(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】多層麺およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20230302BHJP
【FI】
A23L7/109 B
A23L7/109 E
(21)【出願番号】P 2019149814
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】樋口 創
(72)【発明者】
【氏名】大井 雄介
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-226079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109-7/113
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が30~95μmの小麦粉が外層に用いられ、平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉を含む小麦粉が内層に用いられた、3層以上の構造を有する多層麺。
【請求項2】
外層に用いる小麦粉の平均粒子径が60~90μmである、請求項1に記載の多層麺。
【請求項3】
内層に用いるデュラム小麦粉の平均粒子径が200~360μmである、請求項1または2に記載の多層麺。
【請求項4】
前記多層麺がパスタである、請求項1~3のいずれかに記載の多層麺。
【請求項5】
調理済の状態である、請求項1~4のいずれかに記載の多層麺。
【請求項6】
3層以上の構造を有する多層麺の製造方法であって、
平均粒子径が30~95μmの小麦粉を有する原料から外層となる麺帯を調製する工程と、平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉を含む小麦粉を有する原料から内層となる麺帯を調製する工程と、外層となる麺帯と内層となる麺帯を3層以上重ねて圧延する工程と、を含む上記方法。
【請求項7】
3層以上の構造を有する圧延した麺生地を切断して麺線を得る工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
得られた麺線を調理する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュラム小麦粉を配合した多層麺およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パスタなどの麺類の製法として、機械製麺法である押出式製麺法や圧延によるロール式麺法の他に、手延べ製麺法等が広く知られている。ロール式製麺法で得られる麺類は、通常2つの麺帯からなる複合麺であり、滑らかさ、弾力性、歯切れなどの食感、光沢や透明感などの外観の点などで十分な品質が得られない場合がある。
【0003】
このようなロール式製麺法の欠点を解消するために、3つ以上の麺帯を一体化して3層以上の多層麺とすることが提案されている。例えば、特許文献1には、穀粉類を主体とする外層と内層の間に、水の移動を阻止する水移動阻止層を設けた三層麺が提案されている。また、特許文献2には、内層用麺帯を2枚の外層用麺帯で挟んで圧延して得られる3層構造の冷凍麺において、内層用原料粉として、蛋白質含量の多い小麦粉を使用することが提案されている。さらに、特許文献3には、中力小麦粉または薄力小麦粉を芯、強力小麦粉または準強力小麦粉を表層に用いた成層麺が提案されている。さらにまた、特許文献4には、平均粒径が140~400μmのデュラム小麦粉を外層、平均粒径が40~120μmのデュラム小麦粉を内層に用いることによって食感に優れたパスタを製造することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-252034号公報
【文献】特開2001-245618号公報
【文献】特開昭55-45312号公報
【文献】特開2013-226079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロール式製麺法で麺類を製造する場合、圧延により生地を薄く延ばすため、生地のべたつきや剥離性は製麺上の重要な要素となる。例えば、パスタをロール式製麺機で製麺する際、粒子径の大きいデュラム小麦粉は吸水性が低いため生地がべたつき、作業性が悪くなる。そのため、粒子径の小さなデュラム小麦粉や強力粉を用いて、生地のべたつきを抑制することがあるが、パスタ特有の食感(硬さや弾力)が損なわれ、特に調理後のパスタにおいては食感が大きく悪化するという課題があった。
【0006】
本発明者らの検討によると、特許文献4のように、粒子径の大きい小麦粉を外層に使用すると圧延の際に生地がべたつき、製麺性や品質安定性が芳しくなく、調理後の麺類においては経時変化により食感が悪化することがある。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、製麺性が良好であり、調理後時間が経過しても食感に優れた多層麺を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、多層構造を有する麺類に用いる小麦粉について鋭意検討したところ、外層に平均粒子径が30~95μmの小麦粉を用いるとともに、内層に平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉を含む小麦粉を用いることによって、製麺性を損なうことなく、優れた食感の麺類を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、これに限定されるものではないが、下記の発明を包含する。
(1) 平均粒子径が30~95μmの小麦粉が外層に用いられ、平均粒子径が180~410μmデュラム小麦粉を含む小麦粉が内層に用いられた、3層以上の構造を有する多層麺。
(2) 外層に用いる小麦粉の平均粒子径が60~90μmである、(1)に記載の多層麺。
(3) 内層に用いるデュラム小麦粉の平均粒子径が200~360μmである、(1)または(2)に記載の多層麺。
(4) 前記多層麺がパスタである、(1)~(3)のいずれかに記載の多層麺。
(5) 調理済の状態である、(1)~(4)のいずれかに記載の多層麺。
(6) 3層以上の構造を有する多層麺の製造方法であって、平均粒子径が30~95μmの小麦粉を有する原料から外層となる麺帯を調製する工程と、平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉を含む小麦粉を有する原料から内層となる麺帯を調製する工程と、外層となる麺帯と内層となる麺帯を3層以上重ねて圧延する工程と、を含む上記方法。
(7) 3層以上の構造を有する圧延した麺生地を切断して麺線を得る工程をさらに含む、(6)に記載の方法。
(8) 得られた麺線を調理する工程をさらに含む、(7)に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パスタなどの多層麺について、製麺時のべたつきや剥離性などの問題が抑制され、さらに食感に優れ、調理後の経時的な変化の少ない麺類を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、多層構造を有する多層麺およびその製造方法に関する。本発明に係る多層麺は3層以上の構造を有しており、好ましい態様において6層以下であり、3~5層であることが好ましい。本発明において、単に外層という場合、外側に露出している最外層を意味し、内層という場合、最外層以外の内側に位置する層を意味する。多層麺を構成する各層の厚さは同程度であることが好ましく、多層麺全体の厚みは0.8~4.0mmが好ましく、1.0~3.5mmがより好ましく、1.2~3.1mmであることがさらに好ましい。
【0012】
本発明に係る多層麺においては、平均粒子径が30~95μmの小麦粉が外層に用いられる。本発明に係る多層麺においては、内層と比較して平均粒子径の小さい小麦粉を外層に用いることによって、生地の吸水性やべたつきをコントロールし、良好な製麺性を実現することができる。好ましい態様において、外層に用いる小麦粉の平均粒子径は93μm以下であり、より好ましくは91μm以下、さらに好ましくは90μm以下、最も好ましくは87μm以下である。また、好ましい態様において、前記外層に用いる小麦粉の平均粒子径は40μm以上であり、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは60μm以上、最も好ましくは70μm以上である。外層に用いる小麦粉の種類は特に制限されないが、例えば、薄力粉、中力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉(デュラムフラワー、デュラムセモリナ)などを1種または2種以上組み合わせて使用することができ、デュラム小麦粉を用いることが好ましい。外層に用いられる小麦粉中のデュラム小麦粉として、30質量%含むことが好ましく、50質量%含むことがより好ましく、80質量%含むことがさらに好ましい。
【0013】
本発明において、小麦粉の平均粒子径は、レーザー回析式粒子径分布測定装置を用いて、フラウンホーファー回折法により得られた粒度分布(体積基準の積算分布または頻度分布)からメジアン径(累積50%に相当する粒径)として測定することができる。なお、本発明において小麦粉という場合、平均粒子径の小さい粉だけでなく、セモリナのような平均粒子径の大きなものも包含する。
【0014】
また、本発明に係る多層麺においては、平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉を含む小麦粉が内層に用いられる。本発明に係る多層麺に内層が複数存在する場合、平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉が少なくともいずれかの内層に用いられていればよい。本発明に係る多層麺においては、平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉を含む小麦粉を内層に用いることによって、調理後の経時変化による食感の悪化を抑制することができる。好ましい態様において、内層に用いるデュラム小麦粉の平均粒子径は400μm以下であり、より好ましくは380μm以下、さらに好ましくは360μm以下である。また、好ましい態様において、前記内層に用いるデュラム小麦粉の平均粒子径は200μm以上であり、より好ましくは250μm以上、さらに好ましくは300μm以上であり、最も好ましくは320μm以上である。内層に用いるデュラム小麦粉の種類は特に限定されないが、例えばデュラムセモリナを用いることが好ましい。内層に用いる小麦粉中の平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉として、60質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがさらに好ましい。内層に用いるデュラム小麦粉以外の小麦粉の種類は特に制限されないが、例えば、薄力粉、中力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉(平均粒子径が180~410μmのものを除く)などを1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明に係る多層麺に用いられる穀粉としては、上述した小麦粉を使用するが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、それ以外の穀粉を併用することが可能である。本発明において使用する穀粉としては、例えば、ライ麦粉、大麦粉、そば粉、米粉、大豆粉;馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉などの澱粉;アセチル化、エーテル化、架橋、酸化、α化などの処理を施した加工澱粉などが挙げられる。本発明では、これら穀粉を単独または複数組み合わせて用いることができる。澱粉として難消化性澱粉を用いることも可能である。
【0016】
本発明の多層麺を構成する各層は、副原料(穀粉以外の麺原料)をさらに含んでいてよい。本発明で用いられる副原料としては、例えば、大豆蛋白質、小麦蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳などの蛋白質素材;動植物油脂、粉末油脂などの油脂類;かんすい、食物繊維、膨張剤、増粘剤、乳化剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、デキストリン等の添加物などが挙げられる。本発明では、目的とする麺の種類に応じて、これら副原料を単独または組み合わせて用いることができる。
【0017】
さらに本発明は、一つの態様において、小麦粉を含む穀粉、副原料などを含んでなる製麺用組成物に水などを添加して混捏して得られる麺生地である。別の態様において、本発明は、多層麺を製造するための穀粉製品であり、(a)多層麺の外層に配合される、平均粒子径が30~95μmの小麦粉を含む穀粉と、(b)多層麺の内層に配合される、平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉を含む小麦粉を含む穀粉と、を含んでなる。
【0018】
本発明に係る多層麺は、調理前の多層麺と調理済の多層麺の両方を包含する概念であるが、調理済の多層麺を調製する場合は、麺帯や麺線などの未調理の多層麺を、湯の中で茹でるなどして調理する工程を行えばよい。多層麺の調理方法は特に制限されないが、茹でて調理することはもちろん、油ちょうや蒸し、電子レンジなどによって調理してもよく、多層麺が喫食可能になるまでα化すればよい。また、麺類の形態に特に制限はなく、例えば、生麺、半乾燥麺、乾燥麺、茹で麺、蒸し麺、冷凍麺、即席麺、調理麺、LL(ロングライフ)麺などであってもよい。本発明に係る多層麺は、茹で麺、蒸し麺、調理麺が好ましく、茹で又は蒸し処理された後、冷蔵又は冷凍で保存及び/又は流通される冷蔵麺(チルド麺)又は冷凍麺であるのがより好ましく、冷蔵麺(チルド麺)がさらに好ましい。なお、本発明に係る多層麺については、流通や保管、喫食などの態様に応じて、ほぐれ剤などを付着させることができる。
【0019】
本発明に係る多層麺は、麺類の種類に特に制限はなく、例えば、中華麺、焼きそば、うどん、そば、冷麺、およびパスタ類などの麺線や麺帯はもちろん、餃子やしゅうまい、ワンタンなどに用いられる麺皮が挙げられる。本発明に係る多層麺の種類として、例えば、パスタ(スパゲッティ、スパゲッティーニ、カッペリーニ、タリアテッレ、フェットチーネ、リングイーネ、パッパルデッレ、ラザニア、ラビオリなど)、うどん、そば、そうめん、ひやむぎ、冷麺などが挙げられる。本発明に係る多層麺はパスタであることが特に好ましい。
【0020】
本発明に係る多層麺は、原料に水を加えて混練し、得られた生地を積層することによって製造される。具体的には、本発明に係る多層麺は、平均粒子径が30~95μmの小麦粉を有する原料から外層となる麺帯を調製する工程と、平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉を含む小麦粉を有する原料から内層となる麺帯を調製する工程と、外層となる麺帯と内層となる麺帯を3層以上重ねて圧延する工程と、を含む。麺原料100質量部に対して加える水の量は、25~45質量部が好ましく、30~40質量部がより好ましい。
【0021】
本発明に係る多層麺の製造方法は、圧延製麺、ロール式製麺、押出式製麺などの各種製麺方法によりシート状生地を作製した後、複数のシート状生地を合わせて、圧延製麺、ロール式製麺、押出式製麺などの各種製麺方法により、生地に圧力をかけて伸ばし、多層構造を有する麺帯を得る方法や、該麺帯を切り出して麺線を得る方法、該麺帯を任意の形状や大きさに成型した麺を得る方法などがある。本発明に係る多層麺の製造方法は、ロール式製麺機を用いたロール式製麺法を採用することが好ましい。
【0022】
本明細書においては、特に記載しない限り、濃度や%などは質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【実施例】
【0023】
以下、具体的な実験に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な例を示したものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
原材料
下記の実験では、以下の小麦粉を使用し、食塩として「並塩」(日本海水)を使用した。デュラム小麦粉A~Hは、デュラム小麦を粉砕し、必要に応じて分級して調製した。
【0025】
小麦粉の平均粒子径は、レーザー回析式粒子径分布測定装置(HELOS&RODOS、日本レーザー製)を用いて乾式により測定した。平均粒子径は、フラウンホーファー回折法により得られた粒度分布(体積基準の積算分布または頻度分布)におけるメジアン径(累積50%に相当する粒径)を意味する。また、複数の小麦粉を併用した場合は、混合物の平均粒子径を測定した。測定時には、測定レンジを適宜調節した。
・デュラム小麦粉A(平均粒子径:420μm)
・デュラム小麦粉B(平均粒子径:400μm)
・デュラム小麦粉C(平均粒子径:317μm)
・デュラム小麦粉D(平均粒子径:205μm)
・デュラム小麦粉E(平均粒子径:170μm)
・デュラム小麦粉F(平均粒子径:120μm)
・デュラム小麦粉G(平均粒子径:90μm)
・デュラム小麦粉H(平均粒子径:84μm)
・小麦粉A(強力粉、「金蘭(登録商標)」(昭和産業)、平均粒子径:57μm)
・小麦粉B(中力粉、「めんのちから(登録商標)」(昭和産業)、平均粒子径:40μm)
・小麦粉C(薄力粉、「月桂冠(登録商標)」(昭和産業)、平均粒子径:28μm)
実験1:多層麺の製造と評価
(多層麺の製造)
下表に示すように、小麦粉100質量部、塩2質量部、水34質量部を混合した後、横型ミキサーを用いて混捏し、得られたそぼろ状生地からロール式製麺機を用いてシート状生地を製造した。
【0026】
次いで、2層構造の麺については、同じシート状生地を重ねてロール式製麺機を用いて圧延し、3層構造の麺については、同じシート状生地の間に別のシート状生地を挟んでロール式製麺機を用いて圧延し、麺厚1.75mmにて切り出して麺線を得た(切刃:角6番)。なお、2層構造の麺は各層の厚みの比が1:1であり、3層構造の麺は各層の厚みの比が1:1:1である。
【0027】
本実験においては、製麺性(製麺のしやすさ)を、10名の専門パネルによって評価した。具体的には、サンプル1-1、2-1、3-1をコントロールとして、下記の基準に基づいて評価し、評点の平均値を算出した。
・5点:製麺しやすく、非常に良好
・4点:特に問題なく製麺でき、良好
・3点:若干の麺帯荒れや剥離が生じる(コントロール)
・2点:麺帯荒れや剥離が生じ、不良
・1点:製麺不可
(多層麺の評価)
麺線(パスタ)を熱湯で3分間茹でた後、容器に入れ、10℃で24時間保管した。保管後、電子レンジを用いて加温し(1500W、60秒間)、サンプル1-1をコントロールとして、下記の基準に基づいて麺の食感(硬さと弾力性)を官能評価した。
【0028】
また、熱湯で3分間茹でた直後と10℃で24時間保管後の麺をそれぞれ喫食し、経時的な食感(粘性)の変化を、10名の専門パネルによって評価した。具体的には、サンプル1-1、2-1、3-1をコントロールとして、下記の基準に基づいて評価し、評点の平均値を算出した。
(硬さ)
・5点:とても硬さがあり、非常に良好
・4点:硬さがあり、良好
・3点:普通(コントロール)
・2点:あまり硬さがなく、やや不良
・1点:硬さがなく、不良
(弾力性)
・5点:とても強く、非常に良好
・4点:強く、良好
・3点:普通(コントロール)
・2点:弱く、やや不良
・1点:とても弱く、不良
(経時変化)
・5点:麺の粘性の変化がほぼ見られない
・4点:麺の粘性がやや低下
・3点:麺の粘性が低下(コントロール)
・2点:麺の粘性が大きく低下
・1点:麺の粘性が著しく低下
【0029】
【0030】
表1から明らかなように、外層に平均粒子径が30~95μmの小麦粉を使用し、内層に平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉を含む小麦粉を使用することによって、優れた多層麺を製造できることがわかった(サンプル1-5、1-6)。ただし、内層および外層に平均粒子径が317μmのデュラム小麦粉を使用した場合(サンプル1-4)は、製麺性が悪く、経時変化よって粘性が低下し歯切れの好ましくないものとなった。
【0031】
実験2:多層麺の製造と評価(外層に配合する小麦粉の平均粒子径)
外層に配合する小麦粉について、平均粒子径の影響を確認した。具体的には、原料配合を下表のように変更した以外は、実験1と同様にして、多層麺を製造し、サンプル2-1をコントロールとして評価した。
【0032】
【0033】
表2から明らかなように、外層に配合する小麦粉の平均粒子径が30~95μm程度であると、優れた多層麺を得ることができた。具体的には、外層に配合する小麦粉の平均粒子径を120μmとした場合(サンプル2-2)、製麺性が悪化し、経時的に麺の粘性が低下し好ましくない歯切れになった。外層に配合する小麦粉の平均粒子径を28μmとした場合(サンプル2-9)、製麺性が悪化し、特に麺の硬さが悪化し好ましくないものとなった。
【0034】
実験3:多層麺の製造と評価(内層に配合する小麦粉の平均粒子径)
内層に配合するデュラム小麦粉について、平均粒子径の影響を確認した。具体的には、原料配合を下表のように変更した以外は、実験1と同様にして、多層麺を製造し、サンプル3-1をコントロールとして評価した。
【0035】
【0036】
表3から明らかなように、内層に平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉を含む小麦粉を用いると、優れた多層麺を得ることができた。具体的には、内層に平均粒子径が400μmのデュラム小麦粉を100質量%用いた場合(サンプル3-3)や、内層に配合する小麦粉として2種類のデュラム小麦粉を併用し、平均粒子径が317μmのデュラム小麦粉を60質量%用いた場合(平均粒子径:181μm、サンプル3-5)、製麺性が非常に良好になり、硬さや弾力性が向上し、経時変化による粘性の低下が抑制された。一方、内層に配合するデュラム小麦粉の平均粒子径を420μmとした場合(サンプル3-2)、麺の弾力性が低く、経時的に粘性が低下し好ましくない歯切れになった。また、内層に配合するデュラム小麦粉の平均粒子径を170μmとした場合(サンプル3-6)、麺の硬さが不足しており、麺の経時変化も大きく好ましくない歯切れになった。このように、平均粒子径が180~410μmのデュラム小麦粉を60質量%以上含む小麦粉を内層に用いると良好であった。