参照)に、プラズマにより活性化された除去ガスを供給する。さらに、プラズマにより活性化された除去ガスの供給後に、保護膜形成ガスの供給を開始する。除去ガスと保護膜形成ガスを同時供給する場合は保護膜形成と除去が同時に進行するためエッチング速度が低下する。一方、第2実施形態では、エッチング速度低下が抑制される。また、保護膜形成ガスは、プラズマにより活性化された除去ガスの供給停止と同時に供給を停止する。すなわち、第2実施形態の改質膜除去工程でも、プラズマにより活性化された除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んでいる。このような改質膜除去工程により、基板100上の改質膜106が除去される(図3(C)参照)。改質膜除去工程では、保護膜形成ガスの供給により、疑似的にエッチングの飽和状態が生成され、基板100上の改質膜106のサイドエッチングが進む。
【0087】
図8に示すように、繰り返し工程では、改質工程と改質膜除去工程とを1つのサイクルとし、1つのサイクルを所定の回数繰り返して行う。第2実施形態では、繰り返し工程において、1つのサイクルを1回繰り返している。これにより、基板100上の堆積膜102の所望の膜厚が除去される。
【0088】
第2実施形態の半導体装置の製造方法は、第1実施形態の半導体装置の製造方法と同様の工程による作用及び効果に加えて、以下のような作用及び効果を有している。
【0089】
第2実施形態の半導体装置の製造方法では、保護膜形成ガスは、プラズマによって活性化した除去ガスの供給後に供給を開始する。これにより、図8に示すように、改質膜除去工程の前側では、垂直方向のエッチングを阻害する保護膜形成ガスの供給がないタイミングがある。このため、基板100上の改質膜106をエッチングする際のエッチング速度の低下が少ない。
【0090】
[本開示の第3実施形態]
次に、本開示の第3実施形態に係る基板処理装置、及び半導体装置の製造方法について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0091】
図9には、第3実施形態の基板処理装置300が示されている。図9に示すように、基板処理装置300は、共通ガス供給管242に接続される第四ガス供給管345aを備えている。第四ガス供給管345aを含む第四ガス供給系345からは主に第四ガスが供給される。
【0092】
(第四ガス供給系)
第四ガス供給管345aには、上流方向から順に、第四ガス供給源345b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)345c、及び開閉弁であるバルブ345dが設けられている。
【0093】
第四ガス供給管345aから、第四ガスが、マスフローコントローラ345c、バルブ345d、共通ガス供給管242を介してシャワーヘッド230に供給される。第3実施形態では、第四ガスは、後処理ガスである。後処理ガスは、基板100上の改質膜106の表面に保護膜形成ガス(例えば、Cなど)が吸着されることで形成された保護膜を除去する。第四ガス供給系345からは、後処理ガスとして、例えば、酸素(O)、NO、NOなどが供給される。例えば、後処理ガスとして、酸素(O)を用いることで、保護膜をCOとして放出することができる。
【0094】
主に、第四ガス供給管345a、第四ガス供給源345b、マスフローコントローラ345c、バルブ345dにより、第四ガス供給系345が構成される。第四ガス供給系345は、後処理ガスを供給する後処理ガス供給部の一例である。
【0095】
第3実施形態の基板処理装置300では、改質膜除去工程の後、第四ガス供給系345から後処理ガスを供給する構成とされている。
【0096】
図10には、第3実施形態の半導体装置の製造方法における基板処理工程を説明するフロー図が示されている。図10に示すように、基板処理工程では、第1実施形態の基板処理工程と同様に、改質ガスを供給する改質工程と、プラズマによって活性化した除去ガスと保護膜形成ガスとを同時に供給する改質膜除去工程と、を有している。さらに、基板処理工程では、第1実施形態の基板処理工程と異なる工程として、改質膜除去工程の後に、後処理ガスを供給して基板100上の改質膜106の表面の保護膜を除去する保護膜除去工程を有している。
【0097】
さらに、図10に示すように、基板処理工程では、改質工程と改質膜除去工程と保護膜除去工程とを1つのサイクルとし、1つのサイクルを所定の回数繰り返して行う繰り返し工程を有している。第3実施形態では、1つのサイクルを1回繰り返している。
【0098】
第3実施形態の半導体装置の製造方法は、第1実施形態の半導体装置の製造方法と同様の工程による作用及び効果に加えて、以下のような作用及び効果を有している。
【0099】
第3実施形態の半導体装置の製造方法は、改質膜除去工程の後に、後処理ガスを供給して基板100上の改質膜106の表面の保護膜を除去する保護膜除去工程を有している。例えば、保護膜が残っていると、次のサイクルの改質工程で、基板上の堆積膜を改質させる際の妨げとなる。例えば、保護膜が残っていると、保護膜の上から改質ガスが供給されるため、改質状態がまばらになってしまう。そうすると、新たに形成する保護膜もまばらになり、その結果エッチング状態がまばらになる。これに対して、第3実施形態の半導体装置の製造方法では、基板100上の改質膜106の表面の保護膜を除去していることで、次のサイクルでの改質ガスの供給による基板100上の堆積膜102の改質への影響が抑制される。したがって、次に形成する保護膜を均一に形成できる。
【0100】
また、第3実施形態の半導体装置の製造方法は、改質工程と改質膜除去工程と保護膜除去工程とを1つのサイクルとし、1つのサイクルを所定の回数繰り返して行う繰り返し工程を有している。このため、第3実施形態の半導体装置の製造方法では、次のサイクルでの改質ガスの供給による基板100上の堆積膜102の改質への影響が少なると共に、基板100上の改質膜106のエッチング量を確保することができる。
【0101】
[本開示の第4実施形態]
次に、本開示の第4実施形態に係る基板処理装置、及び半導体装置の製造方法について説明する。なお、前述した第1~第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0102】
第4実施形態では、第3実施形態と同様に基板処理装置300を使用している。第4実施形態では、第3実施形態の半導体装置の製造方法に対して、基板処理工程の一部を変更している。図11には、第4実施形態の半導体装置の製造方法における基板処理工程を説明するフロー図が示されている。
【0103】
図11に示すように、基板処理工程では、第3実施形態の基板処置工程に対して、改質膜除去工程における保護膜形成ガスを供給するタイミングを変更している。保護膜形成ガスは、プラズマによって活性化した除去ガスの供給後に供給を開始する。さらに、保護膜形成ガスは、プラズマによって活性化した除去ガスの供給の停止前に供給を停止する。
【0104】
さらに、図11に示すように、基板処理工程では、改質工程と改質膜除去工程と保護膜除去工程とを1つのサイクルとし、1つのサイクルを所定の回数繰り返して行う繰り返し工程を有している。第4実施形態では、繰り返し工程において、1つのサイクルを1回繰り返している。
【0105】
第4実施形態の半導体装置の製造方法は、第3実施形態の半導体装置の製造方法と同様の工程による作用及び効果に加えて、以下のような作用及び効果を有している。
【0106】
第4実施形態の半導体装置の製造方法では、改質膜除去工程において、保護膜形成ガスは、プラズマによって活性化した除去ガスの供給後に供給を開始する。これにより、図11に示すように、改質膜除去工程の前側で、垂直方向のエッチングを阻害する保護膜形成ガスの供給がないタイミングがある。このため、基板100上の改質膜106をエッチングする際のエッチング速度の低下が少なく、工程時間の増加が抑制される。
【0107】
また、第4実施形態の半導体装置の製造方法では、保護膜形成ガスは、プラズマによって活性化した除去ガスの供給の停止前に供給を停止する。これにより、図11に示すように、改質膜除去工程の後側で、垂直方向のエッチングを阻害する保護膜形成ガスの供給がないタイミングがある。このため、基板100上の改質膜106をエッチングする際のエッチング速度の低下が少なく、工程時間の増加が抑制される
【0108】
[その他]
以上に、本開示の実施形態を具体的に説明したが、本開示は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0109】
第1~第4実施形態では、改質膜除去工程において、プラズマによって活性化された除去ガスの供給に対し、保護膜形成ガスの供給を開始するタイミングは、変更が可能である。また、第1~第4実施形態では、改質膜除去工程において、プラズマによって活性化された除去ガスと保護膜形成ガスの供給を停止するタイミングは、変更が可能である。本開示の技術では、改質膜除去工程において、プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んでいればよい。例えば、プラズマによって活性化された除去ガスの供給と同時に保護膜形成ガスの供給を開始し、又はプラズマによって活性化された除去ガスの供給を開始した後に保護膜形成ガスの供給を開始することが好ましい。また、例えば、プラズマによって活性化された除去ガスの供給停止と同時に保護膜形成ガスの供給を停止し、又は保護膜形成ガスの供給を停止した後にプラズマによって活性化された除去ガスの供給を停止することが好ましい。
【0110】
また、第1~第4実施形態では、改質膜除去工程において、プラズマによって活性化した除去ガスを供給している途中で、保護膜形成ガスの供給を複数回に分けて実施してもよい。これにより、エッチング速度の低下が少なくなり、保護膜形成ガスを1回供給する場合に比べて、プロセスの制御性が向上する。
【0111】
また、第1~第4実施形態では、繰り返し工程において、1つのサイクルを1回繰り返したが、本開示の技術は、この構成に限定されず、繰り返し工程で1つのサイクルを複数回繰り返してもよい。
【0112】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0113】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する改質工程と、
プラズマによって活性化した除去ガスと保護膜形成ガスを同時に供給して前記改質膜を除去させる改質膜除去工程と、
前記改質工程と前記改質膜除去工程とを1つのサイクルとして、前記1つのサイクルを所定の回数繰り返し、前記堆積膜の所望膜厚の除去する繰り返し工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0114】
(付記2)
本開示の他の態様によれば、
改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する改質工程と、
プラズマによって活性化した除去ガスを供給する除去ガス供給工程と、
保護膜形成ガスを供給する保護膜形成ガス供給工程と、
前記除去ガス供給工程と前記保護膜形成ガス供給工程とを少なくとも同時実行するタイミングを含んで前記改質膜を除去させる改質膜除去工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0115】
(付記3)
付記2に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記改質工程と前記改質膜除去工程とを所定の回数繰り返す工程を有する。
【0116】
(付記4)
付記2又は付記3に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記改質膜除去工程を所定の回数繰り返す工程を有する。
【0117】
(付記5)
付記2又は付記4に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記除去ガス供給工程の間に、前記保護膜形成ガス供給工程を所定の回数実行する工程を有する。
【0118】
(付記6)
付記2に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記改質工程と前記改質膜除去工程とを1つのサイクルとして、前記1つのサイクルを複数回繰り返し、前記堆積膜の所望膜厚の除去する繰り返し工程を有する。
【0119】
(付記7)
本開示の他の態様によれば、
改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する改質工程と、
プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで前記改質膜を除去させる改質膜除去工程と、
を有し、
前記保護膜形成ガスは、前記除去ガスの供給後に供給を開始する半導体装置の製造方法が提供される。
【0120】
(付記8)
本開示の他の態様によれば、
改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する改質工程と、
プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで前記改質膜を除去させる改質膜除去工程と、
を有し、
前記保護膜形成ガスは、前記除去ガスの供給開始と同時に供給を開始する半導体装置の製造方法が提供される。
【0121】
(付記9)
付記7又は付記8に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記保護膜形成ガスは、前記除去ガスの供給の停止前に供給を停止する半導体装置の製造方法が提供される。
【0122】
(付記10)
付記7又は付記8に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記保護膜形成ガスは、前記除去ガスの供給停止と同時に供給を停止する半導体装置の製造方法が提供される。
【0123】
(付記11)
本開示の他の態様によれば、
改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する改質工程と、
プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで前記改質膜を除去させる改質膜除去工程と、
前記改質膜除去工程の後に、後処理ガスを供給して前記改質膜の表面の保護膜を除去する保護膜除去工程と、
前記改質工程と前記改質膜除去工程と前記保護膜除去工程とを1つのサイクルとして、前記1つのサイクルを所定の回数繰り返して行う繰り返し工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0124】
(付記12)
本開示の他の態様によれば、
改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する改質工程と、
プラズマによって活性化した除去ガスと保護膜形成ガスを同時に供給して前記改質膜を除去させる改質膜除去工程と、
前記改質膜除去工程の後に、後処理ガスを供給して前記改質膜の表面の保護膜を除去する保護膜除去工程と、
前記改質工程と前記改質膜除去工程と前記保護膜除去工程とを1つのサイクルとして、前記1つのサイクルを所定の回数繰り返し、前記堆積膜の所望膜厚の除去する繰り返し工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0125】
(付記13)
本開示の他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
改質ガスを前記処理室に供給する改質ガス供給部と、
プラズマによって活性化した除去ガスを前記処理室に供給する除去ガス供給部と、
保護膜形成ガスを前記処理室に供給する保護膜形成ガス供給部と、
後処理ガスを供給する後処理ガス供給部と、
前記改質ガス供給部から前記改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する処理と、前記除去ガス供給部から前記除去ガスと、前記保護膜形成ガス供給部から前記保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで前記改質膜を除去させる処理と、前記後処理ガス供給部から前記後処理ガスを供給して前記改質膜の表面の保護膜を除去する処理と、を行う制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0126】
(付記14)
本開示の他の態様によれば、
改質ガスを供給して、マスクされていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成するステップと、
プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで前記改質膜を除去させるステップと、
後処理ガスを供給して前記改質膜の表面の保護膜を除去させるステップと、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるためのプログラムが提供される。
【符号の説明】
【0127】
100 基板
102 堆積膜
106 改質膜
200 基板処理装置
202 チャンバ
205 処理空間(処理室)
243 第一ガス供給系(改質ガス供給部)
247 第二ガス供給系(除去ガス供給部)
249 第三ガス供給系(保護膜形成ガス供給部)
280 コントローラ(制御部)
300 基板処理装置

【要約】
【課題】プラズマ指向性の影響を少なくし、等方性エッチングを実現可能な技術を提供する技術を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、改質ガスを供給して、パターンが設けられていない基板上の堆積膜を改質させ改質膜を形成する改質工程と、プラズマによって活性化した除去ガスと、保護膜形成ガスと、を少なくとも同時に供給するタイミングを含んで改質膜を除去させる改質膜除去工程と、を有する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
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図10
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図13