(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、硬化性樹脂組成物、硬化物及び積層フィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/67 20060101AFI20230301BHJP
C08G 18/74 20060101ALI20230301BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20230301BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230301BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230301BHJP
C08J 7/046 20200101ALI20230301BHJP
【FI】
C08G18/67 050
C08G18/74
C08F290/14
B32B27/40
B32B27/30 A
C08J7/046 A
(21)【出願番号】P 2019560932
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2018044510
(87)【国際公開番号】W WO2019124048
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2017242789
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】井上 直人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正広
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-523674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08F 290/14
B32B 27/40
B32B 27/30
C08J 7/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート化合物(A)と、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)とを必須の反応原料とするウレタン(メタ)アクリレート樹脂であって、
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)の水酸基価が、120mgKOH/g超え
130mgKOH/g以下の範囲であり、
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)が、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(b1)と、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(b2)とを含有するものであり、
前記ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(b1)の含有量が、前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)中に10~50質量%の範囲であ
り、
前記イソシアネート化合物(A)が、脂肪族イソシアネート化合物であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項2】
前記イソシアネート化合物(A)が、
ペンタメチレンジアクリレート及びヘキサメチレンジアクリレートのうちのいずれかである請求項1記載のウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項3】
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)中の前記ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(b1)と、前記ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(b2)の含有量の比[(b1)/(b2)]が20/80~80/20の範囲である請求項
1記載のウレタン(メタ)アクリレート樹脂。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項記載のウレタン(メタ)アクリレート樹脂と、光重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項
4記載の硬化性樹脂組成物の硬化反応物であることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
基材表面に請求項
5記載の硬化物からなる層を有することを特徴とする積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化塗膜における耐擦傷性、柔軟性、耐カール性、及び耐衝撃性に優れるウレタン(メタ)アクリレート樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、硬化物及び積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アセチル化セルロース樹脂などを用いて製造されるプラスチックフィルムは、フラットパネルディスプレイの内部に組み込まれる偏光板保護フィルムやタッチパネルの表面保護フィルムなど、工業用途で多用されている。これらのプラスチックフィルムはそれ単独では表面が傷つきやすい、加工性が低く割れやヒビが入りやすいなど性能に不足があることから、通常は、表面に活性エネルギー線硬化性樹脂等からなるコート層を設けて、これらの性能を補って用いられる。
【0003】
プラスチックフィルム補強用のコート剤としては、例えば、水酸基価が80~120mgKOH/gの範囲であるジペンタエリスリトールポリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させて得られるウレタンアクリレートを含有する樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。前記樹脂組成物は、硬化物における表面硬度が高く、耐擦傷性に優れるものの、カールが生じ易く、また、塗膜の靱性や柔軟性が十分ではないため、外部衝撃による割れが生じやすいものであった。
【0004】
そこで、優れた耐擦傷性を有し、かつ、耐カール性、柔軟性及び耐衝撃性にも優れた硬化塗膜を形成可能な材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、耐擦傷性、柔軟性、耐カール性、及び耐衝撃性に優れた硬化塗膜を形成可能なウレタン(メタ)アクリレート樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、硬化物及び積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、イソシアネート化合物と、特定の水酸基価を有するジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートとを必須の反応原料とするウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、イソシアネート化合物(A)と、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)とを必須の反応原料とするウレタン(メタ)アクリレート樹脂であって、前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)の水酸基価が、120mgKOH/g超え150mgKOH/g以下の範囲であることを特徴とするウレタン(メタ)アクリレート樹脂、これを含有する硬化性樹脂組成物、硬化物及び積層フィルムに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、耐擦傷性、耐カール性、柔軟性、耐衝撃性に優れた硬化塗膜を形成できることから、各種基材表面の保護用コート剤として好適に用いることができる。また、前記硬化塗膜を有する積層フィルムは、耐擦傷性や耐カール性に優れると共に、柔軟性が高く折り曲げたり巻き取ったりした際に割れが生じ難く、さらに、フィルム上に落下物があった場合にも割れにくい耐衝撃性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、イソシアネート化合物(A)と、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)とを必須の反応原料とする。
【0011】
前記イソシアネート化合物(A)としては、例えば、脂肪族イソシアネート化合物、分子内に芳香環または脂環構造を有するイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0012】
前記脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物などが挙げられる。また、これらのイソシアネート化合物の変性体であるイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等も用いることができる。これらの脂肪族イソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0013】
前記分子内に芳香環または脂環構造を有するイソシアネート化合物としては、例えば、下記構造式(A1-1)~(A1-3)の何れかで表されるイソシアネート化合物(A1);
【0014】
【化1】
(式中、R
1はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基であり、jは0または1~4の整数である。R
2はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基の何れかである。)
【0015】
下記構造式(A2-1)または(A2-2)で表されるイソシアネート化合物(A2);
【0016】
【化2】
(式中、lは0または1以上の整数であり、mは1または2である。R
3はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、または式中括弧内で表される構造部位と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点の何れかであり、kは0、1または2であり、nは0または1~8の整数である。)
【0017】
イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;
【0018】
下記構造式(1)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのイソシアネート化合物の変性体であるイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等も用いることができる。これらの分子内に芳香環または脂環構造を有するイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0019】
【化3】
(式中、R
4はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~6の炭化水素基の何れかである。R
5はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、又は構造式(1)で表される構造部位と*印が付されたメチレン基を介して連結する結合点の何れかである。mは0又は1~3の整数であり、lは1以上の整数である。)
【0020】
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)は、ジペンタエリスリトールの水酸基の一部を(メタ)アクリレート化したものであり、前記イソシアネート化合物(A)と反応し得る水酸基を有するものであれば、単一化合物であっても良いし、複数の化合物の混合物であっても良い。つまり、前者の場合には、前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)として、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートをそれぞれ単独で用いることができる。また、後者の場合には、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを1種以上含有し混合物として用いることができ、さらに、必要に応じて、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを含有することもできる。
【0021】
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)は、耐擦傷性、柔軟性、耐カール性、及び耐衝撃性に優れた硬化塗膜を形成可能なウレタン(メタ)アクリレート樹脂を得られることから、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(b1)を必須として含有することが好ましく、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(b1)及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(b2)を含有することがより好ましく、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(b1)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(b2)、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(b3)を含有することが特に好ましい。
【0022】
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)が、前記ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(b1)を含有する場合、前記ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(b1)の前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)中の含有量は、耐擦傷性、柔軟性、耐カール性、及び耐衝撃性に優れた硬化塗膜を形成可能なウレタン(メタ)アクリレート樹脂を得られることから、10~50質量%の範囲が好ましく、12~45質量%の範囲がより好ましく、15~40質量%の範囲が特に好ましい。
【0023】
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)が、前記ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(b1)及び前記ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(b2)を含有する場合、耐擦傷性、柔軟性、耐カール性、及び耐衝撃性に優れた硬化塗膜を形成可能なウレタン(メタ)アクリレート樹脂を得られることから、前記ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(b1)と前記ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(b2)の含有量の比[(b1)/(b2)]は、20/80~80/20の範囲が好ましく、30/70~60/40の範囲がより好ましい。
【0024】
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)が、前記ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(b3)を含有する場合、耐擦傷性、柔軟性、耐カール性、及び耐衝撃性に優れた硬化塗膜を形成可能なウレタン(メタ)アクリレート樹脂を得られることから、前記ジペンタエリスリトール(ヘキサ)アクリレート(b3)の前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)中の含有量は、1~60質量%の範囲が好ましく、5~50質量%の範囲がより好ましい。
【0025】
なお、本発明において、前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)中の各成分の含有量、及び各成分の含有量の比は、下記条件で測定した液体クロマトグラフィーチャートの面積比から算出される値である。
[測定条件]
装置:株式会社島津製作所製「LCMS-2010EV」
データ処理:株式会社島津製作所製「LCMS Solution」
カラム:東ソー株式会社製「ODS-100V」(2.0mmID×150mm、3μm)40℃
溶離液:水/アセトニトリル、0.4mL/分
検出器:PDA、MS
試料調整:1.資料50mgをアセトニトリル(LC用)10mlに溶解
2.30秒間ボルテックスで撹拌
3.30分間静置
4.0.2μmろ過フィルターに通液し測定試料とした
面積比の計算:UV波長210nmで算出
【0026】
また、前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)の水酸基価は、耐擦傷性、柔軟性、耐カール性、及び耐衝撃性に優れた硬化塗膜を形成可能なウレタン(メタ)アクリレート樹脂を得られることから、120mgKOH/g超え150mgKOH/g以下であり、122~145mgKOH/gの範囲が好ましく、122~140mgKOH/gの範囲がより好ましい。
【0027】
なお、前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)の水酸基価は、JIS K 0070(1992)中和滴定法に準じて測定される実測値、または液体クロマトグラフィーチャートの面積比から算出した各成分の組成比から算出される計算値である。
【0028】
前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)の製造方法は、例えば、ジペンタエリスリトールとアクリル酸とをエステル化反応させる方法が挙げられる。この方法で製造する場合、副生成物として、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)同士の付加反応物等の高分子量成分(b’)等が生成することがあるが、前記高分子量成分(b’)を精製除去して用いても良いし、前記高分子量成分(b’)を含むジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)粗生成物のまま前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料としても良い。この時、前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)粗生成物中の前記高分子量成分(b’)の含有量は、1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0029】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、前記イソシアネート化合物(A)、及び前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)を必須の反応原料とするが、さらに、必要に応じて、その他のモノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物、その他のポリオール化合物等を用いることもできる。
【0030】
前記その他のモノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート化合物;アクリル酸4-ヒドロキシフェニル、アクリル酸β-ヒドロキシフェネチル、アクリル酸4-ヒドロキシフェネチル、アクリル酸1-フェニル-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸3-ヒドロキシ-4-アセチルフェニル、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート化合物;前記(メタ)アクリレート化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるポリエーテル変性(メタ)アクリレート化合物;前記(メタ)アクリレート化合物とε-カプロラクトン等のラクトン化合物との重縮合によって得られるラクトン変性(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。これらのヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、耐擦傷性、柔軟性、耐カール性、及び耐衝撃性に優れた硬化塗膜を形成可能なウレタン(メタ)アクリレート樹脂を得られることから、脂肪族(メタ)アクリレート化合物又はそのポリエーテル変性体、ラクトン変性体が好ましい。また、これらその他のモノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物を用いる場合には、本発明の効果が十分に奏されることから、前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)とモノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物との合計質量に対する前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)の割合が70質量%以上となることが好ましく、90質量%以上となることがより好ましい。
【0031】
前記その他のポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン、トリメチロールメタンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のポリオールモノマー;前記ポリオールモノマーと、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸との共縮合によって得られるポリエステルポリオール;前記ポリオールモノマーと、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、3-メチル-δ-バレロラクトン等の種々のラクトンとの重縮合反応によって得られるラクトン型ポリエステルポリオール;前記ポリオールモノマーと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル等の環状エーテル化合物との開環重合によって得られるポリエーテルポリオールなどが挙げられる。これらのポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらその他のポリオール化合物を用いる場合には、本発明の効果が十分に奏されることから、前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)とその他のポリオール化合物との合計質量に対する前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)の割合が70質量%以上となることが好ましく、90質量%以上となることがより好ましい。
【0032】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を製造する方法は、例えば、前記イソシアネート化合物(A)と前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)とを、前記イソシアネート(A)が有するイソシアネート基と、前記ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)が有する水酸基とのモル比[(NCO)/(OH)]が、1/1.05~1/2の範囲となる割合で用い、20~120℃の温度範囲内で、必要に応じて、ウレタン化触媒を用いて行う方法が挙げられる。
【0033】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の(メタ)アクリロイル基当量は、耐擦傷性、柔軟性、耐カール性、及び耐衝撃性に優れた硬化塗膜を形成できることから、100~500g/eqの範囲が好ましく、100~250g/eqの範囲がより好ましい。なお、本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート樹脂の(メタ)アクリロイル基当量は、反応原料から理論値として算出される値である。
【0034】
また、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、耐擦傷性、柔軟性、耐カール性、及び耐衝撃性に優れた硬化塗膜を形成できることから、1,500~100,000の範囲が好ましく、3,000~5,0000の範囲がより好ましい。
【0035】
なお、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂と光重合開始剤とを含有するものである。
【0037】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、3,3′-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4′-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4′-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4′-ジクロロベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなど各種ベンゾフェノン;
【0038】
キサントン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンなどのキサントン、チオキサントン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなど各種アシロインエーテル;
【0039】
ベンジル、ジアセチルなどのα-ジケトン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、p-トリルジスルフィドなどのスルフィド類;4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルなど各種安息香酸;
【0040】
3,3′-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノ)クマリン、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4′-メチルジメチルスルフィド、2,2′-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタ-ル、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾリルニ量体、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-[ジ-(エトキシカルボニルメチル)アミノ]フェニル-S-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(4-エトキシ)フェニル-S-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-エトキシ)フェニル-S-トリアジンアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、β-クロルアントラキノンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0041】
また、前記光重合開始剤の中でも、より広範囲の波長の光に対して活性を示し、前記硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の硬化性を向上できることから、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2′-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンの群から選ばれる1種または2種類以上の混合系を用いることが好ましい。
【0042】
前記光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」(Runtec社製)等が挙げられる。
【0043】
前記光重合開始剤の添加量は、光重合開始剤としての機能を十分に発揮し得る量であり、かつ、結晶の析出や塗膜物性の劣化が生じない範囲が好ましく、具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100質量部に対して、0.05~20質量部の範囲が好ましく、0.1~10質量部の範囲がより好ましい。
【0044】
また、前記硬化性樹脂組成物は、前記硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の硬化性を向上できることから、さらに、光増感剤を含有することもできる。
【0045】
前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン化合物、o-トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂のほかに、その他の光硬化性化合物(R)や有機溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、シランカップリング剤、リン酸エステル化合物、有機ビーズ、無機微粒子、無機フィラー、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、防曇剤、着色剤等を含有しても良い。
【0047】
前記その他の光硬化性化合物(R)としては、例えば、各種の(メタ)アクリレート単量体や、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂以外のその他のウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、デンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリロイル基含有アクリル樹脂等が挙げられる。
【0048】
前記(メタ)アクリレート単量体は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレートなどのモノ(メタ)アクリレート;
【0049】
ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート;
【0050】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;
【0051】
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート;上記した各種多官能(メタ)アクリレートの一部または全部がポリオキシアルキレン鎖やポリエステル鎖で変性された(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0052】
前記その他のウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、前記イソシアネート化合物(A)以外のイソシアネート化合物を用いたウレタン(メタ)アクリレート樹脂や、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B)以外のヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物を用いたウレタン(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。
【0053】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を(メタ)アクリル酸またはその誘導体と反応させて(メタ)アクリレート化したものが挙げられる。
【0054】
前記デンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂とは、規則性のある多分岐構造を有し、各分岐鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂のことをいい、デンドリマー型の他、ハイパーブランチ型またはスターポリマーなどと呼ばれている。このような化合物は、例えば、下記構造式(2-1)~(2-8)で表されるものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、規則性のある多分岐構造を有し、各分岐鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂であればいずれのものも用いることができる。
【0055】
【化4】
(式中R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4は炭素原子数1~4の炭化水素基である。)
【0056】
【化5】
(式中R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4は炭素原子数1~4の炭化水素基である。)
【0057】
このようなデンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、大阪有機化学株式会社製「ビスコート#1000」[重量平均分子量(Mw)1,500~2,000、一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数14]、「ビスコート1020」[重量平均分子量(Mw)1,000~3,000]、「SIRIUS501」[重量平均分子量(Mw)15,000~23,000]、MIWON社製「SP-1106」[重量平均分子量(Mw)1,630、一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数18]、SARTOMER社製「CN2301」、「CN2302」[一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数16]、「CN2303」[一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数6]、「CN2304」[一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数18]、新日鉄住金化学株式会社製「エスドリマーHU-22」、新中村化学株式会社製「A-HBR-5」、第一工業製薬株式会社製「ニューフロンティアR-1150」、日産化学株式会社製「ハイパーテックUR-101」等の市販品を用いても良い。
【0058】
前記デンドリマー型(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000~30,000の範囲が好ましい。また、一分子あたりの平均(メタ)アクリロイル基数は、5~30の範囲が好ましい。
【0059】
前記(メタ)アクリロイル基含有アクリル樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(α)を必須の成分として重合させて得られるアクリル樹脂中間体に、これらの官能基と反応し得る反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(β)を更に反応させることにより(メタ)アクリロイル基を導入して得られるものが挙げられる。
【0060】
前記反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー(α)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレートモノマー;2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のグリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートモノマー(α)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0061】
前記アクリル樹脂中間体は、前記(メタ)アクリレートモノマー(α)の他、必要に応じて、その他の重合性不飽和基含有化合物を共重合させたものであっても良い。前記その他の重合性不飽和基含有化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等のシクロ環含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体などが挙げられる。これらの重合性不飽和基含有化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0062】
前記アクリル樹脂中間体が、前記(メタ)アクリレートモノマー(α)と、前記その他の重合性不飽和基含有化合物とを共重合させて得られるものである場合、両者の反応割合は、硬化性に優れる(メタ)アクリロイル基含有アクリル樹脂となることから、両者の合計に対する前記(メタ)アクリレートモノマー(α)の割合が20~70質量%の範囲が好ましく、30~60質量%の範囲がより好ましい。
【0063】
前記アクリル樹脂中間体は、一般的なアクリル樹脂と同様の方法にて製造することができる。例えば、重合開始剤の存在下、60~150℃の温度範囲で各種モノマーを重合させることにより製造することができる。重合の方法は、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げられる。また、重合様式は、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。前記溶液重合法で行う場合には、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤などを用いることが好ましい。
【0064】
前記(メタ)アクリレートモノマー(β)は、前記(メタ)アクリレートモノマー(α)が有する反応性官能基と反応し得るものでれば特に限定されないが、反応性の観点から以下の組み合わせであることが好ましい。即ち、前記(メタ)アクリレートモノマー(α)として前記水酸基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレートモノマー(β)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレートモノマー(α)として前記カルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレートモノマー(β)として前記グリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレートモノマー(α)として前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレートモノマー(β)として前記水酸基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレートモノマー(α)として前記グリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレートモノマー(β)として前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0065】
前記アクリル樹脂中間体と前記(メタ)アクリレートモノマー(β)との反応は、例えば、該反応がエステル化反応である場合には、60~150℃の温度範囲で、トリフェニルホスフィン等のエステル化触媒を適宜用いて行う方法等が挙げられる。また、該反応がウレタン化反応である場合には、50~120℃の温度範囲で、アクリル樹脂中間体に前記(メタ)アクリレートモノマー(α)を滴下しながら反応させる方法等が挙げられる。
【0066】
前記(メタ)アクリロイル基含有アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000~80,000の範囲が好ましい。また、(メタ)アクリロイル基当量は、100~500g/当量の範囲が好ましい。
【0067】
これらその他の光硬化性化合物(R)はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらその他の光硬化性化合物(R)を用いる場合には、本発明のウレタン(メタ)アクリレート樹脂とその他の光硬化性化合物(R)との合計100質量部中、本発明のウレタン(メタ)アクリレート樹脂が5質量部以上となる割合で用いることが好ましく、20質量部以上となる割合で用いることがより好ましく、80質量部以上となる割合で用いることが特に好ましい。
【0068】
前記有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、イソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの有機溶剤は、主に硬化性組成物の粘度を調整する目的で用いるが、通常は、不揮発分が10~80質量%の範囲となるように調整することが好ましい。
【0069】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2’-キサンテンカルボキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-o-ニトロベンジロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0070】
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0071】
前記シリコン系添加剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、フッ素変性ジメチルポリシロキサン共重合体、アミノ変性ジメチルポリシロキサン共重合体等のアルキル基やフェニル基を有するポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらのシリコン系添加剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0072】
前記フッ素系添加剤としては、例えば、DIC株式会社製「メガフェース」シリーズ等が挙げられる。これらのフッ素系添加剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0073】
前記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル・ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のビニル系のシランカップリング剤;
【0074】
ジエトキシ(グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、2-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系のシランカップリング剤;
【0075】
p-スチリルトリメトキシシラン等のスチレン系のシランカップリング剤;
【0076】
3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ系のシランカップリング剤;
【0077】
N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系のシランカップリング剤;
【0078】
3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系のシランカップリング剤;
【0079】
3-クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル系のシランカップリング剤;
【0080】
3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキンシラン等のメルカプト系のシランカップリング剤;
【0081】
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファイド等のスルフィド系のシランカップリング剤;
【0082】
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系のシランカップリング剤などが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0083】
前記リン酸エステル化合物としては、例えば、分子構造中に(メタ)アクリロイル基を有するものが挙げられ、市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製「カヤマーPM-2」、「カヤマーPM-21」、共栄社化学株式会社製「ライトエステルP-1M」「ライトエステルP-2M」、「ライトアクリレートP-1A(N)」、SOLVAY社製「SIPOMER PAM 100」、「SIPOMER PAM 200」、「SIPOMER PAM 300」、「SIPOMER PAM 4000」、大阪有機化学工業社製「ビスコート#3PA」、「ビスコート#3PMA」、第一工業製薬社製「ニューフロンティア S-23A」;分子構造中にアリルエーテル基を有するリン酸エステル化合物であるSOLVAY社製「SIPOMER PAM 5000」等が挙げられる。
【0084】
前記有機ビーズとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチルビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリアクリルスチレンビーズ、シリコーンビ-ズ、ガラスビーズ、アクリルビーズ、ベンゾグアナミン系樹脂ビーズ、メラミン系樹脂ビーズ、ポリオレフィン系樹脂ビーズ、ポリエステル系樹脂ビーズ、ポリアミド樹脂ビーズ、ポリイミド系樹脂ビーズ、ポリフッ化エチレン樹脂ビーズ、ポリエチレン樹脂ビーズ等が挙げられる。これらの有機ビーズは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これら有機ビーズの平均粒径は、1~10μmの範囲であることが好ましい。
【0085】
前記無機微粒子は、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム、三酸化アンチモン等の微粒子が挙げられる。これらの無機微粒子は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これら無機微粒子の平均粒径は、95~250nmの範囲であることが好ましく、特に100~180nmの範囲であることがより好ましい。
【0086】
前記無機微粒子を含有する場合には、分散補助剤を用いることができる。前記分散補助剤としては、例えば、イソプロピルアシッドホスフェート、トリイソデシルホスファイト、エチレンオキサイド変性リン酸ジメタクリレート等のリン酸エステル化合物等が挙げられる。これらの分散補助剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記分散補助剤の市販品としては、例えば、日本化薬株式会社製「カヤマーPM-21」、「カヤマーPM-2」、共栄社化学株式会社製「ライトエステルP-2M」等が挙げられる。
【0087】
本発明の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物を硬化させて得られたものである。
【0088】
前記硬化性組成物の硬化方法としては、方法としては、例えば、加熱する方法、紫外線等の活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
【0089】
前記加熱する方法としては、60~200℃の温度領域で0.5分~60分加熱することで硬化させることができる。
【0090】
また、前記活性エネルギー線を照射する方法としては、例えば、紫外線の場合、紫外線発生源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等の紫外線ランプを用いる方法にて硬化させることができる。
【0091】
前記活性エネルギー線としては、前記紫外線の他に、例えば、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線も用いることができる。
【0092】
前記活性エネルギー線の照射量は、0.05~5J/cm2の範囲であることが好ましく、0.1~3J/cm2の範囲であることがより好ましく、0.1~1J/cm2の範囲であることが特に好ましい。なお、上記の紫外線照射量は、UVチェッカーUVR-N1(日本電池株式会社製)を用いて300~390nmの波長域において測定した値に基づく。
【0093】
本発明の積層フィルムは、基材上に、前記硬化物からなる層を有するものである。
【0094】
本発明の積層フィルムの製造方法としては、例えば、前記基材の少なくとも1面に、前記硬化性樹脂組成物を塗布し、次いで活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
【0095】
前記基材としては、例えば、金属基材、プラスチック基材、ガラス基材、紙基材、木材基材、繊維質基材等が挙げられる。これらの基材の中でも、前記硬化性樹脂組成物との密着性に優れることからプラスチック基材が好ましい。
【0096】
前記プラスチック基材の材質としては、ポリエステル、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ABS樹脂とポリカーボネートとの複合樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン(COP)等)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド等が挙げられる。
【0097】
前記プラスチック基材としては、例えば、携帯電話、家電製品、自動車内外装材、OA機器等のプラスチック成形品が挙げられる。また、プラスチックを素材としたフィルム基材も用いることができる。
【0098】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、フローコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー、刷毛塗り、アプリケーター、バーコーター等を用いた塗布方法が挙げられる。
【0099】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて形成する塗膜の膜厚は、使用される用途に応じて適宜調整可能であるが、通常は、0.01~50μmの範囲であることが好ましい。
【0100】
本発明の積層フィルムは、前記基材と、前記硬化物からなる層のほかに、反射防止フィルム、拡散フィルム、偏光フィルム等の機能性フィルム層を有していてもよい。
【0101】
本発明の積層フィルムは、耐擦傷性、柔軟性、耐カール性、及び耐衝撃性に優れた硬化塗膜を有することから、基材表面を保護するコート層として用いることができる。例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの前面板用途に好適に用いることができる。
【0102】
また、本発明の積層フィルムを有する物品としては、例えば、携帯電話、家電筐体、自動車のバンパー、OA機器等のプラスチック成形品等が挙げられる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
【0104】
なお、本実施例において、水酸基価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法に準じて測定した実測値である。
【0105】
なお、本実施例において、重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
【0106】
測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC-8220
カラム ; 東ソー株式会社製ガードカラムHXL-H
+東ソー株式会社製 TSKgel G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 SC-8010
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0107】
なお、本実施例において液体クロマトグラフィーチャートは下記条件で測定した。
[測定条件]
装置:株式会社島津製作所製「LCMS-2010EV」
データ処理:株式会社島津製作所製「LCMS Solution」
カラム:東ソー株式会社製「ODS-100V」(2.0mmID×150mm、3μm)40℃
溶離液:水/アセトニトリル、0.4mL/分
検出器:PDA、MS
試料調整:1.資料50mgをアセトニトリル(LC用)10mlに溶解
2.30秒間ボルテックスで撹拌
3.30分間静置
4.0.2μmろ過フィルターに通液し測定試料とする
面積比の計算:UV波長210nmで算出
【0108】
(製造例1:ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B1)の製造)
温度計、撹拌器、及びコンデンサーを備えたフラスコに、アクリル酸280質量部、ジペンタエリスリトール180質量部、硫酸15質量部、塩化第二銅1.5質量部、トルエン300質量部を仕込んだ。撹拌しながら105℃まで昇温し、系中を還流させながら同温度で13時間反応させた。生成した水は65質量部であった。反応混合物にトルエン425質量部を追加し、蒸留水200質量部で洗浄した。更に、20%水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応混合物を中和し、蒸留水100質量部で洗浄した。樹脂固形分に対して500ppm量のハイドロキノンモノメチルエーテルを添加した後、トルエンを留去し、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B1)を得た。このジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B1)の水酸基価は、125mgKOH/g(実測値)であった。また、液体クロマトグラフィーチャートの面積比から算出されるジペンタエリスリトールテトラアクリレート(b1)の含有量は23質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(b2)の含有量は36質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(b3)の含有量は26質量%、高分子量成分(b’)の含有量は15質量%であった。
【0109】
(製造例2:ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B2)の製造)
温度計、撹拌器、及びコンデンサーを備えたフラスコに、アクリル酸250質量部、ジペンタエリスリトール180質量部、硫酸15質量部、塩化第二銅1.5質量部、トルエン300質量部を仕込んだ。撹拌しながら105℃まで昇温し、系中を還流させながら同温度で13時間反応させた。生成した水は64質量部であった。反応混合物にトルエン425質量部を追加し、蒸留水200質量部で洗浄した。更に、20%水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応混合物を中和し、蒸留水100質量部で洗浄した。樹脂固形分に対して500ppm量のハイドロキノンモノメチルエーテルを添加した後、トルエンを留去し、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B2)を得た。このジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B2)の水酸基価は、130mgKOH/gであった。また、液体クロマトグラフィーチャートの面積比から算出されるジペンタエリスリトールテトラアクリレート(b1)の含有量は26質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(b2)の含有量は39質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(b3)の含有量は24質量%、高分子量成分(b’)の含有量は11質量%であった。
【0110】
(製造例3:ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B3)の製造)
温度計、撹拌器、及びコンデンサーを備えたフラスコに、アクリル酸220質量部、ジペンタエリスリトール180質量部、硫酸15質量部、塩化第二銅1.5質量部、トルエン300質量部を仕込んだ。撹拌しながら105℃まで昇温し、系中を還流させながら同温度で13時間反応させた。生成した水は61質量部であった。反応混合物にトルエン425質量部を追加し、蒸留水200質量部で洗浄した。更に、20%水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応混合物を中和し、蒸留水100質量部で洗浄した。樹脂固形分に対して500ppm量のハイドロキノンモノメチルエーテルを添加した後、トルエンを留去し、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B3)を得た。このジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B3)の水酸基価は、140mgKOH/gであった。また、液体クロマトグラフィーチャートの面積比から算出されるジペンタエリスリトールテトラアクリレート(b1)の含有量は28質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(b2)の含有量は42質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(b3)の含有量は22質量%、高分子量成分(b’)の含有量は8質量%であった。
【0111】
(比較製造例1:ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B4)の製造)
温度計、撹拌器、及びコンデンサーを備えたフラスコに、アクリル酸460質量部、ジペンタエリスリトール180質量部、硫酸15質量部、塩化第二銅1.5質量部、トルエン300質量部を仕込んだ。撹拌しながら105℃まで昇温し、系中を還流させながら同温度で13時間反応させた。生成した水は71.8質量部であった。反応混合物にトルエン425質量部を追加し、蒸留水200質量部で洗浄した。更に、20%水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応混合物を中和し、蒸留水100質量部で洗浄した。樹脂固形分に対して500ppm量のハイドロキノンモノメチルエーテルを添加した後、トルエンを留去し、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B4)を得た。このジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B4)の水酸基価は、43mgKOH/gであった。また、液体クロマトグラフィーチャートの面積比から算出されるジペンタエリスリトールテトラアクリレート(b1)の含有量は0.2質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(b2)の含有量は35.2質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(b3)の含有量は62.1質量%、高分子量成分(b’)の含有量は2.5質量%であった。
【0112】
(比較製造例2:ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B5)の製造)
温度計、撹拌器、及びコンデンサーを備えたフラスコに、アクリル酸180質量部、ジペンタエリスリトール180質量部、硫酸15質量部、塩化第二銅1.5質量部、トルエン300質量部を仕込んだ。撹拌しながら105℃まで昇温し、系中を還流させながら同温度で13時間反応させた。生成した水は50質量部であった。反応混合物にトルエン425質量部を追加し、蒸留水200質量部で洗浄した。更に、20%水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応混合物を中和し、蒸留水100質量部で洗浄した。樹脂固形分に対して500ppm量のハイドロキノンモノメチルエーテルを添加した後、トルエンを留去し、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B5)を得た。このジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B5)の水酸基価は、160mgKOH/gであった。また、液体クロマトグラフィーチャートの面積比から算出されるジペンタエリスリトールテトラアクリレート(b1)の含有量は36質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(b2)の含有量は48質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(b3)の含有量は8質量%、高分子量成分(b’)の含有量は8質量%であった。
【0113】
(実施例1:ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)の調製)
四つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成株式会社製「50M-HDI」)84量部、酢酸ブチル135質量部、ジブチル錫ジラウレート0.25質量部、メトキノン0.25質量部、及びジブチルヒドロキシトルエン4.0質量部を加え、フラスコの内温が60℃になるまで加温した。次いで、製造例1で得たジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート(B1)(水酸基価:125mgKOH/g)460質量部を約2時間かけて分割投入し、85℃で8時間反応させることでウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)を得た。このウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は、6,000であり、原料の仕込み比から算出される(メタ)アクリロイル基当量の理論値は、118g/当量であった。
【0114】
(実施例2~4:ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(2)~(4)の調製)
ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、イソシアネート化合物及び酢酸ブチルを、表1に示した組成及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にてウレタン(メタ)アクリレート樹脂(2)~(4)を得た。
【0115】
(比較例1及び2:ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(C1)及び(C2)の調製)
ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、イソシアネート化合物及び酢酸ブチルを、表1に示した組成及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にてウレタン(メタ)アクリレート樹脂(C1)及び(C2)を得た。
【0116】
【0117】
表1中の「イソシアネート化合物(A1)」は、ヘキサメチレンジイソシアネートを示す。
【0118】
表1中の「イソシアネート化合物(A2)」は、ペンタメチレンジイソシアネートを示す。
【0119】
(実施例5:積層フィルム(1)の作成)
実施例1で得たウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)125質量部、光重合開始剤(IGM社製「Omnirad-184」)3質量部、メチルエチルケトン72質量部を混合し、硬化性樹脂組成物を得た。次いで、得られた硬化性樹脂組成物を厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」と略記する。)上にバーコーターで塗布し、80℃で2分間乾燥させた。次いで、窒素雰囲気下、80W高圧水銀ランプで紫外線を300mJ/cm2照射し、PETフィルム上に膜厚5μmの硬化塗膜を有する積層フィルムを得た。
【0120】
(実施例6~8:積層フィルム(2)~(4)の作成)
実施例5で用いたウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)に代えて、実施例2~4で得たウレタン(メタ)アクリレート樹脂(2)~(4)をそれぞれ用いた以外は、実施例5と同様の方法にて、積層フィルム(2)~(4)を得た。
【0121】
(比較例3及び4:積層フィルム(R1)及び(R2)の作成)
実施例5で用いたウレタン(メタ)アクリレート樹脂(1)に代えて、比較例1及び2で得たウレタン(メタ)アクリレート樹脂(C1)及び(C2)をそれぞれ用いた以外は、実施例5と同様の方法にて、積層フィルム(R1)及び(R2)を得た。
【0122】
上記の実施例及び比較例で得られた積層フィルムを用いて、下記の評価を行った。
【0123】
[塗膜硬度の測定方法]
実施例及び比較例で得られた積層フィルムにおいて、JIS K5600-5-4〔引っかき硬度(鉛筆法)〕に準拠し、硬化性樹脂組成物の硬化塗膜表面の硬度を500g荷重条件下で測定した。1つの硬度につき5回測定を行い、傷が付かなかった測定が4回以上あった硬度を硬化塗膜の硬度とした。
【0124】
[耐擦傷性の評価方法]
スチールウール(日本スチールウール株式会社製「ボンスター#0000」)0.5gで直径2.4センチメートルの円盤状の圧子を包み、該圧子に500g重の荷重をかけて、実施例及び比較例で得られた積層フィルムの硬化塗膜表面を200往復させる磨耗試験を行った。磨耗試験前後の塗膜のヘーズ値を、自動ヘーズコンピューター(スガ試験機株式会社製「HZ-2」)を用いて測定し、それらの差の値(dH)で耐擦傷性を評価した。なお、差の値(dH)が小さいほど、擦傷に対する耐性が高い。
【0125】
[柔軟性の評価方法]
マンドレル試験機(TP技研株式会社製「屈曲試験機」)を用いて実施例及び比較例で得られた積層フィルムを試験棒に巻きつけ、クラックが生じるか否かを目視確認する試験を行い、クラックが生じない試験棒の最小径を評価結果とした。試験棒は直径2mmのものから12mmまで1mm刻みのものを用いた。
【0126】
[耐カール性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた積層フィルムから5cm四方の塗膜を切り出して試験片を得、該試験片について4角の水平からの浮きを測定し、その平均値(mm)で評価した。値が小さいほどカールが小さく、耐カール性に優れる。
【0127】
[耐衝撃性の評価方法]
JIS K5600-5-3(耐おもり落下性)を参照して試験を行った。具体的には以下の通り。
[装置]
おもり:先端にJIS B 1501「五軸受用鋼球」に規定された玉軸受用鋼球(質量300.0±0.5g、直径25.40mm、等級60)を糸で吊るしたもの。
鋼製台:縦300mm、横200mm、厚さ30mmの鋼製台をコンクリート床上に水平に設置したもの。
[操作]
1.積層フィルムの硬化塗膜表面を上向きにして鋼製台の上に固定した。
2.積層フィルムの表面からおもりの下端までの距離が50mmとなる位置におもりを吊るし、振れや回転が停止したのを確認した後、積層フィルム上に落下させた。
3.落下試験後の積層フィルムを室内に1時間静置した後、塗面の損傷を調べた。
4.積層フィルムの表面からおもりの下端までの距離を10mmずつ離して試験を続け、硬化塗膜の割れや剥がれが生じない最大の距離で評価した。
【0128】
実施例5~8で作成した積層フィルム(1)~(4)ならびに比較例3及び4で作成した積層フィルム(R1)及び(R2)の評価結果を表2に示す。
【0129】
【0130】
表2に示した実施例5~8は、本発明のウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いた積層フィルムの例であるが、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の硬化塗膜は、塗膜硬度に優れており、また、前記積層フィルムは、優れた耐擦傷性、柔軟性、耐カール性及び耐衝撃性を有することが確認できた。
【0131】
一方、比較例3は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として水酸基価が43mgKOH/gのジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートを用いた例であるが、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の硬化塗膜は、塗膜硬度に優れるものの、該ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いた積層フィルムは、柔軟性、耐カール性及び耐衝撃性が著しく不十分であることが確認できた。
【0132】
比較例4は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として水酸基価が160mgKOH/gのジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートを用いた例であるが、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の硬化塗膜は、塗膜硬度が不十分であり、また、該ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いた積層フィルムは、耐擦傷性が著しく不十分であることが確認できた。