(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】フレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープ及びフレキシブルディスプレイ積層物
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230302BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20230302BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20230302BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/26
C09J7/29
(21)【出願番号】P 2020563059
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048658
(87)【国際公開番号】W WO2020137576
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-02-16
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018243322
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】森川 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】山上 晃
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】門前 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193510(JP,A)
【文献】国際公開第2010/004703(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/141167(WO,A1)
【文献】特開2010-215805(JP,A)
【文献】特開2017-190432(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013258(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体層(A)の少なくとも一方の面側に粘着剤層(B)を有し、発光面を有するフレキシブルディスプレイの前記発光面の背面側に配される発泡体粘着テープであって、
前記発泡体層(A)が、アクリル系エマルジョンを発泡させてなり、
前記発泡体層(A)の厚さが、5μm以上400μm以下であり、
前記発泡体層(A)の密度が、0.40g/cm
3以上1.00g/cm
3以下であり、
前記発泡体層(A)のガラス転移温度が、5℃以上40℃以下であり、
前記粘着剤層(B)が、アクリル重合体と、ロジンエステル系樹脂と、イソシアネート系架橋剤とを含有する組成物からなり、
前記発泡体粘着テープの25%圧縮強度が100kPa以上であり、
前記発泡体粘着テープの下記式(1)により算出される点衝撃吸収率が35%以上
44%以下であることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープ。
点衝撃吸収率(%)={(f
p0-f
p1)/f
p0}×100・・・式(1)
上記式(1)において、f
p1は、ロードセル上に前記発泡体粘着テープを設置し、該発泡体粘着テープの発泡体層(A)面に
20cmの高さから重さ8.3g且つ直径12.5mmの鋼球を落下させた際の衝撃荷重であり、
f
p0は、ロードセル上に前記発泡体粘着テープを設置せずに、前記鋼球を落下させた際の衝撃荷重である。
【請求項2】
前記粘着剤層(B)のゲル分率が、10重量%~60重量%である請求項1に記載のフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープ。
【請求項3】
発泡体層(A)と粘着剤層(B)との間に、更に樹脂フィルム層(C)を有する請求項1又は2に記載のフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープ。
【請求項4】
更に剥離ライナー層(D)を有する請求項1から3のいずれかに記載のフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープ。
【請求項5】
発光面を有するフレキシブルディスプレイと、前記発光面の背面側に配された請求項1から4のいずれかに記載のフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープと、を有することを特徴とするフレキシブルディスプレイ積層物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープ及びフレキシブルディスプレイ積層物に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れ、接着信頼性も高いことから、例えば、OA機器や家電製品等の電子機器の製造場面で広く使用されている。近年、電子機器、とりわけパソコン、デジタルビデオカメラ、電子手帳、携帯電話、PHS、スマートフォン、ゲーム機器、電子書籍等の携帯電子端末には小型化と薄型化とが求められており、これに伴って、前記携帯電子端末を構成する粘着テープ等にもまた、薄型化が求められている。
【0003】
上記のような表示機器には、ガラス基板上に表示素子を形成した、いわゆるリジッドディスプレイが用いられる事が一般的であり、リジッドディスプレイの割れやプーリング(液晶の濃淡の波打ち現象)を防止する目的で、クッション性のある発泡体層を有する粘着テープがディスプレイ背面に貼付されていることが多い(特許文献1参照)。
【0004】
発泡体層を有する粘着テープとしては、例えば、被着体との界面から速やかに気泡が抜け、前記界面に気泡が残存することを防止でき、かつ、接着性・クッション性に優れ、低コストで薄型の粘着テープも提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
一方、近年、柔軟性のある樹脂基板上に表示素子を形成することで、様々な形状に変形が可能なフレキシブルディスプレイの需要が高まり、開発が盛んに行われている。
【0006】
しかしながら、リジッドディスプレイと、フレキシブルディスプレイとは、その柔軟性が異なるため、フレキシブルディスプレイに適した粘着テープの特性は未だ不明であり、フレキシブルディスプレイに適した特性を有する粘着テープが強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-309699号公報
【文献】国際公開第2018/116845号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、フレキシブルディスプレイに適した特性を有するフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープ、及び前記フレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープを有するフレキシブルディスプレイ積層物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 発泡体層(A)の少なくとも一方の面側に粘着剤層(B)を有するフレキシブルディスプレイに用いられる発泡体粘着テープであって、
前記発泡体粘着テープの25%圧縮強度が100kPa以上であり、
前記発泡体粘着テープの下記式(1)により算出される点衝撃吸収率が35%以上であることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープである。
点衝撃吸収率(%)={(fp0-fp1)/fp0}×100 ・・・式(1)
上記式(1)において、fp1は、ロードセル上に前記発泡体粘着テープを設置し、該発泡体粘着テープの発泡体層(A)面に直径12.5mmの鋼球を落下させた際の衝撃荷重であり、
fp0は、ロードセル上に前記発泡体粘着テープを設置せずに、前記鋼球を落下させた際の衝撃荷重である。
<2> 発光面を有するフレキシブルディスプレイと、前記発光面の背面側に配された前記<1>に記載のフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープと、を有することを特徴とするフレキシブルディスプレイ積層物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、フレキシブルディスプレイに適した特性を有するフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープ、及び前記フレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープを有するフレキシブルディスプレイ積層物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、落球試験機を用いた点衝撃吸収試験の概略説明図である。
【
図2】
図2は、試験例1のポリイミド基板への落球評価に使用した銅配線8を設けたポリイミド基板7の概略説明図である。
【
図3】
図3は、本発明のフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープにおける発泡体層(A)の製造方法の一例を表す模式図である。
【
図4】
図4は、実施例及び比較例の発泡体粘着テープの25%圧縮強度[kPa]と、点衝撃吸収率[%]との関係を示すグラフである。グラフ中、「●」は実施例を示し、「▲」は比較例を示す。
【
図5】
図5は、試験例1のポリイミド基板への落球評価における実施例及び比較例の発泡体粘着テープを使用した各ポリイミド基板積層体の打痕深さ[μm]から算出した算術平均値(n=5)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(フレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープ)
本発明のフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープ(以下、単に「発泡体粘着テープ」と略記することがある)は、発泡体層(A)の少なくとも一方の面側に粘着剤層(B)を有し、必要に応じて更にその他の層を有する。
【0013】
なお、本明細書において、「フレキシブル(Flexible) ディスプレイ」とは、柔軟性を備える表示装置を意味する。したがって、前記「フレキシブルディスプレイ」は、繰り返しの折り曲げが可能な「ベンダブル(bendable) ディスプレイ」、折りたたむことが可能な「フォルダブル(foldable) ディスプレイ」、丸めることが可能な「ローラブル(Rallable) ディスプレイ」、湾曲可能な「カーブド(Curved) ディスプレイ」、又は伸縮可能な「ストレッチャブル(Stretchable) ディスプレイ」ともみなすことができ、これらを包括したディスプレイを指す。
【0014】
-発泡体粘着テープの25%圧縮強度-
前記発泡体粘着テープの25%圧縮強度は、100kPa以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、150kPa以上が好ましく、200kPa以上がより好ましく、250kPa以上が特に好ましい。前記発泡体粘着テープの25%圧縮強度が100kPa以上であると、フレキシブルディスプレイの表示側に衝撃が加わった際、前記発泡体粘着テープ自体が変形しながら衝撃を吸収する過程において、その変形量を小さく抑えることができる。したがって、フレキシブルディスプレイに用いられる基板の変形を抑制しつつ、衝撃を吸収することができ、フレキシブルディスプレイにおける表示素子の保護性能に優れる点で有利である。前記発泡体粘着テープの25%圧縮強度の上限値については特に制限はないが、1,000kPa以下であることが好ましい。一方、前記発泡体粘着テープの25%圧縮強度が100kPa未満であると、フレキシブルディスプレイの表示側に衝撃が加わった際、例え衝撃が十分に吸収されたとしても、フレキシブルディスプレイの基板が変形し、フレキシブルディスプレイにおける表示素子を保護することができない。
【0015】
前記発泡体粘着テープの25%圧縮強度は、JIS K 6767に準拠して測定した値を指す。具体的には、25mm角(長さ25mm、幅25mm)に切断した発泡体粘着テープを厚さ約10mmになるまで重ねたものを積層体とする。前記積層体より大きな面積の2枚のステンレス板の間に前記積層体をはさみ、デュアルコラム卓上万能試験機5966型(インストロン社製)を用いて、23℃下で10mm/分間の速度で前記積層体を約7.5mm(もとの厚さの75%分)に圧縮した時の強度である。
なお、前記25%圧縮強度を測定する際の発泡体粘着テープとは、前記発泡体粘着テープが前記その他の層を有する場合は、後述する剥離ライナー層(D)を除去した、前記発泡体層(A)と、前記粘着剤層(B)と、前記剥離ライナー層(D)以外のその他の層との積層物からなる発泡体粘着テープである。
【0016】
-発泡体粘着テープの点衝撃吸収率-
前記発泡体粘着テープの点衝撃吸収率は、35%以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、37%以上が好ましい。前記発泡体粘着テープの点衝撃吸収率が35%以上であると、フレキシブルディスプレイに用いられる基板の変形を抑制でき、フレキシブルディスプレイにおける表示素子の保護性能に優れる点で有利である一方、前記発泡体粘着テープの点衝撃吸収率が35%未満であると、フレキシブルディスプレイの表示側に衝撃が加わった際、衝撃が分散されず、ピンポイントで高い圧力が掛かかってしまい、フレキシブルディスプレイの基板が変形し、フレキシブルディスプレイにおける表示素子を保護することができない。
【0017】
本明細書において、点衝撃吸収率とは、
図1に示す落球試験機を用い、ロードセル6上に配したSUS製試料台5に、発泡体粘着テープの粘着剤層(B)4側の面を貼付し、電磁石1に重さ8.3gの鋼球2(直径12.5mm)を保持し、発泡体層(A)3面から20cmの高さより、鋼球2を発泡体層(A)3面に自由落下させて衝撃荷重を測定し、この衝撃荷重の値から、下記式(1)により算出した値を指す。
点衝撃吸収率(%)={(f
p0-f
p1)/f
p0}×100 ・・・式(1)
上記式(1)において、f
p1は、ロードセル上に前記発泡体粘着テープを設置し、該発泡体粘着テープの発泡体層(A)面に直径12.5mmの鋼球を落下させた際の衝撃荷重であり、
f
p0は、ロードセル上に前記発泡体粘着テープを設置せずに、前記鋼球を落下させた際の衝撃荷重である。
なお、前記点衝撃吸収率を測定する際の発泡体粘着テープとは、前記発泡体粘着テープが前記その他の層を有する場合は、後述する剥離ライナー層(D)を除去した、前記発泡体層(A)と、前記粘着剤層(B)と、前記剥離ライナー層(D)以外のその他の層との積層物からなる発泡体粘着テープである。
【0018】
<発泡体層(A)>
前記発泡体層(A)を構成する発泡体の原料としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、公知の発泡体原料の中から適宜選択することができるが、樹脂エマルジョン、起泡剤、架橋剤を含むことが好ましく、その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0019】
<<樹脂エマルジョン>>
前記樹脂エマルジョンは、少なくとも樹脂及び分散媒を含み、更に必要に応じて、その他の成分を含む。
【0020】
前記樹脂としては、水分散性樹脂であることが好ましい。前記分散媒に分散された樹脂エマルジョンとしては、公知の方法で発泡体を形成できるエマルジョンであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系エマルジョン、スチレン系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョン、エポキシ系エマルジョンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル系エマルジョンが好ましい。
【0021】
前記アクリル系エマルジョン(アクリル樹脂の分散体)を調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重合開始剤、乳化剤、分散安定剤などの存在下に、重合性単量体とし、更に必要に応じて前記重合性単量体と共重合可能なその他の重合性単量体の混合物を共重合させることにより得ることができる。なお、2種以上アクリル系エマルジョンを組み合わせて用いてもよい。
【0022】
前記アクリル系エマルジョンの調製に使用することができる前記重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アルリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボキシル基を有する不飽和結合含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記重合開始剤、乳化剤、分散安定剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
【0024】
前記アクリル系エマルジョンの粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5,000mPa・s~20,000mPa・sであることが好ましく、8,000mPa・s~15,000mPa・sであることがより好ましい。前記アクリル系エマルジョンの粘度が、5,000mPa・s以上であると、成形時の泡保持力が十分となり、より微細なセルが成形でき、粘着強度がより強くなる傾向がある。また、前記アクリル系エマルジョンの粘度が、20,000mPa・s以下であると、成形時に前記発泡体の原料へのせん断力を低減できるため、歪な形のセルが成形することを防げるため、より十分な粘着強度が得られる。
なお、前記アクリル系エマルジョンの粘度は、25℃にてブルックフィールド粘度計で測定した値を指す。
【0025】
前記アクリル系エマルジョンのガラス転移温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低温化での使用時にアクリル樹脂が高硬度化したり、減粘着化したりする点で、-10℃以下であることが好ましい。
なお、前記アクリル系エマルジョンのガラス転移温度は、JIS K 7198に準拠して測定した値を指す。具体的には、動的粘弾性装置(型式「MCR302」、Anton Paar社製)を用い、-80℃から150℃で5℃/1分間で昇温し、周波数1Hzの条件で測定したtanδのピーク値を示す温度をガラス転移温度とする。
【0026】
前記分散媒に対する、前記水分散性樹脂(固形分)の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記分散媒100重量部に対して、30重量部~80重量部が好ましい。前記水分散性樹脂(固形分)の配合量が、前記好ましい範囲内であると、安定な発泡体を成形することができる。
【0027】
なお、本明細書において、エマルジョンの「固形分」を構成する成分は、エマルジョンから分散媒を除いた成分である。具体的には、樹脂の他、界面活性剤やフィラー等のその他の成分を含有したものである。
【0028】
前記発泡体原料における前記樹脂エマルジョンの配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂エマルジョンの全量を基準(固形分量及び非固形分量の合計を100重量部とする)として、10重量部超え90重量部以下が好ましく、20重量部以上80重量部以下がより好ましく、30重量部以上75重量部以下が更に好ましい。一般的に、樹脂エマルジョンの固形分は、30重量部~80重量部であり、40重量部~70重量部が好ましく、45重量部~60重量部が更に好ましい。
【0029】
<<分散媒>>
前記分散媒としては、水を含むことが好ましく、水と水溶性溶剤との混合物であってもよい。
前記水溶性溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、N-メチルピロリドン等の極性溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記発泡体原料中の前記分散媒の使用量としては、特に制限はなく、用途等に応じて適宜選択することができる
【0031】
<<起泡剤>>
前記起泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記アニオン系界面活性剤と前記両性界面活性剤を併用した場合、気泡が微細かつ均一化する。また、アニオン系界面活性剤の分子同士の親水基の電荷が反発し、アニオン系界面活性剤の分子同士がある程度の距離を保っている間に、電気的に中性である両面活性剤がアニオン系界面活性剤の分子の間に入り込むことによって、気泡をより安定化し、気泡のサイズを小さくすることができる。このため、層間剥離強度を向上させることができる。よって、アニオン系界面活性剤と両性界面活性剤を併用することが好ましい。
【0033】
前記アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム石鹸、ひまし油カリウム石鹸、やし油カリウム石鹸、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、やし油アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸アンモニウム、アルキルスルコハク酸ナトリウムなどが好ましい。
【0034】
前記アニオン性界面活性剤のHLBとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂エマルジョンに分散しやすくなる点で、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。
【0035】
前記発泡体原料における前記アニオン性界面活性剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂エマルジョンの全量を基準(固形分量及び非固形分量の合計を100重量部とする)として、1.0重量部~10重量部が好ましく、3重量部~10重量部がより好ましい。前記発泡体原料における前記アニオン性界面活性剤の配合量が、前記好ましい範囲内であると、適切な発泡としやすく、微細なセル構造を成形できる。
【0036】
前記両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ酸型、ベタイン型、アミンオキシド型等の両性界面活性剤などが挙げられる。
【0037】
前記両性界面活性剤のHLBとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、両面活性剤のアニオン系界面活性剤の分子の間への入り込みやすさの点で、10~12のものが好ましい。
【0038】
前記アミノ酸型の両性界面活性剤の具体例としては、N-アルキル若しくはアルケニルアミノ酸又はその塩等が挙げられる。N-アルキル若しくはアルケニルアミノ酸は、チッ素原子にアルキル基又はアルケニル基が結合し、更に1つ又は2つの「-R-COOH」(式中、Rは2価の炭化水素基を示し、好ましくはアルキレン基であり、特に炭素数1~2であることが好ましい。)で表される基が結合した構造を有する。「-R-COOH」が1つ結合した化合物においては、チッ素原子には更に水素原子が結合している。「-R-COOH」が1つのものをモノ体、2つのものをジ体という。前記両性界面活性剤としては、これらモノ体、ジ体のいずれも用いることができる。N-アルキル若しくはアルケニルアミノ酸において、アルキル基、アルケニル基は直鎖状でも分岐鎖状であってもよい。より具体的には、アミノ酸型の両性界面活性剤として、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、トリメチルグリシンナトリウム、ココイルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルメチル-β-アラニンなどが挙げられる。
【0039】
前記ベタイン型の両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン、カルボベタイン、アミドカルボベタイン、アミドベタイン、アルキルアミドベタイン、スルホベタイン、アミドスルホベタイン、ホスホベタインなどが挙げられる。より具体的には、前記ベタイン型の両性界面活性剤として、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジエチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジエチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジエチルアミノヒドロキシスルホベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジエチルアミノヒドロキシスルホベタイン、N-ラウリル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-プロピルスルホベタイン、N-ラウリル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホベタイン、N-ラウリル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシ-1-スルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(2-ラウリル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン2-ステアリル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルヒドロキシスルタインなどが挙げられる。
【0040】
前記アミンオキシド型の両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルジメチルアミン-N-オキシド、オレイルジメチルアミン-N-オキシドなどが挙げられる。
【0041】
前記両性界面活性剤の中でも、ベタイン型の両性界面活性剤を使用することが好ましく、ベタイン型の中でも、アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン、カルボベタインが特に好ましい。
【0042】
前記発泡体原料における前記両性界面活性剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂エマルジョンの全量を基準(固形分量及び非固形分量の合計を100重量部とする)として、0.5重量部~10重量部が好ましく、1重量部~5重量部がより好ましい。前記発泡体原料における前記両性界面活性剤の配合量が前記好ましい範囲内であると、適切な発泡としやすく、微細なセル構造を成形できる。
【0043】
<<架橋剤(硬化剤)>>
前記発泡体の原料として架橋剤を用いると、発泡体の強度を向上させることが可能となる点で好ましい。
【0044】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、公知の架橋剤の中から適宜選択することができ、例えば、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤等を、使用する樹脂配合系が含有する官能基の種類及び、官能基量に応じて適量使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、粘着強度、タック強度、及び層間剥離強度を向上させることができる点で、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤が好ましい。前記イソシアネート系架橋剤及び前記エポキシ系架橋剤は、材料強度を上げることにより、被着体及び多孔質フォームの材料破壊を防ぐことができる。これらの中でも脂肪族イソシアネートがより好ましい。
【0045】
前記発泡体原料中の前記架橋剤の添加量としては、特に制限はなく、用途等に応じて適宜選択することができる。前記架橋剤による架橋手法としては、例えば、物理架橋、イオン架橋、化学架橋などが挙げられ、樹脂エマルジョンの種類に応じて選択することができる。
【0046】
前記発泡体原料における前記架橋剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂エマルジョン(固形分)に対する前記架橋剤の重量比[前記架橋剤/前記樹脂エマルジョン]が、0.01~0.12であることが好ましく、0.025~0.05であることがより好ましい。前記重量比[前記架橋剤/前記樹脂エマルジョン]が前記好ましい範囲内であると、圧縮残留歪みの小さい発泡体を成形することができる。
【0047】
<<その他の添加剤>>
前記その他の添加剤としては、特に制限はなく、公知の添加剤の中から適宜選択することができ、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機及び無機充填剤、着色剤、前記起泡剤以外の界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記起泡剤以外の界面活性剤としては、前記樹脂を分散させるための界面活性剤(「水分散性樹脂分散用界面活性剤」と称することがある)などが挙げられる。前記分散性樹脂分散用界面活性剤は、前記アニオン性界面活性剤と異なり、起泡剤としての効果を有していなくてもよく、選択する樹脂に応じて適宜選択することができる。
【0049】
-発泡体層(A)の厚さ-
前記発泡体層(A)の厚さとしては、特に制限はなく、用途や設計上の要請などに応じて適宜選択することができるが5μm以上500μm以下であることが好ましい。前記発泡体層(A)の厚さが薄すぎる場合には、気泡が均一に分散できなくなったり、衝撃吸収性能が十分ではなくなったりすることがある。一方、前記発泡体層(A)の厚さが厚すぎる場合には、省スペース化された電子・電気機器の限られたスペースに収まらない場合が発生することがある。したがって、前記発泡体層(A)の厚さの下限値としては、60μmが好ましく、70μmがより好ましく、80μmが更に好ましい。また、前記発泡体層(A)の上限値としては、400μmが好ましく、300μmがより好ましく、200μmが更に好ましい。
【0050】
-発泡体層(A)の密度-
前記発泡体層(A)の密度(見かけ密度)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.40g/cm3以上1.00g/cm3以下が好ましい。前記見かけの密度は、発泡体の気泡の包含率の目安であり、前記見かけの密度が小さすぎると、気泡が多すぎるため衝撃吸収性能が低くなる。特に点衝撃吸収性能は著しく低下する。また前記見かけの密度が大きすぎると、前記発泡体の気泡が少なすぎるため衝撃吸収性能が低下する。したがって、前記見かけの密度の下限値としては、0.41g/cm3が好ましく、0.42g/cm3がより好ましく、0.43g/cm3が更に好ましい。また、前記見かけ密度の上限値としては、0.99g/cm3が好ましく、0.98g/cm3がより好ましく、0.97g/cm3が更に好ましい。
なお、前記密度は、JIS K 7222に準拠し、単位体積当たりの重さから計算することによって測定した値を指す。
【0051】
-発泡体層(A)の損失正接tanδ-
前記発泡体層(A)の周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルに基づく損失正接tanδとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.4以上であることが好ましく、0.5以上がより好ましい。前記発泡体層(A)の損失正接tanδが前記好ましい範囲内であると、相対的に弾性的となり、点衝撃吸収性が低下する。例えば、電子・電気機器類を落下させた場合のように衝撃の印加速度が速い場合には、前記発泡体の粘弾性特性は、粘弾性体の温度時間換算測(T-T換算測)に基づき、より低温側の温度範囲の特性を示す。即ち、相対的に弾性的な挙動が強くなり、点衝撃吸収性能は低下する。このため前記23℃における損失正接(tanδ)は大きい方が点衝撃吸収性能は高くなる。
【0052】
なお、前記損失正接tanδは、JIS K 7198に準拠して測定した値を指す。具体的には、動的粘弾性装置(型式「MCR302」、Anton Paar社製)を用い、-80℃から150℃で5℃/1分間で昇温し、周波数1Hzの条件で測定した際の23℃における貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)を測定し、下記式(2)により算出した値を、発泡体層(A)の損失正接tanδとする。
損失正接tanδ=G’’/G’ ・・・式(2)
【0053】
前記貯蔵弾性率は、粘弾性体である前記発泡体の弾性項を表すパラメータであり、加えられた変形エネルギー等を弾性エネルギーとして蓄えることができる能力を表す。一方、前記損失弾性率は、粘弾性体である発泡体の粘性項を表すパラメータであり、加えられた変形エネルギー等を発泡体内部の内部摩擦等によって散逸エネルギーとする能力を表す。また、前記損失正接は、上記式(2)により算出され、前記発泡体が相対的に粘性的であるかという指標である。したがって、前記損失正接が大きい発泡体は相対的に粘性的であり、前記損失正接が小さい発泡体は相対的に粘性的ではなく、即ち弾性的となる。
【0054】
-発泡体層(A)のガラス転移温度-
前記発泡体層(A)のガラス転移温度(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5℃以上40℃以下が好ましい。前記前記発泡体層(A)のガラス転移温度(Tg)が、前記好ましい範囲内であると、点衝撃吸収性が良好となる。一方、前記ガラス転移温度が、5℃未満であると、相対的に粘性的になりすぎるため点衝撃性吸収性が低下することがあり、前記ガラス転移温度が、40℃を超えると、相対的に弾性的になりすぎるため点衝撃吸収性が著しく低下することがある。
なお、前記ガラス転移温度は、JIS K 7198に準拠して測定した前記損失正接tanδのピーク値を示す温度を指す。
【0055】
前記発泡体層(A)のガラス転移温度を制御する方法としては、例えば、前記発泡体原料における樹脂エマルジョンを複数混合する方法などが挙げられる。この時、混合された複数の樹脂エマルジョンのガラス転移温度は、種々の共重合モノマーのホモポリマーのガラス転移温度を測定し、これらのホモポリマーのガラス転移温度で、混合する個々の共重合モノマーの重量分率を除して、混合する個々の共重合モノマーの除数を合算することで、ガラス転移温度の逆数が求められる。ここで、上記種々の共重合モノマーとは、具体的には、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0056】
<<発泡体層(A)の形成方法>>
前記発泡体層(A)を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、発泡体原料調製工程と、発泡工程と、硬化工程と、を含む方法などが挙げられ、更にその他の工程を含んでいてもよい。
【0057】
-発泡体原料調製工程-
前記発泡体原料調製工程は、前記発泡体原料を混合して、該発泡体原料の混合物である樹脂エマルジョン組成物を調製する工程である。
前記発泡体原料を混合する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記発泡体原料中の各成分を混合する混合タンク等の容器内で撹拌しながら混合する方法などが挙げられる。
【0058】
-発泡工程-
前記発泡工程は、前記発泡体原料調製工程で得られた前記樹脂エマルジョン組成物に所定の発泡用気体を添加し、これらを充分に混合させて該樹脂エマルジョン組成物中に気泡が多数存在する状態(「発泡エマルジョン組成物」、「気液混合物」などと称することがある)とする工程である。
前記発泡工程は、通常、前記発泡体原料調製工程で得られた液状の多孔質フォームの発泡体原料混合物と、前記発泡用気体とをミキシングヘッド等の混合装置により充分に混合することで実施される。
【0059】
前記発泡用気体の種類としては、主に空気が使用されるが、その他にも、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを使用することもできる。
【0060】
前記発泡用気体は、前記発泡体中の気泡(セル)を形成するものであり、この発泡用気体の混入量によって、得られる発泡体の発泡倍率及び密度が決まる。前記多孔質フォームの密度を調整するためには、所望の多孔質フォームの密度と、多孔質フォームの原料の体積(例えば、多孔質フォームの原料が注入される成形型の内容積)とから、必要な多孔質フォームの原料の重量を算出し、この重量において所望の体積となるように発泡用気体の量を決定すればよい。
【0061】
前記発泡工程において発泡させる方法としては、例えば、メカニカルフロス(機械発泡)法などが挙げられる。前記メカニカルフロス法は、前記樹脂エマルジョン組成物を攪拌羽根等で攪拌することにより、前記発泡用気体を該樹脂エマルジョン組成物に混入させて発泡させる方法である。
【0062】
前記撹拌に使用する装置としては、特に制限はなく、メカニカルフロス法に一般に用いられる撹拌装置を使用することができ、例えば、ホモジナイザー、ディゾルバー、メカニカルフロス発泡機などが挙げられる。
【0063】
前記メカニカルフロス法によれば、前記樹脂エマルジョン組成物と前記発泡用気体との混合割合を調節することによって、種々の用途に適した密度の多孔質フォームを得ることができる。その他の発泡方法を併用することも可能であるが、化学発泡剤を用いた発泡方法を併用すると、独立泡の割合が高くなることで、密度が大きくなり、多孔質フォームの柔軟性が失われるため、好ましくない。
【0064】
前記樹脂エマルジョン組成物と前記発泡用気体との混合時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、1分間~10分間が好ましく、2分間~6分間がより好ましい。
【0065】
前記樹脂エマルジョン組成物と前記発泡用気体との混合温度としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、常温である。
【0066】
前記樹脂エマルジョン組成物と前記発泡用気体との混合における攪拌速度としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200rpm以上が気泡を細かくすることができる点で好ましく、500rpm以上がより好ましい。また、前記撹拌速度は、発泡機からの発泡物の吐出をスムーズにするために、2,000rpm以下が好ましく、800rpm以下がより好ましい。
【0067】
以上のようにして発泡した樹脂エマルジョン組成物(「発泡エマルジョン組成物」、「気液混合物」などと称することがある)は、例えば、ロールコーター、ドクターナイフ、ドクターロール等の公知の手段により、所望の厚さに合わせたシート状等の発泡体に形成される。
【0068】
なお、前記発泡した樹脂エマルジョン組成物をシート状に成形する際、該発泡した樹脂エマルジョン組成物の上方側から、後述する剥離ライナー層(D)とは異なる離型紙又は離型用処理がなされた樹脂フィルムを供給してもよい。このような離型紙又は離型用処理がなされた樹脂フィルムを供給することにより、発泡した樹脂エマルジョン組成物からなる未硬化層の厚さの調製が容易であり、熱処理後に得られる発泡体層の表面(前記離型紙又は離型用処理がなされた樹脂フィルムと接する面)にスキン層を形成することができる。
【0069】
-硬化工程-
前記硬化工程は、前記発泡エマルジョン組成物を硬化する工程である。
前記発泡エマルジョン組成物の硬化方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。前記発泡エマルジョン組成物は、自己架橋をさせることもできるが、エネルギーを印加してエマルジョンを構成する樹脂を、架橋剤を介して架橋させることにより、発泡体を硬化させてもよい。前記エネルギーを印加する工程としては、特に制限はなく、例えば、加熱工程(熱架橋)などが挙げられる。
【0070】
前記加熱工程では、成形された発泡エマルジョン組成物中の分散媒を蒸発させる。この際の乾燥方法としては、特に制限はなく、例えば、熱風乾燥法、遠赤外線加熱法などが挙げられる。
前記乾燥の温度及び時間についても特に制限はなく、前記乾燥方法などに応じて適宜選択することができ、例えば、80℃~150℃程度で30秒間~3時間程度とすればよい。
【0071】
前記加熱工程において、前記発泡エマルジョン組成物から前記分散媒が蒸発するが、この蒸気が抜ける際の通り道が、多孔質フォームの内部から外部まで連通されることとなる。したがって、前記発泡体層(A)中の発泡体は、この水蒸気が抜ける際の通り道が連続気泡として残るため、多孔質フォーム中に存在する気泡の少なくとも一部が連続気泡となる。ここで、前記発泡工程で混入された前記発泡用気体がそのまま残存している場合には、得られた多孔質フォーム中では独立気泡となり、混入された発泡用気体が、前記加熱工程において蒸気が抜ける際に連通された場合には、得られた多孔質フォーム中では連続気泡となる。即ち、前記多孔質フォーム中の気泡の一部が連続気泡であり、残りの気泡が独立気泡であるという構造となり、連続気泡と独立気泡が混在する半連続気泡構造となる。
【0072】
前記硬化工程において、架橋剤を添加した場合、前記加熱工程では、前記発泡体原料の架橋(硬化)反応を進行及び完了させる。具体的には、前記架橋剤により前記発泡体原料同士が架橋され、硬化した多孔質フォームが形成される。この際の加熱手段としては、前記発泡体原料に充分な加熱を施し、前記発泡体原料を架橋(硬化)させ得るものであれば特に制限はなく、例えば、トンネル式加熱炉などが挙げられる。また、加熱温度及び加熱時間も、前記発泡体原料を架橋(硬化)させることができる温度及び時間であれば、特に制限はなく、例えば、80℃~150℃、好ましくは120℃程度で1時間程度とすればよい。
【0073】
前記発泡体層(A)と、前記粘着剤層(B)とを積層する方法としては、例えば、後述する剥離ライナー層(D)上に前記発泡エマルジョン組成物を塗工し、前記硬化工程により硬化させた後、前記剥離ライナー層(D)を剥離し、前記粘着剤層(B)に積層する方法などが挙げられる。
また、前記発泡体層(A)は、後述する樹脂フィルム層(C)上に形成してもよい。前記樹脂フィルム層(C)上に前記発泡体層(A)を形成する方法としては、例えば、前記樹脂フィルム層(C)上に直接前記発泡エマルジョン組成物を塗工し、前記発泡体層(A)と前記樹脂フィルム層(C)との積層物をそのまま前記粘着剤層(B)に積層する方法などが挙げられる。
また、前記樹脂フィルム層(C)と、前記粘着剤層(B)とがこの順番に並んでいる積層物を予め形成しておき、該樹脂フィルム層(C)の、粘着剤層(B)が存在する側とは反対側の面上に、前記発泡体(A)を積層してもよい。
【0074】
<粘着剤層(B)>
前記粘着剤層(B)は、粘着剤を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0075】
<<粘着剤>>
前記粘着剤としては、特に制限はなく、公知の粘着剤の中から適宜選択することができ、例えば、アクリル系粘着剤樹脂、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤、クリ-プ特性改良型粘着剤、放射線硬化型粘着剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記粘着剤は、アクリル系粘着剤が、接着信頼性に優れるため好ましい。
【0076】
--アクリル系粘着剤--
前記アクリル系粘着剤樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル重合体と、必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤等の添加剤を含有するものなどが挙げられる。
【0077】
前記アクリル重合体は、例えば、(メタ)アクリル単量体を含有する単量体混合物を重合させることによって得られるものを使用することができる。
【0078】
前記(メタ)アクリル単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基を有する単量体又はその無水物;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基を有する単量体;アクリロニトリルなどのシアノ基を有する単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基を有する単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレートなどのヒドロキシル基を有する単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリロイルモルホリン等のアミノ基を有する単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基を有する単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基を有する単量体;2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0079】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、前記アルキル基の炭素原子数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することが好ましく、前記アルキル基の炭素原子数が4~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することがより好ましい。前記アルキル基は、直鎖又は分岐したアルキル基などが挙げられる。
【0080】
前記アクリル基を炭素原子数が4~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ブチルを使用することが、経時的な変化を防止しやすく、良好な接着力を保持できる発泡体粘着テープを得るうえで好ましい。
【0081】
また、前記単量体としては、前記(メタ)アクリル単量体の他に、スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニル等を使用することもできる。
【0082】
前記アクリル重合体の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記単量体を、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合方法で重合させる方法などが挙げられる。これらの中でも、前記アクリル重合体は、溶液重合法で製造することが、アクリル重合体の生産効率を向上するうえで好ましい。
【0083】
前記溶液重合法としては、例えば、前記単量体と、重合開始剤と、有機溶剤とを、好ましくは40℃~90℃の温度下で混合、攪拌し、ラジカル重合させる方法などが挙げられる。
【0084】
前記重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウリル等の過酸化物、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ系熱重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系の光重合開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
前記方法で得たアクリル重合体は、例えば、溶液重合法で製造した場合であれば、有機溶剤に溶解又は分散した状態であってもよい。
【0086】
前記方法で得られたアクリル重合体の重量平均分子量としては、30万~120万であるものを使用することが好ましく、40万~110万であるものを使用することがより好ましく、50万~100万であるものを使用することが、薄型であってもより一層優れた接着力を備えた発泡体粘着テープを得るうえで好ましい。
【0087】
なお、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定され、標準ポリスチレン換算して算出された値を指す。具体的には、前記重量平均分子量は、PC装置(HLC-8329GPC、東ソー株式会社製)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
[測定条件]
・ サンプル濃度:0.5重量%(テトラヒドロフラン(THF)溶液)
・ サンプル注入量:100μL
・ 溶離液:THF
・ 流速:1.0mL/分
・ 測定温度:40℃
・ 本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
・ ガードカラム:TSKgel HXL-H
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準ポリスチレン分子量:1万~2,000万(東ソー株式会社製)
【0088】
前記粘着剤としては、より一層優れた接着力、引張強度及び引張破断強度を備えた粘着剤層(B)を形成するうえで、粘着付与樹脂を含有するものを使用することが好ましい。
【0089】
前記粘着付与樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジン系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、安定化ロジンエステル系粘着付与樹脂、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂、スチレン系粘着付与樹脂等の石油樹脂系粘着付与樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
前記粘着付与樹脂としては、前記ロジン系粘着付与樹脂及び前記石油樹脂系粘着付与樹脂を組み合わせ使用することが、薄型であってもより一層優れた接着力を備えた発泡体粘着テープを得るうえで好ましい。前記ロジン系粘着付与樹脂及び前記石油樹脂系粘着付与樹脂は、とりわけ前記アクリル重合体と組み合せて使用することが好ましく、前記(メタ)アクリル酸ブチルを含有する単量体を重合して得られるアクリル重合体と組み合わせ使用することが、薄型であってもより一層優れた接着力を備えた発泡体粘着テープを得るうえで好ましい。
【0091】
また、前記粘着付与樹脂としては、前記粘着剤の初期接着力をより一層向上させるうえで、常温で液状の粘着付与樹脂を使用することが好ましい。常温で液状の粘着付与樹脂としては、例えば、プロセスオイル、ポリエステル系可塑剤、ポリブテン等の低分子量の液状ゴム、テルペンフェノール樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記テルペンフェノール樹脂の市販品としては、例えば、商品名「YP-90L」(ヤスハラケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0092】
前記粘着付与樹脂の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記アクリル重合体100重量部に対し、20重量部~60重量部の範囲で使用することが好ましく、30重量部~55重量部の範囲で使用することが、より一層優れた接着力を備えた発泡体粘着テープを得るうえでより好ましい。
【0093】
<<その他の成分>>
前記粘着剤層(B)における前記その他の成分としては、例えば、前記粘着剤樹脂以外のポリマー成分、架橋剤、老化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、可塑剤、軟化剤、難燃剤、金属不活性剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機系充填剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記架橋剤を使用することが、前記粘着剤層(B)のゲル分率を好適な範囲に調整することができ、その結果、前記粘着剤の経時的な変化を防止しやすく、優れた接着力を備えた発泡体粘着テープを得ることができるため好ましい。
前記粘着剤層(B)における前記その他の成分の含有量としては、前記発泡体粘着テープの特性を損なわない範囲で適宜選択することができる。
【0094】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記架橋剤は、アクリル重合体の製造後に混合し、架橋反応を進行させるタイプの架橋剤が好ましく、アクリル重合体との反応性に富むイソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤を使用することがより好ましい。
【0095】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート付加物を使用することが好ましい。前記トルエンジイソシアネート付加物とは、分子中にトルエンジイソシアネートに由来する構造を有するものであり、市販品でいえば、例えば、商品名「コロネートL」(日本ポリウレタン工業株式会社製)などが挙げられる。
【0096】
前記イソシアネート系架橋剤を使用する場合、前記アクリル重合体としては、水酸基を有するアクリル重合体を使用することが好ましい。前記水酸基を有するアクリル重合体は、その製造に使用する単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル等を使用することができ、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルを使用することがより好ましい。
【0097】
また、前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、商品名「テトラッドX」、商品名「テトラッドC」(いずれも、三菱ガス化学株式会社製)や、E-05X(綜研化学株式会社製)などを使用することができる。
【0098】
前記エポキシ架橋剤を使用する場合、前記アクリル重合体としては、酸基を有するアクリル重合体を使用することが好ましい。前記酸基を有するアクリル重合体は、その製造に使用する単量体として、例えば(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などを使用することが好ましく、(メタ)アクリル酸を使用することがより好ましい。
【0099】
前記粘着剤は、必要に応じて溶媒を含有するものを使用することが好ましい。前記粘着剤の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mPa・s~1,000mPa・sの範囲に調整されたものを使用することが好ましく、1mPa・s~200mPa・sの範囲に調整されたものを使用することがより好ましく、10mPa・s~100mPa・sの範囲に調整されたものを使用することが更に好ましい。
【0100】
-粘着剤層(B)のゲル分率-
前記粘着剤層(B)のゲル分率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10重量%~60重量%のゲル分率を有するものを使用することが好ましく、20重量%~55重量%のゲル分率を有するものを使用することがより好ましく、30重量%~50重量%のゲル分率を有するものを使用することが、薄型であっても経時的な変化を防止しやすく、熱伝導性(放熱性)や耐熱性や接着力等の性能低下をより効果的に防止できるためより好ましい。
【0101】
なお、前記ゲル分率は、下記に示す方法で測定した値を指す。
(1)剥離ライナーの離型処理面に、乾燥後の厚さが50μmになるように、前記粘着剤、更に必要に応じて前記その他の成分を塗工したものを、100℃の環境下で3分間乾燥した後、40℃の環境下で2日間エージングさせることによって粘着剤層(B)を形成する。
(2)前記粘着剤層(B)を長さ50mm及び幅50mmの正方形に裁断したものを試験片とする。
(3)上記試験片の重量(G1)を測定した後、23℃の環境下で、上記試験片をトルエンに24時間浸漬さる。
(4)前記浸漬後、前記試験片とトルエンとの混合物を、300メッシュ金網を用いて濾過することにより分離し、トルエンへの不溶成分を抽出する。前記不溶成分を110℃の環境下で1時間乾燥させたものの重量(G2)を測定する。
(5)前記重量(G1)と前記重量(G2)に基づき、下記式(3)により前記ゲル分率を算出することができる。
ゲル分率(重量%)=(G2/G1)×100 ・・・式(3)
【0102】
-粘着剤層(B)の動的粘弾性-
前記粘着剤層(B)の、周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルに基づく損失正接のピーク温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、-30℃~20℃であることが好ましく、-20℃~10℃であることがより好ましく、-10℃~5℃であることが、良好な接着力を保持でき、熱伝導性(放熱性)や耐熱性や接着力等の性能低下をより効果的に防止できるためより好ましい。
【0103】
前記動的粘弾性では、粘弾性試験機(商品名「アレス2KSTD」、レオメトリックス社製)を用い、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、周波数1Hzでの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)とを測定する。前記損失正接は、下記式(2)により算出される。上記ピーク温度は、測定温度領域(-50℃から150℃)に対するtanδのスペクトルで確認されたピーク温度を指す。
損失正接tanδ=G’’/G’ ・・・式(2)
【0104】
前記試験片としては、前記粘着剤層(B)の形成に使用する粘着剤を用いて形成された、厚さ0.05mm~2.5mmの粘着剤層(B)を使用することができる。前記試験片は、形成した粘着剤層(B)を複数積層し、厚さ0.05mm~2.5mmとしたものであってもよい。また、前記試験片としては、前記発泡体粘着テープを複数積層したもののうち、粘着剤層(B)の合計厚さが0.05mm~2.5mmであるものを使用することもできる。上記異なる構成の試験片を使用した場合、上記tanδの値は変化するものの、前記試験片中に占める前記粘着剤層(B)の合計厚さが同一である場合には、前記ピーク温度は実質変化しない。そのため、上記ピーク温度の測定では、いずれの試験片を使用してもよい。
【0105】
-粘着剤層(B)の厚さ-
前記粘着剤層(B)の厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm~20μmのものを使用することが好ましく、2μm~15μmのものを使用することが、前記発泡体粘着テープの熱伝導性や耐熱性や接着力等の性能低下をより効果的に防止できるためより好ましい。
【0106】
<<粘着剤層(B)の形成方法>>
前記粘着剤層(B)を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒートプレス法、押し出し成型によるキヤスト法、一軸延伸法、逐次二次延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法、チューブ法、カレンダー法、溶液法などが挙げられる。これらの中でも、溶液法が好ましい。
【0107】
前記溶液法としては、例えば、ロールコーター等で剥離ライナー上に前記粘着剤、更に必要に応じて前記その他の成分を含む溶液を塗布する方などが挙げられる。
【0108】
前記粘着剤層(B)は、前記発泡体層(A)の少なくとも一方の面側に配されている限り、特に制限はなく、使用目的などに応じて適宜選択することができ、前記発泡体層(A)の一方の面のみに配されていてもよく、前記発泡体層(A)の両面に配されていてもよい。
前記発泡体粘着テープが、前記発泡体層(A)の両面側に前記粘着剤層(B)を有する場合、両面に配された前記粘着剤層(B)は、それぞれ同一の組成やゲル分率であってもよく、異なる組成やゲル分率であってもよい。
【0109】
前記粘着剤層(B)は、前記発泡体粘着テープの全体に形成されていてもよく、前記発泡体粘着テープを、前記発泡体層(A)の一方の面側から観察した際に、略正方形、略長方形、略台形、略ひし形等の略四角形状;略六角形状;略円形状等の形状の粘着部を有するもので構成されていてもよい。前記粘着剤層(B)が、前記粘着部を有する場合、被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、かつ、良好な接着力を保持できる。
前記形状の粘着部としては、例えば、国際公開第2018/116845号に記載のものなどが挙げられる。
【0110】
<その他の層>
前記その他の層としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂フィルム層(C)、剥離ライナー層(D)などを有することが好ましい。また、プライマー層、帯電防止層、不燃層、加飾層、導電層、熱伝導層、離型層などを有していてもよい。
【0111】
<<樹脂フィルム層(C)>>
前記発泡体粘着テープは、前記発泡体層(A)と前記粘着剤層(B)との間に前記樹脂フィルム層(C)を有することが、前記発泡体粘着テープに強度を持たせることができる点で好ましい。
【0112】
前記樹脂フィルム層(C)としては、特に制限はなく、公知の樹脂フィルムの中から適宜選択することができ、例えば、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性、強度に優れ、低コストである点で、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0113】
前記樹脂フィルム層(C)の厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm~100μmのものが好ましく、1.5μm~50μmのものがより好ましく、1.5μm~6μmのものが、薄型でクッション性を低下させない点で更に好ましい。
【0114】
前記樹脂フィルム層(C)を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、適宜選択することができ、例えば、前記粘着剤層(B)上に前記樹脂フィルム層(C)を重ね、ラミネーターを用いて貼付して積層する方法などが挙げられる。
【0115】
<<剥離ライナー層(D)>>
前記発泡体粘着テープは、更に前記剥離ライナー層(D)を有することが、運搬中や使用前の前記発泡体層(A)や前記粘着剤層(B)へのダメージを防止することができる点で好ましい。なお、前記剥離ライナー層(D)は、前記発泡体粘着テープの使用時に除去されるものである。
【0116】
前記剥離ライナー層(D)を構成する材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙;ポリエステル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン(二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、一軸延伸ポリプロピレン(CPP))、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム;前記紙と樹脂フィルムとを積層したラミネート紙などが挙げられる。また、前記紙はクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものであってもよく、前記材料はシリコーン系樹脂等の公知の離型剤により表面処理を行ったものであってもよい。
【0117】
前記剥離ライナー層(D)における樹脂フィルムの厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25μm~100μmが好ましく、50μm~100μmがより好ましい。前記樹脂フィルムの厚さが前記好ましい範囲内であると、前記発泡体層(A)を形成する際に発泡体層(A)ムラが発生しにくい点で有利である。
【0118】
前記剥離ライナー層(D)における前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、シリコーン系のものが剥離力の調整が容易なため好ましい。
【0119】
前記剥離ライナー層(D)を配する順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記発泡体粘着テープの片面に前記粘着剤層(B)が配されている場合は、前記粘着剤層(B)の前記発泡体層(A)を有する側とは反対側の面に配する構成([発泡体層(A)/粘着剤層(B)/剥離ライナー層(D)]とする構成)や、前記発泡体層(A)の前記粘着剤層(B)を有する側とは反対側の面に配する構成([剥離ライナー層(D)/発泡体層(A)/粘着剤層(B)]とする構成)、前記粘着剤層(B)及び前記発泡体層(A)がいずれも剥離ライナー層(D)と隣接する構成([剥離ライナー層(D)/発泡体層(A)/粘着剤層(B)/剥離ライナー層(D)]とする構成)などが挙げられる。
また、前記発泡体粘着テープの両面に前記粘着剤層(B)が配されている場合は、[着剤層(B)/発泡体層(A)/粘着剤層(B)/剥離ライナー層(D)]とする構成、[剥離ライナー層(D)/粘着剤層(B)/発泡体層(A)/粘着剤層(B)]とする構成、[剥離ライナー層(D)/粘着剤層(B)/発泡体層(A)/粘着剤層(B)/剥離ライナー層(D)]とする構成などが挙げられる。
【0120】
前記剥離ライナー層(D)を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から、適宜選択することができ、前記剥離ライナー層(D)が、前記粘着剤層(B)の前記発泡体層(A)を有する側とは反対側の面に配する構成である場合は、前記剥離ライナー層(D)上に直接前記粘着剤層(B)を形成する方法、前記粘着剤層(B)に前記剥離ライナー層を配し、公知の方法でプレス等により積層する方法などが挙げられる。
【0121】
-発泡体粘着テープの厚さ-
前記発泡体粘着テープの厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、特に制限はなく、前記発泡体層(A)及び前記粘着剤層(B)の厚さなどに応じて適宜選択することができるが、6μm~520μmであることが好ましい。
【0122】
前記発泡体粘着テープにおける各層の厚さは、該発泡体粘着テープの厚み方向の断面を電子顕微鏡で観察することで測定することができる。具体的には、前記発泡体粘着テープを液体窒素中に1分間浸漬した後、ピンセットを用いて液体窒素中で、前記発泡体粘着テープの幅方向を折り目として折り曲げて割り、該発泡体粘着テープの厚み方向の割断面観察用の切片を作製する。前記切片をデシケータ内で常温に戻した後、前記割断面に対して電子線が垂直に入射するように試料台に固定し、電子顕微鏡(Miniscope(登録商標) TM3030Plus、日立ハイテクノロジー株式会社製)を用いて、前記割断面の観察を行う。電子顕微鏡のスケールを元に、前記発泡体粘着テープにおける各層の厚さを10箇所測定し、その算術平均値を各層の厚さとする。
【0123】
-発泡体粘着テープの構成-
前記発泡体粘着テープの構成としては、発泡体層(A)の少なくとも一方の面側に粘着剤層(B)を有する限り、特に制限はなく、前記各層が、それぞれ複数層設けられていてもよい。例えば、[発泡体層(A)/粘着剤層(B)/発泡体層(A)/粘着剤層(B)]の構成であってもよく、[剥離ライナー層(D)/発泡体層(A)/樹脂フィルム層(C)/粘着剤層(B)/剥離ライナー層(D)]の構成や、[剥離ライナー層(D)/粘着剤層(B)/樹脂フィルム層(C)/発泡体層(A)/樹脂フィルム層(C)/粘着剤層(B)/剥離ライナー層(D)]の構成などが挙げられる。
【0124】
<フレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープの製造方法>
前記フレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープを製造する方法としては、前記発泡体層(A)及び前記粘着剤層(B)を有する限り、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができるが、発泡体層(A)形成工程と、粘着剤層(B)形成工程とを含むことが好ましく、更に必要に応じて、樹脂フィルム層(C)形成工程、剥離ライナー層(D)形成工程等のその他の層形成工程を含む。また、前記発泡体層(A)形成工程と、前記粘着剤層(B)形成工程とを同時に行う多層同時形成工程により製造することもできる。
【0125】
<<発泡体層(A)形成工程>>
前記発泡体層(A)形成工程は、前記発泡体層(A)を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記「<<発泡体層(A)の形成方法>>」に記載した方法と同様の方法などが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0126】
<<粘着剤層(B)形成工程>>
前記粘着剤層(B)形成工程は、前記粘着剤層(B)を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記「<<粘着剤層(B)の形成方法>>」に記載した方法と同様の方法などが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0127】
<<樹脂フィルム層形成工程>>
前記樹脂フィルム層(C)形成工程は、前記樹脂フィルム層(C)を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記「<<樹脂フィルム層(C)>>」に記載した樹脂フィルム層(C)の形成方法と同様の方法などが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0128】
<<剥離ライナー層(D)形成工程>>
前記剥離ライナー層(D)形成工程は、前記剥離ライナー層(D)を形成することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記「<<剥離ライナー層(D)>>」に記載した剥離ライナー層(D)の形成方法と同様の方法などが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0129】
前記発泡体粘着テープは、表示面への衝撃に起因する表示素子の変形と、それに伴う回路破損等の不良発生を抑制することで、フレキシブル表示デバイスを効果的に保護することができる。
【0130】
(フレキシブルディスプレイ積層物)
本発明のフレキシブルディスプレイ積層物は、発光面を有するフレキシブルディスプレイと、前記発光面の背面側に配された本発明の前記フレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープと、を少なくとも有し、必要に応じて、更にその他の要素を有する。
前記フレキシブルディスプレイは、フレキシブル基板、回路等の通常フレキシブルディスプレイとして機能する公知の要素を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0131】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0132】
(調製例1-1:発泡体原料1の調製)
樹脂エマルジョンb(アクリル共重合体、固形分45%、商品名「ボンコートED-85E」、DIC株式会社製)80重量部及び樹脂エマルジョンc(アクリル共重合体、固形分60%、商品名「ボンコートAC-501」、DIC株式会社製)20重量部を主剤として使用し、前記樹脂エマルジョンの全量を基準(固形分量及び非固形分量の合計を100重量部とする)として、界面活性剤1(ステアリン酸アンモニウム、固形分30%)3重量部、界面活性剤2(アルキルスルコハク酸ナトリウム、固形分35%)3重量部、界面活性剤3(アルキルベタイン、固形分30%)1重量部、及び架橋剤(疎水系HDIイソシアヌレート(官能基数3.5)、固形分100%)2重量部を混合して発泡体原料1を調製した。
【0133】
(調製例1-2:発泡体原料2の調製)
調製例1-1の発泡体原料1の調製において、主剤を、樹脂エマルジョンb 80重量部及び樹脂エマルジョンc 20重量部から、樹脂エマルジョンb 60重量部及び樹脂エマルジョンd(アクリル共重合体、固形分60%、商品名「ボンコートS-5」、DIC株式会社製)40重量部に変更したこと以外は、調製例1-1と同様の方法で、調製例1-2の発泡体原料2を調製した。
【0134】
(調製例1-3:発泡体原料3の調製)
調製例1-1の発泡体原料1の調製において、主剤を、樹脂エマルジョンb 80重量部及び樹脂エマルジョンc 20重量部から、樹脂エマルジョンa(アクリル共重合体、固形分55%、商品名「ACOUSTICRYL AV1331」、ダウ・ケミカル社製)100重量部に変更したこと以外は、調製例1-1と同様の方法で、調製例1-3の発泡体原料3を調製した。
【0135】
(調製例1-4:発泡体原料4の調製)
調製例1-1の発泡体原料1の調製において、主剤を、樹脂エマルジョンb 80重量部及び樹脂エマルジョンc 20重量部から、樹脂エマルジョンa 50重量部及び樹脂エマルジョンe(アクリル共重合体、固形分60%、商品名「ボンコートR-510-E」、DIC株式会社製)50重量部に変更したこと以外は、調製例1-1と同様の方法で、調製例1-4の発泡体原料4を調製した。
【0136】
(調製例1-5:発泡体原料5の調製)
調製例1-1の発泡体原料1の調製において、主剤を、樹脂エマルジョンb 80重量部及び樹脂エマルジョンc 20重量部から、樹脂エマルジョンf(ポリエーテルカーボネート系ウレタンエマルジョン、固形分60%、商品名「インプラニール(登録商標)」、住化コベストロウレタン株式会社製)100重量部に変更したこと以外は、調製例1-1と同様の方法で、調製例1-5の発泡体原料5を調製した。
【0137】
(調製例2:粘着剤bの調製)
n-ブチルアクリレート97.98重量部と、アクリル酸2重量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.02重量部とを、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を重合開始剤として、酢酸エチル溶液中で、80℃で8時間溶液重合させることによって、重量平均分子量90万のアクリル重合体を得た。
前記アクリル重合体100重量部に対して、重合ロジンエステル(商品名「D-135」、荒川化学工業株式会社製)5重量部と、不均化ロジンエステル(商品名「KE-100」、荒川化学工業株式会社製)20重量部と、石油樹脂(商品名「FTR(登録商標)6100」、三井化学株式会社製)25重量部とを混合し、更に酢酸エチルを加えて固形分40重量%に調整した粘着剤溶液を得た。
前記粘着剤溶液と、イソシアネート架橋剤(商品名「NC40」、DIC株式会社製)2.0重量部とを混合し撹拌することによって、粘着剤bを得た。
【0138】
(実施例1:発泡体粘着テープ1の製造)
<粘着剤層(B)の作製>
厚さ50μmのポリステルフィルムの表面にシリコーン系剥離処理面を有する剥離ライナー(グレード「J0」、剥離荷重50mN/50mm幅、ニッパ株式会社製)に、ロールコーターを用いて調製例2の粘着剤bを塗工し、100℃で1分間乾燥させることによって厚さ2μmの粘着剤層(B)と剥離ライナー層(D)とからなる積層物aを得た。
【0139】
-粘着剤層(B)のゲル分率の測定-
剥離ライナーの離型処理面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように粘着剤bを塗工したものを、100℃の環境下で3分間乾燥した後、40℃の環境下で2日間エージングさせることによって粘着剤層(B)を形成した。前記粘着剤層(B)を縦50mm及び横50mmの正方形に裁断したものを試験片とした。
前記試験片の重量(G1)を測定した後、23℃の環境下で、前記試験片をトルエンに24時間浸漬させた。前記浸漬後、前記試験片とトルエンとの混合物を、300メッシュ金網を用いて濾過することによって、トルエンへの不溶成分を抽出した。前記不溶成分を110℃の環境下で1時間乾燥させたものの重量(G2)を測定した。
下記式(3)により算出した粘着剤層(B)のゲル分率は、40重量%であった。
ゲル分率(重量%)=(G2/G1)×100 ・・・式(3)
【0140】
-粘着剤層(B)の動的粘弾性の測定-
剥離ライナーの離型処理面に、乾燥後の厚さが50μmとなるように粘着剤bを塗工ししたものを、100℃の環境下で3分間乾燥した後、40℃の環境下で2日間エージングさせることによって粘着剤層(B)を形成した。前記粘着剤層(B)を総厚さが2mmとなるまで重ね合わせたものを試験片とした。
次に、粘弾性試験機(商品名「アレス2KSTD」、レオメトリックス社製)を用い、直径7.9mmの平行円盤形の測定部に前記試験片を挟み込み、周波数1Hz、昇温時間1℃/1分間の条件で-50℃から150℃までの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)を測定した。
下記式(2)により算出した粘着剤層(B)の損失正接tanδのピーク温度は、0℃であった。
損失正接tanδ=G’’/G’ ・・・式(2)
て厚さ2μmの粘着剤層(B)を得た。
【0141】
<積層物bの作製>
前記積層物aの粘着剤層(B)面に、樹脂フィルム層(C)としての2μmのポリエステルフィルム(商品名「K100-2.0W」、三菱樹脂株式会社製)を重ね、ラミネーターを用いて線圧3N/mmで貼付し、積層物bとした。この積層物bを40℃で2日間養生した。
【0142】
<発泡体層(A)1の作製>
図3に示すように、調製例1-1で調製した発泡体原料1を、オークスミキサに配設されたチャンバー9に投入した。そして、同時に、フォーム層の密度が700kg/m
3となるよう窒素ガスを注入した。次いで、前記チャンバー9において、発泡体原料1と窒素ガスを撹拌し、泡化された気液混合物13を調製した。
5m/分間の速度で送出された、前記剥離ライナー層(D)と、前記粘着剤層(B)と、前記樹脂フィルム層(C)とからなる積層物b12における前記樹脂フィルム層(C)上に、前記気液混合物13を供給し、流涎する該気液混合物の表面に、その上方側(前記樹脂フィルム層(C)と接する側とは反対側)から前記積層物b12と同じ速度で剥離紙14(商品名「スミリースSL-70S(U2)」、住化加工紙株式会社製)を供給し、ロールコーター10により前記気液混合物13の厚さが100μmになるように調整し、前記気液混合物13からなる未硬化層を形成した。
前記剥離ライナー層(D)と、前記粘着剤層(B)と、前記樹脂フィルム層(C)と、前記未硬化層と、前記剥離紙とからなる積層物cを、遠赤外線ヒーターにより150℃の加熱炉11に入れ1分間加熱し、発泡体層A1を得た。
次いで、積層物cから剥離紙14を剥離し、前記剥離ライナー層(D)と、前記粘着剤層(B)と、前記樹脂フィルム層(C)と、前記発泡体層(A)1とが接合された発泡体粘着テープ1を得た。
【0143】
(実施例2:発泡体粘着テープ2の製造)
実施例1において、<発泡体層(A)1の作製>を、以下の<発泡体層(A)2の作製>に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡体粘着テープ2を得た。
【0144】
<発泡体層(A)2の作製>
実施例1の<発泡体層(A)1の作製>において、発泡体原料1を、調製例1-2で調製した発泡体原料2に変更して発泡体層(A)2を得たこと以外は、実施例1の<発泡体層(A)1の作製>と同様の方法で、前記剥離ライナー層(D)と、前記粘着剤層(B)と、前記樹脂フィルム層(C)と、前記発泡体層(A)2とが接合された発泡体粘着テープ2を得た。
【0145】
(比較例1:発泡体粘着テープ3の製造)
実施例1において、<発泡体層(A)1の作製>を、以下の<発泡体層(A)3の作製>に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡体粘着テープ3を得た。
【0146】
<発泡体層(A)3の作製>
実施例1の<発泡体層(A)1の作製>において、発泡体原料1を、調製例1-3で調製した発泡体原料3に変更して発泡体層(A)3を得たこと以外は、実施例1の<発泡体層(A)1の作製>と同様の方法で、前記剥離ライナー層(D)と、前記粘着剤層(B)と、前記樹脂フィルム層(C)と、前記発泡体層(A)3とが接合された発泡体粘着テープ3を得た。
【0147】
(比較例2:発泡体粘着テープ4の製造)
実施例1において、<発泡体層(A)1の作製>を、以下の<発泡体層(A)4の作製>に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡体粘着テープ4を得た。
【0148】
<発泡体層(A)4の作製>
実施例1の<発泡体層(A)1の作製>において、発泡体原料1を、調製例1-4で調製した発泡体原料4に変更して発泡体層(A)4を得たこと以外は、実施例1の<発泡体層(A)1の作製>と同様の方法で、前記剥離ライナー層(D)と、前記粘着剤層(B)と、前記樹脂フィルム層(C)と、前記発泡体層(A)4とが接合された発泡体粘着テープ4を得た。
【0149】
(比較例3:発泡体粘着テープ5の製造)
実施例1において、<発泡体層(A)1の作製>を、以下の<発泡体層(A)5の作製>に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で発泡体粘着テープ5を得た。
【0150】
<発泡体層(A)5の作製>
実施例1の<発泡体層(A)1の作製>において、発泡体原料1を、調製例1-5で調製した発泡体原料5に変更し、窒素ガスの注入条件を、フォーム層の密度が700kg/m3となるよう窒素ガスを注入したことから、フォーム層の密度が400kg/m3となるよう、窒素ガスを注入することに変更して発泡体層(A)5を得たこと以外は、実施例1の<発泡体層(A)1の作製>と同様の方法で、前記剥離ライナー層(D)と、前記粘着剤層(B)と、前記樹脂フィルム層(C)と、前記発泡体層(A)5とが接合された発泡体粘着テープ5を得た。
【0151】
実施例1及び2、並びに、比較例1~3の発泡体粘着テープ1~5、並びに、発泡体層(A)1~(A)5について、以下の物性値を以下に示す方法で測定した。
【0152】
-各層の厚さの測定-
発泡体粘着テープ1~5から剥離ライナー層(D)を除去し、それぞれ液体窒素中に1分間浸漬した後、ピンセットを用いて液体窒素中で、各発泡体粘着テープの幅方向を折り目として折り曲げて割り、前記各発泡体粘着テープの厚み方向の割断面観察用の切片を作製した。前記切片をデシケータ内で常温に戻した後、前記割断面に対して電子線が垂直に入射するように試料台に固定し、電子顕微鏡(Miniscope(登録商標) TM3030Plus、日立ハイテクノロジー株式会社製)を用いて、前記割断面の観察を行った。電子顕微鏡のスケールを元に、発泡体粘着テープ1~5における各層の厚さを10箇所測定し、その算術平均値を各層の厚さとした。結果を下記表1に示す。
【0153】
-発泡体層(A)の密度の測定-
発泡体粘着テープ1~5における発泡体層(A)1~(A)5の密度は、JIS K 7222に準拠し、単位体積当たりの重さから計算することによって測定した。結果を下記表1に示す。
【0154】
-発泡体層(A)の損失正接Tanδ及びガラス転移温度Tgの測定-
発泡体粘着テープ1~5における発泡体層(A)1~(A)5の動的粘弾性は、JIS K 7198に準拠して測定した。具体的には、動的粘弾性装置(型式「MCR302」、Anton Paar社製)を用い、-80℃から150℃で5℃/1分間で昇温し、周波数1Hzの条件で測定した際の23℃における貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定した。前記式(2)と同様に、前記損失弾性率を前記貯蔵弾性率で除した値を、発泡体層(A)の損失正接tanδとした。また、tanδのピーク値を示す温度を発泡体層(A)のガラス転移温度Tgとした。結果を下記表1に示す。
【0155】
-発泡体粘着テープの25%圧縮強度の測定-
発泡体粘着テープ1~5の25%圧縮強度は、JIS K 6767に準拠して測定した。具体的には、25mm角(長さ25mm、幅25mm)に切断した各発泡体粘着テープから剥離ライナー層(D)を除去し、厚さ約10mmになるまで重ねたものを積層体とした。前記積層体より大きな面積の2枚のステンレス板の間に前記積層体をはさみ、デュアルコラム卓上万能試験機5966型(インストロン社製)を用いて、23℃下で10mm/分間の速度で前記積層体を約7.5mm(もとの厚さの75%分)に圧縮した時の強度を測定した。結果を下記表1及び
図4に示す。
【0156】
-発泡体粘着テープの点衝撃吸収率の測定-
発泡体粘着テープ1~5の点衝撃吸収率は、
図1に示す落球試験機を用い、以下に示す点衝撃吸収試験により測定した。具体的には、各発泡体粘着テープから剥離ライナー層(D)を除去し、ロードセル6上に配したSUS製試料台5に、粘着剤層(B)4側の面を貼付した。次に、電磁石1に重さ8.3gの鋼球2(直径12.5mm)を保持し、発泡体層(A)3面から20cmの高さより、鋼球2を発泡体層(A)3面に自由落下させ、衝撃荷重を測定した。発泡体粘着テープの点衝撃吸収率は、前記衝撃荷重の値から、下記式(1)により算出した。結果を下記表1及び
図4に示す。なお、
図4のグラフ中、「●」は実施例を示し、「▲」は比較例を示す。
点衝撃吸収率(%)={(f
p0-f
p1)/f
p0}×100 ・・・式(1)
上記式(1)において、f
p1は、ロードセル上に前記発泡体粘着テープを設置し、該発泡体粘着テープの発泡体層(A)面に直径12.5mmの鋼球を落下させた際の衝撃荷重であり、
f
p0は、ロードセル上に前記発泡体粘着テープを設置せずに、前記鋼球を落下させた際の衝撃荷重である。
【0157】
(試験例1:ポリイミド基板への落球評価)
図2に示すように、厚さ125μmのポリイミドフィルム基板(商品名「カプトン(登録商標)500H」、東レ・デュポン株式会社製)7の片面に、厚さ300nm、配線幅100μm、配線間隔400μmの格子状に銅配線8を設けたポリイミド基板を作製した。
実施例1及び2、並びに、比較例1~3の発泡体粘着テープ1~5より、それぞれ剥離ライナー層(D)を除去し、粘着剤層(B)面と前記ポリイミド基板の配線を設けていない面とを貼り合わせて、ポリイミド基板積層体を作製した。
前記ポリイミド基板積層体を5cm角(長さ5cm、幅5cm)に切り出したものを、銅配線側を上に向けて厚さ10mmの強化ガラス板上に設置し、前記点衝撃吸収率の測定と同様にして、重さ8.3gの鋼球(直径12.5mm)を、前記ポリイミド基板の銅配線面から20cmの高さより、前記銅配線側の面に自由落下させた。
白色干渉計(VertScan(登録商標)2.0 R3300G Lite、菱化システム株式会社製)を用いて、落球によりポリイミド基板積層体に生じた打痕を真上から観察し、前記打痕を中心とした3次元高さを測定した。次に、解析ソフトウェア(VS-Viewer、菱化システム株式会社製)を使用し、前記打痕中心の高さと、前記打痕中心から半径3mmの円周上の任意の点の高さとの差をポリイミド基板打痕深さとした。この落球評価をポリイミド基板積層体5枚に対して行い、5枚のポリイミド基板積層体におけるポリイミド基板打痕深さから算出した算術平均値を下記表1及び
図5に示す。
【0158】
また、前記落球後のポリイミド基板積層体の銅配線側を、光学顕微鏡で観察し、銅配線の破断の有無を目視で評価し、下記評価基準に基づき評価した結果も下記表1に示す。
[断線評価]
○:ポリイミド基板上の銅配線の破断がなかった
×:ポリイミド基板上の銅配線の破断が1箇所以上あった
【0159】
(試験例2:ガラス基板への落球評価)
前記試験例1と同様に、厚さ1mm、50mm角(長さ50mm、幅50mm)のガラス基板の片面に、厚さ300nm、配線幅100μm、配線間隔400μmの格子状に銅配線8を設けたガラス基板を作製した。
実施例1及び2、並びに、比較例1~3の発泡体粘着テープ1~5より、それぞれ剥離ライナー層(D)を除去し、粘着剤層(B)面と前記ガラス基板の配線を設けていない面とを貼り合わせて、ガラス基板積層体を作製した。
前記ガラス基板積層体を、銅配線側を上に向けて厚さ10mmの強化ガラス板上に設置し、前記点衝撃吸収率の測定と同様にして、重さ8.3gの鋼球(直径12.5mm)を、前記ガラス基板の銅配線面から20cmの高さ(16.3mJの位置エネルギー)より、前記銅配線側の面に自由落下させた。
【0160】
前記落球後のガラス基板積層体におけるガラス基板の割れを目視にて確認し、下記評価基準に基づき評価した結果を下記表1に示す。
[割れ評価]
○:ガラス基板に割れがなかった
×:ガラス基板に割れがあった
【0161】
また、前記落球後のガラス基板積層体の銅配線側を、光学顕微鏡で観察し、銅配線の破断の有無を目視で評価し、下記評価基準に基づき評価した結果も下記表1に示す。
[断線評価]
○:ガラス基板上の銅配線の破断がなかった
×:ガラス基板上の銅配線の破断が1箇所以上あった
【0162】
【表1】
実施例1及び2の発泡体粘着テープをフレキシブルな基板に使用した場合、該発泡体粘
【0163】
着テープの25%圧縮強度が100kPa以上であり、かつ、該発泡体粘着テープの点衝撃吸収率が35%以上であることにより、瞬間的に高い衝撃力の掛かる点衝撃が加わった場合であっても、前記フレキシブルな基板の変形や、それに伴う断線が生じず、衝撃に対する保護性能に優れることがわかった。
一方、比較例1~3の発泡体粘着テープをフレキシブルな基板に使用した場合は、瞬間的に高い衝撃力の掛かる点衝撃が加わった場合に、前記フレキシブルな基板の変形や、それに伴う断線が生じ、衝撃に対する保護性能が不十分であった。
しかしながら、実施例1及び2、並びに、比較例1~3の発泡体粘着テープをガラス基板に使用した場合は、瞬間的に高い衝撃力の掛かる点衝撃が加わった場合であっても、いずれもガラス基板の割れや銅配線の断線は生じず、衝撃に対して十分な保護性能を有していた。
【0164】
リジッドディスプレイが硬いガラス基板及びカバーガラスを用いるのに対し、フレキシブルディスプレイでは、ポリイミド基板等の柔軟性の高い基板上に発光素子(回路、発光体セル)を形成し、カバーフィルムで風止する構造となる。
上記試験例1及び2の結果より、ディスプレイの表示側に衝撃が加わった際、リジッドディスプレイでは衝撃力がガラスで分散し表示素子全体に弱い衝撃力が掛かるのに対し、フレキシブルディスプレイでは衝撃が分散されないため、ピンポイントで高い圧力が掛かることがわかった。
したがって、リジッドディスプレイでは問題とならない衝撃であったとしても、フレキシブルディスプレイにおいては、基板の変形は回路の断線が生じ、これを抑制するためには、フレキシブルディスプレイに使用される発泡体粘着テープが、特定の点衝撃吸収率及び特定の圧縮強度を有することが、ディスプレイの保護の観点から重要であることがわかった。
【0165】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 発泡体層(A)の少なくとも一方の面側に粘着剤層(B)を有するフレキシブルディスプレイに用いられる発泡体粘着テープであって、
前記発泡体粘着テープの25%圧縮強度が100kPa以上であり、
前記発泡体粘着テープの下記式(1)により算出される点衝撃吸収率が35%以上であることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープである。
点衝撃吸収率(%)={(fp0-fp1)/fp0}×100 ・・・式(1)
上記式(1)において、fp1は、ロードセル上に前記発泡体粘着テープを設置し、該発泡体粘着テープの発泡体層(A)面に直径12.5mmの鋼球を落下させた際の衝撃荷重であり、
fp0は、ロードセル上に前記発泡体粘着テープを設置せずに、前記鋼球を落下させた際の衝撃荷重である。
<2> 発泡体層(A)と粘着剤層(B)との間に、更に樹脂フィルム層(C)を有する前記<1>に記載のフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープである。
<3> 更に剥離ライナー層(D)を有する前記<1>から<2>のいずれかに記載のフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープである。
<4> 発光面を有するフレキシブルディスプレイと、前記発光面の背面側に配された前記<1>から<3>のいずれかに記載のフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープと、を有することを特徴とするフレキシブルディスプレイ積層物である。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明によれば、表示面への衝撃に起因する表示素子の変形と、それに伴う回路破損等の不良発生を抑制することで、フレキシブル表示デバイスを効果的に保護し得るフレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープ、及び前記フレキシブルディスプレイ用発泡体粘着テープを有するフレキシブルディスプレイ積層物を提供することができる。
【符号の説明】
【0167】
1 電磁石
2 鋼球
3 発泡体層(A)
4 粘着剤層(B)
5 SUS製試料台
6 ロードセル
7 基板
8 銅配線
9 チャンバー
10 ロールコーター
11 加熱炉
12 樹脂フィルム(C)と粘着剤層(B)と剥離ライナー層(D)との積層物b
13 気液混合物
14 剥離紙