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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】防曇性ガラス物品
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/32 20060101AFI20230301BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20230301BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20230301BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C03C17/32 A
B32B17/10
B60J1/00 H
B60S1/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019550999
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2018038141
(87)【国際公開番号】W WO2019082695
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2017204183
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】野田 和良
(72)【発明者】
【氏名】木村 壮志
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-187276(JP,A)
【文献】特開2013-023676(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186360(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/061509(WO,A1)
【文献】特開2016-041637(JP,A)
【文献】国際公開第2012/077686(WO,A1)
【文献】特開2012-017394(JP,A)
【文献】特開2012-117025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/28 - 17/32
B32B 1/00 - 43/00
B60S 1/02
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、前記ガラス板の少なくとも一部の表面に吸水層とを有する防曇性ガラス物品であって、
前記吸水層は、飽和吸水量が200mg/cm以上であり、厚さが2~50μmであり、かつ、JIS K 7209に規定された方法により温度0℃で測定される水分拡散係数が8×10-14/s以上であり
前記吸水層は、吸水性樹脂を含み、
前記吸水層は、前記吸水性樹脂として硬化性成分の硬化物からなる硬化樹脂を含み、
前記硬化樹脂が、アセタール化度が20~70モル%である硬化性ポリビニルアセタール樹脂の硬化物である、防曇性ガラス物品。
【請求項2】
前記吸水層は、JIS K 5600に規定された方法により温度23℃相対湿度50%で測定される鉛筆硬度がF~4Hである、請求項1に記載の防曇性ガラス物品。
【請求項3】
前記吸水層は、厚さが21~50μmであり、かつ、前記水分拡散係数が6×10-13/s以上である、請求項1または2に記載の防曇性ガラス物品。
【請求項4】
前記水分拡散係数が、1×10-10/s以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の防曇性ガラス物品。
【請求項5】
前記吸水性樹脂のガラス転移点が0~110℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の防曇性ガラス物品。
【請求項6】
前記硬化性成分は25℃における粘度が10~300mPa・sである、請求項1~5のいずれか1項に記載の防曇性ガラス物品。
【請求項7】
前記吸水層の飽和吸水量が300~900mg/cmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の防曇性ガラス物品。
【請求項8】
車両用の窓ガラスに用いる請求項1~7のいずれか1項に記載の防曇性ガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防曇性ガラス物品に関し、実使用、特には、自動車等の車両に搭載された際の実使用に即して好適化された防曇性ガラス物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用の窓ガラスや建築物の窓ガラス等、屋外用途で使用される窓ガラスについて、ガラス表面が露点温度以下になった場合に微細な水滴が付着して透明性が損なわれる、いわゆる「曇り」の現象が発生することが知られている。曇りの発生を防ぐために、例えば、窓ガラスの室内側表面に吸水性樹脂層を設けることで、該表面に付着した微細水滴を吸水除去する防曇性ガラス物品が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0003】
しかしながら、これらの特許文献に記載の防曇性ガラス物品においては、実使用に即した防曇性を有する、例えば、外気温が低い環境での自動車の走行開始時に曇りが発生するまでに十分な時間を確保できるレベルの防曇性を有する、防曇性ガラス物品は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/089165号
【文献】国際公開第2013/183441号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記観点からなされたものであって、防曇性ガラス物品において、実使用に即した防曇性を有する、特には、外気温が低い環境での自動車の走行開始時に曇りが発生するまでに十分な時間を確保できるレベルの防曇性を有する、防曇性ガラス物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防曇性ガラス物品は、ガラス板と、前記ガラス板の少なくとも一部の表面に吸水層とを有する防曇性ガラス物品であって、前記吸水層は、飽和吸水量が200mg/cm以上であり、厚さが2~50μmであり、かつ、JIS K 7209に規定された方法により温度0℃で測定される水分拡散係数が8×10-14/s以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、防曇性ガラス物品において、実使用に即した防曇性を有する、特には、外気温が低い環境での自動車の走行開始時に曇りが発生するまでに十分な時間を確保できるレベルの防曇性を有する、防曇性ガラス物品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これらの実施形態を、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更または変形することができる。数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0009】
本発明の防曇性ガラス物品は、ガラス板を有し、該ガラス板の少なくとも一部の表面に、以下の(1a)~(3a)の要件を満たす吸水層を有する。
(1a)飽和吸水量が200mg/cm以上である。
(2a)厚さが2~50μmである。
(3a)JIS K 7209に規定された方法により温度0℃で測定される水分拡散係数が8×10-14/s以上である。以下、JIS K 7209に規定された方法により温度0℃で測定される水分拡散係数を「水分拡散係数D」という。
【0010】
本発明の防曇性ガラス物品においては、吸水層が(1a)~(3a)の要件を満たすことで、実使用に即した防曇性を達成できる。具体的には、外気温が低い環境での自動車の走行開始時に曇りが発生するまでに十分な時間を確保できるレベルの防曇性を達成できる。
【0011】
本発明の防曇性ガラス物品は、ガラス板と該ガラス板の少なくとも一部の表面に吸水層を有する。ガラス板の表面に吸水層を有するとは、吸水層がガラス板の該表面に接する場合、および吸水層とガラス板の該表面の間に別の層を有する場合を包含する。本発明の防曇性ガラス物品は、吸水層とガラス板との間にガラス板側から粘着層、基材フィルム層を有し、さらに、吸水層の空気と接する側の表面に保護フィルム層を有することが好ましい。このような構成の防曇性ガラス物品は、例えば、基材フィルム層と該基材フィルム層の一方の主面に基材フィルム層側から吸水層および保護フィルム層を有し、他方の主面に粘着層を有する防曇性フィルムを、粘着層がガラス板と接するようにガラス板上に設けることで、作製できる。上記防曇性フィルムを用いることで、カメラ等の情報取得領域のようなガラス板表面の小さな領域であっても、歪のほとんどない吸水層を簡便に提供できる。
【0012】
本発明の防曇性ガラス物品の用途は特に限定されない。本発明の防曇性ガラス物品は、外気温が低い環境で使用される機会を有する、建築用の窓ガラス、車両用の窓ガラス等に好適であり、特に車両用の窓ガラスとして好適である。車両用の窓ガラスのうちでも、自動車用のフロントウインドとして使用すれば、外気温が低い環境での自動車の走行開始時に曇りが発生するまでに十分な時間を確保でき、車内快適性と安全性との両立という顕著な効果が得られる。
【0013】
外気温が低い環境での自動車の走行開始時(以下、「コールドスタート時」という。)には、乗員の車内環境を快適にするため昇温優先での車室内空調制御が求められる。しかしながら、ヒーターの熱源となるエンジン冷却水が十分に温まっておらずヒーターがうまく作動しないため、コールドスタート時には、内気循環モード、デフロスター再熱除湿を稼動させないことが望ましい。このような条件下では、自動車のフロントガラスに、特に曇りが発生しやすく、運転時の視認性を妨げ危険な状況となることが想定される。
【0014】
このような環境を想定した場合、例えば、コールドスタート時から所定の時間、曇りの発生を遅らせることができれば、車内環境の快適性と乗員の視認性の確保の両立が可能となる。より具体的には、自動車のフロントガラスとして、本発明の防曇性ガラス物品を用いた場合に、以下の条件でシミュレーションを行った際の曇りが発生するまでの時間を5分以上とすることができ、外気温が低い環境での自動車の運転に際して、車内環境の快適性と乗員の視認性とを確保できる。例えば、コールドスタート時から5分あれば、車室内の昇温を優先的に行った後に、フロントガラスの曇り防止の対応操作、例えば、デフロスター稼動や外気導入モードに変更するマニュアル操作を行うのに十分な時間といえる。
【0015】
(シミュレーション条件)
初期車内および外気相対湿度=50%
初期車内および外気温度=0℃
走行速度=40km/hr
車室内容積=3.8m
空調モード=フットモード最大
ファン作動開始=運転開始から3分後
除湿機能=OFF
外気導入率=22.8m/hr(60cycle/hr=3.8×60=228m/hr換気を空調の最大風量と仮定し、内気モード設定で10%だけ走行中に内外で交換があると仮定した。)
乗車人員=4名乗車(乗員呼気は、一人あたりの蒸気発生量を、一般的な蒸気発生量である58g/hrと設定した。)
【0016】
なお、上記要件(1a)にかかる吸水層における飽和吸水量は、所定の条件下(ただし、時間の因子は含まない)での単位体積当たりの最大吸水量を示す指標である。飽和吸水量は、吸水層付きのガラス板を試験片として、以下の方法で測定可能である。
【0017】
(飽和吸水量の測定方法)
吸水層付きのガラス板を試験片として、温度25℃で相対湿度50±10%の室内に24時間放置後、さらに、温度25℃、相対湿度90%になるように設定した恒温恒湿槽に15分間以上放置する。恒温恒湿槽から、取り出した直後に、微量水分計を用いて試験片の水分量(I)を測定する。さらに、吸水層を有しないガラス板のみについて同様の手順で水分量(II)を測定する。上記水分量(I)から水分量(II)を引いた値を吸水層の体積で除した値を飽和吸水量とする。
【0018】
なお、水分量の測定は、微量水分計FM-300(ケット科学研究所社製)によって次のようにして行う。測定サンプルを120℃で加熱し、サンプルから放出された気化物を活性炭に通し水分以外の気化物を除去した後、水分を微量水分計内のモレキュラーシーブに吸着させ、モレキュラーシーブの質量変化を水分量として測定する。また、測定の終点は、1分間当たりの質量の変化量が0.02mg以下になった時点とする。
【0019】
評価は、例えば、3cm×4cm×厚さ2mmのソーダライムガラス板を用いて作製したサンプル(吸水層の面積は12cm)により実施可能であるが、これに限定されない。
【0020】
吸水層の飽和吸水量が、200mg/cm以上であれば、吸水性が高く、要件(2a)および要件(3a)と組み合わせた場合に、実使用に即した防曇性を確保できる。例えば、上記シミュレーションにおける曇り発生までの時間を5分以上とすることができる。一方、吸水層の耐久性が低くなるのを防ぐ観点から、吸水層の飽和吸水量は、900mg/cm以下が好ましく、500mg/cm以下がより好ましい。
【0021】
吸水層の飽和吸水量は、吸水性を高める観点からは、300mg/cm以上が好ましく、400mg/cm以上がより好ましい。吸水層の飽和吸水量は、吸水性と耐久性の観点から300~900mg/cmの範囲にあることが好ましい。
【0022】
上記要件(2a)は、吸水層の膜厚に関する。膜厚は、例えば、吸水層断面の走査型電子顕微鏡画像を用いて測定できる。吸水層の膜厚を大きくすることで、吸水層の体積を十分に確保でき、吸水層の単位面積当たりの吸水量を増加できる。吸水層の膜厚は2μm以上であれば、吸水層の体積が十分であり、要件(1a)および要件(3a)と組み合わせた場合に、実使用に即した防曇性を確保できる。例えば、上記シミュレーションにおける曇り発生までの時間を5分以上とすることができる。一方、防曇膜の耐久性が低くなるのを防ぐ観点から、吸水層の膜厚は、50μm以下である。
【0023】
吸水層の膜厚は、吸水層の単位面積当たりの吸水量を高める観点から3μm以上が好ましく、21μm以上がより好ましく、30μm以上が特に好ましい。吸水層の膜厚は、吸水量と耐久性との観点から、21~50μmの範囲にあること(以下、要件(2b)ともいう。)が好ましい。吸水層の膜厚を21μm以上とすることで、要件(1a)および以下の要件(3b)を組み合わせた場合に、実使用においてより高い防曇性を確保できる。例えば、上記シミュレーションにおける曇り発生までの時間を15分以上とすることができる。
【0024】
上記要件(3a)における水分拡散係数Dは、0℃における吸水層内での水分拡散のし易さに係る指標である。ここで、水分拡散係数は温度依存性があり温度が低いほど水分拡散係数は小さい値をとる。本発明においては、実使用に即した防曇性、例えば、外気温が低い環境での自動車の走行開始時に曇りが発生するまでに十分な時間を確保できるレベルの防曇性を目指していることから、水分拡散係数の温度条件を0℃とした。
【0025】
吸水層の水分拡散係数Dの測定は、JIS K 7209に準拠し、温度0℃で行う。なお、本発明においては、吸水層付きガラス板を用いて、以下の方法で算出した値を水分拡散係数Dとしてもよい。すなわち、温度0℃の条件下、吸水層付きガラス板を低湿度の環境に十分暴露させて乾燥平衡状態にした後、高湿度の環境に移した際の吸湿による吸水層付きガラス板の質量変化の時間プロファイルを計測する。この測定値を予め準備された水分拡散係数Dが既知の薄膜の湿度拡散モデルによる質量変化の時間プロファイルとフィッティングさせることにより水分拡散係数Dを同定することもできる。
【0026】
例えば、吸水層において飽和吸水量が同じであっても、時間当たりに外部から供給される水分量が多い場合には、水分拡散係数Dが小さいと吸水層内部にまで水分が十分に拡散できずに、吸水層の表面に曇りが早く発生する。吸水層の水分拡散係数Dが8×10-14/s以上であれば、低温時の水分拡散性が高く、要件(1a)および要件(2a)と組み合わせた場合に、実使用に即した防曇性を確保できる。例えば、上記シミュレーションにおける曇り発生までの時間を5分以上とすることができる。
【0027】
吸水層の水分拡散係数Dは、低温時の水分拡散性を高める観点から、1×10-13/s以上が好ましく、6×10-13/s以上がより好ましく、1×10-12/s以上がより一層好ましく、4×10-12/s以上が特に好ましい。吸水層の水分拡散係数Dが6×10-13/s以上であることを要件(3b)とすると、該要件(3b)、要件(1a)および要件(2b)を組み合わせた場合に、実使用においてより高い防曇性を確保できる。例えば、上記シミュレーションにおける曇り発生までの時間を15分以上とすることができる。
【0028】
吸水層の水分拡散係数Dは、1×10-10/s以下であることが好ましい。水分拡散係数Dが1×10-10/s以下であると、吸水層の表面の触り心地(静摩擦係数または動摩擦係数)を吸水前と吸水後とで維持しやすくなる。さらに、吸水層の耐摩耗性が向上する。水分拡散係数Dは、2×10-11/s以下であることがさらに好ましく、5×10-12/s以下であることが特に好ましい。
【0029】
また、上記シミュレーションにおける曇り発生までの時間を10分以上とする条件としては、例えば、飽和吸水量、膜厚および水分拡散係数Dの組み合わせとして、以下の(1-1)~(1-3)が挙げられる。
(1-1)飽和吸水量;300mg/cm以上、膜厚;10~18μm、水分拡散係数D:3×10-13/s以上、
(1-2)飽和吸水量;300mg/cm以上、膜厚;10~50μm、水分拡散係数D:3×10-13/s以上1×10-10/s以下、
(1-3)飽和吸水量;200mg/cm以上、膜厚;10~50μm、水分拡散係数D:3×10-13/s以上1×10-10/s以下。
【0030】
同様に上記シミュレーションにおける曇り発生までの時間を20分以上とする条件としては、例えば、飽和吸水量、膜厚および水分拡散係数Dの組み合わせとして、以下の(2-1)~(2-3)が挙げられる。
(2-1)飽和吸水量;300mg/cm以上、膜厚;27~35μm、水分拡散係数D;6×10-13/s以上、
(2-2)飽和吸水量;300mg/cm以上、膜厚;27~50μm、水分拡散係数D;6×10-13/s以上1×10-10/s以下、
(2-3)飽和吸水量;200mg/cm以上、膜厚;27~50μm、水分拡散係数D;6×10-13/s以上1×10-10/s以下。
【0031】
本発明の防曇性ガラス物品においては、吸水層がさらに(4a)の要件を満たすことが好ましい。
(4a)JIS K 5600に規定された方法により温度23℃相対湿度50%で測定される鉛筆硬度がF~4Hである。
吸水層は、(4a)の要件を満たすことで、水分拡散係数Dを8×10-14/s~2×10-11/sに制御することができ、実使用に即した防曇性を達成できる。なお、本発明において、鉛筆硬度は吸水層を有する防曇性ガラス物品を、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で16時間以上保持した後、測定するものとする。
【0032】
表面の鉛筆硬度がF以上である吸水層は、例えば、濡れた布または乾いた布に対する耐傷付き性を有する。また、表面の鉛筆硬度がH以上である吸水層は、例えば、爪やプラスチック片に対する耐傷付き性を有する。さらに、表面の鉛筆硬度が3H以上である吸水層は、例えば、窓ガラスの昇降可動部位におけるゴム製ウェザーストリップやナイロン製防塵布に対する耐傷付き性を有する。
【0033】
本発明の防曇性ガラス物品は、ガラス板と、該ガラス板の少なくとも一部の表面に、要件(1a)、要件(2a)および要件(3a)を満足する吸水層を有する。吸水層は、通常、ガラス板の一方の主面上に設けられる。形成領域はガラス板の主面の全部に設けられてもよく、一部に設けられてもよい。吸水層がガラス板の主面の一部に設けられる場合、上記の防曇性フィルムを用いると防曇性ガラス物品が簡便に製造できる。防曇性ガラス物品が車両用の窓ガラスである場合、吸水層は車内側の主面に設けられる。建築用の窓ガラスである場合、吸水層は室内側の主面に設けられる。
【0034】
本発明の防曇性ガラス物品は、ガラス板と吸水層以外に任意の層を有してもよい。任意の層としては、ガラス板と吸水層の間に形成される下地層が挙げられる。また、防曇性ガラス物品が車両用の窓ガラスである場合、ガラス板の周縁部に黒色セラミック層を有してもよい。
【0035】
ガラス板としては、通常、建築用や車両用の窓ガラス等に用いられるガラス板が特に制限なく使用可能である。ガラス板として、具体的には、プラスチック、ガラス、またはその組み合わせ(積層材料等)からなるガラス板が好ましく使用される。
【0036】
ガラスとしては、通常のソーダライムガラス(ソーダライムシリケートガラスともいう)、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。紫外線や赤外線を吸収するガラスを用いてもよい。成形法についても特に限定されないが、例えば、フロート法等により成形されたガラス板が好ましい。プラスチックとしては、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂やポリフェニレンカーボネートなどの芳香族ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられ、これらのうちでも芳香族ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
【0037】
ガラス板は、汎用の板ガラス、強化ガラス、金属線入りガラスであってよい。またガラス板は、複数枚のガラス板を中間層を介して貼り合わせた合わせガラスや、スペーサにより間に空気層を有するように複数枚のガラス板を重ね合せた複層ガラスであってもよい。ガラス板の形状や厚さは用途に応じて適宜選択できる。ガラス板の形状は平板でもよく、全面または一部が曲率を有していてもよい。ガラス板の厚さは、一般的には1~10mmであることが好ましい。
【0038】
吸水層は、要件(1a)、要件(2a)および要件(3a)を全て満足する吸水層であれば構成は特に制限されない。
【0039】
吸水層としては、例えば、吸水性樹脂や多孔性無機微粒子等の吸水性材料を含む吸水層が挙げられる。吸水性樹脂は分子内に存在する親水性基と分子の架橋構造との複合的な作用により吸水性を有し、多孔性無機微粒子は、多数の細孔を有することで吸水性を有する。吸水性樹脂を用いる場合、樹脂自体が成膜性を有することから吸水性樹脂のみで吸水層を形成してもよい。多孔性無機微粒子を用いる場合はバインダ成分を加えてこれに多孔性無機微粒子を分散した形の吸水層とすることが好ましい。
【0040】
本発明の防曇性ガラス物品において、吸水層としては、吸水性樹脂を用いて形成された吸水層が好ましい。吸水層は、吸水性の観点からは吸水性樹脂のみで構成されることが好ましいが、用いる樹脂の種類によっては耐摩耗性の観点から、吸水性を確保しながら機械的強度に優れる材料と組合せて吸水層を形成してもよい。吸水性樹脂の種類にもよるが、吸水層の全体量に対する吸水性樹脂の占める割合は70~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。
【0041】
吸水性樹脂としては、これを単独でまたは他の材料と組合せて吸水層を形成した際に、要件(1a)および要件(3a)を満足する吸水性樹脂が用いられる。吸水性樹脂としては、親水性基や親水性連鎖(ポリオキシエチレン基など)を有する樹脂が挙げられる。吸水性樹脂は線状重合体であっても非線状重合体であってもよいが、耐久性等の面から3次元網目構造を有する非線状重合体である硬化樹脂であることが好ましい。吸水層の水分拡散係数Dを増大させる意味では、吸水性樹脂は、線状重合体である硬化樹脂を含むことが好ましい。
【0042】
硬化樹脂は硬化性成分の硬化物である。硬化性成分とは反応性基を有する化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマーなど)と硬化剤との組み合わせをいう。硬化性成分の一方の反応性化合物を主剤と呼ぶこともある。硬化剤とは、主剤と反応する他方の反応性化合物をいい、さらに、付加重合性不飽和基を反応させるラジカル発生剤などの反応開始剤やルイス酸などの反応触媒と呼ばれるものも意味する。以下、吸水層が吸水性樹脂を含む場合、特には、吸水性樹脂を上記好ましい範囲で含む場合の吸水層と飽和吸水量および水分拡散係数Dの関係について説明する。
【0043】
吸水層の飽和吸水量は、吸水性樹脂の親水性基の量に関連するため、親水性基の量を調節することによりその吸水層の飽和吸水量を制御することができる。親水性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、アミド基、アミノ基、第四級アンモニウム塩基、オキシアルキレン基が挙げられる。吸水性樹脂が硬化樹脂である場合、硬化樹脂の親水性基の量は、主剤および/または硬化剤に含まれる親水性基の量(例えば、水酸基価)を調節することにより制御できる。また、硬化樹脂において硬化反応によって親水性基が形成される場合、主剤および/または硬化剤の官能基数や架橋度を調節することにより、吸水層の飽和吸水量を制御できる。
【0044】
吸水層の飽和吸水量および水分拡散係数Dは、吸水性樹脂の種類および3次元網目構造による。3次元網目構造は、例えば、吸水性樹脂の架橋度にも依存する。ある単位量当たりの吸水性樹脂に含まれる架橋点の数が多ければ、吸水性樹脂が緻密な3次元網目構造となり、保水のための空間が小さくなるため、飽和吸水量が小さくなると考えられる。また、水分拡散係数Dも小さくなると考えられる。一方、単位量当たりに含まれる架橋点が少なければ、保水のための空間が大きくなり、飽和吸水量が大きくなると考えられる。また、水分拡散係数Dも大きくなると考えられる。
【0045】
さらに、吸水性樹脂の3次元網目構造が柔軟性を有すると、吸水層の水分拡散係数Dを大きくできる。吸水性樹脂が硬化樹脂である場合、3次元網目構造に柔軟性を持たせるには、硬化性成分の種類や、硬化条件を適宜選択する。
【0046】
吸水性樹脂のガラス転移点は、吸水性樹脂の架橋度および柔軟性と関連が深く、一般に、ガラス転移点が高い樹脂は、ある単位量当たりに含まれる架橋度が高い、または柔軟性が低いと考えられる。したがって、一般的に吸水層の水分拡散係数Dを大きくするには、吸水性樹脂のガラス転移点を低く制御することが好ましい。吸水層に用いる吸水性樹脂のガラス転移点は、具体的には、0~110℃が好ましく、10~100℃がより好ましく、10~90℃がより一層好ましく、10~80℃がさらに好ましく、20~70℃が特に好ましい。吸水性樹脂のガラス転移点が0~110℃であると、吸水層の水分拡散係数Dを8×10-14/s~2×10-11/sに制御することができ、実使用に即した防曇性を達成しやすくなる。
【0047】
なお、吸水性樹脂のガラス転移点は、JIS K 7121に準拠して測定した値である。具体的には、基板上、例えば、ソーダライムガラス基板上に検体となる吸水性樹脂からなる吸水層を設け、これを20℃、相対湿度50%の環境下に1時間放置した後、示差走査熱量計、例えば、DSC-60(島津製作所社製)を用いて測定した値である。ただし、測定時の加熱速度は10℃/分とする。
【0048】
吸水性樹脂として硬化性成分の硬化物からなる硬化樹脂を用いる場合、硬化性成分の粘度は、得られる硬化樹脂(吸水性樹脂)の架橋度および柔軟性と関連が深く、一般に、粘度が高い硬化性成分を用いて得られる吸水性樹脂は、ある単位量当たりに含まれる架橋度が高い、または柔軟性が低いと考えられる。したがって、一般的に吸水層の水分拡散係数Dを大きくするには、硬化性成分の粘度を低く制御することが好ましい。吸水層を構成する吸水性樹脂に用いる硬化性成分の粘度は、具体的には、10~300mPa・sが好ましく、10~200mPa・sがより好ましく、20~150mPa・sがより一層好ましく、30~130mPa・sがさらに好ましく、40~120mPa・sが特に好ましく、50~100mPa・sが最も好ましい。吸水性樹脂に用いる硬化性成分の粘度が10~300mPa・sであると、得られる吸水層の水分拡散係数Dを8×10-14/s~2×10-11/sに制御することができ、実使用に即した防曇性を達成しやすくなる。
【0049】
なお、粘度は、回転粘度計(BROOKFIELD社、RVDV-E)を用い、25℃で計測した粘度である。
【0050】
吸水性樹脂が硬化樹脂である場合、硬化性成分の主剤は、2個以上の反応性基を有する化合物と硬化剤との組み合わせにより反応して硬化樹脂となるものであれば特に限定されない。この反応は、熱や紫外線等の光により反応が開始または促進される。反応性基としては、例えば、ビニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、スチリル基などの重合性不飽和基を有する基、および、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、メチロール基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基などの反応性基が挙げられる。なかでも、エポキシ基、カルボキシル基および水酸基が好ましく、エポキシ基がより好ましい。また、主剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
主剤が反応性基を有する低分子化合物やオリゴマーである場合は、1分子中に含まれる反応性基の数は1~3個であるのが好ましく、1~2個であるのがより好ましい。1分子中に含まれる反応性基の数が1~3個であると、吸水性樹脂の架橋点を少なくでき、吸水層の水分拡散係数Dを大きくできる。
【0052】
このような硬化性成分としては、例えば、1~3個のアクリロイルオキシ基を有する低分子化合物(モノマー)やオリゴマーからなる主剤とラジカル発生剤である硬化剤との組み合わせからなる硬化性アクリル樹脂、1~3個のエポキシ基を有する低分子化合物やオリゴマーなどの主剤とアミノ基等のエポキシ基と反応性の反応性基を1~2個有する化合物である硬化剤との組み合わせからなるエポキシ樹脂、1~3個のエポキシ基を有する低分子化合物やオリゴマーなどの主剤と硬化触媒(ルイス酸や塩基など)である硬化剤との組み合わせからなるエポキシ樹脂、1~3個の水酸基を有する低分子化合物やオリゴマーなどのポリオールとイソシアネート基を1~2個有する化合物であるポリイソシアネート(硬化剤)との組み合わせからなる硬化性ウレタン樹脂、ケン化度が50~99.8モル%であるポリビニルアルコールからなる主剤とアルデヒドである硬化剤との組合せからなる硬化性ポリビニルアセタール樹脂などがある。
【0053】
硬化性アクリル樹脂の硬化剤として光重合開始剤を使用することにより光硬化性アクリル樹脂とすることができ、エポキシ樹脂の硬化剤として光硬化剤(例えば、紫外線(UV)等の光の照射によりルイス酸など発生する化合物)を使用することにより、光硬化性エポキシ樹脂とすることができる。
【0054】
本発明においては、吸水性樹脂としてエポキシ樹脂の硬化物が好ましく用いられる。より具体的には、脂肪族ポリエポキシドと脂肪族硬化剤との組み合わせからなるエポキシ樹脂の硬化物が好ましい。脂肪族ポリエポキシドの分子量は300~3000が好ましく、500~2000がより好ましい。脂肪族硬化剤の分子量は300~2000が好ましい。脂肪族ポリエポキシドと脂肪族硬化剤との配合割合は、脂肪族ポリエポキシドのエポキシ基に対する脂肪族硬化剤の反応性基の当量比が0.5~1.0になる割合であることが好ましく、0.6~0.9であることがより好ましい。
【0055】
脂肪族ポリエポキシドと脂肪族硬化剤の組み合わせからなるエポキシ樹脂の硬化物は、3次元網目構造が柔軟であるとともに、脂肪族ポリエポキシドと脂肪族硬化剤の分子量を調整することで、3次元網目構造の空間の大きさを調整可能である。このようにして吸水性樹脂の分子構造を設計することで、要件(1a)および要件(3a)を共に満足する吸水層が得られる。さらに、後述する硬化条件を調整することで、吸水層の飽和吸水量および水分拡散係数Dの調整が可能である。
【0056】
なお、本明細書において分子量は、特に断りのある場合を除いて、質量平均分子量(Mw)をいう。また、本明細書における質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレンを標準とする質量平均分子量をいう。
【0057】
なお、ポリエポキシドは市販品を用いることが可能である。このような市販品として、具体的には、ナガセケムテックス社製のいずれも商品名で、デナコールEX-313(Mw:383)、デナコールEX-314(Mw:454)、デナコールEX-512(Mw:630)、デナコールEX-1410(Mw:988)、デナコールEX-1610(Mw:1130)、デナコールEX-610U(Mw:1408)、デナコールEX-521(Mw:1294)、デナコールEX-622(Mw:930)等が挙げられる。
【0058】
硬化剤の市販品としてポリオキシアルキレントリアミンとして、ジェファーミンT403(商品名、ハンツマン社製、Mw:390)等が、ポリエーテルポリチオールとして、ポリチオールQE-340M(商品名、東レファインケミカル社製)等が挙げられる。
【0059】
エポキシ樹脂にはポリエポキシドと硬化剤以外に任意成分を配合することもできる。ポリエポキシドと硬化剤と任意成分からなるエポキシ樹脂において、エポキシ樹脂全量に対するポリエポキシドの含有量は40~80質量%であるのが好ましい。また、硬化剤の総量は40質量%以下であることが好ましい。任意成分としては、吸水層の機械的強度を高めるための無機充填材、吸水層が接するガラス板または下地層との密着性を高めるためのカップリング剤、製膜性の向上のために用いられるレベリング剤、消泡剤、粘性調整剤や、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等が挙げられる。
【0060】
吸水性樹脂を含有する吸水層は、例えば、硬化性成分と必要に応じて上記各種任意成分を含有し、好ましくはさらに溶媒を含む吸水層用組成物を調製し、この吸水層用組成物をガラス板の吸収層形成領域に塗布し、乾燥して、または、必要に応じて乾燥後、硬化反応を行うことで形成できる。
【0061】
本発明においては、吸水性樹脂として硬化性ポリビニルアセタール樹脂の硬化物も好ましく用いられる。より具体的には、ケン化度が50~99.8モル%であるポリビニルアルコールとアルデヒドとの組合せからなる硬化性ポリビニルアセタール樹脂の硬化物が好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は、60~95モル%がより好ましく、70~90モル%がさらに好ましい。硬化性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、20~70モル%であることが好ましく、30~60モル%であることがより好ましく、40~50モル%であることがさらに好ましい。硬化性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が20~70モル%であると、吸水層の水分拡散係数Dを8×10-14/s~2×10-11/sに制御することができ、実使用に即した防曇性を達成しやすくなる。
【0062】
本発明において、吸水性樹脂として硬化性ウレタン樹脂の硬化物も好ましく用いられる。より具体的には、1~3個の水酸基を有する低分子化合物やオリゴマーなどのポリオールとイソシアネート基を1~2個有する化合物であるポリイソシアネート(硬化剤)との組み合わせからなる硬化性ウレタン樹脂の硬化物が好ましい。ポリオールとポリイソシアネートとの配合割合は、ポリオールの水酸基に対するポリイソシアネートの反応性基の当量比が0.5~0.9になる割合であることが好ましく、0.6~0.8であることがより好ましい。ポリオールの水酸基に対するポリイソシアネートの反応性基の当量比が0.5~0.9である硬化性ウレタン樹脂を用いれば、得られる吸水層の水分拡散係数Dを8×10-14/s~2×10-11/sに制御することができ、実使用に即した防曇性を達成しやすくなる。
【0063】
なお、吸水層の膜厚を要件(2a)とするための膜厚の制御は、通常、吸水層用組成物の塗布の際に塗膜の膜厚を制御することで行われる。吸水層用組成物の塗布の方法としては、フローコート法、スピンコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ロールコート法、メニスカスコート法、ダイコート法、ワイプ法等が挙げられ、これらいずれの方法であっても塗膜の膜厚制御は可能である。なお、こられのうちでも、膜厚制御が容易な点から、フローコート法、スピンコート法、スプレーコート法が好ましい。吸水層の形成領域の制御は、従来公知の方法、例えば、マスキングによる方法等で行えばよい。
【0064】
吸水層用組成物を塗布した後の硬化処理として、エポキシ樹脂、硬化性ウレタン樹脂および硬化性ポリビニルアセタール樹脂の場合には、例えば、50~180℃、10~60分間程度の熱処理が挙げられる。室温硬化性の硬化性成分の場合は室温硬化もできる。光硬化性の硬化性成分を用いた場合には、UV硬化装置等で50~1000mJ/cmのUV照射を5~10秒間行う等の処理が挙げられる。
【0065】
上記のとおり、この硬化処理を過激な条件で十分に行うと、3次元網目構造が緻密になり、吸水層の飽和吸水量および水分拡散係数Dが小さくなる傾向にある。また、硬化処理を温和な条件で行うことで、吸水層の水分拡散係数Dを増大させることができる。
【0066】
例えば、飽和吸水量が200mg/cmとなるエポキシ樹脂の硬化物を形成するように吸水層用組成物を調製し、その硬化を、比較的温和な温度条件に設定して、硬化時間を調整することで、吸水層の水分拡散係数Dを調整することが可能である。具体的には、脂肪族ポリエポキシドとして、脂肪族ポリグリシジルエーテルを、硬化剤として脂肪族ポリアミンと硬化触媒(例えば、イミダゾール化合物)を含み、さらに、溶媒を含む吸水層用組成物を用いて、所定の硬化温度で吸水層を形成させる場合、概ね100℃程度の硬化温度において、時間を短く、例えば、10分とすることで、重合度が低く、硬度が低い反面、水分拡散係数Dが大きい吸水層が得られる。同条件で硬化時間のみを、長く、例えば、50分とすることで重合度が高く、硬度が高い反面、水分拡散係数Dが小さい吸水層が作製される。
【0067】
下地層は、吸水層とガラス板の密着性を高めるために任意に設けられる。吸水層は高い吸水性に付随して大きな膨張、収縮を繰り返すことで接着界面から剥離しやすい。そこで、例えば、吸水層と同じ種類の硬化樹脂であって吸水性の低い、例えば、飽和吸水量が10mg/cm以下の硬化樹脂からなる下地層を吸水層とガラス板の間に設けることで、ガラス板から吸水層が剥離するのを防ぐことが可能となる。
【0068】
下地層の膜厚は、2~8μm程度が好ましい。さらに、下地層と吸水層との膜厚の比は、各層の吸水性にもよるが、[吸水層の膜厚/下地層の膜厚]で示される吸水層と下地層との膜厚比が3.0~6.0であることが好ましく、3.5~5.0がより好ましい。
【実施例
【0069】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0070】
[吸放湿拡散シミュレーション計算モデルの検証]
吸水層の防曇性能を評価する吸放湿拡散シミュレーション計算モデルを構築した。以下の方法で、ワンボックスカーのフロントガラスの半分に吸水層を設け、実車走行試験により所定の温湿度データを測定するとともに防曇性を評価した。実車走行試験により得られた温湿度データを吸放湿拡散シミュレーション計算モデルに入力して防曇性を評価し、実車走行試験による防曇性の実測値と比較して該モデルによるシミュレーションの妥当性を検証した。
【0071】
(吸水層付きフロントガラスの作製)
<下地層用組成物の調製>
撹拌機、温度計がセットされたガラス容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル(150.00g、大伸化学社製)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(93.17g、jER828(商品名、三菱化学社製))、ポリオキシアルキレントリアミン(38.20g、ジェファーミンT403(商品名、ハンツマン社製))、アミノシラン(18.63g、KBM903(商品名、信越化学工業社製))を入れ、25℃にて30分間撹拌した。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテル(大伸化学社製)で5倍に希釈して、レベリング剤(0.375g、BYK307(商品名、ビックケミー社製))を添加して、下地層用組成物を得た。
【0072】
<吸水層用組成物の調製>
撹拌機、温度計がセットされたガラス容器に、エタノール(586.30g、関東化学製)、メチルエチルケトン(196.37g、関東化学製)、脂肪族ポリグリシジルエーテル(248.73g、デナコールEX-1610、(商品名、ナガセケムテックス社製))、グリセリンポリグリシジルエーテル(206.65g、デナコールEX-313、(商品名、ナガセケムテックス社製))を添加し10分間撹拌した。次いで、オルガノシリカゾル(29.92g、NBAC-ST(商品名、日産化学工業社製)、平均一次粒子径:10~20nm、SiO含有量30質量%)、2-メチルイミダゾール(10.29g、四国化成社製)を添加し、さらに10分間撹拌した。次いで、ポリオキシアルキレントリアミン(90.70g、ジェファーミンT403(商品名、ハンツマン社製))を添加し、25℃にて1時間撹拌した。次いで、アミノシラン(92.57g、KBM903(商品名、信越化学工業社製))を撹拌しながら添加し、さらに25℃にて3時間撹拌した。その後、メチルエチルケトン(438.46g、関東化学製)を撹拌しながら添加した。さらに、レベリング剤(0.95g、BYK307(商品名、ビックケミー社製))を撹拌しながら添加し、吸水層用組成物を得た。
【0073】
<下地層、吸水層の形成>
実験に用いるワンボックスカーのフロントガラスは、ソーダライムガラス板を、中間膜を挟んで積層した合わせガラス(AGC製)であった。フロントガラスの車内側の主面を酸化セリウムで研磨洗浄し、純水で酸化セリウムを洗い流し、温風乾燥し、清浄なフロントガラスを得た。フロントガラスの車内側の主面の右側(運転席側)半面にのみ、上記で得られた下地層用組成物をフローコートによって塗布した。塗布後、設定温度100℃の空気循環式オーブン内で30分間保持し膜厚2μmの下地層を形成した。次いで、下地層上に、上記で得られた吸水層用組成物をフローコートによって塗布し、設定温度100℃の空気循環式オーブン内で30分間保持し吸水層を形成した。
【0074】
このようにして得られた吸水層の膜厚は4μm、飽和吸水量は340mg/cm、水分拡散係数Dは3.04×10-13[m/s]、鉛筆硬度は3Hであった。なお、得られた吸水層は、上記吸水層用組成物における、エポキシ樹脂(主剤と硬化剤)、オルガノシリカゾルおよびアミノシランからなる硬化性成分が硬化した硬化樹脂からなる吸水層である。
【0075】
(実車走行試験)
上記で得られた半面吸水層付きフロントガラスをワンボックスカーに取り付けて、以下の条件で走行試験を行った。フロントガラス車内面に貼り付けた温度センサー(熱電対)によりフロントガラスの温度変化を、車室内フロントガラス近傍に設置した温湿度センサー(センシリオン製)により車室内の温湿度変化を、それぞれ実測時の測定データとして記録し、後述のシミュレーションの際に用いた。曇り発生判定は、乗員が目視により観察し、吸水層または未処理部分のガラス板の表面に水分が残る状態になった箇所が観察された時点を曇り発生時とした。走行開始時から曇り発生時までの時間を「曇り発生時間(t)」とした。なお、吸水層が上半分まで曇った時点でデフロスター(以下「DEF」)をONにし、しばらくDEFを継続したところ、曇りは解消し自動車を停止することなく安全に走行が継続できた。なお、走行開始時とは、乗員が乗車し着座してドアを閉めた時点をいう。
【0076】
上記試験を4回行った。結果を、表1の実測の欄に示す。また、走行開始時からDEFをONにするまでの時間、すなわち吸水層が上半分まで曇るまでの時間を「DEF作動開始時間」として、表1の最下欄に示す。表1の時間の表示において、「’」は分を「”」は秒を示す。例えば、「1’40”」は、1分40秒を示す。
【0077】
(試験条件)
外気温湿度;-2℃、90%RH
ワンボックスカー
乗員人数;3名乗車+加湿(600ml/hr)
走行速度;40km/hr
空調;暖房(25℃設定)、内気循環フットモード、コンプレッサーOFF
【0078】
(シミュレーション)
シミュレーションは、上記で得られた半面吸水層付きフロントガラスを上記実車走行試験と同様にワンボックスカーに取り付けて、上記同様の条件で走行した場合を想定して行った。具体的には、上記で測定したフロントガラスの温度変化、車室内の温湿度変化のデータを用いて、吸水層の吸放湿拡散シミュレーション計算モデル(AGC製)によりシミュレーションを行い、曇り発生時間(ts)を算出した。
【0079】
上記4回の実測に対応するシミュレーションの結果を、表1のシミュレーションの欄に示す。また、曇り発生時間について、シミュレーション値(ts)から実測値(t)を引いた値「Δ(ts-t)」を合わせて、表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1からわかるように、ガラス板に吸水層を形成した吸水層付きガラス板(防曇性ガラス物品)の防曇性能を、吸水層の吸放湿拡散シミュレーション計算モデルによるシミュレーションで、確度よく予測できることが確認できた。
【0082】
[実施例および比較例]
以下の実施例および比較例においては、上記のようにして実績対比で検証した吸水層の吸放湿拡散シミュレーション計算モデルを用いて、実車状態での防曇性能を予測評価した。なお、自動車の車室内の温度、湿度、フロントガラスの温度の変化については、温熱シミュレーションソフトウェア(AGC製)から計算された一般的な自動車の車室内の温度変化、湿度変化、フロントガラスの温度変化のプロファイルを条件として用いた。
【0083】
また、実施例および比較例の実車状態としての環境条件は、冬季の実際の実車相当として設定した諸条件であり、以下のとおりとした。
【0084】
(環境条件)
初期車内および外気相対湿度=50%
初期車内および外気温度=0℃
走行速度=40km/hr
車室内容積=3.8m
空調モード=フットモード最大
ファン作動開始=運転開始から3分後
除湿機能=OFF
外気導入率=22.8m/hr(60cycle/hr=3.8×60=228m/hr換気を空調の最大風量と仮定し、内気モード設定で10%だけ走行中に内外で交換があると仮定した。)
乗車人員=4名乗車(乗員呼気は、一人あたりの蒸気発生量を、一般的な蒸気発生量である58g/hrと設定した。)
【0085】
(吸水層の設計)
吸水層は上記で作製した吸水層を基準にして設計した。表2に示すように、吸水層を構成する硬化樹脂を、0℃における水分拡散係数が対数上で等間隔になるように12種類設定した。表2において硬化樹脂番号が1の硬化樹脂を硬化樹脂1と示す。他の硬化樹脂も同様に表記する。なお、表2の硬化樹脂5が、上記で作製した吸水層を構成する硬化樹脂である。
【0086】
硬化樹脂1~4、硬化樹脂6~12における水分拡散係数Dは、硬化樹脂5の硬化条件を適宜変更させることで調整可能な範囲である。硬化樹脂1~4は硬化樹脂5の硬化条件の温度を高く、および/または、時間を長く設定することで作製でき、硬化樹脂6~12は硬化樹脂5の硬化条件の温度を低く、および/または、時間を短く設定することで作製できる。
【0087】
具体的には、最も水分拡散係数Dが小さい硬化樹脂1の硬化条件は、設定温度100℃の空気循環式オーブン内で硬化時間が50分であり、最も水分拡散係数Dが大きい硬化樹脂12の硬化条件は、設定温度100℃の空気循環式オーブン内で硬化時間が20分であった。
【0088】
また、各硬化樹脂について飽和吸水量を算出し、表2に併せて示した。さらに、各硬化樹脂について鉛筆硬度をJIS K 5600-5-4に準拠して測定した。結果を併せて表2に示す。なお、鉛筆硬度の評価は、得られた硬化樹脂1~12からなる吸水層を有する防曇性ガラス物品を、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下で16時間以上保持した後、測定した結果である。
【0089】
吸水層の膜厚は以下のシミュレーション条件の設定に合わせて100μm以下で自由に設計できるようにした。吸水層の膜厚は、上記において硬化樹脂5からなる吸水層を形成する際の、吸水層用組成物における溶媒濃度や粘度、塗布方法、乾燥条件等を変更することで調整可能である。
【0090】
なお、本実施例に用いた硬化樹脂は吸水層を構成できる材料の一例であって、本発明はこれに限定されない。本発明における吸水層の飽和吸水量および水分拡散係数Dの規定を満たす吸水性材料であれば、特に制限されずに吸水層の構成材料として用いることができる。
【0091】
【表2】
【0092】
(シミュレーションの方法)
上記環境条件の0℃スタートでの温熱シミュレーションソフトウェアから得られる温度上昇プロファイル、乗員呼気による湿度増加量を入力条件とした。吸放湿拡散シミュレーション計算モデルを用いて、吸水層を水分拡散係数Dが上記12種類の硬化樹脂で形成した場合に、それぞれの吸水層において、所定の曇り発生時間(5分、10分、15分、20分、25分、30分)をターゲットとして、必要とされる膜厚をシミュレーションで算出した。
【0093】
得られた計算結果を、所定の水分拡散係数Dにおいて、所定の曇り発生時間を達成するための膜厚[μm]の一覧表として表3に示す。なお、表3において、「100」の表記は、吸水層の膜厚を100[μm]まで増やしてもターゲットとなる曇り発生時間を満たせない場合を示す。さらに、各曇り発生時間において、「100」と表記された水分拡散係数Dより水分拡散係数Dが小さい欄には「-」を記載した。
【0094】
【表3】
【0095】
表3から、曇り発生時間を5分以上とできる条件は、吸水層において、水分拡散係数Dが8.16×10-14[m/s]以上であり、膜厚が2.9[μm]以上の場合であることがわかる。曇り発生時間を5分以上とできれば、実使用に即した防曇性、具体的には、外気温が低い環境での自動車の走行開始時に曇りが発生するまでに十分な時間を確保できるレベルの防曇性を達成できるといえる。曇り発生時間を5分以上とできれば、運転者が吸水層の形成されていない部分の曇りの状態を見て、フロントガラスの曇り防止の対応操作ができる。デフロスター稼動や外気導入モードに変更するマニュアル操作などを、十分な時間を持って安全に行える。
【0096】
表3から、曇り発生時間を10分以上とできる条件は、吸水層において、水分拡散係数Dが3.04×10-13[m/s]以上であり、膜厚が11.8[μm]以上の場合であることがわかる。曇り発生時間を10分以上とできれば、実使用に即した防曇性の効果は大きい。乗員が乗り込んだコールドスタート時に、10分後には水温もある程度まで上がり始めるためヒーターも機能する。外気導入モード、あるいは、内気循環オートエアコンどちらかのモードで曇りは発生しない。
【0097】
表3から、曇り発生時間を15分以上とできる条件は、吸水層において、水分拡散係数Dが5.87×10-13[m/s]以上であり、膜厚が21.8[μm]以上の場合であることがわかる。曇り発生時間を15分以上とできれば、実使用に即した防曇性の効果はさらに大きい。乗員が乗り込んだコールドスタート時に、15分後には水温がかなり上昇しヒーターも機能するので、大きな効果がある。内気循環、エアコン作動なしで室内温度を速やかに上昇させられる。
【0098】
表3から、曇り発生時間を20分以上とできる条件は、吸水層において、水分拡散係数Dが5.87×10-13[m/s]以上であり、膜厚が44.3[μm]以上の場合であることがわかる。また、吸水層の水分拡散係数Dが1.13×10-12[m/s]以上であり、膜厚が30.0[μm]以上の場合にも曇り発生時間を20分以上とできる。
【0099】
曇り発生時間を20分以上とできれば、実使用に即した防曇性の効果は非常に大きい。乗員が乗り込んだコールドスタート時に、外気導入モードや除湿オートエアコンに頼ることなく曇りの発生を防止することが可能である。20分後の定常走行時には、水温が十分に上昇し室温も上昇しており、外気モードとヒーターの組み合わせで曇りの発生を継続的に防ぐことが可能になるので大きなメリットがある。
【0100】
上記同様のシミュレーションにおいて、吸水層の水分拡散係数Dを3.04×10-13[m/s]、膜厚を14[μm]とした場合、曇り発生時間は11分となり、実使用に即した防曇性の効果は大きかった。
【0101】
(比較例)
上記同様のシミュレーションにおいて、吸水層の水分拡散係数Dが2.19×10-14[m/s]では膜厚100[μm]において、吸水層の水分拡散係数Dが3.04×10-13[m/s]では膜厚2.6[μm]において、吸水層の水分拡散係数Dが3.04×10-11[m/s]では膜厚2.5[μm]において、それぞれ曇り発生時間は5分未満となり、実使用に即した防曇性の効果は十分に得られなかった。
【0102】
[実施例A、B、C、比較例D]
以下に示す硬化樹脂13~16からなる吸水層を、ワンボックスカーのフロントガラスの車内側の主面の右側半面にのみに形成し、実車走行試験を行い評価した。硬化樹脂13、15、16を用いた例を、それぞれ実施例A、B、Cとした。硬化樹脂14を用いた例は比較例Dである。なお、以下に示す鉛筆硬度およびガラス転移点の測定方法は、上に説明したとおりである。
【0103】
<吸水層の形成>
(硬化樹脂13、14)
硬化樹脂13、14の硬化条件は、硬化樹脂5の硬化条件を、設定温度100℃の空気循環式オーブン内で、硬化時間が15分、55分に変更したものであった。硬化樹脂13からなる吸水層は、膜厚が5μm、飽和吸水量が340mg/cm、水分拡散係数Dが5.31×10-10/s、鉛筆硬度がBであった。硬化樹脂14からなる吸水層は、膜厚が5μm、飽和吸水量が340mg/cm、水分拡散係数Dが2.20×10-15/s、鉛筆硬度が4H、ガラス転移点が70℃であった。
【0104】
(硬化樹脂15)
ポリイソシアネート(N3200、住友バイエルウレタン社製)、ポリオール(トーホーポリオールPB-4000、東邦化学工業社製)およびテトラエトキシシランを、ポリオールの水酸基に対するポリイソシアネートの反応性基の当量比が0.7になる割合で配合した組成物を、ガラス基板上に塗布し、硬化させて、硬化樹脂15を得た。硬化樹脂15の硬化条件は、設定温度150℃のオーブン内で、硬化時間が10分であった。硬化樹脂15からなる吸水層は、膜厚が10μm、飽和吸水量が280mg/cm、水分拡散係数Dが8.00×10-13/s、鉛筆硬度が2H、ガラス転移点が30℃であった。
【0105】
(硬化樹脂16)
ポリビニルアルコール(デンカポバールB-33、デンカ社製)とアセトアルデヒドとを塩酸の存在下で脱水縮合して製造した硬化性ポリビニルアセタール樹脂およびテトラエトキシシランを含む組成物を、ガラス基板上に塗布し、硬化させて、硬化樹脂16を得た。硬化樹脂16からなる吸水層は、膜厚が3μm、飽和吸水量が400mg/cm、水分拡散係数Dが1.00×10-12/s、鉛筆硬度が2H、ガラス転移点が20℃であった。上記組成物において、硬化性ポリビニルアセタール樹脂の粘度は200mPa・sであり、アセタール化度は50モル%であった。
【0106】
<実車走行試験>
上記と同様にして硬化樹脂13~16からなる吸水層を、それぞれワンボックスカーのフロントガラスの車内側の主面の右側半面にのみに形成して、吸放湿拡散シミュレーション計算モデルの検証時と同じ条件で、実車走行試験を4回行った。硬化樹脂13、15、16におけるDEF作動開始時間は、全て5~20分の間であった。しかしながら、硬化樹脂14におけるDEF作動開始時間は、全て5分未満であった。結果を硬化樹脂13~16の物性とともに表4に示す。
【0107】
【表4】