(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】窒素酸化物吸着材、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/18 20060101AFI20230301BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230301BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20230301BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B01J20/18 E
B01J20/30
F01N3/08 A
F01N3/08 B
B01D53/92 223
(21)【出願番号】P 2019076962
(22)【出願日】2019-04-15
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2018077965
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】武脇 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 武士
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/090382(WO,A1)
【文献】特開昭62-231665(JP,A)
【文献】特開2002-321912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/18
B01J 20/30
F01N 3/08
B01D 53/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄担持アルミノシリケートゼオライトを含む窒素酸化物吸着材であって、前記鉄担持アルミノシリケートゼオライトにおいて、アルミノシリケートゼオライトの骨格が酸素8員環構造を有し、
前記鉄担持アルミノシリケートゼオライトのSiO
2/Al
2O
3モル比が3以上15以下で、かつ、前記鉄担持アルミノシリケートゼオライトの鉄含有量が0.5重量%以上10重量%以下であ
り、担持された鉄の平均酸化数が1.5以上2.3未満である、窒素酸化物吸着材。
【請求項2】
前記アルミノシリケートゼオライトが、AEI型ゼオライト又はAFX型ゼオライトである請求項1に記載の窒素酸化物吸着材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の窒素酸化物吸着材の製造方法であって、
不活性ガス雰囲気下で、2価の鉄原料を溶解させた溶液にアルミノシリケートゼオライトと酸化防止剤を混合して、鉄担持アルミノシリケートゼオライト
を得る工程を含む、窒素酸化物吸着材の製造方法。
【請求項4】
前記アルミノシリケートゼオライトが、アルカリカチオンを含む請求項3に記載の窒素酸化物吸着材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な窒素酸化物吸着材に関し、例えば、種々の排ガス、特に自動車などの内燃機関から排出される排ガスの浄化用として適用される窒素酸化物吸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関から排出される窒素酸化物を含有する排ガスの浄化においては、尿素を用いて、尿素の分解反応により生成するアンモニアを還元剤として使用し、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒に排ガスを接触させる方法が実用化されている。しかしながら、エンジン始動時においては、SCR触媒が作動温度に達していないため、窒素酸化物が浄化されずにそのまま排出されるという問題がある。例えば、ディーゼルエンジンの排ガス温度は、エンジン始動から約800秒間は100~200℃という低い温度であり、この間は無害化処理できなかった窒素酸化物が排ガス中に含まれている(非特許文献1参照)。
【0003】
現在のディーゼルエンジンに搭載されている尿素-SCRシステムは、尿素がアンモニアに分解し、SCR触媒が活性化するために、一般的には尿素投与位置の温度がおよそ150℃以上は必要とされている。150℃未満では触媒が活性化する温度にも達成しておらず、始動時などの低温領域では窒素酸化物が浄化されずに排出されるという問題がある。
【0004】
ところで、2023年からカリフォルニアで排ガスに含まれる窒素酸化物の排出量を現状の1割程度に減らす厳しい規制が開始される予定があり、エンジン始動時に排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を更に減らす方法が必要とされている。
【0005】
エンジン始動時に排出される窒素酸化物を減らす方法として、ゼオライトなどの吸着材を排ガス浄化用触媒の上流側に配置し、低温度域で窒素酸化物を吸着し、排ガス浄化用触媒が活性化する温度以上に達した後で吸着材から窒素酸化物を脱離させて下流側の排ガス浄化用触媒で浄化することが行われている。
【0006】
例えば特許文献1には、ゼオライトにロジウムを担持した前段触媒を排ガス上流側に配置し、白金又はパラジウムを担持した後段触媒をその下流側に配置した排ガス浄化用触媒が記載されている。この排ガス浄化用触媒によれば、低温度域では前段触媒に窒素酸化物が吸着し、高温域で前段触媒から脱離した窒素酸化物が後段触媒で還元浄化される方法が提案されている。
【0007】
特許文献2においては、リーン排気ガスからの窒素酸化物が200℃未満の温度で吸着され、続いて200℃より上の温度で熱的に放出されるシステムが開示される。窒素酸化物吸着剤は、パラジウム、及びセリウム酸化物又は混合酸化物、あるいはセリウム及び少なくとも1の他の4列の遷移金属を含有する複合酸化物からなることが教示される。
【0008】
特許文献3においては、ゼオライト結晶構造中の最大細孔径が酸素8員環から構成される小細孔ゼオライトにパラジウムを担持した吸着材が低温で吸着した窒素酸化物をより高温で放出することが報告されている。更に、セリア酸化物を担体に用いた吸着材と比べてゼオライトで構成される吸着材は硫黄成分に対する耐性が高いことが教示される。
非特許文献2においては、パラジウムを担持したCHA型ゼオライトは、150℃以上の温度で窒素酸化物が脱離するため、窒素酸化物を高温まで保持できることが報告されている。
【0009】
また、非特許文献3には、貴金属以外の金属を用いた窒素酸化物の吸着材として、FAU型、MFI型、LTA型ゼオライトに鉄を担持した吸着材が報告されている。
非特許文献4においては、鉄を担持したベータ型において2価の鉄に対する窒素酸化物の吸着量で比較した場合、ゼオライト骨格中のアルミ含有量が多いほど窒素酸化物吸着量が多いことが示されている。特に、鉄を担持したベータ型は、同等の鉄担持量で比較した場合、Si/Al比が5ではMFI型、FAU型、LTA型よりも窒素酸化物吸着量が多いことが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2000-312827号公報
【文献】国際公開第2008/047170号
【文献】国際公開第2015/085303号
【非特許文献】
【0011】
【文献】「触媒」(触媒学会発行)Vol.45(2003),第236~240頁
【文献】Applied Catalysis B: Environmental 212 (2017) 140-149頁
【文献】「ゼオライト」(ゼオライト学会発行)、2015年Vol.32,43~52頁
【文献】Journal of Catalysis 315 (2014)1-5
【文献】Journal of Chemistry C (2017)、121、 3404-3408
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の前段触媒など、ゼオライトを利用した低温窒素酸化物の吸着材においては、排ガス中に含まれる水分の影響によって窒素酸化物の吸着量が低下するという現象が見られる。従って、原因は定かではないが、ロジウムを担持したゼオライトは安定性が低いという課題があった。
【0013】
また、上記したとおり、特許文献2にはパラジウムを担持したセリウム酸化物等の窒素酸化物吸着材が記載されているが、特許文献3にセリウム酸化物を担体に用いた吸着材は、硫黄成分による被毒が起こるため、パラジウムをゼオライトに担持した窒素酸化物吸着材と比べて、被毒による影響が大きいことが示唆されている。これは、多孔性材料であるゼオライトは、細孔の中に侵入したガスの被毒を受ける一方、酸化物は表面がむき出しであるため表面にガスが吸着しやすく、更に吸着剤の表面積が小さいことから被毒の影響度が高い結果と考えられる。
【0014】
特許文献3に記載されているゼオライトの硫黄成分に対する耐性に着目すると、ゼオライトにおいても硫黄成分を含むガスで処理した後の窒素酸化物の吸着量が低下している。従って、パラジウムが硫黄成分に対する被毒の影響を受けやすい本質的な問題は変わっておらず、自動車等の排ガス中にパラジウムを担持した吸着剤を用いると、被毒の影響により性能が低下する課題が残っている。
【0015】
非特許文献2にはCHA型ゼオライトへのパラジウム担持方法が紹介されている。パラジウムは、ゼオライトにイオン交換処理や含浸処理しただけで窒素酸化物を吸着する性能を発現することはなく、水熱処理工程を必要としており、製造工程が煩雑である。
更に、パラジウムを含む貴金属類は、高価で、かつ、高温条件下においてシンタリングが起きると吸着性能の低下することが予想される等の本質的課題は依然残っている。
【0016】
非特許文献3に紹介されている鉄を担持したゼオライトは、上記パラジウムの持つ課題を克服した窒素酸化物吸着材として期待が持たれている。しかし、本文中にも記載されているとおり、LTA型ゼオライトに鉄を担持した窒素酸化物吸着剤は、LTA型ゼオライトの骨格中に含まれるアルミニウム量が多いことから、耐熱性や耐水熱安定性が低い。また、非特許文献3に開示されるFAU型やMFI型は、窒素酸化物の吸着量が少ないという問題がある。
【0017】
非特許文献4に記載される鉄を担持したベータ型ゼオライトの窒素酸化物吸着材は、Feの担持量が0.01重量%以下と少なく、窒素酸化物吸着剤として実用化できる性能ではない。また、比較的高い吸着能を示しているSi/Al比が5のベータ型は、SCR用の触媒として用いられているベータ型ゼオライト(Si/Al比が10以上)と比較してアルミニウム含有量が多く、上述のLTA型と同様に耐熱性や耐水熱安定性が低いと考えられる。
【0018】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、窒素酸化物の吸着量が多く、かつ十分な耐熱性を有する窒素酸化物吸着材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、酸素8員環を含むアルミノシリケートゼオライトが、SiO2/Al2O3モル比が3~15の特定の範囲にある場合において、窒素酸化物吸着材として有効な鉄を多く担持することができた結果、高い窒素酸化物吸着量を持ち、かつ熱安定性に優れた窒素酸化物吸着材の開発に成功し、本発明に到達した。
【0020】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]を提供する。
[1]鉄担持アルミノシリケートゼオライトを含む窒素酸化物吸着材であって、前記鉄担持アルミノシリケートゼオライトにおいて、アルミノシリケートゼオライトの骨格が酸素8員環構造を有し、
前記鉄担持アルミノシリケートゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が3以上15以下で、かつ、前記鉄担持アルミノシリケートゼオライトの鉄含有量が0.5重量%以上10重量%以下である窒素酸化物吸着材。
[2]前記担持された鉄の平均酸化数が、1.5以上2.3未満である上記[1]に記載の窒素酸化物吸着材。
[3]前記アルミノシリケートゼオライトが、AEI型ゼオライト又はAFX型ゼオライトである上記[1]又は[2]に記載の窒素酸化物吸着材。
[4]上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の窒素酸化物吸着材の製造方法であって、
不活性ガス雰囲気下で、2価の鉄原料を溶解させた溶液にアルミノシリケートゼオライトと酸化防止剤を混合して、鉄担持アルミノシリケートゼオライト得る工程を含む、窒素酸化物吸着材の製造方法。
[5]前記アルミノシリケートゼオライトが、アルカリカチオンを含む上記[4]に記載の窒素酸化物吸着材の製造方法。
[6]上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の窒素酸化物吸着材を排ガス浄化用に使用する方法。
[7]吸着材と、窒素酸化物還元触媒とを備え、前記吸着材が、前記窒素酸化物還元触媒の上流に配置される排ガス浄化システムにおいて、前記吸着材として、上記[6]に記載の窒素酸化物吸着材を使用する方法。
[8]前記窒素酸化物還元触媒に還元剤を供給する上記[7]に記載の方法。
[9]前記窒素酸化物還元触媒が、還元剤により窒素酸化物を還元する選択還元型触媒である上記[7]又は[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10]前記還元剤が、アンモニア及びアンモニアを生成可能な化合物からなる群から選択される少なくとも一種である、上記[8]又は[9]に記載の方法。
[11]吸着材と、窒素酸化物還元触媒とを備え、前記吸着材が、前記窒素酸化物還元触媒の上流に配置される排ガス浄化システムであって、前記吸着材が、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の窒素酸化物吸着材である排ガス浄化システム。
[12]前記窒素酸化物還元触媒に還元剤を供給する還元剤供給部を備える上記[11]に記載の排ガス浄化システム。
[13]前記窒素酸化物還元触媒が、還元剤により窒素酸化物を還元する選択還元型触媒である上記[11]又は[12]に記載の排ガス浄化システム。
[14]前記還元剤が、アンモニア及びアンモニアを生成可能な化合物からなる群から選択される少なくとも一種である、上記[12]又は[13]に記載の排ガス浄化システム。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、窒素酸化物の吸着量が多く、かつ十分な耐熱性を有する窒素酸化物吸着材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1で合成したAEI型ゼオライトのXRDパターンを示すチャートである。
【
図2】実施例3で合成したAFX型ゼオライトのXRDパターンを示すチャートである。
【
図3】比較例1で合成したAEI型ゼオライトのXRDパターンを示すチャートである。
【
図4】窒素酸化物吸着材1、2、4のNO脱離挙動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に何ら限定されない。
【0024】
本発明の窒素酸化物吸着材は、鉄担持アルミノシリケートゼオライトを含む窒素酸化物吸着材である。以下、窒素酸化物吸着材に含有される鉄担持アルミノシリケートゼオライトについてまず詳細に説明する。
【0025】
[鉄担持アルミノシリケートゼオライト]
鉄担持アルミノシリケートゼオライトにおけるアルミノシリケートゼオライトの骨格は、酸素8員環構造を有する。本発明における鉄担持アルミノシリケートゼオライトは、SiO2/Al2O3モル比が3以上15以下であり、かつ鉄含有量が0.5重量%以上10重量%以下である。
【0026】
本発明の窒素酸化物吸着材に用いるアルミノシリケートゼオライトは、窒素酸化物の吸着に有効な鉄を担持しやすいほうがよい点で、アルミノシリケートゼオライトとしては骨格が酸素8員環構造を有している。
アルミノシリケートゼオライトは骨格構造を構成する原子として、少なくとも酸素、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)を含むものであり、これらの原子の一部が他の原子(Me)で置換されていてもよいが、骨格が酸素8員環構造を有している。
アルミノシリケートゼオライトの骨格構造を構成しているMe、AlおよびSiの構成割合(モル比)は、特に限定されるものではないが、Me、Al、Siの合計に対するMeのモル比をx、Alのモル比をy、Siのモル比をzとすると、xは通常0以上であり、0.3以下である。xがこの上限値以下とすることで、合成時に不純物が混入しにくく好ましい。
前記yは通常0.001以上であり、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05であり、通常0.5以下であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.25以下である。
前記zは通常0.5以上であり、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.75以上であり、通常0.999以下であり、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.99以下、更に好ましくは0.98以下である。
y、zが上記範囲内であると、合成が容易で、触媒として用いた場合に十分な酸点があり十分な活性が得られやすい。
他の原子Meは、1種でも2種以上含まれていてもよい。好ましいMeは、周期表第3又は第4周期に属する元素である。
【0027】
酸素8員環構造を有するアルミノシリケートゼオライトとしては、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの骨格構造を規定するコードでABW、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATN、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BIK、BRE、CAS、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、ESV、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、JBW、KFI、LEV、LTA、MER、MON、MTF、MWF、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、RWR、SAS、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、YFI、ZON構造、また、RHOと骨格構造が類似であるZSM-25、PST-20、ECR-18(非特許文献5参照)が挙げられるが、そのなかでも、好ましくは、AEI、AFX、CHA、ERI、KFI、LEV、LTA、MER、MWF、RHO、より好ましくは、AEI、AFX、ERI、KFI、LEV、LTA、MWF、RHO、さらに好ましくは、AEI構造のゼオライト(以下、「AEI型ゼオライト」という)、又はAFX構造のゼオライト(以下、「AFX型ゼオライト」という)であり、特に好ましくはAEI型ゼオライトである。AEI型ゼオライト及びAFX型ゼオライトを使用することで、SiO2/Al2O3モル比が3~15であることも相まって、2価の鉄をアルミニウムに配位しやすくなり、鉄の担持量を容易に増やすことができる。また、窒素酸化物吸着材の耐久性、水熱安定性も高くしやすくなる。
【0028】
ゼオライトの構造は、X線回折のデータにより特徴付けられる。ただし、実際に作製されたゼオライトを測定する場合には、ゼオライトの成長方向や、構成する元素の比、吸着した物質、欠陥の存在、乾燥状態などの影響を受け、各ピークの強度比やピーク位置に若干のずれを生じるため、IZAの規定に記載されたAEI、AFX構造の各パラメータと全く同じ数値が得られるわけではなく、10%程度の幅は許容される。
【0029】
AEI型ゼオライトの主だったピークとしては、CuKα線を用いた場合、例えば、2θ=9.5°±0.2°に110面のピーク、2θ=16.1°±0.2°に202及び-202面のピーク(非常に近いので重なることが多い)、16.9°±0.2°に022面のピーク、20.6°±0.2°に310面のピークなどが挙げられる。
AFX型ゼオライトでは2θ=8.6°±0.2°に101面のピーク、2θ=11.6°±0.2°に102面のピーク、12.9°±0.2°に110面のピークなどが挙げられる。
【0030】
本発明において、鉄担持アルミノシリケートゼオライトのSiO2/Al2O3モル比は、3以上15以下である。SiO2/Al2O3モル比が15より大きくなると、鉄担持量を多くするのが難しくなり、窒素酸化物吸着材の窒素酸化物吸着量が低くなる。吸着点を多くして、窒素酸化物の吸着量を多くする点から、SiO2/Al2O3モル比は好ましくは14以下、より好ましくは13以下、更に好ましくは12以下、特に好ましくは11以下である。一方、モル比が3未満となると、骨格内のAl量が多くなり、水蒸気を含むガスにさらされた場合、骨格内Alが脱離して構造破壊が起きる可能性が高くなる。これら観点から、SiO2/Al2O3モル比は、好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。
【0031】
窒素酸化物吸着材は、窒素酸化物を含む排ガスの浄化性能と600℃以上の水熱耐久性が求められている。結晶性に差が無ければ、SiO2/Al2O3モル比が低い鉄担持アルミノシリケートゼオライトは、SiO2/Al2O3モル比の高い吸着材よりも吸着点が多いため、窒素酸化物を含む排ガスに対して高い吸着性能を持つことが利点である。例えば、トラックのように排ガスが700℃以下と比較的低温では、水蒸気を含むガス雰囲気下において窒素酸化物吸着材を用いても、水蒸気による骨格内Alの脱Alは進行しにくい。従って窒素酸化物を含む排ガスの吸着性能が優先され、ゼオライト骨格中の活性点が多い、SiO2/Al2O3モル比が比較的低い鉄担持アルミノシリケートゼオライトの使用が望まれる。
一方でSiO2/Al2O3モル比の高い鉄担持アルミノシリケートゼオライトは、ゼオライト骨格中のAl量が少ないことから水蒸気を含む高温のガス雰囲気下でも構造が崩壊しにくい利点がある。ディーゼル乗用車やガソリン車の場合は800℃以上で水蒸気を含むガス雰囲気下に窒素酸化物吸着材として用いるため、高い水蒸気耐性を求められる。従ってSiO2/Al2O3モル比が比較的高い鉄担持アルミノシリケートゼオライトの使用が望まれる。具体的には、SiO2/Al2O3モル比が7.5を超えることが好ましく、10以上のゼオライトを使用することも望まれる。
【0032】
本発明の鉄担持アルミノシリケートゼオライトにおける鉄含有量は、0.5重量%以上10重量%以下である。なお、鉄担持アルミノシリケートゼオライトにおける鉄の存在状態としては、アルミニウムに配位してゼオライト骨格構造に含まれない場合と、アルミニウムに配位せずに骨格構造に含まれる場合とがあるが、骨格構造に含まれないことが好ましい。
鉄担持アルミノシリケートゼオライトにおける鉄の含有量が0.5重量%未満であると、窒素酸化物吸着材の窒素酸化物吸着量を増加させることが難しくなる。また、10重量%より多くなると、アルミニウムに配位しない鉄が多くなり、鉄含有量に見合った吸着性能を発揮しにくくなる。
また、鉄含有量を多くすることで、吸着した窒素酸化物が脱離する温度が高くなる傾向にあり、本発明の窒素酸化物吸着材は、鉄含有量を0.5重量%以上とすることで比較的高温環境下でも吸着性能が低下しにくくなる。
鉄担持アルミノシリケートゼオライトにおける鉄含有量は、好ましくは1.0重量%以上8.0重量%以下であり、より好ましくは1.5重量%以上7.0重量%以下であり、特に好ましくは2.0重量%以上6.0重量%以下であり、とりわけ好ましくは2.3重量%以上5.0重量%以下である。これら下限値以上とすることで、窒素酸化物の吸着量がさらに増加し、また、吸着した窒素酸化物が脱離する温度がより高くなり、吸着性能が向上する。また、これら上限値以下とすることで、鉄含有量に見合った吸着性能をより発揮しやすくなる。
【0033】
鉄担持アルミノシリケートゼオライトにおいて担持される鉄は、2価であっても3価の状態でも良いが、2価の方がより好ましい。また、担持された鉄の平均酸化数は、1.5以上2.3未満であることが好ましい。以下、該平均酸化数が1.5以上2.3未満の鉄イオンを「2価の鉄イオン」という場合がある。通常、2価の鉄原料を用いた方がゼオライト中では2価の状態で存在しやすい。
【0034】
また、本発明の窒素酸化物吸着材におけるイオン交換率は、特段の制限はないが、通常13%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは17%以上、特に好ましくは20%以上とすることができ、一方、上限に制限はないが、100%以下、又は90%以下とすることができる。
イオン交換率とは触媒担体中のイオン交換サイト(酸点)上のH+を触媒金属のイオンで置き換えた率のことをいい、触媒金属が2価の鉄イオンの場合、2つの酸点を電気的に当量の1つの2価の鉄イオンが置き換えることになる。
具体的には、イオン交換率は式(金属イオン原子数)×(金属イオン価数)/(触媒担体中の酸点の数)×100によって算出できる。
【0035】
また、本発明の鉄担持アルミノシリケートゼオライト中には、主に原料に由来するアルカリ金属原子、例えばナトリウム、カリウム、セシウム等が含まれていてもよい。鉄担持アルミノシリケートゼオライトにおけるアルカリ金属原子の含有量は、アルミニウムに対するモル比として、0.001以上1.0以下であることが好ましい。含有量を1.0以下とすることで、水蒸気雰囲気下においてアルカリ金属原子がゼオライトの構造を破壊したりして性能が低下することを防止する。また、0.001以上とすると、吸着材から無理にアルカリ金属原子を除去して、ゼオライトの骨格などにダメージを与えるおそれが少なくなる。
また、アルカリ金属原子の含有量は、シリコン原子に対するモル比として、0.02以上であってもよい。
【0036】
[鉄担持アルミノシリケートゼオライトの製造方法]
本発明の鉄担持アルミノシリケートゼオライトを製造する方法としては、特に制限はないが、例えば、アルミノシリケートゼオライトを合成後、金属担持工程を経て所定量の鉄を担持させる方法、即ち、Al、Siを骨格構造に含み且つSiO2/Al2O3モル比が3~15であるアルミノシリケートゼオライトを製造し、そのアルミノシリケートゼオライトに、重量が0.5~10重量%となるように鉄を担持させる方法が挙げられる。
このような製造方法で製造することで、本発明の鉄担持アルミノシリケートゼオライトは、大量に製造することも可能になる。
【0037】
(アルミノシリケートゼオライトの製造方法)
本発明の窒素酸化物吸着材に用いるアルミノシリケートゼオライトは、International Zeolite Association(IZA)が公開している文献に記載の方法で製造することができる。また、AEI型ゼオライト及びAFX型ゼオライトは、例えば以下の製造方法で製造できる。
【0038】
AEI型及びAFX型ゼオライトの製造方法の一例としては、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤(「テンプレート」とも呼称される。以下、有機構造規定剤を「OSDA」と称す場合がある。)及び必要により種晶を用いて、AEI型又はAFX型ゼオライトを水熱合成する方法が挙げられる。
【0039】
<アルミニウム原子原料>
本発明に用いるAEI型又はAFX型ゼオライトを製造するために使用するアルミニウム原子原料は、特に限定されず、アモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシド等を用いることができる。
更には、ゼオライトのようにシリカを含むゼオライト等をアルミニウム原子原料として用いることもできる。アルミニウム原子原料としてのゼオライトは、FAU型ゼオライトのように、AEI型又はAFX型ゼオライトと共通のbuilding unitを持つアルミノシリケートゼオライトを用いることができる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記各原料は安定した品質のものを容易に入手でき、コストダウンをもたらすことが可能である。
【0040】
AEI型ゼオライトのアルミニウム原子原料としては、好ましくは、アモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウムであり、これらの中でもアモルファスの水酸化アルミニウムがとりわけ好ましい。AFX型ゼオライトのアルミニウム原子原料としては、アルミノシリケートゼオライトを使用することが好ましい。
【0041】
アルミニウム原子原料の使用量は、原料混合物ないしはこれを熟成して得られた水性ゲルの調製しやすさや生産効率の点から、本製造方法で種晶として添加されるゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対する、アルミニウム原子原料中のアルミニウム(Al)のモル比で通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.08以上である。また上限は特に限定されないが、水性ゲル中にアルミニウム原子原料を均一に溶解させる点から通常2以下、好ましくは1以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0042】
<ケイ素原子原料>
本製造方法に使用するケイ素原子原料としては、特に限定されず、公知の種々の物質を使用することができ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、トリメチルエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどを用いることができる。また、FAU型ゼオライトのように、AEI型又はAFX型ゼオライトと共通のbuilding unitを持つアルミノシリケートゼオライトを用いてもよい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、他の成分と十分均一に混合できる形態のものであって、特に水に溶解しやすい原料が好ましく、コロイダルシリカ、珪酸ナトリウム、トリメチルエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルが好ましい。
ケイ素原子原料は、ケイ素原子原料に対する他の原料の使用量がそれぞれ前述ないしは後述の好適範囲となるように用いられる。
【0043】
<アルカリ金属原子原料>
本製造方法に使用するアルカリ金属原子原料に含まれるアルカリ金属原子は、特に限定されず、ゼオライトの合成に使用される公知のものが使用できるが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属イオンが好ましい。すなわち、AEI型又はAFX型ゼオライトは、これらアルカリ金属イオンを存在させた状態で結晶化させて得られることが好ましい。
【0044】
アルカリ金属原子は、このうち好ましくはナトリウム原子を含む。後述するように、合成過程でゼオライトの結晶構造中に取り込まれるアルカリ金属原子を、イオン交換により結晶内から取り除く場合があるが、この時、アルカリ金属原子がナトリウム原子であると、アルカリ金属原子の除去工程を簡便にすることができる。
そのため、アルカリ金属原子原料に含まれるアルカリ金属原子の50モル%以上をナトリウム原子にすることが好ましく、より好ましくはアルカリ金属原子原料に含まれるアルカリ金属原子中の80モル%以上がナトリウム原子であることであり、最も好ましくは実質的にすべて(すなわち、100モル%)がナトリウム原子であることである。
【0045】
アルカリ金属原子原料としては、上記のアルカリ金属原子の水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩などを用いることができる。アルカリ金属原子原料は、1種でも2種以上含まれていてもよい。
【0046】
AEI型ゼオライトの製造においては、原料混合物中の有機構造規定剤に対するアルカリ金属原子原料のモル比が0.1以上2.0以下であることが好ましく、0.2以上1.5以下がより好ましい。
一方、AFX型ゼオライトの製造においては、原料混合物中の有機構造規定剤に対するアルカリ金属原子原料のモル比が0.1以上20以下であることが好ましく、0.2以上10以下がより好ましい。
アルカリ金属原子原料は、上記範囲内となるように配合されることで、アルミニウムに後述の有機構造規定剤が好適な状態に配位しやすくなるため、結晶構造を作りやすくなる。
【0047】
<有機構造規定剤>
有機構造規定剤としては、窒素含有系有機構造規定剤、リン含有系有機構造規定剤などを使用できる。AEI型ゼオライトを製造するための窒素含有系有機構造規定剤としてはテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(TEAOH)やテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)などの公知の各種の物質を使用することができる。また、AEI型ゼオライトを製造するための窒素含有系有機構造規定剤としては、例えば以下のような物質を使用することができる。
【0048】
N,N-ジエチル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-9-アゾニアビシクロ[3.3.1]ノナンカチオン、N,N-ジメチル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン、N-エチル-N-メチル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジエチル-2-エチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-2-エチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムカチオン、N-エチル-N-メチル-2-エチルピペリジニウムカチオン、2,6-ジメチル-1-アゾニウム[5.4]デカンカチオン、N-エチル-N-プロピル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン等。
このうち特に好ましい窒素含有系有機構造規定剤としては、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムカチオンが好ましく、具体的には、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイドを用いることが好ましい。また、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイドはcis体とtrans体が存在するが、其々の単体を用いてもよく、また、任意の割合で混ざっていてもよい。
【0049】
AFX型ゼオライトを製造するための窒素含有系有機構造規定剤としてはテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(TEAOH)やテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)などの公知の各種の物質を使用することができる。また、例えば、1,1’-(1,4-ブタンジイル)ビス(1-アゾニア-4-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(以下、DABCOと称す)、N,N,N’,N’-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウムヒドロキシド(以下、TEBPOHと称す)、1,3-ジ(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオンなどを用いてもよい。
【0050】
また、AEI型ゼオライトを製造するためのリン含有系有機構造規定剤として、テトラブチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウムのような物質を使用することができる。ただし、リン化合物は、合成されたゼオライトを焼成してOSDAを除去する時に有害物質である五酸化二リンを発生する可能性があるため、AEI型及びAFX型ゼオライトを製造するための有機構造規定剤としては、好ましくは窒素含有系有機構造規定剤である。
有機構造規定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
有機構造規定剤の使用量は、結晶の生成しやすさの観点から、本製造方法で添加される種晶としてのゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常0.01以上、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.08以上、より更に好ましくは0.10以上である。また、コストダウンの効果を十分得るために、通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0052】
<水>
水の使用量は、結晶が生成しやすいという観点から、種晶としてのゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは10以上である。この範囲にすると、結晶がより生成しやすく好ましい。また廃液処理にかかるコストダウンの効果を十分得るために、通常50モル以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下である。
【0053】
<種晶>
本発明に用いるAEI型又はAFX型ゼオライトを製造するために原料混合物に種晶としてゼオライトを添加してもよい。本発明で種晶として添加するゼオライトは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
種晶の添加量は、種晶として添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)がすべてSiO2であるとした時のSiO2に対して0.1重量%以上であり、また反応をより円滑に進めるために、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上である。また、本発明で添加する種晶としてのゼオライトの使用量の上限は特に限定されないが、コストダウンの効果を十分得るために通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、更に好ましくは6重量%以下である。
【0055】
種晶として添加するゼオライトは、ゼオライトであれば特に限定はされないが、好ましくは結晶構造を構成するbuilding unitにd6rが含まれているもゼオライトであり、特にAEI型、AFT型、AFX型、CHA型、EAB型、EMT型、ERI型、FAU型、GME型、KFI型、LEV型、LTL型、LTN型、MOZ型、MSO型、MWW型、OFF型、SAS型、SAT型、SAV型、SBS型、SBT型、SZR型が好ましく、AEI型、CHA型、FAU型がより好ましい。
【0056】
なお、種晶として添加するゼオライトは、水熱合成後に焼成を行っていない未焼成品でも水熱合成後に焼成を行った焼成品でもよいが、ゼオライトが結晶の核としての機能を発現するためにはアルカリに対して溶解しにくい方がよいため、焼成品よりも未焼成品を用いるのが好ましい。ただし、原料混合物中の組成あるいは温度条件によっては、未焼成のゼオライトが溶解せず、結晶の核としての機能を発現できない場合がある。このような場合、溶解性を高くするため焼成によりOSDAを除去したゼオライトを用いるとよい。
【0057】
<原料の混合(原料混合物の調製)>
本発明に用いるAEI型及びAFX型ゼオライトの製造方法においては、以上述べた、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合し、さらに必要に応じて種晶としてゼオライトを添加して十分に混合し、得られた原料混合物を水熱合成する。
これらの原料の混合順序は、特に限定はないが、好ましくはアルカリ溶液を調製した後にケイ素原子原料、アルミニウム原子原料を添加した方がより均一に原料が溶解する点から、水、有機構造規定剤、及びアルカリ金属原子原料を混合してアルカリ溶液を調製した後、ここへアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、種晶の順番で添加して混合することが好ましい。
【0058】
なお、原料混合物には、上記のアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、水及び種晶であるゼオライト以外にも、必要に応じてさらに添加剤などが添加されてもよい。そのような添加剤としては、例えば、ゼオライトの合成を助けるための成分となる補助剤、より具体的には酸成分により反応を促進させる補助剤が挙げられる。また、ポリアミンのような金属の安定化剤、又は後述の水熱合成時に触媒として働く銅などの金属なども挙げられる。
【0059】
<熟成>
上記のようにして調製された原料混合物は、調製後直ちに水熱合成してもよいが、高い結晶性を有するゼオライトを得るために、所定の温度条件下で一定時間熟成することが好ましい。特にスケールアップする場合は撹拌性が悪くなり原料の混合状態が不十分となりやすい。そのため一定期間原料を撹拌しながら熟成させることにより、原料をより均一な状態に改善することが好ましい。熟成温度は通常100℃以下、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下であり、その下限は特に設けないが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上である。熟成温度は熟成中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。熟成時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。
【0060】
<水熱合成>
水熱合成は、上記のようにして調製された原料混合物ないしはこれを熟成して得られる水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、撹拌下、又は、容器を回転ないしは揺動させながら、或いは静置状態で、所定温度を保持することにより行われる。
【0061】
水熱合成の際の反応温度は、通常100℃以上であって、好ましくは120℃以上、また、通常230℃以下、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは190℃以下である。反応時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、より好ましくは7日以下、更に好ましくは5日以下である。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
上記の条件で反応させることにより、目的とするAEI型又はAFX型ゼオライトの収率が向上し、異なるタイプのゼオライトが生成されにくくなる。
【0062】
<ゼオライトの回収>
上記の水熱合成後、生成物であるAEI型又はAFX型ゼオライトを、水熱合成反応液より分離する。
得られたゼオライト(以下、「OSDA等含有ゼオライト」と称する。)は細孔内に有機構造規定剤及びアルカリ金属原子の両方又はいずれか一方を含有している。水熱合成反応液からのOSDA等含有ゼオライトの分離方法は特に限定されないが、通常、濾過、デカンテーション、又は直接乾燥等による方法が挙げられる。
【0063】
水熱合成反応液から分離回収したOSDA等含有ゼオライトは、製造時に使用した有機構造規定剤等を除去するために、必要に応じて水洗、乾燥した後、焼成等を行って有機構造規定剤等を含有しないゼオライトを得ることができる。
本発明に用いるAEI型又はAFX型ゼオライトを吸着材として使用するために、以下に述べるようにゼオライトから有機構造規定剤等を除去した後に使用に供するとよい。
【0064】
<OSDA等含有ゼオライトからの有機構造規定剤等の除去>
OSDA含有ゼオライトから有機構造規定剤等を除去するには、製造性の面で焼成により行うことが好ましい。この場合、焼成温度については、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上、さらに好ましくは500℃以上であり、好ましくは900℃以下、より好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。焼成は大気下で行ってもよいし、不活性ガス下で行ってもよい。不活性ガスとしては、窒素などを用いることができる。
【0065】
上記したAEI型及びAFX型ゼオライトの製造方法では、仕込み組成比を変えることにより、広い範囲のSiO2/Al2O3モル比のAEI型及びAFX型ゼオライトを製造することができる。
本発明に用いるAEI型及びAFX型ゼオライトは、上記したようにSiO2/Al2O3モル比が3以上15以下となるものであるが、SiO2/Al2O3モル比は、鉄担持アルミノシリケートゼオライトにおいて所望されるSiO2/Al2O3モル比に応じて調整されるとよい。したがって、本発明に用いるAEI型及びAFX型ゼオライトにおけるSiO2/Al2O3モル比は、好ましくは14以下、より好ましくは13以下、更に好ましくは12以下、特に好ましくは11以下である。また、SiO2/Al2O3モル比は、好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。
【0066】
本発明に用いるAEI型及びAFX型ゼオライトの平均一次粒子径は、特に限定されないが、吸着材として用いた時のガス拡散性を高くするために、0.01~10μmが好ましく、より好ましくは0.02~8μm、更に好ましくは0.05~5μmである。なお、本発明における平均一次粒子径とは、一次粒子の粒子径に相当する。平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡による粒子の観察において、粒子径を任意に選択した30個以上の粒子について測定し、その一次粒子の粒子径を平均して求められる。粒子径は粒子の投影面積と等しい面積を持つ円の直径(円相当径)とした。
【0067】
本発明に用いるAEI型及びAFX型ゼオライトの比表面積は、特に限定されないが、細孔内表面に存在する活性点が多くなることから、300~1000m2/gが好ましく、より好ましくは350~800m2/g、更に好ましくは450~750m2/gである。なお、本発明の比表面積は、BET法により測定される。例えば、大倉理研社製の全自動粉体比表面積測定装置(装置名:AMS1000)を用いて、流通式一点法により測定を行うとよい。
【0068】
本発明に用いるAEI型及びAFX型ゼオライトの酸量は、好ましくは0.5~3.0mmol/g、より好ましくは0.7~3.0mmol/g、更に好ましく0.9~3.0mmol/g、特に好ましくは1.2~3.0mmol/g、最も好ましくは1.2~2.5mmol/gである。ゼオライトの酸量は、アンモニア吸着量を測定することで求めることができる。
【0069】
本発明に用いるAEI型又はAFX型ゼオライトのイオン交換能を、アルカリ金属原子原料、あるいはアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、有機構造規定剤、及び本製造方法で添加するゼオライトに含まれるアルカリ金属原子由来のアルカリ金属部分から、H型やNH4型に変換して用いることもでき、その方法は公知の技術を採用することができる。例えば、NH4NO3、NaNO3などアンモニウム塩あるいは塩酸などの酸で、通常、室温から100℃で処理後、水洗する方法などにより行うことができる。
【0070】
また、AEI型ゼオライトは、特開2017-81809号公報、米国公開公報2017/0128921号等の方法によっても製造できる。米国公開公報2017/0128921号に記載の製造方法によれば、反応原料に用いる水の量を減らすことで高価な構造規定剤の使用量も少なくすることが可能である。
また、AFX型ゼオライトの製造方法としては、有機構造規定剤にDABCOを用いた米国特許第5194235号、TEBPOHを用いた特開2016-169139号公報、1,3-ジ(1-アダマンチル)イミダゾリウムカチオンを用いた特開2016-147801号公報等に記載の方法に準じて製造することもできる。
【0071】
[鉄原料]
上記の鉄を担持するために用いる鉄原料としては、鉄を含む酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩などを用いることができる。鉄原料は、1種でも2種以上含まれていてもよい。
【0072】
[鉄を担持する方法]
アルミノシリケートゼオライトに鉄を担持させる方法として、具体的には、含浸法、イオン交換法などの方法が挙げられる。イオン交換法は、液相イオン交換法、固相イオン交換法のいずれでもよい。イオン交換法は、例えば、アルミノシリケートゼオライトと鉄原料とを混合することで行えばよい。例えば、液相イオン交換法では、鉄原料を溶解させた溶液にアルミノシリケートゼオライトを混合させることで行えばよい。含浸法としては、スプレードライ法等も可能である。液相イオン交換法、あるいは固相イオン交換法で担持した後に、含浸法による担持を組み合わせてもよい。
【0073】
[アルミノシリケートゼオライトのカウンターカチオン種]
鉄担持処理がされるアルミノシリケートゼオライトが保有するカウンターカチオンとしては、特に限定はされないが、具体的には、アルカリカチオン、アンモニウムカチオン、及びプロトンが挙げられる。イオン半径の小さいカチオンの方がイオン交換反応は進行しやすいが、プロトンはイオン交換後に液中で酸として存在するとゼオライトの構造を不安定にすることがある。そのため、好ましくはアルカリカチオン、又はアンモニウムカチオンであり、より好ましくはアルカリカチオンである。
アルカリカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属原子のカチオンであれば限定されないが、特に好ましくはナトリウムカチオンである。
【0074】
[鉄イオン交換処理]
本発明の窒素酸化物吸着材の製造方法では、好ましくはイオン交換処理、より好ましくは液相イオン交換法により鉄をゼオライトに担持さればよい。ゼオライトに担持する鉄の価数は2価、あるいは3価であることが好ましく、単位鉄量当たりのNO吸着量や高温保持の観点から、2価であることがより好ましい。通常、2価の鉄イオンは容易に酸化されて3価になるため、担持処理において酸化を防止する方法が望まれる。
【0075】
以下、本発明において、鉄を担持するための好ましい処理方法についてより詳細に説明する。本発明の好ましい処理方法は、不活性ガス雰囲気下で、2価の鉄原料を溶解させた溶液にアルミノシリケートゼオライトと酸化防止剤を混合して、鉄担持アルミノシリケートゼオライト得るものである。
【0076】
<ガス雰囲気>
本発明の好ましい処理方法は、2価の鉄が酸化することを防ぐために、窒素やヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行われる。不活性ガス雰囲気下とすることで、ガス雰囲気は、酸素が存在しない状態となる。不活性ガスは、安価な窒素が好ましい。この際、溶液中に含まれる溶存酸素も2価の鉄を酸化させるため、あらかじめ脱気処理等を行い、溶存酸素を減らしておくことが望ましい。
【0077】
<鉄原料>
ゼオライトに2価の鉄を担持処理するために用いる鉄原料としては、2価であれば特に限定はされないが、上記した鉄原料のうち、水酸化鉄、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄等を用いるとよく、好ましくは硫酸鉄、硝酸鉄、より好ましくは硫酸鉄である。ただし、上記イオン交換処理を行う溶液には、2価の鉄原料の機能を阻害しない範囲で、3価の鉄原料が含有されていてもよい。
【0078】
上記溶液における2価の鉄原料の濃度は、担持量を増やすためには、通常、ゼオライト中に含まれるAl量に対する、2価の鉄原料のモル比(Fe/Alモル比)で0.1以上であり、より好ましくは0.2以上であり、更に好ましくは0.25以上であり、特に好ましくは0.3以上である。
一方、鉄濃度を一定量以下にすることで、ゼオライト細孔入り口付近で起こるイオン交換の量が抑えられ、細孔内部まで鉄イオンが侵入して、鉄担持量を増加させやすくなる。従って、通常は、ゼオライト中に含まれるAl量に対する、2価の鉄原料のモル比(Fe/Alモル比)で3以下であり、2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.0以下であることが更に好ましく、0.8以下であることが特に好ましく、0.7以下であることがとりわけ好ましく、0.6以下であることが最も好ましい。
【0079】
<酸化防止剤>
本処理方法では、溶液中に酸化防止剤を添加することで、2価の鉄がより酸化しにくくなる。用いる酸化防止剤としては、アスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン等が好ましく、アスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)がより好ましく、アスコルビン酸(ビタミンC)が更に好ましい。
【0080】
イオン交換処理において酸化防止剤を使用する場合、2価の鉄原料に対する酸化防止剤のモル比で、通常1以上であるが、より酸化を防止する観点からは酸化防止剤の量を増やす方がよく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、5以上が特に好ましく、7以上がとりわけ好ましく、8以上が最も好ましい。一方、酸化防止剤の添加量が多すぎると原料コストが高くなるため、通常は2価の鉄原料に対する酸化防止剤のモル比で100以下が好ましく、50以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、15以下が特に好ましく、13以下がとりわけ好ましく、11以下が最も好ましい。
【0081】
<溶媒>
上記処理方法において使用する溶媒は、イオン交換する塩(すなわち、鉄原料)が溶解すれば水であっても有機溶媒であってもよいが、通常は水が好ましい。
用いる溶媒の量は、ゼオライトに対する重量比で設定すればよい。一般的には溶媒の量が少ない方がイオン交換処理後の廃液量が少なくて済むため、ゼオライトに対する重量比で1000以下が好ましく、500以下がより好ましく、250以下がより好ましく、200以下が更に好ましく、150以下が特に好ましく、120以下が最も好ましい。一方、溶媒の量が少なすぎると撹拌性が悪くなり均一なイオン交換が困難となるため、通常はゼオライトに対する重量比で1以上であり、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、更に好ましくは25以上であり、特に好ましくは50以上であり、とりわけ好ましくは80以上であり、最も好ましくは100以上である。
【0082】
<イオン交換処理温度>
イオン交換率は処理温度と処理時間等の因子によって決まる。また、イオン交換処理温度は、2価の鉄を酸化されにくくする観点から低くしたほうがよい。これら観点から、イオン交換処理は、通常、150℃以下で行われ、100℃以下が好ましく、80℃以下が更に好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下が特に好ましく、40℃以下が最も好ましい。一方、温度を高くすることでイオン交換反応速度が早くなりイオン交換を短時間で行えるようになる。従って、通常は0℃以上で行われるが、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく15℃以上が更に好ましく、20℃以上が特に好ましい。
【0083】
[イオン交換処理時間]
イオン交換処理は通常10分から48時間程度行えばよく、これらの処理条件は、用いる鉄原料、水量、温度、溶媒種に応じて適宜設定すればよい。
【0084】
イオン交換処理は繰り返し処理を行うことによりイオン交換率が高くなるため、イオン交換処理の回数は特に限定されることはなく、目的とする効果が得られるまで処理を繰り返してもよい。
イオン処理後のゼオライトは、濾過、あるいは遠心分離によりゼオライトとイオン交換処理液を分離し、水洗を行った後、乾燥させても良い。
【0085】
さらに、鉄が担持されたアルミノシリケートゼオライトは、焼成してもよい。上記イオン交換処理によりイオン交換処理原料由来の残存物がゼオライト細孔内に存在し、細孔を閉塞していることがあるため、そのような場合には焼成することにより、イオン交換処理後の残存物を除去できる。また、焼成を行うことにより、ゼオライトの骨格構造に担持させた金属の分散性を高めることができ、吸着能力の向上に有効である。
焼成温度は、好ましくは300℃~900℃、より好ましくは350℃~800℃、さらに好ましくは400℃~700℃である。また、焼成は、1秒~24時間、好ましくは10秒~8時間、さらに好ましくは30分~4時間程度行うとよい。さらに、2価の鉄を担持した場合は、不活性雰囲気下で焼成処理を行うとよい。
【0086】
鉄担持アルミノシリケートゼオライトの製造方法は、上記方法に限定されずに、直接合成により製造されてもよい。具体的には、水熱合成前の原料混合物やそれを熟成して得られたゲルにさらに鉄原料を加え、その原料混合物を水熱合成することで鉄担持アルミノシリケートゼオライトを得てもよい。直接合成は、従来公知の方法により行ってもよく、例えば、国際公開2017/134001号などに開示される方法に準じて行ってもよい。
【0087】
[窒素酸化物吸着材]
本発明の窒素酸化物吸着材は、上記鉄担持アルミノシリケートゼオライト単体からなるものでもよいが、鉄担持アルミノシリケートゼオライトに加え、例えばシリカ、アルミナ、粘土鉱物等のバインダーを含んでもよい。
窒素酸化物吸着材は、鉄担持アルミノシリケートゼオライトに必要に応じてバインダーなどが加えられたうえで、造粒され、また所定の形状に成形されたものでもよいし、例えば塗布法によって得られてもよい。また、窒素酸化物吸着材は、好ましくはハニカム状である。
【0088】
本発明の窒素酸化物吸着材を塗布法によって作製する場合、通常、鉄担持アルミノシリケートゼオライトとシリカ、アルミナ等の無機バインダーとを混合し、スラリーを作製し、コージェライト等の無機物で作製された基材の表面に塗布し、焼成することにより作製されるとよい。この際、好ましくはハニカム形状の基材に塗布することにより、ハニカム状の窒素酸化物吸着材を得ることができる。なお、ここでは後述する排ガス浄化用吸着材を例にして説明しているため無機バインダーを用いているが、用途や使用条件によっては有機バインダーを用いてもよいことは言うまでもない。
【0089】
また、本発明の窒素酸化物吸着材の成形体は、例えば、鉄担持アルミノシリケートゼオライトをシリカ、アルミナ等の無機バインダー、又はアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混練し、押出法や圧縮法等で成形を行い、引き続き焼成を行うことで得ることができる。好ましくはこの際にハニカム形状に成形することにより、ハニカム状の窒素酸化物吸着材を得ることができる。
【0090】
[窒素酸化物吸着材の用途]
本発明の窒素酸化物吸着材は、窒素酸化物を吸着する吸着材として用いるもので、好ましくは排ガス浄化用吸着材、より好ましくは自動車排ガス浄化用吸着材として用いる。本発明の窒素酸化物吸着材は、例えば排ガスに含まれる窒素酸化物を吸着する吸着材として有効である。
【0091】
本発明の窒素酸化物吸着材は、例えば、排ガス浄化システムに使用される。排ガス浄化システムは、例えば自動車の排ガスを浄化するシステムである。排ガス浄化システムは、本発明の窒素酸化物吸着材と、窒素酸化物還元触媒とを備え、排ガスの排出経路において、窒素酸化物吸着材が、窒素酸化物還元触媒の上流に配置されることが好ましい。
また、窒素酸化物還元触媒は、還元剤により窒素酸化物を還元する、選択還元型触媒(以下、「SCR触媒」という)であることが好ましく、このときの還元剤としてはアンモニアなどが挙げられる。
SCR触媒を使用した排ガス浄化システムは、還元剤を供給する還元剤供給部を有し、還元剤供給部より還元剤がSCR触媒に供給される。還元剤供給部は、公知の手段によりSCR触媒に還元剤を供給すればよく、例えば還元剤を噴霧してSCR触媒に供給するとよい。また、供給される還元剤は、アンモニアそのものでもよいが、アンモニアを生成可能な化合物でもよい。アンモニアを生成可能な化合物としては尿素が挙げられる。
【0092】
SCR触媒としては、公知のSCR触媒を使用可能であり、特に限定されないが、例えば、ゼオライトにSi及びAl以外の金属を含有させた触媒が挙げられる。SCR触媒に使用される金属元素としては遷移金属が好ましく、中でも、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)等の中の群から選ばれることがより好ましい。
【0093】
本発明の窒素酸化物吸着材は,排ガスの温度が低温域(例えば、150℃未満)であると、排ガス中の窒素酸化物を吸着させる。また、排ガスの温度が高温域(例えば、150℃以上)である場合には、その高温の排ガスによって、吸着材に吸着されていた窒素酸化物が脱離させられる。一方で、SCR触媒は、高温域(例えば、150℃以上)にて窒素酸化物を還元剤により還元できる触媒である。なお、一般的に排ガスは、運転初期には低温であるが、運転開始から一定時間経過すると高温となる。
【0094】
したがって、本排ガス処理システムにおいては、低温の排ガスが排出され、窒素酸化物吸着材を通過するときには、排ガスに含まれる窒素酸化物は、窒素酸化物吸着材にて吸着され、それにより排ガスの窒素酸化物の量が低減される。
一方で、高温の排ガスが排出され、窒素酸化物吸着材を通過するときには、窒素酸化物吸着材では窒素酸化物が吸着されず、さらには、吸着されていた窒素酸化物が脱離される。したがって、脱離された窒素酸化物も含む排ガスが、窒素酸化物吸着材からSCR触媒に送られる。SCR触媒では、排ガス中に含有される窒素酸化物が、還元剤によって窒素などに還元される。これにより、本排ガス処理システムは、排ガスが高温時のときも排ガスに含まれる窒素酸化物を低減することが可能になる。
また、排ガスは、例えば600℃以上の温度となることがあるが、本発明の窒素酸化物吸着材は、高い耐熱性を有する。したがって、窒素酸化物吸着材は、長期間性能を低下させることなく、高い吸着性能を長期間にわたって維持できる。
【0095】
なお、排ガス処理システムは、上記した窒素酸化物吸着材と、窒素酸化物還元触媒以外にも排ガス中の汚染物質を浄化できる各種の浄化手段を有してもよい。具体的には、排ガスに含まれる微粒子を除去するパーティクルフィルター、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)などを酸化するための酸化触媒などが挙げられる。また、排ガス処理システムは、窒素酸化物還元触媒にて使用されなかったアンモニアなどの還元剤を酸化させる還元剤スリップ触媒などを有してもよい。
パーティクルフィルターの配置位置は特に限定されないが、例えば、窒素酸化物吸着材の下流に設けられ、窒素酸化物吸着材と窒素酸化物還元触媒の間に配置されてもよいし、窒素酸化物還元触媒のさらに下流に配置されてもよいし、窒素酸化物吸着材の上流に配置されてもよい。酸化触媒も、窒素酸化物吸着材の下流に配置されてもよいし、上流に配置されてもよい。また、還元剤スリップ触媒は、窒素酸化物還元触媒の下流に配置されるとよい。
さらに、本発明の窒素酸化物吸着材は、パーティクルフィルターなどのフィルターに担持させてもよいし、他の触媒と混合して使用してもよい。例えば、酸化触媒と混合させて使用してもよい。
【0096】
上記排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。
また、窒素酸化物吸着材は、ディーゼル自動車、ガソリン自動車などの自動車以外にも、定置発電装置、船舶、農業機械、建設機械、二輪車、航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様な排ガスを処理するための吸着材として使用すればよい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0098】
〔分析・評価〕
以下の実施例及び比較例において得られたゼオライトの分析及び性能評価は以下の方法により行った。
【0099】
[粉末XRDの測定]
<試料の調製>
めのう乳鉢を用いて人力で粉砕したゼオライト試料約100mgを同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
<装置仕様及び測定条件>
粉末XRD測定装置仕様及び測定条件は以下の通りである。
【0100】
【0101】
[ゼオライト組成の分析]
標準試料であるゼオライト中のケイ素原子とアルミニウム原子含有量の元素分析は以下の通りとした。
ゼオライト試料を塩酸水溶液で加熱溶解させた後、ICP分析によりケイ素原子、アルミニウム原子の含有量(重量%)を求めた。そして、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成した。この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でゼオライト試料中のケイ素原子、及びアルミニウム原子の含有量(重量%)を求めた。ICP分析は、株式会社堀場製作所製 装置名:ULTIMA 2Cを用いて行った。XRFは、株式会社島津製作所製 装置名:EDX-700を用いて行った。
【0102】
[Fe含有量の測定]
ゼオライト試料をフッ酸水溶液で処理後、さらに塩酸水溶液で加熱溶解させた後、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析によりFe原子の含有量を求めた。
【0103】
[NO吸着量と脱離温度の測定]
NO-TPDを用いて、以下の条件で窒素酸化物吸着材に吸着させた窒素酸化物(NO)を脱離させて、吸着したNOの温度に対する脱離挙動を確認するとともに、窒素酸化物吸着材に対するNO吸着量を求めた。
【0104】
(測定条件)
前処理条件 :500℃、0.5時間、Air雰囲気下
NO吸着条件:50℃、1%NO/He
NO吸着時間:30分
昇温速度 :10K/℃(He雰囲気下)
脱離温度範囲:50℃~600℃
【0105】
[イオン交換率]
イオン交換率は、上記ゼオライト組成分析により得られたケイ素原子とアルミニウム原子含有量、及びFe含有量の測定結果より、ゼオライトに担持される金属の金属イオン原子数、及び金属イオン価数、さらにはゼオライト中の酸点の数を求めて、以下の式1により算出した。
式1:(金属イオン原子数)×(金属イオン価数)/(触媒担体中の酸点の数)×100
【0106】
〔ゼオライトの合成〕
[実施例1]
1.1gの水と、有機構造規定剤(OSDA)として13.6gのN,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド20%水溶液(シス体とトランス体の混合物)(セイケム社製)と、0.3gのNaOH(和光純薬製)を混合したものに、アモルファスAl(OH)3(Al2O353.5重量%含有、Aldrich社製)0.4gを加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これにスノーテックス40(シリカ(SiO2)濃度:40重量%、日産化学社製)5.9gを加えて室温で5分間撹拌した後、0.1gの未焼成品のCHA型ゼオライト(SiO2/Al2O3モル比=22)を添加し、室温で2時間撹拌して原料混合物を得た。
【0107】
この原料混合物を耐圧容器に入れ、180℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、1日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉のXRDを測定したところ、
図1に示すようなXRDパターンを示すAEI型ゼオライト1を合成することができたことが確認された。次にゼオライト中の有機物を除去するために、AEI型ゼオライト1を580℃の空気気流下で6時間焼成し、AEI型ゼオライト2を得た。XRF分析によるAEI型ゼオライト2のSiO
2/Al
2O
3モル比は10であった。
【0108】
〔Fe担持処理〕
Feを担持するためのイオン交換処理液として、以下の割合で硫酸鉄(II)7水和物、AEI型ゼオライト2、アスコルビン酸を含む水溶液を用意した。
硫酸鉄(II)7水和物:AEI型ゼオライト2:H2O=x:0.25:25(重量比、なお、xはFe/Alが下記のモル比となるように調整された量である。xは以下も同じ意味である。)
Fe/Al=0.2
アスコルビン酸:硫酸鉄(II)=10mol:1mol
窒素雰囲気下、室温(23℃)で24時間撹拌してイオン交換を行い、次いで、遠心分離による濾過を行った後、洗浄、乾燥して鉄担持AEI型ゼオライトからなる窒素酸化物吸着材1を得た。XRF分析によるSiO2/Al2O3モル比は10であり、ICPによるFe担持量は1.8重量%だった。
【0109】
[実施例2]
ゼオライトへのFe担持処理において、Fe/Al=0.3の条件で処理する以外は実施例1と同じ方法によって鉄担持AEI型ゼオライトからなる窒素酸化物吸着材2を製造した。製造された鉄担持AEI型ゼオライトは、XRF分析によるSiO2/Al2O3モル比が10であり、ICPによるFe担持量は2.7重量%であった。
【0110】
[実施例3]
31.4gの水と、有機構造規定剤(OSDA)として28.7gのDABCO17重量%水溶液(セイケム社製)と、0.7gのNaOH(和光純薬製)と、27.5gの水ガラス3号(WAKO社製)を混合したものに、NaY-5(SiO2/Al2O3モル比=5:日揮触媒化成社製)2.5gを加えて室温で2時間撹拌して原料混合物を得た。
【0111】
この原料混合物を耐圧容器に入れ、150℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、3日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉のXRDを測定したところ、
図2に示すようなXRDパターンを示すAFX型のゼオライト1を合成することができたことが確認された。次にゼオライト中の有機物を除去するために、AFX型ゼオライト1を500℃の空気気流下で6時間焼成し、AFX型ゼオライト2を得た。XRF分析によるAFX型ゼオライト2のSiO
2/Al
2O
3モル比は8であった。
【0112】
〔Fe担持処理〕
Feを担持するためのイオン交換処理液として、以下の割合で硫酸鉄(II)7水和物、AFX型ゼオライト2、アスコルビン酸を含む水溶液を用意した。
硫酸鉄(II)7水和物:AFX型ゼオライト2:H2O=x:0.25:25(重量比)
Fe/Al=0.4
アスコルビン酸:硫酸鉄(II)=10mol:1mol
窒素雰囲気下、室温(23℃)で24時間撹拌してイオン交換を行い、次いで、遠心分離による濾過を行った後、洗浄、乾燥して鉄担持AFX型ゼオライトからなる窒素酸化物吸着材3を得た。XRF分析によるSiO2/Al2O3モル比が8であり、ICPによるFe担持量は1.5重量%であった。
【0113】
[比較例1]
2.2gの水と、有機構造規定剤(OSDA)として9.2gのN,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド20%水溶液(シス体とトランス体の混合物)(セイケム社製)と、1.0gのNaOH(和光純薬製)を混合したものに、USY-30(SiO2/Al2O3モル比=30:Zeolyst社製)2.2g、スノーテックス40(シリカ濃度:40重量%、日産化学社製)5.2gを加えて室温で2時間撹拌して原料混合物を得た。
【0114】
この原料混合物を耐圧容器に入れ、160℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、4日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉のXRDを測定したところ、
図3に示すようなXRDパターンを示すAEI型のゼオライト3を合成することができたことが確認された。次にゼオライト中の有機物を除去するために、AEI型ゼオライト3を580℃の空気気流下で6時間焼成し、AEI型ゼオライト4を得た。XRF分析によるAEI型ゼオライト4のSiO
2/Al
2O
3モル比は20であった。
【0115】
〔Fe担持処理〕
Feを担持するためのイオン交換処理液として、以下の割合で硫酸鉄(II)7水和物、AEI型ゼオライト4、アスコルビン酸を含む水溶液を用意した。
硫酸鉄(II)7水和物:AEI型ゼオライト4:H2O=x:0.25:25(重量比)
Fe/Al=0.2
アスコルビン酸:硫酸鉄(II)=10mol:1mol
窒素雰囲気下かつ室温で24時間撹拌後、遠心分離による濾過を行った後、洗浄、乾燥してFe担持AEI型ゼオライトからなる窒素酸化物吸着材4を得た。XRF分析によるSiO2/Al2O3モル比が20、ICPによるFe担持量が0.4重量%であった。
【0116】
[比較例2]
ゼオライトへのFe担持処理において、Fe/Al=0.4の条件で処理する以外は比較例1と同じ方法によって製造されたFe担持AEI型ゼオライトからなる窒素酸化物吸着材5を得た。XRF分析によるSiO2/Al2O3モル比が20、ICPによるFe担持量が0.3重量%であった。
【0117】
〔NO吸着性能〕
窒素酸化物吸着材1~5について、NO吸着量の測定結果を表2に示す。
【0118】
【0119】
以上の実施例1~3、比較例1、2の結果より,窒素酸化物吸着剤1~3は、同等のFe担持処理条件で処理しているにもかかわらず窒素酸化物吸着剤4、5と比べて鉄担持量が多いことが明らかとなった。イオン交換率で比較しても明らかに鉄担持量が多い。本結果から、鉄担持は特定の範囲のSiO2/Al2O3モル比に対して依存性があることが考えられる。これは、AEI型ゼオライト、あるいはAFX型ゼオライトは結晶構造ユニットとして、IZAがcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むが、SiO2/Al2O3モル比が15以下、すなわちd6r中に2個のAlを有しているため、近接したAlが多く鉄が配位しやすいことによると考えられる。一方、SiO2/Al2O3モル比が20のAEI型ゼオライトはd6r中におよそ1個のAlしか存在しないため、2つのAlを近傍に有する配位箇所のみにしか2価の金属が配位せず、担持量が増えなかったと考えられる。またFe担持量が増えるとともに、NO吸着量も増える傾向を示した。
【0120】
さらに、窒素酸化物吸着剤1~3のNO吸着量を非特許文献3に記載の10員環ゼオライトであるMFI型や12員環ゼオライトであるFAU型と比較すると、本発明の窒素酸化物吸着剤は明らかにNO吸着量が多い結果となった。この結果についても、小細孔ゼオライトの方が細孔径は小さいため、近接Alが多く、NO吸着に有効な鉄が担持できていたことが要因であると考えられる。
以上の結果より、細孔径が小さい8員環ゼオライトにおいて、特定の範囲内のSiO2/Al2O3モル比において鉄を担持したゼオライトは、窒素酸化物の吸着剤として高い性能を有することが理解できる。
【0121】
図4は、窒素酸化物吸着材1、2、4のNO脱離挙動を示す。Fe担持量が多いほどNOの脱離ピークは高温側にシフトする傾向を示した。これは、吸着されたNO同士が近接することにより、より脱離し難い安定な配位状態でNOが吸着していると考えられる。
【0122】
〔熱安定性評価〕
窒素酸化物吸着材2について熱安定性を評価するために、以下に記載した条件での加熱処理前後によるNO吸着量を測定した。その結果を表3に示す。
加熱処理1:650℃、15時間、ヘリウム雰囲気下
加熱処理2:650℃、15時間、空気雰囲気下
【0123】
【0124】
LTA型のような骨格内Al量の多いゼオライトは、熱安定性が低いことから加熱処理により結晶構造の崩壊が起きることにより吸着性能が低下する。そこで、加熱処理1においては、He雰囲気下で加熱処理することにより、熱によるゼオライト結晶構造の安定性を評価した。加熱処理前後においてNO吸着量の低下は1割程度と少なく、ゼオライト結晶の構造崩壊は起きてないことが確認された。
次に、加熱処理2においては酸化性雰囲気下において、ゼオライトに担持したFeの安定性について評価した。加熱処理1と同様に処理後も高いNO吸着量を有していることが確認できた。従って本発明の窒素酸化物吸着材は、高い熱安定性を持つことが明らかである。