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▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】官能化ポリエステルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/685 20060101AFI20230303BHJP
   C08G 63/87 20060101ALI20230303BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20230303BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20230303BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
C08G63/685
C08G63/87
C09D167/00
C09J167/00
C09J11/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020501237
(86)(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018063284
(87)【国際公開番号】W WO2019011510
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】17382454.1
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ソニア・フロレス・ペナルバ
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル・パラダス-パロモ
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・ガルシア・ミラリェス
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ゲオルク・キンツェルマン
(72)【発明者】
【氏名】ロサ・マリア・セバスティアン・ペレス
(72)【発明者】
【氏名】ジョルディ・マルケト・コルテス
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ・アギレラ・コロチャノ
(72)【発明者】
【氏名】フェデリカ・アリオリ
(72)【発明者】
【氏名】テレーズ・エメリー
【審査官】蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-531490(JP,A)
【文献】特開平07-025993(JP,A)
【文献】米国特許第03169945(US,A)
【文献】特開2001-279168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0127608(US,A1)
【文献】特開2011-208115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00~ 63/91
C08L 67/00~ 67/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ官能性ポリエステルを調製する方法であって、
少なくとも1つのラクトンモノマー、触媒、ならびに少なくとも1つの一級アミン基および少なくとも1つの二級アミン基を有するポリアミンを含む混合物を用意すること;ならびに
該混合物を開環重合条件に曝すこと
を含んでなり、
前記触媒が金属を含ま
前記触媒が、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)および/または1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記混合物が、式(1):
【化1】
[式中:n≧1;
各Rは水素、C1~C6アルキル、C3~C8シクロアルキル、C1~C6アルコキシおよびC6アリールからなる群から独立に選択され、但し、少なくともn個のRが水素である]
で表される少なくとも1つのラクトンモノマーを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物が、式(1a):
【化2】
[式中:nは1~4の整数であり;
各Rは水素およびC1~C6アルキルからなる群から独立に選択され、但し、少なくともn+2個のRが水素である]
で表される少なくとも1つのラクトンモノマーを含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物が、β-プロピオラクトン;β-ブチロラクトン;β-バレロラクトン;γ-ブチロラクトン;γ-バレロラクトン;δ-バレロラクトン;モノメチル-δ-バレロラクトン;モノエチル-δ-バレロラクトン;モノヘキシル-δ-バレロラクトン;ε-カプロラクトン;モノメチル-ε-カプロラクトン;モノエチル-ε-カプロラクトン;モノヘキシル-ε-カプロラクトン;ジメチル-ε-カプロラクトン;ジ-n-プロピル-ε-カプロラクトン;ジ-n-ヘキシル-ε-カプロラクトン;トリメチル-ε-カプロラクトン;トリエチル-ε-カプロラクトン;ピバロラクトン;および5-メチルオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1つのラクトンモノマーを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
記混合物が、モノマーの総重量に基づいて:
80~100重量%の前記少なくとも1つのラクトンモノマー;ならびに
0~20重量%のエポキシド化合物;環状カーボネート;グリコリド;およびラクチドからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマー
を含んでなる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアミンが脂肪族または脂環式である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ポリアミンが、少なくとも2つの一級アミン基および少なくとも1つの二級アミン基を有する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ラクトンモノマーと前記ポリアミンとのモル比が、1:1~500:1の範囲である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、モノマーの総重量に基づいて、0.1~5重量%の量で提供される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
開環重合条件に曝される前記混合物が、溶媒を本質的に含まない、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記開環重合条件が、50~200℃の温度を含んでなる、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに定義される方法によって得られるアミノ官能性ポリエステルであって、
i)300~5000g/molの重量平均分子量(Mw);
ii)2.5未満の多分散指数;
iii)20~350mg KOH/gのアミン価(NHv);および
iv)40~500mg KOH/gの総ヒドロキシルおよびアミン価(OHv+NHv)
のうちの少なくとも1つを特徴とする、アミノ官能性ポリエステル。
【請求項13】
請求項12に定義されるアミノ官能性ポリエステル;ならびに
エポキシ基;イソシアネート基;および環状カーボネート基からなる群から選択される少なくとも2つの官能基(F)を有する少なくとも1つの多官能性化合物(H)
を含んでなる、硬化性コーティング、接着剤またはシーラント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、官能化ポリエステルを製造する方法に関する。より具体的には、本出願は、アミノ-およびヒドロキシル-官能化ポリエステルを製造する方法、ならびにコーティング、接着剤またはシーラント組成物における前記ポリエステルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアミン、トリアミンおよび高官能性ポリアミンは、種々のポリマーまたは樹脂系と反応できる汎用性のある一般的に使用される硬化剤である:単なる例示目的で、エポキシ樹脂、ポリイソシアネートおよび環状カーボネートに基づく組成物をポリアミンで硬化できる。しかしながら、問題なことに、ほとんどの低分子脂肪族ポリアミンは揮発性であり、補助的な官能化が制限されており、硬化系の機械的特性への寄与が限られる。さらに、このような低分子量のポリアミンは、Sullivanら(編)Clinical Environmental Health and Toxic Exposures 第2版(2001)およびTarvainenらJournal of Environmental Medicine(1999)1.1.3で述べられているように、急性毒性、刺激、皮膚感作および肺感作などの多数の健康障害をもたらす。
【0003】
本発明は、ポリエステル骨格を有し、安定で不揮発性であり、最終硬化性組成物の機械的特性に寄与することができる高分子アミノ硬化剤の開発に関する。より高分子量のアミノ硬化剤の開発において、本発明は、流体系におけるアミンの移動および拡散に関連するこれらの環境衛生上の懸念を軽減しようとするものである。
【0004】
米国特許第4,379,914号明細書(Lundberg)は、一端が三級アミン基、他端がヒドロキシル基で終結するポリラクトンポリマーを形成する方法を記載している。その合成では、ε-カプロラクトンを、オクタン酸第一スズの触媒の存在下でジアミンと反応させる:ジアミンは、そのアミン基の一方が三級であり、他方のアミン基が一級または二級であることを特徴とする。この引用のポリラクトンポリマーは、反応性アミノ基を有さない。それから、類似のポリラクトンポリマーが、米国特許第4,463,168号明細書および同第4,512,776号明細書(同様にLundberg)にさらに開示されている。
【0005】
とりわけε-カプロラクトンの開環重合によるポリエステルの形成は、Macromolecules、1992、25、2614-2618でも議論されており、ここではジエチルアルミニウムアルコキシドおよびトリエチルアルミニウム-アミン系が開始剤として使用されている。重合反応は酸加水分解によって終結される。そして、この機構に従うと、開始剤によって導入されたアミンが反応してアミドを形成するため、誘導ポリエステルはアミノ基を一切有さない。
【0006】
米国特許出願公開第2010/0179282号明細書(Evonik Degussa)は、少なくとも1つの一級アミノ基および少なくとも1つの二級アミノ基を有する1つ以上のポリアミンで修飾されたポリエステルを記載している。この引用は、反応性二級アミノ基を有する貯蔵安定性ポリエステルの合成を報告している。具体的には、ポリエステルポリオールとポリアミンのアミノリシス反応を通して合成が行われる:アミン基が、エステルのカルボニル基を攻撃してアミド結合を形成し、グリコールまたはオリゴエステルを放出する。そのため、アミノ基を含有しない副産物も反応中に放出され、グリコール、オリゴエステルおよびアミノ-ポリエステル鎖の複雑な混合物が幅広い分子量分布で得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第4,379,914号明細書
【文献】米国特許第4,463,168号明細書
【文献】米国特許第4,512,776号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0179282号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Sullivanら、Clinical Environmental Health and Toxic Exposures 第2版(2001)
【文献】Tarvainenら、Journal of Environmental Medicine(1999)1.1.3
【文献】Macromolecules、1992、25、2614-2618
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によると、アミノ官能性ポリエステルを調製する方法であって、
少なくとも1つのラクトンモノマー、触媒ならびに少なくとも1つの一級アミン基および少なくとも1つの二級アミン基を有するポリアミンを含む混合物を用意すること;ならびに
前記混合物を開環重合条件に曝すこと
を含んでなる方法が提供される。
【0010】
ここで、ポリアミンは、開環重合反応の開始剤として作用する。異なる反応性の2つのアミン基を有するポリアミンによって、開始剤はポリエステル構造に組み込まれ、その残基は二級アミン基を保持する。開環重合の機構の結果として、本発明によって得られるポリエステルは、少なくとも1つの末端ヒドロキシル基を有することをさらに特徴とする。
【0011】
本発明の一実施形態では、反応性混合物が、モノマーの総重量に基づいて:80~100重量%の前記少なくとも1つのラクトンモノマー;ならびに0~20重量%のエポキシド化合物;環状カーボネート;グリコリド;およびラクチドからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーとを含んでなる。
【0012】
このようなコモノマーの有無にかかわらず、前記反応性混合物が、式(1):
【化1】
[式中:n≧1;
各Rは水素、C1~C6アルキル、C3~C8シクロアルキル、C1~C6アルコキシおよびC6アリールからなる群から独立に選択され、但し、少なくともn個のRが水素である]
で表される少なくとも1つのラクトンモノマーを含んでなることが好ましい。
【0013】
より具体的には、反応混合物は、式(1a):
【化2】
[式中:nは1~4の整数であり;
各Rは水素およびC1~C6アルキルからなる群から独立に選択され、但し、少なくともn+2個のRが水素である]
で表される少なくとも1つのラクトンモノマーを含むべきである。
【0014】
列挙されたポリアミン開始剤は、脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環式であってもよい。しかしながら、脂肪族および/または脂環式ポリアミンが好ましいかもしれない。また、少なくとも2つの一級アミン基および少なくとも1つの二級アミン基を含有するポリアミンも好ましい。例えば、極めて適切なポリアミン開始剤は、少なくとも2つの一級アミン基および少なくとも1つの二級アミン基を有することを特徴としてもよい。
【0015】
開環重合触媒は、典型的には、モノマーの総重量に基づいて、0.1~5重量%の量で、好ましくは0.1~2.0重量%の量で提供される。好ましい実施形態では、提供される触媒が、スズ(Sn)を含まない、または金属さえも含まない:例えば、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)および/または1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)の使用が有効であることが証明されている。
【0016】
本発明の第2の態様によると、本明細書の上および添付の特許請求の範囲に定義される方法によって得られるアミノ官能性ポリエステルであって、好ましくは、
i)300~5000g/mol、好ましくは500~4000g/molの重量平均分子量(Mw);
ii)2.5未満、好ましくは2.3未満の多分散指数;
iii)20~350mg KOH/g、好ましくは25~250mg KOH/gのアミン価(NHv);および
iv)40~500mg KOH/g、好ましくは50~400mg KOH/gの総ヒドロキシルおよびアミン価(OHv+NHv)
のうちの少なくとも1つを特徴とするアミノ官能性ポリエステルが提供される。
【0017】
本発明の第3の態様によると、本明細書の上および添付の特許請求の範囲に定義されるアミノ官能性ポリエステルと;エポキシ基;イソシアネート基;および環状カーボネート基からなる群から選択される少なくとも2つの官能基(F)を有する少なくとも1つの多官能性化合物(H)とを含んでなる硬化性コーティング、接着剤またはシーラント組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に従って調製されたポリエステルのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析から得られたクロマトグラムである。
図2】米国特許出願公開第2010/0179282号明細書(Evonik Degussa)の開示に従って調製されたポリエステルのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析から得られた比較クロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<定義>
本明細書中で用いる場合、単数形「a」、「an」(ある)、および「the」(該)は、文脈が明瞭にそうでないことを指示するのでなければ、複数の指示対象を含む。
【0020】
本明細書中で用いられる用語「comprising」(含んでなる)、「comprises」(含む)および「comprised of」(含んでなる)は、「including」(包含している)、「includes」(包含する)、「containing」(含有している)または「contains」(含有する)と同義であって、包括的であるか、または非限定的であって、追加の記載されていない部材、エレメントまたは方法工程を排除しない。
【0021】
量、濃度、寸法およびその他のパラメータが範囲、好ましい範囲、上限値、下限値、または好ましい上限値および限界値の形で表現される場合、任意の上限または好ましい値を任意の下限または好ましい値と組み合わせることによって得られる任意の範囲も、得られる範囲が文脈で明確に言及されているかどうかに関係なく、具体的に開示されていると理解されるべきである。
【0022】
用語「preferred」(好ましい)、「preferably」(好ましくは)、「desirably」(望ましくは)および「particularly」(特に)は、一定の状況下で特定の利益をもたらしてもよい本開示の実施形態を指すために本明細書で頻繁に使用される。しかしながら、1つ以上の好ましい(preferable)または好ましい(preferred)実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを意味せず、それらの他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図しない。
【0023】
本明細書で示される分子量は、特に明記しない限り、重量平均分子量(Mw)を指す。全ての分子量データは、特に明記しない限り、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって得られた値を指す。
【0024】
本明細書で用いる場合、「polydispersity index」(多分散指数)は、所与のポリマー試料中の分子質量の分布の尺度を指す。多分散指数は、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割ることによって計算される。
【0025】
特に明記しない限り、本書に示されるOH価は、Deutsche(DGF)Einheitsmethoden zur Untersuchung von Fetten、Fettprodukten、Tensiden und verwandten Stoffen(Gesamtinhaltsverzeichnis 2016)C-V 17b(53)に従って得られた。
【0026】
特に明記しない限り、示されるアミン価は、ASTM D2572-91に準拠した0.1N塩酸による滴定によって得られ、その後mg KOH/gに計算し直された。
【0027】
アミノ官能性ポリエステルに関して、総ヒドロキシルおよびアミン価(OHv+NHv)は、具体的には、ヒドロキシル基およびアミン基を過剰の無水酢酸と反応させ、得られた遊離酢酸をKOHにより逆滴定して、試料1グラム中のヒドロキシ基およびアミン基の総ミリモル量を評価する確立された方法で測定された。アミン価自体は、ASTM D2572-91に準拠した0.1N塩酸による滴定によって得られ、その後mg KOH/gに計算し直された。ヒドロキシル価は、決定されたアミン価および決定された総アミンおよびヒドロキシル価に基づいて計算された。
【0028】
本明細書で用いる場合、室温は23℃プラスまたはマイナス2℃である。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「equivalent(eq.)」(当量)は、化学表記法で通常のように、反応に存在する反応基の相対数に関する;用語「milliequivalent」(meq)(ミリ当量)は、化学当量の1000分の1(10-3)である。
【0030】
本明細書中で用いられる用語「equivalent weight」(当量)は、関係する官能基の数で割った分子量を指す。そのため、「epoxy equivalent weight」(EEW)(エポキシ当量)は、エポキシ1当量を含有する樹脂の重量(グラム)を意味する。
【0031】
本明細書で用いる場合、用語「aromatic group」(芳香族基)は、単核または多核芳香族炭化水素基を意味する。
【0032】
本明細書で用いる場合、「alkyl group」(アルキル基)は、アルカンの基であり、置換されていても非置換であってもよい直鎖および分岐有機基を含む一価基を指す。用語「alkylene group」(アルキレン基)は、アルカンの基であり、置換されていてもまたは置換されていてもよい直鎖および分岐有機基を含む二価基を指す。
【0033】
具体的には、本明細書で用いる場合、「C1-C6 alkyl」(C1~C6アルキル)基は、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基を指す。アルキル基の例としては、それだけに限らないが、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;n-ブチル;イソブチル;sec-ブチル;tert-ブチル;n-ペンチル;およびn-ヘキシルが挙げられる。本発明では、このようなアルキル基は非置換であっても、ハロ、ニトロ、シアノ、アミド、アミノ、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミドおよびヒドロキシなどの1つ以上の置換基で置換されていてもよい。上に列挙される例示的な炭化水素基のハロゲン化誘導体が、特に、適切な置換アルキル基の例として言及され得るだろう。しかしながら、一般に、1~6個の炭素原子を含有する非置換アルキル基(C1~C6アルキル)、例えば、1~4個の炭素原子(C1~C4アルキル)または1個もしくは2個の炭素原子(C1~C2アルキル)を含有する非置換アルキル基に留意すべきである。
【0034】
本明細書で用いる場合、「C1-C6 alkoxy」(C1~C6アルコキシ)は、酸素原子に結合した上に定義されるC1~C6アルキル基を指す。その例としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、二級ブチルオキシ、三級ブチルオキシ、ペンチルオキシまたはヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0035】
本明細書で用いる場合、「C3-C8 cycloalkyl」(C3~C8シクロアルキル)は、3~8個の炭素原子を有する飽和環状炭化水素を指す。その例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルが挙げられる。
【0036】
本明細書で用いる場合、用語「aryl group」(アリール基)は、炭素原子および水素原子を含む単環式または多環式芳香族基を意味する。本明細書では、アリール基は、非置換であることができる、または1つもしくは2つのC1~C6アルキル基で置換できる。具体的には、本明細書では、用語「C6 aryl」(C6アリール)は、環が6個の炭素原子を含む単環式環を意味する。
【0037】
本明細書で用いる場合、「lactone」(ラクトン)または「lactone ring」(ラクトン環)は、名目上、同じ分子内のアルコール基とカルボン酸基の縮合生成物と見なしてもよい環状エステルを指す。接頭語は環サイズを示してもよい:β-ラクトン(4員)、γ-ラクトン(5員)、δ-ラクトン(6員環)。当技術分野で知られているように、ラクトンは、過酢酸と環状ケトンの反応によって調製することができる:とりわけStarcherら、Journal of the American Chemical Society、80、4079(1958)の開示が、この点に関して有益であってもよい。さらに、本発明でモノマーとして供給され、使用されるラクトンは、少なくとも98%、好ましくは99%の純度を有するべきである:前記ラクトンモノマーが不純物を本質的に含まず、水を本質的に含まないことが特に好ましい。
【0038】
本明細書で用いる場合、「lactide」(ラクチド)(CAS 4511-42-6および95-96-5)は、2つの乳酸分子の脱水縮合によって得られる環状ジエステルを指す。このジエステルが3つの光学異性体:2つのL-乳酸分子から形成されたL-ラクチド;2つのD-乳酸分子から形成されたD-ラクチド;およびL-乳酸とD-乳酸から形成されたメソ-ラクチドとして存在することに留意されたい。該当する場合、ポリエステルコポリマーのラクトイル単位が、前記異性体の1つ、2つまたは3つから誘導されてもよい。
【0039】
本明細書で用いる場合、重合条件は、温度、圧力、雰囲気、重合混合物に使用される出発成分の比、反応時間、または重合混合物の外部刺激などの、少なくとも1つのモノマーにポリマーを形成させる条件である。重合プロセスは、バルク、または溶液、または他の従来の重合モードで行うことができる。このプロセスは、重合機構に適した反応条件のいずれかで操作される。
【0040】
本明細書で用いる場合、用語「ring-opening」(開環)および「ring-opening reaction」(開環反応)は、環状モノマーのその非環式形態への変換を指す。さらに、本明細書で用いる場合、用語「ring-opening polymerization」(開環重合)は、複数の開環環状モノマーの鎖の形成を指す。特に、本明細書において、用語開環重合は、i)1つのラクトン化合物の「ring-opening homopolymerization」(開環ホモ重合)と;ii)2つ以上の異なるラクトン化合物の「ring-opening copolymerization」(開環共重合)の両方を包含することを意図している。
【0041】
本明細書で用いる場合、「polyol」(ポリオール)は、2つ以上のヒドロキシル基を含む任意の化合物を指す。したがって、この用語は、ジオール、トリオール、および4つ以上の-OH基を含有する化合物を包含する。
【0042】
用語「epoxide compound」(エポキシド化合物)は、モノエポキシド化合物およびポリエポキシド化合物を意味する:この用語はエポキシド官能性プレポリマーを包含することを意図している。したがって、用語「polyepoxide compound」(ポリエポキシド化合物)は、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を意味することを意図している。したがって、さらに、用語「diepoxide compound」(ジエポキシド化合物)は、2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を意味することを意図している。
【0043】
本明細書で用いる場合、「polyisocyanate」(ポリイソシアネート)は、少なくとも2つの-N=C=O官能基、例えば2~5個または2~4個の-N=C=O官能基を含む化合物を意味する。適切なポリイソシアネートには、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式イソシアネート、これらの二量体および三量体、ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0044】
脂肪族および脂環式ポリイソシアネートは、直鎖で結合しているまたは環化された、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する6~100個の炭素原子を含むことができる。適切な脂肪族イソシアネートの例としては、それだけに限らないが、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビス(イソシアナトエチル)-カーボネートおよびビス(イソシアナトエチル)エーテルなどの直鎖イソシアネートが挙げられる。例示的な脂環式ポリイソシアネートには、それだけに限らないが、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(H12MDI)、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、1-メチル-2,4-ジイソシアナト-シクロヘキサン、m-またはp-テトラメチルキシレンジイソシアネート(m-TMXDI、p-TMXDI)およびダイマー脂肪酸ジイソシアネートが含まれる。
【0045】
用語「aromatic polyisocyanate」(芳香族ポリイソシアネート)は、イソシアネート基が単核または多核芳香族炭化水素基の環に直接結合している有機イソシアネートを記載するために本明細書で使用される。単核または多核芳香族炭化水素基は、共役二重結合の本質的に平面の環状炭化水素部分を意味し、単環であっても、複数の縮合(condensed)(縮合(fused))または共有結合環を含んでもよい。用語芳香族は、アルキルアリールも含む。典型的には、炭化水素(主)鎖は、1サイクルに5、6、7、または8個の主鎖原子を含む。このような平面環状炭化水素部分の例としては、それだけに限らないが、シクロペンタジエニル、フェニル、ナフタレニル-、[10]アヌレニル-(1,3,5,7,9-シクロデカペンタエニル-)、[12]アヌレニル-、[8]アヌレニル-、フェナレン(ペリナフテン)、1,9-ジヒドロピレン、クリセン(1,2-ベンゾフェナントレン)が挙げられる。アルキルアリール部分の例は、ベンジル、フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-ナフチルプロピル、2-ナフチルプロピル、3-ナフチルプロピルおよび3-ナフチルブチルである。
【0046】
例示的な芳香族ポリイソシアネートには、それだけに限らないが、以下が含まれる:異性体的に純粋な形態またはいくつかの異性体の混合物としてのトルエンジイソシアネート(TDI)の全ての異性体;ナフタレン1,5-ジイソシアネート;ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI);ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネートおよびジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートと2,4’異性体の混合物、またはこれらの高官能性オリゴマーとの混合物(いわゆる粗MDI);キシリレンジイソシアネート(XDI);ジフェニル-ジメチルメタン4,4’-ジイソシアネート;ジ-およびテトラアルキル-ジフェニルメタンジイソシアネート;ジベンジル4,4’-ジイソシアネート;フェニレン1,3-ジイソシアネート;ならびにフェニレン1,4-ジイソシアネート。
【0047】
用語「polyisocyanate」(ポリイソシアネート)は、前記脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式イソシアネートとポリオールが部分的に反応してイソシアネート官能性オリゴマーを与えることによって形成されるプレポリマーを包含することを意図しており、該オリゴマーを単独でまたは遊離イソシアネートと組み合わせて使用してもよいことに留意されたい。
【0048】
完全を期すために:a)一級アミン基は、「-NH2」(R-H)型の原子グループであり;(b)二級アミン基は、「-NHR」型の原子グループであり;c)三級アミン基は、「-NR2」型の原子グループである。アミノ官能性ポリマーは、少なくとも1つのアミン基を有するポリマーを意味する。
【0049】
本明細書で用いる場合、用語「catalytic amount」(触媒量)は、反応物質に対する触媒の準化学量論量を意味する。
【0050】
用語「essentially free」(本質的に含まない)は、本明細書において、適用可能な基、化合物、混合物または成分が、定義された組成物の重量に基づいて0.1重量%未満を構成することを意味することを意図している。
【0051】
本明細書で前記のように、本発明は、アミノ官能性ポリエステルを調製する方法であって、少なくとも1つのラクトンモノマー、触媒ならびに少なくとも1つの一級アミン基および少なくとも1つの二級アミン基を有するポリアミンを含む混合物を用意することと;前記混合物を開環重合条件に曝すこととを含んでなる方法を提供する。
【0052】
化合物が触媒の存在下で開環重合を受けることができれば、モノマーとして本発明に使用してもよいラクトン化合物を制限する特定の意図はない。しかしながら、一般に、適切なラクトンモノマーは、本明細書の以下の一般式(1):
【化3】
[式中:n≧1;
各Rは水素、C1~C6アルキル、C3~C8シクロアルキル、C1~C6アルコキシおよびC6アリールからなる群から独立に選択され、但し、少なくともn個のRが水素である]
で表される。
【0053】
式(1)で表される好ましいラクトンモノマーは、以下の制限によって特徴付けられる:nが1~4の整数であり;各Rが水素およびC1~C6アルキルからなる群から独立に選択され、但し、少なくともn+2個のRが水素である。
【0054】
単独でまたは組み合わせて使用してもよい例示的なラクトンモノマーは、以下に言及し得る:β-プロピオラクトン;β-ブチロラクトン;β-バレロラクトン;γ-ブチロラクトン;γ-バレロラクトン;δ-バレロラクトン;モノメチル-δ-バレロラクトン;モノエチル-δ-バレロラクトン;モノヘキシル-δ-バレロラクトン;ε-カプロラクトン;モノメチル-ε-カプロラクトン;モノエチル-ε-カプロラクトン;モノヘキシル-ε-カプロラクトン;ジメチル-ε-カプロラクトン;ジ-n-プロピル-ε-カプロラクトン;ジ-n-ヘキシル-ε-カプロラクトン;トリメチル-ε-カプロラクトン;トリエチル-ε-カプロラクトン;ピバロラクトン;および5-メチルオキセパン-2-オン。
【0055】
前記ラクトンに加えて、さらなるコモノマーを、モノマーの総重量に基づいて、最大20重量%の量で重合混合物に含めてもよい。存在する場合、前記コモノマーは、望ましくは、グリシジルエーテル、ジエンおよびポリエンのモノエポキシド、グリシジルエステルおよびアルキレンオキシドなどのエポキシド化合物;環状カーボネート;グリコリド;ラクチド;ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択されるべきである。
【0056】
コモノマーとして使用してもよい適切なエポキシド化合物の非限定的な例としては、エチレンオキシド;プロピレンオキシド;ブチレンオキシド;3,4-エポキシ-1-ペンテン;スチレンオキシド;ビニルグリシジルエーテル;イソプロペニルグリシジルエーテル;ブタジエンモノオキシド;およびフェニルグリシジルエーテルが挙げられる。エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが好ましいであろう。
【0057】
適切な環状カーボネートの非限定的な例としては、以下によって表されるものが挙げられる:
【化4】
[式中:fおよびgは1~3の整数であり;
R1、R2、R3およびR4は水素、C1~C6アルキル、C6-アリールまたは-OC6H5から各炭素単位について(すなわち、各(C)fおよび(C)g単位について)独立に選択され;
hは0または1であり;
Eは-O-である]
【0058】
適切な環状カーボネートコモノマーの具体例として、トリメチレンカーボネート(TMC);テトラメチレンカーボネート(TEMC);ペンタメチレンカーボネート(PMC);および1,2-プロパンジオールカーボネートを言及し得る。
【0059】
本発明の開環重合は、開始剤として、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの一級アミン基;および少なくとも1つの二級アミン基を有するポリアミンの使用を含む。原則として、異なる反応性のこのようなアミン基を有するというこの条件を満たす全てのポリアミンが適切である。ポリアミン開始剤は、脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環式であってもよい。しかしながら、脂肪族および/または脂環式ポリアミンが好ましいであろう。
本発明を制限することを意図するものではないが、少なくとも1つの一級および少なくとも1つの二級アミノ基を含有する例示的なポリアミンには以下が含まれる:N-メチルエチレンジアミン;N-エチルエチレンジアミン;N-プロピルエチレンジアミン;N-ブチルエチレンジアミン;N-ベンジルエチレンジアミン;N-フェニルエチレンジアミン;N-メチルプロピレンジアミン;N-エチルプロピレンジアミン;N-プロピルプロピレンジアミン;N-ブチルプロピレンジアミン;N-ベンジルプロピレンジアミン;N-フェニルプロピレンジアミン;N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン;ジエチレントリアミン;トリエチレンテトラミン;テトラエチレンペンタミン;ペンタエチレンヘキサミン;ビスヘキサメチレントリアミン;N-シクロヘキシルプロピレンジアミン;およびN-[3-(トリデシルオキシ)プロピル]-1,3-プロパンジアミン(Adogen 583)。
【0060】
ここで、一般的な上記の例示的ポリアミンのリストに関しての両方で、脂肪族および/または脂環式ポリアミンが好ましいことが言及される。
【0061】
このプロセスにおける開始剤に対するラクトンモノマーの割合は、ポリエステルまたはそこから誘導される生成物で望まれる特定の特性に応じて大きく異なってもよい。明らかに、ポリエステルが連続したラクトン残基を有する生成物の特性を実質的に有する場合、ラクトンに対する開始剤の割合は、理論的には開始剤1分子で無限数のラクトン分枝の重合を開始するのに十分であるため、非常に小さくてもよい。逆に、また特に、使用される開始剤が少なくとも三官能性である場合、および/またはポリエステル生成物がラクトン残基の多かれ少なかれ交互分布を有する共役構造のものであることが望ましい場合、相対割合はほぼ等しくてもよい。
【0062】
上記の一般に認められた、ラクトンモノマーと前記ポリアミン開始剤とのモル比は、一般に1:1~500:1の範囲であり、好ましくは2:1~50:1の範囲であり、より好ましくは2:1~20:1の範囲である。
【0063】
上記のように、本発明の環重合プロセスは、適切な触媒の存在下で行われる。開環重合に適したイオンまたは非イオン触媒に関する参考文献は、Ring Opening Polymerization、第I巻、461~521頁、K.J. IvinおよびT.Saegusa(1984)である。単独でまたは組み合わせて使用してもよい既知の触媒には、それだけに限らないが、アミン化合物またはそのカルボン酸との塩、例えばブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)および1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU);2-エチルヘキサン酸スズ(オクタン酸スズ);二塩化スズ(SnCl2);ポルフィリンアルミニウム錯体;(n-C4H9O)4Al2O2Zn;複合金属シアン化物;水性ジエチル亜鉛またはジエチルカドミウム;アルミニウムトリイソプロポキシド;チタンテトラブトキシド;ジルコニウムテトラプロポキシド;トリブチルスズメトキシド;テトラフェニルスズ;酸化鉛;ステアリン酸亜鉛;2-エチルヘキサン酸ビスマス;カリウムアルコラート;フッ化アンチモン;およびイットリウムまたはランタニド系列希土類金属ベースの触媒(配位触媒)、例えば米国特許第5,028,667号明細書に記載されているものが含まれる。
【0064】
本明細書では、触媒が金属を含まないことが好ましい。特に、本発明を制限する意図はないが、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)および/または1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)が重合触媒として使用されている場合に、良い結果が得られた。
【0065】
化合物の適切な触媒量の決定は当業者に容易であるが、重合触媒が、モノマーの総重量に基づいて、0.1~5重量%、例えば0.1~2.0重量%の量で使用されることが好ましい。
【0066】
開環重合反応は室温で開始できる。反応の発熱性により、反応物質の温度が自然に上昇する。そうは言っても、反応温度を50~200℃、または60~150℃の範囲に維持するべきである。維持された温度が50℃より低い場合、反応速度が好ましくないほど低くなってもよい。他方、維持された温度が200℃より高い場合、ポリマーの分解速度が増加し、低分子量成分が形成し、蒸発さえすることができる。
【0067】
当技術分野で知られているように、開環重合反応を開始する前に、重合容器を乾燥させ、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスでパージしてもよい。さらに、変色したポリエステル生成物の形成を排除するため、重合中に反応容器内で部分真空または不活性雰囲気を維持してもよい:このような部分真空をもたらす、または反応混合物に窒素もしくはアルゴンを通すことによって、反応容器内の酸素の存在を排除または最小化することができる。
【0068】
重合は溶液で行っても、溶媒なしのメルトで行ってもよいが、いずれの場合も、容器に機械式撹拌機などの有効な撹拌機を装備すべきである:良好な撹拌が重合反応を完了させることができることが観察されている。
【0069】
本明細書では、重合混合物が溶媒を本質的に含まないことが好ましい:完全を期すために、この優先事項は、水を本質的に含まない重合混合物を含む。しかしながら、溶液中で重合を行うことを選択する場合、適切な溶媒は、25°で少なくとも1重量%、好ましくは10重量%を超えるアミノ官能性ポリエステル生成物を溶解することができる非反応性で、本質的に無水の有機液体であるべきである。また、適切な有機溶媒として、以下に言及することができる:トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘプタンおよびデカンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンおよびデカリンなどの脂環式炭化水素;クロロホルムおよびトリクロロエチレンなどの塩素化炭化水素;酢酸エチルや酪酸メチルなどのエステル;ならびにテトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなどのエーテル。
【0070】
重合反応の進行は、核磁気共鳴(NMR)分光法によって監視でき、反応の完了は、最初のラクトンに関連するシグナルが完全に消失した場合に起こるとみなされる。ラクトンモノマーに応じて、反応の進行を以下よって監視することもできると考えられる:屈折率が一定になったらすぐに反応が完了したとみなしてよい屈折率測定;およびラクトンの反応が発熱を促進し、結果として前記ラクトンの完全な消費が混合物の冷却に対応するとした熱分析。いずれにしても、重合反応時間は、典型的には0.1~10時間、例えば0.5~5時間である。該当する場合および所望であれば、120~160℃などの高温で真空を印加して、未反応モノマーを除去することができる。
【0071】
これは後の用途にとって重要ではないが、反応生成物(以下、AF-PESと表す)を、当技術分野で知られている方法を使用して分離および精製してもよい:この点に関しては、抽出、蒸発、蒸留およびクロマトグラフィーに言及してもよい。(任意に精製された)反応生成物(AF-PES)を製造時に貯蔵することを意図する場合、ポリエステルを気密および防湿シール付きの容器に配置すべきである。
【0072】
このプロセスに従って得られるポリエステルは、少なくとも1つの末端ヒドロキシル基を有することを特徴とする。開始剤はポリエステル構造に組み込まれ、したがって、ポリエステルは二級アミン基を有することをさらに特徴とする。
【0073】
本発明の好ましい実施形態によると、誘導されるアミノ官能性ポリエステル(AF-PES)は、
i)300~5000g/mol、好ましくは500~4000g/molの重量平均分子量;
ii)2.5未満、好ましくは2.3未満の多分散指数;
iii)20~350mg KOH/g、好ましくは25~250mg KOH/gのアミン価(NHv);および
iv)40~500mg KOH/g、好ましくは50~400mg KOH/gの総ヒドロキシルおよびアミン価(またはアルカリ価、OHv+NHv)
のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0074】
完全を期すために、これらの制限は相互に排他的ではなく、したがって、これらの特性のうちの1つ、2つ、3つまたは4つが適用可能であってもよいことに留意されたい。
【0075】
<コーティング、シーラントおよび接着剤組成物>
本発明の方法を使用して得られるアミノ官能性ポリエステル(AF-PES)を、硬化性コーティング、接着剤またはシーラント組成物の反応性成分として使用することができる。このような組成物のさらなる反応物質は、一般に、(i)(メタ)アクリロイル基などの活性化不飽和基;(ii)アセトアセテートおよびマロネート基などの活性化メチレン基;(iii)エポキシ基;(iv)イソシアネート基;(v)芳香族活性化アルデヒド基;(vi)環状カーボネート基;および(vii)シュウ酸エステルを含む、酸、無水物およびエステル基からなる群から選択される少なくとも2つの官能基(F)を有する1つ以上の多官能性化合物(H)となる。官能基(F)はブロックされているが、特定の物理化学的条件下で活性化可能な潜在化合物も、コーティング、接着剤またはシーラント組成物に適切なさらなる反応物質として想定される。
【0076】
(活性化)化合物(H)が有する官能基(F)の数に特定の制限は課せられない:例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の官能基を有する化合物を使用してもよい。さらに、反応物質化合物(H)は低分子量物質-すなわち、その分子量が500g/mol未満である-または500g超の数平均分子量(Mn)を有するオリゴマーもしくはポリマー物質であることができる。当然、化合物(H)の混合物を使用してもよい。
【0077】
コーティング、接着剤またはシーラント組成物の一実施形態では、少なくとも2つの官能基を有する反応物質化合物(H)が、ポリエポキシド化合物;環状カーボネート;およびポリイソシアネートからなる群から選択される。より具体的には、少なくとも2つの官能基を有する反応物質化合物(H)が、ポリエポキシド化合物;および環状カーボネートからなる群から選択される。
【0078】
適切なポリエポキシド化合物は、液体、固体または溶媒中の溶液であってもよい。さらに、このようなポリエポキシド化合物は、100~700g/eq、例えば120~320g/eqのエポキシ当量を有するべきである。また一般に、エポキシ当量が500未満、さらには400未満のジエポキシド化合物が好ましい。
【0079】
適切なジグリシジルエーテル化合物は、本質的に芳香族、脂肪族または脂環式であってもよく、したがって、二価フェノールおよび二価アルコールから誘導することができる。このようなジグリシジルエーテルの有用なクラスは以下である:1,2-エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロペンタンジオールおよびシクロヘキサンジオールなどの脂肪族および脂環式ジオールのジグリシジルエーテル;ビスフェノールAベースのジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;ジグリシジルo-フタレート、ジグリシジルイソフタレートおよびジグリシジルテレフタレート;ポリアルキレングリコールベースのジグリシジルエーテル、特にポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;ならびにポリカーボネートジオールベースのグリシジルエーテル。言及される可能性のある他の適切なジエポキシドには以下が含まれる:二重不飽和脂肪酸C1~C18アルキルエステルのジエポキシド;ブタジエンジエポキシド;ポリブタジエンジグリシジルエーテル;ビニルシクロヘキセンジエポキシド;およびリモネンジエポキシド。
【0080】
例示的なポリエポキシド化合物には、それだけに限らないが、以下が含まれる:グリセロールポリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル;ジグリセロールポリグリシジルエーテル;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル;およびソルビトールポリグリシジルエーテル。
【0081】
本発明を制限する意図はないが、化合物(H)として使用するための非常に好ましいポリエポキシド化合物の例としては以下が挙げられる:DER(商標)331およびDER(商標)383などのビスフェノールAエポキシ樹脂;DER(商標)354などのビスフェノールFエポキシ樹脂;DER(商標)353などのビスフェノールA/Fエポキシ樹脂ブレンド;DER(商標)736などの脂肪族グリシジルエーテル;DER(商標)732などのポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;DER(商標)661およびDER(商標)664 UEなどの固体ビスフェノールAエポキシ樹脂;DER(商標)671-X75などのビスフェノールA固体エポキシ樹脂の溶液;DEN(商標)438などのエポキシノボラック樹脂;DER(商標)542などの臭素化エポキシ樹脂;ERISYS(商標)GE-35Hなどのヒマシ油トリグリシジルエーテル;ERISYS(商標)GE-38などのポリグリセロール-3-ポリグリシジルエーテル;ならびにERISYS(商標)GE-60などのソルビトールグリシジルエーテル。
【0082】
適切な環状カーボネート基含有モノマーおよびオリゴマー化合物の例としては、以下に言及し得る:ヒドロキシル官能性シクロカーボネートをポリイソシアネートと反応させることによって生成される化合物;およびエポキシ基含有モノマーまたはオリゴマーにCO2を添加することによって生成される化合物。以下の引用の開示が、適切な環状カーボネート官能性化合物の開示において有益であり得る:米国特許第3,535,342号明細書;米国特許第4,835,289号明細書;米国特許第4,892,954号明細書;英国特許第1,485,925号明細書;および欧州特許第0 119 840号明細書。
【0083】
硬化性組成物中に存在する化合物(H)の総量は、好ましくは、前記官能性ポリエステル(AF-PES)のアミン基と官能基(F)とのモル比が1:10~10:1、例えば5:1~1:5の範囲であり、好ましくは1:2~2:1の範囲であるように選択される。例えば、硬化性化合物(H)中の前記官能性ポリエステル(AF-PES)のアミン基とエポキシ基または環状カーボネート基のいずれかとのモル比は、1:2~3:2または2:3~4:3であってもよい。
【0084】
組成物の別の表現では、化合物(H)の総量が、アミノ官能性ポリエステル(AF-PES)および化合物(H)の合わせた総量に基づいて、適切には0.1~50重量%、好ましくは0.5~40重量%、より好ましくは1~30重量%である。
【0085】
当技術分野で標準的であるように、硬化性組成物は添加剤および補助成分を含んでもよい。適切な添加剤および補助成分には以下が含まれる:触媒;抗酸化剤;UV吸収剤/光安定剤;金属不活性化剤;帯電防止剤;補強剤;フィラー;防曇剤;噴霧剤;殺生物剤;可塑剤;潤滑剤;乳化剤;染料;顔料;レオロジー剤;耐衝撃性改良剤;接着調整剤;蛍光増白剤;難燃剤;ドリップ防止剤;核剤;湿潤剤;増粘剤;保護コロイド;消泡剤;粘着付与剤;溶剤;反応性希釈剤;およびこれらの混合物。組成物に適した従来の添加剤の選択は、その具体的な意図された用途に依存し、個々の場合で、当業者が決定できる。
【0086】
本発明の一定の実施形態では、環状アミン基と化合物(H)の官能基(F)の反応を触媒するための触媒は不要である。これは、典型的には、環状カーボネート基またはエポキシ基が官能基(F)として存在する場合であってもよい。しかし、他の場合、好ましくは化合物(H)が前記環状カーボネートまたはエポキシ基とは異なる反応性基Fを有する場合、触媒が必要であってもよい:その場合、硬化に適した触媒は、反応性官能基(F)の種類に応じた既知の方法で決定される。触媒は、所望の場合、硬化性組成物の総重量に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは0.01~5重量%の量で使用される。
【0087】
硬化性コーティング、接着剤またはシーラント組成物は、組成物の重量に基づいて、5重量%未満の水を含むべきであり、最も好ましくは水を本質的に含まない無水組成物である。これらの実施形態は、組成物が有機溶媒を含むことも有機溶媒を本質的に含まないことも排除しない。
【0088】
概して、当業者に知られている全ての有機溶媒を溶媒として使用することができるが、前記有機溶媒が、エステル;ケトン;ハロゲン化炭化水素;アルカン;アルケン;および芳香族炭化水素からなる群から選択されることが好ましい。例示的な溶媒は、塩化メチレン、トリクロロエチレン、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、メトキシブチルアセテート、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジクロロベンゼン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジオキサン、酢酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、グリコールジアセテート、ヘプタン、ヘキサン、イソブチルアセテート、イソオクタン、イソプロピルアセテート、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランもしくはテトラクロロエチレン、または列挙した溶媒の2つ以上の混合物である。
【0089】
<方法および用途>
コーティング、シーラントまたは接着剤組成物を形成するために、反応性化合物を一緒にし、バインダーの硬化を誘導するような方法で混合する。より具体的には、アミノ官能性ポリエステル(AF-PES)および化合物(H)を、手、機械、(共)押出、またはその微細でかつ高度に均質な混合を確保できる任意の他の手段で所定量混合してもよい。
【0090】
本発明のバインダー組成物の硬化は、典型的には、-10℃~150℃、好ましくは0℃~100℃、特に10℃~70℃の範囲の温度で起こる。適切な温度は、具体的な化合物(H)および所望の硬化速度に依存し、個々の場合で、必要に応じて簡単な予備試験を使用して、当業者が決定できる。当然、5℃~35℃または20℃~30℃の温度での硬化は、混合物を通常の一般的な周囲温度から実質的に加熱または冷却する要件を排除するので、特に有利である。しかしながら、該当する場合、アミノ官能性ポリエステル(AF-PES)と化合物(H)の混合物の温度を、マイクロ波誘導を含む従来の手段を使用して混合温度よりも上に上げてもよい。
【0091】
本発明による組成物が、とりわけ以下において有用性を見出してもよい:ワニス;インク;エラストマー;フォーム;繊維および/または粒子の結合剤;ガラスのコーティング;石灰-および/またはセメント-結合プラスター、石膏含有表面、繊維セメント建材およびコンクリートなどの無機建材のコーティング;チップボード、ファイバーボードおよび紙などの木材および木製材料のコーティングおよびシーリング;金属表面のコーティング;アスファルト-およびビチューメン-含有舗装のコーティング;種々のプラスチック表面のコーティングおよびシーリング;ならびに革および繊維製品のコーティング。
【0092】
また、本発明の組成物は、ケーブル、光ファイバー、カバーストリップまたはプラグなどの電気建築部品用の注入可能なシーリング化合物として適していると考えられる。シーラントは、水および他の汚染物質の進入、熱暴露、温度変動、熱衝撃、ならびに機械的損傷からこれらの部品を保護するのに役立ってもよい。
【0093】
本発明の組成物が、通常室温で、短時間で高い結合強度を作り出すことができるという事実により、特にエポキシまたは環状カーボネート硬化剤(H)が使用される場合、組成物が、同じまたは異なる材料を互いに表面同士で結合することによって複合構造を形成するために最適に使用される。本組成物の例示的な接着剤用途として、木材と木製材料の結合、および軟鋼などの金属材料の結合に言及し得る。
【0094】
本発明の特に好ましい実施形態では、硬化性組成物が、ポリオレフィンフィルム、ポリ(メチルメタクリレート)フィルム、ポリカーボネートフィルムおよびアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)フィルムなどのプラスチックおよびポリマーフィルムを接着するための無溶媒または溶媒含有積層接着剤として使用される。
【0095】
上述の用途の各々において、組成物を、以下のような従来の塗布方法により塗布してもよい:例えば、組成物が無溶媒である4回塗布ロール装置または溶媒含有組成物用の2回塗布ロール装置を使用したロールコーティング;ドクターブレード塗布;印刷法;ならびに、それだけに限らないが、空気噴霧スプレー、空気アシストスプレー、エアレススプレーおよび大容量低圧スプレーを含む噴霧法。コーティングおよび接着剤用途では、組成物を10~500μmの湿潤膜厚に塗布することが推奨される。この範囲内のより薄い層の適用がより経済的であり、コーティング塗布のためにサンディングを必要としてもよい厚い硬化領域の可能性を減少させる。しかしながら、不連続な硬化膜の形成を回避するために、より薄いコーティングまたは層を適用する際には、多大な制御を働かせなければならない。
【0096】
本開示の種々の特徴および実施形態を以下の実施例で説明するが、これらは代表的なものであり、限定するものではないことを意図している。
【実施例
【0097】
実施例では、以下の材料および略語を使用する:
TBD:トリアザビシクロデセン
Bax:N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン、TCI Americaから入手可能。
CL:ε-カプロラクトン。
VL:δ-バレロラクトン。
TEPA:テトラエチレンペンタミン、Sigma-Aldrichから入手可能。
DETA:ジエチレントリアミン。
BADGE:ビスフェノールAジグリシジルエーテル、Tocris Bioscienceから入手可能。
CC-BADGE:炭酸(CO2)ビスフェノールAジグリシジルエーテル。
Erisys GE60:ソルビトールグリシジルエーテル、CVC Thermoset Specialtiesから入手可能。
PEI:800g/molの重量平均分子量(Mw)を有するポリエチレンイミン、Sigma-Aldrichから入手可能。
ARMS:受け取った状態のままの軟鋼。
【0098】
<実施例1>:アミノ官能化ポリエステル(NH-PES)の合成
【化5】
アミノ官能化ポリエステルを、以下の一般的な手順を使用して形成した:
i)オープンビーカー内でアミンをTBD(ラクトンモノマーの総量に基づいて1重量%)と混合し、5分間機械的に撹拌した。ラクトンを秤量し、アミン-TBDの混合物に添加する前に、異なる容器で混合した。
ii)反応の化学量論について、ジアミンの官能性をf=1と見なし、ポリアミンの官能性をf=2と見なす。
iii)ラクトンの添加により発熱が促進され、反応混合物が温められた(約60℃);十分に攪拌しながら、反応を完了させ、所望のアミノ-ポリエステルを得た。約2時間後、混合物の冷却に対応する、初期ラクトンに関連するシグナルが完全に消失するまで、反応をNMRによって監視した。
【0099】
<実施例1A>:ジアミンを使用したNH-PES 2A:
N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン(1.56g)およびTBD(114mg)を、機械的に攪拌しながら50mLフラスコで5分間混合した。ε-カプロラクトン(11.4g)をアミン-TBD混合物に添加し、さらに2時間-1H-NMRによって同時に監視しながら-攪拌して、アミノ価39mg KOH/gのNH-PESを得た。
【0100】
<実施例1B>:ポリアミンを使用したNH-PES 2F:
TEPA(18g)およびTBD(823mg、ラクトンモノマーの総量に基づいて1重量%)を、機械的に攪拌しながら250mLフラスコで5分間混合する。ε-カプロラクトン(43.8g)とδ-バレロラクトン(38.5g)の混合物をアミノ-TBD混合物に添加し、2時間-1H-NMR監視下で攪拌して、アミノ価130mg KOH/gのNH-PESを得る。
【0101】
同じ手順を使用して調製したさらなる例を、以下の表1に詳述する。
【0102】
【表1】
【0103】
<実施例2>
上記のアミノ官能化ポリエステルのうちの4つ(表1:2B、2D、2F、2G)の分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析した。各ポリエステルのアリコートをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、溶媒としてTHF、および較正のための分析標準としてポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を使用して、GPC分析を行った。この分析の結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
ここに添付される図1は、この実施例で得られたアミノ官能性ポリエステルのうちの3つ(2B、2F、2G)のクロマトグラフィー分析の結果をグラフで表しており、前記グラフは、屈折率(RI)シグナル強度対溶出時間(分)を示している。
【0106】
これらの表およびグラフの結果は、本発明の開環重合が、分子量の均質な分布を有するアミノ-ポリエステルを調製するための選択的かつ制御された方法を提供することを示している:反応機構の副産物として、有意な量の低分子量種は生成されない。
【0107】
<比較実施例1>
1つ以上のジカルボン酸を1つ以上のポリオールを重縮合することによってポリエステルを得た:酸およびポリオールは以下の表3で特定される。それぞれの縮合を、不活性ガス雰囲気中130℃~220℃の温度で行った。次いで、得られたポリエステルを、溶媒の非存在下、窒素雰囲気下、90℃~130℃の温度で1~8時間特定のポリアミンと反応させた。アミノリシス反応の生成物を以下の通り示してもよい:
【化6】
【0108】
【表3】
【0109】
ここに添付される図2は、これらのアミノリシス生成物のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析の結果をグラフで表しており、屈折率(RI)シグナル強度対溶出時間(分)を提供している。アミノリシスによって得られた全ての生成物が、様々な分子量の分子の異なる集団で不均質な分子量分布を示したことが分かる。より具体的には、面積で約10%の1つの大きな十分に区別できるピークが、全ての比較実施例で検出され、反応の副産物として放出されるモノマーグリコールおよび/またはオリゴエステルに対応する。
【0110】
これらの結果は、ポリエステルのアミノリシスがアミノ-ポリエステルを調製するための非選択的で制御されていない方法であることを示し、この方法が反応機構の副産物として有意な量の低分子量種を含む生成物の不均質な分子量分布をもたらすことを示していると思われる。これらの所見は、未反応の低分子量種および非意図的に添加された物質(NIAS)の移動制限を厳密に制御する必要のある用途で、このようなアミノ官能性ポリエステルを使用することの欠点を表すだろう。
【0111】
<実施例3>:接着剤配合物の接着性能
以下の表4aに示されるように、上に定義されるアミノ官能化ポリエステルのうちの2つ(表1:NH2B、NH2F)を40mol%のポリエチレンイミン(MW 800)、次いでエポキシ樹脂硬化パートナー(BADGE;Erisys GE60)と独立に混合することによって、4つの接着剤配合物(AF1~AF4)を調製した。混合物を、[エポキシ基]:[一級および二級アミノ基]比1:1で調製し、100℃または80℃で2時間硬化した。
【0112】
【表4a】
【0113】
これらの接着剤配合物を利用して、DIN EN 1465に従って、以下の基板:ARMS-ARMS;ポリカーボネート、PC-PC;ABS-ABS;およびブナ材-ブナ材を使用して、重ねせん断試験を行った。室温で行った試験の結果を以下の表4bに示す:SFは基板破壊を意味し;AFは接着破壊を意味し;CFは凝集破壊を意味する。
【0114】
【表4b】
【0115】
<実施例4>:接着剤配合物の接着性能
以下の表5aに示されるように、上に定義されるアミノ官能化ポリエステルのうちの2つ(表1:NH2B、NH2F)を40mol%のポリエチレンイミン(MW 800)、次いで環状カーボネート官能性硬化パートナー(CC-BADGE)と独立に混合することによって、2つの接着剤配合物(AF5~AF6)を調製した:前記硬化パートナーは、エポキシ化合物にCO2を添加することによって得た。混合物を、[環状カーボネート基]:[一級および二級アミノ基]比1:1で調製し、130℃で20時間硬化した。
【0116】
【表5a】
【0117】
これらの接着剤配合物を利用して、DIN EN 1465に従って、以下の基板:ARMS-ARMS;およびブナ材-ブナ材を使用して、重ねせん断試験を行った。室温で行った試験の結果を以下の表5bに示す:SFは基板破壊意味し;AFは接着破壊を意味し;CFは凝集破壊を意味し;NMは未測定を意味する。
【0118】
【表5b】
本発明は以下の態様を含む。
[1]アミノ官能性ポリエステルを調製する方法であって、
少なくとも1つのラクトンモノマー、触媒、ならびに少なくとも1つの一級アミン基および少なくとも1つの二級アミン基を有するポリアミンを含む混合物を用意すること;ならびに
該混合物を開環重合条件に曝すこと
を含んでなる、方法。
[2]前記混合物が、式(1):
【化7】
[式中:n≧1;
各Rは水素、C1~C6アルキル、C3~C8シクロアルキル、C1~C6アルコキシおよびC6アリールからなる群から独立に選択され、但し、少なくともn個のRが水素である]
で表される少なくとも1つのラクトンモノマーを含んでなる、[1]に記載の方法。
[3]前記混合物が、式(1a):
【化8】
[式中:nは1~4の整数であり;
各Rは水素およびC1~C6アルキルからなる群から独立に選択され、但し、少なくともn+2個のRが水素である]
で表される少なくとも1つのラクトンモノマーを含んでなる、[2]に記載の方法。
[4]前記混合物が、β-プロピオラクトン;β-ブチロラクトン;β-バレロラクトン;γ-ブチロラクトン;γ-バレロラクトン;δ-バレロラクトン;モノメチル-δ-バレロラクトン;モノエチル-δ-バレロラクトン;モノヘキシル-δ-バレロラクトン;ε-カプロラクトン;モノメチル-ε-カプロラクトン;モノエチル-ε-カプロラクトン;モノヘキシル-ε-カプロラクトン;ジメチル-ε-カプロラクトン;ジ-n-プロピル-ε-カプロラクトン;ジ-n-ヘキシル-ε-カプロラクトン;トリメチル-ε-カプロラクトン;トリエチル-ε-カプロラクトン;ピバロラクトン;および5-メチルオキセパン-2-オンからなる群から選択される少なくとも1つのラクトンモノマーを含んでなる、[1]に記載の方法。
[5]前記反応性混合物が、モノマーの総重量に基づいて:
80~100重量%の前記少なくとも1つのラクトンモノマー;ならびに
0~20重量%のエポキシド化合物;環状カーボネート;グリコリド;およびラクチドからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマー
を含んでなる、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]前記ポリアミンが脂肪族または脂環式である、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記ポリアミンが、少なくとも2つの一級アミン基および少なくとも1つの二級アミン基を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記ラクトンモノマーと前記ポリアミンとのモル比が、1:1~500:1の範囲、好ましくは2:1~50:1の範囲、より好ましくは2:1~20:1の範囲である、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記触媒が金属を含まない、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記触媒が、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)および/または1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)を含んでなる、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記触媒が、モノマーの総重量に基づいて、0.1~5重量%、好ましくは0.1~2.0重量%の量で提供される、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]開環重合条件に曝される前記混合物が、溶媒を本質的に含まない、[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13]前記開環重合条件が、50~200℃、好ましくは60~150℃の温度を含んでなる、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14][1]~[13]のいずれかに定義される方法によって得られるアミノ官能性ポリエステルであって、好ましくは、
i)300~5000g/mol、好ましくは500~4000g/molの重量平均分子量(Mw);
ii)2.5未満、好ましくは2.3未満の多分散指数;
iii)20~350mg KOH/g、好ましくは25~250mg KOH/gのアミン価(NHv);および
iv)40~500mg KOH/g、好ましくは50~400mg KOH/gの総ヒドロキシルおよびアミン価(OHv+NHv)
のうちの少なくとも1つを特徴とする、アミノ官能性ポリエステル。
[15][14]に定義されるアミノ官能性ポリエステル;ならびに
エポキシ基;イソシアネート基;および環状カーボネート基からなる群から選択される少なくとも2つの官能基(F)を有する少なくとも1つの多官能性化合物(H)
を含んでなる、硬化性コーティング、接着剤またはシーラント組成物。