(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】半電導性発光材料
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20230301BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20230301BHJP
C09K 11/70 20060101ALI20230301BHJP
C09K 11/62 20060101ALI20230301BHJP
C09K 11/56 20060101ALI20230301BHJP
C07C 333/16 20060101ALI20230301BHJP
C07C 329/12 20060101ALI20230301BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20230301BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20230301BHJP
C09K 11/54 20060101ALI20230301BHJP
C07F 3/06 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
C09K11/08 G ZNM
C09K11/88
C09K11/70
C09K11/62
C09K11/56
C09K11/08 A
C07C333/16
C07C329/12
H01L33/50
B82Y20/00
C09K11/54
C07F3/06
(21)【出願番号】P 2020520557
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2018077540
(87)【国際公開番号】W WO2019072882
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-08
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ハリール,サナア
(72)【発明者】
【氏名】オデッド,コビ
(72)【発明者】
【氏名】グロズマン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】シャビーブ,エフード
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-348372(JP,A)
【文献】特開平09-194424(JP,A)
【文献】特開平07-196603(JP,A)
【文献】特表2017-513960(JP,A)
【文献】Jiazi Wang et al.,Spectrochimica ActaPart A: Molecular and Biomolecular Spectoroscopy,2011年,81,178-183,DOI: 10.1016/j.saa.2011.05.098
【文献】Yanjie Zhang et al.,ACS Applied Materials & Interfaces,2010年,2,3384-3395,DIO: 10.1021/am100996g
【文献】Matthew T. Frederick,ACS Nano,2010年,4,3195-3200,DOI: 10.1021/nn1007435
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
B82Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノサイズ発光材料であって、コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含み、または、からなり、ここで、配位子が、少なくとも1のチオ金属塩であ
り、
該配位子が、式(I)
【化1】
式中
Mは、二価の金属、好ましくは亜鉛、マグネシウム、銅またはそれらの混合物を示し;
Xは、-O-または-S-または-NR
2
-を示し;
Y
1
は、-O-または-S-を示し;
R
1
、R
2
は、互いに独立して、7~25個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよび/またはアラルキル鎖;または
式(II)および/または(III)
-(CHR
5
)
x
O(CHR
5
)
y2
-NR
3
R
4
(II)
-(CH
2
CHR
5
O)
z
R
6
(III)
による基を示し、
R
3
、R
4
は、互いに独立して1~6個の炭素原子を有する直線状または分枝のアルキル鎖を示し;
R
5
は、水素またはメチルを示し;
R
6
は、1~4個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル鎖を示し;
x、y2は、互いに独立して、1~5の整数を示し;および
zは、1~30の整数を示す、
によって表される、請求項1に記載の材料。
【請求項2】
該配位子が、式(I)によって表され、および式中、R
1、R
2が、互いに独立して、7~20個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、
アルキニル、アリールおよび/またはアラルキル鎖を示す、請求項
1に記載の材料。
【請求項3】
配位子が、金属ジアルキルチオカルバマートおよび/または金属ジアルキルジチオカルボナートおよび/または金属アルキルトリチオカルバマートである、請求項1
または2に記載の材料。
【請求項4】
該コアが、式(IV)
[A
1B
1] (IV)
式中
[A
1]は、亜鉛、カドミウム、インジウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B
1]は、硫黄、セレニウム、
リンからなる群から選択される非金属またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
[A
1B
1]が、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSe、ZnSeS、およびInPからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す、請求項
4に記載の材料。
【請求項6】
該シェル(単数)または該シェル(複数)が、式(V)
[A
2B
2] (V)
式中
[A
2]は、亜鉛、カドミウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B
2]は、硫黄、セレニウムからなる群から選択される非金属、またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の材料。
【請求項7】
[A
2B
2]が、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSeおよびZnSeS、ZnSeSTeからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す、請求項
6に記載の材料。
【請求項8】
材料が、コア[A
1B
1]および少なくとも1のシェル[A
2B
2]を含み、該[A
1B
1]/[A
2B
2]が、CdSeS/CdZnS、CdSeS,CdS/ZnS、CdSeS/CdS,ZnS、CdSe/ZnS、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSe,ZnS、InP(Zn)/ZnSe、InP(Zn)/ZnSe,ZnS、InP(Zn)/ZnSe,ZnS,ZnTe、ZnSe/CdS、およびZnSe/ZnSからなる群から選択される、または、それらの混合物である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
以下のステップ:
(a)好適な溶媒中に任意に溶解されていてもよい、少なくとも1の金属[A
1]および/または[A
2]の少なくとも1の塩を提供する;
(b)少なくとも1の非金属[B
1]および/または[B
2]の少なくとも1の供給源を添加して、中間体化合物[A
1B
1]/[A
2B
2]を得る;
(c)ステップ(b)からの該中間体化合物[A
1B
1]/[A
2B
2]を、任意に溶媒の存在において、それをチオ金属塩の供給源と接触させることによって被覆する、および任意に、
(d)ステップ(c)の該被覆された中間体を、約300~約650nmのピーク光波長をもつ光を有する照明へ供与し、ナノサイズ材料の量子収率を増加させる、
によって得られ得る、または、得られる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の前記材料。
【請求項10】
コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含む、または、からなる、半導体ナノサイズ発光材料を製造するためのプロセスであって、以下のステップ:
(a)好適な溶媒中に任意に溶解されていてもよい、少なくとも1の金属[A
1]および/または[A
2]の少なくとも1の塩を提供する;
(b)少なくとも1の非金属[B
1]および/または[B
2]の少なくとも1の供給源を添加して、中間体化合物[A
1B
1]または[A
1B
1]/[A
2B
2]を得る;
(c)ステップ(b)からの該中間体化合物[A
1B
1]/[A
2B
2]を、任意に溶媒の存在において、それをチオ金属塩の供給源と接触させることによって被覆する、および任意に、
(d)ステップ(c)の該被覆された中間体を、約300~約650nmのピーク光波長をもつ光を有する照明へ供与して、ナノサイズ材料の量子収率を増加させる、
ここで、ステップ(c)において使用されるチオ金属塩は、式(I)
【化2】
式中
Mは、二価の金属、好ましくは亜鉛、マグネシウム、銅またはそれらの混合物を示し;
Xは、-O-または-S-または-NR
2
-を示し;
Y
1
は、-O-または-S-を示し;
R
1
、R
2
は、互いに独立して、7~25個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよび/またはアラルキル鎖;または
式(II)および/または(III)
-(CHR
5
)
x
O(CHR
5
)
y2
-NR
3
R
4
(II)
-(CH
2
CHR
5
O)
z
R
6
(III)
による基を示し、
R
3
、R
4
は、互いに独立して1~6個の炭素原子を有する直線状または分枝のアルキル鎖を示し;
R
5
は、水素またはメチルを示し;
R
6
は、1~4個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル鎖を示し;
x、y2は、互いに独立して、1~5の整数を示し;および
zは、1~30の整数を示す、
によって表される、
を含む、または、からなる、前記プロセス。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の少なくとも1の半導体ナノサイズ発光材料、および少なくとも1のマトリックス材料を含む、組成物。
【請求項12】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の少なくとも1の半導体ナノサイズ発光材料または請求項
11に記載の組成物、および少なくとも1の溶媒を含む、配合物。
【請求項13】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の半導体ナノサイズ発光材料、請求項
11に記載の組成物、または請求項
12に記載の配合物の、電子デバイス、光学デバイスにおける、または生医学デバイスにおける使用。
【請求項14】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の半導体ナノサイズ発光材料、または請求項
11に記載の組成物、または請求項
12に記載の配合物を含む、光学媒体。
【請求項15】
請求項
14に記載の該光学媒体を含む、光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、半導体の領域を指し、および改善された量子収率を有する新規な量子ドット、それらを得るためのプロセス、および新規な半導体のさらなる応用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
量子ドット(QD)は、ナノメートル範囲における直径(約2~20nm)をもつ半導電性粒子であり、それは結晶の光学的および電子的特性が変化するほど小さい。量子ドットの特有の特色は、それらは粒子直径と共に色を変化させることである。赤色のQDについて、例えば、青色のQDを生成するために、他の材料は必要とされない-それらは異なる粒子サイズを以て生成されるだけでよい。ディスプレイなどの典型的な応用に加えて、QDは、今や太陽電池またはプロセッサなどの多くの他の領域においてもまた使用される。
【0003】
量子ドットは、蛍光を発し得、および光子を他の波長へ変換し得、ならびに光を放出し得る。しかしながら、それらの突出した特徴は、疑いようもなく、ディスプレイにおける背景光を改善する能力である。LCD TVは、白色背景光を使用し、次いで青色、緑色、および赤色光をフィルターにかけて色を表示する。蛍光体層をもつ青色LEDは、このいわゆる「バックライト」のために大抵使用される。しかしながら、蛍光体層が青色光を白色光へ完全に変換することができないことは不利である。
【0004】
量子ドットの助力を以てこの問題は解決されることができ、なぜならそれらは、それらのサイズに依存して、青色光を所望される波長へ正確に変換することができるからである。色のドットをより多くまたはより少なくすることによって、色比率も制御され得、色生成LC層が補正する必要が少なくなる。QDバックライトの蛍光体系「白色LED」バックライトに対する最も強力な技術的利点は、広い色域を可能にする、例として表示された色の量を増加させる、狭いFWHM(<50nm)である。
【0005】
量子ドットの生産のためにも好適である、最も重要な半導体材料は、カドミウム化合物、とくにCdSおよびCdSeを包含する。しかしながら、不利な点は、カドミウムは高度に有害であることである。見込みのある代替物はInPであるが、量子収率は十分ではない。したがって、QDの量子を具体的にはトラップ放出を低減することによって改善する、特定な新規な配位子のために、調査が目下行われている。
【0006】
ジチオカルバマート(M-DTC)およびアルキルジチオカルボナート(いわゆるキサンタート)の金属複合体は、例えばUS 2015 0228866 A1 (NANOCO)またはJ. PHYS. CHEM. B、107(50)、pp 13843-13854 (2003)において報告されているとおり、例としてコアナノ結晶上のZnSシェルの成分を提供する、シェル成長のための単一源前駆体として広く使用される。亜鉛DTC塩はZnSのための前駆体として使用され、昇温で分解されたと言及されるべきだが、一方で、Cdキサンタートは、配位子としては言及されないが、Cd系QDの合成のための単一源前駆体として言及される。
【0007】
DTCおよびキサンタート分子が配位子をキャッピングするQDとして有用であることは、ZHAO ET AL [JACS 127、pp7328-7329、(2005)]およびDUBOIS ET A [JACS 129、pp482-483 (2007)]の夫々によって公開された論文からも既知である。しかしながら、文献は、これらの化合物の特定の金属複合体およびQDの外表面に結合されたときのそれらのトラップを不動態化する能力に関しては記載していない。
先行技術文献の教示にもかかわらず、改善された量子収率を有する新規な半導体発光材料を提供することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の説明
本発明の第一の目的は、コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含む、または、からなる、半導体ナノサイズ発光材料であって、配位子が少なくとも1のチオ金属塩である、前記材料に向けられている。用語「ナノサイズ」は、本発明が属する技術分野に従事するいずれの当業者にとって明確であるけれども、ナノサイズは、0.1nm~999nm、好ましくは1nm~150nm、より好ましくは3nm~50nmの範囲における平均粒子直径の意味を有することが表されるべきである。
【0009】
本発明によると、用語「半導体」は、電気伝導性を、室温で、導体(銅など)の電気伝導性と絶縁体(ガラスなど)の電気伝導性との間の程度で有する材料を意味する。好ましくは、半導体は、その電気伝導性が温度に伴って増加する材料である。
よって、本発明によると、半電導性発光ナノ粒子は、サイズが、0.1nmおよび999nmの間、好ましくは1nm~150nm、より好ましくは3nm~50nmにおいてであり、電気伝導性を、室温で、導体(銅など)の電気伝導性と絶縁体(ガラスなど)の電気伝導性との間の程度で有する発光材料を意味すると解され、好ましくは、半導体は、その電気伝導性が温度に伴って増加し、およびサイズが0.1nmおよび999nmの間、好ましくは0,5nm~150nm、より好ましくは1nm~50nmにおいてである材料である。
【0010】
本発明によると、用語「サイズ」は、半電導性ナノサイズ発光粒子の最長軸の平均直径を意味する。
半電導性ナノサイズ発光粒子の平均直径は、Tecnai G2 Spirit Twin T-12 Transmission Electron scopeによって作られたTEM画像における100の半電導性発光ナノ粒子に基づき計算される。
【0011】
本発明の好ましい態様において、本発明の半電導性発光ナノ粒子は、量子サイズ材料である。
本発明によると、用語「量子サイズ」は、配位子または別の表面修飾を除いた半電導性材料それ自体のサイズを意味し、それは、例えば、ISBN:978-3-662-44822-9に記載されるように、量子閉じ込め効果を示し得る。
一般に、量子サイズ材料は、「量子閉じ込め」効果に起因して、調節可能な、鮮明かつ鮮やかな有色光を放出し得るといわれる。
本発明のいくつかの態様において、量子サイズ材料の全体構造のサイズは、1nm~50nmであり、より好ましくは、それは、1nm~30nmであり、なおより好ましくは、それは、5nm~15nmである。
【0012】
驚くべきことに、チオ金属塩型の金属二座配位子の堆積が、天然配位子を置き換え、および量子材料の表面における正および負の両方の原子を調整することができ、粒子の表面上のトラップを不動態化させ、よって量子収率における30%までの有意な増加、改善されたQY安定性につながり、したがって先行技術の短所を克服することが観察された。効果は、続いてこれらの材料に光を当てることによってさらに増加され得る。
【0013】
本発明の1の驚くべき見出された利点、すなわち改善されたQY安定性は、少なくとも1のチオ金属塩のQD溶液への添加に起因することである。これは、QDの増加された安定性につながり、およびしたがって、改善されたQY安定性につながる。またしたがって、QDの放出安定性は改善され、それはQDのより長期間の安定的な放出につながる。これは、本発明による配位子がQDの表面により強いという事実に起因する。
別の利点は、チオ配位子の親水性は、前駆体として使用されるアミンおよび/またはアルコール中のアルキル基を変化させることによって調整され得る。例えば、より極性の基は、材料を、PGMEAなどの好ましいより極性の溶媒中でもまた可溶にする可能性がある。
【0014】
本発明の第二の目的は、コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含む、または、からなる、半導体 ナノサイズ発光 材料であって、以下のステップ:
(a)好適な溶媒中に任意に溶解されていてもよい、少なくとも1の金属[A1]および/または[A2]の少なくとも1の塩を提供する;
(b)少なくとも1の非金属[B1]および/または[B2]の少なくとも1の供給源を添加して、中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を得る;
(c)ステップ(b)からの該中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を、任意に溶媒の存在において、それをチオ金属塩の供給源と接触させることによって被覆する、および任意に、
(d)ステップ(c)の該被覆された中間体を、約300~約650nmのピーク光波長をもつ光を有する照明へ供与し、ナノサイズ材料のQYを増加させる、
によって得られ得る、または、得られる、前記材料に向けられている。
【0015】
留意されるべきは、該配位子は、粗製材料へ添加され得、それは、それらはQD合成の最終的なステップ中へ組み込まれるが、市販のQDを配位子精製後のために使用することもまた可能であることを意味することである。材料は、例えば、ロッド、ドット、八面体、ワイヤ、テトラポッド、プレートレット形状(platelet)などの任意の可能な形状を有していてもよい。
【0016】
チオ金属塩
チオ金属塩は、いずれの当業者に既知である有機化学の一般的な手順に従って得られ得る塩である。例えば、チオカルバマートおよびチオカルボナートを得るための一般的な手順は、アルカリ性媒体中の第一級および第二級アミンおよび二硫化炭素の間の求核置換による製造を記載するJ.MOL.SCIENCE、12,pp 1964-1978 (2011)において提供される。
【0017】
好ましくは、該チオ金属塩は、式(I)
【化1】
式中
Mは、二価の金属、好ましくは、亜鉛、マグネシウム、銅またはそれらの混合物を示し;
Xは、互いに独立して、-O-または-S-または-NR
2-を示し;
Y
1は、互いに独立して、-O-または-S-を示し;
R
1,R
2は、互いに独立して、2~25個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルケニル、アリールおよび/またはアラルキル鎖;または
式(II)および/または(III)
-(CHR
5)
xO(CHR
5)
y2-NR
3R
4 (II)
-(CH
2CHR
5O)
zR
6 (III)
による基を示し、
式中、R
3、R
4は、互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する直線状または分枝のアルキル鎖を示し;
R
5は、水素またはメチルを示し;
R
6は、1~4個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル鎖を示し;
x、y
2は、互いに独立して、1~5の整数を示し;および
zは、1~30の整数を示す;
に従う。
【0018】
本発明による好ましい態様において、Xは、互いに独立して、-O-または-NR2-を示す。本発明による別の好ましい態様において、Xは、-O-を示す。本発明による別の好ましい態様において、Xは、NR2-を示す。本発明による好ましい一態様において、Y1は、Sを示す。
【0019】
好ましい配位子は、一般的な構造を有してもよい(構造I、IIおよびIII)。構造は、二価の金属としてZnを示すが、MgまたはCuまたはそれらの混合物によって置き換えられてもよい:
【化2】
【0020】
【0021】
【化4】
本発明による最も好ましい態様において、Mは、Znを示す。
【0022】
いくつかの態様において、R1はR2と同様であり、および他の構造において、基は異なり得る。R1およびR2は、任意の官能基から選択されてもよく、および一般に2~約25個の範囲における炭素原子、好ましくは約6~約20個の間の炭素原子、より好ましくは約7~20個の間の炭素原子、および最も好ましくは約8~約18個の範囲における炭素原子を有する炭化水素である。例は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアラルキルを包含する。
【0023】
本発明は、鎖長がQYの経時安定性に影響を及ぼし得るという教示を網羅する。例えば、Zn(C18)DTCは、照明が停止された48時間後のQY降下を示すZn(C2)DTCと比較して安定的である。
一般に使用される好適な亜鉛ジチオ配位子は、これらに限定されないが、亜鉛ジエチルジチオカルバマート、亜鉛ジオクチルジチオカルバマート、亜鉛ジオクタデシルジチオカルバマート、亜鉛オレイルキサンタート、およびそれらの混合物を包含する。
【0024】
いくつかの態様において、R1およびR2(構造I、IIおよびIIIにおける)は、QDの親水性を調整して、それをトルエンと比較してより極性の溶媒中に可溶性にする能力をもつ官能基であり得る。かかるR(またはR’)基の例は、カルボン酸、アミン、アミド、エステル、エーテル、ヒドロキシルまたはアルコキシ官能性をもつ炭化水素鎖である。
【0025】
R1およびR2はまた、式(II)
-(CHR5)xO(CHR5)y2-NR3R4 (II)
式中
R3、R4およびR5は、互いに独立して、1~6個および好ましくは2~4個の炭素原子を有する直線状または分枝のアルキルを示す、
によって個々に表され得る。
【0026】
代替において、R3、R4およびR5は、例えば式(III)
-(CH2CHR5O)zR6 (III)
式中、zは、1~約30の、好ましくは約4~約25の、および具体的には約12~約18の整数を表してもよい、
のとおりのPEG(ポリエチレングリコール)などの両親媒性基を表してもよい。エーテルは、ポリアルキレングリコールまたはポリプロピレングリコールまたはそれらの混合物を表してもよい。PGMEAおよび同様の溶媒中で高い可溶性を達成するために、最大でも1300Da、好ましくは約350および約800Daltonの間の分子量。
【0027】
R
6は、1~4個の炭素原子を有し、テトラヒドロフリル基またはアシル基などの官能基、具体的にはアクリル酸残基(residue)によって任意に置換されていてもよいアルキル鎖を示す。
具体的に好ましい構造は、式(IIIb):
【化5】
によって表される。
【0028】
具体的に好ましい配位子は、金属チオカルバマートおよび/または金属チオカルボナートである。
具体的に好ましい配位子は、以下の構造:
【化6】
【0029】
【0030】
【0031】
留意されるべきは、二価の金属の存在が、本発明に不可欠であることである。かかる金属の不在において、チオ金属塩はかなり低い量子収率を呈することに留意されたい。本発明による態様において、二価の金属は、亜鉛である。
好ましい配位子は、NATURE MATERIALS 5、pp141-153(2016)において定義されるとおりのいわゆるZ型配位子を表す、ジアルキルチオカルバマートおよび/またはジアルキルジチオカルボナートを表す。
【0032】
さらに、式(I)
【化9】
式中
Mは、二価の金属、好ましくは亜鉛、マグネシウム、銅またはそれらの混合物を示し;
Xは、-O-または-S-または-NR
2-を示し;
Y
1は、互いに独立して、-O-または-S-を示し;
R
1、R
2は、互いに独立して、7~20個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルケニル、アリールおよび/またはアラルキル鎖;または
式(II)および/または(III)
-(CHR
5)
xO(CHR
5)
y2-NR
3R
4 (II)
-CH
2CHR
5O)
zR
6 (III)
による基を示し、
R
3、R
4は、互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する直線状または分枝のアルキル鎖を示し;
R
5は、水素またはメチルを示し;
R
6は、1~4個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル鎖を示し;
x、y2は、互いに独立して、1~5の整数を示し;および
zは、1~30の整数を示す、
で表される化合物が本明細書中に開示される。
【0033】
本発明による好ましい態様において、Mは、Znを示す。本発明によるさらに好ましい態様において、R1、R2は、互いに独立して、7~25個の炭素原子、より好ましくは10~22個の炭素原子、さらにより好ましくは12~18個の炭素原子、および最も好ましくは18個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルケニル、アリールおよび/またはアラルキル鎖を示す。本発明によるさらに好ましい態様において、Y1はSを示す。本発明によるさらに好ましい態様において、Xは、互いに独立して、-O-または-NR2-を示す。本発明による別の好ましい態様において、Xは、-O-を示す。本発明による別の好ましい態様において、Xは、NR2-を示す。
【0034】
半導体材料
本発明による材料のコアまたはコア/シェル体を形成する好適な半導体材料は、単一の化合物またはそれらの2、3またはより多くの混合物を表してもよい。
本発明の第一の好ましい態様において、該コアは、式(IV)
[A1B1] (IV)
式中
[A1]は、亜鉛、カドミウム、インジウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B1]は、硫黄、セレニウム、蛍光体からなる群から選択される非金属またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される。
【0035】
より好ましくは、[A1B1]は、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSe、ZnSeS、およびInPからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す。
本発明によると、合成される半電導性発光ナノ粒子のコアの形状の型、および半電導性発光ナノ粒子の形状は、具体的には限定されない。
例えば、球状形状、長尺形状、星形状、多面体形状、ピラミッド形状、テトラポッド形状、四面体形状、プレートレット形状、円錐形状、および不規則形状のコアおよび-または半電導性発光ナノ粒子が合成され得る。
【0036】
本発明のいくつかの態様において、コアの平均直径は、1.5nm~3.5nmの範囲においてである。
本発明の別の好ましい態様において、該シェル(単数)または該シェル(複数)は、式(V)
[A2B2] (V)
式中
[A2]は、亜鉛、カドミウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B2]は、硫黄、セレニウムからなる群から選択される非金属、またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される。
【0037】
好ましくは、[A2B2]は、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnTeSeSおよびZnSeSからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す。
コア[A1B1]および少なくとも1のシェル[A2B2]を含み、好ましくは該コア[A1B1]およびシェル[A2B2]はコア/シェル構造を形成し、より好ましくは該コア/シェル構造[A1B1]/[A2B2]は、CdSeS/CdZnS、CdSeS,CdS/ZnS、CdSeS/CdS,ZnS CdSe/ZnS、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSe,ZnS、InP(Zn)/ZnSe、InP(Zn)/ZnSe、ZnS、ZnSe/CdS、ZnSe/ZnS、InP(Zn)/ZnSe、ZnS、ZnTeからなる群から選択されるか、または、それらの混合物である材料が総合的に好ましい。本発明の別の好ましい態様において、材料はカドミウムを含まない。
【0038】
本発明のいくつかの態様において、半電導性発光ナノ粒子は、該シェル層上に第2のシェル層をさらに含み、好ましくは第2のシェル層は周期表の12族の第3周期の元素および周期表の16族の第4周期の元素を含み、または、からなり、より好ましくは、第3周期の元素はZnであり、第4周期の元素はS、Se、またはTeであり、ただし、第4周期の元素および第2周期の元素は、同じではない。
【0039】
本発明の好ましい態様において、第2のシェル層は、以下の式(VI)
ZnSxSeyTez -(VI)
式中、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、およびx+y+z=1によって表され、好ましくは、シェル層は、ZnSe、ZnSxSey、ZnSeyTez、またはZnSxTezであり、ただし、シェル層および第2のシェル層は、同じではない。
本発明のいくつかの態様において、該第2のシェル層は、合金シェル層またはグレーデッドシェル層(graded shell layer)であり得、好ましくは該グレーデッドシェル層は、ZnSxSey、ZnSeyTez、またはZnSxTezであり、より好ましくはそれはZnSxSeyである。
【0040】
本発明のいくつかの態様において、半電導性発光ナノ粒子は、多重シェルとして、第2のシェル層上に1以上の追加的なシェル層をさらに含み得る。
本発明によると、用語「多重シェル」は、3以上のシェル層からなる積層シェル層を示す。
例えば、CdSe/CdS、CdSeS/CdZnS、CdSeS/CdS/ZnS、ZnSe/CdS、CdSe/ZnS、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSe/ZnS、InZnP/ZnS、InZnP/ZnSe、InZnP/ZnSe/ZnS、InGaP/ZnS、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnSe/ZnS、InZnPS/ZnS、InZnPS ZnSe、InZnPS/ZnSe/ZnS、ZnSe/CdS、ZnSe/ZnSまたはこれらの任意の組み合わせが、使用され得る。好ましくは、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSexS1-x、InP/ZnSexS1-x/ZnS、InP/ZnSe/ZnS、InZnP/ZnS、InP/ZnSexTe1-x/ZnS、InP/ZnSexTe1-x、InZnP/ZnSe、InZnP/ZnSe/ZnS、InGaP/ZnS、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnSe/ZnS。
【0041】
本発明のいくつかの態様において、半電導性発光ナノ粒子のシェルおよびコアの間の体積比は、5以上であり、好ましくは、それは、5~40、より好ましくはそれは、10~30の範囲においてである。
【0042】
本発明によると、該シェル/コア比は、以下の式(VII)を使用して計算される。
【数1】
式中、記号は以下の意味を有する
Vシェル=シェル層(単数または複数)の体積、
Vコア=コアの体積、
Mw(総シェル元素)=総シェル元素の分子量、
Mw(総コア元素)=総コア元素の分子量
ρ(総シェル元素)=総シェル元素の密度
ρ(総コア元素)=総コア元素の密度
【0043】
製造プロセス
本発明の別の目的は、コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含む、または、からなる、半導体ナノサイズ発光材料であって、以下のステップ;
(a)好適な溶媒中に任意に溶解されていてもよい、少なくとも1の金属[A1]および/または[A2]の少なくとも1の塩を提供する;
(b)少なくとも1の非金属[B1]および/または[B2]の少なくとも1の供給源を添加して、中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を得る;
(c)ステップ(b)からの該中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を、任意に溶媒の存在において、それをチオ金属塩の供給源と接触させることによって被覆する、および任意に、
(d)ステップ(c)の該被覆された中間体を、約300~約650のピーク光波長をもつ光を有する照明へ供与して、ナノサイズ材料の量子収率を増加させる、
によって得られ得る、または、得られる、前記材料を製造するためのプロセスに向けられている。
【0044】
したがって、本発明は、材料のための2つの代替的な態様を包含する:第一は、配位子が堆積されている単一のコアとしての[A1B1]からなる構造、第二は、コア[A1B1]および少なくとも1のシェル[A2B2]、好ましくは2以上のシェル[A2B2]2…[AxBx]xからなる構造である。材料が、コアおよび少なくとも1のシェルからなる場合、コア材料[A1B1]および[A2B2]は、例えばコアとしてのInPおよびシェルを形成するZnSeのように異なる。より多くのシェルがある場合、材料は、例えばInP/ZnS,ZnSeなど、なおも異なってもよいが、コアおよび例えば外側のシェルは、例としてZnS/ZnSe,ZnSのように、同一であることもまた可能である。
【0045】
[AB]構造および好ましい単一または多重のの構造を示す化合物の性質に関係している限り、プロセスに関しても適用する以下の説明がなされる。
したがって、本発明の好ましい態様は、ステップ(a)および/またはステップ(b)が、2の異なる金属[A1]または[A2]の塩を提供すること、および/または、2の異なる非金属[B1]または[B1]の供給源を添加することを夫々網羅するプロセスである。全ての原材料が同時に添加される場合、全てのこれらの化合物からなるコアが形成される。しかしながら、第一にコアを形成し、および続いてそれらの指定された構成成分を添加して該コアの周辺にシェルを形成することが具体的に好ましい。これは、コアおよび2以上のシェルをもつ複合体粒子を構築するために段階的に行われ得る。
【0046】
例えば、金属[A1]または[A2]の好適な塩は、ハロゲン化物、具体的に塩化物またはヨウ化物、またはカルボキシラート、例えばアセタートまたはオレアートなどを網羅する。非金属[B1]または[B1]の好適な供給源は、例えばホスフィンを有する複合体を含む。
これらの構成成分[A]および[B]のモル比は、多岐に亘り得るが、しかしながら、好ましくは約4:1~1:4の範囲におけるモル比を適用するのが好ましい。別の態様において、モル比は、約1:1である。反応は、大抵溶媒、例えばオレイルアミンなどの高沸点アミンの存在において生じる。コアを形成するための構成成分が一旦接触すると、それらは約150~約220℃の温度で、還流下で維持される。
【0047】
続いて、シェルを形成するために指定された残りの構成成分が導入され、および温度が段階的に350℃まで、好ましくは200~320℃までに上昇される。完全な反応は5時間までを要する。
一旦反応が完了すると、中間体半導体材料[AB]-単一のコアからなる、または、コア-シェル(単数または複数)構造を示すのいずれか-は、洗浄、および極性および非極性溶媒を使用する遠心分離によって精製される。
続いて、ナノ結晶は有機溶媒(例として、トルエン)中で溶解され、または少なくとも分散され、および上記に詳細に定義されたとおりのチオ金属塩の溶液を以て処理される。本発明による好ましい態様において、ナノ結晶は有機溶媒(例として、トルエン)中で溶解され、または少なくとも分散され、および金属チオカルバマートおよび/またはチオカルボナートの溶液を用いて処理される。
【0048】
チオ金属塩は、約2~約98wt.%、より好ましくは約3~約50wt.%、およびさらにより好ましくは約5~約25wt.%の量における中間体化合物[A1B1]または[A1B1]/[A2B2]の表面上に堆積され、それは配位子のモル質量に依存してもよい。本発明による好ましい態様において、金属チオカルバマートおよび/またはチオカルボナートは、約2~約98wt.%、より好ましくは約3~約50wt.-%およびさらにより好ましくは約5~約25wt.-%の量における中間体化合物[A1B1]または[A1B1]/[A2B2]の表面上に堆積され、それは配位子のモル質量に依存してもよい。
ナノサイズ材料の量子収率を増加させるための重大なステップは、青色光を使用する照明である。好ましいピーク光波長は、約300~約650nm、および具体的に約365~約470nmの範囲に及ぶ。別の好ましい態様において、光強度は、約0.025~約1Wcm-2、より好ましくは約0.05~約0.5Wcm-2の範囲に及ぶ。
【0049】
マトリックス組成物
本発明の別の目的は、上記に説明されるとおりの少なくとも1の半導体ナノサイズ発光材料および少なくとも1の追加的な材料を含む組成物を指し、好ましくは追加的な材料は、有機発光材料、無機発光材料、電荷輸送材料、散乱粒子、およびマトリックス材料から選択され、好ましくはマトリックス材料は光透過性ポリマーである、前記組成物を指す。
【0050】
本発明によると、光学デバイスに好適な多種多様の公知のマトリックス材料が、好ましくは使用され得る。本発明による好ましい態様において、マトリックス材料は、透過性である。本発明によると、用語「透過性」は、光学媒体において使用される厚さで、かつ、光学媒体の操作の間に使用される波長または波長の範囲で、少なくともほぼ60%の入射光伝達を意味する。好ましくは、それは、70%を超え、より好ましくは、75%を超え、最も好ましくは、それは、80%を超える。
【0051】
本発明のいくつかの態様において、透過性マトリックス材料は、透過性ポリマーであり得る。
本発明による用語「ポリマー」は、繰り返し単位を有し、かつ、重量平均分子量(Mw)1000以上を有する材料を意味する。
分子量Mwは、内部ポリスチレン標準に対するGPC(=ゲル浸透クロマトグラフィー)の手法によって決定される。
【0052】
本発明のいくつかの態様において、透過性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、70℃以上および250℃以下である。
Tgは、http://pslc.ws/macrog/dsc.htm、Rickey J Seyler、Assignment of the Glass Transition、ASTM刊行物コード番号(PCN)04-012490-50に記載されるように、示差走査熱量において観察される熱容量における変化に基づいて測定される。
例えば、透過性マトリックス材料のための透過性ポリマーとして、ポリ(メタ)アクリラート、エポキシド、ポリウレタン、ポリシロキサンが、好ましくは使用され得る。
本発明の好ましい態様において、透過性マトリックス材料としてのポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000~300,000の範囲においてである。より好ましくは、それは、10,000~250,000である。
【0053】
溶媒配合物
本発明の別の目的は、上記に説明されるとおりの組成物および少なくとも1の 溶媒を含む配合物に及ぶ。これらの種類の配合物は、材料が特定の表面上を被覆するために指定される場合、興味深い。
好適な溶媒は、精製水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、およびエチレングリコールモノブチルエーテルなどの、エチレングリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、およびジエチレングリコールジブチルエーテルなどの、ジエチレングリコールジアルキルエーテル;メチルセロソルブアセタートおよびエチルセロソルブアセタートなどの、エチレングリコールアルキルエーテルアセタート;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、およびプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセタートなどの、プロピレングリコールアルキルエーテルアセタート;メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノンなどの、ケトン;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、およびグリセリンなどの、アルコール;エチル3-エトキシプロピオナート、メチル3-メトキシプロピオナートおよびエチルラクタートなどの、エステル;およびγ-ブチロラクトンなどの環状エステル(aster);クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの、塩化炭化水素からなる群から選択され得る。
【0054】
また、芳香族、ハロゲン化および脂肪族炭化水素溶媒からなる群の1以上の材から選択される溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタンおよびヘプタンからなる群の1以上の材から選択されるものがより好ましい。
それらの溶媒は、単独または2以上の組み合わせにおいて使用され、およびその量は被覆方法および被覆の厚さに依存する。
より好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(これ以降「PGMEA」)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセタート、精製水またはアルコールなどの、プロピレングリコールアルキルエーテルアセタートが使用され得る。さらにより好ましくは、精製水が使用され得る。
配合物中の溶媒の量は、さらなる処理によって自由に制御され得る。例えば、配合物がスプレー被覆されるよう指定されている場合、それは90wt.%以上の量において溶媒を含有し得る。さらに、大きな基板を被覆することにおいてしばしば採用されるスリット被覆方法が実行される場合、溶媒の含量は、通常60wt.%以上または70wt.%以上である。
【0055】
デバイス
本発明はまた、本発明の半導体ナノサイズ発光材料の、例として、電子デバイス、光学デバイスにおける、または、生医学デバイスにおける使用にも向けられている。本発明のいくつかの態様において、光学デバイスは、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)、ディスプレイのためのバックライトユニット、発光ダイオード(LED)、微小電気機械システム(以降、「MEMS」)、エレクトロウェッティングディスプレイ、または電気泳動ディスプレイ、点灯装置、および/または太陽電池であり得る。
本発明はまた、半導体ナノサイズ発光材料、組成物または配合物(それらの各々は上記に説明されるとおり)を含む、光学媒体にも及ぶ。
最終的に、本発明はまた、上記に説明されるとおりの該光学媒体を含む光学デバイスをも指す。
【0056】
さらなる態様
態様1:半導体ナノサイズ発光材料であって、コア、任意に1以上のシェル、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含む、または、からなり、配位子が、少なくとも1のチオ金属塩である、前記材料。
【0057】
態様2:該配位子が、式(I)
【化10】
式中
Mは、二価の金属、好ましくは亜鉛、マグネシウム、銅またはそれらの混合物を示し;
Xは、-O-または-S-または-NR
2-を示し;
Yは、-O-または-S-を示し;
R
1、R
2は、互いに独立して、2~25個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよい、アルキル、アルケニル、アルケニル、アリールおよび/またはアラルキル鎖;または
式(II)および/または(III)
-(CHR
5)
xO(CHR
5)
y2-NR
3R
4 (II)
-CH
2CHR
5O)
zR
6 (III)
による基を示し;
R
3、R
4は、互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する直線状または分枝のアルキル鎖を示し;
R
5は、水素またはメチルを示し;
R
6は、1~4個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル鎖を示し;
x、y2は、互いに独立して、1~5の整数を示し;および
zは、1~30の整数を示す、
によって表される、態様1の材料。
【0058】
態様3:該配位子が、式(I)によって表され、および式中、R1、R2が、互いに独立して、7~20個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルケニル、アリールおよび/またはアラルキル鎖を示す、態様1または2に記載の材料。
態様4:配位子が、金属ジアルキルチオカルバマートおよび/または金属ジアルキルジチオカルボナートおよび/または金属アルキルトリチオカルバマートである、態様1~3のいずれか1に記載の材料。
【0059】
態様5:該コアが、式(IV)
[A1B1] (IV)
式中
[A1]は、亜鉛、カドミウム、インジウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B1]は、硫黄、セレニウム、蛍光体からなる群から選択される非金属またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される、態様1~4のいずれか1に記載の材料。
態様6:[A1B1]が、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSe、ZnSeS、およびInPからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す、態様5に記載の材料。
【0060】
態様7:該シェル(単数)または該シェル(複数)が、式(V)
[A2B2] (V)
式中
[A2]は、亜鉛、カドミウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B2]は、硫黄、セレニウムからなる群から選択される非金属、またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される、態様1~6のいずれか1に記載の材料。
態様8:[A2B2]が、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSeおよびZnSeS、ZnSeSTeからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す、態様7に記載の材料。
【0061】
態様9:材料が、コア[A1B1]および少なくとも1のシェル[A2B2]を含み、および該[A1B1]/[A2B2]が、CdSeS/CdZnS、CdSeS,CdS/ZnS、CdSeS/CdS,ZnS CdSe/ZnS、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSe,ZnS、InP(Zn)/ZnSe、InP(Zn)/ZnSe,ZnS、InP(Zn)/ZnSe,ZnS,ZnTe、ZnSe/CdS、ZnSe/ZnSからなる群から選択される、または、それらの混合物である、態様1~8のいずれか1に記載の材料。
【0062】
態様10:コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含む、または、からなる、半導体ナノサイズ発光材料であって、以下のステップ:
(a)好適な溶媒中に任意に溶解されていてもよい、少なくとも1の金属[A1]および/または[A2]の少なくとも1の塩を提供する;
(b)少なくとも1の非金属[B1]および/または[B2]の少なくとも1の供給源を添加して、中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を得る;
(c)ステップ(b)からの該中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を、任意に溶媒の存在において、それをチオ金属塩の供給源と接触させることによって被覆する、および任意に、
(d)ステップ(c)の該被覆された中間体を、約300~約650nmのピーク光波長をもつ光を有する照明へ供与し、ナノサイズ材料の量子収率を増加させる、
によって得られ得る、または、得られる、前記材料。
【0063】
態様11:コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含む、または、からなる、半導体ナノサイズ発光材料を製造するためのプロセスであって、以下のステップ:
(a)好適な溶媒中に任意に溶解されていてもよい、少なくとも1の金属[A1]および/または[A2]の少なくとも1の塩を提供する;
(b)少なくとも1の非金属[B1]および/または[B2]の少なくとも1の供給源を添加して、中間体化合物[A1B1]または[A1B1]/[A2B2]を得る;
(c)ステップ(b)からの該中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を、任意に溶媒の存在において、それをチオ金属塩の供給源と接触させることによって被覆する、および任意に
(d)ステップ(c)の該被覆された中間体を、約300~約650nmのピーク光波長をもつ光を有する照明へ供与し、ナノサイズ材料のQYを増加させる、
を含む、または、からなる、前記プロセス。
【0064】
態様12:態様1~10のいずれか1に記載の少なくとも1の半導体ナノサイズ発光材料、および少なくとも1の追加的な透過性マトリックス材料を含む、組成物。
態様13:態様1~10のいずれか1に記載の少なくとも1の半導体ナノサイズ発光材料または態様12に記載の組成物、および少なくとも1の溶媒を含む、配合物。
態様14:態様1~10のいずれか1に記載の半導体ナノサイズ発光材料、態様12に記載の組成物、または態様13に記載の配合物の、電子デバイス、光学デバイスにおける、または生医学デバイスにおける使用。
態様15:態様1~10のいずれか1に記載の半導体ナノサイズ発光材料、態様12に記載の組成物、または態様13に記載の配合物を含む、光学媒体。
態様16:態様15に記載の該光学媒体を含む、光学デバイス。
【0065】
態様17:式(I)
【化11】
式中
Mは、二価の金属、好ましくは亜鉛、マグネシウム、銅またはそれらの混合物を示し;
Xは、-O-または-S-または-NR
2-を示し;
Y
1は、-O-または-S-を示し;
R
1、R
2は、互いに独立して、7~25個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよい、アルキル、アルケニル、アルケニル、アリールおよび/またはアラルキル鎖;または
式(II)および/または(III)
-(CHR
5)
xO(CHR
5)
y2-NR
3R
4 (II)
-CH
2CHR
5O)
zR
6 (III)
による基を示し、
R
3、R
4は、互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する直線状または分枝のアルキルを示し;
R
5は、水素またはメチルを示し;
R
6は、1~4個の炭素原子を有し、官能基によって任意に置換されていてもよいアルキル鎖を示し;
x、y2は、互いに独立して、1~5の整数を示し;および
zは、1~30の整数を示す。
で表される化合物。
【0066】
実施例
いくつかの半導体を作製し、表面処理に供与する。続いて、それらを量子収率を増強/改善するために照射する。
照明について、Philips Fortimoが組立てた照明設備3000lm 34W 4000KLEDダウンライトモジュール(蛍光体ディスクを除去した)。1.9nm厚さのPerspex pane(登録商標)を、その頂部に設置する。LEDおよびPerspex pane(登録商標)の間の距離は、31.2mmである。20mlの密封試料バイアルを、Perspex pane(登録商標)上、プラスチックシリンダー(直径68mm、高さ100mm)の内側に設置する。シリンダーの内側に密封試料バイアルを備える光増強システムを使用する。QDの溶液を有するバイアルをPerspex上に設置し、下から光を当てる。任意に、溶液を広域の加熱および溶媒の蒸発から防ぐために、バイアルを水浴中に設置する。照明のピーク波長は、455nmである。450nmでの照度を、Ophir Nova II(登録商標)およびPD300-UV光検出器によって測定し、測定したものは、300mW/cm2である。
【0067】
例1
InP/ZnSeの合成
112mgのInI3、および150mg ZnCl2を、2.5mL オレイルアミン中に溶解する。180℃で、0.22mLのヘキサエチルリン酸トリアミド(DEA)3P)を溶液に添加し、この温度で20min間維持する。20min後、0.55mLのアニオンシェル前駆体(2MTOP:Se)を溶液中に緩やかに添加する。次いで、溶液を段階的に加熱し、200℃および320℃の間の温度で、カチオン(2.4mLの0.4M オレイルアミン中Zn-アセタート)およびアニオン(0.38mLの2MTOP:Se)シェル前駆体の連続的な注入が続く。
【0068】
例2
Zn-ジオクタデシルジチオカルバマート(Zn(C18)DTC)の合成
【化12】
クライセンアダプター(Claisen adapter)を備えた100mL丸底フラスコ中へ、マグネチックスターラーおよび等圧滴下漏斗(equalizing pressure dropping funnel)、ジオクタデシルアミン(>99%、Sigma-Aldrichから、4.8mmol)を入れる。次いで、二硫化炭素(無水、≧99%、Sigma-Aldrichから、9.6mmol、2当量)を添加して、アミンを完全に溶解する。NaOH(4.9mmol、1.0当量)を、脱イオン水を用いて室温(20℃)で溶解する。NaOH溶液の添加後、色が黄色へ変化した。反応物を、全てのCS
2が蒸発するまで、周囲雰囲気下で2日間攪拌するようにし、沈殿物(ジオクタデシルジチオカルバマートナトリウム塩)を形成する。ワークアップ(work-up)プロセスは、Buchnerによる真空濾過を包含する。
【0069】
続いて、これによって得られたジチオカルバマートを、亜鉛塩化物と反応させて、亜鉛複合体を形成する。クライセンアダプターを備えた150mL丸底フラスコ中へ、マグネチックスターラーおよび等圧滴下漏斗、エタノール:クロロホルム1:1中に室温で溶解させたジオクタデシルアミンナトリウム塩(1.5mmol)を入れる。次のステップにおいて、ZnCl2(0.9mmol、0.61当量)を、エタノール:クロロホルム1:1混合物中に室温で溶解し、等圧滴下漏斗中へ入れ、15分間滴加する。沈殿物が、1日後に形成する。混合物の追加的な攪拌を、20℃で、72時間するようにし、次いで、Buchnerによる真空濾過を使用してワークアップを実行する。白黄色個体を、真空下、2時間、Buchner漏斗上で乾燥させる。
【0070】
例3
Zn-オレイルキサンタートの合成
【化13】
50mL三角フラスコ(Erlenmeyer)中へ、KOHおよびオレイルアルコール(85%グレード、Sigma-Aldrich)を入れ、4時間、20℃で反応させる。KOHの部分的な溶解後、混濁溶液を、マグネチックスターラー、還流冷却器(保護のためのみ)および等圧滴下漏斗を備えた3首丸底フラスコ(3-rbf)中へ(リカー(liquor)を使用して)静かに注ぐ。ジエチルエーテル(12mL)中に溶解させた二硫化炭素を、等圧滴下漏斗中へ入れ、30分間滴下する。添加の間、淡黄色固体が形成する。反応物を、ほとんどの水分がなくなるまで、暗条件下、20℃で、10時間攪拌するようにする。攪拌の間、ほとんどの粗製物が固体になる。ワークアッププロセスは、Buchnerによる真空濾過または真空による乾燥を包含する。粉砕をジエチルエーテルを用いて行って、純粋なオレイルキサンタートカリウム塩を得る。
【0071】
続いて、これによって得られたキサンタートを、亜鉛塩化物と反応させて、亜鉛複合体を形成する。クライセンアダプター、マグネチックスターラーおよび等圧滴下漏斗を備えた100mL丸底フラスコ中へ、THF中に室温(r.t)で溶解させたオレイルキサンタートカリウム塩(3.4mmol)を入れる。次のステップにおいて、THF中に室温で溶解させたZnCl2(2.1mmol、0.61当量)を、等圧滴下漏斗中へ入れ、10分間滴加する。白色固体の沈殿物が、24時間後に形成する。混合物の追加的な攪拌を、20℃で、2日間するようにし、次いで、生成物をBuchnerによる真空濾過を使用してワークアップする。白色固体を、脱イオン水を用いて3回リンスし、次いで、真空上で乾燥させる。
【0072】
例4
例1からの量子材料の精製
例1からの1mLの試料を、トルエンおよびエタノールを溶媒および貧溶媒として夫々使用して、過剰の配位子から精製し、遠心分離および乾燥がこれに続く。洗浄を2回繰り返す。有機配位子の量を、熱重量分析(TGA)(モデル TGA2、Metler Toledo)を使用して計算する。TG分析は、14%wt.の有機含量を示す。
30mgの量子材料を、1mLトルエン中に溶解する。量子収率(QY)を、Hamamatsu絶対量子収率分光装置(absolute quantum yield spectrometer)(モデル:Quantaurus C11347)を使用して測定する。溶液を、青色LED(300mW/cm2)下、24時間光を当てる。光を当てた試料の量子収率を、照明を停止した直後および照明を停止した2日後に測定する。
【0073】
例5
Zn-ジエチルジチオカルバマート(Zn(C2)DTC)を用いた表面処理
0.027mmol Zn(C2)DTC
【化14】
(97%、329703-25G Sigma-Aldrichから)を、0.5mLトルエン中に溶解する。超音波処理(10分)を適用して、Zn(C2)DTCのトルエン中の溶解を促進する。溶液を、1mLの精製したQD溶液と合わせる(例4を参照)。超音波処理を、透明な溶液を得るまで、約20分にわたって適用する。
【0074】
例6
Zn-ジエチルジチオカルバマート(Zn(C2)DTC)を用いて処理したQMの照明
(例5)からの溶液を、青色LED(300mW/cm2)下、24時間、照明下に設置する。24時間後、試料の量子収率をHamamatsu絶対量子収率分光装置(モデル:Quantaurus C11347)を使用して測定する。照明した試料の量子収率を、照明を停止した直後および照明を停止した2日後に測定する。
【0075】
例7
Zn-ジオクタデシルチオカルバマート(Zn(C18)DTC)を用いた表面処理
(例2からの)0.027mmol Zn(C18)DTCを、0.5mLトルエン中に溶解する。超音波処理(10分)を適用して、Zn(C18)DTCのトルエン中の溶解を促進する。溶液を、1mLの精製したQD溶液と合わせる(例4を参照)。超音波処理を、透明な溶液を得るまで、約20分にわたって適用する。
【0076】
例8
Zn(C18)DTCを用いて処理したQMの照明
(例7)に説明した溶液を、青色LED(300mW/cm2)下、24時間、照明下に設置する。24時間後、試料の量子収率を、Hamamatsu絶対量子収率分光装置(モデル:Quantaurus C11347)を使用して測定する。照明した試料の量子収率を、照明を停止した直後および照明を停止した2日後に測定する。
【0077】
例9
ジオクタデシルジチオカルバマート(C18DTC)を用いた表面処理
(例2において説明したとおり調製した)0.027mmol C18DTCを、0.5mLトルエン中に溶解する。超音波処理(10分)を適用して、C18DTCのトルエン中の溶解を促進する。溶液を、1mLの精製したQD溶液と合わせる(例4を参照)。超音波処理を、透明な溶液を得るまで、約20分にわたって適用する。
【0078】
例10
Zn-オレイルキサンタート(Zn(C18)キサンタート)を用いた表面処理
(例3において説明したとおり調製した)0.027mmol Zn(C18)キサンタートを、0.5mLトルエン中に溶解する。超音波処理(10分)を適用して、Zn(C18)キサンタートのトルエン中の溶解を促進する。溶液を、1mLのQD溶液と合わせる(例4を参照)。超音波処理を、透明な溶液を得るまで、約20分にわたって適用する。
【0079】
例11
Zn(C18)キサンタートを用いて処理したQMの照明
(例10)において説明した溶液を、青色LED(300mW/cm2)下、24時間、照明下に設置する。24時間後、試料の量子収率を、Hamamatsu絶対量子収率分光装置(モデル:Quantaurus C11347)を使用して測定する。照明した試料の量子収率を、照明を停止した直後および照明を停止した2日後に測定する。
実験結果を、試料の量子収率および量子収率の安定性を提供する以下の表1および2において提示する。
【0080】
表1
Zn-ジアルキル-DTC処理した試料についての量子収率
【表1】
【0081】
例は、明確に金属カチオン、ここでは亜鉛、が重要であることを示している。Zn(C18)DTCについての例5 QYは、33%であり(照明前)、C18DTCについて0.4%のみである(例9)。その上、照明はQYを有意に強化し得、Zn(C18)DTCを使用するとき、QYは有意に増加され得る。
【0082】
表2
照明を停止した48時間後の異なるZn-ジアルキルDTC(およびキサンタート)を用いて処理したQMのQYの安定性
【表2】
【0083】
例は、明確に、InP/ZnSe(外側の配位子なしで精製した試料)のQYが、照明を停止した後に安定ではなく、40%から21%に低下することを示す。Zn(C2)DTCを用いたInP/ZnSeもまた安定ではない。しかしながら、C18(例8および11)の鎖長を有する亜鉛ジチオ配位子は安定であり、QYにおける低下は観察されない。
【0084】
例12
InP/ZnSe量子ドットの合成および精製
112mgのInI3、および150mg ZnCl2を、2.5mLオレイルアミン中に溶解する。180℃で、0.22mLのヘキサエチルリン酸トリアミド(DEA)3P)を溶液へ添加し、20min、この温度で維持する。20min後、0.55mLのアニオンシェル前駆体(2M TOP:Se)を、溶液中に緩やかに添加する。次いで、溶液を段階的に加熱し、200℃および320℃の間の温度で、カチオン(2.4mLの0.4M オレイルアミン中Zn-アセタート)およびアニオン(0.38mLの2M TOP:Se)シェル前駆体の連続的な注入が続き、粗製InP/ZnSeを得る。1mLの粗製QDを、トルエンおよびエタノールを溶媒および貧溶媒として夫々使用して、過剰の配位子から精製し、遠心分離および乾燥がこれに続く。洗浄を、2回繰り返す。有機配位子の量を、熱重量分析(TGA)(モデルTGA2、Metler Toledo)を使用して計算する。TG分析は、15%wt.の有機含量を示す。
【0085】
例13
(例12からの)QDの希釈による安定性試験
25mgの例12からのQDを、1ml トルエン(無水グレード)中に溶解する。溶液を、不活性雰囲気(アルゴン)下に維持する。この溶液を、0.3mg/mlの最終的な濃度へさらに希釈する。QYを、周囲条件下、希釈の直後および24時間の保管後に測定する。
【0086】
例14:
亜鉛オレイルキサンタートを用いた表面処理後の(例12からの)QDの希釈による安定性試験
25mgの(例12からの)QDを、1mL トルエン(無水グレード)中に溶解する。溶液を、不活性雰囲気(アルゴン)下に維持する。(例3において説明したとおり調製した)ZnC18キサンタート(10mg)を、QD溶液へ添加し、混合物を16時間攪拌する。この溶液を、0.3mg/mlの最終的な濃度へさらに希釈する。QYを、周囲条件下、希釈の直後および24時間の保管後に測定する。
【0087】
例15
InP/ZnS QD(WO2014/162206 A1および/またはUS9,343,301 BBにおいて説明されるとおり製造した赤色放出QD)の希釈による安定性試験
25mgのInP/ZnS(WO2014/162206 A1および/またはUS9,343,301 BBにおいて説明されるとおり製造した赤色放出QD)を、1ml トルエン(無水グレード)に溶解する。溶液を、不活性雰囲気(アルゴン)下に維持する。溶液を、0.3mg/mlの最終的な濃度へさらに希釈する。QYを、周囲条件下、希釈の直後および24時間の保管後に測定する。
【0088】
例16
InP/ZnS QD(WO2014/162206 A1および/またはUS9,343,301 BBにおいて説明されたとおり製造した赤色放出QD)の希釈による安定性試験
25mgのInP/ZnS(WO2014/162206 A1および/またはUS9,343,301 BBにおいて説明されたとおり製造した赤色放出QD)を、1mL トルエン(無水グレード)中に溶解する。溶液を、不活性雰囲気(アルゴン)下に維持する。(例3において説明したとおり調製した)Zn(C18)キサンタート(10mg)を、QD溶液へ添加し、混合物を16時間攪拌する。この溶液を、0.3mg/mlの最終的な濃度へさらに希釈する。QYを、周囲条件下、希釈の直後および24時間の保管後に測定する。
【0089】
例17
亜鉛アセタートを用いた表面処理後のInP/ZnS QD(WO2014/162206 A1および/またはUS9,343,301 BBにおいて説明されたとおり製造した赤色放出QD)の希釈による安定性試験
InP/ZnS(WO2014/162206 A1および/またはUS9,343,301 BBにおいて説明されたとおり製造した赤色放出QD)を、1ml トルエン(無水グレード)中に溶解する。溶液を、不活性雰囲気(アルゴン)下に維持する。亜鉛アセタート(10mg)(Sigma Aldrich、99.99%純度)を、QD溶液へ添加し、混合物を16時間攪拌する。この溶液を、0.3mg/mlの最終的な濃度へさらに希釈する。QYを、周囲条件下、希釈の直後および24時間の保管後に測定する。
【0090】
表3
希釈による安定性試験からのQY結果
【表3】
【0091】
表3において例示した結果は、本発明による配位子として金属チオカルボナートを添加するとき、希釈の上でのQYの安定化を明確に示している。したがって、金属チオカルボナートは、QYの改善につながるだけでなく、それらはまた希釈の上でのQYの安定化、よってQDの放出安定性の改善にもつながる。