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特許7237083研磨のインシトゥモニタリングにおけるフィルタリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】研磨のインシトゥモニタリングにおけるフィルタリング
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230303BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20230303BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20230303BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
H01L21/304 622R
H01L21/304 622S
B24B37/013
B24B49/10
B24B49/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020547186
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 US2019021045
(87)【国際公開番号】W WO2019177842
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】62/641,950
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダンダパーニ, シヴァクマール
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-281460(JP,A)
【文献】特開2015-085487(JP,A)
【文献】特表2015-519740(JP,A)
【文献】特表2016-538728(JP,A)
【文献】特開2000-218518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/013
B24B 49/10
B24B 49/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨を制御する方法であって、
基板を研磨することと、
研磨中、インシトゥモニタリングシステムで前記基板をモニタすることであって、前記モニタすることは、センサから信号を生成することを含み、前記信号は一連の測定値を含む、前記基板をモニタすることと、
フィルタリング済み信号を生成するために前記信号をフィルタリングすることであって、前記フィルタリング済み信号は一連の調整値を含み、前記フィルタリングすることは、
複数の外乱状態を使用して、複数の異なる周波数で、複数の周期的外乱をモデリングすること、
プラント状態を使用して、基本信号をモデリングすること、および、
前記基本信号を表すフィルタリング済み信号を生成するために、前記プラント状態および前記複数の外乱状態に線形の予測フィルタを適用すること、
を含むフィルタリングすることと、
前記フィルタリング済み信号から、研磨終点または研磨速度の調整のうちの少なくとも1つを特定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の周期的外乱が、ヘッド掃引外乱および/またはプラテン回転外乱を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
命令を有するコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、前記命令はプロセッサによって実行されると、該プロセッサに、
基板の研磨中、インシトゥモニタリングシステムからの、一連の測定値を含む信号を受信することと、
一連の調整値を含むフィルタリング済み信号を生成するために、前記信号をフィルタリングすることであって、前記信号をフィルタリングする命令は、
複数の外乱状態を使用して、複数の異なる周波数で、複数の周期的外乱をモデリングし、
プラント状態を使用して、基本信号をモデリングし、
前記基本信号を表すフィルタリング済み信号を生成するために、前記プラント状態と前記複数の外乱状態に線形の予測フィルタを適用する
命令を含む、フィルタリングすることと、
前記フィルタリング済み信号から、研磨終点または研磨速度の調整のうちの少なくとも1つを特定することとを行わせる、コンピュータプログラム製品。
【請求項4】
前記複数の周期的外乱が、2つの周期的外乱からなる、請求項3に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項5】
前記複数の周期的外乱が、3つの周期的外乱からなる、請求項3に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項6】
前記複数の周期的外乱が、ヘッド掃引外乱を含む、請求項3に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項7】
前記信号をフィルタリングする命令が、複数のプラント状態を使用して、前記基本信号をモデリングする命令を含む、請求項3に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項8】
前記複数のプラント状態が、フィルタリング済みモータ電流およびモータ電流変化率を含む、請求項7に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項9】
前記複数のプラント状態が、フィルタリング済みトルクおよびトルク変化率を含む、請求項7に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
前記線形の予測フィルタがカルマンフィルタを含む、請求項3に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
研磨システムであって、
研磨パッドを支持するためのプラテンと、
研磨中、前記研磨パッドと接触して基板を保持するためのキャリアヘッドと、
研磨中、前記基板をモニタするセンサから信号を生成するように構成されたインシトゥモニタリングシステムであって、前記信号は一連の測定値を含む、インシトゥモニタリングシステムと、
コントローラであって、
前記基板の研磨中、前記インシトゥモニタリングシステムからの前記信号を受信し、
一連の調整値を含むフィルタリング済み信号を生成するために前記信号をフィルタリングし、前記コントローラは、
複数の外乱状態を使用して、複数の異なる周波数で、複数の周期的外乱をモデリングすること、
プラント状態を使用して基本信号をモデリングすること、および、
前記基本信号を表すフィルタリング済み信号を生成するために、前記プラント状態および前記複数の外乱状態に線形の予測フィルタを適用すること、によって前記信号をフィルタリングするように構成され、
前記フィルタリング済み信号から、研磨終点または研磨速度の調整のうちの少なくとも1つを特定するように構成されたコントローラと、
を含む、研磨システム。
【請求項12】
前記インシトゥモニタリングシステムが、モータ電流モニタリングシステムまたはモータトルクモニタリングシステムを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記インシトゥモニタリングシステムが、モータ電流モニタリングシステムを含み、複数のプラント状態が、フィルタリング済みモータ電流およびモータ電流変化率を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記インシトゥモニタリングシステムが、モータトルクモニタリングシステムを含み、複数のプラント状態が、フィルタリング済みトルクおよびトルク変化率を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記線形の予測フィルタがカルマンフィルタを含む、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、研磨を制御するインシトゥモニタリングシステムによって得られたデータにフィルタを使用し、適用することに関する。
【0002】
集積回路は、通常、シリコンウエハ上での導電層、半導電層、または絶縁層の連続した堆積によって、基板上に形成される。1つの製造ステップは、非平坦面上に充填層を堆積させること、および、該充填層を平坦化することを伴う。特定の応用例では、充填層は、パターン層の上面が露出するまで平坦化される。例えば、導電性充填層をパターン絶縁層上に堆積し、絶縁層内のトレンチまたは孔を充填することができる。平坦化後、高くなった絶縁層のパターン間に残っている金属層の一部が、基板上の薄膜回路間の導電経路を設けるビア、プラグ、およびラインを形成する。酸化物研磨などの他の応用例では、充填層は、非平坦面上に所定の厚さが残るまで、平坦化される。加えて、基板表面の平坦化は、フォトリソグラフィのために通常必要とされる。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、一般に認められた1つの平坦化方法である。この平坦化方法では通常、基板がキャリアまたは研磨ヘッドに取り付けられる必要がある。基板の露出面は通常、回転研磨パッドに当たるようにして配置される。キャリアヘッドが、基板に制御可能な荷重をかけ、基板を研磨パッドに押し付ける。研磨用研磨スラリが通常、研磨パッドの表面に供給される。
【0004】
CMPの1つの問題は、研磨処理が完了しているかどうか、すなわち基板層が所望の平坦度もしくは厚さにまで平坦化されたかどうか、または所望の量の材料が除去されたときを特定することである。スラリ分布、研磨パッド状態、研磨パッドと基板との間の相対速度、および基板への荷重の各ばらつきが、材料除去速度のばらつきを生じさせる可能性がある。これらのばらつき、また基板層の初期厚さのばらつきが、研磨終点に到達するのに必要な時間のばらつきを生じさせる。したがって、研磨終点は通常、単なる研磨時間の関数として特定することができない。
【0005】
いくつかのシステムでは、基板は、例えばプラテンまたはキャリアヘッドを回転させるのにモータが必要とするトルクをモニタリングすることによって、研磨中にインシトゥでモニタされる。しかし、既存のモニタリング技法では、半導体デバイス製造者の増大する要望を満足させることができない。
【発明の概要】
【0006】
1つの態様では、研磨を制御する方法は、基板を研磨すること、研磨中、センサから信号を生成することを含む、インシトゥモニタリングシステムで基板をモニタすること、フィルタリング済み信号を生成するために信号をフィルタリングすること、およびフィルタリング済み信号から研磨終点または研磨速度の調整のうちの少なくとも1つを特定することを含む。信号は一連の測定値を含み、フィルタリング済み信号は一連の調整値を含む。フィルタリングは、複数の外乱状態を使用して、複数の異なる周波数で複数の周期的外乱をモデリングすること、プラント状態を使用して、基本信号(underlying signal)をモデリングすること、ならびに基本信号を表すフィルタリング済み信号を生成するために、線形の予測フィルタをプラント状態および複数の外乱状態に適用することを含む。
【0007】
別の態様では、コンピュータプログラム製品が、プロセッサによって実行されるとき、基板の研磨中、プロセッサにインシトゥモニタリングシステムからの信号を受信させ、フィルタリング済み信号を生成するために信号をフィルタリングさせ、かつ、フィルタリング済み信号から研磨終点または研磨速度の調整のうちの少なくとも1つを特定させる命令を有するコンピュータ可読媒体を含む。信号は一連の測定値を含み、フィルタリング済み信号は一連の調整値を含む。信号をフィルタリングする命令は、複数の外乱状態を使用して、複数の異なる周波数で複数の周期的外乱をモデリングし、プラント状態を使用して、基本信号をモデリングし、ならびに基本信号を表すフィルタリング済み信号を生成するために、線形の予測フィルタをプラント状態および複数の外乱状態に適用する命令を含む。
【0008】
別の態様では、研磨システムが、研磨パッドを支持するためのプラテン、研磨中、研磨パッドと接触して基板を保持するためのキャリアヘッド、研磨中、基板をモニタするセンサから信号を生成するように構成されたインシトゥモニタリングシステム、およびコントローラを含む。コントローラは、基板の研磨中、インシトゥモニタリングシステムから信号を受信し、フィルタリング済み信号を生成するために信号をフィルタリングし、かつ、フィルタリング済み信号から研磨終点または研磨速度の調整のうちの少なくとも1つを特定するように構成される。信号は一連の測定値を含み、フィルタリング済み信号は一連の調整値を含む。コントローラは、複数の外乱状態を使用して、複数の異なる周波数で複数の周期的外乱をモデリングすること、プラント状態を使用して、基本信号をモデリングすること、ならびに基本信号を表すフィルタリング済み信号を生成するために、線形の予測フィルタをプラント状態および複数の外乱状態に適用することによって、信号をフィルタリングするように構成される。
【0009】
実装態様は、以下の特徴のうちの一以上を含み得る。
【0010】
複数の周期的外乱は、正確に2つまたは正確に3つの周期的外乱であってもよい。複数の周期的外乱は、ヘッド掃引外乱および/またはプラテン回転外乱を含み得る。
【0011】
フィルタリングは、複数のプラント状態を使用して基本信号をモデリングすることを含み得る。インシトゥモニタリングシステムは、モータ電流モニタリングシステムを含んでもよく、複数のプラント状態は、フィルタリング済みモータ電流およびモータ電流変化率を含み得る。インシトゥモニタリングシステムは、トルクモニタリングシステムを含んでもよく、複数のプラント状態は、フィルタリング済みトルクおよびトルク変化率を含み得る。
【0012】
線形の予測フィルタはカルマンフィルタを含み得る。
【0013】
インシトゥモニタリングシステムは、モータ電流モニタリングシステムまたはモータトルクモニタリングシステムを含み得る。インシトゥモニタリングシステムは、モータトルクモニタリングシステムを含み得る。
【0014】
実装態様は、以下の潜在的な利点のうちの一以上を含み得る。信号内の周期的外乱は、大幅なフィルタ遅延をもたらすことなく削減され得る。研磨は、より確実に目標の厚さで停止することができる。
【0015】
一以上の実施形態の詳細を添付図面および以下の説明において明記する。その他の態様、特徴、および利点は、この説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から、明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】研磨装置の一例の概略断面図を示す。
図2】信号を構成要素に分解した概略図である。
図3】生のモータトルク線とカスタマイズされたフィルタによって生成されたフィルタリング済みのプラテントルク線を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
様々な図面における類似の参照符号は、類似の要素を示す。
【0018】
いくつかの半導体製造処理研磨において、該処理は、インシトゥモニタリングシステムによってモニタされる。しかし、ある状況では、インシトゥモニタリングシステムからの信号は、周期的外乱または正弦波外乱によって崩され得る。これらの外乱は、しばしば基板の動きと関連付けられた、多種多様なソースに由来し得る。例えば、研磨動作において、かかる外乱はプラテン回転またはキャリアヘッドの掃引振動に由来し得る。高調波が存在することもあり、これは摩擦などの非線形性によるものであろう。
【0019】
概して、半導体処理にとっては、終点制御に使用可能なインシトゥモニタリングシステムからの信号を抽出することが望ましい。信号の低域フィルタリングを伴う周期的外乱または正弦波外乱を除去する現在の技法は、さらなる遅延の結果となり得、それにより終点の精度に影響を及ぼす可能性がある。しかし、モデルベース方式を用いる正弦曲線をフィルタリングで除くこと(正弦曲線除去)を伴う技法は、最小限の遅延または信号の歪曲の結果となり得る。
【0020】
一例として、プラテンまたはキャリアヘッドを特定の回転速度で回転させるためにモータによって必要とされるトルクまたは電流がモニタされ得る。このモータトルクは、周期的外乱にさらされ得る雑音を出す信号である。例えば、モータトルクおよびモータ電流の信号対時間曲線は、ランダム雑音によって崩れるだけでなく、研磨パッド全体にわたりキャリアヘッド140を掃引することによる、大きい系統的な正弦波外乱によっても崩れる可能性がある。フィルタリング方式は、かかる信号に適用され得る。
【0021】
下層が露出されるとき、下層は上層とは異なる研磨層に対する摩擦係数を有すると仮定して、モータトルクにおける結果として生じる変化を検出することにより、研磨終点は特定され得る。例えば、いくつかの半導体チップ製造処理では、例えばシリコン酸化物またはポリシリコンである上層が、例えばシリコン酸化物、窒化ケイ素または高K誘電体などの誘電体である下層が露出するまで研磨される。
【0022】
図1は、研磨装置100の一例を示す。研磨装置100は、上に研磨パッド110が位置する、回転可能な円盤状のプラテン120を含む。研磨パッド110は、外側研磨層112およびより軟性のバッキング層114を有する、二層研磨パッドであることができる。プラテンは、軸125を中心に回転するように動作可能である。例えば、モータ121(例えば、DC誘導モータ)は、ドライブ軸124を回してプラテン120を回転させることができる。
【0023】
研磨装置100は、研磨用スラリなどの研磨液132をパッドに対して研磨パッド110上に分注するポート130を含むことができる。研磨装置はまた、研磨パッド110を磨いて研磨パッド110を一貫した研磨状態に維持する、研磨パッドコンディショナも含むこともできる。
【0024】
研磨装置100は、少なくとも1つのキャリアヘッド140を含む。キャリアヘッド140は、基板10を研磨パッド110に当てて保持するように動作可能である。各キャリアヘッド140は、例えば圧力といった、各基板それぞれに関連付けられた研磨パラメータを、個別に制御することができる。
【0025】
キャリアヘッド140は、可撓性の膜144の下に基板10を保持するための保持リング142を含むことができる。キャリアヘッド140はまた、膜によって画定された、一以上の個別に制御可能で加圧可能なチャンバ(例えば3つのチャンバ146a~146c)を含み、これらのチャンバは、可撓性の膜144上、すなわち基板10上の関連付けられたゾーンに、個別に制御可能な圧力を加えることができる(図参照)。図を分かりやすくするために3つのチャンバだけが図に示されているが、1つもしくは2つのチャンバ、または4つ以上のチャンバ(例えば5つのチャンバ)があり得る。
【0026】
キャリアヘッド140は、支持構造体150(例えば、カルーセル)から吊るされ、キャリアヘッドが軸155を中心に回転できるように、ドライブ軸152によってキャリアヘッド回転モータ154(例えば、DC誘導モータ)に接続される。任意選択で各キャリアヘッド140は、例えばカルーセル150上のスライダ上で、またはカルーセル自体の回転振動によって、横方向に振動することができる。典型的な動作では、プラテンは、その中心軸125を中心に回転し、各キャリアヘッドは、その中心軸155を中心に回転すると共に、研磨パッドの上面全体にわたって横方向に平行移動する。
【0027】
1つのキャリアヘッド140のみが示されているが、追加の基板を保持するためにより多くのキャリアヘッドを設けることができ、その結果研磨パッド110の表面積が効率的に使用され得る。したがって、同時研磨処理のために基板を保持するように適合されるキャリアヘッドアセンブリの数は、少なくとも部分的に、研磨パッド110の表面積に基づき得る。
【0028】
プログラム可能コンピュータなどのコントローラ190が、プラテン120およびキャリアヘッド140の回転速度を制御するためにモータ121、154に接続される。例えば、各モータは、関連したドライブ軸の回転速度を測定するエンコーダを含むことができる。モータ自体の中にあり得る、またはコントローラの一部もしくは別の回路の中にあることができるフィードバック制御回路が、測定された回転速度をエンコーダから受け取り、かつ、ドライブ軸のこの回転速度がコントローラから受け取られた回転速度に一致することを確実にするために、モータに供給される電流を調整する。
【0029】
研磨装置はまた、研磨終点を特定するために使用できる、例えばモータ電流またはモータトルクモニタリングシステムなどのインシトゥモニタリングシステム160も含む。インシトゥモニタリングシステム160は、モータトルクおよび/またはモータに供給される電流を測定するセンサを含む。
【0030】
例えば、トルクメータ160をドライブ軸124上に配置することができ、かつ/またはトルクメータ162をドライブ軸152上に配置することができる。トルクメータ160および/または162の出力信号は、コントローラ190まで導かれる。
【0031】
別法として、または加えて、電流センサ170は、モータ121に供給される電流をモニタすることができ、かつ/または電流センサ172は、モータ154に供給される電流をモニタすることができる。電流センサ170および/または172の出力信号は、コントローラ190まで導かれる。電流センサは、モータの一部として示されているが、コントローラの一部(コントローラ自体がモータのドライブ電流を出力する場合)または別個の回路とすることもできる。
【0032】
センサの出力は、デジタル電子信号であり得る(センサの出力がアナログ信号である場合は、センサまたはコントローラ内のADCによってデジタル信号に変換され得る)。デジタル信号は一連の信号値からなり、信号値間の時間周期は、センサのサンプリング周波数によって決まる。この一連の信号値は、信号対時間曲線と称され得る。一連の信号値は、一組の値xとして表すことができる。
【0033】
上記のように、センサからの「生」デジタル信号は、フィルタを使用して平滑化することができる。
【0034】
図2に示すように、測定された「生」信号は、時間領域の中で複数の信号に分解され得る。特に、測定された信号は、複数の正弦構成要素、白色雑音構成要素、および基本波の信号に分解され得る。
【0035】
確定外乱を漸近的に除去するために、外乱のモデルが信号の「プラント」モデルに埋め込まれ得る(例えば内部モデル原理)。外乱のモデルは正弦波除去のために使用され得るが、他の外乱をモデリングすることもできる。
【0036】
CMP動作をモニタリングすることにおいては、CMPシステムの「プラント」モデルは摩擦を伴う回転動力を捕捉する(MTまたはインターフェース)。対照的に、増加されたモデルは、外乱モデルの外乱状態をプラスして、プラントモデルのための「プラント」状態を含む。フィルタリングを実行するために、生の測定された信号を使用して、適切なカルマンフィルタが増加されたモデル上にかかり得る。
【0037】
一組の正弦曲線が、次のようにモデリングされ得る。
減衰のための優位周波数は、実験を通じて取得することができ、オフライン分析は高速フーリエ変換(FFT)を使用する。その結果として、ωはm=1~nの複数の値として知られ、ここでn正弦波外乱がモデリングされている。
既知の周波数ω_1を伴う1つの正弦曲線の状態は、以下のように定義され得る。
【0038】
サンプリング周期はTs、(k+1)番目のサンプルは(例えば、sin(∝+)展開)と仮定すると、
【0039】
したがって、
【0040】
複数の正弦曲線が存在する場合、複数の正弦曲線(例えばn個の正弦曲線)のA-マトリクスは、下記のようなブロック対角式で生成され得る。
各正弦曲線は、上記のような2つの2状態を有する。加えて、モデルは依然として線形である。この方式で、位相および振幅を別々に推定する必要はない。
【0041】
しかし、周波数が未知である場合、周波数はモデルの別の状態であり得る。この場合、該モデルは非線形となる(かつ、拡張されたカルマンフィルタが必要となり得る)。
【0042】
では次にプラントモデルを見てみると、2つのプラント状態が以下のように表示され得る。
フィルタリング済みトルクが我々の求めている基本の信号であろう(その中では外乱は削減されたかあるいは除去された)。
【0043】
モデルは以下のように表すことができる。
【0044】
あるいは、1つのプラント状態は以下のように表示され得る。
【0045】
この場合
【0046】
増加された状態は、以下のように定義され得る。
【0047】
増加された動力および測定されたトルク出力方程式を有する増加されたモデルは、次のように表すことができる。
【0048】
従来のカルマンフィルタは、WelchおよびBishopの「An Introduction to the Kalman Filter」に記載されている。標準カルマンフィルタ(具体的には、「離散的カルマンフィルタ(DKF)」)は、フィルタリングされる系のノイズ特性が式に含まれるので、平滑化機能を有する。標準カルマンフィルタはまた、現在および過去のデータに基づいて未来のデータ値を推定する予測ステップを用いる。この予測ステップは通常、1つのデータステップによって未来に拡張するだけである(すなわち、近い将来の予測)。
【0049】
図3は、「生」プラテントルク信号200と、3つの正弦波外乱および1つのトルク状態を有するモデルを使用するフィルタを適用することによって生成されたフィルタリング済み信号210とのグラフを示す。フィルタリング済み信号は比較的クリーンで、大幅な遅延に煩わされない。
【0050】
本明細書に記載の実装態様、および機能的動作のすべては、デジタル電子回路として、または、本明細書に開示された構造的手段およびその構造的等価物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェアもしくはハードウェアとして、またはこれらの組合せとして実装することができる。本明細書に記載の実装態様は、一以上の非一時的コンピュータプログラム製品として、すなわちデータ処理装置(例えばプログラム可能プロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータ)によって実行するための、またはデータ処理装置の動作を制御するための、機械可読記憶デバイス内で有形に具現化された一以上のコンピュータプログラムとして、実装することができる。
【0051】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーションまたはコードとしても知られている)は、コンパイルまたは翻訳された言語を含む、任意の形のプログラミング言語で書くことができ、また独立型プログラムとして、またはモジュール、構成要素、サブルーチン、もしくは計算環境で使用するのに適している他のユニットとしてのものを含む、任意の形で展開することができる。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルに対応しているわけではない。プログラムは、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部分、問題になっているプログラム専用の単一のファイル、または複数の協調的なファイル(例えば、一以上のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部分を収納するファイル)に収納することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行されるか、または、1つのサイトにあるか、もしくは複数のサイトにわたって分散されかつ通信ネットワークで相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することが可能である。
【0052】
この明細書に記載の処理および論理フローは、入力データで動作しかつ出力を生成することによって機能を実施するために一以上のコンピュータプログラムを実行する、一以上のプログラム可能プロセッサによって実施され得る。処理および論理フローは、特殊用途論理回路(例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、またはASIC(特定用途向け集積回路))によって実施されることも可能であり、かつ、装置が、かかる特殊用途論理回路として実装されることも可能である。
【0053】
「データ処理装置」という用語は、1つのプログラム可能プロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータを例として含む、データを処理するためのすべての装置、デバイスおよび機械を包含する。装置は、ハードウェアに加えて、問題になっているコンピュータプログラムの実行環境を作り出すコード(例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはこれらの一以上の組合せを構成するコード)を含むことができる。コンピュータプログラムを実行するのに適しているプロセッサには、例として、汎用および専用の両方のマイクロプロセッサ、および任意の種類のデジタルコンピュータの任意の一以上のプロセッサが含まれる。
【0054】
コンピュータプログラム命令およびデータを収納するのに適しているコンピュータ可読媒体には、半導体メモリデバイス(例えばEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイス)、磁気ディスク(例えば、内蔵ハードディスクまたは着脱可能なディスク)、光磁気ディスク、ならびにCDーROMおよびDVD-ROMディスクを例として含む、あらゆる形の不揮発性メモリ、媒体およびメモリデバイスが含まれる。プロセッサおよびメモリは、特殊用途論理回路によって補足すること、または特殊用途論理回路に組み込むことができる。
【0055】
上述の研磨装置および研磨方法は、多種多様な研磨システムに適用され得る。研磨パッドもしくはキャリアヘッド、またはこの両方が、研磨面とウエハとの間で相対運動をするように動くことができる。例えば、プラテンは、回転するのではなく、周回してもよい。研磨パッドは、プラテンに固定された円形(または何か他の形状の)パッドであり得る。終点検出システムのいくつかの態様は、例えば、研磨パッドが、直線的に移動する連続ベルトまたはリールツーリールベルトである場合、直線的研磨システムに適用可能であってよい。研磨層は、標準の(例えば、充填材を伴うもしくは伴わないポリウレタン)研磨材料、軟性材料、または固定研磨材料であってよい。相対的位置決めという用語が使用され、研磨面およびウエハは、垂直配向にもいくつか別の配向にも保持できることを理解されたい。
【0056】
本明細書は多くの細目を含むが、これらは、特許請求することができる範囲の制限事項としてではなく、むしろ特定の発明の特定の実施形態に特定的であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。いくつかの実装態様では、本方法は、上にある材料と下にある材料の別の組合せに適用すること、および別の種類のインシトゥモニタリングシステム(例えば、光学的モニタリングシステムまたは渦電流モニタリングシステム)からの信号に適用することができる。
図1
図2
図3