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特許7234946感光性樹脂組成物、隔壁、有機電界発光素子、画像表示装置及び照明
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、隔壁、有機電界発光素子、画像表示装置及び照明
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20230301BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20230301BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20230301BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20230301BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20230301BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230301BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20230301BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/027 515
G03F7/038 501
G03F7/029
G03F7/031
H05B33/14 A
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019567137
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2019002225
(87)【国際公開番号】W WO2019146680
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2018011097
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】木村 明日香
(72)【発明者】
【氏名】中谷 和裕
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227771(JP,A)
【文献】特開2004-151618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
H10K 50/00
H05B 33/12
H05B 33/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)撥液剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)光重合性化合物、(D)光重合開始剤及び(E)連鎖移動剤を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(A)撥液剤が、多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a)を含み、
前記多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a)が、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を含む架橋部を有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a)が、下記一般式(1)で表される部分構造を含む、請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R1は各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。X1はパーフルオロアルキレン基を表す。式(1)中に含まれる複数のX1は同一のものでも異なるものでもよく、異なるものの場合にはランダム状に存在してもブロック状に存在していてもよい。X2は各々独立に、直接結合又は任意の2価の連結基を表す。nは1以上の整数である。*は結合手を表す。)
【請求項3】
前記多環式飽和炭化水素骨格が、アダマンタン骨格である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a)が、下記一般式(2)で表される部分構造を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】
(式(2)中、R2及びR3は各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。X3は置換基を有していてもよい2価の多環式飽和炭化水素基を表す。X4はウレタン結合又はエステル結合を表す。X5は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。*は結合手を表す。)
【請求項5】
前記(B)アルカリ可溶性樹脂が、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)及び/又はアクリル共重合樹脂(b2)を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)が、下記一般式(i)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-1)、下記一般式(ii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-2)、及び下記一般式(iii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】
(式(i)中、Raは水素原子又はメチル基を表し、Rbは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。式(i)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。*は結合手を表す。)
【化4】
(式(ii)中、Rcは各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。Rdは、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表す。*は結合手を表す。)
【化5】
(式(iii)中、Reは水素原子又はメチル基を表し、γは単結合、-CO-、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよい2価の環状炭化水素基を表す。式(iii)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。*は結合手を表す。)
【請求項7】
前記アクリル共重合樹脂(b2)が、下記一般式(I)で表される部分構造を含むアクリル共重合樹脂(b2-1)である、請求項又はに記載の感光性樹脂組成物。
【化6】
(式(I)中、RA及びRBは各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。*は結合手を表す。)
【請求項8】
前記(D)光重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤及びアセトフェノン系光重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに紫外線吸収剤を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
さらに重合禁止剤を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
隔壁形成用である請求項1~10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物で構成される隔壁。
【請求項13】
請求項12に記載の隔壁を備える有機電界発光素子。
【請求項14】
請求項13に記載の有機電界発光素子を含む画像表示装置。
【請求項15】
請求項13に記載の有機電界発光素子を含む照明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物で構成される隔壁、該隔壁を備える有機電界発光素子、該有機電界発光素子を含む画像表示装置及び照明に関する。
2018年1月26日に日本国特許庁に出願された日本国特願2018-011097の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容、並びに、本明細書で引用された文献等に開示された内容の一部又は全部をここに引用し、本明細書の開示内容として取り入れる。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機電界ディスプレイや有機電界照明などに含まれる有機電界発光素子は、基板上に、隔壁(バンク)を形成した後に、隔壁に囲まれた領域内に、種々の機能層を積層して製造されている。このような隔壁を容易に形成する方法として、感光性樹脂組成物を用いるフォトリソグラフィー法により形成する方法が知られている。
【0003】
また、隔壁に囲まれた領域内に種々の機能層を積層する方法としては、まず機能層を構成する材料を含むインクを調製し、次いで、調製したインクを隔壁に囲まれた領域内に注入する方法が知られている。この方法の中でも、所定量のインクを所定の箇所に正確に注入しやすいことから、インクジェット法が採用されることが多い。
【0004】
さらに、インクを用いて機能層を形成する場合、隔壁へのインクの付着の予防や、隣接する領域間に注入されるインク同士が混合されることを防ぐ目的等で、隔壁に撥インク性(撥液性)を付与することが求められる場合がある。隔壁に撥インク性を付与する方法としては、例えば、隔壁にフッ素系化合物を含有させる方法が知られている(特許文献1及び2参照)。
【0005】
また、特許文献3には、特定のフッ素樹脂を用いることで、高い撥インク性を有する硬化物が形成可能であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/161829号
【文献】日本国特開2015-179257号公報
【文献】日本国特開2012-092308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
感光性樹脂組成物を用いて隔壁を形成する場合、隔壁で囲まれた画素領域に該組成物の残渣が発生すると、画素部の一部が発光しなくなる場合がある。このため、隔壁形成後に残渣の除去等を目的としてUV洗浄処理を行うことがあるが、残渣が除去される一方で、隔壁の撥インク性が低下するという問題があった。
本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の感光性樹脂組成物では、UV洗浄処理後の撥インク性が十分ではないことがわかった。
また、特許文献2及び3に記載の感光性樹脂組成物では、撥インク性が十分ではないことがわかった。
【0008】
そこで、本発明では、UV洗浄処理後も撥インク性が良好である隔壁を形成可能な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また本発明は、当該感光性樹脂組成物で構成される隔壁や、該隔壁を備える有機電界発光素子、該有機電界発光素子を含む画像表示装置及び照明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討した結果、撥液剤、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物において、特定の構造を有する撥液剤を用い、さらに連鎖移動剤を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明の要旨は以下の通りである。
【0010】
[1] (A)撥液剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)光重合性化合物、及び(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(A)撥液剤が、多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a)を含み、
さらに(E)連鎖移動剤を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
[2] 前記多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a)が、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を含む架橋部を有する、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
【0011】
[3] 前記多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a)が、下記一般式(1)で表される部分構造を含む、[2]に記載の感光性樹脂組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
(式(1)中、R1は各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。X1はパーフルオロアルキレン基を表す。式(1)中に含まれる複数のX1は同一のものでも異なるものでもよく、異なるものの場合にはランダム状に存在してもブロック状に存在していてもよい。X2は各々独立に、直接結合又は任意の2価の連結基を表す。nは1以上の整数である。*は結合手を表す。)
【0014】
[4] 前記多環式飽和炭化水素骨格が、アダマンタン骨格である、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5] 前記多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a)が、下記一般式(2)で表される部分構造を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0015】
【化2】
【0016】
(式(2)中、R2及びR3は各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。X3は置換基を有していてもよい2価の多環式飽和炭化水素基を表す。X4はウレタン結合又はエステル結合を表す。X5は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。*は結合手を表す。)
【0017】
[6] 前記(B)アルカリ可溶性樹脂が、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)及び/又はアクリル共重合樹脂(b2)を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[7] 前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)が、下記一般式(i)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-1)、下記一般式(ii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-2)、及び下記一般式(iii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[6]に記載の感光性樹脂組成物。
【0018】
【化3】
【0019】
(式(i)中、Raは水素原子又はメチル基を表し、Rbは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。式(i)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。*は結合手を表す。)
【0020】
【化4】

(式(ii)中、Rcは各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。Rdは、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表す。*は結合手を表す。)
【0021】
【化5】
【0022】
(式(iii)中、Reは水素原子又はメチル基を表し、γは単結合、-CO-、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよい2価の環状炭化水素基を表す。式(iii)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。*は結合手を表す。)
【0023】
[8] 前記アクリル共重合樹脂(b2)が、下記一般式(I)で表される部分構造を含むアクリル共重合樹脂(b2-1)である、[6]又は[7]に記載の感光性樹脂組成物。
【0024】
【化6】
【0025】
(式(I)中、RA及びRBは各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。*は結合手を表す。)
【0026】
[9] 前記(D)光重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤及びアセトフェノン系光重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[10] さらに紫外線吸収剤を含有する、[1]~[9]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[11] さらに重合禁止剤を含有する、[1]~[10]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[12] 隔壁形成用である[1]~[11]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物で構成される隔壁。
[14] [13]に記載の隔壁を備える有機電界発光素子。
[15] [14]に記載の有機電界発光素子を含む画像表示装置。
[16] [14]に記載の有機電界発光素子を含む照明。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、UV洗浄処理後も撥インク性が良好である隔壁を形成可能な感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下の記載は本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらに特定されない。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味するものとし、また、「全固形分」とは、感光性樹脂組成物における溶剤以外の全成分を意味するものとする。さらに、本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、「A及び/又はB」とは、A及びBの一方または両方を意味し、具体的には、A、B、又はA及びBを意味する。
また、本発明において、「(共)重合体」とは、単一重合体(ホモポリマー)と共重合体(コポリマー)の双方を含むことを意味し、また、「多塩基酸(無水物)」とは、「多塩基酸及び/又は多塩基酸無水物」を意味する。
本発明において、重量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をさす。
本発明において酸価とは、有効固形分換算の酸価を表し、中和滴定により算出される。
【0029】
本発明において、隔壁材とはバンク材、壁材、ウォール材をさし、同様に、隔壁とはバンク、壁、ウォールをさす。
また本発明において、発光部(画素部)とは電気エネルギーを与えた場合に光を放出する部分をさす。
【0030】
[1]感光性樹脂組成物
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)撥液剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)光重合性化合物、(D)光重合開始剤を含有し、前記(A)撥液剤が、多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a)を含み、さらに(E)連鎖移動剤を含むことを特徴とする。必要に応じてさらにその他の成分を含んでいてもよく、例えば紫外線吸収剤や、重合禁止剤を含んでいてもよい。
【0031】
本発明において隔壁とは、例えば、アクティブ駆動型有機電界発光素子における機能層(有機層、発光部)を区画するためのものであり、区画された領域(画素領域)に機能層を構成するための材料であるインクを吐出、乾燥することで、機能層及び隔壁を含む画素等を形成させていくために使用されるものである。
【0032】
[1-1]感光性樹脂組成物の成分及び組成
本発明の感光性樹脂組成物を構成する成分およびその組成について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)撥液剤、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)光重合性化合物、及び(D)光重合開始剤を含有し、さらに(E)連鎖移動剤を含有し、通常は溶剤も含有する。
【0033】
[1-1-1](A)成分;撥液剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)撥液剤を含有する。(A)撥液剤を含有することで、得られる隔壁の表面に撥インク性(撥液性)を付与できることから、インクジェット法で有機電界発光素子を作成する際には、隔壁へのインクの付着が予防され、また、隣接する領域間に注入されるインク同士が混合されることが予防できると考えられる。
【0034】
[多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a)]
本発明の感光性樹脂組成物における(A)撥液剤は、多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a)(以下、「アクリル樹脂(a)」と略記する場合がある。)を含む。
アクリル樹脂(a)がエチレン性二重結合を有することで、塗布膜を露光した際にその表面にアクリル樹脂(a)が固定されるため、アクリル樹脂(a)が現像処理時に流出しにくくなり、その結果、得られる隔壁の撥インク性を高くすることができると考えられる。
【0035】
また、アクリル樹脂(a)は多環式飽和炭化水素骨格を有するものである。多環式飽和炭化水素骨格を有することでUV照射後の膜表面において撥インク性が高くなるが、それは以下の作用によるものと考えられる。
UV照射により、硬化物中の樹脂等のUV吸収による発熱で硬化物の表層温度は上昇する傾向にあり、表層に偏析するアクリル樹脂(a)はその発熱の影響を受けやすいと考えられる。
熱に対し、直鎖構造は1箇所が切れると分解してしまうが、環状構造は複数箇所が切れないと分解しないため耐熱性が高く、特に多環式になるとさらに分解しにくくなり耐熱性が上がると考えられる。また、不飽和環状炭化水素骨格よりも飽和環状炭化水素骨格の方が反応起点となる結合がなく、環自体の反応性が低い利点があると考えられる。
また多環式炭化水素骨格を有することで、それ自身が立体障害となり、アクリル樹脂(a)の主鎖も切れにくくなり、より耐熱性が上がると考えられる。
【0036】
さらに、アクリル樹脂(a)がアクリル構造であることによって、(B)アルカリ可溶性樹脂や(C)光重合性化合物との相溶性を高めることができ、感光性樹脂組成物の保存性も高めることができるととともに、画素部の残渣発生を抑制できて濡れ広がり性が良好になると考えられる。
【0037】
前記多環式飽和炭化水素骨格は、1価の基でもよく、2価以上の基でもよい。また、無置換でもよいし、置換基を有していてもよい。
【0038】
前記多環式飽和炭化水素骨格の炭素数は特に限定されないが、通常6以上、8以上が好ましく、9以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、また、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、12以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることでUV洗浄処理後の撥インク性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで感光性樹脂組成物中の相溶性が良好となる傾向がある。前記多環式飽和炭化水素骨格の炭素数としては、例えば、6~20であり、8~20が好ましく、9~15がより好ましく、10~12がさらに好ましい。
また、前記多環式飽和炭化水素骨格が有する環の数は2以上であれば特に限定されないが、3以上が好ましく、また、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。前記下限値以上とすることでUV洗浄処理後の撥インク性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで感光性樹脂組成物中の相溶性が良好となる傾向がある。前記多環式飽和炭化水素骨格が有する環の数としては、例えば、2~5であり、3~4が好ましい。
前記多環式飽和炭化水素骨格の具体例としては、アダマンタン骨格、トリシクロデカン骨格、ノルボルナン骨格、デカリン骨格などが挙げられるが、UV洗浄処理後の撥インク性の観点からアダマンタン骨格が好ましい。
【0039】
前記多環式飽和炭化水素骨格は、アクリル樹脂(a)の化学構造のどこにあってもよく、例えば、アクリル樹脂の主鎖中にあってもよく、側鎖中にあってもよい。合成しやすさの観点から、側鎖中にあることが好ましい。
【0040】
また、アクリル樹脂(a)における多環式飽和炭化水素骨格の含有割合は特に限定されないが、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、30%質量%以上が特に好ましく、また、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることでUV洗浄処理後の撥インク性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで感光性樹脂組成物中の相溶性が良好となる傾向がある。アクリル樹脂(a)における多環式飽和炭化水素骨格の含有割合としては、例えば、10~50質量%であり、20~40質量%が好ましく、25~35質量%がより好ましく、30~35質量%がさらに好ましい。
【0041】
また、アクリル樹脂(a)は、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を含む架橋部を有することが好ましい。ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を含む架橋部を有する場合、架橋部が2以上の主鎖と結合するので、UV洗浄によってもポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖がアクリル樹脂(a)から脱離しにくく、隔壁表面に十分な量のフッ素原子を存在させることができ、その結果、UV洗浄処理後も撥インク性が良好となると考えられる。
【0042】
アクリル樹脂(a)の化学構造は特に限定されないが、UV洗浄後においても十分な撥インク性を示す観点から、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を含む架橋部を有する部分構造として、下記一般式(1)で表される部分構造を含むものであることが好ましい。
【0043】
【化7】
【0044】
式(1)中、R1は各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。X1はパーフルオロアルキレン基を表す。式(1)中に含まれる複数のX1は同一のものでも異なるものでもよく、異なるものの場合にはランダム状に存在してもブロック状に存在していてもよい。X2は各々独立に、直接結合又は任意の2価の連結基を表す。nは1以上の整数である。*は結合手を表す。
【0045】
(X1
前記式(1)において、X1はパーフルオロアルキレン基を表す。
パーフルオロアルキレン基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで十分な撥インク性を示す傾向があり、前記上限値以下とすることで他の材料との相溶性が良好となる傾向がある。
パーフルオロアルキレン基の具体例としては、下記一般式(1-a)~(1-e)で表される基が挙げられる。
【0046】
【化8】
【0047】
式(1-a)~(1-e)中、*は結合手を表す。
【0048】
前記式(1-a)~(1-e)の中でも、高い撥インク性が得られるとの観点から、前記式(1-a)で表される基、前記式(1-b)で表される基が好ましい。
また、撥インク性の観点から、式(1)中に前記式(1-a)で表される基と前記式(1-b)で表される基との両者が含まれることがより好ましい。前記式(1)中に含まれる前記式(1-a)で表される基と前記式(1-b)で表される基のモル比は特に限定されないが、撥インク性の観点から、1:10~10:1が好ましく、1:4~4:1がより好ましく、1:2~2:1がさらに好ましい。
【0049】
(X2
前記式(1)中、X2は直接結合又は任意の2価の連結基を表す。
任意の2価の連結基としては、-O-、-CO-O-、-CO-NH-、-O-CO-NH-、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基中に含まれる-CH2-の一部が、-O-、-CO-O-、-CO-NH-、及び-O-CO-NH-からなる群から選ばれる少なくとも1種で置き換えられていてもよい。
【0050】
2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族基、2価の芳香族環基が挙げられる。
2価の脂肪族基としては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキレン基や、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルケニレン基が挙げられる。
2価の脂肪族基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上、また5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。前記上限値以下とすることで撥インク性が高くなる傾向がある。
2価の脂肪族基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、エテニレン基、プロピレン基、プロペニレン基、ブチレン基、ブテニレン基などが挙げられる。
2価の脂肪族基が有していてもよい置換基としては、水酸基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0051】
2価の芳香族環基としては、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族複素環基が挙げられる。
2価の芳香族環基の炭素数は特に限定されないが、通常4以上、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで他の材料との相溶性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで撥インク性が高くなる傾向がある。
2価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、2価の芳香族複素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。
2価の芳香族環基が有していてもよい置換基としては、水酸基、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0052】
2の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0053】
【化9】
【0054】
これらの中でも、撥インク性確保の観点、及び現像時の画素部における撥液剤の残存抑制の観点からは、2価の脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0055】
(n)
前記式(1)中、nは1以上の整数であるが、撥インク性の観点から、3~40の整数であることが好ましく、6~30の整数であることがより好ましく、10~20の整数であることがさらに好ましい。
【0056】
また、アクリル樹脂(a)は、多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を有するものであるが、UV洗浄後の撥インク性と感度の観点から、多環式飽和炭化水素骨格及びエチレン性二重結合を含む部分構造として、下記一般式(2)で表される部分構造を含むものであることが好ましい。
【0057】
【化10】
【0058】
式(2)中、R2及びR3は各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。X3は置換基を有していてもよい2価の多環式飽和炭化水素基を表す。X4はウレタン結合又はエステル結合を表す。X5は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。*は結合手を表す。
【0059】
(X3
前記式(2)中、X3は置換基を有していてもよい2価の多環式飽和炭化水素基を表す。
【0060】
2価の多環式飽和炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、通常6以上、8以上が好ましく、9以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、また20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることでUV洗浄処理後の撥インク性の低下が抑制できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで撥インク性が高くなる傾向がある。
2価の多環式飽和炭化水素基の具体例としては、アダマンチレン基、ジシクロペンタニレン基、ノルボルナニレン基、デカリニレン基などが挙げられ、これらの中でもUV洗浄処理後の撥インク性の観点からアダマンチレン基が好ましい。
2価の多環式飽和炭化水素基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。
【0061】
(X4
前記式(2)中、X4はウレタン結合(-O-CO-NH-)又はエステル結合(-O-CO-)を表す。これらの中でもUV洗浄処理後の撥インク性の低下抑制の観点から、ウレタン結合が好ましい。
【0062】
(X5
前記式(2)中、X5は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。
2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族基、2価の芳香族環基が挙げられる。
【0063】
2価の脂肪族基としては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキレン基や、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルケニレン基が挙げられる。
2価の脂肪族基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下がさらに好ましく、3以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることでUV洗浄処理後の撥インク性の低下が抑制できる傾向があり、前記上限値以下とすることで撥インク性が高くなる傾向がある。
2価の脂肪族基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、エテニレン基、プロピレン基、プロペニレン基、ブチレン基、ブテニレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基などが挙げられる。
2価の脂肪族基が有していてもよい置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる
【0064】
2価の芳香族環基としては、2価の芳香族炭化水素環基、2価の芳香族複素環基が挙げられる。
2価の芳香族環基の炭素数は特に限定されないが、通常4以上、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることでUV洗浄処理後の撥インク性の低下が抑制できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで撥インク性が高くなる傾向がある。
2価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、2価の芳香族複素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。
2価の芳香族環基が有していてもよい置換基としては、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0065】
これらの中でも、撥インク性確保の観点、及び現像時の画素部における撥液剤の残存抑制の観点からは、2価の脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基がより好ましく、エチレン基がさらに好ましい。
【0066】
また、アクリル樹脂(a)はさらにその他の部分構造を含んでいてもよく、その他の部分構造の中でも発光部の残渣低減の観点から、下記一般式(3)で表される部分構造を含むものであることが好ましい。
【0067】
【化11】
【0068】
式(3)中、R4は水素原子又はメチル基を表す。X6は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。*は結合手を表す。
【0069】
(X6
前記式(3)中、X6は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表す。
1価の炭化水素基としては、1価の脂肪族基、1価の芳香族環基が挙げられる。
【0070】
1価の脂肪族基としては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基や、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
1価の脂肪族基の炭素数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、4以上がより好ましく、6以上がさらに好ましく、8以上が特に好ましく、また20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることでUV洗浄処理後の撥インク性の低下が抑制できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで撥インク性が高くなる傾向がある。
1価の脂肪族基の具体例としては、メチル基、エチル基、エテニル基、プロピル基、プロペニル基、ブチル基、ブテニル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。
1価の脂肪族基が有していてもよい置換基としては、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる
【0071】
1価の芳香族環基としては、1価の芳香族炭化水素環基、1価の芳香族複素環基が挙げられる。
1価の芳香族環基の炭素数は特に限定されないが、通常4以上、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることでUV洗浄処理後の撥インク性の低下が抑制できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで撥インク性が高くなる傾向がある。
1価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、1価の芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。
1価の芳香族環基が有していてもよい置換基としては、水酸基、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0072】
これらの中でも、撥インク性の観点からは、置換基を有していてもよい1価の脂肪族基が好ましく、置換基を有していてもよいエチル基、置換基を有していてもよいアダマンチル基がより好ましく、置換基を有していてもよいアダマンチル基がさらに好ましい。
【0073】
アクリル樹脂(a)が前記一般式(1)で表される部分構造を有する場合、その含有割合は限定されないが、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、3モル%以上がさらに好ましく、5モル%以上がよりさらに好ましく、7モル%以上が特に好ましく、また、20モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましく、13モル%以下がさらに好ましく、10モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで撥インク性が高くなる傾向があり、前記上限値以下とすることで他の材料との相溶性が良好となる傾向がある。アクリル樹脂(a)が前記一般式(1)で表される部分構造を有する場合、その含有割合としては、例えば、1~20モル%であり、2~20モル%が好ましく、3~15モル%がより好ましく、5~15モル%がさらに好ましく、7~10モル%がよりさらに好ましい。
【0074】
一方で、アクリル樹脂(a)が前記一般式(2)で表される部分構造を有する場合、その含有割合は限定されないが、30モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、60モル%以上がよりさらに好ましく、70モル%以上が特に好ましく、また、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像時の撥液剤の流出を抑制でき、撥インク性が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで相対的に撥液剤中のフッ素原子の含有割合が高くなり、撥インク性が高くなる傾向がある。アクリル樹脂(a)が前記一般式(2)で表される部分構造を有する場合、その含有割合としては、例えば、30~95モル%であり、40~95モル%が好ましく、50~90モル%がより好ましく、60~90モル%がさらに好ましく、70~90モル%がよりさらに好ましい。
【0075】
一方で、アクリル樹脂(a)が前記一般式(3)で表される部分構造を有する場合、その含有割合は限定されないが、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、3モル%以上がさらに好ましく、5モル%以上が特に好ましく、また、60モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましく、30モル%以下がよりさらに好ましく、20モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで発光部の残渣が低減できる傾向があり、前記上限値以下とすることで撥インク性が高くなる傾向がある。アクリル樹脂(a)が前記一般式(3)で表される部分構造を有する場合、その含有割合としては、例えば、1~60モル%であり、2~50モル%が好ましく、3~40モル%がより好ましく、5~30モル%がさらに好ましく、5~20モル%がよりさらに好ましい。
【0076】
アクリル樹脂(a)が前記一般式(1)~(3)からなる群から選ばれる2種以上の部分構造を含む場合、アクリル樹脂(a)はランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。ブロック共重合体である場合、撥インク性の観点から、前記一般式(1)で表される部分構造を含むAブロックと、前記一般式(2)で表される部分構造及び/又は前記一般式(3)で表される部分構造を含むBブロックとを含む、ABブロック共重合体であることが好ましい。
【0077】
アクリル樹脂(a)の重量平均分子量は特に制限されず、低分子量の化合物でも、高分子量体であってもよい。アクリル樹脂(a)の重量平均分子量は、1000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、8000以上がよりさらに好ましく、10000以上がさらに好ましく、また100000以下が好ましく、50000以下がより好ましく、30000以下がさらに好ましく、20000以下が特に好ましい。前記範囲内とすることで、ポストベークによる撥液剤の流動性が抑えられ、隔壁から撥液剤が流出することを抑制できる傾向がある。アクリル樹脂(a)の重量平均分子量としては、例えば、1000~100000であり、5000~50000が好ましく、8000~30000がより好ましく、10000~20000がさらに好ましい。
【0078】
アクリル樹脂(a)がフッ素原子を含有する場合、その含有割合は特に限定されず、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましく、また、50質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで高い撥インク性が得られる傾向があり、前記上限値以下とすることで発光部におけるアクリル樹脂(a)の残存を抑制できる傾向がある。アクリル樹脂(a)がフッ素原子を含有する場合、その含有割合としては、例えば、1~50質量%であり、5~25質量%が好ましく、8~25質量%がより好ましい。
【0079】
本発明の感光性樹脂組成物における(A)撥液剤の含有割合は特に限定されないが、感光性樹脂組成物の全固形分中に0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、0.4質量%以上が特に好ましく、また、1質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで高い撥インク性を示す傾向があり、また、前記上限値以下とすることで撥液剤の画素部への流出を抑制できる傾向がある。感光性樹脂組成物の全固形分中における(A)撥液剤の含有割合としては、例えば、0.01~1質量%であり、0.1~0.7質量%が好ましく、0.2~0.7質量%がより好ましく、0.4~0.5質量%がさらに好ましい。
【0080】
本発明の感光性樹脂組成物におけるアクリル樹脂(a)の含有割合も特に限定されないが、感光性樹脂組成物の全固形分中に0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、0.4質量%以上が特に好ましく、また、1質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで撥インク性が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることでアクリル樹脂(a)の画素部への流出を抑制できる傾向がある。感光性樹脂組成物の全固形分中におけるアクリル樹脂(a)の含有割合としては、例えば、0.01~1質量%であり、0.1~0.7質量%が好ましく、0.2~0.7質量%がより好ましく、0.4~0.5質量%がさらに好ましい。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物における(A)撥液剤は、アクリル樹脂(a)以外のその他の撥液剤を含有してもよい。
【0082】
その他の撥液剤の具体例としては、例えばパーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルアルキレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩、パーフルオロカルボン酸エステル、パーフルオロアルキル燐酸エステル、パーフルオロアルキル基を含むオリゴマー、パーフルオロアルキレン基を含むオリゴマーなどのフッ素原子含有有機化合物を挙げることができる。
【0083】
これらのフッ素原子含有有機化合物の市販品としては、DIC社製「メガファック(登録商標、以下同じ。)F116」、「メガファックF120」、「メガファックF142D」、「メガファックF144D」、「メガファックF150」、「メガファックF160」、「メガファックF171」、「メガファックF172」、「メガファックF173」、「メガファックF177」、「メガファックF178A」、「メガファックF178K」、「メガファックF179」、「メガファックF183」、「メガファックF184」、「メガファックF191」、「メガファックF812」、「メガファックF815」、「メガファックF824」、「メガファックF833」、「メガファックRS101」、「メガファックRS102」「メガファックRS105」、「メガファックRS201」、「メガファックRS202」、「メガファックRS301」、「メガファックRS303」「メガファックRS304」、「メガファックRS401」、「メガファックRS402」、「メガファックRS501」、「メガファックRS502」、「メガファックRS-56」、「メガファックRS-72-K」、「DEFENSA(登録商標、以下同じ。) MCF300」、「DEFENSA MCF310」、「DEFENSA MCF312」、「DEFENSA MCF323」、スリーエムジャパン社製「フロラードFC-430」、「フロラードFC-431」、「FC-4430」、「FC-4432」、AGC社製「アサヒガード(登録商標。)AG-710」、AGCセイミケミカル社製「サーフロン(登録商標、以下同じ。)S-382」、「サーフロンSC-101」、「サーフロンSC-102」、「サーフロンSC-103」、「サーフロンSC-104」、「サーフロンSC-105」、「サーフロンSC-106」、ダイキン工業社製「オプツール(登録商標。)DAC-HP」などの商品名で市販されているフッ素原子含有有機化合物を使用することができる。
【0084】
(A)撥液剤中のアクリル樹脂(a)の含有割合も特に限定されないが、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、また、通常100質量%以下である。前記下限値以上とすることでUV洗浄処理後の撥インク性の低下が抑制される傾向がある。(A)撥液剤中のアクリル樹脂(a)の含有割合としては、例えば、50~100質量%であり、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましい。
【0085】
(A)撥液剤がその他の撥液剤を含有する場合、(A)撥液剤中のその他の撥液剤の含有割合は特に限定されないが、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、また、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで画素部の残渣が抑制できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることでUV洗浄処理後の撥インク性の低下が抑制される傾向がある。(A)撥液剤がその他の撥液剤を含有する場合、(A)撥液剤中のその他の撥液剤の含有割合としては、例えば、10~50質量%であり、15~40質量%が好ましく、20~30質量%がより好ましい。
【0086】
[1-1-2](B)成分;アルカリ可溶性樹脂
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)アルカリ可溶性樹脂を含有する。アルカリ可溶性樹脂としてはアルカリ現像液で現像可能な樹脂であれば特に限定されない。アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基及び/又は水酸基を含有する各種樹脂が挙げられる。その中でも、適度なテーパー角の隔壁が得られ、ポストベーク時の隔壁表面の熱溶融による撥液剤の流出が抑えられて撥インク性を保持できるなどの観点から、カルボキシル基を含有する樹脂が好ましい。
【0087】
[エチレン性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(b)]
本発明の感光性樹脂組成物において、(B)アルカリ可溶性樹脂は、エチレン性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(b)(以下、「アルカリ可溶性樹脂(b)」と略記する場合がある。)を含むことが好ましい。エチレン性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(b)を含むことで、感度が高くなり、現像時の撥液剤流出を抑制することで得られる隔壁の撥インク性が高くなる傾向がある。
【0088】
エチレン性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(b)の具体的構造は特に限定されないが、現像溶解性の観点から、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)及び/又はアクリル共重合樹脂(b2)が好ましく、アウトガス低減の観点からはエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)がより好ましい。
以下に、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)について詳述する。
【0089】
[エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)]
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)は、エポキシ樹脂にエチレン性不飽和結合(エチレン性二重結合)を有する酸又はエステル化合物を付加し、更に多塩基酸又はその無水物を付加させた樹脂である。例えば、エポキシ樹脂のエポキシ基に、エチレン性不飽和結合を有する酸のカルボキシル基が開環付加されることにより、エポキシ樹脂にエステル結合(-COO-)を介してエチレン性不飽和結合が付加されると共に、その際生じた水酸基に、多塩基酸無水物の一方のカルボキシル基が付加されたものが挙げられる。また多塩基酸無水物を付加するときに、多価アルコールを同時に添加して付加されたものも挙げられる。さらに、上記反応で得られた樹脂のカルボキシル基に、更に反応し得る官能基を有する化合物を反応させて得られる樹脂も、上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)に含まれる。
このように、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は化学構造上、実質的にエポキシ基を有さず、かつ「(メタ)アクリレート」に限定されるものではないが、エポキシ化合物(エポキシ樹脂)が原料であり、かつ、「(メタ)アクリレート」が代表例であるので慣用に従いこのように命名されている。
【0090】
ここでエポキシ樹脂とは、熱硬化により樹脂を形成する以前の原料化合物をも含めて言うこととし、そのエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂の中から適宜選択して用いることができる。また、エポキシ樹脂は、フェノール性化合物とエピハロヒドリンとを反応させて得られる化合物を用いることができる。フェノール性化合物としては、2価もしくは2価以上のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましく、単量体でも重合体でもよい。
具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルノボラックエポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタンとの重合体のエポキシ化物、ジハイドロオキシルフルオレン型エポキシ樹脂、ジハイドロオキシルアルキレンオキシルフルオレン型エポキシ樹脂、9,9-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル化物、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)アダマンタンのジグリシジルエーテル化物などが挙げられ、このように主鎖に芳香族環を有するものを好適に用いることができる。
【0091】
中でも、硬化膜強度の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタジエンとの重合体のエポキシ化物、9,9-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)フルオレンのエポキシ化物、などが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が更に好ましい。
【0092】
エチレン性不飽和結合を有する酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等、および、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート無水コハク酸付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート無水コハク酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート無水フタル酸付加物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートテトラヒドロ無水フタル酸付加物、(メタ)アクリル酸とε-カプロラクトンとの反応生成物などが挙げられる。中でも、感度の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0093】
多塩基酸(無水物)としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、およびそれらの無水物などが挙げられる。これらは1種を単独でも用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、現像後の画素部の残渣低減の観点から、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物が好ましく、コハク酸無水物がより好ましい。
【0094】
多価アルコールを用いることで、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)の分子量を増大させ、分子中に分岐を導入することが出来、分子量と粘度のバランスをとることができる傾向がある。また、分子中への酸基の導入率を増やすことができ、感度や密着性等のバランスがとれやすい傾向がある。
多価アルコールとしては、例えばトリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、1,2,3-プロパントリオールの中から選ばれる1種又は2種以上の多価アルコールであることが好ましい。
【0095】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)の酸価は特に限定されないが、10mg-KOH/g以上が好ましく、20mg-KOH/g以上がより好ましく、40mg-KOH/g以上がさらに好ましく、60mg-KOH/g以上がよりさらに好ましく、また、200mg-KOH/g以下が好ましく、180mg-KOH/g以下がより好ましく、150mg-KOH/g以下がさらに好ましく、120mg-KOH/g以下がよりさらに好ましく、100mg-KOH/g以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減し、テーパー角が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガスが低減する傾向がある。エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)の酸価としては、例えば、10~200mg-KOH/gであり、10~180mg-KOH/gが好ましく、20~150mg-KOH/gがより好ましく、40~120mg-KOH/gがさらに好ましく、60~100mg-KOH/gがよりさらに好ましい。
【0096】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、通常1000以上、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、さらに好ましくは4000以上、よりさらに好ましくは5000以上、特に好ましくは6000以上、最も好ましくは7000以上であり、また、通常30000以下、好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下、さらに好ましくは10000以下である。前記下限値以上とすることで素子発光時のアウトガスが低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)の重量平均分子量(Mw)としては、例えば、1000~30000であり、2000~20000が好ましく、3000~20000がより好ましく、4000~15000がさらに好ましく、5000~15000がよりさらに好ましく、6000~10000が特に好ましく、7000~10000が最も好ましい。
【0097】
(B)アルカリ可溶性樹脂がエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)を含む場合、(B)アルカリ可溶性樹脂に含まれるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)の含有割合は特に限定されないが、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がよりさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、また、通常100質量%以下である。前記下限値以上とすることでアウトガスが低減する傾向がある。(B)アルカリ可溶性樹脂がエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)を含む場合、(B)アルカリ可溶性樹脂に含まれるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)の含有割合としては、例えば、30~100質量%であり、50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましく、90~100質量%がよりさらに好ましい。
【0098】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)は、従来公知の方法により合成することができる。具体的には、前記エポキシ樹脂を有機溶剤に溶解させ、触媒と熱重合禁止剤の共存下、前記エチレン性不飽和結合を有する酸又はエステル化合物を加えて付加反応させ、更に多塩基酸又はその無水物を加えて反応を続ける方法を用いることができる。
【0099】
ここで、反応に用いる有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの有機溶剤の1種または2種以上が挙げられる。また、上記触媒としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリベンジルアミン等の第3級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィンなどの燐化合物、トリフェニルスチビンなどのスチビン類などの1種または2種以上が挙げられる。更に、熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノンなどの1種または2種以上が挙げられる。
【0100】
また、エチレン性不飽和結合を有する酸又はエステル化合物としては、エポキシ樹脂のエポキシ基の1化学当量に対して通常0.7~1.3化学当量、好ましくは0.9~1.1化学当量となる量とすることができる。また、付加反応時の温度としては、通常60~150℃、好ましくは80~120℃の温度とすることができる。更に、多塩基酸(無水物)の使用量としては、前記付加反応で生じた水酸基の1化学当量に対して、通常0.1~1.2化学当量、好ましくは0.2~1.1化学当量となる量とすることができる。
【0101】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)は、素子発光時のアウトガスの観点から、下記一般式(i)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-1)(以下、「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-1)」と称する場合がある。)、下記一般式(ii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-2)(以下、「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-2)」と称する場合がある。)、及び下記一般式(iii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-3)(以下、「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-3)」と称する場合がある。)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0102】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)は、これらの中でも素子発光時のアウトガス低減の観点から、下記一般式(i)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-1)であることが好ましい。理由の一つとしては、剛直な主骨格を有することで熱に対して分解しづらいことなどが推測される。
【0103】
【化12】
【0104】
式(i)中、Raは水素原子又はメチル基を表し、Rbは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。式(i)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。*は結合手を表す。
【0105】
(Rb
前記式(i)において、Rbは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表す。
2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族基、2価の芳香族環基、1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基が挙げられる。
【0106】
2価の脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のものが挙げられる。これらの中でも現像溶解性の観点からは直鎖状のものが好ましく、一方で露光部への現像液の浸透低減の観点からは環状のものが好ましい。その炭素数は通常1以上であり、3以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0107】
2価の直鎖状脂肪族基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基等が挙げられる。これらの中でも残渣低減の観点から、メチレン基が好ましい。
2価の分岐鎖状脂肪族基の具体例としては、前述の2価の直鎖状脂肪族基に、側鎖としてメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等を有する構造が挙げられる。
2価の環状の脂肪族基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また、通常10以下、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで残膜率が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。2価の環状の脂肪族基の具体例としては、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環等の環から水素原子を2つ除した基が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環から水素原子を2つ除した基が好ましい。
【0108】
2価の脂肪族基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも合成容易性の観点から、無置換であることが好ましい。
【0109】
また、2価の芳香族環基としては、2価の芳香族炭化水素環基及び2価の芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0110】
2価の芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。2価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、2価の芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。2価の芳香族複素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。これらの中でも光硬化性の観点から、2個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、2個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
【0111】
2価の芳香族環基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシル基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基、グリシジルエーテル基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、無置換が好ましい。
【0112】
また、1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基としては、前述の2価の脂肪族基を1以上と、前述の2価の芳香族環基を1以上とを連結した基が挙げられる。
2価の脂肪族基の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、通常10以下、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
2価の芳香族環基の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、通常10以下、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0113】
1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基の具体例としては、下記式(i-A)~(i-F)で表される基等が挙げられる。これらの中でも骨格の剛直性と膜の疎水化の観点から、下記式(i-A)で表される基が好ましい。化学式中の*は結合手を表す。
【0114】
【化13】
【0115】
前記のとおり、式(i)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基等が挙げられる。置換基の数も特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。
これらの中でも硬化性の観点から、無置換であることが好ましい。
【0116】
また、前記式(i)で表される部分構造は、現像溶解性の観点から、下記式(i-1)で表される部分構造であることが好ましい。
【0117】
【化14】
【0118】
式(i-1)中、Ra及びRbは、前記式(i)のものと同義である。R1は置換基を有していてもよい炭素数1~4の2価の炭化水素基を表す。*は結合手を表す。式(i-1)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。
【0119】
(R1
前記一般式(i-1)において、R1は置換基を有していてもよい炭素数1~4の2価の炭化水素基を表す。2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基が挙げられる。
【0120】
アルキレン基は直鎖でも、分岐鎖でもよいが、現像溶解性の観点から直鎖であることが好ましい。その炭素数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また通常4以下、3以下が好ましい。前記下限値以上とすることで残膜率が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガス発生量が少なくなる傾向がある。
【0121】
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられ、アウトガス低減の観点から、メチレン基又はエチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0122】
また、アルケニレン基は直鎖でも、分岐鎖でもよいが、現像溶解性の観点から直鎖であることが好ましい。その炭素数は特に限定されないが、通常2以上であり、また通常4以下、3以下が好ましい。前記下限値以上とすることで残膜率が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガス発生量が少なくなる傾向がある。
【0123】
アルケニレン基の具体例としては、エテニレン基、プロペニレン基、ブチレニレン基が挙げられ、アウトガスの観点から、エテニレン基が好ましい。
【0124】
炭素数1~4の2価の炭化水素基が有していてもよい置換基は特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、ベンゾイル基、水酸基などが挙げられ、合成の容易さの観点からは無置換であることが好ましい。
【0125】
これらの中でもアウトガス低減の観点から、R1が炭素数1~4の2価のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがより好ましく、エチレン基であることがさらに好ましい。
【0126】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-1)1分子中に含まれる、前記式(i-1)で表される部分構造は、1種でも2種以上でもよい。
【0127】
また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-1)1分子中に含まれる、前記式(i)で表される部分構造の数は特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、また、10以下が好ましく、8以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0128】
また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-1)1分子中に含まれる、前記式(i-1)で表される部分構造の数は特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、また、10以下が好ましく、8以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0129】
以下にエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-1)の具体例を挙げる。
【0130】
【化15】
【0131】
【化16】
【0132】
【化17】
【0133】
【化18】
【0134】
【化19】
【0135】
【化20】
【0136】
【化21】
【0137】
また一方で、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)は、現像密着性の観点から、下記式(ii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-2)であることが好ましい。
【0138】
【化22】
【0139】
式(ii)中、Rcは各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。Rdは、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表す。*は結合手を表す。
【0140】
(Rd
前記式(ii)において、Rdは、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表す。
環状炭化水素基としては、脂肪族環基又は芳香族環基が挙げられる。
【0141】
脂肪族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また、通常10以下、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、脂肪族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
脂肪族環基における脂肪族環の具体例としてはシクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環が好ましい。
【0142】
一方で、芳香族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、通常10以下、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。
芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が挙げられる。また、芳香族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上がよりさらに好ましく、12以上が特に好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。
芳香族環基における芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。これらの中でもパターニング特性の観点から、フルオレン環が好ましい。
【0143】
また、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基における、2価の炭化水素基は特に限定されないが、例えば、2価の脂肪族基、2価の芳香族環基、1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基が挙げられる。
【0144】
2価の脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のものが挙げられる。これらの中でも現像溶解性の観点からは直鎖状のものが好ましく、一方で露光部への現像液の浸透低減の観点からは環状のものが好ましい。その炭素数は通常1以上であり、3以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、25以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0145】
2価の直鎖状脂肪族基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基等が挙げられる。これらの中でも残渣の観点から、メチレン基が好ましい。
2価の分岐鎖状脂肪族基の具体例としては、前述の2価の直鎖状脂肪族基に、側鎖としてメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等を有する構造が挙げられる。
2価の環状の脂肪族基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また、通常10以下、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。2価の環状の脂肪族基の具体例としては、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環等の環から水素原子を2つ除した基が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環から水素原子を2つ除した基が好ましい。
【0146】
2価の脂肪族基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも合成容易性の観点から、無置換であることが好ましい。
【0147】
また、2価の芳香族環基としては、2価の芳香族炭化水素環基及び2価の芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は通常4以上であり、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0148】
2価の芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。2価の芳香族炭化水素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、2価の芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であってもよい。2価の芳香族複素環基としては、例えば、2個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。これらの中でも光硬化性の観点から、2個の遊離原子価を有するベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、2個の遊離原子価を有するベンゼン環がより好ましい。
【0149】
2価の芳香族環基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシル基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、無置換が好ましい。
【0150】
また、1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基としては、前述の2価の脂肪族基を1以上と、前述の2価の芳香族環基を1以上とを連結した基が挙げられる。
2価の脂肪族基の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、通常10以下、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
2価の芳香族環基の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、通常10以下、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0151】
1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基の具体例としては、前記式(i-A)~(i-F)で表される基等が挙げられる。これらの中でも残渣低減の観点から、前記式(i-C)で表される基が好ましい。
【0152】
これらの2価の炭化水素基に対して、側鎖である環状炭化水素基の結合態様は特に限定されないが、例えば、脂肪族基や芳香族環基の水素原子1つを該側鎖で置換した態様や、脂肪族基の炭素原子の1つを含めて側鎖である環状炭化水素基を構成した態様が挙げられる。
【0153】
また、前記式(ii)で表される部分構造は、現像密着性の観点から、下記式(ii-1)で表される部分構造であることが好ましい。
【0154】
【化23】
【0155】
式(ii-1)中、Rcは前記式(ii)と同義である。Rαは、置換基を有していてもよい1価の環状炭化水素基を表す。nは1以上の整数である。式(ii-1)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。*は結合手を表す。
【0156】
(Rα
前記式(ii-1)において、Rαは、置換基を有していてもよい1価の環状炭化水素基を表す。
環状炭化水素基としては、脂肪族環基又は芳香族環基が挙げられる。
【0157】
脂肪族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また、通常6以下、4以下が好ましく、3以下がより好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、脂肪族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
脂肪族環基における脂肪族環の具体例としてはシクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環が好ましい。
【0158】
一方で、芳香族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、通常10以下、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が挙げられる。また、芳香族環基の炭素数は通常4以上であり、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基における芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、フルオレン環が好ましい。
【0159】
環状炭化水素基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、iso-アミル基等の炭素数1~5のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも合成の容易性の観点から、無置換が好ましい。
【0160】
nは1以上の整数を表すが、2以上が好ましく、また、3以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0161】
これらの中でも、強固な膜硬化度と電気特性の観点から、Rαが1価の脂肪族環基であることが好ましく、アダマンチル基であることがより好ましい。
【0162】
前記のとおり、式(ii-1)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基等が挙げられる。置換基の数も特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。これらの中でも硬化性の観点から、無置換であることが好ましい。
【0163】
以下に前記式(ii-1)で表される部分構造の具体例を挙げる。
【0164】
【化24】
【0165】
【化25】
【0166】
【化26】
【0167】
【化27】
【0168】
【化28】
【0169】
また、前記式(ii)で表される部分構造は、現像密着性の観点から、下記式(ii-2)で表される部分構造であることが好ましい。
【0170】
【化29】
【0171】
式(ii-2)中、Rcは前記式(ii)と同義である。Rβは、置換基を有していてもよい2価の環状炭化水素基を表す。式(ii-2)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。*は結合手を表す。
【0172】
(Rβ
前記式(ii-2)において、Rβは、置換基を有していてもよい2価の環状炭化水素基を表す。
環状炭化水素基としては、脂肪族環基又は芳香族環基が挙げられる。
【0173】
脂肪族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また、通常10以下、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、脂肪族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、また、40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
脂肪族環基における脂肪族環の具体例としては、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環が好ましい。
【0174】
一方で、芳香族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、通常10以下、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が挙げられるまた、芳香族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基における芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、フルオレン環が好ましい。
【0175】
環状炭化水素基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、iso-アミル基等の炭素数1~5のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも合成の簡易性の観点から、無置換が好ましい。
【0176】
これらの中でも、硬化性の観点から、Rβが2価の脂肪族環基であることが好ましく、2価のアダマンタン環基であることがより好ましい。
一方で、現像密着性の観点から、Rβが2価の芳香族環基であることが好ましく、2価のフルオレン環基であることがより好ましい。
【0177】
前記のとおり、式(ii-2)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基等が挙げられる。置換基の数も特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。これらの中でも硬化性の観点から、無置換であることが好ましい。
【0178】
以下に前記式(ii-2)で表される部分構造の具体例を挙げる。
【0179】
【化30】
【0180】
【化31】
【0181】
【化32】
【0182】
【化33】
【0183】
一方で、前記式(ii)で表される部分構造は、硬化性の観点から、下記式(ii-3)で表される部分構造であることが好ましい。
【0184】
【化34】
【0185】
式(ii-3)中、Rc及びRdは前記式(ii)と同義である。R1は前記式(i-1)と同義である。*は結合手を表す。
【0186】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-2)1分子中に含まれる、前記式(ii-3)で表される部分構造は、1種でも2種以上でもよい。
【0187】
また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-2)1分子中に含まれる、前記式(ii)で表される部分構造の数は特に限定されないが、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0188】
また一方で、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)は、素子発光時のアウトガス低減の観点から、下記一般式(iii)で表される部分構造を含むエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-3)であることが好ましい。
【0189】
【化35】
【0190】
式(iii)中、Reは水素原子又はメチル基を表し、γは単結合、-CO-、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよい2価の環状炭化水素基を表す。式(iii)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。*は結合手を表す。
【0191】
(γ)
前記式(iii)において、γは単結合、-CO-、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は置換基を有していてもよい2価の環状炭化水素基を表す。
【0192】
アルキレン基は直鎖状でも、分岐鎖状でもよいが、現像溶解性の観点からは直鎖状であることが好ましく、現像密着性の観点からは分岐鎖状であることが好ましい。その炭素数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また通常6以下、4以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0193】
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基が挙げられ、現像密着性と現像溶解性の両立の観点から、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基が好ましく、ジメチルメチレン基がより好ましい。
【0194】
アルキレン基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも現像密着性と現像溶解性の両立の観点から、無置換であることが好ましい。
【0195】
2価の環状炭化水素基としては、2価の脂肪族環基又は2価の芳香族環基が挙げられる。
【0196】
脂肪族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、また、通常10以下、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
また、脂肪族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、また、40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
脂肪族環基における脂肪族環の具体例としては、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマンタン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、アダマンタン環が好ましい。
【0197】
一方で、芳香族環基が有する環の数は特に限定されないが、通常1以上、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、また、通常10以下、5以下が好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基が挙げられる。また、芳香族環基の炭素数は通常4以上であり、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、また、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族環基における芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、フルオレン環が好ましい。
【0198】
環状炭化水素基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、iso-アミル基等の炭素数1~5のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~5のアルコキシ基;水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基等が挙げられる。これらの中でも合成の簡易性の観点から、無置換が好ましい。
【0199】
これらの中でも、残渣低減の観点から、γが置換基を有していてもよいアルキレン基であることが好ましく、ジメチルメチレンであることがより好ましい。
【0200】
前記のとおり、式(iii)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、プロポキシ基等が挙げられる。置換基の数も特に限定されず、1つでもよいし、2つ以上でもよい。これらの中でも硬化性の観点から、無置換であることが好ましい。
【0201】
一方で、前記式(iii)で表される部分構造は、現像溶解性の観点から、下記式(iii-1)で表される部分構造であることが好ましい。
【0202】
【化36】
【0203】
式(iii-1)中、Re及びγは前記式(iii)と同義である。R1は前記式(i-1)のものと同義である。*は結合手を表す。式(iii-1)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよい。
【0204】
また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-3)1分子中に含まれる、前記式(iii)で表される部分構造の数は特に限定されないが、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、また、18以下が好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0205】
また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-3)1分子中に含まれる、前記式(iii-1)で表される部分構造の数は特に限定されないが、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、また、18以下が好ましく、15以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0206】
以下にエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-3)の具体例を挙げる。
【0207】
【化37】
【0208】
【化38】
【0209】
【化39】
【0210】
[アクリル共重合樹脂(b2)]
次に、アクリル共重合樹脂(b2)について詳述する。アクリル共重合樹脂(b2)は、硬化性の観点から、側鎖にエチレン性二重結合を有するものであることが好ましい。
【0211】
アクリル共重合樹脂(b2)の中でも、現像溶解性の観点から、下記一般式(I)で表される部分構造を含むアクリル共重合樹脂(b2-1)が好ましい。
【0212】
【化40】
【0213】
式(I)中、RA及びRBは各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。*は結合手を表す。
【0214】
また、前記式(I)で表される部分構造は、現像性の観点から、下記一般式(I-1)で表される部分構造であることが好ましい。
【0215】
【化41】
【0216】
式(I-1)中、RA及びRBは、前記式(I)のものと同義である。R1は前記式(i-1)のものと同義である。
【0217】
また、前記式(I)で表される部分構造は、感度の観点から、下記式(I-2)で表される部分構造であることが好ましい。
【0218】
【化42】
【0219】
式(I-2)中、RA及びRBは、前記式(I)のものと同義である。
【0220】
アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、5モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、50モル%以上がよりさらに好ましく、70モル%以上が特に好ましく、80モル%以上が最も好ましく、また、99モル%以下が好ましく、97モル%以下がより好ましく、95モル%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I)で表される部分構造の含有割合としては、例えば、5~99モル%であり、20~99モル%が好ましく、30~97モル%がより好ましく、50~97モル%がさらに好ましく、70~95モル%がよりさらに好ましく、80~95モル%が特に好ましい。
【0221】
アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I-1)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I-1)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、8モル%以上がさらに好ましく、10モル%以上がよりさらに好ましく、また、99モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましく、30モル%以下がよりさらに好ましく、20モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで感度が高くなり、残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I-1)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I-1)で表される部分構造の含有割合としては、例えば、1~99モル%であり、5~60モル%が好ましく、5~40モル%がより好ましく、8~40モル%がさらに好ましく、10~20モル%がよりさらに好ましい。
【0222】
アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I-2)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I-2)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上がよりさらに好ましく、50モル%以上が特に好ましく、70モル%以上が最も好ましく、また、99モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましく、90モル%以下がさらに好ましく、85モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで感度が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像性が向上する傾向がある。アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I-2)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I-2)で表される部分構造の含有割合としては、例えば、10~99モル%であり、30~95モル%が好ましく、50~90モル%がより好ましく、70~90モル%がさらに好ましく、70~85モル%がよりさらに好ましい。
【0223】
アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I)で表される部分構造を含む場合、他に含んでいてもよい部分構造は特に限定されないが、現像密着性の観点から、例えば、下記一般式(I’)で表される部分構造を含むことが好ましい。
【0224】
【化43】
【0225】
上記式(I’)中、RDは水素原子又はメチル基を表し、REは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基(芳香族環基)、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。
【0226】
(RE
前記式(I’)において、REは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表す。
Eにおけるアルキル基としては直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで膜強度が高くなり、現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0227】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ドデカニル基等が挙げられる。これらの中でも膜強度の観点から、ジシクロペンタニル基又はドデカニル基が好ましく、ジシクロペンタニル基がより好ましい。
また、アルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0228】
Eにおけるアリール基(芳香族環基)としては、1価の芳香族炭化水素環基及び1価の芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、また、24以下であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、18以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であってもよく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などが挙げられる。
また、芳香族複素環基における芳香族複素環基としては、単環であっても縮合環であってもよく、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などが挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、ベンゼン環基、又はナフタレン環基が好ましく、ベンゼン環基がより好ましい。
また、アリール基が有していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0229】
Eにおけるアルケニル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルケニル基が挙げられる。その炭素数は、2以上であることが好ましく、また、22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、18以下であることがさらに好ましく、16以下であることがよりさらに好ましく、14以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0230】
アルケニル基の具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブチレニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、エテニル基又はプロペニル基が好ましく、エテニル基がより好ましい。
また、アルケニル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0231】
このように、REは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を表すが、これらの中でも現像性の観点から、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましく、ジシクロペンタニル基がさらに好ましい。
【0232】
アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I’)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I’)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、0.5モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、1.5モル%以上がさらに好ましく、2モル%以上が特に好ましく、また、90モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、50%モル以下がさらに好ましく、30モル%以下がよりさらに好ましく、10モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I’)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I’)で表される部分構造の含有割合としては、例えば、0.5~90モル%であり、1~70モル%が好ましく、1.5~50モル%がより好ましく、1.5~30モル%がさらに好ましく、2~10モル%がよりさらに好ましい。
【0233】
アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I)で表される部分構造を含む場合、耐熱性、膜強度の観点から、下記一般式(I’’)で表される部分構造をさらに含むことが好ましい。
【0234】
【化44】
【0235】
上記式(I’’)中、RFは水素原子又はメチル基を表し、RGは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、チオール基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルフィド基を表す。tは0~5の整数を表す。
【0236】
(RG
前記式(I’’)においてRGは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、チオール基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルフィド基を表す。
Gにおけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0237】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ドデカニル基等が挙げられる。これらの中でも現像密着性の観点から、ジシクロペンタニル基又はドデカニル基が好ましく、ジシクロペンタニル基がより好ましい。
また、アルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0238】
Gにおけるアルケニル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルケニル基が挙げられる。その炭素数は、2以上であることが好ましく、また、22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、18以下であることがさらに好ましく、16以下であることがよりさらに好ましく、14以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0239】
アルケニル基の具体例としては、エテニル基、プロペニル基、ブチレニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でも硬化性の観点から、エテニル基又はプロペニル基が好ましく、エテニル基がより好ましい。
また、アルケニル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0240】
Gにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらの中でも撥インク性の観点からはフッ素原子が好ましい。
【0241】
Gにおけるアルコキシ基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルコキシ基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0242】
また、アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0243】
Gにおけるアルキルスルフィド基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルスルフィド基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、また、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましく、14以下であることがよりさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。
【0244】
アルキルスルフィド基の具体例としては、メチルスルフィド基、エチルスルフィド基、プロピルスルフィド基、ブチルスルフィド基等が挙げられる。これらの中でも現像性の観点から、メチルスルフィド基又はエチルスルフィド基が好ましい。
また、アルキルスルフィド基におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられ、現像性の観点から、ヒドロキシ基、オリゴエチレングリコール基が好ましい。
【0245】
このように、RGは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、チオール基、又は置換基を有していてもよいアルキルスルフィド基を表すが、これらの中でも現像性の観点から、ヒドロキシル基又はカルボキシル基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
【0246】
(t)
前記式(I’’)においてtは0~5の整数を表す。現像性の観点から、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0247】
アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I’’)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I’’)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、3モル%以上がさらに好ましく、5モル%以上が特に好ましく、また、90モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましく、30モル%以下がよりさらに好ましく、20モル%以下が特に好ましく、10モル%以下が最も好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I’’)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I’’)で表される部分構造の含有割合としては、例えば、1~90モル%であり、2~70モル%が好ましく、2~50モル%がより好ましく、3~30モル%がさらに好ましく、3~20モル%がよりさらに好ましく、5~10モル%が特に好ましい。
【0248】
アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I)で表される部分構造を含む場合、現像性の観点から下記一般式(I’’’)で表される部分構造をさらに含むことが好ましい。
【0249】
【化45】
【0250】
上記式(I’’’)中、RHは水素原子又はメチル基を表す。
【0251】
アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I’’’)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I’’’)で表される部分構造の含有割合は特に限定されないが、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、また、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましく、50モル%以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。アクリル共重合樹脂(b2-1)が前記一般式(I’’’)で表される部分構造を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2-1)に含まれる前記一般式(I’’’)で表される部分構造の含有割合としては、例えば、5~90モル%であり、5~80モル%が好ましく、10~70モル%がより好ましく、30~50モル%がさらに好ましい。一方で、アウトガスの観点から、0%、つまり、前記一般式(I’’’)で表される部分構造を含まないことが好ましい。
【0252】
アクリル共重合樹脂(b2)の酸価は特に限定されないが、5mg-KOH/g以上が好ましく、10mg-KOH/g以上がより好ましく、20mg-KOH/g以上がさらに好ましく、25mg-KOH/g以上がよりさらに好ましく、また、100mg-KOH/g以下が好ましく、80mg-KOH/g以下がより好ましく、60mg-KOH/g以下がさらに好ましく、40mg-KOH/g以下がよりさらに好ましい。前記下限値以上とすることで残渣が低減する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が向上する傾向がある。アクリル共重合樹脂(b2)の酸価としては、例えば、5~100mg-KOH/gであり、10~80mg-KOH/gが好ましく、20~60mg-KOH/gがより好ましく、25~40mg-KOH/gがさらに好ましい。
【0253】
アクリル共重合樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、さらに好ましくは3000以上、よりさらに好ましくは4000以上、特に好ましくは5000以上であり、また、通常30000以下、好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下、さらに好ましくは10000以下である。特に好ましくは8000以下である。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで残渣が低減する傾向がある。アクリル共重合樹脂(b2)の重量平均分子量(Mw)としては、例えば、1000~30000であり、2000~20000が好ましく、3000~15000がより好ましく、4000~10000がさらに好ましく、5000~8000がよりさらに好ましい。
【0254】
(B)アルカリ可溶性樹脂がアクリル共重合樹脂(b2)を含む場合、(B)アルカリ可溶性樹脂に含まれるアクリル共重合樹脂(b2)の含有割合は特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましく、また、通常100質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで現像溶解性が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることでテーパー角が高くなる傾向がある。(B)アルカリ可溶性樹脂がアクリル共重合樹脂(b2)を含む場合、(B)アルカリ可溶性樹脂に含まれるアクリル共重合樹脂(b2)の含有割合としては、例えば、5~100質量%であり、10~100質量%が好ましく、15~80質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。
【0255】
(B)アルカリ可溶性樹脂中には、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)及びアクリル共重合樹脂(b2)のいずれかが単独で含まれていてもよく、両者が含まれていてもよい。さらに、(B)アルカリ可溶性樹脂中にはアルカリ可溶性樹脂(b)以外のアルカリ可溶性樹脂が含まれていてもよい。
【0256】
本発明の感光性樹脂組成物における(B)アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、全固形分中に、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、また、通常90質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。前記下限値以上とすることで現像性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガスを低減する傾向がある。感光性樹脂組成物の全固形分中における(B)アルカリ可溶性樹脂の含有割合としては、例えば、10~90質量%であり、20~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましく、40~50質量%がさらに好ましい。
【0257】
また、本発明の感光性樹脂組成物がエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)を含む場合、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)の含有割合は特に限定されないが、全固形分中に、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、また、通常90質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。前記下限値以上とすることで現像性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガスを低減する傾向がある。本発明の感光性樹脂組成物がエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)を含む場合、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1)の全固形分中の含有割合としては、例えば、5~90質量%であり、10~70質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましく、30~50質量%がさらに好ましく、40~50質量%がよりさらに好ましい。
【0258】
また、本発明の感光性樹脂組成物がエポキシアクリル共重合樹脂(b2)を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2)の含有割合は特に限定されないが、全固形分中に、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、また、通常90質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。前記下限値以上とすることで現像性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガスを低減する傾向がある。本発明の感光性樹脂組成物がエポキシアクリル共重合樹脂(b2)を含む場合、アクリル共重合樹脂(b2)の全固形分中の含有割合としては、例えば、5~90質量%であり、10~70質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましく、30~50質量%がさらに好ましく、40~50質量%がよりさらに好ましい。
【0259】
また、全固形分中における(B)アルカリ可溶性樹脂及び(C)光重合性化合物の含有割合の合計は、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であり、最も好ましくは90質量%以上であり、また、通常99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。前記下限値以上とすることで硬化性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで素子発光時のアウトガス低減する傾向がある。全固形分中における(B)アルカリ可溶性樹脂及び(C)光重合性化合物の含有割合の合計としては、例えば、5~99質量%であり、10~99質量%が好ましく、30~99質量%がより好ましく、50~97質量%がさらに好ましく、70~97質量%がよりさらに好ましく、80~95質量%が特に好ましく、90~95質量%が最も好ましい。
【0260】
また、感光性樹脂組成物における(C)光重合性化合物に対する(B)アルカリ可溶性樹脂の配合比としては、(C)光重合性化合物100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上がさらに好ましく、80質量部以上が特に好ましく、また、400質量部以下が好ましく、300質量部以下がより好ましく、200質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで硬化性が向上する傾向がある。感光性樹脂組成物における(C)光重合性化合物100質量部に対する(B)アルカリ可溶性樹脂の配合比としては、例えば、50~400質量部であり、60~300質量部が好ましく、70~200質量部がより好ましく、80~100質量部がさらに好ましい。
【0261】
[1-1-3](C)成分;光重合性化合物
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)光重合性化合物を含有する。(C)光重合性化合物を含むことで、高感度となると考えられる。
ここで使用される光重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合(エチレン性二重結合)を分子内に1個以上有する化合物を意味するが、重合性、架橋性、およびそれに伴う露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の点から、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物であることが好ましく、また、その不飽和結合は(メタ)アクリロイルオキシ基に由来するもの、つまり、(メタ)アクリレート化合物であることがさらに好ましい。
【0262】
本発明の感光性樹脂組成物においては、特に、1分子中にエチレン性不飽和結合を2個以上有する多官能エチレン性単量体を使用することが望ましい。多官能エチレン性単量体が有するエチレン性不飽和基の数は特に限定されないが、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、さらに好ましくは4個以上、特に好ましくは5個以上であり、また、好ましくは15個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは8個以下、特に好ましくは7個以下である。前記下限値以上とすることで重合性が向上して高感度となる傾向があり、前記上限値以下とすることで現像性がより良好となる傾向がある。多官能エチレン性単量体が有するエチレン性不飽和基の数としては、例えば、2~15個であり、3~10個が好ましく、4~8個がより好ましく、5~7個がさらに好ましい。
光重合性化合物の具体例としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル;脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物と、不飽和カルボン酸及び多塩基性カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステルなどが挙げられる。
【0263】
前記脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールアクリレート等の脂肪族ポリヒドロキシ化合物のアクリル酸エステル、これら例示化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル、クロネートに代えたクロトン酸エステルもしくはマレエートに代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
【0264】
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、ハイドロキノンジアクリレート、ハイドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、ピロガロールトリアクリレート等の芳香族ポリヒドロキシ化合物のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル等が挙げられる。
脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物と、不飽和カルボン酸及び多塩基性カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステルとしては必ずしも単一物ではないが、代表的な具体例を挙げれば、アクリル酸、フタル酸、及びエチレングリコールの縮合物、アクリル酸、マレイン酸、及びジエチレングリコールの縮合物、メタクリル酸、テレフタル酸及びペンタエリスリトールの縮合物、アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0265】
その他、本発明の感光性樹脂組成物に用いられる光重合性化合物の例としては、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル又はポリイソシアネート化合物とポリオール及び水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させて得られるようなウレタン(メタ)アクリレート類;多価エポキシ化合物と水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリル酸との付加反応物のようなエポキシアクリレート類;エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が有用である。
上記ウレタン(メタ)アクリレート類としては、例えば、DPHA-40H、UX-5000、UX-5002D-P20、UX-5003D、UX-5005(日本化薬社製)、U-2PPA、U-6LPA、U-10PA、U-33H、UA-53H、UA-32P、UA-1100H(新中村化学工業社製)、UA-306H、UA-510H、UF-8001G(協栄社化学社製)、UV-1700B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7630B、UV7640B(日本合成化学工業社製)等が挙げられる。
【0266】
これらの中でも、適正なテーパー角と感度の観点から(C)光重合性化合物として、エステル(メタ)アクリレート類又はウレタン(メタ)アクリレート類を用いることが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-トリス(メタ)アクリロイロキシメチルエチルフタル酸、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの二塩基酸無水物付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの二塩基酸無水物付加物等を用いることがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0267】
本発明の感光性樹脂組成物において、(C)光重合性化合物の分子量は特に限定されないが、感度、撥インク性、テーパー角の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは150以上で、さらに好ましくは200以上、よりさらに好ましくは300以上、特に好ましくは400以上、最も好ましくは500以上であり、好ましくは1000以下、より好ましくは700以下である。(C)光重合性化合物の分子量としては、例えば、100~1000であり、150~700が好ましく、200~700がより好ましく、300~700がさらに好ましく、400~700がよりさらに好ましく、500~700が特に好ましい。
また、(C)光重合性化合物の炭素数は特に限定されないが、感度、撥インク性、テーパー角の観点から、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、よりさらに好ましくは20以上、特に好ましくは25以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下、特に好ましくは30以下である。(C)光重合性化合物の炭素数としては、例えば、7~50であり、10~40が好ましく、15~35がより好ましく、20~30がさらに好ましく、25~30がよりさらに好ましい。
また、感度、撥インク性、テーパー角の観点から、エステル(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類、およびウレタン(メタ)アクリレート類が好ましく、中でも、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなど3官能以上のエステル(メタ)アクリレート類、2,2,2-トリス(メタ)アクリロイロキシメチルエチルフタル酸、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの二塩基酸無水物付加物等の3官能以上のエステル(メタ)アクリレート類への酸無水物の付加物が、感度、撥インク性、テーパー角の観点でさらに好ましい。
【0268】
本発明の感光性樹脂組成物における(C)光重合性化合物の含有割合は、全固形分中に通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。前記下限値以上とすることで露光時の感度やテーパー角が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで現像性が良好となる傾向がある。感光性樹脂組成物の全固形分中における(C)光重合性化合物の含有割合としては、例えば、10~80質量%であり、20~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましく、40~55質量%がさらに好ましく、40~50質量%がよりさらに好ましい。
【0269】
また、本発明の感光性樹脂組成物における(B)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対する(C)光重合性化合物の含有割合は、通常15質量部以上、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上、特に好ましくは90質量部以上であり、通常150質量部以下、好ましくは130質量部以下、より好ましくは120質量部以下、さらに好ましくは110質量部以下である。前記下限値以上とすることで露光時に感度が良好となり、テーパー角が良好となる傾向があり、前記上限値以下とすることで現像性が良好となる傾向がある。感光性樹脂組成物における(B)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対する(C)光重合性化合物の含有割合としては、例えば、15~150質量部であり、30~130質量部が好ましく、50~120質量部がより好ましく、80~120質量部がさらに好ましく、90~110質量部がよりさらに好ましい。
【0270】
[1-1-4](D)成分;光重合開始剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)光重合開始剤を含有する。光重合開始剤は、活性光線により、前記(C)光重合性化合物が有するエチレン性不飽和結合を重合させる化合物であれば特に限定されるものではなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0271】
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)光重合開始剤として、この分野で通常用いられている光重合開始剤を使用することができる。このような光重合開始剤としては、例えば、ヘキサアリールビイミダゾール系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、が挙げられる。
【0272】
ヘキサアリールビイミダゾール系光重合開始剤としては、吸光度および感度、紫外線吸収剤の吸収波長とのマッチング性の観点から、下記一般式(1-1)及び/又は下記一般式(1-2)で表されるヘキサアリールビイミダゾール系化合物が好ましい。
【0273】
【化46】
【0274】
上記式中、R11~R13は、各々独立に置換基を有してもよい炭素数1~4のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1~4のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表し、m、n及びlは、各々独立に0~5の整数を表す。
【0275】
11~R13のアルキル基の炭素数は1~4の範囲内であれば特に限定されないが、感度の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。アルキル基は鎖状のものでも、環状のものでもよい。アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、中でもメチル基、エチル基が好ましい。R11~R13の炭素数1~4のアルキル基が有してもよい置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団の基が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(-F、-Br、-Cl、-I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基が挙げられる。
【0276】
また、R11~R13のアルコキシ基の炭素数は1~4の範囲内であれば特に限定されないが、感度の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。アルコキシ基のアルキル基部分は鎖状のものでも、環状のものでもよい。アルコキシ基の具体例とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基が挙げられ、中でもメトキシ基、エトキシ基が好ましい。R11~R13の炭素数1~4のアルコキシ基が有してもよい置換基としてはアルキル基、アルコキシ基が挙げられるが、好ましくはアルキル基である。
【0277】
また、R11~R13のハロゲン原子とは、例えば、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子、フッ素原子が挙げられ、中でも合成容易性の観点から、塩素原子又はフッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
これらの中でも、感度や合成容易性の観点から、R11~R13は各々独立にハロゲン原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
【0278】
m、n及びlは、各々独立に0~5の整数を表すが、合成容易性の観点から、m、n及びlの少なくとも1つが1以上の整数であることが好ましく、m、n及びlのうちいずれか1つが1であり、かつ、残りの2つが0であることがより好ましい。
【0279】
一般式(1-1)及び/又は一般式(1-2)で表されるヘキサアリールビイミダゾール系化合物としては、例えば、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(o-メチルフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(o,p-ジクロロフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(o,p-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(o,p-ジクロロフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(p-フルオロフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(o,p-ジブロモフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(o-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(o,p-ジクロロフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(p-クロロナフチル)ビイミダゾール等が挙げられる。中でも、ヘキサフェニルビイミダゾール化合物が好ましく、そのイミダゾール環上の2,2’-位に結合したベンゼン環のo-位がメチル基、メトキシ基、又はハロゲン原子で置換されたものが更に好ましく、そのイミダゾール環上の4,4’,5,5’-位に結合したベンゼン環が無置換、又は、ハロゲン原子若しくはメトキシ基で置換されたもの等が好ましい。
【0280】
(D)光重合開始剤として、一般式(1-1)で表されるヘキサアリールビイミダゾール系化合物と一般式(1-2)で表されるヘキサアリールビイミダゾール系化合物のいずれかを用いてもよく、両者を併用して用いてもよい。併用して用いる場合には、その比率については特に限定されない。
【0281】
また、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等を好ましいものとして挙げることができる。
【0282】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、カルバゾール骨格やジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系化合物を含むことが好ましく、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系化合物がより好ましい。ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系化合物を含むことにより、短波長の光吸収が強く、表面硬化性が向上するため、撥液剤の現像時の流出を抑制し、撥インク性が高まると考えられる。
【0283】
ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系化合物の化学構造は特に限定されないが、感度の観点から、下記一般式(D-I)で表されるものを用いることが好ましい。
【0284】
【化47】
【0285】
上記一般式(D-I)において、R23は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
24は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
25は、水酸基、カルボキシル基又は下記一般式(D-II)で表される基を表し、hは0~5の整数を表す。
式(D-I)中に示されるベンゼン環はさらに置換基を有していてもよい。
【0286】
【化48】
【0287】
式(D-II)中、R25aは、-O-、-S-、-OCO-又は-COO-を表す。
25bは、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
25bのアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-又は-OCO-により1~5回中断されていてもよい。R25のアルキレン部分は分岐側鎖があってもよく、シクロヘキシレンであってもよい。
25cは、水酸基又はカルボキシル基を表す。
【0288】
23におけるアルキル基の炭素数は特に限定されないが、溶剤への溶解性の観点から1以上であることが好ましい。また、現像性の観点から20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましく、5以下であることがよりさらに好ましく、3以下であることが特に好ましい。
【0289】
アルキル基の具体例としては、メチル基、ヘキシル基、シクロペンチルメチル基などが挙げられ、これらの中でも現像性の観点から、メチル基又はへキシル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、芳香族環基、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基などが挙げられ、アルカリ現像性の観点から水酸基、カルボキシル基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。また、合成容易性の観点からは、無置換であることが好ましい。
【0290】
23における芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。芳香族環基の炭素数は特に限定されないが、溶剤への溶解性の観点から5以上であることが好ましい。また、現像性の観点から30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、12以下であることがさらに好ましい。
【0291】
芳香族環基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、フリル基などが挙げられ、これらの中でも現像性の観点から、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アミノ基、アミド基、アルキル基などが挙げられ、現像性の観点から水酸基、カルボキシル基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
これらの中でも、現像性の観点から、R23が置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0292】
24におけるアルキル基の炭素数は特に限定されないが、感度の観点から1以上であることが好ましい。また、感度の観点から20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、3以下であることが特に好ましい。
【0293】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられ、これらの中でも感度の観点から、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基などが挙げられ、アルカリ現像性の観点から水酸基、カルボキシル基が好ましく、カルボキシル基がより好ましく、他方合成容易性の観点からは無置換であることが好ましい。
【0294】
24における芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。その炭素数は30以下であることが好ましく12以下であることがより好ましく、通常4以上であり、6以上であることが好ましい。前記上限値以下とすることで、高感度となる傾向があり、前記下限値以上とすることで低昇華性となる傾向がある。
【0295】
芳香族炭化水素環基としては、単環であっても縮合環であってもよく、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などの基が挙げられる。
また、芳香族複素環基としては、単環であっても縮合環であってもよく、例えば、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などの基が挙げられる。
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基などが挙げられる。
これらの中でも、感度の観点から、R24が置換基を有していてもよいアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
他方、製版性の観点から、R24が置換基を有していてもよい芳香族環基であることが好ましく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であることがより好ましく、無置換の芳香族炭化水素基であることがさらに好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。
【0296】
25は、水酸基、カルボキシル基又は前記一般式(D-II)で表される基であるが、これらの中でも、感度及び現像性の観点から、前記一般式(D-II)で表される基であることが好ましい。
前記一般式(D-II)において、前述のとおり、R25aは、-O-、-S-、-OCO-又は-COO-を表すが、これらの中でも、感度及び現像性の観点から、-O-又は-OCO-が好ましく、-O-がより好ましい。
【0297】
前述のとおり、R25bは、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
25bにおけるアルキレン基の炭素数は特に限定されないが、感光性樹脂組成物への溶解性の観点から1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、また、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、3以下であることが特に好ましい。
アルキレン基は、直鎖でもよく、分岐していてもよく、脂肪族環を含むものであってもよい。これらの中でも、感光性樹脂組成物への溶解性の観点から、直鎖であることが好ましい。
【0298】
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などが挙げられ、これらの中でも感光性樹脂組成物への溶解性の観点から、メチレン基がより好ましい。
【0299】
前述のとおりR25cは、水酸基又はカルボキシル基である。現像密着性の観点からは、R25cが水酸基であることが好ましい。
【0300】
前記一般式(D-I)において、hは0~5の整数を表す。特に、現像性の観点からはhは1以上であることが好ましく、また4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましく、1であることが最も好ましい。
他方、合成容易性の観点からは、hは0であることが好ましい。
【0301】
トリアジン系光重合開始剤としては、ハロメチル化s-トリアジン誘導体類が挙げられ、例えば、2,4,6-トリス(モノクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-n-プロピル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(α,α,β-トリクロロエチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3,4-エポキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-〔1-(p-メトキシフェニル)-2,4-ブタジエニル〕-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-スチリル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシ-m-ヒドロキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-i-プロピルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-エトキシカルボニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニルチオ-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ベンジルチオ-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジブロモメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-メトキシ-4,6-ビス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化s-トリアジン誘導体類が挙げられ、中でも感度の観点から、ビス(トリハロメチル)-s-トリアジン類が好ましい。
【0302】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-(p-ドデシルフェニル)ケトン、1-ヒドロキシ-1-メチルエチル-(p-イソプロピルフェニル)ケトン、1-トリクロロメチル-(p-ブチルフェニル)ケトン、α-ヒドロキシ-2-メチルフェニルプロパノン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、4-ジメチルアミノエチルベンゾエート、4-ジメチルアミノイソアミルベンゾエート、4-ジエチルアミノアセトフェノン、4-ジメチルアミノプロピオフェノン、2-エチルヘキシル-1,4-ジメチルアミノベンゾエート、2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、4-(ジエチルアミノ)カルコン等が挙げられる。
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4-ブロモベンゾフェノン、ミヒラーケトン等が挙げられる。
【0303】
これらの光重合開始剤は、感光性樹脂組成物中にその1種が単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。これらの光重合開始剤の中で、ヘキサアリールビイミダゾール系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤及びアセトフェノン系光重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。ヘキサアリールビイミダゾール化合物は、吸光度が高いことから表面硬化性が高く、また、高い撥インク性と高いテーパー角が得られる点で特に好ましい。また、オキシムエステル系化合物は感度が高く、低い露光量でも撥インク性が生じる点で特に好ましい。また、アセトフェノン系光重合開始剤は、内部硬化性が高く、高い撥インク性と高いテーパー角が得られる点で特に好ましい。
【0304】
本発明の感光性樹脂組成物における(D)光重合開始剤の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、よりさらに好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2質量%以上、最も好ましくは2.5質量%以上であり、通常25質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。前記下限値以上とすることで現像時に膜減りを生じず塗膜が形成され、また十分な撥インク性が生じる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで所望のパターン形状が形成しやすくなる傾向がある。感光性樹脂組成物の全固形分中における(D)光重合開始剤の含有割合としては、例えば、0.01~25質量%であり、0.1~10質量%が好ましく、0.5~8質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。ある態様としては1.5~3質量%が好ましく、別の態様としては2~3質量%が好ましく、さらに別の態様としては2.5~5質量%が好ましい。
【0305】
また、感光性樹脂組成物における(C)光重合性化合物に対する(D)光重合開始剤の配合比としては、(C)光重合性化合物100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、また、200質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましく、20質量部以下がよりさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましく、5質量部以下が最も好ましい。前記下限値以上とすることで適切な感度となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで所望のパターン形状が形成しやすくなる傾向がある。感光性樹脂組成物における(C)光重合性化合物100質量部に対する(D)光重合開始剤の配合比としては、例えば、1~200質量部であり、1~100質量部が好ましく、2~50質量部がより好ましく、2~20質量部がさらに好ましく、3~10質量部がよりさらに好ましく、3~5質量部が特に好ましい。
【0306】
また上記光重合開始剤と併用して、増感剤を用いてもよい。増感剤により感度が向上すると同時に、感光性樹脂組成物内部への光透過率が減少することで、テーパー角が大きくなる傾向がある。
【0307】
増感剤としては、この分野で通常用いられている増感剤を使用することができる。増感剤は、吸収して得たエネルギーを光重合開始剤に移行、もしくは光重合開始剤との電子の授受を起こし、効率よく反応ラジカル重合反応を促進させる特徴がある。このような増感剤としては、例えば、カルコン誘導体やジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2-ジケトン系化合物、ベンゾイン系化合物、フルオレン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、キサンテン系化合物、チオキサンテン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、クマリン系化合物、ケトクマリン系化合物、シアニン系化合物、メロシアニン系化合物、オキソノ-ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン系化合物、アジン系化合物、チアジン系化合物、オキサジン系化合物、インドリン系化合物、アズレン系化合物、アズレニウム系化合物、スクアリリウム系化合物、ポルフィリン系化合物、テトラフェニルポルフィリン系化合物、トリアリールメタン系化合物、テトラベンゾポルフィリン系化合物、テトラピラジノポルフィラジン系化合物、フタロシアニン系化合物、テトラアザポルフィラジン系化合物、テトラキノキサリロポルフィラジン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、サブフタロシアニン系化合物、ピリリウム系化合物、チオピリリウム系化合物、テトラフィリン系化合物、アヌレン系化合物、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、チオスピロピラン系化合物、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0308】
これらの中でも、感度向上とテーパー角増大の観点から、チオキサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物が好ましい。
【0309】
チオキサントン系化合物としては、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、4-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、4-エチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、4-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどが挙げられる。これらの中でも、感度向上とテーパー角増大の観点から2,4-ジエチルチオキサントンが好ましい。
【0310】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。これらの中でも、感度向上とテーパー角増大の観点から4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0311】
感光性樹脂組成物が増感剤を含む場合、感光性樹脂組成物における増感剤の含有割合は、感光性樹脂組成物の全固形分中に、通常0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上、よりさらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.2質量%以上であり、また通常10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。前記下限値以上とすることで感度を向上し、テーパー角を高くすることができる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで所望のパターンを形成しやすくなる傾向がある。感光性樹脂組成物が増感剤を含む場合、感光性樹脂組成物の全固形分中における増感剤の含有割合としては、例えば、0.1~10質量%であり、0.3~10質量%が好ましく、0.5~7質量%がより好ましく、0.8~7質量%がさらに好ましく、1~5質量%がよりさらに好ましく、1.2~3質量%が特に好ましい。
【0312】
[1-1-5](E)連鎖移動剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(E)連鎖移動剤を含む。連鎖移動剤を含むことで、表面近傍における酸素阻害等によるラジカル失活が改善されて表面硬化性を高めることができ、テーパー角が高くなる傾向がある。また、表面硬化性を高めることによって撥液剤の流出を抑制でき、撥液剤を隔壁の表面近傍に固定しやすく接触角が高くなる傾向がある。
連鎖移動剤としてはメルカプト基含有化合物や、四塩化炭素等が挙げられ、連鎖移動効果が高い傾向があることからメルカプト基を有する化合物を用いることがより好ましい。S-H結合エネルギーが小さいことによって結合開裂が起こりやすく、連鎖移動反応を起こしやすいため、表面硬化性を高めることができる傾向がある。
【0313】
連鎖移動剤の中でも、テーパー角、表面硬化性の観点から、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物と脂肪族系のメルカプト基含有化合物が好ましい。
【0314】
芳香族環を有するメルカプト基含有化合物としては、テーパー角の観点から、下記一般式(E-1)で表される化合物が好適に用いられる。
【0315】
【化49】
【0316】
式(E-1)中、Zは-O-、-S-又は-NH-を表し、R61、R62、R63及びR64は各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。
このうち、テーパー角の観点から、Zは-S-又は-NH-が好ましく、-NH-がより好ましい。
またテーパー角の観点から、R61、R62、R63及びR64は各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0317】
具体的には、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2-メルカプト-4(3H)-キナゾリン、β-メルカプトナフタレン、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン等の芳香族環を有するメルカプト基含有化合物が挙げられ、テーパー角の観点から、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールが好ましい。
【0318】
一方で脂肪族系のメルカプト基含有化合物としては、表面硬化性の観点から、へキサンジチオール、デカンジチオール、または下記一般式(E-2)で表される化合物が好適に用いられる。
【0319】
【化50】
【0320】
式(E-2)中、mは0~4の整数、nは2~4の整数を表す。R71及びR72は各々独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。Xはn価の基を表す。
【0321】
前記一般式(E-2)において、合成容易性の観点から、mは1又は2であることが好ましい。また、表面硬化性の観点から、nは3又は4であることが好ましい。
また、R71及びR72のアルキル基としては、表面硬化性の観点から、炭素数1~3のものが好ましい。表面硬化性の観点から、R71及びR72のうちの少なくとも一方、例えばR72は水素原子であることが好ましく、この場合において、R71は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。
【0322】
nが2である場合、表面硬化性の観点から、Xはエーテル結合及び/又は枝分かれ部を有してもよい炭素数1~6のアルキレン基が好ましい。表面硬化性、合成容易性の観点から、中でも炭素数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素数4のアルキレン基がさらに好ましい。
【0323】
nが3である場合、表面硬化性、合成容易性の観点から、Xは下記一般式(E-2-1)又は(E-2-2)で表される構造であることが好ましい。
【0324】
【化51】
【0325】
式(E-2-1)中、R73は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はメチロール基を表す。R73の中でも、テーパー角の観点から、エチル基が好ましい。
【0326】
【化52】
【0327】
式(E-2-2)中、R74は炭素数1~4のアルキレン基を表す。R74の中でも、テーパー角の観点から、エチレン基が好ましい。
【0328】
一方で、nが4である場合、Xは下記一般式(E-2-3)で表される構造であることが好ましい。
【0329】
【化53】
【0330】
具体的には、ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられる。
【0331】
このうち、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンが好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)がより好ましい。
【0332】
これらは種々のものが1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用できる。
【0333】
これらの中でも、撥インク性を高める観点から、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、及び2-メルカプトベンゾオキサゾールからなる群から選択された1以上と、光重合開始剤とを組み合わせて、光重合開始剤系として使用することが好適である。例えば、2-メルカプトベンゾチアゾールを用いてもよく、2-メルカプトベンゾイミダゾールを用いてもよく、2-メルカプトベンゾチアゾールと2-メルカプトベンゾイミダゾールとを併用して用いてもよい。
また、表面硬化性の観点から、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、及びペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)からなる群から選択された1又は2以上を用いることが好ましい。
【0334】
本発明の感光性樹脂組成物における連鎖移動剤の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.025質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。前記下限値以上とすることでテーパー角が高く、表面硬化性が高くなり、撥インク性が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで所望のパターンを形成しやすくなる傾向がある。感光性樹脂組成物の全固形分中における連鎖移動剤の全固形分中の含有割合としては、例えば、0.01~5質量%であり、0.025~4質量%が好ましく、0.05~4質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましく、1~3質量%がよりさらに好ましい。
【0335】
また連鎖移動剤として、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物と脂肪族系のメルカプト基含有化合物を併用して使用するときのその含有割合としては、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物100質量部に対して、脂肪族系のメルカプト基含有化合物を通常10質量部以上、好ましくは50質量部以上、より好ましくは80質量部以上であり、通常400質量部以下、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。前記下限値以上とすることで撥インク性が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで感度が高くなる傾向がある。連鎖移動剤として、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物と脂肪族系のメルカプト基含有化合物を併用して使用するときのその含有割合としては、芳香族環を有するメルカプト基含有化合物100質量部に対して、例えば、10~400質量部であり、50~300質量部が好ましく、80~200質量部がより好ましく、80~150質量部がさらに好ましい。
【0336】
また、感光性樹脂組成物における(D)光重合開始剤に対する、連鎖移動剤の配合比としては、(D)光重合開始剤100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、80質量部以上が特に好ましく、また、500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましく、300質量部以下がさらに好ましく、200質量部以下がよりさらに好ましく、150質量部以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることでテーパー角が高く、表面硬化性が高くなり、撥インク性が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで所望のパターンを形成しやすくなる傾向がある。感光性樹脂組成物における(D)光重合開始剤100質量部に対する、連鎖移動剤の配合比としては、例えば、10~500質量部であり、25~400質量部が好ましく、50~300質量部がより好ましく、80~200質量部がさらに好ましく、80~150質量部がよりさらに好ましい。
【0337】
[1-1-6]紫外線吸収剤
本発明の感光性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤は、露光に用いられる光源の特定の波長を紫外線吸収剤によって吸収させることにより、光硬化分布を制御する目的で添加されるものである。紫外線吸収剤を含むことにより、現像後のテーパー角形状を改善したり、現像後に非露光部に残る残渣を低減したりするなどの効果が得られる傾向がある。紫外線吸収剤としては、光重合開始剤による光吸収を阻害するとの観点から、例えば、波長250nmから400nmの間に吸収極大を有する化合物を用いることができる。
紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾエート化合物、桂皮酸誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ジナフタレン化合物、フェナントロリン化合物、染料等が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0338】
これらの中でも、テーパー角を高める観点から、ベンゾトリアゾール化合物及び/又はヒドロキシフェニルトリアジン化合物が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物が特に好ましい。
【0339】
ベンゾトリアゾール系化合物の中でも、テーパー形状の点から、下記の一般式(Z1)で記載されるベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
【0340】
【化54】
【0341】
上記式(Z1)中、R1e及びR2eは各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、下記一般式(Z2)で表される基、又は下記一般式(Z3)で表される基を表す。R3eは、水素原子又はハロゲン原子を表す。
【0342】
【化55】
【0343】
上記式(Z2)中、R4eは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R5eは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0344】
【化56】
【0345】
上記式(Z3)中、R6eは置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R7eは水素原子またはメチル基を表す。
【0346】
(R1e及びR2e
前記式(Z1)において、R1e及びR2eは各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、一般式(Z2)で表される基、又は一般式(Z3)で表される基を表す。
アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。その炭素数は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、また、10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。
【0347】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。これらの中でもtert-ブチル基が好ましい。
また、アルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
【0348】
(R3e
前記式(Z1)において、R3eは、水素原子又はハロゲン原子を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
これらの中でも合成の観点から、R3eが水素原子であることが好ましい。
【0349】
(R4e
前記式(Z2)において、R4eは置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
アルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基が挙げられる。その炭素数は通常1以上であり、2以上が好ましく、また6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。
【0350】
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。これらの中でもエチレン基が好ましい。
また、アルキレン基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
【0351】
これらの中でも、R4eがエチレン基であることが好ましい。
【0352】
(R5e
前記式(Z2)において、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。その炭素数は、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましく、また、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、9以下であることがさらに好ましい。
【0353】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプシル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。
また、アルキル基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
これらの中でもテーパー形状の観点から、R5eがヘプチル基、オクチル基、ノニル基であることが好ましい。
【0354】
(R6e
前記式(Z3)において、R6eは置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
アルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基が挙げられる。その炭素数は通常1以上であり、2以上が好ましく、また6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。
【0355】
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。これらの中でもエチレン基が好ましい。
また、アルキレン基が有していてもよい置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
【0356】
これらの中でもテーパー形状の観点から、R1eがtert-ブチル基、R2eが前記式(Z2)で表される基(ただしR4eがエチレン基、及びR5eが炭素数7~9のアルキル基)、R3eが水素原子である化合物、またはR1eが水素原子、R2eが前記式(Z3)で表される基(ただしR6eがエチレン基、及びR7eがメチル基)、R3eが水素原子である化合物が好ましく、R1eがtert-ブチル基、R2eが前記式(Z2)で表される基(ただしR4eがエチレン基、及びR5eが炭素数7~9のアルキル基)、R3eが水素原子である化合物がより好ましい。
【0357】
ベンゾトリアゾール系化合物の具体例としては、2-(5メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートと2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートの混合物、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸,3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルの化合物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、が挙げられる。これらの中でも、テーパー角と露光感度の観点から、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルの化合物が好ましい。
【0358】
市販されているベンゾトリアゾール系化合物としては例えば、スミソーブ(登録商標、以下同じ。)200、スミソーブ250、スミソーブ300、スミソーブ340、スミソーブ350(住友化学社製)、JF77、JF78、JF79、JF80、JF83(城北化学工業社製)、TINUVIN(登録商標、以下同じ。) PS、TINUVIN99-2、TINUVIN109、TINUVIN384-2、TINUVIN 326、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN1130(BASF社製)、EVERSORB70、EVERSORB71、EVERSORB72、EVERSORB73、EVERSORB74、EVERSORB75、EVERSORB76、EVERSORB234、EVERSORB77、EVERSORB78、EVERSORB80、EVERSORB81(台湾永光化学工業社製)、トミソーブ(登録商標、以下同じ。)100、トミソーブ600(エーピーアイコーポレーション社製)、SEESORB(登録商標、以下同じ。)701、SEESORB702、SEESORB703、SEESORB704、SEESORB706、SEESORB707、SEESORB709(シプロ化成社製)、RUVA-93(大塚化学社製)などが挙げられる。
【0359】
トリアジン系化合物としては、2-[4,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[3-(ドデシルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシ]フェノール、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)グリシド酸エステルの反応生成物、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。これらの中でも、テーパー角と露光感度の観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物が好ましい。
市販されているトリアジン系化合物としては例えば、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN477、TINUVIN479(BASF社製)などを挙げることができる。
【0360】
その他の紫外線吸収剤としては、例えば、スミソーブ130(住友化学社製)、EVERSORB10、EVERSORB11、EVERSORB12(台湾永光化学工業社製)、トミソーブ800(エーピーアイコーポレーション社製)、SEESORB100、SEESORB101、SEESORB101S、SEESORB102、SEESORB103、SEESORB105、SEESORB106、SEESORB107、SEESORB151(シプロ化成社製)などのベンゾフェノン化合物;スミソーブ400(住友化学社製)、サリチル酸フェニルなどのベンゾエート化合物;桂皮酸2-エチルヘキシル、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソアミル等の桂皮酸誘導体;α-ナフトール、β-ナフトール、α-ナフトールメチルエーテル、α-ナフトールエチルエーテル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のナフタレン誘導体;アントラセン、9,10-ジヒドロキシアントラセン等のアントラセン及びその誘導体;アゾ系染料、ベンゾフェノン系染料、アミノケトン系染料、キノリン系染料、アントラキノン系染料、ジフェニルシアノアクリレート系染料、トリアジン系染料、p-アミノ安息香酸系染料等の染料;等が挙げられる。これらの中でも、露光感度の観点から、桂皮酸誘導体、ナフタレン誘導体を用いることが好ましく、桂皮酸誘導体を用いることが特に好ましい。
【0361】
本発明の感光性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含む場合、感光性樹脂組成物における紫外線吸収剤の含有割合は、全固形分中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、また、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。前記下限値以上とすることでテーパー角が大きくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高感度となる傾向がある。本発明の感光性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含む場合、感光性樹脂組成物の全固形分中における紫外線吸収剤の含有割合としては、例えば、0.01~15質量%であり、0.05~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.5~3質量%がさらに好ましく、1~3質量%がよりさらに好ましい。
【0362】
また、本発明の感光性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含む場合、(D)光重合開始剤に対する配合比としては、(D)光重合開始剤100質量部に対する紫外線吸収剤の配合量として、通常1質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、特に好ましくは80質量部以上であり、通常500質量部以下、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、さらに好ましくは150質量部以下である。前記下限値以上とすることでテーパー角が大きくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高感度となる傾向がある。本発明の感光性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含む場合、(D)光重合開始剤100質量部に対する(D)光重合開始剤の配合比としては、例えば、1~500質量部であり、10~300質量部が好ましく、30~200質量部がより好ましく、50~150質量部がさらに好ましく、80~150質量部がよりさらに好ましい。
【0363】
[1-1-7]重合禁止剤
本発明の感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤を含有することでそれがラジカル重合を阻害することから、得られる隔壁のテーパー角を大きくすることができると考えられる。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、メチルハイドロキノン、メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾール(BHT)などが挙げられる。これらの中でも重合禁止能力の観点から、メチルハイドロキノン又はメトキシフェノールが好ましく、メチルハイドロキノンがより好ましい。
【0364】
重合禁止剤は、1種又は2種以上を含有することが好ましい。通常、(B)アルカリ可溶性樹脂を製造する際に、当該樹脂中に重合禁止剤が含まれることがあり、それを本発明の重合禁止剤として用いてもよいし、樹脂中に重合禁止剤の他に、それと同一、又は異なる重合禁止剤を感光性樹脂組成物製造時に添加してもよい。
【0365】
本発明の感光性樹脂組成物が重合禁止剤を含む場合、感光性樹脂組成物における重合禁止剤の含有割合は、感光性樹脂組成物の全固形分中に、通常0.0005質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、また通常0.3質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。前記下限値以上とすることでテーパー角を高くすることができる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで高感度を保つことができる傾向がある。本発明の感光性樹脂組成物が重合禁止剤を含む場合、感光性樹脂組成物の全固形分中における重合禁止剤の含有割合としては、例えば、0.0005~0.3質量%であり、0.001~0.2質量%が好ましく、0.01~0.1質量%がより好ましい。
【0366】
[1-1-8]アミノ化合物
本発明の感光性樹脂組成物には、熱硬化を促進するためにアミノ化合物が含まれていてもよい。
本発明の感光性樹脂組成物がアミノ化合物を含む場合、感光性樹脂組成物におけるアミノ化合物の含有割合としては、感光性樹脂組成物の全固形分中に、通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下である。また、通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上である。前記上限値以下とすることで保存安定性を維持できる傾向があり、前記下限値以上とすることで十分な熱硬化性を確保できる傾向がある。本発明の感光性樹脂組成物がアミノ化合物を含む場合、感光性樹脂組成物におけるアミノ化合物の全固形分中の含有割合は、例えば、0.5~40質量%であり、1~30質量%が好ましい。
【0367】
アミノ化合物としては、例えば、官能基としてメチロール基や、メチロール基を炭素数1~8のアルコール縮合変性したアルコキシメチル基を少なくとも2個有するアミノ化合物が挙げられる。具体的には、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとを重縮合させたメラミン樹脂;ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとを重縮合させたベンゾグアナミン樹脂;グリコールウリルとホルムアルデヒドとを重縮合させたグリコールウリル樹脂;尿素とホルムアルデヒドとを重縮合させた尿素樹脂;メラミン、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、または尿素などの2種以上とホルムアルデヒドとを共重縮合させた樹脂;上述の樹脂のメチロール基をアルコール縮合変性した変性樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。アミノ化合物としては中でも、メラミン樹脂およびその変性樹脂が好ましく、メチロール基の変性割合が、70%以上の変性樹脂が更に好ましく、80%以上の変性樹脂が特に好ましい。
【0368】
上記アミノ化合物の具体例として、メラミン樹脂およびその変性樹脂としては、例えば、サイテック社製のサイメル(登録商標、以下同じ。)300、301、303、350、736、738、370、771、325、327、703、701、266、267、285、232、235、238、1141、272、254、202、1156、1158、および、三和ケミカル社製のニカラック(登録商標、以下同じ。)MW-390、MW-100LM、MX-750LM、MW-30M、MX-45、MX-302などが挙げられる。また、上記ベンゾグアナミン樹脂およびその変性樹脂としては、例えば、サイテック社製のサイメル1123、1125、1128などが挙げられる。また、上記グリコールウリル樹脂およびその変性樹脂としては、例えば、サイテック社製のサイメル1170、1171、1174、1172、および、三和ケミカル社製のニカラックMX-270などが挙げられる。また、上記尿素樹脂およびその変性樹脂としては、例えば、サイテック社製のUFR(登録商標、以下同じ。)65、300、および、三和ケミカル社製のニカラックMX-290などが挙げられる。
【0369】
[1-1-9]着色剤
本発明の感光性樹脂組成物には、隔壁を着色させる目的で着色剤が含まれていてもよい。着色剤としては、顔料、染料等公知の着色剤を用いることができる。また、例えば、顔料を用いる際に、その顔料が凝集したりせずに安定して感光性樹脂組成物中に存在できるように、公知の分散剤や分散助剤が併用されてもよい。特に撥インク性隔壁を黒色に着色することで、鮮明な画素表示が得られる効果がある。黒色着色剤としては黒色染料や黒色顔料、カーボンブラック、チタンブラックなどの他、有機顔料を混合させて黒く着色することも低導電性を持たせる効果として有効である。着色剤の含有割合としては製版性と色特性の観点から、感光性樹脂組成物の全固形分中に、通常60質量%以下、好ましくは40質量%以下である。
一方で、隔壁からのアウトガスを低減させる目的の場合、隔壁を透明にすることが望ましく、その場合の着色剤の含有割合は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0370】
[1-1-10]塗布性向上剤、現像改良剤
本発明の感光性樹脂組成物には、塗布性や現像溶解性を向上するために塗布性向上剤や現像改良剤が含まれていてもよい。塗布性向上剤あるいは現像改良剤としては、例えば公知の、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、フッ素系、シリコーン系界面活性剤を用いることができる。界面活性剤は、感光性樹脂組成物の塗布液としての塗布性、および塗布膜の現像性の向上などを目的として用いることができ、中でもフッ素系又はシリコーン系の界面活性剤が好ましい。
特に、現像の際、未露光部から感光性樹脂組成物の残渣を除去する作用があり、また、濡れ性を発現する機能を有することから、シリコーン系界面活性剤が好ましく、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤がさらに好ましい。
【0371】
フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖および側鎖の少なくとも何れかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物が好適である。具体的には、1,1,2,2-テトラフロロオクチル(1,1,2,2-テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2-テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2-テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコールジ(1,1,2,2,3,3-ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2-テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3-ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10-デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3-ヘキサフロロデカンなどを挙げることができる。これらの市販品としては、例えば、BM Chemie社製「BM-1000」、「BM-1100」、DIC社製「メガファックF470」、「メガファックF475」、スリーエムジャパン社製「FC430」、ネオス社製「DFX-18」などを挙げることができる。
【0372】
また、シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製「DC3PA」、「SH7PA」、「DC11PA」、「SH21PA」、「SH28PA」、「SH29PA」、「8032Additive」、「SH8400」、ビックケミー社製「BYK(登録商標、以下同じ。)323」、「BYK330」などの市販品を挙げることができる。
界面活性剤として、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤以外のものを含んでいてもよく、その他、界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0373】
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンペンタエリスリット脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類などが挙げられる。これらの市販品としては、例えば、花王社製の「エマルゲン104P」、「エマルゲンA60」などのポリオキシエチレン系界面活性剤などが挙げられる。
【0374】
また、上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩類、特殊高分子系界面活性剤などが挙げられる。中でも、特殊高分子系界面活性剤が好ましく、特殊ポリカルボン酸型高分子系界面活性剤がさらに好ましい。このようなアニオン性界面活性剤としては市販品を用いることができ、例えば、アルキル硫酸エステル塩類では、花王社製「エマール(登録商標。)10」等、アルキルナフタレンスルホン酸塩類では花王社製「ペレックス(登録商標。)NB-L」など、特殊高分子系界面活性剤では花王社製「ホモゲノール(登録商標、以下同じ。)L-18」、「ホモゲノールL-100」などが挙げられる。
【0375】
さらに、上記カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩類、イミダゾリン誘導体類、アルキルアミン塩類などが、また、両性界面活性剤としては、ベタイン型化合物類、イミダゾリウム塩類、イミダゾリン類、アミノ酸類などが挙げられる。これらのうち、第4級アンモニウム塩類が好ましく、ステアリルトリメチルアンモニウム塩類がさらに好ましい。市販のものとしては、例えば、アルキルアミン塩類では花王社製「アセタミン(登録商標。)24」など、第4級アンモニウム塩類では花王社製「コータミン(登録商標、以下同じ。)24P」、「コータミン86W」などが挙げられる。
また、界面活性剤は2種類以上の組み合わせで用いてもよく、例えば、シリコーン系界面活性剤/フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤、フッ素系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤の組み合わせなどが挙げられる。中でも、シリコーン系界面活性剤/フッ素系界面活性剤の組み合わせが好ましい。このシリコーン系界面活性剤/フッ素系界面活性剤の組み合わせでは、例えば、/ネオス社製「DFX-18」、ビックケミー社製「BYK-300」または「BYK-330」/AGCセイミケミカル社製「S-393」、信越シリコーン社製「KP340」/DIC社製「F-478」または「F-475」、東レ・ダウコーニング社製「SH7PA」/ダイキン社製「DS-401」、NUC社製「L-77」/スリーエムジャパン社製「FC4430」などが挙げられる。
また、現像改良剤として、有機カルボン酸或いはその無水物など公知のものを用いることもできる。
また、本発明の感光性樹脂組成物が塗布性向上剤や現像改良剤を含む場合、塗布性向上剤や現像改良剤の含有割合は、感度の観点から、感光性樹脂組成物の全固形分中に、通常それぞれ20質量%以下、好ましくはそれぞれ10質量%以下である。
【0376】
[1-1-11]シランカップリング剤
本発明の感光性樹脂組成物には、基板との密着性を改善するため、シランカップリング剤を添加することも好ましい。シランカップリング剤の種類としては、エポキシ系、メタクリル系、アミノ系、イミダゾール系など種々の物が使用できるが、密着性向上の観点から、特にエポキシ系、イミダゾール系のシランカップリング剤が好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有割合は、密着性の観点から、感光性樹脂組成物の全固形分中に、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下である。
【0377】
[1-1-12]リン酸系密着向上剤
本発明の感光性樹脂組成物には、基板との密着性を改善するため、リン酸系密着向上剤を添加することも好ましい。リン酸系密着向上剤としては、(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類が好ましく、中でも下記一般式(Va)、(Vb)、(Vc)で表されるものが好ましい。
【0378】
【化57】
【0379】
上記一般式(Va)、(Vb)、(Vc)において、R8は水素原子又はメチル基を示し、r及びr’は1~10の整数、sは1、2又は3である。
【0380】
本発明の感光性樹脂組成物がリン酸系密着向上剤を含有する場合、その含有割合は特に限定されないが、全固形分中に0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、また、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで基板との密着性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで表面硬化性が向上する傾向がある。本発明の感光性樹脂組成物がリン酸系密着向上剤を含有する場合、リン酸系密着向上剤の全固形分中の含有割合は、例えば、0.1~5質量%であり、0.3~3質量%が好ましく、0.5~1質量%がより好ましい。
【0381】
[1-1-13]無機充填剤
また、本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、硬化物としての強度の向上と共に、アルカリ可溶性樹脂との適度な相互作用(マトリックス構造の形成)による塗布膜の優れた平坦性とテーパー角の向上等を目的として、無機充填剤を含有していてもよい。そのような無機充填剤としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、或いは、これらを各種シランカップリング剤により表面処理したものなどが挙げられる。
【0382】
これら無機充填剤の平均粒子径としては、通常0.005~20μm、好ましくは0.01~10μmである。ここで本実施の形態にいう平均粒子径とは、ベックマン・コールター社製などのレーザ回折散乱粒度分布測定装置にて測定した値である。これらの無機充填剤のうち、特に、シリカゾルおよびシリカゾル変性物は、分散安定性と共にテーパー角の向上効果に優れる傾向があるため、好ましく配合される。
本発明の感光性樹脂組成物が無機充填剤を含む場合、その含有量としては、感度の観点から、全固形分中に、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下である。本発明の感光性樹脂組成物が無機充填剤を含む場合、無機充填剤の全固形分中の含有量としては、例えば、5~80質量%であり、10~70質量%が好ましい。
【0383】
[1-1-14]溶剤
本発明の感光性樹脂組成物は、通常溶剤を含有し、前述の各成分を溶剤に溶解または分散させた状態で使用される(以下、溶剤を含む感光性樹脂組成物を「感光性樹脂組成物溶液」と記すことがある)。その溶剤としては、特に制限は無いが、例えば、以下に記載する有機溶剤が挙げられる。
【0384】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルのようなグリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-1-ブチルアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサノールジアセテートなどのグリコールジアセテート類;シクロヘキサノールアセテートなどのアルキルアセテート類;アミルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メトキシメチルペンタノンのようなケトン類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、メトキシメチルペンタノール、グリセリン、ベンジルアルコールのような1価又は多価アルコール類;n-ペンタン、n-オクタン、ジイソブチレン、n-ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、γ-ブチロラクトンのような鎖状又は環状エステル類;3-メトキシプロピオン酸、3-エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類:テトラヒドロフラン、ジメチルテトラヒドロフラン、ジメトキシテトラヒドロフランのようなテトラヒドロフラン類などである。
【0385】
上記に該当する市販の溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1およびNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ジグライム(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0386】
上記溶剤は、感光性樹脂組成物中の各成分を溶解または分散させることができるもので、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法に応じて選択されるが、塗布性の観点から、大気圧下(1013.25hPa)における沸点が60~280℃の範囲のものを選択することが好ましい。より好ましくは70~260℃の沸点をもつものであり、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-1-ブチルアセテートが好ましい。
【0387】
これらの溶剤は1種を単独でもしくは2種以上を混合して使用することができる。また、これらの溶剤は、感光性樹脂組成物溶液中の全固形分の含有割合が、通常10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは18質量%以上、通常90質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下となるように使用されることが好ましい。前記下限値以上とすることで高い膜厚に対しても塗膜が得られる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで適度な塗布均一性が得られる傾向がある。例えば、感光性樹脂組成物中の全固形分の含有割合が10~90質量%、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~40質量%、さらに好ましくは18~30質量%となるように、溶媒が使用されうる。
【0388】
[1-2]感光性樹脂組成物の物性
本発明の感光性樹脂組成物の物性としては、例えば酸価が挙げられる。
感光性樹脂組成物の全固形分に対する酸価は特に限定されないが、20mg-KOH/g以上が好ましく、22mg-KOH/g以上がより好ましく、24mg-KOH/g以上がさらに好ましく、26mg-KOH/g以上がよりさらに好ましく、28mg-KOH/g以上が特に好ましく、また、通常60mg-KOH/g以下、55mg-KOH/g以下が好ましく、50mg-KOH/g以下がより好ましく、40mg-KOH/g以下がさらに好ましく、35mg-KOH/g以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで現像液への溶解性が高く、未露光部が十分に溶解、除去できることでテーパー角が高くなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで現像密着性が良好となる傾向がある。感光性樹脂組成物の全固形分に対する酸価としては、例えば、20~60mg-KOH/gであり、22~55mg-KOH/gが好ましく、24~50mg-KOH/gがより好ましく、26~40mg-KOH/gがさらに好ましく、28~35mg-KOH/gがよりさらに好ましい。
【0389】
[1-3]感光性樹脂組成物の調製方法
本発明の感光性樹脂組成物は、上記の各成分を撹拌機で混合することにより調製される。なお、調製された感光性樹脂組成物が均一なものとなるよう、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0390】
[2]隔壁及び隔壁の形成方法
本発明の感光性樹脂組成物は隔壁、特に有機電界発光素子の有機層(発光部)を区画するための隔壁を形成するために好適に用いることができる。本発明の隔壁は、本発明の感光性樹脂組成物で構成される。
以上説明した感光性樹脂組成物を用いて隔壁を形成する方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。隔壁の形成方法としては、例えば、感光性樹脂組成物を、基板上に塗布し、感光性樹脂組成物層を形成する塗布工程と、感光性樹脂組成物層を露光する露光工程と、を含む方法が挙げられる。このような隔壁の形成方法の具体例としては、フォトリソグラフィー法が挙げられる。
【0391】
フォトリソグラフィー法では、感光性樹脂組成物を、基板の隔壁が形成される領域全面に塗布して感光性樹脂組成物層を形成する。形成された感光性樹脂組成物層を、所定の隔壁のパターンに応じて露光した後、露光された感光性樹脂組成物層を現像して、基板上に隔壁が形成される。
【0392】
フォトリソグラフィー法における、感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程では、隔壁が形成されるべき基板上に、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置やスピナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて感光性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて、乾燥により溶媒を除去して、感光性樹脂組成物層を形成する。
【0393】
次いで、露光工程では、ネガ型のマスクを利用して、感光性樹脂組成物に紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射し、感光性樹脂組成物層を隔壁のパターンに応じて部分的に露光する。露光には、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯等の紫外線を発する光源を用いることができる。露光量は感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば10~400mJ/cm2程度が好ましい。
【0394】
次いで、現像工程では、隔壁のパターンに応じて露光された感光性樹脂組成物層を現像液で現像することにより隔壁パターンを形成する。現像方法は特に限定されず、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液の具体例としては、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。又、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
【0395】
その後、現像後の隔壁パターンにポストベークを施して加熱硬化することで隔壁が得られる。ポストベークは、150~250℃で15~60分間が好ましい。
【0396】
隔壁形成後に未露光部の洗浄を目的とした洗浄処理を行うこともできる。洗浄方法は、特に限定されず、プラズマ照射、エキシマ光照射、UV照射があげられる。エキシマ光照射やUV照射では、光照射によって活性酸素が画素部に付着した有機物を分解して除去することができる。
【0397】
隔壁の形成に用いる基板は特に限定されず、隔壁が形成された基板を用いて製造される有機電界発光素子の種類に合わせて適宜選択される。好適な基板の材料としては、ガラスや、各種の樹脂材料が挙げられる。樹脂材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート;ポリ(メタ)メタアクリル樹脂;ポリスルホン;ポリイミドが挙げられる。これらの基板の材料の中では、耐熱性に優れることからガラス、及びポリイミドが好ましい。また、製造される有機電界発光素子の種類に応じて、隔壁が形成される基板の表面には、予めITOやZnO等の透明電極層を設けておいてもよい。
【0398】
[3]有機電界発光素子
本発明の有機電界発光素子は、本発明の隔壁を備える。
以上説明した方法により製造された隔壁パターンを備える基板を用いて、種々の有機電界発光素子が製造される。有機電界発光素子を形成する方法は特に限定されないが、好ましくは、上記方法により基板上に隔壁のパターンを形成した後に、基板上の隔壁によって囲まれた領域内にインクを注入して画素等の有機層を形成することによって、有機電界発光素子が製造される。
有機電界発光素子のタイプとしては、ボトムエミッション型やトップエミッション型が挙げられる。
ボトムエミッション型では、例えば、透明電極を積層したガラス基板上に隔壁を形成し、隔壁で囲まれた開口部に正孔輸送層、発光層、電子輸送層、金属電極層を積層して作成される。一方でトップエミッション型では、例えば、金属電極層を積層したガラス基板上に隔壁を形成し、隔壁で囲まれた開口部に電子輸送層、発光層、正孔輸送層、透明電極層を積層して作成される。
なお、発光層としては、日本国特開2009-146691号公報や日本国特許第5734681号公報に記載されているような有機電界発光層が挙げられる。また、日本国特許第5653387号公報や日本国特許第5653101号公報に記載されているような量子ドットを用いてもよい。
【0399】
有機層形成用のインクを形成する際に使用される溶媒としては、水、有機溶剤、及びこれらの混合溶剤を用いることができる。有機溶剤は、インクの注入後に形成された皮膜から除去可能であれば特に限定されない。有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、アニソール、メシチレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、3-フェノキシトルエン、等が挙げられる。また、インクには、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0400】
隔壁により囲まれた領域内にインクを注入する方法としては、少量のインクを所定の箇所に容易に注入可能であることから、インクジェット法が好ましい。有機層の形成に使用されるインクは、製造される有機電界発光素子の種類に応じて適宜選択される。インクをインクジェット法により注入する場合、インクの粘度はインクをインクジェットヘッドから良好に吐出できる限り特に限定されないが、4~20mPa・sが好ましく、5~10mPa・sがより好ましい。インクの粘度は、インク中の固形分含有量の調整、溶媒の変更、粘度調整剤の添加等により調整することができる。
【0401】
[4]画像表示装置
本発明の画像表示装置は、本発明の有機電界発光素子を含む。本発明の有機電界発光素子を含むものであれば、画像表示装置の型式や構造については特に制限はなく、例えばアクティブ駆動型有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の画像表示装置を形成することができる。例えば、白色光を発光する有機電界発光素子とカラーフィルターとを組み合わせて画像表示させてもよいし、RGB等の発光色の異なる有機電界発光素子を組み合わせて画像表示させてもよい。
【0402】
[5]照明
本発明の照明は、本発明の有機電界発光素子を含む。型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。有機電界発光素子としては、単純マトリックス駆動方式としてもよいし、アクティブマトリックス駆動方式としてもよい。
本発明の照明が白色光を発光するものとするために、白色光を発光する有機電界発光素子を用いてもよい。また、発光色の異なる有機電界発光素子を組み合わせて、各色が混色して白色となるよう構成してもよいし、混色比率を調整できるように構成して調色機能を付与してもよい。
【実施例
【0403】
以下、本発明の感光性樹脂組成物について、具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いた感光性樹脂組成物の構成成分は次の通りである。
【0404】
a-1:以下の手順で合成して得られた、アクリル樹脂(撥液剤)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、以下に示す化学構造を有するポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を含む化合物(aa-1)20質量部と、3-ヒドロキシ-1-アダマンチルメタクリレート50.1質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート84.6質量部に溶解したモノマー溶液と、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート10.6質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.6質量部に溶解した重合開始剤溶液との3種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、前記ガラスフラスコ内を105℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃で5時間攪拌した後、減圧下で溶媒103.5質量部を留去することによって、重合体(aa-2)溶液を得た。
【0405】
【化58】
【0406】
(式(aa-1)中、Xはパーフルオロメチレン基又はパーフルオロエチレン基であり、1分子あたり、パーフルオロメチレン基が平均7個、パーフルオロエチレン基が平均8個存在するものであり、フッ素原子の数が平均46個である。)
【0407】
次いで、上記で得られた重合体(aa-2)溶液に、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.1質量部、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.03質量部を仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート29.9質量部を1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温して10時間攪拌し、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート53.3質量部を加えて、アダマンタン骨格、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を含む架橋部、及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a-1)を50質量%含有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。得られたアクリル樹脂(a-1)の、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は10000であった。
【0408】
a-2:以下の手順で合成して得られた、アクリル樹脂(撥液剤)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート35質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、前記化合物(aa-1)20質量部と、2-ヒドロキシエチルメタクリレート46.1質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート84.6質量部に溶解したモノマー溶液と、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート10.6質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.6質量部に溶解した重合開始剤溶液との3種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットし、前記ガラスフラスコ内を105℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃で5時間攪拌した後、減圧下で溶媒83.5質量部を留去することによって、重合体(ab-2)溶液を得た。
【0409】
次いで、上記で得られた重合体(ab-2)溶液に、重合禁止剤としてp-メトキシフェノール0.1質量部、ウレタン化触媒としてオクチル酸錫0.03質量部を仕込み、空気気流下で攪拌を開始し、60℃を保ちながら、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート33.3質量部を1時間で滴下した。滴下終了後、60℃で2時間攪拌した後、80℃に昇温して10時間攪拌し、IRスペクトル測定でイソシアネート基の消失を確認し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50.0質量部を加えて、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を含む架橋部及びエチレン性二重結合を有するアクリル樹脂(a-2)を50質量%含有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。得られたアクリル樹脂(a-2)の、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は12000であった。
【0410】
b-1:以下の手順で合成して得られた、アルカリ可溶性樹脂(エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(b1-3)に相当)
下記式で表されるビスフェノールA型エポキシ化合物(エポキシ当量186g/eq、式中のm及びnが1~20のものの混合物)100質量部、アクリル酸40質量部、p-メトキシフェノール0.06質量部、トリフェニルホスフィン2.4質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート126質量部を反応容器に仕込み、酸価が5mg-KOH/g以下になるまで95℃で撹拌した。次いで、上記反応により得られた反応液80質量部にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12質量部を加え、無水コハク酸を添加し、95℃で3時間反応させ、固形分酸価60mg-KOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が8000のアルカリ可溶性樹脂(b-1)溶液を得た。
【0411】
【化59】
【0412】
b-2:以下のアクリル共重合樹脂(アクリル共重合樹脂(b2-1)に相当)
ジシクロペンタニルメタクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート(モル比0.02/0.05/0.93)を構成モノマーとする共重合樹脂に、アクリル酸をグリシジルメタクリレートと等量付加反応させ、さらに無水テトラヒドロフタル酸を上記の共重合樹脂1モルに対してモル比0.1になるように付加した、アルカリ可溶性のアクリル共重合樹脂(b-2)。GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7700、固形分酸価は28.5mg-KOH/g。
【0413】
c-1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬社製)
d-1:2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(保土ヶ谷化学社製)
d-2:イルガキュア369(BASF社製、下記の化学構造の化合物)
【0414】
【化60】
【0415】
e-1:2-メルカプトベンゾイミダゾール(東京化成社製)
e-2:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)(淀化学社製)
f-1:TINUVIN384-2(BASF社製、紫外線吸収剤)
g-1:KAYAMER PM-21(日本化薬社製)
h-1:メチルヒドロキノン(精工化学社製、下記の化学構造の化合物)
【0416】
【化61】
【0417】
[1] 感光性樹脂組成物の作製及び評価
各成分を表1に記載の配合割合で用い、かつ、全固形分の含有割合が19質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて、各成分を均一になるまで撹拌して実施例1~5及び比較例1~2の感光性樹脂組成物を調製した。なお、表1中の各成分の配合割合(質量%)は、全固形分中における各成分の固形分の値を意味する。
【0418】
【表1】
【0419】
実施例1~5及び比較例1~2の感光性樹脂組成物の物性評価を以下に記載の方法で行った。
(接触角の測定)
ガラス基板上にスピナーを用いて、加熱硬化後に1.7μmの厚みになるように各感光性樹脂組成物を塗布した。その後、95℃で2分間、ホットプレート上で加熱乾燥し、得られた塗膜を、マスクを使用せずに、大日本科研社製露光機MA-1100を用いて、露光量120mJ/cm2で全面露光した。この時の波長365nmにおける強度は40mW/cm2であった。次いで、24℃の2.38質量%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で60秒間スプレー現像した後、純水で10秒間洗浄した。この基板を、オーブン中230℃で30分間加熱硬化させ、硬化物付きの接触角測定用基板を得た。
【0420】
接触角の測定は協和界面科学社製Drop Master 500接触角測定装置を用いて、23℃湿度50%の条件下で行った。接触角測定用基板の硬化物上にプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを0.7μL滴下し、1秒後の接触角を測定した。測定結果を表1に示す。接触角が大きい方が、撥インク性が高いことを表す。
【0421】
(UV耐性評価(接触角))
前記接触角測定用基板に対して、オーク社製ドライプロセッサーVUM-3073を用いて、紫外線(UV)を3分間照射した。この時の波長254nmにおける強度は9mW/cm2であった。
UV照射後の基板に対して、前述の方法で接触角の測定を行った。この結果に関し、以下の2種類の観点で評価を行った。測定結果と評価結果を表1に示す。
【0422】
[接触角評価-1]
UV照射後の接触角につき、以下の基準にて評価した。
A:UV照射後の接触角が30°以上を示す。
B:UV照射後の接触角が15°以上30°未満を示す。
C:UV照射後の接触角が15°未満を示す。
Aが好ましい性能である。
【0423】
[接触角評価-2]
接触角の低下率を下記式により導出し、以下の基準にて評価した。ただし、UV照射前の時点で接触角が30°未満のものは、接触角の低下率を算出せずNA(Not Available)とした。
接触角の低下率(%)=100-{(UV照射後の接触角)/(UV照射前の接触角)}×100
A:UV照射前の接触角が30°以上を示し、UV照射後の接触角の低下率が20%未満を示した。
B:UV照射前の接触角が30°以上を示し、UV照射後の接触角の低下率が20%以上30%未満を示した。
C:UV照射前の接触角が30°以上を示し、UV照射後の接触角の低下率が30%以上を示した。
D:UV照射前の接触角が30°以上を示さなかった。
Aが好ましい性能である。
【0424】
[2] 隔壁の形成及び評価
実施例1~5の感光性樹脂組成物を用いて、以下に記載した方法で隔壁の形成と性能評価を行った。
(隔壁の形成)
表面にITO膜を形成したガラス基板の該ITO膜上にスピナーを用いて、加熱硬化後に1.7μmの厚みになるように各感光性樹脂組成物を塗布した。その後、95℃で2分間、ホットプレート上で加熱乾燥して、得られた塗膜に、フォトマスク(80μm×280μmの被覆部を40μm間隔で複数有するマスク)を用い、露光ギャップ16μmで、大日本科研社製露光機MA-1100を用いて露光した。この時の波長365nmにおける強度は40mW/cm2、露光量は120mJ/cm2、空気下で行った。次いで、24℃の2.38質量%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で60秒間スプレー現像した後、純水で1分間洗浄した。これらの操作により、不要な部分が除去されてパターンが形成された基板を、オーブン中230℃で30分間加熱硬化させ、格子状の隔壁を有する基板を得た。
【0425】
(UV耐性評価(隔壁のインクジェット塗布適性))
前記格子状の隔壁を有する基板に対して、オーク社製ドライプロセッサーVUM-3073を用いて、紫外線(UV)を3分間照射した。この時の波長254nmにおける強度は9mW/cm2であった。
UV照射後の基板の格子状の隔壁で囲われた画素領域に対して、富士フィルム社製DMP-2831を用いてインクジェット塗布を行った。インクとして、溶剤(安息香酸イソアミル)を単独で使用し、1画素あたり480pLの塗布を行い、決壊(インクが隔壁を乗り越えて隣の画素部に混入する現象)の有無の評価を以下の基準にて行った。隔壁の撥インク性が高いほど、決壊が抑制される傾向がある。なお、実施例1~5の全てにおいて、インクジェット塗布後の隔壁内の濡れ広がり性は良好であり、かつ、以下に示す決壊評価(インクジェット塗布適性)はAであった。
【0426】
[決壊評価(インクジェット塗布適性)]
A:インクを画素内に塗布することができ、隔壁外へのあふれ出しがなかった。
B:インクが画素内から隔壁の上面の全面にあふれ出し、隣の画素領域に混入してしまった(決壊)。
Aが好ましい性能である。
【0427】
実施例1~5の感光性樹脂組成物を用いた塗布基板は、UV照射後の接触角が高く、UV照射後のインクジェット塗布適性が良好であることが確認された。連鎖移動剤を含むことで、酸素阻害による膜表面の硬化性の低下が抑制でき、現像工程における撥液剤の溶出が抑制されて膜表面に十分な量の撥液剤を固定することができ、接触角が良好になったと考えられる。そして、撥液剤として、UV照射に対して分解しづらい剛直な多環式飽和炭化水素骨格を有するものを使用しているため、UV照射によっても撥液剤の分解反応が抑制されて、UV照射後の膜表面においてフッ素原子の存在量を十分に確保できたものと考えられる。
【0428】
これに対して比較例1の感光性樹脂組成物を用いた塗布基板は、UV照射前から十分な撥インク性を示さなかった。これは、連鎖移動剤を含まないことによって表面硬化性が低く、現像時に撥液剤が流出したためと考えられる。
【0429】
また、比較例2の感光性樹脂組成物を用いた塗布基板は、UV照射後の接触角が低い結果となった。これは、使用した撥液剤(a-2)が多環式飽和炭化水素骨格を有さないものであるため、UV照射による撥液剤の分解によって膜表面におけるフッ素原子の存在量が少なくなり、撥インク性を十分に示さなくなったからであると考えられる。
【0430】
[3] 感光性樹脂組成物の作成及び評価、並びに隔壁の作成及び評価
全固形分中における各成分の固形分の値が以下の配合割合(質量部)になるようにし、かつ、全固形分の含有割合が19質量%となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて、各成分を均一になるまで撹拌して実施例6の感光性樹脂組成物を調製した。
アクリル樹脂(a-1) 0.5質量部
アルカリ可溶性樹脂(b-1) 47.0質量部
光重合性化合物(c-1) 47.0質量部
光重合開始剤(d-1) 2.0質量部
連鎖鎖移動剤(e-1) 1.0質量部
紫外線吸収剤(f-1) 2.0質量部
添加剤(g-1) 0.5質量部
重合禁止剤(h-1) 0.04質量部
【0431】
(接触角の測定)
ガラス基板上にスピナーを用いて、加熱硬化後に1.7μmの厚みになるように実施例6の感光性樹脂組成物を塗布した。その後、95℃で2分間、ホットプレート上で加熱乾燥し、得られた塗膜を、マスクを使用せずに、大日本科研社製露光機MA-1100を用いて、露光量200mJ/cm2で全面露光した。この時の波長365nmにおける強度は40mW/cm2であった。次いで、24℃の2.38質量%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で60秒間スプレー現像した後、純水で10秒間洗浄した。この基板を、オーブン中230℃で30分間加熱硬化させ、硬化物付きの接触角測定用基板が得られた。
前述と同様の方法で、接触角測定およびUV耐性評価(隔壁のインクジェット塗布適性)を行い、以下の結果が得られた。
接触角(°/UV照射前) :42°
接触角(°/UV照射後) :36°
接触角評価-1 :A
UV照射による接触角の低下率:14%
接触角評価-2 :A
【0432】
(隔壁の形成)
表面にITO膜を形成したガラス基板の該ITO膜上にスピナーを用いて、加熱硬化後に1.7μmの厚みになるように実施例6の感光性樹脂組成物を塗布した。その後、95℃で2分間、ホットプレート上で加熱乾燥して、得られた塗膜に、フォトマスク(80μm×280μmの被覆部を40μm間隔で複数有するマスク)を用い、露光ギャップ16μmで、大日本科研社製露光機MA-1100を用いて露光した。この時の波長365nmにおける強度は40mW/cm2、露光量は200mJ/cm2、空気下で行った。次いで、24℃の2.38質量%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液で60秒間スプレー現像した後、純水で1分間洗浄した。これらの操作により、不要な部分が除去されてパターンが形成された基板を、オーブン中230℃で30分間加熱硬化させ、格子状の隔壁を有する基板を得た。
前述と同様の方法で、UV耐性評価(隔壁のインクジェット塗布適性)を行い、以下の結果が得られた。
インクジェット塗布適性(UV照射後) :A