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特許7236211フィラー及びフィラーの製造方法、並びに成形体の製造方法
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  • 特許-フィラー及びフィラーの製造方法、並びに成形体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】フィラー及びフィラーの製造方法、並びに成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230302BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K9/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017240330
(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2019108412
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】諌山 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】伊部 博之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸映
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-504177(JP,A)
【文献】特開2017-128476(JP,A)
【文献】国際公開第2013/187303(WO,A1)
【文献】特開2017-014445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C04B 41/80-41/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性粒子と、前記熱伝導性粒子の表面を覆うように配された絶縁性粒子とを含むコアシェル型をなす焼成物であり、
前記絶縁性粒子の含有率が10体積%以上40体積%以下であり、
比表面積が、0.05m2/g以上8m2/g以下であり、
前記熱伝導性粒子は、炭化ケイ素からなり、複数の一次粒子が焼結して結合され、平均円形度が0.75以上0.95以下となる球状をなしており、
前記絶縁性粒子は、べーマイト、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン炭化ホウ素、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、チタン酸バリウム、及びチタン酸ストロンチウムから選択される少なくとも1種を含むフィラー。
【請求項2】
前記熱伝導性粒子の、20℃における熱伝導率が10W/(m・k)以上2000W/(m・k)以下であり、
前記絶縁性粒子の、20℃における体積抵抗率が1.0×1011Ω・cm以上1.0×1016Ω・cm以下である請求項1に記載のフィラー。
【請求項3】
レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置を用いて測定される体積基準の粒度分布において、累積50%に相当する粒子径が20μm以上70μm以下である請求項1または2に記載のフィラー。
【請求項4】
前記熱伝導性粒子の平均一次粒子径が前記絶縁性粒子の平均一次粒子径よりも大きく、
前記平均一次粒子径は、電子顕微鏡観察による反射電子像を解析し、測定される各粒子に係る粒子径の算術的平均値である請求項1~3のいずれか1項に記載のフィラー。
【請求項5】
前記熱伝導性粒子の平均一次粒子径(D1)と前記絶縁性粒子の平均一次粒子径(D2)の比(D1/D2)が4以上6000以下であり、
前記平均一次粒子径は、電子顕微鏡観察による反射電子像を解析し、測定される各粒子に係る粒子径の算術的平均値である請求項1~4のいずれか1項に記載のフィラー。
【請求項6】
前記熱伝導性粒子の前記絶縁性粒子による表面被覆率が50%以上100%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載のフィラー。
【請求項7】
炭化ケイ素からなる複数の一次粒子を焼結して結合して、平均円形度を0.75以上0.95以下となる球状とした熱伝導性粒子の表面に絶縁性粒子を覆うように配してコアシェル型を形成して焼成物を得る工程を有し、
前記絶縁性粒子の含有率を10体積%以上40体積%以下とし、
比表面積を0.05m2/g以上8m2/g以下として、
前記絶縁性粒子を、べーマイト、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、チタン酸バリウム、及びチタン酸ストロンチウムから選択される少なくとも1種を含んだ粒子とするフィラーの製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のフィラーを樹脂に添加する工程を有する樹脂組成物の成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィラー及びフィラーの製造方法、並びに成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック、硬化性樹脂、ゴム等の樹脂と、金属、炭化ケイ素等の熱伝導率が高い材質を含むフィラーとを含有する樹脂組成物の成形体においては、絶縁性が充分でないことがあるという問題があった。これは、熱伝導率が高い材質である金属や炭化ケイ素等は、一般に絶縁性が低いことに起因する。
そこで、フィラーの材質や組成等を工夫することによって、樹脂組成物の成形体の絶縁性を向上させていた(例えば特許文献1を参照)。しかしながら、樹脂組成物の成形体の絶縁性を向上させるためのさらなる工夫が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-339019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、プラスチック、硬化性樹脂、ゴム等の樹脂に配合されて、得られる樹脂組成物の成形体の熱伝導率を維持しつつ、絶縁性を向上させることができるフィラー及びフィラーの製造方法、並びに、熱伝導率を維持しつつ、絶縁性を向上させることができる成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るフィラーは、熱伝導性粒子と、前記熱伝導性粒子の表面を覆うように配置された絶縁性粒子とを含むことを要旨とする。
本発明の他の態様に係るフィラーの製造方法は、熱伝導性粒子を絶縁性粒子で被覆する工程を有することを要旨とする。
本発明のさらに他の態様に係る樹脂組成物の成形体の製造方法は、上記の一態様に係るフィラーを樹脂に添加する工程を有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフィラーは、プラスチック、硬化性樹脂、ゴム等の樹脂に配合されて、得られる樹脂組成物の成形体の熱伝導率を維持しつつ、絶縁性を向上させることができる。また、本発明の製造方法で製造した成形体は、熱伝導率と絶縁性が共に高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係るフィラーの構造を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0009】
(フィラー)
本実施形態のフィラーは、熱伝導性粒子と、その熱伝導性粒子を被覆する絶縁性粒子とを含んでいる。即ち、本実施形態のフィラーは、コアシェル型のフィラーである。本実施形態において、「コアシェル型」とは、図1に示すように、熱伝導性粒子1が核(コア)を形成し、絶縁性粒子2が熱伝導性粒子1の周囲を殻(シェル)を形成するように取り囲んだ構造のことを意味する。
【0010】
本実施形態のフィラーは、プラスチック、硬化性樹脂、ゴム等の樹脂に配合して樹脂組成物とすることができる。この樹脂組成物は、本実施形態のフィラーと樹脂のみから構成してもよいが、本実施形態のフィラーと樹脂に補強材、添加剤等の他の成分を配合して構成してもよい。そして、その樹脂組成物を成形した成形体は、熱伝導率及び絶縁性が共に高いので、例えば熱伝導材料として用いることができる。成形体の形状や成形方法は特に限定されず、例えば成形体をシート状に形成してもよい。なお、本実施形態の熱伝導材料は、放熱材料を含む概念である。
【0011】
以下に、本実施形態のフィラーの構成について、さらに詳細に説明する。
フィラーを構成する熱伝導性粒子の材質は特に限定されるものではなく、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、チタニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、カーボン等のセラミックや、金属を用いることができる。セラミックの結晶構造の種類は特に限定されるものではなく、例えばアルミナの場合であれば、α-アルミナ、β-アルミナ、γ-アルミナ等を用いることができる。これらの材質のうち取り扱いの容易さ及び後述する熱伝導率の両観点から、熱伝導性粒子としては炭化ケイ素が好適である。
【0012】
熱伝導性粒子の20℃における熱伝導率は、10W/(m・k)以上であれば好ましく、100W/(m・k)以上であればより好ましく、200W/(m・k)以上であればさらに好ましい。熱伝導性粒子の熱伝導率が10W/(m・k)未満であると、フィラーを樹脂に配合して樹脂組成物とした場合に、充分な熱伝導率が期待できない。なお、本実施形態において、熱伝導率の上限値は特に限定されるものではないが、入手の容易さ等の現実的な観点からダイヤモンド粒子の1000~2000W/(m・k)程度がその上限値である。
なお、本実施形態では、「熱伝導性粒子の20℃における熱伝導率」として、当該熱伝導性粒子の材料(バルク)の熱伝導率を用いた。また、上記熱伝導率は、レーザーフラッシュ法を用いて測定した場合の値である。
【0013】
熱伝導性粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、針状、棒状等とすることができるが、樹脂への充填時に均質性を得やすい、混練装置の摩耗による損傷が少ないといった観点から球状が好ましい。熱伝導性粒子が球状の場合、熱伝導性粒子の平均円形度は、0.75以上0.95以下であってもよい。熱伝導性粒子の平均円形度が0.75未満であると、樹脂への充填時に均質性を得にくく、寸法公差も大きくなる。また、混練装置の摩耗による損傷が大きいといった問題が生じ得る。また、熱伝導性粒子の平均円形度の上限値は特に限定されるものではないが、入手の容易さ等の現実的な観点から0.95程度がその上限値である。本実施形態において、「平均円形度」とは、画像解析法により得られた、例えば5000個以上の複合二次粒子の平面視における円形度の算術的平均値を意味する。具体的には、市販のフロー式粒子画像分析装置(例えばシスメックス(株)製、FPIA-2100のような装置)を用いて算出した値を、平均円形度としている。
なお、球状の熱伝導性粒子の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、焼結によって複数の一次粒子を結合させて造粒する方法があげられる。
【0014】
フィラーを構成する絶縁性粒子の材質は特に限定されるものではなく、例えば、酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ゼオライトなどの多孔質アルミノケイ酸塩、タルクなどの層状ケイ酸塩、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等を用いることができる。これらの材質のうち絶縁性及び熱伝導率の両観点から、絶縁性粒子としては窒化ホウ素が好適である。
【0015】
絶縁性粒子の絶縁性は、20℃における体積抵抗率が1.0×1011Ω・cm以上1.0×1016Ω・cm以下であれば好ましく、1.0×1012Ω・cm以上1.0×1016Ω・cm以下であればより好ましい。絶縁性粒子の体積抵抗率が1.0×1011Ω・cm未満であると、フィラーを樹脂に配合して樹脂組成物とした場合に、充分な絶縁性が期待できない。なお、絶縁性粒子の体積抵抗率の上限値は特に限定されるものではないが、取り扱いの容易さ等の現実的な観点から1.0×1016Ω・cm程度がその上限値である。
なお、本実施形態では、「20℃における体積抵抗率」として、当該絶縁性粒子の材料(バルク)の熱伝導率を用いた。また、上記体積抵抗率は、二重リング測定法を用いて測定した場合の値である。
【0016】
フィラーの平均粒子径(D50%)は特に限定されるものではないが、20μm以上70μm以下としてもよい。フィラーの平均粒子径が20μm未満であると、フィラーの界面抵抗が上昇し、樹脂組成物の成形体の熱伝導率が低くなるおそれがある。また、樹脂組成物の成形性が低下するおそれがある。一方、フィラーの平均粒子径が70μm超過であると、シートの厚さに対してフィラーの粒子径が大きくなるため、シートを形成しにくいという不都合が生じるおそれがある。
【0017】
本実施形態において、「フィラーの平均粒子径(D50%)」とは、レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置を用いて測定される体積基準の粒度分布において、累積50%に相当する粒子径、即ち、体積基準のD50%粒子径を意味する。フィラーの平均粒子径(D50%)は、例えば、株式会社堀場製作所製のレーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置、LA-300を用いて測定してもよい。
熱伝導性粒子の平均一次粒子径は、絶縁性粒子の平均一次粒子径よりも大きくてもよい。より詳しくは、熱伝導性粒子の平均一次粒子径(D1)と絶縁性粒子の平均一次粒子径(D2)の比(D1/D2)が4以上6000以下であってもよい。また、熱伝導性粒子の絶縁性粒子による表面被覆率が50%以上100%以下であってもよい。上記数値範囲内であれば、フィラーを樹脂に配合して樹脂組成物とした場合に、充分な熱伝導率及び充分な絶縁性が共に得られる。
【0018】
なお、本実施形態では、電子顕微鏡観察に基づいて測定される平均粒子径を、熱伝導性粒子及び絶縁性粒子の各平均一次粒子径としている。具体的には、市販の走査型顕微鏡(例えば(株)日立ハイテクノロジーズ社製、S-3000Nのような装置)を用い、加速電圧15kV、拡大倍率5000倍の条件で無作為に撮影した12枚の反射電子像を解析し、測定される各粒子に係る粒子径の算術的平均値を、熱伝導性粒子及び絶縁性粒子の各平均一次粒子径としている。
また、フィラーは、絶縁性粒子を10体積%以上40体積%以下で含んでいてもよい。上記数値範囲内であれば、フィラーを樹脂に配合して樹脂組成物とした場合に、充分な熱伝導率及び充分な絶縁性が共に得られる。
【0019】
フィラーの強度、例えば、変形率10%の変形がフィラーに生じる圧縮力である10%圧縮変形強度は特に限定されるものではないが、19.6MPa(2kgf/mm)以上294MPa(30kgf/mm)以下としてもよい。10%圧縮変形強度が19.6MPa未満であると、樹脂組成物の成形時にフィラーが破損し界面抵抗が上昇するため、樹脂組成物の成形体の熱伝導率を高める効果が十分に奏されないおそれがある。また、成形時に樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、成形性が低下するおそれがある。一方、10%圧縮変形強度が294MPa超過であると、樹脂組成物の成形体の熱伝導率を高める効果が十分に奏されないおそれがある。
【0020】
フィラーの比表面積は特に限定されるものではないが、0.05m/g以上8m/g以下としてもよい。フィラーの比表面積が8m/g超過であると、フィラーの界面抵抗の上昇により樹脂組成物の成形体の熱伝導率を高める効果が十分に奏されないおそれがある。一方、フィラーの比表面積が0.05m/g未満であると、樹脂組成物の成形体の熱伝導率を高める効果が十分に奏されないおそれがある。
フィラーの表面の凹凸形状(フラクタルディメンジョン)は、フィラー同士の接触点を増加させ樹脂組成物の成形体の熱伝導率を向上させる作用を有するため、大きい方が好ましい。
樹脂組成物中に含有されるフィラーの単位質量又は単位体積当りの個数は、より多い方が好ましい。フィラーの単位質量又は単位体積当りの個数が多い方がフィラー同士の接触点が多くなるので、樹脂組成物の成形体の熱伝導率が高くなる。
【0021】
(フィラーの製造方法)
以下、本実施形態のフィラー、即ち熱伝導性粒子が絶縁性粒子で被覆されたフィラーの製造方法について説明する。
熱伝導性粒子及び絶縁性粒子にバインダーを添加し、それらを攪拌しながら乾燥させる。その後、乾燥した混合物を焼成して粉砕する。最後に篩を用いてフィラーの粒子径を揃える。
このようにして、本実施形態のフィラーを製造する。
【0022】
(シートの製造方法)
以下、本実施形態のフィラーと、樹脂とを含んだシートの製造方法について説明する。
まず、エポキシ樹脂等の樹脂と、メチルエチルケトン等の有機溶剤とを混合して、樹脂液を製造する。次に、その樹脂液に本実施形態のフィラーや樹脂硬化剤を添加し攪拌して、樹脂組成物をスラリー状にする。こうして得た樹脂組成物を基材上に膜状に塗布して乾燥させる。その後、さらに加熱乾燥させて熱硬化したシートを得る。
このようにして、本実施形態のシートを製造する。なお、このシートが本発明の「樹脂組成物の成形体」に相当する。
なお、本実施形態では、樹脂組成物をシート状に成形した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、樹脂組成物を立体的な形状に成形してもよい。
【0023】
〔実施例〕
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。フィラーと樹脂からなる樹脂組成物を成形してシートを製造し、その熱伝導率及び体積抵抗率を評価した。以下、各実施例及び各比較例のフィラー及びシートの各製造方法について具体的に説明する。
【0024】
(実施例1)
・フィラーの製造方法
熱伝導性粒子として、平均一次粒子径(D50%)が55μmであり、平均円形度が0.80である炭化ケイ素(SiC)粒状物を用意した。また、絶縁性粒子として、平均一次粒子径(D50%)が0.7μmである窒化ホウ素(BN)粒状物を用意した。また、バインダーとして、調製した無水マレイン酸を用意した。
次に、熱伝導性粒子及び絶縁性粒子とバインダーとの質量比、即ち、熱伝導性粒子及び絶縁性粒子の合計質量(g)/バインダーの質量(g)が、100/15となるように計量した。
次に、転動造粒機に熱伝導性粒子、絶縁性粒子及びバインダーをそれぞれ投入し攪拌して、混合物を得た。その後、その混合物を乾燥させ、焼成した後に粉砕した。最後に、篩を用いて粉砕した焼成物の粒子径を揃えた。こうして、実施例1のフィラーである、BN粒子で被覆されたSiC粒子を製造した。
【0025】
こうして得たフィラーの平均粒子径(D50%)を、株式会社堀場製作所製のレーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置、LA-300を用いて測定した。
なお、SiC粒子及びBN粒子の各平均一次粒子径(D50%)は、(株)日立ハイテクノロジーズ社製、S-3000Nを用い、加速電圧15kV、拡大倍率5000倍の条件で無作為に撮影した12枚の反射電子像を解析し、測定される各粒子に係る粒子径の算術的平均値から決定した。
また、SiC粒子の一次粒子における平均円形度は、シスメックス(株)製、FPIA-2100を用いて算出した値から決定した。
【0026】
・シートの製造方法
三菱化学株式会社製のエポキシ樹脂157S70と828USと4275とを4:1:1の質量比で混合し、得られたエポキシ樹脂の混合物とメチルエチルケトンとを66:34の質量比で混合して、エポキシ樹脂液を得た。
このエポキシ樹脂液11.08g、フィラー19.25g、シクロヘキサノン0.2g、四国化成工業株式会社製のイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤キュアゾールC11Z-CN 0.25g、及びビッグケミー・ジャパン株式会社製の分散剤DISPERBYK-2155 0.02gを、容量58mLの攪拌容器に入れ、株式会社シンキー製の自転・公転ミキサーあわとり練太郎AR-250を用いて10分間攪拌し、スラリーを得た。
【0027】
このスラリーを、ドクターブレードを用いてPET(Polyethylene terephthalate)フィルムの上に膜状に塗布し、50℃で10時間乾燥した。塗布膜の設定厚さは2000μmとした。そして、乾燥した塗布膜を120℃で2時間さらに加熱乾燥した後に熱硬化させて、実施例1のシートを得た。なお、シート中のフィラーの充填率は50体積%とした。
こうして得たシートの熱伝導率を、レーザーフラッシュ法を用いて測定した。なお、この熱伝導率の測定には、NETZSCH社製、LFA467 HyperFlashを用いた。
また、シートの体積抵抗率を、高抵抗測定器を用いて測定した。
こうして測定した結果を表1に示す。
【0028】
(実施例2)
BN粒子の平均一次粒子径(D50%)を9.0μmにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のフィラー及びシートをそれぞれ得た。
(実施例3)
BN粒子の平均一次粒子径(D50%)を0.1μmにした以外は、実施例1と同様にして、実施例3のフィラー及びシートをそれぞれ得た。
(実施例4)
SiC粒子の平均円形度を0.89にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4のフィラー及びシートをそれぞれ得た。
【0029】
(実施例5)
フィラーの平均粒子径(D50%)を58μmにした以外は、実施例1と同様にして、実施例5のフィラー及びシートをそれぞれ得た。
(実施例6)
フィラーの平均粒子径(D50%)を34μmにし、SiC粒子の平均一次粒子径(D50%)を30μmにした以外は、実施例1と同様にして、実施例6のフィラー及びシートをそれぞれ得た。
【0030】
(比較例1)
SiC粒子のみを含むフィラーを比較例1のフィラーとした。また、実施例1と同様にして、比較例1のシートを得た。
(比較例2)
BN粒子でSiC粒子を被覆せずに、単にブレンドした以外は、実施例1と同様にして、比較例2のフィラー及びシートをそれぞれ得た。
【0031】
【表1】
【0032】
測定結果から、樹脂に添加するフィラーとして、熱伝導性粒子であるSiC粒子を絶縁性粒子であるBN粒子で被覆したコアシェル型のフィラーを用いることにより、SiC粒子のみで形成されたフィラーやSiC粒子とBN粒子とを単にブレンドしただけのフィラーと比較して、シートの熱伝導率を維持しつつ、体積抵抗率、即ち絶縁性が高くなることが示されたと言える。
【符号の説明】
【0033】
1 熱伝導性粒子(コア)
2 絶縁性粒子(シェル)
図1