(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】酸化チタン組成物
(51)【国際特許分類】
B01J 35/02 20060101AFI20230301BHJP
B01J 23/847 20060101ALI20230301BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20230301BHJP
A01N 25/12 20060101ALI20230301BHJP
A01N 59/20 20060101ALI20230301BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20230301BHJP
C01G 33/00 20060101ALI20230301BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J23/847 M
A01P1/00
A01N25/12
A01N59/20 Z
A01N59/16 Z
C01G33/00 A
B01J37/04 102
(21)【出願番号】P 2022505299
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2021045261
(87)【国際公開番号】W WO2022138187
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2020212266
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【氏名又は名称】貴志 浩充
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸介
(72)【発明者】
【氏名】河中 俊介
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-043282(JP,A)
【文献】特開2016-193801(JP,A)
【文献】特開2020-182918(JP,A)
【文献】特開平07-053215(JP,A)
【文献】特開2000-169147(JP,A)
【文献】特開平11-179211(JP,A)
【文献】国際公開第2005/044447(WO,A1)
【文献】清野 学,酸化チタン-物性と応用技術,1版,技報堂出版株式会社,1991年06月25日,p.35-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01G 23/00,23/04-23/08,25/00-25/02,33/00
A01P 1/00
A01N 25/12
A01N 59/20
A01N 59/16
A61L 9/00-9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンがジルコニウム及びニオブを含む酸化チタン組成物であって、
前記酸化チタン組成物におけるジルコニウムの含有比(Zr/Ti比)がチタン100に対して0.03~0.8であり、
前記酸化チタン組成物におけるニオブの含有比(Nb/Ti比)がチタン100に対して0.05~0.8であり、
前記酸化チタンに含まれるルチル型酸化チタンの含有率(ルチル化率)は、87.2モル%以上であり
、かつ前記酸化チタン組成物は金属化合物が担持されている、粉末状の酸化チタン組成物。
【請求項2】
前記酸化チタン組成物のBET比表面積は、1~200m
2/gの範囲である、請求
項1に記載の酸化チタン組成物。
【請求項3】
前記金属化合物が、2価銅化合物である請求
項1に記載の酸化チタン組成物。
【請求項4】
前記酸化チタン組成物の1次粒子径は、0.01~0.5μmの範囲である、請求項1
~3のいずれか1項に記載の酸化チタン組成物。
【請求項5】
前記2価銅化合物の担持量は、酸化チタン組成物100質量部に対して、0.01~20質量部である、請求
項3に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1
~5のいずれか1項に記載の酸化チタン組成物及び溶媒を含有する混合液であって、前記酸化チタン組成物の濃度が、25質量%を超えて40質量%以下である、混合液。
【請求項7】
請求項1
~6のいずれか1項に記載の酸化チタン組成物における酸化チタンを液相法によって得る工程を少なくとも含む、酸化チタン組成物の製造方法であって、
イルメナイト鉱又はチタンスラグと五酸化ニオブと酸化ジルコニウムとの混合物に、硫酸及び水を添加して硫酸チタニルを含有する溶液を得た後、当該溶液を加水分解又は中和して酸化チタン組成物を得ることを特徴とする、酸化チタン組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合液における酸化チタン濃度を高めることが可能な酸化チタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗ウイルス剤は、ノロウイルスやインフルエンザウイルス等のウイルスの増殖を抑制し得るものであり、近年においては、レジスター、建具、カーテン、寝具、食品包装容器、車輛シート、浴槽、パソコン、スマートフォンなど、人の手が触れやすいものに加工され、利用されるケースが増大している。
【0003】
前記抗ウイルス剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、銀系化合物、1価銅化合物等を用いた種々の提案がされているが、材料自体に強い皮膚感作性を有していたり、高ウイルス性が不十分であったり、酸化変色による意匠性の低下が生じる問題が指摘されていた。
【0004】
これに対し、酸化チタンを用いた光触媒は、抗ウイルス性を含む高い光触媒活性を有し、人体に無害であるとの理由から、抗ウイルス剤としての検討が進められている。前記抗ウイルス剤としては、例えば、酸化チタンの表面に2価銅化合物を担持した抗ウイルス剤が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
前記抗ウイルス剤は、優れた抗ウイルス性と意匠性とを発現するものである。しかしながら、特許文献1の実施例に記載の酸化チタンでは、酸化チタンを溶媒に溶かした混合液の粘度が高くなりやすく、取扱いが困難であった。このため、混合する酸化チタンの量を低減しなければならず、一度に多くの酸化チタンを加工することができない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、酸化チタンを含む混合液における酸化チタンの濃度を高めることが可能な酸化チタン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、所定の金属元素を含む酸化チタン組成物を用いると混合液における酸化チタンの濃度を高めることが可能であることを見出した。
【0009】
本発明は、以下を含む。
[1]酸化チタンがジルコニウム及びニオブからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を実質的に含む酸化チタン組成物。
[2]前記酸化チタン組成物におけるチタン100に対するジルコニウムの含有比(Zr/Ti比)が、0.03~0.8である[1]に記載の酸化チタン組成物。
[3]前記酸化チタン組成物におけるチタン100に対するニオブの含有比(Nb/Ti比)が、0.05~0.8である[1]または[2]に記載の酸化チタン組成物。
[4]前記酸化チタン組成物が金属化合物を担持するものである[1]~[3]のいずれかに記載の酸化チタン組成物。
[5]前記酸化チタンが、ルチル型酸化チタンを含むものである[4]に記載の酸化チタン組成物。
[6]前記金属化合物が、2価銅化合物である[4]又は[5]に記載の酸化チタン組成物。
[7]前記酸化チタン組成物における酸化チタンがイルメナイト鉱石由来である、[1]~[6]のいずれかに記載の酸化チタン組成物。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の酸化チタン組成物における酸化チタンを液相法によって得る工程を少なくとも含む、酸化チタン組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸化チタン組成物を用いた混合液において酸化チタンの濃度を高めることができることから、容易に一度の操作で多量に酸化チタン組成物に加工することができる。また、相対的に混合液における使用する水の量も低減できるため、加工後の脱水処理作業が必要な場合、廃水の問題も低減化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による酸化チタン組成物は、酸化チタンが、ジルコニウム及びニオブからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素とを実質的に含むものである。
【0012】
前記酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタンを含むものである。前記ルチル型酸化チタンの含有率(ルチル化率)としては、より一層優れた明所及び暗所における抗ウイルス性、明所における有機化合物分解性、及び、可視光応答性が得られる点から、15モル%以上であることが好ましく、50モル%以上あることがより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。
【0013】
前記酸化チタンとしては、前記ルチル型酸化チタン以外には、アナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン等が含まれていてもよい。
【0014】
本発明においては、前記酸化チタンとしては、気相法及び液相法いずれの方法で製造されたものでも用いることができるが、液相法により製造されたものを用いることが好ましい。
【0015】
前記酸化チタン組成物の製造方法としては、一般的に、液相法と気相法とが知られている。前記液相法とは、イルメナイト鉱などの原料鉱石を溶解した液から得られる硫酸チタニルを、加水分解又は中和して酸化チタンを得る方法である。また、気相法とは、ルチル鉱などの原料鉱石を塩素化して得られる四塩化チタンと、酸素との気相反応により酸化チタンを得る方法である。
【0016】
前記酸化チタンは、ジルコニウム、ニオブなどの金属元素を含むことが好ましい。ジルコニウム、ニオブなどの金属元素を含む酸化チタンは、酸化チタン組成物とも言える。
【0017】
本発明において酸化チタンの原料鉱石としてはイルメナイト鉱石を用いてもよいし、イルメナイト鉱石を冶金処理してチタン純度を高めたチタンスラグを用いてもよい。
酸化チタン組成物におけるチタン100に対するジルコニウムの含有比(Zr/Ti比)は、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.04以上、さらに好ましくは0.05以上であり、また、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である。これらの上限及び下限はいずれの組み合わせでもよい。酸化チタン組成物におけるチタン100に対するジルコニウムの含有比(Zr/Ti比)は、好ましくは0.03~0.8、より好ましくは0.04~0.5、さらに好ましくは0.05~0.3である。酸化チタン組成物におけるチタン100に対するニオブの含有比(Nb/Ti比)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.08以上、さらに好ましくは0.1以上であり、また、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である。これらの上限及び下限はいずれの組み合わせでもよい。酸化チタン組成物におけるチタン100に対するニオブの含有比(Nb/Ti比)は、好ましくは0.05~0.8、より好ましくは0.08~0.5、さらに好ましくは0.10~0.3である。上記範囲内の酸化チタン組成物であれば、溶媒への分散性が高く酸化チタンの濃度を高めても混合液の取扱いが良好である。
【0018】
酸化チタンが金属元素(ジルコニウム及び/又はニオブ)を実質的に含むとは、酸化チタンにおける金属元素の含有比がチタン100に対して0.02以上であることを意味する。金属元素(ジルコニウム及び/又はニオブ)を実質的に含む酸化チタンは、金属元素(ジルコニウム及び/又はニオブ)を実質的に含む酸化チタン組成物である。
本発明における金属元素(ジルコニウム及び/又はニオブ)を実質的に含む酸化チタンは、1次粒子に起因する比表面積(BET値)に対して、凝集力は少なく混合液の粘度を抑制することが可能であり、酸化チタンの濃度向上に貢献していると推察される。
【0019】
前記酸化チタンのBET比表面積としては、より一層優れた抗ウイルス性、及び、可視光応答性が得られる点から、1~200m2/gの範囲が好ましく、3~100m2/gの範囲がより好ましく、4~70m2/gの範囲がより好ましく、8~50m2/gの範囲が更に好ましく、抗ウイルス剤の生産性をより一層高めることができる点から、7.5~9.5m2/gの範囲であることが好ましい。なお、前記ルチル型酸化チタンのBET比表面積の測定方法は、後述する実施例にて記載する。
【0020】
前記酸化チタンの1次粒子径としては、より一層優れた抗ウイルス性、及び、可視光応答性が得られる点から、0.01~0.5μmの範囲が好ましく、0.03~0.35μmの範囲がより好ましく0.06~0.35μmの範囲がさらに好ましい。なお、前記酸化チタンの1次粒子径の測定方法は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定した値を示す。具体的には、個々の酸化チタンの1次粒子の短軸径と長軸径を計測し、平均をその1次粒子の粒子径とし、次に100個以上の酸化チタン粒子について、それぞれの粒子の体積(重量)を、求めた粒子径の立方体と近似して求め、体積平均粒径を平均1次粒子径とした。
【0021】
本発明における酸化チタン組成物は、金属化合物を担持するものであることが好ましい。酸化チタン組成物が金属化合物を担持することで、酸化チタン組成物の可視光領域における光触媒活性(抗ウイルス活性及び汚れ成分の分解活性)を向上することができる。金属化合物によっては様々な機能を酸化チタン組成物に付与することができる。
金属化合物を担持する酸化チタン組成物において、金属元素(ジルコニウム及び/又はニオブ)の含有比は、金属化合物を担持する前の酸化チタン組成物と同様である。
【0022】
金属化合物の金属としては、例えば、銅、鉄、タングステン、ジルコニウム、モリブデン等の遷移金属を用いることができる。金属化合物の金属としては、所望の物性に応じて他にも、亜鉛、アルミニウム、アンチモン、スズ等の金属を用いることができる。酸化チタン組成物は、所望の物性に応じて無機化合物を担持してもよく、例えばケイ素を用いてもよい。これらの中でも、より一層優れた抗菌性、及び、抗ウイルス性が得られる点から、銅化合物が好ましく、2価銅化合物がより好ましい。
【0023】
前記2価銅化合物としては、例えば、2価銅無機化合物、2価銅有機化合物等を用いることができる。
前記2価銅無機化合物としては、例えば、硫酸銅、硝酸銅、沃素酸銅、過塩素酸銅、シュウ酸銅、四ホウ酸銅、硫酸アンモニウム銅、アミド硫酸銅、塩化アンモニウム銅、ピロリン酸銅、炭酸銅等の2価銅の無機酸塩;塩化銅、フッ化銅、臭化銅等の2価銅のハロゲン化物;酸化銅、硫化銅、アズライト、マラカイト、アジ化銅などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記2価銅有機化合物としては、例えば、蟻酸銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、吉草酸銅、カプロン酸銅、エナント酸銅、カプリル酸銅、ペラルゴン酸銅、カプリン酸銅、ミスチン酸銅、パルミチン酸銅、マルガリン酸銅、ステアリン酸銅、オレイン酸銅、乳酸銅、リンゴ酸銅、クエン酸銅、安息香酸銅、フタル酸銅、イソフタル酸銅、テレフタル酸銅、サリチル酸銅、メリト酸銅、シュウ酸銅、マロン酸銅、コハク酸銅、グルタル酸銅、アジピン酸銅、フマル酸銅、グリコール酸銅、グリセリン酸銅、グルコン酸銅、酒石酸銅、アセチルアセトン銅、エチルアセト酢酸銅、イソ吉草酸銅、β-レゾルシル酸銅、ジアセト酢酸銅、ホルミルコハク酸銅、サリチルアミン酸銅、ビス(2-エチルヘキサン酸)銅、セバシン酸銅、ナフテン酸銅、オキシン銅、アセチルアセトン銅、エチルアセト酢酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸銅、フタロシアニン銅、銅エトキシド、銅イソプロポキシド、銅メトキシド、ジメチルジチオカルバミン酸銅等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記2価銅化合物原料としては、前記したものの中でも、下記一般式(1)で示されるものを用いることが好ましい。
CuX2 (1)
(式(1)において、Xは、ハロゲン原子、CH3COO、NO3、又は、(SO4)1/2を示す。)
【0026】
前記式(1)におけるXとしては、ハロゲン原子であることがより好ましく、塩素原子が更に好ましい。
【0027】
前記酸化チタン組成物に担持物(金属化合物または無機化合物)を担持させる加工方法としては、湿式であれば公知の手法を用いることができる。例えば、担持物と溶媒の水溶液中に酸化チタン組成物を懸濁した混合液で吸着させる方法、酸化チタン組成物と担持物と溶媒とアルカリ性物質との混合液で反応させる方法等が挙げられる。加工の際は混合液を作る。混合液は、少なくとも酸化チタン組成物と溶媒を含むものである。
【0028】
前記混合液における前記酸化チタン組成物の濃度としては、3~40質量%の範囲が好ましい。なお、本発明においては、液相法により製造された酸化チタンを用いることが好ましく、酸化チタンの濃度を高めても取扱いの良好な混合液で反応を行うことができる。具体的には、前記酸化チタン組成物の濃度が、25質量%を超えて40質量%以下の範囲でも良好な混合液での反応を行うことができる。
【0029】
混合液における担持物原料の使用量としては、前記酸化チタン100質量部に対して、0.01~20質量部の範囲であることが好ましく、0.1~15質量部の範囲がより好ましく、0.3~10質量部の範囲が更に好ましい。
【0030】
溶媒は、水のみを用いてもよく、また水と有機溶剤との混合溶媒を用いてもよい。混合溶媒の場合、水を主成分とする水性溶媒が好ましい。ここで水を主成分とする水性溶媒とは、溶媒全量において水の含有量が最も多いものをいい、50質量%以上が水であることが好ましい。
有機溶剤を含有する混合溶媒の場合は、所望の混合液の性質に応じて有機溶剤の組成を決定する。混合溶媒は、環境負荷低減と安全性向上の観点から、有機溶剤を溶媒全量中30質量%以下で含有することが好ましく、5質量%以下で含有することが好ましい。
【0031】
溶媒に使用可能な有機溶剤としては特に限定はないが、例えば、水と混和する有機溶剤が好ましく用いられる。溶媒に使用可能な有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール等の単官能アルコール、
エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,3ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2-メチル―1,3-プロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等の各種ジオール、グリセリン等の多価アルコール、
【0032】
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、
ビスフェノールA、ビスフェノールAの炭素数2又は3のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1以上16以下)付加物である芳香族ジオール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオールポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、シクロヘキサンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチルカルビトール、γ-ブチロラクトン、等が挙げられる。これらは1種で使用してもよく2種以上混合して使用してもよく限定はない。
中でも、1-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール(NPA)、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1-メトキシ2-プロパノール)(PGM)、エチレングリコールが好ましい。
【0033】
前記アルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルアミン、トリメチルアミン、アンモニア、塩基性界面活性剤等を用いることができ、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。
【0034】
前記アルカリ性物質は、反応を制御しやすい点から、溶液として添加するのが好ましく、添加するアルカリ溶液の濃度としては、0.1~5mol/Lの範囲であることが好ましく、0.3~4mol/Lの範囲がより好ましく、0.5~3mol/Lの範囲が更に好ましい。
【0035】
次に、最も好ましい態様である、酸化チタンに2価銅化合物を担持する方法について説明する。
【0036】
前記混合液は、前記酸化チタン、2価銅化合物原料、溶媒、及び、アルカリ性物質を混合すればよく、例えば、まず水に酸化チタンを混合するとともに必要に応じて撹拌し、次いで、2価銅化合物原料を混合し、撹拌し、その後、アルカリ性物質を添加して撹拌する方法が挙げられる。この混合液により、前記2価銅化合物原料由来の2価銅化合物が前記酸化チタンに担持することとなる。
【0037】
前記混合液における全体の撹拌時間としては、例えば、5~120分間が挙げられ、好ましくは10~60分間である。混合液の反応温度としては、例えば、室温~70℃の範囲が挙げられる。
【0038】
酸化チタンへの2価銅化合物の担持が良好である点から、前記酸化チタン、2価銅化合物原料、及び、水を混合・撹拌し、その後アルカリ性物質を混合・撹拌した後の混合液のpHとしては、好ましくは8~11の範囲であり、より好ましくは9.0~10.5の範囲である。
【0039】
前記混合液での反応が終了した後には、固形分を分離することができる。前記分離を行う方法としては、例えば、濾過、沈降分離、遠心分離、蒸発乾燥等が挙げられるが、濾過が好ましい。分離した固形分は、その後必要に応じて、水洗、解砕、分級等を行ってもよい。
【0040】
前記固形分を得た後には、前記酸化チタン上に担持された前記2価銅化合物原料由来の2価銅化合物を、より強固に結合することができる点から、固形分を熱処理することが好ましい。熱処理温度としては、好ましくは150~600℃の範囲であり、より好ましくは250~450℃の範囲である。また、熱処理時間は、好ましくは1~10時間であり、より好ましくは、2~5時間である。
【0041】
以上の方法によって、酸化チタンに2価銅化合物が担持した酸化チタンを含有する酸化チタン組成物が得られる。酸化チタンに担持された2価銅化合物の担持量としては、酸化チタン100質量部に対して、0.01~20質量部の範囲であることが、抗ウイルス性を含む光触媒活性の点から好ましい。前記2価銅化合物の担持量は、前記混合液における前記2価銅化合物原料の使用量によって調整することができる。なお、前記2価銅化合物の担持量の測定方法は、後述する実施例にて記載する。
【0042】
混合液は、本発明の効果を得られる限り、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等が挙げられる。また、本発明における混合液は、酸化チタン組成物の分散体であり、抗ウイルス剤、コーティング剤、着色剤等としても利用できる。着色剤としては一般のインキ、塗料、及び記録剤等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0044】
[実施例1]
(1)酸化チタン組成物a
一般的な硫酸法に準じ、イルメナイト鉱と五酸化ニオブと酸化ジルコニウムとの混合物に、硫酸と水、鉄を添加して溶解し、チタン硫酸塩と硫酸鉄を主成分とする溶液を得た。硫酸鉄などの不純物を取除き、熱加水分解し、含水水酸化チタン組成物を得た。前記水酸化チタン組成物を洗浄し、900℃で焼成処理を行い、得られた固形物を粉砕し、以下の特徴を持つ酸化チタン組成物aを得た。
a)結晶性ルチル型酸化チタン
b)物性値
・BET比表面積:9.0m2/g
・ルチル化率:95.4%
・1次粒子径:0.18μm
・Zr/Ti比:0.05
・Nb/Ti比:0.17
【0045】
(2)酸化チタン組成物A1
a)混合工程(反応工程)
前記酸化チタン組成物a600質量部、塩化銅(ii)二水和物8質量部、水900質量部をステンレス容器中に混合した。次いで、混合物を撹拌機(特殊機化工業株式会社製「ロボミクス」)で撹拌し、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を混合液のpHが10になるまで滴下した。
b)脱水工程
定性濾紙(5C)により減圧濾過をおこない、混合液から固形分を分離し、更にイオン交換水で洗浄を実施した。次いで、洗浄後の固形物を120℃で12時間乾燥し、水分を除去した。乾燥後、ミル(イワタニ産業株式会社製「ミルサー」)で粉状の酸化チタン組成物を得た。
c)熱処理工程
b)の脱水工程で得られた粉状の酸化チタン組成物に対して、精密恒温器(ヤマト科学株式会社製「DH650」)を用いて酸素存在下で450℃、3時間熱処理し、2価銅化合物が担持された酸化チタンを含有する酸化チタン組成物A1を得た。
【0046】
(3)混合工程における混合液の酸化チタン濃度の変更
前記(2)a)混合工程(反応工程)において、酸化チタンの濃度を変更し、各配合率で撹拌可能な状態を判定した。具体的には、容器内で混合液全体が均一に撹拌される状態であれば「T」、混合液がゲル状となり、撹拌軸周辺のみの不十分な撹拌状態であれば「F」とした。
【0047】
[実施例2]
実施例1において、塩化銅(ii)二水和物の使用量を、8質量部から3.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、2価銅化合物が担持された酸化チタンを含有する酸化チタン組成物A2を得た。また、実施例1と同様にして、酸化チタン濃度の変更試験を行った。
【0048】
[実施例3]
(1)酸化チタン組成物b
実施例1の五酸化ニオブと酸化ジルコニウムの混合量を以下の含有比になるように変更して、以下の特徴を持つ酸化チタン組成物bを得た。
a)結晶性ルチル型酸化チタン
b)物性値
・BET比表面積:37.2m2/g
・ルチル化率:99.6%
・1次粒子径:0.04μm
・Zr/Ti比:0.05
・Nb/Ti比:0.26
【0049】
実施例1において、酸化チタンの種類を前記酸化チタン組成物bに変更した以外は、実施例1と同様にして、2価銅化合物が担持された酸化チタンを含有する酸化チタン組成物Bを得た。また、実施例1と同様にして、酸化チタン濃度の変更試験を行った。
【0050】
[実施例4]
(1)酸化チタン組成物c
実施例1の五酸化ニオブと酸化ジルコニウムの混合量を以下の含有比になるように変更して、以下の特徴を持つ酸化チタン組成物cを得た。
a)結晶性ルチル型酸化チタン
b)物性値
・BET比表面積:6m2/g
・ルチル化率:87.2%
・Zr/Ti比:0.17
・Nb/Ti比:0.20
【0051】
実施例1において、酸化チタンの種類を前記酸化チタン組成物cに変更した以外は、実施例1と同様にして、2価銅化合物が担持された酸化チタンを含有する酸化チタン組成物Cを得た。また、実施例1と同様にして、酸化チタン濃度の変更試験を行った。
【0052】
[比較例1]
(1)酸化チタン組成物d
一般的な塩素法に準じ、ルチル鉱とコークスと塩素を反応し、四塩化チタンを得た。前記四塩化チタンを蒸留により、不純物を取り除き、酸素化で1000℃で燃焼処理を行い、冷却後、得られた固形物を粉砕し、ジルコニウムもニオブも実質的に含まない以下の特徴を持つ酸化チタン組成物dを得た。
a)結晶性ルチル型酸化チタン
b)物性値
・BET比表面積:13m2/g
・ルチル化率:95.6%
・1次粒子径:0.15μm
・Zr/Ti比:0.00
・Nb/Ti比:0.01
【0053】
実施例1において、酸化チタンの種類を前記酸化チタン組成物dに変更し、水の使用量を900質量部から4,000質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、2価銅化合物が担持された酸化チタンを含有する酸化チタン組成物D1を得た。また、実施例1と同様にして、酸化チタン濃度の変更試験を行った。
【0054】
[比較例2]
比較例1において、塩化銅(ii)二水和物の使用量を8質量部から3.3質量部に変更した以外は、比較例1と同様にして、2価銅化合物が担持された酸化チタンを含有する酸化チタン組成物D2を得た。また、実施例1と同様にして、酸化チタン濃度の変更試験を行った。
【0055】
[比較例3]
(1)酸化チタン組成物e
比較例1の冷却条件を変えてジルコニウムもニオブも実質的に含まない以下の特徴を持つ酸化チタン組成物eを得た。
a)結晶性ルチル型酸化チタン
b)物性値
・BET比表面積:6.8m2/g
・ルチル化率:99.6%
・1次粒子径:0.25μm
・Zr/Ti比:0.01
・Nb/Ti比:0.01
【0056】
比較例1において、酸化チタンの種類を前記酸化チタン組成物eに変更した以外は、比較例1と同様にして、2価銅化合物が担持された酸化チタンを含有する酸化チタン組成物Eを得た。また、実施例1と同様にして、酸化チタン濃度の変更試験を行った。
【0057】
[比較例4]
(1)酸化チタン組成物f
比較例1の冷却条件を変えてジルコニウムもニオブも実質的に含まない以下の特徴を持つ酸化チタン組成物fを得た。
a)結晶性ルチル型酸化チタン
b)物性値
・BET比表面積:13.5m2/g
・ルチル化率:76.5%
・1次粒子径:0.13μm
・Zr/Ti比:0.00
・Nb/Ti比:0.01
【0058】
比較例1において、酸化チタンの種類を前記酸化チタン組成物fに変更した以外は、比較例1と同様にして、2価銅化合物が担持された酸化チタンを含有する酸化チタン組成物Fを得た。また、実施例1と同様にして、酸化チタン濃度の変更試験を行った。
【0059】
[比較例5]
(1)酸化チタン組成物g
比較例1の冷却条件を変えてジルコニウムもニオブも実質的に含まない以下の特徴を持つ酸化チタン組成物gを得た。
a)結晶性ルチル型酸化チタン
b)物性値
・BET比表面積:20m2/g
・ルチル化率:53%
・1次粒子径:0.07μm
・Zr/Ti比:0.00
・Nb/Ti比:0.01
【0060】
比較例1において、酸化チタンの種類を前記酸化チタン組成物gに変更した以外は、比較例1と同様にして、2価銅化合物が担持された酸化チタンを含有する酸化チタン組成物Gを得た。また、実施例1と同様にして、酸化チタン濃度の変更試験を行った。
【0061】
[酸化チタンのBET比表面積の測定方法]
株式会社マウンテック製全自動BET比表面積測定装置「MacSORBHM model-1208」を使用して、比表面積測定(BET1点法)による測定を行った。
【0062】
[酸化チタンのルチル化率の測定方法]
島津製作所株式会社製X線回折装置「XRD-6100」を使用して、ルチル型結晶に対応するピーク高さ割合を酸化チタン全体の結晶(ルチル型、ブルッカイト型、アナターゼ型)に対応するピーク高さから算出した。
【0063】
[酸化チタン組成物a~gのZr/Ti比、Nb/Ti比の算出方法]
セイコーインスツル株式会社製蛍光X線分析装置「SEA1200VX」を使用して、バルクファンダメンタルパラメータ(バルクFP)法による金属元素組成分析を行った。酸化チタン試料を測定して得られた、各金属元素の蛍光強度(cps:count per second)について、チタンの蛍光強度(cps)を100としたときのジルコニウムまたはニオブの蛍光強度(cps)の強度比を、それぞれZr/Ti比、またはNb/Ti比として算出した。
【0064】
[酸化チタン組成物への2価銅化合物の担持量の測定方法]
酸化チタン組成物を、フッ酸溶液で全溶解し、抽出液をICP発光分光分析装置により分析して、酸化チタン100質量部に対する2価銅化合物の担持量(質量部)を定量した。なお、前記担持量の測定まで行わなかったものは「-」とした。
【0065】
[抗ウイルス性]
JIS R 1756:2013に準拠して、抗ウイルス性試験を行った。抗ウイルス性はソーダライムガラス板上に実施例及び比較例で得られた酸化チタン組成物A1~Gを1g/m2を均一に塗布し、N-113フィルターで400nm以下の波長をカットした光源を用いて、4時間照射後の試料について以下の式により求めた値、不活化度で評価した。
不活化度=log(N/N0)
N:反応後のサンプルの感染価 、N0:接種ファージの感染価。
不活化度-1が90%、不活化度-2が99%、不活化度-3 が99.9%不活化していることを示す。
なお、抗ウイルス性試験まで行わなかったものは「-」とした。
【0066】
【0067】
実施例1~4に示す通り、酸化チタンが実質的にジルコニウム及び/又はニオブを含む酸化チタン組成物である場合、混合液における酸化チタンの濃度を高めても安定的に混合が可能であることから、容易に一度の操作で多量の酸化チタン組成物を加工することができることが分かった。
【0068】
一方、比較例1~5はいずれも、実質的にジルコニウム及び/又はニオブを含まないルチル型酸化チタンを用いた態様であるが、混合液における酸化チタン濃度が20質量%を超えると、混合液の粘度が極めて高くなり、取扱いが困難で一度の操作で多量に酸化チタン組成物を加工することは困難であることが分かった。