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  • 特許-有機素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】有機素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/16 20230101AFI20230224BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20230224BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230224BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20230224BHJP
【FI】
H10K50/16
H05B33/10
H05B33/14 A
H10K85/60
H05B33/22 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018198716
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020068240
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】深川 弘彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴央
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼田 健二
(72)【発明者】
【氏名】森井 克行
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113149(JP,A)
【文献】特開2014-168014(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010124(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/166562(WO,A1)
【文献】特開2017-022063(JP,A)
【文献】特開2015-153587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/16
H05B 33/10
H10K 50/00
H10K 30/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機素子であって、
該有機素子は、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンを含む層を陽極と陰極との間に有し、
該ポリアミンを含む層と発光層の間に存在し、該ポリアミンを含む層に隣接する層(金属酸化物層、及び、ヘテロポリオキソメタレートを含む層を除く)は、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、芳香環テトラカルボン酸無水物、有機シラン誘導体、フルオランテン誘導体、縮環多環式ホウ素含有化合物、スピロビフルオレン骨格を有する縮環多環式化合物のいずれかを95質量%以上含み、かつ、該隣接層を構成する材料全体に対する、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体の合計含有量が5質量%以下であることを特徴とする有機素子。
【請求項2】
有機電界発光素子として用いられることを特徴とする請求項1に記載の有機素子。
【請求項3】
太陽電池として用いられることを特徴とする請求項1に記載の有機素子。
【請求項4】
有機半導体として用いられることを特徴とする請求項1に記載の有機素子。
【請求項5】
陽極と陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機素子を製造する方法であって、
該製造方法は、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンを含む材料用いて陽極と陰極との間にポリアミンを含む層を形成する工程と、
ホスフィンオキサイド誘導体、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、芳香環テトラカルボン酸無水物、有機シラン誘導体、フルオランテン誘導体、縮環多環式ホウ素含有化合物、スピロビフルオレン骨格を有する縮環多環式化合物のいずれかを95質量%以上含み、かつ、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体の合計含有量が5質量%以下である材料を用いて、ポリアミンを含む層と発光層の間にポリアミンを含む層に隣接する層(金属酸化物層、及び、ヘテロポリオキソメタレートを含む層を除く)を形成する工程とを含むことを特徴とする有機素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機素子に関する。より詳しくは、有機電界発光素子、太陽電池、有機半導体等の有機素子に関する。
【背景技術】
【0002】
薄く、柔軟でフレキシブルな表示用デバイスや照明に適用できる新しい発光素子として有機電界発光素子(有機EL素子)が期待されている。
有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に発光性有機化合物を含んで形成される発光層を含む1種または複数種の層を挟んだ構造を持ち、陽極から注入されたホールと陰極から注入された電子が再結合する時のエネルギーを利用して発光性有機化合物を励起させ、発光を得るものである。有機電界発光素子は電流駆動型の素子であり、流れる電流をより効率的に活用するため、素子構造や、素子を構成する層の材料について種々検討されている。
【0003】
陰極と陽極との間の層が全て有機化合物で形成された有機電界発光素子は、結果として酸素や水によって劣化しやすく、これらの侵入を防ぐために厳密な封止が不可欠である。このことは、有機電界発光素子の製造工程を煩雑なものとする原因となっている。
【0004】
さらに最近、有機EL素子の性能を確保しつつ、耐久性を向上させるために、アルカリ金属を含まない電子注入層として、例えば、非特許文献1には、ポリエチレンイミンからなる電子注入層を有する有機EL素子が記載されている。また、非特許文献2には、電解質膜が電子の注入速度改善に有効であることが記載され、非特許文献3には、それらのアミノ基が電極と有機層界面において電子注入に及ぼす効果について記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】ジャンシャン チェン(Jiangshan Chen)外6名「ジャーナル オブ マテリアルズ ケミストリー(Journal Of Materials Chemistry)」、第22巻、2012年、p5164-5170
【文献】ヒョサン チョイ(Hyosung Choi)外8名「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、第23巻、2011年、p2759
【文献】ウィンファ チョウ(Yinhua Zho)外21名「サイエンス(Science)」、第336巻、2012年、p327
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにポリエチレンイミンを電子注入層の材料として使用した有機EL素子が開示されているが、ポリアミンを電子注入層の材料として用いた素子は耐熱性が低いという課題がある。ポリアミンは優れた電子注入性を発揮する材料であり、有機EL素子だけでなく、有機EL素子と同様にポリアミンの電子注入性を利用する有機半導体や太陽電池等の素子の材料としても有用であることから、ポリアミンを材料として使用し、かつ、耐熱性を向上させた有機素子が求められている。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ポリアミンを含む層を有しながら耐熱性に優れる有機素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ポリアミンを含む層を有しながら耐熱性に優れる有機素子について種々検討したところ、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンを含む層を陽極と陰極との間に有する素子において、該ポリアミンを含む層に隣接する層における、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体の合計含有量を所定の値以下となるようにすると、得られる素子が耐熱性に優れた素子となることを見出し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち本発明は、陽極と陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機素子であって、該有機素子は、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンを含む層を陽極と陰極との間に有し、該ポリアミンを含む層に隣接する層は、該隣接層を構成する材料全体に対する、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体の合計含有量が5質量%以下であることを特徴とする有機素子である。
【0010】
上記有機素子は、有機電界発光素子として用いられることが好ましい。
【0011】
上記有機素子は、太陽電池として用いられることが好ましい。
【0012】
上記有機素子は、有機半導体として用いられることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、陽極と陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機素子を製造する方法であって、該製造方法は、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンを含む材料用いて陽極と陰極との間にポリアミンを含む層を形成する工程と、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体の合計含有量が5質量%以下である材料を用いてポリアミンを含む層に隣接する層を形成する工程とを含むことを特徴とする有機素子の製造方法でもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有機素子は、電子注入性に優れるポリアミンを含む層を有しながら耐熱性にも優れることから、表示装置や照明装置等として利用される有機電界発光素子や、太陽電池、有機半導体等の各種用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の有機素子を有機電界発光素子とした積層構造の一例を示した概略図である。
図2】本発明の有機素子を有機薄膜太陽電池素子とした積層構造の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0017】
1.有機素子
本発明の有機素子は、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンを含む層を有し、該層に隣接する層を構成する材料全体に対する、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体の合計含有量が5質量%以下であることを特徴とする。
窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体は、いずれもアミンによって求核攻撃を受ける可能性のある化合物であり、本発明者は、これらの化合物がアミンによって求核攻撃を受けることが有機素子の耐熱性を低下させる要因となることを見出し、ポリアミンを含む層に隣接する層におけるこれらの化合物の合計含有量を所定の割合以下とすることで有機素子の耐熱性を向上させたものである。
ポリアミンを含む層に隣接する層を構成する材料全体に対する、これらの化合物の合計含有量は、5質量%以下であればよいが、1質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5質量%以下である。
【0018】
上記ポリアミンとしては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、ジエチレントリアミンのようなポリアルキレンポリアミンが好適に用いられる。
【0019】
上記ポリアミンが高分子化合物である場合、該高分子化合物としては、第一級アミノ基含有構造単位及び/又は第二級アミノ基含有構造単位を構造中に有する重合体であればよく、第一級アミノ基含有構造単位を有する重合体としては、例えば、下記式(1)で表される第一級アミノ基含有構造単位を有する重合体が挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
第二級アミノ基含有構造単位を構造中に有する重合体としては、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が挙げられる。この場合、該重合体は、炭素数2~4のアルキレンイミンにより形成されたポリアルキレンイミン構造単位を有することが好ましい。より好ましくは、炭素数2又は3のアルキレンイミンにより形成されたポリアルキレンイミン構造単位を有することであり、特に好ましくは、エチレンイミンにより形成されたポリエチレンイミン構造単位、すなわち、下記式(2)で表される第二級アミノ基含有構造単位を構造中に有することである。
【0022】
【化2】
【0023】
上記高分子化合物は、第一級アミノ基含有構造単位及び/又は第二級アミノ基含有構造単位のみからなるものであってもよく、それ以外の構造単位を有するものであってもよい。それ以外の構造単位を構造中に有するものである場合、その他の構造単位の割合は、ポリアミンが有する全構造単位100モル%に対して、60モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、40モル%以下であり、最も好ましくは、0モル%以下、すなわち、第一級アミノ基含有構造単位及び/又は第二級アミノ基含有構造単位のみからなることである。
【0024】
上記ポリアミンが第一級アミノ基含有構造単位及び/又は第二級アミノ基含有構造単位以外の構造単位を有する場合、該構造単位を形成する単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテン、アセチレン、アクリル酸、スチレン、又は、ビニルカルバゾール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの単量体の炭素原子に結合した水素原子が他の有機基に置換された構造のものも好適に用いることができる。水素原子と置換する他の有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1~10の炭化水素基等が挙げられる。
【0025】
上記ポリアミンが重合体である場合、重量平均分子量は、100~1000000であることが好ましい。このような重量平均分子量であると、成膜性に優れ、デバイス中で安定に存在する。より好ましくは、200~500000であり、更に好ましくは、300~100000である。
【0026】
上記窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物には、ピリジン環骨格を構造中に有し、かつ、構造中に含まれるピリジン環のうち、少なくとも1つのピリジン環の窒素原子に他の原子が配位していないあらゆる化合物が含まれ、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を少なくとも1つ含む限り、それに加えて、窒素原子に他の原子が配位したピリジン環を有する化合物も含まれる。
【0027】
窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物は、下記式(3)で表すことができる。
【0028】
【化3】
【0029】
(式中、ピリジン環に結合したR~Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。R~Rは互いに結合していてもよい。ただし、R~Rが結合したピリジン環の窒素原子には他の原子が配位していない。)
【0030】
上記式(3)中、R~Rが1価の有機基である場合、該1価の有機基としては、置換基を有していてもよいアリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールアルコキシ基、シリル基、ヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、チオール基、エポキシ基、アシル基、置換基を有していてもよいオリゴアリール基、1価のオリゴ複素環基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アゾ基、スタニル基、ホスフィノ基、シリルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有していてもよいアリールスルフィニル基、置換基を有していてもよいアルキルスルフィニル基、ホルミル基、シアノ基、ニトロ基、アリールスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基;メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基等のアルキルスルホネート基;ベンゼンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基等のアリールスルホネート基;ベンジルスルホネート基等のアリールアルキルスルホネート基、ボリル基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、アリールスルホネート基、アルデヒド基、アセトニトリル基等が挙げられる。
なお、R~Rの1価の有機基が置換基を有する場合、置換基を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
【0031】
上記R~Rにおける置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のハロゲン原子;塩化メチル基、臭化メチル基、ヨウ化メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5~7の環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基;ヒドロキシ基;チオール基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;アゾ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1~40のアルキル基を有するモノ又はジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基などのアミノ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等のアシル基;ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、ブテニル基、スチリル基等の炭素数2~20のアルケニル基;エチニル基、1-プロピニル基、プロパルギル基、フェニルアセチニル等の炭素数2~20のアルキニル基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基;エチニルオキシ基、フェニルアセチルオキシ基等のアルキニルオキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基、ピレニルオキシ基等のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロフェニル基等のパーフルオロ基及び更に長鎖のパーフルオロ基;ジフェニルボリル基、ジメシチルボリル基、ビス(パーフルオロフェニル)ボリル基等のボリル基;アセチル基、ベンゾイル基等のカルボニル基;アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基等のスルフィニル基;アルキルスルホニルオキシ基;アリールスルホニルオキシ基;ホスフィノ基;トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチル-tert-ブチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリフェニルシリル基等のシリル基;シリルオキシ基;スタニル基;ハロゲン原子やアルキル基、アルコキシ基等で置換されていてもよいフェニル基、2,6-キシリル基、メシチル基、デュリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、トルイル基、アニシル基、フルオロフェニル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、フェナンスレニル基等のアリール基;チエニル基、フリル基、シラシクロペンタジエニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、アクリジニル基、キノリル基、キノキサロイル基、フェナンスロリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピロリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリミジル基、イミダゾリル基等のヘテロ環基;カルボキシル基;カルボン酸エステル;エポキシ基;イソシアノ基;シアネート基;イソシアネート基;チオシアネート基;イソチオシアネート基;カルバモイル基;N,N-ジメチルカルバモイル基、N,N-ジエチルカルバモイル基等のN,N-ジアルキルカルバモイル基;ホルミル基;ニトロソ基;ホルミルオキシ基;等が挙げられる。なお、これらの基は、ハロゲン原子やアルキル基、アリール基等で置換されていてもよく、更に、これらの基がお互いに任意の場所で結合して環を形成していてもよい。
【0032】
上記窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物としては、例えば、以下の(3-1)、(3-2)ような化合物が挙げられる。
【0033】
【化4】
【0034】
上記水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物には、水素原子が結合したチオフェン環を構造中に有するあらゆる化合物が含まれ、下記式(4)のように表すことができる。
【0035】
【化5】
【0036】
(式中、チオフェン環に結合したR~Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表し、少なくとも1つは水素原子である。R~Rは互いに結合していてもよい。)
【0037】
上記式(4)におけるR~Rが1価の有機基である場合、該1価の有機基としては、上記式(3)のR~Rが1価の有機基である場合の具体例と同様である。
【0038】
上記水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物としては、例えば、以下の(4-1)のような化合物が挙げられる。
【0039】
【化6】
【0040】
上記エステル結合を有する化合物には、エステル結合を構造中に有するあらゆる化合物が含まれ、下記式(5)のように表すことができる。
【0041】
【化7】
【0042】
(式中、R10、R11は、同一又は異なって、1価の有機基を表す。R10とR11とは結合していてもよい。)
【0043】
上記式(5)におけるR10、R11の1価の有機基としては、上記式(3)のR~Rが1価の有機基である場合の具体例と同様である。
【0044】
上記エステル結合を有する化合物としては、例えば、以下の(5-1)のような化合物が挙げられる。
【0045】
【化8】
【0046】
上記有機金属錯体としては、金属原子と炭素原子との結合を含むあらゆる化合物が含まれる。有機金属錯体としては、例えば、配位子に2,2’-ビピリジン-4,4’-ジカルボン酸を持つ、3配位のイリジウム錯体、ファクトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、8-ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、トリス(4-メチル-8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq)、8-ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq)、(1,10-フェナントロリン)-トリス-(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-ブタン-1,3-ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィンプラチナム(II)等の有機電界発光素子の発光材料として用いられる有機金属錯体等が挙げられる。
【0047】
本発明の有機素子は、電子注入性に優れるポリアミン層を有することから、n型半導体として優れた特性を有し、有機半導体、太陽電池、有機電界発光素子等として好適に用いることができる。したがって、本発明の有機素子が有機半導体、太陽電池、又は、有機電界発光素子として用いられることは、いずれも本発明の有機素子の好適な実施形態である。
【0048】
以下においては、本発明の有機素子が、有機電界発光素子として用いられる場合について、素子の構成について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に複数の有機化合物層が積層された構造を有することが好ましい。本発明の有機電界発光素子の構成は特に制限されないが、陰極、電子注入層及び/又は電子輸送層、発光層、正孔輸送層及び/又は正孔注入層、陽極の各層をこの順に隣接して有する素子であることが好ましい。なお、これらの各層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよい。
上記構成の有機電界発光素子において、素子が電子注入層、電子輸送層のいずれか一方のみを有する場合には、当該一方の層が陰極と発光層とに隣接して積層されることになり、素子が電子注入層と電子輸送層の両方を有する場合には、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層の順にこれらの層が隣接して積層されることになる。また、素子が正孔輸送層、正孔注入層のいずれか一方のみを有する場合には、当該一方の層が発光層と陽極とに隣接して積層されることになり、素子が正孔輸送層と正孔注入層の両方を有する場合には、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順にこれらの層が隣接して積層されることになる。
【0049】
本発明の有機電界発光素子は、基板上に陽極が形成された順構造の素子であってもよく、基板上に陰極が形成された逆構造の素子であってもよい。逆構造の素子の場合、基板上に形成された陰極に隣接する層の一部を金属酸化物等の無機酸化物で形成することで、仕事関数の小さな金属を電極に用いる必要がなくなり、厳密な封止が必要無くなる。
本発明において有機電界発光素子が逆構造の素子であること、すなわち、陽極と基板上に形成された陰極との間に複数の有機化合物層が積層された構造を有することは、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0050】
本発明の有機電界発光素子が逆構造の有機電界発光素子の場合、素子を構成する積層構造の中に金属酸化物層を有することが好ましい。順構造の有機電界発光素子の場合、素子を構成する積層構造の中に金属酸化物層を有していてもよい。該金属酸化物層は、陰極の一部若しくは電子注入層の一層、及び/又は、陽極の一部若しくは正孔注入層の一層として積層してもよい。
【0051】
本発明の有機電界発光素子において、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンはいずれの層を形成するものであってもよいが、電子注入性、電子輸送性に優れた材料であることから、電子注入層及び/又は電子輸送層の材料として用いられることが好ましく、これにより、素子を電子注入性及び/又は電子輸送性に優れたものとすることができる。
【0052】
また本発明の有機電界発光素子が、金属酸化物層を有し、該金属酸化物層に隣接して上記ポリアミンの塗布膜の層を有することもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
本発明の有機電界発光素子が金属酸化物層を有する場合、金属酸化物層は、後述するようにスプレー熱分解法、ゾルゲル法、スパッタ法等の方法で成膜され、表面は平滑ではなく凹凸を持つ。この金属酸化物層の上に、真空蒸着等の方法で発光層を成膜した場合、発光層の原料となる成分の種類によっては、金属酸化物層の表面の凹凸が結晶核となり、金属酸化物層に接する発光層を形成する材料の結晶化が促進される。このため、有機電界発光素子を完成させたとしても、大きなリーク電流が流れ、発光面が不均一化して、実用に耐える素子が得られない場合がある。
しかし、ポリアミンと溶剤とを含む組成物を塗布して層を形成すると、表面の平滑な層を形成することができるため、金属酸化物層と発光層との間に塗布により窒素含有化合物層を形成すると、発光層を形成する材料の結晶化が抑制され、これによって、金属酸化物層を有する有機電界発光素子がリーク電流の抑制と、均一な面発光を得ることができることになる。
【0053】
本発明の有機電界発光素子は、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンを含む電子注入層を有する場合であっても、更に他の材料を含む電子注入層を有していてもよい。
本発明の有機電界発光素子が順構造である場合、ポリアミン以外の電子注入層の材料として、例えば、リチウムキノリノール錯体(Liq)、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、Ca)、アルカリ金属のハロゲン化物(LiF、LiCl、LiBr、LiI、NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、CsF、CsCl、CsBr、CsI)、金属酸化物(LiO、NaO、KO、CsO、CaO)などの電子注入材料を用いることができる。中でも、アルカリ金属又はアルカリ金属のハロゲン化物を用いることが好ましい。
【0054】
本発明の有機電界発光素子が逆構造である場合、陰極の一部若しくはポリアミンを含む電子注入層以外の電子注入層の一層として金属酸化物層を有していてもよく、該金属酸化物層は、単体の金属酸化物からなる層、二種類以上の金属酸化物を混合した層と単体の金属酸化物からなる層のいずれか一方または両方を積層した層、二種類以上の金属酸化物を混合した層のいずれであってもよい。
金属酸化物層を形成する金属酸化物を構成する金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、インジウム、ガリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ケイ素が挙げられる。
【0055】
上記金属酸化物層が、二種類以上の金属酸化物を混合した層を含む場合、金属酸化物を構成する金属元素の少なくとも一つが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、チタン、亜鉛からなる層であることが好ましい。
金属酸化物層が、単体の金属酸化物からなる層である場合、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群から選ばれる金属酸化物からなる層であることが好ましい。
【0056】
上記金属酸化物層が、二種類以上の金属酸化物を混合した層と単体の金属酸化物からなる層のいずれか一方または両方を積層した層、または二種類以上の金属酸化物を混合した層である場合、酸化チタン/酸化亜鉛、酸化チタン/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化ケイ素、酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化カルシウム/酸化アルミニウム、から選ばれる二種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したもの、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化インジウム/酸化ガリウム/酸化亜鉛、から選ばれる三種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものなどが挙げられる。
また金属酸化物層は、特殊な組成として良好な特性を示す酸化物半導体であるIGZO(酸化インジウムガリウム亜鉛)および/またはエレクトライドである12CaO・7Alを含むものであってもよい。
【0057】
上記金属酸化物層の平均厚さは、特に限定されないが、1~1000nmであることが好ましく、2~100nmであることがより好ましい。
金属酸化物層の平均厚さは、触針式段差計、又は分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0058】
本発明の有機電界発光素子において、電子輸送層を形成する材料としては、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンの他、フェニル-ディピレニルホスフィンオキサイド(POPy)のようなホスフィンオキサイド誘導体、トリス-1,3,5-(3’-(ピリジン-3’’-イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2-(3-(9-カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2-フェニル-4,6-ビス(3,5-ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4-ビス(4-ビフェニル)-6-(4’-(2-ピリジニル)-4-ビフェニル)-[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3-フェニル-4-(1’-ナフチル)-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル-1,3,4-オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’-(1,3,5-ベントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ))、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq)などに代表される各種金属錯体、2,5-ビス(6’-(2’,2’’-ビピリジル))-1,1-ジメチル-3,4-ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体、後述する実施例で用いられる式(7)の化合物のようなフルオランテン誘導体、上記式(3-2)、(4-1)や後述する実施例で用いられる式(8)の化合物のような縮環多環式ホウ素含有化合物、上記式(3-1)や後述する実施例で用いられる式(9)の化合物のようなスピロビフルオレン骨格を有する縮環多環式化合物等が挙げられる。
【0059】
上記電子輸送層の平均厚さは、特に限定されないが、5~150nmであることが好ましく、10~100nmであることがより好ましい。
電子輸送層の平均厚さは、触針式段差計、又は分光エリプソメトリーにより測定することができる。
【0060】
本発明の有機電界発光素子において、発光層の材料としては、発光層の材料として通常用いることのできるいずれの材料を用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。具体的には、例えば、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(Zn(BTZ))と、トリス[1-フェニルイソキノリン]イリジウム(III)(Ir(piq))等を挙げることができる。
また、発光層を形成する材料は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
【0061】
上記発光層を形成する高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ-フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキルフェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ-フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5-ジアルコキシ-パラ-フェニレンビニレン)(RO-PPV)、シアノ-置換-ポリ(パラ-フェンビニレン)(CN-PPV)、ポリ(2-ジメチルオクチルシリル-パラ-フェニレンビニレン)(DMOS-PPV)、ポリ(2-メトキシ,5-(2’-エチルヘキソキシ)-パラ-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン-アルト-ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω-ビス[N,N’-ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]-ポリ[9,9-ビス(2-エチルヘキシル)フルオレン-2,7-ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレニル-オルト-コ(アントラセン-9,10-ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ-フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5-ジアルコキシ-パラ-フェニレン)(RO-PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物;更には特願2010-230995号、特願2011-6457号に記載のホウ素化合物系高分子材料等が挙げられる。
【0062】
上記発光層を形成する低分子材料としては、例えば、配位子に2,2’-ビピリジン-4,4’-ジカルボン酸を持つ、3配位のイリジウム錯体、ファクトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、8-ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq)、トリス(4-メチル-8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、8-ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq)、(1,10-フェナントロリン)-トリス-(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-ブタン-1,3-ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィンプラチナム(II)のような各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物;ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物;フェナントレンのようなフェナントレン系化合物;クリセン、6-ニトロクリセンのようなクリセン系化合物;ペリレン、N,N’-ビス(2,5-ジ-t-ブチルフェニル)-3,4,9,10-ペリレン-ジ-カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物;コロネンのようなコロネン系化合物;アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物;ピレンのようなピレン系化合物;4-(ジ-シアノメチレン)-2-メチル-6-(パラ-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)のようなピラン系化合物;アクリジンのようなアクリジン系化合物;スチルベンのようなスチルベン系化合物;2,5-ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物;ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物;ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物;2,2’-(パラ-フェニレンジビニレン)-ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物;ビスチリル(1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物;ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物;クマリンのようなクマリン系化合物;ペリノンのようなペリノン系化合物;オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物;アルダジン系化合物;1,2,3,4,5-ペンタフェニル-1,3-シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物;キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物;ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物;2,2’,7,7’-テトラフェニル-9,9’-スピロビフルオレンのようなスピロ化合物;フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物;更には特開2009-155325号公報、特開2011-184430号公報および特願2011-6458号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられる。また、市販品であるKHLHS-04、KHLDR-03等も用いることができる
【0063】
上記発光層の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましく、20~100nmであることがより好ましい。
発光層の平均厚さは、触針式段差計、又は水晶振動子膜厚計により発光層の成膜時に測定することができる。
【0064】
本発明の有機電界発光素子において、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンが、電子注入層及び/又は電子輸送層の材料として用いられる場合、該ポリアミンを含む層に隣接する層となり得るのは、陰極、電子注入層、電子輸送層、又は発光層である。したがって、これらの層がポリアミンを含む層に隣接する場合には、該隣接層を構成する材料全体に対する、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体の合計含有量が5質量%以下となるように材料を選択して用いることが必要となる。
【0065】
本発明の有機電界発光素子において、正孔輸送層に用いる材料としては、各種p型の高分子材料(有機ポリマー)、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
具体的には、正孔輸送層の材料として、例えば、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)、N4,N4’-ビス(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)-N4,N4’-ジフェニルビフェニルー4,4’-ジアミン(DBTPB)、ポリアリールアミン、フルオレン-アリールアミン共重合体、フルオレン-ビチオフェン共重合体、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。これらの正孔輸送層の材料は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、正孔輸送層の材料として用いられるポリチオフェンを含有する混合物として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0066】
上記正孔輸送層の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましく、20~100nmであることがより好ましい。
正孔輸送層の平均厚さは、触針式段差計、又は分光エリプソメトリーにより測定することができる。
【0067】
本発明の有機電界発光素子において、正孔注入層は、無機材料からなるものであってもよいし、有機材料からなるものであってもよい。無機材料は、有機材料と比較して安定であるため、有機材料を用いた場合と比較して、酸素や水に対する高い耐性が得られやすい。
無機材料としては、特に制限されないが、例えば、酸化バナジウム(V)、酸化モリブテン(MoO)、酸化ルテニウム(RuO)等の金属酸化物を1種又は2種以上を用いることができる。
有機材料としては、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)や2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノ-キノジメタン(F4-TCNQ)等を用いることができる。
【0068】
上記正孔注入層の平均厚さは、特に限定されないが、1~1000nmであることが好ましく、5~50nmであることがより好ましい。
正孔注入層の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0069】
本発明の有機電界発光素子が逆構造の素子の場合、陰極の材料としては、ITO(インジウム酸化錫)、IZO(インジウム酸化亜鉛)、FTO(フッ素酸化錫)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物の導電材料が挙げられる。この中でも、陰極の材料として、ITO、IZO、FTOを用いることが好ましい。
また、順構造の素子の場合、陰極の材料としては、Au、Pt、Ag、Cu、Al又はこれらを含む合金等が挙げられる。
【0070】
上記陰極の平均厚さは、特に制限されないが、10~500nmであることが好ましく、100~200nmであることがより好ましい。
陰極の平均厚さは、触針式段差計、又は分光エリプソメトリーにより測定できる。
【0071】
本発明の有機電界発光素子が逆構造の素子の場合、陽極に用いられる材料としては、ITO、IZO、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金等が挙げられる。この中でも、ITO、IZO、Au、Ag、Alを用いることが好ましい。
また、順構造の素子の場合、陽極に用いられる材料としては、ITO、IZO、FTO、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物の導電材料が挙げられる。
【0072】
上記陽極の平均厚さは、特に限定されないが、10~1000nmであることが好ましく、30~150nmであることがより好ましい。また、陽極の材料として不透過な材料を用いる場合でも、例えば、平均厚さを10~30nm程度にすることで、トップエミッション型の有機電界発光素子における透明な陽極として使用できる。
陽極の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により陽極の成膜時に測定することができる。
【0073】
本発明の有機電界発光素子において、基板の材料としては、樹脂材料、ガラス材料等が挙げられる。
基板に用いられる樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等が挙げられる。基板の材料として、樹脂材料を用いた場合、柔軟性に優れた有機電界発光素子が得られるため好ましい。
基板に用いられるガラス材料としては、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。
【0074】
本発明の有機電界発光素子がボトムエミッション型のものである場合には、基板の材料として、透明基板を用いる。
本発明の有機電界発光素子がトップエミッション型のものである場合には、基板の材料として、透明基板だけでなく、不透明基板を用いてもよい。不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料からなる基板、ステンレス鋼のような金属板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成した基板、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0075】
上記基板の平均厚さは、基板の材料等に応じて決定でき、0.1~30mmであることが好ましく、0.1~10mmであることがより好ましい。
基板の平均厚さは、デジタルマルチメーター、又はノギスにより測定できる。
【0076】
2.有機素子の製造方法
本発明はまた、陽極と陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機素子を製造する方法であって、該製造方法は、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンを含む材料を用いて陽極と陰極との間にポリアミンを含む層を形成する工程と、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体の合計含有量が5質量%以下である材料を用いてポリアミンを含む層に隣接する層を形成する工程とを含むことを特徴とする有機素子の製造方法でもある。
このような製造方法で製造することで、上述した本発明の有機素子を製造することができる。
【0077】
上記第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンを含む材料は、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンを含む限り、その他の化合物を含んでいてもよいが、第一級アミノ基及び/又は第二級アミノ基を構造中に有するポリアミンのみからなることが好ましい。
【0078】
上記窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体の合計含有量が5質量%以下である材料によって形成される層は、電子輸送層であることが好ましく、該材料は、上述した電子輸送層を形成する材料の1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0079】
本発明の有機素子の製造方法は、ポリアミンを含む層を形成する工程、及び、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体の合計含有量が5質量%以下である材料を用いてポリアミンを含む層に隣接する層を形成する工程以外に、有機素子を構成する他の層を形成する工程や、素子を封止する工程を含んでいてもよい。
有機素子を構成する他の層としては、上述した本発明の有機素子を構成する各層が挙げられ、これらの層を形成する材料として上述した材料を用いることができる。
【0080】
本発明の有機素子の製造方法において、有機化合物から形成される層の成膜方法は特に限定されず、材料の特性に合わせて種々の方法を適宜用いることができるが、溶液にして塗布できる場合はスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いて成膜することができる。このうち、膜厚をより制御しやすいという点でスピンコート法やスリットコート法が好ましい。塗布しない場合や溶媒溶解性が低い場合は真空蒸着法や、ESDUS(Evaporative Spray Deposition from Ultra-dilute Solution)法などが好適な例として挙げられる。
【0081】
上記有機化合物から形成される層を、有機化合物溶液を塗布して形成する場合、有機化合物を溶解するために用いる溶媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
これらの中でも、溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
【0082】
上記陰極、陽極、及び、金属酸化物層は、スパッタ法、真空蒸着法、ゾルゲル法、スプレー熱分解(SPD)法、原子層堆積(ALD)法、気相成膜法、液相成膜法等により形成することができる。陽極、陰極の形成には、金属箔の接合も用いることができる。これらの方法は各層の材料の特性に応じて選択するのが好ましく、層ごとに作製方法が異なっていても良い。有機化合物層の上に金属酸化物層を形成する場合には、これらの中でも、気相製膜法を用いて形成するのがより好ましい。気相製膜法によれば、有機化合物層の表面を壊すことなく清浄にかつ隣接する層と接触よく形成することができる。
【0083】
本発明の有機素子の製造方法において、素子を封止する方法としては通常の方法を適宜使用できる。例えば、不活性ガス中で封止容器を接着する方法や、有機素子の上に直接封止膜を形成する方法などが挙げられる。これらに加えて、水分吸収材を封入する方法を併用してもよい。
【0084】
3.有機電界発光素子、太陽電池、有機半導体
本発明の有機素子は、電子注入性に優れたポリアミンを含む層を有しながら耐熱性に優れることから、有機電界発光素子や、太陽電池、有機半導体として好適に用いることができる。有機素子が有機電界発光素子として用いられる場合の素子の構成や材料については上述したとおりであるが、有機素子が太陽電池や有機半導体として使用される場合についても、上述の記載の中から、素子の構成や材料を適宜選択して用いることができる。また本発明の有機素子が有機電界発光素子として用いられる場合、有機化合物層の材料を適宜選択することによって発光色を変化させることができ、またカラーフィルター等を併用して所望の発光色を得ることもできる。そのため、表示装置の発光部位や照明装置として好適に用いることができる。特に、有機電界発光素子が逆構造の素子である場合には、逆構造という特性から、酸化物TFTと組み合わせた表示装置が好適である。
このような、本発明の有機電界発光素子を備えることを特徴とする表示装置や、本発明の有機電界発光素子を備えることを特徴とする照明装置もまた、本発明の1つである。
【実施例
【0085】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0086】
実施例1
以下に示す方法により、有機EL素子1を作製した。
[工程1]
基板2として、ITOからなる厚み150nmのパターニングされた電極(陰極3)が形成されている平均厚さ0.7mmの市販されている透明ガラス基板を用意した。そして、陰極3を有する基板2を、アセトン中、イソプロパノール中で超音波洗浄し、その後、UVオゾン洗浄を20分間行った。
[工程2]
基板2をスパッタリング装置にセットし、基板2上に、亜鉛金属をターゲットとし、反応ガスとして酸素をキャリアガスとしてアルゴンを用いたスパッタ法により、平均厚さ20nmの酸化亜鉛(ZnO)層を形成し、酸化物層4を形成した。
[工程3]
次に、日本触媒製ポリエチレンイミン(PI)を酸化物層4の上にスピンコートにより塗布し、電子注入層5を形成した。
[工程4]
次に、電子注入層5までの各層が形成された基板2を、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。また、ケミプロ化成より購入したホスト材料KHLHS-04、発光ドーパントKHLDR-03、下記(6)で示されるN,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)、下記(7)で示される化合物1をそれぞれアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。そして、真空蒸着装置内を約1×10-5Paの圧力となるまで減圧して、化合物1を15nm蒸着し、電子輸送層6を形成した。次にKHLHS-04、KHLDR-03、α-NPDを15nm共蒸着し、発光層7を成膜した。 次に、α-NPDを40nm蒸着することにより、正孔輸送層8を成膜した。さらに、三酸化モリブデンMoOを真空一貫で蒸着することにより成膜し、膜厚が10nmの正孔注入層9を形成した。
[工程5]
次に、正孔注入層9まで形成した基板2上に、アルミニウム(陽極10)を膜厚が100nmとなるように蒸着し、発明の実施例である「素子1」を得た。
【0087】
実施例2
上記、工程4における化合物1を、下記(8)で示される化合物2に置き換えたこと以外は実施例1と同様にして、本発明の実施例である「素子2」を得た。
【0088】
実施例3
上記、工程4における化合物1を、下記(9)で示される化合物3に置き換えたこと以外は実施例1と同様にして、本発明の実施例である「素子3」を得た。
【0089】
実施例4
上記、工程4における化合物1を、下記(10)で示される化合物4に置き換えたこと以外は実施例1と同様にして、本発明の実施例である「素子4」を得た。
【0090】
比較例1
上記、工程4における化合物1を、下記(11)で示されるAlq3(有機金属錯体)に置き換えたこと以外は実施例1と同様にして、本発明の比較例である「素子5」を得た。
【0091】
比較例2
上記、工程4における化合物1を、上述した(3-2)の化合物(窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物)である化合物5に置き換えたこと以外は実施例1と同様にして、本発明の比較例である「素子6」を得た。
【0092】
比較例3
上記、工程4における化合物1を、上述した(3-1)の化合物(窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物)である化合物6に置き換えたこと以外は実施例1と同様にして、本発明の比較例である「素子7」を得た。
【0093】
比較例4
上記、工程4における化合物1を、上述した(4-1)の化合物(水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物)である化合物7に置き換えたこと以外は実施例1と同様にして、本発明の比較例である「素子8」を得た。
【0094】
実施例5
上記、工程4における化合物1を、化合物2にAlq3を1質量%混ぜたものに置き換えたこと以外は実施例1と同様にして、本発明の実施例である「素子9」を得た。
【0095】
実施例6
上記、工程4における化合物1を、化合物2にAlq3を5質量%混ぜたものに置き換えたこと以外は実施例1と同様にして、本発明の実施例である「素子10」を得た。
【0096】
比較例5
上記、工程4における化合物1を、化合物2にAlq3を10質量%混ぜたものに置き換えたこと以外は実施例1と同様にして、本発明の実施例である「素子11」を得た。
【0097】
【化9】
【0098】
有機電界発光素子の発光特性測定
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」を用いて、素子への電圧印加と、電流測定を行った。トプコン社製の「BM-7」を用いて発光輝度を測定した。続いてグローブボックス内で100℃に加熱したホットプレートの上に素子を10分間置き、室温まで冷ました後、同様に発光特性を測定した。表1に、加熱前の電流密度が10mA/cm時の発光効率を1としたときの、加熱後の電流密度が10mA/cm時の発光効率を示した。
【0099】
【表1】
【0100】
ポリエチレンイミン層に隣接する層が、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体のいずれにも該当しない化合物により形成された素子1~素子4、並びに、これらの化合物を含むものの、その割合が5質量%以下である素子9、素子10は素子の加熱後も高い発光効率(電流効率)を維持してることから、高い耐熱性を有していることがわかる。
これらの結果から、ポリアミンを含む層に隣接する層が、該隣接層を構成する材料全体に対する、窒素原子に他の原子が配位していないピリジン環を有する化合物、水素原子が結合したチオフェン環を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及び、有機金属錯体の合計含有量が5質量%以下の層であれば高い耐熱性を有する素子となることが確認された。
【符号の説明】
【0101】
1:有機電界発光素子
2:基板
3:陰極
4:酸化物層
5:電子注入層
6:電子輸送層
7:発光層
8:正孔輸送層
9:正孔注入層
10:陽極
11:有機薄膜太陽電池素子
12:基板
13:陰極
14:酸化物層
15:電子注入層
16:活性層
17:正孔注入層
18:陽極
図1
図2