(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸を含む安定な凍結乾燥物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20230224BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230224BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230224BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230224BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230224BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230224BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230224BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K47/12
A61K9/19
A61K9/08
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K47/02
(21)【出願番号】P 2020508004
(86)(22)【出願日】2018-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2018072077
(87)【国際公開番号】W WO2019034673
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-12
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】モーザー、 ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】グレーン、 ヴィオーラ
(72)【発明者】
【氏名】アムマン、 トーマス
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-528242(JP,A)
【文献】特開2013-227274(JP,A)
【文献】特表2009-518305(JP,A)
【文献】特表2009-514776(JP,A)
【文献】特表2005-524655(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0074402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩を含
み、ジカルボン酸が、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、タール酸、フマル酸またはシュウ酸である、安定な凍結乾燥物。
【請求項2】
98%を超える化学純度および99%を超える立体異性体純度を有する、請求項
1に記載の安定な凍結乾燥物。
【請求項3】
請求項
1に記載の凍結乾燥物を、水または薬学的に許容されるビヒクル液体に溶解することによって得られる再構成製品。
【請求項4】
前記水が、注射用滅菌水である請求項
3に記載の再構成製品。
【請求項5】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項
3または
4に記載の再構成製品。
【請求項6】
追加の薬学的に許容される活性成分をさらに含む、請求項
3~
5のいずれか
1項に記載の再構成製品。
【請求項7】
緩衝液をさらに含む、請求項
3~
6のいずれか
1項に記載の再構成製品。
【請求項8】
請求項
1に記載の凍結乾燥物を調製する方法であって、以下の工程、
(i)5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸又はその薬学的に許容される塩を、
コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、タール酸、フマル酸またはシュウ酸から選択されたジカルボン酸又はその塩を含む水に溶かす工程、
(ii)水を凍結させる工程、および
(iii)その後、凍結した水を真空下で除去する工程、
を含む方法。
【請求項9】
NaOHが、工程(i)で添加される、請求項
8に記載の凍結乾燥物
を調製する方法。
【請求項10】
癌治療に
使用するための、請求項
3~
7のいずれか
1項に記載の
再構成製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-(6R)-CH2-THF]またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩を含む安定な凍結乾燥物に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中で使用される場合、5,10-CH2-(6R)-THFは、その天然に存在する異性体形態(N-[4-[(6aR)-3-アミノ-1,2,5,6,6a,7-ヘキサヒドロ-1-オキソイミダゾ[1,5-f]プテリジン-8(9H)-イル]ベンゾイル]-L-グルタミン酸)における5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を指し、ここで、プテリジン環のC6におけるキラル中心およびグルタミン酸部分のα-炭素は、それらの天然に存在する立体配置にある。5-フルオロウラシル(5-FU)と組み合わせた5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、固形腫瘍の治療における薬剤として知られている(Seley, K. L. Drugs 4(1), 99, 2001)。活性型5,10-CH2―(6R)THFは、チミジル酸シンターゼ(TS)を阻害することにより、塩基類似体および5FU代謝産物5FdUMPと共にその化学療法作用を達成する。TSはデオキシウリジル酸(dUMP)のデオキシチミジル酸(dTMP)への変換を触媒し、これはDNA合成のための必須の構成単位である。TSの不活性化は、5-FUの代謝産物である塩基類似体5-FdUMPであるTSと5,10-CH2-(6R)-THFとの間の共有結合性三元抑制複合体の生成によって起こる。5FUの細胞毒性作用の増強は5,10-CH2―(6R)THFの細胞内濃度を増加させることによって達成でき、その結果、三元複合体の安定性が増加する。これはDNA合成および修復の直接的な阻害を引き起こし、これは最終的に、細胞死および腫瘍増殖の遅延を生じる。
【0003】
しかしながら、5,10-CH2-(6R)-THFに関連する望ましくない特性があり、これはその医薬的使用を制限する。例えば、5,10-CH2-(6R)-THFは、酸化および化学的劣化を非常に受けやすく、その結果、不純物レベルが不都合に高くなる。5,10-CH2-(6R)-THFの酸化および化学分解に対する感受性はその非晶質形態で存在し、大きな表面積を有する場合、例えば、凍結乾燥物としてのその医薬使用形態において、とりわけ高くなる。医薬用途に従うためには、それぞれの組成物が組成物の物理化学的特性、取り扱いおよび工程の容易さなどに有意な変化を示さずに、許容可能な期間にわたる有効な貯蔵が達成され得るように、高い化学的および異性体安定性を含むいくつかの要件を満たす必要があることが周知である。
【0004】
5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、テトラヒドロ葉酸およびホルムアルデヒドの付加生成物であり(例えば、Poe, M. et al. Biochemistry 18 (24), 5527, 1979; Kallen, R. G. Methods in Enzymology 18B, 705, 1971を参照のこと)、空気による酸化に対するその極めて高い感受性、ならびに化学的分解および/または加水分解を潜在的にもたらす中性および/または酸性環境における不安定性について知られている(例えば、Odin, E. et al., Cancer Investigation 16 (7), 447, 1998; Osborn, M. J. et al., J. Am. Chem. Soc. 82, 4921, 1960; Hawkes, J., and Villota, R. Food Sci. Nutr. 28, 439, 1989)。
【0005】
5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸塩の組成物を安定化する試みには、例えば、(i)固体製剤の再構成のための特別な技術的装置の使用による大気中酸素の厳密な排除、および無空気環境における5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸塩の噴射(例えば、Odin, E. et al., Cancer Investigation 16 (7), 447, 1998、米国特許No.4,564,054を参照されたい)、(ii)高感度5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸に対するおよび特にテトラヒドロ葉酸に対する抗酸化剤としての、L(+)-アスコルビン酸またはその塩、還元ガンマ-グルタチオン、チオグリセロール、N-アセチル-L-システイン等のような還元剤の添加、(iii)シクロデキストリン包接化合物による安定化(例えば、EP0579996を参照)、(iv)pHを塩基性に調整しながらのクエン酸塩の添加(例えば、EP1641460を参照);または(v)硫酸塩(例えば、EP0537492を参照)または半硫酸塩(例えば、EP2837631を参照)などの種々の結晶形の生成、が含まれた。
【0006】
5,10-CH2-(6R)-THFの安定な固相医薬組成物、とりわけ凍結乾燥物に対する大きな必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]、またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩を含む特定の凍結乾燥物は以前に議論された公知の欠点を克服し、高純度および低含量の酸化生成物または他の化学分解生成物のいずれかの固相医薬組成物の調製を可能にすることが見出された。本発明の凍結乾燥物の有利な安定性特性は、医薬用途における有効な使用を可能にする。
【0008】
本明細書において、「薬学的に許容される塩」という用語は、硫酸塩もしくはスルホン酸塩、より望ましくは硫酸塩、より更に望ましくは半硫酸塩、又はアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、好ましくはナトリウム、カリウム、マグネシウムもしくはカルシウム塩などの酸性塩に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
5,10-CH2-(6R)-THFへのジカルボン酸の付加は、凍結乾燥工程中に活性成分5,10-CH2-(6R)-THFの純度を著しく高レベルに維持するのを助け、同時に副生物の量を許容できる低レベルに維持する。得られた凍結乾燥製品は活性成分の有意な損失なしに、例えば、活性成分の量を数ヶ月間、95%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは約99%、99.5%または99.8%を含む数ヶ月間維持することにより、数ヶ月以上安定性を示す。これは、5,10-CH2-(6R)-THFの凍結乾燥物の製造、貯蔵および使用を、再構成前に有意な分解なしに可能にする。
【0010】
本発明の凍結乾燥物は、対応する活性成分とは異なる含水量を有することがさらに見出された。
【0011】
凍結乾燥または凍結乾燥は、その中に溶解した物質を含有する水溶液を凍結させ、次いで周囲の圧力を低下させて、凍結した水を固相から気相に直接昇華させることによって作用する脱水プロセスである。完全な凍結乾燥プロセスには、通常、前処理、凍結、一次乾燥、および二次乾燥の4つの段階がある。
【0012】
前処理は、凍結前に材料を処理する任意の方法を含む。これは、他の成分の添加を含み得る。5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]、またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩を含む安定な凍結乾燥物の調製においては前処理が可能であるが、必須ではない。
【0013】
凍結はしばしば、材料の水溶液を、機械的冷却によって冷却される凍結乾燥フラスコに入れることによって、またはドライアイスもしくは液体窒素を使用することによって行われる。大規模では、水溶液の凍結が通常、凍結乾燥機を用いて行われる。この工程では、材料を、材料の固相と液相が共存できる最低温度であるその三重点未満に冷却することが重要である。これは、溶融ではなく昇華が以下の工程で起こることを確実にする。凍結は、好ましくは5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]、またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩を含む安定な凍結乾燥物の調製において、-45℃~-70℃の温度で行われる。
【0014】
5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]、またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩を含む安定な凍結乾燥物の調製においては、約-5℃~-2℃の保存温度で1~2時間のアニーリングが可能であるが、必須ではない。
【0015】
一次乾燥段階の間、圧力を(数ミリバールの範囲まで)低下させ、氷が昇華するのに十分な熱を材料に供給する。この初期乾燥段階では、材料中の水の約95%が昇華される。過度の熱処理が加えられると、材料の構造が変化する可能性があるので、この段階は遅くなり得る(産業では数日であり得る)。一次乾燥段階では、圧力が部分真空の適用によって制御される。真空は昇華を加速し、意図的な乾燥プロセスとして有用にする。5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩を含む安定な凍結乾燥物の調製において、一次乾燥段階は、好ましくは-45℃~-70℃の凍結温度で開始される。次いで、一次乾燥段階の間、温度は凍結温度で、任意選択の開始期間、好ましくは10分~120分間の後、経時的に、好ましくは約0℃に上昇する。
【0016】
一次乾燥段階の間、好ましくは約50μbar~200μbarの圧力が保持される。二次乾燥段階は、氷が一次乾燥段階で除去されたので、凍結していない水分子を除去することを目的とする。
この段階では、温度が水分子と凍結材料との間に形成された物理化学的相互作用を破壊するために、一次乾燥段階よりも高く上昇され、0℃を超えることさえあり得る。通常、脱着を促進するために、この段階で圧力も下げられる(典型的には、マイクロバールまたは分数パスカルの範囲)。
【0017】
二次乾燥は、好ましくは5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]、またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩を含む安定な凍結乾燥物の調製において、約25℃~30℃までの温度および約50μbar~200μbarの圧で行われる。5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]、またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩を含む安定な凍結乾燥物の調製において、凍結温度から約25℃~30℃までの温度の温度勾配、および約50μbar~200μbarの圧力で進めることによって、一次および二次乾燥段階を組み合わせることができる。温度勾配は、温度がある時間一定に保たれる複数の保持工程を含むことができる。好ましくは、保持工程がもしあれば、凍結温度で、約0℃で、および約25℃~30℃である。
【0018】
凍結乾燥プロセスが完了した後、真空は通常、材料が密封される前に、窒素などの不活性ガスで破られる。作業の最後に、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]、またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩を含む凍結乾燥物の最終残留水分含量は、通常、約1%~5%である。
【0019】
安定性は、医薬製剤研究および薬物開発の重要な特性および構成要素である。化学的安定性の研究は、溶液状態および固体状態の両方で行われる。溶液状態および固体状態の安定性は、定性的および定量的の両方で異なることができることは確立された事実である。また、結晶性材料および凍結乾燥物などの非晶質材料の固体状態安定性も異なり得る。高温および/または高湿度などの様々なストレッサーに曝露することによって、原薬およびその医薬組成物の化学的安定性について広範な研究が行われている。これらの研究はまた、分解生成物に関する情報を提供し、医薬組成物の本質的な安定性と同様に、有意義な仕様を開発するのに役立つ。薬物分解のための最も一般的な経路はすなわち、加水分解、酸化、および光化学分解を含む。
【0020】
安定性試験の目的は温度、湿度、および光などの様々な環境要因の影響下で、製品の品質が時間とともにどのように変化するかに関する証拠を提供し、患者の安全性を保証するために、医薬品の適切な貯蔵寿命および推奨される貯蔵条件を確立することである。
【0021】
一実施形態は、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩を含む凍結乾燥物を対象とする。
【0022】
一実施形態は、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]またはその薬学的に許容される塩、およびコハク酸またはその塩を含む凍結乾燥物を対象とする。
【0023】
一実施形態は、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]またはその薬学的に許容される塩、およびマレイン酸またはその塩を含む凍結乾燥物を対象とする。
【0024】
一実施形態は、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]またはその薬学的に許容される塩、およびリンゴ酸またはその塩を含む凍結乾燥物を対象とする。
【0025】
一実施形態は、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]またはその薬学的に許容される塩、および酒石酸またはその塩を含む凍結乾燥物を対象とする。
【0026】
一実施形態は、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]またはその薬学的に許容される塩、およびフマル酸またはその塩を含む凍結乾燥物を対象とする。
【0027】
一実施形態は、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]またはその薬学的に許容される塩、およびシュウ酸またはその塩を含む凍結乾燥物を対象とする。
【0028】
本発明の凍結乾燥物は、実質的に非晶質である一方で、増強された貯蔵安定性などの増強された安定性を有する。
【0029】
本発明の凍結乾燥物は、さらに好ましくはそれを必要とする患者に投与される水性医薬製剤に再構成される(戻される:reconstituted)。
【0030】
さらなる態様は、本発明の凍結乾燥物の調製の方法であり、これは以下の工程を包含する。
(i)5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸又はその薬学的に許容される塩を、ジカルボン酸又はその塩を含む水に溶かす工程、
(ii)水を凍結させる工程、および
(iii)その後、凍結した水を真空下で除去する工程。
【0031】
5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸化合物の溶解を完了させるために、必要に応じて、NaOHまたはKOHのような水性塩基を工程(i)で添加する。
【0032】
工程(i)の溶液は工程(ii)を実施する前に、任意に滅菌フィルターを通して濾過することができる。
【0033】
工程(i)における溶液のpHは、6を超え、通常約8~14、好ましくは約9.3である。
さらなる態様は、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸[5,10-CH2-(6R)-THF]またはその薬学的に許容される塩、およびジカルボン酸またはその塩、ならびに滅菌水または薬学的に許容されるビヒクル液体または希釈剤のような薬学的に許容される担体または希釈剤を含み、任意選択で、殺菌剤、抗生物質、抗ウイルス剤、防腐剤、抗腫瘍剤、抗癌剤などの抗癌化合物、化学療法剤、抗真菌剤、および/または抗炎症剤、またはヒト使用に適した他の生物活性または治療剤、特に化学療法剤などの抗癌化合物、例えば5-FUおよび誘導体、ならびに抗葉酸塩、例えばメトトレキサート、ペメトレキセドを含むが、これらに限定されない少なくとも1つのさらなる治療剤をさらに含む、本発明の凍結乾燥物の再構成された医薬組成物を対象とする。
【0034】
「薬学的に許容されるビヒクル液体」は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリジノン(NMP)、グリコフルロール、イソプロピリデングリセロール(Solketal)、グリセロールホルマール、アセトン、テトラヒドロフルフリルアルコール、モノグリム、ジグリム、ジメチルイソソルビドまたは乳酸エチル、それらの混合物、またはそれらの水性混合物を指す。
【0035】
さらなる態様は、治療、好ましくは癌化学療法における、本発明の再構成された医薬組成物の使用に関する。
【0036】
必要に応じて、本発明の再構成された医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療剤をさらに含み得る。特定の実施形態では、少なくとも1つの追加の治療薬が殺菌剤、抗生物質、抗ウイルス剤、防腐剤、抗腫瘍剤、化学療法剤などの抗癌化合物、抗真菌剤、および/または抗炎症剤、またはヒトでの使用に適した他の生物活性または治療剤、特に化学療法剤などの抗癌化合物から選択されてもよい。
【0037】
化学療法剤などの抗癌剤は、特異的結合メンバー、タンパク質、核酸または核酸類似体(アンチセンス分子、リボザイム、およびsiRNAなどであるが、これらに限定されない)、脂質、ステロイド、大分子、小分子、または金属を含む化学療法剤を含むことができるが、これらに限定されない。1つ以上の抗癌剤は核酸、特にフッ素化核酸(例えば、5-フルオロウラシルまたはそのアナログまたはプロドラッグ)、抗葉酸(例えば、ペメトレキセド、ロメトレキソール)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン)、代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート、ゲムシタビン、テザシタビン)、5-FUモジュレーター、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、カルムスチン)、核酸生合成阻害剤(例えば、マイトマイシン、アントラサイクリン(例えば、エピルビシン、ドキソルビシン))、白金誘導体(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン)、微小管破壊薬(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンレビン、ビンクリスチン、受容体および非受容体チロシンキナーゼを含むが、これらに限定されないキナーゼの阻害剤(例えば、Iressa、Tarceva、SU5416、PTK787、Gleevec)、プロテオソーム阻害剤(例えば、非受容体チロシンキナーゼ) ボルテゾミブ、免疫モジュレーター(例えば、レバミゾール)、抗炎症薬、血管新生阻害薬、サイトカイン(例えば、インターロイキン、腫瘍壊死因子)、サイトカイン、ホルモン、サイトカインまたはホルモン受容体の活性を阻害する薬物(例えば、抗VEGF抗体ベバシズマブまたは「アバスチン」)。抗癌剤はまた、サイトカイン、ホルモン、またはホルモン受容体に結合するモノクローナル抗体(例えば、EGFまたはVEGF増殖因子(例えば、Avastin、Erbitux、herceptin)の活性化をブロックする抗体)などのモノクローナル抗体を含み得るが、これらに限定されない。
【0038】
さらなる態様において、本発明の再構成された医薬組成物はまた、公知の抗癌剤との組み合わせに適切である。これらの既知の抗がん剤には、次のもの、エストロゲンレセプターモジュレーター、アンドロゲンレセプターモジュレーター、レチノイドレセプターモジュレーター、細胞毒性剤、抗増殖剤、プレニルタンパク質トランスフェラーゼインヒビター、HMG-CoAレダクターゼインヒビター、HIVプロテアーゼインヒビター、逆トランスクリプターゼインヒビター、およびさらに血管新生阻害剤が含まれる。
【0039】
さらに、本発明の再構成された医薬組成物は、放射線療法と同時に投与するのに特に適している。
【0040】
「エストロゲン受容体モジュレーター」は、メカニズムにかかわらず、エストロゲンの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体モジュレーターの例としてはタモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トルミフェン、フルベストラント、[7-(2,2-ジメチル-1-オキソプロポキシ-4-メチル-2-[4-[2-(1-ピペリジニル)エトキシ]フェニル]-2H-1-ベンゾピラン-3-イル]フェニル2,2-ジメチルプロパノエート、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾンおよびSH646が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」は、メカニズムにかかわらず、アンドロゲンの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体モジュレーターの例としては、フィナステリドおよび他の5α-レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾールおよび酢酸アビラテロンが挙げられる。
【0042】
「レチノイド受容体モジュレーター」は、メカニズムにかかわらず、レチノイドの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。このようなレチノイド受容体モジュレーターの例には、ベキサロテン、トレチノイン、13-シス-レチノイン酸、9シス-レチノイン酸、α-ジフルオロメチルオルニチン、ILX23-7553、トランス-N-(4’-ヒドロキシフェニル)レチナミドおよびN4-カルボキシフェニルレチナミドが含まれる。
【0043】
「細胞毒性剤」とは、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、微小管阻害剤およびトポイソメラーゼ阻害剤を含む、主に細胞機能に対する直接的な作用を介して細胞死を生じるか、または細胞筋症を阻害または妨害する化合物をいう。
【0044】
細胞傷害剤の例としては、チラジミン、セルテンフィン、カケクチン、イホスファミド、タソナーミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ラニムスチン、ホテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタムスタミン、インプロスファミド、トロホスファミド、ニムスチン、ジブロスピジウムクロリド、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシホスファミド、シス-アミノジクロロ(2-メチルピリジン)プラチナ、ベンジルグアニン、グルホスファミドが挙げられるが、これらに限定されない。GPX100、(trans,trans)-mus-(ジアミン)-mus(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]四塩化物、ジアリシジニルスペルミン、三酸化ヒ素、1(11-ドデシルアミノ-10-ヒドロキシウンデシル)-3,7-ジメチルキサンチン、ゾルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、ピラルビシン、バルビシン、アンチネオプラストン、3’-デアミノ-3’-モルホリノ-13 デオキソ-10-ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755および4デメトキシ-3-デアミノ-アジリジニル-4-メチルスルホニルダウノルビシン(WO00/50032参照)。
【0045】
微小管阻害剤の例には、パクリタキセル、ビンデシン硫酸塩、3’,4’-ジデヒドロ-4’-デオキシ-8’-ノルビンコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、ミボブリンイセチオン酸塩、オーリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ-N-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N-ジメチル-L-L-バリル-N-メチル-L-バリル-L-プロリル-L-プロリン-t-ブチルアミド、TDX258およびBMS188797が含まれる。
【0046】
トポイソメラーゼ阻害剤は、例えば、トポテカン、ヒカプタミン、イリノテカン、ルビテカン、6エトキシプロピオニル-3’,4’-O-エキソベンジリデンカリン、9メトキシ-N,N-ジメチル-5-ニトロピラゾロ[3,4,5-kl]アクリジン-2-(6H)プロパンアミン、1-アミノ-9-エチル―5-フロロ―2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン、ルルトテカン、7[2-(N-イソプロピルアミノ)エチル]-(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、エトポシドリン酸、テニポシド、ソブゾキサン、2’-ジメチルアミノ-2’-デオキシトポシド、GL331、N[2-(ジメチルアミノ)エチル]-9-ヒドロキシ-5,6-ジメチル-6H-ピリド[4,3-b]カルバゾール-1-カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)-9-[2-[N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N-メチルアミノ]エチル]-5-[4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシフェニル]-5,5a,6,8,8a,9へキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3,d)-1,3ジオキソール-6-オン、2,3-(メチレン-ジオキシ)-5-メチル-7-ヒドロキシ-8-メトキシベンゾ[c]フェナントリジニウム、6,9-ビス[(2-アミノエチル)-アミノ]ベンゾ[g]イソキノリン-5,10-ジオン、5(3-アミノプロピルアミノ)-7,10-ジヒドロキシ-2-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)-6H-ピラゾロ[4,5,1-de]アクリジン-オン、N-[1-[2(ジエチルアミノ)-エチルアミノ]-7-メトキシ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イルメチル]ホルムアミド、N-[2-(ジメチル-アミノ)エチル)アクリジン-4-カルボキサミド、6-[[2-(ジメチルアミノ)]エチル]アミノ]-3-ヒドロキシ-7H-インデノ[2,1c]キノリン-7-オンおよびジメスナである。
【0047】
「抗増殖剤」は、G3139、RVASKRAS、GEM231およびINX3001のようなアンチセンスRNAおよびDNAオリゴヌクレオチド、ならびにエノシタビン、カルモフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、フルダラビン、カペシタビン、シタラビンオシタビン、ホステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキセド、エミテフル、チアゾフリン、デシタビン、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’-デオキシ-2’メチリデンシチジン、2’-フルオロメチレン-2’-デオキシシチジン、N[5-(2,3-ジヒドロベンゾフリル)-N’-(3,4-ジクロロフェニル)尿素、N6-[4-デオキシ-4-[N2-[2(E)、4(E)-テトラデカジエノイル]-L-グリセロ-β-マンノヘピラノシル]アデニン、エクテイナシジン、トロキサシタビン、4[2-アミノ-4オキソ-4,6,7,8-テトラヒドロ-3H-ピリミジノ[5,4-b]-1,4-チアジン-6-イル-(S)-エチル]-2,5-チエノイル-L- グルタミン酸、アミノプテリン、5-フルオロウラシル、アラノシン、11-アセチル-8-(カルバモイルオキシメチル)-4-ホルミル-6-メトキシ-14-オキサ-1,11-ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)テトラデカ-2,4,6-トリエン-9-イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’-シアノ-2’-デオキシ-N4-パルミトイル-1-β-D-アラビノフラノシルシトシンおよび3-アミノピリジン-2 カルボキサアルデヒドチオセミカルバゾンのような代謝拮抗剤である。
【0048】
「抗増殖剤」は、また、「血管新生阻害剤」の下に列挙されるもの以外の成長因子(例えば、トラスツズマブ)、および腫瘍抑制遺伝子(例えば、p53)に対するモノクローナル抗体を含み、これは、組換えウイルス媒介遺伝子導入を介して送達され得る(例えば、米国特許第6,069,134号を参照のこと)。
【0049】
以下の表の薬剤は、限定されるものではないが、好ましくは本発明の再構成された医薬組成物と組み合わされる。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
本発明の再構成された医薬組成物は、治療のために、特に癌化学療法において、すなわち、5,10-CH2-(6R)-THFの治療有効量を、そのような治療を必要とする対象に投与することを含む癌の治療法において使用することができる。
【0059】
別の実施形態では、本発明の再構成された医薬組成物が治療、好ましくは化学療法、すなわち癌の治療に使用される。治療される癌の例としては乳癌、食道癌、胃癌、胆嚢癌、胆管癌、結腸癌、直腸癌、肝癌、膵臓癌、卵巣癌、頭頸部癌、および中皮腫癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
好ましい実施形態において、癌は結腸癌、胃癌、乳癌、腸癌、胆嚢癌、肺癌(特に、腺癌)、転移性CRCを含む結腸直腸癌(CRC)、頭頸部癌、肝臓癌および膵臓癌を含む種々の癌形態から選択される。
【0061】
本発明の再構成された医薬組成物は、静脈内または筋肉内、皮下、動脈内などの非経口投与に適した形態である。非経口投与のために、流体単位投薬形態は典型的には再構成された凍結乾燥物、好ましくは本発明の再構成された医薬組成物、場合によってはさらなる治療薬、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含み、例えば、水性溶液または油性懸濁液を形成する。非経口溶液については、本発明の凍結乾燥物がその調製の間、例えば、適切なバイアルまたはアンプルに充填する前に、濾過滅菌され得る。
【0062】
本発明の再構成された医薬組成物と少なくとも1つのさらなる治療薬との併用療法の場合、活性薬剤は同じ医薬組成物の一部として投与されてもよく、または少なくとも1つのさらなる治療薬は別々に、すなわち、別個の(および場合によっては異なる)医薬組成物として、場合によっては異なる投与経路を介して、同時にまたは連続して投与されてもよい。
【0063】
本明細書中に記載されるような処置において使用される活性薬剤(すなわち、5,10-CH2-(6R)-THF(および場合により少なくとも1つのさらなる治療剤))の投与量は、処置される対象の年齢および健康状態、処置される疾病の型および重症度、ならびに投与の頻度などを含む種々の因子に依存する。がん治療および化学療法の当業者は、毒性および効力を評価するための公知のプロトコールに基づいて、活性医薬成分5,10-CH2-(6R)-THF単独または上記で定義した少なくとも1つのさらなる治療剤との組合せについての治療有効量および投薬計画を決定することができるであろう。
【0064】
用語「治療有効量」は、熟練した開業医(例えば、研究者、獣医師、医師または他の臨床医もしくは介護者)が求めている組織、系、動物、個体またはヒトにおいて生物学的応答または医学的応答を誘発する活性化合物の量を指し、これには、(i)疾患の予防;および/または(ii)疾患のさらなる発達の阻止(例えば、病理学および/または症状学のさらなる発達の阻止);および/または(iii)疾患の改善(例えば、病理学および/または症状学の逆転)が含まれる。本明細書で使用する「治療」という用語は(i)疾患の予防;および/または(ii)疾患の阻止(例えば、病理学および/または症状学のさらなる発達の阻止);および/または(iii)疾患の改善(例えば、病理学および/または症状学の逆転)が含まれる。
【0065】
選択肢の医薬組成物は投与法に応じて、0.1重量%~99重量%、好ましくは10重量%~60重量%の活性医薬成分(すなわち、5,10-CH2-(6R)-THF)を、任意選択で少なくとも1つのさらなる治療剤と組合せて含有することができる。
【0066】
がん治療に使用される5,10-CH2-(6R)-THFの典型的な用量範囲は、5mg/m2~1.5g/m2、好ましくは30mg/m2~500mg/m2(大腸がん治療用)、10mg/m2~1000mg/m2(メトトレキサート療法用)、より好ましくは約60mg/m2~約300mg/m2(結腸直腸がん治療用)、50mg/m2~500mg/m2(メトトレキサート療法用)であり得る。
【0067】
「異性体純度」または「立体異性体純度」という用語は本明細書で使用される場合、試料中の5,10-CH2-(6R)-THFの量を指し、これは同じ化合物の1つ以上の他の異性体を含み得る。本明細書で使用される場合、「異性体純度」または「立体異性体純度」という用語は約80%を超える、好ましくは約90%を超える、好ましくは約95%を超える、より好ましくは約97%を超える、さらにより好ましくは約99%を超える、より好ましくは約99.5%を超える、最も好ましくは100%までの他の異性体における5,10-CH2-(6R)-THFを意味し、残部は1つ以上の他の異性体であり得る。
【0068】
本明細書中で使用される用語「化学純度」は試料中の特定の化合物のパーセントを意味する。本明細書中で使用される用語「実質的な化学純度」は、約80%の化学純度、好ましくは約90%、より好ましくは約95%、より好ましくは約97%、より好ましくは約98%の化学純度、最も好ましくは99%以上または99%より高い、例えば、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9、または最大100%の化学純度の化合物を意味する。化学的不純物としては、未反応の出発物質(溶媒を含む)、5,10-CH2-(6R)-THFの分解生成物(テトラヒドロ葉酸およびその分解生成物など)などが挙げられる。
【0069】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は担体が動物、より詳細にはヒトにおける使用のために許容または承認されていること、すなわち、宿主または患者に対して毒性でないことを示す。さらに、選択された担体は活性成分の生物学的活性の有効性を妨害しない。用語「担体」は、選択された特定の投与様式に必要な任意の補助物質を指し、例えば、溶媒(希釈剤)、賦形剤、または本発明の凍結乾燥物が投与される他の添加剤を含む。典型的に使用される希釈剤医薬担体には、水溶液および油(例えば、石油、動物、植物または合成起源のもの)、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの無菌液体が含まれる。典型的に使用される水性液体には、水、生理食塩水、デキストロース水溶液およびグリセロール水溶液などが含まれる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。適切な医薬担体の例は当技術分野で周知であり、例えば、E.W.Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」(第18版、Mack Publishing Co、Easton、PA(1990))に記載されている。
【実施例】
【0070】
凍結乾燥の例示的なプロセスパラメータ
【0071】
【0072】
凍結乾燥中に記録されたオンラインデータを
図1に示す。
【0073】
実施例1:5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸およびリンゴ酸を含有する凍結乾燥物
窒素下で、210gの精製水および16.5gの水酸化ナトリウム2Mを3±2℃に冷却した(得られたpH 14.0)。6.96gのリンゴ酸、次いで5.70gの5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸ヘミ硫酸塩を添加し(pHを13.0に低下させる)、2.5gの精製水ですすいだ。水酸化ナトリウム2Mの添加により、pHを9.3±0.1に保持し、11.65gの精製水を添加した。pHを9.3±0.1に保つためには、全体で2.15gの水酸化ナトリウム2Mが必要であった。
【0074】
5.0mlの得られた透明な溶液(5.181g~5.184g)を、バイアルあたり10mlのガラスバイアル(36バイアル)に導入した。バイアルはただちに液体窒素で凍結し、<10-1mbarで凍結乾燥した。
【0075】
得られたバイアルは、リンゴ酸を含む102mgの5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸(遊離酸として計算)の凍結乾燥物を含有していた。ケーキ重量は258mgであり、5,10-メタレン-(6R)-テトラホル酸はHPLCで測定した97.42%の純度を示している。含水量はそれぞれ2.7%w/wであった。7.0mg/バイアル。
【0076】
再構成された場合、溶液は253モスモル/kgの浸透圧を有する。
【0077】
実施例2:5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸およびコハク酸を含有する凍結乾燥物
窒素下で、210gの精製水および16.5gの水酸化ナトリウム2Mを3±2℃に冷却した(得られたpH 14.0)。10.56gのコハク酸ナトリウム六水和物、次いで5.70gの5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸半硫酸塩を添加し(pHを13.8に低下させる)、2.5gの精製水ですすいだ。水酸化ナトリウム2Mの添加により、pHを9.3±0.1に保持し、12.74gの精製水を添加した。pHを9.3±0.1に保つためには、全体で14.8gの水酸化ナトリウム2Mが必要であった。
【0078】
5.0mlの得られた透明な溶液(5.0959gおよび5.1079gである)を、バイアルあたり10mlのガラスバイアル(36バイアル)に導入した。バイアルはただちに液体窒素で凍結し、<10-1mbarで凍結乾燥した。得られたバイアルは、102mgの5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸(遊離酸として計算)とコハク酸との凍結乾燥物を含有していた。ケーキ重量は242mgで、5,10-メタレン-(6R)-テトラホル酸はHPLCで測定した97.35%の純度を示している。含水量はそれぞれ1.1% w/wであった。バイアルあたり2.6mg。
【0079】
再構成された場合、溶液は、267モスモル/kgの浸透圧を有する。
【0080】
実施例3:5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸およびマレイン酸を含有する凍結乾燥物
窒素下で、210gの精製水および16.5gの水酸化ナトリウム2Mを3±2℃に冷却した。13.92gのマレイン酸二ナトリウム水和物、次いで5.70gの5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸半硫酸塩を添加し(pHを13.8に低下させる)、2.5gの精製水ですすいだ。冷却を取り除き、温度を室温まで上昇させた。水酸化ナトリウム2Mの添加により、pHを9.3±0.1に保持し、精製水17.05gを添加した。pHを9.3±0.1に保つためには、全体で18.4gの水酸化ナトリウム2Mが必要であった。透明な溶液を室温で2時間保持した。
【0081】
得られた透明溶液5.0mlをバイアル当たり10mlガラスバイアル(7バイアル)に導入した。バイアルを凍結乾燥した。得られたバイアルは、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸とマレイン酸との凍結乾燥物を含有していた。5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸は、HPLCによって測定して97.54%面積の純度を示す。
【0082】
実施例4:5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸およびフマル酸を含有する凍結乾燥物
窒素下で、210gの精製水および16.5gの水酸化ナトリウム2Mを3±2℃に冷却した。6.26gのフマル酸二ナトリウム、次いで5.70gの5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸ヘミ硫酸塩を添加し(pHを13.8に低下させる)、2.5gの精製水ですすいだ。冷却を取り除き、温度を室温まで上昇させた。水酸化ナトリウム2Mの添加により、pHを9.3±0.1に保持し、17.66gの精製水を添加した。pHを9.3±0.1に保つためには、全体で19.1gの水酸化ナトリウム2Mが必要であった。透明な溶液をアルゴン下、室温で2時間保持した。
【0083】
得られた透明溶液5.0mlをバイアル当たり10mlガラスバイアル(7バイアル)に導入した。バイアルを凍結乾燥した。
【0084】
得られたバイアルは、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸とフマル酸との凍結乾燥物を含有していた。5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸は、HPLCによって測定して96.80%面積の純度を示す。
【0085】
実施例5:5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸およびジカルボン酸((6R)-5,10-CH2-THFの含量)を含む凍結乾燥物の長期安定性
実施例1~4に従って調製した5,10-CH2-(6R)-THFの凍結乾燥物の長期安定性を決定するために、凍結乾燥物を+5℃、+25℃/60%相対湿度および+40℃/75%相対湿度で大気中で保存した。残存する5,10-CH2-(6R)-THFの含量を定期的に高速液体クロマトグラフィーにより測定し、最初の数値(%相対)と対比して示す。結果を表1及び表2に示す。
【0086】
【0087】
【0088】
表1および2は、5,10-CH2-(6R)-THFの凍結乾燥物が高温であっても長期間にわたって高度に安定であることを明確に示している。
【0089】
実施例6:5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸およびジカルボン酸を含有する凍結乾燥物の長期安定性(安定性指示薬10-ホルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸の含量)
実施例1~4に従って調製した(6R)-5,10-CH2-THFの凍結乾燥物の長期安定性を決定するために、凍結乾燥物を+5℃、+25℃/60%相対湿度および+40℃/75%相対湿度で大気中で保存した。主要分解生成物10-ホルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸の含量を、定期的な間隔でHPLCによって測定した。結果を表3及び表4に示す。
【0090】
【0091】
【0092】
表3および4は、5,10-CH2-(6R)-THFの凍結乾燥物が高温でも長期間にわたって非常に安定であることを確認する。
【0093】
5,10-CH2-(6R)-THFの凍結乾燥工程の間、融解または崩壊は起こらない。プロセスは、30℃の棚温度および200μbarの圧力で行われる。
【0094】
大幅なケーキ収縮は減少するが、緻密な構造を示す蓋が本発明の凍結乾燥物の上に形成される。任意選択的に、約-5℃~-2℃の温度で1~2時間のアニーリングが行われる。
【0095】
実施例7:5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸およびジカルボン酸を含有する再構成凍結乾燥物の安定性
実施例1~4に従って調製した(6R)-5,10-CH 2-THFの再構成凍結乾燥物の安定性を決定するために、バイアル当たり5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸を含む凍結乾燥物を10mlの水に再溶解した(溶解時間)。さらに50分後、5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸の含有量を測定した。次に、溶液を-18℃に冷却し、-18℃で12日間保存した。その後、5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸の含有量を再び測定した。次に、バイアルを室温まで温め、さらに5日間保存した。次に、5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸の含有量を再び測定した。5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸およびクエン酸三ナトリウム、5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸および酢酸ナトリウム、ならびに5,10-メチレン-(6R)テトラヒドロ葉酸(ジカルボン酸を含まない)のみを含有する対応する参照バイアルを処理し、等価的に測定した。全ての結果(HPLCにより測定)を初期値に対して計算した。結果を表5に示す。
【0096】
【図面の簡単な説明】
【0097】
【
図1】凍結乾燥中に記録されたオンラインデータを示す図である。