IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新光電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図1
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図2
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図3
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図4
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図5
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図6
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図7
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図8
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図9
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図10
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図11
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図12
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図13
  • 特許-ループ型ヒートパイプ及びその製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】ループ型ヒートパイプ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20230303BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
F28D15/04 B
F28D15/02 101K
F28D15/02 106G
F28D15/02 102A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018131817
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2020008249
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋弘
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-142416(JP,A)
【文献】特開2018-036012(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087451(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、
前記液管内に設けられ、前記凝縮器により液化された前記作動流体を前記蒸発器に誘導する多孔質体と、
前記液管内に設けられ、前記凝縮器により液化された前記作動流体を前記蒸発器に誘導する空間からなる流路と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、
を有し、
前記多孔質体は、少なくとも前記液管の一方の管壁に接触するように配置されており、
前記液管の他方の管壁の面に溝が形成されており、
前記空間は、前記多孔質体と前記液管の他方の管壁との間に設けられており、
前記液管は、前記作動流体を注入するための注入口を有し、
前記液管の一方の管壁は、前記注入口が配置された側の管壁と対向する管壁であり、前記液管の他方の管壁は、前記注入口が配置された側の管壁であることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記多孔質体は、前記液管の一方の管壁に接触するように配置されており、
前記流路は、前記液管の他方の管壁に接触するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記多孔質体は、前記一方の管壁と一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記溝は前記液管に沿って延びることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
前記液管は複数の金属層を積層してなり、
前記溝は、前記流路に繋がるように前記金属層の主面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、
前記液管内に設けられ、前記凝縮器により液化された前記作動流体を前記蒸発器に誘導する多孔質体と、
前記液管内に設けられ、前記凝縮器により液化された前記作動流体を前記蒸発器に誘導する空間からなる流路と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、を備えたループ型ヒートパイプの製造方法であって、
金属層を複数層積層することにより、前記蒸発器及び前記凝縮器、前記液管、前記蒸気管の各々を形成する工程と、
前記金属層をハーフエッチングして複数の有底孔を形成することにより、前記多孔質体を形成する工程と、
前記金属層をエッチングして開口部を形成することにより、前記流路を形成する工程と、
を含み、
前記多孔質体は、前記液管の一方の管壁に接触するように形成され、
前記液管の他方の管壁の面に溝が形成され、
前記空間は、前記多孔質体と前記液管の他方の管壁との間に形成され、
前記流路は、前記液管の他方の管壁に接触するように形成され
前記液管に、前記作動流体を注入するための注入口が形成され、
前記液管の一方の管壁は、前記注入口が配置される側の管壁と対向する管壁であり、前記液管の他方の管壁は、前記注入口が配置される側の管壁であ
ことを特徴とするループ型ヒートパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ型ヒートパイプ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されるCPU(Central Processing Unit)等の発熱部品を冷却するデバイスとして、ヒートパイプが知られている。ヒートパイプは、作動流体の相変化を利用して熱を輸送するデバイスである。
【0003】
ヒートパイプの一例として、発熱部品の熱により作動流体を気化させる蒸発器と、気化した作動流体を冷却して液化する凝縮器とを備え、蒸発器と凝縮器とがループ状の流路を形成する液管と蒸気管で接続されたループ型ヒートパイプが挙げられる。ループ型ヒートパイプでは、作動流体はループ状の流路を一方向に流れる。
【0004】
また、ループ型ヒートパイプの液管内には、多孔質体が設けられており、多孔質体に生じる毛細管力で液管内の作動流体を蒸発器に誘導し、蒸発器から液管に蒸気が逆流することを抑制している。多孔質体には多数の細孔が形成されている。各細孔は、貫通孔が形成された金属層同士を、貫通孔が部分的に重複するように積層することにより形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6146484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、十分な熱輸送性能が得られないことがある。
【0007】
本発明は、優れた熱輸送性能を得ることができるループ型ヒートパイプ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ループ型ヒートパイプの一態様は、作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記液管内に設けられ、前記凝縮器により液化された前記作動流体を前記蒸発器に誘導する多孔質体と、前記液管内に設けられ、前記凝縮器により液化された前記作動流体を前記蒸発器に誘導する空間からなる流路と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、を有する。前記多孔質体は、少なくとも前記液管の一方の管壁に接触するように配置されており、前記液管の他方の管壁の面に溝が形成されており、前記空間は、前記多孔質体と前記液管の他方の管壁との間に設けられており、前記液管は、前記作動流体を注入するための注入口を有し、前記液管の一方の管壁は、前記注入口が配置された側の管壁と対向する管壁であり、前記液管の他方の管壁は、前記注入口が配置された側の管壁である。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、優れた熱輸送性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ループ型ヒートパイプの参考例を例示する平面模式図である。
図2】参考例に係るループ型ヒートパイプの液管の内部の構成を例示する図である。
図3】参考例における液管内の作動流体を示す平面模式図である。
図4】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプを示す平面模式図である。
図5】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。
図6】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの液管の内部の構成を例示する図である。
図7】2層目から5層目までの各金属層における有底孔の配置を例示する平面図である。
図8】第1の実施形態における液管内の作動流体を示す模式図である。
図9】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その1)である。
図10】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その2)である。
図11】第2の実施形態における液管及び多孔質体を例示する断面図である。
図12】第3の実施形態における液管及び多孔質体を例示する断面図である。
図13】第4の実施形態における液管及び多孔質体を例示する断面図である。
図14】第5の実施形態に係るループ型ヒートパイプの液管の内部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、十分な熱輸送性能が得られない原因を究明すべく鋭意検討を行った。本発明者による詳細な解析の結果、液相の作動流体で満たされているべき流路中に気泡が存在し、気泡が液相の作動流体の流動を妨げていることが明らかになった。また、その原因の一つとして、作動流体の充填時に液管内の多孔質体が液相の作動流体の移動を阻害していることも明らかになった。ここで、参考例を用いて、この新たな知見について説明する。
【0012】
図1は、ループ型ヒートパイプの参考例を例示する平面模式図である。
【0013】
図1に示すように、参考例に係るループ型ヒートパイプ900は、蒸発器910と、凝縮器920と、蒸気管930と、液管940とを有する。
【0014】
ループ型ヒートパイプ900において、蒸発器910は、作動流体Cを気化させて蒸気Cvを生成する機能を有する。凝縮器920は、作動流体Cの蒸気Cvを液化させる機能を有する。蒸発器910と凝縮器920は、蒸気管930及び液管940により接続されており、蒸気管930及び液管940によって作動流体C又は蒸気Cvが流れるループである流路が形成されている。
【0015】
液管940には作動流体Cを注入するための注入口941が形成されている。注入口941は作動流体Cの注入に用いられ、作動流体Cの注入後に封止される。
【0016】
図2は、参考例に係るループ型ヒートパイプの液管の内部の構成を例示する図である。図2(a)は平面模式図であり、図2(b)は図2(a)中のI-I線に沿った断面図である。なお、図2(a)は、図2(b)に示す金属層のうち最上層の金属層を除いたものが示されている。
【0017】
図2(a)及び(b)に示すように、平面視で液管940の中央に支柱状の多孔質体950が設けられている。多孔質体950は液管940に沿って凝縮器920から蒸発器910まで延びており、液管940内の流路は、ループにおける多孔質体950の外側の外側流路946及び多孔質体950の内側の内側流路947に二分されている。注入口941は外側流路946に連通している。
【0018】
ここで、参考例における液管940に注入された作動流体Cの挙動について説明する。図3は、参考例における液管940内の作動流体Cを示す平面模式図である。
【0019】
注入口941から液管940に注入された液相の作動流体Cは外側流路946内に広がり、外側流路946が作動流体Cで満たされる。また、作動流体Cは、多孔質体950を透過しながら内側流路947内にも流れ込んでいく。しかしながら、多孔質体950は少なからず作動流体Cの移動の妨げとなるため、作動流体Cが内側流路947に部分的に、不連続で流れ込む。この結果、内側流路947内に気泡948が残存しやすい。気泡948は、特に液管940の屈曲部945の近傍に残存しやすい。
【0020】
そして、液管940中に存在する気泡948は液相の作動流体Cの流動を妨げる。この結果、予期せず熱輸送性能が低下してしまうのである。また、気泡948は、ループ型ヒートパイプ900が受熱した際に液管940に膨れを生じさせることがある。このような膨れは液管940の機械的強度を低下させたりする。
【0021】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0022】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。第1の実施形態はループ型ヒートパイプに関する。
【0023】
[ループ型ヒートパイプの構造]
図4は、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプを示す平面模式図である。
【0024】
図4に示すように、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプ100は、蒸発器110と、凝縮器120と、蒸気管130と、液管140とを有する。ループ型ヒートパイプ100は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル型の電子機器102に収容することができる。
【0025】
ループ型ヒートパイプ100において、蒸発器110は、作動流体Cを気化させて蒸気Cvを生成する機能を有する。凝縮器120は、作動流体Cの蒸気Cvを液化させる機能を有する。蒸発器110と凝縮器120は、蒸気管130及び液管140により接続されており、蒸気管130及び液管140によって作動流体C又は蒸気Cvが流れるループである流路が形成されている。
【0026】
液管140には作動流体Cを注入するための注入口141が形成されている。注入口141は作動流体Cの注入に用いられ、作動流体Cの注入後に塞がれる。
【0027】
図5は、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。図4及び図5に示すように、蒸発器110には、例えば4つの貫通孔110xが形成されている。蒸発器110に形成された各貫通孔110xと回路基板10に形成された各貫通孔10xにボルト15を挿入し、回路基板10の下面側からナット16で止めることにより、蒸発器110と回路基板10とが固定される。
【0028】
回路基板10には、例えば、CPU等の発熱部品12がバンプ11により実装され、発熱部品12の上面が蒸発器110の下面と密着する。蒸発器110内の作動流体Cは、発熱部品12で発生した熱により気化し、蒸気Cvが生成される。
【0029】
図4に示すように、蒸発器110に生成された蒸気Cvは、蒸気管130を通って凝縮器120に導かれ、凝縮器120において液化する。これにより、発熱部品12で発生した熱が凝縮器120に移動し、発熱部品12の温度上昇が抑制される。凝縮器120で液化した作動流体Cは、液管140を通って蒸発器110に導かれる。蒸気管130の幅Wは、例えば、8mm程度とすることができる。また、液管140の幅Wは、例えば、6mm程度とすることができる。蒸気管130の幅Wや液管140の幅Wは、これに限らず、例えば互いに等しくてもよい。
【0030】
作動流体Cの種類は特に限定されないが、蒸発潜熱によって発熱部品12を効率的に冷却するために、蒸気圧が高く、かつ蒸発潜熱が大きい流体を使用することが好ましい。そのような流体としては、例えば、アンモニア、水、フロン、アルコール、及びアセトンを挙げることができる。
【0031】
蒸発器110、凝縮器120、蒸気管130、及び液管140は、例えば、金属層が複数積層された構造とすることができる(図6(b)参照)。金属層は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層の各々の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。
【0032】
なお、金属層は銅層には限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。また、金属層の積層数は特に限定されない。
【0033】
図6は、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの液管の内部の構成を示す図である。図6(a)は平面模式図であり、図6(b)は図6(a)中のI-I線に沿った断面図である。なお、図6(a)は、図6(b)に示す金属層151~156のうち最上層の金属層151を除いたものが示されている。
【0034】
図6(a)及び(b)に示すように、液管140の内側の管壁142に接触するようにして多孔質体150が設けられている。多孔質体150は液管140に沿って凝縮器120から蒸発器110まで延びており、液管140内の流路146は、多孔質体150と外側の管壁143との間に形成されている。多孔質体150は、管壁142に接触して、一体的に形成されている。また、流路146は、液管140内に設けられた空間からなり、管壁143に接触して設けられている。このように、液管140の内側(管壁142側)に多孔質体150が一つ設けられており、液管140の外側(管壁143側)に流路146が一つ設けられている。言い換えれば、注入口141と対向する管壁面(管壁142)に沿って多孔質体150が設けられている。そして、注入口141が設けられている管壁面(管壁143)側は、空間からなる流路146が設けられている。注入口141は流路146に連通している。
【0035】
ここで、液管140及び多孔質体150の構成について説明する。図7は、2層目から5層目までの各金属層における有底孔の配置を例示する平面図である。図6(b)における多孔質体150の断面は、図7中のII-II線に沿った断面に相当する。
【0036】
液管140及び多孔質体150は、例えば、金属層151~156の6層が積層された構造とすることができる。金属層151~156は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層151~156の各々の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。なお、金属層151~156は銅層には限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。また、金属層の積層数は限定されず、5層以下や7層以上の金属層を積層してもよい。
【0037】
なお、図6(b)及び図7において、金属層151~156の積層方向をZ方向、Z方向に垂直な平面内の任意の方向をX方向、この平面内においてX方向と直交する方向をY方向としている(以降の図も同様)。
【0038】
液管140及び多孔質体150において、1層目(一方の最外層)の金属層151及び6層目(他方の最外層)の金属層156には、孔や溝は形成されていない。これに対して、図6(b)及び図7(a)に示すように、2層目の金属層152には、多孔質体150内で、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔152xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔152yとが、それぞれ複数個形成されている。図6(b)に示すように、金属層152には、流路146を構成する開口部152aも形成されている。開口部152aは、金属層152を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。
【0039】
有底孔152xと有底孔152yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。また、有底孔152xと有底孔152yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔152xと有底孔152yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔152zを形成している。Y方向に交互に配置された有底孔152xと有底孔152yとは、所定間隔を有して形成されており、平面視で重複していない。そのため、Y方向に交互に配置された有底孔152xと有底孔152yとは、細孔を形成していない。しかし、これに限らず、Y方向における有底孔152xと有底孔152yの配置は、平面視で重複し、細孔を形成してもよい。
【0040】
有底孔152x及び152yは、例えば、直径が100μm~300μm程度の円形とすることができるが、楕円形や多角形等の任意の形状として構わない。有底孔152x及び152yの深さは、例えば、金属層152の厚さの半分程度とすることができる。隣接する有底孔152xの間隔Lは、例えば、100μm~400μm程度とすることができる。隣接する有底孔152yの間隔Lは、例えば、100μm~400μm程度とすることができる。
【0041】
有底孔152x及び152yの内壁は、底面側から開口側に向かって拡幅するテーパ形状とすることができる。しかし、これに限らず、有底孔152x及び152yの内壁は、底面に対して垂直であっても構わない。また、有底孔152x及び152yの内壁は、湾曲する半円形状でも構わない。細孔152zの短手方向の幅Wは、例えば、10μm~50μm程度とすることができる。また、細孔152zの長手方向の幅Wは、例えば、50μm~150μm程度とすることができる。
【0042】
図6(b)及び図7(b)に示すように、3層目の金属層153には、多孔質体150内で、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔153xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔153yとが、それぞれ複数個形成されている。図6(b)に示すように、金属層153には、流路146を構成する開口部153aも形成されている。開口部153aは、金属層153を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。
【0043】
金属層153では、有底孔153xのみがX方向に配置された列と、有底孔153yのみがX方向に配置された列とが、Y方向に交互に配置されている。Y方向に交互に配置された列において、隣接する列の有底孔153xと有底孔153yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔153zを形成している。
【0044】
但し、細孔153zを形成する隣接する有底孔153xと有底孔153yとは、中心位置がX方向にずれている。言い換えれば、細孔153zを形成する有底孔153xと有底孔153yとは、X方向及びY方向に対して斜め方向に交互に配置されている。有底孔153x及び153y、細孔153zの形状等は、例えば、有底孔152x及び152y、細孔152zの形状等と同様とすることができる。
【0045】
金属層152の有底孔152yと、金属層153の有底孔153xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層152と金属層153との界面には、細孔は形成されない。しかし、これに限らず、X方向及びY方向において、有底孔153xと有底孔153yの配置を適宜変更することで、金属層152と金属層153との界面には、細孔を形成してもよい。
【0046】
図6(b)及び図7(c)に示すように、4層目の金属層154には、多孔質体150内で、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔154xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔154yとが、それぞれ複数個形成されている。図6(b)に示すように、金属層154には、流路146を構成する開口部154aも形成されている。開口部154aは、金属層154を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。
【0047】
有底孔154xと有底孔154yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。また、有底孔154xと有底孔154yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔154xと有底孔154yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔154zを形成している。Y方向に交互に配置された有底孔154xと有底孔154yとは、所定間隔を有して形成されており、平面視で重複していない。そのため、Y方向に交互に配置された有底孔154xと有底孔154yとは、細孔を形成していない。しかし、これに限らず、Y方向における有底孔154x及び154yの配置は、平面視で重複して、細孔を形成してもよい。有底孔154x及び154y、細孔154zの形状等は、例えば、有底孔152x及び152y、細孔152zの形状等と同様とすることができる。
【0048】
金属層153の有底孔153yと、金属層154の有底孔154xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層153と金属層154との界面には、細孔は形成されない。しかし、これに限らず、X方向及びY方向において、有底孔154xと有底孔154yの配置を適宜変更することで、金属層153と金属層154との界面には、細孔を形成してもよい。
【0049】
図6(b)及び図7(d)に示すように、5層目の金属層155には、多孔質体150内で、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔155xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔155yとが、それぞれ複数個形成されている。図6(b)に示すように、金属層155には、流路146を構成する開口部155aも形成されている。開口部155aは、金属層155を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。
【0050】
金属層155では、有底孔155xのみがX方向に配置された列と、有底孔155yのみがX方向に配置された列とが、Y方向に交互に配置されている。Y方向に交互に配置された列において、隣接する列の有底孔155xと有底孔155yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔155zを形成している。
【0051】
但し、細孔155zを形成する隣接する有底孔155xと有底孔155yとは、中心位置がX方向にずれている。言い換えれば、細孔155zを形成する有底孔155xと有底孔155yとは、X方向及びY方向に対して斜め方向に交互に配置されている。有底孔155x及び155y、細孔155zの形状等は、例えば、有底孔152x及び152y、細孔152zの形状等と同様とすることができる。
【0052】
金属層154の有底孔154yと、金属層155の有底孔155xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層154と金属層155との界面には、細孔は形成されない。しかし、これに限らず、X方向及びY方向において、有底孔155x及び有底孔155yの配置を適宜変更することで、金属層154と金属層155との界面には、細孔を形成してもよい。
【0053】
各金属層に形成された細孔同士は互いに連通しており、互いに連通する細孔は多孔質体150内に三次元的に広がっている。そのため、作動流体Cは、毛細管力により、互いに連通する細孔内を三次元的に広がる。
【0054】
このように、液管140には多孔質体150が設けられており、液管140内の液相の作動流体Cは、多孔質体150に生じる毛細管力によって蒸発器110まで誘導される。
【0055】
その結果、蒸発器110からのヒートリーク等によって液管140内を蒸気Cvが逆流しようとしても、多孔質体150から液相の作動流体Cに作用する毛細管力で蒸気Cvを押し戻すことができ、蒸気Cvの逆流を防止することが可能となる。
【0056】
更に、多孔質体150は蒸発器110内にも設けられている。蒸発器110内の多孔質体150のうち、液管140寄りの部分には液相の作動流体Cが浸透する。この際、多孔質体150から作動流体Cに作用する毛細管力が、ループ型ヒートパイプ100内で作動流体Cを循環させるポンピング力となる。
【0057】
しかも、この毛細管力は蒸発器110内の蒸気Cvに対抗するため、蒸気Cvが液管140に逆流するのを抑制することが可能となる。
【0058】
なお、液管140には作動流体Cを注入するための注入口141が形成されているが、注入口141は塞がれており、ループ型ヒートパイプ100内は気密に保たれる。
【0059】
ここで、第1の実施形態における液管140に注入された作動流体Cの挙動について説明する。図8は、第1の実施形態における液管140内の作動流体Cを示す模式図である。
【0060】
注入口141から注入された液相の作動流体Cは流路146内に広がり、流路146は作動流体Cで満たされる。そして、液管140の内側は、多孔質体150の毛細管力により、作動流体Cが引き込まれて充填される。従来のように液管が、多孔質体を挟んで両側(内側と外側)に流路が設けられていないため、内側の流路において、部分的に作動流体Cが流れ込むことがなく、気泡の残存を防ぐことができる。
【0061】
従って、第1の実施形態によれば、流路146内において気泡による液相の作動流体Cの流動の妨げを抑制し、優れた熱輸送性能を得ることができる。また、気泡に起因する液管140の膨れを抑制することができる。
【0062】
[ループ型ヒートパイプの製造方法]
次に、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造方法について、多孔質体の製造工程を中心に説明する。図9図10は、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図であり、図6(b)に対応する断面を示している。
【0063】
まず、図9(a)に示す工程では、図1の平面形状に形成された金属シート152bを準備する。そして、金属シート152bの上面にレジスト層310を形成し、金属シート152bの下面にレジスト層320を形成する。金属シート152bは、最終的に金属層152となる部材であり、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム合金等から形成することができる。金属シート152bの厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。レジスト層310及び320としては、例えば、感光性のドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0064】
次に、図9(b)に示す工程では、金属シート152bの多孔質体150を形成する領域において、レジスト層310を露光及び現像して、金属シート152bの上面を選択的に露出する開口部310xを形成する。また、レジスト層320を露光及び現像して、金属シート152bの下面を選択的に露出する開口部320xを形成する。開口部310x及び320xの形状及び配置は、図9(a)に示した有底孔152x及び152yの形状及び配置に対応するように形成する。
【0065】
図9(b)に示すように、レジスト層310の露光及び現像の際には、流路146を形成する領域において、金属シート152bの上面を選択的に露出する開口部310yも形成する。また、レジスト層320の露光及び現像の際には、流路146を形成する領域において、金属シート152bの下面を選択的に露出する開口部320yも形成する。
【0066】
次に、図9(c)に示す工程では、開口部310x及び310y内に露出する金属シート152bを金属シート152bの上面側からハーフエッチングすると共に、開口部320x及び320y内に露出する金属シート152bを金属シート152bの下面側からハーフエッチングする。これにより、金属シート152bの上面側に有底孔152xが形成され、下面側に有底孔152yが形成されると共に、金属シート152bを貫通する開口部152aが形成される。また、表裏でX方向に交互に配置された開口部310xと開口部320xとは、平面視で部分的に重複しているため、重複する部分が連通して細孔152zが形成される。金属シート152bのハーフエッチングには、例えば、塩化第二鉄溶液を用いることができる。
【0067】
次に、図9(d)に示す工程では、レジスト層310及び320を剥離液により剥離する。これにより、金属層152が完成する。
【0068】
次に、図10(a)に示す工程では、孔や溝が形成されていないベタ状の金属層151及び156を準備する。また、金属層152と同様の方法により、金属層153、154、及び155を形成する。金属層153、154、及び155に形成される有底孔、細孔及び開口部の位置は、例えば、図7に示した通りである。
【0069】
次に、図10(b)に示す工程では、図10(a)に示す順番で各金属層を積層し、加圧及び加熱により固相接合を行う。これにより、隣接する金属層同士が直接接合され、蒸発器110、凝縮器120、蒸気管130、及び液管140を有するループ型ヒートパイプ100が完成し、蒸発器110及び液管140に多孔質体150が形成される。また、多孔質体150が液管140の内側の管壁142と一体に形成され、外側の管壁143と多孔質体150との間に作動流体Cを蒸発器110に誘導する空間からなる微細な流路146が形成される。その後、真空ポンプ等を用いて液管140内を排気した後、注入口141から流路146内に作動流体Cを注入し、その後、注入口141を封止する。
【0070】
ここで、固相接合とは、接合対象物同士を溶融させることなく固相(固体)状態のまま加熱して軟化させ、更に加圧して塑性変形を与えて接合する方法である。なお、固相接合によって隣接する金属層同士を良好に接合できるように、金属層151~156の全ての材料を同一にすることが好ましい。
【0071】
このように、各金属層の両面側から形成した有底孔を部分的に連通させて各金属層内に細孔を設ける構造とすることで、貫通孔が形成された金属層同士を貫通孔が部分的に重複するように積層する従来の細孔の形成方法の問題点を解消できる。すなわち、金属層同士を積層する際の位置ずれや、金属層を複数積層する際の加熱処理の際の金属層の膨張及び収縮による位置ずれが生じることがなく、一定の大きさの細孔を金属層内に形成できる。
【0072】
これにより、細孔の大きさがばらついて細孔により発現する毛細管力が低下することを防止可能となり、蒸発器110から液管140に蒸気Cvが逆流することを抑制する効果を安定的に得ることができる。
【0073】
また、金属層同士を積層する部分では、隣接する有底孔全体を重複させる構造とすることで、金属層同士が接する面積を大きくできるため、強固な接合が可能となる。
【0074】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、液管140の外側の管壁143の形状の点で第1の実施形態と相違する。図11は、第2の実施形態における液管140及び多孔質体150を例示する断面図である。
【0075】
第2の実施形態に係るループ型ヒートパイプは、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプと同様に、液管140及び多孔質体150を有する。多孔質体150は、第1の実施形態と同様に構成され、かつ、第1の実施形態と同様に、液管140のループにおける内側の管壁142に接触するようにして設けられている。
【0076】
一方、液管140に関しては、図11に示すように、管壁143側において、開口部153a及び155aが開口部152a及び154aよりも大きく形成され、開口部153a及び155aの側面が開口部152a及び154aの側面よりも後退して凹んでいる。このように、第2の実施形態では、管壁143側において、開口部153a及び155aの側面のX方向の位置と開口部152a及び154aの側面のX方向の位置にずれがあり、金属層153に溝253が形成され、金属層155に溝255が形成されている。例えば、溝253及び255は、液管140に沿って延びる(Y方向において、流路146と略平行に延びる)ように形成されている。
【0077】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0078】
第2の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、流路146の管壁143側の壁面に溝253及び255が形成されているため、溝253及び255によって液相の作動流体Cの流動が促進される。従って、熱輸送性能を更に向上することができる。
【0079】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、液管140の外側の管壁143の形状の点で第1及び第2の実施形態と相違する。図12は、第3の実施形態における液管140及び多孔質体150を例示する断面図である。
【0080】
第3の実施形態に係るループ型ヒートパイプは、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプと同様に、液管140及び多孔質体150を有する。多孔質体150は、第1の実施形態と同様に構成され、かつ、第1の実施形態と同様に、液管140のループにおける内側の管壁142に接触するようにして設けられている。
【0081】
一方、液管140に関しては、図12に示すように、管壁143側において、開口部152aの縁に、有底孔152xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝352が形成されている。つまり、金属層152の上面に、流路146に繋がるように溝352が形成されている。溝352の深さは、例えば、金属層152の厚さの半分程度とすることができる。
【0082】
また、図12に示すように、管壁143側において、開口部153aの縁に、有底孔153xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝353が形成されている。つまり、金属層153の上面に、流路146に繋がるように溝353が形成されている。溝353の深さは、例えば、金属層153の厚さの半分程度とすることができる。
【0083】
また、図12に示すように、管壁143側において、開口部154aの縁に、有底孔154xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝354が形成されている。つまり、金属層154の上面に、流路146に繋がるように溝354が形成されている。溝354の深さは、例えば、金属層154の厚さの半分程度とすることができる。
【0084】
また、図12に示すように、管壁143側において、開口部155aの縁に、有底孔155xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝355が形成されている。つまり、金属層155の上面に、流路146に繋がるように溝355が形成されている。溝355の深さは、例えば、金属層155の厚さの半分程度とすることができる。
【0085】
例えば、溝352~355は、液管140に沿って延びる(Y方向において、流路146と略平行に延びる)ように形成されている。
【0086】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0087】
第3の実施形態によっても第1及び第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、流路146の管壁143側の壁面に溝352~355が形成されているため、溝352~355によって液相の作動流体Cの流動が促進される。更に、溝の数が第2の実施形態より多いため、熱輸送性能をより一層向上することができる。
【0088】
例えば、溝352は次のようにして有底孔152xと並行して形成することができる。すなわち、有底孔152xを形成する際に用いるレジスト層310に開口部310xを形成する際に、溝352の形成予定領域にも開口部を形成し、金属シート152bのハーフエッチングを行う。このようにして有底孔152xと並行して溝352を形成することができる。溝352と同様に、例えば、溝353~355は有底孔153x~155xと並行して形成することができる。
【0089】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、液管140の外側の管壁143の形状の点で第1~第3の実施形態と相違する。図13は、第4の実施形態における液管140及び多孔質体150を例示する断面図である。
【0090】
第4の実施形態に係るループ型ヒートパイプは、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプと同様に、液管140及び多孔質体150を有する。多孔質体150は、第1の実施形態と同様に構成され、かつ、第1の実施形態と同様に、液管140のループにおける内側の管壁142に接触するようにして設けられている。
【0091】
一方、液管140に関しては、図13に示すように、管壁143側において、開口部152aの縁に、溝352だけでなく、有底孔152yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝452が形成されている。つまり、金属層152の下面に、流路146に繋がるように溝452が形成されている。溝452の深さは、例えば、金属層152の厚さの半分程度とすることができる。
【0092】
また、図13に示すように、管壁143側において、開口部153aの縁に、溝353だけでなく、有底孔153yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝453が形成されている。つまり、金属層153の下面に、流路146に繋がるように溝453が形成されている。溝453の深さは、例えば、金属層153の厚さの半分程度とすることができる。
【0093】
また、図13に示すように、管壁143側において、開口部154aの縁に、溝354だけでなく、有底孔154yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝454が形成されている。つまり、金属層154の下面に、流路146に繋がるように溝454が形成されている。溝454の深さは、例えば、金属層154の厚さの半分程度とすることができる。
【0094】
また、図13に示すように、管壁143側において、開口部155aの縁に、溝355だけでなく、有底孔155yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝455が形成されている。つまり、金属層155の下面に、流路146に繋がるように溝455が形成されている。溝455の深さは、例えば、金属層155の厚さの半分程度とすることができる。
【0095】
溝452と溝353とが繋がって溝472が形成され、溝453と溝354とが繋がって溝473が形成され、溝454と溝355とが繋がって溝474が形成されている。
【0096】
更に、図13に示すように、管壁143側において、溝352と繋がるようにして、金属層151に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝451が形成されている。つまり、金属層151の下面に、流路146に繋がるように溝451が形成されている。溝451の深さは、例えば、金属層151の厚さの半分程度とすることができる。溝451と溝352とが繋がって溝471が形成されている。
【0097】
更に、図13に示すように、管壁143側において、溝455と繋がるようにして、金属層156に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝356が形成されている。つまり、金属層156の上面に、流路146に繋がるように溝356が形成されている。溝356の深さは、例えば、金属層156の厚さの半分程度とすることができる。溝455と溝356とが繋がって溝475が形成されている。
【0098】
例えば、溝471~475は、液管140に沿って延びる(Y方向において、流路146と略平行に延びる)ように形成されている。
【0099】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0100】
第4の実施形態によっても第1~第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、流路146の管壁143側の壁面に溝471~475が形成されているため、溝471~475によって液相の作動流体Cの流動が促進される。更に、溝の数が第3の実施形態より多いため、熱輸送性能をより一層向上することができる。
【0101】
例えば、溝452は次のようにして有底孔152yと並行して形成することができる。すなわち、図9(b)において、レジスト層320に開口部320xを形成する際に、溝452の形成予定領域にも開口部を形成し、金属シート152bのハーフエッチングを行う。このようにして有底孔152yと並行して溝452を形成することができる。溝452と同様に、例えば、溝453~455は有底孔153y~155yと並行して形成することができる。
【0102】
また、金属層151及び156の溝451及び356も、金属層151及び156の溝451及び356の形成予定領域に開口部を備えたレジスト層を用いてハーフエッチングすることにより形成することができる。
【0103】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、液管140の外側の管壁143にも多孔質体が設けられている点で第1~第4の実施形態と相違する。図14は、第5の実施形態に係るループ型ヒートパイプの液管の内部の構成を示す図である。図14(a)は平面模式図であり、図14(b)は図14(a)中のI-I線に沿った断面図である。なお、図14(a)は、図14(b)に示す金属層151~156のうち最上層の金属層151を除いたものが示されている。
【0104】
第1~第4の実施形態では、液管140の管壁142側に、管壁142と接して一体的に多孔質体150を設け、液管140の管壁143側には、流路146が設けられていた。しかし、これに限らず、多孔質体に外側の管壁143に接触して一体的に設けられた部分が含まれていてもよい。
【0105】
図14(a)及び(b)に示すように、液管140の内側の管壁142に接触するようにして多孔質体150aが設けられている。多孔質体150aは多孔質体150と同様の断面構造を有する。すなわち、図14(b)に示すように、多孔質体150aは金属層152から金属層155にわたって形成されている。
【0106】
第5の実施形態では、液管140のループにおける外側の管壁143に接触するようにして多孔質体150bが設けられている。多孔質体150bは、液管140に沿って凝縮器120から注入口141の近傍まで延びている。多孔質体150bは多孔質体150と同様の断面構造を有する。すなわち、図14(b)に示すように、多孔質体150bは金属層152から金属層155にわたって形成されている。
【0107】
更に、多孔質体150bの注入口141側の端部と多孔質体150aとの間に、これらを互いに繋ぐ多孔質体150cが設けられている。多孔質体150cは、図14(b)に示すように、金属層152~155のうちの一部、例えば金属層152及び155のみに形成されており、金属層153、154には開口部153a、154aが形成されている。
【0108】
液管140内の流路146は、多孔質体150cよりも凝縮器120側では、多孔質体150aと多孔質体150bとの間に形成されている。また、流路146は、多孔質体150cが設けられた領域では、開口部153a及び154aに形成されている。また、流路146は、多孔質体150cよりも蒸発器110側では、多孔質体150aと管壁143との間に形成されている。このように、この第5の実施形態においても、液管140内の流路146は作動流体Cを蒸発器110に誘導する空間からなる。
【0109】
このような第5の実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、作動流体Cの注入後の気泡の残存を抑制することができる。
【0110】
また、他の変形例として、少なくとも液管140の内側の管壁142に多孔質体150が片寄って設けられ、液相の作動流体Cを凝縮器120から蒸発器110まで誘導できるのであれば、注入口141を迂回しながら外側の管壁143に接触するようにして、多孔質体が凝縮器120から蒸発器110まで連なっていてもよい。
【0111】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0112】
例えば、多孔質体150の領域において、金属層151や金属層156に有底孔を形成してもよい。また、流路146の領域において、流路146に露出する金属層151や金属層156に有底孔を形成してもよい。金属層151や金属層156にも有底孔を形成することで、更に熱輸送性能をより一層向上することができる。
【符号の説明】
【0113】
100 ループ型ヒートパイプ
110 蒸発器
120 凝縮器
130 蒸気管
140 液管
141 注入口
142、143 管壁
146 流路
150、150a、150b、150c 多孔質体
253、255、352~356、451~455、471~475 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14