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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/38 20060101AFI20230227BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
H05K3/38 B
B32B15/08 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019118956
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021005646
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】下平 朋幸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 人資
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-343004(JP,A)
【文献】特開2013-119240(JP,A)
【文献】特開2003-298230(JP,A)
【文献】特開2011-228632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/38
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層上に配線層を形成する工程と、
前記配線層の前記第1絶縁層と接していない表面を粗化して凹凸を形成する工程と、
前記凹凸上に密着増強被膜を形成する工程と、
酸性の溶液を用いて前記密着増強被膜を部分的に除去する工程と、
前記第1絶縁層上に前記配線層を被覆する第2絶縁層を形成する工程と、を有し、
前記密着増強被膜を形成する工程では、前記密着増強被膜は、前記凹凸に沿って形成され、前記凹凸の凹部の底部にも形成され、
前記密着増強被膜は、前記底部側に形成された薄膜部と、前記底部とは反対側に形成された厚膜部と、を含み、
前記密着増強被膜を部分的に除去する工程では、前記薄膜部と前記厚膜部との厚さの差を縮小し、前記密着増強被膜の厚さの均一性を向上させる配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記密着増強被膜を部分的に除去する工程では、前記酸性の溶液は、前記底部に達する粘度に調整されている請求項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記密着増強被膜を部分的に除去する工程では、前記酸性の溶液は、前記底部に達しない粘度に調整されている請求項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記密着増強被膜は、シランカップリング剤を用いて形成される請求項1乃至の何れか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記凹凸の粗度は、Ra=50~200nmである請求項1乃至の何れか一項に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線層を被覆する絶縁層を備えた配線基板において、配線層と絶縁層との密着性を向上することは信頼性上重要である。そのため、配線層と絶縁層との密着性を向上する様々な手法が検討されている。
【0003】
例えば、絶縁層が積層される配線層の表面にシラン化合物を含む液を塗布した後、25~100℃の温度で且つ5分以内で乾燥を行い、次に、水洗してシラン化合物を固着させて被膜を形成し、化学的な密着力を得る手法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-109111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、化学的な密着力に物理的な密着力を併用するために、配線層の表面を粗化する場合がある。この場合、上記と同様な手法を用いても、配線層の表面の凹凸に沿って均一な被膜を形成することは困難である。すなわち、配線層の表面の凹凸に、被膜が未着な部分が生じたり、部分的に過剰な厚さの被膜が形成されたりする場合がある。このような場合、配線層と絶縁層との密着性が十分に得られない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、配線層と絶縁層との密着性を向上可能な配線基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本配線基板の製造方法は、第1絶縁層上に配線層を形成する工程と、前記配線層の前記第1絶縁層と接していない表面を粗化して凹凸を形成する工程と、前記凹凸上に密着増強被膜を形成する工程と、酸性の溶液を用いて前記密着増強被膜を部分的に除去する工程と、前記第1絶縁層上に前記配線層を被覆する第2絶縁層を形成する工程と、を有し、前記密着増強被膜を形成する工程では、前記密着増強被膜は、前記凹凸に沿って形成され、前記凹凸の凹部の底部にも形成され、前記密着増強被膜は、前記底部側に形成された薄膜部と、前記底部とは反対側に形成された厚膜部と、を含み、前記密着増強被膜を部分的に除去する工程では、前記薄膜部と前記厚膜部との厚さの差を縮小し、前記密着増強被膜の厚さの均一性を向上させる
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、配線層と絶縁層との密着性を向上可能な配線基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る配線基板を例示する断面図である。
図2】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その1)である。
図3】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その2)である。
図4】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その3)である。
図5】比較例1に係る配線基板の製造工程の一部を例示する図である。
図6】比較例2に係る配線基板の製造工程の一部を例示する図(その1)である。
図7】比較例2に係る配線基板の製造工程の一部を例示する図(その2)である。
図8】第2実施形態に係る配線基板の製造工程の一部を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
[配線基板の構造]
図1は、第1実施形態に係る配線基板を例示する断面図であり、図1(a)は配線層と絶縁層が交互に複数積層された配線基板の一部を示した図、図1(b)は図1(a)のA部の部分拡大図である。
【0012】
図1を参照するに、配線基板1は、絶縁層10と、配線層20と、絶縁層30と、配線層40とを有している。
【0013】
なお、本実施形態では、便宜上、配線基板1の絶縁層30側を上側又は一方の側、絶縁層10側を下側又は他方の側とする。又、各部位の絶縁層30側の面を上面又は一方の面、絶縁層10側の面を下面又は他方の面とする。但し、配線基板1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置できる。又、平面視とは対象物を絶縁層10の上面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を絶縁層10の上面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0014】
絶縁層10は、例えば、多層配線の層間絶縁層として、ビルドアップ工法を用いて形成できる絶縁層である。従って、絶縁層10の下層として他の配線層や他の絶縁層が積層されていてもよい。この場合、絶縁層10や他の絶縁層に適宜ビアホールを設け、ビアホールを介して配線層同士を接続できる。
【0015】
絶縁層10の材料としては、例えば、非感光性(熱硬化性樹脂)のエポキシ系絶縁樹脂やポリイミド系絶縁樹脂等を用いることができる。或いは、絶縁層10の材料として、例えば、感光性のエポキシ系絶縁樹脂やアクリル系絶縁樹脂等を用いてもよい。絶縁層10は、ガラスクロス等の補強材を有していても構わない。又、絶縁層10は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有しても構わない。絶縁層10の厚さは、例えば10~50μm程度とすることができる。
【0016】
配線層20は、絶縁層10上に形成されている。配線層20の材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。配線層20の厚さは、例えば、10~20μm程度とすることができる。
【0017】
配線層20の上面及び側面には粗化処理が施され、凹凸21が形成されている。凹凸21の粗度は、表皮効果による電気特性の悪化がない程度とされており、例えば、Ra=50~200nm程度である。
【0018】
凹凸21が形成された配線層20の上面及び側面には、凹凸21に沿った形状の密着増強被膜22が形成されている。つまり、密着増強被膜22の表面は、凹凸21と同程度の粗度の凹凸形状である。密着増強被膜22の材料としては、例えば、シランカップリング剤を用いることができる。密着増強被膜22の厚さは、例えば、3~8nm程度とすることができる。なお、図1(a)では、便宜上、凹凸21を破線で示している。
【0019】
シランカップリング剤において、樹脂等の有機材料と化学結合する官能基としては、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシネアート基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基、又はスルフィド基を含むものが好ましい。シランカップリング剤と化学結合する樹脂の種類に応じて最適な官能基が選択される。
【0020】
又、シランカップリング剤において、金属等の無機材料と化学結合する官能基として、アゾール基、シラノール基、メトキシ基、又はエトキシ基を含むものが好ましい。シランカップリング剤と化学結合する金属の種類に応じて最適な官能基が選択される。
【0021】
なお、シランカップリング剤に代えて、チタンカップリング剤を使用してもよい。
【0022】
絶縁層30は、絶縁層10上に、配線層20を被覆するように形成されている。絶縁層30の材料や厚さは、例えば、絶縁層10と同様である。絶縁層30は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有してもよい。
【0023】
配線層40は、絶縁層30の上側に形成されている。配線層40は、絶縁層30を貫通し配線層20の上面を露出するビアホール30x(開口部)内に充填されたビア配線、及び絶縁層30の上面に形成された配線パターンを含んでいる。配線層40の配線パターンは、ビア配線を介して、配線層20と電気的に接続されている。ビアホール30xは、例えば、絶縁層30の上面側に開口されている開口部の径が配線層20の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部である。配線層40の材料や配線パターンの厚さは、例えば、配線層20と同様である。
【0024】
このように、配線基板1では、配線層20の上面及び側面に凹凸21が形成され、更に凹凸21に沿った形状の密着増強被膜22が形成され、密着増強被膜22の表面は、凹凸21と同程度の粗度の凹凸形状である。
【0025】
これにより、密着増強被膜22の表面の凹凸によるアンカー効果により、配線層20と絶縁層30との物理的な密着力を高くできる。又、密着増強被膜22が絶縁層30と接することにより、配線層20と絶縁層30との化学的な密着力を高くできる。
【0026】
又、配線基板1では、配線層20の上面及び側面に形成されているのは微細な凹凸21であり、必要以上に粗度を高くしていなため、表皮効果による電気特性の悪化を抑制できる。
【0027】
[配線基板の製造方法]
次に、第1実施形態に係る配線基板の製造方法について説明する。図2図4は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図である。なお、本実施形態では、単品の配線基板を形成する工程を示すが、配線基板となる複数の部分を作製後、個片化して各配線基板とする工程としてもよい。
【0028】
まず、図2(a)に示す工程では、絶縁層10を準備し、絶縁層10上に周知のスパッタ法やめっき法等により配線層20を形成する。
【0029】
次に、図2(b)に示す工程では、配線層20の絶縁層10と接していない表面(上面及び側面)を粗化して凹凸21を形成する。凹凸21の粗度は、例えば、Ra=50~200nm程度となる。配線層20の上面及び側面の粗化処理は、例えば、蟻酸を用いたウェットエッチングにより行うことができる。
【0030】
次に、図2(c)に示す工程では、配線層20の凹凸21上に密着増強被膜22を形成する。密着増強被膜22は、凹凸21が形成された配線層20の上面及び側面に、凹凸21に沿った形状に形成される。密着増強被膜22の表面は、凹凸21と同程度の粗度となる。密着増強被膜22は、例えば、シランカップリング剤を用いて形成される。密着増強被膜22の厚さは、最も厚い部分で、例えば、20~30nm程度となる。
【0031】
シランカップリング剤を用いて密着増強被膜22を形成するには、例えば、図2(b)の構造体をシランカップリング剤の希釈溶液に浸漬させればよい。或いは、図2(b)の構造体の配線層20の上面及び側面にシランカップリング剤の希釈溶液をスプレー塗布して密着増強被膜22を形成してもよい。シランカップリング剤の希釈溶液の濃度は、0.1~10%、好適には0.5~5%に設定される。
【0032】
次に、図2(d)に示す工程では、図2(c)に示す構造体を水洗した後、除去処理液(酸性の溶液)を用いて密着増強被膜22を部分的に除去し、密着増強被膜22の厚さの均一性を高め、その後乾燥させる。密着増強被膜22の厚さは、例えば、3~8nm程度となる。
【0033】
ここで、密着増強被膜22の厚さの均一性を高めるメカニズムを詳しく説明する。図3は、図2(c)及び図2(d)の部分拡大図である。
【0034】
図3(a)は、図2(c)の工程で、凹凸21が形成された配線層20の上面に形成された密着増強被膜22を拡大して模式的に示している。
【0035】
密着増強被膜22を薬液(シランカップリング剤の希釈溶液等)を用いて形成する際に薬液が粘性を有していると、薬液が凹凸21の凹部の底部側に侵入できずに密着増強被膜22が未着な部分が生じるおそれがある。
【0036】
そこで、本実施形態では、凹凸21の凹部の底部側における密着増強被膜22の未着を防ぐために、凹凸21の凹部の底部側に薬液を侵入させる十分な処理時間をかけている。
【0037】
その結果、図3(a)に示すように、密着増強被膜22は、凹凸21に沿って形成され、凹凸21の凹部の底部にも形成される。より詳細には、凹凸21の凹部の底部側には相対的に薄い密着増強被膜22が形成され、それ以外の部分(底部とは反対側)には相対的に厚い密着増強被膜22が形成され、未着な部分は生じない。
【0038】
すなわち、密着増強被膜22は、凹凸21の凹部の底部側に形成された薄膜部と、底部とは反対側に形成された厚膜部とを含む構造となる。凹凸21の凹部の底部側に形成された薄膜部の厚さは、例えば、3~8nm程度となり、底部とは反対側に形成された厚膜部の厚さは、例えば、20~30nm程度となる。なお、密着増強被膜22を形成する薬液の推奨粘度は、5~10cP程度である。
【0039】
図3(b)~図3(d)は、図2(d)の工程で、密着増強被膜22の厚さの均一性を高める様子を拡大して模式的に示している。
【0040】
図3(b)は、密着増強被膜22を除去処理液300に浸した直後の様子である。除去処理液300には、pH=0~5の酸性の溶液を用いることができる。除去処理液300に用いる酸としては、硫酸が好ましい。本実施形態では、除去処理液300は、凹凸21の底部に達する粘度に調整されている。具体的には、除去処理液300の粘度は、密着増強被膜22を形成する溶液の粘度と同等以下である。除去処理液300の推奨粘度は、1~10cP程度である。これにより、除去処理液300は、凹凸21の凹部の底部側(図3(b)でBで示した部分)にまで入り込む。
【0041】
図3(c)は、密着増強被膜22を除去処理液300に浸し、所定時間が経過した後の様子を拡大して模式的に示している。
【0042】
凹凸21の凹部の底部側(図3(b)でBで示した部分)に一度に入った除去処理液300は、溜り場に閉じ込められた状態となり新たな液との置換が困難なため、処理速度が遅くなる。これに対して、凹凸21の凹部の底部とは反対側は、常に新たな液と接触することになり、処理速度が速い状態が保たれる。
【0043】
すなわち、凹凸21の凹部の底部とは反対側の処理速度は、凹凸21の凹部の底部側の処理速度よりも速くなり、凹凸21の凹部の底部とは反対側の密着増強被膜22は、凹凸21の凹部の底部側の密着増強被膜22よりも早く除去される。そのため、所定時間経過後には、図3(c)に示したように、凹凸21の凹部の底部側以外の部分に形成された密着増強被膜22が部分的に除去され、密着増強被膜22の厚さの均一性が高まる。好ましくは、凹凸21の全体で密着増強被膜22が略均一の厚さとなる。
【0044】
このように、密着増強被膜22の厚さの均一性を向上する工程は、凹凸21の凹部の底部側に形成された薄膜部と、底部とは反対側に形成された厚膜部との、膜厚差を縮小させる工程である。
【0045】
なお、密着増強被膜22の厚さが凹凸21の全体で略均一となるまでの処理時間は、密着増強被膜22の厚さのばらつきや除去処理液300の粘度等を考慮し、実験やシミュレーションにより予め知ることができる。
【0046】
図3(d)は、密着増強被膜22を乾燥させた後の様子を拡大して模式的に示している。図3(c)に示す工程の後、除去処理液300を取り除き、密着増強被膜22を乾燥させることで、図3(d)に示す密着増強被膜22が得られる。
【0047】
配線基板1の製造工程の説明に戻り、図2(d)に示す工程の後、図4(a)に示す工程では、絶縁層10上に配線層20を被覆する絶縁層30を形成する。具体的には、例えば、絶縁層10上に配線層20を被覆するように半硬化状態のフィルム状のエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等を主成分とする非感光性の熱硬化性樹脂をラミネートし、硬化させて絶縁層30を形成する。或いは、フィルム状のエポキシ系樹脂等のラミネートに代えて、液状又はペースト状のエポキシ系樹脂等を塗布後、硬化させて絶縁層30を形成してもよい。
【0048】
次に、図4(b)に示す工程では、絶縁層30に、絶縁層30を貫通し配線層20の上面を露出させるビアホール30xを形成する。ビアホール30xは、例えば、COレーザ等を用いたレーザ加工法により形成できる。ビアホール30xは、例えば、絶縁層30の上面側に開口されている開口部の径が配線層20の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部となる。
【0049】
ビアホール30xを形成後、デスミア処理を行い、ビアホール30xの底部に露出する配線層20の表面に付着した樹脂残渣を除去することが好ましい。デスミア処理により、ビアホール30xの底部に露出する配線層20の表面に付着した密着増強被膜22は除去される。デスミア処理の後、ビアホール30xの底部に露出する配線層20の表面をソフトエッチングしてもよい。ソフトエッチングにより、ビアホール30xの底部に露出する配線層20の表面の凹凸21は除去され、配線層20の表面は平滑になる。
【0050】
次に、図4(c)に示す工程では、絶縁層30の上側に配線層40を形成する。配線層40は、ビアホール30x内に充填されたビア配線、絶縁層30の上面に形成された配線パターンを含む。配線層40の配線パターンは、ビア配線を介して、配線層20と電気的に接続される。以上の工程により、配線基板1が完成する。
【0051】
ここで、第1実施形態に係る配線基板1の製造方法と、従来の製造方法との相違点について説明する。
【0052】
図5は、比較例1に係る配線基板の製造工程の一部を例示する図である。比較例1に係る配線基板の製造工程では、図5(a)に示すように配線層20の上面及び側面に凹凸21を形成した後、図5(b)に示すように密着増強被膜22を形成する。
【0053】
このとき、密着増強被膜22の厚さを均一化するために、比較的短い処理時間とする。そのため、密着増強被膜22の厚さが部分的に厚くなることはないが、薬液が凹凸21の凹部の底部側に侵入できずに、密着増強被膜22が未着な部分(図5(b)の矢印C部)が生じる場合がある。
【0054】
図5(c)は、図5(b)の構造体上に絶縁層30を形成した様子を示している。密着増強被膜22が未着な部分では、配線層20と絶縁層30との密着強度が不足する(図5(c)のD部)。そのため、熱履歴を伴う後工程において、密着強度が不足した部分が起点となって配線層20と絶縁層30との界面に剥離を生じ、隣接する配線層20間の絶縁性が劣化して信頼性を低下させるおそれがある。
【0055】
図6及び図7は、比較例2に係る配線基板の製造工程の一部を例示する図である。比較例2に係る配線基板の製造工程では、図6(a)に示すように配線層20の上面及び側面に凹凸21を形成した後、図6(b)に示すように密着増強被膜22を形成する。
【0056】
このとき、図5(b)とは異なり、凹凸21の凹部の底部側における密着増強被膜22の未着を防ぐために、凹凸21の凹部の底部側に薬液を侵入させる十分な処理時間をかけている。その結果、凹凸21の凹部の底部側には相対的に薄い密着増強被膜22が形成され、凹凸21の凹部の底部とは反対側には相対的に厚い密着増強被膜22が形成され、未着な部分は生じない。
【0057】
次に、図6(c)に示すように、絶縁層10上に配線層20を被覆する絶縁層30を形成し、絶縁層30に配線層20の上面を露出するビアホール30xを形成し、デスミア処理やソフトエッチングを行う。その後、図6(d)に示すように、配線層40を形成する。
【0058】
図7(a)は、図6(c)のE部の拡大図である。密着増強被膜22の厚い部分は薬液耐性が低いため、図6(c)の工程でデスミア処理を行う際に、デスミア処理に用いる薬液により密着増強被膜22の厚い部分が侵されて消失し、図7(a)のF部のような隙間が形成される。その後、ソフトエッチングを行うと、密着増強被膜22が消失した隙間を起点に大きな空洞が形成される(図7(b)のG部)。
【0059】
図7(c)は、図7(b)の状態で配線層40を形成した様子を模式的に示している。図7(b)のG部の空洞に配線層40を構成する金属(電解めっき)を充填しきれず、ボイドHが発生する。ボイドHが発生すると、配線層20と配線層40との接続信頼性が低下する。
【0060】
このように、比較例に係る配線基板の製造方法において、密着増強被膜22の厚さを均一化するために薬液を侵入させる処理時間を短くすると、凹凸21の凹部の底部側に密着増強被膜22が未着な部分が生じる。そして、密着増強被膜22が未着な部分が起点となって配線層20と絶縁層30との界面に剥離を生じ、隣接する配線層20間の絶縁性が劣化して信頼性を低下させるおそれがある。
【0061】
一方、凹凸21の凹部の底部側に薬液を侵入させる十分な処理時間をかけると、未着な部分は生じないものの、密着増強被膜22の厚い部分と薄い部分が生じる。又、密着増強被膜22は、薬液耐性(エッチング耐性)が低い場合がある。その結果、ソフトエッチングの際に、密着増強被膜22の厚い部分が除去されると大きな空洞が形成され、配線層40を形成する際に、その空洞に配線層40を構成する金属を充填しきれず、ボイドHが発生し、配線層20と配線層40との接続信頼性が低下する。
【0062】
これに対し、第1実施形態に係る配線基板1の製造方法では、密着増強被膜22を形成する際に、凹凸21の凹部の底部側に薬液を侵入させる十分な処理時間をかけている。その結果、凹凸21の凹部の底部側には相対的に薄い密着増強被膜22が形成され、底部とは反対側には相対的に厚い密着増強被膜22が形成されるが、未着な部分は生じない。更に、厚さにバラツキのある密着増強被膜22を除去処理液300に浸し、凹凸21の全体で密着増強被膜22の厚さの均一性を高めている。その結果、比較例に係る配線基板の製造方法の説明で記載したような問題が発生せず、配線層20と絶縁層30との密着性を向上できる。又、絶縁層30による高い絶縁性が得られると共に、配線層20と配線層40との接続信頼性を向上できる。
【0063】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、第1実施形態とは異なる手法で密着増強被膜22の厚さの均一性を高める例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0064】
図8(a)は、図2(c)の工程で、凹凸21が設けられた配線層20の上面に形成された密着増強被膜22を拡大して模式的に示している。
【0065】
図3(a)の場合と同様に、凹凸21の凹部の底部側には相対的に薄い密着増強被膜22が形成され、底部とは反対側には相対的に厚い密着増強被膜22が形成され、未着な部分は生じない。
【0066】
図8(b)及び図8(c)は、図8(a)に示す密着増強被膜22の厚さの均一性を高める様子を模式的に示している。
【0067】
図8(b)は、密着増強被膜22を除去処理液300に浸した直後の様子である。除去処理液300には、pH=0~5の酸性の溶液を用いることができる。除去処理液300に用いる酸としては、硫酸が好ましい。本実施形態では、除去処理液300は、凹凸21の底部に達しない粘度に調整されている。具体的には、除去処理液300の粘度は、密着増強被膜22を形成する溶液の粘度よりも高い。除去処理液300の推奨粘度は、10~15cP程度である。これにより、除去処理液300は、凹凸21の凹部の底部側(図8(b)のI部)には入り込まない。
【0068】
図8(c)は、密着増強被膜22を除去処理液300に浸し、所定時間が経過した後、除去処理液300を取り除いた様子を模式的に示している。図8(b)の工程では、除去処理液300の粘度が高いために、凹凸21の凹部の底部側に除去処理液300が入り込まない。そのため、所定時間経過後には、図8(c)に示したように、凹凸21の凹部の底部側以外の部分に形成された密着増強被膜22が部分的に除去され、密着増強被膜22の厚さの均一性が高まる。好ましくは、凹凸21の全体で密着増強被膜22が略均一の厚さとなる。
【0069】
なお、密着増強被膜22の厚さが凹凸21の全体で略均一となるまでの処理時間は、密着増強被膜22の厚さのばらつきや除去処理液300の粘度等を考慮し、実験やシミュレーションにより予め知ることができる。
【0070】
このように、密着増強被膜22を形成するための薬品よりも高い粘度の除去処理液300を用いても、密着増強被膜22の厚さの均一性を高めることができる。この場合も、図8(c)に示す工程の後に図4(a)~図4(c)と同様の工程を実行することで配線基板1が完成し、第1実施形態と同様に、配線層20と絶縁層30との密着性を向上できる。又、絶縁層30による高い絶縁性が得られると共に、配線層20と配線層40との接続信頼性を向上できる。
【0071】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 配線基板
10 絶縁層
20 配線層
21 凹凸
22 密着増強被膜
30 絶縁層
30x ビアホール
40 配線層
300 除去処理液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8