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特許7232438メチル含有基修飾核酸を精製、分離または濃縮する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】メチル含有基修飾核酸を精製、分離または濃縮する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230224BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230224BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230224BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20230224BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20230224BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230224BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C12N15/10 100Z
C12M1/00 A ZNA
C12M1/34 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6827 Z
C12Q1/686 Z
【請求項の数】 56
(21)【出願番号】P 2018086667
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019187361
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 医療分野研究成果展開事業・先端計測分析技術・機器開発プログラム「メチル化DNAオートコレクターの開発事業」、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】503330314
【氏名又は名称】株式会社ジーンデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃充
(72)【発明者】
【氏名】竹内 芙美香
(72)【発明者】
【氏名】太田 明宏
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-125470(JP,A)
【文献】特開平01-211500(JP,A)
【文献】特開昭63-188399(JP,A)
【文献】特開2009-207418(JP,A)
【文献】特開2005-237378(JP,A)
【文献】特開2004-101360(JP,A)
【文献】特開2012-152182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0288395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12M 1/00- 3/10
C12Q 1/00- 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するための装置であって、
洗浄液を流す流路(A)と、
メチル含有基で修飾された塩基と特異的に架橋することができる反応性部位およびポリヌクレオチドを含む捕捉部分と、結合部分とを含む、複合体を流す流路(B)と、
核酸を含む試料を流す流路(C)と、
該標的核酸分子と、該反応性部位とを架橋させるための薬剤を流す流路(D)と、
核酸を脱ハイブリダイズするための流体を流す流路(E)と、
流路(A)、流路(B)、流路(C)、流路(D)および流路(E)から流出した流体が流入可能な流路(F)と、
廃液を流す流路(G)と、
デバイスを設置した設置部と、
を備え、
ここで、流路(F)は該デバイスと流体連通するように連結されており、
流路(G)は該デバイスと流体連通するように連結されており、
流路(G)は少なくとも2種類の切り替え可能な流路から構成され、
該デバイスは、
核酸を含む試料を導入するための導入口と、
基材と、該複合体を保持するための保持部と、
該デバイスから流体を排出するための導入口とは異なる排出口と、
を含み
該反応性部位が、一般式(1)
【化24】

[式(1)中、nは1であり、
は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示し、
Zは、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、及びカルバモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい4,4’-ビピリジン基が、リンカーを介して結合している一般式(2)で表されるプリン塩基
【化25】

式(2)中、Xは、O、NH、CH、又はSを示し、一般式(2)の基は、aの側で一般式(1)中の五単糖と結合し、bの側でリンカーと結合する。]
を示す、
で表される、
装置
【請求項2】
前記保持部が前記導入口および/または排出口から流出しないように流出防止手段を含む、請求項1に記載の装置
【請求項3】
前記流出防止手段がフィルターである、請求項に記載の装置
【請求項4】
前記保持部内の容積が5mL未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置
【請求項5】
前記メチル含有基で修飾された塩基は標的核酸分子の中に存在するものであり、前記ポリヌクレオチドは該標的核酸分子と少なくとも部分的に相補的であり、前記反応性部位は、該標的核酸分子における該メチル含有基で修飾された塩基に対応する位置に存在する、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置
【請求項6】
望の核酸配列上の所望の位置の塩基がメチル含有基で修飾された標的核酸分子を精製するものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置
【請求項7】
前記デバイスは、ポリプロピレン(PP)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置
【請求項8】
前記保持部から前記デバイスまでの流路が50μL未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
1種類の試料を処理するために消費される反応液が50mL未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
セットされた試料から自動的に前記標的核酸分子を濃縮、精製または分離する、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の装置において使用して、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子精製、分離または濃縮するための組成物であって、該組成物は前記反応性部位を含む、組成物。
【請求項12】
ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記精製、分離または濃縮は、メチル化DNAに特異的になされる、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記リンカーが、以下
-(CHm1-NH-CO-(CHm2-[m1及びm2は同一又は異なって1~20の整数を示す]
-(O-CH-CH)l-O- [lは1~100の整数を示す]
-(CH)k- [kは1~20の整数を示す]
のいずれかの構造である、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
Zが、メチル基で置換されている4,4’-ビピリジン基が、-(CHm1-NH-CO-(CHm2-(m1及びm2は同一又は異なって1~20の整数を示す)をリンカーとして介して結合している一般式(2)で表されるプリン塩基である、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
以下の一般式(1-a)
【化22】

[式中、m1及びm2は同一又は異なって1~20の整数を示す]
で表される化合物を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記反応性部位が、以下の構造
【化23】

である、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか1項に記載の装置において使用するための組成物であって、該組成物は前記複合体を含む、組成物。
【請求項19】
前記複合体が基材をさらに含み、該基材が前記結合部分を介して前記捕捉部分と結合している、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記結合部分がビオチンである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記基材がストレプトアビジンを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのものである、請求項18~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチドが、前記標的核酸分子に少なくとも部分的に相補的である配列を有する、請求項18~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記メチル含有基で修飾された塩基が5mCである、請求項18~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記標的核酸分子がDNAである、請求項18~24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記標的核酸分子が無細胞(cf)DNAである、請求項18~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリヌクレオチドが、合計で50~100の塩基長を有する、請求項18~26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記結合部分または基材が、前記捕捉部分の3’末端または5’末端に存在する、請求項18~27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記結合部分または基材が、リンカーを介して前記捕捉部分に結合している、請求項18~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記基材がケイ素保護ジオールで修飾されている、請求項19~29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記基材がガラス製または金属製である、請求項19~30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記基材がビーズ状、板状または棒状である、請求項19~31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
前記複合体が磁気を帯びている、請求項19~32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記複合体の直径が30~100μmである、請求項19~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
請求項18に記載の組成物と、
前記結合部分を捕捉することができる基材
使用説明書と、
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置において使用して、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのキット。
【請求項36】
請求項19~34のいずれか1項に記載の組成物と、
使用説明書と、
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置において使用して、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのキット。
【請求項37】
請求項1~10のいずれか1項に記載の装置において、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するための方法であって、
(A)核酸を含む試料を、請求項11~34のいずれか1項に記載の組成物と混合するステップと、
(B)ステップ(A)で得られた混合物を、前記反応性部位が標的核酸分子中のメチル含有基で修飾された塩基と架橋する条件に供するステップと、
(C)ステップ(B)で得られた架橋物を、二本鎖核酸が脱ハイブリダイズする条件に供するステップと、
を含む、方法。
【請求項38】
ステップ(A)の前に、前記試料を、二本鎖核酸が脱ハイブリダイズする条件に供するステップを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記二本鎖核酸が脱ハイブリダイズする条件に供するステップが、加熱処理、アルカリ処理、尿素処理、ジメチルスルホキシド処理またはこれらのいずれかの組み合わせの処理を行うことを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ステップ(B)において酸化オスミウムを使用する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項41】
所望の核酸配列上の所望の位置の塩基がメチル含有基で修飾された標的核酸分子を精製するための方法である、請求項37~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
ステップ(C)が、加熱処理、アルカリ処理、尿素処理、ジメチルスルホキシド処理またはこれらのいずれかの組み合わせの処理を行うことを含む、請求項37~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(C)が、ホルムアミド処理と加熱処理との組み合わせの処理を行うことを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
変性剤で処理することによって前記捕捉部分とメチル含有基で修飾された塩基との間の架橋を切断するステップをさらに含む、請求項37~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
オスミウムを含む廃液を分別するステップをさらに含む、請求項37~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
酸配列のメチル含有基による修飾情報に基づいて対象の状態を分析するために、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置を制御するプログラムであって、
該装置を使用して、所望の核酸配列上の所望の位置がメチル含有基で修飾された標的核酸分子を濃縮、精製または分離するステップと、
精製した標的核酸上のメチル含有基による修飾情報を取得するステップと、
該メチル含有基による修飾情報に基づいて該対象の状態を分析するステップと、
を含む方法を実行するように構成されたプログラム。
【請求項47】
前記状態が、がんの状態である、請求項46に記載のプログラム。
【請求項48】
酸配列のメチル含有基による修飾情報に基づいて対象の状態を分析するためのシステムであって、
請求項1~10のいずれか1項に記載の装置と、
濃縮、精製または分離した標的核酸分子を測定する測定部と、
該測定によって得られたメチル含有基による修飾情報に基づいて該対象の状態を分析する分析部と、
を含むシステム。
【請求項49】
前記測定部が、PCRを実施する装置、核酸シークエンシング装置および蛍光検出器のうちの少なくとも1つを含む、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
流路(D)に流す前記薬剤が酸化オスミウムを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項51】
さらにヒーターを備える、請求項1~10および50のいずれか1項に記載の装置。
【請求項52】
さらに制御部を備える、請求項51に記載の装置。
【請求項53】
請求項1~10および50~52のいずれか1項に記載の装置を動作させるためのプログラムであって、
流路(B)から流出した流体が流路(F)に流入するようにバルブを切り替えるステップと、
流路(C)から流出した流体が流路(F)に流入するようにバルブを切り替えるステップと、
流路(D)から流出した流体が流路(F)に流入するようにバルブを切り替えるステップと、
流路(E)から流出した流体が流路(F)に流入するようにバルブを切り替えるステップと、
流路(D)に流す薬剤を廃液に流す場合に、流路(G)の少なくとも2種類の切り替え可能な流路を切り替えるステップと
を実行するように構成されている、プログラム。
【請求項54】
流路(D)に前記薬剤を流すステップが、流路(D)および前記デバイスのうちの少なくとも1つの温度を調節することを含む、請求項53に記載のプログラム。
【請求項55】
つの試料に対して使用される酸化オスミウムの合計量が、約5μmol未満となるように構成されている、請求項53または54に記載のプログラム。
【請求項56】
つの試料を処理した場合に生じる酸化オスミウム含有廃液の量が、5mL未満となるように構成されている、請求項53~55のいずれか1項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的対象の特徴分析法、ならびにそれを実施するためのデバイスおよび装置に関する。より特定すると、本発明は核酸上のメチル含有基による修飾情報に基づく生物学的対象の特徴分析法、ならびにそれを実施するためのデバイスおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子発現は、プロモーター領域のDNAメチル化によって制御される。このメチル化DNAを断片化して回収することによって、特定の遺伝子の発現の状況を知ることができると予測される。例えば、疾病とメチル化が関連付けて研究されている場合には、関連メチル化がどの程度起こっているか調べることによって、疾病ステージを明らかにできると考えられる。また、DNA上のその他の修飾も同様に有用な情報を提供する。したがって、メチル化をはじめとする修飾を含むDNA断片を効率的にサンプルから簡便に回収して、計測する技術のニーズは高い。
【0003】
さまざまなDNA断片を含む混合物から、目的の配列の目的の箇所が修飾されたDNA断片だけを選択的に回収できるようになれば、医工学、再生医学、畜産科学などの遺伝子産業分野において、飛躍的に修飾DNA研究が進むと期待される。しかし、特定の修飾DNA断片だけを回収する技術は、成熟していない。
【0004】
現在メチル化DNAを非メチル化DNAから区別する方法として主にバイサルファイト法(例えば、Kobayashiら、Cytogenet Genome Res.2006;113(1-4):130-7.)および抗体法が使用されている。バイサルファイト法および抗体法はいずれも、サンプル量を必要とし、非特異的な分解や配列選択性の不足のために実験ごとに大きな誤差が生じ得る。従来のメチル化DNA判別法は特定のメチル化DNA断片を回収するのに適当ではなかったので、このような方法に使用するための装置の有用性も限られたものとなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】Kobayashiら、Cytogenet Genome Res.2006;113(1-4):130-7.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、メチル含有基修飾核酸を精製、分離または濃縮するための新たな方法、デバイス、システム、および装置、関連するコンピュータプログラム等を提供する。また、本発明は核酸上のメチル含有基による修飾情報に基づく生物学的対象の特徴分析法を提供する。
【0007】
したがって、本発明は以下を提供する。
(項目1)
メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子の精製、分離または濃縮のための組成物であって、該組成物は、
一般式(1)
【化1】


で表される反応性部位を含み、
式(1)中、nは1であり、
は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示し、
Zは、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、及びカルバモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい4,4’-ビピリジン基が、リンカーを介して結合している一般式(2)で表されるプリン塩基
【化2】

[式(2)中、Xは、O、NH、CH、又はSを示し、一般式(2)の基は、aの側で一般式(1)中の五単糖と結合し、bの側でリンカーと結合する。]
を示す、
組成物。
(項目2)
ポリヌクレオチドをさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記メチル含有基で修飾された塩基は標的核酸分子の中に存在するものであり、前記ポリヌクレオチドは該標的核酸分子と少なくとも部分的に相補的であり、前記反応性部位は、該標的核酸分子における該メチル含有基で修飾された塩基に対応する位置に存在する、項目1~2のいずれかに記載の組成物。
(項目4)
前記精製、分離または濃縮は、メチル化DNAに特異的になされる、項目1~3のいずれかに記載の組成物。
(項目5)
前記リンカーが、以下
-(CHm1-NH-CO-(CHm2-[m1及びm2は同一又は異なって1~20の整数を示す]
-(O-CH-CH)l-O- [lは1~100の整数を示す]
-(CH)k- [kは1~20の整数を示す]
のいずれかの構造である、項目1~4のいずれかに記載の組成物。
(項目6)
Zが、メチル基で置換されている4,4’-ビピリジン基が、-(CHm1-NH-CO-(CHm2-(m1及びm2は同一又は異なって1~20の整数を示す)をリンカーとして介して結合している一般式(2)で表されるプリン塩基である、項目1~5のいずれかに記載の組成物。
(項目7)
以下の一般式(1-a)
【化3】

[式中、m1及びm2は同一又は異なって1~20の整数を示す]
で表される化合物を含む、項目1~6のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
前記反応性部位が、以下の構造
【化4】

である、項目1~7のいずれかに記載の組成物。
【0008】
A.メチル化DNAを補足するための手段
・間接結合タイプ
(項目A1-1)
標的核酸分子中のメチル含有基で修飾された塩基と特異的に架橋することができる反応性部位およびポリヌクレオチドを含む捕捉部分と、結合部分とを含む、複合体。
(項目A1-2)
基材をさらに含み、該基材が前記結合部分を介して前記捕捉部分と結合している、項目A1-1に記載の複合体。
(項目A1-3)
前記結合部分がビオチンである、項目A1-1またはA1-2に記載の複合体。
(項目A1-4)
前記基材がストレプトアビジンを含む、項目A1-2~A1-3のいずれかに記載の複合体。
(項目A1-5)
メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのものである、項目A1-1~A1-4のいずれかに記載の複合体。
(項目A1-6)
前記メチル含有基で修飾された塩基は標的核酸分子の中に存在するものであり、前記ポリヌクレオチドは該標的核酸分子と少なくとも部分的に相補的であり、前記反応性部位は、該標的核酸分子における該メチル含有基で修飾された塩基に対応する位置に存在する、項目A1-1~A1-5のいずれかに記載の複合体。
【0009】
・直接結合タイプ
(項目A2-1)
基材と、該基材に結合された捕捉部分とを含む複合体であって、
該捕捉部分は、標的核酸分子中のメチル含有基で修飾された塩基と特異的に架橋することができる反応性部位およびポリヌクレオチドを含む、複合体。
(項目A2-2)
メチル化核酸を濃縮、精製または分離するための、項目A2-1に記載の複合体。
(項目A2-3)
前記メチル含有基で修飾された塩基は標的核酸分子の中に存在するものであり、前記ポリヌクレオチドは該標的核酸分子と少なくとも部分的に相補的であり、前記反応性部位は、該標的核酸分子における該メチル含有基で修飾された塩基に対応する位置に存在する、項目A2-1またはA2-2に記載の複合体。
(項目A3)
前記反応性部位が、一般式(1)
【化5】

[式(1)中、nは1であり、
は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示し、
Zは、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、及びカルバモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい4,4’-ビピリジン基が、リンカーを介して結合している一般式(2)で表されるプリン塩基
【化6】

式(2)中、Xは、O、NH、CH、又はSを示し、一般式(2)の基は、aの側で一般式(1)中の五単糖と結合し、bの側でリンカーと結合する。]
を示す、
で表される、項目A1-1~A2-3のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A4)
前記ポリヌクレオチドが、前記標的核酸分子に少なくとも部分的に相補的である配列を有する、項目A1-1~A3のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A5)
前記メチル含有基で修飾された塩基が5mCである、項目A1-1~A4のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A6)
前記標的核酸分子がDNAである、項目A1-1~A5のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A7)
前記標的核酸分子が無細胞(cf)DNAである、項目A1-1~A6のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A8)
前記ポリヌクレオチドが、合計で50~100の塩基長を有する、項目A1-1~A7のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A9)
前記結合部分または基材が、前記捕捉部分の3’末端または5’末端に存在する、項目A1-1~A8のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A10)
前記結合部分または基材が、リンカーを介して前記捕捉部分に結合している、項目A1-1~A9のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A11)
前記基材がケイ素保護ジオールで修飾されている、項目A1-2~A10のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A12)
前記基材がガラス製または金属製である、項目A1-2~A11のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A13)
前記基材がビーズ状、板状または棒状である、項目A1-2~A12のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A14)
磁気を帯びている、項目A1-2~A13のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A15)
直径が30~100μmである、項目A1-2~A14のいずれか1項に記載の複合体。
(項目A16)
項目A1-1~A1-6およびA3~A15のいずれか1項に記載の複合体と、
前記結合部分を捕捉することができる担体と
使用説明書と、
を含む、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのキット。
(項目A17)
項目A2-1~A2-2およびA3~A15のいずれか1項に記載の複合体と、
使用説明書と、
を含む、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのキット。
【0010】
B.濃縮方法
(項目B1)
メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するための方法であって、
(A)核酸を含む試料を、項目A1-1~A16のいずれか1項に記載の複合体と混合するステップと、
(B)ステップ(A)で得られた混合物を、前記反応性部位が標的核酸分子中のメチル含有基で修飾された塩基と架橋する条件に供するステップと、
(C)ステップ(B)で得られた架橋物を、二本鎖核酸が脱ハイブリダイズする条件に供するステップと、
を含む、方法。
(項目B2)
ステップ(A)の前に、前記試料を、二本鎖核酸が脱ハイブリダイズする条件に供するステップを含む、項目B1に記載の方法。
(項目B3)
前記二本鎖核酸が脱ハイブリダイズする条件に供するステップが、加熱処理、アルカリ処理、尿素処理、ジメチルスルホキシド処理またはこれらのいずれかの組み合わせの処理を行うことを含む、項目B2に記載の方法。
(項目B4)
ステップ(B)において酸化オスミウムを使用する、項目B1~B3のいずれかに記載の方法。
(項目B5)
前記メチル含有基で修飾された塩基は標的核酸分子の中に存在するものであり、前記ポリヌクレオチドは該標的核酸分子と少なくとも部分的に相補的であり、前記反応性部位は、該標的核酸分子における該メチル含有基で修飾された塩基に対応する位置に存在する、項目B1~B4のいずれかに記載の方法。
(項目B6)
所望の核酸配列上の所望の位置の塩基がメチル含有基で修飾された標的核酸分子を精製するための方法である、項目B1~B5のいずれかに記載の方法。
(項目B7)
ステップ(C)が、加熱処理、アルカリ処理、尿素処理、ジメチルスルホキシド処理またはこれらのいずれかの組み合わせの処理を行うことを含む、項目B1~B6のいずれかに記載の方法。
(項目B8)
ステップ(C)が、ホルムアミド処理と加熱処理との組み合わせの処理を行うことを含む、項目B7に記載の方法。
(項目B9)
変性剤で処理することによって前記捕捉部分とメチル含有基で修飾された塩基との間の架橋を切断するステップをさらに含む、項目B1~B8のいずれかに記載の方法。
(項目B10)
オスミウムを含む廃液を分別するステップをさらに含む、項目B1~B9のいずれか一項に記載の方法。
【0011】
C.濃縮用デバイス
(項目C1)
メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのデバイスであって、
核酸を含む試料を導入するための導入口と、
項目A1-1~A15のいずれか1項に記載の複合体を保持するための保持部と、
該デバイスから流体を排出するための排出口と、
を含む、デバイス。
(項目C2)
前記担体が前記導入口および/または排出口から流出しないように流出防止手段を含む、項目C1に記載のデバイス。
(項目C3)
前記流出防止手段がフィルターである、項目C1またはC2に記載のデバイス。
(項目C4)
前記保持部内の容積が5mL未満である、項目C1~C3のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目C5)
前記メチル含有基で修飾された塩基は標的核酸分子の中に存在するものであり、前記ポリヌクレオチドは該標的核酸分子と少なくとも部分的に相補的であり、前記反応性部位は、該標的核酸分子における該メチル含有基で修飾された塩基に対応する位置に存在する、項目C1~C4のいずれかに記載のデバイス。
(項目C6)
前記デバイスは、所望の核酸配列上の所望の位置の塩基がメチル含有基で修飾された標的核酸分子を精製するものである、項目C1~C5のいずれかに記載のデバイス。
(項目C7)
ポリプロピレン(PP)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成されている、項目C1~C6のいずれかに記載のデバイス。
【0012】
D.濃縮装置
(項目D1)
メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するための装置であって、
項目C1~C7のいずれか1項に記載のデバイスの導入口と流体連通するように接続される導入部と、
該デバイスの排出口と流体連通するように接続される排出部と、
を含む装置。
(項目D2)
試料を保持するための試料保持部をさらに含み、該試料保持部から前記デバイスまでの流路が50μL未満である、項目D1に記載の装置。
(項目D3)
1種類の試料を処理するために消費される反応液が50mL未満である、項目D1またはD2に記載の装置。
(項目D4)
セットされた試料から自動的に前記標的核酸分子を濃縮、精製または分離する、項目D1~D3のいずれか1項に記載の装置。
(項目D5)
前記メチル含有基で修飾された塩基は標的核酸分子の中に存在するものであり、前記ポリヌクレオチドは該標的核酸分子と少なくとも部分的に相補的であり、前記反応性部位は、該標的核酸分子における該メチル含有基で修飾された塩基に対応する位置に存在する、項目D1~D4のいずれかに記載の装置。
(項目D6)
前記デバイスは、所望の核酸配列上の所望の位置の塩基がメチル含有基で修飾された標的核酸分子を精製するものである、項目D1~D5のいずれかに記載の装置。
(項目D7)
項目D1~D6のいずれか1項に記載の装置を制御するためのプログラムであって、反応液の流速、ガス圧および温度のうちの少なくとも1つを制御するように構成されている、プログラム。
【0013】
E.診断方法
(項目E1)
核酸配列のメチル含有基による修飾情報に基づいて対象の状態を分析する方法であって、
所望の核酸配列上の所望の位置がメチル含有基で修飾された標的核酸分子を濃縮、精製または分離するステップと、
精製した標的核酸上のメチル含有基による修飾情報を取得するステップと、
該メチル含有基による修飾情報に基づいて該対象の状態を分析するステップと、
を含む方法。
(項目E2)
前記濃縮、精製または分離するステップにおいて、項目A1~A15のいずれか1項に記載の複合体を使用する、項目E1に記載の方法。
(項目E3)
前記状態が、がんの状態である、項目E1またはE2に記載の方法。
【0014】
F.診断システム
(項目F1)
核酸配列のメチル含有基による修飾情報に基づいて対象の状態を分析するためのシステムであって、
所望の核酸配列上の所望の位置がメチル含有基で修飾された標的核酸分子を濃縮、精製または分離する濃縮、精製または分離部と、
濃縮、精製または分離した標的核酸分子を測定する測定部と、
該測定によって得られたメチル含有基による修飾情報に基づいて該対象の状態を分析する分析部と、
を含むシステム。
(項目F2)
前記濃縮、精製または分離部が、項目D1~D7のいずれか1項に記載に記載の装置を含む、項目F1に記載の方法。
(項目F3)
前記測定部が、PCRを実施する装置、核酸シークエンシング装置および蛍光検出器のうちの少なくとも1つを含む、項目F1またはF2に記載の方法。
【0015】
G.コレクター
(項目G1)
メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するための装置であって、
洗浄液を流す流路(A)と、
メチル含有基で修飾された塩基と特異的に架橋することができる反応性部位およびポリヌクレオチドを含む捕捉部分と、結合部分とを含む、複合体を流す流路(B)と、
核酸を含む試料を流す流路(C)と、
該標的核酸分子と、該反応性部位とを架橋させるための薬剤を流す流路(D)と、
核酸を脱ハイブリダイズするための流体を流す流路(E)と、
流路(A)、流路(B)、流路(C)、流路(D)および流路(E)から流出した流体が流入可能な流路(F)と、
廃液を流す流路(G)と、
項目C1~C7のいずれか1項に記載のデバイスを設置するための設置部と、
を備え、
ここで、流路(F)は該デバイスと流体連通するように連結可能であるように構成され、
流路(G)は該デバイスと流体連通するように連結可能であるように構成され、
流路(G)は少なくとも2種類の切り替え可能な流路から構成される、
装置。
(項目G2)
流路(D)に流す前記薬剤が酸化オスミウムを含む、項目G1に記載の装置。
(項目G3)
さらにヒーターを備える、項目G1またはG2に記載の装置。
(項目G4)
さらに制御部を備える、項目G1~G3のいずれか一項に記載の装置。
(項目G5)
項目C1~C7のいずれか1項に記載のデバイスが前記設置部に設置された、項目G1~G4のいずれか一項に記載の装置。
【0016】
H.プログラム
(項目H1)
項目G1~G5のいずれかに記載の装置を動作させるためのプログラムであって、
流路(B)から流出した流体が流路(F)に流入するようにバルブを切り替えるステップと、
流路(C)から流出した流体が流路(F)に流入するようにバルブを切り替えるステップと、
流路(D)から流出した流体が流路(F)に流入するようにバルブを切り替えるステップと、
流路(E)から流出した流体が流路(F)に流入するようにバルブを切り替えるステップと、
流路(D)に流す薬剤を廃液に流す場合に、流路(G)の少なくとも2種類の切り替え可能な流路を切り替えるステップと
を実行するように構成されている、プログラム。
(項目H2)
流路(D)に前記薬剤を流すステップが、流路(D)および前記デバイスのうちの少なくとも1つの温度を調節することを含む、項目H1に記載のプログラム。
(項目H3)
項目G1~G5のいずれかに記載の装置を動作させるためのプログラムであって、
1つの試料に対して使用される酸化オスミウムの合計量が、約5μmol未満となるように構成されている、プログラム。
(項目H4)
項目G1~G5のいずれかに記載の装置を動作させるためのプログラムであって、
1つの試料を処理した場合に生じる酸化オスミウム含有廃液の量が、5mL未満となるように構成されている、プログラム。
【0017】
本発明において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、メチル含有基修飾核酸を、従来とは異なる方法、また従来より簡便で再現性良く環境負荷の少ない方法で精製、分離または濃縮し、生物学的対象の特徴を分析し、予測することができる。また、本発明は、これら精製、分離または濃縮を自動化する技術を提供し、診断分野等で精確、迅速かつ簡便な手法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の修飾核酸特異的精製法の概略を示す図である。
図2】本発明のプローブとメチル化核酸との特異的反応を示す図である。
図3】システムの構成の概略図である。
図4】本発明のプローブがメチル化特異的に核酸を検出可能であることを示す蛍光顕微鏡観察像である。上段は、メチル化DNAの変性(脱ハイブリダイゼーション)操作後を示し、中段は、メチル化DNAの溶出操作後を示し、下段は、非メチル化DNAの変性(脱ハイブリダイゼーション)操作後を示す。酸化オスミウムによる架橋処理の時間について、左は5分間、中央は10分間、右は20分間の処理を示す。スケールバーは100μmを表す。
図5】本発明のプローブが配列特異的かつ修飾特異的に核酸を検出可能であることを示す蛍光顕微鏡観察像である。左から、(i)非メチル化標的DNAに対して相補的なICONプローブを使用した場合、(ii)メチル化標的DNAに対して相補的なICONプローブを使用した場合、(iii)メチル化標的DNAに対して非相補的なICONプローブを使用した場合、(iv)メチル化標的DNAに対して非相補的なICONプローブを使用した別の場合、を示す。スケールバーは100μmを表す。
図6】本発明のプローブが室温でメチル化特異的に核酸を検出可能であることを示す蛍光顕微鏡観察像である。上段は、メチル化DNAの変性(脱ハイブリダイゼーション)操作後を示し、中段は、メチル化DNAの溶出操作後を示し、下段は、非メチル化DNAの変性(脱ハイブリダイゼーション)操作後を示す。上段および中段では、酸化オスミウムによる架橋処理の時間について、左から、0℃で5分間の処理、0℃で20分間の処理、室温で5分間の処理、室温で20分間の処理を示す。下段では、酸化オスミウムによる架橋処理の時間について、左から、室温で5分間の処理、室温で10分間の処理、室温で20分間の処理、室温で40分間の処理を示す。スケールバーは100μmを表す。
図7】本発明のプローブが血漿試料から配列特異的かつ修飾特異的に核酸を検出可能であることを示す蛍光顕微鏡観察像である。上段は、ハイブリダイゼーション操作後を示し、下段は非メチル化DNAの変性(脱ハイブリダイゼーション)操作後を示す。左は、メチル化DNAを含む試料であり、右は、非メチル化DNAを含む試料である。スケールバーは100μmを表す。
図8】本発明のプローブにより標的核酸を濃縮した場合に核酸の増幅が少ないサイクルで達成されることを示す図である。横軸は反応サイクル数、縦軸は増幅量を示し、少ないサイクル数で増幅が始まれば(すなわち、S字カーブが左側に出るほど)、反応溶液中に目的のDNAが多く含まれていることを示す。オスミウム反応によりビーズに捕捉されたメチル化DNAは、捕捉されない非メチル化DNAと比較してPCR反応の進行が速く、左側にS字カーブが現れた。
図9】本発明のプローブが肝臓がんの予測に有用であり得ることを示す図である。リアルタイムPCRを使用して、肝臓がん患者または健常者から採取した血液を用いてメチル化DNAを測定した。それぞれ、ICON1は配列番号24、ICON2は配列番号25、ICON3は配列番号26のプローブであった。捕捉DNA量が多いほど赤、黄となり、対照試料と比べて変化が無ければ緑となるように色を示している。
図10】反応容器の例の模式図(左)および写真(右)例を示す。
図11】修飾核酸の自動濃縮装置の例を示す写真である。反応容器が1つ接続されている。本体の寸法は、高さ540mm、幅300mm、奥行410mmである。ヒーター部(手前)の寸法は、高さ112mm、幅186mm、奥行185mmである。
図12】修飾核酸の自動濃縮装置への反応容器の取り付けの例を示す図である。バネによる固定を示している。
図13】修飾核酸の自動濃縮装置への反応容器の取り付けの例を示す図である。4つの反応容器の取り付けを示す。
図14】修飾核酸の自動濃縮装置への反応容器の取り付けの例を示す図である。反応容器をヒーター内に設置する構成を示している。
図15】修飾核酸の自動濃縮装置への反応容器の取り付けの例を示す写真である。
図16】修飾核酸の自動濃縮装置への反応容器の取り付けの例を示す写真である。反応に使用される各試薬を含むビンが接続されている。
図17】修飾核酸の自動濃縮装置に接続した反応容器をヒーター内に設置した状態を示す写真である。蓋は空いている。
図18】修飾核酸の自動濃縮装置に接続した反応容器をヒーター内に設置した状態を示す写真である。蓋は閉じている。
図19】修飾核酸の自動濃縮装置の配管の例を示す図である。ガス圧により送液が制御される例である。反応容器が4つ接続されている状態を示す。廃液の流路は2つに分岐しており、流路の切り替えにより、酸化オスミウムの廃液を他の廃液と分別可能である。UV検出器により核酸をモニターすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0021】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0022】
(定義等)
本明細書において「核酸」または「核酸分子」は、塩基、糖およびリン酸から構成されるヌクレオチドが複数結合(代表的にはホスホジエステル結合)して連なった高分子をいう。天然に存在するDNA、RNAのほか、これらの修飾体(例えば、BNA(Bridged Nucleic Acid)、LNA(Locked Nucleic Acid)、2’-O-メチルRNAやPNA(peptide nucleic acid)等の天然に存在しない核酸等)ならびにこれらの組合せを含む。ヌクレオチド間の結合はホスホジエステル結合が代表的であるが、ホスホロチオエート結合、モルホリノ結合、などの非天然型の結合も含み得る。
【0023】
本明細書において、「デオキシリボ核酸(DNA)」は少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。
【0024】
本明細書において、「リボ核酸(RNA)」は少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」とは、β-D-リボ-フラノース部分の2’位においてヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。
【0025】
本明細書において、「cfDNA」とは、「cell free DNA」の略称で、本明細書では特に血中遊離DNAを指し、血漿中に見出され得るDNAを意味し、がん組織表面でアポトーシスを起こし、遊離したヌクレオソームが血管中に漏れ出したDNAフラグメントであり得る。
【0026】
本明細書において、核酸の文脈において使用される「修飾」とは、核酸の構成単位またはその末端の一部または全部が他の原子団と置換されること、または官能基が付加されている状態を指す。そのような「修飾」が含まれるものを(DNA、RNA、核酸またはヌクレオチドなどの)「修飾体」という。ヌクレオチドの修飾体としては、メチル化が可能なものはすべて列挙することができ、例えば、BNA(Bridged Nucleic Acid)、LNA(Locked Nucleic Acid)等を挙げることができ、このような人工核酸などの修飾体についてはWengel et al.,Eur.J.Org.Chem.2297-2321(2005)を参照されたい。この文献は、本明細書において参考として援用される。
【0027】
本明細書において、核酸の文脈において使用される「メチル含有基」とは、メチル部分を含む基を指すが、代表的には、メチル基およびヒドロキシメチル基が含まれる。
【0028】
本明細書において、核酸の文脈において使用される「メチル化」とは、任意の種類のヌクレオチドの任意の位置のメチル化を指すが、代表的には、シトシンのメチル化(例えば、5位;5mC)である。
【0029】
本明細書において、核酸の文脈において使用される「ヒドロキシメチル化」とは、任意の種類のヌクレオチドの任意の位置のヒドロキシメチル化を指すが、代表的には、シトシンのヒドロキシメチル化(例えば、5位;5hmC)である。
【0030】
本明細書において、「捕捉部分」とは、標的核酸分子を捕捉し得る能力を有する部分であり、代表的には、メチル含有基で修飾された塩基と特異的に架橋することができる反応性部位およびポリヌクレオチドを含む。このような捕捉部分としては、例えば、本発明のICONプローブ等の捕捉プローブまたはそれを含む部分であり得る。
【0031】
本明細書において、「結合部分」とは、本発明の複合体についていう場合、他の分子または部分と結合可能な部分をいい、代表的には、相互に結合可能なペア分子(例えば、ビオチンおよびストレプトアビジン、抗体および抗体が認識するタンパク質、クリックケミストリーにおけるアルキン部分およびアジド部分など)の一方、物理化学的相互作用をするペア(例えば、+の磁性を帯びた物質および-の磁性を帯びた物質など)の一方などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書では、結合部分は、捕捉部分と直接または間接に結合され得、その場合リンカーが介在してもよい。このようなリンカーとして、任意のものを使用することができるが、本発明で用いられる捕捉プローブの脱保護条件(例えば、アンモニア水溶液中、50℃、1時間)に耐えることができる、および/または直交性反応剤(例えば、フッ素イオンおよび還元剤)で切断可能である(例えば、メトキシシラニルおよびジスルフィド)リンカーが通常使用され得る。
【0032】
本明細書において、「反応性部位」とは、メチル含有基で修飾された塩基と特異的に架橋することができる部位をいい、代表的には、本明細書に記載される式(I)などに代表されるICONプローブの一部(反応性を担う部分)であり得る。反応性部位は、ポリヌクレオチドと共に使用され得、直接または間接に結合されていてもよい。
【0033】
本明細書において、「測定」とは、当該分野において使用される通常の意味で用いられ、ある対象について、量がどれほどか測って求めることをいう。本明細書において「検出」とは、当該分野において使用される通常の意味で用いられ、物質や成分等を検査して見つけだすことをいい、「同定」とは、ある対象について、そのものにかかわる既存の分類のなかからそれの帰属先をさがす行為をいい、化学分野において使用される場合、対象となる物質の化学物質としての同一性を決定する(例えば、化学構造を決定する)ことをいい、「定量」とは、対象となる物質の存在する量を決定することをいう。
【0034】
本明細書で使用されるとき、試料中の分析物の「量」は、一般には、試料の体積中で検出し得る分析物の質量を反映する絶対値を指す。しかし、量は、別の分析物量と比較した相対量も企図する。例えば、試料中の分析物の量は、試料中に通常存在する分析物の対照レベルまたは正常レベルより大きい量であってもよい。
【0035】
用語「約」は、イオンの質量の測定を含まない定量的測定に関連して本明細書で使用されるとき、示された値プラスまたはマイナス10%を指す。なお、「約」と明示的に示されない場合でも「約」があると同義で解釈されうる。質量分析機器は、所与の分析物の質量の決定においてわずかに異なり得る。イオンの質量またはイオンの質量/電荷比との関連において用語「約」は、+/-0.5原子質量単位を指す。
【0036】
本明細書において「対象」とは、本発明の分析、診断または検出等の対象となる対象(例えば、食品、微生物、ヒト等の生物または生物から取り出した細胞、血液、血清等)をいう。
【0037】
本明細書において使用され得る「器官」とは「臓器」とも称し、生物のうち、動物や植物などの多細胞生物の体を構成する単位で、形態的に周囲と区別され、それ全体としてひとまとまりの機能を担うもののことをいう。例えば、代表的には、肝臓、脾臓およびリンパ節が挙げられ、このほか、腎臓、肺、副腎、膵臓、心臓等の他の臓器などを挙げることができるがそれらに限定されない。
【0038】
本明細書において「バイオマーカー」は、ある対象の状態または作用の評価の指標となるものである。本明細書において特に断らない限り、「バイオマーカー」は「マーカー」と称することがある。
【0039】
本発明の検出剤または検出手段は、検出可能とする部分(例えば、抗体等)に他の物質(例えば、標識等)を結合させた複合体または複合分子であってもよい。本明細書において使用される場合、「複合体」または「複合分子」とは、2以上の部分を含む任意の構成体を意味する。複合体としては例えば、標的核酸分子中のメチル含有基で修飾された塩基と特異的に架橋することができる反応性部位およびポリヌクレオチドを含む捕捉部分と、結合部分とを含むものや、基材と、該基材に結合された捕捉部分とを含むものであってもよい。あるいは、例えば、一方の部分がポリヌクレオチドである場合は、他方の部分は、ポリヌクレオチドであってもよく、それ以外の物質(例えば、基材、糖、脂質、核酸、他の炭化水素等)であってもよい。本明細書において複合体を構成する2以上の部分は、共有結合で結合されていてもよく、それ以外の結合(例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力等)で結合されていてもよい。従って、本明細書において「複合体」は、ICONプローブ等の捕捉分子(または捕捉部分)、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子を含む。複合体は、磁気を帯びていてもよい。
【0040】
本明細書において「基材」とは、本発明の複合体等において、所望の物質(例えば、オリゴヌクレオチドや捕捉プローブ)が係留され得る任意の固体表面または半固体表面をいい、代表的には所望の物質を物理的に安定させるための足場として使用し得るものをいう。基材としては、所望の物質を固定しそして取り囲み得る任意の材料、例えば、ガラス、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニルを含むプラスチック(例えば、シート(板状)またはマイクロタイターウェル)、ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレート)、ポリフッ化ビニリデン(例えば、マイクロタイタープレート)、ポリスチレン(例えば、ビーズ)、金属、ポリマーゲルなどが挙げられる。基材はどのような形状であってもよく、例えば、ビーズ状、板状、棒状等を挙げることができる。
【0041】
本明細書においてポリヌクレオチド発現の「検出」または「定量」は、例えば、マーカー検出剤への結合または相互作用を含む、DNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得るが、PCR産物の量をもって測定することができる。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、発光イムノアッセイ(LIA)、免疫沈降法(IP)、免疫拡散法(SRID)、免疫比濁法(TIA)、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子分析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526-32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT-PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two-hybridシステム、in vitro翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム分析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
【0042】
本明細書において「手段」とは、ある目的(例えば、検出、診断、治療)を達成する任意の道具となり得るものをいい、特に、本明細書では、「選択的に認識(検出)する手段」とは、ある対象を他のものとは異なって認識(検出)することができる手段をいう。
【0043】
本明細書において「(核酸)プライマー」とは、高分子合成酵素反応において、合成される高分子化合物の反応の開始に必要な物質をいう。核酸分子の合成反応では、合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子(例えば、DNAまたはRNAなど)が用いられ得る。
【0044】
通常プライマーとして用いられる核酸分子としては、目的とするポリヌクレオチドの核酸配列と相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましくは少なくとも10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは少なくとも11の連続するヌクレオチド長の、少なくとも12の連続するヌクレオチド長の、少なくとも13の連続するヌクレオチド長の、少なくとも14の連続するヌクレオチド長の、少なくとも15の連続するヌクレオチド長の、少なくとも16の連続するヌクレオチド長の、少なくとも17の連続するヌクレオチド長の、少なくとも18の連続するヌクレオチド長の、少なくとも19の連続するヌクレオチド長の、少なくとも20の連続するヌクレオチド長の、少なくとも25の連続するヌクレオチド長の、少なくとも30の連続するヌクレオチド長の、少なくとも40の連続するヌクレオチド長の、少なくとも50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プライマーとして適切な配列は、合成(増幅)が意図される配列の性質によって変動し得るが、当業者は、意図される配列に応じて適宜プライマーを設計することができる。そのようなプライマーの設計は当該分野において周知であり、手動でおこなってもよくコンピュータプログラム(例えば、LASERGENE、PrimerSelect、DNAStar)を用いて行ってもよい。
【0045】
本明細書において「プローブ」とは、インビトロおよび/またはインビボなどのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索、検出または捕捉の手段となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子もしくはその誘導体または特定のアミノ酸配列を含むペプチドもしくはその誘導体、特異的抗体またはそのフラグメントなどが挙げられるがそれに限定されない。本明細書においてプローブは、主として対象となる物質等の捕捉のための手段として使用され得る。本明細書において「ICONプローブ」(interstrand complexation with osmium for nucleic acids:ICON)とは、酸化オスミウムと反応させることにより標的核酸と架橋することができるプローブを指し、代表的には、本発明の組成物を含む。本明細書では、単に「プローブ」という場合、特に注釈のない場合は対象物質の精製、分離または濃縮のための「捕捉ブローブ」を意味することが理解される。
【0046】
本明細書において「標識」とは、目的となる分子または物質を他から識別するための存在(例えば、物質、エネルギー、電磁波など)をいう。そのような標識方法としては、RI(ラジオアイソトープ)法、安定同位体標識法、蛍光法、ビオチン法、ラマン散乱を利用した光学手法、化学発光法等を挙げることができる。複数の本発明のプローブまたはそれを捕捉する因子または手段を蛍光法によって標識する場合には、蛍光発光極大波長が互いに異なる蛍光物質によって標識を行う。複数の本発明のプローブまたはそれを捕捉する因子または手段をラマン散乱を利用した光学手法によって標識する場合には、ラマン散乱が互いに異なる物質によって標識を行う。本発明では、このような標識を利用して、使用される検出手段に検出され得るように目的とする対象を改変することができる。そのような改変は、当該分野において公知であり、当業者は標識におよび目的とする対象に応じて適宜そのような方法を実施することができる。
【0047】
本明細書において「精製された」物質または生物学的因子(例えば、遺伝子マーカー等の核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。従って、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。本明細書において「単離」されたとは、天然に存在する状態で付随する任意のものを少なくとも1つ除去したものをいい、例えば、全DNAから特定のメチル化DNAを取り出した場合も単離といいうる。一つの実施形態では、目的の配列(単一の種類または複数の種類)を有する核酸を他の成分から精製してもよい。一つの実施形態では、複数種類の目的の配列を有する核酸を配列毎に別々に精製してもよい。一つの実施形態では、修飾(単一の種類または複数の種類)を有する核酸を他の成分から精製してもよい。一つの実施形態では、メチル含有基による修飾を有する核酸を他の成分から精製してもよい。一つの実施形態では、目的の配列(単一の種類または複数の種類)を有し、かつ目的の位置にメチル含有基による修飾(単一の種類または複数の種類)を有する核酸を他の成分から精製してもよい。
【0048】
本明細書において「診断」とは、被験体における状態(例えば、疾患、障害)などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような状態の現状または未来を判定することをいう。本発明の方法、装置、システムを用いることによって、体内の状態を調べることができ、そのような情報を用いて、被験体における状態、投与すべき処置または予防のための処方物または方法などの種々のパラメータを選定することができる。本明細書において、狭義には、「診断」は、現状を診断することをいうが、広義には「早期診断」、「予測診断」、「事前診断」等を含む。本発明の診断方法は、原則として、身体から出たものを利用することができ、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができることから、産業上有用である。本明細書において、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができることを明確にするために、特に「予測診断、事前診断もしくは診断」を「支援」すると称することがある。本発明の技術は、このような診断技術に応用可能である。食品などに対して使用する場合は「判定」ということがあり、「判定」は、被験体における状態(例えば、鮮度等)などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような状態の現状または未来を判定することをいう。
【0049】
本明細書において「治療」とは、ある状態(例えば、疾患または障害)について、そのような状態になった場合に、そのような状態の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消退させることをいい、患者の状態、もしくは状態に伴う1つ以上の症状の、症状改善効果あるいは予防効果を発揮しうることを含む。事前に診断を行って適切な治療を行うことは「コンパニオン治療」といい、そのための診断薬を「コンパニオン診断薬」ということがある。本発明の技術を用いて核酸の修飾を特定できると、特定の状態と関連づけられ得ることから、このようなコンパニオン治療またはコンパニオン診断において有用であり得る。
【0050】
本明細書において「予後」という用語は、がん等の疾患または障害などに起因する死亡または進行が起こる可能性を予測することを意味する。予後因子とは疾患または障害の自然経過に関する変数のことであり、これらは、いったん疾患または障害を発症した患者の再発率等に影響を及ぼす。予後の悪化に関連した臨床的指標には、例えば、本発明で使用される任意の細胞指標が含まれる。予後因子は、しばしば、患者を異なった病態をもつサブグループに分類するために用いられる。本発明の技術を用いて核酸の修飾を特定できると、特定の疾患状態と関連づけられ得ることから予後因子を提供する技術として有用であり得る。
【0051】
本明細書において「検出機器(機)(器)」とは、広義には、目的の対象を検出または検査することができるあらゆる機器をいう。本明細書において「診断薬」とは、広義には、目的の状態(例えば、がんなど)を診断できるあらゆる薬剤をいう。
【0052】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬、試薬、標識、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬、試薬、標識などをどのように使用するか、あるいは、どのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、検査薬、診断薬、治療薬、試薬、標識等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。検査機器、診断機器等を組み合わせる場合は、「キット」は「システム」として提供され得る。
【0053】
本明細書において「指示書」は、医師または他の使用者に対して本発明を使用する方法の説明を記載したものである。この指示書は、本発明の検出方法、診断薬の使い方、または医薬などを投与することを指示する文言が記載されている。また、指示書には、投与部位として、経口、食道への投与(例えば、注射などによる)することを指示する文言が記載されていてもよい。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
【0054】
本明細書において「プログラム」は、当該分野で使用される通常の意味で用いられ、コンピュータが行うべき処理を順序立てて記述したものであり、法律上「物」として扱われるものである。すべてのコンピュータはプログラムに従って動作している。現代のコンピュータではプログラムはデータとして表現され、記録媒体または記憶装置に格納される。
【0055】
本明細書において「記録媒体」は、本発明を実行させるプログラムを格納した記録媒体であり、記録媒体は、プログラムを記録できる限り、どのようなものであってもよい。例えば、内部に格納され得るROMやHDD、磁気ディスク、USBメモリ等のフラッシュメモリなどの外部記憶装置でありうるがこれらに限定されない。
【0056】
本明細書において「システム」とは、本発明の方法またはプログラムを実行する構成をいい、本来的には、目的を遂行するための体系や組織を意味し、複数の要素が体系的に構成され、相互に影響するものであり、コンピュータの分野では、ハードウェア、ソフトウェア、OS、ネットワークなどの、全体の構成をいう。
【0057】
(本発明の方法の概略)
本発明は、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子の精製、分離または濃縮のための方法を提供する。図1は、この方法の一例を概略的に示す。本発明の方法を実施するための具体的手順を以下で説明する。
【0058】
おおよその手順は以下のとおりである。
・まず、ICONプローブ(捕捉プローブ)を含むビーズなどの担体を準備する(図1では、例示的に、いったん担体に別の標識を行いその標識にICONプローブを結合させているが、直接担体に結合して生成してもよい。
・次に、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を含むと思われる試料をこの担体に接触させ、ハイブリダイズが生じる状態に配置する。
・その後、酸化剤を加え架橋反応を生じさせる。
・その後、混合物を変性条件(ダツハイブリダイズ条件)に供し、非メチル化(非架橋形成)DNAが遊離する。その後、精製、分離または濃縮をおこなう(図ではExtraction(抽出)とあるが、これは同じ意味である)。その後、必要に応じて定量的分析を行う。
【0059】
本明細書では、以下、各々のステップについて重要な点を説明する。以下の例は、あくまでも例示であり本発明者らは、目的に応じて適宜改変することができることができることが理解される。
【0060】
(試料)
本発明の方法は、核酸を含む任意の試料を使用して実施することができるが、医学的情報を対象とする場合は臨床的に入手しやすいものが好ましいが本発明はこれに限定されるものではない。一つの実施形態では、試料は、対象に由来し、ここで、対象としては、哺乳動物(例えば、ヒト、チンパンジー、サル、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ウマ、ブタ、ネコなど)、微生物(例えば、病原菌、大腸菌などの細菌、寄生虫、真菌、ウイルスなど)、食用生物(鳥類、魚類、爬虫類、菌類、植物など)、鑑賞・愛玩生物、環境指標生物、が挙げられるがこれらに限定されない。一つの実施形態では、試料は、特定の状態であるか、または特定の状態である可能性のある対象に由来する。一つの実施形態では、特定の状態として、疾患、年齢、性別、人種、家系、病歴、治療歴、喫煙状態、飲酒状態、職業、生活環境情報などが挙げられるがこれらに限定されない。一つの実施形態では、試料は、対象から得られた器官、組織、細胞、血液(例えば、血漿、血清など)、粘膜表皮(例えば、口腔、鼻腔、耳腔、膣などにおけるもの)、皮膚表皮、生体分泌液(例えば、唾液、鼻水、汗、涙、尿、胆汁、痰、精液など)、髪またはその部分である。一つの実施形態では、試料は、培養した器官、組織または細胞である。一つの実施形態では、試料は、食品またはその部分である。
【0061】
(捕捉プローブの構造)
・反応性部位
一つの実施形態では、本発明のプローブ(捕捉プローブ)は、一般式(1)
【化7】

で表される反応性部位を含み、
式(1)中、
は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示し、
Zは、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、およびカルバモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい4,4’-ビピリジン基が、リンカーを介して結合している核酸塩基を示す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。R1は、好ましくは水素原子である。このような化合物は、例えば、Tanaka et.al.,J Am Chem Soc. 2007 Nov 21;129(46):14511-7.Epub 2007 Oct 27を参照することで当業者であれば容易に合成することができる。
【0062】
本発明において使用され得る核酸塩基として、プリン塩基、7-デアザプリン塩基、及びピリミジン塩基が挙げられる。一つの実施形態では、核酸塩基は、一般式(2)で表されるプリン塩基
【化8】

[式(2)中、Xは、O、NH、CH、またはSを示し、aの側で一般式(1)中の五単糖と結合し、bの側でリンカーと結合する。]
である。
【0063】
一つの実施形態では、核酸塩基は、一般式(3)で表される7-デアザプリン塩基
【化9】

[式(3)中、Xは、O、NH、CH、またはSを示し、aの側で一般式(1)中の五単糖と結合し、bの側でリンカーと結合する。]
である。
【0064】
一つの実施形態では、核酸塩基は、一般式(4)または(4’)で表されるピリミジン塩基
【化10】

[式(4)または(4’)中、Xは、O、NH、CH、またはSを示し、aの側で一般式(1)中の五単糖と結合し、bの側でリンカーと結合する。]
である。
【0065】
式(1)中のZにおいて、置換または非置換の4,4’-ビピリジン基と核酸塩基とを連結させるリンカーとしては、下記の構造のリンカーが挙げられるがこれに限定されない。
-(CHm1-NH-CO-(CHm2
[式中、m1およびm2は、それぞれ、1~20の整数、好ましくは1~5の整数であり、同一であっても、異なっていてもよい]
-(O-CH-CH-O-
[式中、lは1~100の整数、好ましくは1~10の整数である]
-(CH
[kは1~20の整数、好ましくは1~10の整数である]
【0066】
特に、-(CHm1-NH-CO-(CHm2-のリンカーが好ましい。一つの実施形態では、リンカーは、左側の結合部位に核酸塩基が結合し、右側の結合部位に置換または非置換の4,4’-ビピリジン基が結合するように構成され得るが、核酸塩基および4,4’-ビピリジン基の位置は逆でもよい。
【0067】
炭素数1~10のアルキル基としては、好ましくは炭素数1~5のアルキル基、更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基が挙げられ、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
置換または非置換の4,4’-ビピリジン基として、下記一般式(5)または(5’)の基
【化11】

[式中、R11~R17およびR21~R22は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、またはカルバモイル基を示す。cの側が前記リンカーと結合する部位である。]
が挙げられる。
【0069】
好ましくは、置換または非置換の4,4’-ビピリジン基は、一般式(5)の基であり、より好ましくは、R11~R16が水素原子であり、R17が炭素数1~10のアルキル基(好ましくはメチル基)である。
【0070】
式(1)中のZの好適な一例として、1つのメチル基で置換されている4,4’-ビピリジン基が、-(CHm1-NH-CO-(CHm2-(m1及びm2は前記と同じ)のリンカーを介して結合しているプリン塩基が挙げられる。より好適なZの具体例として、下記の一般式(Za)で表される基が挙げられる。
【化12】
【0071】
一般式(1)で表される反応性部位は、当業者であれば、化学合成により容易に製造できる。一般式(1)で表される反応性部位の合成方法として、下記一般式(11)で表される基と、置換または非置換の4,4’-ビピリジンとを、リンカーにより連結させる方法が挙げられる。
【化13】

[式中、Rは前記と同じであり、Z’は核酸塩基を示す。]
【0072】
一般式(11)で表されるヌクレオシド又はヌクレオチド、および前述の置換または非置換の4,4’-ビピリジンは、当業者であれば公知化合物から容易に誘導することができる。また、当業者であれば、一般式(11)で表されるヌクレオシドまたはヌクレオチド、あるいは前述の置換または非置換の4,4’-ビピリジンと、リンカーとを連結させるために、使用するリンカーの種類に応じて適宜反応条件を設定することができる。
【0073】
・ポリヌクレオチド部分
一つの実施形態では、本願発明の捕捉プローブは、ポリヌクレオチドをさらに含む。このプローブのポリヌクレオチドは、当該ヌクレオチドおよび/または他のヌクレオチドを原料として用いて、所定の塩基配列となるように制御しながら、公知のDNA合成法に従って調製できる。また、前記反応性部位とポリヌクレオチドとを含むプローブの合成については、Tanaka et.al.,J Am Chem Soc. 2007 Nov 21;129(46):14511-7.Epub 2007 Oct 27などの文献を参照することで当業者であれば容易に実施することができる。
【0074】
核酸試料中の目的塩基に特異的な反応を誘導するためには、酸化剤などの試薬または反応性の部位が目的塩基に接近する必要がある。DNAにおいては、通常、各ヌクレオチドは2本鎖DNAのらせん構造中に埋没していて、酸化剤などの試薬または反応性の部位が接近することが困難であり得る。
【0075】
そのため、本発明では、一つの実施形態において、修飾の有無を判定しようとする目的塩基のみ相補的塩基対を形成せず、その塩基を有するヌクレオチドが外部に飛び出した2本鎖核酸を形成させてもよい。一つの実施形態では、プローブのポリヌクレオチドは、修飾の有無を判定しようとする目的塩基を除く標的核酸分子の塩基配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であり得る。
【0076】
標的核酸分子は、任意の種類の核酸でよく、例えば、DNA(例えば、血中遊離DNA)、RNA、人工核酸(例えば、ロックド核酸)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
なお、メチル含有基により修飾されたシトシンの他にチミンもピリミジン環の5位炭素にメチル基を有するため酸化され得る。そのため、チミンの誤検出を避けるために、一つの実施形態では、本発明の組成物または本発明で用いられる捕捉プローブは、標的核酸分子のチミンと塩基対を形成するような塩基配列を含み得る。目的塩基に隣接してチミンが存在する場合に酸化チミンが生成される可能性が高いため、プローブは、目的核酸に隣接するチミンと塩基対を形成するような塩基配列を含むように設計することが好ましい。
【0078】
一つの実施形態では、プローブは、約10~1000塩基を含むことができ、好ましくは、約20~100塩基または約50~100塩基、より好ましくは約40~80塩基を含むことができる。プローブは、標的核酸分子と2本鎖を安定に形成でき、核酸自動合成機で合成することができる。プローブとの2本鎖形成領域に対してPCRなどの核酸増幅を行うために、プローブをPCRプライマーが結合できるような数の塩基を含むように設計してもよい。
【0079】
一つの実施形態では、プローブの反応性部位は、プローブのポリヌクレオチド配列中で、標的核酸分子におけるメチル含有基で修飾された塩基に対応する位置から5塩基以内、4塩基以内、3塩基以内、2塩基以内、1塩基以内に存在してよく、好ましくは対応する位置に存在する。本明細書において、ある配列のある塩基に「対応する位置」に別の配列上の特定の部分が存在するというとき、この配列と相補的な配列をこの別の配列とアラインメントした場合に、この塩基と相補的な塩基に一致する位置にこの特定の部分が存在することを指す。
【0080】
反応性部位をプローブ上のどの位置に導入するかは特に限定されないが、好ましくは、プローブの塩基配列の中央付近であり、例えば、本発明の組成物に含まれる全塩基配列または本発明で用いられる捕捉プローブの全塩基配列のうち3’末端から10~90%の範囲、30~70%の範囲、または40~60%の範囲内の位置であり得る。
【0081】
一つの実施形態では、本発明の組成物または本発明で用いられる捕捉プローブのポリヌクレオチドは、DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA)、修飾核酸またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。細胞抽出物のように核酸試料がヌクレアーゼを含み得る場合は、プローブのポリヌクレオチドを修飾することによりヌクレアーゼによる分解が低減され得る。このような修飾としては、ホスホロチオエート修飾、モルホリノ修飾、2'-O-アルキル化、2'-N-アルキル化、2'-S-アルキル化、2'-ハロゲン化などが挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施形態では、ハイブリダイゼーションを安定化するため、プローブの塩基配列中に2-アミノアデニン、5-アルキニルウリジンのような修飾塩基を有するヌクレオチドを配置してもよいし、プローブの末端または内部にアミン、ポリアミン等の修飾を導入してもよいし、プローブの末端にジデオキシヌクレオチドを付加してもよい。
【0082】
一つの実施形態では、本発明の組成物または本発明で用いられる捕捉プローブは、結合部分を含む複合体であってもよい。結合部分として、相互に結合可能なペア分子(例えば、ビオチンおよびストレプトアビジン、抗体および抗体が認識するタンパク質、クリックケミストリーにおけるアルキン部分およびアジド部分など)の一方、物理化学的相互作用をするペア(例えば、+の磁性を帯びた物質および-の磁性を帯びた物質など)の一方などが挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施形態では、本発明で用いられる捕捉プローブと、結合部分との間にはリンカーが存在してもよい。このようなリンカーとして、任意の好適なものを使用することができるが、本発明で用いられる捕捉プローブの脱保護条件(例えば、アンモニア水溶液中、50℃、1時間)に耐えることができる、および/または直交性反応剤(例えば、フッ素イオンおよび還元剤)で切断可能である(例えば、メトキシシラニルおよびジスルフィド)リンカーが好ましい。プローブは、その3’末端で結合部分に結合していてもよいし、5’末端で結合部分に結合していてもよい。
【0083】
一つの実施形態では、本発明の組成物または本発明で用いられる捕捉プローブは、ビーズ状、板状または棒状などの形状の基材に固定されて複合体を形成していてもよい。本発明の組成物または本発明で用いられる捕捉プローブを基材に固定することで、捕捉プローブに結合した核酸に対して順次異なる処理を行うことができ、洗浄を行うことができ、捕捉プローブの再利用が可能となる。このような基材の材料として、例えば、ポリスチレン、金、ガラス、酸化鉄微粒子、量子ドット性を持つ硫化亜鉛微粒子などが挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施形態では、基材は磁気を帯びていてもよい。一つの実施形態では、基材はケイ素保護ジオールで修飾されていてもよいし、ストレプトアビジンなどの結合部分を捕捉する部分で修飾されていてもよい。本発明で用いられる捕捉プローブは、その3’末端で基材に結合していてもよいし、5’末端で基材に結合していてもよい。一つの実施形態では、本発明で用いられる捕捉プローブと、結合部分との間にはリンカーが存在してもよい。このようなリンカーとして、任意の好適なものを使用することができるが、プローブの脱保護条件(例えば、アンモニア水溶液中、50℃、1時間)に耐えることができる、および/または直交性反応剤(例えば、フッ素イオンおよび還元剤)で切断可能である(例えば、メトキシシラニルおよびジスルフィド)リンカーが好ましい。一つの実施形態では、プローブおよび基材を含む複合体の直径は、10~1000μm、20~500μm、20~200μm、または30~100μmであり得る。
【0084】
(メチル化核酸の精製、分離または濃縮のための組成物)
一つの局面では、本発明は、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子の精製、分離または濃縮のための組成物を提供する。一つの実施形態では、組成物はICONプローブ(捕捉プローブ)を含んでいてもよい。一つの実施形態では、本発明の組成物は、
一般式(1)
【化14】


で表される部位を含み、
式(1)中、nは1であり、
は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、又はアミノ基を示し、
Zは、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、及びカルバモイル基よりなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい4,4’-ビピリジン基が、リンカーを介して結合している一般式(2)で表されるプリン塩基
【化15】

[式(2)中、Xは、O、NH、CH、又はSを示し、一般式(2)の基は、aの側で一般式(1)中の五単糖と結合し、bの側でリンカーと結合する。]
を示す。一つの実施形態では、本発明において用いられる組成物は、ポリヌクレオチドを含む。一つの実施形態では、メチル含有基で修飾された塩基は標的核酸分子の中に存在するものであり、ポリヌクレオチドは該標的核酸分子と少なくとも部分的に相補的であり、反応性部位は、該標的核酸分子における該メチル含有基で修飾された塩基に対応する位置に存在する。
【0085】
(メチル化核酸の精製方法)
(事前処理)
一つの実施形態では、核酸を含む試料は、測定の前に物理的、化学的または生物的に事前処理されていてもよい。事前処理を行うことで、例えば、目的の核酸の測定における感度、正確さおよび/または精度の向上、異なる種類の修飾の区別、試料間比較における定量性の向上、測定機器における分離の向上などの効果が得られ得る。このような事前処理として、例えば、安定同位体標識導入処理、検出向上剤(例えば、蛍光色素など)処理が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
複数種類の核酸は、別々に精製してもよいし、並行して精製してもよいし、混合状態で精製してもよい。一つの実施形態では、複数種類の目的の核酸を精製する場合、この目的の核酸のうちの少なくとも2種類が混合された状態で精製してもよいし、各目的の核酸が別々に精製されてもよい。例えば、複数の目的の配列を有する核酸を別々に精製する場合、試料を複数に分割して、それぞれの分割試料からそれぞれ異なる配列を有する目的の核酸を精製してもよい。
【0087】
(ハイブリダイゼーション)
核酸を含む試料を、本発明の捕捉プローブもしくは組成物または本発明で用いられる捕捉プローブを含む組成物と混合することで核酸およびプローブがハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションは、任意の好適な条件で実施することができ、当業者は適宜技術常識を参酌して適切な条件を設定することができる。ハイブリダイゼーションの条件は、核酸試料の種類、プローブの長さなどによって異なり得るが、例えば、pH約7のリン酸ナトリウム緩衝液などの溶液中で約室温(例えば、25℃)~100℃で約5分間~1時間処理した後、pH約7のリン酸ナトリウム緩衝液などを用いて約5~25℃で約1~5分間洗浄する条件を使用することができる。一つの実施形態では、このハイブリダイゼーションのステップの前に、試料を二本鎖核酸が脱ハイブリダイズする条件に供するステップを含まれてもよく、このステップは、加熱処理、アルカリ処理、尿素処理、ジメチルスルホキシド処理またはこれらのいずれかの組み合わせの処理を行うことを含み得る。これらの脱ハイブリダイゼーション法のための具体的条件は、当業者であれば適切に設定することができる。
【0088】
本発明の捕捉プローブを使用して効率的に核酸試料とのハイブリダイゼーションを進行させるためには、元々の核酸試料の2本鎖を1本鎖に解離させると同時に、捕捉プローブとは相補鎖を形成するような条件に供することが有利であり得る。例えば、このような条件の非限定的な例として、0.5mM EDTA、1M Nacl、50mM Tris-HCl(ph7.4)の溶液中で約80~95℃、約10分間加熱した試料を捕捉プローブに加え、室温までただちに冷却する条件などが挙げられる。一つの実施形態では、ハイブリダイゼーションに供する核酸を含む試料は、捕捉プローブと混合する前に、20℃~150℃、40℃~120℃、60℃~100℃、70℃~95℃に加熱され得る。一つの実施形態では、この加熱の時間は、1~60分間、3~40分間、5~20分間であり得る。本発明の方法および装置においては、ハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、時間など)を適切に制御することによって少量の試料および少量の試薬を消費するだけで効率的なハイブリダイゼーションが達成され得る。
【0089】
(架橋形成)
次に、本発明で用いられる捕捉プローブの反応性部位と標的核酸分子中のメチル含有基で修飾された塩基との間に架橋を形成させる。一つの実施形態では、標的核酸分子とプローブとのハイブリダイズ産物に対して、オスミウム酸塩を作用させることにより、標的核酸分子とプローブとの間を架橋する(図2参照)。一つの実施形態では、メチル含有基により修飾されたシトシンと、プローブに含まれる反応性部位中の置換または非置換の4,4’-ビピリジン基とを架橋させる。オスミウム酸塩としては、オスミウム酸カリウム、四酸化オスミウムなどが挙げられる。
【0090】
例示として、メチル含有基により修飾されたシトシンと4,4’-ビピリジン基との間を架橋するには、例えば、約0.1~1000mM、好ましくは約1~100mMのオスミウム酸塩の存在下で、約0~40℃で約30秒~1時間処理すればよい。一つの実施形態では、この処理は、pH約6~7のpH条件下で実施され得る。一つの実施形態では、この処理では、約0.1~100mM、好ましくは約0.1~50mMのフェリシアン化カリウムおよびメチルモルホリンオキシドなどの酸化活性化剤を添加してもよく、そうすることで、架橋の形成速度が向上し得る。
【0091】
一つの実施形態では、目的塩基がメチルシトシンである場合、下記に示す構造の架橋が形成される。
【化16】

[式中、xは目的塩基であるメチルシトシン部分、yはオスミウム酸部分、zはプローブのビピリジン部分を示す。この例では、ビピリジン部分は、置換されていない。]
他方、目的塩基がシトシンである場合には、このような架橋は形成されない。
【0092】
一つの実施形態では、この架橋形成の工程は、ハイブリダイゼーションの工程と同時に実施してもよいし、別々に実施してもよい。同時に実施する場合は、プローブ、核酸試料、オスミウム酸塩、および必要に応じて酸化活性化剤を同時に混合して、反応させることができる。
【0093】
酸化オスミウム(VIII)は、OsOで表される強酸化剤である。酸化オスミウム(VIII)の沸点は130℃であるが、沸点よりかなり低い温度で昇華や揮発が始まる。酸化オスミウム(VIII)を吸入すると、灼熱感、咳、頭痛、喘鳴、息切れ、視覚障害などの症状が現れることが報告されている。そのため、酸化オスミウムは、使用量を最低限にし、回収率を最大化し、廃液量を最小化することが好ましい。また、本発明の1つの実施形態で例示されているように、オスミウム含有液を分離処理することができる仕組みを導入してもよい。
【0094】
一つの実施形態では、架橋反応は、約0.1mM、約0.2mM、約0.5mM、約0.7mM、約1mM、約2mM、約5mM、約7mM、約10mM、約20mM、約50mM、約70mM、約100mM、約200mM、約500mM、約700mM、約1000mMのオスミウム酸塩の存在下で実施され得る。一つの実施形態では、架橋反応は、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃で実施され得る。一つの実施形態では、架橋反応は、約1秒間、約2秒間、約5秒間、約7秒間、約10秒間、約20秒間、約50秒間、約1分間、約2分間、約5分間、約7分間、約10分間、約20分間、約50分間、約1時間、約2時間、約5時間実施され得る。本発明の方法および装置では、架橋条件(例えば、温度、時間、オスミウム濃度など)を適切に制御することによって少量の廃棄物を生成するだけで効率的な架橋形成が達成され得る。
【0095】
(架橋を形成していない2本鎖の除去)
一つの実施形態では、架橋を行った後に、架橋を形成していない2本鎖を除去してもよい。一つの実施形態では、核酸がハイブリダイズできない条件(脱ハイブリダイズ条件または変性条件)下で洗浄を行うことで、プローブおよび標的核酸分子の間に架橋が形成されていない2本鎖は、プローブおよび標的核酸分子が分離され、プローブおよび標的核酸分子のうちの少なくとも一方の除去が可能となる。核酸がハイブリダイズできない条件下における処理として、加熱処理、アルカリ処理、尿素処理、ジメチルスルホキシド処理およびこれらのいずれかの組み合わせの処理が挙げられる。これらの脱ハイブリダイゼーション法のための具体的条件は、当業者であれば適切に設定することができるが、プローブと標的核酸分子との間の架橋およびプローブと基材(担体)との間の結合が切断されないような条件を設定することが好ましい。このような条件として、例えば、70~80℃で5分間の加熱、70%ホルムアミドによる処理などが挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施形態では、ホルムアミド処理と加熱処理とが組み合わされる。一つの実施形態では、加熱は、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃で実施され得る。一つの実施形態では、処理時間は、約1秒間、約2秒間、約5秒間、約7秒間、約10秒間、約20秒間、約50秒間、約1分間、約2分間、約5分間、約7分間、約10分間、約20分間、約50分間、約1時間、約2時間、約5時間であり得る。本発明の方法および装置では、脱ハイブリダイズ条件(例えば、温度、時間など)を適切に制御することによって特異性の高い標的核酸の濃縮が達成され得る。
【0096】
(架橋の検出)
本発明で用いられるプローブと標的核酸分子と間の架橋は、任意の好適な検出方法で検出することができる。一つの実施形態では、架橋は、プローブ、複合体および/または標的核酸に導入した標識によって検出され得る。このような標識としては、酵素標識、蛍光標識、電気化学的標識、放射標識等が挙げられる。一つの実施形態では、架橋は、架橋構造に特異的に結合する物質(例えば、特異的抗体)によって検出され得る。一つの実施形態では、架橋は、修飾を構成する部分(例えば、メチル部分)に含まれる放射性原子から放出された放射線によって検出および同定され得る。標識の検出は、標識物質の種類に応じた公知の方法で実施され得る。一つの実施形態では、架橋を形成していない2本鎖を除去した後に架橋が検出され得る。
【0097】
一つの実施形態では、架橋は、質量分析またはゲル電気泳動による分子量測定で検出される。具体的には、本発明で用いられるプローブおよび核酸が架橋していれば、ハイブリダイズできない条件下でも、両者は結合した状態で存在するが、本発明で用いられるプローブおよび核酸が架橋していなければ、ハイブリダイズできない条件下では、両者は分離して存在する。そのため、ハイブリダイズできない条件下で、核酸の質量分析またはゲル電気泳動を行い、核酸の重量または分子量が増加していれば、本発明で用いられるプローブおよび核酸が架橋されていると判定でき、重量または分子量に変動がなければ、架橋されていないと判定できる。
【0098】
一つの実施形態では、架橋は、本発明で用いられるプローブおよび核酸のハイブリダイズ産物の熱安定性を測定することで検出され得る。ハイブリダイズ産物の融点は、架橋が形成されている場合には、架橋が形成されていない場合と比較して上昇する。そのため、本発明で用いられるプローブおよび核酸のハイブリダイズ産物の融点を測定することによって、架橋の形成の有無を判定することができる。また、架橋形成後、脱ハイブリダイズ条件下で洗浄を行い、架橋によって捕捉されなかった標的核酸を除去した後、標的核酸と相補的な配列と標識部分とを含む検出用プローブを添加して、この検出用プローブが標的核酸とハイブリダイズするかどうかを確認することによっても架橋を検出することができる。本明細書において、補足用プローブと検出用プローブとは異なっていてもよく、同じであってもよい。検出用プローブは、上記されるような任意の標識が付されていてもよい。
(濃縮または精製した核酸の溶出)
【0099】
一つの実施形態では、濃縮または精製した核酸を基材(担体)から切断して溶出させることができる。一つの実施形態では、基材(担体)とプローブとの間の結合を切断することで核酸を溶出させてもよい。例えば、基材(担体)とプローブとの間の結合を切断する処理として、変性剤による処理、加熱処理(例えば、95℃で5分間)、切断可能リンカーに特異的な反応剤による処理(例えば、S-Sリンカーに対してジチオエリトリトールなどの還元剤)が挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施形態では、プローブと核酸との間の架橋を切断することで核酸を溶出させてもよい。溶出させた核酸は、その配列を決定してもよいし、修飾の位置および/または量を決定してもよいし、架橋形成が起こったかどうかを判定してもよいし、核酸量を定量してもよい。一つの実施形態では、溶出させた核酸は、ゲル電気泳動、質量分析などで確認、評価することができる。一つの実施形態では、溶出させた核酸は、PCR(例えば、リアルタイムPCR)により配列決定および/または定量することができる。
(核酸分子の濃縮、精製または分離の方法)
【0100】
一つの局面において、本発明は、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するための方法であって、核酸を含む試料を、本発明の組成物または捕捉プローブと混合するステップと、得られた混合物を、反応性部位が標的核酸分子中のメチル含有基で修飾された塩基と架橋する条件に供するステップと、得られた架橋物を、二本鎖核酸が脱ハイブリダイズする条件に供するステップとを含む、方法を提供する。一つの実施形態では、試料は、本発明の組成物または捕捉プローブと混合する前に、二本鎖核酸が脱ハイブリダイズする条件に供される。一つの実施形態では、二本鎖核酸が脱ハイブリダイズする条件に供するステップが、加熱処理、アルカリ処理、尿素処理、ジメチルスルホキシド処理またはこれらのいずれかの組み合わせの処理を行うことを含む。一つの実施形態では、架橋は酸化オスミウムを使用して形成される。一つの実施形態では、メチル含有基で修飾された塩基は標的核酸分子の中に存在するものであり、プローブに含まれるポリヌクレオチドは該標的核酸分子と少なくとも部分的に相補的であり、反応性部位は、該標的核酸分子における該メチル含有基で修飾された塩基に対応する位置に存在する。一つの実施形態では、方法は、所望の核酸配列上の所望の位置の塩基がメチル含有基で修飾された標的核酸分子を精製するための方法である。一つの実施形態では、脱ハイブリダイゼーションが、加熱処理、アルカリ処理、尿素処理、ジメチルスルホキシド処理またはこれらのいずれかの組み合わせの処理によって実施される。一つの実施形態では、架橋後の脱ハイブリダイゼーションが、ホルムアミド処理と加熱処理との組み合わせの処理によって実施される。一つの実施形態では、変性剤で処理することによって捕捉部分とメチル含有基で修飾された塩基との間の架橋が切断される。一つの実施形態では、オスミウムを含む廃液が分別される。
【0101】
(分析、評価、診断および判定)
取得された核酸修飾情報を使用して、種々の状態を分析、評価、診断および判定することができる。一つの実施形態では、取得された核酸修飾情報を使用して、対象の医学的状態または生物学的状態を分析、評価、診断および判定することができる。対象の医学的状態または生物学的状態として、例えば、疾患、免疫状態(例えば、腸管免疫、全身免疫など)、細胞分化状態が挙げられるがこれらに限定されない。本発明が分析しうる疾患としては、例えば、脳神経疾患、がん(悪性腫瘍)、消化器病(炎症性腸疾患を含む)、神経変性疾患、アレルギー疾患、呼吸器疾患、人格障害、精神疾患、腎泌尿器疾患、循環器病、膠原病、免疫病(腸管免疫を含む)、先天性疾患、発達障害、増殖性疾患、遺伝子疾患、血液疾患、代謝内分泌疾患などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。本発明が特に好適に分析しうる疾患としては、がんが挙げられ、例えば、膵臓がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆道がん、胃がん、大腸がん、膀胱がん、腎がん、乳がん、肺がん、脳腫瘍、皮膚がんなどであり得る。
【0102】
一つの実施形態では、末梢血を使用して対象の医学的状態または生物学的状態を分析、評価、診断および判定することができる。担がん患者の末梢血には健常人よりもかなり高濃度の血中遊離DNA(cell-free DNA、cfDNA)が存在すると言われている。cfDNAは、がん組織表面でアポトーシスを起こし、遊離したヌクレオソームが血管中に漏れ出したDNAフラグメントであり得る。原発乳がん腫瘍の血液から腫瘍抑制遺伝子cfDNAメチル化が検出されており、例えばSox17プロモーター領域のcfDNAで高率にメチル化されている。しかし、メチル化cfDNAを選択的・高効率に血中から回収し高感度に定量することは困難であった。本発明によれば、血中からバイオマーカーになる特定配列のメチル化cfDNAの回収が可能であり、難度の高いcfDNAを通した簡易がん種診断法が可能となり得る。
【0103】
一つの実施形態では、再生医療における細胞分化を分析、評価および診断することができる。ES細胞やiPS細胞を用いた再生医療では、簡便に分化ステージをチェックする必要がある。将来、検体数が増加することが見込まれており、培養細胞の一部を試料として使用して、Oct4などの特定の遺伝子プロモーターでのメチル化を調べることがルーチンワークとして自動化されていることが望ましい。本発明によれば、プロモーターメチル化DNA断片の効率的な回収ならびに分析、評価および診断が可能となり得る。これらの技術は、細胞医薬品の品質管理手法として応用され得る。
【0104】
一つの実施形態では、食品の品質を分析、評価および判定することができる。体細胞クローン牛の安定的かつ効率的な生産技術の開発において、体細胞クローン牛の正常産子および異常産子におけるDNAメチル化状態の比較は必須である。優良形質家畜の増産は今後、種家畜の継代に有望となっていくことから、将来的に特定のDNAのメチル化解析がルーチンワークとして自動化されていることが望ましい。本発明によれば、食品(例えば、肉牛)から採取されるメチル化DNA断片の効率的な回収ならびに分析、評価および判定が可能となり得る。
【0105】
(バイオマーカースクリーニング)
一つの実施形態では、取得された核酸修飾情報を使用して、新たなバイオマーカーの探索を行うことができる。一つの実施形態では、ある状態である対象において取得された核酸修飾情報を、その状態でない対象において取得された核酸修飾情報と比較して、核酸修飾状態(例えば、量、修飾位置など)に差(例えば、統計的有意差)が観察された核酸または核酸の群を、その状態を予測するためのバイオマーカーとすることができる。
【0106】
(追加情報の利用)
一つの実施形態では、対象から取得した核酸修飾情報に加えて、他の情報、例えば、別の時点で対象から取得した核酸修飾情報(例えば、処置の前後)、該対象に関する情報、他の対象から取得した核酸修飾に関する情報などを使用して対象の状態を分析、評価および判定、診断などをすることができる。
【0107】
追加で使用することができる対象に関する情報として、例えば、対象の年齢、性別、人種、家系情報、病歴、治療歴、喫煙状態、飲酒状態、職業情報、生活環境情報、疾患マーカー情報、核酸情報(対象における微生物の核酸情報を含む)、代謝物情報、タンパク質情報、腸内細菌情報、表皮細菌情報などが挙げられる。核酸情報として、例えば、ゲノム情報、ゲノム修飾情報、トランスクリプトーム情報(発現量および配列の情報を含む)が挙げられる。
【0108】
(対象状態分析方法)
一つの局面において、本発明は、核酸配列のメチル含有基による修飾情報に基づいて対象の状態を分析、評価、診断および判定する方法であって、所望の核酸配列上の所望の位置がメチル含有基で修飾された標的核酸分子を濃縮、精製または分離するステップと、精製した標的核酸上のメチル含有基による修飾情報を取得するステップと、該メチル含有基による修飾情報に基づいて該対象の状態を分析、評価、診断および判定するステップと、を含む方法を提供する。一つの実施形態では、濃縮、精製または分離するステップは、メチル含有基で修飾された塩基を特定の位置に含む特定の配列の標的核酸分子を濃縮、精製または分離することを含む。
【0109】
例えば、病院などの医療機関において本発明の方法を実施する場合には、対象(例えば、患者または疾患などの危険性のある被験者など)から試料(例えば、血液、尿、摘出器官、糞便など)を取得し、この試料を処理して目的の核酸を精製し、この目的の核酸の修飾情報を同定する。このように同定した核酸の修飾情報に基づいて、対象の状態(例えば、がんの罹患および再発の可能性など)を分析、評価、診断および判定することができる。一度取得した核酸の修飾情報は、他の対象の状態の分析、評価、診断および判定に使用してもよいし、同じ対象の別の時点における状態の分析、評価、診断および判定に使用してもよいし、データベースに蓄積してもよい。
【0110】
例えば、製薬会社などの研究機関において本発明の方法を実施する場合には、対象から取得した試料(例えば、実験動物の組織または器官、臨床試料、培養細胞など)を処理して目的の核酸を精製し、この目的の核酸の修飾情報を同定する。このように同定した核酸の修飾情報を、他の分析により確認した同じ対象の状態(例えば、がんの状態、薬物が治療効果を奏した状態など)と関連付けて情報を蓄積することができる。このように取得した核酸の修飾情報に基づいて、対象(患者または疾患などの危険性のある被験者など)の状態に適当に適用できる薬物を決定することができる。
【0111】
(デバイス)
一つの局面において、本発明は、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのデバイス(反応容器)を提供する。デバイスは、核酸を含む試料を導入するための導入口と、本発明の複合体、組成物など(本明細書では、「プローブ」ともいう)を保持するための保持部と、該デバイスから流体を排出するための排出口とを含む。一つの実施形態では、デバイスは、メチル含有基で修飾された塩基を特定の位置に含む特定の配列の標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのものである。一つの実施形態では、導入口と排出口とは異なる。一つの実施形態では、プローブは基材(担体)に結合されている。一つの実施形態では、デバイスは前記プローブ(例えば、本発明の組成物、複合体など)をすでに含んでいる。一つの実施形態では、デバイスは使い捨てである。一つの実施形態では、デバイスは、担体が導入口および/または排出口から流出しないように流出防止手段を含む。一つの実施形態では、流出防止手段はフィルターである。一つの実施形態では、デバイスは、担体を導入および回収できるように開閉可能である。一つの実施形態では、デバイスは、ポリプロピレン(PP)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成されている。一つの実施形態では、保持部内の容積は約5mL未満、約2mL未満、約1mL未満、約700μL未満、約500μL未満、約200μL未満、約100μL未満、約70μL未満、約50μL未満、約20μL未満、約10μL未満であり得る。一つの実施形態では、導入口または排出口の口径は、それぞれ独立に、約0.1mm~100mm、約0.5mm~20mm、約1mm~10mmであり得る。一つの実施形態では、デバイスの高さは、約0.1mm~100mm、約0.5mm~20mm、約1mm~10mmであり得る。
【0112】
(キット)
一つの局面において、本発明は、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのキットを提供する。キットは、前記プローブを含む。一つの実施形態では、キットは、メチル含有基で修飾された塩基を特定の位置に含む特定の配列の標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのものである。一つの実施形態では、キットは、前記デバイスを含む。一つの実施形態では、キットは、キットを使用するための説明書を含む。一つの実施形態では、キットは、オスミウム酸塩を含む。一つの実施形態では、キットは、酸化活性化剤を含む。一つの実施形態では、キットは、プローブと核酸との間に形成された架橋を検出するための試薬を含む。
【0113】
一つの実施形態では、キットは、対象から器官、組織、細胞、血液、粘膜表皮(例えば、口腔、鼻腔、耳腔、膣などにおけるもの)、皮膚表皮、生体分泌液(例えば、唾液、鼻水、汗、涙、尿、胆汁、痰、精液など)または髪を取得するためのデバイスを含む。
【0114】
(装置)
一つの局面において、本発明は、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するための装置を提供する。装置は、前記デバイスを設置するための設置部を含み、前記デバイスはすでに設置されていてもよい。一つの実施形態では、装置は、メチル含有基で修飾された塩基を特定の位置に含む特定の配列の標的核酸分子を濃縮、精製または分離するためのものである。装置は、前記デバイスの導入口と流体連通するように接続される導入部と、該デバイスの排出口と流体連通するように接続される排出部とを含む。一つの実施形態では、装置は、洗浄液を流す流路と、前記プローブを流す流路と、核酸を含む試料を流す流路と、該標的核酸分子およびプローブの反応性部位を架橋させるための薬剤(例えば、酸化オスミウムを含む)を流す流路と、核酸を脱ハイブリダイズするための流体を流す流路と、廃液を流す流路と、のうちの少なくとも1つを含む。一つの実施形態では、装置は、前記流路のいずれかから流出した流体が流入可能な流路を含み、ここで、この流路は前記デバイスと流体連通するように連結可能であるように構成されている。流路の配管の材料は、試薬との反応性の低い任意の好適なものを使用することができ、例えば、テフロン(登録商標)、ポリプロピレン(PP)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられ得る。配管の内径は、適当に設計することができ、例えば、0.1~10mmであり得る。一つの実施形態では、廃液を流す流路は、前記デバイスと流体連通するように連結可能であるように構成されている。一つの実施形態では、廃液を流す流路は、少なくとも2種類の切り替え可能な流路から構成される。酸化オスミウムは、使用量を最低限にし、回収率を最大化し、廃液量を最小化することが好ましいため、切り替え可能な廃液を流す流路は、酸化オスミウムを含む廃液が他の廃液と混合しないように切り替えられることが望ましい。装置に設置され得る反応容器の数は、任意の数となるように設計することができ、例えば、1~20の反応容器が設置可能であり得、これらの反応容器は並行処理され得る。
【0115】
一つの実施形態では、装置は、ヒーターを備える。一つの実施形態では、ヒーターは、前記デバイス(反応容器)、反応容器に流入する流路および試薬を流すための任意の流路のうちの少なくとも1つを加熱するように構成される。一つの実施形態では、装置は、反応容器から流出する流路上に検出部(UV検出器など)を備える。一つの実施形態では、装置は、制御部を備える。一つの実施形態では、装置は、セットされた試料から自動的に前記標的核酸分子を濃縮、精製または分離する。一つの実施形態では、装置は、試料を保持するための試料保持部を含み、該試料保持部から前記デバイスまでの流路が約1000μL未満、約700μL未満、約500μL未満、約200μL未満、約100μL未満、約70μL未満、約50μL未満、約20μL未満、約10μL未満、約7μL未満、約5μL未満である。
【0116】
(プログラム)
一つの局面において、本発明は、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するための装置を動作させるようコンピュータを実装するためのプログラムを提供する。一つの実施形態では、プログラムは、メチル含有基で修飾された塩基を特定の位置に含む特定の配列の標的核酸分子を濃縮、精製または分離するようコンピュータを実装するよう構成されている。プログラムは、装置の流路を切り替えるステップを実行するように構成されている。一つの実施形態では、プログラムは、メチル含有基で修飾された塩基を含む標的核酸分子を濃縮、精製または分離するための方法で使用される各試薬を流すための流路から流出した流体が前記デバイスに流入するように、バルブを切り替えるステップを実行するように構成されている。一つの実施形態では、プログラムは、酸化オスミウムを含む廃液が他の廃液と混合しないように、廃液を流す流路を切り替えるステップを実行するように構成されている。一つの実施形態では、プログラムは、前記デバイス(反応容器)、反応容器に流入する流路および試薬を流すための任意の流路のうちの少なくとも1つの温度を調節するように構成される。一つの実施形態では、プログラムは、試料を希釈するステップを実行するように構成される。一つの実施形態では、プログラムは、試料を複数回に分けて前記デバイス(反応容器)に流すように構成される。試料に含まれる標的核酸の量が微量である場合には、希釈した試料を複数回に分けて流すことで、プローブによる捕捉効率が向上し得る。
【0117】
一つの実施形態では、プログラムは、1つの試料に対して使用される酸化オスミウムの合計量が、約500μmol未満、約200μmol未満、約100μmol未満、約70μmol未満、約50μmol未満、約20μmol未満、約10μmol未満、約7μmol未満、約5μmol未満、約2μmol未満、約1μmol未満、約0.7μmol未満、約0.5μmol未満となるように構成されている。一つの実施形態では、プログラムは、使用した酸化オスミウムのうち、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、約100%が回収されるように構成されている。一つの実施形態では、プログラムは、1つの試料の処理によって発生する酸化オスミウム含有廃液の液量が、約500mL未満、約200mL未満、約100mL未満、約70mL未満、約50mL未満、約20mL未満、約10mL未満、約7mL未満、約5mL未満、約2mL未満、約1mL未満、約0.5mL未満、約0.2mL未満、約0.1mL未満となるように構成されている。一つの実施形態では、プログラムは、反応液の流速、ガス圧および温度のうちの少なくとも1つを制御するように構成されている。一つの実施形態では、プログラムは、1つの試料を処理するために消費される反応液が合計約500mL未満、約200mL未満、約100mL未満、約50mL未満、約20mL未満、約10mL未満、約7mL未満、約5mL未満、約2mL未満、約1mL未満であるように構成される。
(システム)
【0118】
1つの局面において、本発明は、核酸配列のメチル含有基による修飾情報に基づいて対象の状態を分析するシステムを提供する。システムは:(a)核酸を濃縮、精製または分離する濃縮、精製または分離部;(b)濃縮、精製または分離した標的核酸分子を測定する測定部;および(c)該測定によって得られたメチル含有基による修飾情報に基づいて該対象の状態を分析する分析部、を包含する。一つの実施形態では、測定データに基づいて核酸上の修飾状態(例えば、修飾位置、修飾の量など)を同定する計算部をさらに含む。
【0119】
一つの実施形態では、濃縮、精製または分離部は、前記デバイスおよび/または装置を含む。
【0120】
測定部は、核酸の修飾情報を提供する機能および配置を有する限り、どのような構成をとっていてもよい。一つの実施形態では、測定部は、濃縮、精製または分離部と同一または異なる構造物として提供され得る。一つの実施形態では、測定部は、分析部と同一または異なる構造物として提供され得る。一つの実施形態では、測定部は、PCRを実施する装置、核酸シークエンシング装置および蛍光検出器のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0121】
分析部は、得られた核酸修飾情報に基づいて、対象の状態を分析する。一つの実施形態では、分析は、さらに上記の追加情報を参照して実施されてもよい。
【0122】
図3の機能ブロック図を参照して、本発明のシステムの構成を説明する。なお、本図においては、単一のシステムで実現した場合を示しているが、複数のシステムで実現される場合も本発明の範囲に包含されることが理解される。このシステムで実現される方法は、プログラムとして記載することができる。このようなプログラムは記録媒体に記録することができ、方法として実現することができる。
【0123】
本発明のシステム1000は、コンピュータシステムに内蔵されたCPU1001にシステムバス1020を介してRAM1003、ROM、SSDやHDD、磁気ディスク、USBメモリ等のフラッシュメモリなどの外部記憶装置1005及び入出力インターフェース(I/F)1025が接続されて構成される。入出力I/F1025には、キーボードやマウスなどの入力装置1009、ディスプレイなどの出力装置1007、及びモデムなどの通信デバイス1011がそれぞれ接続されている。外部記憶装置1005は、情報データベース格納部1030とプログラム格納部1040とを備えている。何れも、外部記憶装置1005内に確保された一定の記憶領域である。
【0124】
このようなハードウェア構成において、入力装置1009を介して各種の指令(コマンド)が入力されることで、又は通信I/Fや通信デバイス1011等を介してコマンドを受信することで、この記憶装置1005にインストールされたソフトウェアプログラムがCPU1001によってRAM1003上に呼び出されて展開され実行されることで、OS(オペレーションシステム)と協働して本発明の機能を奏するようになっている。もちろん、このような協働する場合以外の仕組みでも本発明を実装することは可能である。
【0125】
本発明の実装において、核酸試料の測定を行って核酸修飾データを得た場合、この測定を行って得られた核酸修飾データまたはこれと同等の情報(例えば、シミュレーションを行って得られたデータ)は、入力装置1009を介して入力され、あるいは、通信I/Fや通信デバイス1011等を介して入力されるか、あるいは、データベース格納部1030に格納されたものであってもよい。該核酸試料の測定を行って核酸修飾データを得て、該核酸修飾データを分析するステップは、プログラム格納部1040に格納されたプログラム、または、入力装置1009を介して各種の指令(コマンド)が入力されることで、又は通信I/Fや通信デバイス1011等を介してコマンドを受信することで、この外部記憶装置1005にインストールされたソフトウェアプログラムによって実行することができる。このような分析を行うソフトウェアは、実施例に例示されるものを使用してよいが、これに限定されず、当該分野で公知の任意のソフトウェアを利用することができる。分析が行われたデータは、出力装置1007を通じて出力されるかまたは情報データベース格納部1030等の外部記憶装置1005に格納されてもよい。
【0126】
データベース格納部1030には、これらのデータや計算結果、もしくは通信デバイス1011等を介して取得した情報が随時書き込まれ、更新される。各入力配列セット中の各々の配列、参照データベースの各RNA情報ID等の情報を各マスタテーブルで管理することにより、蓄積対象となる試料に帰属する情報を、各マスタテーブルにおいて定義されたIDにより管理することが可能となる。
【0127】
データベース格納部1030には、上記計算結果が、同じ試料から得られた別の核酸情報などの各種情報、生体情報等の既知の情報と関連付けて格納されてもよい。このような関連付けは、ネットワーク(インターネット、イントラネット等)を通じて入手可能なデータをそのまままたはネットワークのリンクとしてなされてもよい。
【0128】
また、プログラム格納部1040に格納されるコンピュータプログラムは、上記した処理システム、例えば、データ提供、修飾状態の分析、参照データとの比較、分類、クラスタリング、その他の処理等を実施するシステムとしてコンピュータを構成するものである。これらの各機能は、それぞれが独立したコンピュータプログラムやそのモジュール、ルーチンなどであり、上記CPU1001によって実行されることでコンピュータを各システムや装置として構成させるものである。
【0129】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものである。
【0130】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
【0131】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0132】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0133】
以下に実施例を記載する。
試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma-Aldrich、和光純薬、ナカライ、R&D Systems、USCN Life Science INC等)の同等品でも代用可能である。
【0134】
(実施例1)
メチル化DNAを配列選択的に回収するプローブを付加した担体の作製
・配列情報の収集
肝臓がん組織に観察されるメチル化配列をメチローム解析結果から収集した。肝臓がん組織由来ゲノムDNAのメチル化可能な配列177か所に対してメチル化解析を行い、他の組織由来のゲノムDNAでは低メチル化(およそ10%を下回る)でありながら肝臓がんでは高メチル化(70%を上回る)である箇所を23か所(配列番号1~23)特定した。(太字の下線がメチル化部位を示す。)
【表1-1】

【表1-2】
【0135】
上記の肝臓がん組織特異的メチル化配列から5種類を選択して、核酸合成装置(nS-8/nS-8II、ジーンデザイン、大阪)を使用して、これらに対して以下の表に示すICONプローブを作製した(Tanaka et.al., J Am Chem Soc. 2007 Nov 21;129(46):14511-7.Epub 2007 Oct 27を参照)。これらのICONプローブは予めビオチンが付与されたガラスビーズ上で、ホスホロアミダイト法により合成した(配列番号24~28)。
【0136】
【表2】
【0137】
プローブの長さは50塩基長とし、プローブのおよそ中央部の辺りにICONプローブの反応性塩基Bを導入した。ここで、反応性塩基Bは以下の構造
【化17】

を有する。
【0138】
37~100μm径のストレプトアビジンでコートされたマグネットビーズ(GEヘルスケア、英国)にプローブを加え、pH7.5のTBS緩衝液中、室温で40分間混合することでビーズとプローブとを結合させた。プローブからの蛍光を測定することにより、ビーズ1個当たり約(2.5±0.5)×10分子のプローブが結合していることが予測された。
【0139】
また、ガラスビーズとプローブの間のリンカーは、加熱条件(80℃、20分間)に堪えられることを確認した。
【0140】
この方法は、あらかじめ作製したプローブをビーズに結合するため、DNA自動合成機で作製できる100塩基程度の自由な長さのプローブを結合させることができる。また、この方法では、脱保護条件そのものが不要であり、リンカーの損傷についての考慮は必要なく、各合成段階の収率を考慮することが不要である。この方法は簡便であり、品質が統一された高純度のプローブをビーズに結合させることができる。
【0141】
(実施例2)
<プローブビーズによる濃縮>
・メチル化DNAの捕捉
配列番号5の配列を含む以下の配列(配列番号29)
【化18】

の5’末端に6-FAM(フルオレセイン)を導入した核酸試料を調製した。太字の下線のCがシトシンまたはメチル化シトシンである2種類の核酸試料を調製した。この試料に対して実施例1で作製したICONプローブ結合ビーズを使用して目的のメチル化DNAの捕捉を試みた。標的DNA濃縮のプロトコルは以下のとおりであった。
【0142】
(平衡化)
・試料毎に15μLのビーズ(実施例1のストレプトアビジン結合ビーズ)を使用した。
・pH7.5のTBS(50mM Tris-HCl、150mM NaCl)100μLで平衡化した。
・上清を廃棄した。
(プローブの結合)
・10μLのプローブ水溶液(1μM)と50μLのTBSとをビーズに添加した。
・上清を廃棄した。
・TBSで再懸濁し、室温で50分間、回転させながらインキュベートした。
・2M尿素を含むTBS(pH7.5)で3回洗浄した。
(ハイブリダイゼーション)
・10μLの標的DNA水溶液(1μM)と10μLの2×ハイブリダイゼーション緩衝液(0.5mM EDTA、1M NaCl、50mM Tris-HCl(pH7.4))とをビーズに添加して、80℃で加熱した後、室温で50分間、回転させながらインキュベートした。
・上清を廃棄した。
(架橋形成)
・5μLのK[Fe(CN)]水溶液(1M)、10μLのKOsO(25mM)、25μLの2×ハイブリダイゼーション緩衝液および10μLの純水を混合して、ビーズに添加した。
・所定の温度および所定の時間、ゆっくりと回転させながらインキュベートした。
(洗浄)
・上清を廃棄し、1×PBSで3回洗浄した。
(溶出)
・20μLの2%SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)をビーズに添加した。
・95℃で5分間加熱し、上清を回収した。
【0143】
上記標的配列と配列番号24のプローブを組み合わせて実験を行ったところ、メチル化DNAは、確実に捕捉できていることが確認された。すなわち、図4に示すように、共焦点蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Microscopy、ドイツ)での観察により、メチル化DNAは捕捉され(明瞭な蛍光の観察)、非メチル化DNAは捕捉されない(蛍光が現れない)ことが確認された。非メチル化DNAでは、プローブビーズからの蛍光はほぼ0%であったが、TCG配列からは蛍光が観察されており、これはCGに隣接するTに対してオスミウムとの反応が進行したためと思われる。したがって、配列設計ではTCG配列を標的としないことが望ましいと考えられる。
【0144】
なお、ビーズなしのICONプローブを使用した場合、80%以上のメチル化DNAが捕捉されることをゲル電気泳動で定量した。
【0145】
・相補的配列の捕捉
配列番号5または6の配列を含む以下の配列(配列番号29および30)
【化19】

について、配列番号29の5’末端に6-FAM(フルオレセイン)を導入し、配列番号30の5’末端にTAMRA-N(H)(5(6)-カルボキシテトラメチルローダミン)を導入して核酸試料を調製した。太字の下線のCがシトシンまたはメチル化シトシンである2種類の核酸試料を調製した。
上記標的DNAと配列番号24または25のプローブを組み合わせて実験を行った(図5)。プローブビーズに対してメチル化DNAを加えたとしてもそれが相補的でなければ捕捉されない(標的DNAに修飾された蛍光色素が観察されない)ことを確認した。メチル化した「Sequence2」配列が、「Sequence2」を標的にするICONプローブビーズによってのみ捕捉された。非メチル化DNAが捕捉されないだけでなく、DNA配列がプローブの配列と相補的でなければ捕捉されず、プローブビーズによるメチル化DNAの捕捉は高い配列特異性を持つことが確認された。
【0146】
・温度の影響
0℃および室温で特異的メチル化の捕捉が可能かどうかを調べた(図6)。上記Sequence1の標的DNAと配列番号24のプローブを組み合わせて実験を行った結果、室温条件で十分に捕捉可能であることが確認された。
【0147】
(実施例3)
<血漿からの濃縮>
・メチル化DNAの捕捉
血漿中から目的のメチル化DNAを濃縮できることを確認した。Sequence1の標的DNAを血漿(コスモ・バイオ株式会社)に添加し、これを配列番号24のICONプローブで修飾したビーズで捕捉した(図7)。ビーズを血漿サンプルと混合した場合には、メチル化の有無にかかわらず標的DNAが捕捉された(上段)。捕捉した後にオスミウム処理を行い、洗浄することで、メチル化された標的DNAだけがビーズ上に残った(下段)。その結果、血漿試料中からも標的のメチル化DNAを特異的に濃縮できることが確認された(図7)。
【0148】
・捕捉DNAの増幅
次に、標的DNAの捕捉をリアルタイムPCRによるDNA増幅反応をモニタリングすることで確認した。
リアルタイムPCRは以下の手順で実施した。20μLのPCR用溶液(10μL KODSYBR(登録商標)qPCR Mix(東洋紡ライフサイエンス)、0.4μL 10μMプライマー溶液、9.2μL 脱イオン水)を0.6ml試験管中で調製し、0.5μLのビーズ(90%スラリー)を添加した。その後、SYBR Green Iによる蛍光の記録および定量分析を、Rotor-Gene Q(Qiagen)で行った。サイクルは、98℃、10秒/68℃、15秒X60であった。
【0149】
結果を図8に示す。横軸は反応サイクル数、縦軸は増幅量を示し、少ないサイクル数で増幅が始まれば(すなわち、S字カーブが左側に出るほど)、反応溶液中に目的のDNAが多く含まれていることを示す。オスミウム反応によりビーズに捕捉されたメチル化DNAは、捕捉されない非メチル化DNAと比較してPCR反応の進行が速く、左側にS字カーブが現れた。この方法を使うことにより、ICONプローブによってメチル化DNAが捕捉されたことが確認され得る。
【0150】
・患者試料からの目的DNAの濃縮
上記と同様にリアルタイムPCRを使用して、肝臓がん患者または健常者から採取した血液を用いてメチル化DNAを測定した(図9)。それぞれ、ICON1は配列番号24、ICON2は配列番号25、ICON3は配列番号26のプローブであった。図8のS字カーブが左にシフトしているほど赤、黄となり、シフトが無ければ緑となるように色を示している。ICON1では、患者と健常者との間で明確に捕捉DNA量が区別されたので、この配列は血液検体を使った肝臓がん検出に有効であることが示された。また、一般的なバイサルファイト法と比較して、本発明の方法ではより明確に肝臓がんが区別されることが示された。
【0151】
(実施例4)
メチル化DNA濃縮用デバイス(反応容器)の作製
ビーズ上での効率的な反応を志向して、ポリプロピレン素材の反応容器を作製した(図10)。当初は226μLの容積となることを予定していたが、フィルター位置を調整することで口径4mm×高さ6mmの容積75μLというさらなる小容量化を達成することができた。
【0152】
この反応容器は、水に強く、上下に配管との接続口を有し、さらに任意に開封できる。接続口は、ビーズを通さないサイズのフィルター(20μmメッシュ)(Sigma-aldrich)でふさがれている。
【0153】
ガラスビーズ(粒径100μm)およびマグネティックビーズ(粒径50μm)を用いて、上記反応容器がこれらのビーズを通過させないことを確認した。この反応容器には、表面を化学修飾したガラスビーズを封入することができる。反応容器は、実施例1のビーズ5μL(10%スラリー)を封入することで使用できる。目的の核酸の精製後は、反応容器を開けて、例えば5μLの水を加えてビーズを取出すことができる。
【0154】
(実施例5)
修飾核酸自動回収装置の作製
修飾核酸を自動的に精製・濃縮する装置を作製した(図11)。図12~16は、この装置に実施例4の反応容器を取り付けた状態を示す。修飾核酸を自動的に精製・濃縮する装置を作製した(図11)。この装置は、複数の試薬・溶媒瓶、複数の反応容器(4~8系統)、廃液瓶をチューブによって連結することによって構成された。配管は、ポリテトラフルオロエチレン素材で作製した。反応液等は、圧縮ポンプもしくはエアーボンベから空気圧によって押し出されるように構成した。圧縮空気導入口は比較的高圧に耐えられるバルブを使用した。どの試薬をどの反応容器に流し込むかは、電磁バルブの開閉によって制御した。
【0155】
核酸試料を封入したビンには、効率的変性のために90℃まで加熱可能なヒーターを設置した(ジャケット式ヒーターが望ましい)。図17~18は、この装置のヒーターに入れて実施例4の反応容器を取り付けた状態を示す。効率的なハイブリダイゼーションを誘起するために、ペルチェ冷却によって冷却水を用意した(ジャケット式クーラーが望ましい)。
【0156】
メチル含有基修飾核酸の捕捉のためにオスミウム酸カリウム水溶液を用いるが、配管によって非接触かつ回収・再生可能な密閉システムを達成した。圧縮空気および水を使用するため、耐圧性、耐腐食性の配管・接続具を使用した。
【0157】
この装置により、以下のステップを実行させることができる。
・プローブをビーズに結合させるステップ
・プローブと標的核酸とをハイブリダイズさせるステップ
・プローブと標的核酸との間に架橋を形成させるステップ
・プローブと標的核酸とを脱ハイブリダイズさせるステップ
・各ステップ中またはステップ間で洗浄を行うステップ
【0158】
廃液の流路には切り替え可能なバルブが取り付けられているため、オスミウムを含む溶液を選択的に別の廃液容器に回収することができる。
【0159】
装置の配管は、図19のとおり作製した。配管はテフロン(登録商標)チューブを使用し、内径は0.8mm(反応容器からの廃液を流すチューブは1.0mm)であった。DNA試料1から反応容器までの流路容積は50μL未満である。送液を制御する電磁バルブはマニホールドに接続したが、電磁バルブ間の流路容積は3μL未満であり、試料および反応溶液を反応容器に送るまでの容積を微量にすることが可能な設計であった。
【0160】
上記配管について、実際にDNA試料を用いて送液を行い、核酸の吸着や洗浄について確認を行った。UV吸収の確認には、Thermo Fischer社製NanoDropを用いた。合成DNA試料を配管内に通液させる前後でUV260nmの吸収を確認したところ値が変わらなかったことから、サンプルの吸着がないことを確認した。また、送液した後、蒸留水を2回送液し、2回目の洗浄溶液を回収しUV吸収を確認した。その結果UV260nmに吸収を持たなかった。これらの結果から、装置内の交叉汚染の危険は排除できると考えられる。
【0161】
(実施例6)
制御プログラムの作製
実施例5で作製した装置を自動的に動作させるため電磁バルブを開閉するための送液プログラムを設計した。
【0162】
プロトタイプ機の組み立てにあたり、プログラムを作製し、設計図に基づく配管に溶液を流しテストを行った。溶液の粘性により吐出量が大きく変動する恐れがあるために、テストには水と比較的粘性があるホルムアミドを流して吐出量の計測を行った。その結果、実際に使用する溶液よりも粘性が高い100%ホルムアミドを用いた場合にも、高い精度で吐出量を制御することができ、装置およびプログラムの安定性が確認された。
【0163】
以下に制御プログラムの例を示す。
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

【表3-4】

【表3-5】

【表3-6】

【表3-7】

【表3-8】

*流速は、0.05mL/0.1sec、0.2mL/0.5secおよび0.9mL/3secの3点を線で結んだ制御範囲であった。
*共通タイマは、反応容器に流入も流出も生じさせない操作を意味する。
*Flushは、圧空を流す操作を意味する。
*Washは、純水を流す操作を意味する。
*共通タイマとは、反応容器に流入も流出も生じさせない操作を意味する。
*設定温度は次のとおりである。ハイブリダイゼーション:80℃、オスミウム処理:40℃または制御なし、変性(脱ハイブリダイゼーション):95℃。
【0164】
このプログラムによって、以下のステップが自動的に実行される。
・プローブをビーズに結合させるステップ
・プローブと標的核酸とをハイブリダイズさせるステップ(温度調整下)
・プローブと標的核酸との間に架橋を形成させるステップ(温度調整下)
・プローブと標的核酸とを脱ハイブリダイズさせて、架橋が形成されなかった(非メチル化)核酸を除去するステップ(温度調整下)(例えば、70%ホルムアミドなどであってもよい)
・各ステップ中またはステップ間で洗浄を行うステップ
・オスミウムを含む溶液を選択的に別の廃液容器に回収するようにバルブを切り替えるステップ。
【0165】
スキーム全体で、総反応時間は約140分程度であり、総反応試薬量は50mL以内になると算出された。
【0166】
流速100μL/secの場合に誤差を±20%以内に収めることを当初の目標としたが、これを大きく上回る誤差±5%以内での制御が達成された。これを基に検量線を引くことで、この精度で吐出量を制御することが可能である。
【0167】
1つの試料に対して、当初は酸化オスミウム溶液(KOsO約5mM)を1.2mL使用していたが、最適化の結果、0.5mLまで低減することに成功した。廃液の流路が異なるため、酸化オスミウムを含む廃液の液量は、洗浄液を含めて1試料ごとに約2.5mLに抑えることが可能であった。
【0168】
試料中に含まれる標的核酸が微量の場合、試料を希釈したものを複数回に分けて反応容器に流すことで、標的核酸が捕捉される効率が向上し得る。
【0169】
プローブ反応を自動化する装置およびプログラムを開発したことによって、特定の配列にメチル含有修飾を含む核酸のみを高効率かつ高再現的に回収できると同時に、回収したメチル含有修飾核酸を効果的に計測分析できるようになった。自動化によって、信頼性の高い実験再現性が達成され、医療・診断を革新する簡易がん種診断装置への展開が期待できる。
【0170】
(注記)
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明は、生物が関与するおよそ任意の分野における分析において利用可能性があり、特に医療分野での応用は計り知れない。
【配列表フリーテキスト】
【0172】
本明細書における配列の名称および、その具体的配列を以下に示す。
配列番号1:chromosome15:72612605-72612654
5’-AGAGTGGGAGTTGACTGGGCTCGCCGGGGGCGGGGGGGGCGGCTGGGCTC-3’
配列番号2:chromosome15:72612696-72612745
5’-CTGTGTGTGTCGAGTGTGTGCGGGCGTGGCCGTGGATCGCGCGTGTGCGC-3’
配列番号3:chromosome15:72612793-72612842
5’-GCCGGAGTCGGGGCTAATCCCCACCGCACACACAGGCACACACAGGCAAA-3’
配列番号4:chromosome15:72612829-72612878
5’-CACACACAGGCAAACGCAGGCACACGCAGGCACACACACCTCCAAACGCT-3’
配列番号5:chromosome17:29298160-29298209
5’-CTGCCAGGGGCTGCTGGACTGGCCCGCCACGCTGCCCTGCGGCCACAGCT-3’
配列番号6:chromosome17:29298328-29298377
5’-GGACCTGGCCGACAAGTACCGCCGCGCCGCACGCGAGATACAGGCGGGCT-3’
配列番号7:chromosome13:45150004-45150053
5’-AGGGGGCGGCGGCTGAAGCAGCGACGGAGGCGGAAAATCCTCGGAAGATG-3’
配列番号8:chromosome13:45150048-45150097
5’-AAGATGTGGCATTACTACCGACGCCGGTACCTGCTGCATTGAGAGCAGAG-3’
配列番号9:chromosome13:107186537-107186586
5’-GCCCTCAGGGAGAAGCCTAAGGCCCGTCTCCCCGGCGCGGAGGAAAGGGC-3’
配列番号10:chromosome13:107186846-107186895
5’-AGCCTAGATTGTGGCCATGTCCTTCGTCCTCGAAAACAGGAGAGGGTCAG-3’
配列番号11:chromosome13:107187153-107187202
5’-CGGGGCGGGGACATAGGGGGATCGCGGACGCCACTTACTTGGAGTTCGAG-3’
配列番号12:chromosome13:107187208-107187257
5’-CCAATAGATAGGCTCTAAAACTATCGATTTGGAAATCGCAGTTCTGCATA-3’
配列番号13:chromosome13:107187388-107187437
5’-TCCGGGGCAGACTGGCGGGGAAGACGGCGTGCGCCCGCAGGCAGCTCCGA-3’
配列番号14:chromosome13:107187657-107187706
5’-GGACACAAAGACCCGGAGCGGAGACGACCGGCGCGGGCGGCGGGCGCTGC-3’
配列番号15:chromosome13:107188232-107188251
5’-GAAGCGCTCAGCGCGTGCACAGGGCGCCCCCGGGGCGGCGAGAGGCCTTC-3’
配列番号16:chromosome13:107188392-107188441
5’-AGCAGTGCGGAAGGCAGCAGGCTCCGCTCGGCGTCCCTTCTCCGCAGATG-3’
配列番号17:chromosome13:107188590-107188639
5’-GGAATTGCAAGACGATTCCTGCGACGCGGCGCCGGAATTTGCAGCTCTAA-3’
配列番号18:chromosome5:159739827-159739876
5’-TGCGCGCACCACGCGTGAAACGTGCGGACAGGACGCCCCCAGAAAGTTCT-3’
配列番号19:chromosome13:77459653-77469702
5’-TGATGTAGCCCGAGCGCCGGCTGCCGTCCAGCGACTGGGACGGCGTGAGC-3’
配列番号20:chromosome13:77460274-77460321
5’-CCAGAGCCATGACAGAGAGGTGGCCGGGCCGGGACAGTGGCAGGAAGCCG-3’
配列番号21:chromosome13:77460298-77460347
5’-CGGGCCGGGACAGTGGCAGGAAGCCGCGCTGCACTCAGGAGCTGCAACCG-3’
配列番号22:chromosome13:77460583-77460632
5’-TCTGGTGCCGTGGCGCGCAGGAGGCGTGGGCGGCGGCGGAGCCTCGCTTA-3’
配列番号23:chromosome13:77460589-77460638
5’-GCCGTGGCGCGCAGGAGGCGTGGGCGGCGGCGGAGCCTCGCTTACCGGGC-3’
配列番号24:配列番号5に対するプローブ配列
AGCTGTGGCCGCAGGGCAGCGTGGCGGGCCAGTCCAGCAGCCCCTGGCAG
配列番号25:配列番号6に対するプローブ配列
AGCCCGCCTGTATCTCGCGTGCGGCGCGGCGGTACTTGTCGGCCAGGTCC
配列番号26:配列番号7に対するプローブ配列
CATCTTCCGAGGATTTTCCGCCTCCGTCGCTGCTTCAGCCGCCGCCCCCT
配列番号27:配列番号8に対するプローブ配列
CTCTGCTCTCAATGCAGCAGGTACCGGCGTCGGTAGTAATGCCACATCTT
配列番号28:配列番号10に対するプローブ配列
CTGACCCTCTCCTGTTTTCGAGGACGAAGGACATGGCCACAATCTAGGCT
配列番号29:配列番号5の配列を含む合成核酸
GCTGCATCATCTGCCAGGGGCTGCTGGACTGGCCCGCCACGCTGCCCTGCGGCCACAGCTTCTGCCGCCA
配列番号30:配列番号6の配列を含む合成核酸
CGCTACTGCAGGACCTGGCCGACAAGTACCGCCGCGCCGCACGCGAGATACAGGCGGGCTCCGACCCTGC
図1
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【配列表】
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