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特許7235470大豆油の青臭さ低減剤及び加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】大豆油の青臭さ低減剤及び加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20230301BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20230301BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23L5/10 D
A23D9/00 518
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018187849
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020048539
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2018176836
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 竹彦
(72)【発明者】
【氏名】小薗 伸介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嵜 郁人
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-080528(JP,A)
【文献】国際公開第2009/028483(WO,A1)
【文献】特開2015-186446(JP,A)
【文献】特開2009-055862(JP,A)
【文献】特開2009-055861(JP,A)
【文献】特開2007-236206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D,A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーン由来の焙煎油を有効成分として含有し、大豆油を含む加熱調理用油脂組成物中に前記焙煎油を0.01質量%以上10質量%以下含有せしめるようにして用いて、前記加熱調理用油脂組成物を調理用材料に付与して加熱調理した加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さを低減させるためのものである、大豆油の青臭さ低減剤。
【請求項2】
大豆油を含む加熱調理用油脂組成物にコーン由来の焙煎油を含有せしめ、
前記加熱調理用油脂組成物を調理用材料に付与して、加熱調理する、加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法であって、前記加熱調理用油脂組成物中に対して、前記焙煎油を0.01質量%以上10質量%以下含有せしめる、該低減方法
【請求項3】
前記焙煎油は、少なくとも脱臭処理が施されてなる精製油である、請求項2記載の低減方法。
【請求項4】
前記焙煎油は、90℃以上180℃以下で焙煎したコーンジャームに由来するものである、請求項2又は3記載の低減方法。
【請求項5】
前記焙煎油は、0分間超90分間以下で焙煎したコーンジャームに由来するものである、請求項2乃至のいずれか1項に記載の低減方法。
【請求項6】
前記加熱調理食品は、揚げ物である、請求項2乃至のいずれか1項に記載の低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さを低減する方法に関し、より詳細には、大豆油の青臭さ低減剤及び加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法である。
【背景技術】
【0002】
大豆油は、優れたコクと旨味を有しており、フライ調理用の食用油脂として多用されている。このような、大豆油は、独特の嫌な青臭さを有しており、精製工程において一旦は取り除かれるものの、経時や暴光によって、再び青臭さが生じてくることが知られている。
【0003】
青臭さを有する大豆油を調理に供すると、該青臭さが食品に移り、風味を損ねるという問題を有していた。
【0004】
このような課題に対して、特許文献1には、大豆油に対して焙煎ごま油、焙煎菜種油又は焙煎大豆油を添加することで、大豆油の青臭さを抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】再公表2009-028483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法における大豆油の青臭さ低減効果は不十分であり、さらなる効果向上が求められている。
【0007】
なお、特許文献1には、コーン由来の焙煎油が優れた大豆油の青臭さ抑制効果を有している点について、開示も示唆もない。
【0008】
そこで、本発明は、大豆油の青臭さを低減することを可能とする大豆油の青臭さ低減剤及び加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討の結果、大豆油に対してコーン由来の焙煎油を所定量添加することによって、該大豆油を調理に供しても食品に含まれる大豆油の青臭さを低減可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明の大豆油の青臭さ低減剤は、コーン由来の焙煎油を有効成分として含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法は、大豆油を含む加熱調理用油脂組成物にコーン由来の焙煎油を含有せしめることを特徴とし、前記加熱調理用油脂組成物を調理用材料に付与して、加熱調理するものである。
【0012】
また、前記加熱調理用油脂組成物に対して、前記焙煎油を0.01質量%以上10質量%以下含有せしめることを特徴とする。
【0013】
さらに、前記焙煎油は、少なくとも脱臭処理が施されてなる精製油であることを特徴とする。
【0014】
またさらに、前記焙煎油は、90℃以上180℃以下で焙煎したコーンジャームに由来するものであることを特徴とする。
【0015】
そして、前記焙煎油は、0分間超90分間以下で焙煎したコーンジャームに由来するものであることを特徴とする。
【0016】
その上、前記加熱調理食品は、揚げ物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の大豆油の青臭さ低減剤によれば、容易に大豆油の青臭さを低減することを可能とする。
【0018】
また、本発明の加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法によれば大豆油を用いて調理した場合においても、優れた風味を有する加熱調理食品を容易に提供することを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の大豆油の青臭さ低減剤及び加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法の実施形態について、以下に説明する。
【0020】
[1.大豆油の青臭さ低減剤]
本発明の大豆油の青臭さ低減剤は、コーン由来の焙煎油を有効成分として含有していることが重要である。なお、以降の説明においては、「本発明の大豆油の青臭さ低減剤」を「本発明の低減剤」と称する。
【0021】
コーン由来の焙煎油としては、油糧原料としてのコーンジャームを焙煎した後、圧搾・抽出等して得られる一般的な食品用の焙煎油を用いることができる。コーンジャームは、ウェットミリング法及びドライミリング法により得られたものがあり、好ましくはウェットミリング法により得られたものである。
【0022】
焙煎条件は、一般的な焙煎油を得るための条件を採用することができるが、例えば、以下の焙煎温度及び焙煎時間を採用することが好ましい。焙煎条件は、以下の条件の範囲とすることにより、大豆油の青臭さ低減効果がより高く、風味も良好である。
・焙煎温度:90℃以上180℃以下が好ましく、110℃以上180℃以下がより好ましく、120℃以上180℃以下がさらに好ましく、140℃以上180℃以下がさらにより好ましく、140℃以上165℃以下が特に好ましい
・焙煎時間:0分間超90分間以下が好ましく、3分間以上90分間以上がより好ましく、5分間以上90分間以下がさらに好ましく、5分間以上60分間以下がさらにより好ましい。
【0023】
また、コーン由来の焙煎油は、少なくとも脱臭処理が施された精製油であることが好ましく、コーンジャームを焙煎したことに起因する焦げ臭を低減することができる。より好ましくは、脱ガム処理・脱酸処理・脱色処理・脱臭処理が施された精製油であり、焙煎したコーンジャームの香りや風味、色素等が除かれて、これらの原料由来の性質が好まれない場合の需要に答えることができる。
【0024】
各精製処理の条件は、一般的に食用油脂の精製に用いられる処理条件を採用することができる。具体的には、各精製処理は以下の条件を採用することができる。
【0025】
(脱ガム工程)
水の使用量:油脂に対して、1質量%以上5質量%以下、好ましくは1.5質量%以上3質量%以下
脱ガム助剤:必要に応じて用いることが可能であり、シュウ酸、クエン酸及びリン酸から選ばれる1種又は2種以上の酸の水溶液が好ましい
脱ガム温度:30℃以上95℃以下、好ましくは35℃以上60℃以下
撹拌時間:0秒超60分以下が好ましく、ラインミキサーを用いる場合には、1秒以上10秒以下が好ましく、タンク内で撹拌する場合には、10分以上60分以下が好ましい
【0026】
(脱酸工程)
アルカリの種類:炭酸ナトリウム、苛性ソーダ
アルカリ水溶液の濃度:3質量%以上40質量%以下
アルカリ水溶液の使用量:油脂に対して0.1質量%以上5質量%以下、好ましくは0.5質量%以上3質量%以下
脱酸温度:20℃以上120℃以下、好ましくは35℃以上95℃以下
【0027】
(脱色工程)
活性白土の使用量:油脂に対して0.05質量%以上5質量%以下、好ましくは0.05質量%以上2質量%以下
脱色温度:60℃以上120℃以下、好ましくは70℃以上120℃以下
脱色時間:5分以上120分以下、好ましくは5分以上80分以下
【0028】
(脱臭工程)
水蒸気の使用量:油脂に対して0.1質量%以上10質量%以下、好ましくは0.3質量%以上8質量%以下
脱臭温度:180℃以上300℃以下、好ましくは200℃以上300℃以下
脱臭時間:10分以上240分以下、好ましくは20分以上240分以下
減圧度:150Pa以上1000Pa以下、好ましくは200Pa以上800Pa以下
【0029】
コーン由来の焙煎油の含有量の下限は、本発明の低減剤中に、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。コーン由来の焙煎油の含有量の上限は、限定するものではないが、100質量%であることが好ましい。
【0030】
本発明の低減剤は、コーン由来の焙煎油以外にも、精製食用油脂;コーン以外の油糧原料由来の焙煎油;調味料;シリコーン;酸化防止剤;香料などを含有してもよい。
【0031】
本発明の低減剤の有効添加量は、大豆油100質量部に対して、コーン由来の焙煎油が0.01質量部以上20質量部以下となる添加量であることが好ましく、0.04質量部以上15質量部以下となる添加量であることがより好ましく、0.2質量部以上12質量部以下となる添加量であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明の大豆油の青臭さ低減剤は、大豆油に所定量添加することにより、該大豆油の青臭さを低減することができる。
【0033】
[2.加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法]
本発明の加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法は、大豆油を含む加熱調理用油脂組成物にコーン由来の焙煎油を含有せしめ、前記加熱調理用油脂組成物を調理材料に付与して、加熱調理することが重要である。なお、以降の説明においては、「本発明の加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法」を「本発明の低減方法」と称する。
【0034】
本明細書において、「加熱調理食品」とは、食用油脂を供して加熱調理された食品であれば特に限定するものではないが、好ましくはフライ食品である。具体的には、天ぷら、フライドポテト、ハッシュドポテト、コロッケ、唐揚げ、とんかつ、魚フライ、アメリカンドッグ、チキンナゲット、揚げ豆腐、ドーナッツ、揚げパン、クルトン、揚げ米菓、スナック菓子、インスタントラーメン等が挙げられ、表面にパン粉が付着しているコロッケ、とんかつ及び魚フライは本発明の低減方法がより好適な食品である。
【0035】
また、本発明の低減方法における「加熱調理用油脂組成物を調理材料に付与して、加熱調理する」方法は、特に限定するものではないが、例えば、予め140℃~200℃程度に加熱しておいた加熱調理用油脂組成物中に調理材料を浸漬させるものであり、より具体的にはフライ調理である。
【0036】
本発明の低減方法においては、油脂組成物中に、焙煎油を0.01質量%以上10質量%以下含有していることが好ましく、0.04質量%以上8質量%以下含有していることがより好ましく、0.2質量%以上8質量%以下含有していることがさらに好ましい。
【0037】
大豆油の含有量の下限は、前記加熱調理用油脂組成物中に、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることがさらにより好ましい。大豆油の含有量の上限は、特に限定するものではないが、大豆油と前記焙煎油の合計量が100質量%以下であることが好ましい。
【0038】
また、前記焙煎油は、少なくとも脱臭処理が施された精製油であることが好ましく、脱ガム処理・脱酸処理・脱色処理・脱臭処理が施された精製油であることがより好ましい。各処理については、[1.大豆油の青臭さ低減剤]の項目にて説明した内容と同じであるので省略する。
【0039】
さらに、前記焙煎油は、90℃以上180℃以下の焙煎温度で焙煎したコーンジャームに由来するものであることが好ましい。また、前記焙煎油は、0分間超90分間以下の焙煎時間で焙煎したコーンジャームに由来するものであることが好ましい。より好ましい焙煎温度及び焙煎時間については、[1.大豆油の青臭さ低減剤]の項目にて説明した内容と同じであるので省略する。
【0040】
加熱調理用油脂組成物は、大豆油及び前記焙煎油以外にも、大豆油以外の精製食用油脂;コーン以外の油糧原料由来の焙煎油;調味料;シリコーン;酸化防止剤;香料などを含んでいてもよい。
【0041】
本発明の加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法は、コーン由来の焙煎油を含有することにより、大豆油を含む加熱調理用油脂組成物を用いて調理した場合においても、優れた風味を有する加熱調理食品を容易に提供することを可能とする。
【実施例
【0042】
以下に、本発明の低減剤及び本発明の低減方法の具体的な実施例を説明する。
【0043】
<コーン由来の焙煎油の調製方法>
まずは、本実施例において用いたコーン由来の焙煎油の調製方法について説明する。ウェットミリングで得られたコーンジャームを150℃で30分間焙煎し、圧搾して焙煎油を得た。前記焙煎油に対して、以下の精製条件にて、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理及び脱臭処理を施して精製油とした。
(脱ガム処理)
水の使用量:油脂に対して1.5質量%
脱ガム助剤:リン酸
脱ガム温度:85℃
撹拌時間:30分
(脱酸処理)
アルカリの種類:苛性ソーダ
アルカリ水溶液の濃度:15質量%
アルカリ水溶液の使用量:酸価が0.1になるまで添加
脱酸温度:90℃
(脱色処理)
活性白土の使用量:油脂に対して1質量%
脱色温度:80℃
脱色時間:30分
(脱臭処理)
水蒸気の使用量:油脂に対して2質量%
脱臭温度:240℃
脱臭時間:50分
減圧度:300Pa
【0044】
本実施例において用いた食用油脂を以下に挙げる。
1.大豆油:J大豆白絞油、株式会社J-オイルミルズ製
2.コーン油:Jコーン油、株式会社J-オイルミルズ製
3.パームオレイン:ヨウ素価67、株式会社J-オイルミルズ製
【0045】
<実施例1>
本実施例においては、食用油脂として大豆油を用い、前記コーン由来の焙煎油を表1に示す添加量にて添加して加熱調理用油脂組成物を調製した。また、大豆油の青臭さに対する加熱劣化の影響を検討するべく、該加熱調理用油脂組成物を180℃で24時間空加熱した劣化した加熱調理用油脂組成物を調製した。該加熱調理用油脂組成物及び劣化した加熱調理用油脂組成物を用いてフライ調理したトンカツを食して大豆油の青臭さの低減効果について評価した。評価は、専門パネラー3名の官能評価にて行った。なお、評価は、以下に示す評価指標に基づいて0.5点刻みで点数づけをおこない、3名の平均値を結果として得た。得られた評価結果を表1に示す。
【0046】
<比較例>
比較例1-1においては、大豆油のみを用いてトンカツをフライ調理した。比較例1-2においては、大豆油のみを180℃で24時間空加熱した劣化大豆油を用いてトンカツをフライ調理した。
【0047】
<揚げ条件>
170℃に熱した加熱調理用食用油脂又は劣化した加熱調理用油脂組成物3.5kgで、冷凍豚カツ2枚(製品名:やわらかとんかつ160、味の素冷凍食品株式会社)を5分間揚げた。
【0048】
<評価指標>
5:青臭さを全く感じない(コーン油で油ちょうしたトンカツ相当)
4:青臭さをわずかに感じる
3:青臭さを少し感じる
2:青臭さを感じる(前記劣化大豆油で調理したトンカツ相当)
1:青臭さを強く感じる
0:青臭さを非常に強く感じる
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、実施例1-1乃至実施例1-14は、大豆油に対して、前記コーン由来の焙煎油を添加した加熱調理用油脂組成物又は劣化した加熱調理用油脂組成物とすることにより、空加熱の有無に関係なくトンカツに含まれる大豆油の青臭さを低減できた。
【0051】
より具体的には、前記加熱調理用油脂組成物においては、実施例1-1乃至1-7に示すように、前記コーン由来の焙煎油を0.04質量%以上5質量%以下添加することによって大豆油の青臭さ低減効果が得られた。また、前記コーン由来の焙煎油の添加量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.25質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましいことが分かった。
【0052】
また、劣化した加熱調理用油脂組成物においては、実施例1-8乃至1-14に示すように、前記コーン由来の焙煎油を0.04質量%以上5質量%以下添加することによって大豆油の青臭さ低減効果が得られた。また、前記コーン由来の焙煎油の添加量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.25質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましいことが分かった。
【0053】
実施例1の結果から、大豆油に対して、コーン由来の焙煎油を添加することにより、優れた大豆油の青臭さ低減効果を得られることが明らかとなった。
【0054】
<実施例2>
本実施例においては、大豆油を50質量%、コーン油を30質量%及びパームオレインを20質量%混合して得た調合油に対して、前記コーン由来の焙煎油を表2に示す添加量にて添加して加熱調理用油脂組成物を調製した。また、大豆油の青臭さに対する加熱劣化の影響を検討するべく、該加熱調理用油脂組成物を180℃で24時間空加熱した劣化した加熱調理用油脂組成物を調製した。該加熱調理用油脂組物及び劣化した加熱調理用油脂組成物を用いてフライ調理したトンカツを食して大豆油の青臭さの低減効果について評価した。評価は、実施例1と同じ方法にて行った。得られた評価結果を表2に示す。なお、トンカツの調理及び評価は<実施例1>と同じ方法にて行った。
【0055】
<比較例>
比較例2-1においては、前記調合油のみを用いてトンカツをフライ調理した。比較例2-2においては、前記調合油のみを180℃で24時間空加熱した劣化調合油を用いてトンカツをフライした。なお、トンカツの調理及び評価は<実施例1>と同じ方法にて行った。
【0056】
【表2】
【0057】
表2に示すように、実施例2-1乃至実施例2-14は、調合油に対して、前記コーン由来の焙煎油を添加した加熱調理用油脂組成物とすることにより、空加熱の有無に関係なく、トンカツに含まれる大豆油の青臭さを低減できた。
【0058】
より具体的には、前記加熱調理用油脂組成物においては、実施例2-1乃至2-7に示すように、前記コーン由来の焙煎油を0.04質量%以上5質量%以下添加することによって大豆油の青臭さ低減効果が得られた。前記コーン由来の焙煎油の添加量は、0.1質量%以上5質量%以下添加であることが好ましく、0.25質量%以上5質量%以下であることがより好ましいことが分かった。
【0059】
また、劣化した加熱調理用油脂組成物においては、実施例2-8乃至2-14に示すように、前記コーン由来の焙煎油を0.04質量%以上5質量%以下添加することによって大豆油の青臭さ低減効果が得られた。前記コーン由来の焙煎油の添加量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.25質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましいことが分かった。
【0060】
実施例2の結果から、大豆油を含む調合油に対して、コーン由来の焙煎油を添加することにより、優れた大豆油の青臭さ低減効果が得られることが明らかとなった。
【0061】
また、実施例1及び2の結果から、大豆油を47.5質量%以上99.96質量%以下含む加熱調理用油脂組成物において大豆油の青臭さ低減効果を確認できた。
【0062】
<実施例3>
大豆由来の焙煎油を調製して得た焙煎大豆油と、前記コーン由来の焙煎油との大豆油の青臭さ低減効果を比較検討した。焙煎大豆油としては、大豆をそのまま150℃で30分間焙煎し、溶剤抽出して得た焙煎油を脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理及び脱臭処理して精製油とした。焙煎大豆油の精製条件は、本実施例に用いた前記コーン由来の焙煎油に付した精製条件と同じである。
【0063】
大豆油に対して、前記焙煎大豆油又は前記コーン由来の焙煎油をそれぞれ0.4質量%添加した加熱調理用油脂組成物を調製し、該加熱調理用油脂組成物を用いてフライ調理したトンカツを食して、実施例1と同様に大豆油の青臭さ低減効果について実施例1と同じ方法にて評価した。
【0064】
上記トンカツをそれぞれ食した結果、前記焙煎大豆油では評価結果は3であり、前記コーン由来の焙煎油は4.5であった。実施例1-1の結果と比較すると、コーン由来の焙煎油と同等の効果を得るためには、焙煎大豆油を10倍量添加する必要があった。
【0065】
本発明の大豆油の青臭さ低減剤及び加熱調理食品に含まれる大豆油の青臭さ低減方法は、上述の実施形態及び実施例に限定するものではなく、発明の効果を損なわない範囲で、種々の変更が可能である。