(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】アルコール組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 31/02 20060101AFI20230307BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20230307BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230307BHJP
A01N 25/16 20060101ALI20230307BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A01N31/02
A01N25/30
A01P3/00
A01N25/16
A01N25/02
(21)【出願番号】P 2021553491
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2020039548
(87)【国際公開番号】W WO2021079903
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019193319
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100136939
【氏名又は名称】岸武 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 健一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】宮下 満樹
(72)【発明者】
【氏名】赤松 允顕
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137268(JP,A)
【文献】特開2011-136946(JP,A)
【文献】特開2002-265335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1~4の低級アルコールと、水と、炭素数12~20の脂肪族高級アルコールと、前記脂肪族高級アルコール以外の界面活性剤と、を含有し、
前記低級アルコールの含有率が20体積%以上であ
り、
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選択される少なくとも1種であり、
前記脂肪族高級アルコールと前記界面活性剤とのモル比が1:3~3:1であるアルコール組成物。
【請求項2】
前記低級アルコールがエタノールである、請求項1に記載のアルコール組成物。
【請求項3】
前記脂肪族高級アルコールが直鎖状の飽和脂肪族アルコールである、請求項1又は2に記載のアルコール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エタノール等の低級アルコールを含有するアルコール消毒剤組成物は、主に手指を消毒することを目的として医療現場等で使用される。その一般的な使用態様としては、スプレー容器から液剤を噴霧する態様;ポンプ容器からジェル剤を吐出する態様;ポンプ容器を用いて液剤を泡状(フォーム状)にして吐出する態様;等が挙げられる。
【0003】
これらの使用態様のうち、スプレー容器から液剤を噴霧する態様は、手指に噴霧した際に液だれが生じて床等を汚し易く、また飛散して目や口に入る虞がある。また、ポンプ容器からジェル剤を吐出する態様は、ジェル剤が固化してノズル部が詰まったり、ノズル部の先端でジェル剤が部分的に固化し、吐出方向が所定方向からずれたりすることがある。これに対して、ポンプ容器から液剤を泡状にして吐出する態様は、手指に吐出した際に液だれが生じ難く、また泡状の消毒剤を手指全体に長く滞留させることができるため、使用性にも優れる。
【0004】
ここで、エタノール等の低級アルコールには消泡作用があるため、アルコール消毒剤組成物を泡状にし、且つ、形成した泡を安定に維持することは一般に困難である。かかる課題に鑑みて、これまで種々のアルコール消毒剤組成物が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、アルコールを高濃度に含有するフォーム型高濃度アルコール製剤が開示されている。特許文献1には、液剤を泡状にし、且つ、形成した泡を安定に維持するため、フッ素系アニオン性界面活性剤及びカチオン性化合物を配合することが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、アルコールを高濃度に含有し、低い圧力で空気と混合されることにより発泡する発泡性アルコール組成物が開示されている。特許文献2には、液剤を泡状にするため、特定のシリコーン系界面活性剤を配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-219094号公報
【文献】特許第5687733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、起泡性を有し、且つ、泡沫安定性に優れる新規なアルコール組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 炭素数1~4の低級アルコールと、水と、炭素数12~20の脂肪族高級アルコールと、前記脂肪族高級アルコール以外の界面活性剤と、を含有し、前記低級アルコールの含有率が20体積%以上であり、前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選択される少なくとも1種であり、前記脂肪族高級アルコールと前記界面活性剤とのモル比が1:3~3:1であるアルコール組成物。
<2> 前記低級アルコールがエタノールである、<1>に記載のアルコール組成物。
<3> 前記脂肪族高級アルコールが直鎖状の飽和脂肪族アルコールである、<1>又は<2>に記載のアルコール組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、起泡性を有し、且つ、泡沫安定性に優れる新規なアルコール組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】試験例1で調製したアルコール組成物の泡沫安定性を示す図である。
【
図2】試験例2で調製したアルコール組成物の泡沫安定性を示す図である。
【
図3】試験例3で調製したアルコール組成物の泡沫安定性を示す図である。
【
図4】試験例4で調製したアルコール組成物の泡沫安定性を示す図である。
【
図5】試験例5で調製したアルコール組成物の泡沫安定性を示す図である。
【
図6A】試験例6で調製したアルコール組成物の静的表面張力を示す図である。
【
図6B】試験例6で調製したアルコール組成物の動的表面張力を示す図である。
【
図7】試験例7で調製したアルコール組成物の泡沫安定性を示す図である。
【
図8】試験例8で調製したアルコール組成物の泡沫安定性を示す図である。
【
図9】試験例9で調製したアルコール組成物の動摩擦係数を示す図である。
【
図10】試験例10で調製したアルコール組成物を-10℃で3日間保管した後、25℃の恒温槽で3~24時間保管したときの起泡性及び泡沫安定性を示す図である。
【
図11】試験例11で調製したアルコール組成物の泡沫安定性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係るアルコール組成物は、炭素数1~4の低級アルコールと、水と、炭素数12~20の脂肪族高級アルコールと、上記脂肪族高級アルコール以外の界面活性剤とを含有し、上記低級アルコールの含有率が20体積%以上である。このアルコール組成物は、起泡性を有し、且つ、泡沫安定性に優れ、形成した泡を安定に維持することが可能である。本実施形態に係るアルコール組成物が泡沫安定性に優れる理由は必ずしも明確ではないが、泡の気液界面膜に界面活性剤の分子とともに脂肪族高級アルコールの分子が配列することにより、気液界面膜の強度が向上するためと推測される。
【0013】
(炭素数1~4の低級アルコール)
本実施形態に係るアルコール組成物は、炭素数1~4の低級アルコールを含有する。炭素数1~4の低級アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール等が挙げられる。これらの中でも、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノールが好ましく、エタノールがより好ましい。
【0014】
上記低級アルコールの含有率(25℃)は、アルコール組成物の全量に対して20体積%以上であり、20~90体積%であることが好ましく、20~80体積%であることがより好ましく、30~70体積%であることがさらに好ましく、40~70体積%であることが特に好ましい。
【0015】
(水)
本実施形態に係るアルコール組成物は、水を含有する。水の含有率は、アルコール組成物の全量に対して、例えば、5~84質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることがさらに好ましく、30~60質量%であることが特に好ましい。
【0016】
(炭素数12~20の脂肪族高級アルコール)
本実施形態に係るアルコール組成物は、炭素数12~20の脂肪族高級アルコールを含有する。上記脂肪族高級アルコールは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0017】
上記脂肪族高級アルコールの具体例としては、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、1-ペンタデカノール、1-ヘキサデカノール、パレミトイルアルコール、1-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール(ステアリルアルコール)、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、1-ノナデカノール、1-エイコサノール等が挙げられる。これらの中でも、アルコール組成物の泡沫安定性を高める観点から、直鎖状の飽和脂肪族アルコールが好ましい。また、上記脂肪族高級アルコールは、水への溶解性を高め、且つ、アルコール組成物の泡沫安定性を高める観点から、炭素数12~18であることが好ましく、炭素数12~16であることがより好ましく、炭素数14~16であることがさらに好ましい。
【0018】
上記脂肪族高級アルコールの含有率は、アルコール組成物の全量に対して、例えば、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~7質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることがさらに好ましく、0.1~3質量%であることが特に好ましい。
【0019】
(界面活性剤)
本実施形態に係るアルコール組成物は、上記脂肪族高級アルコール以外の界面活性剤を含有する。界面活性剤としては、起泡性を有するもの(起泡性界面活性剤)であれば特に制限されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、アルコール組成物のべたつき等を低減して使用感を高める観点から、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種が好ましく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0020】
アニオン性界面活性剤は、カルボキシ基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基等のアニオン性基を有する界面活性剤であり、高級脂肪酸、N-アシルアミノ酸、N-アシル-N-メチルタウリン、アルキルエーテルカルボン酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、アルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、アルキル基を有するスルホン酸化合物、及びこれらの塩等が挙げられる。
高級脂肪酸(R1-COOH)におけるR1、並びにN-アシルアミノ酸及びN-アシルメチルタウリンのアシル部分(R2-C(=O)-)におけるR2は、直鎖状又は分岐鎖状の飽和又は不飽和炭化水素基であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。R1、R2は、炭素数6~30であることが好ましく、炭素数7~26であることがより好ましく、炭素数8~22であることがさらに好ましい。
アルキルエーテルカルボン酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、アルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、及びアルキル基を有するスルホン酸化合物におけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキル基は、炭素数6~30であることが好ましく、炭素数7~26であることがより好ましく、炭素数8~22であることがさらに好ましい。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0021】
カチオン性界面活性剤は、アンモニウム基、第1級~第3級アミノ基等のカチオン性基を有する界面活性剤であり、例えば、第4級アンモニウム塩が挙げられる。第4級アンモニウム([NR3R4R5R6]+)におけるR3、R4、R5、R6は、アルキル基又はヒドロキシアルキル基であることが好ましい。R3は、炭素数6~30であることが好ましく、炭素数7~26であることがより好ましく、炭素数8~22であることがさらに好ましい。また、R4、R5、R6は、炭素数1~3であることが好ましい。
塩としては、臭化物、塩化物等のハロゲン化物が挙げられる。
【0022】
両性界面活性剤は、アニオン性基及びカチオン性基を有する界面活性剤であり、アミドベタイン型両性界面活性剤、酢酸ベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらの両性界面活性剤は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する。アルキル基は、炭素数6~30であることが好ましく、炭素数7~26であることがより好ましく、炭素数8~22であることがさらに好ましい。アミドベタイン型両性界面活性剤は、アミド部分(R7-C(=O)-NH-)を有するベタインである。R7は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示す。酢酸ベタイン型両性界面活性剤は、酢酸部分、及び直鎖状又は分岐鎖状のアルキルを有するベタインである。スルホベタイン型両性界面活性剤は、スルホン酸部分、及び直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するベタインである。イミダゾリン型両性界面活性剤は、イミダゾリニウム部分、及び直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するベタインである。
【0023】
ノニオン性界面活性剤は、アニオン性基及びカチオン性基を有しない界面活性剤であり、糖と脂肪族高級アルコールとがグリコシド結合したアルキルポリグルコシド等が挙げられる。脂肪族高級アルコールは、炭素数6~30であることが好ましく、炭素数7~26であることがより好ましく、炭素数8~22であることがさらに好ましい。
【0024】
これらの界面活性剤の中でも、安全性が高く、且つ、アルコール組成物の起泡性及び泡沫安定性をより向上させることができる点から、N-アシルアミノ酸、N-アシル-N-メチルタウリン、及びこれらの塩が特に好ましい。
N-アシルアミノ酸としては、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ミリストイルグルタミン酸、N-ステアロイルグルタミン酸、N-ココイルグルタミン酸等のN-アシルグルタミン酸;N-ラウロイルアスパラギン酸、N-ミリストイルアスパラギン酸、N-ステアロイルアスパラギン酸、N-ココイルアスパラギン酸等のN-アシルアスパラギン酸;N-ラウロイルアラニン、N-ミリストイルアラニン、N-ココイルアラニン等のN-アシルアラニン;N-ラウロイル-N-メチルアラニン、N-ミリストイル-N-メチルアラニン、N-ココイル-N-メチルアラニン等のN-アシル-N-メチルアラニン;N-ココイルグリシン等のN-アシルグリシン;N-ラウロイルサルコシン、N-ミリストイルサルコシン、N-ココイルサルコシン等のN-アシルサルコシン;などが挙げられる。
N-アシル-N-メチルタウリンとしては、N-ラウロイル-N-メチルタウリン、N-ミリストイル-N-メチルタウリン、N-パルミトイル-N-メチルタウリン、N-ステアロイル-N-メチルタウリン、N-ココイル-N-メチルタウリン等が挙げられる。
【0025】
上記界面活性剤の含有率は、アルコール組成物の全量に対して、例えば、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~7質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることがさらに好ましく、0.1~3質量%であることが特に好ましい。
【0026】
また、上記脂肪族高級アルコールと上記界面活性剤とのモル比は、1:3~3:1であることが好ましく、1:2~3:1であることがより好ましく、1:2~2:1であることがさらに好ましい。
【0027】
(その他の成分)
本実施形態に係るアルコール組成物は、上記以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、増粘剤、油剤、溶剤、香料、pH調整剤等が挙げられる。
【0028】
(アルコール組成物の調製方法)
本実施形態に係るアルコール組成物の調製方法は特に制限されない。調製方法の一例としては、上記低級アルコール、上記脂肪族高級アルコール、上記界面活性剤、及び水を混合して撹拌する方法が挙げられる。また、調製方法の他の例としては、上記脂肪族高級アルコール、上記界面活性剤、及び水を混合して撹拌した後、上記低級アルコールの水溶液を添加してさらに撹拌する方法が挙げられる。
【0029】
(アルコール組成物の使用態様)
本実施形態に係るアルコール組成物は、例えば、液剤を泡状(フォーム状)にして吐出することが可能なポンプ容器(ポンプフォーマー)に充填され、アルコール消毒剤組成物として使用される。本実施形態に係るアルコール組成物によれば、泡沫安定性に優れた泡が形成されるため、泡状の消毒剤を手指全体に長く滞留させることができ、使用性に優れる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
【0031】
<試験例1>
上記界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を準備した。また、上記脂肪族高級アルコールとして、1-ドデカノール(C12OH)、1-テトラデカノール(C14OH)、及び1-ヘキサデカノール(C16OH)を準備した。エタノール、水、界面活性剤、及び脂肪族高級アルコールをビーカー中で混合し、エタノール濃度が20体積%、SDSと脂肪族高級アルコールとのモル比が1:3、SDS及び脂肪族高級アルコールの合計濃度が0.1質量%であるアルコール組成物(25℃)を調製した。また、比較のため、脂肪族高級アルコールを配合せずにアルコール組成物を調製した。
【0032】
得られたアルコール組成物を激しく振盪した後、24時間静置した。振盪直後、1時間後、24時間後の泡沫の状態を
図1に示す。
図1に示すとおり、SDSとともに1-ドデカノール、1-テトラデカノール、又は1-ヘキサデカノールを配合した場合には、振盪から24時間経過後においても泡が多く残っており、泡沫安定性に極めて優れていた。
【0033】
<試験例2>
エタノール濃度を40体積%、SDS及び脂肪族高級アルコールの合計濃度を1質量%に変更したほかは試験例1と同様にしてアルコール組成物(25℃)を調製した。また、比較のため、脂肪族高級アルコールを配合せずにアルコール組成物を調製した。
【0034】
得られたアルコール組成物を激しく振盪した後、24時間静置した。振盪直後、1時間後、24時間後の泡沫の状態を
図2に示す。
図2に示すとおり、SDSとともに1-ドデカノールを配合した場合には、振盪から1時間経過後においても泡が残っており、脂肪族高級アルコールを配合しない場合に比べて泡沫安定性に優れていた。また、SDSとともに1-テトラデカノール又は1-ヘキサデカノールを配合した場合には、振盪から24時間経過後においても泡が多く残っており、泡沫安定性に極めて優れていた。
【0035】
<試験例3>
SDSと脂肪族高級アルコールとのモル比を1:1に変更したほかは試験例2と同様にしてアルコール組成物(25℃)を調製した。また、比較のため、脂肪族高級アルコールを配合せずにアルコール組成物を調製した。
【0036】
得られたアルコール組成物を激しく振盪した後、24時間静置した。振盪直後、1時間後、24時間後の泡沫の状態を
図3に示す。
図3に示すとおり、SDSとともに1-ドデカノールを配合した場合には、振盪から1時間経過後においても泡が残っており、脂肪族高級アルコールを配合しない場合に比べて泡沫安定性に優れていた。また、SDSとともに1-テトラデカノール又は1-ヘキサデカノールを配合した場合には、振盪から24時間経過後においても泡が多く残っており、泡沫安定性に極めて優れていた。
【0037】
<試験例4>
SDSと脂肪族高級アルコールとのモル比を3:1に変更したほかは試験例2と同様にしてアルコール組成物(25℃)を調製した。また、比較のため、脂肪族高級アルコールを配合せずにアルコール組成物を調製した。
【0038】
得られたアルコール組成物を激しく振盪した後、24時間静置した。振盪直後、1時間後、24時間後の泡沫の状態を
図4に示す。
図4に示すとおり、SDSとともに1-ドデカノール、1-テトラデカノール、又は1-ヘキサデカノールを配合した場合には、振盪から1時間経過後においても泡が残っており、脂肪族高級アルコールを配合しない場合に比べて泡沫安定性に優れていた。
【0039】
<試験例5>
エタノール濃度を60体積%に変更し、上記脂肪族高級アルコールとして1-テトラデカノール(C14OH)、1-ヘキサデカノール(C16OH)、及び1-オクタデカノール(C18OH)を使用し、試験例3と同様にしてアルコール組成物(25℃)を調製した。また、比較のため、脂肪族高級アルコールを配合せずにアルコール組成物を調製した。
【0040】
得られたアルコール組成物を激しく振盪した後、30秒間静置した。振盪直後、10秒後、30秒後の泡沫の状態を
図5に示す。
図5に示すとおり、SDSとともに1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、又は1-オクタデカノールを配合した場合には、振盪から30秒経過後においても泡が残っており、脂肪族高級アルコールを配合しない場合に比べて泡沫安定性に優れていた。
【0041】
<試験例6>
上記脂肪族高級アルコールとして1-ドデカノール(C
12OH)を使用し、試験例2と同様にしてアルコール組成物(25℃)を調製した。得られたアルコール組成物の静的表面張力及び動的表面張力を
図6A及び
図6Bに示す。
図6A及び
図6Bに示すとおり、1-ドデカノールの配合により表面張力が大きく低下しており、泡の気液界面膜に1-ドデカノールの分子が配列していることが示唆された。
【0042】
<試験例7>
上記界面活性剤をセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウム(C12GluNa)、又はN-ラウロイルグルタミン酸二ナトリウム(C12GluNa2)に変更し、上記脂肪族高級アルコールとして1-テトラデカノール(C14OH)を使用し、試験例3と同様にしてアルコール組成物(25℃)を調製した。
【0043】
得られたアルコール組成物を激しく振盪した後、24時間静置した。振盪直後、1時間後、24時間後の泡沫の状態を
図7に示す。
図7に示すとおり、CTAB、C
12GluNa、又はC
12GluNa
2とともに1-テトラデカノールを配合した場合には、振盪から24時間経過後においても泡が多く残っており、泡沫安定性に極めて優れていた。
【0044】
<試験例8>
上記界面活性剤をN-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム(SMT)に変更し、上記脂肪族高級アルコールとして1-テトラデカノール(C14OH)を使用し、試験例3と同様にしてアルコール組成物(25℃)を調製した。
【0045】
得られたアルコール組成物を激しく振盪した後、1時間静置した。振盪直後、1時間後の泡沫の状態を
図8に示す。
図8に示すとおり、SMTとともに1-テトラデカノールを配合した場合には、振盪から1時間経過後においても泡が多く残っており、泡沫安定性に極めて優れていた。
【0046】
<試験例9>
上記界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)又はN-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム(SMT)を使用し、上記脂肪族高級アルコールとして1-テトラデカノール(C14OH)を使用し、試験例3と同様にしてアルコール組成物(25℃)を調製した。
【0047】
得られた液状のアルコール組成物、及びそのアルコール組成物をポンプフォーマーから吐出させた泡状のアルコール組成物について、ボールオンプレート型の摩擦摩耗解析装置(協和界面科学(株)製、TSf-503)を用いて、室温における動摩擦係数を測定した。測定にはステンレス製R接触子及び化学酸化したシリコンウェハーを使用し、液量又は泡量を3mLとして、荷重100g、摺動速度10mm/s、摺動距離10cmの条件で測定した。また、比較のため、市販の高濃度エタノール含有ジェル状消毒剤及び低濃度エタノール含有泡状消毒剤、並びに40体積%エタノール水溶液についても、同様に動摩擦係数を測定した。
【0048】
動摩擦係数の測定結果を
図9に示す。
図9に示すとおり、いずれのアルコール組成物も低い動摩擦係数を示した。特に、SMTとともに1-テトラデカノールを配合した泡状のアルコール組成物は、市販の低濃度エタノール含有泡状消毒剤に匹敵する良好な摩擦特性であった。
【0049】
<試験例10>
上記界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を使用し、上記脂肪族高級アルコールとして1-テトラデカノール(C14OH)を使用し、試験例3と同様にしてアルコール組成物(25℃)を調製した。
【0050】
得られたアルコール組成物を激しく振盪した後、30秒間静置し、泡沫の状態を観察した。さらに、このアルコール組成物を-10℃で3日間保管した後、25℃の恒温槽で3~24時間保管し、起泡性及び泡沫安定性の変化を観察した。結果を
図10に示す。
図10に示すとおり、アルコール組成物を-10℃で3日間保管すると、沈殿が生じ、起泡性も失われたが、常温(25℃)に戻すと起泡性及び泡沫安定性が回復した。
【0051】
<試験例11>
上記界面活性剤としてN-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム(SMT)及び/又はラウリン酸アミドプロピルベタイン(ベタイン)を使用し、上記脂肪族高級アルコールとして1-テトラデカノール(C14OH)を使用し、試験例8と同様にしてアルコール組成物(25℃)を調製した。
【0052】
得られたアルコール組成物を激しく振盪した後、24時間静置した。振盪直後、30秒後、24時間後の泡沫の状態を
図11に示す。
図11に示すとおり、SMT及び/又はベタインとともに1-テトラデカノールを配合した場合には、振盪から24時間経過後においても泡が多く残っており、泡沫安定性に極めて優れていた。
【0053】
なお、図示は省略するが、SMT、ベタイン、及び1-テトラデカノールの合計濃度を2質量%に変更して同様の実験を行ったところ、エタノール濃度を60体積%に高めても起泡性を示すことが確認された。