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特許7235172塩化ビニル樹脂用可塑剤、塩化ビニル樹脂組成物及びその成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】塩化ビニル樹脂用可塑剤、塩化ビニル樹脂組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/20 20060101AFI20230301BHJP
   C08G 63/90 20060101ALI20230301BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20230301BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08G63/20
C08G63/90
C08L67/02
C08L27/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022533793
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2021022015
(87)【国際公開番号】W WO2022004320
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2020114756
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】野口 崇史
(72)【発明者】
【氏名】所 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/196396(WO,A1)
【文献】特開平09-208677(JP,A)
【文献】特開平10-045882(JP,A)
【文献】特開平09-031173(JP,A)
【文献】特開2012-214035(JP,A)
【文献】特開平11-012529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/20
C08G 63/90
C08L 27/06
C08L 67/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコールと、脂肪族ジカルボン酸と、炭素原子数4~18のモノアルコール及び/又は炭素原子数2~21のモノカルボン酸とを反応原料とするポリエステルである塩化ビニル樹脂用可塑剤であって、
前記グリコールは、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-オクタデカンジオールから選択される1種以上であり、
前記脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸から選択される1種以上であり、
前記ポリエステルは、数平均分子量が1,000~5,000の範囲であり、分子量600以下の成分が、ゲル浸透クロマトグラフィー測定における面積比率で0.5~3.0質量%の範囲である塩化ビニル樹脂用可塑剤。
【請求項2】
前記脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸及びセバシン酸からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の塩化ビニル樹脂用可塑剤。
【請求項3】
前記グリコールが、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の塩化ビニル樹脂用可塑剤。
【請求項4】
前記炭素原子数4~18のモノアルコールが、オクタノール、2-エチルヘキサノール及びイソノニルアルコールからなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の塩化ビニル樹脂用可塑剤。
【請求項5】
前記炭素原子数4~21のモノカルボン酸が、2-エチルヘキサン酸、水添ヤシ油脂肪酸及びラウリン酸からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の塩化ビニル樹脂用可塑剤。
【請求項6】
前記ポリエステルの数平均分子量が1,500~4,000の範囲である請求項1~5のいずれかに記載の塩化ビニル樹脂用可塑剤。
【請求項7】
エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-オクタデカンジオールから選択される1種以上のグリコールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸から選択される1種以上の脂肪族ジカルボン酸と、炭素原子数4~18のモノアルコール及び/又は炭素原子数4~21のモノカルボン酸とを反応させてポリエステルを合成し、
前記ポリエステルを薄膜蒸留して、薄膜蒸留後のポリエステルの数平均分子量が1,000~5,000の範囲であって、分子量600以下の成分をゲル浸透クロマトグラフィー測定における面積比率で0.5~3.0質量%の範囲とする塩化ビニル樹脂用可塑剤の製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の塩化ビニル樹脂用可塑剤及び塩化ビニル樹脂を含む塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項9】
前記塩化ビニル樹脂用可塑剤の含有量が、前記塩化ビニル樹脂100質量部に対して10~100質量部の範囲である請求項8に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の塩化ビニル樹脂用組成物の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル樹脂用可塑剤、塩化ビニル樹脂組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂(PVC)は代表的なプラスチックの1つであり、安価で耐熱性に優れるなどの物性を有するため、その用途は多岐にわたる。塩化ビニル樹脂は固く脆い性質を有するため、通常は可塑剤を添加して塩化ビニル樹脂を柔軟にしてから用いられる。
【0003】
塩化ビニル樹脂に用いられる代表的な可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル等の多塩基酸の高級アルキルエステルが知られており、価格及び性能バランスの観点からフタル酸エステルが使われるケースが多かった。
【0004】
フタル酸エステルでは対応できない耐熱性等の要求される用途では、フタル酸エステル以上の耐熱性を有するトリメリット酸エステルが使われている(例えば特許文献1)。中でも、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリノルマルオクチル、トリメリット酸トリノルマルデシル、トリメリット酸トリイソノニル及びトリメリット酸トリイソデシルエステル等は、耐熱性の非常に高い可塑剤であることから、耐熱電線、自動車用ワイヤーハーネス及び自動車用ダッシュボード等に多用されている。
【0005】
また、フタル酸エステルは人体への悪影響が懸念されており、フタル酸エステル以外の可塑剤の開発が求められている。例えば、特許文献2は、ポリエステルの塩化ビニル樹脂用可塑剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-089155号公報
【文献】特開平3-66727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動車用ダッシュボードや車両内装材に使用される塩化ビニル樹脂の可塑剤に対しては、ウレタン樹脂への可塑剤の非移行性、及び塩化ビニル樹脂から可塑剤が揮発しない耐フォギング性の要求が高まっており、上記トリメリット酸エステル可塑剤及びポリエステル可塑剤ではいずれも満足する性能は得られていなかった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、非移行性、耐フォギング性、柔軟性、耐熱性及び耐寒性のバランスに優れる塩化ビニル樹脂用可塑剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、低分子量成分を低減しつつも、低分子量成分を一定以上含むポリエステルは、塩化ビニル樹脂用可塑剤として優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、炭素原子数2~18のグリコールと、炭素原子数4~14の脂肪族ジカルボン酸と、炭素原子数4~18のモノアルコール及び/又は炭素原子数2~21のモノカルボン酸とを反応原料とするポリエステルである塩化ビニル樹脂用可塑剤であって、前記ポリエステルは、数平均分子量が500~6,000の範囲であり、分子量600以下の成分が、ゲル浸透クロマトグラフィー測定における面積比率で0.5~3.0質量%の範囲である塩化ビニル樹脂用可塑剤に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、非移行性、耐フォギング性、柔軟性、耐熱性及び耐寒性のバランスに優れる塩化ビニル樹脂用可塑剤が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
[塩化ビニル樹脂用可塑剤]
本発明の塩化ビニル樹脂用可塑剤は、炭素原子数2~18のグリコールと、炭素原子数4~14の脂肪族ジカルボン酸と、炭素原子数4~18のモノアルコール及び/又は炭素原子数2~21のモノカルボン酸とを反応原料とするポリエステルであり、前記ポリエステルは、数平均分子量が500~6,000であり、分子量600以下の成分が、ゲル浸透クロマトグラフィー測定における面積比率で0.5~3.0質量%の範囲である。
本発明の塩化ビニル樹脂用可塑剤であるポリエステルを、以下、単に「本発明のポリエステル」という場合がある。
【0014】
本発明のポリエステルは、数平均分子量を500~6,000の範囲とし、分子量600以下の成分を0.5~3.0質量%の範囲とすることで、非移行性及び耐フォギング性を向上させる同時に柔軟性及び耐寒性を担保することができる。本発明のポリエステルの分子量600以下の成分は、好ましくは1.0~3.0質量%の範囲であり、より好ましくは1.1~2.9質量%の範囲であり、さらに好ましくは1.1~2.8質量%の範囲である。
本発明のポリエステルについて、数平均分子量が500~6,000の範囲であること、及び、分子量600以下の成分が0.5~3.0質量の範囲であることは、実施例に記載のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により確認する。
【0015】
本発明のポリエステルは、炭素原子数2~18のグリコールと、炭素原子数4~14の脂肪族ジカルボン酸と、炭素原子数4~18のモノアルコール及び/又は炭素原子数4~21のモノカルボン酸とを反応原料を用いて得られるポリエステルである。
ここで「反応原料」とは、本発明のポリエステルを構成する原料という意味であり、ポリエステルを構成しない溶媒や触媒を含まない意味である。
【0016】
前記炭素原子数2~18のグリコールは、好ましくは炭素原子数2~18のアルキレングリコール又は炭素原子数2~18のオキシアルキレングリコールである。
【0017】
前記炭素原子数2~18のアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-オクタデカンジオール等が挙げられる。
【0018】
前記炭素原子数2~18のアルキレングリコールは、好ましくは炭素原子数3~10のアルキレングリコールであり、より好ましくは炭素原子数3~6のアルキレングリコールであり、さらに好ましくは1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールである。
【0019】
前記炭素原子数2~18のオキシアルキレングリコールは、例えば前記炭素原子数2~18のアルキレングリコールの炭素原子の1つを酸素原子に置き換えたものであり、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
前記炭素原子数2~18のオキシアルキレングリコールは、好ましくは炭素原子数3~10のオキシアルキレングリコールであり、より好ましくは炭素原子数4~10のオキシアルキレングリコールであり、さらに好ましくはジエチレングリコール又はトリエチレングリコールである。
【0020】
本発明のポリエステルの反応原料である炭素原子数2~18のグリコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記炭素原子数4~14の脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは炭素原子数4~14のアルキレンジカルボン酸であり、より好ましくは炭素原子数6~12のアルキレンジカルボン酸である。
【0022】
前記炭素原子数4~14のアルキレンジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。これらのうち、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸がより好ましく、アジピン酸、セバシン酸がさらに好ましく、アジピン酸が特に好ましい。
【0023】
本発明のポリエステルの反応原料である炭素原子数4~14のアルキレンジカルボン酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記炭素原子数4~18のモノアルコールは、好ましくは炭素原子数4~18の脂肪族モノアルコールである。
前記炭素原子数4~18の脂肪族モノアルコールとしては、ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール等が挙げられる。
【0025】
本発明のポリエステルの反応原料である前記炭素原子数4~18のモノアルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記炭素原子数2~21のモノカルボン酸は、好ましくは炭素原子数2~21の脂肪族モノカルボン酸である。
前記炭素原子数2~21の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば酢酸、カプロン酸、2-エチルヘキサン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸等が挙げられる。
【0027】
前記炭素原子数2~21のモノカルボン酸は、水添植物油脂肪酸であってもよい。当該水添植物油脂肪酸としては、水添ヤシ油脂肪酸、水添パーム核油脂肪酸、水添パーム油脂肪酸、水添オリーブ油脂肪酸、水添ヒマシ油脂肪酸、水添ナタネ油脂肪酸等が挙げられる。これらは、それぞれヤシ、パーム核、パーム、オリーブ、ヒマシ、ナタネから得られる油剤を分解及び水素添加して得られるものであり、いずれも炭素原子数8~21の脂肪族モノカルボン酸を含む2種以上の長鎖脂肪族モノカルボン酸の混合物である。
尚、本発明の効果を損なわない範囲で水素添加をしていない上記植物油脂肪酸を用いてもよい。また、植物油脂肪酸は上記に限定されない。
【0028】
本発明のポリエステルは、炭素原子数2~18のグリコールと、炭素原子数4~14の脂肪族ジカルボン酸と、炭素原子数4~18のモノアルコール及び/又は炭素原子数2~21のモノカルボン酸とを反応原料とすればよく、本発明の効果を損なわない範囲でこれら以外の原料を用いてもよい。
本発明のポリエステルの反応原料は、好ましくは炭素原子数2~18のグリコールと、炭素原子数4~14の脂肪族ジカルボン酸と、炭素原子数4~18のモノアルコール及び/又は炭素原子数2~21のモノカルボン酸とから実質的になり、より好ましくは炭素原子数2~18のグリコールと、炭素原子数4~14の脂肪族ジカルボン酸と、炭素原子数4~18のモノアルコール及び/又は炭素原子数2~21のモノカルボン酸とのみからなる。
【0029】
本発明のポリエステルは、pの値が互いに異なる下記式(1)で表される化合物の混合物、qの値が互いに異なる下記式(2)で表される化合物の混合物、及びrの値が互いに異なる下記式(3)で表される化合物の混合物からなる群から選択される1以上を含む。
【0030】
【化1】
(前記式(1)~(3)中、
Gは、炭素原子数2~18のグリコール残基である。
Aは、炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基である。
11及びS12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のモノカルボン酸残基である。
21及びS22は、それぞれ独立に、炭素原子数4~18のモノアルコール残基である。
31は、炭素原子数1~20のモノカルボン酸残基である。
32は、炭素原子数4~18のモノアルコール残基である。
p、q及びrは、それぞれ独立に、整数である。)
【0031】
本発明において「カルボン酸残基」とは、カルボン酸が有するカルボキシル基を除いた残りの有機基を示すものである。尚、「カルボン酸残基」の炭素原子数については、カルボキシ基中の炭素原子は含まないものとする。
本発明において「アルコール残基」とは、アルコールから水酸基を除いた残りの有機基を示すものである。
本発明において「グリコール残基」とは、グリコールから水酸基を除いた残りの有機基を示すものである。
【0032】
Gの炭素原子数2~18のグリコール残基は、本発明のポリエステルの反応原料である炭素原子数2~18のグリコールに対応する基である。
Aの炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基は、本発明のポリエステルの反応原料である炭素原子数4~14の脂肪族ジカルボン酸に対応する基である。
11、S12及びS31の炭素原子数1~20のモノカルボン酸残基は、本発明のポリエステルの反応原料である炭素原子数2~21のモノカルボン酸に対応する基である。
21、S22及びS32の炭素原子数4~18のモノアルコール残基は、本発明のポリエステルの反応原料である炭素原子数4~18のモノアルコールに対応する基である。
【0033】
p、q及びrのそれぞれの上限は、特に限定されないが例えば30である。
pの平均値は例えば3~20の範囲であり、qの平均値は例えば3~20の範囲であり、rの平均値は例えば3~20の範囲である。
尚、p、q及びrの平均値はポリエステルの数平均分子量から確認できる。
【0034】
本発明のポリエステルは、好ましくは前記式(1)で表される化合物のp=0の成分、前記式(2)で表される化合物のq=0の成分及び前記式(3)で表される化合物のr=0の成分の合計が、ゲル浸透クロマトグラフィー測定における面積比率で0.5~3.0質量%の範囲である。
【0035】
本発明のポリエステルの数平均分子量(Mn)は、500~6,000であり、好ましくは1,000~5,000であり、より好ましくは1,500~4,000であり、さらに好ましくは1,700~3,700である。
本発明のポリエステルの数平均分子量(Mn)は、実施例に記載の方法により確認する。
【0036】
本発明のポリエステルの酸価は、2.0以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。
本発明のポリエステルの水酸基価は、15以下が好ましく、10以下がより好ましい。
本発明のポリエステルの粘度は、7,000mPa・s以下が好ましく、5,000mPa・s以下がより好ましい。
本発明のポリエステルの酸価、水酸基価及び粘度は実施例に記載の方法にて確認する。
【0037】
[塩化ビニル樹脂用可塑剤の製造方法]
本発明の塩化ビニル樹脂用可塑剤は、炭素原子数2~18のグリコールと、炭素原子数4~14の脂肪族ジカルボン酸と、炭素原子数4~18のモノアルコール及び/又は炭素原子数4~21のモノカルボン酸とを反応させてポリエステルを合成し、前記合成したポリエステルを薄膜蒸留して、薄膜蒸留後のポリエステルに含まれる分子量600以下の成分を薄膜蒸留後ポリエステル全量に対して0.5~3.0質量の範囲とすることにより製造できる。
【0038】
薄膜蒸留前のポリエステルの合成方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができ、下記の製造方法により製造することができる。
【0039】
前記式(1)で表されるポリエステルは、例えば、下記に示す方法で得ることができる。
方法1:式(1)で表されるポリエステルの各残基を構成するモノカルボン酸、ジカルボン酸及びグリコールを一括で仕込み、これらを反応させる方法。
方法2:式(1)で表されるポリエステルの各残基を構成するジカルボン酸とグリコールとを、水酸基の当量がカルボキシル基の当量よりも多くなる条件下で反応させて水酸基を主鎖の末端に有するポリエステルを得た後、得られたポリエステル樹脂とS11及びS12を構成するモノカルボン酸とを反応させる方法。
【0040】
前記式(2)で表されるポリエステルは、例えば、下記に示す方法で得ることができる。
方法3:式(2)で表されるポリエステルの各残基を構成するモノアルコール、ジカルボン酸及びグリコールを一括で仕込み、これらを反応させる方法。
方法4:式(2)で表されるポリエステルの各残基を構成するジカルボン酸とグリコールとを、カルボキシル基の当量が水酸基の当量よりも多くなる条件下で反応させてカルボキシル基を主鎖の末端に有するポリエステルを得た後、得られたポリエステルとS21及びS22を構成するモノアルコールとを反応させる方法。
【0041】
前記式(3)で表されるポリエステルは、例えば、下記に示す方法で得ることができる。
方法4:式(3)で表されるポリエステルの各残基を構成するモノアルコール、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びグリコールを一括で仕込み、これらを反応させる方法。
方法5:式(3)で表されるポリエステルの各残基を構成するジカルボン酸とグリコールとを、カルボキシル基の当量と水酸基の当量が同じになる条件下で反応させてカルボキシル基と水酸基をそれぞれ主鎖の末端に有するポリエステルを得た後、得られたポリエステルとS31及びS32を構成するモノアルコール及びモノカルボン酸とを反応させる方法。
【0042】
ポリエステルの合成において、前記反応は、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば180~250℃の温度範囲内で5~25時間エステル化反応させるとよい。
尚、エステル化反応の温度、時間などの条件は特に限定されず、適宜設定してよい。
【0043】
前記エステル化触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;ジブチル錫オキサイド等のスズ系触媒;p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒等が挙げられる。
【0044】
前記エステル化触媒の使用量は、適宜設定すればよいが、通常、反応原料の全量100質量部に対して、好ましくは0.001~0.1質量部の範囲である。
【0045】
薄膜蒸留は、減圧下において、ある一定の温度に加熱された面上に蒸発原料を連続的に供給して均一な薄膜を形成させ、該蒸発原料をその面上にある間だけ加熱し、相対的に分子量の低い成分を瞬間的に蒸発させるとともに、相対的に分子量の高い成分を面上から回収する蒸留方法である。
合成したポリエステルの薄膜蒸留の実施は、例えば薄膜式蒸留装置、薄膜蒸発装置等を使用することにより実施できる。薄膜式蒸留装置には、流下膜式蒸留装置、遠心式蒸留装置等があるが、特に限定されず、いずれも使用できる。
【0046】
薄膜蒸留時の温度としては、例えば80~280℃の範囲であり、好ましくは150~250℃の範囲であり、より好ましくは180~250℃の範囲である。
薄膜蒸留時の真空度としては、例えば0.1~300Paの範囲であり、好ましくは0.1~150Paの範囲であり、より好ましくは0.1~100Paの範囲である。
真空度を低く設定することで薄膜蒸留の流速を上げることができ、当該流速と真空度のバランスをとることで、分子量600以下の成分を0.5~3.0質量%の範囲とすることができる。
【0047】
[塩化ビニル樹脂組成物]
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、本発明の塩化ビニル樹脂用可塑剤及び塩化ビニル樹脂を含有する。本発明において塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニリデンの単独重合体、塩化ビニルを必須成分とする共重合体、塩化ビニリデンを必須成分とする共重合体等を含む。
塩化ビニル樹脂が、塩化ビニルを必須成分とする共重合体又は塩化ビニリデンを必須成分とする共重合体である場合、共重合されうるコモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン等のα-オレフィン;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;ビニルアルコール、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、フマル酸、フマル酸エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル、マレイン酸無水物、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、イソプレノール等が挙げられる。
【0048】
塩化ビニル樹脂の重合度は、通常300~5,000であり、好ましくは400~3,500であり、より好ましくは700~3,000である。塩化ビニル樹脂の重合度が当該範囲にあることで、耐熱性が高い成形品が得られ、且つ、加工性に優れる塩化ビニル樹脂組成物とすることができる。
【0049】
塩化ビニル樹脂は、公知の方法で製造することができ、例えば、油溶性重合触媒の存在下での懸濁重合、水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下での乳化重合等が挙げられる。
塩化ビニル樹脂は、市販品を用いてもよい。塩化ビニル系樹脂の市販品としては、TH-640、TH-700、TH-800(以上、大洋塩ビ株式会社製);S-1004、S-1008、PSH-10(以上、株式会社カネカ製);TK-700、TK-800.TK-1300(以上、信越ポリマー株式会社製);ZEST800Z、ZEST1000Z、ZEST1300Z(以上、新第一塩ビ株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物における本発明の塩化ビニル樹脂用可塑剤の含有量は、塩化ビニル樹脂との相溶性等の観点から、塩化ビニル樹脂100質量部に対して好ましくは10~100質量部の範囲であり、より好ましくは30~100質量部の範囲であり、さらに好ましくは40~80質量部の範囲であり、特に好ましくは50~80質量部の範囲である。
【0051】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂と本発明の塩化ビニル樹脂用可塑剤を含有すればよく、本発明の塩化ビニル樹脂用可塑剤以外の可塑剤(その他可塑剤)、その他の添加剤等を含有してもよい。
【0052】
前記その他可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル;フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)等のフタル酸エステル;テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)等のテレフタル酸エステル;イソフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOIP)等のイソフタル酸エステル;ピロメリット酸テトラ-2-エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル;アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル;リン酸トリ-2-エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル;ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800~4,000のポリエステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化エステル;ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニルエステル等の脂環式二塩基酸;ジカプリン酸1.4-ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル;アセチルクエン酸トリブチル(ATBC);パラフィンワックスやn-パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン;塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル;オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0053】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物に前記その他の可塑剤を用いる場合、当該その他の可塑剤の含有量としては、本発明の塩化ビニル樹脂用可塑剤100質量部に対して例えば10~300質量部の範囲であり、好ましくは20~200質量部の範囲である。
【0054】
前記その他添加剤としては、例えば、難燃剤、安定剤、安定化助剤、着色剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、架橋助剤等を例示することができる。
【0055】
前記難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物;クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート等のリン系化合物;塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。
難燃剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1~20質量部の範囲である。
【0056】
前記安定剤としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸化合物;ジメチルスズビス-2-エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズビスブチルマレエート、ジブチルスズジラウレート等の有機錫系化合物;アンチモンメルカプタイド化合物;酸化ランタン、水酸化ランタン等のランタノイド含有化合物等が例示される。
安定剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1~20質量部の範囲である。
【0057】
前記安定化助剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト等のホスファイト系化合物;アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のベータジケトン化合物;グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物;過塩素酸バリウム塩、過塩素酸ナトリウム塩等の過塩素酸塩化合物;ハイドロタルサイト化合物;ゼオライト等が例示される。
安定化助剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1~20質量部の範囲である。
【0058】
前記着色剤としては、例えば、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べにがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙等が例示される。
着色剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して1~100質量部の範囲である。
【0059】
前記加工助剤としては、例えば、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアエレート、ステアリン酸カルシウム等が例示される。
加工助剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1~20質量部の範囲である。
【0060】
前記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライト等の金属酸化物;ガラス、炭素、金属等の繊維及び粉末;ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。
充填剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して1~100質量部の範囲である。
【0061】
前記酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、テトラキス[メチレン-3-(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のフェノール系化合物;アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾール等の硫黄系化合物;トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン酸系化合物;ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛等の有機金属系化合物等が例示される。
酸化防止剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.2~20質量部の範囲である。
【0062】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート等のサリシレート系化合物;2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、1-ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物等が例示される。
紫外線吸収剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1~10質量部の範囲である。
【0063】
前記光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤が例示できる。具体的には、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジル)エステル及び1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ{(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル){(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N'-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N',N'',N'''-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン等が例示される。
光安定剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1~10質量部の範囲である。
【0064】
前記滑剤としては、例えば、シリコーン、流動パラフィン、バラフィンワックス、ステアリン酸金属やラウリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩;脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が例示される。
滑剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1~10質量部の範囲である。
【0065】
前記帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤;ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤;アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤;アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤等が例示される。
帯電防止剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.1~10質量部の範囲である。
【0066】
前記架橋助剤としては、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、ジビニルベンゼンジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリメトキシエトキシビニルシラン等の多官能モノマーがあげられ、
架橋助剤を塩化ビニル樹脂組成物に配合する場合、その配合量は通常塩化ビニル樹脂100質量部に対して0.5~30質量部の範囲である。
【0067】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、公知の方法で製造することができる。
例えば、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂、本発明の塩化ビニル樹脂用可塑剤及び任意成分(前記その他可塑剤及び前記その他添加剤)をブレンダー、プラネタリーミキサー、バンバリーミキサー等の混錬機を用いて混合することにより調製することができる。
【0068】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物を、真空成形、圧縮成形、押出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形等の公知の成形方法で成形することにより成形品が得らえる。
【0069】
本発明の塩化ビニル樹脂組成物を用いて得られる成形品は、例えば絶縁テープ、絶縁シート、配線コネクタ、導線被覆材、水道管などのパイプ類、パイプ用の継手類、雨樋などの樋類、窓枠サイディング、平板、波板、自動車アンダーボディコート、ダッシュボード、インストルメントパネル、コンソール、ドアシート、アンダーカーペット、トランクシート、ドアトリム類などの自動車装材、各種レザー類、装飾シート、農業用フィルム、食品包装用フィルム、各種発泡製品、ホース、医療用チューブ、食品用チューブ、冷蔵庫用ガスケット、パッキン類、壁紙、床材、ブーツ、カーテン、靴底、手袋、止水板、玩具、化粧板、血液バック、輸液バック、ターポリン、マット類、遮水シート、土木シート、ルーフィング、防水シート、工業用テープ、ガラスフィルム、字消し等に用いることができる。
【実施例
【0070】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例に限定されない。
【0071】
本願実施例において、酸価及び粘度の値は、下記方法により評価した値である。
<酸価の測定方法>
JIS K0070-1992に準じた方法により測定した。
<粘度の測定方法>
JIS K6901-1986に準じた方法により測定した。
【0072】
本願実施例において、ポリエステルの数平均分子量は、GPC測定に基づきポリスチレン換算した値であり、測定条件は下記の通りである。
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC-8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ-L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料7.5mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC-8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0073】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-300」
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
【0074】
(実施例1:ポリエステル可塑剤Aの合成)
反応容器に、アジピン酸597g(4.09モル)、3-メチル1,5-ペンタンジオール448g(3.80モル)、イソノニルアルコール177g(1.23モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温した。酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰のイソノニルアルコールを減圧留去した後、得られた反応物を薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、1.8kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤A(Mn3,288、酸価0.2、粘度3,585mPa・s(25℃))を905g得た。
得られたポリエステル可塑剤Aに含まれる分子量が600以下の成分は、面積比率で1.3質量%であった。
【0075】
(塩化ビニル樹脂組成物(1)の調製)
塩化ビニル樹脂(重合度1,000、ZEST1000Z、新第一塩ビ株式会社製)100質量部、得られたポリエステル可塑剤Aを50質量部、充填剤(グレッグMP-677D(カルシウム/亜鉛系複合安定剤)、日辰貿易株式会社製)4質量部を混合し、塩化ビニル樹脂組成物(1)を得た。得られた塩化ビニル樹脂組成物(1)を用いて以下の評価を行った。
【0076】
(可塑剤の可塑化性能の評価)
170℃に加熱した2本ロールで調製した塩化ビニル樹脂組成物(1)を10分混錬した後、混錬後の塩化ビニル樹脂組成物(1)を1.0mm厚の成形品が得られる金型(1.0mm厚金型)と170℃に熱したプレス機とを用いて成形し、1.0mm厚のシートを作製した。
【0077】
得られたシートについて、JISK6251:2010に従って100%モジュラス(伸び100%時の引張応力)及び破断伸び率を評価した。具体的には、1.0mm厚のシートを用いて、下記条件にて引張試験を実施し、100%モジュラス及び破断伸び率を評価した。結果を表1に示す。
尚、破断伸び率は、1.0mm厚シートが引張破断した時のチャック間距離から初期のチャック間距離20mmを引いた値をチャック間距離20mmで除して百分率で表したものである。
測定機器 :テンシロン万能材料試験機(株式会社オリエンテック製)
サンプル形状 :ダンベル状3号形
チャック間距離:20mm
引張速度 :200mm/分
測定雰囲気 :温度23度、湿度50%
【0078】
100%モジュラスの値が低いほど、塩化ビニル樹脂を可塑化させる効果が高いことを示す。また、破断伸び率が高いほど、塩化ビニル樹脂を可塑化させる効果が高いことを示す。
【0079】
(成形品の耐熱性能の評価)
170℃に加熱した2本ロールで調製した塩化ビニル樹脂組成物(1)を10分混錬した後、混錬後の塩化ビニル樹脂組成物(1)を1.0mm厚の成形品が得られる金型(1.0mm厚金型)と170℃に熱したプレス機とを用いて成形し、1.0mm厚のシートを作製した。作製した1.0mm厚のシートから、JISK6251:2010に従い、ダンベル状3号形のダンベル試験片を作製した。
【0080】
作製したダンベル試験片について、JISK6257:2017に従って136℃×168時間の熱老化試験を行った。熱老化試験前後のダンベル試験片の質量をそれぞれ測定し、減量率((熱老化試験前の質量-熱老化試験後の質量)/熱老化試験前の質量)を算出した。結果を表1に示す。
減量率が小さい程、熱老化試験後においてもポリエステル可塑剤Aが成形品内に留まっており、ポリエステル可塑剤Aによる耐熱性の効果が期待できる。
【0081】
前記熱老化試験後のダンベル試験片について、可塑化効果の評価のときと同様にして破断伸び率を評価し、熱老化試験後のダンベル試験片の伸び率/熱老化試験前のダンベル試験片の伸び率を「伸び残率」として評価した。結果を表1に示す。
この伸び残率が高い程、熱老化試験後も可塑化効果を保持でき、耐熱性に優れる塩化ビニル樹脂組成物と言える。
【0082】
(成形品の低温柔軟性の評価)
170℃に加熱した2本ロールで調製した塩化ビニル樹脂組成物(1)を10分混錬した後、混錬後の塩化ビニル樹脂組成物(1)を1.0mm厚の成形品が得られる金型(1.0mm厚金型)と170℃に熱したプレス機とを用いて成形し、1.0mm厚のシートを作製した。
得られたシートについて、JISK6773:2007に規定される試験方法に準じて試験片を作製し、クラッシュバーグ柔軟温度測定試験機を用いて柔軟温度(単位:℃)を評価した。結果を表1に示す。柔軟温度が低いほど、耐寒性に優れることを表す。
【0083】
(可塑剤の非移行性の評価)
170℃に加熱した2本ロールで調製した塩化ビニル樹脂組成物(1)を10分混錬した後、混錬後の塩化ビニル樹脂組成物(1)を1.0mm厚の成形品が得られる金型(1.0mm厚金型)と170℃に熱したプレス機とを用いて成形し、1.0mm厚のシートを作製した。
得られた1.0mm厚のシートについて、6.0mm×38mmサイズに打抜いたものを試験片とした。この試験片を2枚のアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)板、2枚の耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)板、2枚のアクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)板、2枚のポリウレタン樹脂(PU)板のそれぞれでサンドイッチ状に挟み、0.22kg/cmの加重を掛けながら70℃×72時間保持した。ABS板、HIPS板、AS板、PU板それぞれへの可塑剤の移行による汚染度合いを目視にて下記基準で評価した。結果を表1に示す。
〇:樹脂板への移行痕跡無し、又は痕跡があってもエタノール含浸ガーゼによる拭き取りで痕跡が消える
×:明らかに可塑剤の移行による痕跡が有り、エタノール含浸ガーゼによる拭き取りでも痕跡が消えない
【0084】
(可塑剤の相溶性の評価)
170℃に加熱した2本ロールで調製した塩化ビニル樹脂組成物(1)を10分混錬した後、混錬後の塩化ビニル樹脂組成物(1)を1.0mm厚の成形品が得られる金型(1.0mm厚金型)と170℃に熱したプレス機とを用いて成形し、1.0mm厚のシートを作製した。このシートから5cm×5cmの大きさに切断した1.0mm厚のシートを2枚作製した。作製した2枚のシートを重ね、70℃で相対湿度95%の条件下で30日間放置した。その後、シートの表面及びシート同士が重なっている面の状態を下記評価基準で評価した。結果を表1に示す。
〇:シートの表面及びシート同士が重なっている面を目視で確認し、粉状や粘性状等の異物(ブリード)が確認できず、且つ、シートの表面及びシート同士が重なっている面を指で触れてもブリードが確認できない。
×:シートの表面及びシート同士が重なっている面を目視で確認し、ブリードが確認できる、または、シートの表面及びシート同士が重なっている面を指で触れてブリードが確認できる。
【0085】
(可塑剤の耐フォギング性の評価)
ポリエステル可塑剤Aの耐フォギング性をDIN75201に従って評価した、具体的には、10gのポリエステル可塑剤Aをガラス製サンプル瓶に入れ、100℃に温度調節したフォギング試験機(Thermo Scientific製 Horizon Fog Testing System PC-FTS/PC200-A25)にセットした。前記サンプル瓶をアルミ箔で蓋をした後、100℃で16時間熱処理を実施した。熱処理後、21℃まで冷却し4時間静置した。アルミ箔の増加重量により耐フォギング性を評価した。結果を表1に示す。
増加重量が低い程、耐フォギング性に優れることを表す。
【0086】
(実施例2:ポリエステル可塑剤Bの合成)
反応容器に、アジピン酸597g(4.09モル)、3-メチル1,5-ペンタンジオール265g(2.25モル)、ネオペンチルグリコール80g(0.77モル)、1,4-ブタンジオール73g(0.81モル)、2-エチルヘキサノール114g(0.88モル)、ヤシ油54g(0.08モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰の2-エチルヘキサノールを減圧留去した後、薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、1.8kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤B(Mn3,137、酸価0.5、粘度3,244mPa・s(25℃))を898g得た。
得られたポリエステル可塑剤Bの分子量が600以下の成分は1.9質量%であった。
【0087】
尚、上記ヤシ油は、ラウリン酸(炭素原子数12)を主成分とし、オクタン酸(炭素原子数8)、カプリン酸(炭素原子数10)、ミリスチン酸(炭素原子数14)、パルミチン酸(炭素原子数16)、オクタデカン酸(炭素原子数18)等を含む混合物である。
【0088】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Bを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(2)を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例3:ポリエステル可塑剤Cの合成)
反応容器に、アジピン酸489g(3.35モル)、3-メチル1,5-ペンタンジオール412g(3.49モル)、2-エチルヘキサノール35g(0.27モル)、ヤシ油222g(0.33モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰の2-エチルヘキサノールを減圧留去した後、薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、1.8kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤C(Mn3,028、酸価0.4、粘度2,230mPa・s(25℃))を873g得た。
得られたポリエステル可塑剤Cの分子量が600以下の成分は、1.8質量%であった。
【0090】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Cを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(3)を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例4:ポリエステル可塑剤Dの調製)
反応容器に、アジピン酸596g(4.08モル)、ネオペンチルグリコール284g(2.73モル)、1,4-ブタンジオール61g(0.68モル)、2-エチルヘキサノール282g(2.17モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰の2-エチルヘキサノールを減圧留去した後、薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、1.8kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤D(Mn1,976、酸価0.3、粘度1,578mPa・s(25℃))を849g得た。
得られたポリエステル可塑剤Dの分子量が600以下の成分は、2.0質量%であった。
【0092】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Dを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(4)を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例5:ポリエステル可塑剤Eの合成)
反応容器に、アジピン酸597g(4.09モル)、3-メチル1,5-ペンタンジオール265g(2.25モル)、ネオペンチルグリコール80g(0.77モル)、1,4-ブタンジオール73g(0.81モル)、2-エチルヘキサノール114g(0.88モル)、ヤシ油54g(0.08モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰の2-エチルヘキサノールを減圧留去した後、薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、1.5kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤E(Mn3,232、酸価0.5、粘度3,511mPa・s(25℃))を889g得た。
得られたポリエステル可塑剤Eの分子量が600以下の成分は、1.2質量%であった。
【0094】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Eを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(5)を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0095】
(実施例6:ポリエステル可塑剤Fの合成)
反応容器に、アジピン酸597g(4.09モル)、3-メチル1,5-ペンタンジオール265g(2.25モル)、ネオペンチルグリコール80g(0.77モル)、1,4-ブタンジオール73g(0.81モル)、2-エチルヘキサノール114g(0.88モル)、ヤシ油54g(0.08モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰の2-エチルヘキサノールを減圧留去した後、薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、6.0kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤F(Mn2,944、酸価0.5、粘度3,003mPa・s(25℃))を902g得た。
得られたポリエステル可塑剤Fの分子量が600以下の成分は、2.3質量%であった。
【0096】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Fを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(6)を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例7:ポリエステル可塑剤Gの合成)
反応容器に、アジピン酸597g(4.09モル)、3-メチル1,5-ペンタンジオール265g(2.25モル)、ネオペンチルグリコール80g(0.77モル)、1,4-ブタンジオール73g(0.81モル)、2-エチルヘキサノール114g(0.88モル)、ヤシ油54g(0.08モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰の2-エチルヘキサノールを減圧留去した後、薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、7.8kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤G(Mn2,861、酸価0.5、粘度2,915mPa・s(25℃))を910g得た。
得られたポリエステル可塑剤Gの分子量が600以下の成分は、2.7質量%であった。
【0098】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Gを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(7)を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例8:ポリエステル可塑剤Hの合成)
反応容器に、アジピン酸680.3g(4.66モル)、2-メチル1,3-プロパンジオール394.2g(4.38モル)、イソノニルアルコール168.7g(0.88モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰のイソノニルアルコールを減圧留去した後、薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、1.8kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤H(Mn3,331、酸価0.2、粘度6,360mPa・s(25℃))を872g得た。
得られたポリエステル可塑剤Hの分子量が600以下の成分は、1.7質量%であった。
【0100】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Hを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(8)を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0101】
(実施例9:ポリエステル可塑剤Iの合成)
反応容器に、アジピン酸584g(4.0モル)、1,2-プロパンジオール418g(5.5モル)を、温度計、撹拌器、および還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃まで段階的に昇温した。次いで、水添ヤシ油硬化脂肪酸410g(2.0モル)、エステル化触媒としてテトライソプロポキシチタン0.1gを加え、生成する水を連続的に除去した。反応後、同温度で減圧留去した後、得られた反応物を薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、0.6kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤I(Mn2,160、粘度792mPa・s、酸価0.3、水酸基価5.6)を得た。
得られたポリエステル可塑剤Iの分子量が600以下の成分は、2.9質量%であった。
【0102】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Iを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(9)を調製し、評価した。結果を表2に示す。
【0103】
(実施例10:ポリエステル可塑剤Jの合成)
反応容器に、セバシン酸1,010g(5.0モル)、2-メチル-1,3-プロパンジオール396g(4.4モル)を、温度計、撹拌器、および還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃まで段階的に昇温した。次いで、イソノニルアルコール317g(2.2モル)、エステル化触媒としてテトライソプロポキシチタン0.1gを加え、生成する水を連続的に除去した。反応後、同温度で減圧留去した後、得られた反応物を薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、0.6kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤J(Mn2,172、粘度963mPa・s、酸価0.2、水酸基価5.2)を得た。
得られたポリエステル可塑剤Jの分子量が600以下の成分は、2.8質量%であった。
【0104】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Jを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(10)を調製し、評価した。結果を表2に示す。
【0105】
(実施例11:ポリエステル可塑剤Kの合成)
反応容器に、セバシン酸808g(4.0モル)、1,2-プロパンジオール418g(5.5モル)を、温度計、撹拌器、および還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃まで段階的に昇温した。次いで、水添ヤシ油脂肪酸410g(2.0モル)、エステル化触媒としてテトライソプロポキシチタン0.1gを加え、生成する水を連続的に除去した。反応後、同温度で減圧留去した後、得られた反応物を薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、0.6kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤K(Mn2,125、粘度867mPa・s、酸価0.2、水酸基価9.0)を得た。
得られたポリエステル可塑剤Kの分子量が600以下の成分は、2.9質量%であった。
【0106】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Kを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(11)を調製し、評価した。結果を表2に示す。
【0107】
(実施例12:ポリエステル可塑剤Lの合成)
反応容器に、セバシン酸808g(4.0モル)、1,3-プロパンジオール209g(2.75モル)、ネオペンチルグリコール286g(2.75モル)を、温度計、撹拌器、および還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃まで段階的に昇温した。次いで、ラウリン酸400g(2.0モル)、エステル化触媒としてテトライソプロポキシチタン0.1gを加え、生成する水を連続的に除去した。反応後、同温度で減圧留去した後、得られた反応物を薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、0.6kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤L(Mn2,262、粘度893mPa・s、酸価0.4、水酸基価4.9)を得た。
得られたポリエステル可塑剤Lの分子量が600以下の成分は、2.7質量%であった。
【0108】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Lを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(12)を調製し、評価した。結果を表2に示す。
【0109】
(実施例13:ポリエステル可塑剤Mの合成)
反応容器に、セバシン酸808g(4.0モル)、1,2-プロパンジオール209g(2.75モル)、1,6-ヘキサンジオール324.5g(2.75モル)を、温度計、撹拌器、および還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃まで段階的に昇温した。次いで、水添ヤシ油脂肪酸410g(2.0モル)、エステル化触媒としてテトライソプロポキシチタン0.1gを加え、生成する水を連続的に除去した。反応後、同温度で減圧留去した後、得られた反応物を薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、0.6kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤M(Mn2,437、粘度1466mPa・s、酸価0.2、水酸基価4.1)を得た。
得られたポリエステル可塑剤Mの分子量が600以下の成分は、2.6質量%であった。
【0110】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Mを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(13)を調製し、評価した。結果を表2に示す。
【0111】
(比較例1)
可塑剤Aの代わりに可塑剤N(トリ2エチルヘキシルトリメリテート、酸価0.1、粘度210mPa・s(25℃)、DIC株式会社製モノサイザーW-705)を用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(1’)を調製し、評価した。結果を表3に示す。
【0112】
(比較例2)
可塑剤Aの代わりに可塑剤O(トリノルマルオクチルトリメリテート、酸価0.1、粘度90mPa・s(25℃)、DIC株式会社製モノサイザーW-755)を用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(2’)を調製し、評価した。結果を表3に示す。
【0113】
(比較例3:ポリエステル可塑剤Pの合成)
反応容器に、アジピン酸597g(4.09モル)、3-メチル1,5-ペンタンジオール448g(3.80モル)、イソノニルアルコール177g(1.23モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰のイソノニルアルコールを減圧留去することによって、ポリエステル可塑剤P(Mn3,048、酸価0.2、粘度3,300mPa・s(25℃))を965g得た。
得られたポリエステル可塑剤Pの分子量が600以下の成分は、3.7質量%であった。
【0114】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Pを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(3’)を調製し、評価した。結果を表3に示す。
【0115】
(比較例4:ポリエステル可塑剤Qの合成)
反応容器に、アジピン酸597g(4.09モル)、3-メチル1,5-ペンタンジオール265g(2.25モル)、ネオペンチルグリコール80g(0.77モル)、1,4-ブタンジオール73g(0.81モル)、2-エチルヘキサノール114g(0.88モル)、ヤシ油54g(0.08モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰の2-エチルヘキサノールを減圧留去することによって、ポリエステル可塑剤Q(Mn2,655、酸価0.5、粘度2,614mPa・s(25℃))を944g得た。
得られたポリエステル可塑剤Qの分子量が600以下の成分は、3.7質量%であった。
【0116】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Qを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(4’)を調製し、評価した。結果を表3に示す。
【0117】
(比較例5:ポリエステル可塑剤Rの合成)
反応容器に、アジピン酸596g(4.08モル)、ネオペンチルグリコール284g(2.73モル)、1,4-ブタンジオール61g(0.68モル)、2-エチルヘキサノール282g(2.17モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰の2-エチルヘキサノールを減圧留去することによって、ポリエステル可塑剤R(Mn1,677、酸価0.2、粘度1,033mPa・s(25℃))を929g得た。
得られたポリエステル可塑剤Rの分子量が600以下の成分は、7.8質量%であった。
【0118】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Rを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(5’)を調製し、評価した。結果を表3に示す。
【0119】
(比較例6:ポリエステル可塑剤Sの合成)
反応容器に、アジピン酸597g(4.09モル)、3-メチル1,5-ペンタンジオール265g(2.25モル)、ネオペンチルグリコール80g(0.77モル)、1,4-ブタンジオール73g(0.81モル)、2-エチルヘキサノール114g(0.88モル)、ヤシ油54g(0.08モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰の2-エチルヘキサノールを減圧留去した後、薄膜蒸留装置にて230℃、30Pa、9.6kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤S(Mn2,793、酸価0.5、粘度2,870mPa・s(25℃))を926g得た。
得られたポリエステル可塑剤Sの分子量が600以下の成分は、3.1質量%であった。
【0120】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Sを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(6’)を調製し、評価した。結果を表3に示す。
【0121】
(比較例7:ポリエステル可塑剤Tの合成)
反応容器に、アジピン酸597g(4.09モル)、3-メチル1,5-ペンタンジオール265g(2.25モル)、ネオペンチルグリコール80g(0.77モル)、1,4-ブタンジオール73g(0.81モル)、2-エチルヘキサノール114g(0.88モル)、ヤシ油54g(0.08モル)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを、温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら230℃まで段階的に昇温し、酸価が4以下になるまで230℃で加熱を続け、生成する水を連続的に除去した。反応後、230~200℃で過剰の2-エチルヘキサノールを減圧留去した後、薄膜蒸留装置にて230℃、0.05Pa、0.4kg/hrの条件で処理することによって、ポリエステル可塑剤T(Mn3,766、酸価0.2、粘度4,173mPa・s(25℃))を847g得た。
得られたポリエステル可塑剤Tの分子量が600以下の成分は、0.1質量%以下であった。
【0122】
可塑剤Aの代わりに可塑剤Tを用いた他は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物(7’)を調製し、評価した。結果を表3に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
表1-3から、比較例1及び2のトリメリット酸エステル可塑剤では、非移行性が得られないことが分かった。また、比較例3-6の分子量600以下の成分が3.0質量%超のポリエステル可塑剤では、耐フォギング性が得られないこと、並びに比較例7の分子量600以下の成分が0.5質量%未満のポリエステル可塑剤では、耐寒性が得られないことが分かった。