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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】LIN受信機
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20230303BHJP
【FI】
H04L25/02 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019005853
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020115598
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真也
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-500839(JP,A)
【文献】特開2005-142662(JP,A)
【文献】特表2010-525701(JP,A)
【文献】特開2015-035706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0265344(US,A1)
【文献】特開2000-032067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LIN入力電圧のレベルに応じて回路動作をスリープ状態と復帰状態に切り替え可能とする一方、前記LIN入力電圧と電源電圧の分圧電圧との比較結果に基づいてRXD出力の復帰に対応した電圧を出力可能としたLIN受信機であって、
前記LIN入力電圧が低下すると動作状態とされて定電圧を出力する定電圧回路と、
前記定電圧回路に電源電圧を供給する電源とグランドとの間に直列接続されて設けられた複数の分圧抵抗器及び第1のスイッチと、
前記複数の分圧抵抗器により得られた分圧電圧と前記LIN入力電圧とを比較するヒステリシスコンパレータとを具備し、
前記第1のスイッチ及び前記ヒステリシスコンパレータは、前記定電圧回路の定電圧出力により動作状態とされ、
前記ヒステリシスコンパレータは、前記LIN入力電圧が前記分圧電圧を下回った際に、RXD出力の復帰を示す論理値Lowに相当する電圧を出力し、
前記定電圧回路は、前記LIN入力電圧が所定の電圧以下に低下した場合に動作を開始し、前記所定の電圧は、前記分圧電圧よりも高いことを特徴とするLIN受信機。
【請求項2】
前記定電圧回路は、P型の第1のMOSトランジスタと、N型の第2のMOSトランジスタと、第1のツエナーダイオードと、第1の抵抗器とを具備し、
前記第1のMOSトランジスタのゲートは前記LIN入力電圧が印加可能とされ、ソースは前記第1の抵抗器を介して前記電源に接続され、ドレインは、前記第1のツエナーダイオードのカソード及び前記第2のMOSトランジスタのゲートに接続される一方、前記第1のツエナーダイオードのアノードはグランドに接続され、
前記第2のMOSトランジスタは、ドレインが前記電源に接続される一方、ソース電圧が前記ヒステリシスコンパレータの電源電圧とされると共に前記第1のスイッチの開閉成を制御する制御信号とされてなることを特徴とする請求項1記載のLIN受信機。
【請求項3】
LIN入力電圧のレベルに応じて回路動作をスリープ状態と復帰状態に切り替え可能とする一方、前記LIN入力電圧と電源電圧の分圧電圧との比較結果に基づいてRXD出力の復帰に対応した電圧を出力可能としたLIN受信機であって、
前記LIN入力電圧が低下すると動作状態とされて定電圧と基準電圧の2種類の電圧を出力する定電圧回路と、
前記定電圧回路に電源電圧を供給する電源とグランドとの間に直列接続されて設けられた第3及び第4の抵抗器並びに第1のスイッチと、
前記LIN入力電圧が印加されるノードとグランドとの間に直列接続されて設けられた第6及び第7の抵抗器並びに第2のスイッチと、
前記第3及び第4の抵抗器による分圧電圧と前記第6及び第7の抵抗器による分圧電圧とを比較するヒステリシスコンパレータと、
前記第3及び第4の抵抗器の相互の接続点と前記ヒステリシスコンパレータの反転入力端子との間に設けられた第3のスイッチと、
前記第6及び第7の抵抗器の相互の接続点と前記ヒステリシスコンパレータの非反転入力端子との間に設けられた第4のスイッチとを具備し、
前記第1及び第2のスイッチ及び前記ヒステリシスコンパレータは、前記定電圧回路の定電圧出力により動作状態とされ、
前記第3及び第4のスイッチは、前記基準電圧出力により動作状態とされ、
前記ヒステリシスコンパレータは、前記LIN入力電圧の分圧電圧が印加された非反転入力端子の電圧が反転入力端子の電圧を下回った際に、RXD出力の復帰を示す論理値Lowに相当する電圧を出力することを特徴とするLIN受信機。
【請求項4】
LIN入力電圧のレベルに応じて回路動作をスリープ状態と復帰状態に切り替え可能とする一方、前記LIN入力電圧と電源電圧の分圧電圧との比較結果に基づいてRXD出力の復帰に対応した電圧を出力可能としたLIN受信機であって、
前記LIN入力電圧が低下すると動作状態とされて定電圧と基準電圧の2種類の電圧を出力する定電圧回路と、
前記定電圧回路に電源電圧を供給する電源とグランドとの間に直列接続されて設けられた第3及び第4の抵抗器並びに第1のスイッチと、
前記LIN入力電圧が印加されるノードとグランドとの間に直列接続されて設けられた第6及び第7の抵抗器並びに第2のスイッチと、
前記第3及び第4の抵抗器による分圧電圧と前記第6及び第7の抵抗器による分圧電圧とを比較するコンパレータと、
前記第3及び第4の抵抗器の相互の接続点と前記コンパレータの反転入力端子との間に設けられた第3のスイッチと、
前記第6及び第7の抵抗器の相互の接続点と前記コンパレータの非反転入力端子との間に設けられた第4のスイッチと、
前記第6及び第7の抵抗器の相互の接続点とグランドとの間に直列接続されて設けられた第8の抵抗器及び第5のスイッチと、
前記コンパレータの出力を反転するインバータとを具備し、
前記第1及び第2のスイッチ及び前記コンパレータは、前記定電圧回路の定電圧出力により動作状態とされ、
前記第3及び第4のスイッチは、前記基準電圧出力により動作状態とされ、
前記第5のスイッチは、前記インバータの出力により動作状態とされ、
前記コンパレータは、前記第5のスイッチの開閉成によりヒステリシスコンパレータとして動作可能とされ、前記LIN入力電圧の分圧電圧が印加された非反転入力端子の電圧が反転入力端子の電圧を下回った際に、RXD出力の復帰を示す論理値Lowに相当する電圧を出力することを特徴とするLIN受信機。
【請求項5】
前記定電圧回路は、P型の第1のMOSトランジスタと、N型の第2のMOSトランジスタと、第1及び第2のツエナーダイオードと、第1及び第5の抵抗器とを具備し、
前記第1のMOSトランジスタのゲートは前記第5の抵抗器を介して前記LIN入力電圧が印加可能とされると共に、前記第2のツエナーダイオードのアノードが接続され、ソースには、前記第1の抵抗器の一端が接続され、当該第1の抵抗器の他端は、前記第2のツエナーダイオードのカソードと共に前記電源に接続され、ドレインは、前記第1のツエナーダイオードのカソード及び前記第2のMOSトランジスタのゲートに接続される一方、前記第1のツエナーダイオードのアノードはグランドに接続され、前記第1のツエナーダイオードのカソードの電圧が前記基準電圧とされ、
前記第2のMOSトランジスタは、ドレインが前記電源に接続される一方、ソース電圧が前記コンパレータの電源電圧とされると共に前記第1及び第2のスイッチの開閉成を制御する制御信号とされてなることを特徴とする請求項3、又は、請求項4記載のLIN受信機。
【請求項6】
前記第3のスイッチは、N型の第3のMOSトランジスタを、前記第4のスイッチは、N型の第4のMOSトランジスタを、それぞれ用いてなり、
前記第3のMOSトランジスタのドレインは、前記第3及び第4の抵抗器の相互の接続点に、ソースは、前記コンパレータの反転入力端子に、それぞれ接続される一方、ゲートには、前記第4のMOSトランジスタのゲートと共に基準電圧が印加され、
前記第4のMOSトランジスタのドレインは、前記第6及び第7の抵抗器の相互の接続点に、ソースは、前記コンパレータの非反転入力端子に、それぞれ接続されてなることを特徴とする請求項3乃至請求項5いずれか記載のLIN受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LIN(Local Interconnect Network)トランシーバを構成するLIN受信機に係り、特に、スリープ状態における消費電流の低減を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の回路としては、例えば、特許文献1や特許文献2等において、スリープ状態における消費電流の削減を図った回路が種々提案されている。
すなわち、特許文献1に開示された回路にあっては、初段の消費電流は常時発生するものの、入力電圧のレベル判定のために必要な電圧生成に用いられる分圧用の抵抗器の消費電流の削減を可能としている。
また、特許文献2に開示された回路にあっては、スリープ状態における消費電流をリーク電流程度まで抑圧可能としているが、電源電圧のレベル判定のために必要な電圧生成用の分圧抵抗器を有しない構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4328295号公報
【文献】特許第5449135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、上述のように種々の回路構成が提案されているが、レベル判定に必要な電圧生成のための分圧抵抗器を備えた回路構成においてスリーブ時の消費電流をリーク電流程度に低減可能とするものは無かった。
近年、車載用半導体回路に求められる信頼性が高くなってきており、このため、例えば、低電圧誤動作防止機能を備えた回路にあっては、閾値電圧の生成のための分圧抵抗器が必要になる。また、車の電装品は、年々増加傾向にあり、それに伴い待機電力の削減も以前にも増して重要な課題となってきている。
このため、近時のLIN受信機には、分圧抵抗器による分圧電圧の生成を可能とすると共にスリープ時の消費電流をリーク電流程度に削減することが求められている。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、分圧抵抗器による分圧電圧の生成を可能とすると共にスリープ状態の消費電流を極力零とすることができるLIN受信機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るLIN受信機は、
LIN入力電圧のレベルに応じて回路動作をスリープ状態と復帰状態に切り替え可能とする一方、前記LIN入力電圧と電源電圧の分圧電圧との比較結果に基づいてRXD出力の復帰に対応した電圧を出力可能としたLIN受信機であって、
前記LIN入力電圧が低下すると動作状態とされて定電圧を出力する定電圧回路と、
前記定電圧回路に電源電圧を供給する電源とグランドとの間に直列接続されて設けられた複数の分圧抵抗器及び第1のスイッチと、
前記複数の分圧抵抗器により得られた分圧電圧と前記LIN入力電圧とを比較するヒステリシスコンパレータとを具備し、
前記第1のスイッチ及び前記ヒステリシスコンパレータは、前記定電圧回路の定電圧出力により動作状態とされ、
前記ヒステリシスコンパレータは、前記LIN入力電圧が前記分圧電圧を下回った際に、RXD出力の復帰を示す論理値Lowに相当する電圧を出力し、
前記定電圧回路は、前記LIN入力電圧が所定の電圧以下に低下した場合に動作を開始し、前記所定の電圧は、前記分圧電圧よりも高く設定されてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来と異なり、電流電圧変換を用いることなく、スイッチとトランジスタの閾値電圧による動作の切り替えによって抵抗分圧における消費電力の削減を可能としたので、スリープ状態における消費電力をほぼ0Aとすることができるという効果を奏するものである。
本発明における消費電流削減のための構成は、例えば、LINの入力ヒステリシス電圧の生成や低電圧誤動作防止機能を備える場合の閾値電圧の生成においても適用可能であり、確実な消費電力の削減効果を期待することができる。
さらに、簡易な回路構成で少数の素子で実現できるため、ICにおけるチップの回路エリアや基板での実装面積の縮小化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態におけるLIN受信機の第1の基本回路構成例を示す回路図である。
図2図1に示された第1の基本回路構成例の具体的な回路構成例を示す回路図である。
図3】本発明の実施の形態におけるLIN受信機の第2の基本回路構成例を示す回路図である。
図4図3に示された第2の基本回路構成例の具体的な回路構成例を示す回路図である。
図5】本発明の実施の形態におけるLIN受信機の第3の基本回路構成例を示す回路図である。
図6図5に示された第3の基本回路構成例の具体的な回路構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図6を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、第1の基本回路構成例について、図1を参照しつつ説明する。
この第1の基本回路構成例のLIN受信機は、ヒステリシスコンパレータ(図1においては「X1」と表記)11と、定電圧回路50と、第1のスイッチ(図1においては「S1」と表記)21を主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0010】
かかるLIN受信機は、詳細は後述するようにスリープ・復帰機能を有して、ヒステリシスコンパレータ11におけるLIN入力電圧と閾値電圧との比較結果に応じたRXD出力電圧を出力するよう構成されている。
以下、具体的な構成について説明する。
定電圧回路50は、LIN入力端子(図1においては「LIN」と表記)41を介して入力されたLIN入力電圧が所定の電圧以下に低下した場合に動作を開始し、所定の定電圧VREGを出力するよう構成されてなるものである。
【0011】
この定電圧回路50の出力電圧は、ヒステリシスコンパレータ11の電源電圧として供給されると共に、第1のスイッチ21の開閉成を制御する制御信号として用いられるものとなっている。
かかる定電圧回路50は、バッテリー電源43からのバッテリー電圧VBの供給を電源電圧として動作するようになっている。
【0012】
また、バッテリー電源43とグランドとの間には、バッテリー電源43側から第3の抵抗器(図1においては「R3」と表記)33と、第4の抵抗器(図1においては「R4」と表記)34と、第1のスイッチ21が直列接続されて設けられている。
第3の抵抗器33と第4の抵抗器34の相互の接続点は、ヒステリシスコンパレータ11の反転入力端子に接続されている。
【0013】
第1のスイッチ21は、単極単投スイッチで、その開閉成が定電圧回路50の定電圧出力VREGにより制御されるよう構成されている。
また、ヒステリシスコンパレータ11は、その非反転入力端子にLIN入力電圧が印加されるようになっている一方、出力端子は、RXD出力端子(図1においては「RXD」と表示)42に接続されている。
なお、かかる構成のLIN受信機の回路動作については、以下に説明する具体回路例の動作説明を以て、その説明に代えることとする。
【0014】
次に、第1の基本回路構成に基づくより具体的な回路構成について、図2を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
図2に示されたLIN受信機は、第1及び第2のMOSトランジスタ(図1においては、それぞれ「M1」、「M2」と表記)1,2と、ヒステリシスコンパレータ11と、第1のツエナーダイオード(図1においては「D1」と表記)5と、第1のスイッチ21とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0015】
この具体回路例において、定電圧回路50は、第1及び第2のMOSトランジスタ1,2と、第1のツエナーダイオード5と、第1の抵抗器(図1においては「R1」と表記)31とから構成されている。
すなわち、まず、この回路例において、第1のMOSトランジスタ1には、P型のMOSトランジスタが、第2のMOSトランジスタ2には、N型のMOSトランジスタが、それぞれ用いられている。
【0016】
第1のMOSトランジスタ1のゲートは、LIN入力端子41とヒステリシスコンパレータ11の非反転入力端子に接続される一方、ソースは第1の抵抗器31を介してバッテリー電源43の正極に接続されている。また、第1のMOSトランジスタ1のドレインは、第2のMOSトランジスタ2のゲートと第1のツエナーダイオード5のカソードに接続されている。なお、第1のツエナーダイオード5のアノードは、グランドに接続されている。
【0017】
第2のMOSトランジスタ2のドレインは、バッテリー電源43の正極に接続されている。また、第2のMOSトランジスタ2のソースは、ヒステリシスコンパレータ11の電源印加端子(図示せず)に接続されて、ソース電圧がヒステリシスコンパレータ11の電源電圧として供給されるようになっている。
また、第2のMOSトランジスタ2のソースは、第1のスイッチ21の制御端子(図示せず)に接続されており、ソース電圧は第1のスイッチ21の開閉成の制御電圧として用いられるようになっている。
【0018】
なお、第1のスイッチ21は、例えば、MOSトランジスタを用いて構成される良く知られたスイッチ回路などを用いるのが好適である。
より具体的には、NMOSトランジスタのドレインを第4の抵抗器34に、ソースをグランドに、それぞれ接続する一方、ゲートを第2のMOSトランジスタ2のソースに接続した構成が好適である。
【0019】
また、かかる構成において、NMOSトランジスタがオフ状態となった時にゲート電圧が論理値LOWに相当する電圧となるように、ゲートとグランドとの間に定電流源を設ける構成としても好適である。
さらに、ヒステリシスコンパレータ11から出力されたRXD出力電圧は、バッファを介して出力する構成としても好適である。
【0020】
次に、かかる構成における動作について説明する。
上述した構成のLIN受信機においては、LIN入力端子41におけるLIN入力電圧が低下し、第1のMOSトランジスタ1のゲート電圧の閾値を下回ると第1のMOSトランジスタ1が導通状態となり、第1のツエナーダイオード5に電流が流れる。
【0021】
第1のツエナーダイオード5に電流が流れることで、ツエナー電圧が発生し、これにより第2のMOSトランジスタ2のゲート電圧の上昇と共に、ソース電圧が上昇する。そのため、第1のスイッチ21が動作して閉成状態となると共に、ヒステリシスコンパレータ11に電源電圧が供給されて動作状態となる。
【0022】
その結果、バッテリ電圧VBを第3及び第4の抵抗器33,34により抵抗分圧した分圧電圧がヒステリシスコンパレータ11の反転入力端子に印加され、非反転入力端子に印加されているLIN入力電圧との比較が行われる。
そして、LIN入力電圧が反転入力端子の閾値電圧を下回ると、ヒステリシスコンパレータ11からは、RXD出力の復帰を示す論理値Lowに相当する電圧が出力されることとなる。
【0023】
一方、LIN入力電圧が高い場合、第1のMOSトランジスタ1がオン状態とならないため、第1のツエナーダイオード5には電流が流れない。
そのため、第2のMOSトランジスタ2のゲートは、第1のツエナーダイオード5の内部抵抗により論理値Lowに相当する電圧レベルとなり、第2のMOSトランジスタ2は非導通状態となる。
したがって、第1のスイッチ21が非動作状態で開成状態となると共に、ヒステリシスコンパレータ11への電源供給は停止されることとなる。
【0024】
第1のスイッチ21の開成により、第3及び第4の抵抗器33,34に電流は流れないため、結局、スリープ状態において、バッテリー電源43からグランドへの電流経路は、全て遮断されることとなり、消費電流はほぼ0Aとなる。
なお、図2に示された回路において、第1のツエナーダイオード5は、所定の電圧を発生させるためのものであるので、所望する所定の電圧を発生できれば、第1のツエナーダイオード5に限定される必要は無く、例えば、ダイオードを所望の電圧に応じて複数直列接続した構成等に代えても良い。
【0025】
次に、第2の基本回路構成例について、図3を参照しつつ説明する。
なお、図1図2に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
第2の基本回路構成例におけるLIN受信機は、ヒステリシスコンパレータ11と、定電圧回路50Aと、第1乃至第4のスイッチ(図3においては、それぞれ「S1」、「S2」、「S3」、「S4」と表記)21~24とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
かかるLIN受信機は、特に、バッテリー電圧VBが高い一方、使用するトランジスタの耐圧が低い場合の回路動作の安全確保を図ったものである(詳細は後述)。
【0026】
定電圧回路50Aは、所定の定電圧VREGを出力可能に構成さるた点は、先の図1図2における定電圧回路50と同様であるが、さらに、基準電圧VREFを出力可能に構成されたものである点が、定電圧回路50と異なっている。
定電圧回路50Aから出力された定電圧VREGは、ヒステリシスコンパレータ11に電源電圧として供給されると共に、第1及び第2のスイッチ21,22の開閉成の制御信号として用いられるものとなっている。
なお、バッテリー電源43とグランド間における第3及び第4の抵抗器33,34と第1のスイッチ21との接続は、図1図2に示された回路と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略することとする。
【0027】
一方、定電圧回路50Aの基準電圧VREFは、第3及び第4のスイッチ23,24の開閉成の制御信号として用いられるものとなっている。
第3のスイッチ23は、第3及び第4の抵抗器33,34の相互の接続点とヒステリシスコンパレータ11の反転入力端子との間に直列接続されて設けられている。
【0028】
また、LIN入力端子41とグランドとの間には、LIN入力端子41側から第6の抵抗器(図3においては「R6」と表記)36、第7の抵抗器(図3においては「R7」と表記)37、及び、第2のスイッチ22が直列接続されて設けられている。
そして、第4のスイッチ24は、第6及び第7の抵抗器36,37の相互の接続点とヒステリシスコンパレータ11の非反転入力端子との間に直列接続されて設けられている。
なお、かかる構成のLIN受信機の回路動作については、以下に説明する具体回路例の動作説明を以て、その説明に代えることとする。
【0029】
次に、第2の基本回路構成に基づくより具体的な回路構成について、図4を参照しつつ説明する。
なお、図1図2図3に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
図4に示されたLIN受信機は、第1乃至第4のMOSトランジスタ(図4においては、それぞれ「M1」「M2」、「M3」、「M4」と表記)1~4と、ヒステリシスコンパレータ11と、第1及び第2のツエナーダイオード(図4においては、それぞれ「D1」「D2」と表記)5,6と、第1及び第2のスイッチ21,22とを主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0030】
図4に示された回路において、定電圧回路50Aは、第1及び第2のMOSトランジスタ1,2と、第1及び第2のツエナーダイオード21,22と、第1及び第5の抵抗器(図4においては、それぞれ「R1」、「R5」と表記)31,35を用いて構成されている。
バッテリー電源43の正極とグランドとの間に、バッテリー電源43側から第1の抵抗器31、第1のMOSトランジスタ1、第1のツエナーダイオード5が、直列接続されて設けられている構成は、図2に示された構成と同一である。
【0031】
そして、第1のMOSトランジスタ1のゲート側においては、バッテリー電源43とLIN入力端子41の間に、バッテリー電源43側から第2のツエナーダイオード6と第5の抵抗器35が直列接続されて設けられると共に、第2のツエナーダイオード6と第5の抵抗器35の相互の接続点が第1のMOSトランジスタ1のゲートに接続されている。
第2のツエナーダイオード6は、そのカソードがバッテリー電源43の正極に、アノードが第5の抵抗器35及び第1のMOSトランジスタ1のゲートに、それぞれ接続されている。
【0032】
また、第2のMOSトランジスタ2は、図2に示された回路同様、ドレインがバッテリー電源43に、ゲートが第1のMOSトランジスタ1のドレインに、それぞれ接続されている。そして、第2のMOSトランジスタ2のソース電圧は、先の図2に示された回路と同様、ヒステリシスコンパレータ11に電源電圧として供給されると共に、第1及び第2のスイッチ21,22の開閉成の制御電圧として用いられるようになっている。
また、バッテリー電源43とグランド間における第3及び第4の抵抗器33,34と第1のスイッチ21との接続は、図1図2に示された回路と同一である。
【0033】
この図4に示された回路において、第3及び第4のMOSトランジスタ3,4
には、NMOSトランジスタが用いられている。
第3のMOSトランジスタ3は、図3における第3のスイッチ23を、第4のMOSトランジスタ4は、図3における第4のスイッチ24を、それぞれ構成するものとなっている。
【0034】
第3のMOSトランジスタ3は、ドレインが第3及び第4の抵抗器33,34の相互の接続点に、ソースがヒステリシスコンパレータ11の反転入力端子に、それぞれ接続される一方、ゲートは第1のツエナーダイオード5のカソードに接続されている。
【0035】
また、第4のMOSトランジスタ4は、ドレインが第6及び第7の抵抗器36,37の相互の接続点に、ソースがヒステリシスコンパレータ11の非反転入力端子に、それぞれ接続される一方、ゲートは第1のツエナーダイオード5のカソードに接続されている。
【0036】
なお、第2のツエナーダイオード6は、第1のツエナーダイオード5同様、例えば、通常のダイオードを所望の電圧に応じて複数直列接続した構成等に代えても良い。
また、第1及び第2のスイッチ21,22の開閉成制御のための制御電圧として、第2のMOSトランジスタ2のソース電圧を用いることに代えて、第1のMOSトランジスタ1のドレイン電圧を用いるようにしても好適である。
【0037】
次に、かかる構成における動作について説明する。
まず、この図4に示された回路においては、第3及び第4のMOSトランジスタ3,4によってヒステリシスコンパレータ11の入力耐圧に対する保護が図られている。
すなわち、ヒステリシスコンパレータ11の非反転入力端子の入力電圧である第6の抵抗器36と第7の抵抗器37の相互の接続点の電圧は、ドレインソース耐圧が高い第4のMOSトランジスタ4を介して、また、ヒステリシスコンパレータ11の反転入力端子の入力電圧である第3の抵抗器33と第4の抵抗器34との相互の接続点の電圧は、ドレインソース耐圧が高い第3のMOSトランジスタ3を介して、それぞれ入力されることで耐圧保護が図られるものとなっている。
【0038】
しかして、図4に示された回路において、LIN入力端子41のLIN入力電圧が低下してくると、第1のMOSトランジスタ1が導通状態となり、第1のツエナーダイオード5に電流が流れる。
第1のツエナーダイオード5に電流が流れることで、ツエナー電圧が発生し、これにより第2のMOSトランジスタ2のゲート電圧の上昇と共に、ソース電圧が上昇する。そのため、第1及び第2のスイッチ21,22が動作して閉成状態となると共に、ヒステリシスコンパレータ11に電源電圧が供給されて動作状態となる。
【0039】
その結果、先に述べたように第3及び第4の抵抗器33,34による分圧電圧が第3のMOSトランジスタ3を介して、第6及び第7の抵抗器36,37の分圧電圧が第4のMOSトランジスタ4を介して、それぞれ対応するヒステリシスコンパレータ11の入力端子に印加される。
そして、LIN入力電圧が、ヒステリシスコンパレータ11の反転入力端子の閾値電圧を下回ると、ヒステリシスコンパレータ11からは、RXD出力の復帰を示す論理値Lowに相当する電圧が出力されることとなる。
【0040】
この図4に示された回路においても、先の図2に示された回路同様、スリープ状態にあって、LIN入力電圧が高い場合、第2のツエナーダイオード6が非動作状態となり、第1及び第2のMOSトランジスタ1,2が非導通状態となる。
その結果、定電圧VREGと基準電圧VREFの各出力が停止されて、第1及び第2のスイッチ21,22が開成状態となると共に、第3及び第4のMOSトランジスタ3,4は非導通状態となり、さらに、ヒステリシスコンパレータ11への電源供給は停止されることで、消費電流はほぼ0Aとなる。
【0041】
次に、第3の基本回路構成例及びその具体回路例について、図5及び図6を参照しつつ説明する。
なお、図1乃至図4のいずれかに示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明することとする。
第3の基本回路構成例におけるLIN受信機は、ヒステリシスコンパレータ11のヒステリシス特性が十分でない場合に、所望のヒステリシス特性を確保可能とする構成例であり、ヒステリシス特性の強化を図ったのである。
図5に示された第3の基本回路構成例は、図3に示された第2の基本回路構成例においてヒステリシス特性の強化を図ったものである。
【0042】
具体的には、図5及び図6に示されたように、ヒステリシスコンパレータ11(図1参照)に代えて、通常のコンパレータ(図5及び図6においては「X2」と表記)12が設けられると共に、インバータ(図5及び図6においては「X3」と表記)13、第8の抵抗器(図5及び図6においては「R8」と表記)38、及び、第5のスイッチ(図5及び図6においては「S5」と表記)25が次述するように設けられている。
【0043】
インバータ13は、その入力端子がコンパレータ12の出力端子に接続され、出力信号は、第5のスイッチ25の開閉成の制御電圧として用いられるようになっている。
また、第6及び第7の抵抗器36,37の相互の接続点とグランドとの間には、接続点側から順に第8の抵抗器38、第5のスイッチ25が直列接続されて設けられている。
【0044】
かかる構成における回路動作は、以下に説明する第5のスイッチ25の動作を除けば、図4に示された回路と同一であるので、その詳細な説明は省略することとする。
RXD出力が論理値Highに相当する電圧レベルにある場合(スリープ状態)、インバータ13の出力は論理値Lowに相当する電圧となるため、第5のスイッチ25は開成状態となる。
【0045】
一方、RXD出力が論理値Lowに相当する電圧レベルとなると、インバータ13の出力は論理値Highに相当する電圧レベルとなるため、第5のスイッチ25が閉成状態となる。これにより、第7の抵抗器37に対して第8の抵抗器38が並列接続され、ヒステリシスコンパレータ11の非反転入力端子の電圧が引き下げられるため、RXD出力が論理値Highに相当する電圧となる際に必要とされるLIN入力電圧レベルが引き上げられ、所望のヒステリシス特性が確保されることとなる。
【0046】
図6に示された回路において、スリープ状態にある場合、第5のスイッチ25は開成状態であるため第8の抵抗器38に電流は流れず、また、他の部分については、図4に示された回路と同様であるので、スリープ状態における消費電流はほぼ0Aとなる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
抵抗分圧における消費電流の削減と共にスリープ状態における消費電流の0A近傍への低減が所望されるLIN受信機に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
11…ヒステリシスコンパレータ
12…コンパレータ
13…インバータ
21…第1のスイッチ
22…第2のスイッチ
23…第3のスイッチ
24…第4のスイッチ
50…定電圧回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6