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特許7238788パターン形成方法、トランジスタの製造方法及びパターン形成用部材
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  • 特許-パターン形成方法、トランジスタの製造方法及びパターン形成用部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】パターン形成方法、トランジスタの製造方法及びパターン形成用部材
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20230307BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20230307BHJP
   G03F 7/09 20060101ALI20230307BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230307BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230307BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G03F7/004 521
G03F7/40 521
G03F7/09 501
G03F7/20 521
G03F7/20 501
H01L29/78 612D
H01L29/78 626C
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019559643
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2018045417
(87)【国際公開番号】W WO2019117117
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2017238552
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】川上 雄介
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/029981(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/40
G03F 7/09
G03F 7/20
H01L 21/336
H10K 10/40
H10K 85/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、
酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物を含む第1の層を、前記被処理面に形成する第1の層形成工程と、
前記第1の層の上に、露光により酸を発生する光酸発生剤を含む第2の層を形成する第2の層形成工程と、
前記第1の層と前記第2の層を露光し、前記第1の層に、露光領域及び未露光領域を形成する露光工程と、
前記露光領域又は前記未露光領域にパターン形成材料を配置させる配置工程と、
を含み、
前記化合物が、下記一般式(1)で表される含フッ素化合物である、パターン形成方法。
【化1】
[一般式(1)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、R は水素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、R f1 、R f2 はそれぞれ独立にアルコキシ基、シロキシキ基、またはフッ素化アルコキシ基であって、nは0以上の整数を表す。]
【請求項2】
前記露光工程では、前記未露光領域に比べて相対的に親水性を有する前記露光領域を形成する、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記パターンは、電子デバイス用の回路パターンである、請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記露光工程では、前記第2の層を介して前記第1の層を露光する、請求項1~3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記露光工程では、前記第1の層を介して前記第2の層を露光する、請求項1~3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記配置工程では、前記露光領域にパターン形成材料を配置させる、請求項1~5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記露光工程では、前記露光により前記化合物の前記保護基が分解されることによりアミノ基を生じさせる、請求項1~6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記パターン形成材料は、液状の導電材料、液状の半導体材料、又は液状の絶縁材料を含む請求項1~のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記露光工程では、波長が200nm~450nmの範囲に含まれる光を前記第1の層と前記第2の層に露光する、請求項1~のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記対象物は、樹脂材料からなる基板である、請求項1~のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記対象物は、可撓性を有する基板である、請求項1~10のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、を有するトランジスタの製造方法であって、
前記ゲート電極、前記ソース電極、前記ドレイン電極のうち少なくとも1つの電極を、請求項1~11のいずれか一項に記載のパターン形成方法で形成する工程を含む、トランジスタの製造方法。
【請求項13】
対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、
酸によって分解可能で、かつ光によっても分解可能である保護基を有する化合物を含む第1の層を、前記被処理面に形成する第1の層形成工程と、
前記第1の層の上に、露光により酸を発生する光酸発生剤を含む第2の層を形成する第2の層形成工程と、
前記第1の層と前記第2の層を露光し、前記第1の層に、露光領域及び未露光領域を形成する露光工程と、
前記露光領域又は未露光領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う無電解めっき工程と、
を含み、
前記化合物が、下記一般式(1)で表される含フッ素化合物である、パターン形成方法。
【化2】
[一般式(1)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、R は水素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、R f1 、R f2 はそれぞれ独立にアルコキシ基、シロキシ基、またはフッ素化アルコキシ基であって、nは0以上の整数を表す。]
【請求項14】
前記露光工程では、前記未露光領域に比べて相対的に親水性を有する前記露光領域を形成する、請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記パターンは、電子デバイス用の回路パターンである、請求項13又は14に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記露光工程では、前記第2の層を介して前記第1の層を露光する、請求項1315のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記露光工程では、前記第1の層を介して前記第2の層を露光する、請求項1315のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
前記無電解めっき工程では、前記露光領域に前記無電解めっき用触媒を配置する、
請求項1317のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項19】
前記露光工程では、前記露光により前記化合物の前記保護基が分解されることによりアミノ基を生じさせる、請求項1318のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項20】
前記無電解めっき用触媒は、パラジウムである、請求項1319のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項21】
前記露光工程では、波長が200nm~450nmの範囲に含まれる光を前記第1の層と前記第2の層に露光する、含む請求項1320のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項22】
ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、を有するトランジスタの製造方法であって、
前記ゲート電極、前記ソース電極、前記ドレイン電極のうち少なくとも1つの電極を、請求項1321のいずれか一項に記載のパターン形成方法で形成する工程を含む、トランジスタの製造方法。
【請求項23】
前記対象物は、樹脂材料からなる基板である、請求項1322のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項24】
前記対象物は、可撓性を有する基板である、請求項1323のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項25】
所定の基板と、
前記基板上に設けられた第1の層と、
前記第1の層上に設けられた第2の層と、
を有し、
前記第1の層は、酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物を含み、
前記第2の層は、露光により酸を発生する光酸発生剤を含
前記化合物が、下記一般式(1)で表される含フッ素化合物である、パターン形成用部材。
【化3】
[一般式(1)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、R は水素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、R f1 、R f2 はそれぞれ独立にアルコキシ基、シロキシキ基、またはフッ素化アルコキシ基であって、nは0以上の整数を表す。]
【請求項26】
前記化合物は、前記保護基が分解されることによりアミノ基を生じる、請求項25に記載のパターン形成用部材。
【請求項27】
前記基板は、樹脂材料からなる、請求項25又は26に記載のパターン形成用部材。
【請求項28】
前記基板は、可撓性を有する、請求項2527のいずれか1項に記載のパターン形成用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法、トランジスタの製造方法及びパターン形成用部材に関する。
本願は、2017年12月13日に日本に出願された特願2017-238552号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、集積回路、有機ELディスプレイ用デバイス等の微細デバイス等の製造において、基板上に、表面特性の異なるパターンを形成し、その表面特性の違いを利用して微細デバイスを作成する方法が提案されている。
基板上の表面特性の違いを利用したパターン形成方法としては、たとえば、基板上に親水領域と撥水領域とを形成し、機能性材料の水溶液を親水領域に塗布する方法がある。この方法は、親水領域でのみ機能性材料の水溶液が濡れ広がるため、機能性材料の薄膜パターンが形成できる。
【0003】
基板上に親水領域と撥水領域とを形成させることができる材料として、近年、カップリング剤が用いられている。特許文献1には、光照射の前後で接触角を大きく変化させることができる、光分解性カップリング剤が記載されている。このような光分解性カップリング剤は、光に対する感度に優れることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-50321号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様は、対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物を含む第1の層を、前記被処理面に形成する第1の層形成工程と、前記第1の層の上に、露光により酸を発生する光酸発生剤を含む第2の層を形成する第2の層形成工程と、前記第2の層を介して前記第1の層を露光し、前記第1の層に、露光領域及び未露光領域からなる潜像を形成する露光工程と、前記露光領域又は未露光領域にパターン形成材料を配置させる配置工程と、を含むパターン形成方法である。
本発明の第2の態様は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極のうち少なくとも1つの電極を、第1の態様のパターン形成方法で形成する工程を含む、トランジスタの製造方法である。
本発明の第3の態様は、対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物を含む第1の層を、前記被処理面に形成する第1の層形成工程と、前記第1の層の上に、露光により酸を発生する光酸発生剤を含む第2の層を形成する第2の層形成工程と、前記第1の層と前記第2の層を露光し、前記第1の層に、露光領域及び未露光領域からなる潜像を形成する露光工程と、前記露光領域又は未露光領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う無電解めっき工程と、を含むパターン形成方法である。
本発明の第4の態様は、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極のうち少なくとも1つの電極を、第3の態様のパターン形成方法で形成する工程を含む、トランジスタの製造方法である。
本発明の第5の態様は、所定の基板と、前記基板上に設けられた第1の層と、前記第1の層上に設けられた第2の層と、を有し、前記第1の層は、酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物を含み、前記第2の層は、露光により酸を発生する光酸発生剤を含む、パターン形成用部材である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態のパターン形成方法において好適な基板処理装置の全体構成を示す模式図。
図2】パターン形成方法の概略工程を示す図である。
図3】トランジスタの製造方法の概略工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<パターン形成方法>
本実施形態のパターン形成方法は、酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物を含む第1の層の上に、光酸発生剤を含む第2の層を形成し、さらに選択的に露光する工程を含む。
本実施形態に用いる化合物は、露光により撥水性を発揮する基が分解(脱離)し、親水性を発揮する基が生成する。このため、露光の作用により、対象物の被処理面を撥水性から親水性に変化させることができる。なお、本明細書においては、上記の化合物が保護基を有する場合に撥水性を有すると定義される。また、上記の保護基が分解(脱離)し、保護基を有する場合よりも静的水接触角が相対的に低い場合に親水性を有すると定義される。
【0008】
本実施形態においては、これに加えて、第1の層の上に光酸発生剤を含む第2の層を形成している。第2の層に選択的に露光を行うと、露光部では酸が発生し、この酸の作用により第1の層に含まれる化合物の保護基が脱離して、アミノ基等の親水性基が生成する。
本実施形態のパターン形成方法によれば、光の作用に加えて酸の作用により第1の層の露光部分を撥水性から親水性に変化させることができるため、露光量を低減し、露光工程の工程時間の短縮することができ、高い生産性を実現できる。
以下、本発明のパターン形成方法の好ましい実施形態について説明する。
【0009】
≪第1実施形態≫
本実施形態は、対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物を含む第1の層を、前記被処理面に形成する第1の層形成工程と、前記第1の層の上に、露光により酸を発生する光酸発生剤を含む第2の層を形成する第2の層形成工程と、前記第2の層を介して第1の層を露光し、前記第1の層に含まれる前記化合物の前記保護基を分解することで、前記第1の層の露光部を撥水性から親水性に変化させ、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させる露光工程と、前記親水領域又は撥水領域にパターン形成材料を配置させる配置工程と、を含むパターン形成方法である。
【0010】
[第1の層形成工程]
本工程は、対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法において、酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物を含む第1の層を、被処理面に形成する工程である。
【0011】
対象物としては、特に限定されない。本実施形態において、対象物の材料は、例えば、金属、結晶質材料(例えば単結晶質、多結晶質および部分結晶質材料)、非晶質材料、導体、半導体、絶縁体、繊維、ガラス、セラミックス、ゼオライト、プラスチック、熱硬化性および熱可塑性材料(例えば、場合によってドープされた:ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、セルロースポリマー、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレンビニル共重合体、ポリ塩化ビニルなど)が挙げられる。また、対象物は、光学素子、塗装基板、フィルム等であってよく、これらは可撓性を有していてもよい。
【0012】
ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板としては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0013】
本工程において、対象物の被処理面の表面全体、または特定の領域内を後述する化合物を用いて化学修飾することが好ましい。
【0014】
対象物の被処理面を化学修飾する方法としては、後述する一般式(1)中の、反応性のSiに結合したXが、基板と結合する方法であれば特に限定されず、浸漬法、化学処理法等の公知の方法を用いることができる。
【0015】
≪化合物≫
本実施形態に用いる化合物は、下記一般式(1)で表される含フッ素化合物であることが好ましい。
【0016】
【化1】
[一般式(1)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、Rf1、Rf2はそれぞれ独立にアルコキシ基、シロキシ基、またはフッ素化アルコキシ基であって、nは0以上の整数を表す。]
【0017】
前記一般式(1)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。Xで表されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等を挙げることができるが、Xはハロゲン原子であるよりもアルコキシ基であることが好ましい。nは整数を表し、出発原料の入手の容易さの点から、1~20の整数であることが好ましく、2~15の整数であることがより好ましい。
【0018】
前記一般式(1)中、Rは水素原子、又は炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基である。
のアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
環状のアルキル基としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
本実施形態においては、Rは水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0019】
前記一般式(1)中、Rf1、Rf2はそれぞれ独立にアルコキシ基、シロキシ基、またはフッ素化アルコキシ基である。
前記一般式(1)中、Rf1、Rf2のアルコキシ基、シロキシ基、またはフッ素化アルコキシ基は、好ましくは炭素数3以上のアルコキシ基であって、部分的にフッ素化されたものであってもよく、パーフルオロアルコキシ基であってもよい。本実施形態においては、部分的にフッ素化されたフッ素化アルコキシ基であることが好ましい。
【0020】
本実施形態において、Rf1、Rf2のフッ素化アルコキシ基としては、例えば、-O-(CH f1-(C f22n f2 +1)で表される基が挙げられる。前記nf1は0以上の整数であり、nf2は0以上の整数である。
本実施形態において、nf1は0~30であることが好ましく、0~15であることがより好ましく、0~5であることが特に好ましい。
また、本実施形態において、nf2は0~30であることが好ましく、0~15であることがより好ましく、1~5であることが特に好ましい。
【0021】
前記一般式(1)中、nは0以上の整数である。本実施形態においては、nは3以上が好ましく、4以上であることがより好ましい。
【0022】
以下に一般式(1)で表される含フッ素化合物の具体例を示す。
【0023】
【化2】
【0024】
上記の含フッ素化合物は、国際公開第2015/029981号公報に記載の方法により製造することができる。
【0025】
本工程における化学修飾の一例を下記に示す。下記式中、X、R、Rf1、Rf2、nについての説明は前記一般式(1)中におけるR、Rf1、Rf2、nについての説明と同様である。
【0026】
【化3】
【0027】
[第2の層形成工程]
本工程は、前記第1の層の上に、露光により酸を発生する光酸発生剤を含む第2の層を形成する工程である。本実施形態に用いる光酸発生剤は、光カチオン酸発生剤が好ましい。
光カチオン酸発生剤の具体例としては、オニウム化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物、ジスルホニルメタン化合物、オキシムスルホネート化合物、ヒドラジンスルホネート化合物等が挙げられる。オニウム化合物としては、スルホニウム塩系光カチオン酸発生剤、ヨードニウム塩系光カチオン酸発生剤及びジアゾニウム塩系光カチオン酸発生剤等が挙げられる。
【0028】
スルホニウム塩系光カチオン酸発生剤の例としては、例えば、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’-ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4’-ビス〔ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7-〔ジ(p-トルイル)スルホニオ〕-2-イソプロピルチオキサントン テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロホスフェート、4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド ヘキサフルオロアンチモネート、4-(p-tert-ブチルフェニルカルボニル)-4’-ジ(p-トルイル)スルホニオ-ジフェニルスルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のトリアリールスルホニウム塩が挙げられる。
【0029】
ヨードニウム塩系光カチオン酸発生剤の例としては、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリルクミルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフロオロホスフェート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、等のジアリールヨードニウム塩が挙げられる。
【0030】
ジアゾニウム塩系光カチオン酸発生剤の例としては、例えばベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0031】
光酸発生剤は市販品を使用することができ、アデカオプトマーSP-100、SP-150、SP-152、SP-170、SP-172〔(株)ADEKA製〕、フォトイニシエーター2074(ローディア社製)、カヤラッドPCI-220、PCI-620〔日本化薬(株)製〕、イルガキュア250(チバ・ジャパン社製〕、CPI-100P、CPI-110P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S〔サンアプロ(株)製)、WPI―113、WPI―116〔和光純薬工業(株)製〕)、BBI-102、BBI-103、TPS-102、TPS-103、DTS-102、DTS-103〔みどり化学(株)製〕等が挙げられる。
【0032】
本工程において、光酸発生剤は、塗布性を良好なものとするため、樹脂成分と溶媒成分とを含む光酸発生剤組成物を調製し、光酸発生剤組成物を塗布することにより第2の層を形成することが好ましい。
樹脂成分として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル等が挙げられる。なお、樹脂成分は、プロトンの拡散係数が高いものを用いることで、界面への酸到達性を良好にすることができる。例えば、樹脂成分におけるプロトン拡散距離が20~2000nmであるものを用いてよく、50~100nmであるものを用いてもよい。工程温度により拡散距離が長くなる樹脂成分を用いることで、後述の露光後加熱工程によって光応答性を向上させることができる。
【0033】
溶媒成分としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて(即ち、混合溶媒として)使用することができる。中でも、アルコール、ケトンが好ましい。
【0034】
本実施形態において、光酸発生剤組成物中の酸発生剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して2質量部以上10質量部以下が好ましく、3質量部以上8質量部以下がより好ましく、3.5質量部以上6.5質量部以下が特に好ましい。
光酸発生剤の含有量を上記の範囲とすることにより、光酸発生剤組成物の塗布性が良好なものとなる。さらに、第1の層に対し、充分に酸を到達させることができる。
【0035】
[露光工程]
本工程は、第1の層及び第2の層が形成された被処理面に所定パターンの光を照射して、選択的に露光し、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させる工程である。本工程により、露光部の化合物は、撥水性を有する基(保護基)が脱離して親水性を有する基が生成し、親水領域が形成される。未露光部はこの脱離が起こらず、撥水領域のままとなる。
撥水性能を有する基が解離し、親水性能を有する残基(アミノ基)が生じるため、光照射後においては、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させることができる。
さらに、第2の層のうち、露光部では酸が発生し、第1の層に拡散した酸は、化合物の撥水性基を脱離させる。このため、露光部においては、化合物の撥水性基の脱離がより進行する。
【0036】
本工程において、照射する光は紫外線が好ましい。照射する光は、200~450nmの範囲に含まれる波長を有する光を含むことが好ましく、320~450nmの範囲に含まれる波長を有する光を含むことがより好ましい。また、波長が365nmの光を含む光を照射することも好ましい。これらの波長を有する光は、本実施形態に用いる化合物の保護基を効率よく分解することができる。光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ;窒素等の気体レーザー、有機色素溶液の液体レーザー、無機単結晶に希土類イオンを含有させた固体レーザー等が挙げられる。
【0037】
また、単色光が得られるレーザー以外の光源としては、広帯域の線スペクトル、連続スペクトルをバンドパスフィルター、カットオフフィルター等の光学フィルターを使用して取出した特定波長の光を使用してもよい。一度に大きな面積を照射することができることから、光源としては高圧水銀ランプまたは超高圧水銀ランプが好ましい。
本実施形態のパターン形成方法においては、上記の範囲で任意に光を照射することができるが、特に回路パターンに対応した分布の光エネルギーを照射することが好ましい。
【0038】
露光工程は特に限定されず、1回の露光を行ってもよく、複数回の露光を行ってもよい。また、透過性のある対象物を処理する場合には、対象物側から露光を行ってもよく、第2の層側から露光を行ってもよい。露光工程をより短縮できる観点から、露光は1回行うことが好ましい。
また、本実施形態においては、第1の層と第2の層の露光は同時に行ってもよく、第1の層の露光を先に行い第2の層の露光を後に行ってもよく、第2の層の露光を先に行い第1の層の露光を後に行ってもよい。
【0039】
下記に化学修飾された被処理面に所定パターンの光を照射することにより、撥水性能を有する基が解離し、親水性能を有する残基(アミノ基)が生じる工程の例を示す。下記式中、R、Rf1、Rf2、n、についての説明は前記一般式(1)中におけるR、Rf1、Rf2、nについての説明と同様である。
【0040】
【化4】
【0041】
[任意の露光後加熱工程]
本実施形態においては、露光工程の後、加熱を実施してもより。加熱方法としては、オーブン、ホットプレート、赤外線ヒーターなどが挙げられる。加熱温度は40℃~200℃としてよく、50℃~120℃としてもよい。
【0042】
[任意の洗浄工程]
本実施形態においては、露光工程の後、または、任意の露光後加熱工程の後、第2の層を洗浄により除去してもよい。後述する配置工程において、導電性材料を配置する場合には、第2の層を洗浄により除去することが好ましい。
【0043】
[配置工程]
本工程は、前記露光工程で生成した親水領域又は撥水領域にパターン形成材料を配置させる工程である。
【0044】
パターン形成材料としては、金、銀、銅やこれらの合金などの粒子を所定の溶媒に分散させた配線材料(金属溶液)、又は、上記した金属を含む前駆体溶液、絶縁体(樹脂)、半導体、有機EL発光材などを所定の溶媒に分散させた電子材料、レジスト液などが挙げられる。
【0045】
本実施形態の態様のパターン形成方法においては、パターン形成材料は、液状の導電材料、液状の半導体材料、又は液状の絶縁材料であることが好ましい。
【0046】
液状の導電材料としては、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液からなるパターン形成材料が挙げられる。導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル及びITOのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。
【0047】
これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。
【0048】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n-ヘプタン、n-オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、p-ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0049】
液状の半導体材料としては、分散媒に分散又は溶解させた有機半導体材料を用いることができる。有機半導体材料としては、その骨格が共役二重結合から構成されるπ電子共役系の高分子材料が望ましい。代表的には、ポリチオフェン、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリチオフェン誘導体、ペンタセン等の可溶性の高分子材料が挙げられる。
【0050】
液状の絶縁材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、ポリシラザン系SOGや、シリケート系SOG(Spin on Glass)、アルコキシシリケート系SOG、シロキサンポリマーに代表されるSi-CH結合を有するSiO等を分散媒に分散又は溶解させた絶縁材料が挙げられる。
【0051】
本工程において、パターン形成材料を配置させる方法としては、液滴吐出法、インクジェット法、スピンコート法、ロールコート法、スロットコート法等を適用することができる。
【0052】
≪電子デバイス用の回路パターン形成方法≫
本実施形態のパターン形成方法においては、パターンを電子デバイス用の回路パターンとすることができる。
【0053】
基板としては、上述した対象物を用いることができるが、後述する基板処理装置100により電子デバイス用の回路パターンを形成する場合は、対象物が可撓性を有する樹脂基板であることが好ましい。
【0054】
基板の形状としては、特に限定されず、平面、曲面、または部分的に曲面を有する平面が好ましく、平面がより好ましい。また基材の面積も特に限定されず、従来の塗布方法が適用できる限りの大きさの面を有する基材を採用できる。また、第1の層は平面上の基材の片面に形成するのが好ましい。
【0055】
基板の表面に第1の層を形成する際は、基板表面を前処理しておくことが好ましい。前処理方法としては、ピラニア溶液での前処理や、UV-オゾンクリーナー、プラズマクリーナーによる前処理が好ましい。
【0056】
基板の表面に第1の層を形成する方法としては、前記一般式(1)中の、反応性のSiに結合したXが、基板と結合する方法であれば特に限定されず、浸漬法、化学処理法等の公知の方法を用いることができる。
【0057】
以下、図面を参照して、本実施形態のパターン形成方法を説明する。
本実施形態のパターン形成方法において、いわゆるロール・ツー・ロールプロセスに対応する可撓性の基板を用いる場合には、図1に示すような、ロール・ツー・ロール装置である基板処理装置100を用いてパターンを形成してもよい。
【0058】
図1に示すように、基板処理装置100は、帯状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)Sを供給する基板供給部2と、基板Sの表面(被処理面)Saに対して処理を行う基板処理部3と、基板Sを回収する基板回収部4と、含フッ素化合物の塗布部6と、露光部7と、マスク8と、パターン材料塗布部9と、これらの各部を制御する制御部CONTと、を有している。基板処理部3は、基板供給部2から基板Sが送り出されてから、基板回収部4によって基板Sが回収されるまでの間に、基板Sの表面に各種処理を実行できる。
この基板処理装置100は、基板S上に例えば有機EL素子、液晶表示素子等の表示素子(電子デバイス)を形成する場合に好適に用いることができる。
【0059】
なお、図1は、所望のパターン光を生成するためにフォトマスクを用いる方式を図示したものであるが、本実施形態は、フォトマスクを用いないマスクレス露光方式にも好適に適用することができる。フォトマスクを用いずにパターン光を生成するマスクレス露光方式としては、DMD等の空間光変調素子を用いる方法、レーザービームプリンターのようにスポット光を走査する方式等が挙げられる。
【0060】
本実施形態のパターン形成方法においては、図1に示すようにXYZ座標系を設定し、以下では適宜このXYZ座標系を用いて説明を行う。XYZ座標系は、例えば、水平面に沿ってX軸及びY軸が設定され、鉛直方向に沿って上向きにZ軸が設定される。また、基板処理装置100は、全体としてX軸に沿って、そのマイナス側(-側)からプラス側(+側)へ基板Sを搬送する。その際、帯状の基板Sの幅方向(短尺方向)は、Y軸方向に設定される。
【0061】
基板処理装置100において処理対象となる基板Sとしては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0062】
基板Sは、例えば200℃程度の熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、フィルムをアニールすることで、寸法変化を抑制することができる。また、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。また、基板Sはフロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単体、或いはその極薄ガラスに上記樹脂フィルムやアルミ箔を貼り合わせた積層体であっても良い。
【0063】
基板Sの幅方向(短尺方向)の寸法は例えば1m~2m程度に形成されており、長さ方向(長尺方向)の寸法は例えば10m以上に形成されている。勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えば基板SのY方向の寸法が50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。また、基板SのX方向の寸法が10m以下であっても構わない。
【0064】
基板Sは、可撓性を有するように形成されていることが好ましい。ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。
また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板Sとしては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0065】
基板供給部2は、例えばロール状に巻かれた基板Sを基板処理部3へ送り出して供給する。この場合、基板供給部2には、基板Sを巻きつける軸部や当該軸部を回転させる回転駆動装置などが設けられる。この他、例えばロール状に巻かれた状態の基板Sを覆うカバー部などが設けられた構成であっても構わない。なお、基板供給部2は、ロール状に巻かれた基板Sを送り出す機構に限定されず、帯状の基板Sをその長さ方向に順次送り出す機構(例えばニップ式の駆動ローラ等)を含むものであればよい。
【0066】
基板回収部4は、基板処理装置100を通過した基板Sを例えばロール状に巻きとって回収する。基板回収部4には、基板供給部2と同様に、基板Sを巻きつけるための軸部や当該軸部を回転させる回転駆動源、回収した基板Sを覆うカバー部などが設けられている。なお、基板処理部3において基板Sがパネル状に切断される場合などには例えば基板Sを重ねた状態に回収するなど、ロール状に巻いた状態とは異なる状態で基板Sを回収する構成であっても構わない。
【0067】
基板処理部3は、基板供給部2から供給される基板Sを基板回収部4へ搬送すると共に、搬送の過程で基板Sの被処理面Saに対して第1の層をする工程、第1の層の上に第2の層を形成する工程、所定パターンの光を照射する工程、及びパターン形成材料を配置させる工程を行う。基板処理部3は、基板Sの被処理面Saに対して第1の層と第2の層を形成するための材料を塗布する塗布部6と、光を照射する露光部7と、マスク8と、パターン材料塗布部9と、加工処理の形態に対応した条件で基板Sを送る駆動ローラR等を含む搬送装置20とを有している。
【0068】
塗布部6と、パターン材料塗布部9は、液滴塗布装置(例えば、液滴吐出型塗布装置、インクジェット型塗布装置、スピンコート型塗布装置、ロールコート型塗布装置、スロットコート型塗布装置など)が挙げられる。
【0069】
これらの各装置は、基板Sの搬送経路に沿って適宜設けられ、フレキシブル・ディスプレイのパネル等が、所謂ロール・ツー・ロール方式で生産可能となっている。本実施形態では、露光部7が設けられるものとし、その前後の工程(感光層形成工程、感光層現像工程等)を担う装置も必要に応じてインライン化して設けられる。
【0070】
本実施形態のパターン形成方法によれば、第1の層に含まれる化合物に対し、露光による保護基の脱離と、光酸発生剤から生じる酸の作用による保護基の脱離とが進行する。このため、少ない露光量で露光部のフッ素化合物の保護基を脱離させることができる。
本実施形態のパターン形成方法によれば、光応答性が向上しているため、分解に数ジュール以上の露光量が必要であるニトロベンジル構造を含む保護基を有するフッ素化合物を用いた場合であっても、少ない露光量で保護基を脱離させることができる。
【0071】
<無電解めっきによるパターン形成方法>
本実施形態は、対象物の被処理面にパターンを形成するパターン形成方法であって、酸によって分解可能で、かつ光によっても分解可能である保護基を有する化合物を含む第1の層を、前記被処理面に形成する第1の層形成工程と、前記第1の層の上に、露光により酸を発生する光酸発生剤を含む第2の層を形成する第2の層形成工程と、前記第2の層を介して前記第1の層を露光し、前記第1の層に含まれる前記化合物の前記保護基を分解することで、前記第1の層の露光部を撥水性から親水性に変化させ、親水領域及び撥水領域からなる潜像を生成させる露光工程と、前記親水領域又は撥水領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う無電解めっき工程と、を含むパターン形成方法である。
本実施形態によれば、例えば、次のような方法によって無電解めっきによる配線パターンを形成することができる。以下、図2を用いて説明する。
【0072】
(第1の工程)
まず、図2(a)に示すように、基板11の表面に、酸によって分解可能で、かつ光によっても分解可能である保護基を有する化合物を含む第1の層と、第1の層の上に、露光により酸を発生する光酸発生剤を含む第2の層を形成する第2の層を形成する。図2(a)中、化合物層12は、第1の層と第2の層からなる化合物層である。
【0073】
塗布方法としては、物理的気相成長法(PVD)や化学的気相成長法(CVD)、液相成長法等、一般的な成膜技術の何れを用いてもよい。中でも、特に液相成長法が好ましく、液相成長法としては例えば、塗布法(スピンコート、ディップコート、ダイコート、スプレーコート、ロールコート、刷毛塗り)、印刷法(フレキソ印刷、スクリーン印刷)等が挙げられる。また、SAM膜、LB膜としてもよい。
【0074】
なお、本工程においては、例えば熱や減圧等によって溶剤を乾燥させる処理を加えてもよい。
【0075】
(第2の工程)
次に、図2(b)に示すように、所定のパターンの露光領域を有するフォトマスク13を用意する。露光方法としては、フォトマスクを用いる手段に限られず、レンズやミラーなどの光学系を用いたプロジェクション露光、空間光変調素子、レーザービームなどを用いたマスクレス露光等の手段を用いることができる。なお、フォトマスク13は、化合物層12と接触するように設けてもよいし、非接触となるように設けてもよい。
【0076】
(第3の工程)
その後、図2(c)に示すように、フォトマスク13を介して化合物層12にUV光を照射する。これにより、フォトマスク13の露光領域において化合物層12が露光され、親水領域14が形成される。
【0077】
なお、UV光は感光性基の構造により最適な量子効率が発揮される波長を照射することができる。例えば、365nmのi線が挙げられる。また、その露光量や露光時間は、必ずしも完全に脱保護が進行する必要はなく、一部に脱保護が発生する程度でよい。その際、後述のめっき工程において、脱保護の進行具合に応じた条件(めっき浴の活性等)を適宜変更することができる。
【0078】
(第4の工程)
次に、図2(d)に示すように、表面に無電解めっき用触媒を付与し、触媒層15を形成する。無電解めっき用触媒は、無電解めっき用のめっき液に含まれる金属イオンを還元する触媒であり、銀やパラジウムが挙げられる。
【0079】
親水領域14の表面にはアミノ基が露出しているが、アミノ基は、上述の無電解めっき用触媒を捕捉・還元することが可能である。そのため、親水領域14上のみに無電解用めっき用触媒が補足され、触媒層15が形成される。また、無電解めっき用触媒は、保護基が分解されることにより生じるアミノ基等の親水性基が担持可能なものを用いることができる。
【0080】
(第5の工程)
図2(e)に示すように、無電解めっき処理を行い、めっき層16を形成する。なお、めっき層16の材料としては、ニッケル-リン(NiP)や、銅(Cu)が挙げられる。
【0081】
本工程では、基板11を無電解めっき浴に浸漬して触媒表面に金属イオンを還元し、めっき層16を析出させる。その際、親水領域14表面には十分な量の触媒を担持する触媒層15が形成されているため、親水領域14上にのみ選択的にめっき層16を析出させることができる。還元が不十分な場合には、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤溶液に浸漬してアミン上の金属イオンを積極的に還元してもよい。
【0082】
<トランジスタの製造方法>
さらに、第5の工程で得られためっき層16をゲート電極とするトランジスタの製造方法について図3を用いて説明する。
【0083】
(第6の工程)
図3(a)に示すように、上述した無電解めっきパターン形成方法により形成した無電解めっきパターンのめっき層16を、公知の方法により覆って化合物層12上に絶縁体層17を形成する。絶縁体層17は、例えば、紫外線硬化型のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、シリコーン樹脂等の1つ以上の樹脂を有機溶媒に溶解させた塗布液を用い、当該塗布液を塗布することにより形成してもよい。絶縁体層17を形成する領域に対応して開口部が設けられたマスクを介して塗膜に紫外線を照射することで、絶縁体層17を所望のパターンに形成することが可能である。
【0084】
(第7の工程)
図3(b)に示すように、上述した無電解めっきパターン形成方法の第1~第3の工程と同様にして、ソース電極及びドレイン電極が形成される部分に親水領域14を形成する。
【0085】
(第8の工程)
図3(c)に示すように、上述した無電解めっきパターン形成方法の第4及び第5の工程と同様にして、親水領域14上に無電解めっき用触媒を担持させ、触媒層15を形成した後、無電解めっきを行うことによりめっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)を形成する。なお、めっき層18及び19の材料としてもニッケル-リン(NiP)や、銅(Cu)が挙げられるが、めっき層16(ゲート電極)と異なる材料で形成してもよい。
【0086】
(第9の工程)
図3(d)に示すように、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に半導体層21を形成する。半導体層21は、例えば、TIPSペンタセン(6,13-Bis(triisopropylsilylethynyl)pentacene)のような有機溶媒に可溶な有機半導体材料を当該有機溶媒に溶解させた溶液を作製し、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に塗布、乾燥させることにより形成してもよい。なお、半導体層21を形成する前に、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間の化合物層12を露光して親水化してもよい。トランジスタのチャネルに対応する部分を親水化することで、当該親水化部分に上記溶液が好適に塗布され、半導体層21を選択的に形成しやすくなる。また、半導体層21は、上記溶液にPS(ポリスチレン)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル)などの絶縁性ポリマーを1種類以上添加し、当該絶縁性ポリマーを含む溶液を塗布、乾燥することにより形成してもよい。このようにして半導体層21を形成すると、半導体層21の下方(絶縁体層17側)に絶縁性ポリマーが集中して形成される。有機半導体と絶縁体層との界面にアミノ基などの極性基が存在する場合、トランジスタ特性の低下を生じる傾向にあるが、上述の絶縁性ポリマーを介して有機半導体を設ける構成とすることにより、トランジスタ特性の低下を抑制することができる。以上のようにして、トランジスタを製造することが可能である。
【0087】
なお、トランジスタの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。図2図3の態様では、ボトムコンタクト・ボトムゲート型のトランジスタの製造方法について説明したが、トップコンタクト・ボトムゲート型、トップコンタクト・トップゲート型、ボトムコンタクト・トップゲート型のトランジスタも同様にして製造してもよい。なお、図2図3の態様では、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の全てを第1の実施形態の化合物を用いて形成する方法について説明したが、ゲート電極のみを第1の実施形態の化合物を用いて形成してもよいし、ソース電極及びドレイン電極のみを第1の実施形態の化合物を用いて形成してもよい。
【0088】
<パターン形成用部材>
本実施形態は、 所定の基板と、前記基板上に設けられた第1の層と、前記第1の層上に設けられた第2の層と、を有し、前記第1の層は、酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物を含み、前記第2の層は、露光により酸を発生する光酸発生剤を含む、パターン形成用部材である。
【0089】
本実施形態のパターン形成用基板は、基板表面に酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物を含む第1の層と、露光により酸を発生する光酸発生剤を含む第2の層をこの順で備える。このため、マスク等を介して選択的に露光することにより、露光部では、撥水性を発揮する基が分解(脱離)し、親水性を発揮する基が生成する。本実施形態においては、これに加えて、第1の層の上に光酸発生剤を含む第2の層を備えている。第2の層に選択的に露光を行うと、露光部では酸が発生し、この酸の作用により第1の層に含まれる化合物の保護基が脱離して、アミノ基等の親水性基が生成する。
本実施形態のパターン形成用部材によれば、選択的に露光することにより親水性領域と撥水性領域とからなる所望のパターンを形成することができる。
【0090】
本実施形態のパターン形成用部材において、第1の層が有する酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物は、保護基が分解されることによりアミノ基を生じる化合物であることが好ましい。
【0091】
本実施形態のパターン形成用部材において、第1の層が有する酸によって分解可能で、かつ、光によっても分解可能な保護基を有する化合物は、前記一般式(1)で表される含フッ素化合物であることが好ましい。
【0092】
本実施形態のパターン形成用部材において、使用する基板は樹脂材料からなることが好ましい。好適に使用できる樹脂材料としては、前記本発明のパターン形成方法において説明した基板の樹脂材料と同様の樹脂材料を使用できる。
本実施形態のパターン形成用部材において、使用する基板は可撓性を有することが好ましい。
【実施例
【0093】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
<実施例1>
[第1の層形成工程]
・基板の洗浄工程
SiOxを蒸着した、膜厚125nmのポリエチレンテレフタレート基板(コスモシャインA4100、東洋紡製)をカット(5cm×5cm)し、100mlのイソプロピルアルコールが入った洗浄用容器に浸漬し、28kHzで超音波洗浄を1分間行った。さらに、窒素フローで乾燥させた後、大気圧プラズマ装置で洗浄を行った。
【0095】
・フッ素化合物含有組成物の調製
下記化合物(F1)の、0.2質量%ヘキサフルオロキシレン溶液を調製し、フッ素化合物含有組成物とした。下記化合物(F1)は、国際公開第2015/029981号公報に記載の方法により製造した。
【0096】
【化5】
【0097】
・塗布工程
洗浄した基板に対し、フッ素化合物含有組成物をスピン成膜し(3000rpm,30秒間)、オーブンを用いて100℃で10分間加熱し乾燥させた。
【0098】
[第2の層形成工程]
・光酸発生剤含有組成物の調製
ポリウレタン濃度20質量%のアルコール溶液(Raspack、オーデック社製)を用いて光酸発生剤(CPI-210S、サンアプロ社製)を1質量%(ポリウレタンに対し1質量%)となるよう添加した。自公転式混練機を用いて撹拌、さらに28kHz超音波を5分間照射し完溶させた。さらにイソプロパノールを用いポリウレタン濃度5質量%となるよう調製した。
【0099】
・光酸発生剤含有層の形成
感光性表面処理した基板に対し、上記光酸発生剤含有組成物をスピン成膜し(1000rpm,30秒間)、ホットプレートを用いて90℃で1分間加熱し乾燥させた。
【0100】
[露光工程]
365nmのUV光で露光を行った。露光量は基板毎に、0mJ/cm、100mJ/cm、300mJ/cm、500mJ/cm、1000mJ/cm、2000mJ/cm、4000mJ/cmと露光量を変え露光した。
露光した後、基板を100mlのイソプロピルアルコールが入った洗浄用容器に浸漬し、28kHzで超音波洗浄を1分間行った。イソプロピルアルコールでリンスした後、窒素フローし、90℃で1分間加熱し乾燥させた。
接触角計(DMe211、協和界面科学製)を用い、各露光量で露光した基板の静的水接触角(液量1ul)を測定した。結果を下記表1に示す。
【0101】
<実施例2>
[露光工程]の後、ホットプレートを用いて50℃で1分間加熱した。加熱後、基板を洗浄し、静的水接触角を測定した。結果を下記表1に示す。
【0102】
<比較例1>
[光酸発生剤含有層形成工程]を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、露光工程まで行い、各露光量で露光した基板の静的水接触角(液量1ul)を測定した。
結果を下記表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
上記結果に示したとおり、実施例1及び2は、なかでも100mJ/cm、300mJ/cmという低い露光量であっても、比較例1に比べて静的水接触角を大きく下げることができており、光応答性が向上していた。
例えば、未露光状態から接触角を30°下げるために必要な露光量を計算すると、比較例1が344mJ/cmであるのに対し、実施例1では186mJ/cmであり、約2倍の光応答性向上効果が確認された。また、実施例2においては、接触角を30°下げるために必要な露光量が96mJ/cmであり、比較例1に対して約4倍の光応答性効果が確認された。
【符号の説明】
【0105】
S…基板、CONT…制御部、Sa…被処理面、2…基板供給部、3…基板処理部、4…基板回収部、6…含フッ素化合物塗布部、7…露光部、8…マスク、9…パターン材料塗布部、100…基板処理装置
図1
図2
図3