(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】水性樹脂組成物、コーティング剤及び接着剤
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20230301BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20230301BHJP
C08F 283/00 20060101ALI20230301BHJP
C09J 109/00 20060101ALI20230301BHJP
C09D 109/00 20060101ALI20230301BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20230301BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08L75/04
C08L9/00
C08F283/00
C09J109/00
C09D109/00
C09J175/04
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2022546162
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2021028036
(87)【国際公開番号】W WO2022049938
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2020146688
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】宮宅 潤一
(72)【発明者】
【氏名】山本 辰弥
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00-75/16
C08L 9/00
C08F 283/00
C09J 109/00
C09D 109/00
C09J 175/04
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合樹脂(A)及び水性媒体(B)を含む水性樹脂組成物
の製造方法であって、
前記複合樹脂(A)が、ビニル重合体(A1)と、ウレタン樹脂(A2)とを含むものであり、
前記ビニル重合体(A1)が、共役ジエン化合物(a1)を含むビニル単量体(a)に由来する単位を有するものであり、
前記ウレタン樹脂(A2)が、ヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するものであり、
前記複合樹脂(A)が、ヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するものであり、
前記複合樹脂(A)が、前記ウレタン樹脂(A2)の存在下、前記水性媒体(B)中で前記ビニル単量体(a)を一括乳化重合したものである水性樹脂組成物
の製造方法。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A2)の含有量が、前記ビニル重合体(A1)1質量部に対して、0.1質量部以上、100質量部以下である請求項1記載の水性樹脂組成物
の製造方法。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂(A2)の重量平均分子量が、5,000以上500,000以下である請求項1又は2記載の水性樹脂組成物
の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の水性樹脂組成物
の製造方法にて得た水性樹脂組成物を含む接着剤
の製造方法。
【請求項5】
ゴム用接着剤である請求項4記載の接着剤
の製造方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項記載の水性樹脂組成物
の製造方法にて得た水性樹脂組成物を含むコーティング剤
の製造方法。
【請求項7】
紙基材用である請求項6記載のコーティング剤
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性樹脂組成物、コーティング剤及び接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水性樹脂組成物は、紙塗工・含浸加工、繊維・不織布、カーペット、土木建材、モルタルセメント、自動車用部品、タイヤコード、塗料、ペースト、防錆コーティング、接着剤、プラスチック改質、化粧用パフ、電子材料、接着剤(一般、ゴム用)、コーティング・含浸(不織布・紙)、繊維含浸・補強繊維加工(カーペット等)、防湿・耐水コーティング、セメント・モルタル、建材加工・木質接着、合成皮革、人工皮革、手袋、避妊具、インキ用受理剤、インキ用分散剤等の多様な用途に用いられている。
【0003】
前記水性樹脂組成物には、用途に応じ、多様な特性が求められており、異なる樹脂を組み合わせた水性樹脂組成物が提案されている。例えば、特許文献1には、ビニル重合体セグメントと、酸基および/又は塩基性化合物で中和された酸基を有するポリウレタンセグメントとから構成されるブロック共重合体を含む水性樹脂が記載されている。また特許文献2には、ジエン系不飽和単量体をシードラテックス存在下でシード重合して得られるラテックスと、水性ポリウレタンとを含む組成物が記載されている。特許文献3には、同一ミセル内に、水酸基含有共役ジエン重合体の水素添加誘導体と、他の水性樹脂とを含有する樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-199968号公報
【文献】特開2004-231852号公報
【文献】特開2004-224868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の複合樹脂は、複合されている樹脂の双方の特性を併せ持つと予想され、接着剤としての利用が検討されている。しかしながら、異種基材、例えば、ゴム基材と樹脂基材等との間の接着に際しては、従来から知られる複合樹脂では、その接着力が十分に満足することができるものではなく、ガスバリア性(例えば、水蒸気、酸素等)が十分に満足できるものではない場合があった。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、異種基材、例えば、ゴム基材と樹脂基材等との間の接着に際しても、強固な接着力を発揮し、かつガスバリア性(例えば、水蒸気、酸素等)が良好な水性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、複合樹脂として、特定の樹脂の組合せを用いることで、塗工時は均質であるものの、加熱圧着時、複合樹脂に含まれる複数の樹脂間で相分離が生じ、基材の種類に応じて偏析することで、接着力を向上可能であること、また、複合樹脂に含まれるヒドロキシ基、チオール基が水素結合を形成することで、ガスバリア性(例えば、水蒸気、酸素等)が抑制されうることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明の水性樹脂組成物は、複合樹脂(A)及び水性媒体(B)を含み、前記複合樹脂(A)が、ビニル重合体(A1)と、ウレタン樹脂(A2)とを含むものであり、前記ビニル重合体(A1)が、共役ジエン化合物に由来する単位を含むものであり、前記複合樹脂(A)が、ヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性樹脂組成物を用いることで、接着剤として用いた場合には、異種基材、例えば、ゴム基材と樹脂基材等との間の接着に際しても、強固な接着力を発揮し得、コーティング剤として用いた場合には、ゴム基材との密着性が良好でありながら、表面性状を自由に調整可能であり、かつ、ガスバリア性(例えば、水蒸気、酸素等)が良好なものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の水性樹脂組成物は、複合樹脂(A)及び水性媒体(B)を含む。前記複合樹脂(A)は、ビニル重合体(A1)と、ウレタン樹脂(A2)とを含むものであり、ヒドロキシ基及び/又はチオール基を有する。前記複合樹脂(A)において、ビニル重合体(A1)及びウレタン樹脂(A2)の少なくとも一方がヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するものであることが好ましく、少なくともウレタン樹脂(A2)がヒドロキシ基を有するものであることが好ましい。また、ビニル重合体(A1)及びウレタン樹脂(A2)の双方がヒドロキシ基を有するものであってもよい。
【0011】
前記ヒドロキシ基及びチオール基の官能基価の合計は、好ましくは5,000g/mol以下、より好ましくは4,000g/mol以下、さらに好ましくは3,000g/mol以下であり、例えば10g/mol以上、30g/mol以上、50g/mol以上であってもよい。
【0012】
前記ビニル重合体(A1)は、ビニル単量体(a)に由来する単位を有する重合体を表す。前記ビニル単量体(a)は、1分子中に、少なくとも1つの重合性ビニル結合を有する化合物を表す。前記ビニル単量体(a)は、1種又は2種以上を用いることができ、共役ジエン化合物(a1)を含み、ヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するビニル化合物(a2)及びその他のビニル化合物(a3)を含んでいてもよく、グリシジル基を有するビニル化合物(a3)を含んでいてもよい。前記ビニル単量体(a)として、ヒドロキシ基及び/又はチオール基を有する化合物(a2)を含むこと、あるいは、前記ビニル単量体(a)として、グリシジル基を有する化合物(a3)を用い、該グリシジル基とヒドロキシ基及び/又はチオール基を合計2個以上有する化合物をさらに反応させることで、前記複合樹脂(A)がヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するものとすることができる。
【0013】
前記ジエン化合物(a1)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。
【0014】
前記共役ジエン化合物(a1)の含有率は、ビニル単量体(a)全量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0015】
前記ヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するビニル化合物(a2)は、ヒドロキシ基及び/又はチオール基と、ビニル基とを有する化合物を表す。該ヒドロキシ又はチオール基を有するビニル化合物(a2)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシ基含有モノマー;2-スルファニルエチル(メタ)アクリレート、2-スルファニルプロピル(メタ)アクリレート、2-スルファニルブチル(メタ)アクリレート、4-スルファニルブチル(メタ)アクリレート、2-スルファニルエチルビニルエーテル、4-スルファニルブチルビニルエーテル、2-スルファニルエチルアリルエーテル等のチオール基含有モノマーなどが挙げられる。
【0016】
前記ヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するビニル化合物(a2)の含有率は、前記ビニル単量体(a)全量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0017】
前記グリシジル基を有すビニル化合物(a3)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0018】
前記グリシジル基を有するビニル化合物(a3)の含有率は、前記ビニル単量体(a)全量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0019】
前記その他のビニル化合物(a4)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、3-メチルブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、等の炭素原子数4~22のアルキル(メタ)アクリレート;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の炭素原子数6~20のシクロアルキル(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の炭素原子数10~20のアラルキル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアリルオキシアルキル(メタ)アクリレート;
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸アルキルエステル;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジメチルイタコネート、ジブチルイタコネート等の不飽和ジカルボン酸アルキルエステル;
スチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;
(メタ)アクリロニトリル、クロトノニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルキノリン、N-ビニルピペリジン等の窒素原子含有モノマー(好ましくは1置換又は2置換の(メタ)アクリルアミド(置換基が結合して環を形成しているものも含む))及び該窒素原子含有モノマーの塩化メチル塩;
フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチエレン、ヘキサフルオロプロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン;エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン等のα-オレフィン;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、安息香酸ビニル、ネオデカン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;
アクロレイン、メチルビニルケトン等のカルボニル基含有モノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール共重合(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール共重合(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコール共重合(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコール共重合(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有(メタ)アクリルモノマー;
パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジ-パーフルオロシクロヘキシルフマレート、N-イソプロピルフルオロオクタンスルホン酸アミドエチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル基含有モノマー;
無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の不飽和ジカルボン酸類無水物;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル含有モノマー;
ビニリトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有モノマー;
ビニルスルホン酸、3-アクリロキシプロパン-1-スルホン酸、3-アクリロキシオクチルオキシベンゼンスルホン酸、3-アクリロキシベンゼンジアゾスルホン酸、3-アクリロキシアゾベンゼン-4’-スルホン酸、2-アクリロイルアミノ-2-メチルプロパン-1-スルホン酸、2-アクリロイルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリロニトリル-tert-ブチルスルホン酸等のビニル基含有スルホン酸化合物並びにそれらの塩などが挙げられる。
【0020】
前記その他のビニル化合物(a4)の含有率は、ビニル単量体(a)全量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0021】
前記共役ジエン化合物(a1)、チオール反応性ビニル化合物(a2)及び前記その他のビニル化合物(a3)の合計の含有率は、ビニル単量体(a)全量中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0022】
前記ヒドロキシ基及び/又はチオール基を2個以上有する化合物としては、後述するポリオール(b1);ポリチオール化合物としては、例えば、ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物;水酸基を有するチオール化合物としては、例えば、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、グルセリンビス(メルカプトアセテート)、4-メルカプトフェノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)等を挙げることができる。
【0023】
前記ビニル重合体(A1)のガラス転移温度は、好ましくは-100℃以上であり、より好ましくは-80℃以上であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは50℃以下、いっそう好ましくは25℃以下である。
【0024】
前記ビニル重合体(A1)のガラス転移温度Tg(A1)は、下記式(FOX式)により求められる絶対温度でのガラス転移温度Tgaを摂氏温度に換算して求められる値を表す。
1/Tga=Σ(Wi/Tgi)・・・
【0025】
上記式中、Tgaは前記ビニル重合体(A1)の合成に用いる各ビニル単量体(a)のみからなる重合体のガラス転移温度(単位は絶対温度)を表す。Wiは、各ビニル単量体(a)の、前記ビニル重合体(A1)の原料中における質量割合を表す。Tgiは、各ビニル単量体(a)のみから形成される単独重合体のガラス転移温度(単位は絶対温度)を表す。
【0026】
前記FOX式の詳細は、ブレティン・オブ・ジ・アメリカン・フィジカル・ソサエティ・シリーズ2(Bulletin of the American Physical Society, Series 2)、第1巻、第3号、第123頁(1956年)に記載されている。また、FOX式で計算するための様々な単量体の単独重合体のガラス転移温度(Tgi)は、例えば、塗装と塗料(塗料出版社、10(No.358)、1982)に記載されている数値等を採用することができる。
【0027】
前記ビニル重合体(A1)の含有率は、複合樹脂(A)中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、いっそう好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、いっそう好ましくは50質量%以下である。
【0028】
前記ウレタン樹脂(A2)は、分子中にウレタン結合を有する樹脂であり、ヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するウレタン樹脂(A2-1)を含むものであることが好ましい。ヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するウレタン樹脂(A2-1)を含むことで、ウレタン樹脂(A2)がヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するものとすることができる。
【0029】
前記ヒドロキシ基及び/又はチオール基を有するウレタン樹脂(A2-1)としては、ポリオール(b1)、ポリイソシアネート(b2)及びイソシアネート基と反応しうる基を有し硫黄原子1つあたりの炭素原子数が4以下である硫黄原子含有化合物(c)と、必要に応じて用いる鎖伸長剤(b3)及び/又は重合性不飽和基を有するアルコール化合物(b4)との反応物;少なくとも2つの5員環環状カーボネート構造を有する化合物(d)と、少なくとも2つのアミノ基を有する化合物(e)との反応物などが挙げられる。
【0030】
鎖伸長剤(b3)を用いる場合、前記ウレタン樹脂(A2)は、少なくとも、ポリオール(b1)及びポリイソシアネート(b2)を含む原料の反応物と鎖伸長剤(b3)との反応物として得ることができる。
【0031】
前記ポリオール(b1)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられ、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリマーポリオール(数平均分子量500以上であり、好ましくは3,000以下)を含むことが好ましく、必要に応じて親水性基を有するポリオール、低分子量ポリオール(数平均分子量500未満であり、好ましくは50以上)を含んでいてもよい。
【0032】
前記ポリエーテルポリオールとしては、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、アルキレンオキシドを付加重合(開環重合)させたもの等が挙げられる。
【0033】
前記開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-プロパンジオ-ル、1,3-プロパンジオ-ル、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖状ジオール;ネオペンチルグリコール等の分岐鎖状ジオール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ピロガロール等のトリオール;ソルビトール、蔗糖、アコニット糖等のポリオール;アコニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸等のトリカルボン酸;リン酸;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミン;トリイソプロパノールアミン;ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸等のフェノール酸;1,2,3-プロパントリチオールなどが挙げられる。
【0034】
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0035】
前記ポリエーテルポリオールとしては、前記開始剤にテトラヒドロフランを付加重合(開環重合)させたポリオキシテトラメチレングリコールを使用することが好ましい。
【0036】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール(例えば、分子量50以上500以下のポリオール)とポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらの共重合ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0037】
前記低分子量ポリオールとしては、分子量が50以上500以下のポリオールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール等の炭素原子数2以上6以下の脂肪族ポリオール;1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造含有ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキシド付加物等の芳香族構造含有ポリオールなどが挙げられる。
【0038】
前記ポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;並びに前記脂肪族ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸の無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0039】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとの反応物;ホスゲンとビスフェノールA等との反応物などが挙げられる。
【0040】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0041】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば、上記低分子量ポリオールとして例示したポリオール;ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ポリエステルポリオール(ポリヘキサメチレンアジペート等)等の高分子量ポリオール(例えば、重量平均分子量500以上5,000以下)などが挙げられる。
【0042】
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリイソブテンポリオール、水素添加(水添)ポリブタジエンポリオール、水素添加(水添)ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0043】
前記ポリオール(b1)に含まれるポリマーポリオール(好ましくはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリオレフィンポリオール)の合計の含有率は、前記ポリオール(b1)中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0044】
前記親水性基を有するポリオールにおける親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等が挙げられ、親水性基を有するポリオールを用いることで、前記複合樹脂(A)の水分散性を向上することができる。前記親水性基を有するポリオールとしては、例えば、上記ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリオレフィンポリオール以外のポリオールを用いることができ、具体的には、アニオン性基を有するポリオール、カチオン性基を有するポリオール、及び、ノニオン性基を有するポリオールを使用することができる。これらの中でも、アニオン性基を有するポリオール又はカチオン性基を有するポリオールを使用することが好ましい。
【0045】
前記アニオン性基を有するポリオールとしては、例えば、カルボキシ基を有するポリオール及びスルホン酸基を有するポリオール等が挙げられる。
【0046】
前記カルボキシ基を有するポリオールとしては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のヒドロキシ酸;及び前記カルボキシ基を有するポリオールと前記ポリカルボン酸との反応物などが挙げられる。前記ヒドロキシ酸としては、2,2-ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0047】
前記スルホン酸基を有するポリオールとしては、例えば、5-スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4-スルホフタル酸、5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸等のスルホン酸基を有するジカルボン酸;前記ジカルボン酸の塩と、前記芳香族構造含有ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0048】
前記カチオン性基を有するポリオールとしては、N-メチル-ジエタノールアミン;1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオール等の3級アミノ基を有するポリオールなどが挙げられる。
【0049】
前記ノニオン性基を有するポリオールとしては、ポリオキシエチレン構造を有するポリオール等が挙げられる。
【0050】
前記ポリオール(b1)に親水性基を有するポリオールが含まれる場合、その含有量は、ポリオール(b1)の合計100質量部中、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0051】
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のアルカンジオール;シクロヘキサンジメタノール等のシクロアルカンジアルカノールなど;重合性不飽和基を有するポリオールなどが挙げられる。
【0052】
前記重合性不飽和基を有するポリオールとしては、以下の式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0053】
【化1】
[式(1)中、R
1は、重合性不飽和基を含む原子団を有する側鎖を有する直鎖アルキレン基を表す。]
【0054】
【化2】
[式(2)中、R
1及びR
3は、それぞれ独立に、重合性不飽和基を含む原子団を有する側鎖を有していてもよいを表し、R
1及びR
3に含まれる前記重合性不飽和基を含む原子団の合計数は1つ以上である。R
2は、炭素原子数1~20のアルキレン基を表す。]
【0055】
前記重合性不飽和基を含む原子団としては、ビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。R1、R3は、重合性不飽和基を含む原子団を有する側鎖のほか、水酸基を有する側鎖を有していてもよい。
【0056】
前記R1、R3で表される直鎖アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基等が挙げられる。前記直鎖アルキレン基の炭素原子数は、1以上であり、好ましくは2以上であり、例えば50以下、好ましくは20以下、より好ましくは6以下、より好ましくは5以下、特に好ましくは2である。
【0057】
前記式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物において、重合性不飽和基を含む原子団を有する側鎖の個数は、1分子当たり、1個以上、好ましくは2個以上であり、例えば10個以下、好ましくは5個以下である。
【0058】
前記式(1)で表される化合物としては、例えば、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート〔ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート〕、トリメチロールメタン(メタ)アクリレート、ジメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリエチロールメタン(メタ)アクリレート、ジエチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリエチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジエチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロパノールメタン(メタ)アクリレート、ジプロパノールメタンジ(メタ)アクリレート、トリプロパノールプロパン(メタ)アクリレート、ジプロパノールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリブタノールメタン(メタ)アクリレート、ジブタノールメタンジ(メタ)アクリレート、トリブタノールプロパン(メタ)アクリレート、ジブタノールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
前記式(2)で表される化合物としては、ビス(3-アクリロイロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)メタン、1,2-ビス(3-アクリロイロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エタ、1,3-ビス(3-アクリロイロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)プロパン、1,4-ビス(3-アクリロイロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ブタン、1,5-ビス(3-アクリロイロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ペンタン等が挙げられる。
【0060】
前記ポリイソシアネート(b2)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式構造含有ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0061】
前記ポリイソシアネート(b2)に含まれる-NCOと、ポリオール(b1)に含まれる-OHのモル比(NCO/OH)は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.0以下である。
【0062】
前記鎖伸長剤(b3)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン;N-ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N-エチルアミノエチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン等の環状ポリアミン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール、及び水等が挙げられる。
【0063】
前記重合性不飽和基を有するアルコール化合物(b4)に含まれる重合性不飽和基の個数は、1個以上であり、例えば20個以下、好ましくは15個以下、さらに好ましくは10個以下である。
【0064】
前記重合性不飽和基を有するアルコール化合物(b4)としては、モノアルコール化合物が挙げられ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(ヒドロキシアルキル基の炭素原子数は、例えば、2~10、好ましくは2~5);トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等のトリオールのジ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のテトラオールのトリ(メタ)アクリレート化合物;前記トリオールのジ(メタ)アクリレート化合物及び前記テトラオールのトリ(メタ)アクリレート化合物等のポリアルコキシ(好ましくは、ポリエトキシ、ポリプロポキシ等)化物;前記トリオールのジ(メタ)アクリレート化合物及び前記テトラオールのトリ(メタ)アクリレート化合物等のブロックコポリマー均等物などが挙げられる。
【0065】
イソシアネート基と反応しうる基を有し硫黄原子1つあたりの炭素原子数が4以下である硫黄原子含有化合物(c)において、イソシアネート基と反応しうる基としては、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基等が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基、チオール基である。前記硫黄化合物(c)において、イソシアネート基と反応しうる基の個数は、1分子あたり、平均2個以上、好ましくは2.5以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0066】
前記硫黄原子含有化合物(c)としては、2,3-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-1-プロパンチオール(GST)、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド(MES)、2,2’-チオジエタノール、メルカプトエタノール等が挙げられる。
【0067】
前記硫黄原子含有化合物(c)の含有量は、前記ポリオール(b1)、硫黄原子含有化合物(c)及び必要に応じて用いる鎖伸長剤(b3)の合計100質量部中、好ましくは35質量部以上、より好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。
【0068】
少なくとも2つの5員環環状カーボネート構造を有する化合物(d)としては、ポリエポキシ化合物と、二酸化炭素との反応物;ポリオール(b1)とポリイソシアネート(b2)と必要に応じて用いる鎖伸長剤(b3)及び/又は重合性不飽和基を有するアルコール化合物(b4)との反応物と、グリセロール-1,2-カーボネートとの反応物;などが挙げられる。
【0069】
前記ポリエポキシ化合物としては、前記ポリオール(d1)と、エピクロロヒドリンとの反応物などとして得ることができる。前記ポリオール(d1)としては、前記ポリオール(b1)として例示した化合物と同様の化合物を挙げることができる。
【0070】
少なくとも2つのアミノ基を有する化合物(e)としては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノへキサン(別名:ヘキサメチレンジアミン)、1,8-ジアミノオクタン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカンなどの鎖状脂肪族ポリアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,6-シクロヘキサンジアミン、ピペラジン、2,5-ジアミノピリジンなどの環状脂肪族ポリアミン、キシリレンジアミン(別名:メタキシレンジアミン)などの芳香環を持つ脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0071】
前記その他のウレタン樹脂(A2-2)は、ポリオール(b1)及びポリイソシアネート(b2)と;必要に応じて用いる鎖伸長剤(b3)及び/又は重合性不飽和基を有するアルコール化合物(b4)との反応物であることが好ましい。
前記ウレタン樹脂(A2)がアニオン性基を有するものである場合、前記水性樹脂組成物は、塩基性化合物を含んでいてもよい。前記基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を含む金属水酸化物などが挙げられる。水性樹脂組成物の水分散安定性を向上させる観点から、前記塩基性化合物とアニオン性基とのモル比(塩基性基/アニオン性基)は、好ましくは0.5以上3.0以下、より好ましくは0.8以上2.0以下である。
【0072】
前記ウレタン樹脂(A2)がアニオン性基を有するものである場合、前記ウレタン樹脂(A2)の酸価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、さらに好ましくは10mgKOH/g以上であり、好ましくは100mgKOH/g以下、より好ましくは70mgKOH/g以下、さらに好ましくは50mgKOH/g以下である。
本明細書にいう酸価は、原料組成に基づいて前記ウレタン樹脂(A2)に含まれるアニオン性基の量を算出し、これに基づいて前記ウレタン樹脂(A2)1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として算出した理論値である。
【0073】
前記ウレタン樹脂(A2)がカチオン性基を有するものである場合、前記水性樹脂組成物は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のカルボン酸;酒石酸等のヒドロキシ酸;リン酸などの酸性化合物を含んでいてもよく、前記カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部又は全部がジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロリド、エチルクロリド等4級化剤により4級化されていてもよい。
【0074】
前記ウレタン樹脂(A2)がカチオン性基を有するものである場合、前記ウレタン樹脂(A2)のアミン価は、好ましくは2mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。
本明細書にいうアミン価は、原料組成に基づいて前記ウレタン樹脂(A2)に含まれるカチオン性基の量を算出し、これに基づいてウレタン樹脂(A2)1gを中和するのに必要な塩化水素のモル数(mmol)及び水酸化カリウムの式量(56.1g/mol)の積として算出した理論値である。
【0075】
前記ウレタン樹脂(A2)中、ウレア結合基量は、例えば1.0mol/g以下、好ましくは0.1mol/g以下、さらに好ましくは0.01mol/g以下であり、下限は0mol/gである。前記ウレア結合基量は、ウレタン樹脂(A2)の合成に用いた原料に基づき、理論値として算出することができる。
【0076】
前記ウレタン樹脂(A2)の重量平均分子量は、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上、いっそう好ましくは30,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。
【0077】
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、特記ない限り、ポリスチレンを標準試料としてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法(GPC)により測定することができる。
【0078】
前記ウレタン樹脂(A2)のガラス転移温度は、好ましくは-80℃以上、より好ましくは-50℃以上、さらに好ましくは-20℃以上であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。前記ウレタン樹脂(A2)のガラス転移温度が前記範囲にあると、前記ウレタン樹脂(A2)の運動性が良好であり、本発明の効果を発揮することが容易である。
【0079】
前記ウレタン樹脂(A2)のガラス転移温度Tg(A2)と、前記ビニル重合体(A1)のガラス転移温度Tg(A1)との差(Tg(A2)-Tg(A1))は、-40℃以上であり、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-20℃以上、さらに好ましくは0℃以上であり、140℃以下、好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは120℃以下であり、いっそう好ましくは100℃以下、よりさらに好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。前記ガラス転移温度の差が前記範囲(Tg(A2)-Tg(A1))にあると、前記ウレタン樹脂(A2)と前記ビニル重合体(A1)の運動性のバランスが良好であり、加熱により疎水性の表面を有する塗膜を形成可能である。
【0080】
前記ウレタン樹脂(A2)のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0081】
前記ウレタン樹脂(A2)の含有量は、前記ビニル重合体(A1)1質量部に対して、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0082】
前記ビニル重合体(A1)及び前記ウレタン樹脂(A2)の合計の含有率は、複合樹脂(A)中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0083】
前記複合樹脂(A)のゲル分率は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、よりいっそう好ましくは10質量%以上であり、上限は100質量%であり、例えば90質量%以下、さらには80質量%以下であることも許容される。
【0084】
前記複合樹脂(A)のゲル分率は、例えば、以下の方法で測定することができる。まず、ガラス板上に乾燥後の膜厚が0.5mmとなるように本発明の水性樹脂組成物を塗工し、80℃で2時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、更に140℃で5分間乾燥したものを直径29mmの円形に切り取って試料とする。該試料の溶剤浸漬前の重量を測定し、G1とする。次に、試料をトルエン中に常温で24時間浸漬した後の試料の溶剤不溶解分を80メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後、重量し、G2とする。以下の式に基づいて求められる値をゲル分率とする。
ゲル分率(質量%)=(G2/G1)×100
【0085】
複合樹脂(A)において、前記ビニル重合体(A1)の表面の少なくとも一部を前記ウレタン樹脂(A2)が被覆していることが好ましく、前記ビニル重合体(A1)の表面に前記ウレタン樹脂(A2)の層が形成されていることが好ましい。前記ビニル重合体(A1)は、一般に疎水性が高く、そのままでは水に分散することが困難であるが、前記ウレタン樹脂(A2)が前記ビニル重合体(A1)の表面の少なくとも一部を被覆していることで、水性媒体への分散性が良好となる。前記ビニル重合体(A1)と前記ウレタン樹脂(A2)とは、化学的に結合していてもよく、していなくともよい。
【0086】
前記複合樹脂は、前記ウレタン樹脂(A2)の存在下、後述する水性媒体(B)中でビニル単量体(a)を重合することにより製造することができる。前記ビニル単量体(a)は疎水性であるため、水性媒体(B)中でウレタン樹脂(A2)と共存させることで、該ビニル単量体(a)の少なくとも一部がウレタン樹脂(B2)の内部に取り込まれ、この状態で重合反応を行うことで、本発明の複合樹脂(A)を製造することができる。
【0087】
より具体的には、前記ウレタン樹脂(A2)は、水性媒体(B)中に分散された状態(予備分散液)で、前記ビニル単量体(a)の重合に供されることが好ましい。前記ウレタン樹脂(A2)が水性媒体(B)中に分散された予備分散液は、例えば、無溶剤下又は有機溶剤の存在下で、前記ポリオール(b1)及び前記ポリイソシアネート(b2)を反応させ、必要に応じて、さらに鎖伸長剤(b3)を反応させることにより製造することができる。前記有機溶剤は、安全性や環境に対する負荷低減の観点から、前記ウレタン樹脂(A2)の製造途中または製造後に、減圧留去等によってその一部または全部を除去してもよい。
【0088】
前記重合反応の際は、必要に応じて、後述する添加剤(C)を共存させてもよく重合反応後に該添加剤(C)を添加してもよい。
【0089】
前記ビニル単量体(a)を重合する際、ラジカル重合開始剤を共存させることが好ましい。前記重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤を用いることができる。前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーケトン、チオキサントン、アントラキノン、ベンゾイン、ジアルコキシアセトフェノン、アシルオキシムエステル、ベンジルケタール、ヒドロキシアルキルフェノン、ハロゲノケトン等が挙げられる。前記光重合開始剤は、必要に応じてメチルアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の第三アミンと組み合わせて使用してもよい。前記熱重合開始剤としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノ)吉草酸、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物などの熱重合開始剤などを使用することができる。
【0090】
前記ラジカル重合開始剤の量は、前記ビニル化合物の合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0091】
前記複合樹脂(A)は、水性媒体(B)中に分散されていることが好ましい。複合樹脂(A)の分散状態は、例えば、水性樹脂組成物における沈殿物の有無により確認することができる。
【0092】
前記複合樹脂(A)の含有率は、水性樹脂組成物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0093】
前記水性媒体(B)としては、水、水と混和する有機溶剤及びこれらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤;N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等のラクタム溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド溶剤などが挙げられ、アルコール溶剤が好ましい。
【0094】
前記水性媒体(B)は、安全性や環境に対する負荷低減を考慮すると、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみがより好ましい。水の含有率は、前記水性媒体(B)100質量%中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0095】
前記水性媒体(B)の含有率は、水性樹脂組成物の全量100質量%中、好ましくは30質量%以上80質量%以下、より好ましくは50質量%以上70質量%以下である。
【0096】
本発明の水性樹脂組成物は、さらに架橋剤を含んでいてもよい。前記架橋剤としては、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、メラミン架橋剤、アルデヒド架橋剤、アミン架橋剤、金属キレート架橋剤等が挙げられ、ヒドロキシ基及び/又はチオール基との反応性を有するものであることが好ましい。
【0097】
上記イソシアネート架橋剤としては例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;水添トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式ポリイソシアネート;前記芳香族ポリイソシアネート、前記脂環式ポリイソシアネートと、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体;前記芳香族ポリイソシアネートと前記脂環式ポリイソシアネートのビュレット体やイソシアヌレート体などが挙げられる。
【0098】
上記エポキシ架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型のエポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のジグリシジル化合物などが挙げられる。
【0099】
上記アジリジン架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0100】
上記メラミン架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0101】
上記アルデヒド架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0102】
上記アミン架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0103】
上記金属キレート架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
【0104】
本発明の水性樹脂組成物は、さらに界面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、ワックス、光安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光触媒性化合物、無機顔料、有機顔料、体質顔料、硬化剤、硬化触媒、乳化剤、分散安定剤等の各種の添加剤(C)を含んでいてもよい。
【0105】
前記添加剤(C)の含有量は、前記複合樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0106】
本発明の水性樹脂組成物は、異種基材、例えば、ゴム基材と樹脂基材等との間の接着に際しても、強固な接着力を発揮しうるものであり、接着剤(好ましくは異種基材間の接着剤)として公的に用いることができる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0108】
(合成例1:ポリエステルポリオール(1)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、イソフタル酸35.4部、セバシン酸17.8部、アジピン酸7.8部、エチレングリコール6.2部、ネオペンチルグリコール22.9部、1,6-ヘキサンジオール11.7部及びジブチル錫オキサイド0.03部を仕込み180~230℃で酸価が1以下になるまで24時間重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(1)〔酸価0.6mgKOH/g、水酸基価42.5mgKOH/g〕を得た。
【0109】
(合成例2:ポリエステルポリオール(2)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、イソフタル酸27.6質量部、テレフタル酸27.6質量部、エチレングリコール11.7質量部、ジエチレングリコール19.9質量部及びジブチル錫オキサイド0.03質量部を仕込み180~230℃で酸価が1以下になるまで230℃で24時間重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(2)〔酸価0.6mgKOH/g、水酸基価48.0mgKOH/g〕を得た。
【0110】
(合成例3:ポリエステルポリオール(3)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、1,6ヘキサンジオール24.8質量部、5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム20.1質量部、ε―カプロラクトン62.0質量部及びテトライソプロピルチタネート0.02質量部を仕込み、180~230℃で酸価が1以下になるまで12時間重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(3)〔酸価0.3mgKOH/g、水酸基価145.0mgKOH/g〕を得た。
【0111】
(合成例4:ポリエステルポリオール(4)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、1,4ブタンジオール49.4質量部、アジピン酸71.1部及びテトライソプロピルチタネート0.01質量部を仕込み、180~230℃で酸価が1以下になるまで12時間重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(4)〔酸価0.3mgKOH/g、水酸基価56.0mgKOH/g〕を得た。
【0112】
(製造例1:ウレタン樹脂(1)の合成)
反応容器に合成例1のポリエステルポリオール(1)68.0質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン98.1質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、1,4-ブタンジオール4.5質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸6.1質量部を加え、次いでキシリレンジイソシアネート21.5質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。所定の粘度になったことを確認した後、50℃まで冷却し、不揮発分=51.0%の親水基含有ポリウレタン樹脂(I)を得た。次いで、親水基含有ポリウレタン樹脂(I)に、トリエチルアミン4.8質量部を加え、イオン交換水512質量部をゆっくりと添加し水溶化を実施した。次いで減圧下、30~50℃にてメチルエチルケトンを除去し、不揮発分=23.0%のウレタン樹脂(2)を調製した。
【0113】
(製造例2:ウレタン樹脂(2)の合成)
反応容器に合成例2のポリエステルポリオール(2)75.0質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン40.0質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、2,2-ジメチロールプロピオン酸4.5質量部を加え、次いで、イソホロンジイソシアネート13.3質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。所定の粘度になったことを確認し、メタノール0.3質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0114】
さらに水320質量部を加え十分に攪拌することにより、ウレタン樹脂の水分散体を得、次いでエージング・脱溶剤することによって、不揮発分22質量%のウレタン樹脂(2)を得た。
【0115】
(製造例3:ウレタン樹脂(3)の合成)
反応容器に合成例3のポリエステルポリオール(3)8.0質量部にメチルエチルケトン10.0質量部を加え、攪拌し均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート6.1質量部を投入し、80℃で3時間反応させる。反応後、次に合成例4のポリエステルポリオール(4)8.6質量部及びメチルエチルケトン7.2質量部を加えて、80℃で6時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認し、n-ブタノール0.1質量部を加え、さらに2時間反応させた後、50℃まで冷却し、ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を得た。
【0116】
さらに水58.3質量部を加え十分に攪拌することにより、ウレタン樹脂の水分散体を得、次いでエージング・脱溶剤することによって、不揮発分50質量%のウレタン樹脂(3)を得た。
【0117】
(製造例4:ウレタン樹脂(4)の合成)
エポキシ当量132のエチレングリコールジグリシジルエーテル100質量部とヨウ化ナトリウム10質量部、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン10質量部、N,N-ジメチルホルムアミド100質量部とを反応容器内に仕込んだ。次いで、撹拌しながら二酸化炭素を連続して吹き込み、100℃にて20時間反応を行った。得られたカーボナート化合物100質量部、ヘキサメチレンジアミン31.0質量部、リシン18.1質量部、N,N-ジメチルホルムアミド70部を加え、70℃の温度で撹拌しながら24時間の反応を行った。反応後冷却し、水330質量部を加え、十分に攪拌することにより、ウレタン樹脂の水分散体を得、次いでエージング・脱溶剤することによって、不揮発分25質量%のウレタン樹脂(4)を得た。
【0118】
(製造例5:ウレタン樹脂(5)の合成)
反応容器に合成例1のポリエステルポリオール(1)67.0質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン98.0質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール7.1質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸6.0質量部を加え、次いでトリレンジイソシアネート18.0質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。所定の粘度になったことを確認した後、50℃まで冷却し、不揮発分=51.0%の親水基含有ポリウレタン樹脂(II)を得た。次いで、親水基含有ポリウレタン樹脂(II)に、トリエチルアミン4.8質量部を加え、イオン交換水512質量部をゆっくりと添加し水溶化を実施した。次いで減圧下、30~50℃にてメチルエチルケトンを除去し、不揮発分=23.0%のウレタン樹脂(5)を調製した。
【0119】
(製造例6:ウレタン樹脂(6)の合成)
反応容器に合成例1のポリエステルポリオール(1)69.0質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン93.30質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、1,4-ブタンジオール3.0質量部2,2’-ジメチロールプロピオン酸6.1質量部を加え、次いでトリレンジイソシアネート22.9質量部を加えて、80℃で12時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認した後、50℃まで冷却し、不揮発分=51.0%の親水基含有ポリウレタン樹脂(II)を得た。次いで、親水基含有ポリウレタン樹脂(II)に、トリエチルアミン4.6質量部を加え、イオン交換水548質量部をゆっくりと添加し水溶化を実施した。次いで減圧下、30~50℃にてメチルエチルケトンを除去し、不揮発分=23.0%のウレタン樹脂(6)を調製した。
【0120】
(実施例1:ラテックス複合ウレタン樹脂(1)の合成)
製造例1で得られたウレタン樹脂(1)321質量部にイオン交換水126質量部を加え、イソプレン25.3質量部、スチレン6.3質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.3質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分25%のラテックス複合ウレタン樹脂(1)を得た。
【0121】
(実施例2:ラテックス複合ウレタン樹脂(2)の合成)
製造例2で得られたウレタン樹脂(2)305質量部にイオン交換水145質量部を加え、イソプレン23.0質量部、スチレン5.8質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.3質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分25%のラテックス複合ウレタン樹脂(2)を得た。
【0122】
(実施例3:ラテックス複合ウレタン樹脂(3)の合成)
製造例1で得られたウレタン樹脂(1)378質量部にイオン交換水63.5質量部を加え、イソプレン18.6質量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル18.6質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.3質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分25%のラテックス複合ウレタン樹脂(3)を得た。
【0123】
(実施例4:ラテックス複合ウレタン樹脂(4)の合成)
製造例3で得られたウレタン樹脂(3)269質量部にイオン交換水152質量部を加え、イソプレン28.8質量部、メタクリル酸グリシジル28.8質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.3質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、50℃まで冷却後に2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール17.6質量部を添加し、グリシジルを開環させる。次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分48%のラテックス複合ウレタン樹脂(4)を得た。
【0124】
(実施例5:ラテックス複合ウレタン樹脂(5)の合成)
製造例4で得られたウレタン樹脂(4)296質量部にイオン交換水152質量部を加え、イソプレン25.3質量部、スチレン6.3質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.3質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分30%のラテックス複合ウレタン樹脂(5)を得た。
【0125】
(実施例6:ラテックス複合ウレタン樹脂(6)の合成および配合)
製造例5で得られたウレタン樹脂(5)321質量部にイオン交換水126質量部を加え、イソプレン25.3部、スチレン6.3質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.3質量部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分25%のラテックス複合ウレタン樹脂(6)を得た。
【0126】
(比較例1:ウレタン樹脂(7)の合成)
製造例6で得られたウレタン樹脂(6)を使用した。
【0127】
(比較例2:ラテックス複合ウレタン樹脂(8)の合成)
製造例6で得られたウレタン樹脂(6)321質量部にイオン交換水126質量部を加え、イソプレン25.3質量部、スチレン6.3質量部及びアクリル酸ブチル42.2質量部を過硫酸アンモニア(APS)0.3部でモノマー一括乳化重合(反応温度70℃)の条件下反応させて、次に未反応モノマー除去の濃縮を行い、水分量を調整後、固形分25%のラテックス複合ウレタン樹脂(8)を得た。
【0128】
(比較例3:ウレタン樹脂(9)の合成)
製造例4で得られたウレタン樹脂(4)を使用した。
【0129】
得られたラテックス複合ウレタン樹脂について、以下の測定を行った。
【0130】
[異基材密着性]
PETへ塗工し140℃20秒で乾燥させた面に、SBR、NBR基材を貼り付け、約100℃で圧着し、約2日間エージングさせる。エージング後のPETとSBR, NBR基材を剥がし、剥がれた基材の状態を観察した。
〇:PET、もしくはSBR, NBR基材が材料破壊した。もしくは、剥がれなかった。
△:PETとSBR, NBR間で接着性を確認できたが、PETもしくはSBR, NBRのどちらかの基材のみに接着層が残った。
×:PETとSBR, NBR間でほとんど接着性を確認できず、PETもしくはSBR, NBRのどちらかの基材のみに接着層が残った。
【0131】
(酸素透過率:OTR)
酸素透過率の測定は、JIS-K7126(等圧法)に準じ、モコン社製酸素透過率測
定装置OX-TRAN1/50を用いて、温度23℃、湿度0%RHの雰囲気下、及び、
温度23℃、湿度90%RHの雰囲気下で実施した。なお、RHとは相対湿度を表す。
【0132】
(水蒸気透過率:MVTR)
水蒸気透過率の測定は、JIS-K7129に準じ、イリノイ社製水蒸気透過率測定装
置7001を用いて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で測定した。
【0133】
【0134】
実施例1~6は、本願発明の実施例であり、接着剤として使用した場合に、異種基材間の接着性が良好であり、かつガスバリア性が良好であった。
【0135】
比較例1は、複合樹脂には該当しないウレタン樹脂を用いない例であり、異種基材間の接着性、ガスバリア性ともに不良であった。
【0136】
比較例2は、ヒドロキシル基及びチオール基のいずれも有しない複合樹脂を用いた例であり、ガスバリア性が不良であった。
【0137】
比較例3は、ヒドロキシ基を有するものの、複合樹脂には該当しないウレタン樹脂を用いた例であり、異種基材間の接着性が不良であった。