(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びそれを用いたペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20230301BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20230301BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20230301BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20230301BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20230301BHJP
C09D 127/06 20060101ALI20230301BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K3/32
C08L29/04 C
C08K3/26
C08K5/12
C09D127/06
C09K3/10 Z
(21)【出願番号】P 2019020386
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2018049080
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】磯田 茂紀
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145332(JP,A)
【文献】特開昭61-190545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/06
C08K 3/32
C08L 29/04
C08K 3/26
C08K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一リン酸アルカリ金属塩を100~2000ppm含有することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル樹脂。
【請求項2】
第一リン酸アルカリ金属塩を500~1000ppm含有することを特徴とする
請求項1に記載のペースト加工用塩化ビニル樹脂。
【請求項3】
平均重合度が1300~2500、酢酸ビニル残基含量が6~10重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト加工用塩化ビニル樹脂。
【請求項4】
さらに、ポリビニルアルコールを1000~10000ppm含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のペースト加工用塩化ビニル樹脂。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤20~300重量部、充填剤400重量部以下を含むことを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂を含んでなることを特徴とする自動車アンダーボディコート剤。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂を含んでなることを特徴とする自動車シーラント剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその用途に関するものであり、さらに詳細には、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車シーラント用として有用なペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと略記する場合もある。)は、一般に可塑剤、充填剤、安定剤又はその他の配合剤などと共に混練することにより、ペースト塩ビゾルを調製し、該ペースト塩ビゾルを使用し種々の成形加工法により壁紙、タイルカーペット、手袋などの様々な成形加工品に用いられている。また、加工温度の低い用途用として、比較的低温でも機械的強度が得られるゲル化溶融性に優れた特性を持つペースト塩ビとして、塩化ビニルに酢酸ビニルを共重合させた塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂が知られており、さらに、ペースト塩ビゾル調製後から加工までの長期の保存安定性に対する対策として、ゾル粘度の経時変化が少ないペースト塩ビが求められている。特に自動車シーラント剤において、加熱時に塩ビの熱分解が進行し着色すると製品外観が悪化するため、熱による着色が少ない熱安定の優れたペースト塩ビが求められている。
【0003】
ゾル粘度の経時変化の少ないペースト塩ビを製造する方法として、微小粒子含有量が少ないペースト塩化ビの製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
また熱安定性に優れたペースト塩ビを製造する方法として、pHを調整したペースト塩ビが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-145332号公報
【文献】特開2017-145407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に提案の方法によって得られるペースト塩ビは、ゾル粘度の経時変化は良好だが、熱安定性は不十分で、製品の着色に対して厳しい熱安定性を要求される用途、特に自動車用シーラント剤の用途に用いる場合には、市場要求を満足できるものではなかった。また、特許文献2に提案の方法によって得られるペースト塩ビは、ゾル粘度の経時変化が劣り、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用としては、十分な熱安定性が得られるものではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、ゾル粘度の経時変化が極めて少なく、低温加工時の機械的強度にも優れ、熱安定性も良好で、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れた特性を有するペースト塩ビ及びそれを用いた組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、特定のリン酸塩の含むペースト塩ビが熱安定性に優れるものとなることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、リン酸塩を100~2000ppm含有することを特徴とするペースト塩ビ及びそれを用いた組成物に関するものである。
【0010】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0011】
本発明のペースト塩ビは、リン酸塩を100~2000ppm含有したものである。そして、リン酸塩としては、例えば第一リン酸リチウム,第一リン酸カリウム,第一リン酸ナトリウム等の第一リン酸アルカリ金属塩、第一リン酸マグネシウム,第一リン酸カルシウム等の第一リン酸アルカリ土類金属塩、等の第一リン酸金属塩;第二リン酸リチウム,第二リン酸カリウム,第二リン酸ナトリウム等の第二リン酸アルカリ金属塩、第二リン酸マグネシウム,第二リン酸カルシウム等の第二リン酸アルカリ土類金属塩、等の第二リン酸金属塩;第三リン酸リチウム,第三リン酸カリウム,第三リン酸ナトリウム等の第三リン酸アルカリ金属塩、第三リン酸マグネシウム,第三リン酸カルシウム等の第三リン酸アルカリ土類金属塩、等の第三リン酸金属塩が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。そして、アルカリ金属塩であることが好ましく、中でも第一リン酸アルカリ金属塩、特に第一リン酸ナトリウムが好ましい。また、特に熱安定性とゾルとした際のゾル粘度の経時変化抑制に優れるものとなることから、第一リン酸アルカリ金属塩を500~1000ppmを含有するものであることが好ましい。ここで、リン酸塩が100ppm未満である場合、熱安定性が不十分となり、2000ppmを超える場合、ゾルとした際のゾル粘度の経時変化が大きなペースト塩ビとなる。
【0012】
本発明のペースト塩ビは、リン酸塩との相乗効果により熱安定性がさらに良好となることから、ポリビニルアルコール、ホスファイト、ポリオールオキシカルボン酸、アミノ酸、その他窒素化合物、含硫黄化合物、キレート化剤を含有しても良い。
【0013】
そして、特に高温における熱安定性が良好となり、ゾル粘度の経時変化にも優れるものとなることから、ポリビニルアルコールを1000~10000ppm含有するものであることが好ましい。
【0014】
本発明のペースト塩ビは、塩化ビニル樹脂と称される範疇のものであり、例えば塩化ビニル単独重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができ、特に低温加工時の機械的物性に優れることから、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。そして、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体である場合、低温加工時の機械的物性とゾル粘度の経時変化が特に優れるものとなることから、平均重合度が1300~2500、酢酸ビニル残基含量が6~10重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。なお、本発明における平均重合度は、例えばJIS-K6721に準拠した方法により求めることができる。
【0015】
本発明のペースト塩ビは、粒状物である場合の平均粒子径に特に制限はなく、中でも特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、平均粒子径0.8~2μmであることが好ましく、特に1.0~1.5μmであることがさらに好ましい。
【0016】
本発明のペースト塩ビは、特にペースト塩ビゾルとした際の粘度経時変化が小さく、極めて優れたものとなり、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、増粘率が50%未満となるペースト塩ビであることが好ましい。その際の増粘率の測定法としては、例えば、ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム70重量部、炭酸カルシウム70重量部、希釈剤15重量部を配合し、ペースト塩ビゾルを調製し、23℃、2時間保管後の粘度(A)とその後、40℃、7日間保管後の40℃下での粘度(B)をB8H型回転粘度計を用い回転数20rpmの条件にて測定し、下記式により増粘率を求めることができる。
増粘率(%)=100×(粘度(B)-粘度(A))/粘度(A)
なお、表面処理炭酸カルシウムとしては、例えば脂肪酸ナトリウム塩又は脂肪酸カリウム塩を含む表面処理剤等で表面処理した炭酸カルシウムを挙げることができ、市販品としては、例えば(商品名)NEOLIGHT-SP60 竹原化学工業株式会社製)を挙げることができる。また、希釈剤としては、例えばノルマルパラフィン系炭化水素系溶剤、イソパラフィン系炭化水素溶剤、ナフテン系炭化水素溶剤、芳香族系炭化水素溶剤等を挙げることができ、市販品としては、例えば(商品名)Exxsol D40(東燃ゼネラル石油株式会社製)を挙げることができる。
【0017】
また、本発明のペースト塩ビは、特に低温加工での機械的強度に優れるものとなり、特に自動車アンダーボディコート剤、自動車用シーラント剤として優れたものとなることから、引張強度が2.0MPa以上となるペースト塩ビであることが好ましい。その際の引張強度の測定方法としては、例えば、ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム70重量部、炭酸カルシウム70重量部、希釈剤15重量部を配合し、ペースト塩ビゾルを調製し、2mm厚に塗布したシートから、JIS3号ダンベル試験片を用い、23℃、50mm/minの条件で測定し、引張強度を求めることができる。
【0018】
本発明のペースト塩ビは、本発明の目的を奏する限りペースト塩ビを製造する際に用いられる連鎖移動剤、架橋剤、脂肪族高級アルコール、重合開始剤、還元剤等を含有してもよい。また、リン酸塩の添加は重合開始前以外に、重合中や重合終了後に添加しても良い。
【0019】
本発明のペースト塩ビの製造方法としては、ペースト塩ビの製造方法として知られている如何なる方法を用いてもよく、例えば、乳化重合法、微細懸濁重合法、シード乳化重合法、シード微細懸濁重合法等を挙げることができ、塩化ビニル単量体又は共重合可能な単量体の混合物をこれら重合法により重合することにより製造することができる。
【0020】
そして、ペースト塩ビが塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体である場合の酢酸ビニル単量体と塩化ビニル単量体の混合割合は任意であり、中でも低温加工性に優れる酢酸ビニル残基単位含量6~10重量%のペースト塩ビを効率的に製造することが可能となることから、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=94/6~85/15(重量/重量)よりなる混合単量体を用いてなることが好ましく、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れるペースト塩ビを効率的に製造することが可能となることから、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=92/8~85/15(重量/重量)よりなることが好ましい。
【0021】
また、乳化剤としては、一般的なアニオン性乳化剤又はノニオン性乳化剤があげられ、アニオン性乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジへキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩;ラウリン酸ナトリウム、半硬化牛脂脂肪酸カリウムなどの脂肪酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩などのエトキシサルフェート塩;アルカンスルホン酸塩;アルキルエーテル燐酸エステルナトリウム塩などを挙げることができる。また、ノニオン性乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステルなどを挙げることができる。そして、その中でも、より安定にペースト塩ビの製造が可能となることから、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩又はアルキルベンゼンスルホン酸塩とアルキル硫酸エステル塩との混合物を使用することが好ましい。
【0022】
また、重合方法がシード微細懸濁重合法である場合の油溶性重合開始剤を含んだシードとは、一般的なミクロ懸濁重合法により調製されたシードを用いることができ、その方法としては、例えば、まず、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニル単量体を主体とする混合物である塩化ビニル系単量体、塩化ビニル系単量体に可溶な油溶性重合開始剤、界面活性剤、緩衝剤、高級アルコール,高級脂肪酸,高級脂肪酸エステル,塩素化パラフィンなどの分散助剤、必要に応じて重合度調整剤を加えてプレミックスし、ホモジナイザー等により均質化処理を行い塩化ビニル系単量体油滴の調製を行う。その際のホモジナイザーとしては、例えばコロイドミル、振動攪拌機、二段式高圧ポンプなどを用いることができる。均質化処理を行った後の液を重合器に送り、緩やかに攪拌しながら重合器内の温度を上げて重合反応を開始し、以後所定の転化率に達するまで重合を行うことにより油溶性重合開始剤を含んだシードの調製を行うことができる。その際の重合温度としては、30~55℃であることが好ましい。
【0023】
その際の油溶性重合開始剤としては、油溶性重合開始剤の範疇に属するものであればいかなるものでもよく、その中でも10時間半減期温度が30~70℃の範囲であるジアシルパーオキサイドが好ましく、そのような油溶性重合開始剤としては、例えばイソブチリルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、カプロイルパーオキサイドなどがあげられる。そして、該シードには、油溶性重合開始剤をシード中に含有していることが必要であり、その際シード調製時の油溶性重合開始剤の分解量は、全油溶性重合開始剤の5~50重量%とする事が好ましい。該油溶性重合開始剤の分解速度は反応温度に依存おり、比較的容易に該分解量の調整を行うことが可能となる半減期を有する油溶性重合開始剤を用いることが好ましく、そのような油溶性重合開始剤としては、例えば3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドを挙げることができる。
【0024】
そして、重合の進行により、重合系の圧力が低下した後に反応を停止して、未反応の単量体を除去し、得られたペースト塩ビラテックスを噴霧乾燥のような既知の方法により乾燥しペースト塩ビとして回収を行うことができる。重合反応により得られたペースト塩ビラテックスからペースト塩ビを回収する方法としては、ペースト塩ビが回収できる限りにおいていかなる方法を用いてもよく、その中でも、特に効率よく該ラテックスから水分を除去しペースト塩ビを回収することができることから、噴霧乾燥による方法が好ましい。この際の噴霧乾燥に使用する乾燥機としては、一般的に使用されているものでよく、例えば「SPRAY DAYING HANDBOOK」(K.Masters著、3版、1979年、George godwin Limitedより出版)の121頁第4.10図に記載されている各種のスプレー乾燥機があげられる。そして、乾燥条件である乾燥温度としては、ペースト塩ビ回収時の温度でよく、乾燥機入口温度で80~200℃、また乾燥機出口温度で40~70℃、好ましくは45~65℃がよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明のペースト塩ビは、可塑剤に分散させて調製したペースト塩ビゾルの粘度の経時変化が少なく、低温加工した際の機械的強度に優れ、熱安定性も良好で、コート剤、特に自動車用シーラント剤として優れた特性を有するものである。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
以下に実施例より得られたペースト塩ビの評価方法を示す。
【0028】
<平均重合度の測定>
JIS-K6721に準拠し求めた。
【0029】
<酢酸ビニル残基含有量(重量%)の測定方法>
ペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル残基含有量(VAc含量)(重量%)は、ペースト塩ビ100mgと臭化カリウム10mgを混合し、すりつぶして成形した測定サンプルを、赤外分光光度計(島津社製、(商品名)FTIR-8100A)を使用して、赤外吸収スペクトル測定し、下記式から算出した。
ペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル残基含有量(VAc含量)(重量%)
=(3.73×B/A+0.024)×1.04
A:1430cm-1付近のC-H面内変角による吸収ピークトップのAbs.値。
B:1740cm-1付近のC=O伸縮による吸収ピークトップのAbs.値。
【0030】
<増粘率の測定方法>
ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部(株式会社ジェイプラス製)、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム((商品名)NEOLIGHT-SP60 竹原化学工業株式会社製)70重量部、炭酸カルシウム((商品名)NN#500 日東粉化工業株式会社製)ナフテン系炭化水素溶剤((商品名)ExxsolD40 東燃ゼネラ石油株式会社製)15重量部からなるペースト塩ビゾルを23℃にて保管した際の、混練2時間後のB8H型回転粘度計で20rpm条件にて測定した粘度をAとし、該ゾルを2時間後の測定後に40℃にて保管し混練から7日間経過後に40℃下にて上記方法にて測定した粘度をBとした。そして、下記式にて増粘率を求めた。
増粘率(%)=100×(B-A)/A
<引張強度の測定方法>
ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部(株式会社ジェイプラス製)、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム((商品名)NEOLIGHT-SP60 竹原化学工業株式会社製)70重量部、炭酸カルシウム((商品名)NN#500 日東粉化工業株式会社製)ナフテン系炭化水素溶剤((商品名)ExxsolD40 東燃ゼネラ石油株式会社製)15重量部からなるペースト塩ビゾルを脱泡した後、2mm厚に塗布し、140℃×30分加熱して得られたたシートから、JIS3号ダンベル試験片を用い、23℃、50mm/minの条件で測定した。
【0031】
<熱安定性の評価>
ペースト塩ビ100重量部、フタル酸ジイソノニル60重量部(株式会社ジェイプラス製)、酸化亜鉛((商品名)MZ-100 大協化成株式会社製)0~2重量部からなるペースト塩ビゾルを脱泡した後、1mm厚に塗布し、140~160℃×30分間加熱して得られたシートの着色を目視で評価した。
【0032】
合成例1(開始剤等含有シードの製造例)
1m3オートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル6kg及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kgを仕込み、該重合液をホモジナイザーを用いて2時間循環し、均質化処理後、温度を45℃に上げて、重合を進めた。45℃における塩化ビニルの飽和蒸気圧より0.2MPa圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収した。得られた開始剤等含有シードラテックスの平均粒子径は0.60μm、固形分濃度は32%であった。
【0033】
実施例1
1m3オートクレーブ中に脱イオン水350kg、1段目仕込み単量体として塩化ビニル単量体を220kg(混合単量体の全仕込み量に対して55重量%)と酢酸ビニル単量体を36kg(混合単量体の全仕込み量に対して9重量%)、ラウリル硫酸ナトリウムを1000ppm(混合単量体100重量部に対して)、合成例1で得られた開始剤等含有シードラテックスを63kg、第一リン酸ナトリウムを200ppm、硫酸銅を5ppm仕込み、この反応混合物の温度を40℃に上げて1段目重合を開始した。重合転化率が85%となったところで、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体144kg(混合単量体の全仕込み量に対して36重量%)を15分間で1m3オートクレーブに仕込み、重合温度35℃にして2段目重合を継続するとともに、0.2重量%アスコルビン酸水溶液を、重合温度を維持するように連続的に添加した。混合単量体の合計に対して重合転化率が90%となったところで重合を終了した。重合開始してから重合終了までの間、ラウリル硫酸ナトリウム6000ppmとノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:(商品名)アクアロンHS-10)1000ppmを連続的に添加した後、未反応単量体を回収して、pH4.1のペースト塩ビラテックスを得た。該ペースト塩ビラテックスを、スプレードライヤーにて、熱風入口160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥を行って、ペースト塩ビを得た。
【0034】
得られたペースト塩ビは、平均重合度1800、酢酸ビニル残基の含有量6.5重量%、の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0035】
実施例2
第一リン酸ナトリウムを500ppmとしたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0036】
得られたペースト塩ビラテックスのpHは4.4であり、実施例1と同様に乾燥して得られたペースト塩ビは、平均重合度1860、酢酸ビニル残基の含有量6.2重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0037】
実施例3
第一リン酸ナトリウムを1000ppmとしたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0038】
得られたペースト塩ビラテックスのpHは4.2であり、実施例1と同様に乾燥して得られたペースト塩ビは、平均重合度1870、酢酸ビニル残基の含有量6.5重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0039】
実施例4
第一リン酸ナトリウムを重合開始前ではなく、重合開始後に1000ppm添加したこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0040】
得られたペースト塩ビラテックスのpHは3.9であり、実施例1と同様に乾燥して得られたペースト塩ビは、平均重合度1820、酢酸ビニル残基の含有量6.7重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であった。得られたペースト塩ビの物性結果を表1に示す。
【0041】
比較例1
第一リン酸ナトリウムを無添加としたこと以外は、実施例1と同様に行い、塩ビを得た。
【0042】
得られた塩ビラテックスのpHは3.9であり、実施例1と同様に乾燥して得られた塩ビは、平均重合度1820、酢酸ビニル残基の含有量6.7重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であった。得られた塩ビの物性結果を表1に示す。
【0043】
比較例2
重合開始前にホウ酸-苛性カリウム溶液を1000ppm添加したこと以外は、比較例1と同様に行い、塩ビを得た。
【0044】
得られた塩ビラテックスのpHは4.5であり、実施例1と同様に乾燥して得られた塩ビは、平均重合度1830、酢酸ビニル残基の含有量6.5重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であった。得られた塩ビの物性結果を表1に示す。
【0045】
比較例3
水酸化ナトリウム水溶液を用い、比較例1で得られた塩ビラテックスのpHを5.0へ調整し、塩ビを得た。
【0046】
実施例1と同様に乾燥して得られた塩ビは、平均重合度1820、酢酸ビニル残基の含有量6.7重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であった。得られた塩ビの物性結果を表1に示す。
【0047】
比較例4
水酸化ナトリウム水溶液を用い、比較例1で得られた塩ビラテックスのpHを7.0へ調整し、塩ビを得た。
【0048】
実施例1と同様に乾燥して得られた塩ビは、平均重合度1820、酢酸ビニル残基の含有量6.7重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であった。得られた塩ビの物性結果を表1に示す。
【0049】
比較例5
水酸化ナトリウム水溶液を用い、比較例1で得られた塩ビラテックスのpHを9.0へ調整し、ペースト塩ビを得た。
【0050】
実施例1と同様に乾燥して得られた塩ビは、平均重合度1820、酢酸ビニル残基の含有量6.7重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であった。得られた塩ビの物性結果を表1に示す。
【0051】
比較例6
水酸化ナトリウム水溶液を用い、比較例1で得られた塩ビラテックスのpHを11.0へ調整し、塩ビを得た。
【0052】
実施例1と同様に乾燥して得られた塩ビは、平均重合度1820、酢酸ビニル残基の含有量6.7重量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であった。得られた塩ビの物性結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
実施例5
実施例2で得られたペースト塩ビラテックスへ、ポリビニルアルコール((商品名)ゴーセノールAL-06R 日本合成化学工業株式会社製)を1000ppm添加し、スプレードライヤーにて、熱風入口160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥を行って、ペースト塩ビを得た。得られたペースト塩ビの物性結果を表2に示す。
【0055】
実施例6
ポリビニルアルコールを3000ppmとしたこと以外は、実施例5と同様に行い、ペースト塩ビを得た。得られたペースト塩ビの物性結果を表2に示す。
【0056】
実施例7
ポリビニルアルコールを5000ppmとしたこと以外は、実施例5と同様に行い、ペースト塩ビを得た。得られたペースト塩ビの物性結果を表2に示す。
【0057】
実施例8
ポリビニルアルコールを10000ppmとしたこと以外は、実施例5と同様に行い、ペースト塩ビを得た。得られたペースト塩ビの物性結果を表2に示す。
【0058】
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のペースト塩ビは、可塑剤に分散させて調製したペースト塩ビゾルの粘度の経時変化が少なく、低温加工した際の機械的強度に優れ、熱安定性も良好で、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車シーラント用として優れた特性を有するものであり、その産業上の利用価値は高いものである。