IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図1
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図2
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図3
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図4
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図5
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図6
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図7
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図8
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図9
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図10
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図11
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図12
  • 特許-試料ステージ及び光学式検査装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】試料ステージ及び光学式検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230301BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/66 D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021550988
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2019039712
(87)【国際公開番号】W WO2021070265
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅也
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-5646(JP,U)
【文献】実開昭63-115214(JP,U)
【文献】実開平3-41935(JP,U)
【文献】特開2005-116842(JP,A)
【文献】特開昭60-32324(JP,A)
【文献】国際公開第2003/071599(WO,A1)
【文献】特開昭63-142829(JP,A)
【文献】特開平5-301137(JP,A)
【文献】特開2004-253756(JP,A)
【文献】米国特許第6721035(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を吸着し保持する試料ステージであって、
第1吸着面とその中央部に形成された凹部である受圧室とを有する外周ステージと、
第2吸着面を有すると共に、前記受圧室に収容されて前記外周ステージから上方に突出可能な内周ステージと、
前記外周ステージに形成されて前記第1吸着面に開口した試料脱着動作用の第1流路と、
前記外周ステージ及び前記内周ステージに形成されて前記第2吸着面に開口した試料脱着動作用の第2流路と、
前記外周ステージに形成されて前記受圧室に開口した内周ステージ昇降駆動用の第3流路と
を備えた試料ステージ。
【請求項2】
請求項1の試料ステージにおいて、前記外周ステージ及び前記内周ステージは平面視で同心円状に形成されている試料ステージ。
【請求項3】
請求項1の試料ステージにおいて、前記第1吸着面と前記第2吸着面とが面一になる前記外周ステージに対する高さ位置が前記内周ステージの昇降範囲に含まれている試料ステージ。
【請求項4】
請求項1の試料ステージにおいて、前記第1流路の開口が前記第1吸着面に複数、前記第2流路の開口が前記第2吸着面に少なくとも1つ、それぞれ前記第2吸着面の中心について回転対称に配置されている試料ステージ。
【請求項5】
請求項1の試料ステージと、
前記試料ステージを支持する回転ステージと、
前記回転ステージを支持する並進ステージと、
アームにより前記試料ステージに対して試料を受け渡す移載装置とを備え、
前記アームが2本の爪を持つフォーク型に形成されており、
前記2本の爪の間隔に対し、前記内周ステージの外径が小さく、前記外周ステージの外径が大きく設定されている光学式検査装置。
【請求項6】
請求項5の光学式検査装置において、
送気ポンプと、
吸気ポンプと、
大気開放された排気ポートと、
前記吸気ポンプ及び前記排気ポートと前記第1流路とを接続する前記第1吸着面の試料脱着用の第1配管系統と、
前記吸気ポンプ及び前記排気ポートと前記第2流路とを接続する前記第2吸着面の試料脱着用の第2配管系統と、
前記送気ポンプ及び前記吸気ポンプと前記第3流路とを接続する前記内周ステージの昇降駆動用の第3配管系統と、
前記第1配管系統、前記第2配管系統及び前記第3配管系統を流れる流体を制御する制御弁群とを備え、
前記制御弁群は、
前記第1配管系統に設けられ、前記吸気ポンプと前記排気ポートとで前記第1流路の接続相手を切り換える少なくとも1つの第1方向切換弁と、
前記第2配管系統に設けられ、前記吸気ポンプと前記排気ポートとで前記第2流路の接続相手を切り換える少なくとも1つの第2方向切換弁と、
前記第3配管系統に設けられ、前記送気ポンプと前記排気ポートとで前記第3流路の接続相手を切り換える少なくとも1つの第3方向切換弁と
を備えている光学式検査装置。
【請求項7】
請求項6の光学式検査装置において、
前記移載装置及び前記制御弁群を制御するコントローラを備えており、
前記コントローラは、
前記第1流路を前記排気ポートに、前記第2流路を前記吸気ポンプに、前記第3流路を前記送気ポンプに接続するように前記制御弁群に指令し、前記外周ステージから突出した前記内周ステージに試料を置くように前記移載装置に指令する設置手順と、
前記第3流路を前記吸気ポンプに接続するように前記制御弁群に指令し、前記内周ステージを下降させる下降手順と、
前記第1流路及び前記第2流路を前記吸気ポンプに接続するように前記制御弁群に指令し、前記第1吸着面及び前記第2吸着面で前記試料を吸着し保持する吸着手順と
を含む試料ロード手順を実行する光学式検査装置。
【請求項8】
請求項7の光学式検査装置において、前記コントローラは、前記下降手順で前記第1流路を前記吸気ポンプに接続するように前記制御弁群に指令し、前記第1吸着面とこれに接近する前記試料との間から吸気する光学式検査装置。
【請求項9】
請求項6の光学式検査装置において、
前記移載装置及び前記制御弁群を制御するコントローラを備えており、
前記コントローラは、
前記第3流路を前記送気ポンプに接続するように前記制御弁群に指令し、前記内周ステージを上昇させて前記外周ステージから突出させる上昇手順と、
前記内周ステージにより前記第1吸着面から持ち上げられた試料と前記第1吸着面との間に前記アームを差し込んで前記内周ステージから前記試料を持ち上げるように前記移載装置に指令する搬出手順と
を含む試料アンロード手順を実行する光学式検査装置。
【請求項10】
請求項9の光学式検査装置において、前記試料アンロード手順には、前記上昇手順の前に、前記第1流路を前記送気ポンプに接続するように前記制御弁群に指令し、前記第1吸着面と前記試料との間に送気する吸着解除手順が含まれる光学式検査装置。
【請求項11】
請求項6の光学式検査装置において、
試料の反りの大きさを測定するセンサと、
前記制御弁群を制御するコントローラを備えており、
前記コントローラは、前記試料の反りの大きさが設定値以上である場合に前記試料の反りの大きさを小さくするように前記制御弁群に指令する光学式検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハ等の試料を吸着して保持する試料ステージ及びこれを備えた光学式検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、ウェハ等の試料の欠陥(傷や異物等)が歩留りに与える影響が大きく、試料の欠陥検査情報を半導体製造工程及び製造装置にフィードバックすることが歩留り管理には重要である。ウェハ等の試料をインライン検査する欠陥検査装置が半導体製造工程において果たす役割は大きい。例えば製造工程の各段階における試料の検査結果を比較することで、どのプロセス装置が汚染源となっているか等が管理できる。ウェハメーカにおいてはベアウェハの検査自体が製品の品質検査となる。
【0003】
欠陥検査装置の一種として、試料ステージを回転させながら半径方向に移動させて試料をスキャンするRθ方式の光学式検査装置がある(特許文献1等)。短時間で試料の検査を実行する(高速で試料を走査する)観点で、このRθ方式の光学式検査装置は往復動作を伴わないため、試料ステージをXY方向に平行移動させるXY方式(ステップアンドリピート方式)と比較して有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-309713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学式検査装置で、試料ステージに対する試料の受け渡しをする移載装置には、細長い直線的なアームで試料の中心を裏面から吸着して支持する形態のものがある。この種の移載装置を用いる場合、試料ステージに試料を載せたりアームを待機位置に戻したりするためにアームとの干渉を避ける溝を試料ステージに設ける必要がある。そのため試料ステージが回転して溝の向きが変化するRθ方式の光学式検査装置には一般に採用されない。
【0006】
Rθ方式の光学式検査装置では、2本の爪を持つフォーク型のアームが用いられる場合が多い。アームの2本の爪で試料の外縁部を裏面から支持し、試料ステージに対して試料を置いたり持ち上げたりする。試料ステージの外径がアームの2本の爪の間隔よりも小さく設定されていて、試料ステージは角度に関係なくアームの動作に干渉することがない。
【0007】
しかし、2本の爪で試料の裏面の外縁部を支持し試料を搬送する場合、試料を試料ステージに着脱した後に爪部分を試料ステージに対し抜き差しするためのスペースが必要で、試料ステージの外径を2本の爪の間隔より小さくせざるを得ない。そのため試料ステージの外径が試料の外径よりも小さくなり、試料の外周部を試料ステージで吸着し支持することができない。Rθ方式の光学式検査装置においては検査時間短縮の観点から検査時の試料ステージの回転速度が高速化される傾向にあり、検査時において試料ステージに吸着固定されない試料の外周部に遠心力によるうねりが生じる可能性がある。また微細化の著しい半導体の分野では欠陥の検出感度に対する要求も厳しく、検査光が短波長化して焦点深度が極めて浅くなってきている。そのため、試料の外周部はうねりにより検査面が焦点深度から外れてしまい検査精度が低下する恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、高速回転時の試料の平坦性を改善して検査感度を向上させることができる試料ステージ及びこれを備えた光学式検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、試料を吸着し保持する試料ステージであって、第1吸着面とその中央部に形成された凹部である受圧室とを有する外周ステージと、第2吸着面を有すると共に、前記受圧室に収容されて前記外周ステージから上方に突出可能な内周ステージと、前記外周ステージに形成されて前記第1吸着面に開口した試料脱着動作用の第1流路と、前記外周ステージ及び前記内周ステージに形成されて前記第2吸着面に開口した試料脱着動作用の第2流路と、前記外周ステージに形成されて前記受圧室に開口した内周ステージ昇降駆動用の第3流路とを備えた試料ステージを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高速回転時の試料の平坦性を改善して検査感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の光学式検査装置の概略図
図2図1の光学式検査装置の内部における試料の移動経路を表した模式図
図3図1の光学式検査装置による試料の走査軌跡を模式的に表した試料の平面図
図4図1の光学式検査装置に備えられた試料ステージの回転中心を通る断面図
図5図1の光学式検査装置に備わった空圧システムの空圧回路図
図6図1の光学式検査装置に備わったコントローラのハードウェア構成の模式図
図7図6のコントローラによる光学式検査装置の主に試料脱着動作に関する制御手順を表すフローチャート
図8】試料脱着動作における内周ステージ上昇手順時の図4の試料ステージの状態図
図9】試料脱着動作における試料設置手順時の図4の試料ステージの状態図
図10】試料脱着動作における内周ステージ下降手順時の図4の試料ステージの状態図
図11】コントローラによる試料矯正動作に関する制御手順を表すフローチャート
図12】本発明の第2実施形態の光学式検査装置に備えられた試料ステージの回転中心を通る断面図
図13図12の試料ステージの平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(第1実施形態)
-光学式検査装置-
図1は本発明の第1実施形態の光学式検査装置の概略図、図2図1の光学式検査装置の内部における試料の移動経路を表した模式図である。また、図3図1の光学式検査装置による試料の走査軌跡を模式的に表した試料の平面図である。これらの図に示した光学式検査装置100は、回転しながら移動する試料1に照明光I1を照射し、螺旋状又は同心円状に試料1を走査して試料1の欠陥を検査するRθ方式の欠陥検査装置である。試料1には、例えばウェハ(ベアウェハ、膜付きウェハ、バンプ付きウェハ、パターン付きウェハ等の半導体製造プロセスの各段階のウェハを含む)のような円板状のものが想定される。光学式検査装置100により検出する欠陥は、試料1の傷やうねり、試料1に付着した異物等である。この光学式検査装置100は、ステージ装置10、照明検出ユニット20、データ処理回路31、ステージ制御回路32、移載装置33、コントローラ40を含んで構成されている。これら要素について順次説明する。
【0014】
・ステージ装置
ステージ装置10は、試料ステージ11、回転ステージ12、並進ステージ13を含んで構成されている。
【0015】
試料ステージ11はウェハ等の試料1を水平に保持する検査台である。試料ステージ11の構成については後述するが、本実施形態の試料ステージ11は試料1の裏面を吸着して試料1を保持するタイプのものである。なお、光学式検査装置100には、図1に示したように試料ステージ11に保持された試料1(例えば照明光I1の照射点)の高さ(照明検出ユニット20との相対高さ)を検出するセンサSが備わっている。センサSには、例えば光学式や超音波式等の非接触式の変位センサ等を用いることができる。このセンサSにより試料1の反りの大きさも測定することができる(後述)。
【0016】
回転ステージ12は試料ステージ11を支持するステージであり、鉛直な回転軸(不図示)を中心にして自転し試料ステージ11と共に試料1を回転させる。回転ステージ12には光学読み取り式のロータリーエンコーダ(不図示)が備わっており、回転ステージ12の回転角度(θ座標)がロータリエンコーダで検出されてコントローラ40に出力される。但し、θ座標の検出器はロータリエンコーダには限定されず、精度良く回転角度が検出できるセンサであればロータリエンコーダに代えて採用することができる。
【0017】
並進ステージ13は回転ステージ12を支持するステージであり、回転ステージ12の半径方向(R軸方向)に延びるレール(不図示)に沿って並進運動し、回転ステージ12及び試料ステージ11と共に試料1を水平方向に直線的に移動させる。並進ステージ13には光学読み取り式のリニアエンコーダ(不図示)が備わっており、並進ステージ13のR軸上の位置(R座標)がリニアリエンコーダで検出されてコントローラ40に出力される。但し、R座標の検出器はリニアエンコーダには限定されず、精度良く直線上の位置が検出できるセンサであればリニアエンコーダに代えて採用することができる。
【0018】
本実施形態においては、試料受渡し位置Pa、検査開始位置Pb、検査完了位置PcがR軸上に設定されており、並進ステージ13を駆動することで、これらの位置を含む直線に沿って回転ステージ12が移動する。検査開始位置Pbとは、試料1に照明光I1を照射して試料1の検査を開始する位置であり、本実施形態では照明検出ユニット20による照明光I1の焦点位置に試料1の特定点(本実施形態では中心O(図3))が一致する位置としてある。検査完了位置Pcとは、試料1の検査が完了する位置であり、本実施形態では照明検出ユニット20による照明光I1の焦点位置に試料1の外縁が一致する位置としてある。試料受渡し位置Paとは、検査開始位置Pbへ試料1の移動を開始する位置であり、本実施形態では試料ステージ11に対してアームAm(図2)により試料1を着脱(ロード及びアンロード)する位置を兼ねている。この試料受渡し位置Paは、照明検出ユニット20による照明光I1の焦点位置に試料ステージ11上の試料1が重ならないように照明光I1の焦点位置から離れている。
【0019】
・照明検出ユニット
照明検出ユニット20は、照射光学系21及び検出光学系25を含んで構成されている。照射光学系21は照明光I1を試料1に照射するユニットであり、照明光源22、ミラー23、照射レンズ24を含んで構成されている。検出光学系25は試料1で散乱又は反射した検査光I2を検出するユニットであり、集光レンズ26、光検出器27、検出回路28を含んで構成されている。なお、説明の便宜上、光源から試料に照射される光を照明光I1、試料で散乱又は反射し検出光学系で検出する光を検査光I2と表記したが、これらを総称して単に「光」としても良い。
【0020】
より検査感度を上げるためには照明検出ユニット20は試料1により接近する構成となる(図2)。近年の検査装置への更なる高感度化の要求により、照明検出ユニット20と試料の距離はより短くなっており、試料ステージ11が照明検出ユニット20の直下にあるときの試料ステージ11と照明検出ユニット20との間隙gは数mm程度かそれ以下である。そのため、アームAmで試料1を移動して間隙gに挿し込んで試料ステージ11に置く構成とすることは困難である。
【0021】
図2において、照射光学系21は検査開始位置Pbを挟んで試料受渡し位置Paと反対側に設置されており、試料1に対して試料受渡し位置Paと反対側から照明光I1が斜方照射されるようになっている。試料1のロード及びアンロードの作業スペースを避けて照射光学系21を配置し、試料受渡し位置Paと検査開始位置Pbとの間の距離を抑えることが理由の1つである。照明光源22にはシャッタ(不図示)が備わっており、シャッタを開閉することで試料1に照明光I1(本実施形態ではレーザ光)を照射したり照明光I1を遮断したりする。シャッタが開くと照明光源22から出射された照明光I1が、ミラー23、照射レンズ24を介して試料1に照射される。ステージ装置10に保持されて試料1が回転しながら移動することで、図3に示すように、試料1の中心Oから外縁まで螺旋状の軌跡を描いて照明光I1が照射され、試料1の全表面が検査される。照明光I1の走査軌跡は、コントローラ40により回転ステージ12の回転速度に応じて並進ステージ13の送り速度を制御することでピッチp0(図3)の螺旋を描く。試料1で散乱又は反射した検査光I2は、集光レンズ26、光検出器(例えば光電センサ)27、検出回路28を介して検出され、検出回路28からデータ処理回路31に検出結果が出力される。
【0022】
・データ処理回路
データ処理回路31では、照明検出ユニット20による検出結果とコントローラ40から入力されたRθ座標からスキャン情報(検査結果)が生成される。データ処理回路31で生成されるスキャン情報には、異物や傷等の欠陥の位置や大きさ、形状等が含まれる。
【0023】
・ステージ制御回路
ステージ制御回路32は、ステージ装置10の動作を制御する回路であり、例えば回転ステージ12の駆動装置(モータ)を駆動するモータドライバや並進ステージ13の駆動装置(モータ)を駆動するモータドライバ等で構成されている。コントローラ40からステージ装置10の動作についての指令値が入力されると、ステージ制御回路32によりコントローラ40からの指令に応じて駆動装置が駆動され、回転ステージ12や並進ステージ13が動作する。
【0024】
・移載装置
移載装置33は、試料ステージ11に対して試料1を受け渡す装置である。この移載装置33は多関節型のアームAmを含んで構成されている。この移載装置33は、例えば光学式検査装置100にセットされたポッド(不図示)から試料1を取り出して試料ステージ11にロードしたり試料ステージ11から試料1を取り外してポッドに格納したりする。アームAmの先端は図2に示したように2本の爪CLを持つフォーク型(本例ではU字型)に形成されており、移載装置33は2本の爪CLで試料1の外縁部を裏面から支持し、ポッドから試料ステージ11へ、試料ステージ11からポッドへ試料1を移載する。
【0025】
-試料ステージ-
図4は試料ステージ11の回転中心を通る断面図である。同図に示した通り、試料ステージ11は、外周ステージOS、内周ステージIS、第1流路F1、第2流路F2、第3流路F3を含んで構成されている。
【0026】
・外周ステージ
外周ステージOSは、第1吸着面S1と受圧室Cとを有する円盤状の単一の部材である。第1吸着面S1は試料1の裏面を吸着する上向きの面(外周ステージOSの上面)である。本実施形態において外周ステージOSの上面には凹部Z1と凸部Z2とが多数(複数)存在しており、多数の凸部Z2の頂部に接する水平面(一点鎖線)が第1吸着面S1をなす。凹部Z1と凸部Z2の形状は特に限定されない。凹部Z1と凸部Z2の配置は、例えばそれぞれ第1吸着面S1に均等に分布している。凹部Z1と凸部Z2とを同心円状の繰り返しパターンで形成した構成、例えば円柱状の凹部Z1又は凸部Z2を幾何学的に繰り返し配置した構成等が例示できる。受圧室Cは第1吸着面S1の中央部を窪めて形成した円柱状の部屋である。中央部に受圧室Cが形成されていることから第1吸着面S1はドーナツ型をしている。また、外周ステージOSには受圧室Cの中心で上下に延びる円柱状のガイドG1が備わっている。ガイドG1は受圧室Cの底面から受圧室Cの中腹辺りまで上方に延び、ガイドG1の上面と吸着面との間には間隔が確保されている。
【0027】
・内周ステージ
内周ステージISは、第2吸着面S2を有する円盤状の単一の部材である。外周ステージOS及び内周ステージISは平面視で同心円状に形成されている(つまり吸着面S1,S2は同心円状である)。移載装置33のアームAmが持つ2本の爪CLの間隔(内法)に対し、内周ステージISの外径(直径)は小さく、外周ステージOSの外径(直径)は大きく設定されている。2本の爪CLの外法は試料1の直径以下であり、本実施形態では外周ステージOSの直径以下である。第2吸着面S2は試料1の裏面を吸着する上向きの面(内周ステージISの上面)である。外周ステージOSと同様に内周ステージISの上面にも凹部Z1と凸部Z2とが多数(複数)均等に分布しており、多数の凸部Z2の頂部に接する水平面(一点鎖線)が第2吸着面S2をなす。内周ステージISは外周ステージOSの受圧室Cに昇降可能に収容されており、外周ステージOSに対して上方に突出可能である。内周ステージISの昇降範囲には、吸着面S1,S2が面一になるような外周ステージOSに対する高さ位置が含まれており、本例では内周ステージISが下限位置にある状態で吸着面S1,S2が面一になる。内周ステージISが上昇した際の吸着面S1,S2の高低差はアームAmの爪CLの上下方向の厚みよりも大きい。内周ステージISの下部にはガイドG2が設けられている。ガイドG2は円柱状の凹部であり、外周ステージOSのガイドG1に被さってガイドG1に摺動し、外周ステージOSに対する内周ステージISの昇降動作をガイドする。
【0028】
・第1流路
第1流路F1は、外周ステージOSの吸着面S1から気体(例えば空気)を吸引したり噴射したりして吸着面S1について試料1を脱着する試料脱着動作用の流路である。この第1流路F1は外周ステージOSの内部に形成されており、一端が第1吸着面S1に開口し、他端が外周ステージOSの下面に開口している。第1吸着面S1における第1流路F1の開口は、上述した凹部Z1に開口している。図4では簡略的に図示しているが、第1流路F1の開口は第1吸着面S1に複数存在し、これら複数の開口が第2吸着面の中心(つまり試料ステージ11の回転中心)について回転対称に配置されている。
【0029】
・第2流路
第2流路F2は、内周ステージISの吸着面S2から気体(例えば空気)を吸引したり噴射したりして吸着面S2について試料1を脱着する試料脱着動作用の流路である。この第2流路F2は外周ステージOS及び内周ステージISに形成されており、本実施形態においては、外周ステージOSの中心(つまりガイドG1の中心)を上下に通る流路と、内周ステージISの中心を上下に通る流路とを含んで構成されている。第2流路F2の一端は第2吸着面S2の中心に開口しており、他端は外周ステージOSの下面に開口している。第2吸着面S2における第2流路F2の開口は、上述した凹部Z1に開口している。また、図4では簡略的に図示しているが、第2流路F2の開口は第2吸着面S2に少なくとも1つ存在し、少なくとも1つの開口が第2吸着面の中心(つまり試料ステージ11の回転中心)について回転対称に配置されている。本実施形態では、試料ステージ11の回転中心に1か所だけ第2流路F2が開口した構成を例示している。
【0030】
・第3流路
第3流路F3は、受圧室Cに対して気体(例えば空気)を吸排して外周ステージOSに対して内周ステージISを昇降させる内周ステージ昇降駆動用の流路である。第3流路F3は外周ステージOSに形成されており、一端が受圧室Cの底面に開口し、他端が外周ステージOSの下面に開口している。
【0031】
内周ステージISの直径について補足する。まず外周ステージOSの直径は光学式検査装置100の検査対象である試料1の直径に合わせてある。但し、試料1のノッチ検出のために試料1の外縁が試料ステージ11の外側に若干(例えば1mm程度)突き出す必要がある。これに加えて移載装置33による試料ステージ11上への試料1の設置誤差(例えば最大0.5mm程度)を考慮して、実際には半径2mm程度試料1に対して外周ステージOSは小さく設定してある。
【0032】
ここで、試料1の直径を300mm、走査中の回転ステージ12は数千rpmで回転する。試料1の反りが大きく内周ステージISの吸着面S2でしか吸着されておらず、また試料ステージ11に対して試料1が0.5mm偏心した状況を想定する。この場合に最高回転数で回転する試料ステージ11を緊急停止させた場合に試料1にかかる慣性力を支持するためには、本願発明者が解析したところ、安全率も適宜考慮に入れると内周ステージISは100mm程度の直径を必要とする。試料1の大きさに伴って試料ステージ11の直径が変わっても比例計算が適用できることから、内周ステージISの直径の下限は外周ステージOSの直径の1/3程度が好ましい。内周ステージISの直径の上限については、試料1の裏面をアームAmで支持することを考慮すると、外周ステージOSの直径からアームAmの2本の爪CLの幅の合計を差し引いた値が適当である。
【0033】
-空圧システム-
図5は本実施形態の光学式検査装置に備わった空圧システムの空圧回路図である。光学式検査装置100には、試料ステージ11駆動する試料脱着動作用の空圧システムが備わっている。同図に示した空圧システムは、送気ポンプP1、吸気ポンプP2、排気ポートEP、第1配管系統PS1、第2配管系統PS2、第3配管系統PS3、及び制御弁群を含んで構成されている。制御弁群は、方向切換弁V11,V12,V21,V22,V31,V41,V51、遮断弁V13,V23,V33,V43、及び流量調整弁V15,V16,V25,V26,V35,V36,V45を含んで構成されている。
【0034】
・ポンプ等
送気ポンプP1は、接続相手に気体を供給して加圧する流体機械(例えばコンプレッサ)である。吸気ポンプP2は、接続相手から気体を吸引して減圧する流体機械(例えば真空ポンプ)である。排気ポートEPは端部が大気中に開口した配管(例えばホース等の管材、配管接手)である。
【0035】
・配管系統
第1配管系統PS1は試料ステージ11の第1流路F1に、第2配管系統PS2は第2流路F2に、第3配管系統PS3は第3流路F3に、それぞれ独立して接続している。以下に配管系統PS1-PS3について順次詳細を説明する。
【0036】
第1配管系統PS1は第1吸着面S1の試料脱着動作用の気体流路であり、複数の配管(例えばホース)を接続して構成され、吸気ポンプP2及び排気ポートEPと試料ステージ11の第1流路F1とを接続している。この配管系統PS1を流れる気体の流通方向や流量を制御することで第1吸着面S1による試料1の脱着動作が行われる。配管系統PS1は、配管f11-f16を含んで構成されている。配管f11は一端が第1流路F1に接続し、他端が方向切換弁V41を介して配管f12,f41の一端に接続している。配管f12は一端が方向切換弁V41に接続し、他端が方向切換弁V11を介して配管f13,f14に接続している。配管f13は一端が方向切換弁V11に接続し、他端が吸気ポンプP2に接続している。配管f14は一端が方向切換弁V11に接続し、他端が方向切換弁V12を介して配管f15,f16に接続している。配管f15は一端が方向切換弁V12に接続し、他端が吸気ポンプP2に接続している。配管f16は一端が方向切換弁V12に接続し、他端が排気ポートEPに接続している。なお、配管f41は一端が方向切換弁V41に接続し、他端が送気ポンプP1に接続している。
【0037】
第2配管系統PS2は第2吸着面S2の試料脱着動作用の気体流路であり、複数の配管(例えばホース)を接続して構成され、吸気ポンプP2及び排気ポートEPと試料ステージ11の第2流路F2とを接続している。この配管系統PS2を流れる気体の流通方向や流量を制御することで第2吸着面S2による試料1の脱着動作が行われる。配管系統PS2は、配管f21-f25を含んで構成されている。配管f21は一端が第2流路F2に接続し、他端が方向切換弁V21を介して配管f22,f23に接続している。配管f22は一端が方向切換弁V21に接続し、他端が吸気ポンプP2に接続している。配管f23は一端が方向切換弁V21に接続し、他端が方向切換弁V22を介して配管f24,f25に接続している。配管f24は一端が方向切換弁V22に接続し、他端が吸気ポンプP2に接続している。配管f25は一端が方向切換弁V22に接続し、他端が排気ポートEPに接続している。
【0038】
第3配管系統PS3は内周ステージISの昇降駆動用の気体流路であり、複数の配管(例えばホース)を接続して構成され、送気ポンプP1及び吸気ポンプP2と試料ステージ11の第3流路F3とを接続している。この配管系統PS3を流れる気体の流通方向や流量を制御することで外周ステージOSに対して内周ステージISが昇降する。配管系統PS3は、配管f31-f34を含んで構成されている。配管f31は一端が第3流路F3に接続し、他端が方向切換弁V31を介して配管f32,f33に接続している。配管f32は一端が方向切換弁V31に接続し、他端が送気ポンプP1に接続している。配管f33は一端が方向切換弁V31に接続し、他端が方向切換弁V51を介して配管f34,f51に接続している。配管f34は一端が方向切換弁V51に接続し、他端が吸気ポンプP2に接続している。配管f51は一端が方向切換弁V51に接続し、他端が排気ポートEPに接続している。
【0039】
なお、配管系統PS1-PS3の配管f11,f21,f31は例えばスイベルジョイント(不図示)を介して試料ステージ11の流路F1-F3にそれぞれ接続されており、これにより回転ステージ12による試料ステージ11の回転運動が許容される。また、光学式検査装置100には圧力センサX1-X3が備わっている。圧力センサX1は主として第1流路F1の圧力を検出する役割を果たし、本実施形態では配管f11に設けてある。圧力センサX2は主として第2流路F2の圧力を検出する役割を果たし、本実施形態では配管f21に設けてある。圧力センサX3は主として第3流路F3(受圧室C)の圧力を検出する役割を果たし、本実施形態では送気ポンプP1の吐出配管に設けてある。
【0040】
・制御弁群
制御弁群は、配管系統PS1-PS3を流れる気体を制御する複数の制御弁である。前述した通り、制御弁群には、方向切換弁V11,V12,V21,V22,V31,V41,V51、遮断弁V13,V23,V33,V43、及び流量調整弁V15,V16,V25,V26,V35,V36,V45が含まれている。遮断弁V13,V23,V33,V43は電磁駆動式の遮断弁でそれぞれ配管f16,f25,f32,f41に設けられており、配管f16,f25,f32,f41の流路を開通又は遮断する。流量調整弁V15,V16,V25,V26,V36はそれぞれ吸気ポンプP2に繋がる配管f13,f15,f22,f24,f34に設けられており、配管f13,f15,f22,f24,f34を流れる気体の流量を調整する。本例では、流量調整弁V15,V25による設定流量に比べて流量調整弁V16,V26,V36による設定流量が小さくしてある。流量調整弁V35,V45はそれぞれ送気ポンプP1に繋がる配管f32,f41に設けられており、配管f32,f41を流れる気体の流量を調整する。本例では、流量調整弁V35による設定流量に比べて流量調整弁V45による設定流量が小さくしてある。
【0041】
方向切換弁V11,V12,V21,V22,V31,V41,V51は電磁駆動式の2位置切換弁であり、役割で5つに大別できる。
【0042】
第1方向切換弁は、吸気ポンプP2と排気ポートEPとで試料ステージ11の第1流路F1の接続相手を切り換える役割を果たす。本実施形態では第1配管系統SP1に設けられた方向切換弁V11,V12が第1方向切換弁に該当する。方向切換弁V11は、配管f11を介して第1流路F1に繋がる配管f12の接続相手を、吸気ポンプP2に繋がる配管f13と、配管f16を介して排気ポートEPに繋がる配管f14とのいずれかに切り換える。方向切換弁V12は、配管f11,f12を介して第1流路F1に繋がる配管f14の接続相手を、吸気ポンプP2に繋がる配管f15と、排気ポートEPに繋がる配管f16とのいずれかに切り換える。方向切換弁V11,V12を複合的に操作することで、吸気ポンプP2を第1流路F1に対して流量調整弁V15を経由して接続するか流量調整弁V16を経由して接続するかを切り換えることができる。上記の通り流量調整弁V15,V16は設定流量が異なっている。第1方向切換弁として複数の方向切換弁V11,V12を採用した理由は、第1流路F1を減圧する気体流量の大小を切り換える構成とすることである。気体流量の切り換えが不要な場合、或いは流量制御機能を備えた比例式の方向切換弁を採用する場合には、第1方向切換弁は単一の方向切換弁で構成することもできる。
【0043】
第2方向切換弁は、吸気ポンプP2と排気ポートEPとで試料ステージ11の第2流路F2の接続相手を切り換える役割を果たす。本実施形態では第2配管系統SP2に設けられた方向切換弁V21,V22が第2方向切換弁に該当する。方向切換弁V21は、第2流路F2に繋がる配管f21の接続相手を、吸気ポンプP2に繋がる配管f22と、配管f25を介して排気ポートEPに繋がる配管f23とのいずれかに切り換える。方向切換弁V22は、配管f21を介して第2流路F2に繋がる配管f23の接続相手を、吸気ポンプP2に繋がる配管f24と、排気ポートEPに繋がる配管f25とのいずれかに切り換える。第1方向切換弁と同様、方向切換弁V21,V22を複合的に操作することで、吸気ポンプP2を第2流路F2に対して流量調整弁V25を経由して接続するか流量調整弁V26を経由して接続するかを切り換えることができる。流量調整弁V25,V26は設定流量が異なる。第2方向切換弁として複数の方向切換弁V21,V22を採用した理由は、第2流路F2を減圧する気体流量の大小を切り換える構成とすることである。気体流量の切り換えが不要な場合、或いは流量制御機能を備えた比例式の方向切換弁を採用する場合には、第2方向切換弁は単一の方向切換弁で構成することもできる。
【0044】
第3方向切換弁は、送気ポンプP1と吸気ポンプP2とで試料ステージ11の第3流路F3の接続相手を切り換える役割を果たす。本実施形態では第3配管系統SP3に設けられた方向切換弁V31が第3方向切換弁に該当する。方向切換弁V31は、第3流路F3に繋がる配管f31の接続相手を、送気ポンプP1に繋がる配管f32と、配管f51を介して排気ポートEPに繋がる配管f33とのいずれかに切り換える。
【0045】
第4の方向切換弁は、吸気ポンプP2と送気ポンプP1とで試料ステージ11の第1流路F1の接続相手を切り換える役割を果たす。本実施形態では方向切換弁V41が第4の方向切換弁に該当する。方向切換弁V41は、第1流路F1に繋がる配管f11の接続相手を、配管f13を介して送気ポンプP1に繋がる配管f12と、送気ポンプP1に繋がる配管f41とのいずれかに切り換える。
【0046】
第5の方向切換弁は、吸気ポンプP2と排気ポートEPとで試料ステージ11の第3流路F3の接続先を切り換える役割を果たす。本実施形態では方向切換弁V51が第5の方向切換弁に該当する。方向切換弁V51は、配管f31を介して第3流路F3に繋がる配管f33の接続先を、吸気ポンプP2に繋がる配管f51と、排気ポートEPに繋がる配管f51とのいずれかに切り換える。
【0047】
-コントローラ-
図6はコントローラ40のハードウェア構成の模式図である。コントローラ40は、ステージ装置10(試料ステージ11(空圧システム)、回転ステージ12、並進ステージ13)、照明検出ユニット20、移載装置33等の動作を制御するコンピュータである。このコントローラ40は、入力インターフェース41、ROM(例えばEPROM)42、RAM43、CPU44、タイマー45、及び出力インターフェース46等を含んで構成されている。
【0048】
入力インターフェース41には、回転ステージ12や並進ステージ13のエンコーダやセンサS、圧力センサX1-X3からの信号、オペレータの操作に応じてキーボード等の入力装置(不図示)から入力される検査条件が入力される。検査条件としては、例えば試料1の種類や大きさ、形状、材質等が含まれる。ROM42は、欠陥検査に必要な演算式やプログラム、データを格納している。RAM43は、演算途中の数値や入力装置から入力した検査条件等の情報等を記憶する。出力インターフェース46は、CPU44の指令に応じてステージ装置10(ステージ制御回路32、空圧システム)や照明検出ユニット20、移載装置33への指令信号を出力する。
【0049】
CPU44は、ROM42からロードしたプログラムに従って、入力インターフェース41を介して入力された情報に基づいて所定の処理を実行する。例えば検査条件や試料ステージ11のRθ座標等を基にCPU44からステージ装置10や照明検出ユニット20に指令値が出力され、回転ステージ12、並進ステージ13及び照明検出ユニット20が駆動されて試料1が走査される。また、試料1のロード及びアンロードの際には、プログラムに従って圧力センサX1-X3等の信号に基づいてCPU44からステージ制御回路32や移載装置33に指令値が出力される。ステージ制御回路32を介してコントローラにより空圧システムが駆動され、コントローラ40により移載装置33が駆動されることにより、試料ステージ11に対して試料1が脱着される。
【0050】
-試料脱着動作-
図7はコントローラによる光学式検査装置の主に試料脱着動作に関する制御手順を表すフローチャートである。以下の制御は、CPU44から空圧システム(制御弁群、送気ポンプP1及び吸気ポンプP2)及び移載装置33に指令信号が出力されることで実行される。以下の手順のうちステップS11-S17が、試料搬入手順、内周ステージ上昇手順、試料設置手順、内周ステージ下降手順、試料吸着手順を含む試料ロード手順である。また、ステップS21-S24が、試料吸着解除手順、内周ステージ上昇手順、内周ステージ上昇手順、試料搬出手順を含む試料アンロード手順である。
【0051】
・ステップS11(試料搬入手順)
コントローラ40は、まず試料受渡し位置Paで待機させた試料ステージ11に対し、移載装置33に指令してアームAmにより例えばポッドから取り出した試料1を試料ステージ11の上方に移動させる。ポッドとは試料1を格納するケースである。試料1を格納したポッドを光学式検査装置100の所定の部位に装着し、ポッドを開閉して光学式検査装置100に対して試料1を出し入れする。ポッドから試料受渡し位置Paまでの試料移動経路にはプリアライナ(不図示)があることがあり、移載装置33によりプリアライナから試料受渡し位置Paの試料ステージ11の上方に試料1が移動される場合もある。
【0052】
この間、第1配管系統PS1については、方向切換弁V41を図5中の左側のポジションに、方向切換弁V11,V12を同図中の右側のポジションに、遮断弁V13を開放位置に切り換え、試料ステージ11の第1流路F1を排気ポートEPに接続する。第2配管系統PS2については、方向切換弁V21,V22を同図中の右側のポジションに、遮断弁V23を開放位置に切り換え、試料ステージ11の第2流路F2も排気ポートEPに接続する。また、第3配管系統PS3については、方向切換弁V31を同図中の左側のポジションに、方向切換弁V51を同図中の右側のポジションに切り換え、試料ステージ11の第3流路F3も排気ポートEPに接続する。遮断弁V33,V43は遮断位置に切り換える。この状態において試料ステージ11の流路F1-F3に気流は生じず、これら流路は大気圧になって試料ステージ11の吸着面S1,S2は面一となる。
【0053】
・ステップS12(内周ステージ上昇手順)
試料ステージ11の上方に試料1を移動させたら、コントローラ40は送気ポンプP1及び吸気ポンプP2の運転を開始し、制御弁群に指令して外周ステージOSに対し内周ステージISを上昇させる(図8参照)。この手順は試料1を試料ステージ11の上方に移動させるのと並行して実行しても良い。内周ステージISを上昇させる場合、第3配管系統PS3の遮断弁V33を開放し、方向切換弁V31を図5中の右側のポジションに切り換えて大流量の流量調整弁V35を介して試料ステージ11の第3流路F3と送気ポンプP1とを接続する。これにより受圧室Cが加圧され外周ステージOSに対して内周ステージISが速やかに上昇する。
【0054】
この間、第1配管系統PS1については、方向切換弁V41を図5中の左側のポジションに、方向切換弁V11,V12を同図中の右側のポジションに、遮断弁V13を開放位置に切り換え、試料ステージ11の第1流路F1を排気ポートEPに接続する。第2配管系統PS2については、方向切換弁V21,V22を同図中の右側のポジションに、遮断弁V23を開放位置に切り換え、試料ステージ11の第2流路F2も排気ポートEPに接続する。遮断弁V43は遮断位置に切り換える。この状態において試料ステージ11の流路F1,F2に気流は生じず、これら流路は大気圧のままで試料ステージ11の吸着面S1,S2にはまだ吸引力は生じない。方向切換弁V51のポジションはいずれでも良いが、ここでは図5中の右側のポジションに切り換え、排気ポートEPに接続することで配管f33,f51を大気圧にする。
【0055】
・ステップS13
内周ステージISの上昇を開始したら、コントローラ40は、内周ステージISが上位置(例えば内周ステージISの昇降範囲の上限)に到達したかを判定する。コントローラ40は、例えばセンサSで測定された試料ステージ11の高さで内周ステージISが上位置に到達したかを判定することができる。また、内周ステージISの上昇に伴う受圧室Cの容積増加が止まって圧力センサX3の測定圧力が設定値を超えた場合に、内周ステージISが上位置に到達したことを判定することもできる。コントローラ40は、内周ステージISが上位置に到達するまでステップS12の手順を継続し、内周ステージISが上位置に到達したら次のステップに手順を移す。
【0056】
・ステップS14(試料設置手順)
内周ステージISが上位置まで上昇したら、コントローラ40は、移載装置33に指令してアームAmを下ろし、試料ステージ11の回転中心に中心が一致するように内周ステージISに試料1を載せ、内周ステージISに試料1を設置する(図9参照)。この手順において、第3配管系統PS3については、引き続き試料ステージ11の第3流路F3と送気ポンプP1とを接続して内周ステージISを上位置で維持する。また、第2配管系統PS2については、方向切換弁V21を図5中の左側のポジションに切り換え、設定流量が大きな方の流量調整弁V25を介して試料ステージ11の第2流路F2を吸気ポンプP2に接続する。これにより内周ステージISの吸着面S2に吸引力が発生し、吸着面S2に試料1が吸着されて固定される。
【0057】
この間、第1配管系統PS1については、方向切換弁V41を図5中の左側のポジションに、方向切換弁V11,V12を同図中の右側のポジションに、遮断弁V13を開放位置に切り換え、試料ステージ11の第1流路F1を排気ポートEPに接続する。このように、第1流路F1を排気ポートEPに、第2流路F2を吸気ポンプP2に、第3流路F3を送気ポンプP1に接続し、外周ステージOSから上方に突出した内周ステージISに試料1を置いて内周ステージISで試料1を吸着する。
【0058】
なお、方向切換弁V22、遮断弁V23のポジションはいずれでも良いが、ここでは方向切換弁V22を図5中の右側のポジションに、遮断弁V23を開放位置に切り換え、排気ポートEPに接続することで配管f23,f25の内圧を大気圧にする。遮断弁V33,V43もいずれでも良いが、ここでは遮断位置に切り換えて遮断弁V33,V43の下流側の配管が加圧されないようにする。
【0059】
・ステップS15(内周ステージ下降手順)
内周ステージISに試料1を設置したら、コントローラ40は、第3流路F3を吸気ポンプP2に接続するように制御弁群に指令し、内周ステージISを下降させて外周ステージOSに収容する(図10参照)。内周ステージISを下降させる場合、第3配管系統PS3の方向切換弁V31,V51を図5中の左側のポジションに切り換え、小流量の流量調整弁V36を介して試料ステージ11の第3流路F3と吸気ポンプP2とを接続する。これにより受圧室Cが緩やかに減圧され外周ステージOSに対して内周ステージISが下降する。
【0060】
この間、第1配管系統PS1については、方向切換弁V41,V12を図5中の左側のポジションに、方向切換弁V11を同図中の右側のポジションに切り換え、小流量の流量調整弁V16を介して試料ステージ11の第1流路F1を吸気ポンプP2に接続する。これにより、この内周ステージ下降手順において第1吸着面S1とこれに接近する試料1との間から第1流路F1に雰囲気が吸気される。第2配管系統PS2については、方向切換弁V21を図5中の右側のポジションに、方向切換弁V22を同図中の左側のポジションに切り換え、小流量の流量調整弁V26を介して試料ステージ11の第2流路F2を吸気ポンプP2に接続する。これにより内周ステージISの吸着面S2により試料1に作用する吸着力が緩和される。
【0061】
なお、遮断弁V13,V23のポジションはいずれでも良いが、ここでは開放に切り換え、排気ポートEPに接続することで配管f16,f25を大気圧にする。遮断弁V33,V43のポジションはいずれでも良いが、ここでは遮断位置に切り換えて遮断弁V33,V43の下流側の配管が加圧されないようにする。
【0062】
・ステップS16
内周ステージISの上昇を開始したら、コントローラ40は、内周ステージISが下位置(例えば内周ステージISの昇降範囲の下限)に到達して吸着面S1,S2が面一になったかを判定する。コントローラ40は、例えばセンサSで測定された試料ステージ11の高さで内周ステージISが下位置に到達したかを判定することができる。また、内周ステージISの下降に伴う受圧室Cの容積減少が止まって圧力センサX1の測定圧力が設定値を下回った場合に、内周ステージISが下位置に到達したことを判定することもできる。コントローラ40は、内周ステージISが下位置に到達するまでステップS15の手順を継続し、内周ステージISが下位置に到達したら次のステップに手順を移す。
【0063】
・ステップS17(試料吸着手順)
内周ステージISが下位置に到達したら、コントローラ40は流路F1,F2を吸気ポンプP2に接続するように制御弁群に指令し、吸着面S1,S2で試料1を吸着し保持する。
【0064】
本実施形態では、第1配管系統PS1について、方向切換弁V41,V11を図5中の左側のポジションに切り換え、大流量の流量調整弁V15を介して試料ステージ11の第1流路F1を吸気ポンプP2に接続する。これにより外周ステージOSの吸着面S1に強い吸引力が発生し、吸着面S1で試料1が確りと吸着されて固定される。この間、方向切換弁V12及び遮断弁V13のポジションはいずれでも良いが、ここでは方向切換弁V12を図5中の右側のポジションに、遮断弁V13を開放位置に切り換え、排気ポートEPに接続することで配管f14,f16の内圧を大気圧にする。
【0065】
同時に、第2配管系統PS2については、引き続き方向切換弁V21を図5中の右側のポジションに、方向切換弁V22を同図中の左側のポジションに切り換え、小流量の流量調整弁V26を介して試料ステージ11の第2流路F2を吸気ポンプP2に接続する。これにより内周ステージISの吸着面S2も吸着面S1と協働して試料1を吸着し固定する。遮断弁V23のポジションはいずれでも良いが、ここでは開放位置に切り換えて排気ポートEPに接続することで配管f25の内圧を大気圧にする。
【0066】
第3配管系統PS3については、引き続き方向切換弁V31,V51を図5中の左側のポジションに切り換え、小流量の流量調整弁V36を介して試料ステージ11の第3流路F3と吸気ポンプP2とを接続する。これにより内周ステージISの浮き上がりを防止し、内周ステージISを安定に固定する。
【0067】
なお、遮断弁V33,V43のポジションはいずれでも良いが、ここでは遮断位置に切り換えて遮断弁V33,V43の下流側の配管が加圧されないようにする。
【0068】
・ステップS20(試料走査手順)
吸着面S1,S2で試料1を吸着保持したら、コントローラ40は、並進ステージ13を駆動してステージ装置10を試料受渡し位置Paから検査開始位置Pbに移動し、試料1の走査を実行する。試料1の走査に当たっては、回転ステージ12及び並進ステージ13を駆動して試料1をθ方向に回転させつつ検査完了位置Pcに向けてR方向に送りをかけ、照明光I1で試料1の検査面の全面に螺旋状に照射し、試料1で散乱又は反射した検査光I2を検出する。このRθ方式の走査方式には、代表的には、CAV(Constant Angular Velocity)走査とCLV(Constant Linear Velocity)走査がある。CAV走査とは、走査中の回転ステージ12の回転速度(角速度)を一定とする走査方式をいう。CLV走査とは、線速度(走査速度)を一定とする走査方式をいう。ステージ装置10が検査完了位置Pcに到着して走査が完了したら、コントローラ40は回転ステージ12を停止させつつ並進ステージ13を駆動してステージ装置10を試料受渡し位置Paに移動する。
【0069】
なお、走査の間、第1配管系統PS1については、引き続き方向切換弁V41,V11を図5中の左側のポジションに切り換え、大流量の流量調整弁V15を介して試料ステージ11の第1流路F1を吸気ポンプP2に接続する。これにより回転ステージ12の高速回転中も外周ステージOSの吸着面S1で確りと試料1が保持される。この間、方向切換弁V12及び遮断弁V13のポジションはいずれでも良いが、ここでは方向切換弁V12を図5中の右側のポジションに、遮断弁V13を開放位置に切り換え、排気ポートEPに接続することで配管f14,f16の内圧を大気圧にする。
【0070】
同時に、第2配管系統PS2については、方向切換弁V21,V22を図5中の右側のポジションに、遮断弁V23を遮断位置に切り換え、試料ステージ11の第2流路F2を保持圧に保つ。これにより試料1の中央部に必要以上の外力を与えることなく、引き続き内周ステージISの吸着面S2も吸着面S1と協働して試料1を保持する。
【0071】
第3配管系統PS3については、方向切換弁V31を図5中の左側のポジションに、方向切換弁V51を右側のポジションに切り換え、試料ステージ11の第3流路F3と排気ポートEPとを接続する。これにより試料1の中央部への不要な外力の作用を抑制できる。遮断弁V33,V43のポジションはいずれでも良いが、ここでは遮断位置に切り換えて遮断弁V33,V43の下流側の配管が加圧されないようにする。
【0072】
・ステップS21(試料吸着解除手順)
試料受渡し位置Paに試料1が到着したら、コントローラ40は第1流路F1を送気ポンプP1に接続するように制御弁群に指令し、第1吸着面S1及び試料1の間に送気して吸着面S1から試料1を剥離する。吸着面S1から試料1を剥離するためには、方向切換弁V41を図5中の右側のポジションに、遮断弁V43を開放位置に切り換え、小流量の流量調整弁V45を介して試料ステージ11の第1流路F1を送気ポンプP1に接続する。小流量に絞られた気体が第1吸着面S1及び試料1の間に送り込まれ、後続の内周ステージ上昇手順の際に吸着面S1から試料1が円滑に剥離して持ち上がる。この間、方向切換弁V11,V12及び遮断弁V13のポジションはいずれでも良いが、ここでは方向切換弁V11,V12を図5中の右側のポジションに、遮断弁V13を開放位置に切り換え、排気ポートEPに接続する。これにより配管f12,f14,f16の内圧を大気圧にする。
【0073】
この間、第2配管系統PS2については、引き続き方向切換弁V21,V22を図5中の右側のポジションに、遮断弁V23を遮断位置に切り換え、試料ステージ11の第2流路F2を保持圧に保つ。これにより試料1の中央部に必要以上の外力を与えることなく、引き続き内周ステージISの吸着面S2で試料1を保持する。
【0074】
第3配管系統PS3については、方向切換弁V31を図5中の左側のポジションに、方向切換弁V51を右側のポジションに切り換え、試料ステージ11の第3流路F3と排気ポートEPとを接続する。これにより内周ステージISには自重を除く外力の作用が解除され、外周ステージOSに対して内周ステージISはフリーな状態となる。遮断弁V33,V43のポジションはいずれでも良いが、ここでは遮断位置に切り換えて遮断弁V33,V43の下流側の配管が加圧されないようにする。
【0075】
・ステップS22(内周ステージ上昇手順)
試料吸着解除手順の実行後、コントローラ40は第3流路F3を送気ポンプP1に接続するように制御弁群に指令し、内周ステージISを上昇させて外周ステージOSから突出させる。内周ステージISを上昇させる場合、第3配管系統PS3の遮断弁V33を開放し、方向切換弁V31を図5中の右側のポジションに切り換えて大流量の流量調整弁V35を介して試料ステージ11の第3流路F3と送気ポンプP1とを接続する。これにより受圧室Cが加圧され外周ステージOSに対して内周ステージISが速やかに上昇する。
【0076】
この間、第1配管系統PS1については、方向切換弁V41を図5中の左側のポジションに、方向切換弁V11,V12を同図中の右側のポジションに、遮断弁V13を開放位置に切り換え、試料ステージ11の第1流路F1を排気ポートEPに接続する。第2配管系統PS2については、引き続き方向切換弁V21,V22を図5中の右側のポジションに、遮断弁V23を遮断位置に切り換え、試料ステージ11の第2流路F2を保持圧に保つ。これにより試料1の中央部に必要以上の外力を与えることなく、内周ステージISの吸着面S2で試料1が保持された状態が保たれる。方向切換弁V51のポジションはいずれでも良いが、ここでは図5中の右側のポジションに切り換え、排気ポートEPに接続することで配管f33,f51を大気圧にする。遮断弁V43のポジションもいずれでも良いが、ここでは遮断位置に切り換えて遮断弁V43の下流側の配管が加圧されないようにする。
【0077】
・ステップS23
内周ステージISの上昇を開始したら、コントローラ40は、内周ステージISが上位置(例えば内周ステージISの昇降範囲の上限)に到達したかを判定する。コントローラ40は、例えばセンサSで測定された試料ステージ11の高さで内周ステージISが上位置に到達したかを判定することができる。また、内周ステージISの上昇に伴う受圧室Cの容積増加が止まって圧力センサX3の測定圧力が設定値を超えた場合に、内周ステージISが上位置に到達したことを判定することもできる。コントローラ40は、内周ステージISが上位置に到達するまでステップS22の手順を継続し、内周ステージISが上位置に到達したら次のステップに手順を移す。
【0078】
・ステップS24(試料搬出手順)
内周ステージISが上位置まで上昇したら、コントローラ40は内周ステージISにより第1吸着面S1から持ち上げられた試料1と吸着面S1との間にアームAmの爪CLを差し込んで内周ステージISから試料1を持ち上げるように移載装置33に指令する。
【0079】
この間、第1配管系統PS1については、引き続き方向切換弁V41を図5中の左側のポジションに、方向切換弁V11,V12を同図中の右側のポジションに、遮断弁V13を開放位置に切り換え、試料ステージ11の第1流路F1を排気ポートEPに接続する。第2配管系統PS2については、方向切換弁V21,V22を同図中の右側のポジションに、遮断弁V23を開放位置に切り換え、試料ステージ11の第2流路F2を排気ポートEPに接続する。これにより第2吸着面S2の吸着も解除され、試料1の拘束が解かれる。また、第3配管系統PS3については、引き続き遮断弁V33を開放し、方向切換弁V31を図5中の右側のポジションに切り換えて内周ステージISを上位置に保つ。遮断弁V43のポジションはいずれでも良いが、ここでは遮断位置に切り換えて遮断弁V43の下流側の配管が加圧されないようにする。方向切換弁V51のポジションもいずれでも良いが、ここでは図5中の右側のポジションに切り換え、排気ポートEPに接続することで配管f33,f51を大気圧にする。
【0080】
その後、コントローラ40は、更に移載装置33に指令して、試料ステージ11からアンロードした試料1を例えばポッドに格納する。これにより1枚の試料1の検査処理が完了する。コントローラ40はオペレータの指示に応じて試料1を交換し以上の処理を繰り返し実行する。
【0081】
-試料矯正動作-
図11はコントローラによる試料矯正動作に関する制御手順を表すフローチャートである。以下の制御は、CPU44から空圧システム(制御弁群、送気ポンプP1及び吸気ポンプP2)に指令信号が出力されることで実行される。
【0082】
上記の通り、外周ステージOSの吸着面S1と内周ステージISの吸着面S2は、それぞれ流路F1,F2から独立して気体の吸排及びその流量制御をすることができる。この特徴を活かし、必要時には、試料1の反りの大きさが設定値以上である場合に試料1の反りの大きさを小さくするようにコントローラ40により制御弁群に指令し、試料1の反りを矯正して走査することができる。
【0083】
・ステップS31
コントローラ40は、まず試料1の反りの大きさを計測する。反りの大きさは例えばセンサSで測定できる。例えば、ステージ装置10にはZ軸方向(鉛直方向)に試料ステージ11を駆動する機構が備わっており、試料1の走査中にはオートフォーカスが機能する。具体的には、センサSで検出される試料1(照明光I1の照射位置)の高さが一定になるように試料ステージ11の高さが制御される。その際の試料ステージ11の座標(R,Z)が試料1の半径方向(R方向)の表面形状に相当する。この試料1の表面形状について高低差が規定値を超える2点の座標(R,Z)を比較することで、反りの大きさに加え、試料1の反りの形状が上に凸であるのか下に凸であるのかのデータが得られる。
【0084】
また、オートフォーカス機能を利用する代わりに、試料吸着手順(ステップS17)の後、試料操作手順(ステップS20)に先行して試料1の表面形状を測定する工程を追加することも考えられる。例えば必要に応じて回転ステージ12を回転させながら検査開始位置Pbから検査完了位置Pcまで並進ステージ13を駆動し、その際のセンサXの測定値を記録して試料1の表面の高さについて半径方向に沿ったデータを取ることができる。
【0085】
また、仮に試料1が上に凸の形状に反っており、試料ステージ11との密着度について外周部に対して中央部が低い場合、図5の圧力センサX2の測定値が規定より上昇する可能性がある。反対に試料1が下に凸の形状に反っていて中央部に対して外周部の密着度が低い場合、図5の圧力センサX1の測定値が規定より上昇する可能性がある。そこで、圧力センサX1,X2の測定値を基に試料1の反りの形状を判定することも考えられる。圧力センサX1,X2の測定値に閾値(設定値)を設け、例えば圧力センサX1の測定値(例えば図7のステップS17の実行完了時の測定値)が閾値を上回った場合に、所定の大きさを超えて下に凸の形状に反っていると判定できる。反対に圧力センサX2の測定値が閾値を上回った場合に、所定の大きさを超えて上に凸の形状に反っていると判定できる。
【0086】
・ステップS32
試料1の反りの大きさを測定したら、コントローラ40はその反りの大きさ(絶対値)が設定値(>0)以上であるかを判定する。コントローラ40は、反りの大きさが設定値未満であれば手順を終了する。この場合、特に試料1の反り矯正動作を行うことなく、コントローラ40は図7のステップS20で説明した通りに制御弁群の開閉状態を制御して試料1を走査する。反対に反りの大きさが設定値以上であれば、コントローラ40は次のステップS33に手順を移す。
【0087】
・ステップS33
試料1の反りが設定値以上の場合、コントローラ40は、試料1の反りの大きさを小さくする(反りを矯正する)ように制御弁群に指令し、試料1の反りを矯正して図11の手順を終える。
【0088】
ステップS33において、例えば試料1が下に凸の形状に反っていてその反りの大きさが設定値以上である場合、第1吸着面S1の吸着力を強める。この場合、例えば図7で説明した試料走査手順(ステップS20)の制御弁群の切り換え状態を基準として、吸気ポンプP2が可変容量型であれば吸気流量を設定値まで上昇させることが考えられる。吸気流量の上昇は、例えば流量調整弁V15よりも設定流量の大きな追加の流量調整弁を流量調整弁V15と並列に接続し、試料走査時に追加の流量調整弁を介して第1流路F1と吸気ポンプP2とを接続する構成としても実現できる。これらにより第1吸着面S1の吸着力が増加し、試料1の反りが小さくなる。
【0089】
反対に試料1が上に凸の形状に反っていてその反りの大きさが設定値以上である場合、第2吸着面S2の吸着力を強める。この場合、例えば図7で説明した試料走査手順(ステップS20)の制御弁群の切り換え状態を基準として、方向切換弁V21を図5中の左側のポジションに切り換え、大流量の流量調整弁V25を介して第2流路F2を吸気ポンプP2に接続することが考えられる。これにより第2吸着面S2の吸着力が増加し、試料1の反りが小さくなる。
【0090】
なお、ステップS33を実行するタイミングは、反りの大きさの判定のタイミグにより前後する。例えば走査中の試料ステージ11のオートフォーカス動作のデータを基に反りの大きさを判定する場合、試料1の反りの大きさが設定値以上であることが判明するのが走査中であるため、試料走査中にステップS33が実行され得る。それに対し、試料1の反りを試料走査に先行してセンサSで判定する場合、また試料ステージ11で試料1を保持した際の圧力センサX1,X2の測定値で判定する場合には、試料1の反りの大きさが設定値以上であることが判明するのが走査前である。これらの場合には、試料走査開始以前からステップS33を実行することができ、試料1を矯正して平坦性を高めた状態で試料1の走査を開始できる。
【0091】
-効果-
(1)本実施形態においては、試料ステージ11を内周ステージISと外周ステージOSとで構成し、外周ステージOSに対して内周ステージISが上昇するように構成した。これにより、まず上方に突出した小径の内周ステージISで試料1の中央部を受けた後、内周ステージISを下降させることで内周ステージISの吸着面S2に外周ステージOSの吸着面S1を合わせた広い吸着面で試料1を全面的に吸着できる。従って、走査時に試料1を高速回転させるRθ方式の光学式検査装置100に適用しても試料1の外周部のうねりを抑制でき、高速回転時(走査時)の試料1の平坦性を改善して高い検査効率を維持したまま検査感度を向上させることができる。また、内周ステージISが試料吸引用の開口を備えていて単独でも試料1を吸着できるので、昇降時でも試料1を安定に昇降させることができる。
【0092】
(2)外周ステージOS及び内周ステージISが同心円状であり、内周ステージISの中心が試料ステージ11の回転中心ひいては試料1の中心に一致しているため、内周ステージISの吸着面S2で試料1の中央を偏りなく支持することができる。これによってもロード及びアンロード時に試料1を安定に昇降させることができ、また内周ステージISによる吸着力も試料1の中心に作用させることができる。薄い試料1を部分的に吸着すると試料1における吸引領域に微視的な凹みが生じ得るが、この領域が試料1の中央部でるため高速回転時に微視的な変形が回転バランスに与える影響を抑制できる。
【0093】
(3)内周ステージISが昇降する構成であるが、外周ステージOSの吸着面S1と内周ステージISの吸着面S2とを面一にして段差をなくすことができる。吸着面S1,S2が同一平面となるので、吸着面S1,S2で同時に試料1を吸引しても吸着面の段差で試料1に局所的に高い面圧がかかることを避けることができる。
【0094】
(4)流路F1,F2の開口が試料ステージ11の回転中心について回転対称となるように配置されているので、この点でも試料1の回転バランスに与える影響を抑制できる。
【0095】
(5)移載装置33のアームAmの2本の爪CLの間隔に対し、内周ステージISの外径が小さく、外周ステージOSの外径が大きい。これにより、試料ステージ11が回転するためにアームAmを用いて試料1を移載する光学式検査装置100にあって、前述したように小径の内周ステージISで試料1を仮受けし、大径の外周ステージOSと協働して試料1を全面的に支持することができる。
【0096】
(6)配管系統PS1-PS3を流路F1-F3に独立に接続し、制御弁群で配管系統PS1-PS3の流路を個別に切り換えることで、第1吸着面S1からの気体の吸排、第2吸着面S2からの気体の吸排、内周ステージISの昇降が独立して実行できる。これにより、吸着面S1,S2で一様に気体を吸排する動作に限らず、例えば吸着面S1では気体を吸引し、吸着面S2では気体を吐き出すといったことが可能となる。
【0097】
(7)第1吸着面S1からの気体の吸排、第2吸着面S2からの気体の吸排、内周ステージISの昇降が独立して実行できるので、試料設置手順(ステップS14)、内周ステージ下降手順(ステップS15)、試料吸着手順(ステップS17)を実行できる。このような手順を踏むことで、上記の通りRθ方式の光学式検査装置100にあってアームAmを用いて試料ステージ11で全面的に試料1を吸着し保持することができる。
【0098】
(8)また、内周ステージ下降手順(ステップS15)で第1吸着面S1とこれに接近する試料1との間から吸気することで、空気抵抗を軽減して第1吸着面S1に試料1をスムーズに着地させることができる。
【0099】
(9)第1吸着面S1からの気体の吸排、第2吸着面S2からの気体の吸排、内周ステージISの昇降が独立して実行できるので、内周ステージ上昇手順(ステップS22)、試料搬出手順(ステップS24)を実行できる。このような手順を踏むことで、Rθ方式の光学式検査装置100にあって試料ステージ11で全面的に支持された試料1をアームAmで掬い上げて回収することができる。
【0100】
(10)また、内周ステージ上昇手順(ステップS22)の前に、第1吸着面S1と試料1との間に送気する吸着解除手順(ステップS21)を実行することで、第1吸着面S1から試料1をスムーズに持ち上げることができる。ウェハ等は鏡面であるため第1吸着面S1から剥がれ難いところ、第1吸着面S1と試料1との間に少量の気体を供給することで第1吸着面S1から試料1が円滑に剥離する。
【0101】
(11)第1吸着面S1からの気体の吸排、第2吸着面S2からの気体の吸排、内周ステージISの昇降が独立して実行できるので、必要な場合には前述したように制御弁群を制御して試料1の反りを矯正できる。オートフォーカス機能と連動して走査中に反り矯正動作を実行する構成とすれば効率面で有利であり、走査開始前に反りを評価して矯正後に操作する構成とすれば検査精度の面で有利となる。
【0102】
(第2実施形態)
図12は試料ステージ11の回転中心を通る断面図、図13は試料ステージ11の平面図である。図12及び図13において第1実施形態と同様の又は対応する要素には図4と同符号を付して説明を省略する。本実施形態は第1実施形態と相違する点は、内周ステージISに代えて複数(好ましくは3本)の昇降ピンPNを備えている点である。本実施形態の試料ステージ11では、第1実施形態の外周ステージOSに相当するステージSTに上下に延びる複数のピン穴が設けられており、各ピン穴に1本ずつ昇降ピンPNが昇降可能に収納されている。昇降ピンPNには内周ステージISのような吸気開口はなく、試料1を吸着する機能は持たない。各ピン穴は第3流路F3に接続して受圧室Cを構成しており、気体で加圧されると各昇降ピンPNが上昇してステージSTの吸着面Svから上方に突出し、大気圧以下になると各昇降ピンPNが下降してピン穴に収納される。各昇降ピンPNの上端は昇降ピンPNがピン穴に収納された状態には吸着面Svよりも低くなり、昇降ピンPNが上昇した状態では同一の仮想水平面Phに接する。これら複数の昇降ピンPNは吸着面Svの中心(つまり試料ステージ11の回転中心)について回転対称に配置されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0103】
本実施形態における試料1のロード及びアンロードの手順は第1実施形態と概ね同じであるが、昇降ピンPNに吸着機能がないことから図7の手順S14,S15の実行時の制御弁群の切り換え状態のみ異なっている。本実施形態におけるステップS14,S15について以下に説明する。
【0104】
・ステップS14(試料設置手順)
本実施形態においては、図7のステップS14で上位置に上昇した複数の昇降ピンPNに試料1を設置する移載装置33の動作に第1実施形態との違いはないが、昇降ピンPNに吸着機能がないため第2流路F2は吸気ポンプP2ではなく排気ポートEPに接続する。ステップS14の実行時における制御弁群の開閉状態の違いは、方向切換弁V21,V22及び遮断弁S23の切り換え状態のみである。本実施形態において、コントローラ40は、方向切換弁V21,V22を図5中の右側のポジションに、遮断弁V23を開放位置に切り換え、第2流路F2を排気ポートEPに接続する。これにより配管f21,f23,f25の内圧を大気圧にする。
【0105】
・ステップS15(内周ステージ下降手順)
ステップS15においても、第2流路F2は吸気ポンプP2ではなく排気ポートEPに接続する。ステップS14の実行時における制御弁群の開閉状態の違いは、方向切換弁V21,V22及び遮断弁S23の切り換え状態のみである。本実施形態において、コントローラ40は、ステップS14に引き続き方向切換弁V21,V22を図5中の右側のポジションに、遮断弁V23を開放位置に切り換え、第2流路F2を排気ポートEPに接続する。これにより配管f21,f23,f25の内圧を大気圧にする。
【0106】
本実施形態においても、試料1を昇降ピンPNで仮受けしてから広い吸着面Svに下ろすことで、走査時に試料1を高速回転させるRθ方式の光学式検査装置100に適用しても試料1の外周部のうねりを抑制できる。これにより高速回転時(走査時)の試料1の平坦性を改善して高い検査効率を維持したまま検査感度を向上させることができる。その他の点についても、第1実施形態で内周ステージISの吸着機能に関連して得られた効果を除き、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0107】
1…試料、11…試料ステージ、12…回転ステージ、13…並進ステージ、33…移載装置、40…コントローラ、Am…アーム、C…受圧室、CL…爪、EP…排気ポート、F1…第1流路、F2…第2流路、F3…第3流路、IS…内周ステージ、OS…外周ステージ、P1…送気ポンプ、P2…吸気ポンプ、PS1…第1配管系統、PS2…第2配管系統、PS3…第3配管系統、S…センサ、S1…第1吸着面、S2…第2吸着面、S14…設置手順、S15…下降手順、S17…吸着手順、S22…上昇手順、S24…搬出手順、S21…吸着解除手順、V11,V12…方向切換弁(第1方向切換弁)、V21,V22…方向切換弁(第2方向切換弁)、V31…方向切換弁(第3方向切換弁)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13