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特許7234921熱プレス積層体、および、熱プレス積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】熱プレス積層体、および、熱プレス積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230301BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20230301BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230301BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20230301BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20230301BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20230301BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230301BHJP
   C08J 7/00 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
C08J5/18 CEW
B32B15/082 B
B32B27/30 D
B32B7/027
B32B15/20
B32B7/025
H05K1/03 630H
H05K1/03 630D
C08J7/00 306
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019518868
(86)(22)【出願日】2018-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2018019144
(87)【国際公開番号】W WO2018212285
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017099295
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017165911
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018010004
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 達也
(72)【発明者】
【氏名】山邊 敦美
(72)【発明者】
【氏名】木寺 信隆
(72)【発明者】
【氏名】笠井 渉
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-118763(JP,A)
【文献】特開2016-072000(JP,A)
【文献】特開2012-197347(JP,A)
【文献】特開2016-037022(JP,A)
【文献】特開2016-201510(JP,A)
【文献】特開平02-245330(JP,A)
【文献】特開2005-324511(JP,A)
【文献】特開2017-002115(JP,A)
【文献】国際公開第1999/045044(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/069217(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/182696(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0057094(US,A1)
【文献】特開2015-111625(JP,A)
【文献】特開2006-179537(JP,A)
【文献】特開2004-244656(JP,A)
【文献】国際公開第2017/030190(WO,A1)
【文献】古河サーキットフォイル(株),これからのプリント配線板用電解銅箔,古河電工時報,第120号,日本,古河電気工業株式会社,2007年09月,第135頁-第137頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
B29C 55/00 - 55/30
B29C 61/00 - 61/10
B29C 48/00 - 48/96
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
B29C 71/04
C08J 7/00 - 7/02
C08J 7/12 - 7/18
B65D 67/00 - 79/02
B65D 81/18 - 81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
B65D 65/00 - 65/46
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が260~380℃のフッ素樹脂を含む材料からなる層Aと、前記フッ素樹脂を含まない材料からなる層Bとを有し、少なくとも1面が前記層Aの表面からなる積層体であって、
前記積層体の層Aの表面の少なくとも1面が、その1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの算術平均粗さRaが3.0nm以上の表面であり、
前記層Bが、JIS C6515:1998(IEC61249-5-1:1995)に基づき測定される表面粗さの最大高さRzが1nm以上、2.5μm以下である銅箔の層であり、
前記積層体の層Aの表面を積層面として熱プレスによって硬化温度がフッ素樹脂の融点以下である熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とするプリプレグが貼り合わされた熱プレス積層される積層体であり、
前記積層体が、前記層Aと前記層Bが直接積層された構成を含み、直接積層された前記層Aと前記プリプレグとの界面の剥離強度がN/10mm以上であり、かつSPDR(スピリットポスト誘電体共振器)法により、23℃±2℃、50±5%RHの範囲内の環境下にて、周波数20GHzにて測定される比誘電率が3.6未満である、熱プレス積層体。
【請求項2】
前記フッ素樹脂が、380℃における溶融粘度が1×10~1×10Pa・sであるテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、請求項1に記載の熱プレス積層体。
【請求項3】
前記表面における1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの最大高さRzが、80.0nm以上である、請求項1または2に記載の熱プレス積層体。
【請求項4】
前記表面における酸素原子の組成比が、炭素原子、フッ素原子、酸素原子の3種類の元素の合計に対して、1%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱プレス積層体。
【請求項5】
前記表面におけるフッ素原子の組成比が、炭素原子、フッ素原子、酸素原子の3種類の元素の合計に対して、25%以上65%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱プレス積層体。
【請求項6】
前記マトリックス樹脂が、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテルおよびポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱プレス積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体の前記算術平均粗さRaが3.0nm以上の表面に、プリプレグを熱プレスにより積層する、熱プレス積層体の製造方法。
【請求項8】
前記フッ素樹脂の融点以下の温度で熱プレスを行う、請求項7に記載の熱プレス積層体の製造方法。
【請求項9】
前記プリプレグのマトリックス樹脂がエポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテルおよびポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項7又は8に記載の熱プレス積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項7~のいずれか一項に記載の熱プレス積層体の製造方法により、前記層Bが銅箔の層である熱プレス積層体を製造し、前記銅箔の層をエッチングしてパターン回路を形成してプリント基板を得る、プリント基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱プレス積層体、および、熱プレス積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高密度化に伴い、各種プリント基板の需要が伸びている。プリント基板としては、例えば、絶縁材料からなる基板と金属箔を積層し、該金属箔をパターニングして回路を形成したものが用いられている。プリント基板の絶縁材料には、高周帯域の周波数に対応する優れた電気的特性(低誘電率等)や、はんだリフローに耐え得る優れた耐熱性等が求められる。
【0003】
誘電率が低く、プリント基板に有用な絶縁材料としては、フッ素樹脂が提案されている。例えば、カルボニル基含有基等の官能基を有する融点が260~320℃のフッ素樹脂および熱硬化性樹脂の硬化物を含む層と金属箔との積層体をプリント基板に用いることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/017801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント基板においては、例えばフッ素樹脂を含む層における金属箔とは反対側に、熱プレスによってプリプレグ等の積層対象物を積層することがある。融点が260~320℃のフッ素樹脂を用いれば優れた耐熱性が得られる。しかし、260~320℃という高融点のフッ素樹脂を用いる場合、通常はプリプレグ等の硬化物の耐熱温度がフッ素樹脂の融点よりも低い。そのため、熱プレスはフッ素樹脂の融点よりも低い耐熱温度に近い温度で行う必要があり、フッ素樹脂が充分に溶融せず、充分な密着性が得られにくい。
【0006】
本発明は、耐熱性に優れ、プリプレグ等の積層対象物と熱プレスにより積層した際に積層対象物との層間密着性に優れた、フッ素樹脂フィルムおよびフッ素樹脂層を有する積層体の提供を目的とする。また、該フッ素樹脂フィルムおよび該積層体を用いた熱プレス積層体の製造方法、ならびにプリント基板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]融点が260~380℃のフッ素樹脂を含み、厚み方向の少なくとも一方の表面の1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの算術平均粗さRaが3.0nm以上であるフッ素樹脂フィルム。
[2]融点が260~380℃のフッ素樹脂を含む材料からなる層Aと、前記フッ素樹脂を含まない材料からなる層Bとを有し、少なくとも1面が前記層Aの表面からなる積層体であって、前記積層体の層Aの表面の少なくとも1面が、その1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの算術平均粗さRaが3.0nm以上の表面である、積層体。
[3]前記フッ素樹脂が、380℃における溶融粘度が1×10~1×10Pa・sであるテトラフルオロエチレン系ポリマーを含む、[2]の積層体。
[4]前記表面における1μm内を原子間力顕微鏡で測定したときの最大高さRzが、80.0nm以上である、[2]または[3]の積層体。
[5]前記表面における酸素原子の組成比が、炭素原子、フッ素原子、酸素原子の3種類の元素の合計に対して、1%以上である、[2]~[4]のいずれかの積層体。
【0008】
[6]前記表面におけるフッ素原子の組成比が、炭素原子、フッ素原子、酸素原子の3種類の元素の合計に対して、25%以上65%以下である、[2]~[5]のいずれかの積層体。
[7]前記層Bが金属基材の層である、[2]~[6]の積層体。
[8]前記金属基材の層が銅箔の層であり、前記銅箔のJIS C6515:1998(IEC61249-5-1:1995)に基づき測定される表面粗さの最大高さRzが1nm以上、2.5μm以下である、[7]の積層体。
[9]前記層Aの表面を積層面として熱プレスによって積層対象物に積層される積層体である、[2]~[8]のいずれかの積層体。
[10]前記積層対象物が、プリプレグである、[9]の積層体。
[11]前記接着対象物が、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とするプリプレグであり、前記熱硬化性樹脂の硬化温度がフッ素樹脂の融点以下である、[10]の積層体。
[12]前記マトリックス樹脂が、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテルおよびポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[11]の積層体。
[13]融点が260~380℃のフッ素樹脂を含む材料からなる層Aと、前記フッ素樹脂を含まない材料からなる層Bとを有する積層体であって、
前記層Bが、前記層Aと前記層Bが直接積層された構成を含み、直接積層された前記層Aと前記層Bとの界面の剥離強度が5N/10mm以上であり、かつ比誘電率(20GHz)が3.6未満である、積層体。
[14]前記層Aの前記層Bと接する表面における酸素原子の組成比が、炭素原子、フッ素原子、酸素原子の3種類の元素の合計に対して1%以上であり、かつフッ素原子の組成比が25%以上65%以下である、[13]の積層体。
【0009】
[15]前記[1]のフッ素樹脂フィルムまたは[2]~[14]のいずれかの積層体の前記算術平均粗さRaが3.0nm以上の表面に、積層対象物を熱プレスにより積層する、熱プレス積層体の製造方法。
[16]前記フッ素樹脂の融点以下の温度で熱プレスを行う、[15]の熱プレス積層体の製造方法。
【0010】
[17]融点が260~380℃のフッ素樹脂を含むフッ素樹脂フィルムを表面処理し、厚み方向の少なくとも一方の表面の濡れ張力が30mN/m以上であるフッ素樹脂フィルムを得て、得られたフッ素樹脂フィルムの濡れ張力が30mN/m以上の表面に、積層対象物を前記フッ素樹脂の融点以下の温度で熱プレスにより積層する、熱プレス積層体の製造方法。
[18]前記積層対象物が、プリプレグ、ガラス部材またはセラミックス部材である、[15]~[17]のいずれかの熱プレス積層体の製造方法。
[19]前記接着対象物がプリプレグである、[18]の熱プレス積層体の製造方法。
[20]前記プリプレグのマトリックス樹脂がエポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテルおよびポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[19]の熱プレス積層体の製造方法。
[21]前記[15]~[20]のいずれかの熱プレス積層体の製造方法により、前記層Bが金属層である熱プレス積層体を製造し、前記金属層をエッチングしてパターン回路を形成してプリント基板を得る、プリント基板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性に優れ、プリプレグ等の積層対象物と熱プレスにより積層した際に積層対象物との密着性に優れた、フッ素樹脂フィルムおよびフッ素樹脂層を有する積層体を提供できる。また、該フッ素樹脂フィルムおよび該積層体を用いた熱プレス積層体の製造方法、ならびにプリント基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の積層体の一例を示した断面図である。
図2】本発明の積層体の他の例を示した断面図である。
図3】実施例13と比較例2の伝送損失測定結果を示したものである。
図4】実施例14と比較例3の伝送損失測定結果を示したものである。
図5】実施例15と比較例4の伝送損失測定結果を示したものである。
図6】実施例21と比較例5の伝送損失測定結果を示したものである。
図7】実施例22と比較例6の伝送損失測定結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の用語は、以下の意味を有する。
原子間力顕微鏡(AFM)で測定したときの算術平均粗さRaおよび最大高さRzは、Oxford Instruments社製のAFMを用いて、1μm範囲の表面のRaとRzを測定した。測定条件は下記である。
プローブ:AC160TS-C3(先端R <7nm、バネ定数 26N/m)、測定モード:AC-Air、Scan Rate:1Hz。
以下、AFMで測定した1μm範囲の表面のRaおよびRzを、それぞれRa(AFM)およびRz(AFM)と記す。
本明細書において、単に「最大高さRz」と記載した場合は、「JIS C6515:1998(IEC61249-5-1:1995)に基づき測定される表面粗さの最大高さRz」を意味する。
「融点」とは、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度を意味する。
「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことを意味する。
「溶融流動性を示す」とは、荷重49Nの条件下、樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が0.1~1000g/10分となる温度が存在することを意味する。
「溶融流れ速度」とは、JIS K 7210:1999(ISO 1133:1997)に規定されるメルトマスフローレート(MFR)を意味する。
「比誘電率」は、ASTM D 150準拠の変成器ブリッジ法にて、温度を23℃±2℃の範囲内、相対湿度を50%±5%RHの範囲内に保持した試験環境において、絶縁破壊試験装置(YSY-243-100RHO(ヤマヨ試験機社製))にて、1MHzで求めた値である。また、高周波数帯での比誘電率については、SPDR(スピリットポスト誘電体共振器)法により、23℃±2℃、50±5%RHの範囲内の環境下にて、周波数20GHzで測定される値である。以下、1MHzで測定される比誘電率を「比誘電率(1MHz)」、20GHzで測定される比誘電率を「比誘電率(20GHz)」と記す。
重合体の「単位」とは、単量体が重合することによって形成された該単量体1分子に由来する重合体部分を意味する。単位は、単量体の重合反応によって直接形成された重合体部分であってもよく、重合体を処理することによって該重合体部分の一部が別の構造に変換された重合体部分であってもよい。
「単量体」とは、重合性二重結合等の重合性不飽和結合を有する化合物である。
「酸無水物基」とは、-C(=O)-O-C(=O)-で表される基を意味する。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0014】
[フッ素樹脂フィルム]
本発明のフッ素樹脂フィルムは、融点が260~380℃のフッ素樹脂を含み、厚み方向の少なくとも一方の表面のRa(AFM)が3.0nm以上であるフッ素樹脂フィルムである。本発明のフッ素樹脂フィルムは、熱プレスによって積層対象物に積層されるフィルムとして特に有効である。
以下、融点が260~380℃のフッ素樹脂を「フッ素樹脂F」と記す。
【0015】
フッ素樹脂Fの融点は、260~380℃である。フッ素樹脂Fの融点が260℃以上であれば、耐熱性に優れる。フッ素樹脂Fの融点が380℃以下であれば、成形性に優れる。
なお、フッ素樹脂Fの融点は、フッ素樹脂Fを構成する重合体の単位の種類や含有割合、分子量等によって調整できる。
【0016】
フッ素樹脂Fの溶融流れ速度は、0.1~1000g/10分が好ましく、0.5~100g/10分がより好ましく、1~30g/10分がさらに好ましく、5~20g/10分が特に好ましい。溶融流れ速度が前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂Fの成形加工性に優れる。溶融流れ速度が前記範囲の上限値以下であれば、フッ素樹脂フィルムの機械強度が高くなる。
【0017】
フッ素樹脂Fの比誘電率(1MHz)は、2.5以下が好ましく、2.4以下がより好ましく、2.0~2.4が特に好ましい。フッ素樹脂Fの比誘電率が低いほどフッ素樹脂フィルムの電気特性がより優れたものとなり、フッ素樹脂フィルムをプリント基板の基板に用いた場合に優れた伝送効率が得られる。フッ素樹脂Fの比誘電率は、後述の単位u1の含有量により調整できる。
【0018】
フッ素樹脂Fとしては、380℃における溶融粘度が1×10~1×10Pa・sであるテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、TFE系ポリマーとも記す。)が好ましい。なお、フッ素樹脂Fの溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター及び2Φ-8Lのダイを用い、予め測定温度にて5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて測定温度に保持して測定できる。
TFE系ポリマーは、340℃における溶融粘度が1×10~1×10Pa・sであるのが好ましく、300℃における溶融粘度が1×10~1×10Pa・sであるのが特に好ましい。
【0019】
TFE系ポリマーとは、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す)に由来する単位(以下、「単位u1」とも記す)を含む重合体である。TFE系ポリマーは、TFEの単独重合体であってもよく、TFEと共重合可能なモノマー(以下、コモノマーとも記す)とTFEとの共重合体であってもよい。また、TFE系ポリマーは、重合体に含まれる全単位に対して、単位u1を90mol%以上含むのが好ましい。
TFE系ポリマーとしては、後述する低分子量のポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEとも記す)および後述する含フッ素重合体Fが挙げられる。
【0020】
低分子量のPTFEは、重合体全体として380℃における溶融粘度が1×10~1×10Pa・sであるPTFEだけでなく、コア部分とシェル部分からなるコア-シェル構造においてシェル部分のみが上記溶融粘度を満たすPTFEであってもよい。
低分子量のPTFEとしては、高分子量のPTFE(溶融粘度が1×10~1×1010Pa・s程度)に放射線を照射して得られるPTFE(国際公開第2018/026012号、国際公開第2018/026017号等)であってもよく、TFEを重合してPTFEを製造する際に連鎖移動剤を用い分子量を低減して得られるPTFE(特開2009-1745号公報、国際公開第2010/114033号)であってよい。
【0021】
なお、PTFEはTFEを単独で重合して得られた重合体であってもよく、TFEとコモノマーとを共重合して得られた共重合体であってもよい(国際公開第2009/20187号等)。重合体に含まれる全単位に対して、TFEに由来する単位は、99.5mol%以上が好ましく、99.8mol%以上がより好ましく、99.9mol%以上がさらに好ましい。上記範囲であると、PTFE物性を維持できる。コモノマーとしては、後述する含フッ素単量体が挙げられ、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPとも記す)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEとも記す)およびフルオロアルキルエチレン(以下、FAEとも記す)からなる群から選ばれる一種が好ましい。
【0022】
コア-シェル構造を有するPTFEとしては、特表2005-527652号公報、国際公開第2016/170918号等に記載のPTFEが挙げられる。シェル部分の溶融粘度を上記範囲とするためには、連鎖移動剤を用いてシェル部分を低分子量化する方法(特開2015-232082号公報等)、シェル部分の製造の際にTFEと上記コモノマーとを共重合する方法(特開平09-087334号公報)等が挙げられる。
後者の場合、コモノマーの使用量はTFEに対して0.001~0.05mo%程度が好ましい。また、シェル部分だけでなくコア部分も共重合により製造してもよい。この場合もコモノマーの使用量はTFEに対して0.001~0.05mo%が好ましい。
【0023】
低分子量のPTFEの標準比重(以下、SSGとも記す)は、2.14~2.22が好ましく、2.16~2.20がより好ましい。SSGは、ASTM D4895-04に準拠して測定できる。
【0024】
含フッ素重合体Fは、TFEとコモノマーとの共重合体であり、重合体に含まれる全単位に対して、コモノマーに由来する単位を0.5mol%超含む。含フッ素重合体Fは溶融成形可能である。含フッ素重合体Fの融点は、260~320℃が好ましく、280~320℃がより好ましく、295~315℃がさらに好ましく、295~310℃が特に好ましい。含フッ素重合体Fの融点が前記範囲の下限値以上であれば、耐熱性に優れる。フッ素樹脂Fの融点が前記範囲の上限値以下であれば、溶融成形性に優れる。
【0025】
含フッ素重合体Fとしては、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、TFE/HFP共重合体(FEP)、TFE/PAVE共重合体(PFA)、等が挙げられる。含フッ素重合体Fとしては、電気特性(誘電率、誘電正接)および耐熱性の点から、PFA、FEPがより好ましく、PFAがさらに好ましい。
【0026】
フッ素樹脂Fとしては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の接着性官能基を有する融点が260~320℃の接着性フッ素樹脂(以下、「フッ素樹脂F1」とも記す。)が好ましい。なお、フッ素樹脂Fは、接着性官能基を有しない融点が260~320℃のフッ素樹脂(以下、「フッ素樹脂F2」とも記す。)であってもよい。
フッ素樹脂Fとしては、フッ素樹脂F1またはフッ素樹脂F2のいずれかのみを使用してもよく、フッ素樹脂F1とフッ素樹脂F2を組み合わせて使用してもよい。
フッ素樹脂F1には上記含フッ素共重合体の中でも接着性官能基を有するものが含まれる。接着性フッ素樹脂F2には低分子量PTFEおよび上記含フッ素共重合体の中でも接着性官能基を有しないものが含まれる。
また、後述するプラズマ処理等により、フッ素樹脂F2に接着性官能基を付与することもできる。この場合、処理後のフッ素樹脂はフッ素樹脂F1となる。
【0027】
フッ素樹脂F1が有する接着性官能基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。接着性官能基としては、熱プレス積層体におけるフッ素樹脂フィルム層と積層対象物との層間密着性の点から、カルボニル基含有基が好ましい。
カルボニル基含有基としては、例えば、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基等が挙げられる。
【0028】
炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有する基における炭化水素基としては、例えば、炭素数2~8のアルキレン基等が挙げられる。なお、該アルキレン基の炭素数は、カルボニル基の炭素原子を含まない炭素数である。
ハロホルミル基は、-C(=O)-X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
【0029】
フッ素樹脂F1中の接着性官能基の含有量は、フッ素樹脂F1の主鎖炭素数1×10個に対し10~60000個が好ましく、100~50000個がより好ましく、100~10000個がさらに好ましく、300~5000個が特に好ましい。接着性官能基の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、熱プレス積層体におけるフッ素樹脂フィルムと積層対象物との層間密着性にさらに優れる。接着性官能基の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、フッ素樹脂F1の耐熱性や色目等が良好である。
【0030】
接着性官能基の含有量は、例えば、特開2007-314720号公報に記載の赤外吸収スペクトル分析を用いて、フッ素樹脂F1を構成する全単位中の接着性官能基を有する単位の割合(モル%)を求めて算出できる。
【0031】
フッ素樹脂F1としては、例えば、接着性官能基を有する単位や接着性官能基を有する末端基を有する含フッ素重合体が挙げられる。具体的には、接着性官能基を有するPFA、接着性官能基を有するFEP、接着性官能基を有するETFE等が挙げられる。
【0032】
フッ素樹脂F1としては、熱プレス積層体におけるフッ素樹脂フィルムと積層対象物との層間密着性に優れ、フッ素樹脂フィルムの電気特性がより優れる点から、下記含フッ素重合体F11が好ましい。
含フッ素重合体F11:単位u1と、酸無水物基を有する環状炭化水素単量体(以下、「酸無水物系単量体」とも記す。)に由来する単位(以下、「単位u2」とも記す)と、含フッ素単量体(ただし、TFEを除く。)に由来する単位(以下、「単位u3」とも記す)とを有する含フッ素重合体。
含フッ素重合体F11としては、国際公開第2018/16644号に記載された重合体(X)等が挙げられる。
【0033】
酸無水物系単量体としては、無水イタコン酸(以下、「IAH」とも記す。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」とも記す。)、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)、無水マレイン酸等が挙げられる。酸無水物系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
単位u3を構成する含フッ素単量体としては、含フッ素重合体F11の成形性、フッ素樹脂フィルムの耐屈曲性等に優れる点から、HFP、PAVEおよびFAEからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、PAVEが特に好ましい。
PAVEとしては、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFO(CFF等が挙げられ、PPVEが好ましい。
【0035】
FAEとしては、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFHがより好ましく、CH=CH(CFF(以下、「PFBE」とも記す。)およびCH=CH(CFF(以下、「PFEE」とも記す。)が好ましい。
【0036】
含フッ素重合体F11中の単位u1と単位u2と単位u3との合計量に対する各単位の好ましい割合は下記のとおりである。
単位u1の割合は、90~99.89モル%が好ましく、95~99.47モル%がより好ましく、96~98.95モル%がさらに好ましい。
単位u2の割合は、0.01~3モル%が好ましく、0.03~2モル%がより好ましく、0.05~1モル%がさらに好ましい。
単位u3の割合は、0.1~9.99モル%が好ましく、0.5~9.97モル%がより好ましく、1~9.95モル%がさらに好ましい。
【0037】
含フッ素重合体F11において、各単位の割合が前記範囲内であれば、フッ素樹脂フィルムの難燃性、耐薬品性等にさらに優れる。
単位u2の割合が前記範囲内であれば、熱プレス積層体における、フッ素樹脂フィルムと積層対象物との層間密着性、フッ素樹脂フィルムと金属層との層間密着性にさらに優れる。
単位u3の割合が前記範囲内であれば、含フッ素重合体F11の成形性、フッ素樹脂フィルムの耐屈曲性等にさらに優れる。
各単位の割合は、含フッ素重合体Xの溶融NMR分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトル分析等により算出できる。
【0038】
含フッ素重合体F11は、単位u1~u3に加えて、非フッ素系単量体(ただし、酸無水物系単量体を除く。)に由来する単位u4を有していてもよい。
非フッ素系単量体としては、オレフィン(エチレン、プロピレン、1-ブテン等)、ビニルエステル(酢酸ビニル等)等が挙げられる。非フッ素系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
非フッ素系単量体としては、フッ素樹脂フィルムの機械的強度等に優れる点から、エチレン、プロピレン、1-ブテンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
【0039】
含フッ素重合体F11の具体例としては、TFEとNAHとPPVEとの共重合体(TFE/NAH/PPVE共重合体とも記す。他の共重合体においても同様である。)、TFE/IAH/PPVE共重合体、TFE/CAH/PPVE共重合体、TFE/IAH/HFP共重合体、TFE/CAH/HFP共重合体、TFE/IAH/PFBE/エチレン共重合体、TFE/CAH/PFBE/エチレン共重合体、TFE/IAH/PFEE/エチレン共重合体、TFE/CAH/PFEE/エチレン共重合体、TFE/IAH/HFP/PFBE/エチレン共重合体等が挙げられる。
含フッ素重合体F11は、接着性官能基を有するPFAが好ましく、TFE/NAH/PPVE共重合体、TFE/IAH/PPVE共重合体、TFE/CAH/PPVE共重合体がより好ましい。
【0040】
フッ素樹脂F1としては、主鎖末端基として接着性官能基を有する含フッ素重合体を用いてもよい。前記含フッ素重合体は、単量体の重合の際に、接着性官能基をもたらす連鎖移動剤や重合開始剤を使用して単量体を重合させる方法で製造できる。
【0041】
接着性官能基をもたらす連鎖移動剤としては、カルボキシ基、エステル結合、ヒドロキシ基等を有する連鎖移動剤が好ましい。具体的には、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
接着性官能基をもたらす重合開始剤としては、ペルオキシカーボネート、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル等の過酸化物系重合開始剤が好ましい。具体的には、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0042】
本発明のフッ素樹脂フィルムは、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、フッ素樹脂F以外の樹脂や、添加剤等をさらに含んでもよい。
【0043】
添加剤としては、有機質フィラー、無機フィラー等が好ましい。添加剤は、国際公開第2018/16644号の[0070]に記載されたものが挙げられる。
【0044】
本発明のフッ素樹脂フィルムは、厚み方向の少なくとも一方の表面のRa(AFM)が3.0nm以上になっている。これにより、フッ素樹脂フィルムのRa(AFM)が3.0nm以上の表面にプリプレグ等の積層対象物を熱プレスにより積層した場合に、フッ素樹脂フィルムと積層対象物の間で優れた層間密着性が得られる。また、フッ素樹脂フィルムのRa(AFM)が3.0nm以上の表面に金属等の他の材料からなる基材を積層した場合も、フッ素樹脂フィルムと他の基材の間で優れた層間密着性が得られる。
本発明のフッ素樹脂フィルムにおいては、厚み方向の一方の表面のみでRa(AFM)が3.0nm以上になっていてもよく、厚み方向の両方の表面でRa(AFM)が3.0nm以上になっていてもよい。
【0045】
フッ素樹脂フィルムの厚み方向の少なくとも一方の表面のRa(AFM)は、3.0以上であり、9.0以上が好ましく、12nm以上がより好ましい。前記範囲であると本発明のフッ素樹脂フィルムは優れた密着性を有する。
フッ素樹脂フィルムのRa(AFM)が3.0nm以上の表面のRz(AFM)は、80nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、130nm以上が特に好ましい。前記範囲であると、密着性が向上する。
また、Ra(AFM)は、1μm以下が好ましく、Rz(AFM)は300nm以下が好ましい。
【0046】
本発明のフッ素樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
フッ素樹脂フィルムの厚みは、1~3000μmが好ましい。プリント基板用途の場合、フッ素樹脂フィルムの厚みは、1~2000μmがより好ましく、1~1000μmがさらに好ましく、3~50μmが特に好ましく、3~15μmが最も好ましい。
【0047】
フッ素樹脂フィルムの比誘電率(1MHz)は、2.0~3.5が好ましく、2.0~3.0が特に好ましい。比誘電率(1MHz)が前記範囲の上限値以下であれば、プリント基板用途等の低誘電率が求められる用途に有用である。比誘電率(1MHz)が前記範囲の下限値以上であれば、電気特性と接着性の双方に優れる。
【0048】
フッ素樹脂フィルムの比誘電率(20GHz)は、2.5以下が好ましく、2.4以下がより好ましく、2.0~2.4が特に好ましい。比誘電率(20GHz)が低いほど、フッ素樹脂フィルムの電気特性がより優れ、例えばフッ素樹脂フィルムをプリント基板に用いた場合に優れた伝送効率が得られる。
【0049】
(フッ素樹脂フィルムの製造方法)
フッ素樹脂フィルムの製造方法としては、フッ素樹脂Fを含むフッ素樹脂フィルムの少なくとも一方の表面を、Ra(AFM)が3.0nm以上となるように表面処理する方法が挙げられる。
【0050】
なお、前記「Ra(AFM)が3.0nm以上となるように」を、「Ra(AFM)が3.0nm以上かつRz(AFM)が80.0nm以上となるように」に置き換えた場合も同様にフッ素樹脂フィルムを製造できる。
【0051】
フッ素樹脂フィルムの形成方法としては、フッ素樹脂Fを含む樹脂パウダーを液状媒体に分散させた分散液を製膜し、乾燥した後に加熱してフッ素樹脂フィルムを得る方法が挙げられる。また、前記分散液と、フッ素樹脂F以外の熱可塑性樹脂もしくはその原料、または熱硬化性樹脂もしくはその原料(以下、これらをまとめて「熱可塑性樹脂等」とも記す。)を含む液とを混合した液状組成物を製膜し、乾燥した後に加熱してフッ素樹脂フィルムを得る方法も挙げられる。
なお、フッ素樹脂フィルムの製造方法としては、押出成形法、インフレーション成形法等を用いてもよい。
【0052】
樹脂パウダーは、フッ素樹脂Fを主成分とすることが好ましい。フッ素樹脂Fが主成分であれば、嵩密度の高い樹脂パウダーが得られやすい。樹脂パウダーの嵩密度が大きいほど、ハンドリング性が優れる。なお、樹脂パウダーが「フッ素樹脂Fを主成分とする」とは、樹脂パウダーの全量(100質量%)に対するフッ素樹脂Fの割合が、80質量%以上であることを意味する。樹脂パウダーの全量(100質量%)に対するフッ素樹脂Fの割合は、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0053】
樹脂パウダーの平均粒径は、0.3~6μmが好ましく、0.4~5μmがより好ましく、0.5~4.5μmがさらに好ましく、0.7~4μmが特に好ましく、1~3.5μmが最も好ましい。樹脂パウダーの平均粒径が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂パウダーの流動性が充分で取り扱いが容易であり、かつ平均粒径が小さいことから、熱可塑性樹脂等への樹脂パウダーの充填率を高くできる。充填率が高いほど、液状組成物を用いて形成したフッ素樹脂フィルムの電気特性(低誘電率等)が優れる。また、樹脂パウダーの平均粒径が小さいほど、液状組成物を用いて形成したフッ素樹脂フィルムの厚みを薄くでき、例えばフレキシブルプリント基板の用途に有用な薄さにすることも容易である。樹脂パウダーの平均粒径が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂パウダーの液状媒体への分散性が優れる。さらにこの範囲であればフィルムを形成した際に好ましい表面粗さの範囲に入り、接着性に優れる。
【0054】
樹脂パウダーの平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求められる体積基準累積50%径(D50)である。すなわち、レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
【0055】
樹脂パウダーの体積基準累積90%径(D90)は、8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましく、1.5~5μmが特に好ましい。D90が上限値以下であれば、樹脂パウダーの液状媒体への分散性が優れる。
樹脂パウダーのD90は、レーザー回折・散乱法により求められる。すなわち、レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が90%となる点の粒子径である。
【0056】
樹脂パウダーの疎充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.05~0.5g/mLがより好ましく、0.08~0.5g/mLが特に好ましい。
樹脂パウダーの密充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.05~0.8g/mLがより好ましく、0.1~0.8g/mLが特に好ましい。
疎充填嵩密度または密充填嵩密度が大きいほど、樹脂パウダーのハンドリング性がより優れる。また、熱可塑性樹脂等への樹脂パウダーの充填率を高くすることができる。疎充填嵩密度または密充填嵩密度が前記範囲の上限値以下であれば、汎用的なプロセスで使用できる。
【0057】
液状媒体としては、水;メタノール、エタノール等のアルコール類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素化合物;ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;乳酸エチル、酢酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン類;エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられる。
液状媒体としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、液状媒体は、接着性フッ素樹脂と反応しない化合物である。
【0058】
分散液は、界面活性剤を含んでいてもよい。
上記界面活性剤は、少なくとも含フッ素基と親水性基を有するものであることが必要であり、少なくとも親油性基と親水性基を有するものであれば、特に限定されるものではなく、この他に親油性基が含有されているものであってもよい。
【0059】
分散液には、さらに、シリコーン系消泡剤やフルオロシリコーン系消泡剤を含有させることができる。特に、非水系溶剤の液状媒体の場合は、液状媒体とフッ素樹脂Fとの界面よりも、液状媒体と空気との界面に消泡剤を存在させるために、親水性や水溶性のシリコーン系消泡剤を用いることが好ましい。
【0060】
分散液中の液状媒体の含有量は、樹脂パウダー100質量部に対して、1~1000質量部が好ましい。
分散液が界面活性剤を含む場合、分散液中の界面活性剤の含有量は、樹脂パウダー100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.2~10質量部がより好ましく、0.3~7質量部が特に好ましい。
分散液が消泡剤を含有する場合、分散液中の消泡剤の含有量は、フッ素樹脂Fの含有量により変動するが、分散液の総質量に対して、有効成分として1質量%以下が好ましい。
分散液が無機フィラーを含む場合、分散液中の無機フィラーの含有量は、樹脂パウダー100質量部に対して、0.1~300質量部が好ましく、1~200質量部がより好ましく、3~150質量部がさらに好ましく、5~100質量部が特に好ましく、10~60質量部が最も好ましい。
【0061】
液状組成物は、前記した分散液と、熱可塑性樹脂等を含む液との混合液である。
フッ素樹脂F以外の熱可塑性樹脂もしくはその原料としては、例えば、接着性官能基と反応する反応性基を有する熱可塑性樹脂もしくはその原料が挙げられる。反応性基としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
【0062】
反応性基を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド(以下、「TPI」とも記す。)が挙げられる。
反応性基を有する熱可塑性樹脂の原料としては、例えば、TPIの原料前駆体である、多価カルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミンとの重縮合で得られるポリアミック酸が挙げられる。熱可塑性樹脂の原料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
熱可塑性樹脂の原料としては、熱可塑性樹脂とした際の融点が280℃以上であるものが好ましい。これにより、液状組成物により形成したフィルム等において、はんだリフローに相当する雰囲気に曝されたときの熱による膨れ(発泡)が抑制されやすい。
【0064】
フッ素樹脂F以外の熱可塑性樹脂もしくはその原料としては、反応性基を有しないものを用いてもよい。反応性基を有しないフッ素樹脂F以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、前記した他の樹脂で挙げた接着性官能基を有しない融点が260℃未満または380℃超のフッ素樹脂が挙げられる。
【0065】
熱硬化性樹脂もしくはその原料としては、例えば、反応性基を有する熱硬化性樹脂もしくはその原料が挙げられる。熱硬化性樹脂もしくはその原料としては、反応性基を有しないものを用いてもよい。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、反応性基を有するフッ素樹脂(ただし、フッ素樹脂F1を除く。)等が挙げられる。なかでも、プリント基板用途に有用な点から、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビスマレイミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましく、エポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂が特に好ましい。熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、100~1000000が好ましく、1000~100000がより好ましい。エポキシ樹脂の重量平均分子量が前記範囲内であれば、液状組成物により形成したフィルム等と他材料(金属等)との層間密着性が優れる。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。
【0067】
ビスマレイミド樹脂としては、例えば、特開平7-70315号公報に記載されるような、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂とビスマレイミド化合物とを併用した樹脂組成物(BTレジン)や、国際公開第2013/008667号に記載の発明やその背景技術に記載のものが挙げられる。
【0068】
反応性基を有する熱硬化性樹脂の原料としては、芳香族ポリイミドの前駆体(ポリアミック酸)が好ましく、芳香族多価カルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの縮重合で得られる全芳香族ポリイミドの前駆体(ポリアミック酸)が好ましい。
芳香族多価カルボン酸二無水物および芳香族ジアミンの具体例としては、特開2012-145676号公報の[0055]、[0057]に記載のもの等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
熱可塑性樹脂等を含む液としては、熱可塑性樹脂等が液状の場合はそれをそのまま使用できる。熱可塑性樹脂等が液状でない場合は、熱可塑性樹脂等を溶解または分散し得る液状媒体に熱可塑性樹脂等を溶解または分散した液とすればよい。熱可塑性樹脂等を溶解または分散し得る液状媒体としては、特に限定されず、例えば、分散液における液状媒体として挙げたものから熱可塑性樹脂等の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0070】
熱硬化性樹脂もしくはその原料を用いる場合、液状組成物は硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、熱硬化剤(メラミン樹脂、ウレタン樹脂等)、エポキシ硬化剤(ノボラック型フェノール樹脂、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等)等が挙げられる。
【0071】
液状組成物中の樹脂パウダーの含有量は、熱可塑性樹脂等の100質量部に対して、5~500質量部が好ましく、10~400質量部が好ましく、20~300質量部が特に好ましい。樹脂パウダーの含有量が前記範囲の下限値以上であれば、液状組成物を用いて形成したフッ素樹脂フィルムの電気特性に優れる。樹脂パウダーの含有量が前記範囲の上限値以下であれば、液状組成物において樹脂パウダーが均一に分散しやすく、また液状組成物を用いて形成したフッ素樹脂フィルムの機械的強度に優れる。
【0072】
液状組成物中の液状媒体の含有量は、樹脂パウダーおよび熱可塑性樹脂等の合計100質量部に対して、1~1000質量部が好ましく、10~500質量部がより好ましく、30~250質量部が特に好ましい。液状媒体の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、液状組成物の粘度が高すぎず製膜時の塗工性が良好となる。液状媒体の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、液状組成物の粘度が低すぎず製膜時の塗工性が良好であり、また液状媒体の使用量が少ないため、液状媒体の除去工程に由来する製膜品への外観不良が起こりにくい。
なお、熱可塑性樹脂等を含む液に液状媒体が含まれていた場合、液状組成物中の液状媒体の含有量とは、分散液の液状媒体と、熱可塑性樹脂等を含む液の液状媒体とを合計した含有量である。
【0073】
液状組成物が硬化剤を含む場合、液状組成物中の硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂もしくはその原料が持つ反応性基量に対して、0.5~2.0当量が好ましく、0.8~1.2当量がより好ましい。
【0074】
分散液または液状組成物(以下、液状組成物等と記す。)の製膜化方法は、担体表面上への塗布が好ましく、担体上に塗布することにより液状組成物等からなる膜が形成される。液状組成物等の膜が形成された後、液状組成物等の膜を加熱する等の方法で液状媒体を揮発させ、液状媒体が除去された固体状の膜や少なくとも液状媒体の一部が除去された非流動性の膜を形成する。以下、液状媒体の除去を「乾燥」ともいい、塗布する操作を「塗工」ともいう。
【0075】
乾燥においては、必ずしも液状媒体を完全に除去する必要はなく、塗膜が膜形状を安定して維持できるまで行えばよい。乾燥においては、液状組成物等に含まれていた液状媒体のうち、50質量%以上を除去することが好ましい。
乾燥方法は特に限定されず、例えば、国際公開第2018/16644号の[0091]~[0094]に記載された方法が挙げられる。
【0076】
熱可塑性樹脂等を含む液に熱可塑性樹脂の原料を用いた場合、乾燥後の加熱により熱可塑性樹脂の原料を熱可塑性樹脂とする。例えば、TPIの原料であるポリアミック酸を用いた場合、乾燥後の加熱によりポリアミック酸をイミド化してTPIとする。この場合、乾燥後の加熱温度は、例えば、350~550℃とすることができる。
熱可塑性樹脂等を含む液に熱硬化性樹脂を用いた場合には、乾燥後の加熱により熱硬化性樹脂を硬化させる。また、熱硬化性樹脂の原料(芳香族ポリイミドの前駆体のポリアミック酸等)を用いた場合には、乾燥後の加熱により熱硬化性樹脂の原料を熱硬化性樹脂とし、さらに硬化させる。乾燥後の加熱温度は、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜設定すればよく、例えばエポキシ樹脂を用いた場合、50~250℃とすることができる。
乾燥とその後の加熱は連続して行ってもよい。乾燥後の加熱は、1段階で実施してもよく、異なる温度にて2段階以上で実施してもよい。
【0077】
本発明のフッ素樹脂フィルムを、界面活性剤を含む、前記分散液または液状組成物を成膜して製造する場合、フッ素樹脂フィルム中の界面活性剤の残存量は8%未満であることが好ましい。この範囲であれば誘電率が低く、電気特性に優れる。
【0078】
フッ素樹脂フィルムの少なくとも一方の表面のRa(AFM)を3.0nm以上とする表面処理としては、プラズマ処理が好ましい。
プラズマ処理に用いるプラズマ照射装置は、特に限定されず、高周波誘導方式、容量結合型電極方式、コロナ放電電極-プラズマジェット方式、平行平板型、リモートプラズマ型、大気圧プラズマ型、ICP型高密度プラズマ型等を採用した装置が挙げられる。
【0079】
プラズマ処理に使用するガスとしては、特に限定されず、酸素、窒素、希ガス(アルゴン)、水素、アンモニア等が挙げられ、希ガスまたは窒素が好ましく、アルゴンが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
プラズマ処理に使用するガスとしては、アルゴンガス、アルゴンガスと水素または窒素との混合ガス、または、アルゴンガスと窒素と水素との混合ガスが好ましい。プラズマ処理時の酸素濃度は500ppm以下が好ましく、0ppmであってもよい。
【0080】
プラズマ処理の雰囲気は、希ガスまたは窒素ガスの体積分率が50体積%以上の雰囲気が好ましく、70体積%以上の雰囲気がより好ましく、90体積%以上の雰囲気がさらに好ましく、100体積%の雰囲気が特に好ましい。希ガスまたは窒素ガスの体積分率が下限値以上であれば、フッ素樹脂フィルムの表面を、Ra(AFM)が3.0nm以上であるプラズマ処理した表面に更新することが容易になる。
【0081】
プラズマ処理においては、処理を行うにつれてフィルム表面のRa(AFM)は大きくなるが、処理を行いすぎると一旦大きくなったRa(AFM)が再び小さくなる傾向がある。そのため、処理が過度にならないように、電極間ギャップ、装置の出力等を調節して発生する電子のエネルギー(1~10eV程度)を制御し、処理時間を設定する。プラズマ処理装置におけるRF出力電力を調節する場合には、RF出力電力を100~400Wに調節するのが好ましい。
【0082】
なお、前記「Ra(AFM)を3.0nm以上とする表面処理」を、「Ra(AFM)を3.0nm以上かつRz(AFM)を80.0nm以上とする表面処理」に置き換えた場合も同様である。
【0083】
プラズマ処理したフッ素樹脂フィルムの表面の水の接触角は、114°以下が好ましく、さらに好ましくは100°以下である。接触角が小さいほど、他材料との接着性が良くなる。
【0084】
プラズマ処理したフッ素樹脂フィルムのRa(AFM)が3.0nm以上の表面の濡れ張力は、30mN/m以上が好ましく、30mN/m以上70mN/m以下がより好ましく、40mN/m以上65mN/m以下がさらに好ましい。濡れ張力が大きいほど、他材料との接着性に優れる。
【0085】
プラズマ処理後のフッ素樹脂フィルムのRa(AFM)が3.0nm以上の表面における酸素原子の組成比は、炭素原子、フッ素原子、酸素原子の3種の元素の合計に対して、1%以上が好ましく、1%以上9%以下がより好ましい。酸素原子の組成比が前記範囲にあると、良好な接着性を付与しやすい。なお、本発明におけるフッ素樹脂フィルムのプラズマ処理前の表面の酸素原子の組成比は、0%以上、より好ましくは0.5%以上である。
【0086】
プラズマ処理後のフッ素樹脂フィルムのRa(AFM)が3.0nm以上の表面におけるフッ素原子の組成比は、炭素原子、フッ素原子、酸素原子の3種の元素の合計に対して、65%以下が好ましい。フッ素原子の組成比が前記範囲にあれば、良好な接着性を付与しやすい。さらにフッ素原子の組成比が25%以上であれば、プリント基板としての電気特性が高くなる。
【0087】
[積層体]
本発明の積層体は、前記したフッ素樹脂Fを含む材料からなる層Aと、フッ素樹脂Fを含まない材料からなる層Bとを有し、少なくとも1面が前記層Aの表面からなる積層体であって、積層体の層Aの表面の少なくとも1面が、そのRa(AFM)が3.0nm以上の表面である、積層体である。層AのRa(AFM)が3.0nm以上の表面は、さらにRz(AFM)が80.0nm以上であることが好ましい。本発明の積層体は、熱プレスによって層A表面に積層対象物を積層するための積層体として特に有効である。
【0088】
本発明の積層体の積層構成としては、少なくとも1つの層Aが最外層となっている積層構成を有する。本発明の積層体の積層構成としては、例えば、層Aと層Bがこの順に積層された構成(層A/層Bとも記す。他の積層構成についても同様である。)、層A/層B/層Aが挙げられる。
【0089】
層Aを構成する材料は、フッ素樹脂Fを含む材料であり、前記本発明のフッ素樹脂フィルムを構成する材料からなることが好ましい。層Aを構成する材料としては、フッ素樹脂Fのみからなっていてもよく、その場合のフッ素樹脂FとしてはPTFEのような接着性官能基を有しないフッ素樹脂F2であってもよい。
層Aとしては、本発明のフッ素樹脂フィルムからなる層、フッ素樹脂Fを含む樹脂パウダーから塗布等により形成されたフッ素樹脂層が挙げられる。層Aは単層であってもよく、2層以上の複層であってもよい。
本発明の積層体の両面が層Aの表面である場合、片面のみRa(AFM)が3.0nm以上の表面であってもよく、両面がRa(AFM)が3.0nm以上の表面であってもよい。Ra(AFM)が3.0nm以上の表面を有する層Aの厚みおよび比誘電率の好ましい範囲は、フッ素樹脂フィルムのそれらの好ましい範囲と同じである。本発明の積層体がRa(AFM)が3.0nm以上ではない表面を有する第2の層Aを有する場合、第2の層Aの厚みおよび比誘電率の好ましい範囲もまたフッ素樹脂フィルムのそれらの好ましい範囲と同じであることが好ましい。
【0090】
なお、前記「Ra(AFM)が3.0nm以上」を、「Ra(AFM)が3.0nm以上かつRz(AFM)が80.0nm以上」に置き換えた場合も同様である。
【0091】
層Bを構成する材料は、フッ素樹脂Fを含まない材料であり、フッ素樹脂F以外のフッ素樹脂、フッ素原子を有しない熱可塑性樹脂、フッ素原子を有しない熱硬化性樹脂等の樹脂材料が挙げられる。また、金属やガラス等の無機質材料や無機質材料と樹脂材料との組合せ材料等(後述するプリプレグ等)であってもよい。層Bを構成する材料としては特に金属が好ましい。
層Bは、上記材料からなる基材からなることが好ましい。たとえば、上記樹脂材料からなるフィルム、上記無機質材料からなるフィルム、それらフィルムの組合せ等からなるフィルム、フィルム以外の成形体からなる基材等が挙げられる。特に金属箔と呼ばれる金属フィルムからなる基材や金属材料からなる薄層と樹脂材料層とからなるフィルム状基材が好ましく、以下これら基材を金属基材という。
層Bは単層であってもよく、2層以上の複層であってもよい。また層Bにはフィラーが含まれていてもよく、例えばフッ素樹脂パウダーを含んでいてもよい。層Bとしては、プリント基板用途として金属基材からなる層が有用である。
【0092】
金属基材としては、例えば、金属箔、表面に金属メッキ層を有する樹脂フィルム、表面に金属蒸着層を有する樹脂フィルム(金属蒸着樹脂フィルム)等が挙げられる。
金属基材を構成する金属としては、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、黄銅、ニッケル、亜鉛、チタン、またはこれらの金属の合金等が挙げられる。プリント基板用途の場合、銅または銅合金、ステンレス鋼、ニッケルまたはニッケル合金(42合金も含む。)、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましく、銅が特に好ましい。金属基材としては、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が特に好ましい。
【0093】
金属基材の表面には、防錆層(例えばクロメート等の酸化物皮膜)や耐熱層が形成されていてもよい。また、層Aとの密着性を向上させるために、金属基材の表面にカップリング剤処理等が施されてもよい。
金属基材の厚みは、特に限定されず、用途に応じて、充分な機能が発揮できる厚みを選定すればよい。
金属蒸着樹脂フィルムとしては、耐熱性樹脂フィルムの片面または両面に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の蒸着法で前記金属を蒸着したフィルムが挙げられる。
【0094】
層Bに用いる基材としての樹脂フィルムとしては、耐熱性樹脂フィルム、熱硬化性樹脂フィルムが好ましい。
耐熱性樹脂フィルムは、耐熱性樹脂の1種以上を含むフィルムである。ただし、耐熱性樹脂フィルムは、フッ素樹脂を含まない。耐熱性樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
耐熱性樹脂とは、融点が280℃以上の高分子化合物、またはJIS C 4003:2010(IEC 60085:2007)で規定される最高連続使用温度が121℃以上の高分子化合物を意味する。
【0095】
耐熱性樹脂としては、ポリイミド(芳香族ポリイミド等。)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン(ポリエーテルスルホン等。)、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル等の液晶ポリマー(以下、「LCP」とも記す)が挙げられる。
【0096】
LCPは、光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマーである。溶融時における光学的異方性は、例えば試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を観察することにより確認できる。
LCPの例としては、熱可塑性液晶ポリエステル、またはこれにアミド結合が導入された熱可塑性液晶ポリエステルアミド等が挙げられる。
また、芳香族ポリエステルまたは芳香族ポリエステルアミドに、更にイミド結合、カーボネート結合、カルボジイミド結合やイソシアヌレート結合等のイソシアネート由来の結合等が導入されたポリマーであってもよい。特に熱可塑性液晶ポリエステルが好ましい。
LCPの融点は280~360℃が好ましく、290~350℃がより好ましい。
【0097】
LCPの例としては、ベクスター(クラレ社製、商品名)、バイアック(日本ゴア株式会社製、商品名)、ポリプラスチックス社製「ラペロス」、セラニーズ社製「ベクトラ」、上野製薬社製「UENOLCP」、住友化学社製「スミカスーパーLCP」「SOLVAY SPECIALTY POLYMERS製「XYDAR」、JX日鉱日石エネルギー社製「ザイダー」、東レ社製「シベラス」が挙げられる。
【0098】
耐熱性樹脂フィルムとしては、ポリイミドフィルム、液晶ポリエステルフィルムが好ましく、電気特性の点から、液晶ポリエステルフィルムがより好ましい。耐熱性樹脂フィルムの層A側の表面には、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0099】
熱硬化性樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。熱硬化性樹脂フィルムを構成する熱硬化性樹脂としては、液状組成物の説明で挙げた熱硬化性樹脂と同じものが挙げられる。層Bに用いる熱硬化性樹脂としては、フッ素樹脂Fの融点以下の温度で層Bを形成できる熱硬化性樹脂(以下、「熱硬化性樹脂H」とも記す。)とする。
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリフェニレンエーテル等を使用してもよい。
【0100】
フッ素樹脂Fを含む層Aと熱硬化性樹脂Hを含む層Bの積層体における層Bの厚みに対する層Aの厚みの比率A/Bは、0.3以上、3.0以下が好ましい。厚みの比率A/Bが0.3以上であれば、比誘電率を低くする効果が高い。厚みの比率A/Bが3.0以下であれば、線膨張係数が小さくなる。
【0101】
積層体において層Aと熱硬化性樹脂Hを含む層Bとが直接積層されている場合、それら層Aと層Bとの界面の剥離強度は、5N/10mm以上が好ましく、7N/10mm以上がより好ましく、8N/10mm以上がさらに好ましい。
【0102】
熱硬化性樹脂Hを含む層Bを含む積層体の比誘電率(20GHz)は、3.6未満が好ましく、3.55以下がより好ましく、3.20以下が特に好ましい。積層体の比誘電率(20GHz)が低いほど、該積層体をプリント基板の基板に用いた場合に優れた伝送効率が得られる。
【0103】
熱硬化性樹脂Hを含む層Bを含む積層体の誘電正接(20GHz)は、0.01以下が好ましく、0.007以下がより好ましく、0.005以下が特に好ましい。積層体の比誘電率(20GHz)が低いほど、該積層体をプリント基板の基板に用いた場合に優れた伝送効率が得られる。
【0104】
好ましい積層体としては、層Bが熱硬化性樹脂Hを含み、層Aと層Bが直接積層された構成を含み、直接積層された層Aと層Bとの界面の剥離強度が5N/10mm以上であり、かつ比誘電率(20GHz)が3.6未満である積層体が挙げられる。この場合、層Aの層Bと接する表面における酸素原子の組成比が、炭素原子、フッ素原子、酸素原子の3種類の元素の合計に対して1%以上であり、かつフッ素原子の組成比が25%以上65%以下であることがより好ましい。
【0105】
本発明の積層体の具体例としては、例えば、図1に例示した積層体1が挙げられる。積層体1は、層A10と、層A10の厚み方向の第1の表面10a側に積層された層B12とを備えている。
積層体1では、層A10の層B12と反対側の第2の表面10bのRa(AFM)を3.0nm以上とする。これにより、積層体1の層A10の第2の表面10b側に積層対象物を積層した際に優れた層間密着性が得られる。
【0106】
積層体1では、さらに層A10の第1の表面10aのRa(AFM)を3.0nm以上としてもよい。層B12がガラス部材または樹脂フィルムの場合は、層A10と層B12の層間密着性の点から、第1の表面10aのRa(AFM)を3.0nm以上とすることが好ましい。層B12が金属層の場合は、第1の表面10aのRa(AFM)が3.0nm以上でなくても層A10と層B12との間で充分な層間密着性が得られる。
【0107】
本発明の積層体は、図2に例示した積層体2であってもよい。積層体2は、第1の層A20と、第1の層A20の厚み方向の第1の表面20a側に積層された層B22と、層B22の第1の層A20の反対側に積層された第2の層A24とを備えている。
【0108】
積層体2では、第1の層A20の層B22とは反対側の第2の表面20bのRa(AFM)を3.0m以上とし、さらに第2の層A24の層B22とは反対側の第2の表面24bのRa(AFM)を3.0nm以上とする。これにより、積層体2の第1の層A20の第2の表面20b側、および第2の層A24の第2の表面24b側に積層対象物を積層した際に優れた層間密着性が得られる。なお、積層体2では、さらに第1の層A20の第1の表面20aおよび第2の層A24の第1の表面24aのRa(AFM)を3.0nm以上としてもよい。
【0109】
なお、前記積層体の具体例において、「Ra(AFM)を3.0nm以上」を、「Ra(AFM)を3.0nm以上かつRz(AFM)を80.0nm以上」に置き換えた場合も同様である。
【0110】
本発明は、種々の態様の積層体を提供できる。本発明は、融点が260~380℃のフッ素樹脂を含む層Aと、前記層A以外の他の基材からなる層Bとを有する積層体であって、前記層Aと前記層Bが直接積層された構成を含み、直接積層された前記層Aと前記層Bとの界面の剥離強度が5N/10mm以上であり、かつ比誘電率(20GHz)が3.6未満である、積層体も提供できる。この場合の前記層Bを形成する材料は、前記フッ素樹脂の融点以下の温度で前記層Bを形成する熱硬化性樹脂または後述するプリプレグであるのが好ましく、後述するプリプレグであるのが特に好ましい。かかる積層体は、フッ素樹脂の融点以下の低温領域で得られるため、比誘電率等の電気特性に優れる。
【0111】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体の製造方法としては、フッ素樹脂Fを含む層Aと層Bとを有する積層体を製造した後、得られた積層体の層A表面を、Ra(AFM)が3.0nm以上となるように表面処理する方法が好ましい。
【0112】
層Aと層Bとを有する積層体の製造方法としては、フッ素樹脂Fを含む樹脂パウダーを層Bとなる基材の表面に塗布して、前記層Bとなる基材上に層Aを形成する方法が挙げられる。この場合、前記した分散液または液状組成物を用いてグラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法等で塗布し、製膜する方法でもよく、静電塗装法等により樹脂パウダーを層Bとなる基材の表面に粉体塗装してもよい。
積層体の層A表面をRa(AFM)が3.0nm以上となるように表面処理する方法としては、フッ素樹脂フィルムの製造方法で説明した方法と同じ方法が挙げられる。
また、前記フッ素樹脂Fを含むフッ素樹脂フィルムであって、その表面のRa(AFM)が3.0nm以上ではないフッ素樹脂フィルム(表面のRa(AFM)が異なる点で前記本発明のフッ素樹脂フィルムではないもの)を層Bとなる基材と積層して積層体を製造し、得られた積層体の該フッ素樹脂フィルム表面をRa(AFM)が3.0nm以上となるように表面処理することにより、本発明の積層体を製造することもできる。
【0113】
なお、本発明のフッ素樹脂フィルムを層Bとなる基材に積層して、積層体としてもよい。例えば、少なくとも一方の表面のRa(AFM)が3.0nm以上のフッ素樹脂フィルムを、そのRa(AFM)が3.0nm以上の表面が積層体の表面となるように層Bとなる基材と積層して積層体を得る方法が挙げられる。また、一方の表面のみRa(AFM)を3.0nm以上としたフッ素樹脂フィルムの該表面側に層Bとなる基材を積層した後、得られた積層体のフッ素樹脂F層表面をRa(AFM)が3.0nm以上となるように表面処理してもよい。
【0114】
なお、前記積層体の製造方法において、「Ra(AFM)が3.0nm以上」を、「Ra(AFM)が3.0nm以上かつRz(AFM)が80.0nm以上」に置き換えた場合も同様である。
【0115】
層Bとして銅箔層を有する積層体は、基材として銅箔を使用し、銅箔の片面に液状組成物を塗布して液状組成物の膜を形成し、次いで加熱乾燥により液状媒体を除去し、引き続き加熱して樹脂パウダーを溶融し、その後冷却して未溶融粒子のない均一な樹脂層である層Aを形成して製造することができる。前記のように銅箔の両面に樹脂層を形成することもできる。
【0116】
使用する銅箔のJIS C6515:1998(IEC61249-5-1:1995)に基づき測定される表面粗さの最大高さRzは、1nm以上、2.5μm以下が好ましい。電気特性を考慮すると表面粗さの小さい銅箔が好ましい。本発明のフッ素樹脂フィルムは、表面粗さの小さい銅箔にも積層できる。
【0117】
液状組成物の膜の形成、加熱乾燥、樹脂パウダーの溶融は前記条件で行うことができる。例えば、乾燥後の加熱を熱ロールによる加熱で行う場合、乾燥後の未溶融樹脂層と銅箔との積層体を耐熱ロールに接触させ、遠赤外線を照射しながら搬送して、未溶融樹脂層を溶融した樹脂層とすることができる。ロールの搬送速度は特に限定されないが、例えば4.7mの長さの加熱炉を用いた場合は4.7m/minから0.31m/minが好ましい。さらに短時間で膜全体を効率よく加熱するために、2.45mの長さの加熱炉を用いた場合は4.7m/minから2.45m/minとすることができる。
加熱温度は特に限定されないが、加熱炉の滞在時間を1分とすると330℃から380℃が好ましく、さらに好ましくは350℃から370℃である。滞在時間を長くすることで温度を下げることもできる。
【0118】
製造される積層体の層Aの厚みは15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下が特に好ましい。ただし、電気特性の点では、1μm以上が好ましい。前記範囲の上限以下であれば樹脂層(層A)/銅箔(層B)の非対称な層構成の場合でも、反りを抑制することができる。積層体の反り率は25%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、7%以下が特に好ましい。反り率が上限以下であれば、プリント基板に加工する際の成形プロセスにおいてハンドリング性に優れ、かつプリント基板としての誘電特性に優れる。
また、シリカやPTFE等のフィラーを含む液状組成物やフッ素樹脂FとしてTFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体、PCTFE等のフッ素樹脂(ただし、含フッ素重合体F11を除く。)を含む液状組成物を用いることで、反りをより一層抑制することができる。前記フィラーを含む積層体の層Aの厚みは200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。ただし、電気特性の点では、1μm以上が好ましい。
【0119】
本発明のフッ素樹脂フィルムを層Bとなる基材の表面に積層する方法としては、熱プレスによる方法が挙げられる。フッ素樹脂フィルムを層Bとなる基材の表面に積層する際の熱プレスの温度は、フッ素樹脂Fの融点以下が好ましく、140~250℃がより好ましい。フッ素樹脂Fの融点よりも低い、層Bとなる基材の融点での熱プレスが可能となる。
ただし、液晶ポリマーのようにフッ素樹脂Fよりも融点が高い層Bとなる基材の場合は、層Bとなる基材の融点よりも5度以上低い温度での熱プレスも可能である。
【0120】
[熱プレス積層体の製造方法]
本発明の熱プレス積層体の製造方法は、本発明のフッ素樹脂フィルム、または本発明の積層体のRa(AFM)が3.0nm以上の表面に、積層対象物を熱プレスにより貼り合わせる方法である。
なお、前記「Ra(AFM)が3.0nm以上の表面に」を、「Ra(AFM)が3.0nm以上かつRz(AFM)が80.0nm以上の表面に」に置き換えた場合も同様に熱プレス積層体を製造できる。
【0121】
積層対象物としては、例えば、プリプレグ、ガラス部材、セラミックス部材が挙げられる。なかでも、本発明は、積層対象物としてプリプレグを用いる場合に有効である。
プリプレグとしては、強化繊維シートにマトリックス樹脂が含浸されたものが挙げられる。
【0122】
強化繊維シートとしては、複数の強化繊維からなる強化繊維束、該強化繊維束を織成してなるクロス、複数の強化繊維が一方向に引き揃えられた一方向性強化繊維束、該一方向性強化繊維束から構成された一方向性クロス、これらを組み合わせたもの、複数の強化繊維束を積み重ねたもの等が挙げられる。
強化繊維としては、長さが10mm以上の連続した長繊維が好ましい。強化繊維は、強化繊維シートの長さ方向の全長または幅方向の全幅にわたり連続している必要はなく、途中で分断されていてもよい。
【0123】
強化繊維としては、無機繊維、金属繊維、有機繊維等が挙げられる。
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維等が挙げられる。
金属繊維としては、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維等が挙げられる。
【0124】
強化繊維は、表面処理が施されているものであってもよい。
強化繊維は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プリント基板用途では、強化繊維としては、ガラス繊維が好ましい。
【0125】
マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。本発明は、マトリックス樹脂として、融点が280℃以下の熱可塑性樹脂または熱硬化温度が280℃以下の熱硬化性樹脂を用いる場合に特に有効である。マトリックス樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プリプレグのマトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテルおよびポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0126】
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、液状組成物の説明で挙げた熱硬化性樹脂と同じものが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル、ポリブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン等)、スチレン系樹脂(ポリスチレン等)、ポリカーボネート、ポリイミド(芳香族ポリイミド等)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン(ポリエーテルスルホン等)、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、PTFE、TFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体、PCTFE等のフッ素樹脂等が挙げられる。
【0127】
マトリックス樹脂が、熱硬化性樹脂である場合、熱硬化性樹脂の硬化温度はフッ素樹脂の融点以下であるのが好ましく、120~300℃が特に好ましい。
プリプレグの厚みは、10μm以上5mmが好ましく、30μm以上3mm以下がより好ましく、80μm以上1mm以下が特に好ましい。ただし、プリプレグの厚みは基板により適宜設定できる。
【0128】
プリプレグとしては、以下の商品名のものが挙げられる。
パナソニック社製のメグトロン(MEGTRON) GXシリーズのR-G520、R-1410W、R-1410A、R-1410E、MEGTRONシリーズのR-1410W、R-1410A、R-1410E、MEGTRONシリーズのR-5680、R-5680(J)、R-5680(NJ)、R-5670、R-5670(N)、R-5620S、R-5620、R-5630、R-1570、HIPERシリーズノR-1650V、R-1650D、R-1650M、R-1650E、R-5610、CR-5680、CR-5680(N)、CR-5680(J)。
日立化成工業社製のGEA-770G、GEA-705G、GEA-700G、GEA-679FG、GEA-679F(R)、GEA-78G、TD-002、GEA-75G、GEA-67、GEA-67G。
住友ベークライト社製のEI-6765、panasonic社製のR-5785。
三菱ガス化学社製のGEPL-190T、GEPL-230T、GHPL-830X TypeA、GHPL-830NS、GHPL-830NSR、GHPL-830NSF。
DOOSAN CORPORATION社製のGEPL-190T、GEPL-230T、GHPL-830X TypeA、GHPL-830NS、GHPL-830NSR、GHPL-830NSF。
GUANDONG Shengyi SCI. TECH社製のSP120N、S1151G、S1151GB、S1170G、S1170GB、S1150G、S1150GB、S1140F、S1140FB、S7045G、SP175M、S1190、S1190B、S1170、S0701、S1141KF、S0401KF、S1000-2M、S1000-2MB、S1000-2、S1000-2B、S1000、S1000B、S1000H、S1000HB、S7136H、S7439、S7439B。
SHANGHAI NANYA社製のNY1135、NY1140、NY1150、NY1170、NY2150、NY2170、NY9135、NY9140、NY9600、NY9250、NY9140 HF、NY6200、NY6150、NY3170 LK、NY6300、NY3170M、NY6200、NY3150 HF CTI600、NY3170HF、NY3150D、NY3150HF、NY2170H、NY2170、NY2150、NY2140、NY1600、NY1140、NY9815HF、NY9810HF、NY9815、NY9810。
ITEQ CORPORATION社製のIT-180GN、IT-180I、IT-180A、IT-189、IT-180、IT-258GA3、IT-158、IT-150GN、IT-140、IT-150GS、IT-150G、IT-168G1、IT-168G2、IT-170G、IT-170GRA1、IT-958G、IT-200LK、IT-200D、IT-150DA、IT-170GLE、IT-968G、IT-968G SE、IT-968、IT-968 SE。
NANYA PLASTICS社製のUV BLOCK FR-4-86、NP-140 TL/B、NP-140M TL/B、NP-150 R/TL/B、NP-170
R/TL/B、NP- 180 R/TL/B、NPG R/TL/B、NPG-151、NPG-150N、NPG-150LKHD、NPG-170N、NPG-170 R/TL/B、NPG-171、NPG-170D R/TL/B、NPG-180ID/B、NPG-180IF/B、NPG-180IN/B、NPG-180INBK/B(BP)、NPG-186、NPG-200R/TL、NPG-200WT、FR-4-86 PY、FR-140TL PY、NPG-PY R/TL、CEM-3-92、CEM-3-92PY、CEM-3-98、CEM-3-01PY、CEM-3-01HC、CEM-3-09、CEM-3-09HT、CEM-3-10、NP-LDII、NP-LDIII、NP-175R/TL/B、NP-155F R/TL/B、NP-175F R/TL/B、NP-175F BH、NP-175FM BH。
TAIWAN UNION TECHNOLOGY社製のULVP series、LDP series。
ISOLA GROUP社製のA11、R406N、P25N、TerraGreen、I-Tera MT40、IS680 AG、IS680、Astra MT77、G200、DE104、FR408、ED130UV、FR406、IS410、FR402、FR406N、IS420、IS620i、370TURBO、254、I-Speed、FR-408HR、IS415、370HR。
PARK ELECTROCHEMICAL社製のNY9000、NX9000、NL9000、NH9000、N9000-13 RF、N8000Q、N8000、N7000-1、N7000-2 HTスラッシュ -3、N7000-3、N5000、N5000-30、N-5000-32、N4000-12、N4000-12SI、N4000-13、N4000-13SI、N4000-13SI、N4000-13EP、N4000-13EP SI、N4350-13RF、N4380-13RF、N4800-20、N4800-20SI、Meteorwave1000、Meteorwave2000、Meteorwave3000、Meteorwave4000、Mercurywave9350、N4000-6、N4000-6FC、N4000-7、N4000-7SI、N4000-11、N4000-29。
ROGERS CORPORATION社製のRO4450B、RO4450F、CLTE-P、3001 Bonding Film、2929 Bondply、CuClad 6700 Bonding Film、ULTRALAM 3908 Bondply、CuClad 6250 Bonding Film。
利昌工業社製のES-3329、ES-3317B、ES-3346、ES-3308S、ES-3310A、ES-3306S、ES-3350、ES-3352、ES-3660、ES-3351S、ES-3551S、ES-3382S、ES-3940、ES-3960V、ES-3960C、ES-3753、ES-3305、ES-3615、ES-3306S、ES-3506S、ES-3308S、ES-3317B、ES-3615。
【0129】
熱プレス積層体の構成は、特に限定されないが、金属層(層B)/樹脂層(層A)/積層対象物/樹脂層(層A)/金属層(層B)、金属層/積層対象物/樹脂層(フッ素樹脂フィルム)/積層対象物/金属層等が挙げられる。例えば、フッ素樹脂F(例えば、フッ素樹脂F1単独、もしくはフッ素樹脂F1およびフッ素樹脂F2の混合物)を含む樹脂層と、フッ素樹脂F(例えば、フッ素樹脂F1単独、フッ素樹脂F1およびフッ素樹脂F2の混合物、もしくはフッ素樹脂F2単独)を含む積層対象物を含む、金属層(層B)/樹脂層(層A)/積層対象物/樹脂層(層A)/金属層(層B)の構成等が挙げられ、さらにそれぞれの層にガラスクロスやフィラーを含んでいてもよい。
前記樹脂層の厚みは、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下が特に好ましい。ただし、電気特性の点では、1μm以上が好ましい。また、シリカやPTFE等のフィラーを含む液状組成物やフッ素樹脂FとしてTFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等の他のフッ素樹脂を含む液状組成物を用いることで、反りをより一層抑制することができる。
前記樹脂層がフィラーを含む熱プレス積層体の前記樹脂層の厚みは、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。ただし、電気特性の点では、1μm以上が好ましい。
前記積層対象物の厚みは、0.1~500μmが好ましく、0.3~300μmがより好ましく、0.5~150μmがさらに好ましい。前記範囲の上限以下であれば、穴開け加工性が良好であり誘電特性が優れる。
【0130】
フッ素樹脂フィルムまたは積層体とプリプレグとの熱プレスの温度は、フッ素樹脂Fの融点以下が好ましく、120~300℃がより好ましく、140~240℃がさらに好ましく、160~220℃がさらに好ましい。熱プレス温度が前記範囲内であれば、積層対象物の熱劣化を抑制しつつ、フッ素樹脂フィルムまたは積層体と積層対象物とを優れた層間密着性で積層できる。
【0131】
また積層対象物が熱可塑性樹脂からなり、前記熱可塑性樹脂中にポリイミド(芳香族ポリイミド等。)、液晶ポリエステル、PTFE、TFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレンのいずれかが50質量%以上含まれる場合、もしくは積層対象物に前記熱可塑性樹脂が50質量%以上含まれる場合、熱プレスの温度は、310~400℃が好ましく、320~380℃がより好ましく、330~370℃がさらに好ましい。熱プレス温度が前記範囲内であれば、積層対象物の熱劣化を抑制しつつ、フッ素樹脂フィルムまたは積層体と積層対象物とを優れた層間密着性で積層できる。
【0132】
熱プレス積層体におけるフッ素樹脂フィルムまたは積層体の層Aにはフィラー、強化繊維が含まれてもよい。また積層対象物は、フィラー、強化繊維、含フッ素重合体F11を含んでいてもよい。
【0133】
熱プレス積層体のフッ素樹脂フィルムまたは積層体と積層対象物との界面の剥離強度は、5N/10mm以上が好ましく、7N/10mm以上がより好ましく、8N/10mm以上がさらに好ましい。
【0134】
層Bに熱硬化性樹脂Hを用いた場合の熱プレス積層体の比誘電率(20GHz)は、3.6未満が好ましく、3.55以下がより好ましく、3.20以下が特に好ましい。熱プレス積層体の比誘電率(20GHz)が低いほど、該熱プレス積層体をプリント基板の基板に用いた場合に優れた伝送効率が得られる。
【0135】
層Bに熱硬化性樹脂Hを用いた場合の熱プレス積層体の誘電正接(20GHz)は、0.01以下が好ましく、0.007以下がより好ましく、0.005以下が特に好ましい。熱プレス積層体の比誘電率(20GHz)が低いほど、該熱プレス積層体をプリント基板の基板に用いた場合に優れた伝送効率が得られる。
【0136】
熱プレス積層体の伝送損失評価で得られるS-parameter(90GHz)値より、フッ素樹脂フィルムを含まない積層体を1としたときに、フッ素樹脂フィルムを含む積層体の変化率は、3%以上が好ましく、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。該熱プレス積層体をプリント基板の基板に用いた場合に優れた伝送効率が得られる。
【0137】
フッ素樹脂Fを含むフッ素樹脂フィルムの表面をRa(AFM)が3.0nm以上となるように表面処理した場合、当該表面の濡れ張力は30mN/以上となる。そのため、フッ素樹脂Fを含むフッ素樹脂フィルムを表面処理し、厚み方向の少なくとも一方の表面の濡れ張力が30mN/m以上であるフッ素樹脂フィルムを得て、得られたフッ素樹脂フィルムの濡れ張力が30mN/m以上の表面に、積層対象物をフッ素樹脂Fの融点以下の温度で熱プレスにより貼り合わせることでも、同様に層間密着性に優れた熱プレス積層体を製造できる。
【0138】
[プリント基板の製造方法]
本発明のプリント基板の製造方法は、本発明の熱プレス積層体の製造方法により、層Bが金属層である熱プレス積層体を製造し、前記金属層をエッチングしてパターン回路を形成してプリント基板を得る方法である。金属層のエッチングは、公知の方法を採用できる。
【0139】
本発明のプリント基板の製造方法においては、金属層をエッチングしてパターン回路を形成した後に、該パターン回路上に層間絶縁膜を形成し、該層間絶縁膜上にさらにパターン回路を形成してもよい。層間絶縁膜は、例えば、前記した液状組成物により形成できる。具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。任意の積層構造の金属積層板の金属層をエッチングしてパターン回路を形成した後、液状組成物を該パターン回路上に塗布し、乾燥した後に加熱して層間絶縁膜とする。次いで、前記層間絶縁膜上に蒸着等で金属層を形成し、エッチングしてさらなるパターン回路を形成する。
【0140】
プリント基板の製造においては、パターン回路上にソルダーレジストを積層してもよい。ソルダーレジストは、例えば、前記した液状組成物により形成できる。具体的には、液状組成物をパターン回路上に塗布し、乾燥した後に加熱してソルダーレジストを形成してもよい。
【0141】
プリント基板の製造においては、カバーレイフィルムを積層してもよい。カバーレイフィルムは、典型的には、基材フィルムと、その表面に形成された接着剤層とから構成され、接着剤層側の面がプリント基板に貼り合わされる。カバーレイフィルムの基材フィルムとしては、例えば、本発明のフッ素樹脂フィルムを使用できる。また、金属層をエッチングして形成したパターン回路上に、本発明のフッ素樹脂フィルムを用いた層間絶縁膜(接着層)を形成し、カバーレイフィルムとしてポリイミドフィルムを積層してもよい。
【0142】
本発明の製造方法で得られるプリント基板は、高周波特性が必要とされるレーダー、ネットワークのルーター、バックプレーン、無線インフラ等の電子機器用基板や自動車用各種センサ用基板、エンジンマネージメントセンサ用基板として有用であり、特にミリ波帯域の伝送損失低減を目的とする用途に好適である。
【0143】
以上説明したように、本発明では、融点が260~380℃という耐熱性に優れたフッ素樹脂Fを用いる。また、フッ素樹脂フィルムまたは積層体の層Aの表面のRa(AFM)が3.0nm以上とするため、該表面に接着性フッ素樹脂の融点以下の温度の熱プレスで積層対象物を積層しても、優れた層間密着性が得られる。
【0144】
本発明において、フッ素樹脂フィルムまたは積層体の層AのRa(AFM)が3.0nm以上の表面と積層対象物との層間密着性が優れる要因としては、必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。Ra(AFM)が3.0nm以上であることで、接着界面でアンカー効果が得られるうえ、フッ素樹脂フィルムまたは層Aの積層対象物との接着面の表面積が増大し、それに伴って接着性官能基の密度が増加するためであると考えられる。
なお、「Ra(AFM)が3.0nm以上」を、「Ra(AFM)が3.0nm以上かつRz(AFM)が80.0nm以上」に置き換えた場合も同様である。
【実施例
【0145】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[測定方法]
(1)含フッ素重合体の共重合組成
NAHに由来する単位の割合(モル%)は、含フッ素重合体のプレス成型品(厚み200μmのフィルム)の赤外吸収スペクトルにおいて1778cm-1に現れる前記単位の吸収ピークの吸光度をNAHのモル吸光係数20810mol-1・l・cm-1を用いて換算して求めた。
他の単位の割合は、溶融NMR分析およびフッ素含有量分析により求めた。
【0146】
(2)含フッ素重合体の融点(℃)
セイコー電子社製の示差走査熱量計(DSC装置)を用い、含フッ素重合体を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度(℃)を融点(Tm)とした。
【0147】
(3)含フッ素重合体のMFR(g/10分)
テクノセブン社製のメルトインデクサーを用い、372℃、49N荷重下で、直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間(単位時間)に流出する含フッ素重合体の質量(g)を測定してMFRとした。
【0148】
(4)樹脂パウダーのD50およびD90
堀場製作所社製のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA-920測定器)を用い、樹脂パウダーを水中に分散させ、粒度分布を測定し、D50(μm)およびD90(μm)を算出した。
【0149】
(5)疎充填嵩密度および密充填嵩密度
樹脂パウダーの疎充填嵩密度、密充填嵩密度は、国際公開第2016/017801号の[0117]、[0118]に記載の方法を用いて測定した。
【0150】
(6)比誘電率および誘電正接
製造例1の材料の比誘電率(1MHz)は、ASTM D 150準拠の変成器ブリッジ法にて、温度を23℃±2℃の範囲内、相対湿度を50%±5%RHの範囲内に保持した試験環境において、絶縁破壊試験装置(YSY-243-100RHO(ヤマヨ試験機社製))にて、1MHzで求めた。
他材料の比誘電率(20GHz)および誘電正接(20GHz)は、QWED社のSPDR法により23℃±2℃、50±5%RHの範囲内の環境下にて周波数20GHzで求めた。
【0151】
(7)算術平均粗さRa
JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づいて、片面銅張積層体の層(A-1)の表面のRaを測定した。Raを求める際の、粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。
【0152】
(8)層(A-1)とプリプレグとの界面の剥離強度
矩形状(長さ100mm、幅10mm)に切り出した熱プレス積層体の長さ方向の一端から50mmの位置まで層(A-1)とプリプレグとを剥離し同位置を中央にして、引張り速度50mm/分で90度剥離した際の、最大荷重を剥離強度(N/10mm)とした。剥離強度が大きいほど、層(A-1)とプリプレグとの層間密着性が優れていることを示す。
【0153】
(9)Ra(AFM)及びRz(AFM)
Oxford Instruments社製のAFMを用いて、片面銅張積層体の層(A-1)の1μm範囲の表面のRa(AFM)とRz(AFM)を測定した。測定条件は下記である。
プローブ:AC160TS-C3(先端R <7nm、バネ定数 26N/m)
測定モード:AC-Air
Scan Rate:1Hz
【0154】
(10)フッ素樹脂フィルムの濡れ張力
濡れ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を使用し、JIS K 6768:1999に従って測定した。
【0155】
(11)熱プレス積層体の伝送損失評価
熱プレス積層体に伝送線路を形成してプリント基板とし2GHz~90GHzの信号をベクトルネットワークアナライザー(E8361A:キーサイトテクノロジー社製)とGSGの高周波コンタクトプローブ(250umピッチ;Picoprobe社製)を用いて高周波信号の伝送特性を評価した。伝送線路は背面導体付のコプレナー導波路(Conductor Backed Co-Planar Waveguide)を用いた。伝送線路の特性インピーダンスは50Ωとし、信号ラインと同一面にあるグラウンド導体との間隙幅は0.2mmとし、信号線幅を、FR-4基板と層(A-1)(フッ素樹脂フィルム)との積層基板では0.39mm、FR-4基板では0.36mmとした。プリント基板の導体である銅の表面には金フラッシュめっきを施した。校正方法はTRL校正(Thru-Reflect-Line校正)を用いた。なお、線路の長さは12.5mmとし、単位長さあたりの伝送損失を測定した。
伝送損失測定結果においては、縦軸は高周波電子回路や高周波電子部品の特性を表す回路網パラメータ(S-parameter)で示し、横軸は周波数を示した。
【0156】
(12)フッ素樹脂フィルムの表面組成比の評価
表面をXPS(X線光電子分光法)で分析して測定した。
装置:ulvac-φ 社製Quantera-SXM、
ビーム径:100μmφ、
測定領域:100×100μm(エリア分析)、
検出角:45°。
<高分解能スペクトル取得条件>
パスエネルギー:224eV、
エネルギーステップ:0.4eV(定量モード)。
【0157】
(13)フッ素樹脂フィルム表面の水接触角
協和界面科学社製DMo-701を用い、作成液量3μL、繰り返し回数:5回の条件で接触角を測定し、平均値を算出した。
【0158】
[製造例1]
TFE(テトラフルオロエチレン)、NAH(無水ハイミック酸)およびPPVE(CF=CFO(CFF)を用いて、国際公開第2016/017801号の[0123]に記載の手順で含フッ素重合体X-1を製造した。
含フッ素重合体X-1の共重合組成は、NAHに由来する単位/TFEに由来する単位/PPVEに由来する単位=0.1/97.9/2.0(モル%)であった。含フッ素重合体X-1は、融点が300℃であり、比誘電率(1MHz)が2.1であり、溶融流れ温度が17.6g/10分であり、300℃における溶融粘度が10Pa・sであり、平均粒径が1554μmであった。
【0159】
次いで、ジェットミル(セイシン企業社製、シングルトラックジェットミル FS-4型)を用い、粉砕圧力0.5MPa、処理速度1kg/hrの条件で、含フッ素重合体X-1を粉砕して樹脂パウダー(P-1)を得た。樹脂パウダー(P-1)のD50は2.58μmであり、D90は7.1μmであった。樹脂パウダー(P-1)の疎充填嵩密度は0.278g/mLであり、密充填嵩密度は0.328g/mLであった。
【0160】
[実施例1]
樹脂パウダー(P-1)120g、ノニオン性界面活性剤(ネオス社製、フタージェント710FL)12g、およびメチルエチルケトン234gを横型ボールミルポットに投入し、15mm径のジルコニアボールにて分散を行い、分散液(C-1)を得た。分散液(C-1)を厚み12μmの銅箔上(福田金属箔粉工業社製、CF-T4X-SV)に塗布し、窒素雰囲気下において100℃で15分乾燥し、350℃で15分加熱した後、徐冷することで厚み5μmの層(A-1)を有する片面銅張積層体を得た。
得られた片面銅張積層体の層(A-1)の表面をプラズマ処理した。プラズマ処理装置としてはNORDSON MARCH社のAP-1000を用いた。プラズマ処理条件としては、AP-1000のRF出力を300W、電極間ギャップを2インチ、導入ガスの種類をアルゴン(Ar)、導入ガス流量を50cm/分、圧力を13Pa、処理時間を1分とした。プラズマ処理後の層(A-1)の表面の算術平均粗さRaは2.5μmであった。また、Ra(AFM)は14.5nm、Rz(AFM)は195nmであった。片面銅張積層体の層(A-1)のプラズマ処理した表面の濡れ張力は54mN/mであった。また、プラズマ処理前の層(A-1)の表面の濡れ張力は22.6mN/m以下であった。
なお、プラズマ処理後の片面銅張積層体の銅箔を塩酸処理して除去して、そのまま層(A-1)からなる単独フィルムが得られることを確認した。
表面処理を実施してから72時間以内の片面銅箔積層体の層(A-1)側に、プリプレグとしてFR-4シリーズ(日立化成社製、強化繊維:ガラス繊維、マトリックス樹脂:エポキシ樹脂、品名:GEA-67N 0.2t(HAN)、厚み:0.2mm、硬化温度185℃未満)を重ね、プレス温度185℃、プレス圧力3.0MPa、プレス時間60分の条件で真空熱プレスを行って熱プレス積層体を得た。比誘電率(20GHz)は4.32であり、誘電正接(20GHz)は0.01568であった。なお、層(A-1)を有しない場合(銅箔とプリプレグが直接接する場合、以下同様)、比誘電率(20GHz)は4.56であり、誘電正接(20GHz)は0.01574であった。
なお、今回はプラズマ処理実施後72時間以内にプリプレグと積層したが、プラズマ処理の効果は1年継続する。
【0161】
[実施例2~6]
プラズマ処理条件を表1に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして片面銅張積層体を作製し、該片面銅張積層体を用いる以外は実施例1と同様にして熱プレス積層体を得た。
【0162】
[実施例7]
実施例1と同様にして片面銅張積層板を作製した後、プリプレグをES-3317B(利晶工業社製、マトリックス樹脂:ポリフェニレンエーテル樹脂、340mm×340mm、厚み0.1mm、硬化温度180℃未満)に代え、プレス温度180℃、プレス圧力5.0MPa、プレス時間60分の条件で熱プレス積層体を得た。比誘電率(20GHz)は3.57であり、誘電正接(20GHz)は0.009であった。
なお、層(A-1)を有しない場合の剥離強度は5.2N/10mmであった。比誘電率(20GHz)は3.72であり、誘電正接(20GHz)は0.009であった。
【0163】
[実施例8]
実施例1と同様にして片面銅張積層板を作製した後、プリプレグをクラレ社製LCPフィルム(CTZ-50)に変え、プレス温度310℃、プレス圧力4.0MPa、プレス時間10分の条件で熱プレス積層体を得た。
なお、層(A-1)を有しない場合の剥離強度は1.9N/10mmであった。
【0164】
[実施例9]
実施例1と同様にして片面銅張積層板を作製した後、プリプレグをRO4450F(ロジャース社製、品名:RO4450F、厚み:0.101mm、硬化温度180℃未満)に代え、プレス温度を180℃、プレス圧力3.5MPa、プレス時間60分の条件で熱プレス積層体を得た。
なお、層(A-1)を有しない場合の剥離強度は2.6N/10mmであった。
【0165】
[実施例10]
実施例1と同様にして片面銅張積層板を作製した後、プリプレグをRO4450B(ロジャース社製、品名:RO4450B、厚み:0.101mm、硬化温度180℃未満)に変え、プレス温度を180℃、プレス圧力3.5MPa、プレス時間60分の条件で熱プレス積層体を得た。
なお、層(A-1)を有しない場合の剥離強度は3.4N/10mmであった。
【0166】
[実施例11]
銅箔として三井金属社製HS1-VSPを用いた以外は実施例1と同様にして熱プレス積層体を得た。
比誘電率(20GHz)は4.51であり、誘電正接(20GHz)は0.01511であった。なお、層(A-1)を有しない場合、比誘電率(20GHz)は4.56であり、誘電正接(20GHz)は0.01611であった。
【0167】
[実施例12]
銅箔として三井金属社製HS1-VSPを用いた以外は実施例7と同様にして熱プレス積層体を得た。
【0168】
[比較例1]
片面銅張積層体の層(A-1)の表面にプラズマ処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして熱プレス積層体を得た。
【0169】
各例のプラズマ処理条件、ならびにプラズマ処理後の層(A-1)の表面の算術平均粗さRa、Ra(AFM)、Rz(AFM)、および層(A-1)とプリプレグからなる層の間の剥離強度の測定結果を表1に示す。
【0170】
【表1】
【0171】
表1に示すように、層(A-1)の表面のRa(AFM)が3.0nm以上の実施例1、2、5~12は、比較例1に比べて、層(A-1)とプリプレグからなる層の界面の剥離強度が高く、層間密着性に優れていた。
【0172】
[実施例13]
実施例1で記載したプラズマ処理後の片面銅張積層体を2枚用意し、FR-4の両面それぞれに前記片面銅張積層体を層(A-1)側で直接重ね、実施例1と同様に真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。得られた熱プレス積層体(両面銅張積層体)に回路を形成して測定を行った。熱プレス積層体の伝送損失評価結果を図3に示す。
【0173】
[実施例14]
実施例1で記載したプラズマ処理後の片面銅張積層体を2枚用意し、R-5680(NJ)(厚み0.1mm)の両面それぞれに前記片面銅張積層体を層(A-1)側で重ね(R-5680(NJ)と層(A-1)が直接接する)、195℃、75分、3.5MPaで処理した以外は、実施例1と同様に真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。得られた熱プレス積層体(両面銅張積層体)に回路を形成して測定を行った。熱プレス積層体の伝送損失評価結果を図4に示す。
【0174】
[実施例15]
実施例1で記載したプラズマ処理後の片面銅張積層体を2枚用意し、R-5680(J)(厚み0.1mm)の両面それぞれに前記片面銅張積層体を層(A-1)側で重ね(R-5680(J)と層(A-1)が直接接する)、195℃、75分、3.5MPaで処理した以外は、実施例1と同様に真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。得られた熱プレス積層体(両面銅張積層体)に回路を形成して測定を行った。熱プレス積層体の伝送損失評価結果を図5に示す。
【0175】
[比較例2]
FR-4の両面に銅箔を直接重ね、実施例1と同様に真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。その熱プレス積層体(両面銅張積層体)に回路を形成して測定を行った。熱プレス積層体の伝送損失評価を図3に示す。
【0176】
[比較例3]
R-5680(NJ)の両面に銅箔を直接重ね、実施例1と同様に真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。その熱プレス積層体(両面銅張積層体)に回路を形成して測定を行った。熱プレス積層体の伝送損失評価を図4に示す。
【0177】
[比較例4]
R-5680(J)の両面に層銅箔を直接重ね、実施例1と同様に真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。その熱プレス積層体(両面銅張積層体)に回路を形成して測定を行った。熱プレス積層体の伝送損失評価を図5に示す。
【0178】
実施例13~15および比較例2~4から、層(A-1)を有する熱プレス積層体は伝送損失が低かった。
【0179】
[実施例16]
銅箔である福田金属箔粉工業社製CF-T4X-SVの表面処理側ではないシャイン面側に層(A-1)を形成する以外は、実施例1と同様にして真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。剥離強度は、10.2N/10mmであった。
なお、層(A-1)を有しない場合の剥離強度は3.5N/10mmであった。
【0180】
[実施例17]
銅箔である三井金属社製HS1-VSPの表面処理側ではないシャイン面に層(A-1)を形成する以外は、実施例7と同様にして真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。剥離強度は、11.7N/10mmだった。
なお、層(A-1)を有しない場合の剥離強度は3.5N/10mmだった。
【0181】
[実施例18]
銅箔として三井金属社製HS1-VSPを用いる以外は実施例1と同様にして片面銅張積層板を作製した後、プリプレグをメグトロン7シリーズ(panasonic社製、品名:R-5680(J)、厚み:0.101mm、硬化温度195℃未満)に代え、プレス温度195℃、プレス圧力3.5MPa、プレス時間75分の条件で真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。剥離強度は、10.0N/10mmであった。比誘電率(20GHz)は3.54であり、誘電正接(20GHz)は0.00473であった。
なお、層(A-1)を有しない場合、比誘電率(20GHz)は3.55であり、誘電正接(20GHz)は、0.0048であった。
【0182】
[実施例19]
銅箔として三井金属社製HS1-VSPを用いる以外は実施例1と同様にして片面銅張積層板を作製した後、プリプレグをメグトロン7シリーズ(panasonic社製、品名:R-5680(NJ)、厚み:0.101mm、硬化温度195℃未満)に代え、プレス温度195℃、プレス圧力3.5MPa、プレス時間60分の条件で真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。剥離強度は、11.9N/10mmであった。比誘電率(20GHz)は3.16であり、誘電正接(20GHz)は0.00270であった。
なお、層(A-1)を有しない場合、比誘電率(20GHz)は3.23であり、誘電正接(20GHz)は0.00280であった。
【0183】
[実施例20]
銅箔として三井金属社製HS1-VSPの表面処理側ではないシャイン面を用いる以外は実施例1と同様にして片面銅張積層板を作製した後、プリプレグをメグトロン7シリーズ(panasonic社製、品名:R-5680(NJ))に代え、プレス温度195℃、プレス圧力3.5MPa、プレス時間60分の条件で真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。剥離強度は、10.0N/10mmであった。比誘電率(20GHz)は3.048であり、誘電正接(20GHz)は0.00266であった。
なお、層(A-1)を有しない場合、剥離強度は、2.7N/10mmであった。比誘電率(20GHz)は3.22であり、誘電正接(20GHz)は0.00273であった。
【0184】
[実施例21]
銅箔として三井金属社製HS1-VSPを用いる以外は実施例1と同様にして片面銅張積層板を作製した後、プリプレグをFR-4に代え、プレス温度175℃、プレス圧力2.5MPa、プレス時間65分の条件で真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。剥離強度は、10.0N/10mmであった。熱プレス積層体の伝送損失評価を図6に示す。比誘電率(20GHz)は4.33であり、誘電正接(20GHz)は0.01752であった。なお、層(A-1)を有しない場合、比誘電率(20GHz)は4.51であり、誘電正接(20GHz)は0.01790であった。
【0185】
[比較例5]
R-1755Cの両面に銅箔を直接重ね、実施例1と同様に真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。その積層体に回路を形成して測定を行った。積層体の伝送損失評価を図6に示す。
【0186】
[実施例22]
銅箔として三井金属社製HS1-VSPを用いる以外は実施例1と同様にして片面銅張積層板を作製した後、プリプレグをFR-4シリーズ(品名:EI-6765、厚み:0.101mm)に代え、プレス温度175℃、プレス圧力3.5MPa、プレス時間50分の条件で真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。剥離強度は、10.7N/10mmであった。熱プレス積層体の伝送損失評価を図7に示す。比誘電率(20GHz)は3.98であり、誘電正接(20GHz)は0.01932であった。なお、層(A-1)を有しない場合、比誘電率(20GHz)は4.21であり、誘電正接(20GHz)は0.01960であった。
【0187】
[比較例6]
EI-6765の両面に層銅箔を直接重ね、実施例1と同様に真空熱プレスして熱プレス積層体を得た。その積層体に回路を形成して測定を行った。積層体の伝送損失評価を図7に示す。
【0188】
[実施例23]
真空プラズマ処理のガス種を水素70容量%と窒素30容量%の混合ガスとした以外は実施例1と同様にして片面銅張積層板を作製し、熱プレス積層板を得た。剥離強度は、11.3N/10mmであった。
【0189】
[実施例24]
真空プラズマ処理のガス種を水素35容量%、窒素15容量%、アルゴン50容量%の混合ガス(酸素濃度は1ppm以下)とした以外は実施例1と同様にして片面銅張積層体を作製し、熱プレス積層板を得た。剥離強度は、10.9N/10mmであった。
【0190】
[実施例25]
真空プラズマ処理のガス種を水素50容量%、アルゴン50容量%の混合ガス(酸素濃度は1ppm以下)とした以外は実施例1と同様にして片面銅張積層体を作製し、熱プレス積層板を得た。元素量は炭素34.5%、酸素1.3%、フッ素64.2%であった。
【0191】
[実施例26]
樹脂パウダー(P-1)を市販のPFAであるP-63B(旭硝子社製、融点310℃)に代えた以外は実施例1と同様にして熱プレス積層体を得た。
【0192】
[比較例7]
プラズマ処理を施さなかった以外は実施例26と同様にして熱プレス積層体を得た。
【0193】
実施例2、5、6、23、24、25、26および比較例1、7における、層(A-1)(フッ素樹脂フィルム)のプラズマ処理面の元素分析結果、および、濡れ張力、水接触角、剥離強度の測定結果を表2に示す。
【0194】
【表2】
【0195】
[実施例27]
コア材(パナソニック社製、品名:R-5776、340mm×340mm、厚み0.6mm)の銅箔を剥離した上で、その両面にプリプレグであるメグトロン6シリーズ(パナソニック社製、品名:R-5670、340mm×340mm、厚み0.2mm、硬化温度195℃未満)を形成した。それぞれのプリプレグ面に、実施例1の片面銅張積層板の各1枚を、最外層に銅箔が構成されるように設置し、プレス温度195℃、プレス圧力4.0MPa、プレス時間90分の条件で熱プレスして、熱プレス積層体を得た。
熱プレス積層体に伝送線路を形成し、その伝送損失をマイクロストリップラインで測定した結果、20GHzにおける伝送損失は4.7dBであり、層(A-1)を有しない以外は同様の構成を有する熱プレス積層体の伝送線路の評価結果(5.6dB)に比較して、16%小さかった。
なお、2017年05月18日に出願された日本特許出願2017-099295号、2017年08月30日に出願された日本特許出願2017-165991号および2018年01月24日に出願された日本特許出願2018-010004号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7