(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】高分子分散型液晶表示素子の製造方法及び高分子分散型液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20230301BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G02F1/13 101
G02F1/1334
G02F1/13 500
G02F1/13 505
(21)【出願番号】P 2022515892
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2021016234
(87)【国際公開番号】W WO2021230030
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2020084331
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和則
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-197380(JP,A)
【文献】国際公開第94/023331(WO,A1)
【文献】特開2011-143592(JP,A)
【文献】国際公開第2015/022866(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1334
C09K 19/02
C09K 19/12
C09K 19/14
C09K 19/16
C09K 19/18
C09K 19/20
C09K 19/30
C09K 19/32
C09K 19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方に電極層を有し、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、液晶材料、及び、重合性組成物を含有する調光層形成材料を介在させた後、紫外線を照射して前記重合性組成物を重合させることにより、液晶材料と高分子物質から成る調光層を有し、該調光層の透過率の分布において上位10%の平均値Aと下位10%の平均値Bの差(A-B)の、下位10%の平均値Bに対する割合((A-B)/B×100)が200%以下の高分子分散型液晶表示素子の製造方法において、
前記液晶材料が一般式(I
-1)
【化1】
(式中、R
11
は炭素原子数1から10までのアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH
2
基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-CH≡CH-よって置き換えられていてもよく、
R
12
は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、CF
3
基、OCF
3
基、OCHF
2
基、NCS基、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH
2
基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-C≡C-によって置き換えられていてもよく、
Z
11
、及びZ
12
は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH
2
-CH
2
-、-CH=CH-、-CF
2
O-、-OCF
2
-、又は-C≡C-を表し、Z
12
が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、
A
11
、A
12
、及びA
13
は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF
3
基、OCF
3
基又はCH
3
基を有していても良く、A
13
が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、
n
11
は0、1又は2であり、
且つ、Z
11
が-CH=CH-、又は-C≡C-であるか、及び/又は、存在するZ
12
が-CH=CH-、又は-C≡C-である。)
で表される化合物を1種又は2種以上含有し、
紫外線照射する液晶表示素子から見て紫外線照射ランプと反対側に位置する液晶表示素子の設置面における紫外線の最低反射率が最大反射率の50%以上であることを特徴とする、高分子分散型液晶表示素子の製造方法。
【請求項2】
前記一般式(I-1)中のZ
11
が-C≡C-であるか、及び/又は、存在するZ
12
が-C≡C-である請求項1に記載の高分子分散型液晶表示素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の重合性組成物が一般式(IV-1)
【化2】
(式中、Y
1は水素原子、又はメチル基を表し、X
2は分岐基、又は環状基を有していてもよい炭素原子数8~30のアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つ以上の-CH
2-はそれぞれ独立して酸素原子、-COO-、又は-OCO-で置き換えられていてもよい。)を含有する、請求項1又は請求項2に記載の高分子分散型液晶表示素子の製造方法。
【請求項4】
2枚の基板間に前記調光層形成材料を介在させた後、紫外線照射を行うまでの間、調光層形成材料のネマチック-アイソトロピック転移点以上の温度に維持し、紫外線照射中においてもネマチック-アイソトロピック転移点以上の温度にコントロールすることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の高分子分散型液晶表示素子の製造方法。
【請求項5】
313nmの紫外線量が365nmの紫外線量に対して10%以下の強度である紫外線を照射することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の高分子分散型液晶表示素子の製造方法。
【請求項6】
少なくとも一方に電極層を有し、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、液晶材料、及び、重合性組成物の重合物である高分子物質から成る調光層を有し、前記調光層の透過率の分布において上位10%の平均値Aと下位10%の平均値Bの差(A-B)の、下位10%の平均値Bに対する割合((A-B)/B×100)が200%以下であり、
前記液晶材料が一般式(I
-1)
【化3】
(式中、R
11
は炭素原子数1から10までのアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH
2
基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-CH≡CH-よって置き換えられていてもよく、
R
12
は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、CF
3
基、OCF
3
基、OCHF
2
基、NCS基、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH
2
基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-C≡C-によって置き換えられていてもよく、
Z
11
、及びZ
12
は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH
2
-CH
2
-、-CH=CH-、-CF
2
O-、-OCF
2
-、又は-C≡C-を表し、Z
12
が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、
A
11
、A
12
、及びA
13
は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF
3
基、OCF
3
基又はCH
3
基を有していても良く、A
13
が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、
n
11
は0、1又は2であり、
且つ、Z
11
が-CH=CH-、又は-C≡C-であるか、及び/又は、存在するZ
12
が-CH=CH-、又は-C≡C-である。)
で表される化合物を1種又は2種以上含有し、
前記調光層は、前記液晶材料の連続相中に前記高分子物質の網目構造が形成されてなり、前記網目構造の平均空隙間隔が、0.2~2μmである高分子分散型液晶表示素子。
【請求項7】
前記一般式(I-1)中のZ
11
が-C≡C-であるか、及び/又は、存在するZ
12
が-C≡C-である請求項6に記載の高分子分散型液晶表示素子。
【請求項8】
請求項6に記載の重合性組成物が一般式(IV-1)
【化4】
(式中、Y
1は水素原子、又はメチル基を表し、X
2は分岐基、又は環状基を有していてもよい炭素原子数8~30のアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つ以上の-CH
2-はそれぞれ独立して酸素原子、-COO-、又は-OCO-で置き換えられていてもよい。)を含有する、請求項6又は請求項7に記載の高分子分散型液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶材料、及び、重合性組成物の重合物である高分子物質から成る調光層を有する高分子分散型液晶表示素子の製造方法、並びに、該高分子分散型液晶表示素子に関する。高分子分散型液晶表示素子は、デジタルカメラやスマートフォン等の調光に使用される光シャッター、ディスプレイ用光源の光散乱板、導光板、反射型ディスプレイや透明ディスプレイの反射板、及び調光素子等を含む物品を含み、調光素子は、ガラス窓、ドア、パーティション、プライベートガラス等の住宅やビル等建築物に使用される調光素子、ガラス窓、鏡、屋根等の自動車、飛行機、船舶、電車等輸送媒体に使用される調光素子、サングラス、眼鏡、サンバイザー、時計、鏡、反射板等の装飾用調光素子等の物品を含む。
【背景技術】
【0002】
高分子分散型液晶組成物を用いて作製される高分子分散型液晶表示素子は、偏光板を必要としないため、従来の偏光板を用いた、TN、STN、IPS又はVAモードの液晶表示素子に比べ、明るい表示が実現できるメリットがあり、素子の構成も単純であることから、調光ガラス等の光シャッター用途、各種光学素子用途、時計等セグメント表示用途に応用されている。高分子分散型液晶表示素子は高分子により液晶分子の配向が乱された状態から、電圧の印加し液晶化合物を一方向に配向させる状態に変化させることにより、光の散乱及び透過を制御するモードである。散乱時には白濁し、透過時には透明になっている。
【0003】
この高分子分散型液晶素子には、いくつかの種類があり、例えば、ポリマー中に液晶物質の小滴を分散させたNCAPと呼ばれるタイプ(特許文献1)は大面積化には適しているものの駆動電圧が高かった。それを改善する手法としてPDLC、又はPNLCと呼ばれる、液晶材料を重合性モノマーの混合物に紫外線を照射すことにより引き起こされる重合相分離を用いたタイプ(特許文献2)等が提案され、特に低電圧化が要求される光学素子、表示素子等には液晶の連続相中に高分子の網目構造が形成されたPNLCタイプが応用されてきた。このPNLCタイプは用いる液晶組成物、高分子形成材料であるモノマー組成物の物性のみならず、高分子の網目構造のサイズ等をコントロールして目的の物性値を持つ高分子分散型液晶表示素子を作製できる。
【0004】
これら紫外線を照射して作製するタイプの高分子分散型液晶素子は、その作製工程を的確にコントロールしないと均一な透過・散乱状態や、駆動電圧、中間調状態が得られない傾向があり、量産時に歩留まり低下等の問題点を抱えていた。特許文献3では紫外線照射強度分布をある一定の分布以内に抑える検討等もなされてはいるが、これだけでは問題は解決できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-286162号公報
【文献】US5304323号公報
【文献】特開平5-066387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高分子分散型液晶素子の製造方法において、均一な散乱状態、均一な透明状態、均一な駆動電圧状態を得るための的確な作製条件を見出し、上記均一な特性を有する高分子分散型液晶素子を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、高分子分散型液晶表示素子において、特定の作製条件で作製することにより、均一性に優れる高分子分散型液晶表示素子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、少なくとも一方に電極層を有する、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、液晶材料、重合性組成物を含有する調光層形成材料を介在させた後、紫外線を照射して前記重合性組成物を重合させることにより、液晶材料と高分子物質から成る調光層を有する調光層の透過率の分布において上位10%の平均値Aと下位10%の平均値Bの差(A-B)の、下位10%の平均値Bに対する割合((A-B)/B×100)が200%以下の高分子分散型液晶表示素子の製造方法において、紫外線照射する液晶表示素子から見て紫外線照射ランプと反対側に位置する液晶表示素子の設置面における紫外線の最低反射率が最大反射率の50%以上であることを特徴とする、高分子分散型液晶表示素子の製造方法、及び高分子分散型液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法を用いると、散乱状態、透明状態、及び、駆動電圧が均一性に優れた高分子分散型液晶表示素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本願発明の高分子分散型液晶表示素子をUV照射して製造する際に用いる背面板を示す概略図である。
【
図2】本願発明の高分子分散型液晶表示素子の物性測定時の測定点の升目概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の製造方法で得られる高分子分散型液晶表示素子は、液晶組成物(液晶材料)、重合性組成物、重合開始剤からなる高分子分散型液晶組成物を2枚のITO付ガラス基板間等の少なくとも一方に電極層を有する、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に注入等の手段で配置し、該調光層に紫外線を照射することにより、液晶相と高分子相の相分離を誘発させ、重合性モノマー組成物を重合させることにより、液晶相中に高分子の網目構造を形成する、または高分子中に液晶のドロップレット構造を形成することにより得ることができる。この紫外線硬化過程、及び紫外線硬化過程に至るまでの工程をコントロールすることが均一な特性を得るために重要である。また、使用する液晶組成物によっても、作製工程のコントロールの影響は大きく変化する。
【0012】
均一な特性の指標としては、高分子分散型液晶表示素子の面内の透過率を評価し、その上位10%の平均値Aと下位10%お平均値Bの差(A-B)の、下位10%の平均値Bに対する割合((A-B)/B×100)が挙げられ、この値が200%以下であることが好ましく、100%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更により好ましく、30%以下であることが最も好ましい。
【0013】
本発明の透過率は、大塚電子社製のLCD評価装置であるLCD-5200を用いBレンズでアパーチャーSの条件で測定した値を示しており、集光角3.2°の条件と同等である。
【0014】
本発明の高分子分散型液晶表示素子の作製方法について説明する。前述の均一な特性を有する高分子分散型液晶表示素子は以下の製法で作製することができる。少なくとも一方に電極層を有する、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、液晶材料、及び、重合性組成物を含有する調光層形成材料を狭持した後、熱、又は活性エネルギー線を照射することによって重合性組成物を重合させ、液晶組成物との相分離を誘発させることにより、液晶組成物と透明性高分子物質からなる調光層が形成され、得ることができる。特に紫外線を照射して重合性化合物を重合させることにより、液晶組成物との相分離を誘発させる手法が好ましい。
【0015】
2枚の基板はガラス、プラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムチンオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。また、低波長分散の透明性基板を用いることにより本発明のデバイスの光散乱能が高まり反射率やコントラストが向上してより好ましい。低波長分散の透明性基板としては、ホウケイ酸硝子や、ポリエチレンテレフタレートまたはポリカーボネート等のプラスチック透明フィルム、1/4λの光干渉条件を使用した誘電体多層膜をコートした透明性基板が挙げられる。
【0016】
また、該基板上には、必要に応じて、高分子膜や、配向膜、SiO2膜、SiNx膜、やカラーフィルターを配置することもできる。配向膜としては、例えば、ポリイミド配向膜、光配向膜等が使用できる。配向膜の形成方法としては、例えばポリイミド配向膜の場合、ポリイミド樹脂組成物を該透明基板上に塗布し、180℃以上の温度で熱硬化させる。一般的に高分子分散型液晶表示素子の場合は、綿布やレーヨン布等を用いたラビング処理は行わない。
【0017】
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
【0018】
前記基板は、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られる調光層の厚さが1から100μmとなるように調整するのが好ましい。中でも2から50μmが好ましく、2から30μmがより好ましく、5から25μmが更に好ましく、5から15μmが最も好ましい。スペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料等が挙げられる。その後、エポキシ系熱硬化性組成物等のシール剤を、該基板にスクリーン印刷し、該基板同士を貼り合わせ、加熱又は紫外線硬化しシール剤を硬化させる。
【0019】
2枚の基板間に調光層形成材料を狭持させるに方法は、通常の真空注入法でも良いが、ODF法やインクジェット方式等滴下又は塗布で行うことも好ましい。真空注入や、滴下又は塗布工程から調光層中に網目構造を形成させるために紫外線照射を行うまでの間、調光層形成材料は均一なアイソトロピック状態であることが好ましい。この均一なアイソトロピック状態は高分子分散型液晶組成物のネマチック-アイソトロピック転移点(Tni(PNM))以上の温度で得ることができる。すなわち、注入等から紫外線照射を行うまでの間、高分子分散型液晶組成物をTni(PNM)以上の温度に維持することが好ましい。もし、Tni(PNM)以下の温度にしてしまうと、液晶組成物濃度リッチ相と、重合性組成物濃度リッチ相の2相に分離してしまい、均一な状態ではなくなる可能性があり、この状態で注入等をおこなっても、均一な状態は得られにくい。特に2枚の基板間に狭持させた後にTni(PNM)以下等にすることにより2相分離の状態になると、たとえその後Tni(PNM)以上の温度にしたとしても、両相が均一に混ざりあうことは難しく、結果として均一な特性の高分子分散型液晶表示素子は得られにくくなる。
【0020】
紫外線重合のためのランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、照射する紫外線の波長としては、調光層形成材料に含有されている光重合開始剤の吸収波長領域であり、且つ含有されている液晶組成物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましく、具体的には、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプを使用して330nm以下の紫外線をカットして使用することが好ましい。また、単一波長を照射できるUV-LEDランプを用いることも好ましい。
【0021】
より具体的には、313nmの紫外線強度が365nmの紫外線強度に対して10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更により好ましい。313nmの光は一部の液晶化合物の吸収波長と重なるため、液晶化合物の劣化を引き起こしたり、重合過程に悪影響を及ぼしたりする。特に後述の一般式(II)の化合物を含有する液晶組成物の場合は、これらの現象が顕著に発生する。
【0022】
紫外線照射の時の温度は、調光層の特性を決める重要な要素となる。前述の通り、高分子分散型液晶組成物がTi(PNM)以上であることが好ましく、Ti(PNM)+0.1℃以上から+15.0℃以下がより好ましく、Ti(PNM)+0.2℃以上から+10.0℃以下が更によりこのましく、Ti(PNM)+0.3℃以上から+5.0℃以下が最も好ましい。
【0023】
さらに紫外線照射の時に、ガラス基板等に挟まれ高分子分散型液晶組成物を挟持した液晶表示素子から見て紫外線ランプと反対側の面、すなわち紫外線照射における液晶表示素子裏面の状態も、均一な特性を有する高分子分散型液晶表示素子を得るために重要な要素となる。紫外線照射過程において、紫外線ランプからの直接光のみではなく、液晶表示素子を通過した後の反射光も特性の均一性に影響を及ぼす。この影響は後述する一般式(I-1)の化合物を含有する液晶組成物の場合、特に顕著に表れる。
【0024】
液晶表示素子から見て紫外線照ランプと反対側の面における紫外線の最低反射率が最大反射率の40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更により好ましく、80%以上であることが最も好ましい。特に裏面に位置決め等のガイドラインを施す場合や、表示素子固定の為の真空チャックを設ける場合には注意が必要となる。このような仕様の場合、紫外線照射時の反射の影響を考慮しないと、表示素子に真空チャック痕等の跡が発生し、均一な表示が得られない。なお、紫外線の反射率としては、分光光度計の反射測定機能を用いた365nmの反射率で評価した。
【0025】
上述の手法で作製された、高分子分散型液晶表示素子内の調光層は、液晶組成物が高分子物質でカプセル状に閉じ込められたドロップレット構造、液晶組成物の連続相中に高分子物質の3次元網目構造が形成された構造、又は両者が混在した構造等を有しているが、液晶組成物の連続相中に透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成された構造であることが好ましい。
【0026】
網目構造の平均空隙間隔は高分子分散型液晶表示素子の特性に大きく影響し、平均空隙間隔としては、0.2から2μmが好ましく、0.4から1.5μmがより好ましく、0.5から1.0μmが最も好ましい。
(液晶組成物)
本発明の高分子分散型液晶組成物に用いる液晶組成物は一般式(I)で表される化合物を含有ことが好ましく、一般式(I)で表される化合物を2種類以上含有することが更に好ましい。
【0027】
【0028】
(式中、R1は炭素原子数1から10までのアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH2基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-CH≡CH-よって置き換えられていてもよく、
R2は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、CF3基、OCF3基、OCHF2基、NCS基、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH2基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-C≡C-によって置き換えられていてもよく、好ましくはフッ素原子、シアノ基、又は炭素原子数1~5のアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH2基は酸素原子で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-CH≡CH-よって置き換えられていてもよい)であり、
Z1、及びZ2は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、又は-C≡C-を表し、Z1が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、
A1、A2、及びA3は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF3基、OCF3基又はCH3基を有していても良く、A3が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、
n1は0、1又は2である)
一般式(I)の中でも一般式(I-1)
【0029】
【0030】
(式中、R11は炭素原子数1から10までのアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH2基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-CH≡CH-よって置き換えられていてもよく、
R12は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、CF3基、OCF3基、OCHF2基、NCS基、又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH2基は酸素原子、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-、又は-C≡C-によって置き換えられていてもよく、好ましくはフッ素原子、シアノ基、又は炭素原子数1~5のアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH2基は酸素原子で置き換えられていてもよい)であり、
Z11、及びZ12は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、又は-C≡C-を表し、Z12が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、
A11、A12、及びA13は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基を表し、該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、CF3基、OCF3基又はCH3基を有していても良く、A13が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良く、
n11は0、1又は2であり、
且つ、R11中の少なくとも1つ以上のメチレン基が-CH=CH-、又は-C≡C-よって置き換えられているか、R12中の少なくとも1つ以上のメチレン基が-CH=CH-、又は-C≡C-よって置き換えられているか、Z11が-CH=CH-、又は-C≡C-であるか、及び/又は、存在するZ12が-CH=CH-、又は-C≡C-である。)で表される化合物を1種以上含有することがより好ましく、2種類以上含有することが更により好ましい。
【0031】
一般式(I-1)の化合物を含有することで、より駆動電圧を低減することができ、且つ散乱性もより向上する。これらの化合物内の二重結合、又は三重結合の存在により、紫外線照射時の重合性組成物の重合過程に影響を与えて、重合速度を低下させる等の効果を有し、高分子の網目構造や、高分子のドロップレット構造を制御しやすくなる。またそれに反して、前述の紫外線重合工程における種々の条件の影響を非常に受けやすくなる。また、一般式(I-1)と、一般式(I-1)以外の一般式(I)の化合物両方を含有することが好ましく、両方を2種類以上含有することがより好ましい。
【0032】
一般式(I-1)以外の一般式(I)の化合物としては、一般式(I)中のR1が炭素原子数1から5までのアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH2基は酸素原子で置き換えられていてもよい)であることが好ましく、R2は、フッ素原子、シアノ基、又は炭素原子数1~5のアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH2基は酸素原子で置き換えられていてもよい)であることが好ましく、Z1、及びZ2は、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH2-CH2-、-CF2O-、又は-OCF2-(Z1が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良9)であることが好ましく、単結合、-COO-、-CF2O-であることがより好ましく、A1、A2、及びA3は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基(該1,4-フェニレン基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、2,6-ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、又はCH3基を有していても良く、A3が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)であることが好ましく、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、ピリミジン-2,5-ジイル基、2,6-ナフチレン基(該1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、又はCH3基を有していても良く、A3が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)であることがより好ましく、n1は0、又は1であることが好ましい。
【0033】
一般式(I-1)の化合物としては、R11が炭素原子数1から5までのアルケニル基を表し、R12が、フッ素原子、又は炭素原子数1~5のアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH2基は酸素原子で置き換えられていてもよい)を表し、Z11、及びZ12が、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-CF2O-を表し(Z12が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)、A11、A12、及びA13は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基(該1,4-フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、又はCH3基を有していても良く、A13が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)を表し、n11は0、又は1又を表す化合物、
又は、R11、及びR12がそれぞれ独立して、炭素原子数1から5までのアルキル基(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つのCH2基は酸素原子で置き換えられていてもよく、また一つ以上のメチレン基は-CH=CH-よって置き換えられていてもよい)を表し、Z11、及びZ12が、それぞれ独立して、単結合、-COO-、-CF2O-、又は-C≡C-(Z12が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良いが、少なくとも一つ以上のZ11、又はZ12が-C≡C-を表す)を表し、A11、A12、及びA13は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基(該1,4-フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、又はCH3基を有していても良く、A13が複数個存在する場合は、同じであっても異なっていても良い)を表し、n11は0、又は1又を表す化合物であることが好ましい。
【0034】
具体的には以下の式(II-1)~(II-54)で表される化合物が好ましい。
【0035】
【0036】
【0037】
(重合性組成物)
前記調光層中に網目構造等を形成している高分子物質は、高分子分散型液晶組成物中の重合性組成物(重合性モノマー組成物)を重合することにより得られる。重合性組成物は熱や紫外線により硬化する化合物で構成されていることが好ましく、紫外線硬化性の重合性化合物で構成されていることが好ましい。紫外線硬化性重合性化合物としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合があげられるが、ラジカル重合性の化合物が好ましく、中でもアクリル系、メタクリル系の重合性化合物がより好ましい。アクリル系、メタクリル系の重合性化合物としては、単官能型重合性化合物、多官能型重合性化合物が上げられるが、少なくとも1種類以上の多官能型重合性化合物で構成させることが好ましく、少なくとも1種類以上の2官能型重合性化合物で構成されることがより好ましい。更により好ましい構成は2官能型重合性化合物と単官能型重合性化合物を併用することである。
【0038】
2官能型重合性化合物としては、特に制限はないが、好ましくは一般式(III-1)
【0039】
【0040】
(式中、Y1、及びY2は水素原子、又はメチル基を表し、X1は2価の有機基を表す)。該2価の有機基であるX1は分子量150~15000であることが好ましく、350~10000であることが更に好ましく、さらに炭素原子、酸素原子、窒素原子、水素原子で構成される基であることが好ましい。
X1としては、特に密着性を最重視するのであれば、一般式(III-2)
【0041】
【0042】
(式中、E1は炭素原子数1~4までのアルキル基を表し、該アルキル基中の一つ以上の-CH2-は酸素原子、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されていても良く、qは1~20を表し、E2は、下記(III-2-1)~(III-2-4)
【0043】
【0044】
を表し、E3は下記(III-3-1)又は(III-3-2)
【0045】
【0046】
(式中、Y3は水素原子、又はメチル基を表し、Y5は2価の芳香族基、2価の脂環式炭化水素基または炭素原子数1~14のアルキレン基を表し、該アルキレンは酸素原子、-CO-基で置換されていてもよく、Y6は炭素原子数1~14のアルキレン基を表し、該アルキレンは酸素原子、-CO-基で置換されていてもよく、r及びyは10~300を表す。)であることが好ましく、駆動電圧を重視するのであれば、X1は一般式(III-4-1)~(III-4-3)
【0047】
【0048】
(式中、Y4はそれぞれ独立して水素原子、又はメチル基を表し、s、及びtは2~15の整数を表し、uは6~40までの整数を表し、式(III-4-3)中の1つ以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子、-CO-、-NH-、-COO-、-OCO-で置き換えられていてもよく、CH2基中の1つ、又は2つの水素原子は、メチル基、エチル基で置き換えられていても良い。)で表わされる化合物が好ましい。
【0049】
X1は、特に下記(III-5-1)、又は(III-5-2)で表される化合物がより好ましい。
【0050】
【0051】
(式中、s1は3~12の整数を表し、m1+m2は0から6の整数を表す。)
単官能化合物としても、特に制限はないが、好ましくは一般式(IV-1)
【0052】
【0053】
(式中、Y1は水素原子、又はメチル基を表し、X2は1価の有機基を表す)。
【0054】
該1価の有機基であるX2は分子量100~1000であることが好ましく、110~500であることがより好ましく、120~300であることが更により好ましく、さらに炭素原子、酸素原子、水素原子で構成される基であることが好ましく、ベンゼン環を含まないことが更により好ましい。さらに好ましいX2としては、分岐基、又は環状基を有していてもよい炭素原子数8~30のアルキル基が好ましく(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つ以上の-CH2-はそれぞれ独立して酸素原子、-COO-、又は-OCO-で置き換えられていてもよい)、分岐基を有していてもよい炭素原子数10~25のアルキル基がより好ましく(該アルキル基中の非隣接の1つ又は2つ以上の-CH2-はそれぞれ独立して酸素原子、-COO-、又は-OCO-で置き換えられていてもよい)、分岐基を有する炭素原子数16~24のアルキル基であることが更により好ましい。
【0055】
前記調光層中に網目構造を形成している高分子物質を紫外線重合により形成する際、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はないが、好ましくはアルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、オキシムエステル系等の分子内開裂型の開始剤が好ましく、具体的にはジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンゾフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-エトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-(1-メチルエトキシ)-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、及び、2-イソブトキシ-2-フェニルアセトフェノンが好ましい。
【0056】
特にこの中でも、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンがより好ましい。
【0057】
本発明の高分子分散型液晶素子に用いる高分子分散型液晶組成物は、前述の液晶組成物(液晶材料)、重合性組成物、及び重合開始剤で構成されているが、液晶組成物を重合性組成物との比率(質量比)は90:10~40:60の範囲であることが好ましく、85:15~60:40であることがより好ましく、80:20~70:30であることが更により好ましい。
【0058】
重合開始剤の添加量としては、高分子分散型液晶組成物中に0.001~3質量%であることが好ましく、0.01~2質量%であることがより好ましく、0.1~1質量%であることが更により好ましい。
【0059】
本発明の高分子分散型液晶素子に用いる高分子分散型液晶組成物は、上述の化合物の他にも、添加剤等を適宜添加してもよい。添加剤としては、重合禁止剤、酸化防止剤、HALS等の光安定化剤、色素、2色性色素、蛍光色素等があげられる。
(実施例)
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は「質量%」を意味する。
【0060】
実施例中の高分子分散型液晶表示素子は以下の方法で作製した。
【0061】
液晶組成物が78質量%、重合性モノマー組成物が21.6質量%、光重合開始剤が0.4質量%らなる高分子分散型液晶組成物をセル厚10μmのITO付きガラスセル内に高分子分散型液晶組成物のアイソトロピック-ネマチック転移点より高い温度に保ち、該組成物をアイソトロピック状態で注入した。注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した後、所定の温度にコントロールし、必要に応じてUVカットフィルターを介し、照射強度が20mW/cm
2となるように調整されたメタルハライドランプを60秒間照射して、高分子分散型液晶表示素子を得た。UV照射の際、背面に
図1に示す背面板を設置した。
【0062】
UVカットフィルターは表1の厚さのソーダライムガラスを適宜用いた。
【0063】
【0064】
アイソトロピック状態でガラスセルに注入した後、表2の条件で1分間放置し、UV照射を行った。
【0065】
【0066】
背面版としては白いコピー紙((1)の領域)を用い、
図1の網掛け部分の(2)の領域に下記表3の条件の塗料を塗布した。なお、条件B1は塗布なしで(1)の白いコピー紙と同じ部材。条件B4は何もない状態、すなわち空気であり、(2)の下方30cmにはなにもない状態である(真空チャックを想定)。
【0067】
【0068】
実施例中に示される液晶組成物、高分子分散型液晶組成物の特性の略号、及び意味は以下の通りである。
【0069】
Tni(LC) :液晶組成物のネマチック相-等方性液体相転移温度(℃)
Δn :液晶組成物の25℃における屈折率異方性
Tni(PNM) :高分子分散型液晶組成物のネマチック相-等方性液体相転移温度(℃)
T0:セル厚10μm、25℃において、何もない(空気)の時の光量を100%とした場合の高分子分散型液晶素子の電圧OFF時の透過率(%)。
【0070】
T100:セル厚10μm、25℃において、何もない(空気)の時の光量を100%とした場合の高分子分散型液晶素子の50V印加時の透過率(%)。
【0071】
V90 :セル厚10μm、25℃において、電圧無印加時の高分子分散型液晶素子の光透過率(T0)を0%とし、50V印加時の光透過率(T100)を100%とした時、光透過率が90%となる印加電圧値(V)。
【0072】
評価方法は以下の通りである。
【0073】
転移点測定には、メトラートレド社製の温度コントロールシステムFP-90、及びホットステージFP82を用いた。
【0074】
T0、T100、V90測定には、大塚電子社製のLCD評価システムLCD-5200を用い、Bレンズ、アパーチャーSの条件にて測定した。その際、一つのセルにつき
図2のように升目ごとに100か所測定した。
【0075】
上記T0の評価値より、面内の透過率上位10%の平均値と(A)下位10%の平均値(B)を算出し(A-B)/B×100の値をムラ度合いとして評価した。
【0076】
また、目視でセル面内の透過率の差異が判断できるかも評価した。基準としては表4の通りである。
【0077】
【0078】
屈折率はアッペの屈折計(ATAGO社製)を用いた。
【0079】
365nmの反射率は日立製作所社製の紫外可視近赤外分光光度計U-4100を用いて365nmの反射率を用いた。
【0080】
紫外線強度はウシオ電機社製のUIT-250を用い、365nm、及び313nmのセンサーを用いて測定した。
【0081】
液晶組成物としては下記組成物を用いた。
【0082】
(液晶組成物LC1) Δn=0.226、Tni(LC)=87.4℃
【0083】
【0084】
(液晶組成物LC2) Δn=0.218、Tni(LC)=73.9℃
【0085】
【0086】
(液晶組成物LC3) Δn=0.219、Tni(LC)=83.8℃
【0087】
【0088】
(液晶組成物LC4) Δn=0.226、Tni(LC)=73.8℃
【0089】
【0090】
モノマー組成物としては、以下の化合物による組成物を用いた。
(モノマー組成物a)
【0091】
【0092】
光重合開始剤としては下記化合物を用いた。
【0093】
【0094】
(実施例1~12、比較例1~6)
表5~9に実施例、及び比較例1~6の条件、評価結果を記載する。表中の最大Ave.は面内の透過率T0の上位10%の平均値、及びその地点でT100とV90の平均値、最小Ave.は面内の透過率T0の下位10%の平均値及びその地点でT100とV90の平均値を表す。平均値は全体の平均値を表す。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
実施例、及び比較例の結果より、パネル裏面の反射条件により、表示素子の見た目に差異が生じることがわかり、液晶組成物により差異が変化することも理解できる。本発明の高分子分散型液晶表示素子の製造方法を採用することにより、電圧無印加時に目視において、ムラが全く分からないか、認識できない程度の、これまでにない特性が均一な高分子分散型液晶表示素子が作製できた。