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特許7232120トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/34 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
C07D317/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019086631
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020183345
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】宮内 英紀
(72)【発明者】
【氏名】松尾 啓史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 典久
(72)【発明者】
【氏名】三村 英之
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03450716(US,A)
【文献】国際公開第2020/050249(WO,A1)
【文献】米国特許第03962279(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖容器中、アルデヒド類にヘキサフルオロプロピレンオキシドを供(但し、供給されるヘキサフルオロプロピレンオキシド全量が閉鎖容器中に一括供給されることを除く)して反応させることを含み、
前記供給を1時間~48時間かけて行い、
アルデヒド類にヘキサフルオロプロピレンオキシドを供給して反応させる温度が0℃~99℃であり、
前記温度での反応の後、100℃以上に昇温して熟成を行うことを更に含む、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
【請求項2】
前記アルデヒド類が、カルボニル基のα-位に水素原子を有しないアルデヒド類である、請求項に記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
【請求項3】
前記アルデヒド類が、芳香族アルデヒドである、請求項1または2に記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
【請求項4】
前記アルデヒド類が、電子供与基置換芳香族アルデヒドである、請求項のいずれか1項に記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
【請求項5】
閉鎖容器中、アルデヒド類にヘキサフルオロプロピレンオキシドを供給(但し、供給されるヘキサフルオロプロピレンオキシド全量が閉鎖容器中に一括供給されることを除く)して反応させることを含み、
前記供給を1時間~48時間かけて行い、
前記アルデヒド類が、電子供与基置換芳香族アルデヒドである、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
【請求項6】
前記電子供与基置換芳香族アルデヒドが、電子供与基置換ベンズアルデヒドである、請求項4または5に記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
【請求項7】
前記電子供与基置換芳香族アルデヒドが、4-メトキシベンズアルデヒドである、請求項のいずれか1項に記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとケトン類および/またはアルデヒド類との反応によるトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法として、オートクレーブ中、ベンゾフェノンとヘキサフルオロプロピレンオキシドを185℃で4時間反応させ調製する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】英国特許第1051647号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、トリフルオロピルビン酸フルオリド(即ちモノマー)の製造方法としては、常圧下で実施可能な方法が記載されている。トリフルオロピルビン酸フルオリドは沸点が9℃~10℃と工業的な取り扱いが難しいのに対し、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーは沸点が72℃であるため取り扱いが容易である。しかし、特許文献1に記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法では、圧力が4MPa~5MPaに上昇するため、高圧反応に適した装置が必須である。
【0005】
以上に鑑み、本発明は、温和な条件下で実施可能なトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法について、鋭意検討した結果、閉鎖容器内でケトン類および/またはアルデヒド類に連続的または断続的にヘキサフルオロプロピレンオキシドを供給することで温和な条件でトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを製造することができることを新たに見出した。
【0007】
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]閉鎖容器中、ケトン類および/またはアルデヒド類にヘキサフルオロプロピレンオキシドを連続的または断続的に供給して反応させる、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
[2]閉鎖容器中、ケトン類および/またはアルデヒド類にヘキサフルオロプロピレンオキシドを連続的または断続的に供給して反応させる温度が0℃~200℃である、[1]に記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
[3]閉鎖容器中、アルデヒド類にヘキサフルオロプロピレンオキシドを連続的または断続的に供給して反応させる、[1]に記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
[4]閉鎖容器中、アルデヒド類にヘキサフルオロプロピレンオキシドを連続的または断続的に供給して反応させる温度が0℃~99℃であり、
上記温度での反応の後、100℃以上に昇温して熟成を行うことを更に含む、[3]に記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
[5]アルデヒド類が、カルボニル基のα-位に水素原子を有しないアルデヒド類である、[3]または[4]に記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
[6]アルデヒド類が、芳香族アルデヒドである、[3]~[5]のいずれかに記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
[7]アルデヒド類が、電子供与基置換芳香族アルデヒドである、[3]~[6]のいずれかに記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
[8]アルデヒド類が、電子供与基置換ベンズアルデヒドである、[3]~[7]のいずれかに記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
[9]アルデヒド類が、4-メトキシベンズアルデヒドである、[3]~[8]のいずれかに記載のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、汎用機器で実施可能でより工業的なトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造方法(以下、単に「製造方法」とも記載する。)は、閉鎖容器中、ケトン類および/またはアルデヒド類にヘキサフルオロプロピレンオキシドを連続的または断続的に供給して反応させる。これにより、特許文献1に記載されている製造方法と比べて、より低圧下で実施することが可能となる。
以下、上記製造方法について、更に詳細に説明する。
【0010】
上記製造方法の一態様では、密閉容器にケトン類および/またはアルデヒド類を仕込み、-20℃~300℃、好ましくは0℃~200℃の温度下でヘキサフルオロプロピレンオキシドを連続的または断続的に供給して反応させる。上記態様は、圧力が1MPa以下で実施可能である。更に、高収率でトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを製造することもできる。
【0011】
より詳しくは、上記製造方法では、閉鎖容器にケトン類および/またはアルデヒド類を仕込み、-20℃~300℃、好ましくは0℃~200℃の温度下で1時間~48時間かけてヘキサフルオロプロピレンオキシドを気体または液体として供給することができる。ヘキサフルオロプロピレンオキシドの供給後、同温度または異なる温度下で更に1時間~48時間加熱を継続させて反応させる(熟成させる)こともできる。なお本明細書に記載の温度は、特記しない限り、反応液の液温である。
上記製造方法では、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと一種以上のケトン類のみを反応させることもでき、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと一種以上のアルデヒド類のみを反応させることもでき、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと一種以上のケトン類および一種以上のアルデヒド類とを反応させることもできる。ケトン類と比べてより反応性の高い傾向があるアルデヒド類を用いる場合、アルデヒド類にヘキサフルオロプロピレンオキシドを0℃~99℃、好ましくは0℃~90℃の温度下でヘキサフルオロプロピレンオキシドを連続的または断続的に供給して、中間体であるアルデヒド類のヘキサフルオロプロペンオキシド付加体を一旦生成させ、その後100℃以上、好ましくは100℃~200℃、より好ましくは100℃~150℃に昇温して1時間~48時間反応(熟成)を行って、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを生成させることもできる。このような段階的な反応によりトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの収率を向上させ得る。
【0012】
トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーとしては、4-フルオロ-5-オキソ-2,4-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボニルフルオライドを例示できる。4-フルオロ-5-オキソ-2,4-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボニルフルオライドは、以下の式Aで示すことができる。
【化1】
【0013】
ケトン類とは、1種または2種以上のケトンを意味する。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-エチルベンゾフェノン、3-エチルベンゾフェノン、4-エチルベンゾフェノン、4,4´-ジメチルベンゾフェノン、4,4´-ジエチルベンゾフェノン、2-メトキシベンゾフェノン、3-メトキシベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4´-ジメトキシベンゾフェノン、2-エトキシベンゾフェノン、3-エトキシベンゾフェノン、4-エトキシベンゾフェノン、4,4´-ジエトキシベンゾフェノン、2-フルオロベンゾフェノン、3-フルオロベンゾフェノン、4-フルオロベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、3-クロロベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、2-ブロモベンゾフェノン、3-ブロモベンゾフェノン、4-ブロモベンゾフェノン、1-ナフチルフェニルケトン、2-ナフチルフェニルケトン等を挙げることができ、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの収率等の観点からは、ベンゾフェノン等の芳香族ケトンを使用することが好ましく、電子供与基置換芳香族ケトンを使用することがより好ましい。ケトン類は、反応に供されるヘキサフルオロプロピレンオキシドに対して、0.8モル倍量~1.2モル倍量使用することが好ましい。
【0014】
アルデヒド類とは、1種または2種以上のアルデヒドを意味する。アルデヒド類としては、具体的には、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ピバルアルデヒド、1-アダマンタンカルボアルデヒド、ベンズアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、2-エチルベンズアルデヒド、3-エチルベンズアルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、2-メトキシベンズアルデヒド、3-メトキシベンズアルデヒド、4-メトキシベンズアルデヒド、2-エトキシベンズアルデヒド、3-エトキシベンズアルデヒド、4-エトキシベンズアルデヒド、2-フルオロベンズアルデヒド、3-フルオロベンズアルデヒド、4-フルオロベンズアルデヒド、2-クロロベンズアルデヒド、3-クロロベンズアルデヒド、4-クロロベンズアルデヒド、2-ブロモベンズアルデヒド、3-ブロモベンズアルデヒド、4-ブロモベンズアルデヒド、1-ナフトアルデヒド、5-メトキシ-1-ナフトアルデヒド、5-クロロ-1-ナフトアルデヒド、2-ナフトアルデヒド、5-メトキシ-2-ナフトアルデヒド、5-クロロ-2-ナフトアルデヒド等が挙げられる。好ましいアルデヒド類としては、ベンズアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、2-エチルベンズアルデヒド、3-エチルベンズアルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、2-メトキシベンズアルデヒド、3-メトキシベンズアルデヒド、4-メトキシベンズアルデヒド、2-エトキシベンズアルデヒド、3-エトキシベンズアルデヒド、4-エトキシベンズアルデヒド等が挙げられる。アルデヒド類は、反応に供するヘキサフルオロプロピレンオキシドに対して、0.8モル倍量~1.2モル倍量使用することが好ましい。トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの収率等の観点から、カルボニル基のα-位に水素原子を有しないアルデヒド類が好ましい。また、同様の観点から、アルデヒド類として芳香族アルデヒドを使用することが好ましく、電子供与基置換芳香族アルデヒドを使用することがより好ましく、電子供与基置換ベンズアルデヒドを使用することが更に好ましい。
【0015】
また、前述の中間体であるアルデヒド類のヘキサフルオロプロペンオキシド付加体としては、ヘキサフルオロプロピレンオキシドへアルデヒド類が付加する様式により、環化型または直鎖型の構造を取ることができる。そのようなアルデヒド類付加体は、下記式1、式2または式3で表され得る。
【0016】
【化2】
【0017】
【化3】
【0018】
【化4】
【0019】
上記式1~3中、Rは、置換もしくは未置換のアルキル基またはアリール基を示す。
【0020】
ケトン類および/またはアルデヒド類とヘキサフルオロプロピレンオキシドの反応は、無溶剤下で実施可能であるが、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、アニソール、クロロベンゼン等の溶剤を1種単独または2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。溶剤を使用する場合、その使用量は、反応に供されるヘキサフルオロプロピレンオキシドに対して、0.1質量倍量~5.0質量倍量の範囲とすることができる。
【0021】
本発明における「閉鎖容器」とは、大気に開放された開口を有さないか、そのような開口が閉止されている容器を意味し、完全に密閉されている必要はなく、容器内から外部への気体または液体の排出や容器外から容器内への気体または液体の導入は許容される。閉鎖容器は、例えば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを気体状または液体状にて供給可能な原料供給口が接続された耐圧閉鎖容器であることができる。また、閉鎖容器は、反応後に脱圧するためのガス排出口を有していてもよく、該ガス排出口が反応時は閉止されることにより閉鎖状態が保たれる。閉鎖容器の材質としては、ステンレス、ハステロイ等が挙げられる。
【0022】
本発明における反応は、上記閉鎖容器内で、3.5MPa以下の圧力下で行うことが好ましく、より好ましくは1.2MPa以下、更に好ましくは1.0MPa以下である。上記圧力は、容器内の内圧である。
【0023】
反応後の後処理として、室温までの冷却および脱圧の後、ケトン類および/またはアルデヒド類、反応により副生するジフルオロメチル化合物および/または溶剤の混合物からなる層を分離除去することによって、目的物のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを得ることができる。
【0024】
上記トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーは、米国特許3308107号明細書の記載に従い反応させることにより、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)へ誘導可能で、更にMacromolecules 2005,38,4237-4245に従い、加水分解しカリウム塩を調製の後、脱炭酸することにより、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)へ誘導可能である。パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)を重合することにより、ポリ[パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)]を得ることができる。ポリ[パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)]は、ガス分離膜用樹脂、光ファイバー用透明樹脂等として有望なポリマーである。
【実施例
【0025】
以下、本発明を実施例により更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0026】
以下の分析では、下記機器を使用した。
19F-NMR:ブルカー社(BRUKER)製AVANCE II 400
【0027】
[実施例1]
トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの調製
耐圧が8MPaの撹拌機および原料供給口を備えたSUS316製10Lオートクレーブ(閉鎖容器)にベンゾフェノン(3.19kg、17.51mol)を仕込み、140℃まで加熱した後、同温度を維持しながら原料供給口からヘキサフルオロプロピレンオキシド(3.15kg、18.97mol)を気体として36時間かけて連続的に供給した。その後、原料供給口を閉止した後、同温度で6時間加熱を継続した。この間の最高圧力は0.9MPaであった。
反応終了後、室温まで冷却した後、分液し、粗トリフルオロピルビン酸ダイマーを得た(淡黄色透明液体、2.14kg)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のトリフルオロピルビン酸ダイマーは1.91kg(6.63mol)生成していた(収率76%/ベンゾフェノン基準)。
【0028】
[実施例2]
トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの調製
実施例1と同じ反応容器(閉鎖容器)を用い、ベンズアルデヒド(1.92kg、18.09mol)を仕込み、140℃まで加熱した後、同温度を維持しながら原料供給口からヘキサフルオロプロピレンオキシド(3.15kg、18.97mol)を気体として20時間かけて連続的に供給した。その後、原料供給口を閉止した後、同温度にて2時間加熱を継続した。この間の最高圧力は0.8MPaであった。
反応終了後、室温まで冷却した後、分液し、粗トリフルオロピルビン酸ダイマーを得た(淡黄色透明液体、2.27kg)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のトリフルオロピルビン酸ダイマーは2.01kg(6.98mol)生成していた(収率77%/ベンズアルデヒド基準)。
【0029】
[実施例3]
トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの調製
実施例1と同じ反応容器(閉鎖容器)を用い、4-メトキシベンズアルデヒド(2.38kg、17.48mol)を仕込み、120℃まで加熱した後、同温度を維持しながら原料供給口からヘキサフルオロプロピレンオキシド(3.15kg、18.97mol)を気体として7時間かけて連続的に供給し、その後、原料供給口を閉止した後、同温度にて36時間加熱を継続した。この間の最高圧力は0.7MPaであった。反応終了後、室温まで冷却した後、分液し、粗トリフルオロピルビン酸ダイマーを得た(淡黄色透明液体、2.23kg)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のトリフルオロピルビン酸ダイマーは2.03kg(7.05mol)生成していた(収率81%/4-メトキシベンズアルデヒド基準)。
【0030】
[実施例4]
トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの調製
実施例1と同じ反応容器(閉鎖容器)を用い、4-メトキシベンズアルデヒド(2.38kg、17.48mol)を仕込み、85℃まで加熱した後、同温度を維持しながら原料供給口からヘキサフルオロプロピレンオキシド(3.15kg、18.97mol)を気体として7時間かけて連続的に供給した。次に、原料供給口を閉止した後、液温を140℃まで昇温し、12時間反応(熟成)を行った。140℃での最高圧力は0.7MPaであった。
反応終了後、室温まで冷却した後、分液し、粗トリフルオロピルビン酸ダイマーを得た(淡黄色透明液体、2.35kg)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のトリフルオロピルビン酸ダイマーは2.17kg(7.53mol)生成していた(収率86%/4-メトキシベンズアルデヒド基準)。
【0031】
[比較例1]
トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの調製
実施例1と同じオートクレーブを用い、ベンゾフェノン(3.19kg、17.51mol)を仕込み、氷浴上で0℃に冷却の後、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(3.15kg、18.97mol)全量を原料供給口から液体として一括添加した。
次いで、オートクレーブの原料供給口を閉止した後、撹拌しながら185℃まで加熱し、4時間反応を行った。その際、最大圧力は4.7MPaとなった後、4時間後には、3.5MPaに圧力は低下したが上記の実施例と比較し高圧反応となった。
反応終了後、室温まで冷却した後、分液し、粗トリフルオロピルビン酸ダイマーを得た(淡黄色透明液体、2.06kg)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のトリフルオロピルビン酸ダイマーは1.82kg(6.32mol)生成していた(収率72%/ベンゾフェノン基準)。
【0032】
[比較例2]
トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの調製
実施例1と同じオートクレーブを用い、ベンズアルデヒド(1.92kg、18.09mol)を仕込み、氷浴上で0℃に冷却の後、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(3.15kg、18.97mol)全量を原料供給口から液体として一括添加した。次いで、オートクレーブの原料供給口を閉止した後、140℃まで加熱して同温度で22時間反応を行った。この間の最高圧力は、1.9MPaであり、上記の実施例と比較し高圧反応となった。
反応終了後、室温まで冷却した後、分液し、粗トリフルオロピルビン酸ダイマーを得た(淡黄色透明液体、2.02kg)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のトリフルオロピルビン酸ダイマーは1.78kg(6.18mol)生成していた(収率68%/ベンズアルデヒド基準)。
【0033】
[比較例3]
トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの調製
実施例1と同じオートクレーブを用い、4-メトキシベンズアルデヒド(2.38kg、17.48mol)を仕込み、氷浴上で0℃に冷却の後、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(3.15kg、18.97mol)全量を原料供給口から液体として一括添加した。次いで、オートクレーブの原料供給口を閉止した後、140℃まで加熱して同温度で12時間反応を行った。この間の最高圧力は、1.7MPaであり、上記の実施例と比較し高圧反応となった。
反応終了後、室温まで冷却した後、分液し、粗トリフルオロピルビン酸ダイマーを得た(淡黄色透明液体、1.98kg)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のトリフルオロピルビン酸ダイマーは1.81kg(6.28mol)生成していた(収率72%/4-メトキシベンズアルデヒド基準)。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、工業的規模でトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの製造が可能となる。上記製造方法により得られるトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーは、ガス分離膜用樹脂、光ファイバー用透明樹脂等として有望なポリ[パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)]の合成原料として使用することができる。