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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】基準電圧発生回路、および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/30 20060101AFI20230307BHJP
   G05F 1/56 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G05F3/30
G05F1/56 310E
G05F1/56 310F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019067442
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020166648
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】谷川 博之
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-318604(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016153(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0152206(US,A1)
【文献】特開2005-327027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 3/00-3/30
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導通面積を有する第1のダイオードと、
前記第1の導通面積より大きな第2の導通面積を有する第2のダイオードと、
前記第1のダイオードに基づく電圧と前記第2のダイオードに基づく電圧とを用いて基準電圧を生成する生成部と、
前記生成部の出力と前記第2のダイオードとの間に接続された分圧抵抗の接続点と、前記生成部の出力と、の間に接続された第1の容量と、
一端が前記第1のダイオードに接続された第1の抵抗と、
を含み、
前記分圧抵抗が、一端が前記第2のダイオードに接続された第2の抵抗、および一端が前記第2の抵抗の他端に接続された第3の抵抗を備え、
前記生成部が、一方の入力端子が前記第1のダイオードと前記第1の抵抗との接続点に接続され、他方の入力端子が前記第2の抵抗と前記第3の抵抗の接続点に接続された演算増幅器、およびゲートが前記演算増幅器の出力に接続され、前記基準電圧を出力するドレインが前記第1の抵抗の他端および前記第3の抵抗の他端に接続された第1の電界効果トランジスタを備え、
前記第1の容量は、前記第1の電界効果トランジスタのドレインと、前記第2の抵抗と前記第3の抵抗の接続点との間に接続される
基準電圧発生回路。
【請求項2】
請求項1に記載の基準電圧発生回路と、
前記基準電圧発生回路の出力に入力端が接続された低域通過濾波器と、
前記低域通過濾波器の出力端に接続されるとともに、前記基準電圧発生回路で生成された基準電圧に基づいて外部電源の電圧を変換して出力する電圧変換部と、を含む
半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基準電圧発生回路と、
前記基準電圧発生回路で生成された基準電圧に基づいて外部電源の電圧を変換して出力する電圧変換部と、を含み、
前記電圧変換部は、前記基準電圧発生回路の出力と前記電圧変換部の出力とを比較する比較回路、および前記外部電源と前記比較回路の出力との間に接続された第2の容量を備える
半導体装置。
【請求項4】
前記電圧変換部は、ソースが前記外部電源に接続され、ゲートが前記比較回路の出力に接続され、ドレインが前記電圧変換部の出力とされた第2の電界効果トランジスタをさらに備え、
前記第2の容量は前記外部電源と前記第2の電界効果トランジスタのゲートの間に接続される
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記電圧変換部は、前記第2の電界効果トランジスタのゲートと前記ドレインの間に接続された位相補償回路をさらに備える
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基準電圧発生回路の出力に接続されたバッファ回路と、
前記バッファ回路の出力と前記電圧変換部の入力との間に接続された低域通過濾波器と、をさらに含む
請求項から請求項のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧発生回路、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置においては、消費電力の低減、プロセス微細化に伴う酸化膜の耐圧改善、電源電圧の安定化等の課題に対応するために、外部電源電圧を半導体装置の内部で必要とする電源電圧に降圧して用いること(以下、「内部降圧」という場合がある)が一般的に行われている。内部降圧に用いられる回路は、周囲温度、製造プロセス、外部電源電圧等が変動しても一定の電圧を供給する機能を有する基準電圧回路と、該基準電圧回路の出力電圧を参照電圧として目標の内部降圧電圧を発生するレギュレータ回路とを組み合わせて構成する。また、基準電圧回路には、原理的に温度依存性を極めて小さく補償することが可能なバンドギャップ回路を使用することも一般的に行われている。
【0003】
上記バンドギャップ回路を用いた半導体装置の従来技術の一例として、特許文献1の図1には、スタンドバイ信号の反転信号に接続されたPチャネル型MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ(以下「PMOS」)1a、ドライバとしての機能を有するPMOS1b、差動接続されたnpn型バイポーラトランジスタ1c、1d(1cはX個のnpnトランジスタで構成される)、抵抗1g、1h、1i、基準電圧をゲイン1で出力するオペアンプ1e、およびnpn型バイポーラトランジスタ1c、1dの出力を差動増幅するオペアンプ1fを備えたスタートアップ回路が開示されている。特許文献1に開示されたスタートアップ回路では、npn型バイポーラトランジスタ1c、1dを用いたバンドギャップにより、温度変動、電源変動に対して耐性のある基準電圧を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-318604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術に係るバンドギャップ回路においては、外部電圧が過渡的に変動すると、特許文献1に係るドライバ用PMOS1bの容量結合により出力電圧が降下したり、あるいは差動増幅用のオペアンプ1fの応答が追随できずに出力電圧(すなわち、基準電圧)にオーバーシュートが発生したりする場合がある。特に外部電源の電圧範囲が広い場合には、想定される過渡的な外部電源の電圧変動も大きいため、出力電圧(基準電圧)の変動が顕著になり、その電圧を参照電圧とするレギュレータ出力の電圧変動も大きくなる。その結果、レギュレータ出力の電圧(例えば、降圧電圧や内部電圧)供給先の素子の素子耐圧を越えたり、降圧電圧(内部電圧)の供給先の回路動作が困難になったりするという課題があった。また、繰り返し過渡的な外部電源の電圧変動を受ける場合には、バンドギャップ回路の出力電圧が繰り返し変動して、レギュレータ回路のアンプの応答が追随できずに出力電圧が上昇し続けるという課題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、外部電圧が変動しても、出力電圧の変動が抑制される基準電圧発生回路、および半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る基準電圧発生回路は、第1の導通面積を有する第1のダイオードと、前記第1の導通面積より大きな第2の導通面積を有する第2のダイオードと、前記第1のダイオードに基づく電圧と前記第2のダイオードに基づく電圧とを用いて基準電圧を生成する生成部と、前記生成部の出力と前記第2のダイオードとの間に接続された分圧抵抗の接続点と、前記生成部の出力と、の間に接続された第1の容量と、一端が前記第1のダイオードに接続された第1の抵抗と、を含む。前記分圧抵抗が、一端が前記第2のダイオードに接続された第2の抵抗、および一端が前記第2の抵抗の他端に接続された第3の抵抗を備え、前記生成部が、一方の入力端子が前記第1のダイオードと前記第1の抵抗との接続点に接続され、他方の入力端子が前記第2の抵抗と前記第3の抵抗の接続点に接続された演算増幅器、およびゲートが前記演算増幅器の出力に接続され、前記基準電圧を出力するドレインが前記第1の抵抗の他端および前記第3の抵抗の他端に接続された第1の電界効果トランジスタを備え、前記第1の容量は、前記第1の電界効果トランジスタのドレインと、前記第2の抵抗と前記第3の抵抗の接続点との間に接続される。
【0008】
本発明に係る半導体装置は、上記の基準電圧発生回路と、前記基準電圧発生回路の出力に入力端が接続された低域通過濾波器と、前記低域通過濾波器の出力端に接続されるとともに、前記基準電圧発生回路で生成された基準電圧に基づいて外部電源の電圧を変換して出力する電圧変換部と、を含むものである。
【0009】
本発明に係る他の形態の半導体装置は、上記の基準電圧発生回路と、前記基準電圧発生回路で生成された基準電圧に基づいて外部電源の電圧を変換して出力する電圧変換部と、を含み、前記電圧変換部は、前記基準電圧発生回路の出力と前記電圧変換部の出力とを比較する比較回路、および前記外部電源と前記比較回路の出力との間に接続された第2の容量を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部電圧が変動しても、出力電圧の変動が抑制される基準電圧発生回路、および半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る半導体記憶装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す回路図である。
図3】第1の実施の形態に係る半導体装置の各部の動作波形を示すタイムチャートである。
図4】第2の実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す回路図である。
図5】第2の実施の形態に係る半導体装置の各部の動作波形を示すタイムチャートである。
図6】第3の実施の形態に係る半導体装置におけるレギュレータ回路の構成の一例を示す回路図である。
図7】第3の実施の形態に係る半導体装置の各部の動作波形を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下の実施の形態では本発明に係る半導体装置として電圧変換回路を例示し、該電圧変換回路を含む半導体装置として半導体記憶装置を例示して説明する。また、以下の実施の形態では、電圧変換回路として降圧回路を例示して説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1から図3を参照して、本実施の形態に係る基準電圧発生回路および半導体装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る半導体記憶装置100を示している。図1に示すように、半導体記憶装置100は、半導体装置50(図1では「電圧変換回路」と表記)、および内部回路60を含んで構成されている。図1に示すように、半導体装置50は内部回路60とともに半導体装置内に設けられ、外部電源の電圧VCC(以下、「外部電圧VCC」という場合がある)を内部電源の電圧VDD(以下、「内部電圧VDD」という場合がある)まで降下させて内部回路60に供給する。本実施の形態に係る基準電圧発生回路は半導体装置50の内部に設けられている。図1に示すように、本実施の形態に係る内部回路60はメモリ回路であり、一例として、書込読出制御回路、内部電源回路、I/O回路、デコーダ回路、メモリアレイ、センス回路等を含んで構成されている。なお、内部回路60内の内部電源回路は、半導体装置50からの内部電圧VDDを受け、内部回路60の各回路ブロックへの分配等を行う回路である。ここで、各電圧値の一例をあげれば、外部電圧VCCは例えば3.3Vとされ、内部電圧VDDは例えば1.5Vとされる。
【0014】
図2を参照して、本実施の形態に係る半導体装置50についてより詳細に説明する。図2に示すように、半導体装置50は、バンドギャップ回路51、バッファ回路52、およびレギュレータ回路53を含んで構成されている。バンドギャップ回路51、バッファ回路52、レギュレータ回路53の各々には、外部電圧VCCが供給されている。バンドギャップ回路51が、本発明に係る基準電圧発生回路の一例である。
【0015】
バンドギャップ回路51は、レギュレータ回路53で用いる基準電圧VBGRを生成する回路である。図2に示すように、バンドギャップ回路51は、オペアンプ4、PMOSであるドライバ3、ダイオード1c、2c、抵抗1a、2a、2b、および容量5を備えている。図2に示すように、ダイオード2cは、複数のダイオードを並列に接続して構成されている。また、容量5は、ドライバ3のドレインと、抵抗2a、2bの接続点との間に接続されている。
【0016】
バッファ回路52は、オペアンプ7、および抵抗6a、6bを備えている。バッファ回路52は、レギュレータ回路53への動作ノイズの影響を抑制するために、基準電圧VBGRをバッファした基準電圧VBGRBFを発生する。オペアンプ7はユニティゲインアンプを構成しているので、基準電圧VBGRBFは基準電圧VBGRに等しい。基準電圧VBGRBFは抵抗6a、6bで分圧され、基準電圧VBGRDとしてレギュレータ回路53に供給される。なお、バッファ回路52は特にノイズに留意する場合等に設ければよいもので、必須の回路ではない。
【0017】
レギュレータ回路53は、オペアンプ10および抵抗9a、9bを備えている。オペアンプ10は、基準電圧VBGRDを参照電圧、内部電圧VDDを抵抗9a、9bで分圧し帰還させた電圧を比較電圧として両者を比較することにより内部電圧VDDを制御し、目的とする降圧電圧である内部電圧VDDを出力する。
【0018】
ここで、バンドギャップ回路51の出力電圧である基準電圧VBGRは、ダイオード2cを構成するダイオードが、ダイオード1cの8個分とした場合、以下に示す(式1)で表される。
VBGR=(R2a/R2b)×(kT/q)×ln(8×R2a/R1a)+VBE1 ・・・ (式1)
ここで、R1aは抵抗1aの抵抗値、R2aは抵抗2aの抵抗値、R2bは抵抗2bの抵抗値、VBE1はダイオード1cの両端にかかる電圧、Tは絶対温度、lnは自然対数である。基準電圧VBGRの具体的な電圧値は、一例として1.2Vである。
【0019】
(式1)の右辺第1項の温度係数は正、右辺第2項(VBE1)の温度依存性は負となっている。従って、右辺第1項の温度係数と、右辺第2項の温度依存性とが一致するように抵抗値R1a,R2a,R2bを調整することによって、基準電圧VBGRが温度依存性を持たないように、または温度依存性が許容範囲内となるように調整することができる。
【0020】
ここで、図2では特に区別していないが、レギュレータ回路53における動作ノイズの影響を受けないように、外部電圧VCCはバンドギャップ回路51およびバッファ回路52のVCCと、レギュレータ回路53のVCCとに分離されている。分離は各々のVCCを別の電源パッドに接続することによって実現される。また、外部電圧VCCにおける比較的短期間の電圧変動を緩和するために、バンドギャップ回路51およびバッファ回路52のVCCの前段にローパスフィルタを追加する場合もある。なお、バンドギャップ回路51およびバッファ回路52のVCCと、レギュレータ回路53のVCCの分離は、ノイズの影響等を勘案して必要に応じて行えばよく、必須の構成ではない。
【0021】
次に、図3を参照して、半導体装置50の動作について説明する。図3は外部電圧VCCの変動に対する半導体装置50の各部の動作波形を示すタイムチャートであり、図3(a)は図2に示す容量5がない場合、図3(b)は容量5がある場合を示している。図3(a)、(b)において<1>は外部電圧VCCの波形を、<2>はオペアンプ4の入力ノード(すなわち、図2に示すノードN1、およびN2)の波形を、<3>は基準電圧VBGRの波形を、<4>は内部電圧VDDの波形を各々示している。また、図3<1>に示すように、本例では、外部電圧VCCにおいて、変動期間T1(一例としてT1=2μs(マイクロ秒)程度の期間)の比較的長期間の変動が発生したものとしている。また、外部電圧VCCの変動範囲は、VCCminとVCCmaxとの間の範囲である。
【0022】
図3(a)<2>に示すように、オペアンプ4の入力であるノードN1とN2の電圧は、外部電圧VCCが下降するときには、抵抗1aの抵抗値、抵抗2aの抵抗値に応じた傾きで下降する。ノードN1の電圧とノードN2の電圧の差分によりPMOSであるドライバ3がオン状態になり、基準電圧VBGRも降下していく。一方、外部電圧VCCが上昇するときには、オペアンプ4の応答の遅れによりPMOSであるドライバ3のゲート電圧の上昇が遅れるため、基準電圧VBGRが急上昇する。
【0023】
また、ノードN1とノードN2とが等しい電圧になっても依然としてドライバ3がオンのため、外部電圧VCCに連動して基準電圧VBGRがなお上昇する。外部電圧VCCの上昇が停止すると基準電圧VBGRの上昇も停止し、その際のノードN1の電圧とノードN2の電圧との差分(図3に示す差分ΔV4)によってドライバ3がオフ状態となると、抵抗1aと抵抗2aの電流経路で放電して基準電圧VBGRが目標値まで下降する。
【0024】
ここで、一般にレギュレータ回路53は消費電力を抑制するために放電能力を小さく設計することが多いので、基準電圧VBGRが下降しているときは、レギュレータ回路53の出力である内部電圧VDDは抵抗9a、9bの経路からわずかしか放電せず、図3(a)<4>に示すように電圧降下が小さい。一方、基準電圧VBGRが上昇してオペアンプ10が動作すると、電流供給能力の高いオペアンプ10のドライバ(図示省略)から電荷が供給されて、図3(a)<4>に示すように内部電圧VDDが急上昇する。
【0025】
基準電圧VBGRが下降に転ずるとオペアンプ10のドライバ(図示省略)は停止し、内部電圧VDDのノードは抵抗9a、9bの経路から放電して、内部電圧VDDの目標値に近づく。基準電圧VBGRの変動の最大値が大きいほど、内部電圧VDDのオーバーシュートは大きくなる。以上の動作によって、内部電圧VDDはVDDmaxを越える範囲まで変動する。なお、VDDminは内部電圧VDDの目標値の下限を、VDDmaxは目標値の上限を示している。また、図3(a)<4>で内部電圧VDDのオーバーシュートとは、内部電圧VDDがVDDmaxを越えて振動している部分をいう。
【0026】
これに対し容量5がある場合は、容量5の作用によって、基準電圧VBGRの変動を安定化させるとともに、図3(b)<2>に示すようにノードN1の電圧変動を抑える一方、ノードN2の電圧変動は大きく変えずに、ノードN1とノードN2との間の電位差である差分ΔV4を大きく確保することでオペアンプ4の差動増幅機能を強め、基準電圧VBGRの振動を抑えている。基準電圧VBGRの変動が抑えられたことで、レギュレータ回路53の出力である内部電圧VDDのオーバーシュートも緩和される(オーバーシュートが、VDDmax以内に収まっている)。
【0027】
以上詳述したように、本実施の形態に係る基準電圧発生回路、および半導体装置によれば、容量5を備えたことによって基準電圧VBGRの安定化と、オペアンプ4の増幅利得の改善が同時に実現されるため、レギュレータ回路53の出力である内部電圧VDDの出力変動を目標の電圧範囲に収めることが可能となる。
【0028】
[第2の実施の形態]
図4および図5を参照して、本実施の形態に係る半導体装置について説明する。図4(a)に示すように、本実施の形態に係る半導体装置50Aは、上記実施の形態に係る半導体装置50に対して、バッファ回路52の出力である基準電圧VBGRDにローパスフィルタ11(低域通過濾波器、図4(a)では「LPF」(Low Pass Filter)と表記)が追加されている。また、外部電圧VCCにノイズ除去のためのローパスフィルタ54が追加され、ローパスフィルタ54を通過後の電圧である外部電圧AVCCが、バンドギャップ回路51およびバッファ回路52の各々に供給されている。その他の構成については半導体装置50と同様なので、同様の構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。なお、レギュレータ回路53に外部電圧AVDDを供給しても良い。
【0029】
図4(b)はローパスフィルタ11の構成の一例を示している。図4(b)に示すように、ローパスフィルタ11は抵抗12および容量13を備えた積分回路で構成され、入力端子VBGRD_INと、出力端子VBGRD_OUTを備えている。
【0030】
図5を参照して、半導体装置50Aの動作について説明する。図5は外部電圧VCCの変動に対する半導体装置50Aの各部の動作波形を示すタイムチャートであり、図5(a)は図4に示すローパスフィルタ11がない場合、図5(b)はローパスフィルタ11がある場合を各々示している。図5(a)、(b)において<1>は外部電圧VCC、AVCCの波形を、<2>は基準電圧VBGRDの波形を、<3>は内部電圧VDDの波形を各々示している。また、図5<1>に示すように、本例では、外部電圧VCCに変動期間T2(一例としてT2=500ns(ナノ秒)程度の期間)の比較的短期間の変動が繰り返し発生したものとしている。また、外部電圧VCCの変動範囲は、VCCminとVCCmaxとの間の範囲である。
【0031】
図5<1>に示すように、ローパスフィルタ54の作用によって、外部電圧AVCCの変動は外部電圧VCCの変動と比較して小さくなっている。しかしながら、外部電圧AVCCの変動が小さくなっても、バンドギャップ回路51の出力である基準電圧VBGRには依然変動が発生しており、図5(a)<2>に示すように、バッファ回路52の出力である基準電圧VBGRDにはさらにオペアンプ7の応答による作用も加味された振動が発生する。
【0032】
基準電圧VBGRDが変動すると、レギュレータ回路53においては、平均電圧より高い基準電圧VBGRDを繰り返し受けた時に、オペアンプ10の電流供給能力の高いドライバ(図示省略)から繰り返し電荷が供給され、内部電圧VDDが次第に上昇する。図5(a)<3>に示すように、内部電圧VDDが許容電圧の上限VDDmaxを越えると、素子耐圧を越えたり、降圧電圧供給先の回路動作が困難になったりする。
【0033】
上記に対し、ローパスフィルタ11がある場合の動作は以下のようになる。すなわち、基準電圧VBGRDをローパスフィルタ11に通すことで、レギュレータ回路53の参照電圧である出力端子VBGRD_OUTの電圧の変動は、図5(b)<2>に示すように小さくなる。平均電圧より高い出力端子VBGRD_OUTの電圧を繰り返し受けた時に、オペアンプ10の電流供給能力の高いドライバ(図示省略)から繰り返し電荷が供給される期間と供給速度は図5(a)の場合より小さくなるため、図5(b)<3>に示すように、内部電圧VDDの許容電圧の上限VDDmaxを越えないように内部電圧VDDの上昇を抑えることができる。
【0034】
一方、出力端子VBGRD_OUTの電圧は、オペアンプ10の入力段のFETのゲートの充電にのみ使用されるので、ローパスフィルタ11の電流供給能力は小さくて良い。そのため、抵抗12の抵抗値を大きく設定できるので、ローパスフィルタ11の回路面積を十分小さくすることができ、レイアウト面積の抑制にも資する。
【0035】
以上詳述したように、本実施の形態に係る半導体装置によれば、比較的短期間で繰り返す外部電源の電圧変動を受けても、回路面積の大幅な増大を抑制しつつ内部(降圧)電圧VDDのオーバーシュートを抑えることができるので、半導体装置を安定して動作させることができる。
【0036】
[第3の実施の形態]
図6および図7を参照して、本実施の形態について説明する。本実施の形態に係る半導体装置は、上述した半導体装置50A(図4)においてレギュレータ回路53をレギュレータ回路53Aに置き換え、ローパスフィルタ11を省略したものである。従って、半導体装置50Aと同様の構成については同じ符号を参照することとし、図示を省略する。
【0037】
図6は本実施の形態に係るレギュレータ回路53Aの回路図を示している。図6に示すように、レギュレータ回路53Aは、比較回路14、ドライバ(PMOS)15、容量16、18、抵抗9a、9b、17を備えている。レギュレータ回路53Aは基準電圧VBGRD(図4参照)を入力とし、ドライバ15のドレインを出力端子として、内部電圧VDDを出力する。
【0038】
比較回路14は、基準電圧VBGRDと、内部電圧VDDを抵抗9aおよび9bで分圧した分圧電圧とを比較し、その結果に基づいてドライバ15のゲートを制御するコンパレータである。容量16および抵抗17は、比較回路14、ドライバ15、抵抗9a、9bで形成される負帰還回路の位相補償用に設けられている。容量18の機能については後述する。レギュレータ回路53でも出力段にはドライバ15に相当するPMOSが設けられているので、レギュレータ回路53Aとレギュレータ回路53の相違点は、容量16、18、抵抗17の有無であり、後述するように、容量16および抵抗17は容量18の接続に起因するので、本質的な相違点は容量18の有無である。
【0039】
図7を参照して、本実施の形態に係る半導体装置(以下、「本半導体装置」)の動作について説明する。図7は本半導体装置の外部電圧VCCの変動に対する各部の動作波形を示すタイムチャートであり、図7(a)はレギュレータ回路として図4に示すレギュレータ回路53を用いた場合、図7(b)は図6に示すレギュレータ回路53Aを用いた場合を各々示している。図7(a)、(b)において<1>は外部電圧VCC、AVCCの波形を、<2>は基準電圧VBGRDの波形を、<3>は内部電圧VDDの波形を各々示している。また、図7<1>に示すように、本例では、外部電圧VCCに変動期間T2(一例としてT2=500ns(ナノ秒)程度の期間)の比較的短期間の変動が繰り返し発生したものとしている。また、外部電圧VCCの変動範囲は、VCCminとVCCmaxとの間の範囲である。
【0040】
図7<1>に示すように、ローパスフィルタ54の作用によって、外部電圧AVCCの振動は外部電圧VCCの振動より小さく収まっている。その結果、図7<2>に示すように、基準電圧VBGRDの振動も図5(a)<2>に示した振動よりも小さく収まっている。以上の内容は、図7(a)、(b)に共通の内容である。
【0041】
ここで、特に半導体装置のスタンドバイ(待機)時において、内部電圧VDDの電位を維持する用途のレギュレータ回路においては、抵抗9a、9bの抵抗値を大きくし、比較回路14の応答速度を遅くして消費電流を削減する場合がある。このような用途のレギュレータ回路の場合、高温環境に晒された場合や、製造プロセスにおいてPMOSの閾値が低く仕上がった場合に、基準電圧VBGRDが変動して平均電圧より高い電圧を繰り返し受けると、たとえ基準電圧VBGRDの振動が小さくても、PMOSであるドライバ15をオフにしきれず、出力電圧である内部電圧VDDがしだいに上昇する場合がある。これを図示したのが図7(a)<3>であり、レギュレータ回路53の場合は内部電圧VDDがこのような波形になる。
【0042】
これに対し、図7(b)<3>はレギュレータ回路53Aの内部電圧VDDの変動を示している。レギュレータ回路53Aでは、外部電圧AVCCとドライバ15のゲートとの間に容量18を接続することによって、外部電圧AVCCの上昇に連動させてドライバ15のゲートを上昇させ、PMOSであるドライバ15をオフにする。その結果、比較回路14の応答速度によらずPMOSであるドライバ15を直接オフさせることができるので、図7(b)<3>に示すように、出力である内部電圧VDDの上昇を抑えることができる。
【0043】
ここで、容量18を接続することによってレギュレータ回路53Aの位相余裕が減少する場合には、位相補償を行ってもよい。容量16および抵抗17は、この位相補償のために設けられている。ただし、位相補償用の容量16の容量値を増やすと、容量18との容量結合により、PMOSであるドライバ15をオフするのに十分なゲート電圧が得られなくなる場合がある。その場合は、位相補償用の抵抗17の抵抗値を増加させることによって位相余裕を確保し、容量16の容量値を抑えるようにすればよい。
【0044】
以上詳述したように、本実施の形態に係る半導体装置によれば、スタンドバイ(待機)用途のような低消費電力型のレギュレータ回路であっても、比較的短期間の外部電圧変動を繰り返し受けたときに、回路面積の増大を抑制しつつ内部(降圧)電圧VDDのオーバーシュートを抑えることができる。
【0045】
なお、上記各実施の形態では、各実施の形態に係る構成を個別に説明したが、本発明に各実施の形態を個別に適した形態のみならず、2つ以上の実施の形態を組み合わせて構成した形態としてもよい。例えば、実施の形態1から実施の形態3をすべて適用した形態としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1a 抵抗
1c ダイオード
2a、2b 抵抗
2c ダイオード
3 ドライバ
4 オペアンプ
5 容量
6a、6b 抵抗
7 オペアンプ
9a、9b 抵抗
10 オペアンプ
11 ローパスフィルタ
12 抵抗
13 容量
14 比較回路
15 ドライバ
16 容量
17 抵抗
18 容量
50、50A 半導体装置
51 バンドギャップ回路
52 バッファ回路
53、53A レギュレータ回路
54 ローパスフィルタ
60 内部回路
100 半導体記憶装置
VBGR、VBGRBF、VBGRD 基準電圧
VCC 外部電圧
AVCC 外部電圧
VDD 内部電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7