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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】液晶媒体
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/54 20060101AFI20230307BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20230307BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20230307BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20230307BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20230307BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20230307BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20230307BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C09K19/54 C
C09K19/30
C09K19/20
C09K19/34
C09K19/38
C09K19/12
C09K19/16
G02F1/13 500
【請求項の数】 24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018047664
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2018184590
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】17161384.7
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】チャンジュン ユン
(72)【発明者】
【氏名】チャンスク チョイ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジョン ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヒーソク ジン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンクク ユン
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-053019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0037315(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1500ppm~3000ppmの範囲内の合計濃度で1種類以上の式ST-1の化合物と、および
b)300ppm以上の範囲内の合計濃度で1種類以上の式ST-2の化合物と、および
c)1種類以上の式RVの化合物と、および
d)1種類以上の式IAおよびIBの化合物の群から選択される化合物と
を含むことを特徴とする液晶媒体。
【化1】
(式中、
Gは、1~20個のC原子を有する2価の脂肪族または脂環式基を表す。)
【化2】
(式中、
【化3】
を表し、
S1は、H、15個までのC原子を有するアルキル、アルケニルまたはアルコキシ基を表し、ただし1個以上のH原子は、ハロゲンで置き換えられてよく、
S2は、H、7個までのC原子を有するアルキルまたはアルケニルまたはアルコキシを表し、ただし1個以上のH原子は、ハロゲンで置き換えられてよく、
rは、0または1である。)
【化4】
(式中、
21は、1~7個のC原子を有する無置換のアルキル基または2~7個のC原子を有する無置換のアルケニル基を表し、
22は、2~7個のC原子を有する無置換のアルケニル基を表す。)
【化5】
(式中、
およびRは、それぞれ互いに独立に1~15個のC原子を有するハロゲン化または無置換のアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立にO原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CFO-、-CH=CH-、
【化6】
-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、
およびXは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CN、SF、SCN、NCS、それぞれ6個までのC原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、および
1~13は、それぞれ互いに独立にHまたはFを表す。)
【請求項2】
a)2000ppm以上の範囲内の合計濃度で1種類以上の式ST-1の化合物と、および
b)500ppm以上の範囲内の合計濃度で1種類以上の式ST-2の化合物と、および
c)1種類以上の式RVの化合物と、および
d)1種類以上の式IAおよびIBの化合物の群から選択される化合物と
を含むことを特徴とする液晶媒体。
【化7】
(式中、
Gは、1~20個のC原子を有する2価の脂肪族または脂環式基を表す。)
【化8】
(式中、
【化9】
を表し、
S1は、H、15個までのC原子を有するアルキル、アルケニルまたはアルコキシ基を表し、ただし1個以上のH原子は、ハロゲンで置き換えられてよく、
S2は、H、7個までのC原子を有するアルキルまたはアルケニルまたはアルコキシを表し、ただし1個以上のH原子は、ハロゲンで置き換えられてよく、
rは、0または1である。)
【化10】
(式中、
21は、1~7個のC原子を有する無置換のアルキル基または2~7個のC原子を有する無置換のアルケニル基を表し、
22は、2~7個のC原子を有する無置換のアルケニル基を表す。)
【化11】
(式中、
およびRは、それぞれ互いに独立に1~15個のC原子を有するハロゲン化または無置換のアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立にO原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CFO-、-CH=CH-、
【化12】
-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、
およびXは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CN、SF、SCN、NCS、それぞれ6個までのC原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、および
1~13は、それぞれ互いに独立にHまたはFを表す。)
【請求項3】
媒体は、式ST-1aの化合物を含む請求項1または2に記載の媒体。
【化13】
(式中、
S3は、Hまたは1~6個のC原子を有するアルキルを表し;
tは、0または1であり、および
qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8または9である。)
【請求項4】
媒体は、qが7であり、tが1であり、RS3がエチルを表す請求項3に示す式ST-1aの化合物を含む請求項3に記載の液晶媒体。
【請求項5】
媒体は、式ST-1a-2の化合物を含む請求項1または2に記載の媒体。
【化14】
(式中qは、6、7または8である。)
【請求項6】
媒体は、1種類以上の式ST-2aの化合物を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化15】
(式中、
1Aは、1~7個のC原子を有するアルキルを表す。)
【請求項7】
媒体は、式ST-2a-1~ST-2a-5の化合物の群から選択される式ST-2aの化合物を含む請求項6に記載の媒体。
【化16】
【請求項8】
媒体は、式ST-1a-2-1の化合物および式ST-2a-3の化合物を含む請求項1または2に記載の媒体。
【化17】
【請求項9】
媒体の20℃における誘電異方性Δεは、+2~+6.6の範囲内である請求項1~8のいずれか1項に記載の媒体。
【請求項10】
式IA-a~IA-fの化合物から選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化18】
(式中RおよびXは、請求項1または2で示される意味を有する。)
【請求項11】
式IB-a~IB-hの化合物から選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化19】
【化20】
(式中RおよびXは、請求項1または2で示される意味を有する。)
【請求項12】
追加して式IIおよび/またはIIIから選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化21】
(式中、
は、1~15個のC原子を有するハロゲン化または無置換のアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立にO原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CFO-、-CH=CH-、
【化22】
-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、
は、F、Cl、CN、SF、SCN、NCS、それぞれ6個までのC原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、および
1~5は、それぞれ互いに独立にHまたはFを表し、
【化23】
を表す。)
【請求項13】
追加して式IV~VIIIから選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化24】
(式中
は、1~15個のC原子を有するハロゲン化または無置換のアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH 基は、それぞれ互いに独立にO原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CF O-、-CH=CH-、
【化25】
-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、
は、F、Cl、CN、SF 、SCN、NCS、それぞれ6個までのC原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、および
1~4 は、それぞれ互いに独立にHまたはFを表し、
は、-C-、-(CH-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C-、-CHCF-、-CFCH-、-CHO-、-OCH-、-COO-または-OCF-、式VおよびVIにおいては単結合も、式VおよびVIIIにおいては-CFO-も表し、
rは、0または1を表し、および
sは、0または1を表す。)
【請求項14】
追加して式IX~XIIから選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化26】
(式中
は、F、Cl、CN、SF 、SCN、NCS、それぞれ6個までのC原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、および
Lは、HまたはFを表し、
「alkyl」は、C1~6-アルキルを表し、
R’は、C1~6-アルキルまたはC1~6-アルコキシを表し、
R”は、C1~6-アルキル、C1~6-アルコキシまたはC2~6-アルケニルを表し、および
「alkenyl」および「alkenyl」は、それぞれ互いに独立にC2~6-アルケニルを表す。)
【請求項15】
追加して式XVIIの1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化27】
(式中RおよびRは、それぞれ互いに独立に、それぞれ8個までのC原子を有するn-アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを表し、およびLはHまたはFを表す。)
【請求項16】
式XXVII、XXVIIIおよびXXIXの化合物の群から選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化28】
(式中
は、8個までのC原子を有するn-アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを表し、
は、F、Cl、CN、SF 、SCN、NCS、それぞれ6個までのC原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表す。)
【請求項17】
式XIX、XX、XXI、XXII、XXIIIおよびXXIVの化合物の群から選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化29】
(式中
は、1~15個のC原子を有するハロゲン化または無置換のアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH 基は、それぞれ互いに独立にO原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CF O-、-CH=CH-、
【化30】
-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、
は、F、Cl、CN、SF 、SCN、NCS、それぞれ6個までのC原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、および
1~4は、それぞれ互いに独立にHまたはFを表す。)
【請求項18】
20重量%以上の式IXbの化合物を含むことを特徴とする請求項1~17のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化31】
(式中alkylは、n-C 、n-C またはn-C 11 を表す。)
【請求項19】
式IIA、IIBおよびIICの化合物の群から選択される1種類以上の化合物を追加して含むことを特徴とする請求項1~18のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化32】
(式中、
2A、R2BおよびR2Cは、それぞれ互いに独立に、H、15個までのC原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、該基は無置換、CNもしくはCFで一置換またはハロゲンで少なくとも一置換されており、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基はO原子が互いに直接連結しないようにして、-O-、-S-、
【化33】
-C≡C-、-CFO-、-OCF-、-OC-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、
1~4は、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CFまたはCHFを表し、
およびZ’は、それぞれ互いに独立に、単結合、-CHCH-、-CH=CH-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-OCH-、-COO-、-OCO-、-C-、-CF=CF-、-CH=CHCHO-を表し、
(O)は、-O-または単結合を表し、
pは、0、1または2を表し、
qは、0または1を表し、および
vは、1~6を表す。)
【請求項20】
液晶滴下工法(ODF:one drop filling)プロセス用であることを特徴とする請求項1~19のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の液晶媒体を調製する方法であって、
請求項1または2で定義される通りの1種類以上の式IAの化合物および1種類以上の式IBの化合物および1種類以上の式RVの化合物を、請求項9~19のいずれか1項に記載の1種類以上の化合物または更なる液晶化合物と混合し、
請求項1または2で示される通りの1種類以上の式ST-1の添加剤および1種類以上の式ST-2の添加剤を添加する
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
電気光学的目的のための請求項1~20のいずれか1項に記載の液晶媒体の使用。
【請求項23】
3D用途向けシャッター眼鏡ならびにTN、PS-TN、STN、TN-TFT、OCB、IPS、PS-IPS、FFS、PS-FFSおよびPS-VA-IPSディスプレイにおける請求項22に記載の使用。
【請求項24】
請求項1~20のいずれか1項に記載の液晶媒体を含有する電気光学的液晶ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体と、これらの媒体を含有する液晶ディスプレイと、特にアクティブマトリックスでアドレスされるディスプレイと、特にアクティブマトリクスでアドレスするディスプレイと、および特に面内スイッチ(IPS:in-plane switching)またはフリンジ場スイッチ(FFS:fringe-field switching)タイプのディスプレイとに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid-Crystal Display)は情報をディスプレイする多くの分野で使用される。LCDは、直視型ディスプレイおよび投影型ディスプレイの両者で使用される。使用される電気光学的モードは例えば、ツイストネマチック(TN:twisted nematic)、超ツイストネマチック(STN:super twisted nematic)、光学補償ベンド(OCB:optically compensated bend)および電界効果復屈折(ECB:electrically controlled birefringence)モードで、それらの種々の変法と共に、ならびにその他である。これらのモードの全ては、基板または液晶層に実質的に直角な電界を利用する。これらのモードに加え、基板または液晶層に実質的に平行な電界を利用する電気光学的モードもあり例えば、面内スイッチ(IPS:in-plane Switching)モード(例えば、独国特許第40 00 451号明細書(特許文献1)および欧州特許第0 588 568号明細書(特許文献2)で開示され通り)およびフリンジ場スイッチ(FFS:fringe-field switching)モードなどで、該モードにおいては強力な「フリンジ場」即ち、電極周縁部の近傍には強力な電界が、セルにわたっては強力な垂直成分および強力な水平成分の両者を有する電界が存在する。後者の2種類の電気光学的モードは特に、最新のデスクトップモニターにおけるLCDならびにテレビセットおよびマルチメディア用途向けのディスプレイで使用される。本発明による液晶は好ましくは、このタイプのディスプレイで使用する。かなり低い値の誘電率異方性を有する誘電的に正の液晶媒体が一般にFFSディスプレイで使用されるが場合によっては、わずか約3またはそれ以下の誘電率異方性を有する液晶媒体がIPSディスプレイにおいても使用される。
【0003】
これらのディスプレイには、改良された特性を有する新しい液晶媒体が必要である。特に多くのタイプの用途のために、アドレス時間を改良する必要がある。よって、より低い粘度(η)、特により低い回転粘度(γ)を有する液晶媒体が必要である。これらの粘度のパラメータに加えて、媒体は適切な位置および広さの範囲のネマチック相を有していなければならず、適切な複屈折(Δn)および誘電異方性(Δε)は適度に低い動作電圧のために十分高くなければならない。
【0004】
本発明によるディスプレイは、アクティブマトリクス(active matrix LCD、略してAMD)によって、好ましくは薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)のマトリクスによってアドレスされることが好ましい。しかしながら本発明による液晶は、他の既知のアドレス手段を有するディスプレイにおいても有利に使用できる。
【0005】
LCDおよび特にIPSディスプレイに適切な液晶組成物は例えば、特開平07-181439号公報(特許文献3)、欧州特許第0 667 555号明細書(特許文献4)、欧州特許第0 673 986号明細書(特許文献5)、独国特許第195 09 410号明細書(特許文献6)、独国特許第195 28 106号明細書(特許文献7)、独国特許第195 28 107号明細書(特許文献8)、国際公開第96/23851号(特許文献9)および国際公開第96/28521号(特許文献10)から既知である。しかしながら、これらの組成物は一定の欠点を有する。それらの大部分は他の欠点の中でも、それらの殆どの結果、応答時間が不利に長くなり、不適切な値の抵抗値を有しおよび/または過度に高い動作電圧を必要とする。加えて、LCDの低温挙動を改良することに対する要求がある。この場合、動作特性および保存可能期間もの両者において改良が必要である。
【0006】
ディスプレイパネルの製造中に特別な問題が生じる。LCDディスプレイは典型的には、ピクセル電極、薄膜トランジスタ(TFT、thin-film transistor)および他の部品を有する第1基板を、共通電極を含有する第2基板にシーラントを用いて接着することで製造する。基板で囲まれた空間を毛管力または真空によって充填口を介して液晶で充填し、続いてシーラントを使用して充填口を封止する。近年の液晶ディスプレイの大型化に伴い液晶ディスプレイの大量生産プロセスとして製造時のサイクルタイムを短縮するために、いわゆる液晶滴下工法(ODF:one drop filling)プロセスが提案されてきた(例えば、特開昭63-179323号公報(特許文献11)、特開平10-239694号公報(特許文献12)参照)。これは基板に1滴または数滴の液晶液滴を塗工する液晶ディスプレイの製造方法で、基板には電極が取り付けられており、周縁部にはシーラントが提供されている。続いて第2基板を真空中で装着し、シーラントを硬化する。
【0007】
しかしながら液晶滴下工法には「ODFムラ」または「液滴ムラ」と呼ばれるディスプレイの欠陥を生じる危険性があり、ODFプロセスで分配した個々の液滴の配置に関連する対称的なパターンが、パネルを組み立てた後でも見えるままである。液滴の大きさおよび形状に応じて、小さな円形のスポット(「ドットムラ」)またはそれより大きく、むしろ正方形の領域(チェス状パターンのムラ)が見え得る。他の目に見える欠陥は例えばテレビ用の特に大きなパネルのODFプロセスに関連する、いわゆる拡散またはエッジムラで、それはディスプレイの縁の近くで見えてくる欠陥である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許第40 00 451号明細書
【文献】欧州特許第0 588 568号明細書
【文献】特開平07-181439号公報
【文献】欧州特許第0 667 555号明細書
【文献】欧州特許第0 673 986号明細書
【文献】独国特許第195 09 410号明細書
【文献】独国特許第195 28 106号明細書
【文献】独国特許第195 28 107号明細書
【文献】国際公開第96/23851号
【文献】国際公開第96/28521号
【文献】特開昭63-179323号公報
【文献】特開平10-239694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このタイプの特にFFS、IPS、TN、正VAまたはSTNディスプレイ用で、上に示す不具合を示さないか低減された程度にのみ示し、好ましくは高い透明点と同時に速い応答時間および低い回転粘度ならびに高い誘電異方性および低い閾電圧を有し、それを使用することでムラ、特に拡散またはエッジムラが少なくとも部分的または完全に除去され、用途に応じて十分に低くなる媒体を提供する目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、下記の通りの安定剤を含む液晶媒体を提供することで解決された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、
a)1種類以上の式ST-1の化合物と、および
b)1種類以上の式ST-2の化合物と、および
c)1種類以上の式RVの化合物と、および
d)1種類以上の式IAおよびIBの化合物の群から選択される化合物と
を含むことを特徴とする液晶媒体に関する。
【0012】
【化1】
式中、
Gは、1~20個のC原子を有する2価の脂肪族または脂環式基を表す。
【0013】
【化2】
式中、
【0014】
【化3】
を表し、
S1は、H、15個までのC原子を有するアルキル、アルケニルまたはアルコキシ基を表し、ただし1個以上のH原子は、ハロゲンで置き換えられてよく、
S2は、H、7個までのC原子を有するアルキルまたはアルケニルまたはアルコキシを表し、ただし1個以上のH原子は、ハロゲンで置き換えられてよく、
rは、0または1である。
【0015】
【化4】
式中、
21は、1~7個のC原子を有する無置換のアルキル基または2~7個のC原子を有する無置換のアルケニル基を表し、
22は、2~7個のC原子を有する無置換のアルケニル基を表す。
【0016】
【化5】
式中、
およびRは、それぞれ互いに独立に1~15個のC原子を有するハロゲン化または無置換のアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立にO原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CFO-、-CH=CH-、
【0017】
【化6】
-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、
およびXは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CN、SF、SCN、NCS、それぞれ6個までのC原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、および
1~13は、それぞれ互いに独立にHまたはFを表す。
【0018】
驚くべきことに本発明による液晶媒体は、安定化していない媒体と比較して改良された信頼性を示すことが見出された。予想外に改良された信頼性は、ディスプレイパネルにおけるエッジムラの程度が非常に低いことと関連している。
【0019】
式IAおよびIBの化合物は例えば、国際公開第2004/048501号および欧州特許第0 786 445号明細書から既知である。
【0020】
式ST-1の安定剤は例えば、欧州特許出願公開第2 993 216号明細書に記載されている。式ST-2の安定剤は負の誘電異方性を有する媒体における共安定剤として、国際公開第2012/076104号で提案されている。
【0021】
上および下の式においてRおよびRがアルキル基および/またはアルコキシ基を表す場合、これは直鎖状または分岐状でよい。それは好ましくは直鎖状で、2個、3個、4個、5個、6個または7個のC原子を有し、従って好ましくは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシまたはヘプチルオキシ、更に、メチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、メトキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシまたはテトラデシルオキシを表す。RおよびRは、それぞれ好ましくは2~6個のC原子を有する直鎖状のアルキルを表す。
【0022】
オキサアルキルは好ましくは、直鎖状の2-オキサプロピル(即ち、メトキシメチル)、2-(即ち、エトキシメチル)または3-オキサブチル(即ち、2-メトキシエチル)、2-、3-または4-オキサヘプチル、2-、3-、4-または5-オキサヘキシル、2-、3-、4-、5-または6-オキサヘプチル、2-、3-、4-、5-、6-または7-オキサオクチル、2-、3-、4-、5-、6-、7-または8-オキサノニル、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-または9-オキサデシルを表す。
【0023】
およびRがアルキル基を表し、1個のCH基が-CH=CH-基で置き換えられている場合、これは直鎖状または分岐状でよい。それは好ましくは直鎖状で、2~10個のC原子を有する。それは従って特に、ビニル、プロパ-1-または-2-エニル、ブタ-1-、-2-または-3-エニル、ペンタ-1-、-2-、-3-または-4-エニル、ヘキサ-1-、-2-、-3-、-4-または-5-エニル、ヘプタ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-または-6-エニル、オクタ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-または-7-エニル、ノナ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-または-8-エニル、デカ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-、-8-または-9-エニルを表す。
【0024】
およびRがアルキルまたはアルケニル基を表し、それがハロゲンによって少なくとも一置換されている場合、この基は好ましくは直鎖状で、ハロゲンは好ましくはFまたはClである。多置換の場合、ハロゲンは好ましくはFである。また結果として得られる基は、ペルフルオロ化された基も含む。一置換の場合、フッ素または塩素置換基は任意の所望の箇所でよいが、好ましくはω位である。
【0025】
上および下の式においてXおよび/またはXは好ましくは、F、Clまたは1個、2個もしくは3個のC原子を有する一フッ素化もしくは多フッ素化アルキルもしくはアルコキシ基または2個もしくは3個のC原子を有する一フッ素化もしくは多フッ素化アルケニル基である。Xおよび/またはXは特に好ましくは、F、Cl、CF、CHF、OCF、OCHF、OCFHCF、OCFHCHF、OCFHCHF、OCFCH、OCFCHF、OCFCHF、OCFCFCHF、OCFCFCHF、OCFHCFCF、OCFHCFCHF、OCFCFCF、OCFCFCClF、OCClFCFCF、OCH=CFまたはCH=CF、非常に好ましくはFまたはOCF、更にCF、OCF=CF、OCHFまたはOCH=CFである。
【0026】
および/またはXがFまたはOCF、好ましくはFを表す式IAおよびIBの化合物が特に好ましい。式IAの好ましい化合物は、YがFを表すもの、YがFを表すもの、YがHを表すもの、YがHを表しYがFを表すもの、ならびにYおよびYがそれぞれHを表すものである。式IBの好ましい化合物は、YがFを表すもの、YがFを表すもの、Y10がFを表すもの、Y11がFを表すもの、ならびにY12およびY13がそれぞれHを表すものである。
【0027】
式ST-1における基Gの例は、メチレン、エチレンもしくは20個までの炭素原子を有するポリメチレン;または2価基-CHOCH-、-CHCHOCHCH-、-CHCHOCHCHOCHCH-、-CHC(O)OCHCHO(O)CCH-、-CHCHC(O)OCHCHO(O)CCHCH-、-CHCH-C(O)O(CHO(O)C-CHCH-、-CHCHO(O)C(CHC(O)OCHCH-および-CHCHO(O)C(CHC(O)OCHCH-などの1個もしくは2個のヘテロ原子で中断されているアルキレン基である。
【0028】
またGは、アリーレン-ビス-アルキレン例えば、p-キシリレン、ベンゼン-1,3-ビス(エチレン)、ビフェニル-4,4’-ビス(メチレン)またはナフタレン-1,4-ビス(メチレン)でもよい。
【0029】
好ましくは式ST-1の化合物は、式ST-1aの化合物から選択される。
【0030】
【化7】
式中、
S3は、Hまたは1~6個のC原子を有するアルキル、好ましくはHまたはエチルを表し、
tは、0または1であり、および
qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8または9である。
【0031】
特に好ましくは式ST-1aの化合物は、式ST-1a-1およびST-1a-2、好ましくはST-1a-2の化合物から選択される。これらの化合物は、液晶媒体における非常に良好な溶解性で区別される。
【0032】
【化8】
式中qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8または9、好ましくは6、7または8、特に好ましくは7である。
【0033】
式ST-2の好ましい化合物は、式ST-2aおよびST-2bの化合物の群から、特に好ましくは式ST-2aの化合物から選択される化合物である。
【0034】
【化9】
式中、
S1は上で与える意味を有し、好ましくは1~7個のC原子を有するアルキル、特に好ましくはエチル、n-プロピル、n-ブチルまたはn-ペンチルを表す。
【0035】
本発明による媒体は好ましくは、式ST-2aの、好ましくは式ST-2a-1~ST-2a-5の化合物の群から選択される1種類以上の化合物を含む。
【0036】
【化10】
特に好ましくは、化合物ST-2a-3を用いる。
【0037】
式RVの好ましい化合物は、式RV-1~RV-7の化合物の群から選択される。
【0038】
【化11】
特に好ましい式IAの化合物は、以下のサブ式から選択される。
【0039】
【化12】
式中、
およびXは、請求項1で示す意味を有する。
【0040】
は、好ましくは1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル、特にエチルおよびプロピル、更に2~6個のC原子を有するアルケニルを表す。
【0041】
サブ式IA-bの化合物が、非常に特に好ましい。
【0042】
特に好ましい式IBの化合物は、以下のサブ式から選択される。
【0043】
【化13】
【0044】
【化14】
式中、
およびXは、請求項1で示す意味を有する。
【0045】
は、好ましくは1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル、特にプロピル、ブチルおよびペンチル、更に2~6個のC原子を有するアルケニルを表す。
【0046】
サブ式IB-cの化合物が、非常に特に好ましい。
【0047】
更に好ましい実施形態を下に示す。
【0048】
・媒体は追加して、式IIおよび/またはIIIの1種類以上の化合物を含む。
【0049】
【化15】
式中、
は、1~15個のC原子を有するハロゲン化または無置換のアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立にO原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CFO-、-CH=CH-、
【0050】
【化16】
-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、
は、F、Cl、CN、SF、SCN、NCS、6個までのC原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、および
1~5は、それぞれ互いに独立にHまたはFを表し、
【0051】
【化17】
を表す。
【0052】
・式IIの化合物は好ましくは、以下の式から選択される。
【0053】
【化18】
式中RおよびXは、上で示す意味を有する。
【0054】
は好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくは、Fを表す。式IIaおよびIIbの化合物、特にXがFを表す式IIaおよびIIbの化合物が特に好ましい。
【0055】
・式IIIの化合物は好ましくは、以下の式から選択される。
【0056】
【化19】
式中RおよびXは、上で示す意味を有する。
【0057】
は好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくは、Fを表す。式IIIaおよびIIIeの化合物、特に式IIIaの化合物が特に好ましい。
【0058】
・媒体は追加して、以下の式から選択される1種類以上の化合物を含む。
【0059】
【化20】
式中
、XおよびY1~4は、上で示す意味を有し、および
は、-C-、-(CH-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C-、-CHCF-、-CFCH-、-CHO-、-OCH-、-COO-または-OCF-、式VおよびVIにおいては単結合も、式VおよびVIIIにおいては-CFO-も表し、
rは、0または1を表し、および
sは、0または1を表す。
【0060】
・式IVの化合物は好ましくは、以下の式から選択される。
【0061】
【化21】
式中RおよびXは、上で示す意味を有する。
【0062】
は好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくは、FまたはOCF、更にOCF=CFまたはClを表す。
【0063】
・式Vの化合物は好ましくは、以下の式から選択される。
【0064】
【化22】
式中RおよびXは、上で示す意味を有する。
【0065】
は好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくは、FまたはOCF、更にOCHF、CF、OCF=CFおよびOCH=CFを表す。
【0066】
・式VIの化合物は好ましくは、以下の式から選択される。
【0067】
【化23】
式中RおよびXは、上で示す意味を有する。
【0068】
は好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくは、F、更にOCF、CF、CF=CF、OCHFおよびOCH=CFを表す。
【0069】
・式VIIの化合物は好ましくは、以下の式から選択される。
【0070】
【化24】
式中RおよびXは、上で示す意味を有する。
【0071】
は好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくは、F、更にOCF、OCHFおよびOCH=CFを表す。
【0072】
・媒体は追加して、以下の式から選択される1種類以上の化合物を含む。
【0073】
【化25】
式中Xは、上で示す意味を有し、および
Lは、HまたはFを表し、
「alkyl」は、C1~6-アルキルを表し、
R’は、C1~6-アルキルまたはC1~6-アルコキシを表し、
R”は、C1~6-アルキル、C1~6-アルコキシまたはC2~6-アルケニルを表し、および
「alkenyl」および「alkenyl」は、それぞれ互いに独立にC2~6-アルケニルを表す。
【0074】
・式IX~XIIの化合物は好ましくは、以下の式から選択される。
【0075】
【化26】
式中「alkyl」は、上で示す意味を有する。
【0076】
式IXa、IXb、IXc、Xa、Xb、XIaおよびXIIaの化合物が特に好ましい。式IXbおよびIXにおいて「alkyl」は好ましくは互いに独立して、n-C、n-Cまたはn-C11、特にn-Cを表す。
【0077】
・媒体は追加して、以下の式から選択される1種類以上の化合物を含む。
【0078】
【化27】
式中LおよびLは上で示す意味を有し、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、それぞれ6個までのC原子を有するn-アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを表し、好ましくは、それぞれ互いに独立に1~6個のC原子を有するアルキルを表し;式XIIIの化合物において基RおよびRの少なくとも一方は好ましくは、2~6個のC原子を有するアルケニルを表す。
【0079】
・媒体は、基RおよびRの少なくとも一方が2~6個のC原子を有するアルケニルを表す式XIIIの1種類以上の化合物、好ましくは以下の式から選択されるものを含む。
【0080】
【化28】
式中「alkyl」は、上で示す意味を有する。
【0081】
・媒体は、以下の式の1種類以上の化合物を含む。
【0082】
【化29】
式中R、XおよびY1~4は、式Iで示す意味を有し、および
【0083】
【化30】
を表し、および
【0084】
【化31】
を表す。
【0085】
・式XVおよびXVIの化合物は好ましくは、以下の式から選択される。
【0086】
【化32】
【0087】
【化33】
式中RおよびXは、上で示す意味を有す。
【0088】
は好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくはF、更にOCFを表す。式XVおよびXVa~XVfの特に好ましい化合物は、YがFを表し、YがHまたはF、好ましくはFを表すものである。本発明による混合物は特に好ましくは、少なくとも1種類の式XVfの化合物を含む。
【0089】
・媒体は、式XVIIの1種類以上の化合物を含む。
【0090】
【化34】
式中RおよびRは上で示す意味を有し、好ましくは、それぞれ互いに独立に1~6個のC原子を有するアルキルを表す。LはHまたはFを表す。
【0091】
式XVIIの特に好ましい化合物は、下のサブ式のものである。
【0092】
【化35】
式中、
「alkyl」および「alkyl」は、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基、特にエチル、プロピルおよびペンチルを表し、
「alkenyl」および「alkenyl」は、それぞれ互いに独立に、2~6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基、特にCH=CHC、CHCH=CHC、CH=CHおよびCHCH=CHを表す。
【0093】
式XVII-bおよびXVII-cの化合物が特に好ましい。下式の化合物が非常に特に好ましい。
【0094】
【化36】
・媒体は、以下の式の1種類以上の化合物を含む。
【0095】
【化37】
式中RおよびRは上で示す意味を有し、好ましくは、それぞれ互いに独立に1~6個のC原子を有するアルキルを表す。LはHまたはFを表す。
【0096】
・媒体は追加して、以下の式から選択される1種類以上の化合物を含む。
【0097】
【化38】
式中RおよびXは、それぞれ互いに独立に上で示す意味の1つを有し、Y1~4は、それぞれ互いに独立にHまたはFを表す。Xは好ましくは、F、Cl、CF、OCFまたはOCHFを表す。Rは好ましくは、それぞれ6個までのC原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを表す。
【0098】
本発明による混合物は特に好ましくは、式XXIV-aの1種類以上の化合物を含む。
【0099】
【化39】
式中Rは、上で示す意味を有す。Rは好ましくは、直鎖状のアルキル、特にエチル、n-プロピル、n-ブチルおよびn-ペンチル、非常に特に好ましくはn-プロピルを表す。式XXIV、特に式XXIV-aの化合物(1種類または多種類)は好ましくは、本発明による混合物において0.5~20重量%、特に好ましくは1~15重量%の量で用いる。
【0100】
・媒体は追加して、式XXIVの1種類以上の化合物を含む。
【0101】
【化40】
式中R、XおよびY1~6は式Iで示す意味を有し、sは0または1を表し、
【0102】
【化41】
を表す。
【0103】
また式XXIVにおいてXは、1~6個のC原子を有するアルキル基または1~6個のC原子を有するアルコキシ基も表してよい。アルキルまたはアルコキシ基は好ましくは直鎖状である。
【0104】
は好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくは、Fを表す。
【0105】
・式XXIVの化合物は好ましくは、以下の式から選択される。
【0106】
【化42】
【0107】
【化43】
式中R、XおよびYは上で示す意味を有する。Rは好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくはFを表し、Yは好ましくはFを表す。
【0108】
【化44】
・Rは、2~6個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルケニルである。
【0109】
・媒体は、以下の式の1種類以上の化合物を含む。
【0110】
【化45】
式中RおよびXは上で示す意味を有する。Rは好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくはFまたはClを表す。式XXVにおいてXは非常に特に好ましくは、Clを表す。
【0111】
・媒体は、以下の式の1種類以上の化合物を含む。
【0112】
【化46】
式中RおよびXは上で示す意味を有する。Rは好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくはFを表す。本発明による媒体は特に好ましくは、Xが好ましくはFを表す式XXIXの1種類以上の化合物を含む。式XXVII~XXIXの化合物(1種類または多種類)は好ましくは、本発明による混合物において1~20重量%、特に好ましくは1~15重量%の量で用いる。特に好ましい混合物は、式XXIXの少なくとも1種類の化合物を含む。
【0113】
・媒体は、下式の1種類以上の以下のピリミジンまたはピリジン化合物を含む。
【0114】
【化47】
式中RおよびXは上で示す意味を有する。Rは好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキルを表す。Xは好ましくはFを表す。本発明による媒体は特に好ましくは、Xが好ましくはFを表す式M-1の1種類以上の化合物を含む。式M-1~M-3の化合物(1種類または多種類)は好ましくは、本発明による混合物において1~20重量%、特に好ましくは1~15重量%の量で用いる。
【0115】
好ましい実施形態において液晶媒体は追加して、式IIA、IIBおよびIICの化合物の群から選択される1種類以上の化合物を含む。
【0116】
【化48】
式中、
2A、R2BおよびR2Cは、それぞれ互いに独立に、H、15個までのC原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、該基は無置換、CNもしくはCFで一置換またはハロゲンで少なくとも一置換されており、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基はO原子が互いに直接連結しないようにして、-O-、-S-、
【0117】
【化49】
-C≡C-、-CFO-、-OCF-、-OC-O-または-O-CO-で置き換えられてよく、
1~4は、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CFまたはCHFを表し、
およびZ’は、それぞれ互いに独立に、単結合、-CHCH-、-CH=CH-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-OCH-、-COO-、-OCO-、-C-、-CF=CF-、-CH=CHCHO-を表し、
pは、0、1または2を表し、
qは、0または1を表し、および
vは、1~6を表す。
【0118】
式IIAおよびIIBの化合物において、Zは同一または異なる意味を有してよい。式IIBの化合物において、ZおよびZ’は同一または異なる意味を有してよい。
【0119】
式IIA、IIBおよびIICの化合物において、R2A、R2BおよびR2Cは、それぞれ好ましくは1~6個のC原子を有するアルキル、特にCH、C、n-C、n-C、n-C11を表す。
【0120】
式IIAおよびIIBの化合物において、L、L、LおよびLは好ましくは、L=L=FおよびL=L=F、更にL=FおよびL=Cl、L=ClおよびL=F、L=FおよびL=Cl、L=ClおよびL=Fを表す。式IIAおよびIIBにおけるZおよびZ’は好ましくは、それぞれ互いに独立に単結合、更に-C-架橋を表す。
【0121】
式IIBにおいてZ=-C-または-CHO-の場合、Z’は好ましくは単結合であるか、またはZ’=-C-または-CHO-の場合、Zは好ましくは単結合である。式IIAおよびIIBの化合物において(O)C2v+1は好ましくは、OC2v+1、更にC2v+1を表す。式IICの化合物において(O)C2v+1は好ましくは、C2v+1を表す。式IICの化合物において、LおよびLは好ましくは、それぞれFを表す。
【0122】
式IIA、IIBおよびIICの好ましい化合物を下に示す。
【0123】
【化50】
【0124】
【化51】
【0125】
【化52】
【0126】
【化53】
【0127】
【化54】
【0128】
【化55】
【0129】
【化56】
【0130】
【化57】
式中、
alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、
alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2~6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0131】
本発明による特に好ましい混合物は、式IIA-2、IIA-8、IIA-14、IIA-26、II-28、IIA-33、IIA-39、IIA-45、IIA-46、IIA-47、IIA-50、IIB-2、IIB-11、IIB-16およびIIC-1の1種類以上の化合物を含む。
【0132】
混合物全体における式IIAおよび/またはIIBの化合物の割合は好ましくは、少なくとも20重量%である。
【0133】
本発明による特に好ましい媒体は、少なくとも1種類の式IIC-1の化合物を、好ましくは2重量%より多く、特に4重量%より多く、特に好ましくは5~25重量%の量で含む。
【0134】
【化58】
式中alkylおよびalkylは、上で示す意味を有する。
【0135】
更に好ましい実施形態を下に示す。
【0136】
・媒体は、1000ppm以上、好ましくは1500ppm以上、特に好ましくは2000ppm以上の合計濃度で1種類以上の式ST-1の化合物を含む。
【0137】
・媒体は、100ppm~3000ppm、好ましくは500ppm~2000ppm、特に好ましくは1000ppm~1500ppmの範囲内の合計濃度で1種類以上の式ST-1の化合物を含む。
【0138】
・媒体は、300ppm以上、好ましくは400ppm以上、特に好ましくは500ppm以上の合計濃度で1種類以上の式ST-2の化合物を含む。
【0139】
・媒体は、100ppm~1000ppm、好ましくは300ppm~800ppm、特に好ましくは400ppm~600ppmの範囲内の合計濃度で1種類以上の式ST-2の化合物を含む。
【0140】
・媒体は、20重量%以上、好ましくは24重量%以上、好ましくは25~60重量%の式RVの化合物、特に式RV-1の化合物を含む。
【0141】
【化59】
・媒体は、45~50重量%の式RV-1の化合物を含む。
【0142】
・媒体は、式RV-1の化合物および式RV-5の化合物を好ましくは30~60%の合計濃度で含む。
【0143】
【化60】
・媒体は、式RV-1の化合物および式RV-5の化合物および式RV-7の化合物を好ましくは40~65%の範囲内の合計濃度で含む。
【0144】
【化61】
・媒体は、式IAの、特に式IA-bの2種類以上の化合物を含む。
【0145】
・媒体は、2~30重量%、好ましくは3~20重量%、特に好ましくは3~15重量%の式IAの化合物を含む。
【0146】
・式IAおよびIBの化合物に加えて媒体は、式II、III、IX~XIII、XVIIおよびXVIIIの化合物の群から選択される更なる化合物を含む。
【0147】
・混合物全体における式II、III、IX~XIII、XVIIおよびXVIIIの化合物の割合は、40~95重量%である。
【0148】
・媒体は、10~50重量%、特に好ましくは12~40重量%の式IIおよび/またはIIIの化合物を含む。
【0149】
・媒体は、20~70重量%、特に好ましくは25~65重量%の式IX~XIIIの化合物を含む。
【0150】
・媒体は、4~30重量%、特に好ましくは5~20重量%の式XVIIの化合物を含む。
【0151】
・媒体は、1~20重量%、特に好ましくは2~15重量%の式XVIIIの化合物を含む。
【0152】
・媒体は、少なくとも2種類の下式の化合物を含む。
【0153】
【化62】
・媒体は、少なくとも2種類の下式の化合物を含む。
【0154】
【化63】
・媒体は、少なくとも2種類の式IAの化合物および少なくとも2種類の式IBの化合物を含む。
【0155】
・媒体は、少なくとも1種類の式IAの化合物および少なくとも1種類の式IBの化合物および少なくとも1種類の式IIIaの化合物を含む。
【0156】
・媒体は、少なくとも2種類の式IAの化合物および少なくとも2種類の式IBの化合物および少なくとも1種類の式IIIaの化合物を含む。
【0157】
・媒体は、25重量%以上、好ましくは30重量%以上の1種類以上の式IAの化合物および1種類以上の式IBの化合物を含む。
【0158】
・媒体は、少なくとも1種類の式DPGU-n-Fの化合物を含む。
【0159】
・媒体は、少なくとも1種類の式CDUQU-n-Fの化合物を含む。
【0160】
・媒体は、少なくとも1種類の式CPU-n-OXFの化合物を含む。
【0161】
・媒体は、少なくとも1種類の式PPGU-n-Fの化合物を含む。
【0162】
・媒体は、少なくとも1種類の式PGP-n-mの化合物、好ましくは2種類または3種類の化合物を含む。
【0163】
・媒体は、下の構造を有する少なくとも1種類の式PGP-2-2Vの化合物を含む。
【0164】
【化64】
更に他の好ましい実施形態において媒体は、
・1種類以上の式CPY-n-Omの化合物を、好ましくは1%~10%、より好ましくは2%~8%、特に好ましくは3%~6%の範囲内の合計濃度で、
・1種類以上の式CY-n-Omの化合物を、好ましくは1%~20%、より好ましくは4%~15%、特に好ましくは6%~12%の範囲内の合計濃度で、
・1種類以上の式CPY-n-Omの化合物を、好ましくは1%~10%、より好ましくは2%~8%、特に好ましくは3%~6%の範囲内の合計濃度で、
・1種類以上の式PYP-n-mの化合物を、好ましくは1%~10%、より好ましくは2%~8%、特に好ましくは3%~6%の範囲内の合計濃度で、
・1種類以上の式B-nO-Omの、好ましくは式B-2O-O5の化合物を、1%~10%、好ましくは2%~8%、特に好ましくは3%~6%の範囲内の合計濃度で、
・1種類以上の式PGUQU-n-Fの化合物および1種類以上の式CPY-n-Omの化合物および/または1種類以上の式CY-n-Omの化合物を、好ましくは5%~30%、より好ましくは10%~25%、特に好ましくは15%~20%の範囲内の合計濃度で
を含む。
【0165】
用語「alkyl」または「alkyl」は本出願において、1~6個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルキル基、特に、直鎖状の基であるメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルを包含する。2~5個の炭素原子を有する基が、一般に好ましい。
【0166】
用語「alkenyl」または「alkenyl」は本出願において、2~6個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルケニル基、特に直鎖状の基を包含する。好ましいアルケニル基はC~C-1E-アルケニル、C~C-3E-アルケニル、特にC~C-1E-アルケニルである。特に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E-プロペニル、1E-ブテニル、1E-ペンテニル、1E-ヘキセニル、3-ブテニル、3E-ペンテニル、3E-ヘキセニル、4-ペンテニル、4Z-ヘキセニル、4E-ヘキセニルおよび5-ヘキセニルである。5個までの炭素原子を有する基が一般に好ましく、特にCH=CH、CHCH=CHである。
【0167】
用語「フルオロアルキル」は好ましくは、末端フッ素を含有する直鎖状の基、即ち、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、5-フルオロペンチル、6-フルオロヘキシルおよび7-フルオロヘプチルを包含する。しかしながら、フッ素の他の位置を除外するものではない。
【0168】
用語「オキサアルキル」または「アルコキシ」は式C2n+1-O-(CHの直鎖状の基を包含し、ただし、nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1~6を表す。また、mは0を表してもよい。好ましくは、nが1でmが1~6であるか、mが0でnが1~3である。
【0169】
およびXの意味の適切な選択により、アドレス時間、閾電圧、透過特性線の急峻性などを所望の方法で変更できる。例えば、1E-アルケニル基、3E-アルケニル基、2E-アルケニルオキシ基などにより一般にアルキルおよびアルコキシ基と比較して、より短いアドレス時間、改良されたネマチックを示す傾向および弾性定数k33(ベンド)とk11(スプレイ)との間のより高い比との結果となる。4-アルケニル基、3-アルケニル基などは一般にアルキルおよびアルコキシ基と比較して、より低い閾電圧およびより低い値のk33/k11を与える。本発明による混合物は特に高い値のΔεで区別され、よって先行技術からの混合物よりも著しく速い応答時間を有する。
【0170】
上述の式の化合物の最適な混合比は、所望の特性、上述の式の成分の選択および存在し得る任意の更なる成分の選択に実質的に依存する。
【0171】
上に示す範囲内の適切な混合比は、場合に応じて容易に決定できる。
【0172】
本発明による混合物において上述の式の化合物の総量は重要ではない。従って混合物は種々の特性を最適化する目的で、1種類以上の更なる成分を含むことができる。しかしながら混合物の特性の所望の改良に対して観察される効果は、一般に上述の式の化合物の合計濃度が高いほど大きい。
【0173】
特に好ましい実施形態において本発明による媒体は、XがF、OCF、OCHF、OCH=CF、OCF=CFまたはOCF-CFHを表す式II~VII(好ましくはII、III、IVおよびV、特にIIaおよびIIIa)の化合物を含む。式IAおよびIBの化合物との好ましい相乗作用によって、特に有利な特性との結果となる。特に式IAおよびIB、IIaおよびIIIaの化合物を含む混合物は、それらの低い閾電圧で区別される。
【0174】
本発明による媒体で使用できる上述の式およびそれらのサブ式の個々の化合物は既知であるか、既知の化合物に類似して調製できるかのいずれかである。
【0175】
また本発明は、例えばフレームと共にセルを形成する2枚の平坦平行な外板、外板上の個々のピクセルをスイッチするための集積非線形素子およびこのタイプの媒体を含有しセル内に配置され正の誘電異方性および高い比抵抗を有するネマチック液晶混合物を有するSTNまたはMLCディスプレイなどの電気光学的ディスプレイと、電気光学的な目的のために、これらの媒体を使用することとにも関する。
【0176】
本発明による液晶混合物により、利用できるパラメータの範囲を著しく広げることが可能である。透明点、低温における粘度、熱的およびUV安定性ならびに高い光学異方性の達成可能な組み合わせは、先行技術からの従来材料より極めて優れている。
【0177】
本発明による混合物は、例えば携帯電話およびPDAなどの携帯用途およびTFT用途に適している。更に本発明による混合物は、FFS、VA-IPS、OCBおよびIPSディスプレイにおいて使用する使用に特に適している。
【0178】
本発明による液晶混合物は、-20℃まで、好ましくは-30℃まで、特に好ましくは-40℃までネマチック相を保持し、75℃以上、好ましくは80℃以上の透明点を有し、同時に、110mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下の回転粘度γを達成でき、速い応答時間を有する優れたMLCディスプレイの達成が可能となる。回転粘度は20℃で決定する。
【0179】
好ましい実施形態において本発明による液晶混合物の20℃における誘電異方性Δεは、好ましくは+2以上、特に好ましくは+3以上、特には好ましくは+4以上である。加えて混合物は低い回転粘度、好ましくは80mPa・s以下、より好ましくは70mPa・s以下、特に好ましくは60mPa・s以下で特徴付けられる。
【0180】
他の好ましい実施形態において本発明による液晶混合物の20℃における誘電異方性Δεは、好ましくは+8以上、特に好ましくは+10以上、特には好ましくは+15以上である。
【0181】
本発明による液晶混合物の20℃における複屈折率Δnは、好ましくは0.080~0.150、より好ましくは0.090~0.140、特に好ましくは0.100~0.130の範囲内である。
【0182】
本発明による液晶混合物のネマチック相の範囲は、好ましくは少なくとも90°、より好ましくは少なくとも100℃、特に少なくとも110°の幅を有する。この範囲は好ましくは、少なくとも-25℃から+80℃に及ぶ。
【0183】
また、言うまでもなく、本発明による混合物の成分の適切な選択を通して、他の有利な特性を保持しながら、より高い閾電圧においてより高い透明点(例えば、100℃を超え)を達成できるか、またはより低い閾電圧においてより低い透明点を達成することも可能である。対応して粘度を僅かだけ上昇させ、より高いΔεと、よって低い閾値を有する混合物を得ることも同様に可能である。本発明によるMLCディスプレイは好ましくは、グーチおよびタリーの第1次透過極小で動作し[C.H.GoochおよびH.A.Tarry、Electron.Lett.、第10巻、第2~4頁、1974年;C.H.GoochおよびH.A.Tarry、Appl.Phys.、第8巻、第1575~1584頁、1975年]、この場合、例えば特性線の高い急峻性およびコントラストの低い角度依存性(独国特許第30 22 818号明細書)などの特に好ましい電気光学的特性に加え、第2次極小で類似するディスプレイと同じ閾電圧を得るのに、より低い誘電異方性で十分である。このため第1次極小で本発明による混合物を使用することにより、シアノ化合物を含む混合物の場合よりも極めてより高い比抵抗値を達成することが可能になる。個々の成分およびそれらの重量比の適切な選択を通して、当業者は簡単な日常的方法を使用してMLCディスプレイの予め指定された層厚に必要な複屈折率を設定することができる。
【0184】
電圧保持率(HR)の測定[S.Matsumotoら、Liquid Crystals、第5巻、第1320頁(1989年);K.Niwaら、Proc.SID Conference、サンフランシスコ、1984年6月、第304頁(1984年)、;G.Weberら、Liquid Crystals、第5巻、第1381頁(1989年)]により、下式
【0185】
【化65】
のシアノフェニルシクロヘキサン類、または下式
【0186】
【化66】
のエステル類を式I、ST-1、ST-2、RV、IAおよびIBの化合物の代わりに含む類似混合物よりも、式ST-1、ST-2、RV、IAおよびIBの化合物を含む本発明による混合物の方が、UVの曝露によるHRの低下が著しく小さい挙動を示すことが示された。
【0187】
本発明による混合物の光安定性およびUV安定性は極めて良好で、即ち、それらは光、熱またはUVに曝露の際に著しく小さい低下を示す。
【0188】
偏光板、電極基板および表面処理された電極からの本発明によるMLCディスプレイの構成は、このタイプのディスプレイの通常の設計に対応する。本明細書において、通常の設計との用語は広義を指し、MLCディスプレイの全ての派生および改変も包含し、特に、多結晶シリコンTFTまたはMIMに基づくマトリックスディスプレイ素子も含む。
【0189】
しかしながら、本発明によるディスプレイと、ツイストネマチックセルに基づくこれまでの従来ディスプレイとの間の大きな相違点は、液晶層の液晶パラメータの選択にある。
【0190】
本発明によって使用できる液晶混合物は例えば、請求項1の1種類以上の化合物を、式II~XXVIIIの1種類以上の化合物と、または、更なる液晶化合物および/または添加剤と混合して、それ自体従来の様式で調製される。一般に、より少ない量で使用される成分の所望の量を、主要な組成を構成する成分中で、有利には昇温して溶解する。また、有機溶媒中、例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノール中で成分の溶液を混合し、完全に混合後、例えば蒸留によって溶媒を再び除去することも可能である。
【0191】
また誘電体は例えば、光安定剤、抗酸化剤、例えばBHT、TEMPOL、微粒子、フリーラジカル捕捉剤、ナノ粒子などの当業者に既知で文献に記載される更なる添加剤も含んでよい。例えば、0~15%の多色性色素またはキラルドーパントを添加できる。適切な安定剤およびドーパントを、下の表CおよびDに述べる。
【0192】
よって本発明はまた、電気光学的ディスプレイにおける本発明による混合物の使用と、シャッター眼鏡、特に3D用途向け、ならびにTN、PS-TN、STN、TN-TFT、OCB、IPS、PS-IPS、FFS、PS-FFSおよびPS-VA-IPSディスプレイにおける本発明による混合物の使用とにも関する。
【0193】
本出願および下の例において、液晶化合物の構造は頭字語を用いて示されており、化学式への変換は表Aに従って行われる。全ての基C2n+1およびC2m+1は、nおよびm個のC原子をそれぞれ有する直鎖状のアルキル基であり;n、mおよびkは整数であり、好ましくは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を表す。表Bにおけるコードは、それ自体で明らかである。表Aにおいては、親構造に関する頭字語のみが示されている。個々の場合において、親構造に関する頭字語の後に、ダッシュにより分離されて、置換基R1*、R2*、L1*およびLに関するコードが続く。
【0194】
【表1】

好ましい混合物成分を、表AおよびBに示す。
【0195】
【表2】
【0196】
【表3】
以下の式においてnおよびmは、それぞれ互いに独立に0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12、特に2、3、5、更に0、4、6を表す。
【0197】
【表4】
【0198】
【表5】
【0199】
【表6】
【0200】
【表7】
【0201】
【表8】
【0202】
【表9】
【0203】
【表10】
【0204】
【表11】
【0205】
【表12】
【0206】
【表13】
【0207】
【表14】
【0208】
【表15】
式IAおよびIBの化合物に加えて、表Bからの少なくとも1種類、2種類、3種類、4種類以上の化合物を含む液晶混合物が特に好ましい。
【0209】
表Cに、一般に本発明による混合物に添加する可能性のあるドーパントを示す。混合物は、好ましくは0~10重量%、特に0.01~5重量%、特に好ましくは0.01~3重量%のドーパントを含む。
【0210】
【表16】
本発明による混合物に、例えば0~10重量%の量で追加して添加できる安定剤を下に述べる。
【0211】
【表17】
【0212】
【表18】
【0213】
【表19】
【0214】
【表20】
【0215】
【表21】
以下の混合物例は、本発明を限定することなく説明することを意図する。
【0216】
上および下において、パーセンテージデータは重量パーセントを表す。全ての温度は摂氏で示す。m.p.は融点を表し、cl.p.は透明点である。更にCは結晶状態、Nはネマチック相、Sはスメクチック相およびIは等方相である。これらの記号の間のデータは、転移温度を表す。更に:
・Δnは、589nmおよび20℃における光学異方性を表し、
・γは、20℃における回転粘度(mPa・s)を表し、
・Δεは、20℃および1kHzにおける誘電異方性(Δε=ε-ε、式中εは分子の長軸に平行な誘電率を表し、εはそれに垂直な誘電率を表す。)を表し、
・V10は、TNセル(90度ツイスト)で第1次極小において(即ち、d・Δnの値が0.5μmにおいて)20℃で決定する10%透過(板表面に垂直な視野角)のための電圧(閾電圧)(V)を表し、
・Vは、逆平行にラビングしたセルにおいて20℃で容量的に決定するフレデリクス閾電圧を表す。
【0217】
他に明らかに示さない限り全ての物理的特性は、「Merck Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals」、1997年11月刊、ドイツ国メルク社に従って決定し、20℃の温度を適用する。
【0218】
所与の温度Tでの本発明による媒体のバルクにおける貯蔵安定性(LTSバルク)を、目視検査で決定する。検討する媒体2gを、所定温度の冷蔵庫に入れられた適切な大きさの密閉ガラス容器(ボトル)に充填する。スメクチック相または結晶化の発生について、ボトルを所定の時間間隔で確認する。全ての材料および各温度で2本のボトルを保管する。2本の対応するボトルの少なくとも1本に結晶化またはスメクチック相の出現が観察された場合、試験を終了し、より高い秩序相の発生が観察される前の最後の検査時間を、それぞれ貯蔵安定性として記録する。
【0219】
所与の温度Tでの本発明による媒体のLCセルにおける貯蔵安定性(LTSセル)を決定するために、およそ3cmの表面積、約3cmの電極面積および6μmのセルギャップを有する配向層付きTN型LC試験用セルに媒体を充填する。LCで覆われた領域にセルはスペーサーを有しない。端の封止においてのみスペーサを使用する。セルを封止し、偏光子をセルに取り付け、窓および内部照明を備えた所定の温度の冷蔵庫にセルを入れ、配置する。一般に検討する各温度について3個のセルに、それぞれ所定のLCを充填する。所定の時間間隔でスメクチック相の発生または結晶化について冷蔵庫内のセルを目視検査する。ここでもまた所定の組の試験用セルのうち最初に一方試験用セルにおいて、より高い秩序相の発生が観察される前の最後の検査時間を、それぞれの貯蔵安定性として記録する。
【実施例
【0220】
ネマチックホスト混合物N1~N6を以下の通り調製する。
【0221】
【表22】
【0222】
【表23】
【0223】
【表24】
【0224】
【表25】
【0225】
【表26】
【0226】
【表27】
<混合物例>
ホスト混合物N1~N6から下表に与える量で式ST-1a-2-1およびST-2a-3の安定剤を添加して、以下の混合物例を調製する。
【0227】
【化67】
【0228】
【表28】
<ストレス試験>
3.2μm層厚の配向層AL-16301(日本合成ゴム(JSR)、日本国製)を有する試験用セル(電極:ECBレイアウト)を対応する混合物で充填し、それらの電圧保持率を測定する。
【0229】
<測定条件>
<1.UV負荷>
初期値および3J/cmの曝露強度でエッジフィルター(340nmにおいてT=50%)を備えるHoya社高圧水銀蒸気ランプ(Execure 3000)によるUV曝露後の値を25℃の温度で決定する。曝露強度はウシオ電機社製UIT-101 + UVD-365PDセンサーを使用し、365nmの波長で測定する。VHRは、オーブン内で5分後に100℃の温度で測定する。電圧は60Hzで1Vである。結果を以下の表1に要約する。
【0230】
<2.熱負荷>
熱負荷実験のために、試験用セルをオーブン中で100℃において所定時間保持する。
【0231】
<3.バックライト負荷>
次いで市販のLCDテレビバックライト(CCFL)に曝露された密閉試験用セル内で、混合物の対応する検討を行った。ここでの試験用セルの温度は、バックライトが生じる熱により約40℃であった。
【0232】
ストレス試験の結果を、表1~3に要約する。
【0233】
【表29】
【0234】
【表30】
【0235】
【表31】
表1~3に与える値は僅か0.03%の低濃度であっても、UV、バックライトまたは熱ストレス前および特に後において安定化していないホスト混合物(比較例C1)と比較して、式ST-1a-2-1の化合物を含む混合物のVHRが有意に改良されることを示す。濃度を増加しても、ストレス後のVHRの更なる改良には至らない。
【0236】
<LTS測定>
99.95%の混合物N1および0.05%の添加剤ST-2a-3からネマチック混合物N7を調製する。混合物M28~M32は、添加剤ST-1a-2-1を下記の表4に与える量で添加することで調製する。
【0237】
【表32】
表4から見て取れる通り0.03~0.15%の添加剤ST-1a-2-1の濃度については、少なくとも1000時間結晶化は起こらない。0.020%の濃度のST-1a-2-1を有する混合物M32の場合、結晶化は768~792時間後にしか起こらず、実用的用途には十分である。
【0238】
よって添加剤ST-1a-2-1は、少なくとも0.20%の非常に高い濃度で驚くべきことに良好に可溶性である。
【0239】
添加剤ST-2a-3を追加して含む混合物M6~M27を検討して得られたVHR値は、測定精度内で混合物M1~M5について観察されたものと同じである。
【0240】
驚くべきことに0.05%の添加剤ST-2a-3と組み合わせて0.2%の添加剤ST-1a-2-1を含む混合物M5、M10、M15、M20およびM25は、低い画像固着、非常に良好なLTSおよびディスプレイパネルにおいてエッジムラが特に無いか用途によっては十分に低い程度であるという非常に有利な組合せを示す。これは上に示す通り0.03%より高い濃度のST-1a-2-1を使用する場合、VHRの更なる改良はなかったため、特に予期せぬことである。