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特許7235728グリース組成物、機構部品、及びグリース組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】グリース組成物、機構部品、及びグリース組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 123/04 20060101AFI20230301BHJP
   C10M 113/16 20060101ALN20230301BHJP
   C10M 119/20 20060101ALN20230301BHJP
   C10M 119/24 20060101ALN20230301BHJP
   C10N 20/06 20060101ALN20230301BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230301BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
C10M123/04
C10M113/16
C10M119/20
C10M119/24
C10N20:06 B
C10N30:00 C
C10N50:10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020510950
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012967
(87)【国際公開番号】W WO2019189239
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018069461
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 洸
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106479627(CN,A)
【文献】国際公開第2016/175258(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/118814(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0186025(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103468353(CN,A)
【文献】特開2004-269789(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106544146(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107532104(CN,A)
【文献】阿部賢太郎,植物由来の高強度ナノファイバー「セルロースナノファイバー」の製造,生存圏研究,2017年,第13号, p.43-50,特にP.44, 第22-30行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と、太さ(d)が1nm~500nmであり、アスペクト比が5以上であり、セルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、及びキトサンから選ばれる1種以上の多糖類を含む親水性ナノファイバーと、有機ベントナイトとを含有する、グリース組成物。
【請求項2】
前記有機ベントナイトに対する前記親水性ナノファイバーの含有量比が、質量比で、0.2~5.0である、請求項1に記載のグリース組成物。
【請求項3】
前記親水性ナノファイバーの含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.1~20質量%である、請求項1又は2に記載のグリース組成物。
【請求項4】
前記有機ベントナイトの含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.01~15質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のグリース組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のグリースが充填された、機構部品。
【請求項6】
下記工程(1)~(3)を有する、グリース組成物の製造方法。
・工程(1):太さ(d’)が1~500nmであり、アスペクト比が5以上であり、セルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、及びキトサンから選ばれる1種以上の多糖類を含む親水性ナノファイバーを水中に配合してなる水分散液と、基油と、分散剤とを混合し、混合液を調製する工程。
・工程(2):前記混合液から、水を除去し、グリースを調製する工程。
・工程(3):前記グリースに、有機ベントナイトを配合する工程。
【請求項7】
前記分散剤が、非プロトン性極性溶媒、アルコール類、及び界面活性剤から選ばれる1種以上である、請求項に記載のグリース組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリース組成物、当該グリース組成物が充填された機構部品、及び当該グリース組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリース組成物は、主に基油及び増ちょう剤から構成される。増ちょう剤としては、例えば、リチウム石けん等の脂肪族金属塩やジウレア化合物等が広く用いられている。
近年では、環境負荷の低いグリース組成物を提供すべく、生分解性を有する増ちょう剤を用いたグリース組成物も提案されている。例えば、特許文献1では、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」ともいう)を増ちょう剤として用いたグリース組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-210612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、CNF等の親水性ナノファイバーを増ちょう剤として用いたグリース組成物は、耐水性が不十分である。また、油分離を起こしやすい。この問題の解決策の一つとして、親水性ナノファイバーの親水基を、疎水性の官能基で置き換えて疎水化させることが挙げられる。
しかしながら、親水性ナノファイバーを疎水化させると、当該親水性ナノファイバーが本来有する安定性及び安全性が損なわれ得る。そこで、当該親水性ナノファイバーを用いながらも、優れた耐水性を有し、かつ油分離しにくいグリース組成物の提供が望まれる。
【0005】
本発明は、かかる要望に鑑みてなされたものであって、親水性ナノファイバーを用いながらも、優れた耐水性を有し、かつ油分離しにくいグリース組成物、当該グリース組成物が充填された機構部品、及び当該グリース組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、親水性ナノファイバーと有機ベントナイトとを含有するグリース組成物が、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記[1]~[9]に関する。
[1] 基油と、太さ(d)が1~500nmの親水性ナノファイバーと、有機ベントナイトとを含有する、グリース組成物。
[2] 前記有機ベントナイトに対する前記親水性ナノファイバーの含有量比が、質量比で、0.2~5.0である、上記[1]に記載のグリース組成物。
[3] 前記親水性ナノファイバーの含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.1~20質量%である、上記[1]又は[2]に記載のグリース組成物。
[4] 前記有機ベントナイトの含有量が、前記グリース組成物の全量基準で、0.01~15質量%である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のグリース組成物。
[5] 前記親水性ナノファイバーのアスペクト比が5以上である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のグリース組成物。
[6] 前記親水性ナノファイバーが、セルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、及びキトサンから選ばれる1種以上の多糖類を含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載のグリース組成物。
[7] 上記[1]~[6]のいずれかに記載のグリースが充填された、機構部品。
[8] 下記工程(1)~(3)を有する、グリース組成物の製造方法。
・工程(1):太さ(d’)が1~500nmの親水性ナノファイバーを水中に配合してなる水分散液と、基油と、分散剤とを混合し、混合液を調製する工程。
・工程(2):前記混合液から、水を除去し、グリースを調製する工程。
・工程(3):前記グリースに、有機ベントナイトを配合する工程。
[9] 前記分散剤が、非プロトン性極性溶媒、アルコール類、及び界面活性剤から選ばれる1種以上である、上記[8]に記載のグリース組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、親水性ナノファイバーを用いながらも、優れた耐水性を有し、かつ油分離しにくいグリース組成物、当該グリース組成物が充填された機構部品、及び当該グリース組成物の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明のグリース組成物の態様]
本発明のグリース組成物は、基油と、太さ(d)1~500nmの親水性ナノファイバーと、有機ベントナイトとを含有する、グリース組成物(第1のグリース組成物)である。
本発明の別態様のグリース組成物は、本発明のグリース組成物の製造方法により得られる、グリース組成物(第2のグリース組成物)である。本発明のグリース組成物の製造方法は、下記工程(1)~(3)を有する。
・工程(1):太さ(d’)が1~500nmの親水性ナノファイバーを水中に配合してなる水分散液と、基油と、分散剤とを混合し、混合液を調製する工程。
・工程(2):前記混合液から、水を除去し、グリースを調製する工程。
・工程(3):前記グリースに、有機ベントナイトを配合する工程。
第2のグリース組成物は、当該混合液を調製した後、当該混合液から少なくとも水を除去することで得られるグリース組成物であるが、当該混合液から水及び当該分散剤を除去することで得られるグリース組成物であってもよい。
前記水分散液及び前記分散剤に関する詳細は、「本発明のグリース組成物の製造方法」の項目にて後述する。
なお、本明細書において、「第1のグリース組成物」及び「第2のグリース組成物」をまとめて、「本発明のグリース組成物」又は「本発明の一態様のグリース組成物」ともいう。
【0010】
第1のグリース組成物では、当該グリース組成物に含有している親水性ナノファイバーの太さ(d)を規定している。つまり、基油中に分散している親水性ナノファイバーの太さ(d)を規定している。また、第2のグリース組成物では、基油と混合する前の親水性ナノファイバーの太さ(d’)を規定している。
当該規定を満たすことにより、基油中において、親水性ナノファイバーが高次構造を形成しやすい。また、親水性ナノファイバーを基油中に均一に分散させ易い。
さらに、第1のグリース組成物及び第2のグリース組成物は、有機ベントナイトを含有している。有機ベントナイトは、親水性の面(親水基を有する面)が親水性ナノファイバーの親水基を吸着したり、当該親水性の面が親水性ナノファイバーの親水基に接近したりすることにより、均一に分散している親水性ナノファイバーの近傍に分散する。その結果、当該有機ベントナイトは、あたかも親水性ナノファイバーの親水基を取り囲むように均一に分散して配置される。そのため、親水性ナノファイバーが擬似的に疎水化され、グリース組成物に優れた耐水性が付与されると共に、グリース組成物からの油分離が抑制されると推察される。
しかも、上記のとおり、親水性ナノファイバーが高次構造を形成しやすく、親水性ナノファイバー及び有機ベントナイトを基油中に均一に分散させ易いことから、親水性ナノファイバーの含有量が少量であり、かつ有機ベントナイトの含有量が少量であっても、適度な混和ちょう度を有するグリース組成物とすることができる。
また、親水性ナノファイバー及び有機ベントナイトは、環境負荷が低く、人体への安全性に優れる。したがって、本発明のグリース組成物は、環境負荷が低く、かつ人体への安全性が高い。
【0011】
ここで、「親水性ナノファイバーの含有量が少量」とは、当該親水性ナノファイバーの含有量が、グリース組成物の全量(100質量%)基準で、20質量%以下であることを意味しており、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
また、「有機ベントナイトの含有量が少量」とは、当該有機ベントナイトの含有量が、グリース組成物の全量(100質量%)基準で、15質量%以下であることを意味しており、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
【0012】
本発明の一態様のグリース組成物は、基油、親水性ナノファイバー、及び有機ベントナイトと共に、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに他の成分を含有してもよい。例えば、一般的なグリース組成物に配合される各種添加剤を含有してもよい。
【0013】
本発明の一態様のグリース組成物は、基油、親水性ナノファイバー、及び有機ベントナイトの合計含有量が、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、更になお好ましくは90質量%以上である。
【0014】
本発明の一態様のグリース組成物は、より優れた耐水性を付与する観点及び油分離をより抑制する観点から、有機ベントナイト(A)に対する親水性ナノファイバー(B)の含有量比(B/A)が、質量比で、好ましくは0.2~5.0、より好ましくは0.2~5.0未満、更に好ましくは0.5~4.5、より更に好ましくは0.8~4.3、更になお好ましくは1.0~4.2である。
【0015】
以下、本発明のグリース組成物に含まれる各成分について説明する。
なお、本発明の第1のグリース組成物及び第2のグリース組成物における、基油の詳細、親水性ナノファイバーの詳細、及び有機ベントナイトの詳細は、互いに同じである。
【0016】
<基油>
本発明のグリース組成物に含まれる基油は、用途に応じて適宜選択される。例えば、鉱油、合成油、動物性油、植物性油、及び流動パラフィン等が挙げられる。
当該基油は、1種のみからなる基油であってもよく、2種以上を組み合わせた混合基油であってもよい。
【0017】
(鉱油)
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、又はナフテン系原油を常圧蒸留もしくは常圧蒸留残渣油を減圧蒸留して得られる留出油;これらの留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、及び水素化精製等の精製処理、並びに溶剤脱ろう及び接触脱ろう等の精製処理から選択される一つ以上の精製処理を施した精製油(具体的には溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油、白土処理油等);フィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる鉱油;等が挙げられる。
これらの鉱油の中でも、API(米国石油協会)基油カテゴリーのグループ3に分類される鉱油が好ましい。
【0018】
(合成油)
合成油としては、例えば、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油、及び脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0019】
炭化水素系油としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1-デセンオリゴマー、1-デセンとエチレンコオリゴマー等のポリ-α-オレフィン(PAO)及びこれらの水素化物等が挙げられる。
【0020】
芳香族系油としては、例えば、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;等が挙げられる。
【0021】
エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチルアセチルリシノレート等のジエステル系油;トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル系油;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル系油;多価アルコールと二塩基酸及び一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステル等のコンプレックスエステル系油;等が挙げられる。
【0022】
エーテル系油としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコール;モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル系油;等が挙げられる。
【0023】
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数が8~22の脂肪酸が好ましく、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
具体的な脂肪酸エステルとしては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0024】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンジオレエート、グリセリンジステアレート、グリセリンジカプリレート等が挙げられる。
【0025】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノイソステアレート、ジグリセリンジオレエート、ジグリセリントリオレエート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリントリステアレート、ジグリセリントリイソステアレート、ジグリセリンモノカプリレート、ジグリセリンジカプリレート、ジグリセリントリカプリレート、トリグリセリンモノオレエート、トリグリセリンジオレエート、トリグリセリントリオレエート、トリグリセリンテトラオレエート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレート、トリグリセリントリステアレート、トリグリセリンテトラステアレート、トリグリセリンモノカプリレート、トリグリセリンジカプリレート、トリグリセリントリカプリレート、トリグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンモノオレイン酸モノステアリン酸エステル、ジグリセリンモノオレイン酸ジステアリン酸エステル、ジグリセリンモノカプリル酸モノステアリン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸モノステアリン酸エステル、トリグリセリンジオレイン酸ジステアリン酸エステル、トリグリセリンジオレイン酸モノステアリン酸エステル、トリグリセリンモノオレイン酸モノステアリン酸モノカプリル酸エステル、ジグリセリンモノラウリレート、ジグリセリンジラウリレート、トリグリセリンモノラウリレート、トリグリセリントリラウリレート、トリグリセリントリラウリレート、ジグリセリンモノミリスチレート、ジグリセリンジミリスチレート、トリグリセリンモノミリスチレート、トリグリセリンジミリスチレート、トリグリセリントリミリスチレート、ジグリセリンモノリノレート、ジグリセリンジリノレート、トリグリセリンモノリノレート、トリグリセリンジリノレート、トリグリセリントリリノレート、デカグリセリンモノオレエート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノカプリル酸モノオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0026】
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、プロピレングリコールモノオレエート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウリレート等が挙げられる。
【0027】
(植物性油)
植物性油としては、植物に由来する油類であって、具体的には、菜種油、ピーナッツ油、コーン油、綿実油、キャノーラ油、大豆油、ヒマワリ油、パーム油、やし油、ベニバナ油、ツバキ油、オリーブ油、落花生油等が挙げられる。
【0028】
(動物性油)
動物性油としては、動物に由来する油類であって、具体的には、ラード、牛脚油、サナギ油、イワシ油、ニシン油等が挙げられる。
【0029】
(流動パラフィン)
流動パラフィンとしては、C(mは炭素数であり、n<2m+2である)で示される分岐構造、環構造を有する脂環式炭化水素化合物又はそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
上記基油の中でも、親水性ナノファイバー及び有機ベントナイトの基油との親和性の観点から、本発明の一態様のグリース組成物に含まれる基油としては、API基油カテゴリーのグループ3に分類される鉱油、合成油、植物性油、動物性油、脂肪酸エステル、及び流動パラフィンから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0031】
(基油の動粘度及び粘度指数)
本発明の一態様で用いる基油は、40℃における動粘度が、好ましくは10~400mm/s、より好ましくは15~300mm/s、更に好ましくは20~200mm/s、より更に好ましくは20~130mm/sである。
当該動粘度が10mm/s以上であれば、グリース組成物からの油分離が起こりにくい。
当該動粘度が400mm/s以下であれば、摺動部分へ油が供給され易い。
なお、本発明の一態様で用いる基油は、高粘度の基油と、低粘度の基油とを組み合わせて、動粘度を上記範囲に調整した混合基油としてもよい。
また、本発明の一態様で用いる基油は、粘度指数が、好ましくは60以上、より好ましくは70以上、更に好ましくは80以上である。
なお、本発明において、40℃における動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出した値を意味する。
【0032】
(基油の含有量)
本発明の一態様のグリース組成物に含まれる基油の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上である。
【0033】
<親水性ナノファイバー>
親水性ナノファイバーは、親水性を有する化合物を含む形成材料から構成される、太さが500nm以下の繊維状物を意味し、フレーク状物、パウダー状物、及び粒子状物とは区別される。
【0034】
(「親水性」の判断基準)
ナノファイバーが「親水性」であるか否かは、以下のように判断する。
対象となるナノファイバー(繊維状物)をシート状物に成型し、当該シート状物の表面に水滴を滴下する。その際、(1)水との接触角が90°以下である場合、または(2)滴下した水滴がシート状物に速やかに吸収される場合、当該ナノファイバーは「親水性」であると判断する。
【0035】
(親水性ナノファイバーの「太さ」)
さらに、親水性ナノファイバーの「太さ」の定義は、一般的な繊維状物の太さに関する定義と同様である。
具体的には、親水性ナノファイバーの側面上の任意の点における接線方向に対して垂直に切断したときの切断面において、当該切断面が円又は楕円であれば、直径又は長径が親水性ナノファイバーの「太さ」である。当該切断面が多角形であれば、当該多角形の外接円の直径が親水性ナノファイバーの「太さ」である。
【0036】
増ちょう剤として、数μm以上のサイズを有するフレーク状、パウダー状、又は粒子状の親水性化合物を、基油に配合した場合、基油中において、当該親水性化合物が凝集し、いわゆる「ダマ」となり易い。その結果、得られるグリース組成物の表面上には、親水性化合物の凝集物が析出し、分散状態が不均一となり易い。この場合、得られるグリース組成物の混和ちょう度を上げるためには、多量の親水性化合物の添加が必要となる。しかし、油膜厚さよりも大きな粒子を含むため、耐摩耗性が劣るグリース組成物となる。
一方で、本発明のグリース組成物は、太さ(d)が1~500nmの親水性ナノファイバーが基油に配合されるため、基油中において、当該親水性ナノファイバーが凝集することなく、当該親水性ナノファイバーを均一に分散させながらも、当該親水性ナノファイバーによる高次構造が形成される。その結果、親水性ナノファイバーの含有量が少量であるにも関わらず、適度な混和ちょう度を有するグリース組成物とすることができる。
【0037】
(親水性ナノファイバーの太さ(d)及びアスペクト比)
本発明において、「親水性ナノファイバーの太さ(d)」は、基油中に分散している親水性ナノファイバーの太さを示し、後述の基油中に配合される前の原料としての「親水性ナノファイバーの太さ(d’)」とは区別される。
但し、基油中に分散している「親水性ナノファイバーの太さ(d)」と、基油中に配合される前の原料としての「親水性ナノファイバーの太さ(d’)」とは、ほとんど差がない。したがって、基油中に分散している「親水性ナノファイバーの太さ(d)」と、基油中に配合される前の原料としての「親水性ナノファイバーの太さ(d’)」とは、実質的には同一とみなすこともできる。
基油中に分散している親水性ナノファイバーの太さ(d)は、1~500nmであるが、基油中において、当該親水性ナノファイバーによる高次構造を形成する観点、及び当該親水性ナノファイバーをより均一に分散させる観点から、好ましくは3~300nm、より好ましくは5~200nm、更に好ましくは10~100nm、より更に好ましくは15~70nm、更になお好ましくは20~50nmである。
【0038】
なお、本発明のグリース組成物に含まれる親水性ナノファイバーについては、少なくとも太さ(d)が上記範囲の親水性ナノファイバーの分散が確認されればよく、太さ(d)が上記範囲から外れた親水性ナノファイバーが分散していてもよい。
ただし、本発明の一態様のグリース組成物において、基油中において、当該親水性ナノファイバーによる高次構造を形成する観点、及び当該親水性ナノファイバーをより均一に分散させる観点から、基油中に分散している親水性ナノファイバーから任意に選択した10本の親水性ナノファイバーの太さ(d)の平均値が、1~500nmであり、好ましくは3~300nm、より好ましくは5~200nm、更に好ましくは10~100nm、より更に好ましくは15~70nm、更になお好ましくは20~50nmである。
また、上記観点から、本発明のグリース組成物中に含まれる親水性ナノファイバーのうち、任意に選択した10本中、太さ(d)が上記範囲の親水性ナノファイバーの本数が、1本以上(より好ましくは5本以上、更に好ましくは7本以上)存在することが好ましく、選択した10本の親水性ナノファイバーの太さ(d)のいずれもが、上記範囲の親水性ナノファイバーであることがより好ましい。
【0039】
本発明の一態様のグリース組成物において、親水性ナノファイバーのアスペクト比は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、より更に好ましくは30以上、更になお好ましくは50以上である。
本明細書において、「アスペクト比」とは、観察対象である親水性ナノファイバーの太さに対する長さの割合(長さ/太さ)であり、親水性ナノファイバーの「長さ」とは、当該親水性ナノファイバーの最も離れた2点間の距離を指す。
また、観察対象となる親水性ナノファイバーの一部分が、他の親水性ナノファイバーと接触して「長さ」の認定が難しい場合には、観察対象の親水性ナノファイバーのうち、太さの測定が可能な部分のみの長さを測定し、当該部分のアスペクト比が上記範囲であればよい。
さらに、本発明のグリース組成物に含まれる親水性ナノファイバーのうち、任意に選択した10本の親水性ナノファイバーのアスペクト比の平均値(以下、「平均アスペクト比」ともいう)が5以上であることが好ましく、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、より更に好ましくは30以上、更になお好ましくは50以上である。
【0040】
(親水性ナノファイバーの太さ(d’)及びアスペクト比)
基油と混合する前の原料としての親水性ナノファイバーの太さ(d’)としては、1~500nmであり、好ましくは3~300nm、より好ましくは5~200nm、更に好ましくは10~100nm、より更に好ましくは15~70nm、更になお好ましくは20~50nmである。
また、基油と混合する前の原料としての親水性ナノファイバーの平均アスペクト比としては、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、より更に好ましくは30以上、更になお好ましくは50以上である。
【0041】
なお、本明細書において、基油中に分散している親水性ナノファイバーの「太さ(d)」及び基油中に配合される前の原料としての親水性ナノファイバーの「太さ(d’)」、並びに、これらの親水性ナノファイバーのアスペクト比は、電子顕微鏡等を用いて測定した値である。
【0042】
(親水性ナノファイバーの形成材料)
本発明の一態様で用いる親水性ナノファイバーは、親水性を有する化合物を含む形成材料から構成されていればよい。親水性を有する化合物としては、水酸基、アミノ基等の水素結合性水酸基を有する官能基を有する化合物、金属酸化物等が挙げられる。
ただし、環境負荷が低く、人体への安全性にも優れるグリース組成物とする観点、及び、基油との親和性を良好とする観点から、本発明の一態様で用いる親水性ナノファイバーとしては、多糖類を含むことが好ましく、セルロース、カルボキシメチルセルロース、キチン、及びキトサンから選ばれる1種以上の多糖類を含むことがより好ましく、セルロースを含むことが更に好ましい。
【0043】
セルロースナノファイバーの原料としてリグノセルロースも用いることができる。リグノセルロースは、植物の細胞壁を構成する、複合炭化水素高分子であり、主に多糖類のセルロース及びヘミセルロースと芳香族高分子であるリグニンから構成されていることが知られている。セルロースナノファイバーを構成するセルロースは、リグノセルロース及びアセチル化リグノセルロースから選択される1種以上でもよい。また、セルロースナノファイバーは、ヘミセルロース及びリグニンから選択される1種以上を含んでいてもよい。さらに、セルロースナノファイバーを構成するセルロースは、ヘミセルロース及びリグニンから選択される1種以上と化学的に結合していてもよい。
また、セルロースナノファイバーと熱可塑性樹脂とを含む繊維強化樹脂(樹脂補強繊維ともいう)が知られている。セルロースナノファイバーと熱可塑性樹脂とは混合又は混練されていてもよく、互いに分散されていてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸樹脂、ポリ乳酸とポリエステル共重合樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、(熱可塑性)ポリウレタン、ポリアセタール、ビニルエーテル樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂(例えばトリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロース)等が挙げられる。なお、(メタ)アクリルは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
前記熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
また、本発明の一態様で用いる親水性ナノファイバーは、その表面に対して改質処理が施されたものを用いてもよい。
より具体的には、親水性ナノファイバーの表面に対して、アセチル化等のエステル化、リン酸化、ウレタン化、カルバミド化、エーテル化、カルボキシメチル化、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)酸化、及び過ヨウ素酸酸化から選ばれる1種以上の改質処理を施した親水性ナノファイバーを用いることもできる。
【0045】
本発明の一態様で用いる親水性ナノファイバーにおいて、多糖類の含有量としては、親水性ナノファイバーの全量(100質量%)基準で、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%である。
【0046】
多糖類の重合度としては、好ましくは50~3000、より好ましくは100~1500、更に好ましくは150~1000、より更に好ましくは200~800である。
なお、本発明において、多糖高分子の重合度は、粘度法により測定された値を意味する。
【0047】
(親水性ナノファイバーの含有量)
本発明の一態様のグリース組成物において、親水性ナノファイバーの含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~17質量%、更に好ましくは0.7~15質量%、より更に好ましくは1.0~10質量%である。
親水性ナノファイバーの含有量が0.1質量%以上であれば、適度な混和ちょう度を有するグリース組成物を調製しやすい。
一方、親水性ナノファイバーの含有量が20質量%以下であれば、耐摩耗性に優れたグリース組成物を調製しやすい。
【0048】
<有機ベントナイト>
有機ベントナイトは、4級アンモニウム化合物等で処理することにより、粘度鉱物であるモンモリロナイトの結晶表面を変性させたものである。
4級アンモニウム化合物は、粘度鉱物であるモンモリロナイトの結晶表面を変性させ得るものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルジオクタデシルアンモニウム等のジメチルアルキルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム等のトリメチルアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウム等が挙げられ、これらの中でも、ジメチルジオクタデシルアンモニウム等のジメチルアルキルアンモニウムが好ましい。
4級アンモニウム化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、有機ベントナイトは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
有機ベントナイトは、一般的には、基油中において、極性化合物の存在下でせん断を与えることで劈開し、増ちょう剤として機能する。しかし、有機ベントナイト等のベントナイトは、基油中に均一に分散することが難しい。そのため、ベントナイトを増ちょう剤として用いたグリース組成物(ベントナイトグリース)には、通常、多量のベントナイトを配合して混和ちょう度が調整される。具体的には、ベントナイトが、グリース組成物の全量(100質量%)に対して、20質量%以上配合されることが一般的である。
これに対し、本発明では、親水性ナノファイバーと有機ベントナイトとを併用することによって、有機ベントナイトを基油中に均一に分散させることを可能としている。詳細には、有機ベントナイトは、親水性の面(親水基を有する面)が親水性ナノファイバーの親水基を吸着したり、当該親水性の面が親水性ナノファイバーの親水基に接近したりすることにより、均一に分散している親水性ナノファイバーの近傍に分散する。そして、当該有機ベントナイトは、あたかも親水性ナノファイバーの親水基を取り囲むように均一に分散して配置される。その結果、親水性ナノファイバーが擬似的に疎水化されて、グリース組成物に優れた耐水性が付与されるとともに、グリース組成物からの油分離が抑制されると推察される。
加えて、基油中において、親水性ナノファイバーが高次構造を形成しやすい。また、親水性ナノファイバーを基油中に均一に分散させ易い。その結果、親水性ナノファイバーの含有量が少量であり、かつ有機ベントナイトの含有量が少量であるにもかかわらず、適度な混和ちょう度を有するグリース組成物とすることができる。
【0050】
なお、有機ベントナイトの製造方法については、例えば特開昭62-83108号公報や特開昭53-72792号公報に詳しく開示されている。
【0051】
(有機ベントナイトの含有量)
本発明の一態様のグリース組成物において、有機ベントナイトの含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~12質量%、更に好ましくは0.7~10質量%、より更に好ましくは1.0~8質量%である。
有機ベントナイトの含有量が0.1質量%以上であれば、より優れた耐水性を有し、かつ油分離がより抑制されたグリース組成物を調製しやすい。
一方、有機ベントナイトの含有量が20質量%以下であれば、長期に亘って耐摩耗性に優れたグリース組成物を調製しやすい。
【0052】
<各種添加剤>
本発明の一態様のグリース組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに一般的なグリース組成物に配合される各種添加剤を含有してもよい。
当該各種添加剤としては、例えば、防錆剤、酸化防止剤、潤滑性向上剤、増粘剤、分散補助剤、清浄分散剤、腐食防止剤、消泡剤、極圧剤、金属不活性剤等が挙げられる。
なお、これらの各種添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
また、本発明の一態様のグリース組成物において、グリース状態を維持できる範囲で、グリース化の際に用いた、分散剤及び水を含有してもよい。
本発明の一態様のグリース組成物において、分散剤及び水の合計含有量としては、当該グリースの全量(100質量%)基準で、好ましくは0~60質量%、より好ましくは0~30質量%、更に好ましくは0~10質量%、より更に好ましくは0~5質量%である。
【0054】
(防錆剤)
防錆剤としては、例えば、カルボン酸系防錆剤、アミン系防錆剤、カルボン酸塩系防錆剤等が挙げられる。
本発明の一態様のグリース組成物が、防錆剤を含有する場合において、防錆剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~10.0質量%、より好ましくは0.3~8.0質量%、更に好ましくは1.0~5.0質量%である。
【0055】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。
本発明の一態様のグリース組成物が、酸化防止剤を含有する場合において、酸化防止剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.05~10質量%、より好ましくは0.1~7質量%、更に好ましくは0.2~5質量%である。
【0056】
(潤滑性向上剤)
潤滑性向上剤としては、例えば、硫黄化合物(硫化油脂、硫化オレフィン、ポリサルファイド、硫化鉱油、トリフェニルホスホロチオエート等のチオリン酸類、チオカルバミン酸類、チオテルペン類、ジアルキルチオジプロピオネート類等)、リン酸エステル、亜リン酸エステル(トリクレジルホスフェート、トリフェニルフォスファイト等)等が挙げられる。
本発明の一態様のグリース組成物が、潤滑性向上剤を含有する場合において、潤滑性向上剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.2~5質量%である。
【0057】
(増粘剤)
増粘剤は、前記基油の粘度を必要に応じて高めるものであり、増粘剤を含む基油を適正な動粘度に調整するために配合するものである。
増粘剤としては、例えば、ポリメタクリレート(PMA)、オレフィン共重合体(OCP)、ポリアルキルスチレン(PAS)、スチレン-ジエン共重合体(SCP)等が挙げられる。
本発明の一態様のグリース組成物が、増粘剤を含有する場合において、増粘剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.2~5質量%である。
【0058】
(分散補助剤)
分散補助剤としては、例えば、コハク酸ハーフエステル、尿素、各種界面活性剤等が挙げられる。
本発明の一態様のグリース組成物が、分散補助剤を含有する場合において、分散補助剤の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.2~5質量%である。
【0059】
(清浄分散剤、腐食防止剤、消泡剤、極圧剤、金属不活性剤)
清浄分散剤としては、例えば、コハク酸イミド、ボロン系コハク酸イミド等が挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、チアゾール系化合物等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、フッ素化シリコーン系化合物等が挙げられる。
極圧剤としては、例えば、リン系化合物、ジチオリン酸亜鉛、有機モリブデン等が挙げられる。
金属不活性剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
本発明の一態様のグリース組成物が、これらの添加剤を含有する場合において、これらの添加剤の各含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%、更に好ましくは0.2~5質量%である。
【0060】
[本発明のグリース組成物の特性]
本発明のグリース組成物は、親水性ナノファイバーの親水基が有機ベントナイトで保護されているため、親水性ナノファイバーが擬似的に疎水化されている。そのため、本発明のグリース組成物は、優れた耐水性を有し、かつ油分離しにくい。
加えて、本発明のグリース組成物は、親水性ナノファイバーによる高次構造が形成され易く、親水性ナノファイバーが基油中に均一に分散している。また、有機ベントナイトも基油中に均一に分散している。そのため、本発明のグリース組成物は、親水性ナノファイバー及び有機ベントナイトの含有量が少量であっても、適度な混和ちょう度を有する。
【0061】
(耐水性)
本発明の一態様のグリース組成物の38℃における水洗耐水度としては、好ましくは5.5質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、より更に好ましくは2.0質量%以下、更になお好ましくは1.0質量%以下、一層好ましくは0質量%である。
なお、本明細書において、グリース組成物の38℃における水洗耐水度は、JIS K2220:2013の水洗耐久度試験方法に準拠して測定された値である。
【0062】
(離油度)
本発明の一態様のグリース組成物の離油度は、より長寿命のグリース組成物とする観点から、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5.5質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下、より更に好ましくは4.5質量%以下である。また、通常0.5質量%以上である。
なお、本明細書において、グリース組成物の離油度は、 JIS K2220:2013の離油度試験方法に準拠して、グリース組成物から分離した油の質量割合を測定した値である。
【0063】
(混和ちょう度)
本発明の一態様のグリース組成物の25℃における混和ちょう度としては、グリース組成物の硬さを適度な範囲とし、低温トルク特性、耐摩耗を良好とする観点から、好ましくは130~475、より好ましくは160~445、更に好ましくは175~430、より更に好ましくは200~350である。
なお、本明細書において、グリース組成物の混和ちょう度は、JIS K2220 7:2013に準拠して測定された値である。
【0064】
[本発明のグリース組成物の製造方法]
本発明のグリース組成物の製造方法は、下記工程(1)~(3)を有する。
・工程(1):太さ(d’)が1~500nmであり、好ましくは3~300nm、より好ましくは5~200nm、更に好ましくは10~100nm、より更に好ましくは15~70nm、更になお好ましくは20~50nmである親水性ナノファイバーを水中に配合してなる水分散液と、基油と、分散剤とを混合し、混合液を調製する工程。
・工程(2):前記混合液から、水を除去し、グリースを調製する工程。
・工程(3):前記グリースに、有機ベントナイトを配合する工程。
なお、工程(2)は、前記混合液から、水及び前記分散剤を除去する工程であってもよい。
このような工程を経て得られるグリース組成物は、基油中において、親水性ナノファイバー同士の凝集が抑制され、繊維形状を維持した状態で、太さ(d)が1~500nmであり、好ましくは3~300nm、より好ましくは5~200nm、更に好ましくは10~100nm、より更に好ましくは15~70nm、更になお好ましくは20~50nmである親水性ナノファイバーを分散させることができる。その結果、基油中において、親水性ナノファイバーによる高次構造が形成され、親水性ナノファイバーを基油中に均一に分散させると共に、有機ベントナイトも親水性ナノファイバーの親水基を取り囲むように基油中に均一に分散して、優れた耐水性が付与され、かつ油分離が抑制されたグリース組成物が調製される。
以下、工程(1)~(3)について説明する。
【0065】
<工程(1)>
工程(1)は、太さ(d’)が1~500nmであり、好ましくは3~300nm、より好ましくは5~200nm、更に好ましくは10~100nm、より更に好ましくは15~70nm、更になお好ましくは20~50nmである親水性ナノファイバーを水中に配合してなる水分散液と、基油と、分散剤とを混合し、混合液を調製する工程である。
工程(1)で用いる親水性ナノファイバー及び基油の詳細は、上述のとおりである。
なお、ここでいう「太さ(d’)」は、上述のとおり、基油中や水中に配合される前の原料としての親水性ナノファイバーの太さを示すものであり、「太さ(d’)」の好適範囲は、上記と同じである。
【0066】
親水性ナノファイバーを配合してなる水分散液の固形分濃度としては、当該水分散液の全量(100質量%)基準で、通常0.1~70質量%、好ましくは0.1~65質量%、より好ましくは0.1~60質量%、更に好ましくは0.5~55質量%、より更に好ましくは1.0~50質量%である。
当該水分散液は、水中に親水性ナノファイバーや、必要に応じて界面活性剤等を配合し、手動もしくは撹拌機により、十分に撹拌をして、調製することができる。
なお、親水性ナノファイバーとして、粉末化親水性ナノファイバーを用い、これを水に添加して水分散液としてもよい。
【0067】
分散剤としては、水及び油の双方と相溶性が良好な溶媒であればよいが、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、及びN-メチルピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶媒;プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びヘキシレングリコール等のアルコール類;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン酸エステル、及びソルビタン酸エステル等の界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0068】
工程(1)で調製する混合液における、分散剤の配合量は、混合液の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは0.5~40質量%、更に好ましくは1.0~30質量%、より更に好ましくは1.0~20質量%、更になお好ましくは1.0~10質量%である。
【0069】
工程(1)で調製する混合液における、水の配合量は、混合液の全量(100質量%)基準で、好ましくは1~60質量%、より好ましくは3~50質量%、更に好ましくは5~40質量%である。
【0070】
工程(1)で調製する混合液中における、水と分散剤との配合量比(水/分散剤)としては、質量比で、好ましくは0.01~600、より好ましくは0.05~400、更に好ましくは0.1~300、より更に好ましくは0.2~200である。
【0071】
混合液には、親水性ナノファイバーを配合してなる水分散液、基油及び分散剤と共に、一般的なグリース組成物に配合される上述の各種添加剤を添加してもよい。これらの成分を混合し、手動もしくは撹拌機により、十分に撹拌をして、混合液を調製することができる。
【0072】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で調製した混合液から、少なくとも水を除去する工程である。
なお、本工程において、当該混合液から、水と共に分散剤を除去してもよい。
水及び分散剤を除去する方法としては、混合液を加熱して、水及び分散剤を蒸発除去する方法が好ましい。
水を蒸発除去する際の条件としては、圧力が0.001~0.1MPaの環境下で、温度範囲を0~100℃にて混合液を加熱することが好ましい。
また、分散剤を蒸発除去する際の条件としては、圧力が0.001~0.1MPaの環境下で、温度範囲を[分散剤の沸点(℃)]-120℃~[分散剤の沸点(℃)]-0℃にて混合液を加熱することが好ましい。
なお、水及び分散剤の蒸発除去は、常圧蒸留によって行ってもよい。
工程(2)により、グリースが調製される。
【0073】
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)で調製されたグリースに、有機ベントナイトを配合する工程である。
具体的には、例えば、工程(2)で調製されたグリースと有機ベントナイトとを混合し、ロールミル等を用いて均一化等の処理を行い、本発明のグリース組成物が調製される。
【0074】
[本発明のグリース組成物が充填された機構部品]
本発明のグリース組成物は、優れた耐水性を有し、油分離しにくい。また、適度な混和ちょう度を有する。
また、本発明のグリース組成物は、増ちょう剤である親水性ナノファイバー及び有機ベントナイトの含有量が少量であっても適度な混和ちょう度を有するため、耐摩耗性も向上し得る。また、当該耐摩耗性が長期に亘って維持され得る。
さらに、親水性ナノファイバー及び有機ベントナイトは、環境負荷が低く、人体への安全性に優れる。したがって、本発明のグリース組成物は、環境負荷が低く、かつ人体への安全性が高い。
そのため、本発明のグリース組成物を用いた機構部品は、グリースが飛散や漏洩したとしても、環境保全や人体への安全性における問題が少なく、潤滑特性が長期間維持されたものとなり得る。
【0075】
本発明のグリース組成物を充填した機構部品としては、軸受や歯車等が挙げられ、より具体的には、すべり軸受、ころがり軸受等の各種軸受、歯車、内燃機関、ブレーキ、トルク伝達装置用部品、流体継ぎ手、圧縮装置用部品、チェーン、油圧装置用部品、真空ポンプ装置用部品、時計部品、ハードディスク用部品、冷凍機用部品、切削機用部品、圧延機用部品、絞り抽伸機用部品、転造機用部品、鍛造機用部品、熱処理装置用部品、熱交換器用部品、洗浄機用部品、ショックアブソーバ用部品、密封装置用部品等が挙げられる。
なお、本発明の一態様のグリースは、食品機械の軸受や歯車等の摺動部分の潤滑用途としても好適である。
【0076】
以上の事項から、本発明は、以下の機構部品及びグリース組成物の使用方法も提供する。
(1)本発明のグリース組成物が充填された、機構部品。
(2)本発明のグリース組成物を機構部品の潤滑に使用する、グリース組成物の使用方法。
上記(1)の機構部品は、食品原料の加工、食品原料の混合、及び食品の製造等に用いられる食品機械に組み込まれた機構部品であることが好ましい。
また、上記(1)及び(2)で用いる「グリース組成物」は、本発明のグリース組成物であって、詳しくは上述のとおりである。
【実施例
【0077】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
[原料の物性値]
原料の物性値は、以下に示す方法で求めた。
【0079】
(1)親水性ナノファイバーの太さ、アスペクト比
透過性電子顕微鏡(TEM)を用いて、任意に選択した10本の親水性ナノファイバーの太さ及び長さをそれぞれ測定し、「長さ」/「太さ」から算出される値を、対象となる親水性ナノファイバーの「アスペクト比」とした。
【0080】
(2)40℃動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
【0081】
[実施例1~6、比較例1~3]
実施例1~6、比較例1~3では、以下に示す基油、親水性ナノファイバー分散液、有機ベントナイト、及び分散剤を用いた。
<基油>
・PAO:40℃動粘度=64mm/s、粘度指数=135、ポリα-オレフィン。
<親水性ナノファイバー分散液>
・スギノマシン(株)製、製品名「BiNFi-s」(重合度600のセルロースナノファイバー(CNF)(太さ(d’)=20~50nm(平均値35nm)、アスペクト比=100以上(平均値100以上))を含む水分散液)。
<有機ベントナイト>
・有機ベントナイト1:ベントン27(Elementis Specialties, Inc製)
・有機ベントナイト2:Baragel 3000(Elementis Specialties, Inc製)
・有機ベントナイト3:S-BEN(株式会社ホージュン製)
・有機ベントナイト4:ベントン34(Elementis Specialties, Inc製)
<未処理ベントナイト>
・未処理ベントナイト1:スーパークレイ(株式会社ホージュン製)
<分散剤>
・ソルビタン酸エステル
【0082】
<実施例1>
親水性ナノファイバー分散液166g(そのうちCNF量:16.6g)と、基油174gと、分散剤5.0gとを混合し、25℃にて十分に撹拌して、混合液を調製した。
そして、当該混合液を、0.02MPaの環境下で90℃まで加熱し、当該混合液から水を蒸発除去した。
次いで、室温(25℃)まで冷却後、有機ベントナイト1を4.0g混合液に添加して十分に撹拌した後、3本ロールミルを用いて均質化処理を行い、表1に示す配合のグリース組成物(a)を調製した。
【0083】
<実施例2>
親水性ナノファイバー分散液を130g(そのうちCNF量:13.0g)とし、基油を170gとし、分散剤を4.0gとし、有機ベントナイト1を13.0gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、表1に示す配合のグリース組成物(b)を調製した。
【0084】
<実施例3>
親水性ナノファイバー分散液を160g(そのうちCNF量:16.0g)とし、基油を171gとし、分散剤を4.8gとし、有機ベントナイト1を有機ベントナイト2に変更して8.0gとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で、表1に示す配合のグリース組成物(c)を調製した。
【0085】
<実施例4>
親水性ナノファイバー分散液を140g(そのうちCNF量:14.0g)とし、基油を168gとし、分散剤を4.2gとし、有機ベントナイト2を14.0gとしたこと以外は、実施例3と同様の方法で、表1に示す配合のグリース組成物(d)を調製した。
【0086】
<実施例5>
有機ベントナイト2を有機ベントナイト3に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、表1に示す配合のグリース組成物(e)を調製した。
【0087】
<実施例6>
有機ベントナイト2を有機ベントナイト4に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、表1に示す配合のグリース組成物(f)を調製した。
【0088】
<比較例1>
親水性ナノファイバー分散液200g(そのうちCNF量:20g)と、基油174gと、分散剤6.0gとを混合し、25℃にて十分に撹拌して、混合液を調製した。
そして、当該混合液を、0.01MPaの環境下で70℃まで加熱し、当該混合液から水を蒸発除去した。
次いで、室温(25℃)まで冷却後、3本ロールミルを用いて均質化処理を行い、表2に示す配合のグリース組成物(g)を調製した。
【0089】
<比較例2>
有機ベントナイト2を未処理ベントナイト1に変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で、表2に示す配合のグリース組成物(h)を調製した。
【0090】
<比較例3>
未処理ベントナイト1を20gに変更したこと以外は、比較例2と同様の方法で、表2に示す配合のグリース組成物(i)を調製した。
【0091】
[評価]
調製したグリース組成物(a)~(i)について、混和ちょう度を測定した。
また、調製したグリース組成物(a)~(i)について、さらに以下に示す水洗耐水度試験及び離油の測定を行った。
これらの結果を表1及び表2に示す。
また、表1及び表2には、調製したグリース組成物(a)~(i)の各成分の含有量(単位:質量%)も示す。
【0092】
<混和ちょう度>
JIS K2220 7:2013に準拠して、25℃にて測定した。
【0093】
<水洗耐水度試験>
38℃の水を用いて、JIS K2220:2013の水洗耐久度試験方法に準拠した方法により、試験前のグリース組成物の量100質量%に対する、水に洗い流されたグリース組成物の質量を測定した。
当該質量が大きいグリース組成物は、耐水性が低いグリースであるといえ、一方、当該質量が小さいグリース組成物は、耐水性に優れたグリース組成物であるといえる。
なお、比較例3のグリース組成物(i)については、水洗耐水度試験を実施しなかった。
【0094】
<離油度>
JIS K2220:2013の離油度試験方法に準拠して、グリース組成物から分離した油の質量割合を測定した。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
表1及び表2から、以下のことがわかる。
実施例1~6で得られたグリース組成物(a)~(f)は、適度な混和ちょう度を有し、優れた耐水性及び離油度を有することがわかる。
これに対し、比較例1で得られたグリース組成物(g)のように、有機ベントナイトを配合することなくCNFを配合したグリース組成物は、適度な混和ちょう度を有するものの、耐水性が低いことがわかる。
また、比較例2で得られたグリース組成物(h)のように、有機ベントナイトに代えて、未処理のベントナイトを配合しても、グリース組成物の耐水性が低く、グリース組成物に耐水性を付与できないことがわかる。
さらに、比較例3で得られたグリース組成物(i)のように、CNFを配合することなく有機ベントナイトを配合したグリース組成物は、グリース形状を維持できず、油分離しやすいことが分かる。
また、実施例1~6で得られたグリース組成物(a)~(f)は、比較例1~3で得られたグリース組成物(g)~(i)に比べて、油分離し難い傾向にあることがわかる。
なお、実施例1において、グリース組成物(a)の調製前後で、親水性ナノファイバーの太さに変化が生じるか否か確認した結果、製造前後で太さが殆ど変化しないことが確認された。このことから、基油中に分散している「親水性ナノファイバーの太さ(d)」と、基油中に配合される前の原料としての「親水性ナノファイバーの太さ(d’)」とは、ほとんど差がなく、これらは実質的には同一とみなすことができる。