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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】消毒用製剤、並びに消毒方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 47/46 20060101AFI20230302BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20230302BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230302BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20230302BHJP
   A01K 13/00 20060101ALI20230302BHJP
   A01N 47/42 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
A01N47/46
A01P1/00
A01P3/00
A01N33/12 101
A01K13/00 F
A01N47/42 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018209673
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2019089756
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2017220780
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390004673
【氏名又は名称】田村製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129300
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】上村 良二
(72)【発明者】
【氏名】大川 和久
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-046963(JP,A)
【文献】特開2011-073982(JP,A)
【文献】特開平06-303952(JP,A)
【文献】畜産現場におけるコクシジウムの消毒,動物の原虫病,2004年,Vol.19, No.1,p1-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソチオシアン酸アリルを有効成分として含有するコクシジウム消毒用製剤。
【請求項2】
鶏舎又は畜舎の消毒に用いられる請求項1記載のコクシジウム消毒用製剤。
【請求項3】
請求項1記載のコクシジウム消毒用製剤に、下記一般式(II)で表される化合物が有効成分として混合された消毒用製剤。
【化1】
[式II中、R2及びR3は炭素原子数8~16のアルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のコクシジウム消毒用製剤、若しくは請求項3記載の消毒用製剤を使用した鶏舎又は畜舎のコクシジウム消毒方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソチオシアン酸化合物などを有効成分として含有するコクシジウム消毒用製剤、それらの製剤を用いた鶏舎又は畜舎の消毒方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
コクシジウムは、原生動物界アピコンプレックス門に属する原虫で、人間・家畜・家禽などの疾病の病原となるものを多く含む。主に、アイメリカ科のアイメリア属(学名「Eimeria」)やイソスポーラ属(学名「Isospora」)、及び、クリプトスポリジウム科クリプトスポリジウム属(学名「Crypptosporidium」)などの原虫がコクシジウム類に含まれ、その他、肉胞子虫科の肉胞子虫属(学名「Sarcocystis」)、トキソプラズマ属(学名「Toxoplasma」)、Besnoitia属、Hammondia属などの原虫もコクシジウム類に分類される。
【0003】
一般的に、コクシジウム類は、次のような生活環で発育する。まず、宿主からコクシジウムのオーシストが排泄される。排泄直後単細胞であったオーシストは、宿主体外で分裂・発育し、宿主への感染が可能な胞子形成オーシストとなる。胞子形成オーシストの中には4個のスポロシストが形成され、各スポロシストには2匹のスポロゾイトが含まれる。次に、胞子形成オーシストが宿主に摂取されると、宿主体内で、スポロゾイトが遊出して寄生部位に運ばれ栄養型となった後、分裂してメロゾイトを形成する(無性生殖)。次に、メロゾイトが新しい細胞に侵入してガメトサイト(配偶子母細胞)になった後、雄性と雌性の細胞に分化・発育し、両細胞が合体してザイゴート(接合子)となり(有性生殖)、ザイゴートの周囲に厚い膜が形成されてオーシストになる。オーシストは糞便とともに宿主体外に排泄される。
【0004】
牛のコクシジウム症は、主に、E.zuernii、E.bovisなどのEimeria属原虫の感染によっておこり、出血性下痢などの症状を呈する。また、牛のクリプトスポリジウム症もコクシジウム類を病原とする疾患であり、C.parvumの感染によっておこる。この疾病も、下痢などを主徴とし、牛以外に、豚、ヒトなども感染する。
【0005】
豚のコクシジウム症は、I.suis、Eimeria属、Cryptosporidium属などの原虫の感染によっておこり、例えば、I.suisを病原とするコクシジウム症では、臨床的には、哺乳豚の黄色下痢などが認められる。
【0006】
鶏のコクシジウム症は、代表的な鶏病の一つであり、養鶏産業において経済的な影響も大きい。E.tenella、E.necatrix、E.acervulina、E.maximaなどのEimeria属原虫の感染によっておこり、出血性腸炎や下痢などを呈し、出血するものでは悪化して斃死する場合も多い。
【0007】
犬のコクシジウム症は、I.canis、I.ohioensis、I.heydorni、I.burrowsiなどのIsospora属原虫や、Sarcocystis属原虫などの感染によって、猫のコクシジウム症は、I.felis、I.rivoltaなどのIsospora属原虫、T.gondii(Toxoplasma属原虫)、H.hammondi(Hammondia属原虫)、B.wallacei、B.besnoitiなどのBesnoitia属原虫、Sarcocystis属原虫などの感染によっておこる。水溶性下痢などの症状を呈し、血便がみられて衰弱した場合には斃死する場合もある。その他、ウサギ、ラット、マウス、モルモットなどの実験動物に感染するコクシジウムも多種あり、実験動物産業が経済的被害を受ける場合もある。
【0008】
このように、コクシジウム類による疾病は各種動物で発生しており、また、重篤化するケースも多く、経済的損失が大きい場合もあるため、コクシジウム症の発生や病原の伝播・蔓延をできるだけ防除することが望ましい。
【0009】
コクシジウム症の予防には、飼育施設・飼育室などの清掃、水洗、乾燥、熱殺菌や糞便の適切な処理などの励行と併せ、有効な消毒剤が必要である。しかし、コクシジウムは、宿主体外ではオーシストの状態で存在し、オーシストが胞子形成オーシストに成熟すると感染性を獲得するため、オーシストの殺滅・除去が根本的な予防対策となるが、オーシストは環境条件・薬剤などに対して非常に抵抗力が強く、一般細菌・ウイルスなどの防除に使用される通常の消毒剤での防除は難しい。
【0010】
そこで、コクシジウム症への対策として、オルソジクロロベンゼン製剤が広く使用されている。例えば、特許文献1には、消毒剤としてオルトジクロロベンゼン製剤とグルタルアルデヒド製剤の混合製剤を使用する鶏舎又は畜舎の消毒方法が、特許文献2には、o-ジクロロベンゼンと塩化ジアルキルジメチルアンモニウムを含有する動物のコクシジウム症予防殺菌消毒剤が、それぞれ開示されている。
【0011】
その他、本発明に関連する事項として、特許文献3には、イソチオシアン酸アリルを有蹄動物の肢蹄に投与することによる毛状疣贅病の予防・治療方法が、特許文献4には、ジクロルジイソプロピルエーテル及びメチルイソチオシアネートを含有する殺線虫剤が、それぞれ開示されている。
【文献】特許第5455540号公報
【文献】特許第2598774号公報
【文献】特許第5740062号公報
【文献】特開昭58-92603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の通り、コクシジウム症の防除のために、有効性の高い消毒剤が必要である。そこで、本発明は、コクシジウム類に対して、より有効性の高い消毒手段を提供することなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、イソチオシアン酸アリルなどのイソチオシアン酸化合物が、コクシジウム類のオーシストに対する高い胞子形成阻害効果を有していることを新規に見出した。
【0014】
そこで、本発明では、下記一般式(I)で表される化合物を有効成分として含有するコクシジウム消毒用製剤を提供する。
【化1】
[式I中、Rは炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~6の低級アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、又は炭素原子数3~6のシクロアルキル基を表す。]
【0015】
この化合物は、コクシジウム類のオーシストに対する高い胞子形成阻害効果を有しているため、宿主体外に排泄されたオーシストが胞子形成オーシストに成熟し、感染性を獲得する段階を有効に防止できる。従って、本発明は、コクシジウム類の殺滅に有効であり、例えば、畜舎・鶏舎など、宿主となる動物の飼育施設・飼育室のコクシジウム消毒にも有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、コクシジウム症の発生やその病原の伝播・蔓延を有効に防除できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<本発明に係るコクシジウム消毒用製剤について>
本発明は、下記一般式(I)で表される化合物を有効成分として含有するコクシジウム消毒用製剤をすべて包含する。ここで、「コクシジウム消毒」は、コクシジウムに対する消毒、即ち、コクシジウムを死滅させ、又は、その感染力を失わせることを意味し、「コクシジウム消毒用製剤」は、コクシジウムに対する消毒のために使用する製剤、即ち、コクシジウムを死滅させ、又は、その感染力を失わせるための製剤を意味する(以下同じ)。
【化2】
【0018】
上記一般式I中、Rは炭素原子数2~8のアルケニル基、炭素原子数1~6の低級アルキル基、炭素原子数6~12のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、又は炭素原子数3~6のシクロアルキル基を表す。
【0019】
における炭素原子数2~8のアルケニル基は、少なくとも1個の二重結合を有する直鎖又は分岐鎖状の炭素数2~8の不飽和炭化水素基であればよい。そのような基として、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基(2-プロペニル基)、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などが挙げられる。
【0020】
における炭素原子数1~6の低級アルキル基は、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖の低級アルキル基であればよい。そのような基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。
【0021】
における炭素原子数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基(その位置異性体をすべて含む)、トリメチルフェニル基(その位置異性体をすべて含む)、テトラメチルフェニル基(その位置異性体をすべて含む)、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。
【0022】
における炭素原子数7~18のアラルキル基は、上記低級アルキル基の水素原子一つが上記アリール基に置換されたもの、すなわちアリールC1-C6アルキル基であればよい。そのような基として、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基、メチルナフチル基(その位置異性体をすべて含む)、ジメチルナフチル基(その位置異性体をすべて含む)、ビフェニルメチル基、ビフェニルエチル基などが挙げられる。
【0023】
における炭素原子数3~6のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0024】
これらの中で、前記式I中、Rが炭素原子数2~6のアルケニル基であることが好適であり、Rがアリル基であること、即ち、前記化合物がイソチオシアン酸アリル(アリルイソチオシアネート)であることが最も好適である。
【0025】
本発明に係るコクシジウム消毒用製剤は、固体状(例えば、粉末、顆粒、錠剤など)、液体状(例えば、液剤、懸濁化剤など)など、公知の剤型を広く採用できる。例えば、固体状の製剤を用時に溶媒で溶解して消毒溶液を調製し、使用してもよいし、予め液体状の製剤として調製しておき、場合によっては用事にそれを適宜希釈して消毒溶液として使用してもよい。
【0026】
本発明に係る化合物を溶解するための溶媒には公知のものを適宜採用できる。例えば、水、植物油、液体動物油、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、生理食塩水、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、アセトン、DMSOなどから適切なものを選択して用いてもよい。
【0027】
また、目的・用途・剤型などに応じて、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、安定剤、固体担体、緩衝剤、等張化剤、界面活性剤、防腐剤、抗菌剤、抗酸化剤、pH調整剤、分散剤、芳香剤、着色剤、増粘剤などが適宜添加されていてもよい。
【0028】
賦形剤の例として、糖アルコール類(例えば、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトールなど)、糖類(例えば、白糖、粉糖、乳糖、ブドウ糖など)、シクロデキストリン類(例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムなど)、セルロース類(例えば、結晶セルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロースなど)、デンプン類(例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分α化デンプン、α化デンプンなど)、デキストリン、マルトデキストリン、ショ糖エステル、ポビドン、ヒプロメロースフタル酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、カルメロースナトリウム、ヒプロメロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、プルラン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマーなどが挙げられる。
【0029】
崩壊剤の例として、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分α化デンプン、α化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、寒天、ゼラチン末などが挙げられる。
【0030】
結合剤の例として、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0031】
滑沢剤の例として、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ショ糖脂肪酸エステル、水素添加植物油、マクロゴールなどが挙げられる。
【0032】
コーティング剤の例として、白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルテタアクリレート・メタアクリル酸共重合体、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーSなどが挙げられる。
【0033】
安定剤の例として、脂肪酸及びその塩、メチルパラベン、パラヒドロキシ安息香酸エステル類(例えば、プロピルパラペンなど)、クロロブタノール、ペンジルアルコール,フェニルエチルアルコール等のアルコール類、チメロサール、無水酢酸、ソルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、L-アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、プチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、酢酸トコフェロール、ゲンチジン酸、アスコルビン酸、ベンジルアルコール、トコフェロール、没食子酸、没食子酸エステル、α-チオグリセロール、α-トコフェロール、タンパク質及び多糖類などが挙げられる。
【0034】
固体担体の例として、天然鉱物粉末(例えば、カチオンクレー、バイロフィライトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリン、粘土、タルク、チョーク、石英、アタパルジャイト、珪藻土類など)、合成鉱物粉末(例えば、ケイ酸、アルミナ、ケイ酸塩など)、高分子性天然物(例えば、結晶性セルロース、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸など)などが挙げられる。
【0035】
緩衝剤の例として、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩酒石酸塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、HEPESなどの緩衝液などを用いることができる。
【0036】
等張化剤の例として、塩化ナトリウム、ブドウ糖、D-ソルビトール、グリセリン、D-マンニトールなどを用いることができる。
【0037】
界面活性剤の例として、非イオン性界面活性剤(例えば、脂肪アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシド、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、オクチルグルコシド、ペプチルチオグルコシド、デカノイル-N-メチルグルカミド、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンへプタメチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテ、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールエステル
など)、陰イオン性界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル-N-サルコシン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウムなど)、陽イオン性界面活性剤(例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルアンモニウムブロミド、ドデシルピリジニウムクロリドなど)、両性界面活性剤(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム、3-[(3-コラミドプピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、パルミトイルリゾレシチン、ドデシル-N-ベタイン、ドデシル-β-アラニンなど)などが挙げられる。
【0038】
防腐剤の例として、パラベン類(例えば、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなど)、塩化セチルピリジニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ソルビン酸カリウム、チメロサール、パラオキシ安息香酸エステル類、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、などを用いることができる。
【0039】
抗菌剤の例として、四級アンモニウム塩系の殺菌消毒剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)、フェノール系の殺菌消毒剤(例えば、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、チモール)、クロロヘキシジン、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、抗菌性を有する植物の抽出物・精油(例えば、タイム、レモングラス、柑橘類、レモン、オレンジ、アニス、クローブ、アニシード、マツ、シナモン、ゼラニウム、バラ、ミント、ラベンダー、シトロネラ、ユーカリ、ペパーミント、樟脳、アジョワン、ビャクダン、ローズマリー、クマツヅラ、フリーグラス、レモングラス、ラタニア、ヒマラヤスギなど)などが挙げられる。
【0040】
抗酸化剤の例として、亜硫酸塩、アスコルビン酸などを用いることができる。
【0041】
pH調整剤の例として、塩酸、炭酸、酢酸、クエン酸、リン酸、ホウ酸、硫酸などの酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩又は炭酸水素塩、酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属酢酸塩、クエン酸ナトリウムなどのアルカリ金属クエン酸塩、トロメタモールなどの塩基、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどを用いることができる。
【0042】
分散剤の例として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート80(TWEEN80)などを用いることができる。
【0043】
芳香剤の例として、香料成分(例えば、1-カルボン、シンナミックアルデヒド、オレンジオイル、メチルサリシレート、オイゲノール、メンチルアセテート、スピラントール、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンズアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フラネオール、マルトール、エチルマルトール、ガンマ/デルタデカラクトン、ガンマ/デルタウンデカラクトン、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール-1-メンチルカーボネートなど)、天然精油(例えば、ウィンターグリーン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、ナツメグ油、ラベンダー油、パラクレス油など)、フルーツ系香料(例えば、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、アップル、バナナ、ストロベリー、ブルーベリー、メロン、ピーチ、パイナップル、グレープ、マスカット、チェリー、スカッシュなど)、ペパーミント、スペアミント、メントール、ヨーグルト、コーヒー、ブランデーなどを用いることができる。
【0044】
着色剤の例として、カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、アナトー色素、パプリカ色素、紅花色素、紅麹色素、カロチン色素、カロチノイド色素、フラボノイド色素、コチニール色素、アマランス(赤色2号)、エリスロシン(赤色3号)、アルラレッドAC(赤色40号)、ニューコクシン(赤色102号)、フロキシン(赤色104号)、ローズベンガル(赤色105号)、アシッドレッド(赤色106号)、タートラジン(黄色4号)、サンセットイエローFCF(黄色5号)、ファストグリーンFCF(緑色3号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴカルミン(青色2号)、青色201号、青色204号、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、雲母チタン、酸化チタンなどを用いることができる。
【0045】
増粘剤の例として、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ローカストビーンガム、グアーガム、カゼインナトリウム、卵アルブミン、ゼラチン寒天、デンプン、化工デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒプロメロース、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、糖アルコール(ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトールなど)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなど)、ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、キサンタンガム、カラゲニンガム、トラガカントガム、クインスシードエキス、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどを用いることができる。
【0046】
本発明に係る上記の化合物は、例えば、アイメリカ科アイメリア属(学名「Eimeria」)のE.zuernii、E.bovis、E.tenella、E.necatrix、E.acervulina、E.maxima、アイメリカ科イソスポーラ属(学名「Isospora」)のI.suis、I.canis、I.ohioensis、I.heydorni、I.burrowsi、I.felis、I.rivolta、クリプトスポリジウム科クリプトスポリジウム属(学名「Crypptosporidium」)のC.parvum、肉胞子虫科肉胞子虫属(学名「Sarcocystis」)原虫、肉胞子虫科トキソプラズマ属(学名「Toxoplasma」)のT.gondii、肉胞子虫科Besnoitia属のB.wallacei、B.besnoiti、肉胞子虫科Hammondia属のH.hammondiなど、コクシジウム類全般のオーシストに対し、胞子形成阻害効果を有する。
【0047】
本発明に係るコクシジウム消毒用製剤を消毒対象物又は消毒対象区域に使用することで、そこに存在したコクシジウムオーシストの胞子形成を阻害し、コクシジウムを有効に殺滅することができる。
【0048】
消毒対象は、コクシジウムで汚染された又はその可能性のある物・場所・領域であれば原則的に全て適応可能であり、特に限定されない。例えば、畜舎・鶏舎・家畜授精施設などの畜産施設、医療・介護施設・領域、実験用動物・飼育動物などを含む動物飼育施設・領域、食肉生産・加工施設、食品生産・加工施設などの床面・壁面・出入口、それらの施設内に設置・配置された物、それらの施設内で行う業務で用いる器具・機材などのコクシジウム消毒に本発明を適用できる。
【0049】
例えば、予め又は用時に本発明に係る液体状の製剤を準備し、その消毒溶液に消毒対象物を浸漬したり、その消毒溶液を含ませた布材などで消毒対象物又は消毒対象区域を拭いたりすることでコクシジウム消毒を行ってもよいし、その消毒溶液を消毒対象物又は消毒対象区域に散布したり、噴霧器などで霧状に噴霧したり、若しくは発泡ノズルなどで泡状に噴霧したりすることで、コクシジウム消毒を行ってもよい。その他、例えば、粉末状の製剤をそのまま消毒対象物又は消毒対象区域に撒布・散布してもよい。
【0050】
例えば、それらの施設の床面・壁面やそれらの施設内に設置・配置された物のコクシジウム消毒を行う際には、本発明に係る消毒溶液を含ませた布材などで消毒対象物・区域を拭ってもよいし、消毒対象物・区域に噴霧器などで本発明に係る消毒溶液又は粉末製剤を霧状に略均一に噴霧したり、発泡ノズルなどで泡状に噴霧したりしてもよい。また、各施設の出入口などに踏込槽を準備してその中に本発明に係る消毒溶液を入れておくことで、施設に出入りする人の足元をコクシジウム消毒するようにしてもよい。その他、施設内で行う業務で用いる器具・機材などのコクシジウム消毒を行う際には、本発明に係る消毒溶液にそれらの器具・機材などを浸漬してもよいし、それらの器具・機材などに本発明に係る消毒溶液又は粉末製剤を霧状に略均一に噴霧したり、発泡ノズルなどで泡状に噴霧したりしてもよい。
【0051】
本発明に係るコクシジウム消毒用製剤を液体状の製剤として、若しくは液体状に調製して用いる場合、消毒溶液における本発明に係る化合物の濃度は、例えば、最終濃度(使用時の濃度)が1~50,000mg/Lであることが好適であり、10~20,000mg/Lであることがより好適であり、100~10,000mg/Lであることがさらに好適であり、150~5,000mg/Lであることがさらに好適であり、200~1,000mg/Lであることが最も好適である。本発明に係るコクシジウム消毒用製剤を固体状の製剤として用いる場合、同製剤中に、本発明に係る化合物が1~100重量%含有していることが好適であり、3~50重量%含有していることがより好適であり、5~30重量%含有していることが最も好適である。
【0052】
その他、本発明に係るコクシジウム消毒用製剤は、少なくとも本発明に係る化合物が所定濃度の範囲で含有していればよく、当該化合物以外のコクシジウム消毒に有効な成分、及び/又は、コクシジウム以外の病原の消毒に有効な成分をさらに含有していてもよい。
【0053】
<本発明に係る消毒用製剤について>
本発明は、上記一般式(I)で表される化合物、及び、下記一般式(II)で表される化合物が有効成分として混合された消毒用製剤をすべて包含する。ここで、「消毒用製剤」は、病原微生物を死滅させ、又は、その感染力を失わせるための製剤を意味する(以下同じ)。
【化3】
【0054】
上記一般式II中、R2及びR3は炭素原子数8~16のアルキル基を表し、同一であっても異なっていてもよい。この上記一般式IIで表された化合物は塩化ジアルキルジメチルアンモニウムである。
【0055】
2又はR3における炭素原子数8~16のアルキル基は、直鎖型、分岐型のいずれであってもよい。そのような基として、例えば、ノルマル型又はイソ型のオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基などが挙げられる。
【0056】
上記一般式(II)で表された化合物の具体例としては、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化オクチルデシルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニム、塩化ジラウリルジメチルアンモニムなどを挙げることができ、その中で塩化ジデシルジメチルアンモニウムが最も好ましい。
【0057】
一般式(II)で表された化合物は、コクシジウム類以外の病原、例えば、ウイルス、細菌、真菌などに対する殺滅効果を有し、それらを対象とした消毒成分として有用である。一方、一般式(I)で表された化合物は、上述の通り、コクシジウムの消毒に有効である。そして、両化合物は、混合しても、相互に阻害することはなくそれぞれが対象病原に対し消毒剤として有効に作用する。従って、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物とを予め又は用時に混合して消毒対象物又は消毒対象区域に使用することにより、一度の作業で、コクシジウム類を含む広範な病原を有効に殺滅することができる。
【0058】
その他、一般式(II)で表された化合物は界面活性成分であり、起泡性を有している。従って、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物とを混合させることにより、別途界面活性剤を添加しなくても、若しくはその添加量を減らしても、発泡ノズルなどを用いることで泡状に噴霧させることができるという利点がある。
【0059】
この混合された消毒用製剤は、原則的に液体状の製剤として使用する。この消毒用製剤における、一般式(I)で表される化合物の濃度は、上述の通り、最終濃度(使用時の濃度)が1~50,000mg/Lであることが好適であり、10~20,000mg/Lであることがより好適であり、100~10,000mg/Lであることがさらに好適であり、150~5,000mg/Lであることがさらに好適であり、200~1,000mg/Lであることが最も好適である。一方、一般式(II)で表される化合物の濃度は、最終濃度(使用時の濃度)が1~20,000mg/Lであることが好適であり、10~500mg/Lであることがより好適である。また、一般式(II)で表される化合物を高濃度に調製することで(例えば、その濃度を、最終濃度(使用時の濃度)で0.5~20g/Lにすることで)、別途界面活性剤を添加しなくても、若しくはその添加量を減らしても、泡状に噴霧させることができる。
【0060】
この混合された消毒用製剤は、例えば、一般式(I)で表される化合物が溶解された溶液と、一般式(II)で表された化合物が溶解された溶液とを予め又は用時に混合することで調製することができる。一般式(II)で表された化合物の溶媒に、例えば、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、アセトン、DMSOなどを用いてもよい。
【0061】
その他、この混合された消毒用製剤にける有効成分以外の添加剤、その消毒対象、用法などは上記と同様である。
【0062】
<本発明に係る消毒方法について>
本発明は、上述の消毒用製剤(上述のコクシジウム消毒用製剤を含む)を使用した鶏舎又は畜舎のコクシジウム消毒方法をすべて包含する。
【0063】
上述の通り、鶏舎又は畜舎において、一般式(I)で表された化合物を含有した消毒用製剤を使用することにより、コクシジウムを有効に殺滅することができる。また、一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物とが混合された消毒用製剤を使用することにより、コクシジウム類を含む広範な病原を有効に殺滅することができる。
【0064】
具体的には、例えば、鶏舎又は畜舎の床面・壁面やそれらの施設内に設置・配置された物、それらの施設内で行う業務で用いる器具・機材の消毒などに有効であり、また、それらの施設の出入口に配置された踏込槽などに入れる消毒溶液にも適用できる。
【0065】
例えば、予め又は用時に本発明に係る液体状の製剤を準備し、その消毒溶液に消毒対象物を浸漬したり、その消毒溶液を含ませた布材などで消毒対象物又は消毒対象区域を拭いたりすることで消毒を行ってもよいし、その消毒溶液を消毒対象物又は消毒対象区域に散布したり、噴霧器などで霧状に噴霧したり、若しくは発泡ノズルなどで泡状に噴霧したりすることで、消毒を行ってもよい。その他、例えば、粉末状の製剤の場合は、そのまま消毒対象物又は消毒対象区域に撒布・散布してもよい。その他、有効成分の用量などは上述の通りである。
【実施例1】
【0066】
実施例1では、コクシジウムのオーシストに対するイソチオシアン酸アリルの胞子形成阻害効果を検証した。
【0067】
コクシジウム(学名「Eimeria tenella」)の野外株の胞子形成オーシストを鶏に感染させ、感染後7日目にその糞を回収し、糞中の胞子未形成のオーシストを分離精製し、供試材料とした。
【0068】
試験物質として、ワサオーロ(登録商標、三菱化学フーズ株式会社製、イソチオシアン酸アリルを10重量%含有した粉末製剤、以下同じ)を精製水で溶解し、5mg/mLのワサオーロ溶液を調製した。そのワサオーロ溶液10mLに、胞子未形成オーシスト浮遊液(オーシスト数:2.1×105個/mL)を1mL(1/10量)加え、密栓し、25℃で1時間感作させた。
【0069】
感作終了後、遠心分離(2,000rpm、5分間)して上清を除去し、0.5%中性洗剤液で4回遠心洗浄(2,000rpm、5分間)し、上清を除去して2%重クロム酸カリウム水溶液を加えた。その溶液中でオーシストを浮遊させた状態のまま、25℃で5日間培養した。
【0070】
培養後、全オーシストのうち500個を顕微鏡で観察し、その中で胞子を形成したオーシスト(胞子形成オーシスト)の数をカウントし、胞子形成率を算出した。
【0071】
陰性対照として、ワサオーロ溶液を精製水に代えた以外は、同様の方法・手順で実験を行い、胞子形成オーシスト数・胞子形成率を取得した。また、陽性対照として、ワサオーロ溶液をトライキル溶液に代えた以外は、同様の方法・手順で実験を行い、胞子形成オーシスト数・胞子形成率を取得した。なお、トライキル(登録商標、田村製薬株式会社製)は、オルトジクロロベンゼン、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、クロルクレゾールを含有する複合オルソ剤で、コクシジウムオーシストに対する殺滅作用を有する。本実施例では、同製剤の用量に準じ、精製水で100倍希釈したものをトライキル溶液として用いた。
【0072】
結果を表1に示す。
【表1】
【0073】
表1に示す通り、ワサオーロ(イソチオシアン酸アリル)は、オーシストの胞子形成を顕著に抑制できることが実証された。また、その胞子形成阻害効果は、効果の高いトライキルと比較しても顕著であった。
【実施例2】
【0074】
実施例2では、イソチオシアン酸アリルの胞子形成阻害効果に有効な濃度を検討するとともに、他の消毒剤と混合して用いた場合にも胞子形成阻害効果が維持されるかどうかを検証した。
【0075】
有効濃度を検討するための試験物質として、1mg/mL、0.75mg/mL、又は0.5mg/mLのワサオーロ溶液を実施例1と同様の手順で調製した。また、他の消毒剤と混合した試験物質として、ワサオーロ・クリアキル混合溶液(ワサオーロ1mg/mL、0.75mg/mL、又は0.5mg/mL、クリアキル2μL/mL)を調製した。なお、クリアキル(登録商標、田村製薬株式会社製)は、100mL当たり塩化ジデシルジメチルアンモニウム10gを含有する消毒製剤であり、ウイルス、細菌、カビなど、コクシジウム以外の広範な病原に対して消毒作用を有する。本実施例では、同製剤の用量に準じ、最終濃度で500倍希釈になるように混合した。
【0076】
試験物質を代えた以外は、実施例1と同様の方法・手順で実験を行い、胞子形成オーシスト数・胞子形成率を取得した。
【0077】
結果を表2に示す。
【表2】
【0078】
表2に示す通り、ワサオーロの濃度を0.5mg/mL(イソチオシアン酸アリルの濃度50mg/L)まで少なくした場合でも、胞子形成率は20.2%であり、陽性対照のトライキルとほぼ同等の胞子形成阻害効果を示した。また、クリアキルと混合して用いた場合でも、コクシジウムオーシストに対する胞子形成阻害効果は減弱せず、有効に維持された。
【実施例3】
【0079】
実施例3では、コクシジウム症に罹患した牛の糞便から採取したオーシストを供試材料として、イソチオシアン酸アリルの胞子形成阻害効果を検証した。
【0080】
コクシジウム症により下痢を呈した牛一個体から糞便を採取し、3日間冷凍保管した後、ショ糖浮遊法でその糞便から胞子未形成オーシストを分離精製し、供試材料とした。なお、顕微鏡観察の結果、分離されたオーシストは、その形態より、いずれもEimeria属のコクシジウムで、少なくとも3種の混合感染であったことが分かった。
【0081】
試験物質として10mg/mL又は5mg/mLのワサオーロ溶液を実施例1などと同様の手順で調製し、そのワサオーロ溶液400μLに、胞子未形成オーシスト浮遊液(オーシスト数:2.0×104個/mL)を40μL(1/10量)加え、密栓し、25℃で1時間感作させた。
【0082】
感作終了後、遠心分離(2,000rpm、5分間)して上清を除去し、精製水で4回遠心洗浄(2,000rpm、5分間)し、上清を除去して2%重クロム酸カリウム水溶液を加えた。その溶液中でオーシストを浮遊させた状態のまま、25℃で3日間培養した。
【0083】
培養後、それぞれ、全オーシストのうち100個を顕微鏡で観察し、その中で胞子を形成したオーシスト(胞子形成オーシスト)の数をカウントし、胞子形成率を算出した。
【0084】
その他、陰性対照として、ワサオーロ溶液を精製水に代えた以外は、同様の方法・手順で実験を行い、胞子形成オーシスト数・胞子形成率を取得した。
【0085】
結果を表3に示す。
【表3】
【0086】
表3に示す通り、陰性対照と比較して、試験物質としてワサオーロ溶液を用いた場合は、10mg/mL、5mg/mLのいずれの濃度の場合でも胞子形成率が0%であった。このことより、ワサオーロ(イソチオシアン酸アリル)の、牛コクシジウムオーシストに対する胞子形成阻害効果が実証された。また、牛糞便中に混在していた3種のコクシジウムの全てに対し、胞子形成阻害効果が確認された。
【実施例4】
【0087】
実施例4では、コクシジウム症に罹患した牛の糞便から採取したオーシストを供試材料として、イソチオシアン酸アリルの胞子形成阻害効果に有効な濃度を検討した。
【0088】
実施例3と同様、コクシジウム症により下痢を呈した牛一個体から糞便を採取し、1日間冷凍保管した後、ショ糖浮遊法でその糞便から胞子未形成オーシストを分離精製し、供試材料とした。なお、顕微鏡観察の結果、分離されたオーシストは、その形態より、いずれもEimeria属のコクシジウムで、少なくとも3種の混合感染であったことが分かった。
【0089】
有効濃度を検討するための試験物質として、0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、10mg/mLのワサオーロ溶液を実施例1などと同様の手順で調製し、そのワサオーロ溶液200μLに、胞子未形成オーシスト浮遊液(オーシスト数:約1.0×104個/mL)を20μL(1/10量)加え、密栓し、25℃で1時間感作させた。
【0090】
感作終了後、実施例3などと同様の手順で培養した後、それぞれ、全オーシストのうち100個を顕微鏡で観察し、その中で胞子を形成したオーシスト(胞子形成オーシスト)の数をカウントし、胞子形成率を算出した。
【0091】
その他、陰性対照として、ワサオーロ溶液を精製水に代えた以外は、同様の方法・手順で実験を行い、胞子形成オーシスト数・胞子形成率を取得した。また、陽性対照として、ワサオーロ溶液をトライキル溶液に代えた以外は、同様の方法・手順で実験を行い、胞子形成オーシスト数・胞子形成率を取得した。なお、トライキル溶液には、実施例1と同様、精製水で100倍希釈したものを用いた。
【0092】
結果を表4に示す。
【表4】
【0093】
表4に示す通り、牛コクシジウムオーシストに対する胞子形成阻害効果が、ワサオーロの濃度依存的に観察された。また、ワサオーロ溶液の濃度を0.5mg/mLとした場合でも、陽性対照のトライキルよりも良好な成績であり、ワサオーロ溶液の濃度を2mg/mLにした場合には、胞子形成率が0%であった。その他、牛糞便中に混在していた3種のコクシジウムの全てに対し、胞子形成阻害効果が確認された。
【実施例5】
【0094】
実施例5では、コクシジウム症に罹患した牛の糞便から採取したオーシストを供試材料として、他の消毒剤と混合して用いた場合にも胞子形成阻害効果が維持されるかどうかを検証した。
【0095】
実施例3などと同様、コクシジウム症により下痢を呈した牛一個体から糞便を採取し、1日間冷凍保管した後、ショ糖浮遊法でその糞便から胞子未形成オーシストを分離精製し、供試材料とした。なお、顕微鏡観察の結果、分離されたオーシストは、その形態より、いずれもEimeria属のコクシジウムで、少なくとも3種の混合感染であったことが分かった。
【0096】
他の消毒剤と混合した試験物質として、ワサオーロ・クリアキル混合溶液(ワサオーロ0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、又は10mg/mL、クリアキル2μL/mL)を実施例2と同様の手順で調製し、その混合溶液500μLに、胞子未形成オーシスト浮遊液(オーシスト数:約1.7×104個/mL)を50μL(1/10量)加え、密栓し、25℃で1時間感作させた。
【0097】
感作終了後、実施例3などと同様の手順で培養した後、それぞれ、全オーシストのうち100個を顕微鏡で観察し、その中で胞子を形成したオーシスト(胞子形成オーシスト)の数をカウントし、胞子形成率を算出した。
【0098】
なお、陰性対照として、ワサオーロ溶液を精製水に代えた以外は、同様の方法・手順で実験を行い、胞子形成オーシスト数・胞子形成率を取得した。また、陽性対照として、クリアキルを混合していないワサオーロ溶液(10mg/mL)についても、同様の方法・手順で実験を行い、胞子形成オーシスト数・胞子形成率を取得した。その他、トライキル溶液についても、実施例4などと同様、ワサオーロ溶液をトライキル溶液に代えた以外は、同様の方法・手順で実験を行い、胞子形成オーシスト数・胞子形成率を取得した。
【0099】
結果を表5に示す。
【表5】
【0100】
表5に示す通り、ワサオーロとクリアキルを混合した場合であっても、牛コクシジウムオーシストに対する胞子形成阻害効果は減弱せずに有効に維持された。また、ワサオーロとクリアキルを混合した場合であっても、牛糞便中に混在していた3種のコクシジウムの全てに対し、胞子形成阻害効果が確認された。