(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】長尺積層体、その製造方法及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
B32B 15/082 20060101AFI20230301BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B32B15/082 B
H05K1/03 630D
(21)【出願番号】P 2019566471
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2019000948
(87)【国際公開番号】W WO2019142790
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2018006772
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018078253
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018163696
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 渉
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋也
(72)【発明者】
【氏名】山邊 敦美
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/080260(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104297(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/084867(WO,A1)
【文献】特開2017-136755(JP,A)
【文献】米国特許第04824511(US,A)
【文献】特開2017-002115(JP,A)
【文献】特開2006-054357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H05K 1/03, 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の金属箔からなる金属層の1層以上と、前記金属層に接するフッ素樹脂層の1層以上と、前記フッ素樹脂層に接
しポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル、又は液晶ポリエステルアミドを含む耐熱性樹脂層の1層以上とを有し、前記フッ素樹脂層の1層あたりの厚さが1~10μmであり、前記耐熱性樹脂層の合計の厚さに対する前記フッ素樹脂層の合計の厚さの比が0.3~3.0であり、前記フッ素樹脂層と前記耐熱性樹脂層の合計の厚さが50μm以下であり、前記フッ素樹脂層が分散剤を含み、
前記分散剤がノニオン性界面活性剤を含み、前記フッ素樹脂層に含まれる分散剤の割合が前記フッ素樹脂層に対して0.1~2.0質量%であることを特徴とする、長尺積層体。
【請求項2】
前記フッ素樹脂層が、フッ素樹脂を主成分とする、請求項1に記載の長尺積層体。
【請求項3】
前記フッ素樹脂の融点が、270℃以上である、請求項1又は2に記載の長尺積層体。
【請求項4】
前記フッ素樹脂が、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の長尺積層体。
【請求項5】
前記フッ素樹脂層と前記耐熱性樹脂層の合計の厚さが、25μm以下である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の長尺積層体。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の長尺積層体を加工してなる、プリント配線板。
【請求項7】
長尺の金属箔からなる金属層の1層以上と、前記金属層に接するフッ素樹脂層の1層以上と、前記フッ素樹脂層に接
しポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル、又は液晶ポリエステルアミドを含む耐熱性樹脂層の1層以上とを有する長尺積層体の製造方法であり、
長尺の金属箔又は長尺の耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら、前記金属箔又は前記耐熱性樹脂フィルムに下記液状組成物を塗布してウェット膜を形成し、形成された、長尺のウェット膜付き金属箔又は長尺のウェット膜付き耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら、ウェット膜を加熱して下記液状媒体を除去し下記樹脂パウダーを溶融することによりフッ素樹脂層を形成して、フッ素樹脂層付き金属箔又はフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムを得ること、
及び、
前記フッ素樹脂層付き金属箔を製造した場合は、該フッ素樹脂層付き金属箔と長尺の耐熱性樹脂フィルムを含む基材とを、前記フッ素樹脂層と前記耐熱性樹脂フィルムとが接するように、積層すること、
前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムを製造した場合は、該フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムと長尺の金属箔を含む基材とを、前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムのフッ素樹脂層と前記金属箔とが接するように、積層すること、
を特徴とし、
前記フッ素樹脂層付き金属箔及び前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムにおける前記フッ素樹脂層に含まれる分散剤の割合が、フッ素樹脂層に対して0.1~2.0質量%である、長尺積層体の製造方法。
液状組成物:液状媒体と前記液状媒体に分散した樹脂パウダーと分散剤とを含み、
前記分散剤がノニオン性界面活性剤を含み、前記樹脂パウダーがフッ素樹脂を主成分とする液状組成物。
【請求項8】
前記フッ素樹脂層付き金属箔と、前記耐熱性樹脂フィルムを含む基材とを、一対の金属ロール又は一対のエンドレスベルトの間に通過させて積層する、請求項
7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムと、前記金属箔を含む基材とを、一対の金属ロール又は一対のエンドレスベルトの間に通過させて積層する、請求項
7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記フッ素樹脂層付き金属箔及び前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムにおける前記フッ素樹脂層の表面の十点平均粗さRz
JISが、0.05~3.0μmである、請求項
7~
9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記耐熱性樹脂フィルムが、JIS R 3257:1999に記載の静滴法で測定した、その表面の水接触角が5°~60°である、請求項
7~
10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記耐熱性樹脂フィルムが、大気圧プラズマ処理又は真空プラズマ処理により、表面処理されたフィルムである、請求項
7~
11のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔からなる金属層と樹脂層とを有する長尺積層体、その製造方法及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
金属箔からなる金属層と樹脂層とを有する積層体(銅張積層板等)は、金属層をエッチング等によって加工することによってプリント配線板として用いられる。電子機器の小型化及び通信量の大容量化に伴い、プリント配線板には、小型化に対応する樹脂層の薄膜化及び大容量化に対応する信号伝送の高速化が求められる。
樹脂層を薄膜化すると、インピーダンスの整合上、導体回路の幅は細くなる。そのため導体回路の抵抗が上昇し、信号伝送の高速化が困難になる。樹脂層を薄膜化すると同時に導体回路の幅を広げるためには、樹脂層に比誘電率及び誘電正接が低い材料を用いる必要がある。
【0003】
フッ素樹脂は、比誘電率及び誘電正接が低いことから、信号伝送の高速化を指向するプリント配線板の樹脂層の材料として理想的な材料と考えられる。しかし、フッ素樹脂フィルムは、高温での寸法安定性が従来のポリイミドフィルム等の耐熱性樹脂フィルムに比較して低い。そのため、信号伝送の高速化及び寸法安定性を両立したプリント配線板用の長尺積層体として、フッ素樹脂フィルムと耐熱性樹脂フィルムとを積層して樹脂層を形成した積層体が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/104297号
【文献】特開2016-87799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載された長尺積層体は、ロールツーロールで搬送される長尺のフッ素樹脂フィルムと、長尺の金属箔又は耐熱性樹脂フィルムとを一対の金属ロールの間に通過させて積層する方法によって製造される。しかし、特許文献1、2に記載された方法では、フッ素樹脂フィルムの剛性及び寸法安定性の低さから、フッ素樹脂フィルムが薄いほど積層後にフッ素樹脂フィルムからなるフッ素樹脂層にシワが発生しやすい。そのため、フッ素樹脂フィルムを用いて製造される長尺積層体においては、樹脂層の薄膜化には限界がある。そして、樹脂層を薄膜化できない場合、フレキシブルプリント配線板の耐折性が低下するという問題も生じる。
【0006】
本発明は、樹脂層の薄膜化及び信号伝送の高速化を両立でき、寸法安定性及び耐折性に優れ、かつフッ素樹脂層にシワのないプリント配線板を得ることができる長尺積層体、シワのない薄膜のフッ素樹脂層を有する長尺積層体を製造できる方法、及び樹脂層の薄膜化及び信号伝送の高速化を両立でき、寸法安定性及び耐折性に優れ、かつフッ素樹脂層にシワがないプリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]長尺の金属箔からなる金属層の1層以上と、前記金属層に接するフッ素樹脂層の1層以上と、前記フッ素樹脂層に接する耐熱性樹脂層の1層以上とを有し、前記フッ素樹脂層の1層あたりの厚さが1~10μmであり、前記耐熱性樹脂層の合計の厚さに対する前記フッ素樹脂層の合計の厚さの比が0.3~3.0であり、前記フッ素樹脂層と前記耐熱性樹脂層の合計の厚さが50μm以下であることを特徴とする、長尺積層体。
【0008】
[2]前記フッ素樹脂層が、フッ素樹脂を主成分とする、[1]の長尺積層体。
[3]前記フッ素樹脂層が分散剤を含み、前記フッ素樹脂層に含まれる分散剤の割合が、フッ素樹脂層に対して2.0質量%未満である、[1]又は[2]の長尺積層体。
[4]前記フッ素樹脂の融点が、270℃以上である、[1]~[3]のいずれかの長尺積層体。
[5]前記フッ素樹脂が、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する、[1]~[4]のいずれかの長尺積層体。
[6]前記フッ素樹脂層と前記耐熱性樹脂層の合計の厚さが、25μm以下である、[1]~[5]のいずれかの長尺積層体。
[7]前記[1]~[6]のいずれかの長尺積層体を加工してなる、プリント配線板。
【0009】
[8]長尺の金属箔からなる金属層の1層以上と、前記金属層に接するフッ素樹脂層の1層以上と、前記フッ素樹脂層に接する耐熱性樹脂層の1層以上とを有する長尺積層体の製造方法であり、
長尺の金属箔又は長尺の耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら、前記金属箔又は前記耐熱性樹脂フィルムに下記液状組成物を塗布してウェット膜を形成し、形成された、長尺のウェット膜付き金属箔又は長尺のウェット膜付き耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら、ウェット膜を加熱して下記液状媒体を除去し下記樹脂パウダーを溶融することによりフッ素樹脂層を形成して、フッ素樹脂層付き金属箔又はフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムを得ること、
及び、
前記フッ素樹脂層付き金属箔を製造した場合は、該フッ素樹脂層付き金属箔と長尺の耐熱性樹脂フィルムを含む基材とを、前記フッ素樹脂層と前記耐熱性樹脂フィルムとが接するように、積層すること、
前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムを製造した場合は、該フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムと長尺の金属箔を含む基材とを、前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムのフッ素樹脂層と前記金属箔とが接するように、積層すること、
を特徴とする長尺積層体の製造方法。
液状組成物:液状媒体と前記液状媒体に分散した樹脂パウダーと分散剤とを含み、前記樹脂パウダーがフッ素樹脂を主成分とする液状組成物。
【0010】
[9]前記フッ素樹脂層付き金属箔と、前記耐熱性樹脂フィルムを含む基材とを、一対の金属ロール又は一対のエンドレスベルトの間に通過させて積層する、[8]の製造方法。
[10]前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムと、前記金属箔を含む基材とを、一対の金属ロール又は一対のエンドレスベルトの間に通過させて積層する、[8]の製造方法。
[11]前記フッ素樹脂層付き金属箔及び前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムにおける前記フッ素樹脂層に含まれる分散剤の割合が、フッ素樹脂層に対して2.0質量%未満である、[8]~[10]のいずれかの製造方法。
[12]前記フッ素樹脂層付き金属箔及び前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムにおける前記フッ素樹脂層の表面の十点平均粗さRzJISが、0.05~3.0μmである、[8]~[11]のいずれかの製造方法。
[13]前記耐熱性樹脂フィルムが、JIS R 3257:1999に記載の静滴法で測定した、その表面の水接触角が5°~60°である、[8]~[12]のいずれかの製造方法。
[14]前記耐熱性樹脂フィルムが、大気圧プラズマ処理又は真空プラズマ処理により、表面処理されたフィルムである、[8]~[13]のいずれかの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の長尺積層体によれば、樹脂層の薄膜化及び信号伝送の高速化を両立でき、樹脂層の寸法安定性及び耐折性に優れ、かつフッ素樹脂層にシワのないプリント配線板が得られる。
本発明の長尺積層体の製造方法によれば、シワのない薄膜のフッ素樹脂層を有する長尺積層体を製造できる。
本発明のプリント配線板は、樹脂層の薄膜化及び信号伝送の高速化を両立でき、樹脂層の寸法安定性及び耐折性に優れ、かつフッ素樹脂層にシワがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の長尺積層体の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の長尺積層体の他の例を示す断面図である。
【
図3】液状組成物の塗布及びウェット膜の加熱を行う装置の一例を示す概略構成図である。
【
図4】熱ラミネート機の一例を示す概略構成図である。
【
図5】熱ラミネート機の他の例を示す概略構成図である。
【
図6】耐折性の試験に用いる試験片の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「耐熱性樹脂」とは、はんだリフローのプロセスにおける最低温度260℃における引張弾性率(JIS K 7161-1:2014、ISO 527-1:2012)が108Pa以上である樹脂を意味する。
「溶融成形可能」である樹脂とは、荷重49Nの条件下、樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、MFRが0.01~1000g/10分となる温度が存在する樹脂を意味する。
「MFR」は、JIS K 7210-1:2014(対応国際規格ISO 1133-1:2011)に規定されるメルトマスフローレイトである。
「単量体に基づく単位」は、単量体1分子が重合して直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。本明細書において、単量体に基づく単位を、単に「単位」とも記す。
「融点」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した樹脂の融解ピークの最大値に対応する温度である。
「十点平均粗さ(Rz
JIS)」は、JIS B 0601:2013の附属書JAで規定される値である。
「ぬれ張力」は、JIS K 6768:1999(対応国際規格ISO 8296:1987)にしたがって測定される値である。ぬれ張力の測定においては、試験片上に、ぬれ張力既知の試験液に浸した綿棒を素早くこすりつけ、6cm
2の液膜を形成し、塗布2秒後の液膜の状態を観察し、破れが生じなければ、ぬれるとする。液膜の破れが起こらない最大のぬれ張力が、その試験片のぬれ張力とされる。なお、JIS K 6768:1999で規定される試験液のぬれ張力の下限は22.6mN/mである。
「接着強度」は、次のようにして測定される値である。長尺積層体から長さ100mm、幅10mmの矩形状の試験片を切り出す。試験片の長さ方向の一端から50mmの位置までフッ素樹脂層から耐熱性樹脂層を剥離する。試験片の長さ方向の一端から50mmの位置を中央にして、引張り試験機を用いて、引張り速度50mm/分で90度剥離し、測定距離10mmから30mmまでの平均荷重を接着強度(N/10mm)とする。
「寸法変化率」は、JIS C 6471:1995(対応国際規格IEC 249-1:1982)に規定される試験方法で求めた長尺積層体のエッチング前とエッチング及び加熱後との間の寸法変化率である。
フッ素樹脂の「比誘電率」は、SPDR(スピリットポスト誘電体共振器)法により、23℃±2℃、50±5%RHの範囲内の環境下にて、周波数2.5GHzで測定される値である。
樹脂層の「比誘電率」は、積層体から金属層をエッチングで除去した樹脂層について、ファブリペロー共振器及びベクトルネットワークアナライザを用いて、周波数10GHzで測定される値である。
「耐折性」は、JIS C 6471:1995(対応国際規格IEC 249-1:1982)に規定される試験方法で求めた導体回路が断線するまでの折り曲げ回数である。
フッ素樹脂層に含まれる「分散剤の割合」は、次のようにして求める。
長尺積層体、フッ素樹脂層付き金属箔又はフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムから10cm×10cmの試験片を切り出す。試験片が金属層を有する場合は、エッチングによって金属層を除去する。試験片を循環式熱風オーブンにて120℃で1時間乾燥して水分を除去し、乾燥後の試験片の質量を測定する。さらに循環式熱風オーブンにて250℃で2時間加熱し、加熱後の試験片の質量を測定する。下式から分散剤の割合を求める。
分散剤の割合={(250℃加熱前の質量-250℃加熱後の質量)/250℃加熱前の質量}×100
樹脂パウダーの「D50」は、体積基準累積50%径であり、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
樹脂パウダーの「D90」は、体積基準累積90%径であり、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が90%となる点の粒子径である。
図1~
図6における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0014】
<長尺積層体>
本発明の長尺積層体は、長尺の金属箔からなる金属層の1層以上と、金属層に接するフッ素樹脂層の1層以上と、フッ素樹脂層に接する耐熱性樹脂層の1層以上とを有する。以下、フッ素樹脂層及び耐熱性樹脂層をまとめて「樹脂層」とも記す。
本発明の長尺積層体は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて金属層、フッ素樹脂層及び耐熱性樹脂層以外の層を有していてもよい。前記他の層としては、後述する保護層が挙げられる。
【0015】
耐熱性樹脂層の層数は、長尺積層体の薄膜化の点から、1層であることが好ましい。
フッ素樹脂層の層数は、長尺積層体の薄膜化の点から、1層又は2層であることが好ましい。
金属層の層数は、長尺積層体の薄膜化の点から、1層又は2層であることが好ましい。
長尺積層体の層構成としては、金属層/フッ素樹脂層/耐熱性樹脂層、金属層/フッ素樹脂層/耐熱性樹脂層/フッ素樹脂層/金属層等が挙げられる。「金属層/フッ素樹脂層/耐熱性樹脂層」とは、金属層、フッ素樹脂層、耐熱性樹脂層がこの順に積層されることを示し、他の層構成も同様である。
【0016】
図1は、本発明の長尺積層体の一例を示す断面図である。
長尺積層体10は、金属層12と、金属層12に接するフッ素樹脂層14と、フッ素樹脂層14に接する耐熱性樹脂層16とを有する。
図2は、本発明の長尺積層体の他の例を示す断面図である。
長尺積層体10は、2層の金属層12と、各金属層12に接する2層のフッ素樹脂層14と、2層のフッ素樹脂層14に挟まれた耐熱性樹脂層16とを有する。
【0017】
長尺積層体におけるフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との界面の接着強度は、5N/cm以上が好ましく、7N/cm以上がより好ましく、10N/cm以上がさらに好ましく、12N/cm以上が特に好ましい。接着強度が前記範囲の下限値以上であれば、プリント配線板を製造するときに衝撃が加わっても層間の剥離が抑えられる。接着強度は高ければ高いほどよく、上限値は限定されない。
【0018】
長尺積層体の寸法変化率は、±0.1%以下が好ましく、±0.03%以下がより好ましい。寸法変化率が前記範囲内であれば、プリント配線板を製造するときの導体回路の断線が抑えられる。
長尺積層体の耐折性は、50000回以上が好ましく、70000回以上がより好ましい。耐折性が前記範囲の下限値以上であれば、駆動部を有する電子機器のプリント配線板としても好適に用いることができる。
【0019】
(金属層)
金属層は、金属箔からなる層である。
金属箔は、長尺積層体の用途に応じて適宜選択すればよい。長尺積層体をプリント配線板に用いる場合、金属箔の材質としては、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金(42合金も含む。)、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。長尺積層体をプリント配線板に用いる場合、金属箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が好ましい。
金属箔の表面には、防錆層(クロメート等の酸化物皮膜等)、耐熱層等が形成されてもよい。金属箔の表面には、フッ素樹脂層との接着強度を高めるための表面処理(カップリング剤処理等)が施されてもよい。
【0020】
金属箔の表面のRzJISは、フッ素樹脂層との接着強度が保持できる範囲内で低い方が好ましい。金属箔の表面のRzJISは、0.1~2.0μmが好ましい。RzJISが前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂層との接着強度に優れる。RzJISが前記範囲の上限値以下であれば、電気特性に優れる。
金属層の厚さは、長尺積層体の用途に応じて適宜選択すればよい。長尺積層体をプリント配線板に用いる場合、金属層の厚さは、5~75μmが好ましい。
【0021】
(樹脂層)
樹脂層は、フッ素樹脂層及び耐熱性樹脂層から構成される。フッ素樹脂層が複層であるか、耐熱性樹脂層が複層である場合には、樹脂層は全ての層を合わせて指す。
樹脂層の比誘電率は、3.2以下が好ましく、2.7以下がより好ましい。比誘電率が前記範囲の上限値以下であれば、プリント配線板の信号伝送をさらに高速化できる。樹脂層の比誘電率の下限値は、通常2.0である。
【0022】
樹脂層の厚さ(フッ素樹脂層の厚さと耐熱性樹脂層の厚さの合計の厚さ)は、50μm以下であり、7~50μmが好ましく、12~25μmがより好ましい。樹脂層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、プリント配線板の寸法安定性に優れる。樹脂層の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、プリント配線板の耐折性に優れる。
【0023】
前記耐熱性樹脂層の合計の厚さに対する前記フッ素樹脂層の合計の厚さの比は、0.3~3.0であり、0.5~2.0が好ましく、0.8~1.6がより好ましい。前記比が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂層の比誘電率が低くなり、プリント配線板の信号伝送を高速化できる。前記比が前記範囲の上限値以下であれば、プリント配線板の寸法安定性に優れる。
【0024】
(フッ素樹脂層)
フッ素樹脂層は、フッ素樹脂を含む層である。
フッ素樹脂層は、フッ素樹脂を主成分とする層であることが好ましい。この場合、樹脂層の比誘電率及び誘電正接をさらに低くできる。前記層とは、層中のフッ素樹脂の割合が80質量%以上であることを意味する。フッ素樹脂の割合は、フッ素樹脂層のうち85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
フッ素樹脂層は、必要に応じてフッ素樹脂以外の成分を含んでいてもよい。フッ素樹脂以外の成分としては、フッ素樹脂以外の樹脂、無機フィラー、分散剤等が挙げられる。
【0025】
フッ素樹脂層は、例えば、後述する本発明の長尺積層体の製造方法において液状組成物を用いて形成される。
フッ素樹脂層に含まれる分散剤は、液状組成物に含まれた分散剤に由来する。分散剤は、長尺積層体を製造する場合、液状組成物やフッ素樹脂層に適量が含まれることが好ましいが、最終的に得られた長尺積層体のフッ素樹脂層にはできるだけ含まれないことが好ましい。フッ素樹脂層に分散剤が多く含まれると、分散剤の吸水性のために樹脂層の比誘電率が高くなる。最終的に得られた長尺積層体のフッ素樹脂層に含まれる分散剤の割合は、フッ素樹脂層に対して2.0質量%未満が好ましく、1.0質量%未満がより好ましい。最終的に得られた長尺積層体のフッ素樹脂層に含まれる分散剤の割合の下限値は、0質量%である。
最終的に得られた長尺積層体のフッ素樹脂層に含まれる分散剤の割合は、後述する本発明の長尺積層体の製造方法における積層時の加熱温度、積層後の熱処理時の温度等によって調整できる。
【0026】
フッ素樹脂層の1層あたりの厚さは、1~10μmであり、2~9μmが好ましく、3~8μmがより好ましい。フッ素樹脂層の1層あたりの厚さが前記範囲の下限値以上であれば、プリント配線板の信号伝送を高速化できる。フッ素樹脂層の1層あたりの厚さが前記範囲の上限値以下であれば、プリント配線板の樹脂層を薄膜化できる。
【0027】
フッ素樹脂の融点は、270℃以上が好ましく、270~380℃がより好ましく、270~320℃がさらに好ましく、280~320℃がよりさらに好ましく、295~315℃が特に好ましく、295~310℃が最も好ましい。フッ素樹脂の融点が前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂層の耐熱性に優れる。フッ素樹脂の融点が前記範囲の上限値以下であれば、フッ素樹脂の溶融成形性に優れる。
フッ素樹脂の融点は、フッ素樹脂を構成する単位の種類や割合、フッ素樹脂の分子量等によって調整できる。例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)単位の割合が多くなるほど、融点が上がる傾向がある。
【0028】
フッ素樹脂の融点よりも20℃以上高い温度におけるフッ素樹脂のMFRは、0.1~1000g/10分が好ましく、0.5~100g/10分がより好ましく、1~30g/10分がさらに好ましく、5~20g/10分が特に好ましい。MFRが前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂の溶融成形性に優れる。MFRが前記範囲の上限値以下であれば、フッ素樹脂層の機械的強度に優れる。
MFRは、フッ素樹脂の分子量の目安であり、MFRが大きいと分子量が小さく、MFRが小さいと分子量が大きいことを示す。フッ素樹脂のMFRは、フッ素樹脂の製造条件によって調整できる。例えば、単量体の重合時に重合時間を短縮するとMFRが大きくなる傾向がある。
【0029】
フッ素樹脂の比誘電率は、2.5以下が好ましく、2.4以下がより好ましく、2.0~2.4が特に好ましい。フッ素樹脂の比誘電率が低いほど、プリント配線板の信号伝送をさらに高速化できる。比誘電率の下限値は、通常2.0である。
フッ素樹脂の比誘電率は、TFE単位の割合によって調整できる。
【0030】
フッ素樹脂としては、フッ素樹脂層の形成が容易である点から、溶融成形可能なフッ素樹脂が好ましく、後述する接着性フッ素樹脂がより好ましい。フッ素樹脂が接着性フッ素樹脂であれば、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との接着性及びフッ素樹脂層と金属層との接着性に優れる。
溶融成形可能なフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、変性ポリテトラフルオロエチレン(TFEと極微量のCH2=CH(CF2)4F又はCF2=CFOCF3とを共重合したポリマー等)が挙げられる。また、溶融流動性を示すのであればポリテトラフルオロエチレンも挙げられる。
溶融成形可能なフッ素樹脂の代わりに、溶融成形できないフッ素樹脂、例えば溶融流動性を示さないポリテトラフルオロエチレンを用いた場合、後述する樹脂パウダーの製造方法において樹脂材料に機械的粉砕処理を施す際に、ポリテトラフルオロエチレンがフィブリル化するため、樹脂パウダーを得ることが困難である。
【0031】
本発明における接着性フッ素樹脂は、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基(以下、「接着性基」とも記す。)を有する、溶融成形可能なフッ素樹脂である。
接着性フッ素樹脂が有する接着性基は、2種以上であってもよい。
【0032】
接着性基としては、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層の接着性に優れる点から、カルボニル基含有基が好ましい。
カルボニル基含有基としては、カーボネート基(-OC(O)O-)、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基(-C(O)OC(O)-)等が挙げられる。
ハロホルミル基としては、-C(O)F、-C(O)Clが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、-C(O)OCH3、-C(O)OCH2CH3が挙げられる。
【0033】
接着性フッ素樹脂中の接着性基の含有量は、接着性フッ素樹脂の主鎖炭素数1×106個に対して、10~60000個が好ましく、100~50000個がより好ましく、100~10000個がさらに好ましく、300~5000個が特に好ましい。接着性基の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層の接着性がさらに優れる。接着性基の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、接着性フッ素樹脂の耐熱性、色目等が良好である。
接着性基の含有量は、核磁気共鳴(NMR)分析、赤外吸収スペクトル分析等の方法によって測定できる。例えば、特開2007-314720号公報に記載のように赤外吸収スペクトル分析等の方法を用いて、接着性フッ素樹脂を構成する全単位中の接着性基を有する単位の割合(モル%)を測定できる。
【0034】
接着性フッ素樹脂としては、接着性基を有する単位及び接着性基を有する末端基の少なくとも一方を有する含フッ素重合体が挙げられる。また、プラズマ処理や放射線処理等で接着性基を導入した含フッ素重合体、接着性基を導入することにより溶融成形可能となった含フッ素重合体等も挙げられる。
具体的には、例えば、TFEと極微量の接着性基含有単量体とを共重合したポリマー(変性PTFEの1種)、TFEと極微量のCH2=CH(CF2)4F又はCF2=CFOCF3と極微量の接着性基含有単量体とを共重合したポリマー(変性PTFEの1種)、プラズマ処理や放射線処理等で接着性基を導入した変性PTFE、プラズマ処理や放射線処理等で接着性基を導入したPTFE等が挙げられる。
【0035】
接着性フッ素樹脂としては、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層の接着性がさらに優れ、また、フッ素樹脂層の電気特性がさらに優れる点から、TFE又はクロロトリフルオロエチレン(CTFE)に由来する単位(u1)と、酸無水物基を有する環状炭化水素単量体(以下、「酸無水物単量体」とも記す。)に由来する単位(u2)と、含フッ素単量体(ただし、TFE及びCTFEを除く。)に由来する単位(u3)とを有する含フッ素重合体(以下、含フッ素重合体Aとも記す。)が好ましい。
【0036】
単位(u1)を構成する単量体としては、フッ素樹脂層の耐熱性が優れる点から、TFEが好ましい。
酸無水物単量体としては、無水イタコン酸(以下、「IAH」とも記す。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」とも記す。)、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)、無水マレイン酸等が挙げられる。酸無水物単量体は、2種以上を併用してもよい。
酸無水物単量体としては、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層の接着性がさらに優れる点から、IAH及びNAHが好ましく、NAHが特に好ましい。
含フッ素重合体Aには、単位(u2)における酸無水物基の一部が加水分解し、その結果、酸無水物単量体に対応するジカルボン酸(イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、マレイン酸等)単位が含まれる場合があり、かかるジカルボン酸単位は単位(u2)に含める。
【0037】
単位(u3)を構成する含フッ素単量体としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン等のフルオロオレフィン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、「PAVE」とも記す。)、官能基を有するフルオロビニルエーテル、フルオロ(ジビニルエーテル)、ポリフルオロ(アルキルエチレン)(以下、「FAE」とも記す。)、環構造を有するフルオロモノマーが挙げられる。
PAVEとしては、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3(PPVE)、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)6Fを例示でき、PPVEが好ましい。
FAEとしては、CH2=CF(CF2)2F、CH2=CF(CF2)3F、CH2=CF(CF2)4F、CH2=CF(CF2)5F、CH2=CF(CF2)6F、CH2=CF(CF2)2H、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H、CH2=CF(CF2)5H、CH2=CF(CF2)6H、CH2=CH(CF2)2F(PFEE)、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F(PFBE)、CH2=CH(CF2)5F、CH2=CH(CF2)6F、CH2=CH(CF2)2H、CH2=CH(CF2)3H、CH2=CH(CF2)4H、CH2=CH(CF2)5H、CH2=CH(CF2)6Hを例示でき、PFBE及びPFEEが好ましい。
環構造を有するフルオロモノマーとしては、ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、2,2,4-トリフルオロ-5-トリフルオロメトキシ-1,3-ジオキソール、ペルフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)を例示できる。
官能基を有するフルオロビニルエーテルとしては、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F、CF2=CFOCF2CF2SO2F、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO3H、CF2=CFOCF2CF2SO3H、CF2=CFO(CF2)3COOCH3、CF2=CFO(CF2)3COOHが挙げられる。
フルオロ(ジビニルエーテル)としては、CF2=CFCF2CF2OCF=CF2、CF2=CFCF2OCF=CF2が挙げられる。
単位(u3)を構成する含フッ素単量体としては、含フッ素重合体Aの成形性、フッ素樹脂層の耐折性等に優れる点から、HFP、PAVE及びFAEからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、PAVEが特に好ましい。
【0038】
含フッ素重合体A中の単位(u1)と単位(u2)と単位(u3)との合計量に対する各単位の好ましい割合は、下記のとおりである。
単位(u1)の割合は、90~99.89モル%が好ましく、96~98.95モル%がより好ましい。
単位(u2)の割合は、0.01~3モル%が好ましく、0.05~1モル%がより好ましい。
単位(u3)の割合は、0.1~9.99モル%が好ましく、1~9.95モル%がより好ましい。
【0039】
含フッ素重合体Aは、さらに他の単量体に由来する単位を有してもよい。
他の単量体としては、オレフィン(エチレン、プロピレン、1-ブテン等)、ビニルエステル(酢酸ビニル等)等が挙げられ、フッ素樹脂層の機械的強度等に優れる点から、エチレン、プロピレン及び1-ブテンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
【0040】
含フッ素重合体Aの具体例としては、TFE単位とNAH単位とPPVE単位とを有する共重合体、TFE単位とIAH単位とPPVE単位とを有する共重合体、TFE単位とCAH単位とPPVE単位とを有する共重合体、TFE単位とIAH単位とHFP単位とを有する共重合体、TFE単位とCAH単位とHFP単位とを有する共重合体、TFE単位とIAH単位とPFBE単位とエチレン単位とを有する共重合体、TFE単位とCAH単位とPFBE単位とエチレン単位とを有する共重合体、TFE単位とIAH単位とPFEE単位とエチレン単位とを有する共重合体、TFE単位とCAH単位とPFEE単位とエチレン単位とを有する共重合体、TFE単位とIAH単位とHFP単位とPFBE単位とエチレン単位とを有する共重合体が挙げられる。
含フッ素重合体Aとしては、TFE単位とNAH単位とPPVE単位とを有する共重合体、TFE単位とIAH単位とPPVE単位とを有する共重合体、及び、TFE単位とCAH単位とPPVE単位とを有する共重合体が好ましい。
【0041】
(耐熱性樹脂層)
耐熱性樹脂層は、耐熱性樹脂(フッ素樹脂を除く。)を含む層である。
耐熱性樹脂層としては、耐熱性樹脂を主成分とする層が好ましい。この場合、長尺積層体の寸法安定性がさらに優れる。前記層とは、層中の耐熱性樹脂の割合が80質量%以上であることを意味する。耐熱性樹脂の割合は、耐熱性樹脂層うち85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0042】
耐熱性樹脂としては、ポリイミド(芳香族ポリイミド等)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン(ポリエーテルスルホン等)、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミド等が挙げられる。
耐熱性樹脂層は、必要に応じて耐熱性樹脂以外の成分を含んでいてもよい。前記成分としては、耐熱性樹脂以外の樹脂、無機フィラー、各種添加剤等が挙げられる。
【0043】
耐熱性樹脂層は、例えば、本発明の長尺積層体の製造方法に用いられる耐熱性樹脂フィルムに由来する。耐熱性樹脂フィルムは、単層であっても多層であってもよい。
耐熱性樹脂フィルムとしては、例えば、芳香族ポリイミドフィルムであれば、種々の市販品を使用できる。単層構造のフィルムとしては、東レ・デュポン社製のカプトン(登録商標)ENが挙げられる。多層構造のフィルムとしては、芳香族ポリイミドフィルムの両面に熱可塑性のポリイミド層が形成された宇部興産社製のユーピレックス(登録商標)NVT、カネカ社製のピクシオ(登録商標)BPが挙げられる。
また、液晶ポリエステルフィルムであれば、市販品として、クラレ社製のベクスター(登録商標)CT-Zが挙げられる。
耐熱性樹脂フィルムは、表面処理されてもよい。表面処理としては、大気圧プラズマ放電処理、真空プラズマ放電処理、コロナ放電処理等の放電処理、シランカップリング剤を塗工するプライマー処理等が挙げられる。
特に大気圧プラズマ放電処理、真空プラズマ放電処理を行うことが接着強度の向上の観点からより好ましい。
【0044】
ポリイミドフィルムは、吸水率が低いフィルムほど、吸湿時の誘電特性の悪化が小さく、また、高温でのラミネート時の発泡が少ないため、好ましい。そのようなポリイミドとしては、パラフェニルジアミンと3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の共重合体が好ましい。また、熱可塑性ポリイミド層を有しない芳香族ポリイミドフィルムが好ましい。
耐熱性樹脂層の吸水率は2.0%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましく、1.3%以下がさらに好ましい。吸水率は、ASTM D570に規定される、23℃の水中に24時間浸漬後の重量変化率である。
【0045】
(保護層)
本発明の長尺積層体は、最表面層がフッ素樹脂層である場合にはフッ素樹脂層の厚さムラを抑制する観点から、最表面層となるフッ素樹脂層に接する保護層をさらに有していてもよく、最表面層が金属層である場合には熱による金属箔の酸化を抑制する観点から、最表面層となる金属層に接する保護層をさらに有していてもよい。また、本発明の長尺積層体は、最表面層の両面それぞれに保護層を有していてもよく、最表面層の片面のみに保護層を有していてもよい。いずれの場合においても、長尺積層体を使用する際、例えば、プリント配線板として使用する際には、保護層は容易に剥離できる層であるのが好ましい。かかる保護層としては、市販の保護フィルムを適宜選択して使用できる。
【0046】
保護層の材料としては、フッ素樹脂の融点以上の温度となるラミネートロールに対する耐熱性の観点から、ポリイミド及びポリエーテルエーテルケトンが好ましく、その形状はフィルムが好ましい。
保護層の材料としては、ポリイミドフィルム(アピカルNPI(カネカ社製)、ユーピレックスS(宇部興産社製)等。)が挙げられる。
また、保護層の材料は、後述する長尺積層体の製造方法におけるラミネート条件において、50MPa以上の引張弾性率を有する材料が好ましい。この場合、ラミネート温度やラミネート圧力によって、ワレが発生しにくい。
【0047】
また、保護層の材料は、前記ラミネート条件において、100ppm/℃以下の線膨張係数を有する材料が好ましい。この場合、ラミネートにおける、加熱冷却サイクルによる保護層の寸法変化率が抑制され、長尺積層体の表面にシワが発生しにくい。
保護層の厚さは、50~150μmが好ましく、75~125μmが特に好ましい。この場合、後述する長尺積層体の製造方法において、金属ロールの線圧ムラが抑制されフッ素樹脂層の厚さムラを抑制しやすい。また、金属ロールからの伝熱が妨げられず、それぞれの基材を充分に加熱しやすい。
【0048】
(作用機序)
以上説明した本発明の長尺積層体は、フッ素樹脂層の1層あたりの厚さが10μm以下であり、かつ、樹脂層の合計の厚さに対するフッ素樹脂層の合計の厚さの比が0.3~3.0であるため、樹脂層を薄膜化できる。
また、本発明の長尺積層体は、フッ素樹脂層の1層あたりの厚さが1μm以上であり、かつ前記比が0.3以上であるため、プリント配線板の信号伝送を高速化できる。また、本発明の長尺積層体は、前記比が3.0以下であるため、プリント配線板の寸法安定性に優れる。
また、本発明の長尺積層体は、フッ素樹脂層の厚さと耐熱性樹脂層の厚さの合計の厚さが50μm以下であるため、プリント配線板の耐折性に優れる。
【0049】
<液状組成物>
本発明の長尺積層体の製造方法に用いられる液状組成物は、液状媒体と、液状媒体に分散した樹脂パウダーと、分散剤とを含む。
液状組成物は、必要に応じて液状媒体に溶解する樹脂(以下、「溶解性樹脂」とも記す。)をさらに含んでいてもよい。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて液状媒体、樹脂パウダー、分散剤及び溶解性樹脂以外の成分(以下、「他の成分」とも記す。)をさらに含んでいてもよい。
【0050】
(液状媒体)
分散媒である液状媒体は、25℃で液状の不活性な成分である。
液状媒体としては、液状組成物に含まれる液状媒体の以外の成分よりも低沸点であり、加熱等によって揮発し除去できる媒体が好ましい。
液状媒体としては、水、アルコール(メタノール、エタノール等)、含窒素化合物(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等)、含硫黄化合物(ジメチルスルホキシド等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジオキサン等)、エステル(乳酸エチル、酢酸エチル等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等)、グリコールエーテル(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等)、セロソルブ(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)等が挙げられる。液状媒体は、2種以上を併用してもよい。液状媒体としては、樹脂パウダーと反応しないものが好ましい。
【0051】
(樹脂パウダー)
樹脂パウダーは、フッ素樹脂を主成分とする樹脂粒子の集合体である。フッ素樹脂が主成分であれば、樹脂層の比誘電率及び誘電正接をさらに低くできる。また、嵩密度の高い樹脂パウダーが得られやすい。樹脂パウダーの嵩密度が大きいほど、ハンドリング性に優れる。フッ素樹脂を主成分とする樹脂パウダーとは、樹脂パウダーを構成する樹脂粒子中のフッ素樹脂の割合が80質量%以上であることを意味する。フッ素樹脂の割合は、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
樹脂パウダーを構成する樹脂粒子は、必要に応じてフッ素樹脂以外の成分をさらに含んでいてもよい。フッ素樹脂以外の成分としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、無機フィラー、ゴム等が挙げられる。
【0052】
樹脂パウダーのD50は、0.05~6.0μmが好ましく、0.2~3.5μmがより好ましい。樹脂パウダーのD50が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂パウダーの流動性が充分で取り扱いが容易である。樹脂パウダーのD50が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂パウダーの液状媒体への分散性に優れる。また、フッ素樹脂層への樹脂パウダーの充填率を高くでき、樹脂層の比誘電率及び誘電正接をさらに低くできる。また、フッ素樹脂層の厚さを薄くできる。
樹脂パウダーのD90は、8.0μm以下が好ましく、1.5~5.0μmが特に好ましい。D90が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂パウダーの液状媒体への分散性が優れる。樹脂パウダーのD90は、フッ素樹脂層の均一性に優れる点から、D50に近づけることが好ましい。
【0053】
樹脂パウダーの疎充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.08~0.5g/mLがより好ましい。
樹脂パウダーの密充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.1~0.8g/mLがよりに好ましい。
この場合、樹脂パウダーのハンドリング性と充填率をバランスさせやすい。
【0054】
(分散剤)
分散剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、2種以上を併用してもよい。
【0055】
界面活性剤としては、含フッ素基及び親水性基を有するフッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤を用いれば、液状媒体の表面張力を低下させ、樹脂パウダーの表面に対する濡れ性を向上させて樹脂パウダーの分散性を向上させやすい。さらに、含フッ素基がフッ素樹脂を主成分とする樹脂パウダーの表面に吸着し、親水性基が液状媒体中に伸長し、親水性基の立体障害によって樹脂パウダーの凝集を防止して分散安定性をさらに向上させやすい。
フッ素系界面活性剤としては、下記の界面活性剤が挙げられる。
ネオス社製のフタージェントMシリーズ、フタージェントFシリーズ、フタージェントGシリーズ、フタージェントP・Dシリーズ、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント730FL、フタージェント730LM、フタージェント610FM、フタージェント601AD、フタージェント601ADH2、フタージェント602A、フタージェント650AC、フタージェント681。
AGCセイミケミカル社製のサーフロンシリーズ(サーフロンS-386等)。
DIC社製のメガファックシリーズ(メガファックF-553、メガファックF-555、メガファックF-556、メガファックF-557、メガファックF-559、メガファックF-562、メガファックF-565等)。
ダイキン工業社製のユニダインシリーズ(ユニダインDS-403N等)。
【0056】
(溶解性樹脂)
液状組成物が含んでもよい溶解性樹脂は、非硬化性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。
非硬化性樹脂としては、熱溶融性樹脂、非溶融性樹脂が挙げられる。熱溶融性樹脂としては、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。
【0057】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、反応性基を有するフッ素樹脂(ただし、含フッ素重合体Aを除く。)、熱硬化性ポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸、液晶ポリエステルアミド等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、プリント配線板に有用な点から、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビスマレイミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化性ポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸及び液晶ポリエステルアミドが好ましく、エポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化性ポリイミド、その前駆体であるポリアミック酸及び液晶ポリエステルアミドがより好ましい。熱硬化性樹脂は、2種以上を併用してもよい。
【0058】
(他の成分)
液状組成物が含んでもよい他の成分としては、消泡剤、無機フィラー、反応性アルコキシシラン、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、難燃剤等が挙げられる。
【0059】
液状組成物中の液状媒体の含有量は、樹脂パウダー100質量部に対して、1~1000質量部が好ましく、30~250質量部がより好ましい。液状媒体の含有量が前記範囲内であれば、塗布性が良好となる。
液状組成物中の分散剤の含有量は、樹脂パウダー100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.3~7質量部がより好ましい。分散剤の含有量が前記範囲内であれば、樹脂パウダーの分散性を保ちつつ、フッ素樹脂層に残存する分散剤の量が抑制しやすい。
【0060】
<長尺積層体の製造方法>
本発明の長尺積層体の製造方法は、下記工程Aと下記工程Bを有する製造方法により、長尺の金属箔からなる金属層の1層以上と、前記金属層に接するフッ素樹脂層の1層以上と、前記フッ素樹脂層に接する耐熱性樹脂層の1層以上とを有する長尺積層体を製造する方法である。
工程A:
長尺の金属箔又は長尺の耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら、金属箔又は耐熱性樹脂フィルムに上述した液状組成物を塗布してウェット膜を形成し、長尺のウェット膜付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら、ウェット膜を加熱して液状媒体を除去し樹脂パウダーを溶融することによりフッ素樹脂層を形成することによって、フッ素樹脂層付き金属箔又はフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムを得る工程。
工程B:
前記フッ素樹脂層付き金属箔を製造した場合は、該フッ素樹脂層付き金属箔と長尺の耐熱性樹脂フィルムを含む基材とを、前記フッ素樹脂層と前記耐熱性樹脂フィルムとが接するように、積層する工程。
前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムを製造した場合は、該フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムと長尺の金属箔を含む基材とを、前記フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムのフッ素樹脂層と前記金属箔とが接するように、積層する工程。
【0061】
工程Aにおいてフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムを得る場合は、両面フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムを得てもよい。その具体的方法としては、フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムを得た後そのフッ素樹脂層とは反対側の耐熱性樹脂フィルムの表面にフッ素樹脂層をさらに形成する方法、耐熱性樹脂フィルムの両面に同時に又は順次フッ素樹脂層を形成する方法、等が挙げられる。
工程Bにおける積層は、一対の金属ロール又は一対のエンドレスベルトの間に通過させることによって行うことが好ましい。
すなわち、工程Aにおいて長尺のフッ素樹脂層付き金属箔を製造した場合は、長尺のフッ素樹脂層付き金属箔と、長尺の耐熱性樹脂フィルムを含む基材とを、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂フィルムとが接するように、一対の金属ロール又は一対のエンドレスベルトの間に通過させて積層することが好ましく、
工程Aにおいて長尺のフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムを製造した場合は、長尺のフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムと、長尺の金属箔を含む基材とを、フッ素樹脂層と金属箔とが接するように、一対の金属ロール又は一対のエンドレスベルトの間に通過させて積層することが好ましい。
なお、本発明の長尺積層体の製造方法は、フッ素樹脂層付き金属箔又はフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムに、表面処理を施す工程を有してもよい。
【0062】
前記液状組成物の塗膜であるウェット膜からフッ素樹脂層を形成するためには、ウェット膜を加熱して、ウェット膜中の液状媒体を蒸発除去して樹脂パウダーの膜とし、ついで、樹脂パウダーを溶融して樹脂パウダーの膜をフッ素樹脂層とする。以下、加熱による液状媒体の蒸発除去を乾燥ともいい、ウェット膜から液状媒体を蒸発除去して形成される樹脂パウダーの膜を乾燥膜ともいう。また、加熱による樹脂パウダーの溶融を以下焼成ともいう。
乾燥温度は液状媒体の沸点以上の温度が好ましく、焼成温度はフッ素樹脂の融点以上の温度が好ましい。乾燥温度と焼成温度は同じ温度であってもよいが、フッ素樹脂層の表面や内部の均質性を良好なものとするためには、乾燥温度はフッ素樹脂の融点未満であることが好ましい。
【0063】
(塗布、乾燥及び焼成)
図3は、液状組成物の塗布及びウェット膜の加熱を行う装置の一例を示す概略構成図である。
装置1は、長尺の金属箔又は耐熱性樹脂フィルム100が巻き回された巻出ロール20と、液状組成物を金属箔又は耐熱性樹脂フィルム100の表面に塗布するダイコーター22と、ウェット膜付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルム102のウェット膜を乾燥させる乾燥装置24と、乾燥膜付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルム104の乾燥膜を焼成させる焼成装置26と、フッ素樹脂層付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルム106を巻き取る巻取ロール28と、巻出ロール20から巻き出された金属箔又は耐熱性樹脂フィルム100をダイコーター22に向かわせるガイドロール30と、金属箔又は耐熱性樹脂フィルム100を挟んでダイコーター22に対向配置され、かつウェット膜付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルム102を乾燥装置24に向かわせるダイバックロール32と、焼成装置26を通過したフッ素樹脂層付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルム106を巻取ロール28に向かわせるガイドロール34及びガイドロール36とを備える。
【0064】
なお、液状組成物の塗布及びウェット膜の加熱を行う装置は、図示例のものに限定されない。例えば、ダイコーターの代わりに他の塗布装置を用いてもよい。塗布装置と乾燥装置とを備えた装置と、焼成装置を備えた装置とに分けてもよい。
【0065】
液状組成物を金属箔又は耐熱性樹脂フィルムの表面に塗布してウェット膜を形成する。
本発明においては、生産性がよい点から、ロールツーロールにて長尺の金属箔又は耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら、液状組成物を金属箔又は耐熱性樹脂フィルムの表面に塗布することが好ましい。
【0066】
液状組成物の塗布方法としては、ダイコート法以外に、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法等が挙げられる。
【0067】
ウェット膜付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルムのウェット膜を加熱し、ウェット膜を乾燥させて乾燥膜を形成する。
本発明においては、生産性がよい点から、ロールツーロールにて長尺のウェット膜付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら、ウェット膜を加熱することが好ましい。
【0068】
乾燥においては、必ずしも液状媒体を完全に除去する必要はなく、乾燥膜が膜形状を安定して維持できる程度まで除去すればよい。乾燥においては、液状組成物に含まれる液状媒体のうち、50質量%以上を除去することが好ましい。
乾燥は、1段階で実施してもよく、異なる温度にて2段階以上で実施してもよい。
【0069】
ウェット膜の加熱方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法等が挙げられる。
ウェット膜の加熱温度は、35~250℃が好ましく、70~220℃がより好ましい。加熱温度は、乾燥装置内の雰囲気の温度である。
ウェット膜の加熱時間は、0.1~30分が好ましく、0.5~20分がより好ましい。
【0070】
乾燥膜付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルムの乾燥膜を加熱し、乾燥膜を焼成させてフッ素樹脂層を形成する。
本発明においては、生産性がよい点から、ロールツーロールにて長尺の乾燥膜付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら、乾燥膜を加熱することが好ましい。
【0071】
乾燥膜を焼成させることによって、樹脂パウダーの個々の粒子を溶融一体化し、均質なフッ素膜を形成できる。液状組成物が熱溶融性の溶解性樹脂を含む場合は、フッ素樹脂と溶解性樹脂との溶融ブレンド物からなるフッ素樹脂層を形成できる。液状組成物が熱硬化性の溶解性樹脂を含む場合は、フッ素樹脂と熱硬化性樹脂の硬化物とからなるフッ素樹脂層を形成できる。
焼成は、1段階で実施してもよく、異なる温度にて2段階以上で実施してもよい。
【0072】
乾燥膜の加熱方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法等が挙げられる。フッ素樹脂層の表面の平滑性を高めるために、加熱板、加熱ロール等で加圧してもよい。乾燥膜の加熱方法としては、フッ素樹脂の均質な溶融をもたらし、溶融不充分な樹脂パウダーの残存が少ないフッ素樹脂層を形成できる点から、有効波長帯が2~20μm(好ましくは3~7μm)である遠赤外線を照射する方法が好ましい。
乾燥膜の加熱温度は、270~400℃が好ましく、310~370℃がより好ましい。加熱温度は、焼成装置内の雰囲気の温度、又は加熱板、加熱ロール等の表面温度である。
乾燥膜の加熱時間は、1~300分が好ましく、3~60分がより好ましい。
【0073】
乾燥膜の加熱時の雰囲気は、金属箔、フッ素樹脂及び耐熱性樹脂の酸化を抑える点から、不活性ガス雰囲気が好ましい。
不活性ガス雰囲気は、酸素ガス濃度が低く抑えられた不活性ガスからなる。不活性ガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等が挙げられ、窒素ガスが好ましい。
不活性ガス雰囲気における酸素ガス濃度は、100~500ppm好ましく、200~300ppmがより好ましい。
【0074】
液状組成物に含まれる分散剤は、乾燥、焼成における高温によって分解、揮発する。分散剤は、最終的に得られる長尺積層体のフッ素樹脂層にはできるだけ含まれないことが好ましいが、長尺積層体を製造するときには、微量の分散剤がフッ素樹脂層の可塑剤として働き、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層との接着性の向上に寄与する場合がある。
【0075】
フッ素樹脂層付き金属箔及びフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムにおけるフッ素樹脂層に含まれる分散剤の割合は、フッ素樹脂層に対して0.1~2.0質量%が好ましく、0.1~1.0質量%がより好ましい。フッ素樹脂層に含まれる分散剤の割合が前記範囲の下限値以上であれば、積層後のフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層の層間に含まれる気泡が減少する。フッ素樹脂層に含まれる分散剤の割合が前記範囲の上限値以下であれば、積層後のフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層の接着性がさらに優れる。
フッ素樹脂層付き金属箔及びフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムにおけるフッ素樹脂層に含まれる分散剤の割合は、乾燥、焼成における加熱温度及び加熱時間によって調整できる。
【0076】
フッ素樹脂層付き金属箔及びフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムにおけるフッ素樹脂層の厚さは、1~10μmが好ましく、2~9μmがより好ましく、3~8μmがさらに好ましい。フッ素樹脂層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、平滑な面が得られやすい。フッ素樹脂層の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、冷却時に起こるカールやシワの問題が起こりにくい。
【0077】
フッ素樹脂層付き金属箔及びフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムにおけるフッ素樹脂層の表面のRzJISは、0.05~3.0μmが好ましく、0.2~2.0μmがより好ましい。フッ素樹脂層の表面のRzJISが前記範囲の下限値以上であれば、積層時に適度に層間の空気が抜け、積層後のフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層の層間に含まれる気泡が減少する。フッ素樹脂層の表面のRzJISが前記範囲の上限値以下であれば、積層時にフッ素樹脂層が適度に耐熱性樹脂層及び金属層の表面にぬれ広がり、積層後のフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層の接着性がさらに優れる。
【0078】
フッ素樹脂層付き金属箔及びフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムにおけるフッ素樹脂層の表面のぬれ張力は、表面処理を施さなければ22.6mN/m未満であるが、表面処理を施す場合は30~70mN/mが好ましく、40~65mN/mがより好ましい。フッ素樹脂層の表面のぬれ張力が前記範囲内であれば、積層後のフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層の接着性がさらに優れる。
【0079】
(表面処理)
フッ素樹脂層付き金属箔及びフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムにおけるフッ素樹脂層や耐熱性樹脂フィルムに表面処理を施してもよい。
表面処理は、処理された表面のぬれ張力を高める処理であればよい。表面処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理(大気圧プラズマ放電処理、真空プラズマ放電処理等。ただし、コロナ放電処理を除く。)等の放電処理、プラズマグラフト重合処理、電子線照射、エキシマUV光照射等の光線照射処理、火炎を用いたイトロ処理、金属ナトリウムを用いた湿式エッチング処理等が挙げられる。表面処理によってフッ素樹脂層の表面に接着性基が生成し、ぬれ張力が高まる。
【0080】
表面処理としては、経済性がよく、所望のぬれ張力を得やすい点から、放電処理が好ましく、コロナ放電処理、大気圧プラズマ放電処理及び真空プラズマ放電処理がより好ましく、接着強度を上げることができる点から、大気圧プラズマ放電処理及び真空プラズマ放電処理が特に好ましい。放電処理においては、放電中の環境下を、酸素ガス存在下とすることで、酸素ラジカルやオゾンが生成し、効率よくフッ素樹脂層の表面に接着性基を導入し得る。
【0081】
コロナ放電処理は、公知の装置を用いて実施できる。
コロナ放電処理の放電電力密度は、10~200W・min/m2が好ましい。放電電力密度が前記範囲内であれば、フッ素樹脂層の表面のぬれ張力が前記範囲内となりやすい。
コロナ放電処理部のガスは、大気で構わないが、窒素ガス、アルゴンガス、酸素ガス、ヘリウムガス、重合性ガス(エチレン等)等を追加してもよい。
コロナ放電処理部の絶対湿度は、10~30g/m3が好ましい。絶対湿度が10g/m3以上であれば、スパークが発生することなく安定して放電がされる。絶対湿度が30g/m3以下であれば、放電量の変化が少なく、均一な濡れ張力としやすい。
【0082】
真空プラズマ放電処理は、公知の装置を用いて実施できる。
真空プラズマ放電処理は、処理効率の点から、0.1~1330Pa(好ましくは1~266Pa)のガス圧力で持続放電するグロー放電処理、いわゆる低温プラズマ処理が好ましい。このようなガス圧力下で放電電極間に10kHz~2GHzの周波数で10W~100kWの電力を与えることによって安定なグロー放電を行うことができる。
真空プラズマ放電処理の放電電力密度は、5~400W・min/m2が好ましい。放電電力密度が前記範囲内であれば、フッ素樹脂層の表面のぬれ張力が前記範囲内となりやすい。
真空プラズマ放電処理に用いるガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、水素ガス、空気、水蒸気等が挙げられる。ガスは、2種以上を混合して用いてもよい。ガスとしては、密着強度向上の点から、アルゴンガス、炭酸ガス、酸素ガス又は窒素ガスと水素ガスとの混合ガスが好ましく、アルゴンガスと水素ガスの混合ガスがより好ましい。処理時のガス流量としては500~10,000sccmが好ましい。
【0083】
大気圧プラズマ放電処理は、公知の装置を用いて実施できる。
大気圧プラズマ放電処理においては、0.8~1.2気圧下において不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等)下で放電することで、グロー放電を発生させる。不活性ガス中には微量の活性ガス(酸素ガス、水素ガス、炭酸ガス、エチレン、4フッ化エチレン等)を混合する。ガスとしては、フッ素樹脂層の表面のぬれ張力が前記範囲内となりやすい点から、窒素ガスに水素ガスを混合したガスが好ましい。
大気圧プラズマ放電処理における電圧は、通常1~10kVある。電源の周波数は、通常、1~20kHzである。処理時間は、通常0.1秒~10分である。
大気圧プラズマ放電処理の放電電力密度は、5~400W・min/m2が好ましい。放電電力密度が前記範囲内であれば、フッ素樹脂層の表面のぬれ張力が前記範囲内となりやすい。
【0084】
フッ素樹脂層付き金属箔と耐熱性樹脂フィルムとを積層する場合、耐熱性樹脂フィルムの、フッ素樹脂層と接する面が表面処理されることが好ましい。表面処理は、上述した放電処理でもよいし、シランカップリング剤等を塗工するプライマー処理でもよい。
耐熱性樹脂フィルムの表面の水接触角は、表面処理後は5°~60°が好ましく、10°~50°がより好ましく、10°~30°がさらに好ましい。この範囲内であれば、積層後のフッ素樹脂層と耐熱性樹脂層との接着性がさらに優れる。
例えば、耐熱性樹脂フィルムが芳香族ポリイミドフィルムの場合、芳香族ポリイミドフィルムの表面の表面処理前の水接触角は70°~80°であるが、表面処理後は上記範囲に制御することが好ましい。
水接触角は、JIS R 3257:1999に記載の静滴法で測定した値である。
表面処理の中でも、大気圧プラズマ放電処理、真空プラズマ放電処理が接着強度の向上の観点からより好ましい。
また、表面処理後の耐熱性樹脂フィルム表面における酸素原子の割合(atom%)は表面処理前の耐熱性樹脂フィルム表面における酸素原子の割合(atom%)に対して1.1~3.0倍となることが好ましい。また、表面処理後の耐熱性樹脂フィルム表面における窒素原子の割合(atom%)は表面処理前の耐熱性樹脂フィルム表面における窒素原子の割合(atom%)に対して1.1~2.0倍となることが好ましい。この場合、表面処理による、耐熱性樹脂の主鎖の開裂と耐熱性樹脂フィルム表面における低分子量体(耐熱性樹脂の分解物等。)の生成が抑制され、耐熱性樹脂フィルムとフッ素樹脂層との接着性が更に向上する。
【0085】
(積層)
図4は、熱ラミネート機の一例を示す概略構成図である。
熱ラミネート機2は、長尺の第1の基材200が巻き回された第1の巻出ロール40と、長尺の第2の基材202が巻き回された第2の巻出ロール42と、長尺の第3の基材204が巻き回された第3の巻出ロール44と、第1の基材200、第2の基材202及び第3の基材204を積層して長尺積層体10とする一対の金属ロール46と、長尺積層体10を巻き取る巻取ロール48と、第1の巻出ロール40から巻き出された第1の基材200を一対の金属ロール46に向かわせるガイドロール50と、第2の巻出ロール42から巻き出された第2の基材202を一対の金属ロール46に向かわせるガイドロール52と、第3の巻出ロール44から巻き出された第3の基材204を一対の金属ロール46に向かわせるガイドロール54と、一対の金属ロール46を通過した長尺積層体10を巻取ロール48に向かわせるガイドロール56とを備える。
【0086】
図5は、熱ラミネート機の他の例を示す概略構成図である。
熱ラミネート機2’は、長尺の第1の基材200が巻き回された第1の巻出ロール40と、長尺の第2の基材202が巻き回された第2の巻出ロール42と、長尺の第3の基材204が巻き回された第3の巻出ロール44と、長尺の第4の基材206が巻き回された第4の巻出ロール41と、長尺の第5の基材208が巻き回された第5の巻出ロール43と、第1の基材200、第2の基材202、第3の基材204、第4の基材206及び第5の基材208を積層して保護層付長尺積層体10’とする一対の金属ロール46と、保護層付長尺積層体10’を巻き取る巻取ロール48と、第1の巻出ロール40から巻き出された第1の基材200を一対の金属ロール46に向かわせるガイドロール50’と、第2の巻出ロール42から巻き出された第2の基材202を一対の金属ロール46に向かわせるガイドロール52と、第3の巻出ロール44から巻き出された第3の基材204を一対の金属ロール46に向かわせるガイドロール54’と、第4の巻出ロール41から巻き出された第4の基材206を一対の金属ロール46に向かわせるガイドロール51と、第5の巻出ロール43から巻き出された第5の基材208を一対の金属ロール46に向かわせるガイドロール53と、一対の金属ロール46を通過した保護層付長尺積層体10’を巻取ロール48に向かわせるガイドロール56とを備える。
第4の基材206は、第1の基材200との積層前に、金属ロール46に接触させ金属ロール46に抱かせた形で予熱するのが好ましい。同様に、第5の基材208は、第3の基材204との積層前に、金属ロール46と接触させ金属ロール46に抱かせた形で予熱するのが好ましい。また、急冷によるフッ素樹脂層の反りやうねりの発生を抑制する観点から、保護層はラミネート後も重なった状態にて5秒以上、搬送されて徐冷されるのが好ましい。
【0087】
一対の金属ロール46は、加熱機構を備え、ロール表面温度を任意の温度に調整できる。加熱機構を備えるロールとしては、電気加熱ロール、熱媒循環式ロール、誘導加熱ロール等が挙げられる。
金属ロール46の表面はショア硬さHs50以上が好ましい。この場合、金属であるラミネートロールの表面への付着物(金属屑等。)や基材の折れ曲がりによる急激な段差の発生による、ロール表面の傷付きを抑制されやすい。金属ロールの表面は、耐磨耗性、非粘着性、耐熱性等の観点から、金属素地に工業用クロムメッキが施されるのが好ましい。この場合、通常、Hs20~30である金属素地の元の硬さがHs50以上に向上しやすい。なお、工業用クロムメッキの厚さは、長時間での高温使用におけるクラック発生を抑制する観点から、0.05mm以上が好ましい。
【0088】
上下2本の金属ロール46の外見寸法は、それぞれ、真円度が0.05mm以下、円筒度が0.05mm以下、かつ、表面粗さが0.01mm以下であるのが好ましい。この場合、金属ロール間の上下合わせての隙間を0.1mm以下に制御しやすく、それぞれの基材の厚さが0.1mm以下である場合の、加圧むらを抑制し、均一な加圧ラミネートがしやすい。また、表面の粗さが0.01mm以下であれば均一な加圧ラミネートがしやすい。
また、幅方向の温度分布を低減するため、金属ロール46は、熱媒体を封入したヒートパイプを有するのが好ましい。なお、前記温度分布は10℃以下が好ましく、6℃以下が特に好ましい。この場合、温度クラウンを抑制し、均一な加圧ラミネートをしやすい。金属ロール46の直径は、加圧時のロールのたわみと重量による加圧とを抑制する観点から、200~1000mmが好ましい。
各巻出ロールは、各基材の巻き出し速度を制御し、一対の金属ロール46に搬送される各基材にかかる張力を制御できる。
【0089】
また、第1の基材200、第2の基材202及び第3の基材204は、それぞれ、しわを低減する観点から、金属ロール46に接触するまで温度を上げないのが好ましい。
フッ素樹脂層を有する基材は、加熱による反りやシワが出やすいため、金属ロール46の輻射熱を受けないために、金属ロール46への進入角は一対の金属ロール46の中心線に対して85~95°であるのが好ましい。ガイドロール52を2個以上設置して、進入角を制御してもよい。
また、ガイドロール52と金属ロール46の間に遮熱板を配置し、さらにガイドロール52を冷却するのが好ましい。ロール間搬送距離が短くし、フッ素樹脂層を有する基材のシワを抑制する観点から、ガイドロール52と金属ロール46の距離は1m以下が好ましく、50cm以下が特に好ましい。また、それぞれのガイドロールは、搬送シワを抑制する観点から、角度を微調整できる機構を有するのが好ましい。
一方、第2の基材202がポリイミドである場合には、ラミネート時のボイド欠陥を抑制する観点から、第2の巻出ロール42のすぐ後に赤外線ヒーターを設け、第2の基材202を加熱して水分を蒸発除去するのが好ましい。赤外線ヒーターの温度は、100℃~300℃が好ましい。
【0090】
なお、熱ラミネート機は、図示例のものに限定されない。例えば、繰出ロール後に、異物除去を目的とした粘着ロールを配置してもよい。また、張力の振動を低減するためにダンサーロールを配置してもよい。また、しわを低減するためのエキスパンダーロールをラミネート直前に配置してもよい。また、接着性を向上させるために、ラミネートロール前の基材間に赤外線ヒーターを配置し、シワが悪化しない範囲において基材を予熱してもよい。基材に巻ずれがあっても修正できるよう、EPC(エッジ・ポジション・コントロール装置)を繰出し部に配置してもよい。また、特にフッ素層は帯電しやすく異物を引き寄せ付けやすいため、除電装置を配置してもよい。また、金属ロール46周辺を保温する目的で、断熱性のある材質で囲ってもよい。また金属層の酸化を防ぐ目的で、その囲いの中に窒素を流動させてもよい。前記装置はいずれもが、複数個所配置されていてもよい。
また、一対の金属ロールの代わりに一対のエンドレスベルトを用いてもよい。第3の巻出ロールを省略して第1の基材と第2の基材とを積層するようにしてもよい。
【0091】
熱ラミネート機を用いて、フッ素樹脂層付き金属箔と耐熱性樹脂フィルムを含む基材とを積層する、又は、フッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムと金属箔を含む基材とを積層する。
耐熱性樹脂フィルムを含む基材としては、耐熱性樹脂フィルム単体、金属層/フッ素樹脂層/耐熱性樹脂層の3層構造の積層体等が挙げられる。3層構造の積層体は、本発明の長尺積層体であってもよく、フッ素樹脂層付き金属箔にポリイミド前駆体ワニスを塗工し、前駆体をイミド化させて得られたものであってもよい。
金属箔を含む基材としては、金属箔単体、金属層/ポリイミド層の2層構造の積層体等が挙げられる。
【0092】
第1の基材、第2の基材及び第3の基材の組み合わせとしては、例えば、表1の組み合わせが挙げられる。
【0093】
【0094】
第4の基材及び第5の基材としては、例えば、保護層用のフィルムが挙げられる。
一対の金属ロールの表面温度(ラミネート温度)は、310~360℃が好ましく、320~340℃がより好ましい。一対の金属ロールの表面温度が前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層の接着性がさらに優れる。一対の金属ロールの表面温度が前記範囲の上限値以下であれば、長尺積層体のカール、シワが抑えられる。一対の金属ロールの表面温度は、ロール表面を接触式熱電対で測定した温度である。
【0095】
一対の金属ロール間の圧力、すなわち各基材を積層する際の加圧力は、15~80kN/mが好ましく、20~70kN/mがより好ましい。加圧力が前記範囲の下限値以上であれば、フッ素樹脂層と耐熱性樹脂層及びフッ素樹脂層と金属層の接着性がさらに優れる。加圧力が前記範囲の上限値以下であれば、長尺積層体のシワが抑えられる。
【0096】
各基材の搬送速度(ラミネート速度)は、通常0.5~5.0m/分である。
各基材にかかる張力は、通常100~800Nである。
【0097】
(熱処理)
得られた長尺積層体を、接着強度の向上を目的にさらに熱処理してもよい。具体的には、長尺積層体を巻き取られた状態で窒素ガス下、300℃以上のオーブンに入れて処理する、又は窒素ガス下、300℃以上に昇温可能な炉に長尺積層体をロールツーロールで通して処理する。
【0098】
(作用機序)
以上説明した本発明の長尺積層体の製造方法にあっては、長尺の金属箔又は耐熱性樹脂を含む長尺の耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら、金属箔又は耐熱性樹脂フィルムに液状組成物を塗布してウェット膜を形成し、長尺のウェット膜付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルムを搬送しながら、ウェット膜を加熱してフッ素樹脂層を形成することによって、フッ素樹脂層付き金属箔又はフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムを得るため、それを使用してシワのない薄膜のフッ素樹脂層を有する長尺積層体を製造できる。
【0099】
<プリント配線板>
本発明のプリント配線板は、本発明の長尺積層体を加工してなるものである。
本発明のプリント配線板は、例えば、下記の方法によって製造できる。
・本発明の長尺積層体における金属層をエッチング等によって所定のパターンの導体回路に加工する方法。
・本発明の長尺積層体を用い、セミアディティブ法(SAP法)又はモディファイドセミアディティブ法(MSAP法)による電解めっきによって導体回路を形成する方法。
【0100】
プリント配線板の製造においては、導体回路を形成した後に、導体回路上に層間絶縁膜を形成し、層間絶縁膜上にさらに導体回路を形成してもよい。層間絶縁膜は、例えば、本発明の製造方法に用いた液状組成物によって形成できる。
プリント配線板の製造においては、導体回路上にソルダーレジストを積層してもよい。ソルダーレジストは、例えば、本発明の製造方法に用いた液状組成物によって形成できる。
プリント配線板の製造においては、導体回路上にカバーレイフィルムを積層してもよい。
【0101】
以上説明した本発明のプリント配線板にあっては、本発明の長尺積層体を加工してなるものであるため、樹脂層の薄膜化及び信号伝送の高速化を両立でき、樹脂層の寸法安定性及び耐折性に優れ、かつフッ素樹脂層にシワがない。
【実施例】
【0102】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例1~15、19、20は実施例であり、例16~18は比較例である。
【0103】
(含フッ素重合体における各単位の割合)
含フッ素重合体におけるNAH単位の割合は、下記赤外吸収スペクトル分析によって求めた。NAH単位以外の単位の割合は、溶融NMR分析及びフッ素含有量分析によって求めた。
【0104】
(赤外吸収スペクトル分析)
含フッ素重合体をプレス成形して厚さ200μmのフィルムを得た。フィルムを赤外分光法によって分析して赤外吸収スペクトルを得た。赤外吸収スペクトルにおいて、含フッ素重合体中のNAH単位の吸収ピークは1778cm-1に現れる。この吸収ピークの吸光度を測定し、NAHのモル吸光係数20810mol-1・L・cm-1を用いて、含フッ素重合体におけるNAH単位の割合を求めた。
【0105】
(融点)
示差走査熱量計(セイコーインスツル社製、DSC-7020)を用い、含フッ素重合体を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、最大値に対応する温度(℃)を融点とした。
【0106】
(MFR)
メルトインデクサー(テクノセブン社製)を用い、372℃、49N荷重下で、直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間に流出する含フッ素重合体の質量(g)を測定してMFRとした。
【0107】
(含フッ素重合体の比誘電率)
含フッ素重合体の比誘電率は、SPDR法により、23℃±2℃、50±5%RHの範囲内の環境下にて、周波数2.5GHzで測定した。
【0108】
(含フッ素重合体のD50)
上から順に、2.000メッシュ篩(目開き2.400mm)、1.410メッシュ篩(目開き1.705mm)、1.000メッシュ篩(目開き1.205mm)、0.710メッシュ篩(目開き0.855mm)、0.500メッシュ篩(目開き0.605mm)、0.250メッシュ篩(目開き0.375mm)、0.149メッシュ篩(目開き0.100mm)、受け皿を重ねた。一番上の篩に含フッ素重合体を入れ、30分間振とう器で篩分けした。各篩の上に残った含フッ素重合体の質量を測定し、各目開き値に対する通過質量の累計をグラフに表し、通過質量の累計が50%となる粒子径を求め、これを含フッ素重合体のD50とした。
【0109】
(樹脂パウダーのD50及びD90)
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用い、樹脂パウダーを水中に分散させ、粒度分布を測定し、D50及びD90を算出した。
【0110】
(疎充填嵩密度及び密充填嵩密度)
樹脂パウダーの疎充填嵩密度、密充填嵩密度は、国際公開第2016/017801号の段落[0117]、[0118]に記載の方法によって測定した。
【0111】
(RzJIS)
十点平均粗さRzJISは、JIS B 0601:2013の附属書JAに基づき測定した。粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。測定子の先端半径は2μm、テーパ角度は90度、測定速度は1.0mm/秒、測定長さは10mmとした。
【0112】
(分散剤の割合)
長尺積層体、フッ素樹脂層付き金属箔又はフッ素樹脂層付き耐熱性樹脂フィルムから10cm×10cmの試験片を切り出した。試験片が銅箔を有する場合は、塩化銅水溶液を用いたエッチングによって銅箔を除去した。試験片を循環式熱風オーブンにて120℃で1時間乾燥して水分を除去した。すみやかに乾燥後の試験片の質量を測定した。さらに循環式熱風オーブンにて250℃で2時間加熱した。すみやかに加熱後の試験片の質量を測定した。下式から分散剤の割合を求めた。
分散剤の割合={(250℃加熱前の質量-250℃加熱後の質量)/250℃加熱前の質量}×100
【0113】
(ぬれ張力)
フッ素樹脂層の表面のぬれ張力は、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を用い、JIS K 6768:1999にしたがって求めた。
【0114】
(接着強度)
長尺積層体から長さ100mm、幅10mmの矩形状の試験片を切り出した。試験片の長さ方向の一端から50mmの位置までフッ素樹脂層から耐熱性樹脂層を剥離した。試験片の長さ方向の一端から50mmの位置を中央にして、引張り試験機(オリエンテック社製)を用いて、引張り速度50mm/分で90度剥離し、測定距離10mmから30mmまでの平均荷重を接着強度(N/10mm)とした。接着強度が大きいほど、密着性が優れることを示す。
【0115】
(寸法変化率)
長尺積層体の寸法変化率を、JIS C 6471:1995(対応国際規格IEC 249-1:1982)に準拠して求めた。長尺積層体から240mm×300mmの試験片を切り出した。試験片のエッチング前のMD方向寸法及びTD方向寸法を測定した。試験片について、エッチングによって銅箔を除去し、150℃で30分間加熱した後、MD方向寸法及びTD方向寸法を測定した。寸法変化率を下式からで求めた。
MD方向の寸法変化率(%)={(加熱後のMD方向寸法-エッチング前のMD方向寸法)/エッチング前のMD方向寸法}×100
TD方向の寸法変化率(%)={(加熱後のTD方向寸法-エッチング前のTD方向寸法)/エッチング前のTD方向寸法}×100
寸法変化率(%)=(MD方向の寸法変化率+TD方向の寸法変化率)/2
【0116】
(樹脂層の比誘電率)
長尺積層体から試験片を切り出した。試験片について、塩化銅水溶液を用いたエッチングによって銅箔を除去した後、ファブリペロー共振器及びベクトルネットワークアナライザ(キーコム社製)を用い、比誘電率を測定した。
【0117】
(耐折性)
長尺積層体の耐折性を、JIS C 6471:1995(対応国際規格IEC 249-1:1982)に基づき評価した。長尺積層体から130mm×15mmの試験片を切り出した。試験片について、エッチングによって
図6に太線で示すパターン及びサイズの導体回路を形成した。120mm×15mmのカバーレイフィルム(ニッカン工業社製、ニカフレックス(登録商標)CKSE、ベースフィルム厚さ:25μm、接着層厚さ:25μm)をクイックプレスで試験片の両面に積層した。
折り曲げ速度:175回/分、折り曲げ角度:135度、張力:4.9N、クランプの曲率半径:2mm、クランプの間隙:0.1mmの条件にて、導体回路に通電しながら試験片を折り曲げ、導体回路が断線するまでの回数を計測した。
【0118】
(気泡)
長尺積層体を巻取ロールから巻き出して長さ5m分の外観を確認し、層間の剥離(気泡)が見られないか目視で確認した。また、剥離が見られた場合、顕微鏡によって、剥離部分の真円換算の直径を測定した。結果を下記基準で判定した。
○:剥離は見られない。
△:直径1mm未満の剥離が1か所以上10か所未満見られ、直径1mm以上の剥離が見られない。
×:直径1mm未満の剥離が10か所以上見られるか、直径1mm以上の剥離が1か所以上見られる。
【0119】
(樹脂パウダー)
TFE、NAH(日立化成社製、無水ハイミック酸)、PPVE(旭硝子社製)を用いて、国際公開第2016/017801号の段落[0123]に記載の手順で含フッ素重合体A-1を製造した。含フッ素重合体A-1における各単位の割合は、NAH単位/TFE単位/PPVE単位=0.1/97.9/2.0(モル%)であった。含フッ素重合体A-1の融点は300℃であり、MFRは17.6g/10分であり、比誘電率は2.1であり、D50は1554μmであった。
【0120】
ジェットミル(セイシン企業社製、シングルトラックジェットミル FS-4型)を用い、粉砕圧力:0.5MPa、処理速度:1kg/時間の条件で、含フッ素重合体A-1を粉砕して樹脂パウダーP-1を得た。樹脂パウダーP-1のD50は2.58μmであり、D90は7.1μmであった。樹脂パウダーP-1の疎充填嵩密度は0.278g/mLであり、密充填嵩密度は0.328g/mLであった。
【0121】
(銅箔)
銅箔-1:JX金属社製、圧延銅箔、GHY5-93F-HA-V2、厚さ12μm、RzJIS 0.35μm。
【0122】
(耐熱性樹脂フィルム)
ポリイミドフィルム-1:東レ・デュポン社製、カプトン(登録商標)20EN、厚さ5μm。
ポリイミドフィルム-2:宇部興産社製、ユーピレックス(登録商標)12.5NVT、厚さ12.5μm。
ポリイミドフィルム-3:宇部興産社製、ユーピレックス(登録商標)25NVT、厚さ25μm。
ポリイミドフィルム-4:宇部興産社製、ユーピレックス(登録商標)50NVT、厚さ50μm。
ポリイミドフィルム-5:宇部興産社製、ユーピレックス(登録商標)25S、厚さ25μmを、30W/(m2・min)の放電量でコロナ処理したもの。
ポリイミドフィルム-6:宇部興産社製、ユーピレックス(登録商標)25SGA、厚さ25μm。ユーピレックス(登録商標)25Sにシランカップリング剤が塗工されたもの。
ポリイミドフィルム-7:宇部興産社製、ユーピレックス(登録商標)25S、厚さ25μmを、以下の条件で大気圧プラズマ処理をしたもの。プラズマ処理条件:ガス種:アルゴンガス99.0atm%、窒素ガス0.5atm%、水素ガス0.5atm%、処理周波数:30kHz、気圧:102kPa、放電電力密度:300W・min/m2。
ポリイミドフィルム-8:宇部興産社製、ユーピレックス(登録商標)25S、厚さ25μmを、以下の条件で真空プラズマ処理したもの。プラズマ処理条件:ガス種:アルゴンガス99.0atm%、窒素ガス0.5atm%、水素ガス0.5atm%、処理周波数:30kHz、気圧:20Pa、放電電力密度:300W・min/m2。
液晶ポリマーフィルム-1:クラレ社製、ベクスター(登録商標)25CT-Q、厚さ25μm。
液晶ポリマーフィルム-2:液晶ポリマーフィルム-1を、以下の条件で真空プラズマ処理したフィルム。プラズマ処理条件:ガス種:アルゴンガス95atm%、水素ガス5atm%、処理周波数:50kHz、気圧:35Pa、放電電力密度:300W・min/m2。
これら耐熱性樹脂フィルムの260℃における引張弾性率は、いずれも108Pa以上である。
【0123】
(製造例1)
樹脂パウダーP-1の120g、ノニオン性界面活性剤(ネオス社製、フタージェント710FL)の12g、メチルエチルケトンの234gを横型ボールミルポットに投入し、15mm径のジルコニアボールにて樹脂パウダーP-1を分散させ、液状組成物を得た。液状組成物を長尺の銅箔-1の表面にダイコーターを用いてロールツーロールで塗布し、窒素ガス雰囲気下に100℃で15分間乾燥し、連続して、窒素ガス雰囲気下に350℃で5分間焼成した後、徐冷して長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-1を得た。結果を表2に示す。
【0124】
(製造例2)
フッ素樹脂層の厚さを変更した以外は、製造例1と同様にして長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-2を得た。結果を表2に示す。
【0125】
(製造例3)
フッ素樹脂層の厚さを変更した以外は、製造例1と同様にして長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-3を得た。結果を表2に示す。
【0126】
(製造例4)
焼成における加熱時間を4分間に変更した以外は、製造例1と同様にして長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-4を得た。結果を表2に示す。
【0127】
(製造例5)
焼成における加熱時間を8分間に変更した以外は、製造例1と同様にして長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-5を得た。結果を表2に示す。
【0128】
(製造例6)
長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-1を、200℃に加熱した二本の金属ロール(表面のRzJIS 0.1μm)で圧延して長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-6を得た。結果を表2に示す。
【0129】
(製造例7)
長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-1を、200℃に加熱した二本の金属ロール(表面のRzJIS 3.0μm)で圧延して長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-7を得た。結果を表2に示す。
【0130】
(製造例8)
長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-1に、ロールツーロールで下記条件にて大気圧プラズマ放電処理を施して、長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-8を得た。結果を表2に示す。
ガス種:アルゴンガス99.0atm%、窒素ガス0.5atm%、水素ガス0.5atm%、
処理周波数:30kHz、
気圧:102kPa、
放電電力密度:300W・min/m2。
【0131】
(製造例9)
長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-1に、ロールツーロールで下記条件にて真空プラズマ放電処理を施して、長尺のフッ素樹脂層付き銅箔-9を得た。結果を表2に示す。
ガス種:アルゴンガス99.0atm%、窒素ガス0.5atm%、水素ガス0.5atm%、
処理周波数:30kHz、
気圧:20Pa、
放電電力密度:300W・min/m2。
【0132】
(製造例10)
製造例1と同様にして長尺のポリイミドフィルム-2の表面に厚さ5μmのフッ素樹脂層を設けた。フッ素樹脂層とは反対側のポリイミドフィルム-2の表面にも同様にして厚さ5μmのフッ素樹脂層を設け、長尺の両面フッ素樹脂層付きポリイミドフィルム-1を得た。結果を表2に示す。
【0133】
【0134】
(例1)
図4に示す構成を有する熱ラミネート機を用い、第1の基材:フッ素樹脂層付き銅箔-1と第2の基材:ポリイミドフィルム-2と第3の基材:フッ素樹脂層付き銅箔-1とを、フッ素樹脂層とポリイミドフィルム-2とが接するように下記条件にて積層し、長尺積層体を得た。結果を表3に示す。
一対の金属ロールの表面温度(ラミネート温度):340℃、
加圧力:15kN/m、
搬送速度(ラミネート速度):3m/分、
各基材にかかる張力:200N。
【0135】
(例2~20)
第1の基材、第2の基材及び第3の基材を表3~表6に示すように変更した以外は、例1と同様にして長尺積層体を得た。結果を表3~表6に示す。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
(例21~例22)
第1の基材、第2の基材及び第3の基材を表7に示すように変更した以外は、例1と同様にして長尺積層体を得た。結果を表7に示す。
【0141】
【0142】
例16は、フッ素樹脂層の合計の厚さが耐熱性樹脂層の合計の厚さに対し4倍であったため、長尺積層体の寸法安定性が-0.3%と著しく悪かった。
例17は、フッ素樹脂層の合計の厚さと耐熱性樹脂層の合計の厚さとの合計が70μmであったため、長尺積層体の耐折性が5000回と著しく悪かった。
例18は、フッ素樹脂層の合計の厚さが耐熱性樹脂層の合計の厚さに対し0.16倍であったため、比誘電率が3.6と著しく悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の長尺積層体は、フレキシブルプリント配線板の材料として有用である。
なお、2018年01月18日に出願された日本特許出願2018-006772号、2018年04月16日に出願された日本特許出願2018-078253号及び2018年08月31日に出願された日本特許出願2018-163696号の明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0144】
1 装置、2 熱ラミネート機、2’ 熱ラミネート機、10 長尺積層体、10’ 保護層付長尺積層体、12 金属層、14 フッ素樹脂層、16 耐熱性樹脂層、20 巻出ロール、22 ダイコーター、24 乾燥装置、26 焼成装置、28 巻取ロール、30 ガイドロール、32 ダイバックロール、34 ガイドロール、36 ガイドロール、40 第1の巻出ロール、41 第4の巻出ロール、42 第2の巻出ロール、43 第5の巻出ロール、44 第3の巻出ロール、46 金属ロール、48 巻取ロール、50 ガイドロール、50’ ガイドロール、51 ガイドロール、52 ガイドロール、53 ガイドロール、54 ガイドロール、54’ ガイドロール、56 ガイドロール、100 金属箔又は耐熱性樹脂フィルム、102 ウェット膜付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルム、104 乾燥膜付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルム、106 フッ素樹脂層付き金属箔又は耐熱性樹脂フィルム、200 第1の基材、202 第2の基材、204 第3の基材、206 第4の基材、208 第5の基材。