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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】熱処理計画装置及び熱処理計画方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20230303BHJP
   C21D 9/00 20060101ALN20230303BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
C21D9/00 101Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019119921
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021005305
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堂安 豪
(72)【発明者】
【氏名】天野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】川端 正平
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-221887(JP,A)
【文献】特開2010-250521(JP,A)
【文献】特開2000-167610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
C21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度条件の異なる処理対象を同じ熱処理炉に同時装入する熱処理を計画する熱処理計画装置であって、
プロセッサとメモリとを有し、
前記メモリは、
熱処理が実行される処理対象と、前記処理対象の要求量と、を示す受注情報と、
前記処理対象それぞれの熱処理における温度遷移及び温度維持の条件である前記温度条件を示す温度条件情報と、
熱処理を実行する前記熱処理炉と、前記熱処理炉の容量と、を示す熱処理炉情報と、を保持し、
前記プロセッサは、
前記受注情報が示す処理対象を前記熱処理炉情報が示す熱処理炉に割り当てた計画を生成する計画生成処理を実行し、
前記計画生成処理において、
第1処理対象を割り当てた第1熱処理炉に前記第1処理対象と前記温度条件が異なる処理対象をさらに割り当て可能であると、前記受注情報が示す前記要求量と、前記熱処理炉情報が示す前記容量と、に基づいて、判定した場合、
前記温度条件が異なる処理対象それぞれについて、
前記温度条件情報を参照して、当該温度条件が異なる処理対象及び前記第1処理対象の双方の温度条件が示す時間あたりの温度の変化量以下の変化量を有する温度遷移と、前記双方の温度条件が示す温度維持時間以上の温度維持時間と、を示す前記双方を前記第1熱処理炉に同時装入した場合における新たな温度条件を生成し、
前記双方の温度条件と、前記生成した新たな温度条件に基づいて、前記双方を前記第1熱処理炉に同時装入した場合における損失を算出し、
前記異なる処理対象のうち前記算出した損失が最小の処理対象を、前記第1熱処理炉に割り当てる、熱処理計画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理計画装置であって、
前記メモリは、前記処理対象のサイズを示す処理対象情報を保持し、
前記プロセッサは、
前記計画生成処理において、前記処理対象情報が示すサイズと、前記熱処理炉情報が示す容量とに基づいて、前記第1熱処理炉にさらに割り当て可能な処理対象を特定する、熱処理計画装置。
【請求項3】
請求項1に記載の熱処理計画装置であって、
前記熱処理炉情報は、前記熱処理炉の単位時間あたりの運用コストを示し、
前記プロセッサは、
複数の前記計画を生成し、
前記複数の計画それぞれについて、
前記温度条件情報が示す温度条件に基づいて、当該計画に利用される熱処理炉の利用時間を算出し、
前記熱処理炉情報が示す運用コストと、前記算出した利用時間と、に基づいて、当該計画における運用コストを算出し、
前記算出した運用コストが最小の計画を出力する、熱処理計画装置。
【請求項4】
請求項1に記載の熱処理計画装置であって、
表示装置を有し、
前記プロセッサは、前記生成した計画と、前記生成した計画に含まれる前記新たな温度条件と、を前記表示装置に表示する、熱処理計画装置。
【請求項5】
請求項1に記載の熱処理計画装置であって、
前記メモリは、前記処理対象の熱処理炉への投入前後に実行される、鍛圧処理にかかる鍛圧時間及び付帯作業にかかる付帯時間を示す工程情報を保持し、
前記受注情報は、前記処理対象の到着時間及び納期を示し、
前記プロセッサは、
前記生成した計画における処理対象の熱処理炉への割り当てと、前記工程情報と、に基づいて、前記生成した計画において熱処理炉に1度に装入される処理対象であるバッチの鍛圧時間及び付帯時間を算出し、
前記受注情報が示す到着時間と納期に基づいて、前記生成した計画において前記バッチの処理開始可能時間と処理納期とを算出し、
前記温度条件情報が示す温度条件と、前記新たな温度条件に基づいて、前記生成した計画における各熱処理炉の熱処理時間を算出し、
前記算出した処理開始可能時間と、前記算出した処理納期と、前記算出した熱処理時間と、に基づいて、前記バッチの熱処理炉への装入順序を決定する、熱処理計画装置。
【請求項6】
請求項5に記載の熱処理計画装置であって、
表示装置を含み、
前記プロセッサは、前記決定した前記バッチの前記熱処理炉への装入順序を前記表示装置に表示する、熱処理計画装置。
【請求項7】
温度条件の異なる処理対象を同じ熱処理炉に同時装入する熱処理を計画する熱処理計画装置による熱処理計画方法であって、
熱処理計画装置は、プロセッサとメモリとを有し、
前記メモリは、
熱処理が実行される処理対象と、前記処理対象の要求量と、を示す受注情報と、
前記処理対象それぞれの熱処理における温度遷移及び温度維持の条件である前記温度条件を示す温度条件情報と、
熱処理を実行する前記熱処理炉と、前記熱処理炉の容量と、を示す熱処理炉情報と、を保持し、
前記熱処理計画方法は、
前記プロセッサが、前記受注情報が示す処理対象を前記熱処理炉情報が示す熱処理炉に割り当てた計画を生成する計画生成処理を実行し、
前記計画生成処理において、
前記プロセッサが、第1処理対象を割り当てた第1熱処理炉に前記第1処理対象と前記温度条件が異なる処理対象をさらに割り当て可能であると、前記受注情報が示す前記要求量と、前記熱処理炉情報が示す前記容量と、に基づいて、判定した場合、
前記プロセッサが、前記温度条件が異なる処理対象それぞれについて、
前記温度条件情報を参照して、当該温度条件が異なる処理対象及び前記第1処理対象の双方の温度条件が示す時間あたりの温度の変化量以下の変化量を有する温度遷移と、前記双方の温度条件が示す温度維持時間以上の温度維持時間と、を示す前記双方を前記第1熱処理炉に同時装入した場合における新たな温度条件を生成し、
前記双方の温度条件と、前記生成した新たな温度条件に基づいて、前記双方を前記第1熱処理炉に同時装入した場合における損失を算出し、
前記プロセッサが、前記異なる処理対象のうち前記算出した損失が最小の処理対象を、前記第1熱処理炉に割り当てる、熱処理計画方法。
【請求項8】
請求項7に記載の熱処理計画方法であって、
前記メモリは、前記処理対象のサイズを示す処理対象情報を保持し、
前記熱処理計画方法は、前記プロセッサが、
前記計画生成処理において、前記処理対象情報が示すサイズと、前記熱処理炉情報が示す容量とに基づいて、前記第1熱処理炉にさらに割り当て可能な処理対象を特定する、熱処理計画方法。
【請求項9】
請求項7に記載の熱処理計画方法であって、
前記熱処理炉情報は、前記熱処理炉の単位時間あたりの運用コストを示し、
前記熱処理計画方法は、
前記プロセッサが、複数の前記計画を生成し、
前記プロセッサが、前記複数の計画それぞれについて、
前記温度条件情報が示す温度条件に基づいて、当該計画に利用される熱処理炉の利用時間を算出し、
前記熱処理炉情報が示す運用コストと、前記算出した利用時間と、に基づいて、当該計画における運用コストを算出し、
前記プロセッサが、前記算出した運用コストが最小の計画を出力する、熱処理計画方法。
【請求項10】
請求項7に記載の熱処理計画方法であって、
前記熱処理計画装置は、表示装置を有し、
前記熱処理計画方法は、前記プロセッサが、前記生成した計画と、前記生成した計画に含まれる前記新たな温度条件と、を前記表示装置に表示する、熱処理計画方法。
【請求項11】
請求項7に記載の熱処理計画方法であって、
前記メモリは、前記処理対象の熱処理炉への投入前後に実行される、鍛圧処理にかかる鍛圧時間及び付帯作業にかかる付帯時間を示す工程情報を保持し、
前記受注情報は、前記処理対象の到着時間及び納期を示し、
前記熱処理計画方法は、
前記プロセッサが、前記生成した計画における処理対象の熱処理炉への割り当てと、前記工程情報と、に基づいて、前記生成した計画において熱処理炉に1度に装入される処理対象であるバッチの鍛圧時間及び付帯時間を算出し、
前記プロセッサが、前記受注情報が示す到着時間と納期に基づいて、前記生成した計画において前記バッチの処理開始可能時間と処理納期とを算出し、
前記プロセッサが、前記温度条件情報が示す温度条件と、前記新たな温度条件に基づいて、前記生成した計画における各熱処理炉の熱処理時間を算出し、
前記プロセッサが、前記算出した処理開始可能時間と、前記算出した処理納期と、前記算出した熱処理時間と、に基づいて、前記バッチの熱処理炉への装入順序を決定する、熱処理計画方法。
【請求項12】
請求項11に記載の熱処理計画方法であって、
前記熱処理計画装置は、表示装置を含み、
前記熱処理計画方法は、前記プロセッサが、前記決定した前記バッチの前記熱処理炉への装入順序を前記表示装置に表示する、熱処理計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理計画装置及び熱処理計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属塑性加工ラインにおいては、鋼塊や鋼片等の処理対象に対し、加熱炉にて規定された温度及び時間で加熱処理を行った後、鍛造装置や圧延装置(これらを総称して鍛圧装置とも呼ぶ)にて鍛造、圧延等の熱間塑性加工(これらを総称して鍛圧処理とも呼ぶ)を行うことにより、所望の形状の処理対象が得られる。
【0003】
加熱処理を行う加熱炉には装入可能容量や実行可能温度条件等の制約があり、また処理対象それぞれにも加熱温度、加熱時間からなる加熱条件が定められている。加熱条件の元、任意の処理対象群を加熱処理する際に、どの加熱炉にどの処理対象をどれだけの量、装入するか計画することをバッチ編成計画と呼ぶ。
【0004】
本技術分野の背景技術として、特開2015-140453号公報(特許文献1)がある。この公報には、「バッチ炉で加熱するスラブのうちから特定スラブが規定されたら、特定スラブと組合せてバッチ炉で加熱可能なスラブを組合せ可能スラブとして抽出し、特定スラブを所定位置に配置表示した後、組合せ可能スラブのうち、炉床に配置したときの占有面積の大きい最大スラブを選出し、その最大スラブを占有面積の大きい順に炉長方向に並べて配置表示する。最大スラブが炉長方向に並べて配置されたら、次に占有面積の大きい最大スラブを先に配置されたスラブに対して炉幅方向及び炉長方向の所定の位置に配置表示する。先に配置されたスラブに対する所定位置が2以上あるときには、スラブが配置されていない部分の方形の炉床面積が最大となる最大スラブの配置位置を選択する。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-140453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的にバッチ編成計画では、温度遷移及び温度維持に関する条件である温度条件(例えば加熱条件)が一致する処理対象をなるべく多く熱処理炉に編成することで一製品あたりの燃料費を低減する計画がよい計画として立案されるが、多品種生産方式のラインにおいては温度条件が多岐に渡る。
【0007】
特許文献1の技術は、任意の処理対象と組合わせて熱処理可能な組合せ可能処理対象のうちから配置対象を選出し、熱処理炉床面積に対して処理対象が占める面積の比を可及的に大きくする熱処理炉内への対象配置方法を提供するが、特許文献1は組合せ可能処理対象の具体的な定義を開示していない。
【0008】
仮に、この組合せ可能処理対象が温度条件の等しい対象のみから構成される場合、少数の対象群からなる多数のバッチを処理することとなり、熱処理炉の充填率低下及びそれに伴う燃料費の増大を引き起こすおそれがある。
【0009】
また仮に、この組合せ可能処理対象が温度条件の異なる処理対象を含む場合、特許文献1に記載の技術は、異なる温度条件の処理対象を同時に熱処理炉で処理する際の温度条件を算出する機能を有していないため、熱処理時間の増大に伴う燃料費の増大を引き起こすおそれがある。
【0010】
そこで、本発明の一態様は、温度条件の異なる処理対象を熱処理炉に同時に装入する計画を立案することを目的とし、ひいては加熱炉充填率を向上し、燃料費を低減する計画を立案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の一態様は以下の構成を採用する。熱処理計画装置であって、プロセッサとメモリとを有し、前記メモリは、熱処理が実行される処理対象と、前記処理対象の要求量と、を示す受注情報と、前記処理対象それぞれの熱処理における温度遷移及び温度維持の条件である温度条件を示す温度条件情報と、熱処理を実行する熱処理炉と、前記熱処理炉の容量と、を示す熱処理炉情報と、を保持し、前記プロセッサは、前記受注情報が示す処理対象を前記熱処理炉情報が示す熱処理炉に割り当てた計画を生成する計画生成処理を実行し、前記計画生成処理において、第1処理対象を割り当てた第1熱処理炉に前記第1処理対象と異なる処理対象をさらに割り当て可能であると、前記受注情報が示す前記要求量と、前記熱処理炉情報が示す前記容量と、に基づいて、判定した場合、前記異なる処理対象それぞれについて、前記温度条件情報を参照して、当該異なる処理対象及び前記第1処理対象の双方の温度条件が示す温度遷移の変化量以下の変化量を有する温度遷移と、前記双方の温度条件が示す温度維持時間以上の温度維持と、を示す新たな温度条件を生成し、前記双方の温度条件と、前記生成した新たな温度条件に基づいて、前記双方を前記第1熱処理炉に装入した場合における損失を算出し、前記異なる処理対象のうち前記算出した損失が最小の処理対象を、前記第1熱処理炉に割り当てる、熱処理計画装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様は、温度条件の異なる処理対象を熱処理炉に同時に装入する計画を立案し、ひいては加熱炉充填率を向上し、燃料費を低減する計画を立案することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1における熱間加工システムの構成例を示すブロック図である。
図2】実施例1における熱間加工システムに含まれる各装置を構成する計算機の構成例を示すブロック図である。
図3】実施例1における加熱炉情報テーブルの一例である。
図4】実施例1における鋼塊情報記憶テーブルの一例である。
図5】実施例1における加熱条件テーブルの一例である。
図6】実施例1における受注情報テーブルの一例である。
図7】実施例1におけるバッチ編成計画処理の一例を示すフローチャートである。
図8A】実施例1における鋼塊Aの加熱条件の一例を示す説明図である。
図8B】実施例1における鋼塊Bの加熱条件の一例を示す説明図である。
図8C】実施例1における鋼塊Aと鋼塊Bとが同時に加熱炉に装入された場合の加熱条件の一例を示す説明図である。
図9】実施例1における編成結果表示画面の一例である。
図10】実施例2における熱間加工ライン生産計画装置の構成例を示すブロック図である。
図11】実施例2における熱間加工ライン生産計画処理の一例を示すフローチャートである。
図12】実施例2における熱間加工ライン生産計画表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。実施の形態において、同一の部材には原則として同一の符号を付け、繰り返しの説明は省略する。まず、本実施形態で使用する用語を定義する。
【実施例1】
【0015】
図1は熱間加工システムの構成例を示すブロック図である。熱間加工システムは、例えば、熱間加工ライン101、バッチ編成計画装置105、作業実績収集装置116、及び作業指示装置114を含み、これらが互いに、例えばインターネット等、のネットワーク115を介して接続されている。
【0016】
熱間加工ライン101は、バッチ編成計画によって生成された編成計画に従って、鋼塊と呼ばれる鉄鋼の塊に対する熱間塑性加工処理を行う。鋼塊は、熱間加工ライン101における処理対象の一例である。
【0017】
熱間加工ライン101は、1以上の加熱炉からなる加熱炉群102、1以上の搬送装置からなる搬送装置群103、並びに圧延装置、鍛造装置等を含む鍛圧装置群104を含む。加熱炉は、鋼塊に対し、適当な温度及び時間で加熱処理を行う。搬送装置は、加熱処理が行われた鋼塊を、鍛圧装置群104に搬送する。鍛圧装置群104の各装置は、鋼塊に対して鍛造、圧延等の鍛圧処理を行うことで、鋼塊を所望の形状に変形する。
【0018】
作業実績収集装置116は、熱間加工ライン101の作業状況を監視する。作業実績収集装置116は、監視した作業状況を作業実績として収集し、バッチ編成計画装置105に送信する。作業指示装置114は、バッチ編成計画装置105から出力された作業計画に基づいて、熱間加工ライン101における作業指示を行う。
【0019】
バッチ編成計画装置105は、熱間加工ライン101における加熱炉バッチ編成を計画する。バッチ編成計画装置105は、例えば、情報記憶部106、制御部108、及び編成結果表示部113を含む。
【0020】
情報記憶部106は、バッチ編成計画に用いられる情報を記憶する。情報記憶部106は、例えば、加熱炉情報テーブル200、鋼塊情報テーブル300、加熱条件テーブル400、及び受注情報テーブル500を保持する。
【0021】
加熱炉情報テーブル200は、加熱炉群102に含まれる加熱炉についての情報を保持する。鋼塊情報テーブル300は、加熱炉での加工対象の鋼塊についての情報を保持する。加熱条件テーブル400は、鋼塊情報テーブル300が示す各鋼塊を加熱する際の条件である加熱条件についての情報を保持する。受注情報テーブル500は、バッチ編成計画の対象となる鋼塊の受注についての情報を保持する。
【0022】
制御部108は、加熱条件の異なる鋼塊を同時編成するバッチ編成計画の立案を実行する。制御部108は、例えば、加熱条件算出部109、鋼塊装入判定部110、バッチ編成計画部111、及び燃料費算出部112を含む。
【0023】
加熱条件算出部109は、加熱条件の異なる鋼塊を同じ加熱炉に同時装入した場合における加熱条件を算出する。加熱条件は、例えば、鋼塊の温度を変化させる際の温度遷移における変化量、及び温度を維持する際の維持時間を示す、温度に関する条件である。鋼塊装入判定部110は、バッチ編成計画の立案において、鋼塊が加熱炉に装入可能であるかを判定する。バッチ編成計画部111は、バッチ編成計画の立案を実行する。燃料費算出部112は、加熱炉において鋼塊を加熱処理する際の燃料費を算出する。編成結果表示部113は、制御部108による処理の結果をディスプレイ等の表示装置に出力する。
【0024】
図2は、熱間加工システムに含まれる各装置を構成する計算機の構成例を示すブロック図である。計算機601は、入力装置602、出力装置603、補助記憶装置604、CPU606、メモリ607、及び通信装置608を備え、これらが互いにバス等の内部通信線によって接続されている。
【0025】
CPU606はプロセッサを含み、プロセッサは、メモリ607に格納されたプログラムを実行する。メモリ607は、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、プロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0026】
補助記憶装置604は、例えば、磁気記憶装置(HDD)、フラッシュメモリ(SSD)等の大容量かつ不揮発性の記憶装置であり、プロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを格納する。すなわち、プログラムは、補助記憶装置604から読み出されて、メモリ607にロードされて、プロセッサによって実行される。
【0027】
入力装置602は、例えばキーボードやマウスのような、オペレータからの入力を受ける装置である。出力装置603は、例えばディスプレイ装置やプリンタ等のような、プログラムの実行結果をオペレータが視認可能な形式で出力する装置である。通信装置608は、ネットワーク115に接続され、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御する。
【0028】
プロセッサが実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワーク115を介して計算機601に提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性の補助記憶装置604に格納される。このため、計算機601は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0029】
熱間加工システムに含まれる各装置は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、同一の計算機上で別個のスレッドで動作してもよく、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。
【0030】
また計算機601は、オペレータによる操作が可能である。例えば、計算機601が構成するバッチ編成計画装置105に対して、例えば、バッチ編成計画装置105のオペレータである計画担当者が任意のタイミングで、情報記憶部106に格納される情報を入力することで、立案計画結果を得ることができる。
【0031】
バッチ編成計画装置105の制御部108、制御部108に含まれる各機能部、及び編成結果表示部113は、バッチ編成計画装置105を構成する計算機601に含まれるCPU606のプロセッサに含まれる。例えば、プロセッサは、メモリ607にロードされた加熱条件算出プログラムに従って動作することで、加熱条件算出部109として機能し、メモリ607にロードされた鋼塊装入判定プログラムに従って動作することで、鋼塊装入判定部110として機能する。プロセッサに含まれる他の機能部についても同様である。
【0032】
また、バッチ編成計画装置105の情報記憶部106が記憶する情報は、補助記憶装置604及び/又はメモリ607の一部の記憶領域に記憶されている。なお、本実施形態において、熱間加工システムの各装置が使用する情報は、データ構造に依存せずどのようなデータ構造で表現されていてもよい。本実施形態では、情報記憶部106が保持する情報がテーブル構造で表現されている例を示すが、テーブル、リスト、データベース又はキューから適切に選択したデータ構造体が、情報を格納することができる。
【0033】
図3は、加熱炉情報テーブル200の一例である。加熱炉情報テーブル200は、例えば、加熱炉を識別する名称を示す情報を格納する加熱炉欄201と、加熱炉の機数を示す情報を格納する機数欄202と、加熱炉の容量を示す情報を格納する炉容量欄203と、加熱炉を運用するコストを示す情報を格納する運用コスト欄204と、を有する。
【0034】
なお、炉容量欄203は、加熱炉に投入可能な鋼塊のサイズ及び個数を算出するために用いられるため、容量に加え加熱炉の形状を示す情報が格納されていてもよい。運用コスト欄204は、例えば、所定の温度での加熱を実行した場合における単位時間当たりの燃料費を示す。これにより、任意の加熱条件を任意の加熱炉で実行する際に必要な燃料費を算出できる。
【0035】
図4は、鋼塊情報テーブル300の一例である。鋼塊情報テーブル300は、例えば、鋼塊を識別する名称を示す情報を格納する鋼塊欄301と、鋼塊の形状を示す情報を格納する形状欄302と、鋼塊を加熱可能な加熱炉を示す情報を格納する使用炉欄303と、鋼塊を加熱炉で加熱する際の加熱条件の名称を示す情報を格納する加熱条件欄304と、を有する。
【0036】
図5は、加熱条件テーブル400の一例である。加熱条件テーブル400は、例えば、加熱条件を識別する名称の情報を格納する加熱条件欄401と、加熱条件の加熱温度情報を格納する1以上の温度欄402と、加熱条件の加熱時間情報を格納する1以上の時間欄403と、を有する。
【0037】
温度欄402及び時間欄403は、時間変化に対する温度の遷移を示す。例えば、ある加熱条件に対して、温度欄402及び時間欄403の値が左から順に600℃、60秒、1000℃、120秒、すなわち、鋼塊の熱処理における温度維持の温度が1000℃である場合、当該加熱条件は、600℃から1000℃まで60秒で遷移し、1000℃から1000℃まで120秒で遷移(維持)することを示す。
【0038】
なお、図5の例では、加熱条件が温度と直線的な遷移を示す例を示したが、線形、非線形問わずいかなる関数であってもよく、この場合、温度欄402及び時間欄403は当該関数を示す情報を格納する。また、加熱条件において時間経過とともに温度が上昇する又は維持されるだけでなく、低下してもよい(即ち焼きなましが実行されてもよい)。
【0039】
なお、加熱条件が示す温度遷移は、理想的な温度遷移を示しているだけであるため、鋼塊の温度を変化させる際には、加熱条件が示す温度遷移を鋼塊の品質が保持可能な範囲で辿るようにするとよい。本実施形態では、加熱条件が示す温度遷移は、鋼塊の品質を保持可能な最短時間での温度遷移を示しているため、加熱条件が示す時間あたりの温度の変化量より緩やかに温度を変化させてもよい。例えば、鋼塊の温度を上昇させる際には、加熱条件が示す温度上昇の関数の傾き(曲線の関数であれば微分係数)よりも小さい傾きで鋼塊の温度を上昇させてもよいし、鋼塊の温度を低下させる際には、加熱条件が示す温度低下の関数の傾き(曲線の関数であれば微分係数)よりも大きい傾きで鋼塊の温度を低下させてもよい。また、加熱条件が示す温度の保持時間は、最短の温度の保持時間を示しているだけであるため、これよりも長い時間当該温度を保持してもよい。
【0040】
図6は、受注情報テーブル500の一例である。受注情報テーブル500は、例えば、受注対象の鋼塊を識別する名称を示す情報を格納する鋼塊欄501と、受注対象の鋼塊の要求量を示す情報を格納する要求量欄502と、を有する。
【0041】
図7は、バッチ編成計画処理の一例を示すフローチャートである。まず、制御部108は、加熱炉情報テーブル200、及び鋼塊情報テーブル300の情報を読み込む(S101)。ステップS101における情報の読み込み処理は、バッチ編成計画処理の度に実行される必要はなく、例えば、熱間加工ライン101中に加熱炉が新設された、又は故障したとき等のように、これらのテーブルの値に変更があったときのみ実行すればよい。続いて、制御部108は、受注情報テーブル500の情報を読み込む(S102)。
【0042】
鋼塊装入判定部110は、受注情報テーブル500に含まれる各鋼塊を特定し、鋼塊情報テーブル300の使用炉欄303を参照して、各鋼塊と、当該鋼塊を投入可能な加熱炉と、の全ての組み合わせ(初期組み合わせと呼ぶ)を生成する(S103)。以下、各初期組み合わせに対してバッチ編成計画が生成される。
【0043】
鋼塊装入判定部110は、1つの初期組み合わせを選択し、当該初期組み合わせに含まれる鋼塊と加熱炉とを選択する(S104)。鋼塊装入判定部110は、選択中の鋼塊(鋼塊Aと呼ぶ)を選択中の加熱炉(加熱炉Xと呼ぶ)に割り当てる(S105)。
【0044】
鋼塊装入判定部110は、加熱炉情報テーブル200の機数欄202及び炉容量欄203と、鋼塊情報テーブル300の形状欄302及び使用炉欄303と、受注情報テーブル500の鋼塊欄501との値から、加熱炉Xに対してさらに装入可能な鋼塊があるかを判定する(S106)。
【0045】
鋼塊装入判定部110が、加熱炉Xに対してさらに装入可能な鋼塊がないと判定した場合(S106:NO)、バッチ編成計画部111は、選択中の初期組み合わせに対する加熱炉Xのバッチ編成を確定させる(S107)。バッチ編成計画部111は、受注情報テーブル500が示す全ての鋼塊を加熱炉に割り当てたかを判定する(S108)。
【0046】
バッチ編成計画部111は、受注情報テーブル500が示す全ての鋼塊を加熱炉に割り当てたと判定した場合(S108:YES)、選択中の初期組み合わせに対するバッチ編成計画を確定して記憶し、全ての鋼塊の加熱炉への割り当てを解除する(S109)。バッチ編成計画部111は、全ての初期組み合わせを選択済みであるかを判定する(S110)。バッチ編成計画部111は、未選択の初期組み合わせがあると判定した場合(S110:NO)、ステップS104に戻る。
【0047】
鋼塊装入判定部110が、加熱炉Xに対してさらに装入可能な鋼塊があると判定した場合(S106:YES)、加熱条件算出部109は、装入可能な鋼塊それぞれについて、当該鋼塊と、加熱炉Xに割り当て済みの鋼塊と、を加熱炉Xに同時に装入したときの加熱条件を計算する(S112)。なお、ステップS112における加熱条件の計算方法の詳細については後述する。
【0048】
燃料費算出部112は、ステップS112で算出した各加熱条件に基づいて、装入可能な鋼塊のうち、加熱炉Xに割り当て済みの鋼塊と同時装入されたときの燃料費損失が最小の鋼塊を特定し、鋼塊装入判定部110は特定された鋼塊を鋼塊Aとして選択し(S113)、ステップS105に戻る。なお、ステップS113における燃料費損失の計算方法の詳細については後述する。
【0049】
バッチ編成計画部111は、受注情報テーブル500が示す鋼塊のうち加熱炉に割り当てられていない鋼塊があると判定した場合(S108:NO)、未割り当ての鋼塊と、鋼塊を装入可能かつバッチ編成が未確定の加熱炉と、を選択し、選択された鋼塊を鋼塊Aとし、選択された加熱炉を加熱炉Xとする(S114)。なお、ステップS114において、バッチ編成計画部111は、未割当の鋼塊があるにも関わらず当該鋼塊を装入可能な加熱炉が存在しないと判定した場合には、例えば、選択中の初期組み合わせに対する計画が生成不可能であるため、ステップS110に遷移する。
【0050】
なお、ステップS114において、鋼塊装入判定部110は、予め定められたルール(例えば所定の優先度)に基づいて加熱炉が割り当てられていない鋼塊Aを選択してもよいし、計画担当者が指定した鋼塊を鋼塊Aとして選択してもよい。
【0051】
また、ステップS114において、鋼塊装入判定部110は、予め定められたルール(例えば所定の優先度)に基づき加熱炉Xを選択してもよいし、計画担当者が指定した加熱炉を加熱炉Xとして選択してもよい。例えば、各加熱炉に対して鋼塊Aを編成した場合の加熱処理に必要な時間を予め情報記憶部106に記憶させ、当該ルールにおいて、負荷が最小(例えば、時間が最も短い)の加熱炉が加熱炉Xとして選択されればよい。
【0052】
なお、ステップS105において、鋼塊装入判定部110は、加熱炉情報テーブル200の機数欄202及び炉容量欄203と、鋼塊情報テーブル300の形状欄302と、受注情報テーブル500の要求量欄502と、の値から、加熱炉Xの全機を使用しても選択中の鋼塊の全量を収容できないと判定した場合、加熱炉Xの全機によって収容可能な最大量の鋼塊Aを加熱炉Xに割り当てて、加熱炉Xのバッチ編成を確定する。さらに、鋼塊装入判定部110は、鋼塊Aを未編成の加熱炉であって、鋼塊Aを装入可能な加熱炉、を例えばステップS113と同様の方法でさらに選択し、これを加熱炉Xとする。
【0053】
ステップS110において、バッチ編成計画部111が全ての初期組み合わせを選択済みであると判定した場合(S110:YES)、バッチ編成計画部111は、各初期組み合わせについて生成されたバッチ編成計画のうち、コストが低い編成計画を出力し、編成結果表示部113は当該編成計画を出力装置603に表示し(S111)、バッチ編成計画処理を終了する。
【0054】
具体的には、例えば、バッチ編成計画部111は、生成した各バッチ編成計画について、当該バッチ編成計画に使用される各加熱炉に、加熱炉情報テーブル200の運用コスト欄204が示す単位時間あたりの運用コストを、掛けて当該バッチ編成計画に使用される各加熱炉の運用コストの合計を算出する。これにより、バッチ編成計画部111は、コストの低いバッチ編成計画を出力することができる。バッチ編成計画部111は、コストが所定値以下のバッチ編成計画を出力してもよいし、コストが低い順に所定数のバッチ編成計画を出力してもよい。
【0055】
なお、ステップS111において、バッチ編成計画部111は、評価値を算出し、当該評価値が高い編成計画を出力してもよい。当該評価値は、例えば、コストの減少関数や、加熱時間の減少関数等から得られる。
【0056】
以下、ステップS112における異なる種類の鋼塊が同時に加熱炉に装入された場合の加熱条件の算出方法の一例と、ステップS113における燃料費損失の算出方法の一例と、を説明する。ここでは説明の便宜のために、加熱処理のみが行われ、焼きなましが行われない例を示す。
【0057】
図8Aは、鋼塊Aの加熱条件の一例を示す説明図である。図8Bは、鋼塊Bの加熱条件の一例を示す説明図である。図8Cは、鋼塊Aと鋼塊Bとが同時に加熱炉に装入された場合の加熱条件の一例を示す説明図である。図8A図8Cにおいて加熱条件が折れ線グラフで示されている。以下、鋼塊Xの加熱条件における、n回目の保持温度をTxn、Txnの保持時間をtxn、鋼塊XのT℃までの昇温レート(即ち折れ線グラフの温度上昇又は温度下降部分における傾き(グラフが曲線であれば微分係数))を、RXTと記載する。また、簡単のため各鋼塊の初期温度をともにTとする。
【0058】
図8Aの例によれば、鋼塊Aの加熱条件は、以下の通りである。温度Tから昇温レートRAT1でTA1まで温度を上昇させ、温度TA1を時間tA1の間維持する。さらに、昇温レートRAT2でTA2まで温度を上昇させ、温度TA2を時間tA2の間維持すると、鋼塊Aを鍛圧処理可能な状態となる。
【0059】
図8Bの例によれば、鋼塊Bの加熱条件は、以下の通りである。温度Tから昇温レート(RAT1<)RBT1(<RAT2)で(TA1<)TB1(<TA2)まで温度を上昇させ、温度TB1を時間tB1の間維持する。さらに、昇温レート(RAT2<)RBT2で(TA2<)TB2まで温度を上昇させ、温度TB2を時間tB2の間維持すると、鋼塊Bを鍛圧処理可能な状態となる。
【0060】
以下、ステップS112の処理の詳細について説明する。(1)加熱条件算出部109は、時間t=0における温度の初期値を設定し、これを現在温度とする。(2)加熱条件算出部109は、鋼塊A及び鋼塊Bそれぞれについて、加熱条件が示す未到達の保持温度のうち、最先に到達させる保持温度、及び現在温度からの当該保持温度への昇温レートを特定する。
【0061】
(3)加熱条件算出部109は、特定した保持温度のうち現在温度に最も近い値へ、特定した昇温レートのうち最も低い昇温レートに従って、現在温度から鋼塊A及び鋼塊Bを昇温させるよう決定する。(4)加熱条件算出部109は、昇温後の保持温度に対応する保持時間だけ、当該保持温度を保持するよう決定し、現在温度を当該保持温度に更新する。
【0062】
加熱条件算出部109は、(2)~(4)の処理を、鋼塊A及び鋼塊Bの全ての保持温度を保持するまで繰り返すことにより、鋼塊A及び鋼塊Bを同時に加熱炉に装入した場合の加熱条件を算出することができる。なお、加熱条件算出部109は、鋼塊A及び鋼塊Bそれぞれについて、加熱条件が満たされたら当該鋼塊を加熱炉から取り出すよう決定する。これにより、各鋼塊の加熱条件が示す上限温度を遵守することができる。
【0063】
図8Aの例では、まず加熱条件算出部109は、鋼塊Aの加熱条件が示す時間t=0の温度を現在温度Tに設定する。加熱条件算出部109は、鋼塊Aの未到達の最先の保持温度はTA1であり、現在温度からTA1への昇温レートはRAT1であり、鋼塊Bの未到達の最先の保持温度はTB1であり、現在温度からTB1への昇温レートはRBT1であるため、加熱条件算出部109はこれらを特定する。
【0064】
B1よりもTA1の方が現在温度に近く、RAT1<RBT1であるため、加熱条件算出部109は、現在温度からTA1まで、昇温レートRAT1で鋼塊A及び鋼塊Bを加熱するよう決定する。保持温度TA1に対応する保持時間はtA1であるため、加熱条件算出部109は、tA1だけ保持温度TA1を保持するよう決定し、現在温度をTA1に更新する。
【0065】
加熱条件算出部109は、このような処理を繰り返すことにより、図8Cに示す加熱条件を算出することができる。図8Cに示す加熱条件は、鋼塊A及び鋼塊Bの双方の加熱条件を満たすもののうち、加熱炉の使用時間が最小である条件である。また、加熱条件算出部109は、保持温度TA1をtA1保持したら鋼塊Aを加熱炉から取り出すよう、保持温度TB1をtB1保持したら鋼塊Bを加熱炉から取り出すよう、決定する。
【0066】
なお、加熱炉に既に鋼塊A及び鋼塊Bが装入されている状態で、さらに鋼塊Cを装入する場合には、加熱条件算出部109は、鋼塊A及び鋼塊Bが同時に装入された場合の算出済みの加熱条件を1つの鋼塊の加熱条件とみなし、当該加熱条件と、鋼塊Cの加熱条件と、から、同様の方法で鋼塊A、鋼塊B、及び鋼塊Cが同時に装入された場合の加熱条件を算出すればよい。
【0067】
ステップS112において、燃料費算出部112は、図8Aが示す鋼塊Aの加熱条件と、鋼塊Aの加熱開始時から終了時までの時間軸と、で囲まれる領域の面積Sを、鋼塊Aの燃料費を示す値として算出する。同様に、燃料費算出部112は、図8Bが示す鋼塊Bの加熱条件と、鋼塊Bの加熱開始時から終了時までの時間軸と、で囲まれる領域の面積Sを、鋼塊Bの燃料費を示す値として算出する。
【0068】
同様に、燃料費算出部112は、図8Cが示す鋼塊A及び鋼塊Bを加熱炉に同時装入した場合の加熱条件と、鋼塊A及び鋼塊Bの加熱開始時から終了時までの時間軸と、で囲まれる領域の面積SA,Bを、鋼塊A及び鋼塊Bを加熱炉に同時装入した場合の燃料費を示す値として算出する。
【0069】
ステップS113において、燃料費算出部112は、LA,B=SA,B-(S+S)を、鋼塊A及び鋼塊Bを加熱炉に同時装入した場合の燃料費損失として算出する。なお、燃料費算出部112は、n(≧3)種類の鋼塊(鋼塊A、・・・、鋼塊A)が1つの加熱炉に同時装入された場合の燃料費損失を、LA1,・・・,An=SA1,・・・,An-(SA1+・・・+SAn)で算出する。
前述した処理により、制御部108は、任意の受注を処理する際の総加熱燃料費を可及的に低減する編成計画を実現することができる。
【0070】
図9は、ステップS111において、編成結果表示部113が表示する編成結果表示画面の一例である。編成結果表示画面901は、例えば、編成結果表示領域902、編成詳細表示領域903、加熱条件表示領域904、及び総合情報表示領域905を含む。図9の例では、編成結果表示画面901は、1つのバッチ編成計画を表示している。
【0071】
編成結果表示領域902は、当該編成結果に使用される加熱炉を示す情報を表示する。図9の例では、同種の複数の炉Aが、それぞれ炉A1、炉A2、炉A3、・・・、のように識別されて表示されている。
【0072】
編成結果表示領域902において、加熱炉の識別子が選択されると、選択された加熱炉の詳細情報が、編成詳細表示領域903に表示される。編成詳細表示領域903は、例えば、編成内容リスト及び加熱炉情報を表示する。編成内容リストは、例えば、編成結果表示領域902において選択された加熱炉に割り当てられた鋼塊の種類及び数量を表示する。加熱炉情報は、例えば、当該加熱炉が使用される時間である加熱時間、当該加熱炉の充填率、及び当該加熱炉における燃料費(コスト)を表示する。
【0073】
加熱条件表示領域904は、例えば、編成結果表示領域902において選択された加熱炉に装入される鋼塊の加熱条件(複数種類の鋼塊が同時に装入される場合は図8Cの例のような加熱条件)を表示する。
【0074】
総合情報表示領域905は、例えば、当該編成計画における総加熱時間、平均充填率、総処理量、及び総燃料費を表示する。総加熱時間は、当該編成計画において使用される加熱炉の総使用時間である。平均充填率は、当該編成計画において使用される加熱炉全体の総使用時間に対する充填率の平均である。総処理量は、当該編成計画において受注した鋼塊の重量又はサイズの合計である。総燃料費は、当該編成計画における燃料費(コスト)の合計である。編成結果表示画面901が出力されることにより、計画担当者は、バッチ編成結果及びバッチ編成結果の詳細を確認することができる。
【実施例2】
【0075】
本実施例は、実施例1に記載のバッチ編成計画装置105を機能の一部として有する、熱間加工ライン全体の生産計画を立案する熱間加工ライン生産計画装置を説明する。本実施例の熱間加工システムは、実施例1における熱間加工システムのバッチ編成計画装置105の代わりに熱間加工ライン生産計画装置を含む。なお、実施例1におけるバッチ編成計画装置105は、ある受注情報に対して、各加熱炉を一度ずつ使用しバッチ編成計画を立案するとして説明したが、実施例2においては、各加熱炉を繰り返し使用する計画を立案することができる。それは例えば、各加熱炉の負荷として当該加熱炉で処理する各バッチ編成の温度条件時間の総計を計算し、負荷最小の加熱炉に対して再び鋼塊の割り当てを許容することで可能となる。
【0076】
図10は、熱間加工ライン生産計画装置の構成例を示すブロック図である。熱間加工ライン生産計画装置1001に含まれる機能部及び情報のうち、バッチ編成計画装置105に含まれるものについては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
熱間加工ライン生産計画装置1001は、第1制御部1020及び第2制御部1030を含む。第1制御部1020は、バッチ編成計画装置105の制御部108と同様の機能を有する。第2制御部1030は、熱間加工ライン生産の計画を立案するスケジュール計画部1009を含む。また、熱間加工ライン生産計画装置1001は、スケジュール計画部1009によって生成された計画を出力装置603に表示する計画結果出力部1010を含む。
【0078】
熱間加工ライン生産計画装置1001が有する情報記憶部106は、設備情報テーブル1003、工程情報テーブル1006、及び稼働情報テーブル1007をさらに含む。設備情報テーブル1003は、熱間加工ライン101における搬送装置群103及び鍛圧装置群104に含まれる装置それぞれについての情報を保持する。
【0079】
工程情報テーブル1006は、各鋼塊について、鍛圧処理にかかる時間、及び付帯作業にかかる時間を示す情報を保持する。なお、付帯作業とは、加熱炉への鋼塊装入及び加熱炉からの鋼塊取り出しや、搬送装置による鍛圧装置への鋼塊の搬送等の作業を含む。稼働情報テーブル1007は、熱間加工ライン101に含まれる各装置の稼働を示す情報を保持する。また、本実施例の受注情報テーブル500は、各鋼塊の到着日時情報及び納期情報を含む。
【0080】
なお、熱間加工ライン生産計画装置1001のハードウェア構成は、バッチ編成計画装置105のハードウェア構成と同様である。
【0081】
図11は、熱間加工ライン生産計画処理の一例を示すフローチャートである。スケジュール計画部1009は、計画担当者701が指定した計画開始日時を受け付け記憶する(S201)。スケジュール計画部1009は、バッチ編成計画部111がステップS111で出力したバッチ編成計画が示す各バッチを読み込む(S202)。ここでバッチとは、まとめて加工処理が行われる一群の鋼塊を示す。つまり、スケジュール計画部1009は、バッチ編成計画において、各加熱炉にまとめて同時に投入される鋼塊を特定することで各バッチを特定することができる。
【0082】
スケジュール計画部1009は、各バッチの鍛圧工程及び付帯作業にかかる時間を計算する(S203)。具体的には、例えば、スケジュール計画部1009は、工程情報テーブル1006を参照して、バッチに含まれる鋼塊の鍛圧処理にかかる時間の総和を算出することで、鍛圧工程にかかる時間を算出する。また、スケジュール計画部1009は、工程情報テーブル1006を参照して、バッチに含まれる鋼塊の付帯作業にかかる時間の総和を算出することで、付帯作業にかかる時間を算出する。
【0083】
続いて、スケジュール計画部1009は、各バッチの処理開始可能日時及び処理納期を計算する(S204)。処理開始可能日時とは、バッチに含まれる全ての鋼塊が熱間加工ライン101に到着する日時である。処理納期とは、バッチに含まれる鋼塊が鍛圧工程を終了し次工程に引き渡されるまでの納期である。
【0084】
ステップS204において、スケジュール計画部1009は、具体的には、例えば、受注情報テーブル500を参照して、バッチに含まれる鋼塊の到着日時のうち最も遅い日時を、処理開始可能日時として特定する。また、スケジュール計画部1009は、例えば、受注情報テーブル500を参照して、バッチに含まれる鋼塊の製品納期のうち、最も早い日時を処理納期として特定する。
【0085】
続いて、スケジュール計画部1009は、バッチ編成計画に含まれる加熱炉のうち、最も早く稼働可能な加熱炉を選択し、選択した加熱炉を加熱炉Xとする(S205)。具体的には、例えば、スケジュール計画部1009は、ある計画時点において、加熱終了日時が最も早い加熱炉を、加熱炉Xとして選択する。なお、加熱終了日時が最も早い複数の加熱炉が存在する場合には、スケジュール計画部1009は、当該複数の加熱炉から、所定のルールに従って1つの加熱炉を加熱炉Xとして選択してもよいし、ランダムに1つの加熱炉を加熱炉Xとして選択してもよい。
【0086】
スケジュール計画部1009は、加熱炉Xに割り当て可能なバッチのうち、処理納期が最も早いバッチを選択し、これをバッチAとする(S206)。スケジュール計画部1009は、具体的には、加熱炉Xが稼働可能な時点において、バッチに含まれる鋼塊が全て熱間加工ライン101に到着していれば、当該バッチは加熱炉Xに割り当て可能であると判定する。つまり、バッチAの処理開始可能日時が、加熱炉X稼働可能な時刻よりも早ければ、バッチAは加熱炉Xに割り当て可能である。
【0087】
スケジュール計画部1009は、ステップS203で計算したバッチAの各処理および各作業にかかる時間に基づいて、バッチAを加熱炉Xに仮割り当てする(S207)。スケジュール計画部1009は、仮割り当てにおけるバッチAに対する鍛圧工程の日時(即ちバッチAに含まれる各鋼塊を加熱炉Xから取り出す日時)に、鍛圧装置が稼働可能であるかを判定する(S208)。スケジュール計画部1009は、鍛圧装置が稼働可能であると判定した場合(S208:YES)、バッチAの加熱炉Xへの割り当てを確定する(S209)。
【0088】
スケジュール計画部1009は、鍛圧装置が稼働可能でない、即ち当該日時に他のバッチの鍛圧処理が既に割り付けられていると判定した場合(S208:NO)、鍛圧装置が稼働可能になる日時までバッチAの鍛圧工程の開始日時を後ろ倒しにするよう決定する(S212)。
【0089】
さらにスケジュール計画部1009は、後ろ倒しにした鍛圧工程の割り当て日時に合わせて、バッチAの加熱処理および付帯作業の日時を後ろ倒しにするよう決定し(S213)、ステップS209に戻って、後ろ倒しにした各処理及び各作業日時を用いてバッチAの加熱炉Xへの割り当てを確定する。
【0090】
スケジュール計画部1009は、ステップS209の処理に続いて、ステップS202において読み込んだ全バッチについて割り当てが確定しているかを判定する(S210)。スケジュール計画部1009は、全バッチの割り当てが確定していないと判定した場合(S210:NO)、ステップS205に戻る。
【0091】
スケジュール計画部1009が全バッチの割り当てが確定していないと判定した場合(S210:YES)、計画結果出力部1010は、確定したバッチの割り当てを含む熱間加工ライン生産計画表示画面を出力装置603に表示し(S211)、処理を終了する。
【0092】
上述した処理により、スケジュール計画部1009は、バッチ編成計画部111が編成したバッチ編成計画に含まれる各バッチについての処理日時を計画することができ、ひいては熱間加工ライン101全体の生産計画を立案することができる。
【0093】
図12は、ステップS211で出力される熱間加工ライン生産計画表示画面の一例である。熱間加工ライン生産計画表示画面1201は、例えば、ガントチャート表示領域1202及びバッチ内鋼塊表示領域1203を含む。
【0094】
ガントチャート表示領域1202は、例えば、スケジュール計画部1009にて計画された各加熱炉にて処理される各バッチの処理日時が、加熱処理及び加熱炉への装入や取り出し処理、並びに搬送作業等の付帯作業ごとに色分けされたガントチャート形式で表示する。
【0095】
また、ガントチャート表示領域1202は、加熱炉から搬送された各鋼塊が鍛圧装置にて鍛圧処理される予定日時が、ガントチャート形式で表示する。バッチ内鋼塊表示領域1203では、指定した特定のバッチについて、バッチ内に編成された各鋼塊の詳細情報確認画面を表示する。
【0096】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0097】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0098】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0099】
105 バッチ編成計画装置、106 情報記憶部、108 制御部、109 加熱条件算出部、110 鋼塊装入判定部、111 バッチ編成計画部、112 燃料費算出部、113 編成結果表示部、200 加熱炉情報テーブル、400 加熱条件テーブル、500 受注情報テーブル、601 計算機、602 入力装置、603 出力装置、606 CPU、607 メモリ、1001 熱間加工ライン生産計画装置、1006 工程情報テーブル、1009 スケジュール計画部、1010 計画結果出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12