(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/11 20230101AFI20230222BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230222BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20230222BHJP
H10K 85/30 20230101ALI20230222BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230222BHJP
C07D 401/10 20060101ALI20230222BHJP
H10K 101/10 20230101ALN20230222BHJP
【FI】
H10K50/11
H10K59/10
H10K85/60
H10K85/30
C09K11/06 690
C09K11/06 660
C07D401/10
H10K101:10
(21)【出願番号】P 2019120465
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 有希子
(72)【発明者】
【氏名】深川 弘彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴央
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09893300(US,B1)
【文献】特開2019-029500(JP,A)
【文献】特開2018-125387(JP,A)
【文献】特開2018-113365(JP,A)
【文献】特開2018-113364(JP,A)
【文献】特開2018-056536(JP,A)
【文献】特表2019-503041(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108530357(CN,A)
【文献】特開2014-239225(JP,A)
【文献】CHEN, Shuo, et al.,Efficient deep blue electroluminescence with CIEy ∈ (0.05-0.07) from phenanthroimidazole-acridine derivative hybrid fluorophores,Journal of Materials Chemistry C,英国,The Royal Society of Chemistry,2018年07月28日,vol. 6,9363-9373,https://doi.org/10.1039/C8TC02954G
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 85/00
H10K 50/00
H10K 59/00
C09K 11/06
C07D 401/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、発光層と、陰極と、をこの順に具え、
前記発光層が、ゲスト材料と、ホスト材料と、を含み、
前記ホスト材料が、下記一般式(
2):
【化1】
[一般式(
2)中のX
1は、それぞれ独立にN又はC-R
2を示し、少なくとも1つのX
1はNであり、ここで、R
2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基であり、
R
1は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基であり、隣り合うR
1は一体となって環を形成していてもよ
く、
R
3
は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基である。]で表わされる化合物であ
り、
前記ゲスト材料が、下記構造式(3-1)~(3-15):
【化2】
で示されるいずれかの化合物であることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記発光層中のゲスト材料が、前記構造式(3-1)又は(3-3)で示される化合物である、請求項
1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、表示装置。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンス(電界発光)を「EL」と記す場合がある。)素子、表示装置、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、自発光型である、視野角が広い、視認性に優れる、低電圧で駆動できる、面発光で薄型化・軽量化可能である、多色表示可能である等の特徴を有している。このため、有機EL素子は、ディスプレイ等の表示装置や、照明装置に好適に用いることができる。
【0003】
有機EL素子は、通常、透明基板上に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極がこの順に積層されることにより構成されている。有機EL素子の発光は、以下に示す(i)~(v)の過程を経て生じる。
(i)正孔及び電子が電極から注入される。
(ii)注入された正孔及び電子が輸送される。
(iii)発光層内で正孔と電子が再結合する。
(iv)発光材料が電子的励起状態を形成する。
(v)発光材料が電子的励起状態から光を放射する。
【0004】
有機EL素子では、高効率化するために、発光層の発光材料としてリン光材料を用いることが提案されている。発光材料は、エネルギーを得て電子的励起状態となるとき、一重項励起状態(S1)と三重項励起状態(T1)を1:3の確率で生成する。そして、発光材料が電子的励起状態から基底状態に戻る際に、光としてエネルギーを放出する。
【0005】
発光材料として蛍光材料を用いた場合、S1からのエネルギーしか光に変換されない。これに対し、発光材料としてリン光材料を用いた場合、S1からのエネルギーだけでなく、T1からのエネルギーも光に変換される。このため、発光材料として、蛍光材料を用いた有機EL素子よりも、リン光材料を用いた有機EL素子の方が、高効率化が期待できる(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0006】
リン光材料は、通常、ゲスト材料として、ホスト材料と共に用いられる。ホスト材料とリン光材料(ゲスト材料)とを含む発光層を有する有機EL素子では、正孔と電子との再結合により励起されたホスト材料のエネルギーがリン光材料に移動する。そのエネルギーによりリン光材料が励起され、光エネルギーとして放出される。ホスト材料からリン光材料への効率的なエネルギー移動を可能とするためには、ホスト材料の三重項励起状態(T1)のエネルギーを、ゲスト材料であるリン光材料のT1エネルギーよりも大きくすることが好ましい(例えば、非特許文献3参照)。ホスト材料のT1エネルギーよりもゲスト材料のT1エネルギーが大きいと、ゲスト材料からホスト材料への逆エネルギー移動が起こって、リン光発光の高効率化が妨げられる可能性がある。
【0007】
発光層に用いられるホスト材料は、これまでにも多数報告されている。例えば、ホスト材料として、カルバゾール系化合物等が挙げられ、該カルバゾール系化合物は、比較的大きなT1エネルギーを有する。
【0008】
有機EL素子の発光材料(ゲスト材料)としては、一般的に、高い外部量子効率が得られるイリジウム錯体が用いられている。しかしながら、発光材料としてイリジウム錯体を用いた有機EL素子は、発光スペクトルの半値幅が広く、色純度が低い。このため、発光材料としてイリジウム錯体を用いた有機EL素子では、カラーフィルター等を用いて発光スペクトルを先鋭化する必要があり、光の利用効率が低かった。
【0009】
近年、ディスプレイに用いる有機EL素子として、高色純度発光のものが求められている。例えば、超高精細度テレビジョン(UHDTV)においては、三原色がスペクトル軌跡上に位置した広色域表色系を用いることが、ITU-R勧告BT.2020に規定されている(例えば、非特許文献4参照)。
【0010】
このような背景から、発光スペクトルの半値幅の狭い発光材料が開発されつつある。例えば、下記非特許文献5には、発光材料(ゲスト材料)として、特定構造の白金錯体が記載されており、該白金錯体によれば、発光スペクトルの半値幅が18nmである高色純度の緑色発光が得られる。
【0011】
しかしながら、前記白金錯体と組み合わせる発光層のホスト材料として、1,3,5-トリアジン基を有する材料を用いると、ホスト材料と発光材料(ゲスト材料)との間にエキサイプレックスが形成され易くなり、有機EL素子の発光スペクトル半値幅が広くなり、色純度が低下することが報告されている(例えば、非特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】有機ELディスプレイ,株式会社オーム社,pp.83(2011)
【文献】Org.Electron,14,260(2013)
【文献】Appl.Phys.Lett.,83,569(2003)
【文献】Recommendation ITU-R BT.2020-2(2015)
【文献】t.Fleetham,Arizona State University,PhD thesis,pp.116-122(2014)
【文献】Molecules,24,454(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
有機EL素子においては、発光効率を確保しつつ、駆動電圧を低くすることが要求されている。しかしながら、従来の有機EL素子では、電極から発光層への正孔及び電子の移動におけるエネルギー障壁が大きいため、十分に駆動電圧を低くしつつ、高い外部量子効率を示す素子の実現が困難だった。
また、従来の有機EL素子では、高色純度発光が可能な発光材料(ゲスト材料)を用いた際に、高い外部量子効率、低消費電力、高色純度発光を兼ね備えた素子とすることが困難だった。
【0014】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、発光効率が高く(外部量子効率が高く)、駆動電圧が低い(消費電力が低い)有機EL素子を提供することを課題とする。
また、本発明は、高色純度発光が可能な発光材料(ゲスト材料)を用いた際に、発光効率が高く、駆動電圧が低く、発光の色純度が高い有機EL素子を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、有機EL素子の2つの電極間に位置する発光層が、正孔輸送性及び電子輸送性に寄与する下記一般式(1)で示される化合物を含むことで、発光層への正孔・電子移動におけるエネルギー障壁が小さくなるため、駆動電圧を下げることができ、発光効率が高く、駆動電圧が低い有機EL素子を実現できることを見出し、本発明を想到した。
また、本発明者らは、更に鋭意検討を重ねた結果、発光層のホスト材料として下記一般式(1)で示される化合物を用い、ゲスト材料として配位数が4の金属に平面状の四座配位子が結合した錯体を用いることで、発光効率が高く、駆動電圧が低く、発光の色純度が高い有機EL素子を実現できることを見出した。
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0016】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極と、をこの順に具え、
前記発光層が、ゲスト材料と、ホスト材料と、を含み、
前記ホスト材料が、下記一般式(1):
【化1】
[一般式(1)中のX
1は、それぞれ独立にN又はC-R
2を示し、少なくとも1つのX
1はNであり、ここで、R
2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基であり、
R
1は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基であり、隣り合うR
1は一体となって環を形成していてもよい。]で表わされる化合物であることを特徴とする。
かかる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低い。
【0017】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の好適例においては、前記発光層中のゲスト材料が、有機金属錯体である。この場合、発光効率が更に高くなる。
【0018】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の他の好適例においては、前記発光層中のホスト材料が、下記一般式(2):
【化2】
[一般式(2)中のX
1は、それぞれ独立にN又はC-R
2を示し、少なくとも1つのX
1はNであり、ここで、R
2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基であり、
R
1は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基であり、隣り合うR
1は一体となって環を形成していてもよく、
R
3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基である。]で示される化合物である。この場合、発光効率が更に高くなり、駆動電圧が更に低くなる。
【0019】
また、前記有機金属錯体が、配位数が4の金属に平面状の四座配位子が結合した錯体であることが好ましい。この場合、発光効率が高く、駆動電圧が低く、発光の色純度が高い有機EL素子を得ることができる。
【0020】
ここで、前記錯体が、下記一般式(3):
【化3】
[一般式(3)中のMは、配位数が4の金属であり、
R
4、R
5、R
6、R
7は、それぞれ、置換されていてもよい炭素環基又は置換されていてもよい複素環基であり、
L
1は、R
4とR
5とを連結する連結基であり、
L
2は、R
5とR
6とを連結する連結基であり、
L
3は、R
6とR
7とを連結する連結基である。]で示される化合物であることが更に好ましい。この場合、発光の色純度が更に高くなる。
【0021】
また、前記一般式(3)で示される化合物が、下記構造式(3-1)~(3-15):
【化4】
で示されるいずれかの化合物であることがより一層好ましい。この場合、発光の色純度が更に高くなる。
【0022】
また、前記発光層中のゲスト材料が、前記構造式(3-1)又は(3-3)で示される化合物であることが特に好ましい。この場合、発光の色純度が特に高くなる。
【0023】
また、前記有機金属錯体が、下記構造式(4-1):
【化5】
で示される化合物であることも好ましい。この場合、発光効率が更に高くなり、駆動電圧が更に低くなる。
【0024】
また、本発明の表示装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。かかる本発明の表示装置は、駆動電圧が低く、発光効率に優れる。
【0025】
また、本発明の照明装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。かかる本発明の照明装置は、駆動電圧が低く、発光効率に優れる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、2つの電極間に位置する発光層が上記一般式(1)で示される化合物を含み、発光効率が高く、駆動電圧が低い有機EL素子を提供することができる。
また、本発明の好適態様によれば、発光層が、上記一般式(1)で示される化合物と、配位数が4の金属に平面状の四座配位子が結合した錯体とを含み、発光効率が高く、駆動電圧が低く、尚且つ発光の色純度が高い有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態の有機EL素子の一例を説明するための断面模式図である。
【
図2】実験1で形成した薄膜の300K及び77Kにおける発光スペクトルを測定した結果を示したグラフである。
【
図3】実験2で形成した薄膜の300K及び77Kにおける発光スペクトルを測定した結果を示したグラフである。
【
図4】実施例1及び比較例1の有機EL素子における印加電圧と輝度との関係を示したグラフである。
【
図5】実施例1及び比較例1の有機EL素子における電流密度と電力効率との関係を示したグラフである。
【
図6】実験4及び実験5で形成した薄膜における発光スペクトルを示すグラフである。
【
図7】実施例2及び比較例2の有機EL素子における印加電圧と輝度との関係を示したグラフである。
【
図8】実施例2及び比較例2の有機EL素子における電流密度と電力効率との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0029】
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と、発光層と、陰極と、をこの順に具え、前記発光層が、ゲスト材料と、ホスト材料と、を含み、該ホスト材料が、上記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする。
【0030】
上述のように、従来の有機EL素子においては、発光層のホスト材料として、カルバゾール系化合物が一般に用いられており、該カルバゾール系化合物の中でも、下記構造式(5):
【化6】
で示される4,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ビフェニル(CBP)が最も一般に用いられている。CBPは、正孔輸送性のみを示し、S
1(一重項励起状態)エネルギーとT
1(三重項励起状態)エネルギーとの差が大きい材料であり、エネルギーギャップが大きい。このため、CBPを用いた発光層を有する従来の有機EL素子では、電極から発光層への正孔及び電子の移動におけるエネルギー障壁が大きく、駆動電圧が高かった。
ここで、駆動電圧を低くするには、発光層のホスト材料として、CBPを用いた場合と同程度のT
1エネルギーを有し、CBPと比較してS
1エネルギーとT
1エネルギーとの差が小さい化合物を用いればよい。このことにより、CBPと比較してホスト材料のエネルギーギャップを小さくできる。
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ね、発光層のホスト材料として、上記一般式(1)で示される化合物を用いればよいことを見出した。一般式(1)で示される化合物においては、ジヒドロアクリジン骨格又はジヒドロアントラセン骨格が正孔輸送性に寄与し、フェナントロイミダゾール骨格が電子輸送性に寄与する。このため、一般式(1)で示される化合物は、正孔輸送性と電子輸送性の両方を兼ね備え、S
1エネルギーとT
1エネルギーとの差が小さい。従って、一般式(1)で示される化合物をホスト材料として含む発光層を有する有機EL素子では、ホスト材料のエネルギーギャップが小さくなる。その結果、電極から発光層への正孔移動及び/又は電極から発光層への電子移動におけるエネルギー障壁が小さくなり、有機EL素子の駆動電圧が低くなる。しかも、一般式(1)で示される化合物をホスト材料として含む発光層を有する有機EL素子では、ホスト材料としてCBPを用いた場合と同等の高い発光効率が得られる。
従って、発光層が、ホスト材料として、上記一般式(1)で表わされる化合物を含む本発明の有機EL素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低い。
【0031】
次に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の一態様を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の有機EL素子の一例を説明するための断面模式図である。
【0032】
図1に示す本実施形態の有機EL素子1は、基板2上に、陽極3と、発光層6と、陰極9と、がこの順に設けられており、陽極3(電極)と陰極9(電極)との間に、発光層6を含む積層構造が形成されているものである。
本実施形態の有機EL素子1における積層構造は、正孔注入層4と、正孔輸送層5と、発光層6と、電子輸送層7と、電子注入層8と、がこの順に形成されたものである。
図1に示す有機EL素子1は、基板2と反対側に光を取り出すトップエミッション型のものであってもよいし、基板2側に光を取り出すボトムエミッション型のものであってもよい。
【0033】
(基板)
基板2の材料としては、樹脂材料、ガラス材料等が挙げられる。基板2の材料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
基板2に用いられる樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等が挙げられる。基板2の材料として、樹脂材料を用いた場合、柔軟性に優れた有機EL素子1が得られるため好ましい。
一方、基板2に用いられるガラス材料としては、石英ガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)等が挙げられる。
【0034】
有機EL素子1がボトムエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板を用いる。
一方、有機EL素子1がトップエミッション型のものである場合には、基板2の材料として、透明基板だけでなく、不透明基板を用いてもよい。不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料からなる基板、ステンレス鋼のような金属板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成した基板、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0035】
(陽極)
陽極3は、正孔注入層4又は正孔輸送層5に正孔を注入する。このため、陽極3の材料としては、仕事関数が比較的大きい各種金属材料や、各種合金等が用いられる。陽極3の材料としては、例えば、金、ヨウ化銅、酸化スズ、アルミニウムドープの酸化亜鉛(ZnO:Al)、インジウム酸化スズ(ITO)、インジウム酸化亜鉛(IZO)、フッ素酸化スズ(FTO)等が挙げられる。これらの中でも、透明性や仕事関数の観点から、陽極3の材料としては、ITO、IZO、FTOが好ましい。
【0036】
有機EL素子1がボトムエミッション型のものである場合、陽極3の材料としては、透明導電材料が用いられる。
一方、有機EL素子1がトップエミッション型のものである場合、陽極3の材料としては、透明導電材料だけでなく、不透明材料を用いてもよく、反射性の材料を用いてもよい。
【0037】
(正孔注入層)
正孔注入層4に用いられる材料は、陽極3の仕事関数と正孔輸送層5のイオン化ポテンシャル(IP)との関係、電荷輸送特性等の観点に応じて選ばれる。正孔注入層4の材料は、適切なIPと電荷輸送特性を有する化合物であればよく、低分子、高分子問わず、各種の有機化合物、無機化合物を選択して用いることができる。正孔注入層4の材料は、1種のみであってもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
正孔注入層4に用いられる無機化合物としては、例えば、モリブデン酸化物(MoOx)、酸化バナジウム(V2O5)等が挙げられる。無機化合物は、有機化合物と比較して安定である。このため、正孔注入層4に無機化合物を用いた場合、有機化合物を用いた場合と比較して、酸素や水に対する高い耐性が得られ易い。
【0039】
正孔注入層4に用いられる有機化合物としては、例えば、下記構造式(6-1)~(6-19)で示される化合物が挙げられる。
【化7】
【化8】
【0040】
上記構造式(6-1)~(6-19)で示される化合物の中でも、構造式(6-11)で示されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、構造式(6-12)で示されるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、構造式(6-4)で示される銅フタロシアニン(CuPc)が好ましく、構造式(6-12)で示されるPEDOTが特に好ましい。
【0041】
(正孔輸送層)
正孔輸送層5に用いられる材料としては、例えば、下記構造式(7-1)~(7-37)で示される化合物が挙げられる。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0042】
上記構造式(7-1)~(7-37)で示される化合物の中でも、構造式(7-1)で示されるN,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)と、バンドギャップが大きく、電気的安定性・熱的安定性に優れる構造式(7-36)又は(7-37)で示される化合物と、を組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0043】
正孔輸送層5の材料は、1種のみであってもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、正孔輸送層5は、1層のみで形成されていてもよいし、2層以上積層して形成されたものであってもよい。例えば、正孔輸送層5は、発光層6側に配置した構造式(7-36)又は(7-37)で示される化合物からなる層と、正孔注入層4側に配置した構造式(7-1)で示されるα-NPDからなる層と、を積層したものとすることができる。
【0044】
(発光層)
本実施形態の有機EL素子1に含まれる発光層6は、電荷輸送及び電荷再結合を行うホスト材料と、発光材料であるゲスト材料と、を含む。
【0045】
「ホスト材料」
本実施形態では、ホスト材料として、下記一般式(1):
【化13】
で表わされる化合物を用いる。
一般式(1)で示される化合物中のジヒドロアクリジン骨格又はジヒドロアントラセン骨格は、正孔輸送性に寄与するドナー性を有する。また、一般式(1)で示される化合物中のフェナントロイミダゾール骨格は、電子輸送性に寄与するアクセプター性の置換基である。
【0046】
一般式(1)中のX1は、それぞれ独立にN又はC-R2を示し、少なくとも1つのX1はNである。ここで、R2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基である。
【0047】
一般式(1)中のR1は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基であり、隣り合うR1は一体となって環を形成していてもよい。
ここで、「隣り合うR1」には、同一の炭素原子に結合している2つのR1と、結合している2つの炭素原子のそれぞれに結合しているR1と、が包含される。
【0048】
前記一般式(1)で示される化合物としては、下記一般式(2):
【化14】
で示される化合物が好ましい。この場合、発光効率が更に高くなり、駆動電圧が更に低くなる。
【0049】
一般式(2)中のX1は、それぞれ独立にN又はC-R2を示し、少なくとも1つのX1はNである。ここで、R2は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基である。
【0050】
一般式(2)中のR1は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基であり、隣り合うR1は一体となって環を形成していてもよい。
ここで、「隣り合うR1」には、同一の炭素原子に結合している2つのR1と、結合している2つの炭素原子のそれぞれに結合しているR1と、が包含される。
【0051】
一般式(2)中のR3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基、炭素数7~20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基である。
【0052】
上述した、R1、R2、R3に関して、炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられ、炭素数1~10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等のが挙げられ、炭素数1~10のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基等が挙げられ、炭素数1~10のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基等が挙げられ、炭素数2~10のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられ、炭素数7~20のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられ、置換若しくは未置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、2,6-キシリル基、メシチル基、デュリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、ピリジルフェニル基、フェナンスレニル基等が挙げられ、置換若しくは未置換の炭素数3~30の芳香族複素環基としては、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジン基等が挙げられる。
【0053】
前記一般式(1)で示される化合物としては、下記構造式(1-1)又は(1-2):
【化15】
で示される化合物が特に好ましい。上記構造式(1-1)又は(1-2)で示される化合物は、一重項励起状態(S
1)と三重項励起状態(T
1)とのエネルギー差が小さく、且つエネルギーギャップが小さいため、外部量子効率が高い有機EL素子1が得られ易く、好ましい。
【0054】
なお、化合物の蛍光スペクトルを測定することで、化合物のS1(一重項励起状態)エネルギーを求めることができる。また、化合物のリン光スペクトルを測定することで、化合物のT1(三重項励起状態)エネルギーを求めることができる。
【0055】
前記一般式(1)で示される化合物は、公知の方法で合成して得ることができる。一般式(1)で示される化合物の合成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ジヒドロアクリジン化合物又はジヒドロアントラセン化合物と、ブロモフェニル基を有するフェナントロイミダゾール化合物と、をカップリングさせることで合成できる。ここで、ジヒドロアクリジン化合物若しくはジヒドロアントラセン化合物、及び/又はブロモフェニル基を有するフェナントロイミダゾール化合物に、所望の置換基を導入することで、所望の構造を有する化合物を適宜合成できる。
【0056】
「ゲスト材料」
ゲスト材料としては、蛍光材料及び/又はリン光材料を用いることが好ましい。ゲスト材料は、ホスト材料からのエネルギー移動を有効に行うために、ホスト材料の発光波長と重なる吸収波長を有することが好ましい。
なお、ホスト材料中のゲスト材料の含有量は、1~10質量%が好ましい。ゲスト材料の含有量が上記範囲であると、ホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動が効率的に起こり、有機EL素子1の発光効率が良好となる。
【0057】
-リン光材料-
ゲスト材料がリン光材料である場合、ゲスト材料のT
1エネルギーは、ホスト材料のT
1エネルギーよりも小さいことが好ましい。
ゲスト材料として用いられるリン光材料としては、例えば、下記構造式(4-1)~(4-29)で示される化合物が挙げられる。
【化16】
【化17】
【0058】
本実施形態では、ホスト材料として、上記一般式(1)で表わされる化合物を用いるため、上記構造式(4-1)~(4-29)で示されるリン光材料の中でも、構造式(4-1)で示されるIr(mppy)3等の緑色発光材料が特に好ましい。
【0059】
上記構造式(4-1)で示されるIr(mppy)3は、T1エネルギーが比較的小さいため、ホスト材料として一般式(1)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料としてIr(mppy)3を用いた場合、ホスト材料からゲスト材料への効率的なエネルギー移動が起こる。その結果、駆動電圧が更に低い有機EL素子1となる。また、Ir(mppy)3は、一般式(1)で表わされる化合物の発光波長と重なる吸収波長を有するため、発光効率の更に高い有機EL素子1となる。
【0060】
ホスト材料として、一般式(1)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料としてIr(mppy)3を用いる場合、ホスト材料中のゲスト材料の含有量は、1~6質量%であることが好ましい。ゲスト材料の含有量が上記範囲であると、ホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動が効率的に起こり、尚且つゲスト材料濃度増加による三重項-三重項消滅(TTA)による効率低下を防ぐことができる。このため、有機EL素子1の発光効率が良好となる。
【0061】
-蛍光材料-
ゲスト材料として用いられる蛍光材料としては、例えば、下記構造式(4-30)~(4-51)で示される化合物が挙げられる。
【化18】
【化19】
【0062】
-有機金属錯体-
前記発光層6中のゲスト材料としては、有機金属錯体を使用することが好ましい。ゲスト材料として、有機金属錯体を使用する場合、発光効率が更に高くなる。
該有機金属錯体としては、上述した、構造式(4-1)~(4-29)で示されるリン光材料や、後述する、配位数が4の金属に平面状の四座配位子が結合した錯体等が挙げられる。
【0063】
前記発光層6中のゲスト材料としては、高色純度の発光を得る観点から、配位数が4の金属に平面状の四座配位子が結合した錯体を含むことが好ましい。発光層6のホスト材料として上記一般式(1)で示される化合物を用い、ゲスト材料として配位数が4の金属に平面状の四座配位子が結合した錯体を用いることで、発光効率が高く、駆動電圧が低く、発光の色純度が高い有機EL素子1とすることができる。
一般式(1)で示される化合物は、エネルギーギャップが小さく、尚且つゲスト材料よりも大きいT1エネルギーを有するので、発光層6において、配位数が4の金属に平面状の四座配位子が結合した錯体と共に用いることで、高い外部量子効率が得られる。
また、一般式(1)で示される化合物は、電子輸送性を有する骨格としてフェナントロイミダゾール骨格を有し、該フェナントロイミダゾール骨格は、1,3,5-トリアジン骨格とは異なり、ゲスト材料として配位数が4の金属に平面状の四座配位子が結合した錯体を用いても、非特許文献6に記載のようなホスト材料とゲスト材料との間のエキサイプレックス形成を抑制できる。そのため、ホスト材料として一般式(1)で示される化合物を用い、ゲスト材料として配位数が4の金属に平面状の四座配位子が結合した錯体を用いることで、発光スペクトルの半値幅が狭く、高色純度の発光が得られる。
【0064】
配位数が4の金属に平面状の四座配位子が結合した錯体は、1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。配位数が4の金属に平面状の四座配位子が結合した錯体としては、下記一般式(3):
【化20】
で示される化合物が好ましい。
上記一般式(3)で示される化合物は、四座配位子が、金属を囲むように略同一平面上に配置された4つの環状構造を有する基と、隣接する環状構造を有する基の間のうちの3箇所をそれぞれ連結する連結基とを有する。このため、一般式(3)で示される化合物は、安定であり、分子の振動に伴う光の放射が効果的に抑制され、発光スペクトルの半値幅が狭く、高色純度の発光が得られるものと推定される。
【0065】
一般式(3)中のMは、配位数が4の金属である。一般式(3)中のMは、配位数が4の金属であればよく、例えば、Pt、Pd、Cu等が挙げられ、Pt及びPdが好ましく、特にPtが好ましい。
【0066】
一般式(3)中のR4、R5、R6、R7は、それぞれ、置換されていてもよい炭素環基又は置換されていてもよい複素環基である。R4、R5、R6、R7としての炭素環基又は複素環基は、より一層、光の放射に伴う分子の振動が抑えられる化合物となるため、5員環又は6員環であることが好ましい。一般式(3)中のR4、R5、R6、R7は、全て同じであってもよいし、一部又は全部がそれぞれ異なっていてもよい。
【0067】
上述した、R4、R5、R6、R7に関して、炭素環基としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フェナンスレニル基等が挙げられ、複素環基としては、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。また、炭素環基及び複素環基の置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルキルアミノ基、炭素数2~10のアシル基等が挙げられる。
【0068】
一般式(3)中のL1は、R4とR5とを連結する連結基であり、L2は、R5とR6とを連結する連結基であり、L3は、R6とR7とを連結する連結基である。一般式(3)中のL1、L2、L3は、隣接する環状構造を有する基(R4、R5、R6、R7)の間を連結するものであればよく、例えば、隣接する環状構造を有する基を形成している原子と共に形成された環構造であってもよいし、隣接する環状構造を有する基を形成している原子間の単結合であってもよいし、エーテル結合であってもよい。一般式(3)中のL1、L2、L3は、全て同じであってもよいし、一部又は全部がそれぞれ異なっていてもよい。
【0069】
上記一般式(3)で示される化合物としては、下記構造式(3-1)~(3-15)で示される化合物が好ましく、これらの中でも、高色純度発光が得られ易いため、構造式(3-1)で示される化合物、構造式(3-3)で示される化合物が特に好ましい。
【化21】
【0070】
ホスト材料として、上記一般式(1)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料として上記一般式(3)で示される化合物を用いる場合、ホスト材料中のゲスト材料の含有量は、3~10質量%であることが好ましい。ゲスト材料の含有量が上記範囲であると、ホスト材料からゲスト材料へのエネルギー移動が効率的に起こり、尚且つゲスト濃度増加による三重項-三重項消滅(TTA)による効率低下を防ぐことができる。このため、有機EL素子1の発光効率が更に良好となる。
【0071】
(電子輸送層)
適切な最低未占有分子軌道(LUMO)レベルを有する電子輸送層7を、陰極9又は電子注入層8と、発光層6との間に設けると、陰極9又は電子注入層8から電子輸送層7への電子注入障壁が緩和され、電子輸送層7から発光層6への電子注入障壁が緩和される。また、電子輸送層7に用いられる材料が適切な最高被占有分子軌道(HOMO)レベルを有する場合、発光層6で再結合せずに対極へ流出する正孔が阻止される。その結果、発光層6内に正孔が閉じ込められて、発光層6内での再結合効率が高められる。
電子輸送層7は、電子注入障壁が問題とならず、発光層6の電子輸送能が十分に高い場合には、省略される場合がある。
【0072】
電子輸送層7に用いられる材料としては、例えば、下記構造式(8-1)~(8-28)で示される化合物が挙げられる。
【化22】
【化23】
【化24】
【0073】
上記構造式(8-1)~(8-28)で示される化合物の中でも、構造式(8-4)で示される2,2’,2”-(1,3,5-ベンゼントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)(TPBi)が特に好ましい。
【0074】
(電子注入層)
電子注入層8に用いられる材料は、陰極9の仕事関数と電子輸送層7のLUMOレベル等の観点から選ばれる。電子注入層8に用いられる材料は、電子輸送層7を設けない場合には、発光層6のゲスト材料及びホスト材料のLUMOレベルを考慮して選ばれる。
【0075】
電子注入層8に用いられる材料は、有機化合物でもよいし、無機化合物でもよい。電子注入層8が、無機化合物からなるものである場合には、例えば、アルカリ金属や、アルカリ土類金属の他、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、炭酸セシウム等を用いることができ、フッ化リチウムを用いることが好ましい。
【0076】
(陰極)
陰極9は、電子注入層8又は電子輸送層7に電子を注入する。このため、陰極9の材料としては、仕事関数の比較的小さな各種金属材料、各種合金等が用いられる。陰極9の材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウム、カルシウム、金、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、マグネシウムインジウム合金(MgIn)、銀合金等が挙げられる。
【0077】
有機EL素子1がボトムエミッション型のものである場合、陰極9の材料として、金属からなる不透明電極を用いることができ、反射性の材料を用いてもよい。
一方、有機EL素子1がトップエミッション型のものである場合、陰極9の材料として、透明導電材料が用いられる。なお、陰極9の材料としてITOを用いた場合、ITOの仕事関数が大きいため、電子注入が困難となる。また、ITO膜は、スパッタ法やイオンビーム蒸着法を用いて成膜するため、成膜時に電子注入層8等にダメージが与えられる可能性がある。このため、陰極9の材料としてITOを用いる場合には、電子注入層8とITOとの間に、マグネシウム層や銅フタロシアニン層を設けることが好ましい。
【0078】
(形成方法)
図1に示す有機EL素子1は、基板2上に、陽極3と、正孔注入層4と、正孔輸送層5と、発光層6と、電子輸送層7と、電子注入層8と、陰極9をこの順に形成することにより製造できる。陽極3、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極9の各層の形成方法は、特に限定されず、各層に用いられる材料の特性に合わせて、従来公知の種々の形成方法を適宜用いて形成できる。
【0079】
具体的には、例えば、陽極3及び陰極9を形成する方法としては、スパッタ法、真空蒸着法、ゾルゲル法、スプレー熱分解(SPD)法、原子層堆積(ALD)法、気相成膜法、液相成膜法等が挙げられる。
また、正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8の各層を形成する方法としては、各層となる有機化合物を含む有機化合物溶液を塗布する塗布法、真空蒸着法、ESDUS(Evaporative Spray Deposition from Ultra-dilute Solution)法等が挙げられる。これらの形成方法の中でも特に、塗布法を用いることが好ましい。
また、正孔注入層4、正孔輸送層5、電子輸送層7、電子注入層8のうちいずれかの層が無機材料からなるものである場合、無機材料からなる層は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法等の方法を用いて形成できる。
【0080】
(他の例)
本発明の有機EL素子は、上述した実施形態において説明した有機EL素子に限定されるものではない。
具体的には、上述した実施形態においては、基板2と発光層6との間に陽極3が配置された順構造の有機EL素子1を例に挙げて説明したが、本発明の有機EL素子は、基板と発光層との間に陰極が配置された逆構造のものであってもよい。
【0081】
また、本発明の有機EL素子においては、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層は、必要に応じて形成すればよく、設けられていなくてもよい。
また、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極の各層は、1層で形成されているものであってもよいし、2層以上からなるものであってもよい。
また、本発明の有機EL素子は、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極の各層の間に、他の層を有するものであってもよい。具体的には、有機EL素子の特性をさらに向上させる等の理由から、必要に応じて、電子阻止層等を有していてもよい。
【0082】
<表示装置>
本発明の表示装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。本発明の表示装置は、上述した発光効率が高く、駆動電圧が低い有機EL素子を具えるため、発光効率が高く、駆動電圧が低い。本発明の表示装置は、上述した有機EL素子の他に、表示装置に一般に用いられる他の部品を具えることができる。
【0083】
<照明装置>
本発明の照明装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。本発明の照明装置は、上述した発光効率が高く、駆動電圧が低い有機EL素子を具えるため、発光効率が高く、駆動電圧が低い。本発明の照明装置は、上述した有機EL素子の他に、照明装置に一般に用いられる他の部品を具えることができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0085】
<実験1>
ガラス材料からなる基板上に、真空蒸着法により、下記構造式(1-1)で示される化合物からなる厚み50nmの薄膜を形成した。
【化25】
【0086】
なお、構造式(1-1)で示される化合物{2-(4-(9,9-ジフェニルアクリジン-10(9H)-イル)フェニル)-1-(4-メトキシフェニル)-1H-フェナントロ[9,10-d]イミダゾール(PhImEn)}は、J.Mater.Chem.C,2018,6,9363-9377に記載の方法で合成した。
【0087】
<実験2>
ガラス材料からなる基板上に、真空蒸着法により、上記構造式(5)で示されるCBPからなる厚み50nmの薄膜を形成した。
【0088】
<実験3>
ガラス材料からなる基板上に、真空蒸着法により、上記構造式(4-1)で示されるIr(mppy)3からなる厚み50nmの薄膜を形成した。
【0089】
(発光スペクトルの測定)
実験1で形成した薄膜について、HORIBA社製のFluoroMax-4を用い、波長300nmの励起光源を用いて、300K及び77Kにおける発光スペクトルを測定した。また、実験2で形成した薄膜について、同様の装置を用い、波長300nmの励起光源を用いて、300K及び77Kにおける発光スペクトルを測定した。結果を
図2及び
図3に示す。
図2は、実験1で形成した薄膜の測定結果を示したグラフである。
図3は、実験2で形成した薄膜の測定結果を示したグラフである。
【0090】
常温(300K)での発光スペクトルは、蛍光発光を示している。従って、常温(300K)での発光スペクトルから、S
1(一重項励起状態)エネルギーに相当する知見が得られる。
図2及び
図3に示すように、構造式(1-1)で示される化合物(実験1)の蛍光発光は、CBP(実験2)の蛍光発光よりも長波長側に見られる。従って、構造式(1-1)で示される化合物のS
1エネルギーは、CBPよりも小さい。
【0091】
また、実験1及び実験2で形成した薄膜について、低温(77K以下)での発光スペクトル測定によりリン光発光を観測し、薄膜の三重項励起状態(T1)のエネルギーを求めた。なお、低温での発光スペクトル測定は、蛍光発光成分を除去してリン光スペクトルを観測するために、励起光照射後50msの遅延を設けて測定した。このようにして求めた実験1及び実験2で形成した薄膜の三重項励起状態(T1)のエネルギーを表1に示す。
また、実験3で形成した薄膜(Ir(mppy)3)についても、実験1及び実験2と同様にして、薄膜の三重項励起状態(T1)のエネルギーを求めた。実験3で形成した薄膜の三重項励起状態(T1)のエネルギーを表1に示す。
【0092】
【0093】
上述のように、構造式(1-1)で示される化合物のS1エネルギーは、CBPよりも小さい。また、表1に示すように、構造式(1-1)で示される化合物(実験1)のT1エネルギーは、CBP(実験2)とほぼ同程度である。従って、構造式(1-1)で示される化合物は、CBPよりもエネルギーギャップが小さい。よって、構造式(1-1)で示される化合物は、発光層のホスト材料として、CBPよりも好ましいことが分かる。
【0094】
また、表1に示すように、構造式(1-1)で示される化合物(実験1)のT1エネルギーは、一般的な緑色リン光材料であるIr(mppy)3のT1エネルギーよりも小さくはなく、構造式(1-1)で示される化合物は、発光層のホスト材料に適している。
【0095】
<実施例1>
以下に示す材料を用いて、以下に示す方法により、実施例1の有機EL素子を作製した。
基板の陽極上に、真空蒸着法により、正孔注入層と、第2正孔輸送層と、第1正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、電子注入層と、陰極と、をこの順に形成し、実施例1の有機EL素子を作製した。
【0096】
(基板、陽極)
ITO(酸化インジウムスズ)からなる幅3mmにパターニングされた電極を有する平均厚さ0.7mmの市販の透明ガラス基板。
【0097】
(正孔注入層)
構造式(6-12)で示されるPEDOT(Clevios HIL1.5)(厚み30nm)
【0098】
(正孔輸送層)
「第1正孔輸送層」:構造式(7-36)で示される化合物(厚み10nm)
「第2正孔輸送層」:構造式(7-1)で示されるα-NPD(厚み20nm)
【0099】
(発光層)
一般式(1)で示される化合物である構造式(1-1)で示される化合物をホスト材料として用い、該ホスト材料中にゲスト材料である構造式(4-1)で示されるIr(mppy)3を3質量%含む(厚み25nm)
【0100】
(電子輸送層)
構造式(8-4)で示されるTPBi(厚み35nm)
【0101】
(電子注入層)
LiF膜(厚み0.8nm)
【0102】
(陰極)
Al膜(厚み100nm)
【0103】
<比較例1>
発光層のホスト材料に使用した化合物を、構造式(5)で示されるCBPとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の有機EL素子を作製した。
【0104】
(外部量子効率の測定)
上記のようにして得られた実施例1及び比較例1の有機EL素子について、それぞれ電流密度10mA/cm2における外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0105】
【0106】
表2に示すように、実施例1の有機EL素子の外部量子効率は、比較例1の有機EL素子の外部量子効率よりも高い値を示した。
【0107】
(電圧-輝度特性の測定)
実施例1及び比較例1の有機EL素子に対して、ケースレー社製の「2400型ソースメーター」を用いて電圧を印加し、コニカミノルタ社製の「LS-100」を用いて輝度を測定し、印加電圧と輝度の関係を調べた。結果を
図4に示す。
【0108】
図4に示すように、実施例1の有機EL素子では、比較例1の有機EL素子と比較して、印加電圧が同じである場合に高い輝度が得られており、駆動電圧が低かった。これは、発光層のホスト材料として、実施例1で使用した構造式(1-1)で示される化合物が、比較例1で使用したCBPと比較して、エネルギーギャップが小さいためであると推定される。
【0109】
(電流密度-電力効率特性の測定)
実施例1及び比較例1の有機EL素子に対して、ケースレー社製の「2400型ソースメーター」を用いて電流密度と電力効率を調べた。結果を
図5に示す。
【0110】
図5に示すように、実施例1の有機EL素子では、比較例1の有機EL素子と比較して、電流密度が同じである場合に高い電力効率が得られている。これは、発光層のホスト材料として、実施例1で使用した構造式(1-1)で示される化合物が、比較例1で使用したCBPと比較して、エネルギーギャップが小さいためであると推定される。
【0111】
<実験4>
石英基板上に真空蒸着により、上記構造式(1-1)で示される化合物中に、上記構造式(3-1)で示される化合物を1質量%含む厚み30nmの薄膜を作製した。
【0112】
<実験5>
構造式(1-1)で示される化合物に代えて、下記構造式(9):
【化26】
で示される化合物を用いたこと以外は、実験4と同様にして、実験5の薄膜を作製した。
【0113】
(発光スペクトルの測定)
実験4及び実験5で得られた薄膜について、それぞれHORIBA社製のFluoroMax-4を用い、波長350nmの励起光源を用いて、300Kにおける発光スペクトルを測定した。結果を
図6に示す。
【0114】
図6に示すように、実験4の薄膜の発光スペクトルは、実験5の薄膜と比較して560nm付近にみられるピークの発光強度が小さく、発光の色純度が高いことが確認できた。これは、ホスト材料としてトリアジン基を有する構造式(9)で示される化合物を用いる場合に比べ、フェナントロイミダゾール基を有する構造式(1-1)で示される化合物を用いた方が、ホスト材料とゲスト材料(構造式(3-1)で示される化合物)との間にエキサイプレックス形成が生じ難く、これに起因する発光スペクトル幅の増大を低減できるためである。
【0115】
<実施例2>
以下に示す材料を用いて、以下に示す方法により、実施例2の有機EL素子を作製した。
基板の陽極上に、真空蒸着法により、正孔注入層と、第2正孔輸送層と、第1正孔輸送層と、発光層と、電子輸送層と、電子注入層と、陰極と、をこの順に形成し、実施例2の有機EL素子を作製した。
【0116】
(基板、陽極)
ITO(酸化インジウムスズ)からなる幅3mmにパターニングされた電極(陽極)を有する平均厚さ0.7mmの市販の透明ガラス基板。
【0117】
(正孔注入層)
構造式(6-12)で示されるPEDOT(Clevios HIL1.3N)(厚み30nm)
【0118】
(正孔輸送層)
「第1正孔輸送層」:構造式(7-37)で示される化合物(厚み10nm)
「第2正孔輸送層」:構造式(7-1)で示されるα-NPD(厚み20nm)
【0119】
(発光層)
構造式(1-1)で示される化合物をホスト材料として用い、該ホスト材料中にゲスト材料として構造式(3-1)で示される化合物を6質量%含む(厚み25nm)
【0120】
(電子輸送層)
構造式(8-4)で示されるTPBi(厚み35nm)
【0121】
(電子注入層)
LiF膜(厚み0.8nm)
【0122】
(陰極)
Al膜(厚み100nm)
【0123】
<比較例2>
発光層のホスト材料に使用した化合物を、構造式(5)で示されるCBPとしたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2の有機EL素子を作製した。
【0124】
(外部量子効率の測定)
上記のようにして得られた実施例2及び比較例2の有機EL素子について、前述と同様の方法で電流密度10mA/cm2における外部量子効率を測定した。結果を表3に示す。
【0125】
【0126】
表3に示すように、実施例2の有機EL素子の外部量子効率は、比較例2の有機EL素子の外部量子効率より高い値を示した。
【0127】
(電圧-輝度特性の測定)
実施例2及び比較例2の有機EL素子に対して、ケースレー社製の「2400型ソースメーター」を用いて電圧を印加し、コニカミノルタ社製の「LS-100」を用いて輝度を測定し、印加電圧と輝度の関係を調べた。結果を
図7に示す。
【0128】
図7に示すように、実施例2の有機EL素子では、比較例2の有機EL素子と比較して、印加電圧が同じである場合に高い輝度が得られており、駆動電圧が低かった。
【0129】
(電流密度-電力効率特性の測定)
実施例2及び比較例2の有機EL素子に対して、前述と同様の方法で電流密度と電力効率を調べた。結果を
図8に示す。
【0130】
図8に示すように、実施例1の発光材料(ゲスト材料)を変えた実施例2の有機EL素子においても、ホスト材料としてCBPを用いた比較例2の有機EL素子と比較して、電流密度が同じである場合に高い電力効率が得られている。
【符号の説明】
【0131】
1:有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子
2:基板
3:陽極
4:正孔注入層
5:正孔輸送層
6:発光層
7:電子輸送層
8:電子注入層
9:陰極