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特許7234764硬化性に優れるポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】硬化性に優れるポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/20 20060101AFI20230301BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230301BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
C08G18/20
C08G18/00 F
C08G101:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019076535
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020172612
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮平
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-35006(JP,A)
【文献】特開2006-348099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される第3級アミン化合物(A)、下記一般式(2)で示される第3級アミン化合物(B)及び下記一般式(3)で示される環状アミン化合物(C)を含有するポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物。
【化1】
[式中、R、及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を表す。Rは、炭素数2~6のアルキレン基を表す。]
【化2】
[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を表す。R、及びRは、炭素数2~6のアルキレン基を表す。]
【化3】
[式中、R10、R11、R12、R13及びR14は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。]
【請求項2】
上記一般式(1)で表される第3級アミン化合物(A)が、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルプロパンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、又はN,N-ジエチルプロパンジアミンである請求項1に記載のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物。
【請求項3】
上記一般式(2)で表される第3級アミン化合物(B)が、2,2’-イミノビス(N,N-ジメチルエチルアミン)、3,3’-イミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)、2,2’-イミノビス(N,N-ジエチルエチルアミン)、又は3,3’-イミノビス(N,N-ジエチルプロピルアミン)である請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物。
【請求項4】
上記一般式(3)で表される環状アミン化合物(C)が、2-ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物。
【請求項5】
第3級アミン化合物(A)、第3級アミン化合物(B)、及び環状アミン化合物(C)の混合比率が、[第3級アミン化合物(A)と(B)の合計含有量]/[環状アミン化合物(C)の含有量]=60/40~99/1(重量比)の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物の存在下で、ポリオール類とポリイソシアネート類とを反応させることを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物、及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、ポリオールとポリイソシアネートを主原料として、触媒、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等を必要に応じて添加して製造される。得られるポリウレタンフォームは、自動車用シートクッション、マットレス、家具等の軟質フォーム、自動車インストルメントパネル、ヘッドレスト、アームレスト等の半硬質フォーム、電気冷蔵庫、建材等に用いられる硬質フォーム等に加工され幅広く使用されている。
【0003】
発泡剤として、水、低沸点有機化合物、又はそれらの両方を用いるポリウレタンフォームの製造においては、生産性、成形性に優れることから、これら触媒のうち、とりわけ第3級アミン化合物が広く用いられている。このような第3級アミン化合物としては、例えば、従来公知のトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N,N-ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。(例えば、非特許文献1参照)。金属系化合物は生産性、成形性が悪化することより、ほとんどの場合、第3級アミン触媒と併用されることが多く、単独での使用は少ない。
【0004】
上記のような第3級アミン触媒については、ポリウレタンフォーム製品から揮発して周辺環境を汚染する等の問題があった(所謂、アミンエミッション)。当該問題の対策として、分子内にイソシアネートと反応しうる官能基を有する第3級アミン触媒が提案されており、例えば、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン等のN,N-ジアルキルアルキレンジアミン類(例えば、特許文献1)や、N,N-ジアルキルアルキレンジアミン類の炭酸塩(例えば、特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭46-4846号公報
【文献】米国特許4517313号
【非特許文献】
【0006】
【文献】岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)、日刊工業新聞社、p.118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリウレタンフォーム製造の際、一般にフォーム中心部ほど断熱効果によって反応熱による温度上昇が高く、反対にフォーム表面部ほど断熱効果は小さく温度上昇は低くなる。その結果、フォーム表面部はフォーム中心部より硬化速度が遅くなり、フォーム表面部の硬化速度が生産の律速となる。
【0008】
上述した従来公知のイソシアネートと反応しうる官能基を有する第3級アミン触媒については、フォーム表面部の硬化速度が遅いという課題があった。
【0009】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、アミンエミッションが少なく、尚且つポリウレタンフォーム表面の硬化速度が速いポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物、及びそれを用いたポリウレタンフォーム樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記に示すポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物、及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法に関する。
[1] 下記一般式(1)で示される第3級アミン化合物(A)、下記一般式(2)で示される第3級アミン化合物(B)及び下記一般式(3)で示される環状アミン化合物(C)を含有するポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
[式中、R、及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を表す。Rは、炭素数2~6のアルキレン基を表す。]
【0014】
【化2】
【0015】
[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を表す。R、及びRは、炭素数2~6のアルキレン基を表す。]
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、R10、R11、R12、R13及びR14は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。]
[2] 上記一般式(1)で表される第3級アミン化合物(A)が、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルプロパンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、又はN,N-ジエチルプロパンジアミンである[1]に記載のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物。
[3] 上記一般式(2)で表される第3級アミン化合物(B)が、2,2’-イミノビス(N,N-ジメチルエチルアミン)、3,3’-イミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)、2,2’-イミノビス(N,N-ジエチルエチルアミン)、又は3,3’-イミノビス(N,N-ジエチルプロピルアミン)である[1]又は[2]に記載のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物。
[4] 上記一般式(3)で表される環状アミン化合物(C)が、2-ヒドロキシメチルトリエチレンジアミンである[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物。
[5] 第3級アミン化合物(A)、第3級アミン化合物(B)、及び環状アミン化合物(C)の混合比率が、[第3級アミン化合物(A)と(B)の合計含有量]/[環状アミン化合物(C)の含有量]=60/40~99/1(重量比)の範囲であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物。
[6] [1]乃至[5]のいずれかに記載のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物の存在下で、ポリオール類とポリイソシアネート類とを反応させることを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物は、アミンエミッションが少なく、尚且つポリウレタンフォーム表面の硬化速度を速めることができるという効果を奏する。このため、本発明のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物は、ポリウレタンフォーム製品を生産性、成形性良く製造することができるという効果を奏する。
【0019】
また、予想外なことに、本発明のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物は、上記一般式(1)で示される第3級アミン化合物(A)、上記一般式(2)で示される第3級アミン化合物(B)又は上記一般式(3)で表される環状アミン化合物(C)をそれぞれ単独で使用する場合に比べ、表面の硬化時間が短縮された。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明は、ポリウレタンフォーム製造用組成物、及びポリウレタンフォームの製造方法に係る。
【0022】
本発明のポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物は、上記一般式(1)で示される第3級アミン化合物(A)、上記一般式(2)で示される第3級アミン化合物(B)、及び上記一般式(3)で示される環状アミン化合物(C)を含有することを特徴とする。
【0023】
上記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を表す。Rは炭素数2~6のアルキレン基を表す。
【0024】
上記の炭素数2~6のアルキレン基としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレン基、プロピレン基(プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基)、ブチレン基(ブタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,4-ジイル基)、ペンチレン基(ペンタン-1,2-ジイル基、ペンタン-1,3-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基)、ヘキセン基(ヘキサン-1,2-ジイル基、ヘキサン-1,3-ジイル基、ヘキサン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,5-ジイル基、又はヘキサン-1,6-ジイル基)等が挙げられる。これらのうち、ポリウレタン樹脂硬化性の観点から、エチレン基又はプロピレン基(特に限定するものではないが、例えば、プロパン-1,3-ジイル基)が好ましい。
【0025】
記一般式(1)で示される第3級アミン化合物(A)の具体例としては、特に限定するものではないが、例えば、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルプロパンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、又はN,N-ジエチルプロパンジアミンが例示される。ポリウレタン樹脂硬化性の観点から、これらのうち、N,N-ジメチルプロパンジアミン又はN,N-ジエチルプロパンジアミンが好ましい。
【0026】
上記一般式(2)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、メチル基又はエチル基を表す。R、Rは、炭素数2~6のアルキレン基を表す。
【0027】
前記の炭素数2~6のアルキレン基については、Rで示した炭素数2~6のアルキレン基と同義であり、好ましい範囲についても同じである。
【0028】
一般式(2)で示される第3級アミン化合物(B)の具体例としては、特に限定するものではないが、例えば、2,2’-イミノビス(N,N-ジメチルエチルアミン)、3,3’-イミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)、2,2’-イミノビス(N,N-ジエチルエチルアミン)、又は3,3’-イミノビス(N,N-ジエチルプロピルアミン)が例示される。ポリウレタン樹脂硬化性の観点から、これらのうち、3,3’-イミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)又は3,3’-イミノビス(N,N-ジエチルプロピルアミン)が好ましい。
【0029】
上記一般式(3)において、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、特に限定するものではないが、例えば、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ヒドロキシメチル基、炭素数1~4のアルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基)又は炭素数1~4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基又はtert-ブトキシ基)等を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基又はメトキシ基である。
【0030】
本発明において好ましい環状アミン化合物(C)としては、例えば、上記一般式(3)において、R10、R11、R12、R13及びR14が、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基若しくはヒドロキシメチル基を表す化合物(但し、R10、R11、R12、R13及びR14の全てが同じ置換基を表すことはない)、又は上記一般式(3)において、置換基R10、R11、R12、R13及びR14の全てが水素原子である化合物等が挙げられる。上記一般式(3)において、置換基R10、R11、R12、R13及びR14の全てが水素原子である化合物は、ポリウレタンフォーム製造における硬化性上も好ましい。
【0031】
上記一般式(3)で示される環状アミン化合物(C)の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【化4】
【0033】
上記一般式(3)で示される環状アミン化合物(C)の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、ジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応により製造することができる(例えば、特開2010-37325公報参照)。
【0034】
上記一般式(1)で示される第3級アミン化合物(A)、上記一般式(2)で示される第3級アミン化合物(B)、及び上記一般式(3)で示される環状アミン化合物(C)の混合比率としては、特に限定するものではないが、ポリウレタンフォーム製品を生産性、成形性良く得る観点から、好ましくは[第3級アミン化合物(A)と(B)の合計含有量]/[環状アミン化合物(C)の含有量]=60/40~99/1(重量比)の範囲であり、特に好ましくは[第3級アミン化合物(A)と(B)の合計含有量]/[環状アミン化合物(C)の含有量]=80/20~95/5(重量比)の範囲である。
【0035】
本発明のポリウレタンフォーム樹脂製造用のアミン触媒組成物については、更にポリオール化合物を含有させてもよい。当該ポリオール化合物は溶剤、凍結防止剤、粘度調整剤等として機能しうる。当該ポリオール化合物の具体例としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、3-(1’-ピペラジニル)-1,2-プロパンジオール、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペラジン、ポリビニルアルコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。これらのうち、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールA、N-メチルジエタノールアミン、又はトリエタノールアミンであり、更に好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、N-メチルジエタノールアミン、又はトリエタノールアミンである。
【0036】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法とは、ポリオール類とポリイソシアネート類とを、本発明のポリウレタンフォーム製造用アミン触媒組成物の存在下に反応(硬化)及び発泡させることを特徴とし、必要に応じて追加の触媒、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等の原料の存在下に反応(硬化)及び発泡させてもよい。なお、本発明において、ポリウレタンフォーム製造用アミン触媒組成物及び追加の触媒については、ポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応(樹脂化反応)、ポリイソシアネート類と水とのウレア化反応(泡化反応)等の各反応を促進させるために使用される。
【0037】
上記のポリオール類としては、特に限定するものではないが、例えば、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、更にはリン含有ポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、適宜混合して併用することもできる。
【0038】
上記のポリエーテルポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物(具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン等のアミン類、エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が例示される。)を出発原料として、これとアルキレンオキサイド(具体的には、エチレンオキシドやプロピレンオキシドが例示される)との付加反応により製造されたものが挙げられる[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985) Hanser Publishers社(ドイツ),p.42-53に記載の方法参照]。
【0039】
上記のポリエステルポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、二塩基酸とグリコールの反応から得られるものや、ナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が挙げられる[例えば、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987)日刊工業新聞社 p.117の記載参照]。
【0040】
上記のポリマーポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、上記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる)をラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールが挙げられる。
【0041】
上記の難燃ポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られるリン含有ポリオールや、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られるハロゲン含有ポリオール、フェノールポリオール等が挙げられる。
【0042】
上記のポリオール類については、特に限定するものではないが、平均水酸基価が20~1000mgKOH/gの範囲であることが好ましく、軟質ポリウレタンフォーム樹脂や半硬質ポリウレタンフォーム樹脂を製造する際には平均水酸基価が20~100mgKOH/gの範囲であることがより好ましく、硬質ポリウレタンフォーム樹脂を製造する際には平均水酸基価が100~800mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。
【0043】
本発明の方法に使用されるポリイソシアネート類は、従来公知のものを用いることができ、特に限定するものではないが、例えば、トリレンジイソシアネート(以下、「TDI」と称する場合がある)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と称する場合がある)、ナフチレンジイシシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、ジシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、及びこれらの混合体等が挙げられる。これらのうち好ましくはTDIとその誘導体、又はMDIとその誘導体であり、これらは単独で使用しても、混合して使用することもできる。
【0044】
上記のTDIとその誘導体としては、例えば、2,4-TDIと2,6-TDIの混合物、TDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体等を挙げることができる。また、MDIとその誘導体としては、例えば、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体、末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体等を挙げることができる。
【0045】
これらポリイソシアネート類のうち、軟質ポリウレタンフォーム樹脂や半硬質ポリウレタンフォーム樹脂製品には、TDIとその誘導体、MDIとその誘導体、又はそれらの両方が好適に使用される。また、硬質ポリウレタンフォーム樹脂には、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体が好適に使用される。
【0046】
上記のポリイソシアネート類とポリオール類の混合割合としては、特に限定するものではないが、イソシアネートインデックス([イソシアネート基]/[イソシアネート基と反応しうる活性水素基]×100)で表すと、一般に40~400の範囲が好ましい。より好ましくは50~200の範囲であり、更に好ましくは60~120の範囲である。
【0047】
なお、本発明のポリウレタンフォーム製造用アミン触媒組成物については、ポリウレタンフォーム製造用の触媒として、単独で用いても良いが、必要に応じて他の樹脂化触媒、泡化触媒、有機金属触媒、カルボン酸金属塩触媒、又は第4級アンモニウム塩触媒を併用しても良い。
【0048】
上記の泡化触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定されるものではないが、例えば、トリエタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、又はN,N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルアミノエチル-N”-メチルアミノイソプロパノール等が挙げられる。
【0049】
上記の有機金属触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、又はナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0050】
上記のカルボン酸金属塩触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、カルボン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等が挙げられる。ここで、カルボン酸としては、特に限定するものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、2-エチルヘキサン酸、アジピン酸等の脂肪族モノ若しくはジカルボン酸類、安息香酸、又はフタル酸等の芳香族モノ若しくはジカルボン酸類等が挙げられる。また、カルボン酸塩を形成すべき金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、又はカリウム等のアルカリ金属、カルシウム、又はマグネシウム等のアルカリ土類金属が好適なものとして挙げられる。
【0051】
上記の第4級アンモニウム塩触媒としては、従来公知のものでよく、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、又は2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類が挙げられる。
【0052】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法においては、上記したとおり、本発明のポリウレタンフォーム製造用アミン触媒組成物を単独で、又は上記した他の触媒と混合して使用することができるが、これらを混合して使用するにあたっては、必要ならば、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール又は水等の溶媒を併せて使用することができる。当該溶媒の量は、特に限定するものではないが、好ましくは本発明のポリウレタンフォーム製造用アミン触媒組成物を単独で、又は上記した他の触媒と混合した触媒の全量に対して3重量倍以下であることが好ましい。本発明の製造方法においては、本発明のポリウレタンフォーム製造用アミン触媒組成物、本発明のポリウレタンフォーム製造用アミン触媒組成物と上記した他の触媒の混合物、又は本発明のポリウレタンフォーム製造用アミン触媒組成物と上記した他の触媒と上記した溶媒の混合物をポリオール類に添加して使用してもよいし、個々の成分を別々にポリオール類に添加しても使用してもよく、特に制限はない。
【0053】
本発明のポリウレタンフォーム製造用アミン触媒組成物を、ポリウレタンフォーム製造用触媒として使用する場合、その使用量は、特に限定するものではないが、使用されるポリオール類 100重量部に対し、0.03~9重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1~5重量部の範囲である。
【0054】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法において、必要であれば、架橋剤又は鎖延長剤を用いることができる。架橋剤又は鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン等の低分子量の多価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子量のアミンポリオール類、エチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等ポリアミン類を挙げることができる。
【0055】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法において、必要であれば、難燃剤を用いることができる。使用される難燃剤としては、例えば、リン酸とアルキレンオキシドとの付加反応によって得られるプロポキシル化リン酸、プロポキシル化ジブチルピロリン酸等の含リンポリオールの様な反応型難燃剤、トリクレジルホスフェート等の第3リン酸エステル類、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有第3リン酸エステル類、ジブロモプロパノール、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン含有有機化合物類、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の無機化合物等が挙げられる。その量は特に限定されるものではなく、要求される難燃性に応じて異なるが、通常ポリオール類 100重量部に対して4~20重量部であることが好ましい。
【0056】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法において、必要であれば、着色剤や、老化防止剤、その他従来公知の添加剤等も使用できる。これらの添加剤の種類、添加量は、使用される添加剤の通常の使用範囲でよい。
【0057】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法は、通常、上記原料を混合した混合液を急激に混合、攪拌した後、適当な容器又はモールド(金型)に注入して発泡成型することにより行われる。混合、攪拌は一般的な攪拌機や専用のポリウレタン発泡機を使用して実施すればよい。ポリウレタン発泡機としては、例えば、高圧、低圧、又はスプレー式の機器が使用される。
【0058】
本発明のポリウレタンフォームの製造方法により得られるポリウレタンフォーム製品としては、例えば、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム等が挙げられる。本発明のポリウレタンフォームの製造方法は、具体的には、自動車内装材として用いられる軟質ポリウレタンフォームのカーシート、半硬質ポリウレタンフォームのインスツルメントパネルやハンドル及び硬質ポリウレタンフォームにて製造される断熱材の製造に特に好適に使用される。
【0059】
なお、本発明において、軟質ポリウレタンフォームとは、一般的にオープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能な発泡体をいう[Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.161~233や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.150~221の記載参照]。軟質ポリウレタンフォームの物性としては、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10~100kg/m、圧縮強度(ILD25%)が200~8000kPa、伸び率が80~500%の範囲である。
【0060】
また、半硬質ポリウレタンフォームとは、密度及び圧縮強度は軟質ポリウレタンフォームよりも高いものの、軟質ポリウレタンフォームと同様にオープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能な発泡体をいう[Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.223~233や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.211~221の記載参照]。また、使用するポリオール、ポリイソシアネート原料も軟質ポリウレタンフォームと同様であるため、一般に軟質ポリウレタンフォームに分類される。半硬質ポリウレタンフォームの物性は、特に限定するものではないが、一般的には、密度が40~800kg/m、圧縮強度(ILD25%)が10~200kPa、伸び率が40~200%の範囲である。本発明において、軟質ポリウレタンフォームは、使用する原料及び発泡体の物性範囲から半硬質ポリウレタンフォームを含む場合がある。
【0061】
さらに、硬質ポリウレタンフォームとは、高度に架橋されたクローズドセル構造を有し、可逆変形不可能なフォームをいう[Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ),p.234~313や、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、p.224~283の記載参照]。硬質ウレタンフォームの物性は、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10~100kg/m、圧縮強度が50~1000kPaの範囲である。
【実施例
【0062】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、文書中及び表中の重量部は、全ポリオールの合計重量を100とした場合の重量比を示す。
【0063】
原材料としては下記のものを用いた。
【0064】
ポリオール: サンニックスGP-3000(OH価=56.1mgKOH/g、三洋化成工業社製)
整泡剤: SH190(シリコーン整泡剤、東レ・ダウコーニングシリコーン社製)
金属触媒: スタナスジオクトエート(和光純薬社製)
発泡剤: 水
ポリイソシアネート液: トリレンジイソシアネート(東ソー社製コロネートT-80,NCO含量=48.3%)
Bis DMAPA: 3,3’-イミノビス(N,N-ジメチルプロピルアミン)(Aldrich社製)
DMAPA: N,N-ジメチルプロパンジアミン (東京化成工業社製)
RZETA: 1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール 33%ジプロピレングリコール溶液(東ソー社製)
TEDA-L33: トリエチレンジアミン 33%ジプロピレングリコール溶液(東ソー社製)
DPA: N-ジメチル-N,N’-ジ(2-ヒドロキシプロピル)プロピレンジアミン(Huntsman社製)。
【0065】
実施例1~3及び比較例1~4.
ポリオール 100重量部、整泡剤 1.0重量部、金属触媒 0.12重量部及び発泡剤(水) 3.5重量部を、秤量し、十分に攪拌混合して原料配合液を調整した。次いで、調整した原料配合液 366.2gを1000mlポリエチレンカップに取り、更に表1及び2に示したアミン化合物の組成物からなる触媒組成物を、ポリオール 100重量部に対して表1及び2に記載の重量部となるように添加して、触媒含有原料配合液を調製し、20℃に温度調整した。なお、前記触媒組成物添加量は、反応性が下記のライズタイムで100±2秒となるように調整したものである。20℃に温度調整したポリイソシアネート液を、イソシアネートインデックス〔ポリイソシアネート液の[イソシアネート基]/触媒含有原料配合液の[OH基](モル比)×100)〕が110となる量だけ、前記の触媒含有原料配合液が入ったポリエチレンカップの中に入れ、次いで、素早く攪拌機にて3500rpmで10秒間攪拌した。混合攪拌した混合液を40℃に温度調節した縦×横が25cm×25cm角のアルミ製モールドに移し、発泡中の反応性を以下に示す方法で測定した。また、フォーム表面の硬化時間を以下に示す方法で測定した。
【0066】
[反応性の測定]
・クリームタイム: 発泡開始時間、フォームが上昇開始する時間を目視にて測定
・ライズタイム: フォーム高さが最高点に達した時間をレーザー変位計にて測定
[ポリウレタンフォームの表面硬化性]
上記の発泡反応で得られたポリウレタンフォームについて、発泡反応開始から7分後に、モールドから脱型し、直ちに室温23±1℃、湿度50±3%に維持された室内に保管した。発泡反応開始30分後から1分毎に、先端が円錐状になった710gの鉄製の棒を、ポリウレタンフォームへ落下させた。フォーム表面が十分に硬化し、鉄製の棒にフォーム表面の剥離片が付着しなる時点をキュア完了点とした。前記の発泡反応開始時点からキュア完了点までの時間をキュアタイムとした。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
実施例1~3及び比較例1~4から明らかなように、本発明の組成物を用いて得られたポリウレタンフォームは、キュアタイムが短くフォーム表面の硬化性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の触媒を用いて製造されるポリウレタンフォーム樹脂は、自動車内装材として用いられる軟質ポリウレタンフォームのカーシート、半硬質ポリウレタンフォームのインスツルメントパネルやハンドル及び硬質ポリウレタンフォームにて製造される断熱材の製造等として有用である。