(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】パッケージおよびパッケージ用の金属枠体
(51)【国際特許分類】
C25D 5/14 20060101AFI20230221BHJP
C25D 5/16 20060101ALI20230221BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20230221BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20230221BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C25D5/14
C25D5/16
C25D7/00 G
H01L23/02 Z
H01L23/36 Z
(21)【出願番号】P 2021515872
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011899
(87)【国際公開番号】W WO2020217787
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019080858
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】吉村 茂
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-152385(JP,A)
【文献】特開2018-022817(JP,A)
【文献】特開平06-302740(JP,A)
【文献】特開2015-030892(JP,A)
【文献】特開2006-303492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00-7/12,
H01L 23/02-23/12,23/36,23/485,23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の結晶粒からなる表面を有する金属基材と、
前記金属基材の前記複数の結晶粒上に直接形成され、ニッケル元素を含有し、多結晶構造を有し、前記金属基材の前記複数の結晶粒における各結晶方位に対して無配向である第1中間めっき層と、
前記第1中間めっき層上に直接形成された第2中間めっき層と、
前記第2中間めっき層上に形成された貴金属めっき層と、
を
有する金属部材
を備え、
前記金属部材は、電子部品が実装されるための実装面を有するヒートシンク板であり、
前記ヒートシンク板上に配置された枠体と、
前記枠体上に取り付けられたリードフレームと、
をさらに備えるパッケージ。
【請求項2】
前記電子部品はパワー半導体素子である、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記金属基材の前記複数の結晶粒は面内方向において第1の平均結晶粒径を有し、前記第1中間めっき層は面内方向において前記第1の平均結晶粒径よりも小さい第2の結晶粒径を有する、請求項1
または2に記載の
パッケージ。
【請求項4】
前記金属基材の前記表面は非研磨面である、請求項1
から3のいずれか1項に記載の
パッケージ。
【請求項5】
前記金属基材の前記表面にはベイルビー層が形成されていない、請求項1から
4のいずれか1項に記載の
パッケージ。
【請求項6】
前記第2中間めっき層はニッケル元素を含有している、請求項1から
5のいずれか1項に記載の
パッケージ。
【請求項7】
前記第2中間めっき層は、前記第1中間めっき層の組成と異なる組成を有する、請求項1から
6のいずれか1項に記載の
パッケージ。
【請求項8】
前記第1中間めっき層はニッケルからなり、前記第2中間めっき層はニッケル合金からなる、請求項1から
7のいずれか1項に記載の
パッケージ。
【請求項9】
前記ニッケル合金はコバルト元素を含有している、請求項
8に記載の
パッケージ。
【請求項10】
前記金属基材の前記表面は銅元素を含有している、請求項1から
9のいずれか1項に記載の
パッケージ。
【請求項11】
前記貴金属めっき層は金層を有する、請求項1から10のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項12】
前記貴金属めっき層はパラジウム層を有する、請求項1から11のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項13】
前記第1中間めっき層の表面粗さは、0.3μm以上の最大高さRyを有している、請求項1から12のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項14】
複数の結晶粒からなる表面を有する金属基材と、
前記金属基材の前記複数の結晶粒上に直接形成され、ニッケル元素を含有し、多結晶構造を有し、前記金属基材の前記複数の結晶粒における各結晶方位に対して無配向である第1中間めっき層と、
前記第1中間めっき層上に直接形成された第2中間めっき層と、
前記第2中間めっき層上に形成された貴金属めっき層と、
を備える
、パッケージ用の金属枠体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージおよびパッケージ用の金属枠体に関し、特に、めっき層を有するパッケージおよびパッケージ用の金属枠体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2007-243145号公報(特許文献1)は高放熱型電子部品収納用パッケージを開示している。このパッケージは、ヒートシンク板、枠体、および外部接続端子を有している。ヒートシンク板の上面と、枠体の内周側壁面とで、半導体素子等の電子部品を収納するためのキャビティが構成される。このキャビティにおいて、ヒートシンク板の上面に電子部品が搭載される。電子部品と外部接続端子との間はボンディングワイヤによって電気的に接続される。以上により、パッケージへの電子部品の取り付けが完了する。その後、パッケージへ蓋体が接合されることによって、電子部品はキャビティ内に封止される。ヒートシンク板の材料としては、高い熱伝導性を有し、かつ、枠体の材料の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有するものが選択される。例えば、Cu(銅)-W(タングステン)複合金属板、Cu-Mo(モリブデン)複合金属板、Cu-Mo系金属板の両面に銅板がクラッドされたCu/Cu-Mo/Cu接合金属板などが用いられる。電子部品が実装される前の時点で、ヒートシンク板および外部接続端子を含むパッケージの、外部に露出する金属表面には、Ni(ニッケル)めっき層およびAu(金)めっき層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、ヒートシンク板の表面には、Niめっき層およびAuめっき層を含む積層めっきが形成される。積層めっきの表面の一部は、電子部品が実装されることになる実装面である。実装面上の突起または異物は、電子部品の接続信頼性へ悪影響を与え得る。そこで、実装面上の突起または異物を検出するための検査を行うことが望ましい。この検査は量産においては、カメラを用いた自動外観検査によって行われることが望ましい。カメラによって撮影される実装面が光沢度の過大なむらを有していると、それに起因してのコントラストが突起または異物と誤認されることがある。特に、Auめっき層などの貴金属めっき層は、それが平坦であれば、通常、高い光沢を有する。よって、光沢のむらに起因してのコントラストが大きくなりやすい。なお、自動外観検査における誤認は、ヒートシンク板上の積層めっきに限らず、他の金属部材の積層めっきの検査においても生じ得る。
【0005】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、貴金属めっき層の光沢むらを抑えることができるパッケージおよびパッケージ用の金属枠体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパッケージは金属部材を有している。金属部材は、金属基材と、第1中間めっき層と、第2中間めっき層と、貴金属めっき層とを有している。金属基材は、複数の結晶粒からなる表面を有している。第1中間めっき層は、金属基材の複数の結晶粒上に直接形成されており、ニッケル元素を含有し、多結晶構造を有し、金属基材の複数の結晶粒における各結晶方位に対して無配向である。第2中間めっき層は第1中間めっき層上に直接形成されている。貴金属めっき層は第2中間めっき層上に形成されている。金属部材は、電子部品が実装されるための実装面を有するヒートシンク板である。パッケージはさらに、ヒートシンク板上に配置された枠体と、枠体上に取り付けられたリードフレームと、を有している。
【0007】
本発明の、パッケージ用の金属枠体は、金属基材と、第1中間めっき層と、第2中間めっき層と、貴金属めっき層とを有している。金属基材は、複数の結晶粒からなる表面を有している。第1中間めっき層は、金属基材の複数の結晶粒上に直接形成されており、ニッケル元素を含有し、多結晶構造を有し、金属基材の複数の結晶粒における各結晶方位に対して無配向である。第2中間めっき層は第1中間めっき層上に直接形成されている。貴金属めっき層は第2中間めっき層上に形成されている。
【0008】
なお本明細書において「金属」の文言は、特段の限定がない限り、純金属および合金のいずれも意味し得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属基材の表面上に、金属基材の複数の結晶粒における各結晶方位に対して無配向である第1中間めっき層が形成される。これにより、第1中間めっき層上に形成される第2中間めっき層および貴金属めっき層は、金属基材の表面をなす結晶粒における各結晶方位のむらの影響を受けることなく形成される。よって、金属基材の表面をなす結晶粒における各結晶方位のむらを反映しての貴金属めっき層の成長むらが防止される。よって、貴金属めっき層の光沢むらを抑えることができる。
【0010】
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態における電子機器の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1の電子機器の製造に用いられるパッケージの構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図2の破線領域IIIを示す部分拡大図である。
【
図4】
図3の破線領域IVを示す部分拡大図である。
【
図5】
図4に示された構成が有する結晶状態の例を模式的に示す部分断面図である。
【
図6】
図2のパッケージの製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。
【
図7】第1の比較例のパッケージにおける実装面上での光反射の様子を模式的に示す部分断面図である。
【
図8】第2の比較例のパッケージにおける実装面上での光反射の様子を模式的に示す部分断面図である。
【
図9】
図5のパッケージにおける実装面上での光反射の様子を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
<構成>
図1は、本実施の形態における電子機器500の構成を概略的に示す断面図である。電子機器500は、パッケージ100と、電子部品501と、ボンディングワイヤ502と、蓋体512と、接合層511とを有している。パッケージ100はそのキャビティ内に、電子部品501が実装されるための実装面RMを有している。電子部品501は実装面RMに実装されている。実装方法は任意であるが、電子部品501と実装面RMとは互いに、例えば、ろう材層(図示せず)によって接合されていてよい。ボンディングワイヤ502は、電子部品501と、パッケージ100の外部接続端子50とを互いに接続している。蓋体512は、パッケージ100に取り付けられることによって、パッケージ100が有するキャビティを封止している。具体的には、蓋体512とパッケージ100とが互いに接合層511によって接合されている。接合層511は、例えば、樹脂を含有する接着剤からなる。電子部品501は、高い気密性を有する環境下に保持される必要性の高いものであってよく、例えばパワー半導体素子である。パワー半導体素子は高周波用半導体素子であってよい。高周波用半導体素子はおおよそ、数十MHz(例えば30MHz)以上30GHz以下の周波数で動作する半導体素子である。この場合、電子機器500は高周波モジュールである。高周波用途に適したパワー半導体素子は、典型的には、LDMOS(横方向拡散MOS:Lateral Diffused MOS)トランジスタ、またはGaN(窒化ガリウム)トランジスタである。
【0014】
図2は、電子機器500(
図1)の製造に用いられるパッケージ100の構成を概略的に示す断面図である。パッケージ100は、ヒートシンク板10と、枠体30と、リードフレーム50(外部接続端子)と、接合層40と、積層めっき20とを有している。
【0015】
ヒートシンク板10は表面SF(
図2における上面)を有している。枠体30は表面SFの少なくとも一部を囲むようにヒートシンク板10上に配置されている。枠体30は接合層40によってヒートシンク板10に取り付けられている。リードフレーム50は枠体30に固定されている。リードフレーム50は、他の接合層40によって枠体30に取り付けられている。ヒートシンク板10は、金属からなる単板または積層板である。ヒートシンク板10の表面SFは、Cu元素を含有していることが好ましい。言い換えれば、表面SFはCuまたはCu合金からなることが好ましい。以上の構成が有する表面のうち金属からなる部分の上に積層めっき20が形成されている。よって積層めっき20は、ヒートシンク板10の表面SF上に形成された部分を含み、この部分は実装面RMを含む。
【0016】
図3は、
図2の破線領域IIIを示す部分拡大図である。枠体30は、絶縁枠体31と、メタライズ膜32と、めっき膜33とを有している。
【0017】
絶縁枠体31はセラミックスからなる。メタライズ膜32は絶縁枠体31の上面上および下面上に形成されている。めっき膜33はメタライズ膜32上に形成されている。一方のメタライズ膜32は接合層40によってヒートシンク板10に接合されており、他方のメタライズ膜32は接合層40によってリードフレーム50に接合されている。接合層40は、例えば、ろう材である。
【0018】
なお、絶縁枠体31と、メタライズ膜32と、めっき膜33とを有する枠体30に代わって、樹脂からなる枠体が用いられてもよい。その場合、接合層40は接着剤層であることが好ましい。樹脂からなる枠体30とリードフレーム50とは一体成型されてよく、その場合、枠体30とリードフレーム50との間の接合層40は省略される。
【0019】
図4は、
図3の破線領域IVを示す部分拡大図である。前述したように、ヒートシンク板10の表面SFには積層めっき20が形成されている。これにより、実装面RMを有する、積層めっき付きの金属部材が構成されている。言い換えれば、この金属部材は、ヒートシンク板10(金属基材)と、積層めっき20とを有している。積層めっき20は、第1中間めっき層21と、第2中間めっき層22と、貴金属めっき層23とを有している。第1中間めっき層21は、ヒートシンク板10の表面SF上に直接形成されている。第1中間めっき層21は、Ni元素を含有し、例えば、実質的にNiのみを有するNiめっき層、またはNi-Co合金めっき層である。第2中間めっき層22は第1中間めっき層21上に直接形成されている。第2中間めっき層22は、Ni元素を含有していることが好ましく、第1中間めっき層21の組成と異なる組成を有していてよい。例えば、第1中間めっき層21はNiからなり、第2中間めっき層22はNi合金からなる。このニッケル合金は、Co(コバルト)元素を含有していてよく、例えば、Ni-Co合金である。貴金属めっき層23は、第2中間めっき層22上に直接または間接に形成されており、本実施の形態においては直接形成されている。貴金属めっき層23は、Au(金)層であることが好ましい。変形例として、このAu層と第2中間めっき層22との間に、金以外の貴金属からなる層、例えばPd(パラジウム)層が形成されていてもよい。Pd層は、Au層へのNi原子の拡散を遮断する機能を有する。これにより、加熱工程の際にNiがAu層中へ拡散することに起因してのAu層の変色を防止することができる。
【0020】
図5は、
図4に示された構成が有する結晶状態の例を模式的に示す部分断面図である。図中、ヒートシンク板10について、その結晶粒界が太線で描かれており、その結晶方位が細線で模式的に描かれている。積層めっき20については、結晶粒界の図示は省略されている。
【0021】
ヒートシンク板10は、図示されている結晶粒C1~C5を含む複数の結晶粒からなる表面SFを有している。なお、以下の説明において、表面SFを構成する多数の結晶粒のことを、代表して結晶粒C1~C5と記載することがある。ヒートシンク板10の表面SFは非研磨面であってよい。言い換えれば、表面SFは、例えば鋳造面または焼成面のような、ヒートシンク板10の形成直後の面(as-grown面)であってよい。研磨がなされないことによって、ヒートシンク板10の表面SFにはベイルビー層が形成されていない。結晶粒C1~C5は、面内方向(図中、横方向)において、第1の平均結晶粒径を有している。
【0022】
第1中間めっき層21は、ヒートシンク板10の結晶粒C1~C5上に直接形成されている。第1中間めっき層21はヒートシンク板10の結晶粒C1~C5に対して実質的に無配向(non-oriented)である。具体的には、第1中間めっき層21はヒートシンク板10の結晶粒C1~C5における各結晶方位に対して実質的に無配向である。第1中間めっき層21の結晶粒は、面内方向において上記第1の平均結晶粒径よりも小さい第2の結晶粒径を有している。言い換えれば、表面SFに面する位置でのヒートシンク板10の平均結晶粒径に比して、第1中間めっき層21の平均結晶粒径の方が小さい。
【0023】
なお平均結晶粒径は切断法によって算出されてよい。具体的には、顕微鏡の映像または写真上で、10~50個の結晶粒を完全に横切る既知の長さの線分が描かれ、この既知の長さをこれら結晶粒の数で割り算することによって算出されてよい。
【0024】
第1中間めっき層21の表面(図中、上面)の表面粗さは、ある程度粗い方が好ましい。表面粗さは、例えば、0.3μm以上の最大高さRyを有している。これにより、第2中間めっき層22の結晶粒径を抑制しやすい。また、第1中間めっき層21が無配向となるようなめっき条件を選択した結果として、第1中間めっき層21の表面粗さが大きくなりやすいことがある。このように粗い表面上に直接的に貴金属めっき層23が形成されたと仮定すると、均一な貴金属めっき層23を得るためには、大きな厚みが必要となる。貴金属、特にAu、は高価であるので、これは材料コストの増大につながる。よって本実施の形態においては、貴金属めっき層23は第1中間めっき層21上に第2中間めっき層22を介して形成される。第2中間めっき層22の表面粗さは、第1中間めっき層21の表面粗さよりも小さいことが好ましい。なお最大高さRyは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定したものをいう。その基準長さは、
図5に示された程度の視野(例えば)であってよい。
【0025】
上述したように、第1中間めっき層21は、ヒートシンク板10の結晶粒C1~C5に対して実質的に無配向である。具体的には、第1中間めっき層21は、ヒートシンク板10の結晶粒C1~C5における各結晶方位に対して実質的に無配向である。これは、第1中間めっき層21の表面(図中、上面)において、ヒートシンク板10の表面の結晶方位の情報が実質的に失われていることを意味する。その結果、第2中間めっき層22は、ヒートシンク板10の複数の結晶粒間の結晶方位の相違の影響を実質的に受けることなく成長する。
【0026】
第1中間めっき層21の厚みは、0.3μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、通常は2μm以下で十分である。第1中間めっき層21と第2中間めっき層22との界面は、結晶方位観察および組成観察によって識別可能であることが多い。
【0027】
<製造方法>
図6は、パッケージ100(
図2)の製造方法の一工程を概略的に示す断面図である。まず、ヒートシンク板10と、枠体30と、リードフレーム50とが準備される。ヒートシンク板10は、例えば、鋳造および焼成のいずれかまたはその組み合わせによって形成され得る。このように形成されたヒートシンク板10の表面SFは研磨されなくてよい。言い換えれば、複数の結晶粒からなる表面SFを有するヒートシンク板10が、表面SFを研磨することなく準備されてよい。次に、これら部材が接合層40によって互いに接合される。それにより、図示された構成が得られる。
【0028】
再び
図5を参照して、次に、ヒートシンク板10の結晶粒C1~C5上に、Ni元素を含有する第1中間めっき層21が、第1のめっき条件を用いて直接形成される。第1のめっき条件は、第1中間めっき層21がヒートシンク板10の結晶粒C1~C5に対して無配向となるように選択される。具体的には、第1のめっき条件は、第1中間めっき層21がヒートシンク板10の結晶粒C1~C5における各結晶方位に対して無配向となるように選択される。
【0029】
次に、第1中間めっき層21上に、Ni元素を含有する第2中間めっき層22が、上記第1のめっき条件とは異なる第2のめっき条件を用いて直接形成される。第2のめっき条件は、第1のめっき条件に課されていた上記制約なしに選択することができる。後述する貴金属めっき層23のめっき工程をより小さな厚みで均一に実施するためには、第2のめっき条件は、表面粗さが第1のめっき条件に比して小さくなるような条件であることが好ましい。
【0030】
次に、第2中間めっき層22上に貴金属めっき層23が形成される。これによりパッケージ100が得られる。
【0031】
<比較例>
図7は、比較例のパッケージ100Aにおける実装面RM上での光反射の様子を模式的に示す部分断面図である。パッケージ100Aは、第1中間めっき層21が形成されることなく、第2中間めっき層22Aおよび貴金属めっき層23Aが形成されることによって作製されている。第2中間めっき層22Aは、無配向性の第1中間めっき層21(
図5)によって表面SFから隔てられていないので、ヒートシンク板10の表面SFをなす結晶粒C1~C5のむらの影響を受けて成長する。具体的には、第2中間めっき層22Aは、ヒートシンク板10の表面SFをなす結晶粒C1~C5における各結晶方位のむらの影響を受けて成長する。よって、第2中間めっき層22A上に形成される貴金属めっき層23Aも、結晶粒C1~C5のむらの影響を受けて成長する。具体的には、第2中間めっき層22A上に形成される貴金属めっき層23Aも、結晶粒C1~C5における各結晶方位のむらの影響を受けて成長する。その結果、表面SF実装面RMは、比較的小さな結晶粒が集まっている箇所と、大きな結晶粒が占める箇所とを有する。前者の箇所への入射光LTaの反射光は比較的拡散されやすい。一方、後者の箇所への入射光LTbの反射光は比較的強くなりやすい。その結果、貴金属めっき層23Aの光沢むらが大きくなる。
【0032】
図8は、比較例のパッケージ100Bにおける実装面RM上での光反射の様子を模式的に示す部分断面図である。なお
図5と同様、ヒートシンク板10についてその結晶粒界が描かれている一方で、積層めっき20Bについては結晶粒界の図示が省略されている。
【0033】
パッケージ100Bは、第1中間めっき層21(
図5)の代わりにベイルビー層19が形成された後に第2中間めっき層22Bおよび貴金属めっき層23Bが形成されることによって作製されている。ベイルビー層19は、表面SFを研磨することによって形成される。第2中間めっき層22Bは、ベイルビー層19によって表面SFから隔てられているので、ヒートシンク板10の表面SFをなす結晶粒C1~C5のむらの影響を受けずに成長する。具体的には、第2中間めっき層22Bは、ヒートシンク板10の表面SFをなす結晶粒C1~C5における各結晶方位のむらの影響を受けずに成長する。よって、第2中間めっき層22B上に形成される貴金属めっき層23Bも、結晶粒C1~C5のむらの影響を受けずに成長する。具体的には、第2中間めっき層22B上に形成される貴金属めっき層23Bも、結晶粒C1~C5における各結晶方位のむらの影響を受けずに成長する。その結果、入射光LTの反射光の分散状態が均一となりやすい。よって、パッケージ100Aの貴金属めっき層23A(
図7)に比して、貴金属めっき層23Bの光沢むらを小さくすることができる。しかしながら本比較例は、ベイルビー層19を形成するための研磨工程を要する。研磨工程は、製造上の負担が大きい。
【0034】
<効果>
図9は、本実施の形態のパッケージ100における実装面RM上での光反射の様子を模式的に示す部分断面図である。本実施の形態によれば、ヒートシンク板10の表面SF上に、結晶粒C1~C5に対して無配向である第1中間めっき層21が形成される。具体的には、ヒートシンク板10の表面SF上に、結晶粒C1~C5における各結晶方位に対して無配向である第1中間めっき層21が形成される。これにより、第1中間めっき層21上に形成される第2中間めっき層22および貴金属めっき層23は、ヒートシンク板10の表面SFをなす結晶粒C1~C5のむらの影響を受けることなく形成される。具体的には、第1中間めっき層21上に形成される第2中間めっき層22および貴金属めっき層23は、ヒートシンク板10の表面SFをなす結晶粒C1~C5における各結晶方位のむらの影響を受けることなく形成される。よって、結晶粒C1~C5のむらを反映しての貴金属めっき層23の成長むらが防止される。具体的には、結晶粒C1~C5における各結晶方位のむらを反映しての貴金属めっき層23の成長むらが防止される。その結果、入射光LTの反射光の分散状態が均一となりやすい。よって、貴金属めっき層23の光沢むらを抑えることができる。
【0035】
実装面RM上の突起または異物は、電子部品501(
図1)の接続信頼性へ悪影響を与え得る。そこで、実装工程前に実装面RM上の突起または異物を検出するための検査を行うことが望ましい。この検査は量産においては、カメラを用いた自動外観検査によって行われることが望ましい。カメラによって撮影されるときに実装面RMが光沢度のむらを過剰に有していると、それに起因してのコントラストが突起または異物と誤認されることがある。特に、Auめっき層などの貴金属めっき層は、それが平坦であれば、通常、高い光沢を有する。よって、光沢のむらに起因してのコントラストが大きくなりやすい。本実施の形態によれば、実装面RMの検査において、前述した理由によって、光沢むらに起因しての誤認を防止することができる。
【0036】
結晶粒C1~C5(
図9)は面内方向(図中、横方向)において第1の平均結晶粒径を有し、第1中間めっき層21の結晶粒(図示せず)は面内方向において第1の平均結晶粒径よりも小さい第2の結晶粒径を有する。これにより、第1中間めっき層21上に形成される第2中間めっき層22および貴金属めっき層23の結晶粒(図示せず)の結晶粒径を抑制しやすくなる。よって、貴金属めっき層23の大きな結晶粒からの局所的に強い光反射が起こりにくくなる。よって、貴金属めっき層23の光沢むらを、より抑えることができる。
【0037】
ヒートシンク板10の表面SFは非研磨面であってよい。これによりヒートシンク板10の表面研磨工程が不要となる。研磨工程は、大きな労力を要する工程であることから、これを省略することによってヒートシンク板10の製造方法を簡素化することができる。なお、ヒートシンク板10の表面SFが非研磨面である場合、表面SFにはベイルビー層19(
図8)が形成されない。
【0038】
第2中間めっき層22はNi元素を含有していることが好ましい。これにより、第2中間めっき層22を貴金属めっき層に比して安価に形成することができる。
【0039】
第1中間めっき層21は、ヒートシンク板10の結晶粒C1~C5に対して無配向であることが求められるので、それに適した組成が選択されることが好ましい。具体的には、第1中間めっき層21は、ヒートシンク板10の結晶粒C1~C5における各結晶方位に対して無配向であることが求められるので、それに適した組成が選択されることが好ましい。これに対して、第2中間めっき層22はそのような制約を受けないので、第1中間めっき層21の組成と異なる組成を、より自由に選択することができる。例えば、第1中間めっき層21はNiからなり、第2中間めっき層22はNi合金からなる。Ni合金はCo元素を含有していてよい。
【0040】
ヒートシンク板10の表面SFはCu元素を含有していることが好ましい。これにより、ヒートシンク板10の表面SFの熱伝導率を高めることができる。
【0041】
<実験>
下記に、No.1~5のパッケージの作製条件と、当該パッケージが有する実装面RMへの自動外観検査の結果とを示す。
【0042】
【0043】
なお、No.1~No.3のそれぞれは実施例としてのパッケージ100(
図9)に対応しており、No.4は比較例としてのパッケージ100A(
図7)に対応しており、No.5は比較例としてのパッケージ100B(
図8)に対応している。
【0044】
No.1~No.5のいずれにおいても、ヒートシンク板としてCu/Cu-Mo/Cu接合金属板が用いられた。No.1~No.4においては、これが研磨されることなく用いられた。No.5においては、実装面側のCu表面が研磨され、それによりベイルビー層19(
図8)が形成された。これらのヒートシンク板を用いて、めっき前の構成が準備された(
図6参照)。
【0045】
No.1~No.3においては、第1中間めっき層21(
図9)として、粗化された表面を有するNiめっき層である粗化Niめっき層が形成された。なお粗化Niめっき層は、めっき条件および薬液成分などを調整することによって得ることができる。No.1~No.3のそれぞれにおける第1中間めっき層21の平均厚みは、1.0μm、1.5μmおよび2.0μmとされた。No.4およびNo.5においては、この形成は省略された。次に、通常のめっき法を用いてNiCoめっき層が形成された。次に、通常のめっき法を用いてAuめっき層が形成された。
【0046】
Auめっき層からなる実装面の光沢度を測定したところ、上記表に示す結果が得られた。なお光沢度の測定装置としては日本電色工業株式会社製VSR-300Aを用いた。また測定方法としてはこの装置のBlackモードを用いた。
【0047】
実装面の自動外観検査が行われた。その結果、No.1~No.3およびNo.5では正常に検査が行われたが、No.4では誤認が発生した。具体的にはNo.4においては、局所的に暗い箇所が異物と誤認された。No.4は、1.0以上の高い光沢度を有していたものであり、カメラによって取得された画像のコントラストが高かったことから、このような誤認が生じやすかったと考えられる。
【0048】
なお、上記においては金属基材がパッケージのヒートシンク板である場合について詳述したが、金属基材はこれに限定されるものではない。金属基材は、例えば、パッケージ用の金属枠体であってよい。金属枠体は、パッケージのキャビティの側面を構成し、枠体を支持する支持部がキャビティの底面を構成する。この場合、金属枠体に蓋体を取り付ける工程の前に行われる、金属枠体の表面の外観検査において、誤認を防止することができる。上記支持部がセラミックスからなる場合、金属枠体の熱膨張係数は、セラミックスの熱膨張係数に近いことが望ましい。これを勘案して、金属枠体の材料としては、例えば、例えば、Fe(鉄)-Ni系合金、またはFe-Ni-Co系合金が用いられる。
【0049】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0050】
10 :ヒートシンク板(金属基材)
20 :積層めっき
21 :第1中間めっき層
22 :第2中間めっき層
23 :貴金属めっき層
30 :枠体
31 :絶縁枠体
32 :メタライズ膜
33 :めっき膜
40 :接合層
50 :リードフレーム(外部接続端子)
100 :パッケージ
500 :電子機器
501 :電子部品
502 :ボンディングワイヤ
511 :接合層
512 :蓋体
C1~C5:結晶粒
RM :実装面
SF :表面