(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】プロセスオイル及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 91/00 20060101AFI20230301BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20230301BHJP
C08K 5/3472 20060101ALI20230301BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08L91/00
C08L21/00
C08K5/3472
C08K5/13
(21)【出願番号】P 2019134769
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健治
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-056033(JP,A)
【文献】国際公開第2013/141123(WO,A1)
【文献】特開平07-228882(JP,A)
【文献】特開昭53-139603(JP,A)
【文献】特開2002-003877(JP,A)
【文献】特開平09-296191(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152752(WO,A1)
【文献】特開昭60-108458(JP,A)
【文献】特開昭61-072049(JP,A)
【文献】特開2018-145406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C10M
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)と、ベンゾトリアゾール系化合物(B)と、を含有し、
基油(A)は、下記要件(I)~(III)を満たし、
・要件(I):波長198nmにおける紫外吸光度が、5.0以下である
・要件(II):波長228nmにおける紫外吸光度が、4.0以下である
・要件(III):40℃における動粘度が、25mm
2/s以上500mm
2/s以下である
前記ベンゾトリアゾール系化合物(B)は、下記一般式(b-1)で表される化合物から選択される1種以上を含み、
【化1】
[前記一般式(b-1)中、R
1は炭素数1~4のアルキル基である。nは0~4の整数である。R
1が複数存在する場合、これらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
ベンゾトリアゾール系化合物(B)の含有量は、0.030質量%~0.060質量%であり、
フェノール系酸化防止剤(C)を含有しない、プロセスオイル。
【請求項2】
基油(A)と、ベンゾトリアゾール系化合物(B)と、フェノール系酸化防止剤(C)と、を含有し、
前記基油(A)は、下記要件(I)~(III)を満たし、
・要件(I):波長198nmにおける紫外吸光度が、5.0以下である
・要件(II):波長228nmにおける紫外吸光度が、4.0以下である
・要件(III):40℃における動粘度が、25mm
2/s以上500mm
2/s以下である
前記ベンゾトリアゾール系化合物(B)は、下記一般式(b-1)で表される化合物から選択される1種以上を含む、プロセスオイル。
【化2】
[前記一般式(b-1)中、R
1は炭素数1~4のアルキル基である。nは0~4の整数である。R
1が複数存在する場合、これらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【請求項3】
前記フェノール系酸化防止剤(C)は、モノフェノール系酸化防止剤(C1)から選択される1種以上を含む、請求項2に記載のプロセスオイル。
【請求項4】
前記モノフェノール系酸化防止剤(C1)は、2,6-ジ-tert-ブチル-4-アルキルフェノールから選択される1種以上を含み、2,6-ジ-tert-ブチル-4-アルキルフェノールが有するアルキル基の炭素数は1~4である、請求項3に記載のプロセスオイル。
【請求項5】
前記ベンゾトリアゾール系化合物(B)は、前記一般式(b-1)中におけるnが0である無置換のベンゾトリアゾール系化合物(B1)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセスオイル。
【請求項6】
ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の樹脂と混合して用いられる、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセスオイル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセスオイルと、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の樹脂と、を含有する、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスオイル及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマー等の樹脂を含む樹脂組成物は、最終製品の用途や要求される特性に応じて、押出成形、射出成形、ブロー成形、及びカレンダー加工等の加工が施されて成形品となる。その際、樹脂組成物の加工性を向上させる目的で、プロセスオイルを樹脂組成物に配合することがある。当該プロセスオイルは、いわゆる可塑剤としての役割を発揮する。当該プロセスオイルは、各種知られており、例えば特許文献1には、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、エステル系可塑剤、及びエーテル系可塑剤から選択される1種以上を配合した熱可塑性エラストマーが、成形加工性に優れることが記載されている。
【0003】
ところで、樹脂組成物には加飾性が求められることもある。加飾性が求められる樹脂組成物は、屋外における変色及び劣化の抑制、さらには高温環境下における変色及び劣化の抑制が要求される。かかる観点から、加飾性が求められる樹脂組成物を加工する際には、耐候性及び耐熱性に優れるプロセスオイルが用いられる。従来、耐候性及び耐熱性に優れるプロセスオイルとして、高精製度且つ高粘度のパラフィン系鉱油が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高精製度且つ高粘度のパラフィン系鉱油は、希少性が高く、十分な供給量を確保することが困難である。そこで、米国石油協会(以下、「API」と略記することもある。)の基油カテゴリーにおいて、グループ2に分類される鉱油系基油の中でも高粘度のものを、その代替として用いることが考えられる。しかしながら、当該鉱油系基油は、本来プロセスオイル用途の基油ではないため、耐候性に劣るものも存在する。耐候性に劣る鉱油系基油を、加飾性が求められる樹脂組成物に配合すると、当該樹脂組成物の耐候性を十分に確保できなくなり、変色や劣化が短期間で生じる恐れがある。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、耐候性に優れると共に耐熱性も確保され、安定して供給することが可能なプロセスオイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の基油に対して特定の添加剤を配合したプロセスオイルが、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記[1]~[7]に関する。
[1] 基油(A)と、ベンゾトリアゾール系化合物(B)と、を含有し、
基油(A)は、下記要件(I)~(III)を満たし、
・要件(I):波長198nmにおける紫外吸光度が、5.0以下である
・要件(II):波長228nmにおける紫外吸光度が、4.0以下である
・要件(III):40℃における動粘度が、25mm
2/s以上500mm
2/s以下である
前記ベンゾトリアゾール系化合物(B)は、下記一般式(b-1)で表される化合物から選択される1種以上を含み、
【化1】
[前記一般式(b-1)中、R
1は炭素数1~4のアルキル基である。nは0~4の整数である。R
1が複数存在する場合、これらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
ベンゾトリアゾール系化合物(B)の含有量は、0.030質量%~0.060質量%であり、
フェノール系酸化防止剤(C)を含有しない、プロセスオイル。
[2] 基油(A)と、ベンゾトリアゾール系化合物(B)と、フェノール系酸化防止剤(C)と、を含有し、
前記基油(A)は、下記要件(I)~(III)を満たし、
・要件(I):波長198nmにおける紫外吸光度が、5.0以下である
・要件(II):波長228nmにおける紫外吸光度が、4.0以下である
・要件(III):40℃における動粘度が、25mm
2/s以上500mm
2/s以下である
前記ベンゾトリアゾール系化合物(B)は、下記一般式(b-1)で表される化合物から選択される1種以上を含む、プロセスオイル。
【化2】
[前記一般式(b-1)中、R
1は炭素数1~4のアルキル基である。nは0~4の整数である。R
1が複数存在する場合、これらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
[3] 前記フェノール系酸化防止剤(C)は、モノフェノール系酸化防止剤(C1)から選択される1種以上を含む、上記[2]に記載のプロセスオイル。
[4] 前記モノフェノール系酸化防止剤(C1)は、2,6-ジ-tert-ブチル-4-アルキルフェノールから選択される1種以上を含み、2,6-ジ-tert-ブチル-4-アルキルフェノールが有するアルキル基の炭素数は1~4である、上記[3]に記載のプロセスオイル。
[5] 前記ベンゾトリアゾール系化合物(B)は、前記一般式(b-1)中におけるnが0である無置換のベンゾトリアゾール系化合物(B1)を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載のプロセスオイル。
[6] ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の樹脂と混合して用いられる、上記[1]~[5]のいずれかに記載のプロセスオイル。
[7] 上記[1]~[6]のいずれかに記載のプロセスオイルと、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の樹脂と、を含有する、樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐候性に優れると共に耐熱性も確保され、安定して供給することが可能なプロセスオイルを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0011】
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることができる。
同様に、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」、「未満」、「超」の数値もまた、任意に組み合わせることができる数値である。
【0012】
[プロセスオイルの態様]
本発明の第一態様のプロセスオイルは、基油(A)と、ベンゾトリアゾール系化合物(B)と、を含有する。
基油(A)は、下記要件(I)~(III)を満たす。
・要件(I):波長198nmにおける紫外吸光度が、5.0以下である
・要件(II):波長228nmにおける紫外吸光度が、4.0以下である
・要件(III):40℃における動粘度が、25mm
2/s以上500mm
2/s以下である
ベンゾトリアゾール系化合物(B)は、下記一般式(b-1)で表される化合物から選択される1種以上を含む。
【化3】
[前記一般式(b-1)中、R
1は炭素数1~4のアルキル基である。nは0~4の整数である。R
1が複数存在する場合、これらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
ベンゾトリアゾール系化合物(B)の含有量は、0.030質量%~0.060質量%であり、
フェノール系酸化防止剤(C)を含有しない。
【0013】
また、本発明の第二態様のプロセスオイルは、基油(A)と、ベンゾトリアゾール系化合物(B)と、フェノール系酸化防止剤(C)と、を含有する。
基油(A)は、下記要件(I)~(III)を満たす。
・要件(I):波長198nmにおける紫外吸光度が、5.0以下である
・要件(II):波長228nmにおける紫外吸光度が、4.0以下である
・要件(III):40℃における動粘度が、25mm
2/s以上500mm
2/s以下である
ベンゾトリアゾール系化合物(B)は、下記一般式(b-1)で表される化合物から選択される1種以上を含む。
【化4】
[前記一般式(b-1)中、R
1は炭素数1~4のアルキル基である。nは0~4の整数である。R
1が複数存在する場合、これらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【0014】
以降の説明において、「本発明のプロセスオイル」とは、「本発明の第一態様のプロセスオイル」及び「本発明の第二態様のプロセスオイル」の双方を指すものとする。
また、以降の説明では、「基油(A)」、「ベンゾトリアゾール系化合物(B)」、及び「フェノール系酸化防止剤(C)」を、それぞれ「成分(A)」、「成分(B)」、及び「成分(C)」ともいう。
【0015】
本発明の第一態様のプロセスオイルにおいて、成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、プロセスオイルの全量基準で、好ましくは95質量%~100質量%、より好ましくは97質量%~100質量%以上、更に好ましくは99質量%~100質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
また、本発明の第二態様のプロセスオイルにおいて、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計含有量は、プロセスオイルの全量基準で、好ましくは95質量%~100質量%、より好ましくは97質量%~100質量%以上、更に好ましくは99質量%~100質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
以下、本発明のプロセスオイルに含まれる各成分について、詳細に説明する。
【0016】
<基油(A)>
本発明のプロセスオイルは、基油(A)を含有する。
基油(A)は、下記要件(I)~(III)を満たす。
・要件(I):波長198nmにおける紫外吸光度が、5.0以下である
・要件(II):波長228nmにおける紫外吸光度が、4.0以下である
・要件(III):40℃における動粘度が、25mm2/s以上500mm2/s以下である
【0017】
(要件(I))
要件(I)では、波長198nmにおける紫外吸光度が、5.0以下であることを規定している。
本発明のプロセスオイルは、要件(I)を満たす基油(A)を用いることで、ベンゾトリアゾール系化合物(B)により耐候性が付与される。波長198nmにおける紫外吸光度が5.0超である基油を用いたプロセスオイルは、ベンゾトリアゾール系化合物(B)による耐候性の付与が困難である。
ここで、波長198nmにおける紫外吸光度が2.0超である基油は、耐候性が劣ることもある。しかし、本発明のプロセスオイルは、ベンゾトリアゾール系化合物(B)を含有することによって、波長198nmにおける紫外吸光度が2.0超である基油を用いた場合であっても、耐候性に優れる。
また、波長198nmにおける紫外吸光度が2.0以下である基油は、一定の耐候性は確保されている。しかし、プロセスオイルには、さらなる耐候性の向上が要求されることもある。本発明のプロセスオイルは、ベンゾトリアゾール系化合物(B)を含有することによって、波長198nmにおける紫外吸光度が2.0以下である基油を用いた場合に、さらなる耐候性の向上が可能となる。なお、基油(A)の波長198nmにおける紫外吸光度は、通常1.0以上である。
なお、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、要件(I)で規定する、波長198nmにおける紫外吸光度は、好ましくは2.0超5.0以下、より好ましくは2.0超4.5以下、更に好ましくは2.0超4.0以下、より更に好ましくは2.0超3.5以下、更になお好ましくは2.0超3.0以下である。
本発明において、上記要件(I)で規定する基油(A)波長198nmにおける紫外吸光度は、JIS K0115:2004に準拠して測定される値であり、詳細には、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0018】
(要件(II))
要件(II)では、波長228nmにおける紫外吸光度が、4.0以下であることを規定している。
本発明のプロセスオイルは、要件(II)を満たす基油(A)を用いることで、ベンゾトリアゾール系化合物(B)により耐候性が付与される。波長228nmにおける紫外吸光度が4.0超である基油を用いたプロセスオイルは、ベンゾトリアゾール系化合物(B)による耐候性の付与が困難である。
ここで、波長228nmにおける紫外吸光度が0.5超である基油は、耐候性に劣ることがある。しかし、本発明のプロセスオイルは、ベンゾトリアゾール系化合物(B)を含有することによって、波長228nmにおける紫外吸光度が0.5超である基油を用いた場合であっても、耐候性に優れる。
また、波長228nmにおける紫外吸光度が0.5以下である基油は、一定の耐候性は確保されている。しかし、プロセスオイルには、さらなる耐候性の向上が要求されることもある。本発明のプロセスオイルは、ベンゾトリアゾール系化合物(B)を含有することによって、波長228nmにおける紫外吸光度が1未満である基油を用いた場合に、さらなる耐候性の向上が可能となる。なお、基油(A)の波長228nmにおける紫外吸光度は、通常0.2以上である。
なお、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、要件(II)で規定する、波長228nmにおける紫外吸光度は、好ましくは0.5超4.0以下、より好ましくは0.5超3.0以下、更に好ましくは0.5超2.0以下、より更に好ましくは0.5超1.5以下、更になお好ましくは0.5超1.0以下である。
本発明において、上記要件(II)で規定する基油(A)の紫外吸光度は、JIS K0115:2004に準拠して測定される値であり、詳細には、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0019】
(要件(III))
要件(III)では、40℃における動粘度(以下、「40℃動粘度」ともいう。)が、25mm2/s以上500mm2/s以下であることを規定している。
基油(A)の動粘度が25mm2/s未満であると、樹脂組成物にプロセスオイルを配合して加工する際の加熱時に基油(A)が蒸発したり、発煙が生じたりすることがある。
また、基油(A)の動粘度が500mm2/s超であると、樹脂組成物にプロセスオイルを配合して加工する際の混錬等が難しくなることがある。
なお、プロセスオイルとしての性能をより発揮させやすくする観点から、要件(III)に規定する、基油(A)の40℃動粘度は、好ましくは50mm2/s以上450mm2/s以下、より好ましくは60mm2/s以上420mm2/s以下、更に好ましくは75mm2/s以上400mm2/s以下である。
本発明において、上記要件(III)で規定する基油(A)の40℃動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定される値である。
【0020】
(上記要件(I)~(III)を満たす基油(A))
上記要件(I)~(III)を満たす基油(A)としては、例えば、APIの基油カテゴリーにおいて、グループ2に分類される鉱油系基油が挙げられる。ここで、APIの基油カテゴリーは、基油の飽和分、硫黄分、及び粘度指数に基づいて分類されており、上記要件(I)及び(II)で規定するような紫外吸光度については通常検討されていない。
本発明者が鋭意検討した結果、APIの基油カテゴリーにおいて、グループ2に分類される鉱油系基油は、波長198nmにおける紫外吸光度が2.0以下であり、且つ波長228nmにおける紫外吸光度が0.5以下であるものが多い。一方で、波長198nmにおける紫外吸光度が2.0超であり、波長228nmにおける紫外吸光度が0.5超であるものも存在することがわかった。後者の鉱油系基油は、耐候性が劣ることもある。本発明のプロセスオイルは、このような鉱油系基油を用いた場合であっても、上記要件(I)及び(II)で規定する紫外吸光度を充足する範囲において、耐候性に優れると共に耐熱性も確保される。したがって、APIの基油カテゴリーにおいて、グループ2に分類される鉱油系基油全般を、プロセスオイルとして使用することが可能となり、プロセスオイルの安定供給に資するのである。
【0021】
APIの基油カテゴリーにおいて、グループ2に分類される鉱油系基油としては、例えば、パラフィン系原油及び中間基系原油等から選択される1種以上の常圧蒸留残渣油を減圧蒸留して得られる留分(減圧蒸留残渣油)に対し、水素化改質及び水素化異性化脱ろう等の精製手段を適宜に組み合わせて適用することにより得られる鉱油系基油を挙げることができる。
但し、基油(A)は、APIの基油カテゴリーにおいて、グループ2に分類される鉱油系基油には限定されず、上記要件(I)~(III)を満たす鉱油系基油等の各種基油を用いてもよい。
【0022】
なお、本発明の第一態様のプロセスオイルにおいて、基油(A)の含有量は、プロセスオイルの全量基準で、好ましくは99.50質量%以上、より好ましくは99.70質量%以上、更に好ましくは99.80質量%以上である。また、好ましくは99.97質量%以下である。
また、本発明の第二態様のプロセスオイルにおいて、基油(A)の含有量は、プロセスオイルの全量基準で、好ましくは99.00質量%以上、より好ましくは99.30質量%以上、更に好ましくは99.50質量%以上である。また、好ましくは99.90質量%以下、より好ましくは99.87質量%以下である。
【0023】
<ベンゾトリアゾール系化合物(B)>
本発明のプロセスオイルは、ベンゾトリアゾール系化合物(B)を含有する。
ベンゾトリアゾール系化合物(B)は、下記一般式(b-1)で表される化合物から選択される1種以上を含む。
【化5】
[前記一般式(b-1)中、R
1は炭素数1~4のアルキル基である。nは0~4の整数である。R
1が複数存在する場合、これらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【0024】
前記一般式(b-1)中、R1として選択される炭素数1~4のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。R1として選択される炭素数1~4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
ここで、前記一般式(b-1)中、R1として選択されるアルキル基の炭素数は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは1~3であり、より好ましくは1~2であり、更に好ましくは1である。
また、前記一般式(b-1)中、nは、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0又は1であり、更に好ましくは0である。
【0025】
前記一般式(b-1)で表される化合物としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、及びエチルベンゾトリアゾール等が挙げられ、好ましくは1,2,3-ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾールであり、より好ましくは1,2,3-ベンゾトリアゾールである。
【0026】
なお、本発明のプロセスオイルにおいて、前記一般式(b-1)で表される化合物から選択される1種以上の含有量は、ベンゾトリアゾール系化合物(B)の全量基準で、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%、一層好ましくは100質量%である。
【0027】
ここで、本発明の第一態様のプロセスオイルのように、ベンゾトリアゾール系化合物(B)を含有し、フェノール系酸化防止剤(C)を含有しない場合には、ベンゾトリアゾール系化合物(B)の含有量は、プロセスオイルの全量基準で、0.030質量%~0.060質量%である。本発明の第一態様のプロセスオイルにおいて、ベンゾトリアゾール系化合物(B)の含有量が0.030質量%未満であると、プロセスオイルの耐候性を十分に確保することができない。また、ベンゾトリアゾール系化合物(B)の含有量が0.060質量%超であると、プロセスオイルの耐熱性を十分に確保することができない。
本発明の第一態様のプロセスオイルにおいて、耐候性により優れ、且つ耐熱性を確保しやすくする観点から、ベンゾトリアゾール系化合物(B)の含有量は、プロセスオイルの全量基準で、好ましくは0.035質量%~0.057質量%、より好ましくは0.040質量%~0.055質量%、更に好ましくは0.045質量%~0.055質量%である。
【0028】
また、本発明の第二態様のプロセスオイルのように、ベンゾトリアゾール系化合物(B)を含有すると共に、フェノール系酸化防止剤(C)を含有する場合には、ベンゾトリアゾール系化合物(B)の含有量は、特に制限されないが、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは0.030質量%以上0.20質量%以下、より好ましくは0.035質量%以上0.20質量%未満、更に好ましくは0.040質量%以上0.15質量%以下、より更に好ましくは0.040質量%以上0.12質量%以下である。
【0029】
ここで、本発明のプロセスオイルは、耐候性に優れると共に耐熱性を確保しやすくする観点から、下記一般式(b-2)で表される化合物の含有量が少ないことが好ましい。
【化6】
[前記一般式(b-2)中、R
11は炭素数1~4のアルキル基である。mは0~4の整数である。R
12はメチレン基又はエチレン基である。R
13及びR
14は、各々独立して、水素原子又は炭素数1~18のアルキル基である。R
11が複数存在する場合、これらは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。]
【0030】
前記一般式(b-2)中、R11として選択される炭素数1~4のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。R11として選択される炭素数1~4のアルキル基の具体例としては、前記一般式(b-2)中のR1として例示したアルキル基と同様のものが挙げられる。
R13及びR14は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。R13及びR14のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基、各種テトラデシル基、各種ペンタデシル基、各種ヘキサデシル基、各種ヘプタデシル基、及び各種オクタデシル基等のアルキル基が挙げられる。ここで、「各種」とは、直鎖状及び分岐鎖状のあらゆる基が含まれることを示す。
【0031】
前記一般式(b-2)で表される化合物としては、例えば、1-[N,N-ビス(2-メチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0032】
なお、本発明のプロセスオイルにおいて、前記一般式(b-2)で表される化合物の含有量は、ベンゾトリアゾール系化合物(B)の全量基準で、好ましくは0質量%~10質量%、より好ましくは0質量%~5.0質量%、更に好ましくは0質量%~1.0質量%、より更に好ましくは0質量%~0.5質量%、更になお好ましくは0質量%~0.1質量%、一層好ましくは0質量%である。
また、本発明のプロセスオイルにおいて、前記一般式(b-2)で表される化合物の含有量は、プロセスオイルの全量基準で、好ましくは0質量%~0.01質量%、より好ましくは0質量%~0.001質量%、更に好ましくは0質量%である。
【0033】
<フェノール系酸化防止剤(C)>
本発明の第二態様のプロセスオイルは、フェノール系酸化防止剤(C)を含有する。
フェノール系酸化防止剤(C)としては、例えば、モノフェノール系酸化防止剤(C1)及びビスフェノール系酸化防止剤(C2)から選択される1種以上が挙げられる。これらの中でも、モノフェノール系酸化防止剤(C1)から選択される1種以上を含むことが好ましい。
モノフェノール系酸化防止剤(C1)の含有量は、フェノール系酸化防止剤(C)の全量基準で、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、更に好ましくは70質量%~100質量%、より更に好ましくは80質量%~100質量%、更になお好ましくは90質量%~100質量%、一層好ましくは100質量%である。
【0034】
モノフェノール系酸化防止剤(C1)としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-アルキルフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェノール、n-オクチル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、6-メチルヘプチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
これらの中でも、2,6-ジ-tert-ブチル-4-アルキルフェノールが好ましく、2,6-ジ-tert-ブチル-4-アルキルフェノールが有するアルキル基の炭素数は1~4が好ましく、1~2がより好ましく、1が更に好ましい。
具体的には、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-プロピルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ブチルフェノールが好ましく、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノールがより好ましく、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールが更に好ましい。
【0035】
本発明の第二態様のプロセスオイルにおいて、フェノール系酸化防止剤(C)の含有量は、特に制限されないが、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、好ましくは0.010質量%~0.20質量%、より好ましくは0.030質量%~0.17質量%、更に好ましくは0.050質量%~0.15質量%である。
【0036】
<ベンゾトリアゾール系化合物(B)とフェノール系酸化防止剤(C)との含有量比>
本発明の第二態様のプロセスオイルにおいて、フェノール系酸化防止剤(B)とベンゾトリアゾール系酸化防止剤(C)との含有量比[(B)/(C)]は、本発明の効果をより発揮させやすくする観点から、1/4~2/1であることが好ましく、3/10~8/5であることがより好ましく、2/5~6/5であることが更に好ましい。
【0037】
<硫黄系酸化防止剤>
本発明のプロセスオイルは、耐候性に優れると共に耐熱性を確保しやすくする観点から、硫黄系酸化防止剤の含有量は少ないことが好ましい。具体的には、本発明のプロセスオイルにおいて、硫黄系酸化防止剤の含有量は、プロセスオイルの全量基準で、好ましくは0質量%~0.01質量%、より好ましくは0質量%~0.001質量%、更に好ましくは0質量%である。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、アルキルスルフィド系化合物、チアジアゾール系化合物、及びチオカーバメート系化合物等が挙げられる。
【0038】
[プロセスオイルの物性]
本発明の第一態様のプロセスオイルは、後述する実施例に記載の方法で測定された耐候性試験後のセイボルト色が、好ましくは+5以上、より好ましくは+8以上、更に好ましくは+11以上である。
また、本発明の第一態様のプロセスオイルは、後述する実施例に記載の方法で測定された耐熱性試験後のセイボルト色が、好ましくは0以上、より好ましくは+1以上、更に好ましくは+2以上である。
次に、本発明の第二態様のプロセスオイルは、後述する実施例に記載の方法で測定された耐候性試験後のセイボルト色が、好ましくは+10以上、より好ましくは+15以上、更に好ましくは+17以上である。
また、本発明の第二態様のプロセスオイルは、後述する実施例に記載の方法で測定された耐熱性試験後のセイボルト色が、好ましくは-1以上、より好ましくは+5以上、更に好ましくは+10以上である。
【0039】
[プロセスオイルの用途]
本発明のプロセスオイルは、上記要件を満たすものであるため、耐候性に優れると共に耐熱性も確保されている。また、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の樹脂との相溶性も良好である。そのため、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の樹脂の加工に用いられるプロセスオイルとして好適である。
つまり、本発明のプロセスオイルは、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択される1種以上の樹脂と混合して用いられることが好ましい。
【0040】
ゴム系樹脂としては、例えば、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
なお、本発明のプロセスオイルと、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択される1種以上の樹脂とを混合して得られる樹脂組成物に加飾性が要求される場合、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーは、水添品であることが好ましい。
したがって、本発明のプロセスオイルは、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択される1種以上の樹脂の水添品と混合して用いられることが好ましい。
【0041】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、上記要件を満たすプロセスオイルと、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の樹脂とを含む。
ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーの具体例は、上記と同様である。
また、上記と同様、本発明のプロセスオイルと、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選択される1種以上の樹脂とを混合して得られる樹脂組成物に加飾性が要求される場合、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーは、水添品であることが好ましい。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、上記要件を満たすプロセスオイル、及び樹脂又は当該樹脂の水添品と共に、添加剤が添加されていてもよい。
当該添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材、及び発泡剤等が挙げられる。
これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
なお、本発明の樹脂組成物に含まれる、本発明のプロセスオイルの含有量としては、当該樹脂組成物の全量基準で、好ましくは1.0質量%~90質量%、より好ましくは2.0質量%~80質量%、更に好ましくは3.0質量%~60質量%である。
【0044】
また、本発明の樹脂組成物に含まれる、前記樹脂の含有量としては、当該樹脂組成物の全量基準で、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。
【0045】
[樹脂組成物及び成形品の製造方法]
本発明は、上記要件を満たすプロセスオイルとゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の樹脂とを含む樹脂組成物も提供し得る。
例えば、以下の工程(X1)を含む、樹脂組成物の製造方法が提供される。
・工程(X1):本発明のプロセスオイルと、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の樹脂とを混練する工程
さらに、本発明の一態様では、以下の工程(Y1)~(Y2)を含む、成形品の製造方法が提供される。
・工程(Y1):本発明のプロセスオイルと、ゴム系樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の樹脂とを混練する工程。
・工程(Y2):工程(Y1)において得られた混合物を成形する工程。
【0046】
なお、樹脂組成物に加飾性が要求される場合には、工程(X1)及び工程(Y1)に用いられる樹脂は、水添品であることが好ましい。
また、樹脂組成物は、更に添加剤を含有してもよい。
樹脂組成物に配合される添加剤は、上記と同様である。
【0047】
本発明の一態様の製造方法における工程(X1)及び工程(Y1)での混練条件は、特に限定されず、樹脂にプロセスオイルを配合して混練する際の通常の条件を用いることができる。
また、本発明の一態様の製造方法における工程(X1)及び工程(Y1)での樹脂に対する本発明のプロセスオイルの配合量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは3質量部~900質量部、より好ましくは10質量部~800質量部、更に好ましくは20質量部~600質量部である。
本発明のプロセスオイルを、これらの配合量の範囲で樹脂に配合することで、耐候性及び耐熱性に優れる樹脂組成物が得られやすい。
なお、成形品を得るための成形方法は、特に限定されず、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、及びカレンダー加工等が挙げられる。
【実施例】
【0048】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
[各種物性値]
各種物性値の測定法は、以下のとおりとした。
(1)40℃動粘度
基油(A)の40℃動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して測定した。
(2)紫外吸光度
基油(A)の紫外吸光度は、JIS K0115:2004に準拠して測定した。
具体的には、基油(A)2.00gをヘキサンで希釈して50mLとしたものを試料とし、当該試料を厚さ10mmのセルに入れ、ヘキサンをブランクとして、波長198nm及び波長228nmで測定したときの吸光度を測定した。
【0050】
[製造例]
本実施例で用いた基油(A)は、以下の手順で調製した。
中間基系原油の常圧蒸留残渣油を減圧蒸留し、減圧蒸留残渣油を得た。次いで、減圧蒸留残渣油を水素化分解装置にて水素化分解し、含蝋精製油を得た。そして、含蝋精製油を水素化異性化脱蝋し、さらに水素化仕上げを行って、基油(A)を得た。
【0051】
[各成分の詳細]
<基油(A)>
上記製造例で調製した基油を用いた。
基油(A)の各種物性値を以下に示す。
・40℃動粘度:106.8mm2/s
・紫外吸光度(198nm):2.575
・紫外吸光度(228nm):0.727
上記製造例で調製した基油は、APIの基油カテゴリーにおいて、グループ2に分類される鉱油系基油であるが、耐候性に劣る基油である。
【0052】
<添加剤>
(ベンゾトリアゾール系化合物(B))
・ベンゾトリアゾール系化合物(B1):1,2,3-ベンゾトリアゾール(上記一般式(b-1)中、n=0である化合物である。)
・ベンゾトリアゾール化合物(B2):1-[N,N-ビス(2-メチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール(上記一般式(b-2)中、R11はメチル基であり、m=1であり、R12はメチレン基であり、R13及びR14は、2-メチルヘキシル基である化合物である。)
(酸化防止剤)
・フェノール系酸化防止剤(C):2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(モノフェノール系酸化防止剤である。)
・硫黄系酸化防止剤:ジチオカーバメート
【0053】
[実施例1~8及び比較例1~11]
上記成分を表1及び表2に示す配合量(単位:質量%)で混合し、実施例1~8のプロセスオイル及び比較例1~11のプロセスオイルを調製した。
【0054】
[評価方法]
実施例1~8のプロセスオイル及び比較例1~11のプロセスオイルについて、以下に説明する耐候性試験及び耐熱性試験を実施した。
なお、耐候性試験及び耐熱性試験の評価は、JIS K2580:2008に準拠し、プロセスオイルのセイボルト色で評価した。
【0055】
<耐候性試験>
100cc瓶に80ccのプロセスオイルを入れ、瓶の蓋を開けた状態で、株式会社東洋精機製作所製の「サンテストCPS」にセットした。そして、キセノン(Xe)ランプから発せられる光を、765W/m2の強度で、24時間、瓶内のプロセスオイルに照射した。キセノン(Xe)ランプ照射中のブラックパネル温度(装置内の温度計部分の温度)は65℃に維持した。
キセノン(Xe)ランプから発せられる光を照射した後、プロセスオイルのセイボルト色を評価し、セイボルト色が「+5」以上を合格とした。
【0056】
<耐熱性試験>
100cc瓶に80ccのプロセスオイルを入れ、アルミホイルで蓋をした。そして、これを株式会社東洋精機製作所製の「ギヤーオーブン」に入れ、温度220℃で、1時間加熱した。加熱終了後、プロセスオイルのセイボルト色を評価し、セイボルト色が「-1」以上を合格とした。
【0057】
結果を表1及び表2に示す。
【0058】
【0059】
【0060】
表1及び表2に示す結果から、以下のことがわかる。
比較例1のように、基油(A)単独の場合には、耐候性が確保できないことがわかる。
これに対し、実施例1~4のように、基油(A)と共に、ベンゾトリアゾール系化合物(B)を単独で0.030質量%~0.060質量%含有する場合、耐候性に優れると共に耐熱性も確保されたプロセスオイルが得られることがわかる。また、実施例5~8のように、基油(A)と共に、ベンゾトリアゾール系化合物(B)及びフェノール系酸化防止剤(C)を含有することにより、耐候性に優れると共に耐熱性も優れるプロセスオイルが得られることがわかる。
一方、比較例2のように、ベンゾトリアゾール系化合物(B)の含有量が0.030質量%未満である場合、耐候性に劣るプロセスオイルとなることがわかる。また、比較例3~6のように、ベンゾトリアゾール系化合物(B)の含有量が0.060質量%超である場合、耐熱性に劣るプロセスオイルとなることがわかる。
また、比較例8~10のように、フェノール系酸化防止剤(C)のみを単独で含有する場合には、耐候性が確保できないことがわかる。 さらに、比較例7のように、ベンゾトリアゾール系化合物であっても、上記一般式(b-2)に示す化合物に包含される1-[N,N-ビス(2-メチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾールを含有する場合には、耐候性も耐熱性も確保できないことがわかる。
また、比較例11のように、硫黄系酸化防止剤であるジチオカーバメートを単独で含有する場合にも、耐候性も耐熱性も確保できないことがわかる。