(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】ローション組成物を含む吸収性物品、及び当該ローション組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/60 20060101AFI20230227BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230227BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20230227BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230227BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230227BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230227BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230227BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230227BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230227BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230227BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230227BHJP
A61L 15/20 20060101ALI20230227BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20230227BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20230227BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20230227BHJP
A61L 15/48 20060101ALI20230227BHJP
A61L 15/64 20060101ALI20230227BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230227BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
A61K8/60
A61F13/15 144
A61F13/511 300
A61K8/02
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/86
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/34
A61L15/20 100
A61L15/26 100
A61L15/42 100
A61L15/44 100
A61L15/48 100
A61L15/64 100
A61P17/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019217370
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】倉田 有里
(72)【発明者】
【氏名】和田 一郎
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-057275(JP,A)
【文献】特開2016-027020(JP,A)
【文献】特開2015-229075(JP,A)
【文献】特開2019-210561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/60
A61F 13/15
A61F 13/511
A61K 8/02
A61K 8/37
A61K 8/39
A61K 8/86
A61K 47/10
A61K 47/14
A61K 47/26
A61K 47/34
A61L 15/20
A61L 15/26
A61L 15/42
A61L 15/44
A61L 15/48
A61L 15/64
A61P 17/00
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面及び非肌当接面を有する液透過性シートと、液不透過性シートと、それらの間の吸収体とを含む吸収性物品であって、
前記液透過性シートが、前記肌当接面に、
(i)ヘキソース1分子にC
nH
2n+2O
n(nは、4~6の整数である)の糖アルコール1分子がグリコキシド結合した分子と、ヒドロキシル脂肪酸とからなる糖脂質の界面活性剤、及び
(ii)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物、並びにポリグリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む疎水性成分、
を含むローション組成物を備えて
おり、
前記ローション組成物が、親水性成分を含まず、(i)界面活性剤及び(ii)疎水性成分を、それぞれ、それらの合計100質量%に対して、1.0~22.0質量%及び78.0~99.0質量%の比率で含むか、又は前記ローション組成物が、(iii)水を含む親水性成分をさらに含むとともに、前記ローション組成物が、(i)界面活性剤、(ii)疎水性成分及び(iii)親水性成分の合計100質量%に対して、(iii)親水性成分を、2.0質量%以下の比率で含み、
前記ローション組成物が、着用者の皮膚に転写されるように構成されている、
ことを特徴とする、前記吸収性物品。
【請求項2】
前記ローション組成物が、25℃で、15~40mPa・sの粘度を有する、請求項
1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ローション組成物が、36℃で、15~30mPa・sの粘度を有する、請求項1
又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記ローション組成物の、36℃における粘度と、25℃における粘度との差が、6mPa・s以下である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
(i)界面活性剤が、マンノシルエリスリトールリピッドである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
(ii)疎水性成分が、グリセリン脂肪酸トリエステルである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
(iii)親水性成分が、アルコールをさらに含む、請求項
1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記肌当接面に配置された前記ローション組成物の坪量が、前記非肌当接面に配置された前記ローション組成物の坪量よりも高い、請求項1~
7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
吸収体を備えている吸収性物品用のローション組成物であって、
前記ローション組成物が、
(i)ヘキソース1分子にC
nH
2n+2O
n(nは、4~6の整数である)の糖アルコール1分子がグリコキシド結合した分子と、ヒドロキシル脂肪酸とからなる糖脂質の界面活性剤、及び
(ii)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物、並びにポリグリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む疎水性成分、
を含
み、
前記ローション組成物が、親水性成分を含まず、(i)界面活性剤及び(ii)疎水性成分を、それぞれ、それらの合計100質量%に対して、1.0~22.0質量%及び78.0~99.0質量%の比率で含むか、又は前記ローション組成物が、(iii)水を含む親水性成分をさらに含むとともに、前記ローション組成物が、(i)界面活性剤、(ii)疎水性成分及び(iii)親水性成分の合計100質量%に対して、(iii)親水性成分を、2.0質量%以下の比率で含み、
前記吸収性物品において、前記ローション組成物が、着用者の皮膚に転写されるように構成されている、
ことを特徴とする、前記ローション組成物。
【請求項10】
前記ローション組成物が、25℃で、15~40mPa・sの粘度を有する、請求項9に記載のローション組成物。
【請求項11】
前記ローション組成物が、36℃で、15~30mPa・sの粘度を有する、請求項9又は10に記載のローション組成物。
【請求項12】
前記ローション組成物の、36℃における粘度と、25℃における粘度との差が、6mPa・s以下である、請求項9~11のいずれか一項に記載のローション組成物。
【請求項13】
(i)界面活性剤が、マンノシルエリスリトールリピッドである、請求項9~12のいずれか一項に記載のローション組成物。
【請求項14】
(ii)疎水性成分が、グリセリン脂肪酸トリエステルである、請求項9~13のいずれか一項に記載のローション組成物。
【請求項15】
(iii)親水性成分が、アルコールをさらに含む、請求項9~14のいずれか一項に記載のローション組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ローション組成物を含む吸収性物品、及び当該ローション組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ローション組成物を備える吸収性物品が知られている。
例えば、特許文献1には、着用者の皮膚に便が付着することを抑制することを目的としたローション組成物、及び当該ローション組成物を備える吸収性物品が開示されている。特許文献1に記載のローション組成物は、以下の構成を有する。
着用者によって着用される吸収性用品に適用されるための、20℃で半固体もしくは固体であるローション組成物であって、前記ローション組成物が、(A)20℃で塑性又は流動性コンシステンシーを有する、20~95重量%のエモリエント剤であって、該エモリエント剤が該エモリエント剤の全体量に対して5重量%以下の水分を含み、該エモリエント剤が、16~32の炭素原子の連鎖長を有する炭化水素または炭化水素の混合物を含んでなる石油に基づくエモリエント剤、アルキルエトキシレートエモリエント剤、及びこれらの混合物から選択される一つを含んでなるものと、(B)該ローション組成物で処理された吸収性用品のトップシート表面にエモリエント剤を固定化することができる5~80重量%の固定化剤であって、該固定化剤が、50~150℃の融点を有し、C14-C22脂肪アルコール及びC12-C22脂肪酸から選択される一つを含んでなるものとを含んでなることを特徴とするローション組成物。
【0003】
また、合成繊維に繊維処理剤を塗布することにより、皮膚への刺激を抑えることが検討されている。例えば、特許文献2には、(a)サーファクチンに代表されるリポペプチド構造を有する界面活性剤、ソホロリピッド、ラムノリピッドおよびマンノシルエリスリトールリピッドに代表される糖脂質の界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤、(b)(ポリ)グリセリン、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、および(ポリ)グリセリンのアルキレンオキサイド付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、ならびに(c)乳酸塩を含む繊維処理剤であり、成分(a)~(c)の質量を合わせて100質量%としたときに、成分(a)を2.5質量%以上50質量%以下で含む繊維処理剤を、合成繊維表面に付着させ、親水性合成繊維を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-137964号公報
【文献】特開2012-57275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のローション組成物は、ローション組成物が吸収性物品の内部に浸透することを抑制するため、20℃で塑性又は流動性コンシステンシーを有するエモリエント剤を固定化することができる固定化剤を含んでいる。
従って、特許文献1に記載のローション組成物は、吸収性物品の着用初期において、ローション組成物中の固定化剤が溶融する前に、ローション組成物が着用者の皮膚に転写されにくく、吸収性物品の着用初期において、着用者の皮膚を保護しにくいものであった。
また、特許文献2に記載の繊維処理剤は、着用者の皮膚に転写されるものではない。
従って、本開示は、吸収性物品の使用前に移動しにくく且つ着用初期から着用者の皮膚に転写されやすく、着用者の皮膚を保護しやすいローション組成物を備えている吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示者らは、肌当接面及び非肌当接面を有する液透過性シートと、液不透過性シートと、それらの間の吸収体とを含む吸収性物品であって、上記液透過性シートが、上記肌当接面に、(i)ヘキソース1分子にCnH2n+2On(nは、4~6の整数である)の糖アルコール1分子がグリコキシド結合した分子と、ヒドロキシル脂肪酸とからなる糖脂質の界面活性剤、及び(ii)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物、並びにポリグリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む疎水性成分を含むローション組成物を備えていることを特徴とする吸収性物品を見出した。
【発明の効果】
【0007】
本開示の吸収性物品におけるローション組成物は、吸収性物品の使用前に移動しにくく且つ着用初期から着用者の皮膚に転写されやすく、着用者の皮膚を保護しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1、並びに比較例1及び2の結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
具体的には、本開示は以下の態様に関する。
[態様1]
肌当接面及び非肌当接面を有する液透過性シートと、液不透過性シートと、それらの間の吸収体とを含む吸収性物品であって、
上記液透過性シートが、上記肌当接面に、
(i)ヘキソース1分子にCnH2n+2On(nは、4~6の整数である)の糖アルコール1分子がグリコキシド結合した分子と、ヒドロキシル脂肪酸とからなる糖脂質の界面活性剤、及び
(ii)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物、並びにポリグリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む疎水性成分、
を含むローション組成物を備えている、
ことを特徴とする、上記吸収性物品。
【0010】
上記吸収性物品は、所定の(i)界面活性剤と、所定の(ii)疎水性成分とを含むローション組成物を、液透過性シートの肌当接面に備えている。従って、上記ローション組成物が、室温(25℃)において、所定の粘度を有することができ、吸収性物品の使用前においては、ローション組成物が、吸収性物品の内部に移動しにくい。
【0011】
また、上記ローション組成物は、室温(25℃)において、所定の粘度を有することができ、吸収性物品の着用初期において、ローション組成物が、着用者の体温により温められる前であっても、ローション組成物が、着用者の皮膚に転写されやすい。
【0012】
さらに、上記ローション組成物は、(i)界面活性剤を含むので、(i)界面活性剤が、着用者の皮膚を保護することができる。
さらに、上記ローション組成物は、(i)界面活性剤と、(ii)疎水性成分とを含むので、ローション組成物が、水溶性、親水性、疎水性(親油性)、油溶性等の性質を有するその他の成分を保持することができる。例えば、上記ローション組成物は、油溶性を有するその他の成分を溶解させることにより、(ii)疎水性成分中に保持することができ、そして疎水性(親油性)、水溶性又は親水性を有するその他の成分を、必要に応じて(i)界面活性剤によりミセル化することにより、(ii)疎水性成分中に保持することができる。
以上の通り、上記吸収性物品では、ローション組成物が、吸収性物品の使用前に移動しにくく且つ着用初期から着用者の皮膚に転写されやすく、着用者の皮膚を保護しやすい。
【0013】
[態様2]
上記ローション組成物が、(i)界面活性剤及び(ii)疎水性成分を、それぞれ、それらの合計100質量%に対して、1.0~22.0質量%及び78.0~99.0質量%の比率で含む、態様1に記載の吸収性物品。
【0014】
上記吸収性物品では、ローション組成物が、(i)界面活性剤及び(ii)疎水性成分を所定の質量比で含むため、ローション組成物が、吸収性物品の使用前に移動しにくく且つ着用初期から着用者の皮膚に転写されやすく、着用者の皮膚を保護しやすい。
【0015】
[態様3]
上記ローション組成物が、(iii)水を含む親水性成分をさらに含む、態様1又は2に記載の吸収性物品。
【0016】
上記吸収性物品では、ローション組成物が、所定の(iii)親水性成分を含むため、ローション組成物の粘度を所定の範囲に調整しやすくなる。
また、上記吸収性物品では、ローション組成物が、所定の(iii)親水性成分を含むため、水溶性を有するその他の成分を溶解させることにより、(iii)親水性成分中に保持することができ、そして親水性を有するその他の成分を、必要に応じて(i)界面活性剤によりミセル化することにより、(iii)親水性成分中に保持することができる。その結果、ローション組成物が、着用者の皮膚に接触した後、水溶性又は親水性を有するその他の成分を着用者の皮膚に迅速に移行させやすくなる。
【0017】
[態様4]
上記ローション組成物が、(i)界面活性剤,(ii)疎水性成分、及び(iii)親水性成分を、それぞれ、それらの合計100質量%に対して、1.0~20.0質量%,78.0~98.9質量%,及び0.1~2.0質量%の比率で含む、態様1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0018】
上記吸収性物品では、ローション組成物が、(i)界面活性剤,(ii)疎水性成分,及び(iii)親水性成分を所定の質量比で含むため、ローション組成物が、吸収性物品の使用前に移動しにくく且つ着用初期から着用者の皮膚に転写されやすく、着用者の皮膚を保護しやすくなる。
【0019】
[態様5]
上記ローション組成物が、25℃で、15~40mPa・sの粘度を有する、態様1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0020】
上記吸収性物品では、ローション組成物が、室温(25℃)において所定の粘度を有するため、ローション組成物が、吸収性物品の使用前に移動しにくく且つ着用初期から着用者の皮膚に転写されやすい。
【0021】
[態様6]
上記ローション組成物が、36℃で、15~30mPa・sの粘度を有する、態様1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0022】
上記吸収性物品では、ローション組成物が、36℃において所定の粘度を有するため、ローション組成物が、着用者の皮膚に移動した後、着用者の体温で温められた場合であっても、着用者の皮膚から、他の場所、例えば、吸収性物品の内部に移動しにくい。
【0023】
[態様7]
上記ローション組成物の、36℃における粘度と、25℃における粘度との差が、6mPa・s以下である、態様1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0024】
上記吸収性物品では、ローション組成物の36℃における粘度と、25℃とにおける粘度との差が所定の範囲内にあるため、着用初期から着用中にかけて、ローション組成物が均一の性能を発揮しやすくなるとともに、温度の異なる環境(例えば、低緯度地域における日中、高緯度地域における冬期)においても同様の性能を発揮することができる。
【0025】
[態様8]
(i)界面活性剤が、マンノシルエリスリトールリピッドである、態様1~7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0026】
上記吸収性物品では、(i)界面活性剤が、マンノシルエリスリトールリピッドであるであるため、着用者の皮膚を保護する効果が高い。なお、マンノシルエリスリトールリピッドの作用は周知であることから、本明細書での説明は省略する。
【0027】
[態様9]
(ii)疎水性成分が、グリセリン脂肪酸トリエステルである、態様1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0028】
上記吸収性物品では、(ii)疎水性成分がトリグリセリドであるため、上記ローション組成物が、トリグリセリドに起因する界面活性効果により、安定に存在することができるとともに、トリグリセリドに起因する保湿効果を発揮することができる。
【0029】
[態様10]
(iii)親水性成分が、アルコールをさらに含む、態様3に記載の吸収性物品。
上記吸収性物品では、(iii)親水性成分がアルコールをさらに含むため、ローション組成物が、アルコールに溶解するその他の成分(例えば、パール由来成分等)を安定して保持することができるとともに、ローション組成物が、着用者の皮膚に接触した後、アルコールに溶解するその他の成分を着用者の皮膚に迅速に移行させやすくなる。
【0030】
[態様11]
上記肌当接面に配置された上記ローション組成物の坪量が、上記非肌当接面に配置された上記ローション組成物の坪量よりも高い、態様1~10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0031】
上記吸収性物品では、肌当接面に配置されたローション組成物の坪量が、非肌当接面に配置されたローション組成物の坪量よりも高いので、着用者の皮膚が吸収性物品の液透過性シートの肌当接面に触れた際に、着用者の皮膚にローション組成物がより転写されやすくなる。
【0032】
[態様12]
吸収性物品用のローション組成物であって、
上記ローション組成物が、
(i)ヘキソース1分子にCnH2n+2On(nは、4~6の整数である)の糖アルコール1分子がグリコキシド結合した分子と、ヒドロキシル脂肪酸とからなる糖脂質の界面活性剤、及び
(ii)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物、並びにポリグリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む疎水性成分、
を含む、上記ローション組成物。
上記ローション組成物は、態様1と同様の効果を有する。
【0033】
[態様13]
上記ローション組成物が、(i)界面活性剤及び(ii)疎水性成分を、それぞれ、それらの合計100質量%に対して、1.0~22.0質量%及び78.0~99.0質量%の比率で含む、態様12に記載のローション組成物。
上記ローション組成物は、態様2と同様の効果を有する。
【0034】
[態様14]
上記ローション組成物が、(iii)水を含む親水性成分をさらに含む、態様12又は13に記載のローション組成物。
上記ローション組成物は、態様3と同様の効果を有する。
【0035】
[態様15]
上記ローション組成物が、(i)界面活性剤,(ii)疎水性成分,及び(iii)親水性成分を、それぞれ、それらの合計100質量%に対して、1.0~20.0質量%,78.0~98.9質量%,及び0.1~2.0質量%の比率で含む、態様12~14のいずれか一項に記載のローション組成物。
上記ローション組成物は、態様4と同様の効果を有する。
【0036】
本開示のローション組成物を含む吸収性物品、及びローション組成物について、以下、詳細に説明する。
本開示の吸収性物品は、肌当接面及び非肌当接面を有する液透過性シートと、液不透過性シートと、それらの間の吸収体とを含む。
上記液透過性シートは、肌等接面に、所定のローション組成物を含む。
【0037】
[ローション組成物]
本開示の吸収性物品において、ローション組成物は、以下の成分を含む。
(i)ヘキソース1分子にCnH2n+2On(nは、4~6の整数である)の糖アルコール1分子がグリコキシド結合した分子と、ヒドロキシル脂肪酸とからなる糖脂質の界面活性剤(以下、「(i)界面活性剤」と称する場合がある)
(ii)グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物、並びにポリグリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む疎水性成分(以下、「(ii)疎水性成分」と称する場合がある)
また、上記ローション組成物は、以下の成分をさらに含むことができる。
(iii)水を含む親水性成分(以下、「(iii)親水性成分」と称する場合がある)
【0038】
[(i)界面活性剤]
(i)界面活性剤としては、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)、マンノシルマンニトールリピッド(MML)、マンノシルソルビトールリピッド(MSL)、マンノシルアラビトールリピッド(MAraL)、マンノシルリビトールリピッド(MRL)等が挙げられ、そしてMELが好ましい。
【0039】
MELは、ヘキソースの1種であるマンノース1分子と、糖アルコールの1種であるエリスリトール1分子とが、グリコキシド結合により結合している分子であり、マンノースに由来する部分のヒドロキシル基に、ヒドロキシル脂肪酸及びアセチル基が導入された構造を有する。
【0040】
【0041】
式中、R1~R4は、それぞれ独立して、水素(-H)、アセチル基(-COCH3)、又は好ましくはC1~C36、より好ましくはC3~C12の飽和脂肪酸残基若しくは不飽和脂肪酸残基である。R1~R4のうち、少なくとも1つはアセチル基であり、別の少なくとも1つは、C1~C36の飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基である。
【0042】
R1及びR2は、それぞれ独立して、好ましくはC1~C25、より好ましくはC3~C25、さらに好ましくはC5~C14、そしてさらにいっそう好ましくはC8~C12の飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基である。R3及びR4は、両方ともアセチル基であってよく、そして一方がアセチル基であり、他方が水素原子であってよい。
なお、本明細書では、マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は、MELそのもの、その同族体、及びその塩を含む総称である。
【0043】
MELは、微生物より生産されるのが一般的である。MELを製造する方法は公知であることから、ここでの説明は省略する。
【0044】
[(ii)疎水性成分]
(ii)疎水性成分は、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物、並びにポリグリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む疎水性成分である。
グリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセリンと、脂肪酸とのモノ,ジ又はトリエステルであり、グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステル及びグリセリン脂肪酸トリエステルが含まれる。グリセリン脂肪酸エステルは、好ましくはグリセリン脂肪酸ジエステル又はグリセリン脂肪酸トリエステル、そしてより好ましくはグリセリン脂肪酸トリエステルである。(ii)疎水性成分を疎水性とする観点からである。
【0045】
上記脂肪酸は、好ましくはC10~C22脂肪酸、そしてより好ましくはC12~C18脂肪酸である。上記脂肪酸は、飽和又は不飽和であることができる。上記脂肪酸の具体例としては、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸及びベヘン酸(以上、飽和脂肪酸)、オレイン酸(以上、不飽和脂肪酸)が挙げられる。
【0046】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、2~15の平均重合度を有するポリグリセリンに、脂肪酸をエステル結合させたものが好ましい。脂肪酸については、上述の通りである。
本明細書では、ポリグリセリンの平均重合度は、その水酸基価から算出したものを意味する。
【0047】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンが有するヒドロキシル基のうち、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上、そしてさらに好ましくは80モル%以上が脂肪酸とのエステル結合を形成している。(ii)疎水性成分を疎水性とする観点からである。
【0048】
上記グリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物において、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドの平均付加モル数は、好ましくは2~30、より好ましくは4~24、そしてさらに好ましくは8~20である。
なお、上記グリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物は、グリセリンのプロピレンオキシド付加物、グリセリンのブチレンオキシド付加物、並びにグリセリンのプロピレンオキシド及びブチレンオキシド付加物を含む概念である。
【0049】
上記ポリグリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物において、上記ポリグリセリンとしては、好ましくは2~30、そしてより好ましくは2~15の平均重合度を有するものが挙げられる。好ましい例は、上述の通りである。
上記ポリグリセリンのプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド付加物において、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドの平均付加モル数は、好ましくは2~30、より好ましくは4~24、そしてさらに好ましくは8~20である。
【0050】
[(iii)親水性成分]
ローション組成物の所望による成分である(iii)親水性成分は、水を含む。上記水としては、例えば、脱イオン水が挙げられる。(iii)親水性成分は、水のみから成ることができる。
(iii)親水性成分はまた、水と混和する水溶性有機溶媒を含むことができる。
上記水溶性有機溶媒としては、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、例えば、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ブチレングリコール、例えば、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール)、グリセリン、ポリグリセリン、グリセリン又はポリグリセリンのエチレンオキシド付加物、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)等が挙げられ、アルコール、特にエタノールが好ましい。
ローション組成物は、上記水溶性有機溶媒を、例えば、吸収性物品の着用時に体温(36℃)で水と混和する範囲、室温(25℃)で水と混和する範囲等で含むことができる。
【0051】
上記ポリグリセリンとしては、好ましくは2~30、そしてより好ましくは2~15の平均重合度を有するものが挙げられる。上記ポリグリセリンの具体例として、ジグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、オクタグリセリン、及びデカグリセリン等が挙げられる。
上記グリセリン又はポリグリセリンのエチレンオキシド付加物においてエチレンオキシドの平均付加モル数は、好ましくは2~30、より好ましくは4~24、そしてさらに好ましくは8~20である。
【0052】
上記ローション組成物は、(i)界面活性剤によりミセル化された(ii)疎水性成分又は(iii)親水性成分が、(iii)親水性成分又は(ii)疎水性成分に保持されている、水中油滴型又は油中水滴型のエマルション(例えば、マイクロエマルション、ナノエマルション等)であることができる。好ましくは、上記ローション組成物は、(i)界面活性剤によりミセル化された(iii)親水性成分が、(ii)疎水性成分に保持されている油中水滴型のエマルション(例えば、マイクロエマルション、ナノエマルション等)である。それにより、(i)界面活性剤,(ii)疎水性成分,及び(iii)親水性成分が、必要に応じて着用者の皮膚に作用することができるとともに、ローション組成部が所望の粘度を保持しやすくなり、その機能を発揮しやすくなる。
【0053】
上記ローション組成物は、(i)界面活性剤及び(ii)疎水性成分を、それぞれ、それらの合計100質量%に対して、好ましくは1.0~22.0質量%及び78.0~99.0質量%の比率、より好ましくは3.0~18.7質量%及び81.3~97.0質量%の比率、そしてさらに好ましくは5.0~16.5質量%及び83.5~95.0質量%の比率で含む。それにより、ローション組成部が所望の粘度を保持しやすくなり、その結果、吸収性物品の使用前に移動しにくく且つ着用初期から着用者の皮膚に転写されやすく、着用者の皮膚を保護しやすくなる。
【0054】
上記ローション組成物が(iii)親水性成分をさらに含む場合には、上記ローション組成物は、(i)界面活性剤,(ii)疎水性成分,及び(iii)親水性成分を、それぞれ、それらの合計100質量%に対して、好ましくは1.0~20.0質量%,78.0~98.9質量%,及び0.1~2.0質量%の比率、より好ましくは3.0~17.0質量%,81.3~96.7質量%,及び0.3~1.7質量%の比率、そしてさらに好ましくは5.0~15.0質量%,83.5~94.5質量%,及び0.5~1.5質量%の比率で含む。それにより、ローション組成物が、エマルション(例えば、マイクロエマルション、ナノエマルション等)を形成しやすくなり、ローション組成部が所望の粘度を保持しやすくなり、その結果、吸収性物品の使用前に移動しにくく且つ着用初期から着用者の皮膚に転写されやすく、着用者の皮膚を保護しやすくなる。
【0055】
上記ローション組成物は、室温(25℃)において、好ましくは15~40mPa・s、より好ましくは16~35mPa・sの粘度、そしてさらに好ましくは17~30mPa・sの粘度を有する。それにより、ローション組成物が、吸収性物品の使用前に移動しにくく且つ着用初期から着用者の皮膚に転写されやすくなる。
【0056】
上記ローション組成物は、36℃において、好ましくは15~30mPa・s、より好ましくは16~27mPa・s、そしてさらに好ましくは17~25mPa・sの粘度を有する。それにより、ローション組成物が、着用者の皮膚に移動した後、着用者の体温で温められた場合であっても、着用者の皮膚から、他の場所、例えば、吸収性物品の内部に移動しにくくなる。
【0057】
上記ローション組成物は、36℃における粘度と、25℃における粘度との差が、好ましくは6mPa・s以下、好ましくは5mPa・s以下、そしてさらに好ましくは4mPa・s以下である。それにより、着用初期から着用中にかけて、ローション組成物が均一の性能を発揮しやすくなるとともに、温度の異なる環境(例えば、低緯度地域における日中、高緯度地域における冬期)においても同様の性能を発揮することができる。
【0058】
本明細書では、ローション組成物の粘度は、以下の機器を用いて測定することができる。
・機器:Thermo Fisher SCIENTIFIC社製
HAAKE RheoStress1
・センサー:Coneφ60mm,1°angle C60/1
・剪断速度:100.0(1/s)
・測定時間:30秒
・サンプリング;100,平均値算出
【0059】
[その他の成分]
本開示のローション組成物は、その効果を奏する範囲において、その他の成分を含むことができる。
上記その他の成分としては、パール由来成分が挙げられる。
上記パール由来成分としては、真珠層を有する貝に由来する成分であれば、特に制限されない。上記真珠層を有する貝としては、アコヤガイ、クロチョウガイ(黒蝶真珠)、シロチョウガイ(南洋真珠)、マベガイ(マベ真珠)、アワビ等の海水性の貝、イケチョウガイ(淡水パール)、カラス貝(淡水パール)等が挙げられる。
【0060】
上記パール由来成分としては、上述の真珠層を有する貝の粉砕物、すなわち、粉体が挙げられ、そして上述の真珠層を有する貝の有機質、例えば、タンパク質コンキオリン、及び上記有機質に由来するペプチド、アミノ酸、例えば、加水分解コンキオリン等であることができる。上記ペプチド、アミノ酸等は、液状であってもよい。
【0061】
上記その他の成分としては、例えば、香料、溶媒等が挙げられる。
上記その他の成分としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーン、シリコーン系レジン等が挙げられる。
上記その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、例えば、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、没食子酸プロピル等が挙げられる。
【0062】
上記その他の成分としては、例えば、ビタミン、例えば、天然ビタミン又は合成ビタミンが挙げられる。上記ビタミンとしては、例えば、水溶性ビタミン、例えば、ビタミンB群、例えば、ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンB3,ビタミンB5,ビタミンB6,ビタミンB7,ビタミンB9,ビタミンB12等、ビタミンCが挙げられる。
上記ビタミンとしては、例えば、脂溶性ビタミン、例えば、ビタミンA群、ビタミンD群、ビタミンE群、およびビタミンK群等が挙げられる。
上記ビタミンにはまた、それらの誘導体も含まれる。
【0063】
上記その他の成分としては例えば、アミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリン、ヒドロキシプロリン等、並びにペプチドが挙げられる。
【0064】
上記その他の成分としては、例えば、ゼオライト、例えば、天然ゼオライト、例えば、方沸石、菱沸石、輝沸石、ナトロライト、束沸石、及びソモソナイト、並びに、合成ゼオライトが挙げられる。
上記その他の成分としては、例えば、コレステロール、ヒアルロン酸、レシチン、セラミド等が挙げられる。
【0065】
また、上記その他の成分としては、例えば、薬剤、例えば、皮膚収斂剤、抗ニキビ剤、抗シワ剤、抗セルライト剤、美白剤、抗菌剤、抗カビ剤等が挙げられる。
上記皮膚収斂剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸アルミニウム、タンニン酸等、油溶性皮膚収斂剤、例えば、油溶性ポリフェノールが挙げられる。上記油溶性ポリフェノールとしては、天然の油溶性ポリフェノール、例えば、オオバクエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、カモミラエキス、ゴボウエキス、サルビアエキス、シナノキエキス、セイヨウボダイジュエキス、シラカバエキス、スギナエキス、セージエキス、サルビアエキス、テウチグルミエキス、ハイビスカスエキス、ビワ葉エキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マロニエエキス、ヨクイニンエキス等が挙げられる。
【0066】
上記抗ニキビ剤としては、例えば、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、レゾルシノール、イオウ、エリスロマイシン、亜鉛等が挙げられる。
上記抗シワ剤としては、例えば、乳酸、サリチル酸、サリチル酸誘導体、グリコール酸、フィチン酸、リポ酸、リソフォスファチド酸が挙げられる。
【0067】
上記抗セルライト剤としては、例えば、キサンチン化合物、例えば、アミノフィリン、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン等が挙げられる。
上記美白剤としては、例えば、ナイアシンアミド、コウジ酸、アルブチン、グルコサミン及びその誘導体、フィトステロール誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにクワ抽出物及び胎盤抽出物が挙げられる。
【0068】
また、上記その他の成分としては、例えば、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤、香料、色素、染料、顔料、植物抽出エキス等が挙げられる。上記抗炎症成分としては、例えば、天然由来の抗炎症剤、例えば、ボタン、オオゴン、オトギリソウ、カモミール、甘草、モモノハ、ヨモギ、シソエキス等、合成抗炎症剤、例えば、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム等が挙げられる。
上記pH調整剤としては、皮膚を弱酸性に保つためのもの、例えば、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。
上記顔料としては、例えば、酸化チタンが挙げられる。
【0069】
上記その他の成分は、水溶性、親水性、疎水性(親油性)、油溶性の性質を有することができる。
本開示の吸収性物品では、ローション組成物が、(i)界面活性剤,(ii)疎水性成分,及び(iii)親水性成分の3種の成分を少なくとも含むため、上述のその他の成分を適切に保持することができる。
【0070】
具体的には、上記ローション組成物は、水溶性を有するその他の成分を、例えば、溶解することにより(iii)親水性成分中に保持するか、又は(i)界面活性剤によりミセル化することにより(ii)疎水性成分中に保持することができる。
また、上記ローション組成物は、親水性及び疎水性のその他の成分を、(i)界面活性剤によりミセル化することにより、それぞれ、(iii)親水性成分及び(ii)疎水性成分中に保持することができる。
さらに、ローション組成物は、油溶性を有するその他の成分を、例えば、溶解することにより(ii)疎水性成分中に保持するか、又は(i)界面活性剤によりミセル化することにより、(iii)親水性成分中に保持することができる。
なお、(iii)親水性成分は、ローション組成物の任意成分である。
【0071】
本開示の吸収性物品では、液透過性シートが、その肌当接面に、ローション組成物を備えている。ローション組成物は、液透過性シートの肌当接面に、特に制限なく配置されることができる。例えば、複数のライン状のローション組成物が、吸収性物品の幅方向に離間して、吸収性物品の長手方向に延びるように配置されることができる。また、複数のドット状のローション組成物が、液透過性シートの肌当接面に、千鳥状に配置されることができる。
【0072】
本開示の吸収性物品は、上記ローション組成物を、好ましくは3.0~8.0g/m2、そしてより好ましくは4.0~6.0g/m2の坪量で有することができる。
【0073】
本開示の吸収性物品では、液透過性シートの肌当接面に配置されたローション組成物の坪量が、液透過性シートの非肌当接面に配置されたローション組成物の坪量よりも高いことが好ましい。それにより、着用者の皮膚が吸収性物品の液透過性シートの肌当接面に触れた際に、着用者の皮膚にローション組成物がより転写されやすくなる。
【0074】
本開示の吸収性物品としては、着用者の皮膚に触れるものであれば、特に制限されず、例えば、使い捨ておむつ、失禁パッド、使い捨てショーツ、生理用ナプキン、パンティーライナー、ペット用おむつ、ペットシートが挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、例を挙げて本開示を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
[製造例1]
(i)界面活性剤としてのMEL(東洋紡社製,CERAMERA-HG)10質量部と、(ii)疎水性成分としてのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(日油社製,パナセート(商標)810S)89質量部と、(iii)親水性成分としての脱イオン水1質量部とを、40℃で混合し、ローション組成物No.1を製造した。ローション組成物No.1を、室温(25℃)で24時間静置したところ、ローション組成物No.1は、透明な性状を有していた。これは、ローション組成物No.1が、油中水滴型のマイクロエマルションを形成したものと考えられる。
【0076】
ローション組成物No.1の粘度を本明細書に記載の方法に従って測定したところ、ローション組成物No.1は、36℃で22mPa・s、25℃で19mPa・sの粘度を有していた。
ローション組成物No.1を、PET剥離フィルム(ニッパ社製 PET38×1-B,100mm×100mm)上に、5.0g/m2の坪量で塗工し、ローション組成物塗工フィルムNo.1のサンプルを複数枚製造した。
【0077】
[製造例2]
(i)界面活性剤としてのMEL(東洋紡社製,CERAMERA-HG)10質量部と、(ii)疎水性成分としてのトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(日油社製,パナセート(商標)810S)89質量部と、(iii)親水性成分としての脱イオン水0.7質量部及びエタノール0.3質量部とを、40℃で混合し、ローション組成物No.2を製造した。ローション組成物No.2を、室温(25℃)で24時間静置したところ、ローション組成物No.2は、透明な性状を有していた。
【0078】
[比較製造例1]
特表平10-509896号明細書に記載の方法に従って、ローション組成物No.3を製造した。具体的には、エモリエント剤としての炭化水素(日油株式会社製,パールリーム6)65質量部と、不動化剤としてのステアリルアルコール(日油株式会社製,NAA(商標)-45を融点が40℃になるように調整したもの)35質量部とを、約80℃に加温しながら混合し、ローション組成物No.3を製造した。
【0079】
加温して液状化したローション組成物No.3を、PET剥離フィルム(ニッパ社製 PET38×1-B,100mm×100mm)上に、40g/m2及び10g/m2の坪量で塗工し、それぞれ、ローション組成物塗工フィルムNo.2及びNo.3のそれぞれのサンプルを複数枚製造した。
【0080】
[実施例1、並びに比較例1及び2]
25℃の恒温室において、ローション組成物塗工フィルムNo.1~No.3のそれぞれに、40℃に加温した人工皮膚(イデアテックスジャパン社製 PBZ13001,50mm×50mm)を載せ、上記人工皮膚の全面に、35gf/cm2の圧力が加わるようにおもりを載せ、時間と、ローション組成物のPETフィルムへの転写量との関係を追跡した。
【0081】
具体的には、ローション組成物を上記人工皮膚に塗工した際の坪量をBW
0(g/m
2)とし、人工皮膚の初期質量をm
0(g)とし、上記おもりを載せてからt時間経過後の人工皮膚の質量をm
t(g)とした場合に、t時間後のローション組成物の転写率:TR
t(%)を、次の式:
TR
t(%)=100×400×(m
t-m
0)/BW
0
により算出する。
結果を、
図1に示す。
なお、ローション組成物塗工フィルムNo.1~No.3のそれぞれにおいて、経過時間の異なる転写率:TR
t(%)の値は、別異のサンプルにて測定した値である。
【0082】
図1より、ローション組成物No.1は、初期から、すなわち、ローション組成物No.1の温度が40℃に上がる前から、そして温度が40℃に上がっても、一定した転写性を示していた。
一方、ローション組成物No.2及びNo.3は、初期の転写率が低い、すなわち、温度が上がるまで、ローション組成物の転写率が低い傾向にあった。