(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20230307BHJP
H01B 7/40 20060101ALI20230307BHJP
H02G 15/04 20060101ALI20230307BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/40 307Z
H02G15/04
H02G3/30
(21)【出願番号】P 2021199779
(22)【出願日】2021-12-09
(62)【分割の表示】P 2018091897の分割
【原出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】豊島 直也
(72)【発明者】
【氏名】前上 一
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特公昭35-001729(JP,B1)
【文献】特開2018-046616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/40
H02G 15/04
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線、及び前記複数の電線を一括して覆うシースを有し、可撓性を有するケーブルと、
前記シース及び当該シースの端部から延出された前記複数の電線を覆うように形成され、前記複数の電線の延出方向を固定する電線固定部と、
前記シースを覆うように形成され、前記ケーブルを被固定対象に固定する固定部材が取り付けられる固定部材取付部と、
を備え、
前記電線固定部及び前記固定部材取付部は、樹脂モールドにより形成されており、
前記電線固定部と前記固定部材取付部とは、ケーブル長手方向に互いに離間して設けられており、
前記シースと前記電線固定部とが溶着しているとともに、前記シースと前記固定部材取付部とが溶着して
おり、
前記固定部材取付部は、そのケーブル長手方向にわたって前記シースを覆っているとともに、前記固定部材と前記シースとの間に介在している
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記複数の電線は、それぞれ、金属導体線と、前記金属導体線を被覆する絶縁体と、を有し、
前記複数の電線は、それぞれ、前記電線固定部内において前記金属導体線が前記絶縁体から露出することなく前記電線固定部から延出している、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記シース、前記電線固定部、及び前記固定部材取付部は、熱可塑性ウレタンからなる、
請求項1または2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記複数の電線の一部は、内部シースにより覆われている状態で前記シースの端部から延出されており、
前記内部シースと前記電線固定部とが溶着している、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記内部シースは、熱可塑性ウレタンからなる、
請求項4に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のワイヤハーネスとして、複数の電線をシースで一括して覆ったケーブルを用い、シースから延出した複数の電線を分岐させて異なる配線先へと配索するように構成されたものが知られている。このようなワイヤハーネスでは、複数の電線の分岐部において、各電線の延出方向を固定すると共に、シース内への水分の侵入を抑制するために、電線固定部が設けられている。
【0003】
特許文献1では、電線固定部と、ケーブルを車体等に固定するブラケット(固定部材)が取り付けられるブラケット取付部と、を一体に設けたワイヤハーネスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のワイヤハーネスでは、電線固定部とブラケット取付部とが一体となっているため、例えばブラケットを車体等に取り付けてから各電線を配線する場合に、配線作業がしにくくなるおそれがあるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、配線作業がしにくくなるおそれを低減可能なワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電線、及び前記複数の電線を一括して覆うシースを有するケーブルと、前記シースの端部及び当該シースの端部から延出された前記複数の電線を覆うように形成され、前記複数の電線の延出方向を固定する電線固定部と、前記ケーブルを被固定対象に固定する固定部材が取り付けられる固定部材取付部と、を備え、前記電線固定部及び前記固定部材取付部は、樹脂モールドにより形成されており、前記電線固定部と前記固定部材取付部とは、ケーブル長手方向に互いに離間して設けられており、前記電線固定部と前記固定部材取付部間の前記ケーブルの可撓性により、前記電線固定部が前記固定部材取付部に対して相対移動可能となっている、ワイヤハーネスを提供する。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電線、及び前記複数の電線を一括して覆うシースを有するケーブルと、前記シースの端部及び当該シースの端部から延出された前記複数の電線を覆うように形成され、前記複数の電線の延出方向を固定する電線固定部と、前記ケーブルを被固定対象に固定する固定部材が取り付けられる固定部材取付部と、を備えたワイヤハーネスを製造する方法であって、前記電線固定部及び前記固定部材取付部を、樹脂モールドにより形成する樹脂成型工程を含み、前記樹脂成型工程に用いる金型として、前記電線固定部と前記固定部材取付部とをケーブル長手方向に離間させるための離間壁部を有するものを用い、前記電線固定部と前記固定部材取付部とを、ケーブル長手方向に互いに離間させ、前記電線固定部と前記固定部材取付部間の前記ケーブルの可撓性により、前記電線固定部を前記固定部材取付部に対して相対移動可能とする、ワイヤハーネスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配線作業がしにくくなるおそれを低減可能なワイヤハーネスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネスを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【
図2】ケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネスの製造方法の手順を示すフロー図である。
【
図4】(a),(b)は、樹脂成形工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
(ワイヤハーネスの全体構成)
図1は、本実施の形態に係るワイヤハーネスを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。本実施の形態に係るワイヤハーネス1は、自動車の電動パーキングブレーキ装置にその動作のための作動電流を供給すると共に、車輪の回転速度を計測するための回転速センサ(ABS(アンチロックブレーキシステム)センサ)の信号を伝送するために用いられるものである。
【0013】
図1(a),(b)に示すように、ワイヤハーネス1は、複数の電線2、及び複数の電線2を一括して覆うシース31を有するケーブル3と、シース31の端部及び当該シース31の端部から延出された複数の電線2を覆うように形成され、複数の電線2の延出方向を固定する電線固定部4と、ケーブル3を被固定対象(例えば、自動車の車体)に固定する固定部材5が取り付けられる固定部材取付部6と、を備えている。
【0014】
(ケーブル3の構成)
図2は、ケーブル3の長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
図2に示すように、ケーブル3は、複数の電線2として、電動パーキングブレーキ装置に作動電流を供給する一対の電源線21,21と、回転速センサの信号を伝送する一対の信号線22,22と、を有している。
【0015】
一対の電源線21,21は、それぞれが複数の金属素線を撚り合せてなる金属導体線211を絶縁体212で被覆してなる絶縁電線である。一対の電源線21,21は、図略のコントローラから出力される電流を電動パーキングブレーキ装置に供給する。また、一対の信号線22,22は、それぞれが複数の金属素線を撚り合せてなる金属導体線221を絶縁体222で被覆してなる絶縁電線である。一対の信号線22,22は、回転速センサから出力される信号を図略のコントローラに伝送する。本実施の形態では、撚り合わされた一対の信号線22,22の周囲に熱可塑性ウレタンからなる内部シース231を設けることで、一対の信号線22,22を一体化した信号ケーブル23が形成されている。
【0016】
一対の電源線21,21と信号ケーブル23とは、複数の介在32と共に撚り合わされており、その周囲に紙テープ等の押え巻きテープ33が螺旋状に巻き付けられている。押え巻きテープ33の周囲には、シース31が設けられている。シース31は、配索時等に柔軟に湾曲する屈曲性(可撓性)を有しており、本実施の形態では、シース31が熱可塑性ウレタンからなる。
【0017】
(電線固定部4及び固定部材取付部6の構成)
図1(a),(b)に戻り、電線固定部4は、複数の電線2の分岐部分を覆うように設けられており、シース31と各電線2とにわたって設けられている。電線固定部4は、各電線2の延出方向を固定する役割と、電線2の分岐部分からシース31内に水分が浸入することを抑制する役割とを果たすものである。以下、シース31の端部近傍の部分の電線2を、電線2の延出部分と呼称する。
【0018】
電線固定部4は、シース31の端部の周囲を覆うシース囲繞部41と、電源線21,21の延出部分の周囲を一括して覆う電源線囲繞部42と、信号ケーブル23の周囲を覆う信号線囲繞部43と、を一体に有している。本実施の形態では、一対の電源線21,21の電源線囲繞部42からの延出方向は、シース囲繞部41内におけるシース31の長手方向と平行である。信号ケーブル23の信号線囲繞部43からの延出方向は、電源線21,21の電源線囲繞部42からの延出方向に対して傾斜(交差)している。信号ケーブル23は、この傾斜の角度に応じて電線固定部4内で屈曲されている。そして、この延出方向の傾斜により、自動車のタイヤハウス内での一対の電源線21,21及び信号ケーブル23の配索が容易化されている。
【0019】
電線固定部4は、樹脂モールドにより形成されている。本実施の形態では、電線固定部4として、シース31と同じ樹脂材料である熱可塑性ウレタンからなるものを用いた。本実施の形態では、シース31や信号ケーブル23の内部シース231も熱可塑性ウレタンからなるため、電線固定部4の樹脂モールド時に、電線固定部4とシース31及び内部シース231とが溶融一体化(溶着)し、シース31内へ水分が侵入するのが抑制され防水性が向上する。また、電線固定部4とシース31とが溶着するため、ケーブル3の長手方向に電線固定部4が移動することを抑制することができる。
【0020】
固定部材取付部6は、固定部材5が取り付けられる円筒状の取付部61と、取付部61の軸方向両端部において径方向外方に突出するようにそれぞれ設けられた円環状のフランジ部62,62と、を一体に有している。取付部61は、ケーブル3と同軸の円筒状に形成されている。フランジ部62,62は、固定部材5のケーブル長手方向(取付部61の軸方向)に沿った移動を規制するためのものである。
【0021】
固定部材取付部6は、電線固定部4と同様に、樹脂モールドにより形成されている。本実施の形態では、固定部材取付部6は、シース31及び電線固定部4と同じ樹脂材料で構成されており、熱可塑性ウレタンからなる。これにより、固定部材取付部6の樹脂モールド時に、固定部材取付部6とシース31とが溶融一体化(溶着)するため、ケーブル3の長手方向に固定部材取付部6が移動することを抑制することができる。また、電線固定部4と固定部材取付部6とを同じ樹脂材料で構成することにより、1回の樹脂成型で電線固定部4と固定部材取付部6とを同時に形成することが可能となり、製造工程の簡略化及び製造コストの低減に寄与する。
【0022】
本実施の形態では、固定部材5は、金属製の固定金具からなる。固定部材5は、取付部61の外周に加締め付けられている。固定部材5は、矩形状の金属板を屈曲して形成されており、その一端が取付部61の外周に巻き付くように湾曲されており、その他端には車体等の被固定対象への固定のためのボルトを挿通させるボルト挿通穴50が形成されている。なお、固定部材5は、金属からなるものに限らず、例えば、樹脂からなるものを用いることもできる。
【0023】
本実施の形態に係るワイヤハーネス1では、電線固定部4と固定部材取付部6とが、ケーブル3の長手方向に互いに離間して設けられている。つまり、本実施の形態では、電線固定部4と固定部材取付部6とが別体となっており、電線固定部4と固定部材取付部6との間にケーブル3の一部が存在している。換言すれば、電線固定部4と固定部材取付部6とが、ケーブル3の一部を介して連結されている。
【0024】
これにより、電線固定部4と固定部材取付部6間のケーブル3の可撓性により、電線固定部4が固定部材取付部6に対して相対移動可能となる。そのため、固定部材5を車体等に取り付けて固定部材取付部6の位置が固定された状態となっても、電線固定部4と固定部材取付部6とのケーブル3が曲がることによって、電線固定部4の位置を動かすことが可能となり、電源線21,21や信号ケーブル23の配線作業を行い易くなる。換言すれば、本実施の形態では、各電線2(一対の電源線21,21及び信号ケーブル23)の可撓性と、ケーブル3の可撓性の両方を利用して、各電線2の端部に設けられるコネクタやセンサ部等の位置合わせを行うことができ、各電線2へのダメージを抑制しつつコネクタやセンサ部等の配設を行うことが可能である。
【0025】
電線固定部4と固定部材取付部6とが近すぎると、電線固定部4と固定部材取付部6とが干渉して、配線作業の自由度が低下してしまうため、電線固定部4と固定部材取付部6とのケーブル長手方向に沿った距離Lは、電線固定部4の固定部材取付部6側の端部、すなわちシース囲繞部41の肉厚R以上であることが望ましい。電線固定部4と固定部材取付部6とのケーブル長手方向に沿った距離Lをシース囲繞部41の肉厚R以上とすることで、電線固定部4と固定部材取付部6間のケーブル3を屈曲させたとしても、電線固定部4と固定部材取付部6とが接触(干渉)しにくくなり、より電源線21,21や信号ケーブル23を配線し易くなる。
【0026】
また、詳細は後述するが、本実施の形態では共通の金型で電線固定部4と固定部材取付部6とを樹脂成形するため、電線固定部4と固定部材取付部6とが近すぎると、電線固定部4と固定部材取付部6とを離間させる壁(離間壁部)が薄くなり当該壁が変形し易くなってしまい、金型の寿命が低下してしまうおそれが生じる。そのため、電線固定部4と固定部材取付部6とのケーブル長手方向に沿った距離Lは、少なくとも1mm以上であるとよく、5mm以上であることがより好ましい。
【0027】
さらに、本実施の形態では共通の金型で電線固定部4と固定部材取付部6とが離れすぎていると、金型が無駄に大型化し製造コストが高くなってしまう。そのため、電線固定部4と固定部材取付部6とのケーブル長手方向に沿った距離Lは、50mm以下であることが好ましい。電線固定部4と固定部材取付部6との距離Lを小さくすることによって、車両の振動に伴い電線固定部4が大きく揺れ動いてしまうことも抑制可能になる。なお、車両の振動に伴い電線固定部4が大きく揺れ動いてしまうことをより抑制するという観点から言えば、距離Lは、20mm以下であることがより好ましい。
【0028】
なお、電線固定部4と固定部材取付部6とを別体とすることによって、部品点数が増加するおそれが生じるが、本実施の形態では、これら電線固定部4と固定部材取付部6を樹脂モールドにより形成しているため、実質的に部品点数の増加はなく、部品点数の増加による管理コストの増加等の問題も抑制できる。さらに、詳細は後述するが、本実施の形態では、電線固定部4と固定部材取付部6を1回の樹脂成型で形成できるため、電線固定部4や固定部材取付部6を別途作製しケーブル3に取り付ける場合と比較して、より容易にかつ短時間で製造が可能であり、量産性を向上させることができる。
【0029】
(ワイヤハーネスの製造方法)
図3は、本実施の形態に係るワイヤハーネスの製造方法の手順を示すフロー図である。
図3に示すように、ワイヤハーネス1を製造する際には、まず、ステップS1にて、ケーブル3を形成するケーブル形成工程を行う。その後、ステップS2にて、ケーブル3の一部のシース31及び押え巻きテープ33を除去して、電源線21,21と信号ケーブル23を露出させ、電線2の分岐の準備を行う分岐部露出工程を行う。
【0030】
その後、ステップS3にて、電線固定部4及び固定部材取付部6を樹脂モールドにより形成する樹脂成形工程を行う。
図4(a),(b)に示すように、樹脂成形工程に用いる金型8としては、電線固定部4と固定部材取付部6とをケーブル長手方向に離間させるための離間壁部83を有するものを用いる。
【0031】
金型8は、樹脂が流入することにより電線固定部4が成型される電線固定部成型部81と、樹脂が流入することにより固定部材取付部6が成型される固定部材取付部成形部82と、を有している。そして、これら電線固定部成型部81と固定部材取付部成形部82との間に、離間壁部83が形成されている。また、金型8は、1つの樹脂流入口84を有しており、この樹脂流入口84から分岐して電線固定部成型部81と固定部材取付部成形部82の両方に樹脂を導く樹脂流路85を有している。なお、
図4(a),(b)では、金型8が、上型8a,第1下型8b、第2下型8cの3つの分割金型で構成される場合を示しているが、金型8の分割数はこれに限定されず、金型8の分割位置も図示の例に限定されない。
【0032】
金型8にケーブル3をセットした状態で樹脂流入口84から樹脂を流し込むと、樹脂流路85を介して電線固定部成型部81と固定部材取付部成形部82に樹脂が流し込まれる。電線固定部成型部81と固定部材取付部成形部82に流し込まれた樹脂が冷却され硬化されると、電線固定部4及び固定部材取付部6が形成される。金型8は離間壁部83を有しているため、電線固定部4と固定部材取付部6とは、ケーブル3の長手方向に互いに離間して形成されることになる。その結果、電線固定部4と固定部材取付部6間のケーブル3の可撓性により、電線固定部4が固定部材取付部6に対して相対移動可能となる。
【0033】
本実施の形態では、電線固定部4と固定部材取付部6が構造として別体になっているが、両者を共通の金型8を用いて1回の樹脂成形で形成できるので、製造にかかる手間を削減できる。
【0034】
ステップS3の樹脂成形工程を行った後、ステップS4にて、電源線21,21や信号ケーブル23の端部にコネクタやセンサ部等を取り付けるコネクタ等取付工程を行う。その後、ステップS5にて、固定部材取付部6に固定部材5を取り付ける固定部材取付工程を行う。以上により、ワイヤハーネス1が得られる。
【0035】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るワイヤハーネス1では、電線固定部4及び固定部材取付部6は、樹脂モールドにより形成されており、電線固定部4と固定部材取付部6とは、ケーブル長手方向に互いに離間して設けられており、電線固定部4と固定部材取付部6間のケーブル3の可撓性により、電線固定部4が固定部材取付部6に対して相対移動可能となっている。
【0036】
このように構成することで、ケーブル3が固定部材5により車体等に固定されている場合であっても、電源線21,21と信号ケーブル23を配線し易くなる。また、車両の振動の影響を受けて電源線21,21や信号ケーブル23が振動した場合であっても、電線固定部4と固定部材取付部6間のケーブル3によって揺れを緩和して、電線固定部4からの電源線21,21及び信号ケーブル23の延出部の損傷を抑制することも可能になる。
【0037】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0038】
[1]複数の電線(2)、及び前記複数の電線(2)を一括して覆うシース(31)を有するケーブル(3)と、前記シース(31)の端部及び当該シース(31)の端部から延出された前記複数の電線(2)を覆うように形成され、前記複数の電線(2)の延出方向を固定する電線固定部(4)と、前記ケーブル(3)を被固定対象に固定する固定部材(7)が取り付けられる固定部材取付部(6)と、を備え、前記電線固定部(4)及び前記固定部材取付部(6)は、樹脂モールドにより形成されており、前記電線固定部(4)と前記固定部材取付部(6)とは、ケーブル長手方向に互いに離間して設けられており、前記電線固定部(4)と前記固定部材取付部(6)間の前記ケーブル(3)の可撓性により、前記電線固定部(4)が前記固定部材取付部(6)に対して相対移動可能となっている、ワイヤハーネス(1)。
【0039】
[2]前記電線固定部(4)と前記固定部材取付部(6)とのケーブル長手方向に沿った距離は、前記電線固定部(4)の前記固定部材取付部(6)側の端部における前記電線固定部(4)の肉厚以上である、[1]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0040】
[3]前記電線固定部(4)と前記固定部材取付部(6)とのケーブル長手方向に沿った距離が、1mm以上である、[1]または[2]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0041】
[4]前記電線固定部(4)と前記固定部材取付部(6)とは、同じ樹脂材料で構成されている、[1]乃至[3]の何れか1項に記載のワイヤハーネス(1)。
【0042】
[5]複数の電線(2)、及び前記複数の電線(2)を一括して覆うシース(31)を有するケーブル(3)と、前記シース(3)の端部及び当該シース(3)の端部から延出された前記複数の電線(2)を覆うように形成され、前記複数の電線(2)の延出方向を固定する電線固定部(4)と、前記ケーブル(3)を被固定対象に固定する固定部材(7)が取り付けられる固定部材取付部(6)と、を備えたワイヤハーネス(1)を製造する方法であって、前記電線固定部(4)及び前記固定部材取付部(6)を、樹脂モールドにより形成する樹脂成型工程を含み、前記樹脂成型工程に用いる金型(8)として、前記電線固定部(4)と前記固定部材取付部(6)とをケーブル長手方向に離間させるための離間壁部(83)を有するものを用い、前記電線固定部(4)と前記固定部材取付部(6)とを、ケーブル長手方向に互いに離間させ、前記電線固定部(4)と前記固定部材取付部(6)間の前記ケーブル(3)の可撓性により、前記電線固定部(4)を前記固定部材取付部(6)に対して相対移動可能とする、ワイヤハーネスの製造方法。
【0043】
[6]前記金型(8)は、樹脂が流入することにより前記電線固定部(4)が成型される電線固定部成型部(81)と、樹脂が流入することにより前記固定部材取付部(6)が成型される固定部材取付部成形部(82)と、樹脂流入口(84)から分岐して前記電線固定部成型部(81)と前記固定部材取付部成形部(82)の両方に樹脂を導く樹脂流路(85)と、を有する、[5]に記載のワイヤハーネスの製造方法。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0045】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、一対の信号線22,22の周囲に内部シース231を設けて信号ケーブル23を形成する場合について説明したが、これに限らず、内部シース231を省略して、シース31の端部から一対の信号線22,22が延出されるように構成してもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、ワイヤハーネス1が1つの固定部材取付部6を備えている場合について説明したが、ワイヤハーネス1は、複数の固定部材取付部6を備えていてもよい。この場合、最も電線固定部4に近い固定部材取付部6と、電線固定部4とが、ケーブル長手方向に互いに離間して設けられていればよい。
【符号の説明】
【0047】
1…ワイヤハーネス
2…電線
3…ケーブル
31…シース
4…電線固定部
5…固定部材
6…固定部材取付部
8…金型
81…電線固定部成型部
82…固定部材取付部成形部
83…離間壁部
84…樹脂流入口
85…樹脂流路